(第1の実施形態)
第1の実施形態によれば、平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維を0.1重量%以上10重量%以下と、リチウム含有無機粒子と、リチウムイオンを含む有機電解液とを含有する複合電解質が提供される。
平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維は、ナノサイズの高分子繊維であるため、複合電解質中の細部、例えばリチウム含有無機粒子間の僅かな隙間にも存在し得る。そのため、複合電解質中の高分子繊維の含有量が0.1重量%以上10重量%以下と少なくても、高分子繊維が複合電解質全体に万遍なく分散される。その結果、複合電解質の層の厚さを例えば10μm以下に薄くしても、疎な部分を少なくできるため、二次電池において部分的に内部短絡が生じるのを抑えることができ、自己放電を抑制することができ、貯蔵性能を向上することができる。
また、上記平均直径を有する高分子繊維は、リチウムイオンを含む有機電解液を保持する能力に優れているため、リチウム含有無機粒子間のリチウムイオンパスとして機能する。そのため、複合電解質のイオン伝導性が良好になり、電池内部抵抗を低減することができる。その結果、電池の低温性能及び大電流性能といった放電性能が向上される。
さらに、複合電解質は柔軟性に優れているため、リチウムイオンの吸蔵・放出反応に伴う膨張収縮による応力を吸収して緩和することができ、充放電サイクルの繰り返しにより複合電解質にクラックが生じるのを抑えることができる。
従って、内部短絡及び自己放電が抑制され、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能に優れた二次電池が提供される。
高分子繊維の平均直径が100nmを超えると、複合電解質中の細部に高分子繊維を分布させることが難しくなる。また、高分子繊維の比表面積が不足するため、高分子繊維が保持できる有機電解液量が少なくなる。これらの結果、電池の低温性能及び大電流性能が低下する。高分子繊維の平均直径は小さい方が望ましいが、1nm未満になると、電極内での繊維の分散が不十分となり有機電解液が均一に保持できなくなる。
高分子繊維の平均直径のより好ましい範囲は、5nm以上50nm以下である。
高分子繊維の平均直径が1nm以上100nm以下であっても、高分子繊維の含有量が10重量%を超えると、相対的に有機電解液量が少なくなるため、複合電解質のイオン伝導性が低下し、電池の低温性能及び大電流性能が低下する。また、高分子繊維の含有量を0.1重量%未満にすると、平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維による効果を得られず、貯蔵性能、低温性能及び大電流性能が低下する。含有量のより好ましい範囲は、0.5重量%以上5重量%以下である。
リチウム含有無機粒子のN2のBET吸着法による比表面積を10m2/g以上500m2/g以下にすると、このようなリチウム含有無機粒子は比表面積が大きいため、有機電解液との接触面積が増加して複合電解質のイオン伝導性を高めることができる。これにより、二次電池の低温性能及び大電流性能が向上される。また、比表面積が前記範囲のリチウム含有無機粒子は、リチウムイオンと有機溶媒(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなど)と高分子とを含む高分子体に対して化学的に安定で溶解するなどの問題を生じない利点を有する。比表面積のより好ましい範囲は50m2/g以上500m2/g以下である。
複合電解質のリチウム含有無機粒子の含有量を85重量%以上にすることにより、複合電解質の層の厚さを薄くした際にも疎な部分が少なくなるため、部分的な内部短絡に起因する自己放電をさらに抑制することが可能である。また、複合電解質のリチウム含有無機粒子の含有量を98重量%以下にすることにより、相対的に有機電解液の量が多くなり、複合電解質のイオン伝導性が高められるため、大電流性能及び低温性能をさらに向上することが可能となる。よって、複合電解質のリチウム含有無機粒子の含有量を85重量%以上98重量%以下にすることにより、自己放電の低減と、大電流性能及び低温性能の向上が可能となる。複合電解質のリチウム含有無機粒子の含有量のより好ましい範囲は90重量%以上95重量%以下である。
従って、リチウム含有無機粒子のN2のBET吸着法による比表面積を10m2/g以上500m2/g以下で、複合電解質のリチウム含有無機粒子の含有量を85重量%以上98重量%以下にすることにより、貯蔵性能、低温性能及び大電流性能のさらなる向上とを達成することが可能となる。
リチウム含有無機粒子がリチウムイオン伝導性の無機固体電解質粒子を含むことにより、複合電解質中のリチウムイオンの移動がより容易になる。その結果、電池の低温性能、大電流性能あるいはサイクル寿命性能が向上される。リチウムイオン伝導性無機固体電解質粒子を含むリチウム含有無機粒子の比表面積及び/または含有量を上記範囲に特定することにより、電池の貯蔵性能、低温性能、大電流性能あるいはサイクル寿命性能がさらに向上される。
高分子繊維はその成分にセルロースを含み得る。高分子繊維が、その成分にセルロースを含むことにより、高分子繊維がヒゲ状のナノ繊維の形態を取るため、複合電解質中で高分子繊維が複雑に絡まり合い、高分子繊維が三次元の網目状に配置される。その結果、複合電解質への有機電解液の浸透性がさらに良好になると共に、複合電解質の粗密差が小さくなって機械的強度が向上される。これにより、二次電池の貯蔵性能、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能がさらに改善される。また、電池の製造コストの削減が可能となる。高分子繊維には、セルロースナノファイバーを用いることが望ましい。
負極活物質含有層がチタン含有酸化物を含むことにより、軽量化と低コスト化を実現できる。また、リチウムデンドライトを回避できるため、二次電池の貯蔵性能、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能がさらに改善され得る。
チタン含有酸化物が、スピネル構造のリチウムチタン酸化物、単斜晶系チタン酸化物及びニオブチタン酸化物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことにより、鉛蓄電池との互換性に優れ、貯蔵性能、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能に優れた二次電池を提供することができる。
複合電解質を、バイポーラ構造を有する二次電池に適用することにより、複数の単位セルを直列に接続することなく、一つの単位セルで高電圧な二次電池を実現することができる。さらに、複合電解質は、ゲル状の形態をとり得るため、バイポーラセル内で電解液を介して生じる短絡を防止することができる。バイポーラ構造を有する二次電池は、第1の面及び第1の面の反対側に位置する第2の面を有する集電体を含み得、また、集電体の第1の面に正極活物質含有層が形成され、かつ第2の面に負極活物質含有層が形成されたバイポーラ構造にすることが望ましい。
以下、複合電解質の詳細について説明する。
リチウム含有無機粒子は、リチウムイオン伝導性が無いまたは低い無機粒子であっても、リチウムイオン伝導性の高い無機固体電解質であっても良い。使用するリチウム含有無機粒子の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
リチウムイオン伝導性が無いまたは低い無機粒子としては、リチウムアルミニウム酸化物(例えば、LiAlO2,LixAl2O3ここで0<x≦1)、リチウムシリコン酸化物、リチウムジルコニウム酸化物が挙げられる。
リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質の一例に、ガーネット型構造の酸化物固体電解質が含まれる。ガーネット型構造の酸化物固体電解質は、リチウムイオン伝導性及び耐還元性が高く、電気化学窓が広い利点がある。ガーネット型構造の酸化物固体電解質の例には、Li5+xAxLa3−xM2O12(AはCa,Sr及びBaよりなる群から選択される少なくとも一種類の元素、MはNb及び/またはTa、xは0.5以下(0を含む)の範囲が好ましい。),Li3M2−xL2O12(MはNb及び/またはTa、LはZrを含む、xは0.5以下(0を含む)の範囲が好ましい)、Li7−3xAlxLa3Zr3O12(xは0.5以下(0を含む)の範囲が好ましい)、Li7La3Zr2O12が含まれる。中でも、Li6.25Al0.25La3Zr3O12、Li6.4La3Zr1.4Ta0.6O12、Li6.4La3Zr1.6Ta0.6O12、Li7La3Zr2O12は、イオン伝導性が高く、電気化学的に安定なため、放電性能とサイクル寿命性能に優れる。また、10〜500m2/g(好ましくは50〜500m2/g)の比表面積を有する微粒子は、有機溶媒を含む有機電解液に対して化学的に安定な利点がある。
