JP2020100324A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイブリッド車両にあって、速やかなる加速を要求する運転者の意思に合致したレスポンスを実現しながらも、エネルギ消費をできる限り抑制する。【解決手段】走行用電動機に供給するべき電力を発電する発電機に駆動力を供給できる内燃機関と、内燃機関に駆動力を供給できるモータリング用電動機とを具備する車両を制御するものであって、アクセル開度が大きくなるほど大きくなる要求出力A’が閾値Dを超えた場合に内燃機関を始動してこれを運転し、要求出力Aが閾値D以下である場合に内燃機関の運転を停止することとし、運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速または現在走行用電動機が出力している駆動力に応じて変動する補正量を、運転者の実際の操作による実アクセル開度に加増し、その加増したアクセル開度に対応した要求出力A’を閾値Dと比較して内燃機関を始動するべきか否かを決定する制御装置を構成した。【選択図】図2
Description
本発明は、走行用の電動機及び内燃機関を搭載したハイブリッド車両を制御する制御装置に関する。
近時、電動機及び内燃機関の二種の動力源を備えるハイブリッド車両が一定の普及を見ている。シリーズ方式のハイブリッド車両(例えば、下記特許文献を参照)は、内燃機関により発電用モータジェネレータを駆動して発電を行い、発電した電力を蓄電装置(バッテリ及び/またはキャパシタ)に蓄えるとともに走行用モータジェネレータに供給する。そして、走行用モータジェネレータによって車両の駆動輪を回転させて走行する。
発電用モータジェネレータのみならず、走行用モータジェネレータもまた、回生制動により発電を行い、発電した電力を蓄電装置に蓄えることができる。蓄電装置の容量一杯まで既に電荷が蓄えられている場合には、回生制動により得られる電力を敢えて発電用モータジェネレータに供給し、これを電動機として作動させて内燃機関を回転駆動することで、余剰の電力を消費する。
ハイブリッド車両では、内燃機関が燃料を燃焼させて回転駆動力を発生させなくとも、走行用モータジェネレータが出力する回転駆動力により車両を走行させることが可能である。故に、車両の運用中であっても、内燃機関の運転を停止している状態が継続することがある。
蓄電装置が現在蓄えている電荷の量が所定量を下回っている場合、または走行用モータジェネレータに対する要求出力が大きい場合には、内燃機関を始動し気筒に燃料を供給してこれを燃焼させ、内燃機関の出力する回転駆動力を以て発電用モータジェネレータを駆動し、発電を実施して蓄電装置を充電、または走行用モータジェネレータに供給する電力を増強する。
シリーズ方式のハイブリッド車両にあって、発電用モータジェネレータは、停止した内燃機関を始動する準備として内燃機関をモータリング(または、クランキング)する役割を兼ねる。モータリング時には、蓄電装置から必要な電力の供給を受ける。
内燃機関が燃料を燃焼させて自立的に回転できるようになるためには、内燃機関の各気筒の現在の行程またはピストンの位置を知得した上で、各気筒の行程に合わせて適切なタイミングで燃料を噴射し、かつ適切なタイミングで燃料を着火燃焼させる必要がある。
既存のシステムでは、内燃機関のクランクシャフトが所定角度(例えば、10°CA(クランク角度))回転する都度パルス信号を発するクランク角センサの出力信号と、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトが所定角度(カムシャフトの一回転を気筒数で割った角度。三気筒エンジンであれば、120°(240°CA))回転する都度パルス信号を発するカム角センサの出力信号とを用いて、気筒判別を行っている。気筒判別を完了するには、停止していた内燃機関のクランクシャフトが二回転程度回転する必要がある。その分だけ、内燃機関の始動に時間を要することになる。
内燃機関の始動の遅延は、車速が低い、または走行用モータジェネレータが出力する駆動力が小さい状況から、運転者がアクセルペダルを踏み込んで車両の加速を要求したときに、加速の遅れとなって現れる。
運転者による加速要求に備えて、常時内燃機関のモータリングを実行しておくことも考えられるが、蓄電装置に蓄えている電力を徒に消費し、後に燃料を消費して発電を行うことになり、燃費性能上の不利を招く。常時内燃機関を運転しておくことも、同様である。
