本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、第1はんだ回収装置50の構成の概略を示す構成図であり、図3は、印刷装置10の制御装置70の電気的な接続関係を示す説明図である。なお、図1の左右方向は印刷方向を示し、前(手前)後(奥)方向は基板搬送方向を示す。
本実施形態の印刷装置10は、スクリーンマスクM上のはんだをスキージ34a,34bによりローリングさせることにより、はんだをスクリーンマスクM上の形成されたパターン孔に押し込んで、スクリーンマスクM下の基板Sに塗布(印刷)するものである。この印刷装置10は、図1に示すように、筐体12と、第1基板搬送装置22aおよび第2基板搬送装置22bと、第1バックアップ装置24aおよび第2バックアップ装置24bと、スクリーンマスク台14と、スキージ装置30と、第1はんだ回収装置50および第2はんだ回収装置60と、制御装置70(図3参照)と、を備える。
第1基板搬送装置22aおよび第2基板搬送装置22bは、図1に示すように、いずれも、筐体12の下段部に設けられている。第1基板搬送装置22aは、図1の手前から奥へと延びる第1レーンを有し、ベルトコンベア装置の駆動によって第1レーンに沿って基板Sを搬送する。また、第2基板搬送装置22bは、第1レーンと並列に配置され図1の手前から奥へと延びる第2レーンを有し、ベルトコンベア装置の駆動によって第2レーンに沿って基板Sを搬送する。
第1バックアップ装置24aおよび第2バックアップ装置24bは、図1に示すように、いずれも、筐体12の下段部に設けられている。第1バックアップ装置24aおよび第2バックアップ装置24bは、いずれも、図示しない昇降装置により上下動が可能なバックアップテーブル25a,25bと、バックアップテーブル25a,25b上に複数設置されて基板Sを裏面からバックアップするバックアップピン26a,26bと、を備える。
スクリーンマスク台14は、図1に示すように、筐体12の中段部に設けられ、スクリーンマスクMを水平な姿勢で支持する。
スキージ装置30は、図1に示すように、筐体12の上段部に設けられている。スキージ装置30は、スクリーンマスクM上のはんだをローリングさせてスクリーンマスクM下の基板Sに印刷を行うものであり、スキージヘッド32と、第1スキージ34aおよび第2スキージ34bと、第1スキージ用昇降装置36aおよび第2スキージ用昇降装置36b(図3参照)と、スキージヘッド移動用モータ38と、を備える。
スキージヘッド32は、筐体12の上段部に軸方向が水平方向となるように設置されたボールねじ軸42に挿通されたボールねじナット32aを回転自在に支持しており、スキージヘッド移動用モータ38によってボールねじナット32aを回転駆動することにより、ボールねじ軸42に沿って水平移動(印刷方向の移動)が可能となっている。また、スキージヘッド32は、第1スキージ34aおよび第2スキージ34bをそれぞれ独立して上下動可能な第1スキージ用昇降装置36a(図3参照)および第2スキージ用昇降装置36b(図3参照)が内蔵されている。
第1スキージ34aおよび第2スキージ34bは、図1に示すように、互いに向かい合い、且つ、スクリーンマスクMに対して所定角度傾斜するよう配置されている。
こうして構成されたスキージ装置30は、第1スキージ用昇降装置36aおよび第2スキージ用昇降装置36bを駆動制御して第1スキージ34aを下降させると共に第2スキージ34bを上昇させた状態で、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御してスキージヘッド32を右方向に水平移動させることにより、スクリーンマスクM上のはんだを右方向(第1方向)に移動させて印刷を行うことができる。また、スキージ装置30は、第1スキージ用昇降装置36aおよび第2スキージ用昇降装置36bを駆動制御して第1スキージ34aを上昇させると共に第2スキージ34bを下降させた状態で、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御してスキージヘッド32を左方向(第2方向)に移動させることにより、スクリーンマスクM上のはんだを左方向に移動させて印刷を行うこともできる。
第1はんだ回収装置50は、図1に示すように、筐体12の上段部に設けられている。第1はんだ回収装置50は、スクリーンマスクM上のはんだを回収可能なものであり、第1回収ヘッド52と、第1回収プレート54と、第1回収プレート用昇降装置56(図3参照)と、第1回収ヘッド移動用モータ58と、を備える。
第1回収ヘッド52は、上述したボールねじ軸42に挿通されたボールねじナット52aを回転自在に支持しており、第1回収ヘッド移動用モータ58によってボールねじナット52aを回転駆動することにより、ボールねじ軸42に沿って水平移動が可能となっている。また、第1回収ヘッド52は、第1回収プレート54を上下動可能な第1回収プレート用昇降装置56(図3参照)が内蔵されている。
