JP7361176B1 - 車両用の温調システムおよび温調方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保すること。【解決手段】車両用の温調システムは、冷媒回路と熱媒体回路とを備える。熱媒体回路は、高圧側熱交換器と、低圧側熱交換器と、ポンプと、室外熱交換器と、温調機器と、室外バイパス経路とを含む。温調システムは、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入するモードであって、圧縮機の動力とポンプの動力とを熱源として利用する動力熱源モードを備える。制御装置は、ポンプの回転数を少なくとも第1回転数と第2回転数とに変更可能であって、動力熱源モードのとき、他の運転モードのときにポンプに設定される第1回転数よりも大きい第2回転数をポンプに設定可能に構成される。【選択図】図2

Description

本開示は、車両に装備される温調システム、およびそれを用いる温調方法に関する。
電気自動車や、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の車両においては、熱源が不足しがちな中、冷暖房、除湿、換気等の車両に要求される空調機能の他、バッテリー等の車載機器の熱管理や排熱利用が要求される。そうした要求に対して、従来、ヒートポンプシステムに加え、バッテリーを冷却するチラーやバッテリーを加温するヒータを含むシステム、あるいは、ラジエーターの排熱により加温された水をポンプで温調対象に搬送するシステム等の複数のシステムが用いられてきた。
空調および機器の熱管理を統合可能な車両用熱管理システムとしては、冷媒が冷凍サイクルに従って循環する一次ループと、一次ループの冷媒に対して熱を授受する熱媒体(水等)をポンプにより車載機器に搬送する二次ループとを備えたシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の熱管理システムは、冷媒回路の蒸発器および熱媒体外気熱交換器が配置される第1熱媒体回路と、冷媒回路の凝縮器および車室空調ユニットのヒータコアが配置される第2熱媒体回路とを備えている。第1熱媒体回路と第2熱媒体回路とは、第1切替手段および第2切替手段による流路の切り替えにより、非連結の状態(非連結モード)と、低外気温を想定した連結の状態(連結モード)とに切り替えられる。
非連結モード時には、外気の熱を第2熱媒体回路の熱媒体へ汲み上げるヒートポンプ運転が行われる。連結モード時には、蒸発器から流出した熱媒体を熱媒体外気熱交換器へ流入させることなく、凝縮器から流出した熱媒体と合流させ、蒸発器および凝縮器に対して熱媒体を並列に流入させる。このとき第1熱媒体回路と第2熱媒体回路とが、蒸発器および凝縮器を介して連結されている。
特許第6083304号
特許文献1の連結モード時には、蒸発器から流出した熱媒体と、凝縮器から流出した熱媒体とが混合されることで、混合前のそれぞれの熱媒体の温度の中間の温度となって蒸発器および凝縮器に流入する。そのため、非連結モードと比べて、凝縮器より流出する熱媒体の温度上昇に時間がかかる。また、室内熱交換器に流入する熱媒体の流量が低下するので、加熱能力には改善の余地がある。
本開示は、外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保することが可能な車両用の温調システムおよび温調方法を提供することを目的とする。
本開示は、車両用の温調システムであって、圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備える。
熱媒体回路は、冷媒と熱媒体とを熱交換させる高圧側熱交換器と、冷媒と熱媒体とを熱交換させる低圧側熱交換器と、熱媒体を圧送可能に構成されるポンプと、外気と熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、室外熱交換器から熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含む。
温調システムは、運転モードとして、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入するモードであって、圧縮機の動力とポンプの動力とを熱源として利用する動力熱源モードを備えるとともに、ポンプの回転数を可変に設定可能に構成される制御装置を備える。
制御装置は、ポンプの回転数を少なくとも第1回転数と第2回転数とに変更可能であって、動力熱源モードのとき、他の運転モードのときにポンプに設定される第1回転数よりも大きい第2回転数をポンプに設定可能に構成される。
また、本開示は、車両用の温調方法にも展開することができる。
本開示によれば、熱源が不足しがちな車両の温調システムであって、外気温が0℃を大幅に下回るため外気からの吸熱が不十分な条件であっても、動力熱源モードにおけるポンプの動力増加により熱源不足を補い、加熱能力を担保することができる。
動力熱源モードのとき、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とは直列に接続されているので、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、高圧側熱交換器から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、温調機器の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と温調対象との熱交換量が大きくなる。
本開示の実施形態に係る車両用温調システムを示す回路図である(ヒートポンプモード)。 図1に記載のシステムのヒータモードによる運転状態を示す図である。 制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 低外気温時のp-h線図の略図である。 ヒータモード時の冷媒回路の低圧と圧縮機動力との関係(低圧-圧縮機動力特性)を示すグラフである。 本開示の第5変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(起動時ヒータモード)。
以下、添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。
[実施形態]
