以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において、例えば「ポリイミド及び/又はポリアミドイミド」等のように「P及び/又はQ」との記載、また、例えば「カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び/又は−NH−結合」等のように「P、Q及び/又はR」との記載は、それぞれ「P及びQからなる群より選択される少なくとも1つ」、「P、Q及びRからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味し、「及び/又は」を用いる他の記載もこれに準じる。ここでP、Q及びRは任意の用語である。
また、本明細書において、「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
以下、添付された図面を参照し、第1の態様に係る発電装置の具体的構成について詳細に説明する。図面において、同一参照符号は同一構成要素を指し、各構成要素の大きさや厚みは説明の明瞭性のために誇張されている。また、所定の物質層が基板や他の層の上に存在するとするとき、その物質層は、基板や他の層に直接接しながら存在することもあり、その間に、他の第3の層が存在することもある。そして、以下の実施形態において、各層をなす物質は例示的なものであるので、それ以外に他の物質が使用されることもある。
≪発電装置≫
図1は、第1の態様に係る発電装置の1つの例示的な実施形態の断面図である。
第1の態様に係る発電装置は、外力により生じる摩擦体間の摩擦によって上記摩擦体を帯電させることによって、上記外力を電気エネルギーに変換する発電装置100であり、上記外力により生じる上記摩擦体に基づく静電誘導により、上記外力を電気エネルギーに変換し、第1電極112と、第2電極122との間に電流を発生し得る。
第1の態様において、発電装置100が、第1電極112と、第2電極122と、第1摩擦体131と、第2摩擦体132とを備え、
第1摩擦体131は第1摩擦面を有し、
第2摩擦体132は第2摩擦面を有し、
第1摩擦体131と、第2摩擦体132とは、上記第1摩擦面と上記第2摩擦面とが対向するように設けられ、
第1電極112は、第1摩擦体131の上記第1摩擦面とは反対の面に接して設けられ、
第2電極122は、第2摩擦体132の上記第2摩擦面とは反対の面と対向するように、第2摩擦体132と離間して設けられ、
上記第1摩擦面と、上記第2摩擦面とは、外力が作用しない場合に離間しており、且つ外力の作用により互いに接触して摩擦可能であり、
第1摩擦体131又は第2摩擦体132が、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂からなる。
イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂は予想外にも誘電率が高く、摩擦体として使用することにより静電誘導性に寄与することにより、第1電極112と、第2電極122との間に発生する電流を向上し得る。
第1電極112及び第2電極122は、電気伝導性にすぐれる物質を含む。例えば、第1電極112及び第2電極122は、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、ITO(インジウム錫酸化物)、金属及び伝導性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含んでもよい。ここで、該金属は、例えば、Ag、Al、Cu、Au、Ni、Cr及びPtからなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。このような第1電極112及び第2電極122は、単層構造、または複数の層構造を有することができる。
第1の態様に係る発電装置は、第1基板110及び第2基板120を更に備えていても備えていなくてもよく、第1基板110及び第2基板120を更に備えている場合、第1基板110の下面には第1電極112が設けられており、第2基板120の上面には第2電極122が設けられていることが好ましい。
例えば、第1基板110は上部基板にもなり、第2基板120は下部基板にもなる。このような第1基板110及び第2基板120は平坦な構造を有することができるが、それに限定されるものではない。
このような第1基板110及び第2基板120は、例えば、シリコンウェーハまたはガラスのような硬質材質を含んでもよい。しかし、必ずしもそれらに限定されるものではなく、それら以外にも、第1基板110及び第2基板120は多様な物質を含んでもよい。例えば、第1基板110及び第2基板120は、ポリエステル(PE)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはカプトン(Kapton)のような柔軟な材質を含んでもよい。
第1基板110と第2摩擦体132との間には、典型的には、少なくとも1つの第1弾性支持部141が設けられる。第2摩擦体132と第2基板120との間には、少なくとも1つの第2弾性支持部142が設けられてもよい。ここで、第1弾性支持部141及び第2弾性支持部142は、例えば、それぞれ第1スプリング及び第2スプリングを含んでもよい。しかし、それらに限定されるものではなく、それら以外にも、第1弾性支持部141及び第2弾性支持部142は、他の多様な弾性部材を含んでもよい。図1には、4個の第1スプリングが、第1基板110と第2摩擦体132との間のコーナー部分に設けられており、4個の第2スプリングが、第2摩擦体132と第2基板120との間のコーナー部分に設けられている場合が例示的に図示されている。
第1弾性支持部141は、第2弾性支持部142より小さい弾性係数を有することができる。例えば、第1弾性支持部141及び第2弾性支持部142がそれぞれ第1スプリング及び第2スプリングからなる場合、第1スプリングは、第2スプリングより小さいスプリング定数を有することができる。それによって、第1基板110を押せば、まず、第1基板110と第2摩擦体132との間隔が狭まり、次に、第2摩擦体132と第2基板120との間隔が狭まる。次に、第1摩擦体131と第2摩擦体132とがまず接触し、次に、第2摩擦体132が接地ユニット150の導電性部材151及び第2電極122と順次に接触する。
<イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂>
第1の態様に係る発電装置100は、上述のように、第1摩擦体131又は第2摩擦体132が、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂からなる。
本発明は、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂を含む摩擦発電装置用摩擦体に関するものでもあり、第3の態様に係る摩擦発電装置用摩擦体はイミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂を含む。
イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂は予想外にも誘電率が高く、摩擦体として使用することにより発電性に寄与し得る。
「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」としては、例えば、イミド結合の開環度が1%以上のポリイミド樹脂等が挙げられ、誘電率の観点から、開環度3%以上のポリイミド樹脂が好ましく、開環度5%以上のポリイミド樹脂がより好ましい。
開環度の上限値としては本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、例えば、開環度30%以下が挙げられ、開環度25%以下が好ましく、開環度20%以下がより好ましい。
本明細書及び特許請求の範囲において、「イミド結合の開環度」は、下記「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」のイミド化率(X1)を下記「イミド結合を開環させていないポリイミド樹脂」のイミド化率(X2)で規格化した値を100(%)から引いて得られた値(%)と定義する。
まず、ポリイミド樹脂において、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT−IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値をイミド化率と定義する。イミド化率は、相対的に数字が大きいほど、イミド結合の数が多い、即ち、上述の開環したイミド結合が少ないことを表す。
具体的には、「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」(例えば、後述の「イミド結合開環工程」を行った後の後述の「ポリイミド樹脂多孔質成形体」)について、FT−IR装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT−IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値で表される値を「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」のイミド化率(X1)と定義する。
また、「イミド結合を開環させていないポリイミド樹脂」(例えば、上記値(X1)を求めた多孔質成形体と同一のポリマー(ワニス)を用いて得られた後述の「ポリイミド樹脂多孔質成形体」であって、後述のイミド結合開環工程を行わない「ポリイミド樹脂多孔質成形体」(ただし、当該多孔質成形体を作成するためのワニスがポリアミド酸を含む場合、焼成工程において、実質的にイミド化反応が完結しているものとする。)について、FT−IR装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT−IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値で表される値を「イミド結合を開環させていないポリイミド樹脂」のイミド化率(X2)と定義する。
「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」のイミド化率(X1)は、1.2以上が好ましく、1.2〜2がより好ましく、1.3〜1.6が更に好ましく、1.30〜1.55が更により好ましく、1.35〜1.5未満が特に好ましい。
また、「イミド結合を開環させていないポリイミド樹脂」のイミド化率(X2)は1.5以上のものを用いることが好ましい。
第1の態様に係る発電装置において、発電性能の観点から、上記第1摩擦面、及び上記第2摩擦面の少なくとも一方が粗面であるか、第1摩擦体131及び第2摩擦体132の少なくとも一方が多孔質であることが好ましく、摩擦に対する耐久性力及び発電性能の観点から、第1摩擦体131及び第2摩擦体132の少なくとも一方が多孔質であり、上記多孔質が上記「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」からなることがより好ましい。