また、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質の例に、NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質が含まれる。NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質は、水に対する安定性が高いため、水に溶出し難い。NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質の例には、LiM12(PO4)3、ここでM1は、Ti,Ge,Sr,Zr,Sn及びAlよりなる群から選ばれる一種以上の元素、が含まれる。好ましい例として、Li1+xAlxGe2−x(PO4)3、Li1+xAlxZr2−x(PO4)3、Li1+xAlxTi2−x(PO4)3、が挙げられる。ここで、それぞれにおいて、xは0以上0.5以下の範囲が好ましい。また、例示した固体電解質は、それぞれ、イオン伝導性が高く、電気化学的安定性が高い。NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質と、ガーネット型構造の酸化物固体電解質の双方をリチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質として使用しても良い。
リチウム含有無機粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、または単独の一次粒子と二次粒子の双方を含むものであり得る。
リチウム含有無機粒子の一次粒子の平均サイズ(直径)は、0.01μm以上0.5μm以下の範囲であることが望ましい。この範囲であると、複合電解質でのイオン伝導性が高められるため、放電性能や低温性能が向上する。より好ましい範囲は、0.05μm以上0.3μm以下である。
N2のBET吸着法による比表面積が10〜500m2/gのリチウム含有無機粒子は、例えば、一次粒子の平均粒子サイズ(直径)を0.1μm以下に微細化することで得られる。
リチウムイオンを含有する有機電解液は、例えば、有機溶媒を含む溶媒にリチウム塩を溶解させることにより調製される。
リチウム塩の例には、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3,LiN(FSO2)2,LiN(CF3SO2)2などが挙げられる。LiPF6、LiBF4及びLiN(FSO2)2よりなる群から選択される少なくとも一種類のリチウム塩は、イオン伝導性を高くして放電性能が向上される。
有機溶媒は、沸点が150℃以上であることが望ましい。これにより、複合電解質の高温環境下での耐久性と寿命性能を向上することができる。
有機溶媒は、カーボネート類を含むことが望ましい。カーボネート類の例には、環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジメチルカーボネート(DMC)が挙げられる。プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を用いると、低温性能が向上する。
また、有機溶媒は、カーボネート類以外の他の溶媒を含有することができる。他の溶媒の例には、γ−ブチロラクトン(GBL)、α−メチル−γ−ブチロラクトン(MBL)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリメチル(PO(OCH3)3)、リン酸トリエチル(PO(OC2H5)3)、リン酸トリプロピル(PO(OC3H7)3)、リン酸トリブチル(PO(OC4H9)3)などが含まれる。特に、γ−ブチロラクトンまたはリン酸トリメチルを用いると、低温環境下でのイオン伝導抵抗の上昇が抑制されて低温下(−30℃以下)の放電性能を向上することができる。
複合電解質は高分子を含有することができる。高分子は、リチウムイオンを含む有機電解液をゲル化可能なものであれば特に限定されるものではなく、化学ゲル化剤、物理ゲル化剤いずれも使用可能である。例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリメチルメタクリレートなどのカーボネート類とゲル化可能な高分子が挙げられる。カーボネート類と高分子が複合化してゲル化した高分子電解質が生成することにより、複合電解質のイオン伝導性が高まる。ポリアクリロニトリルを含むゲル状高分子電解質は、イオン伝導性が高く、大電流性能と低温性能が向上するために好ましい。高分子の複合電解質に占める割合は1重量%以上10重量%以下が好ましい。この範囲を逸脱すると低温性能や放電性能が低下する恐れがある。高分子の種類は1種類または2種類以上にすることができる。なお、上記種類の高分子をリチウムイオン伝導性が高い硫化物固体電解質粒子と組み合わせると、硫黄成分が溶解するため使用できない。
リチウム含有無機粒子の表面の少なくとも一部が、リチウムイオンを含有した有機電解液及び高分子を含む層状物で被覆されていることが望ましい。層状物はゲル状であっても良い。これにより、複合電解質のイオン伝導性をさらに高めることができる。その結果、二次電池の低温性能及び大電流性能をさらに向上することができる。
リチウム含有無機粒子のN2のBET吸着法による比表面積を10m2/g以上500m2/g以下にすると共に、リチウム含有無機粒子の表面の少なくとも一部を、リチウムイオンを含有した有機電解液及び高分子を含む層状物で被覆することにより、複合電解質のイオン伝導性をさらに高めることができる。これは、リチウム含有無機粒子と層状物の界面におけるリチウムイオンの移動が容易となるためと考えられる。
複合電解質は、バインダーをさらに含有することが望ましい。これにより、複合電解質の機械的強度を高めることができる。バインダーの例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、アクリル系バインダーが含まれる。複合電解質中のバインダーの含有量は、5重量%以下(0重量%を含む)の範囲が好ましい。この範囲を超えると、電解質のイオン伝導性が低下して放電性能が低下する恐れがある。バインダーの種類は1種類または2種類以上にすることができる。
複合電解質は、ゲル状電解質であることが好ましい。リチウムイオンを含む有機電解液を高分子と複合化することにより、ゲル状電解質となり得る。ゲル状電解質は、リチウム含有無機粒子の表面のうち少なくとも一部を被覆し得る。また、ゲル状電解質は、リチウム含有無機粒子表面を均一に被覆することが好ましい。沸点が150℃以上の有機溶媒を含有したゲル状電解質が好ましい。これにより、複合電解質の高温環境下での耐久性と寿命性能を向上することができる。
複合電解質は、例えば、リチウムイオンを含む有機電解液と高分子とを含む電解質組成物を、リチウム含有無機粒子と混合し、必要に応じて熱処理を施すことにより得られる。
複合電解質中の高分子繊維の含有量の測定方法を以下に記載する。複合電解質を乳鉢等を用いて粉砕し、得られた粉砕物を水中に分散させ、比重差を利用して高分子繊維とリチウム含有無機粒子とを分離する。上澄み中の高分子繊維を100℃で12時間乾燥させ、高分子繊維の重量を測定し、複合電解質中の高分子繊維の含有量を求める。
上記の方法で重量を測定した高分子繊維を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で倍率10000倍で観察し、視野内の高分子繊維の全長の25%、50%、75%の位置での幅を測定する。測定した幅の値の平均を、求める平均直径とする。測定は、視野内に存在する全ての高分子繊維を対象として行う。
複合電解質中のリチウム含有無機粒子の含有率の測定方法を以下に記載する。複合電解質の800℃までのTG(Thermogravimetry:熱重量分析)測定を行い、有機溶媒、高分子、バインダーの重量減少からリチウム含有無機粒子の含有率を測定することができる。
複合電解質がゲルであることの確認は、以下のようにして行う。ゲル状の確認は、複合電解質に10g/cm2の圧力をかけて、有機電解液の浸み出しの有無を調べることで確認できる。
リチウム含有無機粒子の平均一次粒子粒径は、以下の方法により測定される。レーザー回折式分布測定装置(島津SALD−300またはこれと等価な機能を有する装置)を用い、まず、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定する。
リチウム含有無機粒子のN2吸着によるBET比表面積は、以下の条件で測定される。リチウム含有無機粒子1gをサンプルとする。BET比表面積測定装置はユアサ アイオニクス社製を使用し、窒素ガスを吸着ガスとする。
二次電池に含まれる複合電解質の組成、リチウム含有無機粒子の比表面積等を確認する場合、以下の方法により二次電池から複合電解質を取り出す。アルゴンを充填したグローブボックス中で二次電池を分解して電極を取り出す。取り出した電極から複合電解質を引き剥がす。次いで、複合電解質の組成等の確認を行う。
第1の実施形態の複合電解質は、平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維を0.1重量%以上10重量%以下と、リチウム含有無機粒子と、リチウムイオンを含む有機電解液とを含有するため、貯蔵性能、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能に優れた二次電池を提供することが可能である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、正極活物質含有層と、負極活物質含有層と、複合電解質とを含む二次電池が提供される。複合電解質は、正極活物質含有層及び負極活物質含有層のうち少なくとも一方の表面に配置される。そのため、複合電解質の少なくとも一部は、正極活物質含有層及び負極活物質含有層の間に配置され得る。複合電解質には、第1の実施形態に係る複合電解質が使用され得る。
