JP2020094638A - プラスチック薄片輸送用曲がり配管 - Google Patents
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Abstract
Description
具体的には、樹脂フィルムや樹脂シートを、一辺が50mm以下程度の薄片に破砕された破砕片を主とする廃プラスチック薄片が、配管によって空気輸送されセメント製造設備に供給される。
しかしながら、このような廃プラスチック薄片を配管で空気輸送すると、配管内面との接触によって肉厚が15mmある配管で、摩耗が年間1mm程度生じていた。また、摩耗が進行すると配管に孔が開き破損してしまうという不具合も発生する。このような不具合は上記廃プラスチック薄片のみならず、広く粉粒体の空気輸送配管で生じるものであり、従来、流体による配管内面の摩耗の対応策に関する発明が開示されている。
この耐摩耗ライニング構造では、一定の範囲に対摩耗材を貼付し、ベンド部内表面と耐摩耗材表面とが同一面に形成されているので、全面に貼付する場合よりもコストや重量を抑制することが可能であり、段差による流体の流れの変化に伴う摩耗を生じることがないという効果を発揮する。
具体的には、廃プラスチック薄片は輸送配管内で曲がり部に到達すると、曲がり部の外側内面に当たった後はその内面に沿って滑るようにして搬送され、最初に廃プラスチック薄片が管の内面に当たった際には衝撃を与えるものの、その後は内面に沿って滑るので管の内面への衝撃は少ないという特徴を有していることを本願出願人はその運転経験から会得している。
すなわち、曲がり管の入口近傍で摩耗が進み、必ずしも曲がり部の全体に亘って摩耗対策を講ずる必要もなく、この部分での摩耗対策を怠ってしまうと頻繁に管の補修や交換が頻繁に必要となるという課題があった。
上記構成のプラスチック薄片輸送用曲がり配管の内面において、溶射皮膜を形成する領域は外側曲がりの内面のうち、最外側に形成される前記線分(L+ΔL1+ΔL2)となる。
外側曲がりの内面とは、曲がり配管の断面の円周において、最外側の点を0°の位置とし、最内側の点を180°の位置とし、最内側の点と最外側の点の中間点をそれぞれ90°と270°としたときに、90°から0°を含んで270°までの範囲に含まれる内面を意味する。
プラスチック薄片が曲がり配管の内面に最も頻繁に衝撃を与える箇所に溶射皮膜が最も効率的に形成された領域を備えていることから、最も効率的に摩耗を抑制するように作用する。また、溶射皮膜が形成された領域を限定的に設けることで被輸送物であるプラスチック薄片の流れを阻害するようには作用しない。
本発明のプラスチック薄片輸送用曲がり配管は、下記に例示される耐摩耗材による溶射皮膜を形成した領域を備えるため、耐摩耗材の厚みが周縁に向かって徐々に薄くなり、耐摩耗材が存在する部分との段差が殆ど存在しないという特徴を有している。そのため、かかる部分において搬送されるプラスチック薄片をスムースに流通することができるというメリットを有する。
なお、溶射技術としては、熱源として燃焼ガスを用いるフレーム溶射や熱源に電気を用いるアーク溶射やプラズマ溶射等があり、溶射材料やコストを考えながら選択するとよい。また、溶射材料としての耐摩耗材は、金属、金属合金、セラミックス、金属(合金)とセラミックスの複合材料であるサーメット等がある。例えば、ニッケル・クロム合金をはじめ、タングステンを用いたタングステン・ニッケル・クロム合金、タングステンカーバイトコバルト、タングステンカーバイトニッケル、さらにはモリブデン等がある。また、曲がり配管の材質は炭素鋼やステンレス鋼が考えられる。
また、前記溶射皮膜を形成させる領域内における溶射皮膜の厚みは特に制限されないが、1.5mm以上であることが好ましく、上限は、2.5mm以下、特に2mm以下であることが好ましい。
上記構成のプラスチック薄片輸送用曲がり配管では、溶射皮膜を形成する領域を最外側に形成される線分Lを挟んで適度な幅Wを持たせることで、プラスチック薄片が曲がり配管の外側曲がりの内面に衝突することによる摩耗をより効果的に抑制するように作用する。
なお、上記溶射皮膜を形成する領域の幅Wは、プラスチック薄片の輸送量に応じて決定される。