上記第1摩擦面、及び上記第2摩擦面の少なくとも一方の粗面としては、複数の突起部が形成されている粗面等が挙げられる。ここで、上記突起部は、例えば、ワイヤ形状又はピラミッド形状などを有することができるが、それらに限定されるものではない。このように、粗面とすることによって接触面積が増大することにより、さらに電気エネルギーを効率的に得ることができる。
上記第1摩擦面、及び上記第2摩擦面の少なくとも一方を粗面とする方法としては特に制限はないが、任意のエンボス加工、任意のパターン形成(例えば、ドット形状、トレンチ形状等)等が挙げられる。
第1の態様に係る発電装置において、上記第1摩擦面及び上記第2摩擦面の間の静止摩擦力が16.0gf以上であることが好ましい。
また、第1の態様に係る発電装置において、上記第1摩擦面、及び上記第2摩擦面の間の動摩擦力が8.0gf以上であることが好ましい。
第1の態様におけるポリイミド樹脂は、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドを含む樹脂が挙げられ、実質的にポリイミド及び/又はポリアミドイミドのみからなる樹脂であってもよく、具体的には、95質量%以上、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上がポリイミド及び/又はポリアミドイミドである樹脂である。含有される樹脂としては、ポリイミドを含む樹脂が好ましく、ポリイミドのみであってもよい。
(ポリイミド)
使用され得るポリイミドとしては、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーを使用してもよく、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーを使用してもよく、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、後述するポリアミド酸の説明に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
ポリイミドを製造する方法は特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、有機溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中Arはアリール基を示す。
(ポリアミドイミド)
用い得るポリアミドイミドとしては、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
また、用い得るポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるポリアミドイミド、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるポリアミドイミド等を特に限定されることなく使用できる。
上記任意の無水トリメット酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
上記任意のジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記任意のジアミンとしては、後述するポリアミド酸の説明において例示するものと同様のものが挙げられる。
(イミド結合の一部開環)
第1の態様において、イミド結合の一部が開環していることにより、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドがカルボキシ基、塩型カルボキシ基及び−NH−結合からなる群より選択される少なくとも1つを有することが好ましく、カルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基と−NH−結合とを両方有することがより好ましい。
上記ポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び/又は−NH−結合を、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドの主鎖末端以外に有することが好ましい。
本明細書において、「塩型カルボキシ基」とは、カルボキシ基における水素原子が陽イオン成分に置換した基を意味する。本明細書において、「陽イオン成分」とは、完全にイオン化した状態である陽イオン自体であってもよいし、−COO−とイオン結合して事実上電荷のない状態である陽イオン構成要素であってもよいし、これら両者の中間的な状態である部分電荷を有する陽イオン構成要素であってもよい。「陽イオン成分」がn価の金属MからなるMイオン成分である場合、陽イオン自体としてはMn+と表され、陽イオン構成要素としては「−COOM1/n」において「M」で表される要素である。
本発明において「陽イオン成分」とは、例えば、後述のケミカルエッチング液に含有される化合物として挙げた化合物がイオン解離した場合の陽イオンが挙げられ、代表的にはイオン成分又は有機アルカリイオン成分が挙げられる。例えば、アルカリ金属イオン成分がナトリウムイオン成分の場合、陽イオン自体としてはナトリウムイオン(Na+)であり、陽イオン構成要素としては「−COONa」において「Na」で表される要素であり、部分電荷を有する陽イオン構成要素としてはNaδ+である。本発明において陽イオン成分としては特に限定されず、無機成分、NH4 +、N(CH3)4 +等の有機成分の何れであってもよい。無機成分としては、例えば、Li、Na、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属等の金属元素が挙げられる。有機成分、なかでも、有機アルカリイオン成分としては、NH4 +、例えばNR4 +(4つのRはそれぞれ同一又は異なって、有機基を表す。)で表される第四級アンモニウムカチオン等が挙げられる。上記Rとしての有機基としてはアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。第四級アンモニウムカチオンとしては、N(CH3)4 +等が挙げられる。
本発明において、「塩型カルボキシ基」及び「陽イオン成分」がどのような状態であるかは特に限定されず、通常、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが存在する環境、例えば水溶液中であるか、有機溶媒中であるか、乾燥しているか、等に依存してよい。陽イオン成分がナトリウムイオン成分である場合、例えば、水溶液中であれば、−COO−とNa+とに解離している可能性があり、有機溶媒中であるか又は乾燥していれば、−COONaが解離していない可能性が高い。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、カルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基に関していえば、カルボキシ基のみを有してもよいし、塩型カルボキシ基のみを有してもよいし、カルボキシ基及び塩型カルボキシ基の両方を有してもよい。ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが有するカルボキシ基と塩型カルボキシ基との比率は、同一のポリイミド及び/又はポリアミドイミドであっても、例えば、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが存在する環境に応じて変動し得るし、陽イオン成分の濃度にも影響される。
上記ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが有するカルボキシ基及び塩型カルボキシ基の合計モル数は、ポリイミドの場合は、通常、−NH−結合と等モルであり、特に、ポリイミドにおけるイミド結合の一部からカルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基を形成する場合、実質的に同時に−NH−結合も形成され、該形成されるカルボキシ基及び塩型カルボキシ基の合計モル数は、該形成される−NH−結合と等モルである。ポリアミドイミドの場合は、ポリアミドイミドにおけるカルボキシ基及び塩型カルボキシ基の合計モル数は、−NH−結合と必ずしも等モルではなく、後述のケミカルエッチング等のイミド結合開環工程の条件次第である。−NH−結合は、好ましくはアミド結合(−NH−C(=O)−)の一部である。
上記ポリイミド及び/又はポリアミドイミドを含む樹脂は、具体的には、下記式(3)〜(6)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1つを有することが好ましい。ポリイミドである場合、下記式(3)及び/又は(4)で表される構成単位を有することが好ましく、ポリアミドイミドである場合、下記式(5)及び/又は(6)で表される構成単位を有することが好ましい。
上記式中、Xは同一若しくは異なって、水素原子又は陽イオン成分である。Arはアリール基であり、後述のポリアミド酸を構成する式(1)で表される繰り返し単位又は芳香族ポリイミドを構成する式(2)で示される繰り返し単位においてそれぞれカルボニル基が結合しているArで表されるアリール基と同じであってよい。Yはジアミン化合物のアミノ基を除いた2価の残基であり、後述のポリアミド酸を構成する式(1)で表される繰り返し単位又は芳香族ポリイミドを構成する式(2)で示される繰り返し単位においてそれぞれNが結合しているArで表されるアリール基と同じであってよい。
上記ポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、一般のポリイミド及び/又はポリアミドイミドが有するイミド結合([−C(=O)]2−N−)の一部が開環して、ポリイミドの場合は上記式(3)及び/又は(4)で表される構成単位、ポリアミドイミドの場合は上記式(5)で表される構成単位をそれぞれ有することとなったものが好ましい。
もっともポリアミドイミドの場合、一般のポリアミドイミドが有するイミド結合の開環によらずに元々有しているアミド結合(−NH−C(=O)−)を有することのみによっても本発明の目的を達成し得る。とはいえポリアミドイミドにおいても、ポリアミドイミドが本来有するイミド結合の一部が開環して上記(5)で表される構成単位を有することが好ましい。
第1の態様における「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」は、イミド結合の一部を開環させることで、カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び−NH−結合からなる群より選択される少なくとも1つを有するポリイミド及び/又はポリアミドイミドとしてもよい。
「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」は、例えば、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドを主成分とする膜等の成形体(以下、単に「ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体」ともいう。)を作製したのち、イミド結合を開環する工程(以下、単に「イミド結合開環工程」ともいう。)を含む方法により製造することができる。