本発明は、電動機及び内燃機関の二種の動力源を備えるハイブリッド車両にあって、速やかなる加速を要求する運転者の意思に合致したレスポンスを実現しながらも、エネルギ消費をできる限り抑制することを所期の目的としている。
本発明では、駆動輪に走行のための駆動力を供給できる走行用電動機と、走行用電動機に供給するべき電力を発電する発電機に発電のための駆動力を供給できる、または駆動輪に走行のための駆動力を供給できる内燃機関と、内燃機関に当該内燃機関を回転させるための駆動力を供給できるモータリング用電動機とを具備するハイブリッド車両を制御するものであって、アクセル開度が大きくなるほど大きくなる要求出力が閾値を超えた場合に内燃機関を始動してこれを運転し、要求出力が閾値以下である場合に内燃機関の運転を停止することとし、運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速及び/または現在走行用電動機が出力している駆動力に応じて変動する補正量を、運転者の実際の操作による実アクセル開度に加増し、その加増したアクセル開度に対応した要求出力を閾値と比較して内燃機関を始動するべきか否かを決定するハイブリッド車両の制御装置を構成した。
並びに、本発明では、駆動輪に走行のための駆動力を供給できる走行用電動機と、走行用電動機に供給するべき電力を発電する発電機に発電のための駆動力を供給できる、または駆動輪に走行のための駆動力を供給できる内燃機関と、内燃機関に当該内燃機関を回転させるための駆動力を供給できるモータリング用電動機とを具備するハイブリッド車両を制御するものであって、アクセル開度が大きくなるほど大きくなる要求出力が閾値を超えた場合に内燃機関を始動してこれを運転し、要求出力が閾値以下である場合に内燃機関の運転を停止することとし、運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速及び/または現在走行用電動機が出力している駆動力に応じて閾値を上下させ、アクセル開度に対応した要求出力をその閾値と比較して内燃機関を始動するべきか否かを決定するハイブリッド車両の制御装置を構成した。
本発明によれば、ハイブリッド車両にあって、速やかなる加速を要求する運転者の意思に合致したレスポンスを実現しながらも、エネルギ消費をできる限り抑制することができる。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態におけるハイブリッド車両の主要システムの概略構成を示している。このハイブリッド車両は、内燃機関1と、内燃機関1により駆動されて発電を行う発電用モータジェネレータ2と、発電用モータジェネレータ2が発電した電力を蓄える蓄電装置3と、発電用モータジェネレータ2及び/または蓄電装置3から電力の供給を受けて車両の駆動輪62を駆動する走行用モータジェネレータ4とを備えている。
本実施形態のハイブリッド車両は、内燃機関1を発電にのみ使用するシリーズハイブリッド方式の電気自動車であり、車両の駆動輪62には専ら走行用モータジェネレータ4から走行のための駆動力を供給する。内燃機関1と駆動輪62との間は機械的に切り離されており、元来両者の間で回転駆動力の伝達がなされない。つまり、内燃機関1は、走行用モータジェネレータ4及び駆動輪62から完全に独立して回転することが可能である。従って、イグニッションスイッチ(パワースイッチ、またはイグニッションキー)がONに操作されている車両の運用中、運転者がアクセルペダルを踏むことで車両が走行可能な状態にあっても、蓄電装置3が充分な電荷を蓄えている状況下では、燃料の燃焼を伴う内燃機関1の運転を実施しないことがある。
内燃機関1は、例えば複数の気筒を包有する4ストロークエンジンである。内燃機関1の回転軸であるクランクシャフトは、発電用モータジェネレータ2の回転軸と歯車機構を介して機械的に接続している。そして、内燃機関1が出力する回転駆動力を発電用モータジェネレータ2に入力することで、発電用モータジェネレータ2が発電する。発電した電力は、蓄電装置3に充電し、及び/または、走行用モータジェネレータ4に供給する。また、発電用モータジェネレータ2は、自らが回転駆動力を発生させて内燃機関1のクランクシャフトを回転駆動する電動機としても機能する。例えば、発電用モータジェネレータ2は、停止している内燃機関1を始動する準備としてのモータリング(クランキング)を実行する。