図1に示す車両用の温調システム1は、例えば、エンジンを備えておらず走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車、あるいは、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の図示しない車両に装備されている。温調システム1は、乗員が搭乗する車室8の冷暖房、除湿、換気等の空調の他、車両に搭載されているバッテリー装置(電源装置)、走行用モータ、発熱する電子機器等の車載装置の熱管理、排熱回収等を担う。適切な温度や湿度に空調したり、車載装置を適温に管理したりすることを「熱管理」と総称するものとする。
温調システム1およびその他の車載装置に備わる電動機器や電子機器には、車載のバッテリー装置に蓄えられた電力が供給される。車載のバッテリー装置は、車両停止時に外部電源から充電される。
〔全体構成〕
温調システム1は、冷媒が循環可能に構成される冷媒回路10と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路20と、温調システム1を所定の運転モードに設定し、運転モードに応じて温調システム1の運転状態を制御する制御装置5とを備えている。
また、温調システム1は、例えば、外気温度を検知する外気温センサ61、車室8に吹き出される空調空気の温度を検知する温度センサ62、冷媒回路10の低圧pLを検知する低圧用圧力センサ63、冷媒回路10の高圧pHを検知する高圧用圧力センサ64、熱媒体の温度を検知する熱媒体温度センサ65等のセンサを含む。
温調システム1は、乗員によりあるいは制御装置5により選択される複数の運転モードを備えている。温調システム1は、後述するヒータモードHT(図2)において熱媒体を圧送するポンプ21,22の動力を熱源に利用することに特徴を有する。本実施形態は、温調システム1の運転モードとして、ヒータモードHTの他、ヒートポンプモードHP(図1)を例示する。ヒータモードHTは、ヒートポンプモードHPと比べて外気温が低い場合に適する。
〔冷媒回路の構成〕
冷媒回路10は、図1に構成の一例を示すように、圧縮機11と、凝縮器12と、膨張弁13と、蒸発器14とを備えている。冷媒回路10には、冷凍サイクルに従って冷媒が循環する。
冷媒回路10に封入される冷媒としては、公知の適宜な単一冷媒あるいは混合冷媒を用いることができる。例えば、本実施形態の冷媒として、R410A、R32等のHFC(Hydro Fluoro Carbon)冷媒や、R1234ze、R1234yf等のHFO(Hydro Fluoro Olefin)冷媒、あるいは、プロパン、イソブタン等の炭化水素(HC)系冷媒を用いることが可能である。特に、本実施形態の冷媒としてR1234yfを用いることが好ましい。
上記に列挙したフロン系または炭化水素系の冷媒を用いる場合は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルが構成される。
冷媒として二酸化炭素(CO)を用いる場合は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える遷臨界冷凍サイクルが構成される。その場合でも、本実施形態の凝縮器12と同様に高圧側熱交換器により冷媒が放熱し、本実施形態の蒸発器14と同様に低圧側熱交換器により冷媒が吸熱する作用が得られるから、二酸化炭素冷媒のように遷臨界冷凍サイクルを構成する冷媒も冷媒回路10に採用することができる。
圧縮機11は、図示しないバッテリー装置から供給される電力により駆動されるモータを備えた電動圧縮機に相当する。圧縮機11は、図示しないハウジング内に吸入される冷媒を圧縮機構により断熱圧縮して吐出する。
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒ガスを熱媒体と熱交換させる。
膨張弁13(減圧部)は、凝縮器12から流出した冷媒を減圧させることで断熱膨張させる。膨張弁13としては、制御装置5からの指令に基づき開度を制御可能な電子膨張弁の他、温度式膨張弁を採用することができる。あるいは、膨張弁13の代わりにキャピラリーチューブを採用することができる。
蒸発器14は、膨張弁13から流出した冷媒を熱媒体と熱交換させる。蒸発器14により蒸発した冷媒は、圧縮機11により吸入される。
蒸発器14と圧縮機11との間には、図示しないアキュムレータ(気液分離器)を設けることができる。
凝縮器12には相対的に高い冷媒圧力(高圧pH)が与えられ、蒸発器14には相対的に低い冷媒圧力(低圧pL)が与えられる。冷媒は、高圧pHと低圧pLとの圧力差に基づき冷媒回路10を循環する。
図1において、低圧側の冷媒の流れは太い実線により示され、高圧側の冷媒の流れは太い破線により示されている。図2も同様である。
〔熱媒体回路の構成〕
熱媒体回路20は、凝縮器12および蒸発器14により冷媒と熱を授受可能な熱媒体が循環可能に構成されている。熱媒体は、少なくとも1つ以上の温調対象の冷却または加熱に用いられる。本実施形態における温調対象の一つは、車室8内の空気に相当する。
熱媒体回路20に封入される熱媒体は、液相の状態を維持して熱媒体回路20を循環する水やブライン等の液体である。ブラインとしては、例えば、水およびプロピレングリコールの混合液、あるいは、水およびエチレングリコールの混合液を例示することができる。
熱媒体回路20は、図1に構成の一例を示すように、凝縮器12と、蒸発器14と、第1ポンプ21および第2ポンプ22と、室外熱交換器23と、室外バイパス経路24と、室内熱交換器25と、複数の流路切替弁としての第1切替弁31、第2切替弁32、および第3切替弁33とを備えている。
本実施形態において、第1切替弁31および第2切替弁32は四方弁であり、第3切替弁33は三方弁に相当する。図1に示すヒートポンプモードHPにおいて、第1切替弁31には、凝縮器12から流出した熱媒体と、蒸発器14から流出した熱媒体との両方が流通する。
熱媒体回路20は、ポンプ21,22の吸い込み側が大気圧になるようにする機構として、リザーブタンク15を備えている。リザーブタンク15によれば、熱媒体の昇温による体積膨張によって熱媒体の圧力が増加しても、ポンプ21,22の吸い込み側が大気圧に保たれるので、ポンプ21,22により熱媒体を安定して圧送することができる。
ポンプ21,22のそれぞれの吸い込み側に個別にリザーブタンクを設けることもできるが、配管401と配管402とに連通する1つのリザーブタンク15だけを設けることができる。配管401,402とリザーブタンク15とを連通させる連通経路16には、配管401,402の一方のみをリザーブタンク15に連通させるための開閉弁17を設けると良い。その開閉弁17を後述する直列回路CCの使用時に閉じることにより、連通経路16を通じて熱媒体が圧力差により移動することを避けることができる。
