JP2020107675A - ゲル電解コンデンサ及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐電圧を低下させることなく、十分にゲル化されたゲル電解質を有するゲル電解コンデンサ及びその製造方法を提供する。【解決手段】ゲル電解コンデンサの製造方法において、ベンゼン環を有する化合物を含む電解液と、モノマーと、ベンゼン環を有する化合物より大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤とを含むゲル化剤含有電解液を作製し、光重合開始剤の光吸収ピーク波長帯を含む光を前記ゲル化剤含有電解液に照射して、前記ゲル電解質を形成する。【選択図】図1
Description
本発明は、ゲル電解質を用いたコンデンサ及び製造方法に関する。
電解コンデンサは、タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用金属を陽極箔及び陰極箔として備えている。陽極箔は、弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にすることで拡面化され、拡面化された表面に誘電体酸化皮膜を有する。電解質として液状の電解液を用いた場合、陽極箔と陰極箔の間には電解液が介在する。電解液は、陽極箔の凹凸面に密接し、真の陰極として機能する。
電解液は、陽極箔の誘電体酸化皮膜層と陰極箔との間に介在し、陽極箔と陰極箔との間でイオン伝導を行う。そのため、電解液の電気伝導度及び温度特性等は、インピーダンス、誘電損失(tanδ)及び等価直列抵抗(ESR)等の電解コンデンサの電気的特性に大きな影響を及ぼす。
従って、電解コンデンサには少なくとも高電気伝導度の電解液が適当であるが、電解液の電気伝導度を高めると火花電圧が低下する傾向があり、電解コンデンサの耐電圧特性が損なわれる虞がある。安全性の観点から、電解コンデンサに定格電圧を超える異常電圧が印加されるような過酷な条件下であっても、ショートや発火を起こさぬよう高い耐電圧を有することが望ましい。また、電解液を用いた電解コンデンサは液漏れの虞がある。電解コンデンサから電解液が漏れてしまうと、最悪の場合、周辺の電子機器を破損してしまう。従って、電解コンデンサの液漏れを阻止しなければならない。
そこで、ゲル電解質をコンデンサに使用することが検討されてきた。例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコールを添加することで電解液を高粘度化させ、流動性を低下させた電解コンデンサが記載されている。また、特許文献2には、重合性成分であるモノマーと架橋剤とを用い、ポリマーが架橋された三次元網目構造に電解液を保持させた電解コンデンサが記載されている。
三次元網目構造の作製手法としては光重合が知られている。光重合では、光重合開始剤とモノマーと電解液とが添加されて成るゲル化剤含有電解液に対し、UV−LEDランプ等によって光エネルギーを与え、光重合開始剤が光を吸収する。光重合開始剤が光によって開裂し、ラジカルが生成される。または、光重合開始剤が他の分子から水素を引き抜き、ラジカルが生成される。ラジカルによりモノマーの重合反応が開始されて三次元網目構造が生成される。この三次元網目構造に電解液を保持させることによってゲル電解質が作製される。
電解液は、陽極箔に形成された誘電体酸化皮膜の劣化や損傷等の劣化部を修復する化成性を有する。誘電体酸化皮膜の修復時には、弁作用金属と水分とが反応して水素ガスが発生する。水素ガスはコンデンサの膨れや開弁を引き起こす虞がある。そこで、電解液にはニトロ化合物が添加される。ニトロ化合物が水素イオンと反応し、水酸化物イオンが生成されることで、水素ガスが除去されるものである。
ニトロ化合物の種類によっては、電解コンデンサの耐電圧を低下させてしまう化合物も存在するが、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p-ニトロベンセン、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、及びp−ニトロフェノールは耐電圧を大きく低下させることはない。しかしながら、これらはベンゼン環を有するために、光重合時の照射光を吸収してしまい、光重合開始剤の開裂効率を落としてしまう。即ち、ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物(以下、ベンゼン環を有するニトロ化合物とも言う)は、三次元網目構造の生成を阻害してしまう。
そこで、ベンゼン環を有するニトロ化合物よりも光重合開始剤の添加量を多くすることが考えられる。しかしながら、光重合開始剤は耐電圧を下げる方向に指向する。そのため、光重合開始剤の添加量を多くすると、ゲル電解質による高耐圧特性を削いでしまう。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、耐電圧の低下を緩和させつつ、十分にゲル化されたゲル電解質を有するゲル電解コンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明に係るゲル電解コンデンサの製造方法は、陽極箔、陰極箔及びゲル電解質を備えるゲル電解コンデンサの製造方法であって、ベンゼン環を有する化合物を含む電解液と、モノマーと、前記ベンゼン環を有する化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤とを含むゲル化剤含有電解液を作製し、前記光重合開始剤の前記光吸収ピーク波長帯を含む光を前記ゲル化剤含有電解液に照射して、前記ゲル電解質を形成すること、を特徴とする。