走行用モータジェネレータ4は、車両の走行のための駆動力を発生させ、その駆動力を減速機61を介して駆動輪62に入力する。また、走行用モータジェネレータ4は、駆動輪62に連れ回されて回転することで発電し、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収する。この回生制動により発電した電力は、蓄電装置3に充電する。
但し、既に蓄電装置3の容量一杯まで電荷が蓄えられており、それ以上の充電が困難であるならば、走行用モータジェネレータ4が回生発電した電力を敢えて発電用モータジェネレータ2に供給し、発電用モータジェネレータ2を電動機として稼働させて内燃機関1を回転駆動する。これにより、車両の制動性能を維持しながら、余剰の電力を消尽する。また、このとき、内燃機関1の回転が保たれることから、内燃機関1の気筒への燃料供給を一時的に停止する燃料カットを実行することができる。
発電機インバータ21は、発電用モータジェネレータ2が発電する交流電力を直流電力に変換する。そして、その直流電力を蓄電装置3または駆動機インバータ41に入力する。並びに、発電機インバータ21は、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させる際に、蓄電装置3及び/または駆動機インバータ41から供給される直流電力を交流電力に変換した上で発電用モータジェネレータ2に入力する。
駆動機インバータ41は、蓄電装置3及び/または発電機インバータ21から供給される直流電力を交流電力に変換した上で走行用モータジェネレータ4に入力する。並びに、駆動機インバータ41は、車両の回生制動を行うときに走行用モータジェネレータ4が発電する交流電力を直流電力に変換した上で蓄電装置3または発電機インバータ21に入力する。
発電機インバータ21及び駆動機インバータ41は、PCU(Power Control Unit)の一部をなす。
蓄電装置3は、バッテリ及び/またはキャパシタ等である。蓄電装置3は、発電用モータジェネレータ2及び走行用モータジェネレータ4の各々が発電する電力を充電して蓄える。並びに、蓄電装置3は、発電用モータジェネレータ2及び走行用モータジェネレータ4の各々を電動機として作動させるための電力を放電し、それらモータジェネレータ2、4に必要な電力を供給する。
内燃機関1、発電用モータジェネレータ2、蓄電装置3、インバータ21、41及び走行用モータジェネレータ4の制御を司る制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECU、即ち内燃機関1を制御するエンジンコントローラ01、発電用モータジェネレータ2及び発電機インバータ21を制御する発電機コントローラ02、蓄電装置3を制御するバッテリコントローラ03、走行用モータジェネレータ4及び駆動機インバータ41を制御する駆動機コントローラ04等が、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものである。
ECU0は、センサを介してセンシングしている、運転者が操作するアクセル開度即ちアクセルペダルの踏込量や、シフトポジション即ちシフトレバー若しくはセレクタレバーの位置またはスイッチのON/OFF、現在の車両の車速、路面の勾配、蓄電装置3の蓄電量、発電用モータジェネレータ2の発電電力等に応じて、走行用モータジェネレータ4が出力する回転駆動力、内燃機関1が出力する回転駆動力、及び発電用モータジェネレータ2が発電する電力の大きさを増減制御する。
蓄電装置3が現在充分な電荷を蓄えており、走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力が小さい場合、内燃機関1への燃料の供給を遮断して内燃機関1を運転しない。翻って、蓄電装置3が現在蓄えている電荷の量が所定量を下回っている場合、または走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力が大きい場合には、内燃機関1を始動し気筒に燃料を供給してこれを燃焼させ、内燃機関1の出力する回転駆動力を以て発電量モータジェネレータ2を駆動し、発電を実施して蓄電装置3を充電し、または走行用モータジェネレータ4に供給する電力を増強する。