熱媒体回路20は、凝縮器12から熱媒体を迂回させる凝縮器バイパス経路12Aと、凝縮器流量調整弁12Vとを備えることが好ましい。
凝縮器流量調整弁12Vは、制御装置5から発せられる制御指令に基づき、凝縮器12と凝縮器バイパス経路12Aとの熱媒体の流量比を調整する。
図1に示す例では、凝縮器流量調整弁12Vによる流量調整により、第1切替弁31から凝縮器12に向けて流れる熱媒体の全量が、凝縮器バイパス経路12Aへは流入せずに凝縮器12へと流入する。
また、熱媒体回路20は、蒸発器14から熱媒体を迂回させる蒸発器バイパス経路14Aと、蒸発器14と蒸発器バイパス経路14Aとの流量比を調整可能に構成される蒸発器流量調整弁14Vとを備えることが好ましい。
蒸発器流量調整弁14Vは、制御装置5から発せられる制御指令に基づき、蒸発器14と蒸発器バイパス経路14Aとの熱媒体の流量比を調整する。
図1に示す例では、蒸発器流量調整弁14Vによる流量調整により、第1切替弁31から蒸発器14に向けて流れる熱媒体の全量が、蒸発器バイパス経路14Aへは流入せずに蒸発器14へと流入する。
本実施形態の三方弁としての凝縮器流量調整弁12Vは、いずれも流量調整可能な2つの二方弁、または流量調整可能な単一の二方弁に置き換えることができる。例えば、一方の二方弁を凝縮器バイパス経路12Aに配置し、他方の二方弁を凝縮器流量調整弁12Vと凝縮器12との間の配管に配置することができる。あるいは、単一の二方弁を凝縮器バイパス経路12Aおよび当該配管の一方に配置することができる。
蒸発器流量調整弁14Vも上記と同様であり、いずれも流量調整可能な2つの二方弁、または流量調整可能な単一の二方弁に置き換えることができる。
第1ポンプ21および第2ポンプ22はいずれも、図示しないモータにより駆動される電動のポンプに相当する。第1ポンプ21は、蒸発器14から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。第2ポンプ22は、凝縮器12から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。
ポンプ21,22としては、公知の遠心ポンプや容積型ポンプを適宜に採用することができる。
第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方は、モータに駆動電流を印加する駆動回路部により、熱媒体を圧送する機構の回転数Nが可変に制御可能に構成されている。本実施形態では、第1ポンプ21および第2ポンプ22のいずれも、回転数Nが可変に制御可能に構成されている。
第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置は、図示する例には限らず、各運転モードの熱媒体の経路を考慮し、第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方により熱媒体を圧送することができる範囲で、適宜に定めることができる。
室外熱交換器23は、車室8の外側の外気と、熱媒体とを熱交換させる。室外熱交換器23は、例えば、車両の空気導入口の付近に配置されるラジエーターに相当する。車両の走行と、室外送風機23Aの動作とによって室外熱交換器23に供給される外気は、外気と熱媒体との温度差に基づいて、放熱または吸熱する。
室外バイパス経路24は、室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。
室内熱交換器25は、室内送風機25Aにより送られる空気と熱媒体とを熱交換させることで車室8内に空調空気を与える。室内送風機25Aは、モータにより駆動され、車室8内の空気(内気)または外気、あるいは内気と外気との混合気体を室内熱交換器25に向けて吹き付ける。室内送風機25Aは、回転数が可変に制御可能に構成されることが好ましい。
HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニットUは、室内熱交換器25と、室内送風機25Aと、室内送風機25Aにより送られる空気が流れる図示しないダクトとを含んで構成されている。
第1~第3切替弁31,32,33の少なくとも1つにより熱媒体の流れが切り替えられることで、熱媒体回路20は、低圧側回路C1および高圧側回路C2を並列的に設定可能に構成されるとともに(図1)、直列回路CCを設定可能に構成される(図2)。
凝縮器12から流出して凝縮器12に戻る熱媒体の高圧側回路C2と、蒸発器14から流出して蒸発器14に戻る低圧側回路C1とは、互いに分離している。以下において、低圧側回路C1および高圧側回路C2のことを並列回路C1,C2と称する場合がある。
凝縮器12を含む高圧側回路C2の熱媒体と、蒸発器14を含む低圧側回路C1の熱媒体とは相互に混合されない。
並列回路C1,C2を示す図1において、低圧側回路C1を循環する相対的に低温の熱媒体(低温熱媒体)の流れが実線で示され、高圧側回路C2を循環する相対的に高温の熱媒体(高温熱媒体)の流れが一点鎖線で示されている。低温熱媒体および高温熱媒体のいずれも圧送されていない経路は、破線で示されている。
一方、直列回路CCは、直列に配置される蒸発器14および凝縮器12を含む一つの連続した回路に相当する。直列回路CCが設定されるとき、例えば、図2に示すように、凝縮器12から流出した熱媒体が蒸発器14に流入し、さらに凝縮器12に流入する。
直列回路CCを示す図2においても、相対的に低温の熱媒体の流れが実線で示され、相対的に高温の熱媒体の流れが一点鎖線により示されている。図2を参照すると、並列回路C1,C2が設定される場合とは異なり、蒸発器14から流出し、凝縮器12に流入するまでの熱媒体の流れが実線で示され、凝縮器12から流出し、蒸発器14に流入するまでの熱媒体の流れが一点鎖線で示されている。これは、熱媒体が蒸発器14に流入すると、冷媒への放熱により熱媒体の温度が低下することを表し、熱媒体が凝縮器12に流入すると、冷媒からの吸熱により熱媒体の温度が上昇することを表している。
直列回路CCが設定されるとき、熱媒体は、凝縮器12による温度上昇および蒸発器14による温度低下を繰り返しながら、凝縮器12と蒸発器14とを循環する。このとき、熱媒体回路20には、一つの連続した回路が形成されるので、第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方のみによって、熱媒体を圧送することができる。つまり、温調システム1が、直列回路CCを用いる運転モードのみを備えている場合は、第1ポンプ21および第2ポンプ22の一方のみを備えていれば足りる。