イミド結合を開環することにより、イミド結合の一部からカルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基を形成し得、実質的に同時に、理論上これらの基と等モルの−NH−結合も形成される。
もっとも、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドを含む樹脂が実質的にポリアミドイミドからなる場合、イミド結合開環工程を施さなくても既に−NH−結合を有しており、イミド結合開環工程は必ずしも必要ではないが、イミド結合の開環をより確実に達成するためには、イミド結合開環工程を含む方法により製造することが好ましい。
上記イミド結合開環工程を施す対象である、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体としては、多孔質であってもよいし非多孔質であってもよく、また、その形状は特に限定されないが、多孔性を高める観点から、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体は、多孔質であることが好ましく、また、膜等の薄い形状であることが好ましい。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体が多孔質である場合、内面に曲面を有する孔を含有する多孔質体であることが好ましく、多孔質体における孔の多く(好ましくは実質的に全部)が曲面で形成されていてよい。本明細書において、孔について「内面に曲面を有する」とは、多孔質をもたらす孔の少なくとも内面が、該内面の少なくとも一部に曲面を有することを意味する。多孔質体における孔は、少なくともその内面の実質的にほぼ全部が曲面であることが好ましい。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体が多孔質である場合、上述の内面に曲面を有する孔が連通孔を形成していてもよい。通常、連通孔は、内面に曲面を有する孔が複数繋がって全体として連通孔を形成したものであり、内面に曲面を有する孔が隣接して形成される部分が連通孔となる。連通孔は、後述の製造方法において用いる微粒子同士が接していた部分に形成される孔であるともいえる。
(イミド結合開環工程)
上記イミド結合開環工程は、ケミカルエッチング法若しくは物理的除去方法、又は、これらを組合せた方法により行うことができる。ケミカルエッチング法としては特に限定されず、例えば従来公知の方法を用いることができる。
ケミカルエッチング法としては、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液による処理が挙げられる。無機アルカリ溶液が好ましい。無機アルカリ溶液として例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。
上記の各溶液の溶媒については、純水、アルコール類を適宜選択できる。また界面活性剤を適当量添加したものを使用することもできる。アルカリ濃度は、例えば0.01〜20質量%である。
また、物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング等が使用できる。
上記した方法は、後述する微粒子除去工程前又は微粒子除去工程後のいずれのイミド結合開環工程にも適用可能であり得る。
なお、微粒子除去工程後にケミカルエッチング法を行う場合は、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体の内部に連通孔を形成しやすく、開孔率を向上させることができる。
また、イミド結合開環工程として、ケミカルエッチング法を行う場合は、余剰のエッチング液成分を除去するため、再度、洗浄工程を行ってもよい。
ケミカルエッチング後の洗浄としては、水洗単独でもよいが、酸洗浄及び/又は水洗を組み合わせることが好ましい。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体は、上述のように、イミド結合開環工程を施す際に非多孔質であってもよいが、その場合、イミド結合開環工程の後に多孔質化することが好ましい。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体をイミド結合開環工程の前であるか後であるかに関わりなく多孔質化する方法としては、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドと微粒子との複合体(以下、単に「ポリイミド系樹脂−微粒子複合体」ともいう。)から該微粒子を取り除いて多孔質化する微粒子除去工程を含む方法が好ましい。
具体的には、(a)微粒子除去工程の前に、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドと微粒子との複合体にイミド結合開環工程を施してもよいし、又は、(b)微粒子除去工程の後に、該工程により多孔質化したポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体にイミド結合開環工程を施してもよいが、多孔性を高める観点から、(b)の方法が好ましい。
(ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質成形体の製造方法)
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド成形体が多孔質である場合(以下、単に「ポリイミド樹脂多孔質成形体」ともいう。)の製造方法の好ましい一例を以下説明する。ポリイミド樹脂多孔質成形体はワニスを用いて好適に製造することができる。
((ワニスの製造))
ワニス製造は、予め微粒子が分散した有機溶剤と、後述するポリアミド酸、上述したポリイミド又はポリアミドイミドとを任意の比率で混合するか、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造できる。
ワニスに用いられる有機溶剤としては、ポリアミド酸及び/又はポリイミド樹脂を溶解することができ、微粒子を溶解しないものであれば、特に限定されない。
上記ワニスには、微粒子を、焼成(焼成が任意の場合は乾燥)してポリイミド樹脂−微粒子複合体とした際に微粒子/ポリイミド樹脂の比率が1〜4(質量比)となるように樹脂微粒子とポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドとを混合でき、微粒子/ポリイミド樹脂の比率は1.1〜3.5(質量比)であることが好ましい。微粒子/ポリイミド樹脂の質量比又は体積比が下限値以上であれば、多孔質体として適切な密度の孔を得ることができ、上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜をすることができる。なお、本明細書において、体積%及び体積比は、25℃における値である。
((微粒子))
微粒子の材質は、ワニスに使用する有機溶剤に不溶で、成膜後選択的に除去可能なものなら、特に限定されることなく使用することができる。例えば、無機材料としては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)、炭酸カルシウム等の金属酸化物、有機材料としては、高分子量オレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリスチレン、アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレン等の有機高分子微粒子(樹脂微粒子)が挙げられる。
製造時に使用することが好ましいものとして、無機材料ではコロイダルシリカ等のシリカ又は有機高分子微粒子のPMMA等を挙げることができる。なかでもこれらの球状粒子を選択することが、内面に曲面を有する微小な孔を形成するためには好ましい。
樹脂微粒子としては、例えば、通常の線状ポリマーや公知の解重合性ポリマーから、目的に応じ特に限定されることなく選択できる。通常の線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断されるポリマーであり、解重合性ポリマーは、熱分解時にポリマーが単量体に分解するポリマーである。いずれも、加熱時に、単量体、低分子量体、あるいは、CO2まで分解することによって、ポリイミド樹脂膜から除去可能である。
これら解重合性ポリマーのうち、熱分解温度の低いメタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸イソブチルの単独(ポリメチルメタクリレート若しくはポリイソブチルメタクリレート)、あるいはこれを主成分とする共重合ポリマーが孔形成時の取り扱い上好ましい。
微粒子は、形成される多孔質体における孔の内面に曲面を有しやすい点で、真球率が高いものが好ましい。使用する微粒子の粒径(平均直径)としては、例えば、50〜2000nm、好ましくは200〜1000nmのものを用いることができる。また、粒径分布指数(d25/75)が1〜6であればよい。なお、d25、d75は、粒度分布の累積度数がそれぞれ25%、75%の粒子径の値であり、本明細書においては、d25が粒径の大きい方となる。
また、後述の製造方法において、未焼成複合体を2層状の未焼成複合膜として形成する場合、第一のワニスに用いる微粒子(B1)と第二のワニスに用いる微粒子(B2)とは、同じものを用いてもよいし、互いに異なったものを用いてもよい。基材に接する側の孔をより稠密にするには、(B1)の微粒子は、(B2)の微粒子よりも粒径分布指数が小さいか同じであることが好ましい。あるいは、(B1)の微粒子は、(B2)の微粒子よりも真球率が小さいか同じであることが好ましい。また、(B1)の微粒子は、(B2)の微粒子よりも微粒子の粒径(平均直径)が小さいことが好ましく、特に、(B1)が100〜1000nm(より好ましくは100〜600nm)、(B2)が500〜2000nm(より好ましくは700〜2000nm)のものを用いることが好ましい。(B1)の微粒子の粒径に(B2)より小さいものを用いることで、得られるポリイミド樹脂多孔質成形体表面の孔の開口割合を高く均一にすることができ、且つ、ポリイミド樹脂多孔質成形体全体を(B1)の微粒子の粒径とした場合よりも多孔質体(膜)の強度を高めることができる。
ワニス中の微粒子を均一に分散することを目的に、上記微粒子とともに更に分散剤を添加してもよい。分散剤を添加することにより、後述するポリアミド酸、上述したポリイミド又はポリアミドイミドと微粒子とを一層均一に混合でき、更には、成形又は成膜した前駆体膜中の微粒子を均一に分布させることができる。
((ポリアミド酸))
用い得るポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いることが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。このジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
