以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
先ず、本開示における第1実施形態について、図1〜図3を参照しつつ説明する。第1実施形態では、本開示に係る車両用空調装置1を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に適用している。車両用空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調や、バッテリ42等を含む機器の温度調整を行う。
そして、車両用空調装置1は、車室内の空調を行う運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除霜モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除霜モードは、ラジエータ21が着霜した場合に、ラジエータ21の霜を取り除く為の運転モードである。
尚、車両用空調装置1の冷凍サイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、図1を参照しつつ説明する。車両用空調装置1は、冷凍サイクル10と、高温側冷却水回路20と、低温側冷却水回路40と、機器用冷却水回路50と、室内空調ユニット60と、制御装置70を有している。
初めに、車両用空調装置1における冷凍サイクル10を構成する各構成機器について説明する。冷凍サイクル10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。
圧縮機11は、冷凍サイクル10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は車両ボンネット内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。
そして、圧縮機11の吐出口には、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が有する熱を、高温側冷却水回路20を循環する熱媒体である冷却水に放熱し、冷却水を加熱する熱交換器である。
水−冷媒熱交換器12は、所謂、サブクール型の凝縮器によって構成されており、凝縮部12aと、レシーバ部12bと、過冷却部12cを有している。凝縮部12aは、高圧冷媒と、高温側冷却水回路20の冷却水とを熱交換させて冷媒を凝縮させる熱交換部である。レシーバ部12bは、凝縮部12aから流出した液相冷媒を蓄える受液部である。過冷却部12cは、レシーバ部12bから流出した液相冷媒と、高温側冷却水回路20の冷却水とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する熱交換部である。
これにより、所謂レシーバサイクルを構成することができ、凝縮部12aにて凝縮させた高圧液相冷媒をサイクルの余剰冷媒としてレシーバ部12bに蓄えることができる。従って、室内蒸発器16から流出する冷媒を、過熱度を有する気相冷媒となるまで蒸発させることができる。更に、過冷却部12cにて冷媒を過冷却させることで、室内蒸発器16の出口側冷媒のエンタルピと入口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させることができる。
尚、水−冷媒熱交換器12は、熱媒体冷媒熱交換器に相当する。そして、高温側冷却水回路20における冷却水としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、冷媒分岐部13aの冷媒流入口側が接続されている。冷媒分岐部13aは、水−冷媒熱交換器12から流出した液相冷媒の流れを分岐するものである。冷媒分岐部13aは、互いに連通する3つの冷媒流入出口を有する三方継手構造となるように形成されている。冷媒分岐部13aでは、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。
冷媒分岐部13aの一方の冷媒流出口には、第1膨張弁14aを介して、チラー15の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部13aの他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bを介して、室内蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。
第1膨張弁14aは、少なくとも暖房モード時において、冷媒分岐部13aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第1膨張弁14aは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第1膨張弁14aは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されている。
第1膨張弁14aの弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。第1膨張弁14aは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
又、第1膨張弁14aは、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁14aは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。
そして、第1膨張弁14aは、冷媒通路を閉塞することで、チラー15に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第1膨張弁14aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
第1膨張弁14aの出口には、チラー15の冷媒入口側が接続されている。チラー15は、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒と、低温側冷却水回路40を循環する冷却水とを熱交換させる熱交換器である。
チラー15は、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側冷却水回路40を循環する冷却水を流通させる水通路とを有している。従って、チラー15は、冷媒通路を流通する低圧冷媒と水通路を流通する冷却水との熱交換によって、低圧冷媒を蒸発させて冷却水から吸熱する吸熱器である。
図1に示すように、冷媒分岐部13aにおける他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bが接続されている。第2膨張弁14bは、少なくとも冷房モード時において、冷媒分岐部13aの他方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。
第2膨張弁14bは、第1膨張弁14aと同様に、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第2膨張弁14bは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能を有している。
つまり、第2膨張弁14bは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、第2膨張弁14bは、冷媒通路を閉塞することで、室内蒸発器16に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第2膨張弁14bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
第2膨張弁14bの出口には、室内蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器16は、少なくとも冷房モード時に、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風空気Wとを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気Wを冷却する蒸発器である。図1、図2に示すように、室内蒸発器16は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。
室内蒸発器16の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁17の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16における冷媒蒸発圧力を予め定めた基準圧力以上に維持する蒸発圧力調整部である。蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16の出口側の冷媒圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構によって構成されている。
尚、当該蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器16の着霜を抑制可能な基準温度(本実施形態では、1℃)以上に維持するように構成されている。
図1に示すように、チラー15の冷媒出口側には、冷媒合流部13bの一方の冷媒入口側が接続されている。又、蒸発圧力調整弁17の出口には、冷媒合流部13bの他方の冷媒入口側が接続されている。
冷媒合流部13bは、冷媒分岐部13aと同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒入口とし、残りの1つを冷媒出口としたものである。冷媒合流部13bは、蒸発圧力調整弁17から流出した冷媒の流れとチラー15から流出した冷媒の流れとを合流させる。そして、冷媒合流部13bの冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、当該車両用空調装置1における高温側冷却水回路20について説明する。高温側冷却水回路20は、熱媒体としての冷却水を循環させる高温側熱媒体回路である。高温側冷却水回路20における冷却水としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
高温側冷却水回路20には、水−冷媒熱交換器12の水通路、ラジエータ21、ヒータコア22、電気ヒータ26、高温側ポンプ27、第1リザーブタンク28、第2リザーブタンク29、流量調整部30等が配置されている。
ラジエータ21は、水−冷媒熱交換器12等で加熱された冷却水と図示しない外気ファンから送風された外気OAとを熱交換させて、冷却水の有する熱を外気OAに放熱させる熱交換器である。ラジエータ21は空気熱媒体熱交換器の一例である。
そして、ラジエータ21は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。上述した外気ファンの作動に伴って、外気OAは、車両前方側から後方へ流れ、ラジエータ21の熱交換部を通過する。又、車両走行時には、車両前方側から後方に向かってラジエータ21に走行風を当てることができる。
ヒータコア22は、水−冷媒熱交換器12等で加熱された冷却水と室内蒸発器16を通過した送風空気Wとを熱交換させて、送風空気Wを加熱する熱交換器である。図1、図2に示すように、ヒータコア22は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。
図1に示すように、高温側冷却水回路20では、ラジエータ21とヒータコア22は、高温側冷却水回路20における冷却水の流れに対して並列に接続されている。即ち、高温側冷却水回路20は、ラジエータ21を介して循環する冷却水と、ヒータコア22を介して循環する冷却水の何れもが共通して流れる共通流路23を有している。
共通流路23は、水−冷媒熱交換器12の水通路を含んで構成されている。そして、共通流路23の一端部側には、分岐部24が配置されている。分岐部24は、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手構造となるように形成されている。分岐部24では、3つの流入出口の内の1つを流入口とし、残りの2つを流出口としている。
分岐部24における冷却水の入口側には、共通流路23の一端部が接続されている。そして、分岐部24における一方の出口側には、第1電磁弁30a、第2リザーブタンク29を介して、ラジエータ21の入口側が接続されている。
分岐部24における他方の出口側には、第2電磁弁30bを介して、ヒータコア22の入口側が接続されている。即ち、分岐部24は、共通流路23の端部において、冷却水の流れをラジエータ21側へ向かう流れとヒータコア22側へ向かう流れに分岐させる。
そして、共通流路23の他端部側には、合流部25が配置されている。合流部25は、分岐部24と同様の三方継手構造となるように構成されており、3つの流入出口の内の1つを流出口とし、残りの2つを流入口としている。
合流部25における一方の入口側には、ラジエータ21の出口側が接続されている。そして、合流部25における他方の入口側には、ヒータコア22における出口側が接続されている。そして、合流部25における出口側には、共通流路23の他端部が接続されている。
従って、高温側冷却水回路20において、共通流路23は、ラジエータ21から流出した冷却水とヒータコア22から流出した冷却水が流入可能に接続されている。共通流路23において、合流部25は、冷却水の流れの最も上流側に位置する。そして、分岐部24は、共通流路23における冷却水の流れの最も下流側に位置する。