後述するポンプ21,22の回転数の設定は、ポンプ21,22のうち、作動させる少なくとも一方について行えば足りる。
ポンプ21,22から排熱を最大限に得る観点からは、直列回路CCを用いる運転モードでも、2つのポンプ21,22を作動させて、ポンプ21,22のいずれの回転数Nも最大に設定することが好ましい。
第1~第3切替弁31~33のいずれも、制御装置5からの指令に基づき開閉制御が可能な電動弁であり、各運転モードに応じて熱媒体の流路を切り替え可能に構成される。
第1~第3切替弁31~33は、必要な運転モードの実現に必要な経路を熱媒体回路20に設定するために、適宜な構造の適宜な数の電動弁に代替可能である。
〔制御装置の構成〕
制御装置5は、図3に示すように、メモリ501、演算部502、記憶部503、および入出力部504を含むコンピュータに相当する。「コンピュータ」には、プログラマブルロジックコントローラ(PLC;programmable logic controller)も含まれる。制御装置5は、記憶部503から読み出されて実行されるコンピュータ・プログラムに従って動作する。
各運転モードにおいて、制御装置5は、記憶部503から読み出されて実行されるコンピュータ・プログラムに基づき、圧縮機11の駆動制御を行い、冷媒の循環流量を増減させることで、冷房能力または暖房能力をそれぞれ増減させることができる。
制御装置5は、例えば、外気温、空調空気の吹き出し温度、あるいは、熱媒体温度や冷媒の温度等、室温に相関する物理量をセンサ61,62等により検知し、検知された値と目標値との偏差を解消させるように、例えば圧縮機11の回転数を制御するフィードバック制御を行うことにより、室温を目標温度に調整することができる。
また、制御装置5は、ポンプ21,22の圧送機構の回転数Nを設定可能に構成されている。
本実施形態では、ポンプ21,22に対して同一の回転数Nが設定されるが、その限りではない。ポンプ21,22にそれぞれ異なる回転数Nを設定することもできる。
制御装置5は、例えば、運転モード毎に決められたポンプ21,22の基準回転数をそれぞれ示す制御指令を発生させる。
基準回転数は、例えば、次のように決められ、記憶部503に記憶される。
冷房モード :第1回転数N
ヒートポンプモード:第1回転数N
ヒータモード :第2回転数N
第2回転数Nは、第1回転数Nの例えば、1.2~2倍に相当する。
第2回転数Nは、モータからポンプの圧送機構に出力される最大の軸動力に対応する最大の回転数であってもよい。
ポンプ21,22の回転数Nの設定は、複数の運転モードのうち、少なくともヒータモードHT時に行われる。
制御装置5は、例えば、温調システム1の起動時にヒートポンプモードHPである場合、あるいは、ヒートポンプモードHPからヒータモードHTへと運転モードが切り替えられた際には、ポンプ21,22に対して、ヒータモードHTに対応する制御指令SHTを発生させる。
すると、第1ポンプ21に備わる駆動回路部21Dは、制御指令SHTに応じた駆動電流をモータ21Mに印加することで、第1ポンプ21を第2回転数Nで駆動する。同様に、第2ポンプ22に備わる駆動回路部22Dは、制御指令SHTに応じた駆動電流をモータ22Mに印加することで、第2ポンプ22を第2回転数Nで駆動する。
ポンプ21,22のそれぞれの回転数Nは、例えば、モータ21M,22Mに印加される駆動電流の周波数やデューティ比を増減させることで制御することができる。
〔運転モードの説明〕
まず、図1に示すヒートポンプモードHPについて簡単に説明する。
ヒートポンプモードHP(図1):
ヒートポンプモードHPは、車室8内を暖房するモードに相当し、熱源としての外気から、外気温よりも温度が高い高温熱媒体に熱を汲み上げて車室8まで搬送することで、車室8内を暖房する。
ヒートポンプモードHP時に温調システム1は並列回路C1,C2を使用して運転される。蒸発器14から流出した低温熱媒体は、実線の矢印で示すように、第2切替弁32を経由して室外熱交換器23へと流入する。外気から吸熱した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量調整弁14Vを経由して蒸発器14へと戻る。
蒸発器14に流入した熱媒体からの吸熱により冷媒は蒸発し、圧縮機11へと吸入される。圧縮機11から吐出された冷媒は、凝縮器12で熱媒体への放熱により凝縮し、これに伴い熱媒体は昇温する。
凝縮器12から流出した高温熱媒体は、一点鎖線の矢印で示すように、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入する。車室8内を温めた熱媒体は、第1切替弁31および凝縮器流量調整弁12Vを経由して凝縮器12へと戻る。
ヒートポンプモードHPは、外気を熱源の一部として利用することにより、圧縮機11やポンプ21,22等の動力増加を抑えつつ、暖房能力を担保することができる。
ヒータモードHT(図2):
次に、図2を参照し、直列回路CCを用いる運転モードであるヒータモードHTについて説明する。外気温が0℃を大幅に下回る場合、例えば-20℃以下にまで外気温が低下した場合は、上述のヒートポンプモードHPにより外気から熱媒体に吸熱することができる熱量が少なくなるとともに、圧縮機11の吸入冷媒密度が低下し、圧縮機11の動力が小さくなる。
そうした場合でも、ヒータモードHTは、圧縮機11を熱源としつつ、他の運転モードと比べて回転数Nが高く設定されているポンプ21,22も熱源として温調対象の加熱に利用することができる。
ヒータモードHTは、例えば抵抗加熱式の電気ヒータと同様に、供給電力に相応の熱量の熱が温調対象に供給される。そのため、「ヒータ」モードと称するが、ヒータモードHTの名称は、必ずしもこれに限られない。
なお、後述する起動時ヒータモードHT0は、ヒータモードHTへの移行を前提とするモードであるため、ヒータモードHTと同様の名称を使用するが、起動時ヒータモードHT0の名称も、必ずしもこれに限られない。
図2を参照し、ヒータモードHT時の熱媒体の流れを説明する。熱媒体から外気への放熱を防ぐため、室外バイパス経路24を通じて室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。このとき室外送風機23Aの作動は停止させてよい。ポンプ21,22の回転数Nは、例えば第2回転数Nに設定される。