第1回収プレート54は、中央部がスクリーンマスクMよりも厚く、先端部に向かって徐々に薄く形成されている(例えば先端部が0.2mmの厚さ)。これにより、第1回収プレート54は、底面がスクリーンマスクMの上面に接触した状態で、先端部においてスクリーンマスクMとの段差が小さくなっている。勿論、第1回収プレート54は、先端部と中央部とで略均一の厚さの薄型の平板として形成されるものとしてもよい。
また、図2に示すように、第1回収プレート54の上面には、ペルチェ素子57が内蔵されており、ペルチェ素子57に印加する電圧を調整することにより、第1回収プレート54上に回収されたはんだの温度を調整可能となっている。また、第1回収プレート54の底面には、エアチューブ55を介して負圧発生装置46(図3参照)に連通する吸着穴54aが形成されている。第1回収プレート54は、スクリーンマスクMに接触している状態で、負圧発生装置46をオンとすることにより、吸着穴54aに負圧を作用させて、スクリーンマスクMに吸着することができる。
第2はんだ回収装置60は、図1に示すように、筐体12の上段部に設けられている。第2はんだ回収装置60は、スクリーンマスクM上のはんだを回収可能なものであり、第2回収ヘッド62と、第2回収プレート64と、第2回収プレート用昇降装置66(図3参照)と、を備える。
第2回収ヘッド62は、上述したボールねじ軸42に挿通されたボールねじナット62aを回転自在に支持しており、ボールねじ軸42に回転軸が接続された水平移動モータ44によってボールねじ軸42を回転駆動することにより、ボールねじ軸42に沿って水平移動が可能となっている。なお、ボールねじ軸42には、スキージヘッド32と第1回収ヘッド52も挿通されているから、ボールねじ軸42の回転駆動によって、スキージヘッド32および第1回収ヘッド52も第2回収ヘッド62と一緒に水平移動する。また、スキージヘッド移動用モータ38を駆動すれば、スキージヘッド32のみを水平移動させることができ、第1回収ヘッド移動用モータ58を駆動すれば、第1回収ヘッド52のみを水平移動させることができる。また、第2回収ヘッド62は、第2回収プレート64を上下動可能な第2回収プレート用昇降装置66(図3参照)が内蔵されている。
第2回収プレート64は、第1回収プレート54と同様に、中央部がスクリーンマスクMよりも厚く、先端部に向かって徐々に薄く形成されている。勿論、第2回収プレート64は、先端部と中央部とで略均一の厚さの薄型の平板として形成されるものとしてもよい。また、第1回収プレート54と同様に、第2回収プレート64の上面には、ペルチェ素子67(図3参照)が内蔵されており、第2回収プレート64の底面には負圧発生装置46に連通する吸着穴(図示せず)が形成されている。
制御装置70は、CPU71と中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU71の他に、ROM72,HDD73,RAM74,入出力インタフェース75等を備える。これらは、バス76を介して互いに電気的に接続されている。制御装置70には、スクリーンマスクM上のはんだの温度を検知する非接触式の温度センサ48からの検知信号や第1回収プレート54,第2回収プレート64にそれぞれ作用する荷重を検知するためのロードセル59,69からの検知信号等が入出力インタフェース75を介して入力されている。一方、制御装置70からは、第1基板搬送装置22a,第2基板搬送装置22bへの駆動信号や第1バックアップ装置24a,第2バックアップ装置24bへの駆動信号、第1スキージ用昇降装置36a,第2スキージ用昇降装置36bへの駆動信号、スキージヘッド移動用モータ38への駆動信号、第1回収ヘッド移動用モータ58への駆動信号、水平移動モータ44への駆動信号、ペルチェ素子57,67への駆動信号、負圧発生装置46への駆動信号などが入出力インタフェース75を介して出力されている。
次に、こうして構成された本実施形態の印刷装置10の動作について説明する。図4は、制御装置70のCPU71により実行される双方向印刷処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態の印刷装置10は、印刷モードとして、第1スキージ34aによる右方向の印刷と第2スキージ34bによる左方向の印刷とを交互に実行する双方向印刷モードと、第1スキージ34aによる右方向の印刷(あるいは第2スキージ34bによる左方向の印刷)のみを実行する片方向印刷モードとがある。オペレータは、双方向印刷モードと片方向印刷モードのいずれかを選択して印刷を指示することができる。双方向印刷処理は、印刷モードとして双方向印刷モードが選択されているときに、印刷対象の基板Sが搬送される毎に実行される。