図1に示すように、共通流路23には、水−冷媒熱交換器12に加えて、電気ヒータ26、高温側ポンプ27、第1リザーブタンク28が配置されている。電気ヒータ26は、電力を供給されることによって発熱して共通流路23を流れる冷却水を加熱する加熱装置である。電気ヒータ26としては、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを用いることができる。電気ヒータ26は、制御装置70から出力される制御電圧によって、冷却水を加熱する為の熱量を任意に調整することができる。電気ヒータ26は、補助熱源の一例である。
そして、電気ヒータ26は、共通流路23における冷却水の流れに関して、分岐部24の上流側に配置されている。具体的には、電気ヒータ26における水通路の入口は、水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側に接続されている。電気ヒータ26における水通路の出口側は、分岐部24の入口側に接続されている。つまり、電気ヒータ26は、共通流路23において、水−冷媒熱交換器12と分岐部24の間に配置されている。
高温側ポンプ27は、高温側冷却水回路20における冷却水を循環させる為に圧送する水ポンプである。高温側ポンプ27は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。高温側ポンプ27は、熱媒体ポンプに相当する。
図1に示すように、高温側ポンプ27の吸込口は、第1リザーブタンク28を介して、合流部25の出口側に接続されている。高温側ポンプ27の吐出口は、水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側に接続されている。従って、高温側ポンプ27は、共通流路23において、冷却水の流れに関して水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。
第1リザーブタンク28は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部である。第1リザーブタンク28に余剰冷却水を貯留しておくことによって、冷却水回路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。又、第1リザーブタンク28は、冷却水回路内の冷却水量が不足した際に、冷却水を供給する為の冷却水供給口として機能する。
このように高温側冷却水回路20の共通流路23では、冷却水の流れに従って、合流部25→第1リザーブタンク28→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24の順に配置されている。
第2リザーブタンク29は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部であり、ラジエータ21の入口側に配置されている。第2リザーブタンク29も、冷却水回路内の冷却水量が不足した際に、冷却水を供給する為の冷却水供給口として機能する。
図1に示すように、高温側冷却水回路20は、分岐部24において、ラジエータ21側へ流れる冷却水の流量と、ヒータコア22側へ流れる冷却水の流量とを制御する為の流量調整部30を有している。具体的に、流量調整部30は、第1電磁弁30aと、第2電磁弁30bによって構成されている。
第1電磁弁30aは、冷却水流路の開度を調整可能に構成された電磁弁であり、分岐部24における一方の出口に接続されている。第1電磁弁30aは、全閉機能及び全開機能を有している。
第2電磁弁30bは、第1電磁弁30aと同様に、冷却水流路の開度を調整可能に構成された電磁弁であり、分岐部24における他方の出口に配置されている。そして、第2電磁弁30bは、全閉機能及び全閉機能を有している。
従って、流量調整部30は、第2電磁弁30bを全閉とした場合には、分岐部24を通過した冷却水をラジエータ21に流入させることができる。そして、流量調整部30は、第1電磁弁30aを全閉とした場合には、分岐部24を通過した冷却水をヒータコア22に流入させることができる。
そして、車両用空調装置1において、ラジエータ21の前方側には、シャッター装置31が配置されている。シャッター装置31は、枠状のフレームの開口部に、複数のブレードを回転可能に配置して構成されている。複数のブレードは、図示しない電動アクチュエータの作動によって連動して回転し、フレームの開口部における開口面積を調整する。これにより、シャッター装置31は、ラジエータ21の熱交換部を通過する外気OAの流量を調整することができるので、ラジエータ21の熱交換能力を調整することができる。
このように構成された高温側冷却水回路20は、流量調整部30の制御によって、冷却水の流れを切り替えることができる。流量調整部30にて第2電磁弁30bを全閉にした場合には、合流部25→第1リザーブタンク28→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→第1電磁弁30a→第2リザーブタンク29→ラジエータ21→合流部25の順で冷却水が循環する。この場合、高温側冷却水回路20の冷却水の有する熱を外気OAに放熱したり、着霜したラジエータ21を冷却水の熱によって除霜したりすることが可能となる。
一方、流量調整部30にて第1電磁弁30aを全閉にした場合には、合流部25→第1リザーブタンク28→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→第2電磁弁30b→ヒータコア22→合流部25の順で、冷却水が循環する。この場合、高温側冷却水回路20の冷却水が有する熱を用いて、ヒータコア22にて、送風空気Wを加熱することができ、車室内の暖房を実現することができる。
次に、車両用空調装置1における低温側冷却水回路40について説明する。低温側冷却水回路40は、熱媒体である冷却水を循環させる低温側熱媒体回路である。低温側冷却水回路40の冷却水としては、高温側冷却水回路20と同様の流体を採用できる。
低温側冷却水回路40には、チラー15の水通路、低温側ポンプ41、バッテリ42、充電器43、低温側三方弁44等が配置されている。チラー15における水通路の入口には、低温側ポンプ41の吐出口側が接続されている。低温側ポンプ41は、低温側冷却水回路40の冷却水をチラー15の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。低温側ポンプ41の基本的構成は、高温側ポンプ27と同様である。
チラー15における水通路の出口には、低温側三方弁44の流入出口の1つが接続されている。低温側三方弁44は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
低温側三方弁44の別の流入出口には、バッテリ42における水通路の入口側が接続されている。バッテリ42は、車両の各種電気機器に電力を供給するものであり、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)が採用される。バッテリ42の水通路に冷却水を通過させることで、バッテリ42の温度調整を行って、予め定められた温度範囲内にバッテリ42の温度を保つことができる。
そして、バッテリ42の水通路の出口側には、充電器43における水通路の出口側が接続されている。充電器43は、バッテリ42に電力を充電する充電器である。充電器43は、バッテリ42の充電の際に発熱する為、低温側冷却水回路40の冷却水によって、充電器43を冷却することができる。
充電器43における水通路の出口側は、低温側ポンプ41の吸込口に接続されている。従って、低温側冷却水回路40は、低温側ポンプ41のよって、冷却水を循環させることができる。
図1に示すように、低温側三方弁44のさらに別の流入出口は、ラジエータ21の出口と合流部25とを接続する冷却水配管に接続されている。又、充電器43における水通路の出口は、第1電磁弁30aの出口と第2リザーブタンク29の入口とを接続する冷却水配管と接続されている。即ち、第1実施形態に係る低温側冷却水回路40は、バッテリ42及び充電器43と、ラジエータ21及び第2リザーブタンク29とを、並列に接続している。
この為、低温側冷却水回路40は、低温側三方弁44の作動を制御することで、低温側冷却水回路40における冷却水の流れを切り替えることができる。例えば、低温側三方弁44は、チラー15側の流入出口とバッテリ42側の流入出口とを連通させると共に、残りの流入出口を閉塞させることができる。
この場合、低温側冷却水回路40における冷却水は、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れて、低温側冷却水回路40を循環する。この態様によれば、チラー15で冷却された冷却水を、バッテリ42及び充電器43に供給することができるので、バッテリ42及び充電器43を冷却することができる。
又、低温側三方弁44は、3つの流入出口を相互に連通させることができる。この態様によれば、低温側冷却水回路40における冷却水は、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44の順に流れ、低温側三方弁44で分岐して流れる。冷却水の流れにおける一方は、低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43の順に流れ、他方は、低温側三方弁44→ラジエータ21→第2リザーブタンク29の順に流れる。
そして、充電器43から流出した冷却水と、第2リザーブタンク29から流出した冷却水は、合流して低温側ポンプ41の吸込口へ到達する。この場合、低温側冷却水回路40は、バッテリ42及び充電器43の冷却と、ラジエータ21における外気OAとの熱交換を並行して実現することができる。
車両用空調装置1は、低温側冷却水回路40を利用することで、バッテリ42及び充電器43の冷却や温度調整を行うことができる。又、車両用空調装置1は、ラジエータ21を利用することで、外気OAを熱源として利用したり、外気OAに放熱したりすることができる。
続いて、車両用空調装置1における機器用冷却水回路50について説明する。機器用冷却水回路50は、熱媒体である冷却水を循環させる熱媒体回路である。機器用冷却水回路50の冷却水としては、上述した高温側冷却水回路20等と同様の流体を採用できる。
機器用冷却水回路50には、車載機器51の水通路、機器用ポンプ52、機器用三方弁53等が配置されている。車載機器51は、電気自動車に搭載され、作動時に発熱する機器によって構成されている。車載機器51には、例えば、インバータ、モータジェネレータ、トランスアクスル装置等が含まれる。
インバータは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。そして、モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。又、トランスアクスル装置は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギア(デフギア)を一体化した装置である。車載機器51における水通路は、熱媒体としての冷却水を流通させることで、それぞれの機器を冷却できるように形成されている。
そして、車載機器51における水通路の入口側には、機器用ポンプ52の吐出口が接続されている。機器用ポンプ52は、機器用冷却水回路50の冷却水を車載機器51の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。機器用ポンプ52の基本的構成は、高温側ポンプ27等と同様である。
図1に示すように、機器用ポンプ52の吸込口は、第1電磁弁30aの出口と第2リザーブタンク29の入口とを接続する冷却水配管と接続されている。より具体的には、低温側ポンプ41の吸込口から伸びる冷却水配管との接続部分と、第2リザーブタンク29の入口との間にて、機器用ポンプ52から伸びる冷却水配管が接続されている。
そして、車載機器51における水通路の出口側には、機器用三方弁53の流入出口の1つが接続されている。機器用三方弁53は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
機器用三方弁53における別の流入出口は、ラジエータ21の出口と合流部25とを接続する冷却水配管に接続されている。より具体的には、ラジエータ21の出口と、低温側三方弁44から伸びる冷却水配管との接続部分との間にて、機器用三方弁53から伸びる冷却水配管が接続されている。
従って、機器用冷却水回路50によれば、車載機器51を通過した冷却水をラジエータ21に供給することができ、冷却水で車載機器51から吸熱した熱を、外気OAに放熱することもできる。
ここで、機器用三方弁53のさらに別の流入出口は、バイパス流路54が接続されている。バイパス流路54は、冷却水の流れに関して、ラジエータ21及び第2リザーブタンク29を迂回させる為の冷却水流路である。バイパス流路54の他端側は、機器用ポンプ52の吸込口側に接続されている。
従って、機器用冷却水回路50は、機器用三方弁53の作動を制御することで、機器用冷却水回路50における冷却水の流れを切り替えることができる。例えば、機器用三方弁53は、車載機器51側の流入出口とバイパス流路54側の流入出口を連通させ、残りの流入出口を閉塞させることができる。この場合、機器用冷却水回路50の冷却水は、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順に流れて循環する。
又、機器用三方弁53は、バイパス流路54側の流入出口を閉塞して、残りの2つの流入出口を連通させることができる。この場合、機器用冷却水回路50の冷却水の流れは、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→ラジエータ21→第2リザーブタンク29→機器用ポンプ52の順に流れて循環する。