実施形態の二次電池には、非水電解質二次電池、バイポーラ型の二次電池が含まれる。また、実施形態の二次電池は、角形、円筒形、扁平型、薄型、コイン型等の様々な形態の二次電池に適用することが可能である。バイポーラ構造を有する二次電池であることが好ましい。これにより、複数の単位セルを直列に接続した組電池と同等の電圧を有するセルを1個のセルで実現できる利点がある。また、実施形態の複合電解質は、ゲル状の形態をとり得るので、バイポーラセル内で電解液を介して生じる短絡を防止することができる。
非水電解質二次電池は、外装部材と、外装部材内に収納され、正極活物質含有層を含む正極と、外装部材内に収納され、負極活物質含有層を含む負極と、正極活物質含有層及び負極活物質含有層のうち少なくとも一方の表面に配置された複合電解質層とを含むものにすることができる。
負極、正極、外装部材、複合電解質層について、説明する。
(負極)
この負極は、負極集電体と、集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質、導電剤および結着剤を含む負極活物質含有層とを有する。
負極活物質は、リチウムの吸蔵放出が可能なものであれば特に限定されず、炭素材料、黒鉛材料、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物等が含まれる。使用する負極活物質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。チタン含有酸化物を含む負極活物質が好ましい。チタン含有酸化物を用いることで、負極集電体に銅箔に代わってアルミニウム箔やアルミニウム合金箔を用いることができるため、軽量化と低コスト化を実現できる。チタン含有酸化物は、リチウムイオンの吸蔵放出電位がLi電位基準で1〜3V(vs.Li/Li+)の範囲にあるものが望ましい。この条件を満たすチタン含有酸化物の例に、リチウムチタン酸化物、チタン酸化物、ニオブチタン酸化物、ナトリウムニオブチタン酸化物等が含まれる。チタン含有酸化物は、スピネル構造のリチウムチタン酸化物、単斜晶系チタン酸化物及びニオブチタン酸化物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことが望ましい。
リチウムチタン酸化物の例に、スピネル構造リチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi5O12(xは−1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi3O7(−1≦x≦3))、Li1+xTi2O4(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8O4(0≦x≦1)、Li1.07+xTi1.86O4(0≦x≦1)などが含まれる。
チタン酸化物の例に、単斜晶構造のチタン酸化物(例えば、充電前構造がTiO2(B)、LixTiO2(xは0≦x))、ルチル構造のチタン酸化物(例えば、充電前構造がTiO2、LixTiO2(xは0≦x))、アナターゼ構造のチタン酸化物(例えば、充電前構造がTiO2、LixTiO2(xは0≦x))が含まれる。
ニオブチタン酸化物の例に、LiaTiMbNb2±βO7±σ(0≦a≦5、0≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe,V,Mo及びTaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表されるものが含まれる。
ナトリウムニオブチタン酸化物の例に、一般式Li2+vNa2−wM1xTi6−y−zNbyM2zO14+δ(0≦v≦4、0<w<2、0≦x<2、0<y≦6、0≦z<3、−0.5≦δ≦0.5、M1はCs,K,Sr,Ba,Caより選択される少なくとも1つを含み、M2はZr,Sn,V,Ta,Mo,W,Fe,Co,Mn,Alより選択される少なくとも1つを含む)で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物が含まれる。
好ましい負極活物質は、スピネル構造リチウムチタン酸化物である。スピネル構造リチウムチタン酸化物は、充放電時の体積変化が少ない。また、負極集電体に銅箔に代わってアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を用いるこができるため、軽量化と低コスト化を実現できる。さらに、バイポーラ構造の電極構造に有利となる。負極活物質全体に対するチタン含有酸化物以外の他の負極活物質の割合は、50重量%以下にすることが望ましい。
チタン含有酸化物の粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、または単独の一次粒子と二次粒子の双方を含むものであり得る。
二次粒子の平均粒子径(直径)は、2μm以上にすることができ、5μmより大きいことが好ましい。より好ましくは7〜20μmである。この範囲であると負極プレスの圧力を低く保ったまま高密度の負極を作製でき、アルミニウム含有集電体の伸びを抑制することができる。チタン含有酸化物の二次粒子は、例えば、活物質原料を反応合成して平均粒子径1μm以下の活物質プリカーサーを作製した後、焼成処理を行い、ボールミルやジェトミルなどの粉砕機を用いて粉砕処理を施した後、焼成処理において、活物質プリカーサー(前駆体)を凝集し粒子径の大きい二次粒子に成長させることにより得られる。
一次粒子の平均粒子径(直径)は1μm以下とすることが望ましい。これにより、高入力性能(急速充電)においてこの効果は顕著となる。これは、例えば、活物質内部でのリチウムイオンの拡散距離が短くなり、比表面積が大きくなるためである。なお、より好ましい平均粒子径は、0.1〜0.8μmである。負極活物質含有層には、チタン含有酸化物の二次粒子と一次粒子が混在しても良い。より高密度化する観点から負極活物質含有層に一次粒子が5〜50体積%存在することが好ましい。
チタン含有酸化物の粒子の表面の少なくとも一部を炭素材料層で被覆することが望ましい。これにより、負極抵抗を低減することができる。二次粒子製造過程で炭素材料のプリカーサーを添加し不活性雰囲気下で500℃以上で焼成することにより、チタン含有酸化物の粒子表面の少なくとも一部を炭素材料層で被覆することができる。
チタン含有酸化物の粒子は、その平均一次粒子径が1μm以下で、かつN2吸着によるBET法での比表面積が3〜200m2/gの範囲であることが望ましい。これにより、負極の非水電解質との親和性をさらに高くすることができる。
負極集電体は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔であることが望ましい。アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は純度98重量%以上から純アルミニウム(純度100%)までの範囲を取り得、99.99重量%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、鉄、マグネシウム、マンガン、亜鉛及びケイ素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が好ましい。一方、ニッケル、クロムなどの遷移金属は100重量ppm以下(0重量ppmを含む)にすることが好ましい。例えば、Al−Fe合金、Al−Mn系合金およびAl−Mg系合金は、アルミニウムよりさらに高い強度を得ることが可能である。一方、Al−Cu系合金では、強度は高まるが、優れた耐食性を得られない。
集電体のアルミニウム純度は98重量%以上99.95重量%以下の範囲にすることができる。このようなアルミニウム純度を持つ負極集電体に、チタン含有酸化物の二次粒子を組み合わせることで、負極プレス圧を低減して集電体の伸びを少なくできるため、この純度範囲が適切となる。その結果、集電体の電子伝導性を高くできる利点と、さらに、チタン含有酸化物の二次粒子の解砕を抑制して低抵抗な負極を作製することができる。
負極の比表面積は、3〜50m2/gの範囲にすることが望ましく、より好ましい範囲は、5〜50m2/gであり、さらに好ましい範囲は1〜20m2/gである。この範囲であると高温環境下での非水電解質の還元分解が抑制されてサイクル寿命が向上される。ここで、負極の比表面積とは、負極活物質含有層(集電体重量を除く)1g当りの表面積を意味する。なお、負極活物質含有層とは、負極活物質、導電剤及び結着剤を含む多孔質の層であり得る。
負極の多孔度(集電体を除く)は、20〜50%の範囲にすることが望ましい。これにより、負極と非水電解質との親和性に優れ、かつ高密度な負極を得ることができる。多孔度のさらに好ましい範囲は、25〜40%である。
導電剤としては、例えば、炭素材料、金属化合物粉末、金属粉末等を用いることができる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛等を挙げることができる。炭素材料のN2吸着によるBET比表面積は10m2/g以上が好ましい。金属化合物粉末の例に、TiO、TiC、TiNの粉末が含まれる。金属粉末の例に、Al,Ni,Cu、Feの粉末が含まれる。好ましい導電剤の例には、熱処理温度が800℃〜2000℃の平均粒子径10μm以下のコークス、黒鉛、アセチレンブラック、平均繊維径1μm以下の炭素繊維、TiOの粉末が含まれる。これらから選択される1種以上によると、電極抵抗の低減とサイクル寿命性能の向上が図れる。導電剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、アクリル系ゴム、スチレンブタジェンゴム、コアシェルバインダー、ポリイミドなどが挙げられる。結着剤の種類は1種もしくは2種以上にすることができる。