双方向印刷処理が実行されると、制御装置70のCPU71は、まず、今回の印刷対象レーンが第1レーンであるか否かを判定する(S100)。今回の印刷対象レーンが第1レーンであると判定すると、前回の印刷対象レーンが第2レーンであったか否かを判定する(S102)。CPU71は、今回の印刷対象レーンが第1レーンであり且つ前回の印刷対象レーンが第2レーンであったと判定すると、負圧発生装置46をオフして第1回収プレート54および第2回収プレート64の吸着を解除する(S104)。そして、CPU71は、スキージヘッド32と第1回収ヘッド52と第2回収ヘッド62とを第1レーン側に移動させ(S106)、第1回収プレート54を第1レーンの印刷領域左端に吸着させると共に第2回収プレート64を第1レーンの印刷領域右端に吸着させて(S108)、S118の処理に進む。ここで、S106の処理は、スキージヘッド32,第1回収ヘッド52および第2回収ヘッド62が図1左方向へ移動するよう水平移動モータ44を回転駆動することにより行うことができる。また、S108の処理は、第1回収ヘッド52が第1レーンの印刷領域左端の上方に来るように第1回収ヘッド移動用モータ58を駆動制御すると共に第2回収ヘッド62が第1レーンの印刷領域右端の上方に来るように水平移動モータ44を駆動制御し、第1回収プレート54および第2回収プレート64がそれぞれスクリーンマスクMに接触するまで下降するように第1回収プレート用昇降装置56および第2回収プレート用昇降装置66を駆動制御し、第1回収プレート54および第2回収プレート64がそれぞれスクリーンマスクMに吸着するよう負圧発生装置46をオンすることにより行われる。また、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第1レーンであり且つ前回の印刷対象レーンも第1レーンであったと判定すると、S104〜S108の処理をスキップしてS118の処理に進む。
一方、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第1レーンでない、即ち第2レーンであると判定すると、前回の印刷対象レーンが第1レーンであったか否かを判定する(S110)。CPU71は、今回の印刷対象レーンが第2レーンであり且つ前回の印刷対象レーンが第1レーンであったと判定すると、第1回収プレート54および第2回収プレート64の吸着を解除する(S112)。そして、CPU71は、スキージヘッド32と第1回収ヘッド52と第2回収ヘッド62とを第2レーン側に移動させ(S114)、第1回収プレート54を第2レーンの印刷領域左端に吸着させると共に第2回収プレート64を第2レーンの印刷領域右端に吸着させて(S116)、S118の処理に進む。ここで、S114の処理は、スキージヘッド32,第1回収ヘッド52および第2回収ヘッド62が図1右方向へ移動するよう水平移動モータ44を回転駆動することにより行うことができる。また、S116の処理は、印刷対象レーンが異なる点を除いて、S108と同様の処理により行うことができる。また、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第2レーンであり且つ前回の印刷対象レーンも第2レーンであったと判定すると、S112〜S116の処理をスキップしてS118の処理に進む。
次に、CPU71は、はんだが第1回収プレート54上にあるか否かを判定し(S118)、第1回収プレート54上にあると判定すると、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御して第1スキージ34aを第1回収プレート54上へ移動させ(S120)、第1スキージ用昇降装置36aを駆動制御して第1スキージ34aを下降させる(S122)。このように、CPU71は、第1スキージ34aをスクリーンマスクM上に直接接触させる(押し付ける)のではなく、第1回収プレート54上に接触させる(押し付ける)。上述したように、第1回収プレート54の中央部はスクリーンマスクMよりも厚みがあるため、第1スキージ34aが下降して第1回収プレート54の中央部付近に押し付けても、押し付けによる影響をスクリーンマスクMに及ぼさないようにすることができる。ここで、一般的にスクリーンマスクMの厚みが極めて薄いことから、スキージ(第1スキージ34a)をスクリーンマスクM上に直接押し付けるものとすると、スクリーンマスクMを下から支持しない限り、スクリーンマスクMが撓んでしまう。このため、スキージ(第1スキージ34a)を下降させる動作(S122の処理)は、基板Sが、機内に搬入され、位置決めされ、バックアップ装置(第1バックアップ装置24aまたは第2バックアップ装置24b)によりスクリーンマスクMの裏面に接触するまで上昇するのを待って行わなければならない。これに対して、本実施形態では、第1スキージ34aを第1回収プレート54上に押し付けるため、スクリーンマスクMを下から支持しなくても、スクリーンマスクMが撓むのを抑制することができる。これにより、第1スキージ34aを下降させる動作(S122の処理)とバックアップ装置が基板SをスクリーンマスクMの下でバックアップする動作(バックアップ動作)とを並行して実行することが可能となり、サイクルタイムを短縮させることができる。