このようなプラスチック薄片輸送用曲がり配管では、第1及び第2の発明の作用に加えて、溶射皮膜の形成用又は補修用の窓部が溶射皮膜の形成あるいは補修を可能に作用する。
上記構成のプラスチック薄片輸送用曲がり配管では、第1乃至第3の発明の作用に加えて、曲がり配管の入口及び出口では断面が円形であることから、直管部との接続を可能とするように作用する。また、最外側が線分Lを含む断面で扁平することで、線分Lを含む外側曲がりの内面の領域を平面に近づけてプラスチック薄片の衝突による衝撃が線分Lを挟んで配管の周方向の幅方向に広く拡散するようにすると同時に衝突後に外側曲がりの内面に沿ってプラスチック薄片が滑り易くなるように作用する。これによって単位外側曲がりの内面におけるプラスチック薄片による衝撃を低下させるように作用する。
なお、扁平とは配管断面の長径をaとし、短径をbとした場合に式(1)で表現される扁平率fが、0<f<1の場合をいう。
f=(a−b)/a (1)
因みに、本発明で特定する領域内に溶射皮膜を形成させることにより、1年間使用後、曲がり配管の内面の摩耗を、何れの箇所においても0.1mm以下に抑制することができた。
また、溶射皮膜の形成を最小限に留めることで配管の流路面積を溶射皮膜が形成されない場合とほぼ同一として、被輸送物であるプラスチック薄片の輸送流れを阻害することなく、溶射皮膜が形成されない場合とほぼ同一の運用を行うことが可能である。
窓部の形状や大きさは特に限定しないが、溶射皮膜を形成される領域に対して、施工が可能な範囲でカバーできるような形状及び大きさとすることが必要である。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るプラスチック薄片輸送用曲がり配管の水平断面図である。したがって、図1は上方から水平に割った配管の断面を示すものである。
図1において、プラスチック薄片輸送用曲がり配管1aはフランジ等の継手で構成される入口2から同様の出口3までの曲がり配管であり、本実施の形態では符号Aで示される矢印の方向へプラスチック薄片が空気によって輸送されている。
また、図1では、符号Bで示される矢印の方向から入口2を見た場合の配置概念図を入口2の左側に図示している。本実施の形態では、配置概念図に示されるとおり、プラスチック薄片輸送用曲がり配管1aの流路断面の周方向において、流路の最外側を0°としており、符号4,5はそれぞれ入口2における最内側4の点と最外側5の点を示している。
空気で搬送されるプラスチック薄片は、一辺が50mm以下程度の薄板状に破砕されているので、直管から曲がり管に進入すると、その内面8に面で接触することが多い。一旦、面でプラスチック薄片輸送用曲がり配管1aの内面8に接触したプラスチック薄片は、その内面8に沿って滑るように輸送されるため、曲がり管の入口2近傍で衝突した際には内面8に衝撃が加わるものの、その後は内面8に衝突して衝撃が発生することが少ないので、衝撃による損傷や減肉が生じるのは入口2近傍の一定箇所に集中するという特徴を有している。
具体的には、入口2において最外側5近傍を輸送されてプラスチック薄片輸送用曲がり配管1aに進入するプラスチック薄片は、そのまま外側曲がりの内面8に接触し、その内面8に沿って滑るように輸送されるという特異な挙動を示すため、内面8に衝突後はかかる内面8に対して殆ど損傷や減肉は発生しない。
この中心軸7近傍を輸送されるプラスチック薄片と最内側軸6近傍を輸送されるプラスチック薄片が内面8に衝突する位置の点を結んだのが図1中に示される符号Lの線分である。
すなわち、この線分Lを含む部分に集中的に損傷が生じることになり、この線分Lを中心とした領域を溶射皮膜9で補強することでプラスチック薄片輸送用曲がり配管1aの外側曲がりの内面8の健全性の維持と耐久性を担保するものである。なお、この線分Lは図1中の配置概念図で示される最外側5の(角度0°)の位置に存在するものである。
溶射皮膜を形成する領域は、線分Lの上流側と下流側にそれぞれΔL1とΔL2の領域長を備えている。
上記ΔL1は、0.5L〜L、好ましくは、0.6L〜Lである。上記ΔL1は、直管部から曲がり配管に至るプラスチック薄片の流れが若干拡散して内壁8に衝突するため、かかる部分も保護するための範囲として設定されたものである。