前記ベンゼン環を有する化合物は、ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物、ベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物又は両方であり、前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系化合物であるようにしてもよい。
前記光は、365nm〜420nmの波長を含むようにしてもよい。
前記ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物は、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p-ニトロベンセン、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール及びp−ニトロフェノールの群から選ばれる1種以上であるようにしてもよい。
前記アシルフォスフィンオキサイド系化合物は、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド又はフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであるようにしてもよい。
また、上記課題を解決すべく、本発明に係るゲル電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、及び前記陽極箔と前記陰極箔との間に配置されるゲル電解質を備え、前記ゲル電解質は、ポリマーと当該ポリマーに保持された電解液とから成り、前記電解液は、ベンゼン環を有する化合物を含み、前記ゲル電解質には、前記ベンゼン環を有する化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤が含まれること、を特徴とする。
前記ベンゼン環を有する化合物は、ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物、ベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物又は両方であり、前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系化合物であるようにしてもよい。
前記ニトロ基が付加された化合物は、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p-ニトロベンセン、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、及びp−ニトロフェノールの群から選ばれる1種以上であるようにしてもよい。
本発明によれば、光重合開始剤の添加量を抑制しても十分にゲル電解質を作製できるとともに、耐電圧の低下を緩和できる。
(ゲル電解コンデンサ)
本発明の実施形態に係るゲル電解コンデンサは、静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。ゲル電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔との間にゲル電解質を備える。陽極箔と陰極箔は表面に多孔質構造を有し、即ち拡面化されている。少なくとも陽極箔の多孔質構造部分には誘電体酸化皮膜が形成されている。ゲル電解質は、電解液と当該電解液を保持するポリマーにより成る。このゲル電解質は、陽極箔と陰極箔の間に介在し、誘電体酸化皮膜に密接し、箔の電界を伝達する真の陰極となる。
本発明の実施形態に係るゲル電解コンデンサは、静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。ゲル電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔との間にゲル電解質を備える。陽極箔と陰極箔は表面に多孔質構造を有し、即ち拡面化されている。少なくとも陽極箔の多孔質構造部分には誘電体酸化皮膜が形成されている。ゲル電解質は、電解液と当該電解液を保持するポリマーにより成る。このゲル電解質は、陽極箔と陰極箔の間に介在し、誘電体酸化皮膜に密接し、箔の電界を伝達する真の陰極となる。
陽極箔と陰極箔との間にはセパレータを介在させてもよいし、セパレータを排除してもよい。セパレータは、陽極箔と陰極箔のショートを防止し、またゲル電解質の形状保持を支援する。従って、陽極箔と陰極箔を隔てることのできる厚みのゲル電解質が、崩壊することなく形状を保持する限り、セパレータは排除可能である。セパレータを備える場合であっても、薄厚のセパレータであれば小型化又は高容量化に寄与し、高密度のセパレータであれば耐電圧向上効果を奏し、低密度のセパレータであれば低ESR(等価直列抵抗)を実現できるため望ましい。
(電極箔)
陽極箔及び陰極箔は、弁作用金属を材料とする長尺の箔体である。弁作用金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモン等である。純度は、陽極箔に関して99.9%程度以上が望ましく、陰極に関して99%程度以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等の不純物が含まれていても良い。