そして、CPU71は、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御してスキージヘッド32を図1右方向に水平移動させることにより右方向の印刷を実行し(S124)、印刷が終了すると、第1スキージ用昇降装置36aを駆動制御して第1スキージ34aを上昇させて(S126)、双方向印刷処理を終了する。ここで、S124の処理において、CPU71は、第1スキージ34aが第2回収プレート64上に乗り上げるまで第1スキージ34a(スキージヘッド32)の右方向への水平移動を継続する。第1スキージ34aが第2回収プレート64上に乗り上げると、バックアップ装置(第1バックアップ装置24aまたは第2バックアップ装置24b)は、第1スキージ34aが完全に停止するのを待つことなく、バックアップテーブルを下降させ、基板SをスクリーンマスクMから離間させる版離れを行う。また、S126の処理において、CPU71は、基板SがスクリーンマスクMから分離するのを待つことなく、第1スキージ34aを上昇させる。ここで、版離れを行う場合、スクリーンマスクMは、基板S上のはんだに引っ張られ、下方に撓む。このため、版離れは、スクリーンマスクMへの影響を最小限にするために、印刷後、スキージ(第1スキージ34a)が完全に停止してから開始され、基板SがスクリーンマスクMから分離するまでは、スキージ(第1スキージ34a)を水平移動させたり上昇させたりしないのが一般的である。これに対して、本実施形態では、スキージ(第1スキージ34a)が回収プレート(第2回収プレート64)に乗り上げてしまえば、回収プレート上でスキージを移動させても、スクリーンマスクMに影響を与えることが少ない。これにより、第1スキージ34aの水平移動および上昇と版離れとを並行して実行することが可能となり、サイクルタイムを更に短縮させることができる。
一方、CPU71は、はんだが第1回収プレート54上にない、即ち第2回収プレート64上にあると判定すると、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御することにより第2スキージ34bを第2回収プレート64上へ移動させ(S128)、第2スキージ用昇降装置36bを駆動制御して第2スキージ34bを下降させる(S130)。このように、CPU71は、第2スキージ34bをスクリーンマスクM上に直接接触させる(押し付ける)のではなく、第2回収プレート64上に接触させる(押し付ける)ため、押し付けによる影響をスクリーンマスクMに及ぼさないようにすることができる。したがって、上述したS122の処理と同様に、第2スキージ34bを下降させる動作(S130の処理)とバックアップ動作とを並行して実行することが可能である。
そして、CPU71は、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御してスキージヘッド32を図1左方向に水平移動させることにより左方向の印刷を実行し(S132)、印刷が終了すると、第2スキージ用昇降装置36bを駆動制御して第2スキージ34bを上昇させて(S134)、双方向印刷処理を終了する。ここで、S132の処理においても、S124と同様に、CPU71は、第2スキージ34bが第1回収プレート54上に乗り上げるまで第2スキージ34b(スキージヘッド32)の左方向への水平移動を継続する。そして、第2スキージ34bが第1回収プレート54上に乗り上げると、バックアップ装置は、第2スキージ34bが完全に停止するのを待つことなく、版離れを行う。また、S134の処理においても、S126と同様に、CPU71は、基板SがスクリーンマスクMから分離するのを待つことなく、第2スキージ34bを上昇させる。このように、第2スキージ34bの水平移動および上昇と版離れとを並行して実行することが可能である。
図5は、双方向印刷の様子を示す説明図である。印刷モードとして双方向印刷モードが選択された場合、図示するように、制御装置70のCPU71は、第1回収プレート54を第1スキージ34aの印刷開始位置(第2スキージ34bの印刷終了位置)で吸着させると共に第2回収プレート64を第1スキージ34aの印刷終了位置(第2スキージ34bの印刷開始位置)で吸着させる。続いて、CPU71は、はんだがある方の第1回収プレート54を印刷開始位置として、第1スキージ34aを第1回収プレート54上に水平移動させた後、下降させる(図5(a)参照)。そして、CPU71は、第1スキージ34aを右方向に移動させることにより、右方向の印刷を行う(図5(b)参照)。