この態様によれば、車載機器51から吸熱した冷却水をラジエータ21に供給することができるので、車載機器51で生じた熱を外気OAに放熱することができる。つまり、車両用空調装置1は、機器用冷却水回路50を利用することで、車載機器51の冷却や温度調整を行うことができる。
次に、車両用空調装置1を構成する室内空調ユニット60について、図2を参照しつつ説明する。室内空調ユニット60は、車両用空調装置1において、冷凍サイクル10によって温度調整された送風空気Wを車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット60は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット60は、その外殻を形成するケーシング61の内部に形成される空気通路に、送風機62、室内蒸発器16、ヒータコア22等を収容して構成されている。ケーシング61は、車室内に送風される送風空気Wの空気通路を形成している。ケーシング61は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
図2に示すように、ケーシング61の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置63が配置されている。内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。
内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置63の送風空気流れ下流側には、送風機62が配置されている。送風機62は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機62は、内外気切替装置63を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機62は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
送風機62の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器16及びヒータコア22が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器16は、ヒータコア22よりも送風空気流れ上流側に配置されている。
又、ケーシング61内には、冷風バイパス通路65が形成されている。冷風バイパス通路65は、室内蒸発器16を通過した送風空気Wを、ヒータコア22を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
室内蒸発器16の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア22の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア64が配置されている。エアミックスドア64は、室内蒸発器16を通過後の送風空気Wのうち、ヒータコア22を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整するものである。
エアミックスドア64は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号により、その作動が制御される。
ヒータコア22の送風空気流れ下流側には、混合空間66が設けられている。混合空間66では、ヒータコア22にて加熱された送風空気Wと冷風バイパス通路65を通過してヒータコア22にて加熱されていない送風空気Wとが混合される。
更に、ケーシング61の送風空気流れ最下流部には、混合空間66にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア64が、ヒータコア22を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間66にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、デフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の制御系について、図3を参照しつつ説明する。制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
そして、当該制御装置70は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。制御対象機器には、圧縮機11と、第1膨張弁14aと、第2膨張弁14bと、電気ヒータ26と、高温側ポンプ27と、第1電磁弁30aと、第2電磁弁30bと、シャッター装置31が含まれている。更に、制御対象機器には、低温側ポンプ41と、低温側三方弁44と、機器用ポンプ52と、機器用三方弁53と、送風機62等が含まれている。
図3に示すように、制御装置70の入力側には、空調制御用のセンサ群が接続されている。空調制御用のセンサ群は、内気温センサ72a、外気温センサ72b、日射センサ72c、高圧センサ72d、蒸発器温度センサ72e、空調風温度センサ72fを含んでいる。制御装置70には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ72aは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ72bは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ72cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ72dは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14a或いは第2膨張弁14bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
蒸発器温度センサ72eは、室内蒸発器16における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ72fは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
そして、制御装置70の入力側には、高温側冷却水回路20、低温側冷却水回路40、機器用冷却水回路50の各冷却水回路における冷却水の温度を検出する為に、複数の冷却水温度センサが接続されている。複数の冷却水温度センサには、第1冷却水温度センサ73a〜第5冷却水温度センサ73eが含まれている。
第1冷却水温度センサ73aは、共通流路23が接続された分岐部24の入口部分に配置されており、共通流路23から流出する冷却水の温度を検出する。第2冷却水温度センサ73bは、ラジエータ21の入口部分に配置されており、ラジエータ21を通過する冷却水の温度を検出する。第3冷却水温度センサ73cは、ヒータコア22の入口部分に配置されており、ヒータコア22を通過する冷却水の温度を検出する。
第4冷却水温度センサ73dは、チラー15における水通路の出口部分に配置されており、チラー15から流出する冷却水の温度を検出する。第5冷却水温度センサ73eは、車載機器51における水通路の出口部分に配置されており、車載機器51の水通路から流出する冷却水の温度を検出する。
車両用空調装置1は、第1冷却水温度センサ73a〜第5冷却水温度センサ73eの検出結果を参照して、高温側冷却水回路20、低温側冷却水回路40、機器用冷却水回路50における冷却水の流れを切り替える。これにより、車両用空調装置1は、熱媒体である冷却水を用いて、車両における熱を管理することができる。
更に、制御装置70の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル71が接続されている。操作パネル71には、複数の操作スイッチが配置されている。従って、制御装置70には、この複数の操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル71における各種操作スイッチとしては、オートスイッチ、冷房スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定或いは解除する際に操作される。冷房スイッチは、車室内の冷房を行うことを要求する際に操作される。風量設定スイッチは、送風機62の風量をマニュアル設定する際に操作される。そして、温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。
尚、制御装置70では、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されているが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。例えば、制御装置70のうち、流量調整部30を構成する第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bの作動を制御する構成は、流量調整制御部70aである。
続いて、第1実施形態における車両用空調装置1の作動について説明する。上述したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置70に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
より具体的には、制御プログラムでは、空調制御用のセンサ群によって検出された検出信号および操作パネル71から出力される操作信号に基づいて、車室内へ送風させる送風空気の目標吹出温度TAOを算出する。そして、目標吹出温度TAOおよび検出信号に基づいて、運転モードを切り替える。以下に、複数の運転モードの内、冷房モードにおける作動と、暖房モードにおける作動と、除霜モードにおける作動について説明する。
(a)冷房モード
冷房モードは、室内蒸発器16により送風空気Wを冷却して車室内に送風する運転モードである。以下の説明では、冷房モードの作動態様として、バッテリ42等の冷却を行いつつ、車室内の冷房を行う場合について説明する。
この場合の冷房モードでは、制御装置70が、第1膨張弁14a、第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。従って、冷房モードの冷凍サイクル10では、先ず、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aまで流れる。そして、冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15へ流れ、冷媒分岐部13aの他方側→第2膨張弁14b→室内蒸発器16→蒸発圧力調整弁17へ流れる。チラー15から流出した冷媒及び蒸発圧力調整弁17から流出した冷媒は冷媒合流部13bにて合流した後、圧縮機11の順で流れて循環する。
つまり、冷房モードでは、チラー15へ冷媒を流入させ、低温側冷却水回路40の冷却水を冷却すると共に、室内蒸発器16へ冷媒を流入させ、送風空気Wを冷却する冷媒回路に切り替えられる。
そして、このサイクル構成で、制御装置70は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
例えば、制御装置70は、蒸発器温度センサ72eによって検出された冷媒蒸発温度Tefinが目標蒸発温度TEOとなるように圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置70に記憶された冷房モード用の制御マップを参照して決定される。
具体的には、この制御マップでは、空調風温度センサ72fによって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って目標蒸発温度TEOを上昇させる。さらに、目標蒸発温度TEOは、室内蒸発器16の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)の値に決定される。
そして、制御装置70は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置70に記憶された制御マップを参照して送風機62の制御電圧(送風能力)を決定する。具体的には、この制御マップでは、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)及び極高温域(最大暖房域)で送風機62の送風量を最大とし、中間温度域に近づくに伴って送風量を減少させる。又、制御装置70は、冷風バイパス通路65を全開としてヒータコア22側の通風路を閉塞するように、エアミックスドア64の作動を制御する。
高温側冷却水回路20について、制御装置70は、予め定めた冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ27の作動を制御する。又、制御装置70は、流量調整部30において、第1電磁弁30aを全開状態にすると共に、第2電磁弁30bを全閉状態にするように制御する。
これにより、高温側冷却水回路20の冷却水は、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24→第1電磁弁30a→第2リザーブタンク29→ラジエータ21→合流部25→高温側ポンプ27の順に循環する。
そして、低温側冷却水回路40については、制御装置70は、冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ41の作動を制御する。又、制御装置70は、低温側三方弁44の作動を制御して、チラー15側の流入出口とバッテリ42側の流入出口とを連通させると共に、残りの流入出口を閉塞させる。