陽極箔及び陰極箔は、弁作用金属を材料とする長尺の箔体である。弁作用金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモン等である。純度は、陽極箔に関して99.9%程度以上が望ましく、陰極に関して99%程度以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等の不純物が含まれていても良い。
陽極箔及び陰極箔は、弁作用金属の粉体を焼結した焼結体、又は延伸された箔にエッチング処理を施したエッチング箔であり、即ち、多孔質構造は、トンネル状のピット、海綿状のピット、又は密集した粉体間の空隙により成る。多孔質構造は、典型的には、塩酸等のハロゲンイオンが存在する酸性水溶液中で直流又は交流を印加する直流エッチング又は交流エッチングにより形成され、若しくは芯部に金属粒子等を蒸着又は焼結することにより形成される。尚、陰極箔は、陽極箔と比べて電解コンデンサの静電容量に対する表面積の影響が少ないため、多孔質構造による表面粗さは小さくともよい。
誘電体酸化皮膜は、典型的には、陽極箔の表層に形成される酸化皮膜であり、陽極箔がアルミニウム製であれば多孔質構造領域を酸化させた酸化アルミニウム層である。また、陰極箔に誘電体酸化皮膜層を設けてもよい。この誘電体酸化皮膜層は、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の酸、これらの酸の水溶液等、その他のハロゲンイオン不在の溶液中で電圧印加する化成処理により形成される。
(セパレータ)
セパレータを用いる場合には、セパレータは、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロースおよびこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で又は混合して用いることができる。
セパレータを用いる場合には、セパレータは、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロースおよびこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で又は混合して用いることができる。
(ゲル電解質)
電解液は、溶媒に対して溶質を溶解し、または更に添加剤が添加された混合液である。溶媒はプロトン性の有機極性溶媒又は非プロトン性の有機極性溶媒であり、単独又は2種類以上が組み合わせられる。溶質は、アニオン及びカチオンの成分が含まれる。溶質は、典型的には、有機酸の塩、無機酸の塩、又は有機酸と無機酸との複合化合物の塩であり、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。アニオンとなる酸及びカチオンとなる塩基を溶質成分として別々に電解液に添加してもよい。
電解液は、溶媒に対して溶質を溶解し、または更に添加剤が添加された混合液である。溶媒はプロトン性の有機極性溶媒又は非プロトン性の有機極性溶媒であり、単独又は2種類以上が組み合わせられる。溶質は、アニオン及びカチオンの成分が含まれる。溶質は、典型的には、有機酸の塩、無機酸の塩、又は有機酸と無機酸との複合化合物の塩であり、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。アニオンとなる酸及びカチオンとなる塩基を溶質成分として別々に電解液に添加してもよい。
プロトン性の有機極性溶媒としては、一価アルコール類、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類などが挙げられる。一価アルコール類としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
非プロトン性の有機極性溶媒としては、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、オキシド系などが代表として挙げられる。スルホン系としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等が挙げられる。アミド系としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。ラクトン類、環状アミド系としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等が挙げられる。ニトリル系としては、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等が挙げられる。オキシド系としてはジメチルスルホキシド等が挙げられる。
有機酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、1,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等のカルボン酸、フェノール類、スルホン酸が挙げられる。また、無機酸としては、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、炭酸、ケイ酸等が挙げられる。有機酸と無機酸の複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジ蓚酸、ボロジグリコール酸等が挙げられる。
