JP2020091145A - 配管減肉部の厚さ測定方法及びこれに用いる厚さ測定装置 - Google Patents
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Abstract
Description
このメンテナンスは、目視確認により減肉が疑われる部位を検出し、この検出部位に対向するスペーサを切断して減肉部の厚みを直接測定することで、実施されている。
また、特許文献1には、伝熱管の外壁面における減肉部の表面に超音波探触子(超音波振動子)を直接押し当てて超音波を入射し、底面(内壁面)から反射される複数の底面エコーを受信し、連続して受信した底面エコーの受信時間差データに基づいて、減肉部の厚さを測定する方法が開示されている。
このため、検査終了後は、溶接により伝熱管にスペーサを取付ける必要があり、復旧を含めた工期が長くかかると共に、コストの上昇を招いていた。
また、測定箇所に超音波探触子を装入し配置できる程度の空間があれば、特許文献1のように、減肉部の表面に超音波探触子を直接押し当てることができるが、上記したように、測定箇所は狭い場所にあることから(隙間:2mm程度以下)、たとえ薄型の超音波探触子を製造し使用しても、減肉部の表面に超音波探触子を直接押し当てることができない。
超音波の送信用探触子及び受信用探触子を、深さの異なる複数の擬似減肉部が形成された校正用配管の表面に所定の間隔を有して配置し、前記送信用探触子から前記校正用配管に進入し前記擬似減肉部を介して前記受信用探触子に届く超音波の伝搬時間を求め、該超音波の伝搬時間と前記擬似減肉部の実際の厚みとの関係を求める準備工程と、
前記送信用探触子及び前記受信用探触子を、前記減肉部が形成された前記配管の表面に前記間隔を有して配置し、前記送信用探触子から前記配管に進入し前記減肉部を介して前記受信用探触子に届く超音波の伝搬時間を求め、前記準備工程で求めた前記関係から、前記減肉部の厚みを求める減肉部厚み測定工程とを有する。
この前記送信用探触子及び前記受信用探触子はそれぞれ斜角探触子であることが好ましい。
また、前記対向物は、前記配管に隣り合って交差状態で配置される他の配管であってもよい。
更に、送信用探触子及び受信用探触子を、減肉部が形成された配管の表面に前記間隔を有して配置し、減肉部で反射される超音波の伝搬時間を求め、準備工程で求めた関係から、減肉部の厚みを求める減肉部厚み測定工程を有するので、従来のように、探触子を減肉部に直接配置することなく、減肉部の厚みを求めることができる。
従って、配管と対向物とが当接又は僅少の隙間を有した状態で対向配置され、配管が対向物に接触することで発生する減肉部(測定箇所)が狭い場所にあっても、対向物を除去することなく簡単に、精度良く厚さ測定ができる。
図1(A)、図2(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る配管減肉部の厚さ測定方法は、火力発電所のボイラ装置内に設置される配管(伝熱管)10と、この配管10に隣り合って平行に配置される他の配管(伝熱管)11に設けられた対向物である雌型スペーサ(雌型フレキシブルスペーサ:第1の支持金物の一例)12とが、当接又は僅少の隙間を有した状態で対向配置され、ボイラ装置の使用に際し、配管10と雌型スペーサ12との接触(擦れ合い)により配管10に生じた減肉部13、14の厚みを測定する方法である。以下、詳しく説明する。
また、雌型スペーサ12は、対となる係合部16、17を有し、雄型スペーサ15をその両側から挟み込むように、その基部が他の配管11の外表面に溶接により取付け固定されている。この各係合部16、17には、その延在方向中央部に、雄型スペーサ15の嵌合溝18、19に向けて突出する係止部20、21が設けられ(各係合部20、21は断面ト字状)、雄型スペーサ15と雌型スペーサ12との係合状態が維持される。
この配管10と雌型スペーサ12の突出部22とは、僅少の隙間(例えば、2mm程度)を有した状態、更には当接した状態(隙間がない状態)で対向配置されている。このため、ボイラ装置の使用時に、突出部22の先端面と配管10の外表面とが擦れ合って生じる減肉部13(測定箇所)は狭い場所にあり、減肉部13を直接測定することが困難であった(減肉部14も同様)。この減肉部13の大きさは、雌型スペーサ12の突出部22の大きさにもよるが、配管10の軸心方向の幅(内幅)Wが、例えば、2cm以下(更には1.5cm以下、1cm以下)程度である(図1(C)、(D)参照)。
ボイラ装置の節炭器(熱交換器)には吊下管30が設けられ、この吊下管30の両側方にはそれぞれ、上下方向に間隔を有して4本(複数本)の蒸気配管31〜34が吊下管30に隣り合って交差状態(ここでは直交状態)で配置されている。なお、吊下管30に交差状態で配置される蒸気配管は1本でもよい。
この上から1列目と4列目の蒸気配管31、34は、吊下管30とは接触しないように固定配置されているが、2列目と3列目の蒸気配管32、33は、吊下管30とは当接又は僅少の隙間を有した状態で対向配置されている。