ポリアミド酸を製造する方法としては特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
また、未焼成複合体を2層状の未焼成複合膜として形成する場合、第一のワニスにおけるポリアミド酸、ポリイミド又はポリアミドイミド(A1)と微粒子(B1)との体積比を19:81〜45:65とすることが好ましい。微粒子体積が全体を100とした場合に65以上であれば、粒子が均一に分散し、また、81以内であれば粒子同士が凝集することもなく分散するため、ポリイミド樹脂成形体の基板側面に孔を均一に形成することができる。また、第二のワニスにおける、ポリアミド酸、ポリイミド又はポリアミドイミド(A2)と微粒子(B2)との体積比を20:80〜50:50とすることが好ましい。微粒子体積が全体を100とした場合に50以上であれば、粒子単体が均一に分散し、また、80以内であれば粒子同士が凝集することもなく、また、表面にひび割れ等が生じることもないため、安定して応力、破断伸度等の機械的特性の良好なポリイミド樹脂多孔質成形体を形成することができる。
上記した成分のほかに、帯電防止、難燃性付与、低温焼成化、離型性、塗布性等を目的とし、帯電防止剤、難燃剤、化学イミド化剤、縮合剤、離型剤、表面調整剤等、適宜、公知の成分を必要に応じて含有させることができる。
(未焼成複合体の製造)
ポリアミド酸又はポリイミド樹脂と微粒子とを含有する未焼成複合体の成形は、成膜の場合、基板上へ上記のワニスを塗布し、常圧又は真空下で0〜120℃(好ましくは0〜100℃)、より好ましくは常圧下60〜95℃(更に好ましくは65〜90℃)で乾燥して行う。なお、基板上には必要に応じて離型層を設けてもよい。
ここで使用される離型剤は、アルキルリン酸アンモニウム塩系、フッ素系又はシリコーン等の公知の離型剤が特に制限なく使用可能である。
上記基板より剥離した未焼成複合体を、有機溶剤等を用いて洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、洗浄液に未焼成複合体を浸漬した後取り出す方法、シャワー洗浄する方法等の公知の方法から選択することができる。
また、2層状の未焼成複合体として形成する場合、まず、ガラス基板等の基板上にそのまま、上記第一のワニスを塗布し、常圧又は真空下で0〜120℃(好ましくは0〜90℃)、より好ましくは常圧10〜100℃(更に好ましくは10〜90℃)で乾燥して、膜厚1〜5μmの第一未焼成複合体の形成を行う。
続いて、形成した第一未焼成複合体上に、上記第二のワニスを塗布し、同様にして、0〜80℃(好ましくは0〜50℃)、より好ましくは常圧10〜80℃(更に好ましくは10〜30℃)で乾燥を行い、膜厚5〜30μmの第二未焼成複合体の形成を行い、2層状の未焼成複合体を得る。
(ポリイミド樹脂−微粒子複合体の製造(焼成工程))
上記乾燥後の未焼成複合体(又は2層状の未焼成複合体、以下同様)に加熱による後処理(焼成)を行ってポリイミド樹脂と微粒子とからなる複合膜(ポリイミド樹脂−微粒子複合体)とすることができる。ワニスにポリアミド酸を含む場合、焼成工程においてはイミド化を完結させることが好ましい。なお、焼成工程は任意の工程である。特にワニスにポリイミド又はポリアミドイミドが用いられる場合、焼成工程は行われなくてもよい。
焼成温度は、未焼成複合体に含有されるポリアミド酸又はポリイミド樹脂の構造や縮合剤の有無によっても異なるが、120〜400℃が好ましい。
焼成を行うには、必ずしも乾燥工程と明確に工程を分ける必要はなく、例えば、375℃で焼成を行う場合、室温〜375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な乾燥−熱イミド化法を用いることもできる。その際、未焼成複合体の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ってもよい。
(微粒子除去工程(ポリイミド樹脂−微粒子複合体の多孔質化))
ポリイミド樹脂−微粒子複合体から、微粒子を適切な方法を選択して除去することにより、微細孔を有するポリイミド系樹脂多孔質体を再現性よく製造することができる。例えば、微粒子として、シリカを採用した場合、ポリイミド系樹脂−微粒子複合体を低濃度のフッ化水素水(HF)等によりシリカを溶解除去することで、多孔質とすることが可能である。また、微粒子が樹脂微粒子の場合は、上述のような樹脂微粒子の熱分解温度以上で、ポリイミド樹脂の熱分解温度未満の温度に加熱し、樹脂微粒子を分解させてこれを取り除くことができる。
<ポリイミド樹脂の物性>
第1の態様における「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」からなる多孔質は、摩擦に対する耐久性力及び発電性能の観点から、空孔率が60%以上であることが好ましく、空孔率が65%以上であることがより好ましく、空孔率が70%以上であることが更に好ましい。
空孔率の上限値としては特に制限はないが強度の観点から、80%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。
空孔率は、例えば、多孔質ポリイミドフィルムの単位体積あたりの空孔の割合を示す。空孔率は、例えば、以下の式(A)によって算出することができる。
空孔率(%)={試験片の体積(cm3)−[試験片の重量(g)/ポリイミドの比重(g/cm3)]}/試験片の体積(cm3)×100・・・(A)
後述するように多孔質ポリイミドフィルムを製造する際に用いられる微粒子の粒径や含有量を適宜調整することにより所望の空孔率とすることができる。
第1の態様における「イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂」からなる多孔質の平均開口径は、摩擦に対する耐久性力及び発電性能の観点から、例えば50nm以上3500nm以下が挙げられ、好ましくは100nm以上3000nm以下、より好ましくは150nm以上2500nm以下である。本明細書において、平均開口径は、ケミカルエッチング処理を行ったものはポロメーターにより平均の連通孔のサイズ変化量を求め、その値から実際の平均開口径を求める値であるが、ポリアミドイミドのように上述のケミカルエッチングを行わないものは、多孔質形成体の製造に使用した微粒子の平均粒径を平均開口径とすることができる。
第1の態様におけるポリイミド樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、摩擦に対する耐久性力及び発電性能の観点から、5000以上であることが好ましく、8000以上であることがより好ましく、1万以上であることが更に好ましく、1万5千以上であることが特に好ましい。
また、第1の態様におけるポリイミド樹脂のMwは、3万以上であってもよく、5万以上であることが好ましい。
第1の態様におけるポリイミド樹脂のMwの上限値としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、10万以下が好ましく、8万以下がより好ましい。
本明細書において質量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
<摩擦体についてその他事項>
第1の態様に係る発電装置において、第1摩擦体131又は第2摩擦体132の一方が、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂からなり、第1摩擦体131又は第2摩擦体132の他方は、互いに接触することによって、正又は負に帯電する摩擦体であることが好ましい。
正に帯電する摩擦体としては、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂に比べ、相対的に電気伝導度が低い物質を含むことが好ましい。
正に帯電する摩擦体としては、例えば、ポリホルムアルデヒド、エチルセルロース、ポリアミド、メラミンホルモル、ウール、シルク、マイカまたはナイロンなどの誘電材料または絶縁材料を含んでもよい。しかし、それらに限定されるものではなく、正に帯電する摩擦体は、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂からなる摩擦体との接触によって正電荷に帯電される多様な物質を含んでもよい。
負に帯電する摩擦体としては、例えば、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリジメチルシロキサン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリスチレン(PS)などを含んでもよい。しかし、それらに限定されるものではなく、負に帯電する摩擦体は、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂からなる摩擦体との接触によって負電荷に帯電される多様な物質を含んでもよい。
第2摩擦体132は、イミド結合の一部が開環しているポリイミド樹脂に比べ、相対的に電気伝導度が高い物質を含むことが好ましい。それは、第2摩擦体132と電荷保存部171との間で、電荷移動が容易に行われるようにするためである。第2摩擦体132は、例えば、Al、Cu、Ag、Auまたはスチールなどの金属材料を含んでもよい。しかし、それらに限定されるものではない。
第1の態様に係る発電装置において、第1摩擦体及び第2摩擦体のうち少なくとも一つは、その表面の帯電特性を調節するために、p型ドーパントまたはn型ドーパントによってドーピングされる。p型ドーパントのソースは、例えば、NO2BF4、NOBF4、NO2SbF6などのイオン性液体;HCl、H2PO4、CH3COOH、H2SO4、HNO3などの酸類化合物、ジクロロジシアノキノン、オキソン、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、トリフルオロメタンスルホンイミドなどの有機化合物などを含んでもよい。または、p型ドーパントのソースとして、HPtCl4、AuCl3、HAuCl4、AgOTf(トリフルオロメタンスルホン酸銀塩)、AgNO3、H2PdCl6、Pd(OAc)2、Cu(CN)2などを含んでもよい。
n型ドーパントのソースは、例えば、置換もしくは非置換のニコチンアミドの還元物;置換もしくは非置換のニコチンアミドと化学的に結合された化合物の還元物;及び2以上のピリジニウム誘導体を含み、1以上のピリジニウム誘導体の窒素が還元された化合物を含んでもよい。例えば、n型ドーパントのソースは、NMNH、NADH、NADPHを含むか、あるいはビオロゲンを含んでもよい。または、上記n型ドーパントのソースは、ポリエチレンイミン(PEI)などのポリマーを含んでもよい。または、n型ドーパントは、K、Liなどのアルカリ金属を含んでもよい。一方、以上で言及されたp型ドーパントとn型ドーパント物質は例示的なものであり、それら以外にも、他の多様な物質がドーパントとして使用される。
第1摩擦体131及び第2摩擦体132各々の厚さとしては特に制限はなく、1μm以上500μm以下が好ましく、3μm以上200μm以下がより好ましく、5μm以上100μm以下が更に好ましく、7μm以上80μm以下が特に好ましい。
摩擦体の長さ、幅としては特に制限はなく、適宜設定し得る。