負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質80〜95重量%、導電剤3〜18重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
負極は、例えば、負極活物質の粒子、導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物を集電体に塗布し、乾燥し、プレス(例えば加温プレス)を施すことにより作製される。
負極活物質の平均一次粒子粒径は、以下の方法により測定される。レーザー回折式分布測定装置(島津SALD−300またはこれと等価な機能を有する装置)を用い、まず、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定する。
(正極)
この正極は、正極集電体と、集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質、導電剤および結着剤を含む正極活物質含有層とを有する。
正極活物質には、リチウムを吸蔵放出可能なものが使用され得る。正極活物質の例には、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウム鉄酸化物、リチウムフッ素化硫酸鉄、オリビン結晶構造のリン酸化合物(例えば、LixFePO4(0≦x≦1)、LixMnPO4(0≦x≦1))などが含まれる。オリビン結晶構造のリン酸化合物は、熱安定性に優れている。
高い正極電位の得られる正極活物質の例を以下に記載する。例えばLixMn2O4(0<x≦1)、LixMnO2(0<x≦1)などのリチウムマンガン複合酸化物、LixNi1−yAlyO2(0<x≦1、0<y≦1)、例えばLixCoO2(0<x≦1)などのリチウムコバルト複合酸化物、例えばLixNi1−y−zCoyMnzO2(0<x≦1、0<y≦1、0≦z≦1)などのリチウム複合酸化物、例えばLixMnyCo1−yO2(0<x≦1、0<y≦1)、例えばLixMn2−yNiyO4(0<x≦1、0<y<2)などのスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLixFePO4(0<x≦1)、LixFe1−yMnyPO4(0<x≦1、0≦y≦1)、LixCoPO4(0<x≦1)などのオリビン構造を有するリチウムリン酸化物、フッ素化硫酸鉄(例えばLixFeSO4F(0<x≦1))が挙げられる。
リチウムニッケルアルミニウム複合酸化物(例えばLixNi1−yAlyO2(0<x≦1、0<y<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1−yO2(0<x≦1、0<y<1))によると、高温環境下での非水電解質との反応を抑制することができ、電池寿命を大幅に向上することができる。LixNi1−y―zCoyMnzO2(0≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、より好ましくは0<x≦1.1、0<y≦0.5、0<z≦0.5)で表せる複合酸化物は、高温耐久寿命に有利である。
正極活物質に、LixFe1−y―zMnyMzPO4(MはMg、Al、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも1種の元素、0≦x≦1.1,0≦y≦1、0≦z≦0.2)で表せるオリビン構造のリン酸化合物を用いることができる。このような正極活物質は、二次電池の熱安定性を高くして高温環境下でのサイクル寿命性能を改善する。LixFe1−y―zMnyMzPO4において、yは0.5以上1以下が好ましく、より好ましくは0.7以上0.9以下である。この範囲であることにより、正極電圧が高くなりエネルギー密度向上と電子伝導性が高くなり大電流性能が向上される。また、MがMg、Al、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、zが0以上0.1以下、より好ましくは0.01以上0.08以下であることにより、高温サイクル(例えば45℃以上)でのMn、Feの溶解が抑制されて高温サイクル性能が大幅に向上する。
LixFe1−y―zMnyMzPO4で表せるオリビン構造のリン酸化合物については、LiMn0.85Fe0.1Mg0.05PO4、LiFePO4が好ましい。また、低抵抗化と寿命性能改善のため、オリビン構造のリチウムリン酸化合物の粒子表面の少なくとも一部を炭素材料層で被覆することが好ましい。
正極活物質の粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、または単独の一次粒子と二次粒子の双方を含むものであり得る。
正極活物質の一次粒子の平均粒子径(直径)は1μm以下、より好ましくは0.05〜0.5μmである。正極活物質の粒子表面の少なくとも一部が炭素材料で被覆されていることが好ましい。炭素材料は、層構造、粒子構造、あるいは粒子の集合体の形態をとり得る。
正極集電体には、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔が含まれる。正極集電体のアルミニウム純度は、99重量%以上、純アルミニウム(純度100%)以下の範囲にすることができる。より好ましいアルミニウム純度は99重量%以上99.99重量%以下の範囲である。この範囲であると不純物元素の溶解による高温サイクル寿命劣化を軽減することができる。アルミニウム合金は、アルミニウム成分と、鉄、マグネシウム、亜鉛、マンガン及びケイ素よりなる群から選択される1種類以上の元素とを含む合金が好ましい。例えば、Al−Fe合金、Al−Mn系合金およびAl−Mg系合金は、アルミニウムよりさらに高い強度を得ることが可能である。一方、アルミニウムおよびアルミニウム合金中のニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は100重量ppm以下(0重量ppmを含む)にすることが好ましい。Al−Cu系合金は、強度が高いものの、耐食性が十分でない。
電子伝導性を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、平均繊維径1μm以下の炭素繊維等を挙げることができる。導電剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
活物質と導電剤を結着させるための結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。結着剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上7重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤については、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、7重量%以下であることにより、電極の絶縁部を減少させることが出来る。
正極は、例えば、正極活物質、導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を正極集電体に塗布し、乾燥し、プレスを施すことにより作製される。正極プレス圧力は、0.15ton/mm〜0.3ton/mmの範囲が好ましい。この範囲であると正極活物質含有層とアルミニウム含有正極集電体との密着性(剥離強度)が高まり、かつ正極集電体の伸び率が20%以下となり好ましい。
(外装部材)
外装部材としては、ラミネートフィルム製容器や、金属製容器などが挙げられる。容器の形状は二次電池としての非水電解質二次電池の形態に応じたものにする。非水電解質二次電池の形態としては、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、電気自動車等に積載される大型電池等が挙げられる。
ラミネートフィルムの厚さの好ましい範囲は、0.5mm以下である。より好ましい範囲は0.2mm以下である。また、ラミネートフィルムの厚さの下限値は、0.01mmにすることが望ましい。
一方、金属製容器の板厚の好ましい範囲は、0.5mm以下で、さらに好ましい範囲は0.3mm以下である。また、金属製容器の板厚の下限値は、0.05mmにすることが望ましい。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層と金属層を被覆する樹脂層とを含む多層フィルムを挙げることができる。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔であることが好ましい。アルミニウム箔の純度は99.5重量%以上が好ましい。樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子から形成することができる。
ラミネートフィルム製容器は、例えば、ラミネートフィルムを熱融着により貼り合わせることで得られる。