これら有機酸の塩、無機酸の塩、ならびに有機酸と無機酸の複合化合物の少なくとも1種の塩としては、アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。四級アンモニウム塩の四級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。四級化アミジニウムとしては、エチルジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。アミン塩のアミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミンが挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジブチルアミン等、三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等が挙げられる。
一般的な電解コンデンサの電解液には、誘電体である酸化アルミニウム被膜(誘電体酸化皮膜)の修復によって発生した水素ガスを吸収し、電解コンデンサの膨れや開弁を抑制するためにニトロ化合物が添加される。しかし、ニトロ化合物の種類によっては、ゲル電解コンデンサの耐電圧を低下させてしまう化合物も存在するためニトロ化合物としては、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロベンセン、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、及びp−ニトロフェノールが好ましい。これらはすべてベンゼン環にニトロ基が付加された化合物である。
その他、電解液には、リン酸エステル、ポリエチレングリコール、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビット等)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコールとの錯化合物、ホウ酸エステルなどが添加されていてもよい。これらは単独で添加されても、2種以上が添加されていてもよい。
このような電解液を保持するポリマーは、1種のモノマーの単重合体又は2種以上のモノマーの共重合体であり、架橋されて三次元網目構造を有する。モノマーとしては特に限定されず、例えばヒドロキシエチルアクリルアミド、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(tert−ブチルアミノ)エチル、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸又はメトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられ、これらの群から1種又は2種以上が選ばれる。
ポリマーはゲル化剤含有電解液に対し、光を照射することで、光重合により形成される。ゲル化剤含有電解液は、電解液とモノマーと光重合開始剤と架橋剤とが添加されて成る。尚、モノマーの他、又はモノマーに代えて、ゲル化剤含有電解液に対してオリゴマーを添加して光重合させることで、ポリマーを形成するようにしてもよい。即ち、本発明においてモノマーとは、単量体の他、複数のモノマーが重合したオリゴマーも含まれる。
光重合開始剤としては、ベンゼン環を有するニトロ化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有するものが用いられる。尚、光重合反応の過程で光重合開始剤は開裂するため、ゲル電解質には、光重合開始剤と当該光重合開始剤が開裂して生成される化合物が含まれる。
このような光重合開始剤としてはアシルフォスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物は、365nm〜420nmを含む光吸収ピーク波長帯において、ベンゼン環を有するニトロ化合物よりもピークが大きい。換言すると、アシルフォスフィンオキサイド系化合物は、ベンゼン環を有するニトロ化合物よりも、365nm〜420nmの範囲の光を良く吸収する。ゲル化剤含有電解液に対して365nm〜420nmの波長範囲を含む光を照射することで、365nm〜420nmの波長範囲の光エネルギーは、ベンゼン環を有するニトロ化合物に吸収されずに光重合開始剤に与えられ、光重合反応が進む。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、下記化学式(1)に示すジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、又は下記化学式(2)に示すフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
その他、アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、下記化学式(3)を満たすものであればよい。尚、下記化学式(3)において、Rは、ベンゼン環又はo,m,p位に炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基が付加されたベンゼン環、−O−R’、もしくは−C(=O)−R’である。R’は炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基、ベンゼン環又はo,m,p位に炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基が付加されたベンゼン環を示す。