第1の態様に係る発電装置100は、第2摩擦体132と電荷保存部171とを断続的に連結する接地ユニット150を更に備えていても備えていなくてもよい。ここで、電荷保存部171は、例えば、アースないしグランドにもなり得る。接地ユニット150は、第2摩擦体132の動きによって、第2摩擦体132と電荷保存部171とを断続的に連結することができる。
接地ユニット150は、第2摩擦体132と第2基板120との間に設けられ、第2摩擦体132の動きによって第2摩擦体132と断続的に連結されるように設けられてもよい。そのために、接地ユニット150は、第2摩擦体132の動きによって第2摩擦体132と断続的に接触する導電性部材151と、該導電性部材151の動きを弾性的に支持する弾性部材152と、を含んでもよい。ここで、導電性部材151は、電荷保存部171と電気的に連結されている。接地ユニット150は、下部基板である第2基板120上にも設けられるが、必ずしもそれらに限定されるものではない。
このような接地ユニット150の構成において、第2摩擦体132が第2電極122側に移動し、第2摩擦体132が接地ユニット150の導電性部材151に接触すれば、第2摩擦体132は、電荷保存部171と電気的に連結される。それによって、第2摩擦体132内の電子が、接地ユニット150を介して電荷保存部171に移動するか、あるいは電荷保存部171内の電子が、接地ユニット150を介して第2摩擦体132に移動することができる。また、第2摩擦体132が第2電極122から遠くなり、第2摩擦体132が接地ユニット150の導電性部材151と離れれば、第2摩擦体132は、電荷保存部171と絶縁される。
電荷保存部171を構成する導電性部材がプレート形態を有していてもよく、第2基板120の下部に設けられていてもよい。しかし、それに限定されるものではなく、それ以外にも、導電性部材は、多様な形態を有して多様な位置に設けられてもよい。このような電荷保存部171は、金属フィルムのような導電性部材を含んでもよい。
接地ユニット150は、第2摩擦体132と電荷保存部171とを断続的に連結するスイッチング素子を含んでもよい。このようなスイッチング素子は、例えば、機械的スイッチ、CMOS素子などを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。このようなスイッチング素子は、特定条件において、第2摩擦体132と電荷保存部171とを互いに電気的に連結するか、あるいは第2摩擦体132と電荷保存部171とを電気的に絶縁させることができる。例えば、発電装置100が規則的に動く場合には、スイッチング素子が設定された時間間隔で、第2摩擦体132と電荷保存部171との電気的連結をオン/オフにすることができる。また、スイッチング素子は、第1電極112及び第2電極122の電圧情報及び/または電流情報をフィードバックされ、第2摩擦体132と電荷保存部171との電気的連結をオン/オフにすることもできる。
接地ユニット150は、第2摩擦体132と電荷保存部171とを電気的に連結する導電性部材、及び第2摩擦体132と電荷保存部171とを電気的に絶縁させる絶縁性部材を含んでもよい。例えば、接地ユニット150は、第1基板110と第2基板120との間のエッジ部分に設けられ、第1基板110に固定される導電性部材と、該導電性部材191の下部に延長されるように設けられる絶縁性部材とを含んでもよい(特許文献1の段落0058〜段落0061)。ここで、第1基板110の動きによって、導電性部材は、第2摩擦体132と電荷保存部171とを互いに電気的に連結することができ、絶縁性部材は、第2摩擦体132と電荷保存部171とを互いに電気的に絶縁させることができる。
<発電装置の作動メカニズム>
以下では、図1に図示された発電装置100の作動メカニズムについて第1摩擦体131及び第2摩擦体132が、それぞれ正電荷帯電体及び負電荷帯電体である場合を例として説明する。
第1摩擦体131及び第2摩擦体132が、それぞれ負電荷帯電体及び正電荷帯電体である場合についても同様の作動メカニズムが適用され得る。
図2A〜図2Hは、発電装置100の第1サイクル作動メカニズムについて説明するための図面である。
図2Aは、発電装置100に外部の力が作用していない状態を図示したものである。図面において、参照番号161は、第1電極112と第2電極122との間の電子フローを検出するための第1負荷を示し、参照番号162は、接地ユニット150と電荷保存部171との間の電子フローを検出するための第2負荷を示す。
図2Bは、第1摩擦体131と第2摩擦体132とが接触した状態を図示したものである。図2Bを参照すれば、前述のように、第1弾性支持部141は第2弾性支持部142より小さい弾性係数を有しているので、第1基板110に押す力を加えれば、まず、第1基板110と第2摩擦体132との間隔が狭まることにより、第1摩擦体131と第2摩擦体132とが接触する。ここで、第1摩擦体131及び第2摩擦体132は、前述のように、それぞれ正電荷帯電体及び負電荷帯電体である。従って、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が互いに接触すれば、第1摩擦体131の接触面は正電荷に帯電され、第2摩擦体132の接触面は負電荷に帯電される。次に、第1基板110に押す力を持続的に加えれば、図2Cに図示されているように、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第2摩擦体132が第2電極122側に移動する。
図2Dは、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第2摩擦体132が、接地ユニット150と接触した状態を図示したものである。図2Dを参照すれば、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第1基板110に押す力を持続的に加えれば、第2摩擦体132は、接地ユニット150の導電性部材151と接触する。ここで、導電性部材151は、グランドのような電荷保存部171と電気的に連結されている。一方、この状態では、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が互いに電荷平衡をなしているので、第2摩擦体132と電荷保存部171との間で、電荷移動は行われない。
図2Eは、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第2摩擦体132が第2電極122と接触した状態を図示したものである。図2Eを参照すれば、第2摩擦体132が接地ユニット150の導電性部材151に接触した状態で、第1基板110に押す力を持続的に加えれば、第2摩擦体132は、第2電極122と接触する。ここで、第2摩擦体132は、接地ユニット150の導電性部材151と接触した状態を維持する。この状態では、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触しており、第2摩擦体132が、第2電極122及び接地ユニット150の導電性部材151と接触しているが、電荷平衡をなしているので、第2摩擦体132と電荷保存部171との間で、電荷移動は行われない。
図2Fは、第2摩擦体132と第2電極122とが離隔され、第1摩擦体131と第2摩擦体132とが離隔された状態を図示したものである。図2Fを参照すれば、第1基板110に加えられた力がリリース(開放)されれば、第2摩擦体132は第2電極122から離隔され、第1摩擦体131は第2摩擦体132から離隔される。ここで、第2摩擦体132は、接地ユニット150の導電性部材151と接触している。この状態で、第2摩擦体132内部で電荷平衡をなすために、負電荷帯電体である第2摩擦体132から電荷保存部171に電子が移動することにより、第2負荷162に電流が流れる。また、正電荷帯電体である第1摩擦体131の表面にある正電荷が、上部電極である第1電極112に負電荷を誘導し、それによって、第2電極122から第1電極112に電子が移動することにより、第1負荷161に電流が流れる。
第1基板110のリリースが続けば、図2Gに図示されているように、第2摩擦体132が接地ユニット150の導電性部材151から離れ、次に、図2Hに図示されているように、発電装置100は初期状態に戻る。図2Hに図示された状態では、第1電極112及び第2電極122がそれぞれ負電荷状態及び正電荷状態を維持し、第1摩擦体131は正電荷状態を維持する。そして、第2摩擦体132は、その内部の正電荷及び負電荷が移動し、電気的中性を維持する。
図3A〜図3Hは、発電装置100の第2サイクル作動メカニズムについて説明するための図面である。
図3Aは、図2Hと同一状態であり、第1電極112及び第2電極122がそれぞれ負電荷状態及び正電荷状態を維持し、第1摩擦体131は正電荷状態を維持している。そして、第2摩擦体132は、中性を維持している。
図3Bは、第1摩擦体131と第2摩擦体132とが接触した状態を図示したものである。図3Bを参照すれば、第1基板110に押す力を加えれば、まず、第1基板110と第2摩擦体132との間隔が狭まることにより、第1摩擦体131と第2摩擦体132とが接触する。このように、正電荷に帯電された第1摩擦体131が、導電性物質を含み得る第2摩擦体132と接触すれば、第2帯電体132の接触面(上面)は負電荷に帯電され、第2帯電体132の接触面と反対面(下面)は正電荷に帯電される。
図3Cは、第2摩擦体132と第2電極122との間に静電誘導が形成された状態を図示したものである。図3Cを参照すれば、第1基板110に押す力を持続的に加えれば、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第2摩擦体132が第2電極122側に接近することになる。このように、第2摩擦体132と第2電極122とが近づいた状態では、第2摩擦体132の下面にあった正電荷が、静電誘導現象によって第2電極122に負電荷を誘導する。それによって、第1電極112から第2電極122に電子が移動することにより、第1負荷161には電流が流れる。
図3Dは、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第2摩擦体132が接地ユニット150と接触した状態を図示したものである。図3Dを参照すれば、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第1基板110に押す力を持続的に加えれば、第2摩擦体132は、接地ユニット150の導電性部材151と接触する。ここで、導電性部材151は、電荷保存部171と電気的に連結されている。この状態で、第1電極112、第1摩擦体131、第2摩擦体132及び第2電極122が互いに電荷平衡をなすために、電荷保存部171から第2帯電体132側に電子が移動することになり、それによって、第2負荷162には電流が流れる。