図2に、車両の運転者が要求する出力と、内燃機関1及び発電用モータジェネレータ2の運転の要否との関係を示している。要求出力は、運転者が操作するアクセル開度及び車速によって決まる。原則として、要求出力は、アクセル開度が大きくなるほど大きくなり、車速が高くなるほど大きくなる。図2上、右上方に向かうほど要求出力が大きいということになる。ECU0は、駆動輪62に与えるべき駆動力が比較的小さく、車速も比較的低い低出力領域Iでは、内燃機関1に燃料を供給せずにその運転を停止し、発電用モータジェネレータ2を発電機として稼働させない。低出力領域Iでは、走行用モータジェネレータ4が、蓄電装置3のみから電力供給を受けて、車両の走行のための駆動力を出力する。
対して、ECU0は、駆動輪62に与えるべき駆動力がある程度以上大きい、または車速がある程度以上高い中高出力領域II、IIIでは、内燃機関1に燃料を供給してこれを運転し、発電用モータジェネレータ2を発電機として稼働させる。その上で、要求出力が顕著に大きくない中出力領域IIでは、走行用モータジェネレータ4が、主として発電用モータジェネレータ2から電力供給を受けて、車両の走行のための駆動力を出力する。このとき、蓄電装置3からは、少量の電力供給を受けるか、あるいは全く電力供給を受けない。要求出力が顕著に大きい高出力領域IIIでは、走行用モータジェネレータ4が、発電用モータジェネレータ2及び蓄電装置3の双方から電力供給を受けて、車両の走行のための駆動力を出力する。
内燃機関1の気筒に燃料を供給して内燃機関1を運転しておらず、走行用モータジェネレータ4により駆動輪62を駆動して車両を走行させている最中に、内燃機関1を始動しようとするとき、発電用モータジェネレータ2が内燃機関1の始動のためのモータリングを行う。内燃機関1の始動のためのモータリングは、内燃機関1が燃料を燃焼させて自立的に回転できるようになるまで続行する。より具体的には、センシングしている内燃機関1のクランクシャフトの回転速度が始動に必要な最低限度の値以上に高まり、かつモータリングの開始から内燃機関1のクランクシャフトが所定回数以上または所定角度以上回転した時点で、モータリングを終了する。内燃機関1の始動が完了し、内燃機関1のモータリングを終了して以降は、発電用モータジェネレータ2への電力供給を0まで低下させる。
クランクシャフトが所定回数以上または所定角度以上回転した、という条件は、内燃機関1の各気筒の現在の行程またはピストンの位置を知得する気筒判別が完了した、と置き換えてもよい。当然ながら、各気筒の行程に合わせて適切なタイミングで燃料を噴射し、また適切なタイミングで燃料を着火燃焼させるためには、各気筒の現在の行程を知る必要がある。気筒判別は、内燃機関1のクランクシャフトが所定角度回転する都度パルス信号を発するクランク角センサと、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトが所定角度回転する都度パルス信号を発するカム角センサとを用いて行う。気筒判別の手法は周知であるので、ここではその説明を割愛する。
クランク角センサ及びカム角センサの短所として、内燃機関1のクランクシャフト及びカムシャフトの回転速度が著しく低下すると、信号対雑音比の高い信号を出力できなくなる点が挙げられる。内燃機関1が回転を停止したときの各気筒の行程またはピストンの位置は、内燃機関1の始動を開始する時点では分からない。ECU0がクランク角信号及びカム角信号を参照して各気筒の行程を判別するためには、停止していた内燃機関1のクランクシャフトが二回転程度回転する必要がある。それもあって、停止した内燃機関1の始動を開始してから、発電用モータジェネレータ2が発電した電力を走行用モータジェネレータ4に供給し始めるまでには、ある程度の時間を要する。
現在の車速が低い、または走行用モータジェネレータ4の出力する駆動力が小さい状況から、運転者がアクセルペダルを踏み込んで車両の加速を要求したときには、停止している内燃機関1を始動してこれを運転し、発電用モータジェネレータ2による発電を開始して走行用モータジェネレータ4に供給する電力を増強する。とりわけ、車両に搭載している蓄電装置3が小型軽量で小容量のものであり、蓄電装置3から走行用モータジェネレータ4に供給できる電力の大きさに制限があると、発電用モータジェネレータ2で発電した電力を走行用モータジェネレータ4に供給しなければ、要求された加速度を達成するのに必要十分な駆動力を発生させて駆動輪62に入力することができない。だが、上に述べた通り、内燃機関1の始動及び発電用モータジェネレータ2による発電の開始には所要時間が発生し、それが運転者の加速要求に対するレスポンスの遅れとなって現れることがある。