ここで、ベンゼン環を有するニトロ化合物に加え、またはベンゼン環を有するニトロ化合物ではなく、別のベンゼン環を有する化合物が電解液に含有する場合、このベンゼン環を有する化合物が光重合時の光エネルギーを吸収しないように、ベンゼン環を有する化合物とは別の光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤を選択し、その光重合開始剤の光吸収ピーク波長帯を含む光を照射するようにすれば、光重合反応が効率良く進展するものである。ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物以外で、ベンゼン環を有する化合物としては、ベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物が挙げられ、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、安息香酸、トルイル酸、4−tert−ブチル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸、及び4−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸が挙げられる。尚、これらベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物についても、アシルフォスフィンオキサイド系化合物のほうが、365nm〜420nmの光吸収ピーク波長帯のピークが大きい。
架橋剤としては、2官能アクリレート、2官能メタクリレート、2官能アクリルアミドもしくは多官能基アクリレート、多官能基メタクリレート、多官能基アクリルアミドを用いる。2官能アクリレート、2官能メタクリレート、2官能アクリルアミドとしては2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N'−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド等が挙げられる。多官能基アクリレート、多官能基メタクリレート、多官能アクリルアミドとしては、2,2−ビス[(アクリロイルオキシ)メチル]プロパン−1,3−ジイル=ジアクリラート、2−[(アクリロイルオキシ)メチル]−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル=ジアクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N−[トリス(3−アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド等が挙げられる。
これらのうちの1種又は2種以上の混合である架橋剤は、ゲル電解質中のモノマーに対して50%以下が添加されることが望ましい。即ち、架橋度が50%以下となることが望ましい。架橋度は、モノマーの添加量(mol)に対する架橋剤の添加量(mol)の割合(%)で示される。1molのモノマーに対して0.5mol超の架橋剤が添加されると、ゲル電解コンデンサのESRが高くなる。
(ゲル電解コンデンサ製造方法)
ゲル電解質に関し、まず、モノマーと光重合開始剤と架橋剤を電解液に溶解させる必要がある。電解液中にホウ酸を含有させる場合、モノマーとしてはヒドロキシエチルアクリルアミド、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることが好ましい。該モノマーはホウ酸に対する溶解性が高いためである。
ゲル電解質に関し、まず、モノマーと光重合開始剤と架橋剤を電解液に溶解させる必要がある。電解液中にホウ酸を含有させる場合、モノマーとしてはヒドロキシエチルアクリルアミド、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることが好ましい。該モノマーはホウ酸に対する溶解性が高いためである。
また、セパレータを排除したゲル電解コンデンサを作製する場合、ゲル化剤含有電解液を陽極箔の誘電体酸化皮膜上に液ダレしないように、且つセパレータとして機能するように厚みを持たせて塗布する。液ダレを抑制して所定の厚みを持たせるべく、セルロースナノファイバー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はヒドロキシエチルメチルセルロース、キサンタンガム等の増粘剤を添加しても良い。そして、ゲル化剤含有電解液が塗工された陽極箔に光照射処理を施す。これにより、陽極箔上でゲル電解質が作製される。
そして、ゲル化剤含有電解液に対して光照射処理を施し、光重合反応を促進させる。このとき、アシルフォスフィンオキサイド系化合物の光吸収ピーク波長帯である365nm〜420nmの波長帯を含む光を照射する。この波長帯の光を照射可能なランプとしては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、ガリウムランプ、LEDランプ等が挙げられる。
ゲル電解質の層が誘電体酸化皮膜上に形成されると、このゲル電解質を挟むように陽極箔と陰極箔とを対向させる。そして、陽極箔とゲル電解質と陰極箔の層を巻回することで、巻回形のコンデンサ素子が作製される。または、陽極箔と陰極箔とをゲル電解質を介在させつつ交互に積み重ねることで、積層形のコンデンサ素子が作製される。