第2回収プレート64は第1スキージ34aの印刷終了位置にあるため、印刷が終了して第1スキージ34aが印刷終了位置に移動すると、はんだは、第2回収プレート64上に存在する(図5(c)参照)。そして、CPU71は、次に基板Sが搬送されてきたときに、はんだがある方の第2回収プレート64を印刷開始位置として、第2スキージ34bを第2回収プレート64上に水平移動させた後、下降させ、第2スキージ34bを左方向に移動させることにより、左方向の印刷を行う(図5(d)参照)。このように、第1回収プレート54を第1スキージ34aの印刷開始位置(第2スキージ34bの印刷終了位置)で吸着させると共に第2回収プレート64を第1スキージ34aの印刷終了位置(第2スキージ34bの印刷開始位置)で吸着させた状態で、第1スキージ34aによる右方向の印刷と第2スキージ34bによる左方向の印刷とを交互に実行する。これにより、スクリーンマスクMは、第1回収プレート54および第2回収プレート64により保持されるため、撓みを抑制することができ、印刷品質をより向上させることができる。
次に、印刷モードとして片方向印刷モードが選択された場合の動作について説明する。図6は、制御装置70のCPU71により実行される片方向印刷処理の一例を示すフローチャートである。片方向印刷処理は、印刷モードとして片方向印刷モードが選択されているときに、印刷対象の基板Sが搬送される毎に実行される。
片方向印刷処理が実行されると、制御装置70のCPU71は、まず、S100、S102,S110と同様に、今回の印刷対象レーンが第1レーンおよび第2レーンのいずれであるか否か(S200)、前回の印刷対象レーンが第1レーンおよび第2レーンのいずれであったか否か(S202,S208)、をそれぞれ判定する。CPU71は、今回の印刷対象レーンが第1レーンであり且つ前回の印刷対象レーンが第2レーンであったと判定すると、第1レーンから第2回収プレート64(第2回収ヘッド62)を退避させる(S204)。そして、CPU71は、スキージヘッド32および第1回収ヘッド52を第1レーン側に移動させて(S206)、S214の処理に進む。また、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第1レーンであり且つ前回の印刷対象レーンも第1レーンであったと判定すると、S204,S206の処理をスキップしてS214の処理に進む。
一方、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第2レーンであり且つ前回の印刷対象レーンが第1レーンであったと判定すると、第2レーンから第2回収プレート64(第2回収ヘッド62)を退避させる(S210)。そして、CPU71は、スキージヘッド32および第1回収ヘッド52を第2レーン側に移動させて(S212)、S214の処理に進む。また、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第2レーンであり且つ前回の印刷対象レーンも第2レーンであったと判定すると、S210,212の処理をスキップしてS214の処理に進む。
そして、CPU71は、はんだが回収されている第1回収プレート54を印刷開始位置へ移動させる(S214)。この処理は、第1回収ヘッド移動用モータ58を駆動制御して第1回収ヘッド52を印刷開始位置の上方に移動させ、第1回収プレート用昇降装置56を駆動制御して第1回収プレート54をスクリーンマスクM上に接触するまで下降させることにより行うことができる。
第1回収プレート54を印刷開始位置へ移動させると、CPU71は、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御して第1スキージ34aを第1回収プレート54の上方に移動させ(S216)、第1スキージ用昇降装置36aを駆動制御して第1スキージ34aを下降させ(S218)、スキージヘッド移動用モータ38を駆動制御してスキージヘッド32を右方向に水平移動させることにより右方向の印刷を実行する(S220)。このように、片方向印刷においても、第1スキージ34aをスクリーンマスクM上に直接接触させる(押し付ける)のではなく、第1回収プレート54上に接触させる(押し付ける)ため、押し付けによる影響をスクリーンマスクMに及ぼさないようにすることができる。したがって、上述したS122の処理と同様に、第2スキージ34aを下降させる動作(S218の処理)とバックアップ動作とを並行して実行することが可能である。
CPU71は、右方向の印刷を実行すると、第1スキージ用昇降装置36aを駆動制御して第1スキージ34aを上昇させ(S222)、第1回収プレート54を印刷終了位置へ移動させることにより印刷終了位置にあるはんだを第1回収プレート54に回収して(S224)、片方向印刷処理を終了する。ここで、S224の処理は、印刷終了位置の手前で第1回収プレート用昇降装置56を駆動制御して第1回収プレート54をスクリーンマスクMに接触させ、第1回収ヘッド移動用モータ58を駆動制御して第1回収プレート54をスクリーンマスクMに沿うように印刷終了位置に向けて移動させることにより行われる。