そこで、本実施形態のECU0は、運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速及び/または現在走行用モータジェネレータ4が出力している駆動力に応じて変動する補正量を、運転者の実際の操作による実アクセル開度、即ちセンサを介してセンシングした実際のアクセルペダルの踏込量に加増する。そして、その加増した擬似アクセル開度に基づいて、内燃機関1を始動するべきか否かを決定する。
図3に、現在の車速と、実アクセル開度に補正量を加増した擬似アクセル開度との関係を示す。図3中、破線T0は補正量を加えていない実アクセル開度そのものである。実線T3は車速が顕著に低い状況における擬似アクセル開度を表し、一点鎖線T2は車速が幾分高い状況における擬似アクセル開度を表し、二点鎖線T1は車速がそれよりも高い状況における擬似アクセル開度を表している。実アクセル開度に加増する補正量は、現在の車速が低いほど大きくなる。実アクセル開度が同等であるならば、現在の車速が低いほど擬似アクセル開度が大きくなる。また、実アクセル開度に加増する補正量は、実アクセル開度が大きくなるにつれて減少する。
現在の車速が中速域以上に高い状況では、実アクセル開度に加増する補正量を0とし、破線T0で表しているように擬似アクセル開度を実アクセル開度に等しくする。車速が中速域以上である場合、図2に示している中出力領域IIまたは高出力領域IIIに属し、既に内燃機関1を始動して運転している蓋然性が高い。
現在走行用モータジェネレータ4が出力している駆動力と、実アクセル開度に補正量を加増した擬似アクセル開度との関係も、図3に示しているようなものとなる。ここで、現在の走行用モータジェネレータ4の出力駆動力は、実アクセル開度に基づいて走行用モータジェネレータ4が要求している電力、あるいは、実アクセル開度に基づいて発電用モータジェネレータ2または蓄電装置3に求められている発電量または電力と読み替えてもよい。図3中、破線T0は補正量を加えていない実アクセル開度そのものである。実線T3は走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が顕著に小さい状況における擬似アクセル開度を表し、一点鎖線T2は出力駆動力が幾分大きい状況における擬似アクセル開度を表し、二点鎖線T1は出力駆動力がそれよりも大きい状況における擬似アクセル開度を表している。実アクセル開度に加増する補正量は、現在の走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が小さいほど大きくなる。実アクセル開度が同等であるならば、現在の走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が小さいほど擬似アクセル開度が大きくなる。また、実アクセル開度に加増する補正量は、実アクセル開度が大きくなるにつれて減少する。
現在の走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が中程度以上に大きい状況では、実アクセル開度に加増する補正量を0とし、破線T0で表しているように擬似アクセル開度を実アクセル開度に等しくする。走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が中程度以上である場合、図2に示している中出力領域IIまたは高出力領域IIIに属し、既に内燃機関1を始動して運転している蓋然性が高い。
なお、擬似アクセル開度を定めるにあたっては、現在の車速の高低に応じた補正量と、現在の走行用モータジェネレータ4の出力駆動力の大小に応じた補正量との双方を実アクセル開度に加増してもよく、何れか一方のみを実アクセル開度に加増してもよい。
図2中、低出力領域Iと中出力領域IIとの境界線Dが、内燃機関1を始動するべきか否かの判定閾値に相当する。アクセル開度が増大することは、要求出力が増大し図2上で上方ないし右方に遷移することを意味する。本実施形態のECU0は、現在内燃機関1を運転しておらず、実アクセル開度が増大する加速要求がなされるときに、実アクセル開度に補正量を加えた擬似アクセル開度に対応した要求出力と判定閾値Dとを比較し、要求出力が当該閾値Dを上回るなら、停止した内燃機関1を始動し、内燃機関1により発電用モータジェネレータ2を駆動して発電を開始する。例えば、実アクセル開度に対応した要求出力が低出力領域I内のA点にあるとしても、擬似アクセル開度に対応した要求出力が閾値Dである境界線を超えて中出力領域II内のA’点にある場合には、内燃機関1を始動する。これにより、現在の車速が低い、または現在走行用モータジェネレータ4が出力している駆動力が小さい状況下で、運転者がアクセルペダルを踏み始めたならばすぐに内燃機関1が始動するようになる。ひいては、運転者の加速要求に対して速やかなる車両の加速を実現することが可能となる。
