JP2020103286A - 抗菌性向上剤および抗菌性向上方法 - Google Patents

抗菌性向上剤および抗菌性向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、抗菌剤の抗菌性向上剤および抗菌剤の抗菌性向上方法を提供することを課題とする。【解決手段】本開示によれば、酸処理ゼラチンおよび/コラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、抗菌剤の抗菌性向上剤および抗菌剤の抗菌性向上方法を提供することにより上記課題を解決する。【選択図】なし

Description

関連出願
この出願は、平成30年12月26日に日本国特許庁に出願された出願番号2018−243574号の優先権の利益を主張する。優先権基礎出願はその全体について、出典明示により本明細書の一部とする。
本発明は、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、抗菌剤の抗菌性向上剤および抗菌剤の抗菌性向上方法に関する。
抗菌物質は、微生物の増殖による品質劣化を防止するために、食品、および化粧料等の製品に添加されることがある。しかしながら、製品における抗菌効果が、培地で試験された効果と比較して低い場合がある。したがって、製品においては、多量の抗菌物質の添加が必要とされる問題、あるいは所望の抗菌効果が得られない問題があった。
食品、および化粧料等の分野では、抗菌物質として、カチオン性化合物が利用されることがある。カチオン性化合物は、細菌等の細胞壁の分解作用や、細胞膜タンパク質の変性作用、細胞壁を構成するリン脂質やシアル酸等のアニオン性物質とイオン的に引き合うことで細胞表面の電気バランスを崩す作用などにより、様々な抗菌効果を発揮すると考えられている。従来、抗菌剤として使用されるカチオン性化合物としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性低分子化合物や、キトサン、リゾチーム、ポリリジン、プロタミン、ナイシン、およびカチオン化オリゴ糖等のポリカチオン性ポリマーが知られている。しかしながら、カチオン性低分子化合物は、刺激が強く、用途や使用量が制限されるという欠点がある。一方、ポリカチオン性ポリマーは、抗菌効果が弱いという欠点がある。
特許文献1には、アニオン性両親媒性物質およびポリアニオン性ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性物質と、ポリカチオン性ポリマーを含む複合粒子が、これらのアニオン性物質とポリカチオン性ポリマーが単独で有する抗菌作用を格段に向上させて発揮させることができ、より有効な抗菌剤となり得ることが開示されているが、特許文献1に記載の発明は、複合粒子を形成する工程が必要であった。
特開2014−1166号公報
本開示の解決課題は、酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、抗菌剤の抗菌性向上剤および抗菌剤の抗菌性向上方法を提供することである。
本開示は、以下を提供する:
(1)
酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、
リゾチーム類および/またはナイシンを含有する抗菌剤の抗菌性向上剤;
(2)
リゾチーム類および/またはナイシンを含有する抗菌剤に、
酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを共存させることを特徴とする、
前記抗菌剤の抗菌性向上方法;
(3)
リゾチーム類および/またはナイシン、ならびに酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを含有する抗菌剤。
本開示によれば、抗菌剤の抗菌性向上剤および抗菌剤の抗菌性向上方法を提供することができる。これにより、例えば、少ない添加量の抗菌剤で高い抗菌効果が得られ、そして製品の風味等の品質への影響も少なくすることが期待できる。
図1は、中華丼における微生物活性測定試験結果を示す。 図2は、ホワイトソースにおける微生物活性測定試験結果を示す。
1つの態様において、本開示は、
酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、
リゾチーム類および/またはナイシンを含有する抗菌剤の抗菌性向上剤に関する。
別の態様において、本開示は、
リゾチーム類および/またはナイシンを含有する抗菌剤に、
酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを共存させることを特徴とする、
前記抗菌剤の抗菌性向上方法に関する。
さらなる別の態様において、本開示は、
リゾチーム類および/またはナイシン、ならびに酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを含有する抗菌剤に関する。
本開示において、ゼラチンはコラーゲンを加熱抽出したタンパク質であり、例えば、牛、豚および魚等に由来する。本開示において、ゼラチンは、好ましくは酸処理ゼラチンである。
本明細書において「約」とは±10%、好ましくは±5%の範囲を意味する。
ゼラチンの量は、抗菌対象物の種類等に応じて適宜設定される。具体的な例として、抗菌対象物中のゼラチンは、約0.025、0.05、0.10、0.25、0.50、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、および9.0重量%以上であり、かつ約10、11、12、13、14および15重量%以下である。一態様では、抗菌対象物中のゼラチンは、約0.025〜3.0重量%、好ましくは約0.1〜2.5重量%である。
本開示において、特に明記しない場合、コラーゲンはコラーゲンペプチドを含む。コラーゲンペプチドはコラーゲンを酵素分解したものが一般的に使用され、例えば、牛、豚および魚等に由来する。コラーゲンペプチドは例えば、平均分子量約250、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、および10000またはこれらの間の任意の値である。具体的には、コラーゲンペプチドは平均分子量約500〜10000、好ましくは、約3000〜10000、例えば約3000〜5000である。
本開示において、酸処理ゼラチンは例えば、平均分子量約40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、110000、120000、130000、140000および150000またはこれらの間の任意の値である。具体的には、酸処理ゼラチンは平均分子量約40000〜150000、好ましくは、約50000〜100000である。
コラーゲンペプチドの量は抗菌対象物の種類等に応じて適宜設定される。具体的な例として、抗菌対象物中のコラーゲンペプチドは、例えば約0.025、0.05、0.10、0.25、0.50、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、および9.0重量%以上であり、かつ約10、11、12、13、14および15重量%以下である。一態様では、抗菌対象物中のコラーゲンペプチドは、約0.25〜6.0重量%、好ましくは約0.5〜5重量%、更に好ましくは、約1.0〜4.0重量%である。
本開示において、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドは抗菌対象物中に予め存在していても、していなくてもよい。ある実施形態では、最終的に抗菌対象物中に所定の量のゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドが存在していればよく、当業者が適宜、抗菌対象物中のゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドの量を、例えば上記の量に設定または調節することができる。また他の実施形態では、抗菌対象物中に予め存在しているゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドではなく、添加するゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドの量を、例えば上記の量に設定または調節することができる。
本開示において、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドは、人為的に抗菌対象物に加えられてもよく、または、抗菌対象物に天然に含まれているものを利用してもよい。例えば、コラーゲンペプチドを含む食品に抗菌剤を加える態様も、本開示に含まれ得る。
本開示の抗菌性向上剤、および抗菌性向上方法は、例えば、飲食品、化粧料、オーラルケア製品、ニキビ予防塗り薬および医薬品に利用される。飲食品、化粧料、オーラルケア製品、ニキビ予防塗り薬および医薬品は適宜、当業者が利用できる方法により製造され得る。