一方、ΔL2は、0.1L〜0.7L、好ましくは、0.2L〜0.5Lである。特に、ΔL2の範囲は、前記したプラスチック薄片の特異性、即ち、プラスチック薄片は、外側曲がりの内面8に衝突し、その後は内面8に沿って滑るように輸送されるという特異な挙動により、ΔL1より短くできることが本願発明者らの確認によって明らかとなった。
即ち、本発明の対象とするプラスチック薄片は、粉粒体のように流体の流れに沿って曲がり配管の外側曲がりの内面の広い範囲に損傷や減肉を与えるものではなく、本発明において、前記溶射領域は、前記範囲に限定して形成することができる。
したがって、線分Lを中心として溶射皮膜9が形成された本実施の形態に係るプラスチック薄片輸送用曲がり配管1aは、線分Lを中心とした少ない溶射皮膜9の形成によって、最も効果的に摩耗を抑制し、補修や交換の頻度を効率的に減少させ、補修や交換も含めた運転コストを削減することができるという効果を有する。また、溶射皮膜9の形成を最小限に留めることでプラスチック薄片輸送用曲がり配管1aの流路面積が、溶射皮膜9が形成されない場合とほぼ同一となるので、プラスチック薄片の輸送流れを阻害することなく、溶射皮膜が形成されない場合とほぼ同一の運用を行うことが可能である。
また、溶射皮膜9を形成する領域(線分L)に対して、流れ方向にΔL1やΔL2の領域長、さらに、流路断面の周方向に符号Wで示される領域幅を持たせることで、溶射皮膜9の形成では線分Lの範囲に比較して施工する範囲が広がるものの、より広範囲にプラスチック薄片による衝撃を緩和して摩耗を抑制するため、損傷や減肉の進行が遅れて、より補修や交換の頻度を減少させることが可能である。
なお、このθは、本実施の形態においては実施例として50°としているが、最外側に設定される線分Lの位置を起点(0°)に周方向にそれぞれ45°〜90°の範囲としてもよく、より好ましくは、50°〜70°の範囲である。
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るプラスチック薄片輸送用曲がり配管の水平断面図である。図2において、図1で説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本実施の形態に係るプラスチック薄片輸送用曲がり配管1bは、耐摩耗材の溶射皮膜9を形成させるため、あるいは溶射皮膜9を補修するための開口10aと蓋10bとによって構成される窓部10を備えているものである。
したがって、溶射皮膜9を形成あるいは補修するための溶射ガンや溶射ノズルによる溶射カバー範囲Cが、必要とされる箇所の溶射皮膜9を包含するような大きさあるいは形状の窓部10であることが必要である。
溶射皮膜9は、外側曲がりの内面8に形成されるため、窓部10は内側曲がり、すなわち、流路断面の周方向の最内側4の位置を中心として設置されることが好ましい。運転中は窓部10の蓋10bは閉鎖され、運用前に溶射皮膜9を施工する場合及び運用停止して損傷や減肉が生じた溶射皮膜9を補修する場合に開けて溶射ガンを挿入して溶射皮膜9を施工あるいは補修する。
上記窓部10の蓋10bは、その内面が可及的に配管の内面と同一面を形成するように設けることが、配管内を流通するガス流を乱すことなく安定してプラスチック薄片を輸送することができ、好ましい。
図3は、プラスチック薄片輸送用曲がり配管1に上記窓部10を形成した具体的態様を示す斜視図である。図3に示すように、窓部10は、開口10aと蓋10bとにより構成される。蓋10bの構造は特に制限されないが、取っ手11を設けることが、脱着を容易とすることができ好ましい。また、蓋が曲がり管内に脱落しないように、ストッパー12を設けることが好ましい。更に、図示されていないが、蓋10bをした後、配管と蓋との隙間を公知のシーリング材でシールすることが、管内を流通するガス等の漏れを防止するために好ましい。
なお、溶射皮膜9の損傷や減肉の程度を目視で確認可能なように、蓋10bの一部に強化ガラス等の透明部材を採用するとよい。透明部材とすることにより、溶射皮膜9に対する視認性が高まる位置に設け、運転中においてあるいは運転停止時において溶射皮膜9の状態の確認が容易にでき、補修のタイミングを計ることが可能となる。