金属製容器としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどからなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが使用できる。金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されていることが望ましい。アルミニウム合金としては、マンガン、マグネシウム、亜鉛及びケイ素よりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含む合金が好ましい。合金のアルミニウム純度は99.8重量%以下が好ましい。アルミニウム合金からなる金属缶の強度が飛躍的に増大することにより缶の肉厚を薄くすることができる。その結果、薄型で軽量かつ高出力で放熱性に優れたな電池を実現することができる。
金属製容器の封口は、レーザーにより行うことができる。このため、ラミネートフィルム製容器に比べて封止部の体積を少なくすることができ、エネルギー密度を向上することができる。
二次電池は、セパレータを備えていなくても良いが、正極と負極の間にセパレータを配置することが可能である。セパレータの例には、合成樹脂製不織布、多孔質フィルム、セルロース製不織布などを挙げることができる。多孔質フィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンから形成することができる。
セパレータは、厚さ30μm以下で、多孔度50%以上の、セルロース及び/またはポリオレフィンを含む、不織布あるいは多孔質膜が好ましい。気孔率60%以上のセルロース繊維製セパレータを用いることが好ましい。繊維径は10μm以下が好ましい。セパレータの形態には、不織布、フィルム、紙などを挙げることができる。気孔率60%以上のセルロース繊維製セパレータは、非水電解質の含浸性が良く、低温から高温まで高い出力性能を出すことができる。気孔率のより好ましい範囲は62%〜80%である。繊維径を10μm以下にすることで、セパレータと非水電解質との親和性が向上して電池抵抗を小さくすることができる。より好ましい繊維径の範囲は3μm以下である。
セパレータは、厚さが20〜100μm、密度が0.2〜0.9g/cm3であることが好ましい。この範囲であると、機械的強度と電池抵抗低減とのバランスを取ることができ、高出力で内部短絡しにくい電池を提供することができる。また、高温環境下での熱収縮が少なく良好な高温貯蔵性能を出すことが出来る。
実施形態の非水電解質二次電池の例を図1〜図5を参照して説明する。
図1及び図2に、金属製容器を用いた非水電解質二次電池の一例を示す。
電極群1は、矩形筒状の金属製容器2内に収納されている。電極群1は、正極3の正極活物質含有層及び負極4の負極活物質含有層の間に複合電解質層5を介在させて偏平形状となるようにこれらを渦巻き状に捲回した構造を有する。複合電解質層5は、正極活物質含有層または負極活物質含有層の表面を被覆している。複合電解質層の代わりに、複合電解質を保持したセパレータを用いることができる。図2に示すように、電極群1の端面に位置する正極3の端部の複数個所それぞれに帯状の正極リード6が電気的に接続されている。また、この端面に位置する負極4の端部の複数個所それぞれに帯状の負極リード7が電気的に接続されている。この複数ある正極リード6は、一つに束ねられた状態で正極導電タブ8と電気的に接続されている。正極リード6と正極導電タブ8から正極端子が構成されている。また、負極リード7は、一つに束ねられた状態で負極導電タブ9と接続されている。負極リード7と負極導電タブ9から負極端子が構成されている。金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極導電タブ8及び負極導電タブ9は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極導電タブ8及び負極導電タブ9との接触による短絡を回避するために、絶縁部材11で被覆されている。
図3及び図4に、ラミネートフィルム製外装部材を用いた非水電解質二次電池の一例を示す。
図3及び図4に示すように、扁平状の捲回電極群1は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる袋状外装部材12内に収納されている。扁平状の捲回電極群1は、外側から負極4、複合電解質層5、正極3、複合電解質層5の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、この積層物をプレス成型することにより形成される。最外層の負極4は、図4に示すように負極集電体4aの内面側の片面に負極活物質を含む負極層(負極活物質含有層)4bを形成した構成を有し、その他の負極4は、負極集電体4aの両面に負極層4bを形成して構成されている。正極3は、正極集電体3aの両面に正極層(正極活物質含有層)3bを形成して構成されている。
捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子13は最外層の負極4の負極集電体4aに接続され、正極端子14は内側の正極3の正極集電体3aに接続されている。これらの負極端子13および正極端子14は、袋状外装部材12の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材12の開口部をヒートシールすることにより捲回電極群1を密封している。ヒートシールする際、負極端子13および正極端子14は、この開口部にて袋状外装部材12により挟まれる。
複合電解質層は、例えば、以下の方法により作製される。リチウム含有無機粒子をバインダーの溶液に分散させる。得られた分散液を正極及び負極のうち少なくとも一方の電極の片面もしくは両面に塗布あるいは噴霧した後、乾燥させてリチウム含有無機粒子を含む層を形成する。電極群が収納された容器内に、リチウムイオンが含有された有機電解液と、高分子とを含む電解質組成物を注液して正極及び負極の空隙に含浸させる。次いで、容器の開口部を封口板で塞ぐか、封口板を設けずに不活性雰囲気下に置き、60℃以上80℃以下で加熱処理を施すことにより、正極活物質含有層及び負極活物質含有層のうち少なくとも一方の表面に複合電解質層を形成する。
上記方法の代わりに、次に説明する方法によって複合電解質層を形成することが可能である。リチウム含有無機粒子と、リチウムイオンが含有された有機電解液と、高分子とを含む組成物を、正極及び負極のうち少なくとも一方の電極の片面もしくは両面に塗布あるいは噴霧した後、乾燥させて60℃以上80℃以下で加熱処理を施すことにより、正極活物質含有層及び負極活物質含有層のうち少なくとも一方の表面に複合電解質層を形成する。
次いで、バイポーラ構造を有する二次電池を説明する。該二次電池は、第1の面及び第1の面の反対側に位置する第2の面を有する集電体をさらに含む。集電体には、非水電解質二次電池の正極集電体あるいは負極集電体と同様なものを使用可能である。該二次電池は、集電体の第1の面に正極活物質含有層が形成され、かつ第2の面に負極活物質含有層が形成されたバイポーラ構造を有する。第1の実施形態の複合電解質は、正極活物質含有層及び負極活物質含有層のうち少なくとも一方の表面に存在する。その結果、複合電解質の少なくとも一部は、正極活物質含有層及び負極活物質含有層の間に位置する。正極活物質含有層及び負極活物質含有層は、非水電解質二次電池において説明したのと同様なものを使用可能である。
第1の実施形態の複合電解質は、バイポーラ構造を有する二次電池におけるイオン伝導性を改善する。これにより、複数の単位セルを直列に接続することなく、一つの単位セルで高電圧な二次電池を実現することができる。さらに、複合電解質は、ゲル状の形態をとり得るため、バイポーラセル内で電解液を介して生じる短絡を防止することができる。
バイポーラ型二次電池の一例を図5に示す。図5に示す二次電池は、金属製容器31と、バイポーラ構造の電極体32と、封口板33と、正極端子34と、負極端子35とを含む。金属製容器31は、有底角筒形状を有する。金属製容器は、非水電解質二次電池において説明したのと同様なものを使用可能である。バイポーラ構造の電極体32は、集電体36と、集電体36の一方の面(第1の面)に積層された正極層(正極活物質含有層)37と、集電体36の他方の面(第2の面)に積層された負極層(負極活物質含有層)38とを含む。複合電解質層39は、バイポーラ構造電極体32同士の間に配置されている。正極端子34及び負極端子35は、それぞれ、封口板33に絶縁部材42を介して固定されている。正極リード40は、一端が正極端子34に電気的に接続され、かつ他端が集電体36に電気的に接続されている。また、負極リード41は、一端が負極端子35に電気的に接続され、かつ他端が集電体36に電気的に接続されている。
また、第2の実施形態の二次電池を含む組電池、電池パックも、本願の範囲に含まれる。電池パックの態様は用途により適宜変更される。
組電池の例には、電気的に直列又は並列に接続された複数の単位セルを構成単位として含むもの、電気的に直列接続された複数の単位セルからなるユニットまたは電気的に並列接続された複数の単位セルからなるユニットを含むもの等を挙げることができる。