これにより、低温側冷却水回路40における冷却水は、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に循環する。
機器用冷却水回路50では、制御装置70は、予め定めた冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、機器用ポンプ52の作動を制御する。又、制御装置70は、機器用三方弁53の作動を制御して、車載機器51側の流入出口とバイパス流路54側の流入出口とを連通させると共に、残りの流入出口を閉塞させる。これにより、機器用冷却水回路50における冷却水は、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で循環する。
このように、冷房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12へ流入する。水−冷媒熱交換器12では、高温側ポンプ27が作動しているので、高圧冷媒と高温側冷却水回路20の冷却水が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、冷却水が加熱される。
そして、高温側冷却水回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水が、分岐部24及び第1電磁弁30aを介して、ラジエータ21へ流入する。ラジエータ21へ流入した冷却水は、外気OAと熱交換して放熱する。これにより、高温側冷却水回路20の冷却水が冷却される。ラジエータ21にて冷却された冷却水は、高温側ポンプ27に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
一方、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路にて冷却された高圧冷媒は、冷媒分岐部13aを介して、第1膨張弁14aへ流入して減圧される。第1膨張弁14aで減圧された低圧冷媒は、チラー15に流入して、チラー15の水通路を流れる冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温側冷却水回路40の冷却水が冷却される。チラー15から流出した低圧冷媒は、冷媒合流部13bを介して、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
そして、冷媒分岐部13aの他方から流出した高圧冷媒は、第2膨張弁14bへ流入して減圧される。第2膨張弁14bの絞り開度は、室内蒸発器16の出口側の冷媒の過熱度が概ね3℃となるように調整される。
第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器16へ流入する。室内蒸発器16へ流入した冷媒は、送風機62から送風された送風空気Wから吸熱して蒸発し、送風空気Wを冷却する。室内蒸発器16から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁17及び冷媒合流部13bを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器16にて冷却された送風空気Wを車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
ここで、低温側冷却水回路40では、チラー15にて冷却された冷却水が、低温側三方弁44を介して、バッテリ42、充電器43に流入する。バッテリ42、充電器43の水通路において、冷却水は、バッテリ42及び充電器43から吸熱することで、バッテリ42及び充電器43を冷却する。充電器43から流出した冷却水は、低温側ポンプ41に吸入されて再びチラー15の水通路へ圧送される。
つまり、車両用空調装置1によれば、送風空気Wを冷却する際に吸熱した熱、バッテリ42、充電器43の冷却に際して吸熱した熱を、チラー15によって、低温側冷却水回路40の冷却水から低圧冷媒に吸熱させることができる。
そして、車両用空調装置1は、冷凍サイクル10にて、チラー15、室内蒸発器16で吸熱した熱を汲み上げて、水−冷媒熱交換器12で高温側冷却水回路20の冷却水に放熱して、冷却水を加熱することができる。車両用空調装置1は、高温側冷却水回路20の冷却水が有する熱を、ラジエータ21にて外気OAへ放熱させることができる。
尚、この冷房モードにおいては、高温側冷却水回路20にて、冷却水の有する熱を外気OAへ放熱させる構成である為、電気ヒータ26を作動させていない。電気ヒータ26を必要に応じて作動させても良いことは言うまでもない。
(b)暖房モード
暖房モードは、ヒータコア22により送風空気Wを加熱して車室内に送風する運転モードである。以下の説明では、暖房モードの作動態様として、外気OA及びバッテリ42等を暖房熱源として利用して、車室内の暖房を行う場合について説明する。
この場合の暖房モードでは、制御装置70が、第1膨張弁14aを所定の絞り開度で開き、第2膨張弁14bを全閉状態とする。従って、暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13a→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、暖房モードでは、チラー15へ冷媒を流入させ、低温側冷却水回路40の冷却水から吸熱した熱を汲み上げて、送風空気Wを加熱する為に利用可能な冷媒回路に切り替えられる。このサイクル構成で、制御装置70は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
例えば、制御装置70は、高圧センサ72dによって検出された高圧冷媒圧力Pdが目標高圧PCOとなるように圧縮機11の作動を制御する。目標高圧PCOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置70に記憶された暖房モード用の制御マップを参照して決定される。具体的には、この制御マップでは、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って目標高圧PCOを上昇させる。
そして、制御装置70は、冷房モードと同様に、送風機62の制御電圧(送風能力)を決定する。又、制御装置70は、ヒータコア22側の通風路を全開として冷風バイパス通路65を閉塞するように、エアミックスドア64の作動を制御する。
高温側冷却水回路20について、制御装置70は、予め定めた暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ27を作動させる。又、制御装置70は、流量調整部30において、第1電磁弁30aを全閉状態にすると共に、第2電磁弁30bを全開状態にするように制御する。
又、制御装置70は、目標吹出温度TAO、高温側冷却水回路20における冷却水温度に基づいて、電気ヒータ26の発熱量を制御する。具体的には、ヒータコア22に流入する冷却水の温度が、目標吹出温度TAOを実現する為に不足する場合には、それを補うように、電気ヒータ26の発熱量を制御する。
これにより、高温側冷却水回路20の冷却水は、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24→第2電磁弁30b→ヒータコア22→合流部25→高温側ポンプ27の順に循環する。
そして、低温側冷却水回路については、制御装置70は、暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ41の作動を制御する。又、制御装置70は、低温側三方弁44の作動を制御して、3つの流入出口の全てを連通させる。これにより、低温側冷却水回路40における冷却水は、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44の順に流れる。その後、冷却水の流れの一方は、低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れ、冷却水の流れの他方は、低温側三方弁44→ラジエータ21→第2リザーブタンク29→低温側ポンプ41の順に流れる。
ここで、低温側冷却水回路40の冷却水は、バッテリ42、充電器43の水通路を通過する際に、バッテリ42等に生じた熱によって加熱される。又、低温側冷却水回路40の冷却水は、ラジエータ21を通過する場合には、外気OAとの熱交換によって外気OAから吸熱する。つまり、車両用空調装置1は、暖房モードにおいて、バッテリ42、充電器43や外気OAを暖房用の熱源として利用することができる。
機器用冷却水回路50では、制御装置70は、予め定めた暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、機器用ポンプ52の作動を制御する。又、制御装置70は、機器用三方弁53の作動を制御して、車載機器51側の流入出口とバイパス流路54側の流入出口とを連通させると共に、残りの流入出口を閉塞させる。これにより、機器用冷却水回路50における冷却水は、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で循環する。
このような暖房モードの場合、低温側冷却水回路40の冷却水は、ラジエータ21を通過する際に、外気OAから吸熱することができる。そして、バッテリ42及び充電器43の水通路を通過する際に、冷却水は、バッテリ42及び充電器43に発生している熱を吸熱し、バッテリ42及び充電器43を冷却することができる。
そして、暖房モードの冷凍サイクル10において、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒は、冷媒分岐部13aを介して、第1膨張弁14aへ流入し減圧される。第1膨張弁14aの絞り開度は、チラー15の出口側の冷媒が気液二相状態となるように調整される。低圧冷媒は、チラー15にて低温側冷却水回路40の冷却水が熱交換することで蒸発して、低温側冷却水回路40の冷却水から吸熱することができる。
低温側冷却水回路40の冷却水から吸熱した冷媒は、圧縮機11で圧縮され、高圧冷媒として水−冷媒熱交換器12へ吐出される。水−冷媒熱交換器12では、高温側ポンプ27が作動しているので、高圧冷媒と高温側冷却水回路20の冷却水が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮する。これにより、高圧冷媒の熱によって、高温側冷却水回路20の冷却水が加熱される。
そして、高温側冷却水回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水が、第2電磁弁30bを介して、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した冷却水は、エアミックスドア64がヒータコア22側の通風路を全開としているので、室内蒸発器16を通過した送風空気Wと熱交換して放熱する。
これにより、暖房モードでは、送風空気Wが加熱されて、送風空気Wの温度が目標吹出温度TAOに近づく。ヒータコア22から流出した冷却水は、高温側ポンプ27に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
従って、暖房モードでは、車両用空調装置1は、ヒータコア22によって送風空気Wを加熱して車室内へ吹き出すことで、車室内の暖房を行うことができる。即ち、車両用空調装置1は、暖房モードにおいて、低温側冷却水回路40にてバッテリ42、充電器43、外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、送風空気Wの加熱に利用することができる。
そして、暖房モードの車両用空調装置1では、補助熱源としての電気ヒータ26によって、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、ヒータコア22で目標吹出温度TAOを実現する為に不足する場合でも、電気ヒータ26による加熱で不足分を補うことができる。
図1に示すように、電気ヒータ26は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、分岐部24と水−冷媒熱交換器12との間に配置されている。
この為、高温側冷却水回路20では、補助熱源である電気ヒータ26からヒータコア22へと向かう流路における機器及び長さをできるだけ少なくすることができ、電気ヒータ26で加えられた熱を少ないロスでヒータコア22へ移動させることができる。換言すると、車両用空調装置1は、電気ヒータ26による熱を、効率よく車室内の暖房に活用することができる。
(c)除霜モード
除霜モードとは、ラジエータ21が着霜した場合に、ラジエータ21に着いた霜を除去する為の運転モードである。ラジエータ21が着霜した場合、暖房モード時において、外気OAからの吸熱量が低下し、暖房効率が低下してしまうことが考えられる。
例えば、暖房モードにおいて、バッテリ42の発熱が多くなる車両の運転条件を満たした場合、バッテリ42の温度を予め定められた温度範囲内に保つ為に、バッテリ42を充分に冷却することが考えられる。この場合、低温側冷却水回路40の冷却水の温度を充分に下げる為に、チラー15における冷媒蒸発温度を0℃よりも低下させる。
こうして、非常に低い温度に冷却された低温側冷却水回路40の冷却水は、バッテリ42、充電器43に並列に接続されたラジエータ21にも流入して、外気OAと熱交換して吸熱する。この時、外気OAが低温且つ高湿度である場合には、ラジエータ21の表面が着霜してしまうことが想定される。
このような場合に生じるラジエータ21の着霜に対応する為に、車両用空調装置1は、除霜モードを実行する。具体的には、除霜モードの一例として、バッテリ42の冷却を行いつつ、ラジエータ21の除霜を行う態様について説明する。