擬似アクセル開度に対応した要求出力が判定閾値D以下であり、要求出力が依然として低出力領域I内にある場合には、内燃機関1を始動せず停止状態を維持することは言うまでもない。
実アクセル開度に補正量を加増した擬似アクセル開度を制御の判断に用いるのは、内燃機関1に燃料を供給せずその運転を停止している状態で、運転者が操作するアクセル開度が増大するとき、換言すれば実アクセル開度に対応した要求出力が低出力領域Iにあるときに限られる。既に内燃機関1を始動して運転している場合に、その内燃機関1の運転及び発電用モータジェネレータ2による発電を停止してよいかどうかを判断する、または発電用モータジェネレータ2と蓄電装置3との双方から走行用モータジェネレータ4に電力供給を行うか否かを判断する際には、(擬似アクセル開度でなく)現在の実アクセル開度に対応した要求出力が何れの領域I、II、IIIにあるのかを確認し、低出力領域Iならば内燃機関1の運転を停止し、中出力領域IIならば内燃機関1の運転を継続しつつ発電用モータジェネレータ2のみから走行用モータジェネレータ4に電力を供給し、高出力領域IIIならば内燃機関1の運転を継続しつつ発電用モータジェネレータ2及び蓄電装置3の双方から走行用モータジェネレータ4に電力を供給する。
また、擬似アクセル開度はあくまでも、停止している内燃機関1を始動するべきか否かを判断するために用いるものであり、走行用モータジェネレータ4が出力するべき駆動力の大きさや、発電用モータジェネレータ2から走行用モータジェネレータ4に供給するべき電力の大きさは、擬似アクセル開度ではなく実アクセル開度に基づいて決定する。図2に示した例に則して述べると、現時点での実アクセル開度に対応する要求出力がAである以上、走行用モータジェネレータ4が出力する駆動力の大きさはこの要求出力Aに見合ったものとする。一方で、現時点での要求出力がAであるとしても、現時点での擬似アクセル開度に対応する要求出力がA’であるならば、内燃機関1を始動する。これにより、その後の加速要求に対して内燃機関1の始動が間に合わずに遅れる問題を解決するのである。
本実施形態では、駆動輪62に走行のための駆動力を供給できる走行用電動機4と、走行用電動機4に供給するべき電力を発電する発電機2に発電のための駆動力を供給できる内燃機関1と、内燃機関1に当該内燃機関1を回転させるための駆動力を供給できるモータリング用電動機2とを具備するハイブリッド車両を制御するものであって、アクセル開度が大きくなるほど大きくなる要求出力が閾値Dを超えた場合に内燃機関1を始動してこれを運転し、要求出力が閾値D以下である場合に内燃機関1の運転を停止することとし、運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速または現在走行用電動機4が出力している駆動力に応じて変動する補正量を、運転者の実際の操作による実アクセル開度に加増し、その加増したアクセル開度に対応した要求出力を閾値Dと比較して内燃機関1を始動するべきか否かを決定するハイブリッド車両の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、運転者がアクセルペダルを踏み込む前兆として僅かにアクセルペダルを踏んだときに内燃機関1を始動し、発電機2による発電を開始して走行用電動機4に電力を供給する状態へと移行、走行用電動機4が出力する駆動力を迅速に増強することが可能である。従って、速やかなる加速を要求する運転者の意思に合致したレスポンスを実現できる。加速要求に備えて、常に内燃機関1をモータリングまたは運転し続ける必要がなく、エネルギを浪費せずに済み、燃費性能上の不利を招かない。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、実アクセル開度に補正量を加増した擬似アクセル開度を用い、擬似アクセル開度に対応した要求出力と判定閾値Dとを比較することで、内燃機関1を始動するべきか否かを決定していた。いわば、内燃機関1が停止している状況下での加速要求時に、要求出力に「下駄を履かせて」低出力領域Iから中出力領域IIへの遷移を促し、内燃機関1の始動を早めていた。