また、窓部10は内側曲がりの位置に設けられるのでプラスチック薄片による衝撃を受け難く、窓部10の損傷等はほぼ無く、一般的に鉄よりも弱い材料で構成される透明部材を採用することが可能である。
さらに、窓部10の一部に透明部材を設けることで、溶射皮膜9の状態に対する視認性を高めることができ、溶射皮膜9の健全性の確認や補修のタイミングを計ることが可能である。
図4は、本発明の第3の実施の形態に係るプラスチック薄片輸送用曲がり配管の水平断面図である。図4において、図1で説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本実施の形態に係るプラスチック薄片輸送用曲がり配管1cは、耐摩耗材の溶射皮膜9aが形成される領域を扁平領域Dとするものである。扁平とは、図4中の扁平領域Dにおける配置概念図に記載されるとおり、配管断面において長半径aと短半径bを備えた管の状態を言い、その扁平率fは、長半径aと短半径bを用いて下記の式(1)で表現される。
f=(a−b)/a (1)
また、扁平領域Dにおける配管断面の最外側5aは、プラスチック薄片輸送用曲がり配管1cの湾曲の中心から半径方向で最も遠い点の集合であり、最内側4aは同様に最も近い点の集合となる。
このような扁平領域Dでは、耐摩耗材による溶射皮膜9aが形成される外側曲がりの内面8は、より平面に近づくので、第1の実施の形態におけるプラスチック薄片輸送用曲がり配管1aの流路断面の周方向の最外側5の位置を挟んで周方向の角度で設定される符号Wで示された領域幅は、扁平率に応じて適宜調節される。
なお、フランジ等の継ぎ手で構成される入口2や出口3は直管における同様の継ぎ手と接続可能なように円形状に構成されている。また、扁平領域Dは溶射皮膜9aをカバーできればよく、溶射皮膜9aの範囲に限定されなくともよい。すなわち、円形状に構成される入口2と出口3の間で、可能な限り扁平領域Dを増やしてもよいし、図3にあるとおり、溶射皮膜9aの範囲を覆う最低限の扁平領域Dとしてもよい。溶射皮膜9aは薄いので扁平領域Dを設けてもプラスチック薄片の輸送に影響は少ないが、扁平率を高め過ぎるとプラスチック薄片の輸送に影響が出る可能性があるので、扁平率については、プラスチック薄片輸送用曲がり配管1cの内径や長さに基づいて、決定するとよい。
Claims (4)
- プラスチック薄片を輸送する配管に設けられる曲がり配管であって、外側曲がりの内面に耐摩耗材の溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜は、前記曲がり配管の入口における配管中心軸が前記曲がり配管の前記外側曲がりの内面と交差する点と、前記入口における配管内面の最内側の点から進入方向へ伸ばした軸が前記曲がり配管の前記外側曲がりの内面と交差する点とを結ぶ線分Lと、この線分Lから前記入口側にΔL1長及び出口側にΔL2長延ばした線分を含む領域に部分的に形成されることを特徴とするプラスチック薄片輸送用曲がり配管。
但し、ΔL1=0.5L〜L、ΔL2=0.1L〜0.7Lである。 - 前記領域の配管内面の円周方向への幅Wが、前記曲がり配管の断面の円周において、前記曲がり配管の最外側に設定される前記線分Lの位置を起点に周方向にそれぞれ45°〜90°の範囲であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック薄片輸送用曲がり配管。
- 前記曲がり配管の前記外側曲がりの内面に形成される前記領域に符合する前記曲がり配管の内側曲がり部分に、前記溶射皮膜の形成用又は補修用の窓部が設置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラスチック薄片輸送用曲がり配管。
- 前記曲がり配管の前記入口及び前記出口では断面が円形であり、かつ、少なくともその最外側が前記線分Lを含む断面では扁平に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプラスチック薄片輸送用曲がり配管。
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