この場合の除霜モードでは、制御装置70が、少なくとも第1膨張弁14aを所定の絞り開度で開く。従って、除霜モードの冷凍サイクル10では、少なくとも、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13a→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
尚、除霜モードに際して、第2膨張弁14bの開度については、所定の絞り開度であっても良いし、全閉状態としても良い。この点は、除霜モードにおいて、室内蒸発器16による送風空気Wの冷却の要否に基づいて決定される。
そして、制御装置70は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。圧縮機11の冷媒吐出能力、送風機62の送風能力、エアミックスドア64の開度については、除霜モードにおける空調動作の要否に応じて適宜決定される。
高温側冷却水回路20について、制御装置70は、予め定めた除霜モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ27を作動させる。又、制御装置70は、流量調整部30において、少なくとも第1電磁弁30aを全開状態にするように制御する。
尚、第2電磁弁30bの開度に関しては、予め定められた開度であっても良いし、全閉状態であっても良い。第2電磁弁30bの開度は、送風空気Wの加熱の要否に応じて、適宜定められる。この点、第2電磁弁30bの開度は、第1電磁弁30aの開度よりも小さいことが望ましい。除霜モードでは、ヒータコア22による暖房能力よりも、ラジエータ21の除霜が優先されるからである。
そして、除霜モードにおいては、制御装置70は、高温側冷却水回路20における各部の冷却水温度に基づいて、電気ヒータ26の発熱量を制御する。具体的には、ラジエータ21に流入する冷却水の温度が、ラジエータ21を除霜する為に必要な温度に対して不足する場合には、それを補うように、電気ヒータ26の発熱量を制御する。
これにより、高温側冷却水回路20の冷却水は、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24→第1電磁弁30a→第2リザーブタンク29→ラジエータ21→合流部25→高温側ポンプ27の順に循環する。
そして、低温側冷却水回路については、制御装置70は、除霜モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ41の作動を制御する。又、制御装置70は、低温側三方弁44の作動を制御して、チラー15側の流入出口とバッテリ42側の流入出口とを連通させると共に、残りの流入出口を閉塞させる。これにより、低温側冷却水回路40における冷却水は、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に循環する。
ここで、低温側冷却水回路40の冷却水は、バッテリ42、充電器43の水通路を通過する際に、バッテリ42等に生じた熱によって加熱される。又、低温側冷却水回路40の冷却水は、チラー15を通過する場合には、低圧冷媒に吸熱される。
車両用空調装置1によれば、低圧冷媒で吸熱された熱は冷凍サイクル10によって汲み上げられ、水−冷媒熱交換器12において高温側冷却水回路20の冷却水の加熱に用いられる。つまり、車両用空調装置1は、バッテリ42、充電器43の排熱を、ラジエータ21の除霜に活用することができる。
機器用冷却水回路50では、制御装置70は、予め定めた除霜モード時の水圧送能力を発揮するように、機器用ポンプ52の作動を制御する。又、制御装置70は、機器用三方弁53の作動を制御して、車載機器51側の流入出口とバイパス流路54側の流入出口とを連通させると共に、残りの流入出口を閉塞させる。これにより、機器用冷却水回路50における冷却水は、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で循環する。
このような除霜モードの場合、低温側冷却水回路40の冷却水は、バッテリ42及び充電器43の水通路を通過する際に、バッテリ42及び充電器43に発生している熱を吸熱し、バッテリ42及び充電器43を冷却することができる。
そして、除霜モードの冷凍サイクル10では、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒は、冷媒分岐部13aを介して、第1膨張弁14aへ流入し減圧される。低圧冷媒は、チラー15にて低温側冷却水回路40の冷却水が熱交換することで蒸発し、低温側冷却水回路40の冷却水から吸熱する。
低温側冷却水回路40の冷却水から吸熱した冷媒は、圧縮機11で圧縮され、高圧冷媒として水−冷媒熱交換器12へ吐出される。水−冷媒熱交換器12では、高温側ポンプ27が作動しているので、高圧冷媒と高温側冷却水回路20の冷却水が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮する。これにより、高圧冷媒の熱によって、高温側冷却水回路20の冷却水が加熱される。
そして、高温側冷却水回路20では、水−冷媒熱交換器12等にて加熱された冷却水が、第1電磁弁30aを介して、ラジエータ21へ流入する。ラジエータ21に加熱された冷却水が流入することで、ラジエータ21に着いた霜が冷却水の有する熱によって融解して除去される。
従って、除霜モードでは、車両用空調装置1は、加熱された高温側冷却水回路20の冷却水をラジエータ21に流入させることで、ラジエータ21の除霜を行うことができ、暖房能力を回復させることができる。
又、車両用空調装置1は、除霜モードにおいて、低温側冷却水回路40にてバッテリ42、充電器43から吸熱した熱を冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、ラジエータ21の除霜に利用することができる。
そして、除霜モードの車両用空調装置1では、補助熱源としての電気ヒータ26によって、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、ラジエータ21の除霜を実現する為に不足する場合でも、電気ヒータ26による加熱で不足分を補うことができる。
図1に示すように、電気ヒータ26は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、水−冷媒熱交換器12との間に配置されている。
この為、高温側冷却水回路20では、補助熱源である電気ヒータ26からラジエータ21へと向かう流路における機器及び長さをできるだけ少なくすることができ、電気ヒータ26で加えられた熱を少ないロスでラジエータ21へ移動させることができる。換言すると、車両用空調装置1は、電気ヒータ26による熱を、効率よくラジエータ21の除霜に活用することができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル10、各冷却水回路の動作を切り替えることで、複数の運転モードの内、冷房モード、暖房モード、除霜モードを実現することができる。これにより、車両用空調装置1は、車室内の快適な空調と、各種機器の温度調整を行うことができる。
図1に示すように、第1実施形態に係る車両用空調装置1において、高温側冷却水回路20は、共通流路23において分岐部24の上流側に、補助熱源としての電気ヒータ26を有している。
又、高温側冷却水回路20において、共通流路23に対して、ラジエータ21とヒータコア22は並列に接続されている。そして、高温側冷却水回路20における冷却水の流れは、流量調整部30によって、ラジエータ21へ向かう流れと、ヒータコア22へ向かう流れに切り替えることができる。
従って、車両用空調装置1は、補助熱源である電気ヒータ26の熱を、ヒータコア22に移動させることができるので、電気ヒータ26を車室内の暖房に関する補助熱源として用いることができる。又、車両用空調装置1は、電気ヒータ26の熱をラジエータ21に移動させることができるので、電気ヒータ26の熱をラジエータ21の除霜に関する補助熱源として利用することができる。
そして、高温側冷却水回路20の共通流路23において、電気ヒータ26は、分岐部24の上流側に配置されている。具体的には、電気ヒータ26は、共通流路23において、分岐部24と水−冷媒熱交換器12の間に配置されている。
これにより、高温側冷却水回路20の冷却水をラジエータ21側へ流入させる場合と、ヒータコア22側へ流入させる場合の何れにおいても、電気ヒータ26からの流路長さや通過する機器の数を少なく抑えることができる。即ち、車両用空調装置1によれば、補助熱源として電気ヒータ26を用いる場合に、暖房補助に用いる場合と除霜補助に用いる場合の何れにおいても、熱のロスを抑えて効率よく利用することができる。
図1に示すように、高温側冷却水回路20の共通流路23において、高温側ポンプ27は、共通流路23における冷却水の流れに関して、水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。この為、高温側冷却水回路20の冷却水をラジエータ21側へ流入させる場合と、ヒータコア22側へ流入させる場合の何れについても、高温側ポンプ27の必要出力を低く抑えることができる。即ち、車両用空調装置1は、高温側ポンプ27に要するコスト及び動力を低減することができる。
又、高温側冷却水回路20において、冷却水と外気OAとを熱交換させるラジエータ21が配置されている。冷房モードでは、ラジエータ21で冷却水の熱を外気OAへ放熱することができる。暖房モードにおいては、ラジエータ21によって外気OAから吸熱することで、外気OAを暖房熱源として利用することができる。
そして、除霜モードを実現することによって、着霜したラジエータ21を除霜することができ、外気OAを暖房熱源として利用する際の効率を回復させることができ、車両用空調装置1の暖房能力を向上させることができる。
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第2実施形態について、図4、図5を参照しつつ説明する。第2実施形態では、第1実施形態におけるラジエータ21に替えて、複合型熱交換器35が採用されている。その他の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
複合型熱交換器35は、高温側冷却水回路20の冷却水と外気OAとを熱交換させる放熱部35aと、低温側冷却水回路40等を循環する冷却水と外気OAとを熱交換させる吸熱部とを一体的に構成した熱交換器である。複合型熱交換器35の放熱部35a及び吸熱部35bは、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造になっている。
ここで、熱媒体(即ち、冷却水)と、空気(即ち、外気)とを熱交換させるタンクアンドチューブ型の熱交換器は、熱媒体を流通させる複数のチューブと、複数のチューブを流通する熱媒体の分配或いは集合を行う為のタンク等を有している。そして、一定方向に互いに間隔を開けて積層配置されたチューブを流通する熱媒体と、隣り合うチューブ間に形成された空気通路を流通する空気とを熱交換させる構造になっている。
図5に示すように、放熱部35aにおけるチューブ35atの間に形成される空気通路と、吸熱部35bにおけるチューブ35btの間に形成される空気通路には、熱交換フィン35cが配置されている。熱交換フィン35cは、一つの薄板状の金属部材により構成されている。熱交換フィン35cは、放熱部35aにおける冷却水と外気OAとの熱交換を促進させると共に、吸熱部35bにおける冷却水と外気OAとの熱交換を促進させる部材である。
そして、複合型熱交換器35では、熱交換フィン35cが、放熱部35aのチューブ35atと、吸熱部35bのチューブ35btの双方にろう付け接合されており、放熱部35aと吸熱部35bを連結している。これにより、複合型熱交換器35では、熱交換フィン35cを介して、放熱部35a側の冷却水と、吸熱部35b側の冷却水との間における伝熱可能に構成されている。熱交換フィン35cは伝熱部の一例である。
図4に示すように、複合型熱交換器35における放熱部35aの入口側には、第1電磁弁30aを介して、分岐部24における一方の出口側が接続されている。そして、放熱部35aの出口側には、合流部25における一方の出口側が接続されている。
そして、複合型熱交換器35における吸熱部35bの入口側には、第2リザーブタンク29を介して、低温側ポンプ41の吸込口側及び充電器43における水通路の出口側が接続されている。一方、吸熱部35bの出口側には、低温側三方弁44の流入出口の1つが接続されている。
第2実施形態に係る車両用空調装置1において、放熱部35aは吸熱部35bに対して車両前方側に配置されている。換言すると、放熱部35aは、外気OAの流れに関して、吸熱部35bの上流側に配置されている。
尚、図4に示すように、機器用冷却水回路50の冷却水配管は、第2リザーブタンク29の入口側の冷却水配管に対して接続されている。又、吸熱部35bと低温側三方弁44とを接続する冷却水配管に対して、機器用三方弁53の流入出口に接続された冷却水配管が接続されている。
次に、このように構成された第2実施形態に係る車両用空調装置1において、冷房モード、暖房モード、除霜モードの各運転モードの一例について説明する。
(a)冷房モード
第2実施形態に係る冷房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。そして、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの他方側→第2膨張弁14b→室内蒸発器16→蒸発圧力調整弁17→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が並列に構成される。