コンデンサ素子は、金属製の外装ケースに収容され、封口体で封止される。外装ケースの材質は、アルミニウム、アルミニウムやマンガンを含有するアルミニウム合金、又はステンレスが挙げられる。封口体はゴムやゴムと硬質基板との積層体などが挙げられる。コンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔には、ステッチ、コールドウェルド、超音波溶接、レーザー溶接などによって、引出端子が接続され、封口体から引き出される。この後、封口体により封止し、再化成工程を経て、ゲル電解コンデンサの作製が完了する。
セパレータ付きのゲル電解コンデンサでは、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介在させて巻回又は積層してコンデンサ素子を形成する。コンデンサ素子を外装ケースに収容した後、ゲル化剤含有電解液を外装ケースに吐出し、コンデンサ素子にゲル化剤含有電解液を含浸させる。又はコンデンサ素子にゲル化剤含有電解液を含浸した後、外装ケースに収容する。そして、365nm〜420nmの波長帯を含む光の照射によりゲル電解質を形成する。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
まず、アルミニウム箔をエッチング処理により拡面化し、次いで化成処理により誘電体酸化皮膜が形成されたアルミニウム製の陽極箔を作製した。更に、実施例1乃至10並びに比較例1乃至4のゲル化剤含有電解液を作製し、この陽極箔に塗工した。
ゲル化剤含有電解液中、電解液に関しては、実施例1乃至10並びに比較例1乃至4の全てにおいて、ニトロ化合物を除いて下表1のように共通とした。実施例1乃至10並びに比較例1乃至4で用いたニトロ化合物及び光重合開始剤の組み合わせは、後述の表2に示す。また、実施例1乃至10並びに比較例1乃至4の全ての電解液には、溶質のカチオン成分として微量のアンモニアガスを電解液に吹き込んだ。
(表1)
(表1)
ゲル化剤含有中のモノマーとしては、実施例1乃至10並びに比較例1乃至4の全てにおいて、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いた。当該モノマーの添加量は、ゲル化剤含有電解液全量に対して20wt%とした。更に、ゲル化剤含有電解液中の架橋剤としては、実施例1乃至10並びに比較例1乃至4の全てにおいて、ポリエチレングリコールジメタクリラートを用いた。当該架橋剤の添加量は、ゲル化剤含有電解液全量に対して4wt%とした。
そして、光重合開始剤及びベンゼン環を有するニトロ化合物としては、実施例1乃至10並びに比較例1乃至4において下記表2に示すものを用いた。
(表2)
(表2)
表2中、記号Aは、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであり、記号Bは、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであり、記号Cは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであり、記号Dは、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンである。また、表2中、光重合開始剤の添加量は、電解液、モノマー、光重合開始剤及び架橋剤を含むゲル化剤含有電解液全量に対する添加量を示す。また、表2に示すように、比較例2ではベンゼン環を有するニトロ化合物は無添加とした。
このような実施例1乃至10並びに比較例1乃至4のゲル化剤含有電解液を陽極箔に塗工した後、上記表2に示す照射波長の単波長光を照度、積算光量等を同一条件にてUV−LEDランプで照射し、モノマーの重合反応と架橋反応を開始させ、ゲル電解質を形成した。
その結果を上記表2の「ゲル化の確認」の欄に示している。丸印はゲル化剤含有電解液が三次元網目構造を形成してゲル化し、ゲル電解質を作製できたことを示す。バツ印は三次元網目構造を形成せず、ゲル化に到らなかったことを示す。尚、ゲル化は目視により確認し、陽極箔を傾けてもゲル化剤含有電解液に流動性がない状態をゲル化とした。
ここで、各種電解液の光吸収スペクトルを図1乃至4に示しておく。図1乃至4中、破線で示されるスペクトルは、表1に示した電解液に表2中の各ニトロ化合物の何れかを電解液に対して2wt%の割合で含み、光重合開始剤を未添加とした場合を示している。
図1の実線で示されるスペクトルは、表1に示した電解液に表2中の各ベンゼン環を有するニトロ化合物の何れかを含み、且つ表2中のAで示したジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを光重合開始剤として電解液全体に対して0.5wt%の割合で含む場合を示している。図1に示されるように、実線のスペクトルには、365nm〜420nmの範囲に、破線よりも大きいピークが表れている。即ち、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドは、表2中の各ニトロ化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有することがわかる。
図2の実線で示されるスペクトルは、表1に示した電解液に表2中の各ベンゼン環を有するニトロ化合物の何れかを含み、且つ表2中のCで示した1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを光重合開始剤として電解液全体に対して0.5wt%の割合で含む場合を示している。図2に示されるように、実線と破線のスペクトルは同じである。即ち、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンには、表2中の各ニトロ化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯が無いことがわかる。