凝縮器12により冷媒から吸熱した熱媒体は、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入して車室8内の暖房に供される。そして、室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量調整弁14Vを経由し、蒸発器14および蒸発器バイパス経路14Aのうち少なくとも蒸発器14に流入して冷媒へと放熱される。
蒸発器14から流出した熱媒体は、第2切替弁32から室外バイパス経路24に流入し、第1切替弁31と凝縮器流量調整弁12Vとの間に合流した後、凝縮器12および凝縮器バイパス経路12Aのうち少なくとも凝縮器12に流入して冷媒から吸熱する。
ここで、ポンプ21,22は所定の効率ηで作動し、簡単には、モータ21M,22Mからポンプ21,22に出力される軸動力Pと、(1-効率η)との積である損失の大部分が熱エネルギーとして熱媒体に伝達される。ヒータモードHTでは、ヒートポンプモードHP等における第1回転数Nに対して、ポンプ21,22の回転数Nを第2回転数N2に増加させているため、ポンプ21,22による熱媒体の吐出流量が他の運転モードのときの吐出流量と比べて増加するとともに、ポンプ21,22から熱媒体に伝達される熱量が増加する。そうすると、蒸発器14における熱媒体から冷媒への放熱量が増加し、冷媒回路10の低圧pLが上昇する。
図4には、冷媒のp-h線図と、ヒートポンプモードHP時の冷凍サイクルY1(破線)と、ヒータモードHT時の冷凍サイクルY2(実線)とが示されている。冷凍サイクルY1,Y2のいずれも、外気温が-20℃の条件による。
ヒートポンプモードHPのときは、-20℃の外気と熱交換されて蒸発器14に流入する熱媒体より、冷媒が吸熱する必要があるため、低圧pLが低下する。
一方、ヒータモードHTのときは、凝縮器12および室内熱交換器25を経た熱媒体が、蒸発器14により冷媒へと放熱されることに加え、ポンプ21,22の回転数Nの増加により熱媒体から冷媒への入熱量が増加することで、図4に示すようにヒートポンプモードHPと比べて低圧pLが上昇する。それに伴い圧縮機11に吸入される冷媒の密度(以下、圧縮機吸入密度ρ)が増加することで、圧縮機11の動力が増加して冷媒の循環流量が増加するため、暖房能力は向上する。
また、ポンプ21,22の回転数Nの増加による熱媒体の吐出流量の増加により、凝縮器12における冷媒から熱媒体への吸熱量が増加することによっても暖房能力は向上する。
ヒータモードHTにおいて、熱媒体は、外気への放熱を避けて室外バイパス経路24を流れつつ、ポンプ21,22の動力により発生した熱を受け取り、さらに圧縮機11の動力により発生した熱を冷媒から受け取り温調対象に搬送する。ヒータモードHTによれば、ポンプ21,22の回転数Nの増加により冷媒への入熱量を増加させつつ、外気との熱の出入りがない系により運転することで、外気温によらず、車室8内の暖房を継続して行うことができる。
〔本実施形態による主な作用効果〕
熱源が不足しがちな車両の温調システム1であって、外気温が0℃を大幅に下回るため外気からの吸熱が不十分な条件であっても、ヒータモードHTにおけるポンプ21,22の動力増加により熱源不足を補い、暖房能力を担保することができるので、ヒートポンプモードHPと比べて車室8内の温度を早期に目標温度まで到達させることができる。
また、直列回路CCを用いるヒータモードHTのとき、凝縮器12と蒸発器14とは直列に接続されているので、凝縮器12と蒸発器14とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、凝縮器12から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、室内熱交換器25の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と空気との熱交換量が大きくなる。
[第1変形例]
ヒートポンプモードHP(図1)のとき、高圧側回路C2に対応する第2ポンプ22の回転数Nを第1ポンプ21の回転数Nよりも高い回転数、例えばヒータモードHTと同様に第2回転数Nに設定することができる。そうすると、第2ポンプ22の回転数Nが第1ポンプ21の回転数Nと同一であって、第2ポンプ22からの排熱が少ない場合と比べて、凝縮器12による冷媒から熱媒体への吸熱量を増加させて、暖房能力を向上させることができる。
低圧側回路C1に対応する第1ポンプ21については、外気からの吸熱に必要な外気と低圧側回路C1の熱媒体との温度差を確保するため、回転数Nを増加させる必要はない。
[第2変形例]
ヒータモードHTにおけるポンプ21,22の回転数Nの設定は、熱媒体の温度が所定温度に対して低い場合にのみ行うことができる。例えば、蒸発器14から流出した熱媒体の温度が閾値Tに対して低い場合は、暖房能力が必ずしも十分ではない。
そのため、制御装置5は、例えば、凝縮器12の出口と室内熱交換器25の入口との間で熱媒体の温度を検知する熱媒体温度センサ65(図2)により検知される温度が閾値Tを下回るか否かを判定する。判定の結果、検知温度が閾値Tを下回る場合には、制御装置5は、ポンプ21,22の回転数Nを他の運転モードの回転数よりも高い回転数N、例えば第2回転数Nに設定する。
[第3変形例]
また、ヒータモードHTのとき、ポンプ21,22の回転数Nを熱負荷に応じた回転数に設定することができる。
ここで、冷房負荷や暖房負荷である「空調負荷」は、下記の式(1)により定義される。式中の空気温度は、厳密には空気エンタルピである。式中の風量は、厳密には質量流量である。
空調負荷L=風量Q×(目標吹き出し空気温度T- 吸い込み空気温度T)…(1)
暖房負荷は、外気温が低下するにつれて大きくなる。
風量Qは、室内送風機25Aおよび車両の走行により室内熱交換器25に送られる空気の体積流量を言う。風量Qは、例えば、乗員による設定段数もしくは温調システム1による設定段数と、吹き出しモード(Face/Foot/Defogger等)とから取得可能である。
目標吹き出し空気温度Tは、HVACユニットUから車室8内に吹き出される空気の目標温度であり、車室8内の空気の目標温度から設定される。目標吹き出し空気温度Tは、温度センサ62より検知される。
吸い込み空気温度Tは、室内送風機25Aおよび車両の走行により室内熱交換器25に導入される空気の温度を言う。吸い込み空気温度Tは、内気循環が設定されている場合は、図示しない室温センサにより検知される車室8内の室温に相当し、外気導入が設定されている場合は、外気温センサ61により検知される外気温に相当する。
外気温が0℃を大幅に下回る場合は、TとTとの差ΔTが大きいので暖房負荷が高い。