二次電池の複数個を電気的に直列又は並列接続する形態の例には、それぞれが外装部材を備えた複数の電池を電気的に直列又は並列接続するもの、共通の筐体内に収容された複数の電極群またはバイポーラ型電極体を電気的に直列又は並列接続するものが含まれる。前者の具体例は、複数個の二次電池の正極端子と負極端子を金属製のバスバー(例えば、アルミニウム、ニッケル、銅)で接続するものである。後者の具体例は、1個の筐体内に複数個の電極群またはバイポーラ型電極体を隔壁により電気化学的に絶縁した状態で収容し、これらを電気的に直列接続するものである。非水電解質二次電池の場合、電気的に直列接続する電池個数を5〜7の範囲にすることにより、鉛蓄電池との電圧互換性が良好になる。鉛蓄電池との電圧互換性をより高くするには、単位セルを5個または6個直列接続した構成が好ましい。
組電池が収納される筐体には、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどからなる金属缶、プラスチック容器等が使用できる。また、容器の板厚は、0.5mm以上にすることが望ましい。
組電池の一例を図6を参照して説明する。図6に示す組電池21は、図1に示す角型の非水電解質電池221〜225を単位セルとして複数備える。電池221の正極導電タブ8と、その隣に位置する電池222の負極導電タブ9とが、リードあるいはバスバー23によって電気的に接続されている。さらに、この電池222の正極導電タブ8とその隣に位置する電池223の負極導電タブ9とが、リードあるいはバスバー23によって電気的に接続されている。このように電池221〜225間が直列に接続されている。
以上説明した実施形態の二次電池によれば、第1の実施形態の複合電解質を含むため、貯蔵性能、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能に優れた二次電池を提供することができる。また、正極活物質含有層と複合電解質の接合、負極活物質含有層との複合電解質の接合は、充放電サイクルにおいて劣化すること無く、界面抵抗上昇が抑制されてサイクル寿命性能が大幅に改善される。そのため、複合電解質を用いることでセパレータを不要とすることができ、セパレータ分の抵抗がなくなって放電性能が向上する利点が得られ得る。また、有機溶媒を用いることで高温環境下での熱安定性と電気化学的安定性が向上する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池(単電池)を1個又は複数個具備することができる。複数の非水電解質電池は、電気的に直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて接続され、組電池を構成することもできる。第3の実施形態に係る電池パックは、複数の組電池を含んでいてもよい。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、非水電解質電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することもできる。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、非水電解質電池からの電流を外部に出力するため、及び非水電解質電池に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車等の車両の動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
図7及び図8に、電池パック50の一例を示す。この電池パック50は、図3に示した構造を有する扁平型電池を複数含む。図7は電池パック50の分解斜視図であり、図8は図7の電池パック50の電気回路を示すブロック図である。
複数の単電池51は、外部に延出した負極端子13及び正極端子14が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ52で締結することにより組電池53を構成している。これらの単電池51は、図8に示すように電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板54は、負極端子13および正極端子14が延出する単電池51側面と対向して配置されている。プリント配線基板54には、図8に示すようにサーミスタ(Thermistor)55、保護回路(Protective circuit)56および通電用の外部端子としての外部機器への通電用の外部端子57が搭載されている。なお、プリント配線基板54が組電池53と対向する面には、組電池53の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード58は、組電池53の最下層に位置する正極端子14に接続され、その先端はプリント配線基板54の正極側コネクタ59に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード60は、組電池53の最上層に位置する負極端子13に接続され、その先端はプリント配線基板54の負極側コネクタ61に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ59,61は、プリント配線基板54に形成された配線62,63を通して保護回路56に接続されている。
サーミスタ55は、単電池51の温度を検出し、その検出信号は保護回路56に送信される。保護回路56は、所定の条件で保護回路56と通電用の外部端子としての外部機器への通電用端子57との間のプラス側配線64aおよびマイナス側配線64bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ55の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池51の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池51もしくは単電池51全体について行われる。個々の単電池51を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池51中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図7および図8の場合、単電池51それぞれに電圧検出のための配線65を接続し、これら配線65を通して検出信号が保護回路56に送信される。
正極端子14および負極端子13が突出する側面を除く組電池53の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート66がそれぞれ配置されている。
組電池53は、各保護シート66およびプリント配線基板54と共に収納容器67内に収納される。すなわち、収納容器67の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート66が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板54が配置される。組電池53は、保護シート66およびプリント配線基板54で囲まれた空間内に位置する。蓋68は、収納容器67の上面に取り付けられている。
なお、組電池53の固定には粘着テープ52に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図7、図8では単電池51を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。あるいは、直列接続と並列接続を組合せてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列または並列に接続することもできる。
また、図7及び図8に示した電池パックは組電池を一つ備えているが、第3実施形態に係る電池パックは複数の組電池を備えるものでもよい。複数の組電池は、直列接続、並列接続、又は直列接続と並列接続の組合せにより、電気的に接続される。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。本実施形態に係る電池パックは、大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に好適に用いられる。具体的には、デジタルカメラの電源として、または、例えば二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、あるいは鉄道用車両(例えば電車)などの車両用電池、または定置用電池として用いられる。特に、車両に搭載される車載用電池として好適に用いられる。
第3実施形態に係る電池パックを搭載した自動車等の車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
図9に、第3実施形態に係る一例の電池パックを具備した自動車の一例を示す。
図9に示す自動車71は、車体前方のエンジンルーム内に、第3の実施形態に係る一例の電池パック72を搭載している。自動車における電池パックの搭載位置は、エンジンルームに限られない。例えば、電池パックは、自動車の車体後方又は座席の下に搭載することもできる。
図10は、実施形態に係る車両の一例の構成を概略的に示した図である。図10に示した車両300は、電気自動車である。
図10に示す車両300は、車両用電源301と、車両用電源301の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit)380と、外部端子370と、インバータ340と、駆動モータ345とを備えている。