図3の実線で示されるスペクトルは、表1に示した電解液に表2中の各ベンゼン環を有するニトロ化合物の何れかを含み、且つ表2中のDで示した2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを光重合開始剤として電解液全体に対して0.5wt%の割合で含む場合を示している。図3に示されるように、実線と破線のスペクトルは同じである。即ち、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンには、表2中の各ニトロ化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯が無いことがわかる。
図4の実線で示されるスペクトルは、電解液に表2中の各ベンゼン環を有するニトロ化合物の何れかを含み、且つ表2中のBで示したフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを光重合開始剤として電解液全体に対して0.5wt%の割合で含む場合を示している。但し、スペクトル測定のために、電解液は後述の表4の組成で調製された。図4に示されるように、実線のスペクトルには、365nm〜420nmの範囲に、破線よりも大きいピークが表れている。即ち、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドは、表2中の各ニトロ化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有することがわかる。
図2及び図3に示すように、比較例1及び比較例3には、p−ニトロベンジルアルコールよりも大きな光吸収ピーク波長帯が無い光重合開始剤が用いられた。そして、表2に示すように、このニトロ化合物と光重合開始剤の光吸収ピーク波長帯の両方に含まれる単波長光が照射された。その結果、比較例1及び比較例3はゲル化できなかった。一方、比較例2は、比較例1と同じ光重合開始剤が用いられている。但し、ベンゼン環を有するニトロ化合物は添加されていない。この比較例2は、ゲル化が確認できた。
一方、図1に示すように、実施例1乃至実施例4は、p−ニトロベンジルアルコールにはない光吸収ピーク波長帯を有するアシルフォスフィンオキサイド系化合物の1種が光重合開始剤として用いられた。そして、表2に示すように、このアシルフォスフィンオキサイド系化合物が有し、p−ニトロベンジルアルコールにはない光吸収ピーク波長帯の単波長光が照射された。その結果、実施例1乃至実施例4はゲル化が確認された。これに対し、比較例4は、実施例1と同じアシルフォスフィンオキサイド系化合物が光重合開始剤として用いられている。しかし、表2に示すように、アシルフォスフィンオキサイド系化合物の光吸収ピーク波長帯から外れた単波長光が照射された。この結果、比較例4は、実施例1と同じ光重合開始剤とニトロ化合物の組み合わせを有するものの、ゲル化できなかった。
以上より、ベンゼン環を有するニトロ化合物が存在する場合、そのニトロ化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤をゲル化剤含有電解液に添加することで、この光吸収ピーク波長帯に含まれる波長の光を照射して光重合させることができ、以て電解液が良好にゲル化されることが確認された。
実施例5及び実施例6は、実施例2と同じアシルフォスフィンオキサイド系化合物が光重合開始剤として用いられた。また、実施例2と同じく、p−ニトロベンジルアルコールより、アシルフォスフィンオキサイド系化合物のほうが大きい光吸収ピーク波長帯の単波長光が照射された。但し、表2に示すように、実施例5及び実施例6は、光重合開始剤の添加量が実施例2と異なる。この結果、実施例5及び実施例6はゲル化が確認された。これにより、ゲル化剤含有電解液に対する光重合開始剤の添加量は、0.05以上40wt%以下が好ましいことが確認された。
表2に示すように、実施例7及び実施例8では、実施例1乃至実施例4と比べて、ベンゼン環を有するニトロ化合物の種類を換えている。但し、添加した光重合開始剤とベンゼン環を有するニトロ化合物が有する光吸収ピーク波長帯は異なり、また重合開始剤の光吸収ピーク波長帯を含む波長の光を照射している。その結果、実施例7及び実施例8のゲル化も確認できた。これにより、ベンゼン環を有する化合物の種類に依らず、ベンゼン環を有する化合物より大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤がゲル化剤含有電解液に添加されることで、電解液を良好にゲル化できることが確認された。
表2に示すように、表1の電解液を用いた実施例9及び実施例10では、実施例1乃至4とは異なるアシルフォスフィンオキサイド系化合物が光重合開始剤として用いられた。但し、図4に示すように、この実施例9及び実施例10の光重合開始剤も、添加されたベンゼン環を有するニトロ化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を365nm〜420nmに有する。そして、表2に示すように、この365nm〜420nmに含まれる単波長光が照射された。この結果、実施例9及び実施例10はゲル化が確認された。これにより、光重合開始剤の種類に関わらず、ベンゼン環を有するニトロ化合物より大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤がゲル化剤含有電解液に添加されることで、この光重合開始剤の光吸収ピーク波長帯に含まれる波長の光を照射して光重合させることができ、電解液が良好にゲル化されることが確認された。