ヒータモードHTのとき、制御装置5は、式(1)により演算される空調負荷Lが相対的に高いほど、空調負荷Lに相応の高い回転数Nをポンプ21,22に与え、空調負荷Lが相対的に低いほど、空調負荷Lに相応の低い回転数Nをポンプ21,22に与えることができる。空調負荷Lに応じて回転数Nを増減させることで、暖房能力を可変に制御することができる。
第3変形例によれば、空調負荷Lに十分な暖房能力を担保しつつ、動力を抑えて省電力で運転することが可能となる。
[第4変形例]
ヒータモードHTのとき、ポンプ21,22の回転数Nを制御することで、冷媒回路10の低圧pLおよび高圧pHのうち少なくとも低圧pLを制御することができる。
ヒータモードHTのとき、制御装置5は、低圧pLを0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御する。
また、ヒータモードHTのとき、制御装置5は、高圧pHを2.8MPa以下に制御することが好ましい。
〔ヒータモード時の低圧-圧縮機動力特性〕
図5は、ヒータモードHTにおける低圧pL(横軸)と圧縮機11の動力(縦軸)との関係を示している。これは、高圧pHが一定、圧縮機11の回転数も一定の条件で計算した結果に基づく。実線は、R1234yfの場合を示し、一点鎖線は、プロパン(R290)の場合を示している。いずれの冷媒についても、低圧-圧縮機動力特性LPPは、山なりのカーブを描き、ピークは約1MPaにある。以下、特に言及しない限り、両冷媒に共通する。
図5に示した低圧pLの値の範囲は、0.1MPa以上、2.1MPa以下である。低圧pLは、0.1MPaからピークまで増加率を次第に減少させながら上昇し、ピークを超えて減少に転じると、減少率を次第に増加させながら降下する。
低圧pLが0.1MPaから1MPaまで上昇するにつれて圧縮機11の動力は増加するので、圧縮機11の動力に相応の熱量に基づく加熱能力も増加する。しかしながら、低圧pLがピークを超えて高くなり過ぎると、動力の減少により、低外気温に対して十分な加熱能力を得ることができない。低圧pLはピークからなだらかに減少するので、ピークを超えても1.2MPaまでの加熱能力は許容できる。
こうした低圧-圧縮機動力特性LPPは、ヒータモードHT時の冷凍サイクルY2(図4)と対応している。低圧pLが上昇すると、圧縮機吸入密度ρの増加に伴い、圧縮機11の動力が増加する一方で、高圧pHと低圧pLとの圧力差Δpは減少するため、エンタルピ差Δh(図4)の減少に伴い圧縮機11の動力が減少する。つまり、低圧pLが1MPaまで上昇する間は、エンタルピ差Δhの減少による動力の減少分よりも、圧縮機吸入密度ρの増加による動力の増加分が大きい。
低圧-圧縮機動力特性LPPに基づくと、ヒータモードHT時に低圧pLが上昇しても、その低圧pLが低すぎる、あるいは高すぎるのならば、加熱能力増大に繋がらないので、必ずしも加熱能力増大の効果を得ることはできない。そこで、低外気温時に十分な加熱能力を担保するために、制御装置5は、ヒータモードHT時に、低圧pLを0.2MPa以上、1.2MPa以下に維持する。
こうした低圧pLの制御は、ヒータモードHTは、ヒートポンプモードHPとは異なり、外気から熱媒体に吸熱しないため、飽和蒸気に対応する圧力以上に低圧pLを自在に上昇させることができることに基づく。
〔ヒータモード時の高圧-圧縮機動力特性〕
ヒータモードHT時における高圧pHと圧縮機動力との関係の図示は省略する。高圧pHが増加するにつれて圧縮機動力は次第に増加するので、高圧pHが高い方が加熱能力は高くなる。圧力差Δpを大きくして加熱能力を十分に確保する観点からは、圧縮機11のハウジング等の機器の耐圧が確保される範囲で、高圧pHを出来るだけ高く設定することが好ましい。そのため、制御装置5は、少なくともヒータモードHTにおいて、高圧pHを例えば低圧pLの2倍以上、2.8MPa以下に制限することが好ましい。
〔ヒータモード時の冷媒圧力制御〕
ヒータモードHT時に低圧pLを上記の値に制御するため、ポンプ21,22の回転数Nを増減させることができる。ポンプ21,22の回転数Nを変化させると、熱媒体回路20の蒸発器14を含む経路を熱媒体が循環する流量が変化するとともに、ポンプ21,22から熱媒体に伝達される熱量が変化する。それに伴い、蒸発器14における熱媒体から冷媒への放熱量が変化することで低圧pLが変化する。
制御装置5は、低圧用圧力センサ63により検知される低圧pLを検知しつつ、検知された値と目標の圧力との偏差が解消されるように、ポンプ21,22に操作量としての回転数N(制御指令)を与えるフィードバック制御を行うことができる。
また、ヒータモードHT時に高圧pHを上記の値に制御するためにも、ポンプ21,22の回転数Nを増減させることができる。ポンプ21,22の回転数Nを変化させると、熱媒体回路20の凝縮器12を含む経路を熱媒体が循環する流量が変化する。それに伴い、凝縮器12における冷媒から熱媒体への吸熱量が変化することで高圧pHが変化する。
制御装置5は、高圧用圧力センサ64により検知される高圧pHを検知しつつ、検知された値と目標の圧力との偏差が解消されるように、ポンプ21,22に操作量としての回転数N(制御指令)を与えるフィードバック制御を行うことができる。
第4変形例によれば、ヒータモードHT時の低圧-動力特性LPPに基づき、低圧pLを0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御しつつ、0.2MPa以上、1.2MPa以下の範囲内で、ヒータモードHT時のポンプ21,22の回転数を他の運転モード時の回転数と比べて増加させることにより、暖房能力を確実に担保することができる。
[第5変形例]
上記実施形態の温調システム1は、図6に示す起動時ヒータモードHT0を備えていてもよい。
起動時ヒータモードHT0では、室外熱交換器23により外気から熱媒体に吸熱させるため、室外熱交換器23に熱媒体を流入させる。また、冷媒の加温を車室8内の暖房に優先させるため、凝縮器12に熱媒体を流入させずに凝縮器バイパス経路12Aへと迂回させることで、冷媒の熱媒体への放熱を防ぐ。そして、室内熱交換器25から流出した熱媒体を蒸発器14において冷媒へと放熱させる。さらには、室内熱交換器25における空気と熱媒体との熱交換を抑えるために、室内送風機25Aの作動を停止させることが好ましい。
起動時ヒータモードHT0における冷媒への入熱量を増加させるため、第1、第2ポンプ21,22のそれぞれの回転数Nを例えば最大回転数にまで増加させることができる。そうすると、外気から熱媒体を介して冷媒に与えられる熱量に加えて、第1、第2ポンプ21,22の動力に相応の熱量を熱媒体から冷媒に与えることができるとともに、熱媒体の循環流量の増加により熱媒体から冷媒への放熱が促進されるので、冷媒回路10の定常運転への移行が促進される。そのため、温調システム1の起動時から、起動時ヒータモードHT0を経てヒータモードHTに移行するまでの所要時間を抑えて、車室8内の暖房を早期に開始することができる。