図3Eは、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触した状態で、第2摩擦体132が第2電極122と接触した状態を図示したものである。図3Eを参照すれば、第2摩擦体132が接地ユニット150の導電性部材151に接触した状態で、第1基板110に押す力を持続的に加えれば、第2摩擦体132は第2電極122と接触する。ここで、第2摩擦体132は、接地ユニット150の導電性部材151と接触した状態を維持する。この状態では、第1摩擦体131及び第2摩擦体132が接触しており、第2摩擦体132が第2電極122及び接地ユニット150の導電性部材151と接触しているが、電荷平衡をなしているので、第2摩擦体132と電荷保存部171との間で電荷移動が行われない。
図3Fは、第2摩擦体132と第2電極122とが離隔され、第1摩擦体131と第2摩擦体132とが離隔された状態を図示したものである。図3Fを参照すれば、第1基板110に加えられた力がリリースされれば、第2摩擦体132は第2電極122から離隔され、第1摩擦体131は第2摩擦体132から離隔される。ここで、第2摩擦体132は、接地ユニット150の導電性部材151とは接触している。この状態で、第2摩擦体132内部で電荷平衡をなすために、負電荷帯電体である第2摩擦体132から電荷保存部171に電子が移動することにより、第2負荷162に電流が流れる。また、正電荷帯電体である第1摩擦体131の表面にある正電荷が、上部電極である第1電極112に負電荷を誘導し、それによって、第2電極122から第1電極112に電子が移動することにより、第1負荷161に電流が流れる。
第1基板110のリリースが続けば、図3Gに図示されているように、第2摩擦体132が接地ユニット150の導電性部材151から離れ、次に、図3Hに図示されているように、発電装置100は初期状態に戻る。図3Hに図示された状態では、図3Aに図示された状態と同様に、第1電極112及び第2電極122がそれぞれ負電荷状態及び正電荷状態を維持し、第1摩擦体131は正電荷状態を維持する。そして、第2摩擦体132は、その内部の正電荷及び負電荷が移動して中性を維持する。そして、その後、第1基板110に押す力が反復して加えられると、発電装置100は、前述の第2サイクルを反復して遂行する。
以上のように、例示的な実施形態による発電装置100では、第1基板110を押すことにより、第1電極112と第2電極122との間、及び第2摩擦体132と電荷保存部171との間で電気エネルギーを発生させることができる。従って、発電装置100に、外部の力を反復して加えれば、電気エネルギーをさらに効率的に得ることができる。
<発電装置の他の実施形態>
以下、第1の態様に係る発電装置の他の実施形態を例示するが本発明はこれらに限定されない。
図4は、第1の態様に係る発電装置の他の例示的な実施形態の断面図である。
図4を参照すれば、発電装置300は、第1基板310及び第2基板320と、第1電極312及び第2電極322と、第1電極312の一面に設けられる第1摩擦体331と、第1摩擦体331と第2電極322との間に設けられる第2摩擦体332と、第2摩擦体332と、を含み、電荷保存部371と断続的に連結する接地ユニット350を更に含んでいてもよい。発電装置300は、外部の力が印加されないときは、第1摩擦体331、第2摩擦体332及び第2電極322が互いに離隔されて分離された状態を維持し、外部の力が印加されたときには、互いに接触する物理的構造又はメカニズムを有する。
第1基板310及び第2基板320は、外部の力によって変形する柔軟性を有する材質を含んでもよい。また、第1基板310及び第2基板320は、外部の力が除去されたときは、本来の状態に戻る復元力を有する材質を含んでもよい。例えば、第1基板310及び第2基板320は、ポリエステル(PE)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはカプトン(Kapton)などを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。このような第1基板310及び第2基板320は、第2摩擦体332を挟んで互いに対向して設けられている。例えば、第1基板310は、第2摩擦体332の上側に凸状形態を有することができ、第2基板320は、第2摩擦体332の下側に凸状形態を有することができる。ここで、第1基板310は、第2基板320よりさらに容易に変形する材質を含んでもよい。これは、発電装置300に外部の力が加えられたとき、第1基板310がまず変形するようにするためである。
第1基板310の下面には第1電極312が設けられており、第2基板320の上面には第2電極322が設けられている。第1電極312及び第2電極322は、第1基板310及び第2基板320の変形に対応する柔軟性を有することができる。第1電極312及び第2電極322の材質については第1電極112及び第2電極122について上述したものと同様である。
第2電極322と対向する第1電極312の下面には、第1摩擦体331が設けられている。そして、第1摩擦体331と第2電極322との間には、第2摩擦体332が設けられている。このような第1摩擦体331及び第2摩擦体332は、第1基板310及び第2基板320の変形に対応する柔軟性を有することができる。ここで、第1摩擦体331は、第1電極312の下面に接触するように設けられている。そして、発電装置300に外部の力が加えられていない状態では、第2摩擦体332は、第1摩擦体331及び第2電極322と離隔されるように設けられている。第1摩擦体331及び第2摩擦体332は、接触によって互いに異なる極性の電荷に帯電される物質を含んでもよい。
第1摩擦体331及び第2摩擦体332の具体例及び好ましい例としては、第1摩擦体131及び第2摩擦体132について上述したものと同様である。
第1摩擦体331及び第2摩擦体332のうち少なくとも一つは、その表面の帯電特性を調節するために、前述のように、p型ドーパントまたはn型ドーパントによってドーピングされていてもよい。
接地ユニット350は、第2摩擦体332と電荷保存部371とを断続的に連結するように設けられている。ここで、電荷保存部371は、例えば、グランド又は導電性部材にもなる。それによって、接地ユニット350は、第2摩擦体332の動きによって、第2摩擦体332と電荷保存部371とを断続的に連結することができる。具体的には、第2摩擦体332が第2電極322側に移動し、第2摩擦体332が接地ユニット350に接触すれば、第2摩擦体332は、電荷保存部371と電気的に連結される。また、第2摩擦体332が第2電極322から遠くなり、第2摩擦体332が接地ユニット350と離れれば、第2摩擦体332は、電荷保存部371と絶縁される。このような機能を具現することができる接地ユニット350の例示は説明したので、接地ユニット350に係わる詳細な説明は省略する。
図4に図示された発電装置300が作動するメカニズムについては特許文献1の段落0098〜段落0102及び特許文献1の図14A〜Eを参照することができ、発電装置300の作動によって、電気エネルギーが発生するメカニズムは前述の実施形態で詳細に説明したので、それについての説明は省略する。
図5は、第1の態様に係る発電装置の更に他の例示的な実施形態の断面図である。
図5を参照すれば、発電装置400は、第1基板410及び第2基板420と、第1電極412及び第2電極422と、第1電極412の一面に設けられる第1摩擦体431と、第1摩擦体431と第2電極422との間に設けられる第2摩擦体432とを含み、第2摩擦体432と電荷保存部471とを断続的に連結する接地ユニット450を含んでいてもよい。そして、第1基板410と第2摩擦体432との間には、第1支持部441が設けられており、第2摩擦体432と第2基板420との間には、第2支持部442が設けられている。
第1基板410及び第2基板420は、外部の力によって変形する柔軟性を有すると共に、伸びたり縮んだりする伸縮性を有する材質を含んでもよい。第1基板410の下面には第1電極412が設けられており、第2基板420の上面には第2電極422が設けられている。第1電極412及び第2電極422は、第1基板410及び第2基板420に対応する柔軟性及び伸縮性を有することができる。第1電極412及び第2電極422は、電気伝導性に優れる物質を含んでもよい。
第2電極422と対向する第1電極412の下面には、第1摩擦体431が設けられている。そして、第1摩擦体431と第2電極422との間には、第2摩擦体432が設けられている。このような第1摩擦体431及び第2摩擦体432は、第1基板410及び第2基板420に対応する柔軟性及び伸縮性を有することができる。ここで、第1摩擦体431は、第1電極412の下面に接触するように設けられている。そして、摩擦電気発電機400に外部の力が加えられていない状態では、第2摩擦体432は、第1摩擦体431及び第2電極422と離隔されるように設けられている。ここで、第1摩擦体431及び第2摩擦体432は、接触によって互いに異なる極性の電荷に帯電される物質を含んでもよい。
第1摩擦体431及び第2摩擦体432は、それぞれ正電荷帯電体及び負電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体431は、第2摩擦体432との接触によって正電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体432は、第1摩擦体431との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。代替法として、第1摩擦体431及び第2摩擦体432は、それぞれ負電荷帯電体及び正電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体431は、第2摩擦体432との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体432は、第1摩擦体431との接触によって正電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。
第1摩擦体431及び第2摩擦体432の具体例及び好ましい例としては、第1摩擦体131及び第2摩擦体132について上述したものと同様である。
接地ユニット450は、第2摩擦体432と電荷保存部471とを断続的に連結するように設けられている。ここで、電荷保存部471は、例えば、グランド又は導電性部材にもなる。それによって、接地ユニット450は、第2摩擦体432の動きによって、第2摩擦体432と電荷保存部471とを断続的に連結することができる。具体的には、第2摩擦体432が第2電極422側に移動し、第2摩擦体432が接地ユニット450に接触すれば、第2摩擦体432は、電荷保存部471と電気的に連結される。また、第2摩擦体432が第2電極422から遠くなり、第2摩擦体432が接地ユニット450と離れれば、第2摩擦体432は電荷保存部471と絶縁される。このような機能を具現することができる接地ユニット450の例示は説明したので、接地ユニット450に係わる詳細な説明は省略する。
第1支持部441は、第1基板410と第2摩擦体432との間のエッジ両側にそれぞれ設けられる。そして、第2支持部442は、第2基板420と第2摩擦体432との間のエッジ両側にそれぞれ設けられる。このような第1支持部441及び第2支持部442は、外部の力によって容易に変形されない硬質材質を含んでもよい。