そして、冷房モードの高温側冷却水回路20では、第1実施形態と同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24→第1電磁弁30a→複合型熱交換器35の放熱部35a→合流部25→第1リザーブタンク28→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
又、冷房モードの低温側冷却水回路40では、第1実施形態と同様に、各構成機器の作動が制御される。この為、低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順で循環する冷却水回路が構成される。
そして、冷房モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
このように、第2実施形態における冷房モードにおいても、第1実施形態と同様に、室内蒸発器16にて送風空気Wを冷却することができるので、車室内の冷房を実現することができる。そして、チラー15により低温側冷却水回路40の冷却水の冷却することができるので、バッテリ42及び充電器43の冷却を実現することができる。
(b)暖房モード
第2実施形態に係る暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。
そして、暖房モードの高温側冷却水回路20では、第1実施形態の暖房モードと同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24→第2電磁弁30b→ヒータコア22→合流部25→第1リザーブタンク28→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
又、暖房モードの低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れる冷却水回路が構成される。そして、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→複合型熱交換器35の吸熱部35b→第2リザーブタンク29→低温側ポンプ41の順で循環する冷却水回路が並列に構成される。
そして、暖房モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
従って、暖房モードでは、車両用空調装置1は、ヒータコア22によって送風空気Wを加熱して車室内へ吹き出すことで、車室内の暖房を行うことができる。即ち、車両用空調装置1は、暖房モードにおいて、低温側冷却水回路40にてバッテリ42、充電器43、外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、送風空気Wの加熱に利用することができる。
そして、暖房モードの車両用空調装置1では、補助熱源としての電気ヒータ26によって、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、ヒータコア22で目標吹出温度TAOを実現する為に不足する場合でも、電気ヒータ26による加熱で不足分を補うことができる。
又、電気ヒータ26は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、水−冷媒熱交換器12との間に配置されている。この為、高温側冷却水回路20では、補助熱源である電気ヒータ26からヒータコア22へと向かう流路における機器及び長さをできるだけ少なくすることができるので、電気ヒータ26による熱を、効率よく車室内の暖房に活用することができる。
(c)除霜モード
第2実施形態に係る除霜モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。
そして、除霜モードの高温側冷却水回路20では、第1実施形態の除霜モードと同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24→第1電磁弁30a→複合型熱交換器35の放熱部35a→合流部25→第1リザーブタンク28→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
又、除霜モードの低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れる冷却水回路が構成される。
そして、除霜モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
従って、除霜モードでは、低温側冷却水回路40にてバッテリ42、充電器43から吸熱した熱を冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、複合型熱交換器35における吸熱部35bの除霜に利用することができる。
複合型熱交換器35は、放熱部35aと吸熱部35bは、熱交換フィンによって連結されており、熱移動可能に構成されている。従って、加熱された高温側冷却水回路20の冷却水を、複合型熱交換器35の放熱部35aに流入させることで、着霜している吸熱部35bの除霜を行うことができ、暖房能力を回復させることができる。
図4に示すように、複合型熱交換器35において、放熱部35aは、外気OAの流れ方向に関して吸熱部35bの上流側に配置されている。この為、放熱部35aに流入した高温側冷却水回路20の冷却水が有する熱を、外気OAを介して、着霜している吸熱部35bに伝達することができる。これにより、第2実施形態に係る除霜モードによれば、熱交換フィンによる熱伝達に加えて、外気OAを介した熱伝達も行われる為、より迅速に吸熱部35bの除霜を行うことができる。
そして、除霜モードの車両用空調装置1では、補助熱源としての電気ヒータ26によって、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、複合型熱交換器35における吸熱部35bの除霜を実現する為に不足する場合でも、電気ヒータ26による加熱で不足分を補うことができる。
図4に示すように、電気ヒータ26は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、水−冷媒熱交換器12との間に配置されている。
この為、高温側冷却水回路20では、補助熱源である電気ヒータ26から複合型熱交換器35の吸熱部35bへと向かう流路における機器及び長さをできるだけ少なくすることができ、電気ヒータ26による熱を、効率よく吸熱部35bの除霜に活用できる。
尚、第2実施形態に係る除霜モードの機器用冷却水回路50では、機器用三方弁53の作動を制御して、冷却水回路の回路構成を変更しても良い。即ち、機器用冷却水回路50において、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→複合型熱交換器35の吸熱部35b→第2リザーブタンク29→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路としてもよい。
この回路構成とすることによって、着霜している複合型熱交換器35の吸熱部35bに対して、車載機器51の排熱を吸熱した冷却水を供給することができる為、車載機器51の排熱を、吸熱部35bの除霜に用いることができる。
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、放熱部35a及び吸熱部35bを有する複合型熱交換器35を用いた場合であっても、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
又、第2実施形態に係る複合型熱交換器35において、放熱部35aは、熱交換フィンによって吸熱部35bに対して熱移動可能に連結されている。従って、除霜モードにおいて、放熱部35aに流入した冷却水の熱を、熱交換フィンを介して、着霜している吸熱部35bに伝達することができる。
そして、第2実施形態においては、複合型熱交換器35の放熱部35aは、外気OAの流れに関して、吸熱部35bの上流側に配置されている。従って、放熱部35aに流入した冷却水の熱を、外気OAを介して着霜している吸熱部35bに伝達することができる。
(第3実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第3実施形態について、図6を参照しつつ説明する。第3実施形態においては、第2実施形態と同様に、ラジエータ21の代わりに複合型熱交換器35が採用されている。
第3実施形態においては、複合型熱交換器35における放熱部35a、吸熱部35bの配置が第2実施形態と相違している。その他の点については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明は省略する。
図6に示すように、第3実施形態に係る車両用空調装置1において、複合型熱交換器35の吸熱部35bは、放熱部35aの前方側に配置されている。換言すると、吸熱部35bは、外気OAの流れ方向に関して放熱部35aの上流側に配置されている。放熱部35aに対する冷却水配管の接続態様および吸熱部35bに対する冷却水配管の接続態様は、上述した第2実施形態と同様である。
第3実施形態に係る車両用空調装置1は、冷房モード、暖房モード、除霜モードを実現する為に、第2実施形態と同様の内容で各構成機器の作動を制御する。この点、第2実施形態にて既に説明済みである為、再度の説明を省略する。
以上説明したように、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、複合型熱交換器35を用いた場合であっても、第1実施形態及び第2実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態及び第2実施形態と同様に得ることができる。
特に、複合型熱交換器35において、吸熱部35bが外気OAの流れ方向に関して放熱部35aの上流側に配置した場合でも、共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
第3実施形態に係る複合型熱交換器35においても、放熱部35aは、熱交換フィンによって吸熱部35bに対して熱移動可能に連結されている。従って、除霜モードで放熱部35aに流入した冷却水の熱を、熱交換フィンを介して、着霜している吸熱部35bに伝達することができる。
(第4実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第4実施形態について、図7を参照しつつ説明する。第4実施形態では、第1実施形態における電気ヒータ26に替えて、補助熱源として発熱機器36を採用すると共に、高温側冷却水回路20の共通流路23における構成機器の配置を変更している。その他の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
図7に示すように、第4実施形態に係る車両用空調装置1においては、高温側冷却水回路20の共通流路23に、発熱機器36が配置されている。発熱機器36は、共通流路23の冷却水が流通するウォータージャケットを有している。これにより、発熱機器36で発生した熱は、ウォータージャケットを通過する冷却水に吸熱されて、高温側冷却水回路20を熱移動する。発熱機器36としては、例えば、先進運転支援システムの構成機器を挙げることができる。
先進運転支援システム(ADAS:Advanced driver−assistance systems)は、安全でより良い運転の為に車両システムを自動化・適応・強化するために開発されたシステムである。先進運転支援システムは、潜在的な問題を運転者に警告すること等の安全機能や、ヘッドライトの制御の自動化、自動クルーズ制御、自動ブレーキ制御等の適応機能等を実現する。
発熱機器36は、先進運転支援システムの構成機器であり、先進運転支援システムの作動に伴って発熱する。従って、発熱機器36は、作動時に生じた排熱を提供することで補助熱源として機能する。
ここで、補助熱源としての電気ヒータ26と、発熱機器36との相違点について説明する。電気ヒータ26は、上述したように、共通流路23を流れる冷却水を加熱する為に配置されており、制御装置70の制御に従って、その発熱量を任意に調整可能に構成されている。
一方、補助熱源としての発熱機器36は、先進運転支援システムの作動に伴って発熱する為、その発熱量は、先進運転支援システムの作動態様の影響を受ける。即ち、発熱機器36における発熱量は、制御装置70の制御では任意に調整し難く構成されている。又、発熱機器36は、先進運転支援システムの作動に際してその機能を確実に発揮する為に、発熱機器36自体の冷却を行う必要がある。
図4に示すように、高温側冷却水回路20の共通流路23において、発熱機器36における水通路の入口側は、第1リザーブタンク28を介して、合流部25の出口側に接続されている。そして、発熱機器36における水通路の出口側は、高温側ポンプ27の吸込口側に接続されている。
そして、高温側ポンプ27の吐出口側は、水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側に接続されている。水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側は、分岐部24の流入口側に接続されている。尚、第4実施形態に係る高温側冷却水回路20のその他の構成については、第1実施形態に係る高温側冷却水回路20と同様である。
第4実施形態において、発熱機器36は、共通流路23における冷却水の流れ方向に関して、分岐部24の上流側に位置している。より具体的には、発熱機器36は、共通流路23における冷却水の流れ方向に関して、分岐部24及び水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。そして、高温側ポンプ27は、共通流路23において、補助熱源である発熱機器36と水−冷媒熱交換器12の間に配置されている。