室外熱交換器23の出口から、凝縮器バイパス経路12Aおよび室内熱交換器25を経て蒸発器14の入口までの間に亘り、熱媒体と冷媒との間の熱の授受、および熱媒体と空気との間の熱の授受は抑えられている。外気から吸熱した熱媒体は、凝縮器バイパス経路12Aと室内熱交換器25とを通過して、冷媒が流れる蒸発器14まで熱を搬送する。
外気温が氷点下の非常に低い状態で車両が停止している間に、熱媒体および冷媒のそれぞれの温度は外気温と同程度にまで下がっている。そのため、温調システム1の起動により圧縮機11の起動が開始され、冷凍サイクルが始動した直後は、冷媒が熱媒体を冷却することで冷媒回路10の低圧pLが降下し、冷媒の蒸発温度は外気温よりも低くなる。しかし、起動時ヒータモードHT0によれば、外気から熱媒体に吸熱した熱と、ポンプ21,22からの排熱とを冷媒に継続的に伝達することで、冷媒回路10の低圧が次第に上昇し、蒸発温度も上昇する。その後、低圧pLが所定値まで上昇し、冷媒回路10が定常運転することで、圧縮機11の動力から熱媒体に取り出した熱により温調対象を加熱することが可能となるのでヒータモードHTに移行すると良い。
熱媒体の温度が外気温を超えると外気から吸熱が不十分となるので、制御装置5は、熱媒体が外気温に近づいた時に温調システム1をヒータモードHTに移行させると良い。例えば、外気温(例えば-20℃)に対して所定の温度差αだけ低い閾値Tを熱媒体の温度が上回った時にヒータモードHTに移行させるとよい。
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
温調システム1は、温調機器としての室内熱交換器25に加えて、あるいは室内熱交換器25に代えて、バッテリー装置等の他の温調機器を備えていてもよい。その場合、熱媒体回路20は、他の温調機器を熱媒体により冷却または加熱するための経路を含む。
[付記]
以上の開示により、以下に記す構成が把握される。
〔1〕車両用の温調システム(1)であって、
圧縮機(11)、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプ(21,22)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(25)と、
前記室外熱交換器(23)から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、を含み、
前記温調システム(1)は、運転モードとして、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入するモードであって、前記圧縮機(11)の動力と前記ポンプ(21,22)の動力とを熱源として利用する動力熱源モード(HT)を備えるとともに、
前記ポンプ(21,22)の回転数(N)を可変に設定可能に構成される制御装置(5)を備え、
前記制御装置(5)は、
前記ポンプ(21,22)の前記回転数(N)を少なくとも第1回転数(N)と第2回転数(N)とに変更可能であって、前記動力熱源モード(HT)のとき、他の前記運転モード(HP)のときに前記ポンプ(21、22)に設定される前記第1回転数(N)よりも大きい前記第2回転数(N)を前記ポンプ(21,22)に設定可能に構成される、
車両用温調システム(1)。
〔2〕前記熱媒体回路(20)は、前記ポンプ(21、22)として、第1ポンプ(21)および第2ポンプ(22)を含み、
前記温調システム(1)は、前記他の運転モードとして、
前記低圧側熱交換器(14)および前記室外熱交換器(23)を前記熱媒体が前記第1ポンプ(21)により循環する低圧側回路(C1)と、前記高圧側熱交換器(12)および前記温調機器(25)を前記熱媒体が前記第2ポンプ(22)により循環する高圧側回路(C2)とが形成されるヒートポンプモード(HP)を備える、
〔1〕項に記載の車両用温調システム(1)。
〔3〕前記制御装置(5)は、
前記ヒートポンプモード(HP)のとき、前記第1ポンプ(21)に設定される前記第1回転数(N)よりも大きい前記回転数(N)を前記第2ポンプ(22)に設定可能に構成される、
〔2〕項に記載の車両用温調システム。
〔4〕前記制御装置(5)は、
前記動力熱源モード(HT)であって前記熱媒体の温度が所定温度に対して低いとき、前記第2回転数(N)を前記ポンプ(21,22)に設定可能に構成される、
〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
〔5〕前記制御装置(5)は、
前記動力熱源モード(HT)のとき、熱負荷に応じた前記回転数(N)を前記ポンプ(21,22)に設定可能に構成される、
〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
〔6〕前記制御装置(5)は、
前記動力熱源モード(HT)のとき、前記ポンプ(21、22)に対する制御指令に基づく前記回転数(N)の制御により、前記冷媒回路(10)の低圧(pL)および高圧(pH)のうち少なくとも前記低圧(pL)を制御するように構成される、
〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
〔7〕車両用の温調システム(1)を用いる温調方法であって、
前記温調システム(1)は、
圧縮機(11)、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプ(21,22)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(25)と、
前記室外熱交換器(23)から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、を含み、
前記温調方法は、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入するモードであって、前記圧縮機(11)の動力と前記ポンプ(21,22)の動力とを熱源として利用する動力熱源モード(HT)のとき、
他の運転モード(HP)のときに前記ポンプ(21、22)に設定される第1の前記回転数(N)よりも大きい第2の前記回転数(N)を前記ポンプ(21、22)に設定する、車両用温調方法。
1 温調システム
5 制御装置
8 車室
10 冷媒回路
11 圧縮機