CPU71は、印刷後、第1回収プレート用昇降装置56を駆動制御して第1回収プレート54を印刷終了位置から上昇させ、第1回収ヘッド移動用モータ58を駆動制御して第1回収プレート54(第1回収ヘッド52)を印刷開始位置の上方まで水平移動させた後、スクリーンマスクMに接触するまで第1回収プレート用昇降装置56を駆動制御して第1回収プレート54を下降させる(S214)。即ち、第1回収プレート54に回収されたはんだを印刷終了位置から印刷開始位置に戻す。そして、CPU71は、第1スキージ34aを印刷開始位置から右方向へ移動させることで(S216〜S220)、片方向印刷を繰り返し実行する。なお、片方向印刷では、上述したように、第1回収プレート54を下降させてスクリーンマスクMに接触させる動作が行われるが、第1スキージ34aを下降させる場合のような押し付け力は必要としないから、その接触によってスクリーンマスクMに与える影響を小さくすることができる。
図7は、片方向印刷の様子を示す説明図である。印刷モードとして片方向印刷モードが選択された場合、図示するように、制御装置70は、はんだがある方の第1回収プレート54を印刷開始位置として、第1スキージ34aを第1回収プレート54上に水平移動させた後、下降させる(図7(a)参照)。続いて、制御装置70は、第1スキージ34aを右方向に移動させることにより、右方向の印刷を行う(図7(b)参照)。印刷が終了して第1スキージ34aが印刷終了位置に移動すると、薄型の第1回収プレート54を印刷終了位置へスクリーンマスクMに沿うように移動させることにより、印刷終了位置にあるはんだを第1回収プレート54に回収させる(図7(c)参照)。そして、制御装置70は、第1回収プレート54と第1スキージ34aとを印刷開始位置へ移動させることにより、次に搬送される基板Sの印刷を右方向で行う(図7(d)参照)。このように、印刷方向を常に同じ方向(右方向)とするから、印刷の品質を均一化することができる。
なお、制御装置70のCPU71は、非接触式の温度センサ48により検知されるはんだの温度に基づいてはんだの温度が適正範囲内となるようペルチェ素子57,67を駆動制御している。上述したように、ペルチェ素子57,67は第1回収プレート54,第2回収プレート64に取り付けられ、第1回収プレート54と第2回収プレート64はそれぞれ印刷開始位置と印刷終了位置に配置される。このため、はんだは、印刷開始位置,印刷終了位置に移動する度にペルチェ素子57,67によって温度が調整される。
また、CPU71は、ロードセル59,69により検知される第1回収プレート54,第2回収プレート64の荷重に基づいてはんだの重量を推定している。即ち、第1回収プレート54,第2回収プレート64が上昇しているタイミング(例えばレーンの切り替え時)でロードセル59,69により検知される第1回収プレート54,第2回収プレート64の荷重によりはんだの重量を検知し、はんだに不足が生じていないか否かを判定する。そして、制御装置70は、はんだが不足していると判定すると、警告を出力する。なお、警告は、例えば、図示しない表示装置にはんだが不足している旨の警告画面を表示することにより行うことができる。
ここで、本実施例の主要な要素と発明の開示の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、本実施形態の第1スキージ34aおよび第2スキージ34bが本発明のスキージに相当し、第1回収プレート54および第2回収プレート64が回収プレートに相当し、スキージヘッド移動用モータ38や第1回収ヘッド移動用モータ58、水平移動モータ44、第1スキージ用昇降装置36a、第2スキージ用昇降装置36b、第1回収プレート用昇降装置56、第2回収プレート用昇降装置66が移動手段に相当し、図4の双方向印刷処理や図6の片方向印刷処理を実行する制御装置70のCPU71が制御手段に相当する。
以上説明した本実施形態の印刷装置10は、双方向印刷を実行する場合、第1回収プレート54を第1スキージ34aの印刷開始位置(第2スキージ34bの印刷終了位置)で吸着させると共に第2回収プレート54を第1スキージ34aの印刷終了位置(第2スキージ34bの印刷開始位置)で吸着させ、第1スキージ34aによりはんだを印刷開始位置から印刷終了位置まで移動させる右方向の印刷と、第2スキージ34bによりはんだを逆方向に移動させる左方向の印刷とを交互に実行する。これにより、第1回収プレート54および第2回収プレート64でスクリーンマスクMを保持しながら、双方向印刷を実行することができ、印刷中のスクリーンマスクMの撓みを抑制して、印刷品質をより向上させることができる。