これに代えて、またはこれとともに、判定閾値である低出力領域Iと中出力領域IIとの境界線D0を変更することにより、停止していた内燃機関1の始動を早めることも考えられる。この場合、実アクセル開度に補正量を加増した擬似アクセル開度を用いる必要はない。制御装置たるECU0は、図4に示すように、運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速または現在走行用モータジェネレータ4が出力している駆動力に応じて閾値D0を引き下げた上、アクセル開度に対応した要求出力をその閾値D0、D1、D2、D3と比較し、以て内燃機関を始動するべきか否かを決定する。
図4中、破線D0は変更を加えていない閾値である。実線D3は、車速が顕著に低い、または走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が顕著に小さい状況における閾値を表している。一点鎖線D2は、車速が幾分高い、または走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が幾分大きい状況における閾値を表している。二点鎖線D1は、車速がそれよりも高い、または走行用モータジェネレータ4の出力駆動力がそれよりも大きい状況における閾値を表している。変更前の閾値D0からの引き下げ幅は、現在の車速が低いほど、または現在の走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が小さいほど大きくなる。
現在の車速が中速域以上に高い状況、または現在の走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が中程度以上に大きい状況では、閾値を破線D0で表しているものから変更しない。車速が中速域以上である、または走行用モータジェネレータ4の出力駆動力が中程度以上である場合には、中出力領域IIまたは高出力領域IIIに属し、既に内燃機関1を始動して運転している蓋然性が高い。
判定閾値D0、D1、D2、D3の変更は、現在の車速と走行用モータジェネレータ4の出力駆動力との双方に基づいてもよいし、何れか一方のみに基づいてもよい。
ECU0は、現在内燃機関1を運転しておらず、アクセル開度が増大する加速要求がなされるときに、アクセル開度に対応した要求出力を、現在の車速及び/または走行用モータジェネレータ4の出力駆動力に応じて変更を加えた判定閾値D0、D1、D2、D3と比較する。そして、要求出力が当該閾値D0、D1、D2、D3を上回るなら、停止した内燃機関1を始動し、内燃機関1により発電用モータジェネレータ2を駆動して発電を開始する。例えば、アクセル開度に対応した要求出力が、低出力領域I内のB点にあるとしても、アクセル開度に対応した要求出力がそのときの車速及び/または走行用モータジェネレータ4の出力駆動力に応じた閾値D2を超えて中出力領域II内にある場合には、内燃機関1を始動する。これにより、現在の車速が低い、または現在走行用モータジェネレータ4が出力している駆動力が小さい状況下で、運転者がアクセルペダルを踏み始めたならばすぐに内燃機関1が始動するようになる。ひいては、運転者の加速要求に対して速やかなる車両の加速を実現することが可能となる。
アクセル開度に対応した要求出力が判定閾値D0、D1、D2、D3以下であり、要求出力が依然として低出力領域I内にある場合には、内燃機関1を始動せず停止状態を維持することは言うまでもない。
判定閾値である低出力領域Iと中出力領域IIとの境界線D0を変更するのは、内燃機関1に燃料を供給せずその運転を停止している状態で、運転者が操作するアクセル開度が増大するとき、換言すればアクセル開度に対応した要求出力が低出力領域Iにあるときに限られる。既に内燃機関1を始動して運転している場合に、その内燃機関1の運転及び発電用モータジェネレータ2による発電を停止してよいかどうかを判断し、または発電用モータジェネレータ2と蓄電装置3との双方から走行用モータジェネレータ4に電力供給を行うか否かを判断する際には、現在のアクセル開度に対応した要求出力を(引き下げた閾値D1、D2、D3ではなく)元の閾値D0と比較し、要求出力が何れの領域I、II、IIIにあるのかを確認し、低出力領域Iならば内燃機関1の運転を停止し、中出力領域IIならば内燃機関1の運転を継続しつつ発電用モータジェネレータ2のみから走行用モータジェネレータ4に電力を供給し、高出力領域IIIならば内燃機関1の運転を継続しつつ発電用モータジェネレータ2及び蓄電装置3の双方から走行用モータジェネレータ4に電力を供給する。