図5に図示された発電装置400が作動するメカニズムについては特許文献1の段落0110〜段落0113及び特許文献1の図16A〜Dを参照することができ、発電装置400の作動によって、電気エネルギーが発生するメカニズムは前述の実施形態で詳細に説明したので、それについての説明は省略する。
図6は、第1の態様に係る発電装置の更に他の例示的な実施形態の断面図である。
図6を参照すれば、発電装置500は、第1基板510及び第2基板520と、第1電極512及び第2電極522と、第1電極512の一面に設けられる第1摩擦体531と、第1摩擦体531と第2電極522との間に設けられる第2摩擦体532とを含み、第2摩擦体532と電荷保存部571とを断続的に連結する接地ユニット550を含んでいてもよい。そして、第1基板510と第2摩擦体532との間には、第1支持部541が設けられており、第2摩擦体532と第2基板520との間には、第2支持部542が設けられている。
第1基板510及び第2基板520は、外部の力によって変形する柔軟性を有すると共に、伸びたり縮んだりする伸縮性を有する材質を含んでもよい。第1基板510の下面には第1電極512が設けられており、第2基板520の上面には第2電極522が設けられている。第1電極512及び第2電極522は、第1基板510及び第2基板520に対応する柔軟性及び伸縮性を有することができる。第1電極512及び第2電極522は、電気伝導性に優れる物質を含んでもよい。
第2電極522と対向する第1電極512の下面には、第1摩擦体531が設けられている。そして、第1摩擦体531と第2電極522との間には、第2摩擦体532が設けられている。このような第1摩擦体531及び第2摩擦体532は、第1基板510及び第2基板520に対応する柔軟性及び伸縮性を有することができる。ここで、第1摩擦体531は、第1電極512の下面に接触するように設けられている。そして、発電装置500に外部の力が加えられていない状態では、第2摩擦体532は、第1摩擦体531及び第2電極522と離隔されるように設けられている。ここで、第1摩擦体531及び第2摩擦体532は、接触によって、互いに異なる極性の電荷に帯電される物質を含んでもよい。
第1摩擦体531及び第2摩擦体532は、それぞれ正電荷帯電体及び負電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体531は、第2摩擦体532との接触によって正電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体532は、第1摩擦体531との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。代替法として、第1摩擦体531及び第2摩擦体532は、それぞれ負電荷帯電体及び正電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体531は、第2摩擦体532との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体532は、第1摩擦体531との接触によって正電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。
第1摩擦体531及び第2摩擦体532の具体例及び好ましい例としては、第1摩擦体131及び第2摩擦体132について上述したものと同様である。
接地ユニット550は、第2摩擦体532と電荷保存部571とを断続的に連結するように設けられている。ここで、電荷保存部571は、例えば、グランドまたは導電性部材にもなる。それによって、接地ユニット550は、第2摩擦体532の動きによって、第2摩擦体532と電荷保存部571とを断続的に連結することができる。具体的には、第2摩擦体532が第2電極522側に移動し、第2摩擦体532が接地ユニット550に接触すれば、第2摩擦体532は、電荷保存部571と電気的に連結される。また、第2摩擦体532が第2電極522から遠くなり、第2摩擦体532が接地ユニット550と離れれば、第2摩擦体532は、電荷保存部571と絶縁される。このような機能を具現することができる接地ユニット550の例示は説明したので、接地ユニット550に係わる詳細な説明は省略する。
第1支持部541は、第1基板510と第2摩擦体532との間のエッジの一側に設けられ、第2支持部542は、第2基板520と第2摩擦体532との間のエッジの一側に設けられる。ここで、第1支持部541は、第2支持部542の上部に位置することができる。このような第1支持部541及び第2支持部542は、外部の力によって変形されにくい硬質材質を含んでもよい。
図6に図示された発電装置500が作動するメカニズムについては特許文献1の段落0121〜段落0124及び特許文献1の図18A〜Dを参照することができ、発電装置500の作動によって、電気エネルギーが発生するメカニズムは前述の実施形態で詳細に説明したので、それについての説明は省略する。
図7は、第1の態様に係る発電装置の更に他の例示的な実施形態の断面図である。
図7を参照すれば、発電装置600は、第1基板610及び第2基板620と、第1電極612及び第2電極622と、第1電極612の一面に設けられる第1摩擦体631と、第1摩擦体631と第2電極622との間に設けられる第2摩擦体632とを含み、第2摩擦体632と電荷保存部671とを断続的に連結する接地ユニット650を含んでいてもよい。
第1基板610は球形態を有することができ、第2基板620は、第1基板610を覆い包む球形態を有することができる。そして、第1基板610の外面には第1電極612が設けられており、第2基板620の内面には第2電極622が設けられている。このような第1電極612及び第2電極622は、電気伝導性に優れる物質を含んでもよい。
第1電極612の外面には第1摩擦体631が設けられており、第1摩擦体631と第2電極622との間には第2摩擦体632が設けられている。ここで、第1摩擦体631は、第1電極612の外面に接触するように設けられており、発電装置600に外部の力が加えられていない状態では、第2摩擦体632は、第1摩擦体631及び第2電極622と離隔されるように設けられている。第1摩擦体631及び第2摩擦体632は、接触によって、互いに異なる極性の電荷に帯電される物質を含んでもよい。
第1摩擦体631及び第2摩擦体632は、それぞれ正電荷帯電体及び負電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体631は、第2摩擦体632との接触によって正電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体632は、第1摩擦体631との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。代替法として、第1摩擦体631及び第2摩擦体632は、それぞれ負電荷帯電体及び正電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体631は、第2摩擦体632との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体632は、第1摩擦体631との接触によって正電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。
第1摩擦体631及び第2摩擦体632の具体例及び好ましい例としては、第1摩擦体131及び第2摩擦体132について上述したものと同様である。
第1摩擦体631と第2摩擦体632との間には、弾性支持部640が設けられている。このような弾性支持部640は、例えば、第1摩擦体631と第2摩擦体632との間に設けられるスプリングにもなるが、それに限定されるものではない。図7には、第1摩擦体631の上部に弾性支持部が設けられている場合が例示的に図示されている。そして、第1摩擦体631には、ストリング660が連結されており、該ストリング660は、第2摩擦体632、第2電極622及び第2基板620を貫いて外部に露出されるように設けられている。図7には、第1摩擦体631の下部にストリング660が設けられている場合が例示的に図示されている。
接地ユニット650は、第2摩擦体632と電荷保存部671とを断続的に連結するように設けられている。ここで、電荷保存部671は、例えば、グランド又は導電性部材にもなる。それによって、接地ユニット650は、第2摩擦体632の動きによって、第2摩擦体632と電荷保存部671とを断続的に連結することができる。具体的には、第2摩擦体632が第2電極622側に移動し、第2摩擦体632が接地ユニット650に接触すれば、第2摩擦体632は、電荷保存部671と電気的に連結される。また、第2摩擦体632が第2電極622から遠くなり、第2摩擦体632が接地ユニット650と離れれば、第2摩擦体632は電荷保存部671と絶縁される。このような機能を具現することができる接地ユニット650の例示は説明したので、接地ユニット650に係わる詳細な説明は省略する。
図7に図示された発電装置600が作動するメカニズムについては特許文献1の段落0132〜段落0135及び特許文献1の図20A〜Dを参照することができ、発電装置600の作動によって、電気エネルギーが発生するメカニズムは前述の実施形態で詳細に説明したので、それについての説明は省略する。
図8は、第1の態様に係る発電装置の更に他の例示的な実施形態の断面図である。
図8を参照すれば、発電装置700は、第1基板710及び第2基板720と、第1電極712及び第2電極722と、第1電極712の一面に設けられる第1摩擦体731と、第1摩擦体731と第2電極722との間に設けられる第2摩擦体732とを含み、第2摩擦体732と電荷保存部771とを断続的に連結する接地ユニット750を更に含んでいてもよい。第1基板710及び第2基板720は平坦な構造を有し、硬質材質または柔軟な材質を含んでもよい。そして、第1基板710の下面には第1電極712が設けられており、第2基板720の上面には第2電極722が設けられている。第1電極712及び第2電極722は、電気伝導性に優れる物質を含んでもよい。
第1電極712の下面には第1摩擦体731が設けられており、第1摩擦体731と第2電極722との間には、第2摩擦体732が設けられている。ここで、第1摩擦体731は、第1電極712の下面に接触するように設けられている。そして、発電装置700に外部の力が加えられていない状態では、第2摩擦体732は、第1摩擦体731及び第2電極722と離隔されるように設けられている。ここで、第1摩擦体731及び第2摩擦体732は、接触によって互いに異なる極性の電荷に帯電される物質を含んでもよい。
第1摩擦体731及び第2摩擦体732は、それぞれ正電荷帯電体及び負電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体731は、第2摩擦体732との接触によって正電荷に帯電されるものであり電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体732は、第1摩擦体731との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。代替法として、第1摩擦体731及び第2摩擦体732は、それぞれ負電荷帯電体及び正電荷帯電体にもなる。その場合、第1摩擦体731は、第2摩擦体732との接触によって負電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が低い物質を含んでもよい。そして、第2摩擦体732は、第1摩擦体731との接触によって正電荷に帯電されるものであり、電気伝導度が高い導電性物質を含んでもよい。
