JP2020105335A - 極性基含有オレフィン系共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ラジカル重合としては、主にフリーラジカル重合、有機金属媒介ラジカル重合(OMRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)などが用いられている。
フリーラジカル重合の場合には、ラジカル重合に対するエチレンの反応性がアクリルモノマーの方に比べて極めて低いため、高温高圧条件下での重合が必要である。例えば、特許文献1には、エチレンを6.8kg/h(約242.4mol/h)、アクリル酸メチルを0.8kg/h(約9.3mol/h)、アクリル酸ブチルを1.3kg/h(約10.1mol/h)の速度で供給しながら、2180kg/cm2の圧力及び165℃の条件下で重合を行い、エチレン32.8重量%(67モル%)、アクリル酸メチル22.6重量%(15モル%)、アクリル酸ブチル40.5重量%(18モル%)で構成された共重合体が得られたことが示されている。一般にこのような高温高圧条件は高分子の分子量分布を広げ、多くの分岐構造を形成することが知られている。一方、高温高圧条件下ではない場合には共重合体の中のエチレン含有率が低いことが知られている。例えば、非特許文献1には、アゾビスイソブチロニトリルを用い、エチレン100バール、メタクリル酸メチル50mL、50℃の条件下で重合を行い、エチレン6モル%、メタクリル酸メチル94モル%で構成された共重合体が得られたことが示されている。
(式中、Mは周期律表第9族の元素を表し、XはN、PまたはAsを表し、Lは中性の電子供与性配位子を表し、A−はカチオン性有機金属化合物の対イオンを表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9はそれぞれ独立して、水素原子;置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、脂環式基、アルコキシ基、アリール基もしくはアリールオキシ基;またはそれぞれ独立して炭素数1〜30の炭化水素で1つ以上の水素原子が置換されたアミノ基もしくはシリル基を表し、R1〜R5のうちの2つは連結して環構造を形成していてもよく、R1〜R5の中の1つとR7〜R9の中の1つとは、一緒になってケイ素原子を骨格に有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を形成していてもよく、R7とR8は連結してヘテロ環構造を形成していてもよく、R7、R8及びR9は、Xと一緒になって芳香族ヘテロ環構造を形成してもよく、R6とLは結合して環構造を形成してもよい。)
(式中、M、L、A−、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、前記一般式(C1)で定義されたとおりであり、YはO、SまたはSeを示し、R1〜R5の中の1つとR7またはR8は一緒になってケイ素原子を骨格に有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を形成していてもよく、R7及びR8は、Yと一緒になってヘテロ環構造を形成してもよく、R6とLは結合して環構造を形成してもよい。)
(式中、R10は、水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基を表し、R11は−COOR12(ここでR12は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)、−CON(−R12’)2(ここでR12’は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)、シアノ基、または置換されていてもよいアリール基を表し、2つのR12’は同じでも異なっていてもよい)
本発明において重合反応に付されるモノマーは、好ましくは、炭素−炭素二重結合を1つ有する直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素または脂環式炭化水素と後述する一般式(1)で示されるモノマーの2種類である。共重合に付される一方のモノマーである「炭素−炭素二重結合を1つ有する直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素または脂環式炭化水素」としては、モノマー全体として極性を有さない有機化合物が該当し、特に、α−オレフィンが例示される。α−オレフィンは炭素鎖末端に炭素−炭素二重結合を有する分子である。α−オレフィンの構造としては炭素数2〜20のものが好ましく、分岐、環および/または末端以外に不飽和結合を有していてもよい。炭素数が20より大きいと、十分な重合活性が発現しないことがある。このため、炭素数2〜10のα−オレフィンがより好ましい。さらに好ましいα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセンが挙げられる。
また、基R12としては炭素及び水素で構成されるものが好ましいが、基R12内には、酸素、硫黄、セレン、リン、窒素、ケイ素、フッ素、ホウ素等のヘテロ原子が含まれていてもよい。これらのヘテロ原子のうち、酸素、ケイ素、フッ素が好ましく、酸素がさらに好ましい。水素原子でない場合のR12’の好ましい範囲・例示についても、R12と同様である。
本発明の方法で用いられる触媒は、以下の(C1)または(C2)で示される遷移金属錯体を含有する。
(各式における置換基等の定義は、先に述べたとおりである。なお、R1〜R5を有する環は後述のとおり縮合環であることもできるが、当該環を指して単に「シクロペンタジエニル基」と称することがある。)
本発明の方法においては、上記(C1)または(C2)で示される遷移金属錯体に加え、さらに助触媒を加えてもよい。助触媒としては、例えば周期律表第1、2または13族元素を含有する有機金属化合物が挙げられる。特に、下記一般式(2)で示される化合物、一般式(3)で示される化合物または有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。これらの化合物は、複数種類が触媒組成物に含まれていてもよい。
R13〜R15としては、先にR1などの説明において記載した例示等があてはまるが、化合物の調製や入手の容易さなどから、アルキル基、アリール基など、炭化水素に属する基、またはトリフルオロメチル基、パーフルオロフェニル基などハロゲン(特にフッ素)で置換されたアルキル基またはアリール基であることが好ましい。
R16〜R22としては、先にR1などの説明において記載した例示等があてはまるが、化合物の調製や入手の容易さなどから、アルキル基、アリール基など、炭化水素に属する基であることが好ましく、カルボカチオンを得やすいことから、t−ブチル基やアリール基など嵩高い炭化水素基がより好ましい。
本発明の方法において、上記化合物を含む触媒組成物を、共重合の触媒成分として使用することができる。一般式(C1)または(C2)で表される金属錯体は、単離したものを用いてもよいし、担体に担持したものを用いてもよい。こうした担持をα−オレフィンの重合やα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。
具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。