車両300は、車両用電源301を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。しかしながら、図10では、車両300への二次電池の搭載箇所は概略的に示している。
車両用電源301は、複数(例えば3つ)の電池パック312a、312b及び312cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)311と、通信バス310と、を備えている。
3つの電池パック312a、312b及び312cは、電気的に直列に接続されている。電池パック312aは、組電池314aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)313aと、を備えている。電池パック312bは、組電池314bと組電池監視装置313bと、を備えている。電池パック312cは、組電池314cと組電池監視装置313cと、を備えている。電池パック312a、312b、及び312cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パックと交換することができる。
組電池314a〜314cのそれぞれは、直列に接続された複数の二次電池を備えている。各二次電池は、実施形態に係る二次電池である。組電池314a〜314cは、それぞれ、正極端子316及び負極端子317を通じて充放電を行う。
電池管理装置311は、車両用電源301の保全に関する情報を集めるために、車両用電源301に含まれる組電池314a〜314cの二次電池の電圧、温度などの情報を組電池監視装置313a〜313cとの間で通信を行い収集する。
電池管理装置311と組電池監視装置313a〜313cとの間には、通信バス310が接続されている。通信バス310は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス310は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置313a〜313cは、電池管理装置311からの通信による指令に基づいて、組電池314a〜314cを構成する個々の二次電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての二次電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源301は、正極端子と負極端子との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図Yに示すスイッチ装置333)を有することもできる。スイッチ装置333は、組電池314a〜314cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含む。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオンおよびオフされるリレー回路(図示せず)を備える。
インバータ340は、入力した直流電圧をモータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ340は、後述する電池管理装置311あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU380からの制御信号に基づいて、出力電圧が制御される。インバータ340の3相の出力端子は、駆動モータ345の各3相の入力端子に接続されている。
駆動モータ345は、インバータ340から供給される電力により回転し、その回転を例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達する。
また、図示はしていないが、車両300は、車両300を制動した際に駆動モータ345を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ340に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源301に入力される。
車両用電源301の負極端子317には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置311内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ340の負極入力端子に接続されている。
車両用電源301の正極端子316には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置333を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ340の正極入力端子に接続されている。
外部端子370は、後述する電池管理装置311に接続されている。外部端子370は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU380は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置311を他の装置と協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置311と車両ECU380との間で、通信線により、車両用電源301の残容量等の車両用電源301の保全に関するデータ転送が行われる。
実施形態に係る二次電池を含む車両において、電池パック312a、312b及び312cのそれぞれは、貯蔵性能、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能に優れているため、充放電性能に優れ、且つ信頼性の高い車両が得られる。さらに、それぞれの電池パックは安価で安全性が高いため、車両のコストを抑え、且つ安全性を高めることができる。
第3の実施形態の電池パックは、第2の実施形態の二次電池を含むため、貯蔵性能、低温性能、大電流性能及びサイクル寿命性能に優れた電池パックを実現することができる。[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明するが、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
平均粒子径が5μmのLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2粒子を正極活物質として用い、これに、導電剤として正極全体に対して黒鉛粉末を5重量%、結着剤として正極全体に対して5重量%のPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム合金箔(純度99%)の両面に塗布し、乾燥し、プレス工程を経て、電極密度が3g/cm3の正極を作製した。
平均一次粒子径が0.6μmで、比表面積が10m2/gのLi4Ti5O12粒子を負極活物質として用いた。これに、導電剤として平均粒子径6μmの黒鉛粉末と、結着剤としてPVdFとを重量比で95:3:2となるように配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させ、ボールミルを用いて回転数1000rpmで、かつ攪拌時間が2時間の条件で攪拌を用い、スラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム合金箔(純度99.3%)に塗布し、乾燥し、加熱プレス工程を経ることにより、集電体の各面に形成された負極活物質含有層の電極密度が2.2g/cm3の負極を作製した。集電体を除く負極多孔度は、35%であった。
リチウム含有無機粒子として、N2吸着によるBET法による比表面積が50m2/gで一次粒子の平均サイズ(直径)が0.1μmのLi1.3Al0.3Zr1.7(PO4)3粒子を用意した。また、プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)が体積比1:2で混合された混合溶媒に、LiPF6を1M溶解して非水電解液(有機電解液)を調製した。
平均直径10nmのセルロースナノファイバー及びLi1.3Al0.3Zr1.7(PO4)3粒子を分散させた水溶液を正極の正極活物質含有層と負極の負極活物質含有層の表面に塗布して乾燥させた。次いで、これらに、非水電解液と、ポリアクリロニトリル(PAN)を有機溶媒に分散させた高分子溶液(濃度が2重量%)とを含浸させ、60℃で24時間熱処理することにより、厚さが5μmのゲル状の複合電解質層を形成した。複合電解質層において、Li1.3Al0.3Zr1.7(PO4)3粒子と、非水電解液及びポリアクリロニトリル(PAN)の高分子溶液からなるゲル状高分子体と、セルロースナノファイバーの重量比は、94:4:2であった。
負極を正極に対向するように重ねて電極群を作製した。この電極群を厚さが0.25mmのアルミニウム合金(Al純度99%)からなる薄型の金属缶からなる容器に収納した。
前述した図1示す構造を有し、厚さ13mm、幅62mm、高さ96mmの角形の非水電解質二次電池作製した。
(実施例2〜11,14〜20、参考例12,13および比較例1〜6)
正極活物質、負極活物質、リチウム含有無機粒子の組成、比表面積及び含有量、高分子繊維の平均直径及び含有量、有機電解液組成を下記表1〜表4に示す通りにすること以外は、実施例1で説明したのと同様にして二次電池を作製した。実施例16の正極活物質には、オリビン構造のLiMn0.9Fe0.1PO4の二次粒子(一次粒子の平均粒子径50nm)の表面に、平均粒子径5nmの炭素材料粒子が付着量0.1重量%で付着した正極活物質を用いた。