また、本実施形態の印刷装置10は、片方向印刷を実行する場合、はんだが回収されている第1回収プレート54を印刷開始位置へ移動させ、第1スキージ34aを第1回収プレート54上に移動させ、第1スキージ34aを右方向に移動させることにより右方向の印刷を実行する。また、印刷装置10は、印刷が終了すると、第1回収プレート54を印刷終了位置へ移動させて、印刷終了位置にあるはんだを回収し、第1回収プレート54に回収したはんだを印刷開始位置へ戻す。これにより、基板Sの印刷方向を常に同じ方向とすることができるから、印刷品質を均一化することができる。
また、本実施形態の印刷装置は、はんだを回収した回収プレート54,64を上昇させた状態で保持することにより、段取り替えの際にスクリーンマスクMの交換を容易に行うことができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、印刷モードとして双方向印刷モードと片方向印刷モードとを有するものとしたが、双方向印刷モードのみを有するものとしてもよいし、片方向印刷モードのみを有するものとしてもよい。後者の場合、第1スキージ34aおよび第1はんだ回収装置50と、第2スキージ34bおよび第2はんだ回収装置60の一方を省略するものとしてもよい。
また、上述した実施形態では、片方向印刷を実行する場合、第1スキージ34aを用いて右方向のみの印刷を実行するものとしたが、第2スキージ34bを用いて左方向のみの印刷を実行するものとしてもよい。
また、上述した実施形態では、基板Sを搬送するレーンとして第1レーンおよび第2レーンの2つのレーンを備えるものとしたが、3つ以上のレーンを備えるものとしてもよいし、1つのレーンのみを備えるものとしてもよい。
また、上述した実施形態では、スキージヘッド32,第1回収ヘッド52および第2回収ヘッド62の移動をボールねじ機構を用いて行うものとしたが、これに限定されるものではなく、ベルト機構を用いて行うものとしてもよい。図8は、ベルト機構90の構成の概略を示す構成図である。ベルト機構90は、図示するように、筐体(図示せず)の右端および左端にそれぞれ取り付けられた駆動プーリ92と従動プーリ93とに架け渡されたタイミングベルト91を備える。スキージ装置130のスキージヘッド132には、タイミングベルト91に噛み合う駆動プーリ94およびアイドラ95が取り付けられており、第1はんだ回収装置150の第1回収ヘッド152にも、タイミングベルト91に噛み合う駆動プーリ96およびアイドラ97が取り付けられている。また、第2はんだ回収装置160の第2回収ヘッド162にはタイミングベルト91が直接取り付けられている。これにより、駆動プーリ92を駆動することにより、スキージヘッド132,第1回収ヘッド152および第2回収ヘッド162を一緒に水平移動させることができる。また、駆動プーリ94を駆動することによりスキージヘッド132のみを水平移動させることができ、駆動プーリ96を駆動することにより第1回収ヘッド152のみを水平移動させることができる。
また、上述した実施形態では、回収プレート用昇降装置(第1回収プレート用昇降装置56,第2回収プレート用昇降装置66)により回収プレート(第1回収プレート54,第2回収プレート64)を直接昇降可能に構成したが、これに限定されるものではなく、回収プレート用昇降装置と回収プレートとを2以上の関節を有する連結部材を介して連結するものとしてもよい。図9は、変形例のはんだ回収装置250の構成の概略を示す構成図である。なお、この変形例では、スキージ装置230は、スキージヘッド232と、スキージヘッド232に内蔵するスキージ用昇降装置により上下動が可能な1つのスキージ234と、を備える。変形例のはんだ回収装置250は、図示するように、スキージ装置230の左側に配置され、回収ヘッド252と、薄型プレートとして形成された回収プレート254と、回収ヘッド252に内蔵された回収プレート用昇降装置256と、回収プレート254と回収プレート用昇降装置256とを連結する連結部材258と、を備える。連結部材258の両端の関節は、それぞれ回動範囲が定められており、変形例では、直立状態から図9の時計回りへの連結部材258の回動が規制(禁止)されると共に反時計回りへの連結部材258の回動が所定角度(例えば60度)まで許容される。また、スキージヘッド232と回収ヘッド252とは、水平移動モータ44の駆動によりボールねじ軸42に沿って一緒に水平移動が可能であり、それぞれ独立して移動することができないように構成されている。また、回収プレート254は、図示しないが、上述した第1,第2回収プレート54,64と同様に、負圧発生装置46からの負圧によってスクリーンマスクM上に吸着可能となっている。なお、この変形例では、はんだ回収装置250をスキージ装置230の左側に配置するものとしたが、スキージ装置230の右側に配置するものとしてもよい。この場合、連結部材258の両端の関節は、直立状態から反時計回りへの回動が規制されると共に時計回りへの回動が所定角度(例えば60度)まで許容されるものとすればよい。