次に、このように構成された第4実施形態に係る車両用空調装置1において、冷房モード、暖房モード、除霜モードの各運転モードの一例について説明する。
(a)冷房モード
第4実施形態に係る冷房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。そして、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの他方側→第2膨張弁14b→室内蒸発器16→蒸発圧力調整弁17→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が並列に構成される。
そして、冷房モードの高温側冷却水回路20では、第1実施形態と同様に構成機器の作動が制御される。この結果、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24→第1電磁弁30a→第2リザーブタンク29→ラジエータ21→合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
冷房モードの低温側冷却水回路40では、第1実施形態と同様に、各構成機器の作動が制御される。この為、低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順で循環する冷却水回路が構成される。
そして、冷房モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
このように、第4実施形態における冷房モードにおいても、第1実施形態と同様に、室内蒸発器16にて送風空気Wを冷却することができるので、車室内の冷房を実現することができる。そして、チラー15により低温側冷却水回路40の冷却水の冷却することができるので、バッテリ42及び充電器43の冷却を実現することができる。
冷房モードにおける高温側冷却水回路20の回路構成によれば、ラジエータ21によって外気OAに放熱した冷却水を、水−冷媒熱交換器12で加熱されることなく、そのまま発熱機器36に流入させることができる。これにより、先進運転支援システムの作動により発熱する発熱機器36を冷却することができ、先進運転支援システムの温度環境を適切に維持することができる。
(b)暖房モード
第4実施形態に係る暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。
そして、暖房モードの高温側冷却水回路20では、第1実施形態の暖房モードと同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24→第2電磁弁30b→ヒータコア22→合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
又、暖房モードの低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れる冷却水回路が構成される。そして、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→ラジエータ21→第2リザーブタンク29→低温側ポンプ41の順で循環する冷却水回路が並列に構成される。
そして、暖房モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
従って、暖房モードでは、車両用空調装置1は、ヒータコア22によって送風空気Wを加熱して車室内へ吹き出すことで、車室内の暖房を行うことができる。即ち、車両用空調装置1は、暖房モードにおいて、低温側冷却水回路40にてバッテリ42、充電器43、外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、送風空気Wの加熱に利用することができる。
そして、暖房モードの車両用空調装置1においては、補助熱源としての発熱機器36の排熱によって、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、ヒータコア22で目標吹出温度TAOを実現する為に不足する場合、発熱機器36の排熱を有効に活用して不足分を補うことができる。
又、発熱機器36は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、分岐部24及び水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。
この為、高温側冷却水回路20では、冷房モード時における発熱機器36の冷却を考慮しつつ、補助熱源である発熱機器36からヒータコア22へと向かう流路における機器及び長さをできるだけ少なくすることができる。即ち、発熱機器36による熱を、できる限り効率よく車室内の暖房に活用することができる。
(c)除霜モード
第4実施形態に係る除霜モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。
そして、除霜モードの高温側冷却水回路20では、第1実施形態の除霜モードと同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24→第1電磁弁30a→第2リザーブタンク29→ラジエータ21→合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
又、除霜モードの低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れる冷却水回路が構成される。
そして、除霜モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
従って、除霜モードでは、低温側冷却水回路40にてバッテリ42、充電器43から吸熱した熱を冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、ラジエータ21の除霜に利用することができる。
そして、除霜モードの車両用空調装置1では、補助熱源としての発熱機器36の排熱によって、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、ラジエータ21の除霜を実現する為に不足する場合であっても、発熱機器36の発熱を有効に活用して不足分を補うことができる。
図4に示すように、発熱機器36は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、分岐部24及び水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。
この為、高温側冷却水回路20では、冷房モード時における発熱機器36の冷却を考慮しつつ、補助熱源である発熱機器36からラジエータ21へと向かう流路における機器及び長さをできるだけ少なくすることができる。即ち、冷房モードにおける発熱機器36の冷却を考慮しつつ、発熱機器36による排熱を、できる限り効率よくラジエータ21の除霜に活用することができる。
以上説明したように、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、上述した第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
そして、高温側冷却水回路20の共通流路23において、発熱機器36は、分岐部24の上流側に配置されている。具体的には、発熱機器36は、共通流路23において、分岐部24及び水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。
これにより、高温側冷却水回路20の冷却水をラジエータ21側へ流入させる場合と、ヒータコア22側へ流入させる場合の何れでも、冷房モードでの発熱機器36の冷却を考慮しつつ、発熱機器36からの流路長さや機器の数を少なく抑えることができる。
即ち、車両用空調装置1によれば、補助熱源として発熱機器36を用いる場合に、暖房補助に用いる場合と除霜補助に用いる場合の何れにおいても、発熱機器36の冷却を考慮して、できるだけ熱のロスを抑えて効率よく利用できる。
図4に示すように、高温側冷却水回路20の共通流路23において、高温側ポンプ27は、共通流路23における冷却水の流れに関して、発熱機器36と水−冷媒熱交換器12の間に配置されている。即ち、車両用空調装置1は、冷房モード時における発熱機器36の冷却を考慮しつつ、高温側ポンプ27に要するコスト及び動力を低減できる。
又、高温側冷却水回路20において、冷却水と外気OAとを熱交換させるラジエータ21が配置されている。冷房モードでは、ラジエータ21で冷却水の熱を外気OAへ放熱することができ、冷却水によって発熱機器36を冷却することができる。暖房モードにおいては、ラジエータ21によって外気OAから吸熱することで、外気OAを暖房熱源として利用することができる。
そして、除霜モードを実現することによって、着霜したラジエータ21を除霜することができ、外気OAを暖房熱源として利用する際の効率を回復させることができ、車両用空調装置1の暖房能力を向上させることができる。
(第5実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第5実施形態について、図8を参照しつつ説明する。第5実施形態は、第2実施形態に係る車両用空調装置1について、高温側冷却水回路20の共通流路23の構成に替えて、第4実施形態に係る共通流路23の構成を採用したものである。
即ち、第5実施形態における高温側冷却水回路20の共通流路23では、合流部25から分岐部24の間において、共通流路23→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24の順で構成機器が配置されている。第5実施形態における複合型熱交換器35、発熱機器36の構成については、既に説明済みである為、再度の説明は省略する。
次に、このように構成された第5実施形態に係る車両用空調装置1において、冷房モード、暖房モード、除霜モードの各運転モードの一例について説明する。
(a)冷房モード
第5実施形態に係る冷房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。そして、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの他方側→第2膨張弁14b→室内蒸発器16→蒸発圧力調整弁17→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が並列に構成される。
そして、冷房モードの高温側冷却水回路20では、第2実施形態と同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24→第1電磁弁30a→複合型熱交換器35の放熱部35a→合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
従って、第5実施形態の冷房モードでも、放熱部35aにて外気OAへ放熱した冷却水を、発熱機器36に流入させることができるので、冷却水の循環によって発熱機器36を冷却することができる。
又、冷房モードの低温側冷却水回路40では、第2実施形態と同様に、各構成機器の作動が制御される。この為、低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順で循環する冷却水回路が構成される。
そして、冷房モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
このように、第5実施形態における冷房モードにおいても、第2実施形態と同様に、室内蒸発器16にて送風空気Wを冷却することができるので、車室内の冷房を実現することができる。そして、チラー15により低温側冷却水回路40の冷却水の冷却することができるので、バッテリ42及び充電器43の冷却を実現することができる。
(b)暖房モード
第5実施形態に係る暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。
そして、暖房モードの高温側冷却水回路20では、第2実施形態の暖房モードと同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24→第2電磁弁30b→ヒータコア22→合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
又、暖房モードの低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れる冷却水回路が構成される。そして、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→複合型熱交換器35の吸熱部35b→第2リザーブタンク29→低温側ポンプ41の順で循環する冷却水回路が並列に構成される。
そして、暖房モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
従って、暖房モードでは、車両用空調装置1は、ヒータコア22によって送風空気Wを加熱して車室内へ吹き出すことで、車室内の暖房を行うことができる。即ち、車両用空調装置1は、バッテリ42、充電器43、外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、送風空気Wの加熱に利用できる。
そして、暖房モードの車両用空調装置1においては、補助熱源としての発熱機器36によって、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、ヒータコア22で目標吹出温度TAOを実現する為に不足する場合でも、発熱機器36の排熱で不足分を補うことができる。