得られた二次電池について、25℃で6Aの定電流で2.9Vまで充電後、2.9Vで定電圧充電を行い、電流値が0.05Aに達した時点で充電を終了した。次いで、1.5Vまで6Aで放電した時の放電容量を測定し、25℃での放電容量とした。
大電流放電性能として、25℃で6Aの定電流で2.9Vまで充電後、2.9Vで定電圧充電を行い、電流値が0.05Aに達した時点で充電を終了した。次いで、5C(30A)放電時の容量維持率を測定した。容量維持率は、0.2C(1.2A)放電時の容量を100%として算出した。
低温放電性能として、25℃で6Aの定電流で2.9Vまで充電後、2.9Vで定電圧充電を行い、電流値が0.05Aに達した時点で充電を終了した。次いで、−20℃での1.2A放電での容量維持率を測定した。容量維持率は、25℃での放電容量を100%として算出した。
貯蔵性能(自己放電性能)として、60℃1月後の残存容量を測定した。2.9Vまでの充電で100%充電を行った後、60℃環境で1カ月放置後、1.5Vまで1.2Aで放電して放電容量を測定した。得られた放電容量を、60℃で貯蔵前の放電容量を100%として表し、60℃1月後の残存容量とした。
これらの測定結果を下記表5〜表6に示す。
表1〜表6から明らかなように、実施例1〜11,14〜20の複合電解質によると、比較例1〜6の複合電解質に比べ、60℃1月後の残存容量及び5C放電容量維持率が高く、放電容量、60℃高温保存性能(貯蔵性能)、大電流放電性能及び低温放電性能のいずれにも優れた二次電池を実現できる。
実施例1〜5の比較により、高分子繊維の平均直径を1〜100nmにすることで、放電容量、60℃高温保存性能、大電流放電性能及び低温放電性能のいずれにも優れた二次電池を実現できることがわかる。
また、実施例1、6〜10の比較により、高分子繊維の含有量を0.1重量%以上10重量%以下にすることで、放電容量、60℃高温保存性能、大電流放電性能及び低温放電性能のいずれにも優れた二次電池を実現できることがわかる。
実施例14〜16の結果から、正極活物質または負極活物質の種類を、実施例1と異ならせた場合にも、放電容量、60℃高温保存性能(貯蔵性能)、大電流放電性能及び低温放電性能に優れた二次電池を実現できることがわかる。
実施例1,19,20の比較により、複合電解質のリチウム含有無機粒子の含有量が90重量%以上95重量%以下の実施例1の二次電池が、放電容量、60℃高温保存性能(貯蔵性能)、大電流放電性能及び低温放電性能のいずれにおいても優れていることがわかる。
(実施例A)
厚さ15μmのアルミウム合金箔(純度99重量%)の集電体の第1の面に、実施例1と同様にして調製した正極スラリーを塗布して乾燥させることにより、正極活物質含有層を形成した。また、集電体の第2の面に、実施例1と同様にして調製した負極スラリーを塗布して乾燥させることにより、負極活物質含有層を形成した。これにより、バイポーラ構造の電極体を得た。
バイポーラ構造の電極体の正極活物質含有層と負極活物質含有層の表面に、実施例1と同様にして厚さが5μmのゲル状の複合電解質層を形成した。このような手順でバイポーラ構造の電極体を5組作製した。バイポーラ構造の電極体5組を、正極活物質含有層と負極活物質含有層の間に複合電解質層が配置されるように直列に接続し、図5に示す構造の容量1Ahのバイポーラ型二次電池を作製した。
(比較例B)
比較例1と同様な複合電解質層を用いること以外は、実施例Aと同様にして図5に示す構造の容量1Ahのバイポーラ型二次電池を作製した。
バイポーラ型二次電池について、25℃で6Aの定電流で14.5Vまで充電後、14.5Vで定電圧充電を行い、電流値が0.05Aに達した時点で充電を終了した。次いで、8Vまで6Aで放電した時の放電容量を測定し、25℃での放電容量とした。
大電流放電性能として、25℃で6Aの定電流で14.5Vまで充電後、14.5Vで定電圧充電を行い、電流値が0.05Aに達した時点で充電を終了した。次いで、5C(30A)放電時の容量維持率を測定した。容量維持率は、0.2C(1.2A)放電時の容量を100%として算出した。
低温放電性能として、25℃で6Aの定電流で14.5Vまで充電後、14.5Vで定電圧充電を行い、電流値が0.05Aに達した時点で充電を終了した。次いで、−20℃での1.2A放電での容量維持率を測定した。容量維持率は、25℃での放電容量を100%として算出した。
貯蔵性能(自己放電性能)として、60℃1月後の残存容量を測定した。14.5Vまでの充電で100%充電を行った後、60℃環境で1カ月放置後、8Vまで1.2Aで放電して放電容量を測定した。得られた放電容量を、60℃で貯蔵前の放電容量を100%として表し、60℃1月後の残存容量とした。これらの結果を下記表7に示す。
表7から明らかな通り、実施例Aのバイポーラ電池は、比較例Bのバイポーラ電池に比して、25℃での放電容量、60℃1月後の残存容量、5C放電時の容量維持率及び−20℃での容量維持率に優れている。
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例の複合電解質によれば、平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維を0.1重量%以上10重量%以下と、リチウム含有無機粒子と、リチウムイオンを含む有機電解液とを含有する複合電解質が提供される。実施形態の複合電解質によれば、リチウムイオン伝導性と強度を向上することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 正極活物質含有層と、
負極活物質含有層と、
前記正極活物質含有層及び前記負極活物質含有層のうち少なくとも一方の表面に配置され、平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維を0.1重量%以上10重量%以下と、リチウム含有無機粒子と、リチウムイオンを含む有機電解液とを含有する複合電解質と
を含む、二次電池。
[2] 前記リチウム含有無機粒子のN2のBET吸着法による比表面積が10m2/g以上500m2/g以下で、前記複合電解質の前記リチウム含有無機粒子の含有量が85重量%以上98重量%以下である、[1]に記載の二次電池。
[3] 前記リチウム含有無機粒子がリチウムイオン伝導性の無機固体電解質粒子を含む、[1]または[2]に記載の二次電池。
[4] 前記高分子繊維は、セルロースを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の二次電池。
[5] 前記負極活物質含有層がチタン含有酸化物を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の二次電池。
[6] 前記チタン含有酸化物は、スピネル構造のリチウムチタン酸化物、単斜晶系チタン酸化物及びニオブチタン酸化物よりなる群から選択される少なくとも一種を含む、[5]に記載の二次電池。
[7] 第1の面及び前記第1の面の反対側に位置する第2の面を有する集電体をさらに含み、前記集電体の前記第1の面に前記正極活物質含有層が形成され、かつ前記第2の面に前記負極活物質含有層が形成されたバイポーラ構造を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の二次電池。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の二次電池を一つまたは二以上含む、電池パック。
[9] 通電用の外部端子と、
保護回路とをさらに含む[8]に記載の電池パック。
[10] 前記二次電池を二以上具備し、前記二以上の二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている、[8]または[9]に記載の電池パック。
[11] [8]〜[10]のいずれかに記載の電池パックを搭載した車両。
[12] 前記電池パックは、前記車両の動力の回生エネルギーを回収する、[11]に記載の車両。
[13] 平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維を0.1重量%以上10重量%以下と、
リチウム含有無機粒子と、
リチウムイオンを含む有機電解液と
を含有する、複合電解質。
実施形態によれば、正極活物質含有層と、負極活物質含有層と、複合電解質とを含む二次電池が提供される。複合電解質は、正極活物質含有層及び負極活物質含有層のうち少なくとも一方の表面に配置される。また、複合電解質は、平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維を0.1重量%以上10重量%以下と、リチウム含有無機粒子と、リチウムイオンを含む有機電解液とを含有するゲル状複合電解質である。リチウム含有無機粒子は、NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の粒子である。
また、実施形態によれば、平均直径が1nm以上100nm以下の高分子繊維を0.1重量%以上10重量%以下と、リチウム含有無機粒子と、リチウムイオンを含む有機電解液とを含有するゲル状の複合電解質が提供される。リチウム含有無機粒子は、NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の粒子である。