図10は、上述したはんだ回収装置250を用いて行われる変形例の印刷処理を示すフローチャートであり、図11は、印刷開始時の様子を示す説明図であり、図12は、印刷終了時の様子を示す説明図である。以下、変形例の印刷処理を、図11および図12を参照しながら説明する。印刷処理が実行されると、制御装置70のCPU71は、まず、S100、S102,S110と同様に、今回の印刷対象レーンが第1レーンおよび第2レーンのいずれであるか否か(S300)、前回の印刷対象レーンが第1レーンおよび第2レーンのいずれであったか否か(S302,S306)、をそれぞれ判定する。CPU71は、今回の印刷対象レーンが第1レーンであり且つ前回の印刷対象レーンが第2レーンであったと判定すると、スキージヘッド232および回収ヘッド252を第1レーン側に移動させて(S304)、S310の処理に進む。また、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第1レーンであり且つ前回の印刷対象レーンも第1レーンであったと判定すると、S304の処理をスキップしてS310の処理に進む。
一方、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第2レーンであり且つ前回の印刷対象レーンが第1レーンであったと判定すると、スキージヘッド232および回収ヘッド252を第2レーン側に移動させて(S308)、S310の処理に進む。また、CPU71は、今回の印刷対象レーンが第2レーンであり且つ前回の印刷対象レーンも第2レーンであったと判定すると、S308の処理をスキップしてS310の処理に進む。
次に、CPU71は、回収プレート254を印刷開始位置へ移動させ(S310,図11(a)参照)、回収プレート254をスクリーンマスクMに吸着させた後(S312,図11(b)参照)、スキージヘッド232を回収プレート254(印刷開始位置)の上方に移動させる(S314,図11(c)参照)。上述したように、スキージヘッド232と回収ヘッド252とは水平移動モータ44の駆動により一緒に水平移動するから、スキージヘッド232が印刷開始位置の上方に移動すると、回収ヘッド252は、印刷開始位置よりも左側に位置することとなる。また、上述したように、回収ヘッド252と回収プレート254とは、回動可能な関節を有する連結部材258を介して連結されている。このため、回収ヘッド252が右側に移動しても、連結部材258が反時計回りに回動し、回収プレート254は印刷開始位置で保持される。なお、回収プレート用昇降装置256は、連結部材258の回動をスムーズに行わせるために、連結部材258を若干下降させる。そして、CPU71は、スキージ234を下降させ(S316)、回収プレート254の吸着を解除し(S318)、スキージヘッド232を右方向に水平移動させることにより右方向の印刷を実行する(S320,図11(d)参照)。なお、回収ヘッド252は、スキージヘッド232と一緒に右方向に水平移動する。
CPU71は、印刷が完了すると(図12(a)参照)、スキージ234を上昇させた後(S322,図12(b)参照)、回収プレート254を印刷終了位置に移動させることにより、印刷終了位置にあるはんだを回収プレート254に回収して(S324,図12(c)参照)、印刷処理を終了する。上述したように、連結部材258の関節は時計回りには回動しない。このため、回収ヘッド252を右方向に水平移動させると、回収プレート254は、スクリーンマスクM上に沿って右方向に移動し、印刷終了位置にあるはんだをすくうようにして回収する。なお、回収プレート254は、はんだを回収した後、上昇させられ、次に搬入される基板Sにはんだを印刷する際に、S310で印刷開始位置へ移動させられる(図11(a)参照)。
このように、回収プレート用昇降装置256と回収プレート254とを連結部材258を介して回動可能に連結させることにより、回収ヘッド154およびスキージヘッド232をそれぞれ独立して水平移動させるための機構を設ける必要をなくすことができる。
また、上述した実施形態では、回収プレート54,64の上面にペルチェ素子57,67を備えるものとしたが、これに限定されるものではなく、冷却ファンやヒータ等のはんだの温度を調整可能な他の温度調整装置を用いるものとしてもよい。また、こうした温度調整装置を備えないものとして、はんだの温度を管理しないものとしてもよい。
また、上述した実施形態では、ロードセル59,69により検知される回収プレート54,64上のはんだの重量が所定量未満となったときに警告を発するものとしたが、はんだを自動で補充する自動補充装置を備える印刷装置では、ロードセル59,69により検知されるはんだの重量に基づいてはんだを自動で補充するものとしてもよい。また、はんだの重量を検知しないものとしてもよい。