本開示において、飲食品の例として、ソフトドリンク、乳製品、デザート、菓子、冷菓、惣菜、調味料、ドレッシング、嚥下補助品、およびサプリメントが挙げられる。より具体的に、飲食品は、例えば、グミキャンディ、マシュマロ、ソフトキャンディ、ムース、ババロアおよびゼリー等を含む洋菓子、あられおよびせんべい等を含む和菓子、アイスクリームおよびシャーベット等を含む冷菓子、ハム、ソーセージ、テリーヌおよびチルド流通惣菜等の惣菜、スープ、一般食品、加工食品、幼児食、ならびに介護食である。
本開示において、化粧料は、例えば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、マスク、石鹸、ボディシャンプー、白粉、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、マスカラ、アイシャドー、眉墨等の皮膚用化粧料、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアスタイリング剤、およびヘアトリートメント等の毛髪用化粧料が挙げられる。
本開示において、抗菌対象物中のリゾチーム類および/またはナイシンは、抗菌対象物の種類等に応じて適宜設定される。より具体的には、例えば約0.000025、0.00005、0.0001、0.00025、0.0005、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.25、0.5、および1.0重量%以上であり、かつ約5、4、3、および2重量%以下またはこれらの間の任意の値である。一態様では、抗菌対象物中のリゾチーム類またはナイシンは、約0.000025〜3.0重量%、好ましくは、0.00005〜2.0重量%である。リゾチーム類とナイシンの両方を含む場合は、各々が独立して上記の量となってもよく、合計量が上記の量となってもよい。
本開示において、「リゾチーム類」とは、リゾチームおよび/またはその塩、並びにこれらの変性物から選ばれる少なくとも1種を意味する。リゾチームとは、N−アセチルグルコサミンとN−アセチルムラミン酸とのβ−1,4結合を加水分解する性質を有するタンパク質をいう。本発明で使用するリゾチーム類は、従来広く使用され、低コストで入手容易である点から、食品添加物等としての卵白リゾチームであることが好ましい(第9版食品添加物公定書に基づく)。
リゾチームの塩としては、食品添加物として許容可能または薬学的に許容可能である塩が挙げられる。例えば、塩酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、へキサメタリン酸、硝酸、硫酸等の無機酸の塩や、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸、グルタミン酸、グリセロリン酸、グルコン酸等の有機酸の塩が挙げられる。リゾチームの塩のなかでは、無機酸の塩が好ましく、安全性が確立している点から塩化リゾチーム等の塩酸塩がより好ましい。
リゾチームおよび/またはその塩の変性方法としては、加熱処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理、有機溶剤処理、界面活性剤処理、酸化処理、還元処理、高圧力処理等を挙げることができる。これらの変性処理は、単独あるいは併用して行うことができる。なお、リゾチーム変性物には、リゾチームおよび/またはその塩を分解処理したリゾチーム由来ペプチドも含まれる。
本開示において、「ナイシン」とは、ナイシンA、ナイシンZ、ナイシンQ等のナイシン類のいずれかを含めばよい。本発明で使用するナイシンは、従来広く使用され、低コストで入手容易である点から、食品添加物等としてのナイシンであることが好ましい(第9版食品添加物公定書に基づく)。なお、ナイシンが含まれる乳酸菌発酵粉末等を使用することもできる。
本開示において、抗菌対象物中のpHは、抗菌対象物の種類等に応じて適宜設定される。より具体的には、例えば約pH3、4、5、6、7、および8以上であり、好ましくは、約pH3〜8、さらに好ましくは約pH4〜7である。抗菌対象物中のpHは、具体的には、約pH4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5および7.0である。
本開示において、抗菌とは、微生物の増殖を抑制することである。具体的には、抗菌とは、分解等による殺菌、滅菌、静菌または除菌だけでなく、微生物の成長または発生の抑制も意味することができる。微生物の成長の抑制には、全く成長させないことだけでなく、成長の速度を鈍化させることも含む。