第1摩擦体731及び第2摩擦体732の具体例及び好ましい例としては、第1摩擦体131及び第2摩擦体132について上述したものと同様である。
接地ユニット750は、第2摩擦体732と電荷保存部771とを断続的に連結するように設けられている。ここで、電荷保存部771は、例えば、グランド又は導電性部材にもなる。それによって、接地ユニット750は、第2摩擦体732の動きによって、第2摩擦体732と電荷保存部771とを断続的に連結することができる。具体的には、第2摩擦体732が第2電極722側に移動し、第2摩擦体732が接地ユニット750に接触すれば、第2摩擦体732は、電荷保存部771と電気的に連結される。また、第2摩擦体732が第2電極722から遠くなり、第2摩擦体732が接地ユニット750と離れれば、第2摩擦体732は、電荷保存部771と絶縁される。このような機能を具現することができる接地ユニット750の例示は説明したので、接地ユニット750に係わる詳細な説明は省略する。
第2摩擦体732の上面には、第1基板710、第1電極712及び第1摩擦体731の上下移動を案内するガイド部材790が設けられる。このようなガイド部材790は、第2摩擦体732上のエッジ両側にそれぞれ設けられる。そして、第2摩擦体732と第2基板720との間には、弾性支持部740が設けられる。このような弾性支持部740は、第2摩擦体732と第2基板720との間のエッジ両側にそれぞれ設けられる。
図8に図示された発電装置700が作動するメカニズムについては特許文献1の段落0142〜段落0146及び特許文献1の図22A〜Dを参照することができ、発電装置700の作動によって、電気エネルギーが発生するメカニズムは前述の実施形態で詳細に説明したので、それについての説明は省略する。
<発電装置の応用>
第1の態様に係る発電装置は、上記構成により発電力ないし耐久性に優れることが期待され、衣服、アクセサリー等におけるウエアラブルデバイス、家電などのセンサー等のIoTデバイスとしての適用が期待される。
第2の態様に係るウエアラブルデバイスないしIoTデバイスは、第1の態様に係る発電装置を含む。
以下、調製例及び比較調製例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
下記調製例及び比較調製例では、以下に示すテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミド酸、有機溶剤、分散剤及び微粒子を用いた。
・テトラカルボン酸二無水物:ピロメリット酸二無水物
・ジアミン:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・ポリアミド酸溶液:ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの反応物(固形分21.9質量%(有機溶剤:N,N−ジメチルアセトアミド))
・有機溶剤(1):N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)
・有機溶剤(2):ガンマブチロラクトン
・分散剤:ポリオキシエチレン二級アルキルエーテル系分散剤
・微粒子 :平均粒径300nmのシリカ(粒径分布指数(d25/75):約1.5)
・エッチング液:
メタノール:水(質量比4:6)の混合液のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド 4.5質量%溶液
<調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体並びに比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体>
(シリカ分散液の調製)
有機溶剤(1)23.1質量部及び分散剤0.1質量部の混合物に、上記微粒子(シリカ)を23.1質量部添加し、撹拌してシリカ分散液を調製した。
(ワニスの調製)
ポリアミド酸溶液41.1質量部に、シリカ分散液の調製−1で得たシリカ分散液を42.0質量部添加し、更に有機溶剤(1)及び(2)をワニス全体における溶剤組成が有機溶剤(1):有機溶剤(2)=90:10となるようにそれぞれ追加し、撹拌してワニスを調製した。なお、得られたワニスにおけるポリアミド酸とシリカとの体積比は40:60(質量比は30:70)である。
(未焼成複合体の成膜)
上記のワニスを、基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにアプリケーターを用い成膜した。90℃で5分間プリベークして、膜厚40μmの未焼成複合体(未焼成複合膜)を製造した。水に3分間浸漬したのち、2本のロール間に未焼成複合膜を通して、未焼成複合膜をプレスした。その際、ロール抑え圧は3.0kg/cm2、ロール温度は80℃、未焼成複合膜の移動速度は0.5m/minであった。基材から未焼成複合体を剥離して未焼成複合体を得た。
(未焼成複合体のイミド化)
上記未焼成複合膜を340℃で各15分間加熱処理(焼成)を施し、イミド化させ、ポリイミド−微粒子複合体を得た。
(ポリイミド多孔質成形体の形成)
上記で得たポリイミド−微粒子複合体を、10%HF溶液中に10分間浸漬することで、膜中に含まれる微粒子を除去した後水洗及び乾燥を行い、ポリイミド多孔質成形体を得た(厚さ:49nm)。
下記ケミカルエッチングに供する前のポリイミド多孔質成形体を「比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体」とする。
(ケミカルエッチング)
イミド結合開環工程として、下記条件1又は2のケミカルエッチング条件にて、ポリイミド多孔質成形体をエッチング液に浸漬して「イミド結合開環工程」を施し、イミド結合の一部を開環し、その後、340℃及び15分で再焼成を行い、それぞれ、調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体を得た(厚さ:49nm)。
条件1:エッチング液中に2分間浸漬する
条件2:エッチング液中に5分間浸漬する
(イミド結合の開環度の算出)
上記得られた調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体各々について、FT−IR装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT−IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値(イミド化率(X1))を算出した。
また、比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体についてFT−IR装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT−IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値(イミド化率(X2))を算出した。
上記得られた調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体各々についてのイミド化率(X1)を比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体のイミド化率(X2)で規格化した値を100(%)から引いて得られる値(%)を「イミド結合の開環度」として算出した。結果を下記表に示す。
<誘電特性評価>
調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体並びに比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体各々の20mm四方の試験片を用意し、各々2枚の銅電極平板で挟み、銅電極平板の一方に直径1mmの穴をあけて15質量%エタノール水溶液を1滴滴下してインピーダンスアナライザにより調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体並びに比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体各々の誘電特性を評価した。
まず、周波数4Hz〜5MHzの範囲で静電容量C(比誘電率εr’)、誘電正接tanδ(比誘電損率εr’’)を測定し、また、コール・コールプロットを行いデバイ型半円を得た。また、十分なデバイ型半円が得られない場合については、最小二乗法によるフィッティングを行ない容量性半円を補完して形成した。結果を図9(a)及び(b)に示す。
上記比誘電率及び比誘電損率の測定結果から、調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体並びに比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体いずれについても、周波数による変化(誘電分散)が観測され、調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体並びに比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体いずれも誘電体であることを確認した。
また、得られたデバイ型半円ないし容量性半円から(図9(a)及び(b)参照)、測定周波数0Hzの時の誘電率ε
∞、測定周波数を最大ないし無限大とした時(真空時)の誘電率ε
0、緩和時間(分極応答速度)τ、及び緩和時間の分布を表す定数β(0≦β≦1。緩和時間がただ1つならばβ=1)を算出した。
図9及び表2に示した結果から明らかなように、比較調製例のポリイミド多孔質摩擦体と比べ、調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体は、誘電率ε
0(特に低周波数側の円)が大きいことが分かる。
一方、本発明者らは、ポリイミド多孔質の空孔率が大きくなればなるほど、誘電率が1に近づくように低下する結果を得ており、開環度が向上するほど誘電率ε
0が向上するという相反する図9及び表2に示された結果は予想外であった。
また、低周波数側の円が開環によってもたらされた構造の変化に基づくと考えられ、比較調製例の未開環のポリイミド多孔質摩擦体と比較して高いτを有していることが分かる。また、βから低周波数側の円では緩和時間が分布していることが分かり、このβは一般的な高分子固体の0.3〜0.6の範囲内にあるといえる。
上述のように、調製例1及び2のポリイミド多孔質摩擦体はいずれも誘電率が大きいことから、第1摩擦体又は第2摩擦体(好ましくは、第2摩擦体)として第1の態様に係る発電装置に組み込むことができ、組み込んだ発電装置の発電性能に寄与し得る。