上記実施形態における車両はシリーズハイブリッド車両であり、内燃機関1が出力する駆動力を発電機2ではなく駆動輪62に入力することは想定していなかった。だが、内燃機関が出力する駆動力を車両の走行のために駆動輪に供給し得る態様のハイブリッド車両に、本発明を適用することも可能である。その場合には、内燃機関と駆動輪との間に、両者の間で駆動力を伝達可能な状態と、両者の間で駆動力を伝達せず内燃機関が駆動輪から独立して回転可能な状態とを切換可能な動力伝達機構(断接切換可能なクラッチや、遊星歯車を利用した伝達機構等)を介設しておく。そして、アクセル開度(擬似アクセル開度であることがある)に対応した要求出力が閾値D、D0、D1、D2、D3を上回るという条件が成立したときに、動力伝達機構を後者の状態として内燃機関のモータリングを行い、気筒に燃料を供給して内燃機関を始動し、かつ動力伝達機構を前者の状態として内燃機関が出力する駆動力を駆動輪に供給できるようにする。
その他、各部の具体的な構成や処理の内容は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、ハイブリッド車両の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…内燃機関
2…発電機、モータリング用電動機(発電用モータジェネレータ)
4…走行用電動機(走行用モータジェネレータ)
3…蓄電装置
62…駆動輪
1…内燃機関
2…発電機、モータリング用電動機(発電用モータジェネレータ)
4…走行用電動機(走行用モータジェネレータ)
3…蓄電装置
62…駆動輪
Claims (2)
- 駆動輪に走行のための駆動力を供給できる走行用電動機と、
走行用電動機に供給するべき電力を発電する発電機に発電のための駆動力を供給できる、または駆動輪に走行のための駆動力を供給できる内燃機関と、
内燃機関に当該内燃機関を回転させるための駆動力を供給できるモータリング用電動機とを具備するハイブリッド車両を制御するものであって、
アクセル開度が大きくなるほど大きくなる要求出力が閾値を超えた場合に内燃機関を始動してこれを運転し、要求出力が閾値以下である場合に内燃機関の運転を停止することとし、
運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速または現在走行用電動機が出力している駆動力に応じて変動する補正量を、運転者の実際の操作による実アクセル開度に加増し、その加増したアクセル開度に対応した要求出力を閾値と比較して内燃機関を始動するべきか否かを決定するハイブリッド車両の制御装置。 - 駆動輪に走行のための駆動力を供給できる走行用電動機と、
走行用電動機に供給するべき電力を発電する発電機に発電のための駆動力を供給できる、または駆動輪に走行のための駆動力を供給できる内燃機関と、
内燃機関に当該内燃機関を回転させるための駆動力を供給できるモータリング用電動機とを具備するハイブリッド車両を制御するものであって、
アクセル開度が大きくなるほど大きくなる要求出力が閾値を超えた場合に内燃機関を始動してこれを運転し、要求出力が閾値以下である場合に内燃機関の運転を停止することとし、
運転者が操作するアクセル開度が増大する加速要求時において、現在の車速または現在走行用電動機が出力している駆動力に応じて閾値を上下させ、アクセル開度に対応した要求出力をその閾値と比較して内燃機関を始動するべきか否かを決定するハイブリッド車両の制御装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018240627A JP2020100324A (ja) | 2018-12-25 | 2018-12-25 | ハイブリッド車両の制御装置 |
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- 2018-12-25 JP JP2018240627A patent/JP2020100324A/ja active Pending
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