本開示において、微生物は、具体的には、カビもしくは酵母等の真菌類、または、真正細菌等の細菌類等が含まれる。細菌類は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌に関わらない。細菌類は、例えば、バチラス属細菌、大腸菌群、乳酸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、カンピロバクター属細菌、Pseudomonas属細菌、および放線菌である。細菌類は、具体的には、Bacillus subtilis、Lactobacillus brevis、およびLactobacillus plantarumであってもよい。
本開示のリゾチーム類および/またはナイシンを含有する抗菌剤は、リゾチーム類および/またはナイシン以外の抗菌剤を含んでもよい。また、本開示の抗菌性向上方法は、リゾチーム類および/またはナイシン以外の抗菌剤を利用してもよい。リゾチーム類および/またはナイシン以外の抗菌剤は、例えば、天然抗菌薬、半合成抗菌薬、および合成抗菌薬であり得る。リゾチーム類および/またはナイシン以外の抗菌剤は、特に限定されないが、酢酸ナトリウム、アジピン酸、ソルビン酸等の有機酸およびその塩類、グリシン、アラニン等のアミノ酸類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤類、チアミンラウリル硫酸塩等のビタミン類、キトサン、チャ抽出物、孟宗竹抽出物等天然由来成分からの抽出物であってもよい。
微生物の抗菌効果は、例えば、温度、pH、酸素、金属イオン、水分活性、食塩、保存料または圧力等の環境因子の量または種類等の変化によりさらに向上し得る。本開示において当業者は、目的に応じて、環境因子の量または種類等を調整できる。
本明細書において例えば「a^b」または「a^」は、aをb回掛けた値を意味する。
以下に実施例を示して本発明を具体的かつ詳細に説明するが、実施例は本発明の例示のために用いられるものであり、本発明の限定を意図するものではない。特に記載の無い限り、「%」、「部」は質量基準である。
実施例1
枯草菌(Bacillus subtilis、耐熱性芽胞形成菌)に対する酸処理ゼラチンによる抗菌効果向上作用
一般生菌数測定培地、標準寒天培地(日水製薬(株))(STD)にゼラチン類を添加していない培地およびニッピゼラチンAP−100(酸処理ゼラチン)を添加した培地を調製した。培地は、卵白リゾチームを終濃度が0、0.25、0.5、1、2.5、5、10、30、および50ppmとなるように調製した。培地に菌体を2.2×10^cfu/シャーレとなるように播種し、35℃で2日培養した。結果を表1に示す。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
ゼラチンを0.5%添加した場合、リゾチーム濃度あたりの抗菌効果が10倍以上向上した。ゼラチンを1.0%以上添加した場合、リゾチーム濃度あたりの抗菌効果が50倍近くまで向上した。

実施例2
枯草菌(Bacillus subtilis、耐熱性芽胞形成菌)に対するコラーゲンペプチドによる抗菌効果向上作用
一般生菌数測定培地、標準寒天培地(日水製薬(株))(STD)にコラーゲンペプチドを添加していない培地およびコラーゲンペプチド(ニッピペプタイドFCP−EX)を添加した培地を調製した。培地は、卵白リゾチームを終濃度が0、0.5、1、2.5、5、10、および30ppmとなるように調製した。培地に菌体を1.2×10^cfu/シャーレとなるように播種し、35℃で2日培養した。結果を表2に示す。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
コラーゲンペプチドの濃度に比例して、抗菌効果が向上した。
実施例3
枯草菌(Bacillus subtilis、耐熱性芽胞形成菌)に対するゼラチン等による抗菌効果向上作用
一般生菌数測定培地、標準寒天培地(日水製薬(株))にゼラチン類を添加していない培地ならびに酸処理ゼラチン、コラーゲンペプチド、アルカリ処理ゼラチン、コラーゲン、アミノ酸、およびゲル化剤それぞれを添加した培地を調製した。培地は、卵白リゾチームを終濃度が0、0.5、1、2.5、5、および10ppmとなるように調製した。ニッピゼラチンは、(株)ニッピから購入し、ニッピペプタイドは、(株)ニッピから購入し、ROUSSELOT150LP60は、ルスロゼライス(株)から購入し、KAPRO B95 SFは、DCP Ingredientsから購入し、L−リジン塩酸塩は、フロンティアフーズ(株)から購入し、かつゲル化剤は、日水製薬(株)から購入した。表中のゲル化剤は、STD培地に含まれる寒天と同量加え、培地中の寒天の終濃度を3.0%とした。培地に菌体を2.2×10^cfu/シャーレとなるように播種し、35℃で2日培養した。結果を表3に示す。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