12 凝縮器(高圧側熱交換器)
12A 凝縮器バイパス経路(高圧側バイパス経路)
12V 凝縮器流量調整弁(高圧側流量調整弁)
13 膨張弁(減圧部)
14 蒸発器(低圧側熱交換器)
14A 蒸発器バイパス経路(低圧側バイパス経路)
14V 蒸発器流量調整弁(低圧側流量調整弁)
15 リザーブタンク
16 連通経路
17 開閉弁
20 熱媒体回路
21 第1ポンプ
21D 駆動回路部
21M モータ
22 第2ポンプ
22D 駆動回路部
22M モータ
23 室外熱交換器
23A 室外送風機
24 室外バイパス経路
25 室内熱交換器(温調機器)
25A 室内送風機
31 第1切替弁
32 第2切替弁
33 第3切替弁
61 外気温センサ
62 温度センサ
63 低圧用圧力センサ
64 高圧用圧力センサ
65 熱媒体温度センサ
401,402 配管
501 メモリ
502 演算部
503 記憶部
504 入出力部
C1 低圧側回路
C2 高圧側回路
CC 直列回路
HP ヒートポンプモード
HT ヒータモード(動力熱源モード)
HT0 起動時ヒータモード
LPP 圧縮機動力特性
U HVACユニット
Y1,Y2 冷凍サイクル
pH 高圧
pL 低圧
Δh エンタルピ差
Δp 圧力差

Claims (7)

  1. 車両用の温調システムであって、
    圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
    前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備え、
    前記熱媒体回路は、
    前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
    前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
    前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプと、
    外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
    前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
    前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含み、
    前記温調システムは、運転モードとして、
    前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入するモードであって、前記圧縮機の動力と前記ポンプの動力とを熱源として利用する動力熱源モードを備えるとともに、
    前記ポンプの回転数を可変に設定可能に構成される制御装置を備え、
    前記制御装置は、
    前記ポンプの前記回転数を少なくとも第1回転数と第2回転数とに変更可能であって、前記動力熱源モードのとき、他の前記運転モードのときに前記ポンプに設定される前記第1回転数よりも大きい前記第2回転数を前記ポンプに設定可能に構成される、
    車両用温調システム。
  2. 前記熱媒体回路は、前記ポンプとして、第1ポンプおよび第2ポンプを含み、
    前記温調システムは、他の前記運転モードとして、
    前記低圧側熱交換器および前記室外熱交換器を前記熱媒体が前記第1ポンプにより循環する低圧側回路と、前記高圧側熱交換器および前記温調機器を前記熱媒体が前記第2ポンプにより循環する高圧側回路とが形成されるヒートポンプモードを備える、
    請求項1に記載の車両用温調システム。
  3. 前記制御装置は、
    前記ヒートポンプモードのとき、前記第1ポンプに設定される前記第1回転数よりも大きい前記回転数を前記第2ポンプに設定可能に構成される、
    請求項2に記載の車両用温調システム。
  4. 前記制御装置は、
    前記動力熱源モードであって前記熱媒体の温度が所定温度に対して低いとき、前記第2回転数を前記ポンプに設定可能に構成される、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
  5. 前記制御装置は、
    前記動力熱源モードのとき、熱負荷に応じた前記回転数を前記ポンプに設定可能に構成される、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
  6. 前記制御装置は、
    前記動力熱源モードのとき、前記ポンプに対する制御指令に基づく前記回転数の制御により、前記冷媒回路の低圧および高圧のうち少なくとも前記低圧を制御するように構成される、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
  7. 車両用の温調システムを用いる温調方法であって、
    前記温調システムは、
    圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
    前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備え、
    前記熱媒体回路は、
    前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
    前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
    前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプと、
    外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
    前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
    前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含み、
    前記温調方法は、
    前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入するモードであって、前記圧縮機の動力と前記ポンプの動力とを熱源として利用する動力熱源モードのとき、
    他の運転モードのときに前記ポンプに設定される第1の前記回転数よりも大きい第2の前記回転数を前記ポンプに設定する、
    車両用温調方法。
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