又、発熱機器36は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、分岐部24及び水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。この為、高温側冷却水回路20では、冷房モードにおける発熱機器36の冷却を考慮しつつ、補助熱源である発熱機器36による熱を、効率よく車室内の暖房に活用することができる。
(c)除霜モード
第5実施形態に係る除霜モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部13aの一方側→第1膨張弁14a→チラー15→冷媒合流部13b→圧縮機11の順で循環する冷媒回路が構成される。
そして、除霜モードの高温側冷却水回路20では、第2実施形態の除霜モードと同様に構成機器の作動が制御される。これにより、高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24→第1電磁弁30a→複合型熱交換器35の放熱部35a→合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27の順で循環する冷却水回路が構成される。
又、除霜モードの低温側冷却水回路40では、低温側ポンプ41→チラー15→低温側三方弁44→バッテリ42→充電器43→低温側ポンプ41の順に流れる冷却水回路が構成される。
そして、除霜モードの機器用冷却水回路50では、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→バイパス流路54→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路が構成される。
従って、除霜モードでは、低温側冷却水回路40にてバッテリ42、充電器43から吸熱した熱を冷凍サイクル10で汲み上げて、高温側冷却水回路20を介して、複合型熱交換器35における吸熱部35bの除霜に利用することができる。
複合型熱交換器35は、放熱部35aと吸熱部35bは、熱交換フィンによって連結されており、熱移動可能に構成されている。従って、加熱された高温側冷却水回路20の冷却水を、複合型熱交換器35の放熱部35aに流入させることで、着霜している吸熱部35bの除霜を行うことができ、暖房能力を回復させることができる。
そして、除霜モードの車両用空調装置1では、補助熱源としての発熱機器36の排熱を利用して、高温側冷却水回路20の冷却水を加熱することができる。従って、水−冷媒熱交換器12で加えられた熱量では、複合型熱交換器35における吸熱部35bの除霜を実現する為に不足する場合、発熱機器36の排熱を利用して不足分を補うことができる。
図8に示すように、発熱機器36は、高温側冷却水回路20の共通流路23にて、分岐部24の上流側に配置されており、より具体的には、分岐部24及び水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。
この為、高温側冷却水回路20では、冷房モードにおける発熱機器36の冷却を考慮しつつ、補助熱源である発熱機器36から複合型熱交換器35の吸熱部35bへと向かう流路における機器及び長さをできるだけ少なくすることができる。発熱機器36の冷却を考慮しつつ、発熱機器36の排熱を、複合型熱交換器35における吸熱部35bの除霜に効率よく活用することができる。
尚、第5実施形態に係る除霜モードの機器用冷却水回路50では、機器用三方弁53の作動を制御して、冷却水回路の回路構成を変更しても良い。即ち、機器用冷却水回路50において、機器用ポンプ52→車載機器51→機器用三方弁53→複合型熱交換器35の吸熱部35b→第2リザーブタンク29→機器用ポンプ52の順で冷却水が循環する冷却水回路としてもよい。
この回路構成とすることによって、着霜している複合型熱交換器35の吸熱部35bに対して、車載機器51の排熱を吸熱した冷却水を供給することができる為、車載機器51の排熱を、吸熱部35bの除霜に用いることができる。
以上説明したように、第5実施形態に係る車両用空調装置1によれば、上述した各実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
即ち、高温側冷却水回路20の共通流路23における構成機器の配置に関しては、第4実施形態における共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第4実施形態と同様に得ることができる。
又、ラジエータ21に代えて、複合型熱交換器35を採用した点に関しては、第2実施形態における共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第2実施形態と同様に得ることができる。
(第6実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第6実施形態について、図9を参照しつつ説明する。第6実施形態は、第3実施形態に係る車両用空調装置1について、高温側冷却水回路20の共通流路23の構成に替えて、第4実施形態に係る共通流路23の構成を採用したものである。
即ち、第6実施形態における高温側冷却水回路20の共通流路23では、合流部25から分岐部24の間において、共通流路23→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→分岐部24の順で構成機器が配置されている。第6実施形態における複合型熱交換器35、発熱機器36の構成については、既に説明済みである為、再度の説明は省略する。
第6実施形態に係る車両用空調装置1は、冷房モード、暖房モード、除霜モードを実現する為に、第5実施形態と同様の内容で各構成機器の作動を制御する。この点、第5実施形態にて既に説明済みである為、再度の説明を省略する。
以上説明したように、第6実施形態に係る車両用空調装置1によれば、上述した各実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
即ち、高温側冷却水回路20の共通流路23における構成機器の配置に関しては、第4実施形態における共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第4実施形態と同様に得ることができる。
又、ラジエータ21に代えて、複合型熱交換器35を採用した点に関しては、第3実施形態における共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第3実施形態と同様に得ることができる。
(第7実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第7実施形態について、図10を参照しつつ説明する。第7実施形態では、共通流路23における補助熱源として、電気ヒータ26及び発熱機器36を採用すると共に、高温側冷却水回路20の共通流路23における構成機器の配置を変更している。その他の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
図10に示すように、第7実施形態に係る車両用空調装置1においては、高温側冷却水回路20の共通流路23に、第1実施形態に対して、発熱機器36が追加して配置されている。発熱機器36の構成は、第4実施形態と同様であり、第2補助熱源である。
そして、高温側冷却水回路20の共通流路23において、発熱機器36における水通路の入口側は、第1リザーブタンク28を介して、合流部25の出口側に接続されている。そして、発熱機器36における水通路の出口側は、高温側ポンプ27の吸込口側に接続されている。
そして、高温側ポンプ27の吐出口側は、水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側に接続されている。水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側は、電気ヒータ26における水通路の入口側に接続されている。電気ヒータ26における水通路の出口側は、分岐部24の流入口側に接続されている。電気ヒータ26は第1補助熱源である。
尚、第7実施形態に係る高温側冷却水回路20のその他の構成については、第1実施形態に係る高温側冷却水回路20と同様である。
第7実施形態において、電気ヒータ26は、共通流路23における冷却水の流れに関して、分岐部24の上流側に配置されている。具体的には、電気ヒータ26は、共通流路23において、水−冷媒熱交換器12と分岐部24の間に配置されている。
又、発熱機器36は、共通流路23における冷却水の流れ方向に関して、分岐部24の上流側に位置している。より具体的には、発熱機器36は、共通流路23における冷却水の流れ方向に関して、分岐部24及び水−冷媒熱交換器12の上流側に配置されている。
つまり、第7実施形態に係る高温側冷却水回路20の共通流路23では、冷却水の流れに従って、合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24の順に配置されている。
このように構成された第7実施形態に係る車両用空調装置1は、冷房モード、暖房モード、除霜モードの各運転モードを実現することができる。冷房モード、暖房モード、除霜モードにおける動作の内容は、上述した第1実施形態、第4実施形態と同様である。
以上説明したように、第7実施形態に係る車両用空調装置1によれば、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
即ち、車両用空調装置1によれば、補助熱源として電気ヒータ26及び発熱機器36を用いる場合に、暖房補助に用いる場合と除霜補助に用いる場合の何れにおいても、電気ヒータ26を効率よく利用することができる。同時に、暖房補助と除霜補助の何れに用いる場合も、発熱機器36の冷却を考慮して、できるだけ熱のロスを抑えて効率よく利用できる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態では、冷凍サイクル10における第1膨張弁14a、第2膨張弁14bとして、電気式膨張弁を採用していたが、この態様に限定されるものではない。冷凍サイクル10において、高圧冷媒を減圧することができれば、種々の態様を採用することができる。例えば、第1膨張弁14aを電気式膨張弁としたまま、第2膨張弁14bを温度式膨張弁に変更しても良い。
(2)又、上述した実施形態においては、水−冷媒熱交換器12として、サブクール型の凝縮器を採用していたが、この態様に限定されるものではない。水−冷媒熱交換器12として、レシーバ部12b、過冷却部12cを有しておらず、凝縮部12aで構成された態様を採用しても良い。
(3)そして、上述した実施形態においては、高温側冷却水回路20における流量調整部30を、第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bにて構成していたが、この態様に限定されるものではない。流量調整部30としては、分岐部24の一方の流出口側における熱媒体の流量と、分岐部24の他方の流出口側における熱媒体の流量とを調整可能であれば、種々の態様を採用できる。例えば、流量調整部30を、分岐部24の位置に配置された三方弁によって構成しても良い。
又、流量調整部30は、第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bを開度調整可能な電磁弁としていたが、これに限定されるものではない。少なくとも、高温側冷却水回路20における冷却水回路の切替を実現可能な構成であればよく、第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bとして、冷却水流路の全開及び全閉が可能な開閉弁を用いても良い。
(4)又、上述した第4実施形態〜第6実施形態においては、発熱機器36として、先進運転支援システムの構成機器を採用していたが、この態様に限定されるものではない。発熱機器36としては、車両に搭載されており、予め定められた機能を発揮する為の作動に伴い副次的に発熱する機器であれば、種々の機器を採用することができる。例えば、インバータ、モータジェネレータ等を発熱機器36として採用することも可能である。
(5)そして、上述した実施形態においては、運転モードとして、冷房モード、暖房モード、除霜モードの3つについて説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、室内蒸発器16で冷却された送風空気Wをヒータコア22で加熱して、車室内に供給する除湿暖房モードを、運転モードとして実現することも可能である。この場合、車両用空調装置1の構成機器は、第2膨張弁14bで減圧した低圧冷媒を室内蒸発器16に流入させると共に、高温側冷却水回路20にて第2電磁弁30bを開き、ヒータコア22に加熱された冷却水が流入するように制御される。
(7)又、上述した第7実施形態の共通流路23における各構成機器の配置は、他の冷却水回路の回路構成に対して適用することができる。例えば、第2、第5実施形態に係る高温側冷却水回路20の共通流路23において、冷却水の流れに従って、合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24の順に配置しても良い。この場合における各運転モードの動作の内容は、第2、第5実施形態の動作内容を適用することができる。
同様に、第3、第6実施形態に係る高温側冷却水回路20の共通流路23にて、冷却水の流れに従って、合流部25→第1リザーブタンク28→発熱機器36→高温側ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→電気ヒータ26→分岐部24の順に配置しても良い。この場合における各運転モードの動作の内容は、第3、第6実施形態の動作内容を適用することができる。