いずれの酸処理ゼラチン及びコラーゲンペプチドであっても、抗菌効果の向上が確認できた。いずれもゼラチン類自体には、抗菌効果は確認できなかった。アルカリ処理ゼラチンおよびコラーゲンについては、抗菌効果向上の効果はほとんど確認できなかった。抗菌効果向上は、酸処理ゼラチンが最も高かった。酸処理ゼラチンに近い電荷のリジンには、抗菌向上効果は確認できなかった。寒天によるゲル強度の増加は抗菌性を向上しなかったため、ゼラチンのゲル強度は抗菌効果の向上に関与していないと推定される。

また、それぞれのゼラチン、コラーゲンペプチドおよびコラーゲンの情報について、メーカー提供資料に基づき、以下の表Aにまとめた。
実施例4
枯草菌(Bacillus subtilis、耐熱性芽胞形成菌)に対するゼラチンによるナイシンの抗菌効果向上作用
一般生菌数測定培地、標準寒天培地(日水製薬(株))にゼラチン類を添加していない培地および2.0%酸処理ゼラチンを添加した培地を調製した。培地は、pHを5.5となるように調製した。培地に菌体を1.8×10cfu/シャーレとなるように播種し、35℃で2日培養した。ナイシンは、食品添加物のナイシンを使用した。結果を表4に示す。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
ナイシンにおいても、酸処理ゼラチンによる抗菌効果向上を確認した。
実施例5
乳酸菌(Lactobacillus brevis、およびLactobacillus plantarum)に対するゼラチンによるリゾチームの抗菌効果向上作用
乳酸菌数測定用培地 BCP加プレートカウントアガール(日水製薬(株))にゼラチン類を添加していない培地および1.0%酸処理ゼラチンを添加した培地を調製した。培地は、pHを6.4となるように調製した。抗菌剤として、リゾチーム、アートフレッシュ50/50(三栄源エフ・エフ・アイ(株))、およびアートフレッシュ101(三栄源エフ・エフ・アイ(株))を使用した。アートフレッシュ50/50は、リゾチーム、およびショ糖脂肪酸エステル製剤を含む製剤であり、アートフレッシュ101は、酢酸(Na)、グリシン、リゾチーム、およびショ糖脂肪酸エステル製剤を含む製剤である。
培地に菌体を以下の表の通り播種し、30℃で2日培養した。結果を表5および6に示す。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
いずれの乳酸菌種に対しても、リゾチームの抗菌効果向上を確認した。リゾチーム単体だけでなく、製剤についても同様の効果を確認できた。

実施例6
Lactobacillus brevisに対するゼラチンによるナイシンの抗菌効果向上作用
一般生菌数測定培地、標準寒天培地(日水製薬(株))にゼラチン類を添加していない培地および2.0%酸処理ゼラチンを添加した培地を調製した。培地は、pHを6.0となるように調製した。培地に菌体を9.5×10^cfu/シャーレとなるように播種し、30℃で2日培養した。結果を表7に示す。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
ナイシンに関しても乳酸菌に対して、リゾチーム同様の抗菌効果向上作用を示した。
実施例7
Bacillus subtilisに対するゼラチンによる様々な抗菌剤の抗菌効果向上作用
一般生菌数測定培地、標準寒天培地(日水製薬(株))にゼラチン類を添加していない培地および1.0または2.0%酸処理ゼラチンの培地を調製した。培地は、pHを6となるように調製した。培地に菌体を1.5×10^cfu/シャーレとなるように播種し、35℃で2日培養した。抗菌剤として、ε−ポリリジン(JNC(株))、キトサン((株)キミカ)、酢酸ナトリウム(日本合成化学工業(株))、グリシン(有機合成薬品工業(株))、およびグリセリンエステル(太陽化学(株))を使用した。結果を表8に示す。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
ゼラチンの添加により抗菌効果が大きく上昇した抗菌剤は確認できなかった。
実施例8
中華丼を用いた微生物活性測定試験(卵白リゾチーム)