次に、下表3に示す電解液を用いて実施例11のゲル化剤含有電解液を作製し、また下表4に示す電解液を用いて実施例12のゲル化剤含有電解液を作製した。実施例11のゲル化剤含有電解液は、表3の電解液にカチオン成分として微量のアンモニアガスを吹き込んだ電解液を用いた点を除き、実施例2と同じである。実施例12のゲル化剤含有電解液は、表4の電解液を用いた点を除き、実施例9と同じである。更に、この実施例11及び実施例12のゲル化剤含有電解液を陽極箔に塗工した後、UV−LEDランプで385nmの単波長を実施例2と同じ照度、積算光量等を同一条件にて照射し、モノマーの重合反応と架橋反応を開始させ、ゲル電解質を形成した。
(表3)
(表4)
表3に示すように、実施例11は安息香酸が電解液に添加されている。また、表4に示すように、実施例12はフタル酸水素1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムが電解液に添加されている。これら安息香酸及びフタル酸は、ベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物である。
385nmの単波長の光を照射した結果、この実施例11及び実施例12はゲル化が確認された。この結果より、p−ニトロベンジルアルコール等のベンゼン環を有するニトロ化合物のみならず、ベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物を添加しても、ゲル電解コンデンサが作製できることが確認された。特に、電解液の溶質の有機酸として安息香酸やフタル酸を添加しても、ゲル電解コンデンサを作製できる。
Claims (8)
- 陽極箔、陰極箔及びゲル電解質を備えるゲル電解コンデンサの製造方法であって、
ベンゼン環を有する化合物を含む電解液と、モノマーと、前記ベンゼン環を有する化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤とを含むゲル化剤含有電解液を作製し、
前記光重合開始剤の前記光吸収ピーク波長帯を含む光を前記ゲル化剤含有電解液に照射して、前記ゲル電解質を形成すること、
を特徴とするゲル電解コンデンサの製造方法。 - 前記ベンゼン環を有する化合物は、ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物、ベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物又は両方であり、
前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系化合物であること、
を特徴とする請求項1記載のゲル電解コンデンサの製造方法。 - 前記光は、365nm〜420nmの波長を含むこと、
を特徴とする請求項2記載のゲル電解コンデンサの製造方法。 - 前記ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物は、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p-ニトロベンセン、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール及びp−ニトロフェノールの群から選ばれる1種以上であること、
を特徴とする請求項2又は3記載のゲル電解コンデンサの製造方法。 - 前記アシルフォスフィンオキサイド系化合物は、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド又はフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであること、
を特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のゲル電解コンデンサの製造方法。 - 陽極箔、陰極箔、及び前記陽極箔と前記陰極箔との間に配置されるゲル電解質を備え、
前記ゲル電解質は、ポリマーと当該ポリマーに保持された電解液とから成り、
前記電解液は、ベンゼン環を有する化合物を含み、
前記ゲル電解質には、前記ベンゼン環を有する化合物よりも大きい光吸収ピーク波長帯を有する光重合開始剤が含まれること、
を特徴とするゲル電解コンデンサ。 - 前記ベンゼン環を有する化合物は、ベンゼン環にニトロ基が付加された化合物、ベンゼン環にカルボキシル基が付加された化合物又は両方であり、
前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系化合物であること、
を特徴とする請求項6記載のゲル電解コンデンサ。 - 前記ニトロ基が付加された化合物は、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p-ニトロベンセン、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、及びp−ニトロフェノールの群から選ばれる1種以上であること、
を特徴とする請求項7記載のゲル電解コンデンサ。
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