また、添加剤として、無機および/または有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で、またはイオン液体を添加して重合を行ってもよい。
これらのうち、特に好ましいルイス塩基は、芳香族アミン類、脂肪族アミン類、環状エーテル類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類であり、なかでも好ましいルイス塩基は、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピペリジン誘導体、イミダゾール誘導体、アニリン誘導体、ピペリジン誘導体、トリアジン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体である。
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても、特に制限はなく、目的に応じて、さまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。
実施例で得た共重合体の構造は、BRUKER(株)製Ascend500を用いた1H−NMR及び13C−NMR解析により決定した。NMR測定は、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2を用い、120℃で行った。13C−NMRの一部は緩和試薬としてクロム(III)アセチルアセトナートを用い、逆ゲート付きデカップリング法を用いて測定(9.0マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:31kHz、緩和時間:10秒、取り込み時間:10秒、FIDの積算回数5,000〜10,000回)し、定量分析を行った。
末端構造についても同様に、13C−NMRまたは1H−NMRで構造を解析することができる。例えば、炭素―炭素二重結合構造の場合、13C−NMRスペクトルで114ppm(上記図中のfに相当)及び139ppm(上記図中のeに相当)にスペクトルが現れ、13.6ppm(上記図中のcに相当)に現れる炭素―炭素単結合構造と区別することができる(参考文献:Chem.Commun.,53,2630(2017)(非特許文献4))。
生産性と触媒活性は次の式により計算した。
アクリル酸メチルとエチレンの共重合(共重合体1の調製)
実施例1では、テトラメチル(2−メチルチオエチル)シクロペンタジエニルコバルトメチル(アセトニトリル)(テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート)を触媒として使用した。これを以下錯体1と略称する。
アルゴン雰囲気下、錯体1(34.0mg,0.0291mmol)を含む50mLオートクレープ中に、トルエン(10mL)を加えた。その後、窒素雰囲気下、アクリル酸メチル(0.20mL,0.19g,2.2mmol)をトルエン(10mL)に溶かした溶液を加えた。エチレン(2.5MPa)を充填した後、オートクレーブを30℃で、18時間撹拌した。オートクレーブ内部の液体をメタノール(300mL)と1.0mol/L塩酸水溶液(50mL)の混合液に注ぎ、室温で4時間撹拌した。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下80℃で乾燥して、共重合体1を得た。収量は21mgであった。これにより錯体1の触媒活性を0.72kg/molと算出した。
サイズ排除クロマトグラフィーの測定結果を図1に、1H−NMRの測定結果を図2に、13C−NMRの測定結果を図3、図4及び図5に示す。
Claims (4)
- 極性基含有オレフィン系共重合体の製造方法であって、下記一般式(C1)または(C2)で示される金属錯体を含む触媒により、炭素−炭素二重結合を1つ有する直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素と下記一般式(1)で示されるモノマーとを共重合することを特徴とする、極性基含有オレフィン系共重合体の製造方法。
(式中、Mは周期律表第9族の元素を表し、XはN、PまたはAsを表し、Lは中性の電子供与性配位子を表し、A−はカチオン性有機金属化合物の対イオンを表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9はそれぞれ独立して、水素原子;置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、脂環式基、アルコキシ基、アリール基もしくはアリールオキシ基;またはそれぞれ独立して炭素数1〜30の炭化水素で1つ以上の水素原子が置換されたアミノ基もしくはシリル基を表し、R1〜R5のうちの2つは連結して環構造を形成していてもよく、R1〜R5の中の1つとR7〜R9の中の1つとは、一緒になってケイ素原子を骨格に有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を形成していてもよく、R7とR8は連結してヘテロ環構造を形成していてもよく、R7、R8及びR9は、Xと一緒になって芳香族ヘテロ環構造を形成してもよく、R6とLは結合して環構造を形成してもよい。)
(式中、M、L、A−、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、前記一般式(C1)で定義されたとおりであり、YはO、SまたはSeを示し、R1〜R5の中の1つとR7またはR8は一緒になってケイ素原子を骨格に有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を形成していてもよく、R7及びR8は、Yと一緒になってヘテロ環構造を形成してもよく、R6とLは結合して環構造を形成してもよい。)
(式中、R10は、水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基を表し、R11は−COOR12(ここでR12は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)、−CON(−R12’)2(ここでR12’は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)、シアノ基、または置換されていてもよいアリール基を表し、2つのR12’は同じでも異なっていてもよい) - 前記一般式(1)におけるR11が,−COOR12(ここでR12は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)、またはアリール基であることを特徴とする、請求項1に記載の極性基含有オレフィン系共重合体の製造方法。
- 前記一般式(1)で示されるモノマーがアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレンから選ばれる少なくとも1種のモノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の極性基含有オレフィン系共重合体の製造方法。
- 前記炭素−炭素二重結合を1つ有する直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素がエチレンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン系共重合体の製造方法。
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