表9に示されるように市販レトルト中華丼(江崎グリコ株式会社)にゼラチンを添加し、沸騰水中で10分間加熱処理した後、室温まで冷却した。リゾチーム(1%溶液)と被検菌原液(Bacillus subtilis)を表9に示される量になるように添加し中華丼サンプルとした。調製した中華丼サンプルの内容を表9に示した。それぞれの中華丼サンプルを微生物活性計測システムLeonis(アドバンス理工株式会社)にセットし、25℃で45時間微生物活性を測定した。1.0%ゼラチンは中華丼の風味に変化を与えなかった。結果を図1に示した。実線はゼラチン添加試験区を示し、破線はゼラチン無添加試験区を示す。ゼラチン添加区で菌の生育が遅延することを確認した。
実施例9
ホワイトソースを用いた微生物活性測定試験(リゾチーム製剤)
表10に示されるように市販ホワイトソース(ハインツ製)にゼラチンとアートフレッシュ(AF)NO.101を添加し、沸騰水中で10分間加熱処理した後、室温まで冷却した。被検菌原液(Bacillus subtilis)を表10に示される量になるように添加しホワイトソースサンプルとした。調製したホワイトソースサンプルの内容を表10に示した。それぞれのホワイトソースサンプルを微生物活性計測システムLeonis(アドバンス理工株式会社)にセットし、25℃で42時間微生物活性を測定した。1.0%ゼラチンはホワイトソースの風味に変化を与えなかった。結果を図2に示した。実線はゼラチン添加試験区を示し、破線はゼラチン無添加試験区を示す。ゼラチン添加区で菌の生育が遅延することを確認した。
実施例10
焼き肉のたれを用いた保存試験(リゾチーム製剤)
市販の焼き肉のたれ(pH5.5、水分活性0.95)に、ゼラチン、および製剤を添加した。アルミパウチに入れ、沸騰水中で10分間加熱処理し、ゼラチンを溶解させた。冷却後、B.subtillis芽胞液をそれぞれ約100cfu/g播種し、30℃で所定の期間保存した。検体を滅菌イオン交換水で10倍に希釈し、標準寒天培地に混合し、30℃で2日間培養し、その後生菌数を測定した。結果を以下の表11および12に示した。
結果
試験区1:アートフレッシュ(登録商標)50/50(AF50/50)を添加した場合
静菌剤を添加しない場合、焼肉のたれは保存7日目で被検菌数が>10^5を超えた。AF50/50のみのを添加した場合、保存7日目でも保存可能であったが、35日後には被検菌数が増加した。AF50/50および酸処理ゼラチンを添加した場合、35日後でも被検菌数は増加しなかった。

試験区2:アートフレッシュ(登録商標)NO.101(A101)を添加した場合
AF101添加のみの添加により、保存7日目でも保存可能であったが、10日後には被検菌が増加した。AF101および酸処理ゼラチンを添加した場合、10日後でも被検菌数の増加はごく僅かであった。一方で、AF101およびアルカリ処理ゼラチンを添加した場合、保存性向上は認められなかった。
実施例11
リゾチーム、塩化リゾチームの枯草菌(耐熱性芽胞形成菌)に対する、静菌効果
STD培地にゼラチンを添加していない培地および2.0%ニッピゼラチンAP−100を添加した培地を調製した。培地は、pHを6.0となるように調製した。培地に菌体を100cfu/シャーレとなるように播種し、35℃で2日培養した。結果を以下の表13に示す。リゾチームをキユーピー株式会社、三菱ケミカルフーズ株式会社から購入し(それぞれリゾチームAおよびBとする)、塩化リゾチームを富士フィルム和光純薬株式会社から購入した。培地はリゾチーム類を表13に記載の終濃度となるように調製した。評価は、−:優れた抗菌効果が見られるレベル、±:抗菌効果が見られるレベル、+:多少の抗菌効果が見られるレベル、++:わずかに抗菌効果が見られるレベル、+++:抗菌剤なしと同レベルとして行った。
結果
いずれのメーカーで購入したリゾチームも、酸処理ゼラチンの添加により抗菌効果向上作用を示した。また、塩化リゾチームにおいても酸処理ゼラチンの添加により抗菌効果向上作用を示した。
本開示によれば、抗菌剤の抗菌性向上剤および抗菌剤の抗菌性向上方法を提供することができる。

Claims (3)

  1. 酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、
    リゾチーム類および/またはナイシンを含有する抗菌剤の抗菌性向上剤。
  2. リゾチーム類および/またはナイシンを含有する抗菌剤に、
    酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを共存させることを特徴とする、
    前記抗菌剤の抗菌性向上方法。
  3. リゾチーム類および/またはナイシン、ならびに酸処理ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを含有する抗菌剤。
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