なお、減肉部35〜38の大きさは、吊下管30や蒸気配管32、33の外径にもよるが、吊下管30や蒸気配管32、33の軸心方向の幅(内幅)が、例えば、2cm以下(更には1.5cm以下、1cm以下)程度である。
厚さ測定装置50は、平面視してΠ字状(コ字状、U字状)となった支持部材51と、支持部材51の両側先部(両側の突出部の先端部)に設けられた超音波の送信用探触子52及び受信用探触子53と、超音波探傷器(図示しない)とを有している。この超音波探傷器は、送信用探触子52から配管10に横波を入射させる駆動信号を送信用探触子52に入力し、配管10の厚み方向の表面と裏面で反射する後述する複数回のスキップを行い受信用探触子53に届く超音波が受信された際に受信用探触子53から出力されるエコー信号を取り出して厚みを算出する従来公知のものである。
この送信用探触子52は、配管10の表面に接触させた際に、配管10に一定の入射角、例えば、接触面60の垂線との角度(屈折角)θが45度以上(好ましくは75度以下)の角度範囲で超音波(横波)が進入するように、探触子ケース58内における超音波振動素子56の角度及び位置が調整されている。また、受信用探触子53は、配管10の表面に接触させた際に、配管10に一定の入射角、例えば、接触面61の垂線との角度(屈折角)θが45度以上(好ましくは75度以下)の角度範囲で超音波(横波)が入射するように、探触子ケース59内における超音波振動素子57の角度及び位置が調整されている(後述する校正用配管に対しても同様)。
この雌型スペーサ12の係合部16、17の対向する突出部22、23間に形成される凹部62の内表面(配管10との対向面)63と、配管10の外表面との間隔Sは、例えば、3.5mm程度であることから、探触子ケース58、59(送信用探触子52と受信用探触子53)の厚みを、上記した間隔Sよりも狭く(例えば、3mm以下、更には2.5mm以下)することが好ましい。
図1(A)に示すように、送信用探触子52及び受信用探触子53を、減肉部13が中央部となるようにその両側の配管10の外表面に、配管10の軸心に沿って配置する。なお、送信用探触子52と受信用探触子53との間隔Yは、減肉部13のない健全な状態の配管において、超音波の強度が最も強くなるように設定されている(配管の厚みを基準として、使用する送信用探触子52及び受信用探触子53の屈折角θから設定している)。具体的には、送信用探触子52から配管10の表面に進入し裏面で反射して表面に戻る過程を1スキップと称すると、送信用探触子52から配管10に進入した超音波が2回のスキップを行って受信用探触子53に入射するように設定されている。
このように、配管に減肉部が発生すると、配管に進入した超音波は減肉部の底面で反射されるため、超音波の伝搬距離(伝播距離)は減肉部がない場合と比較して短くなる。なお、減肉部の深さが深くなるに伴い、超音波の伝搬距離は更に短くなる。
配管が健全な(減肉部がない)場合、超音波は、図4(A)に示すように、送信用探触子52から配管の表面に進入し、配管の裏面、表面、裏面でそれぞれ、角度θ1で反射して、受信用探触子53に入射する。
一方、配管に減肉部が発生した場合、超音波は、図4(B)に示すよう、送信用探触子52から配管の表面に進入し、配管の裏面、減肉部の底面、配管の裏面でそれぞれ、上記した角度θ1よりも小さな角度θ2で反射して、受信用探触子53に入射することになる。なお、図4(B)中の二点鎖線は、配管が健全な場合の超音波の伝搬経路である。
このため、例えば、配管が健全な状態での超音波の伝搬距離、即ち伝搬時間(伝播時間)を基準とし、伝搬の時間の変化(差や比率)を求めることで、配管の減肉部の厚みを求めることができる。
間隔Yを有して配置される超音波の送信用探触子52及び受信用探触子53を、校正用配管の外表面に接触媒質(例えば、水、グリセリン、グリース等の音波を通し易い物質)を介して配置する。
この送信用探触子52と受信用探触子53との間隔Yは、送信用探触子52から校正用配管に進入した超音波が2回のスキップを行って受信用探触子53に入射するように設定されている(支持部材51への取付け位置が設定されている)。
また、校正用配管は、減肉部13、14が発生した配管10と同じ仕様(形状や材質)のものであり、この校正用配管には、人為的に、深さの異なる複数の擬似減肉部が形成されている(例えば、0.5mm程度から3.0mm程度まで0.5mmごと:合計6個)。
送信用探触子52と受信用探触子53による擬似減肉部の厚みの測定は、送信用探触子52と受信用探触子53を、擬似減肉部が中央部となるようにその両側の校正用配管の外表面に、校正用配管の軸心に沿うように配置する操作を、各擬似減肉部に対して行うことで実施する。これにより、送信用探触子52から校正用配管に進入し擬似減肉部を介して受信用探触子53に届く超音波の伝搬時間が、各擬似減肉部から得られるため、超音波探触器によって各擬似減肉部の厚みが算出される。
そして、送信用探触子と受信用探触子によって得られた擬似減肉部の厚みを、垂直探触子によって得られた擬似減肉部の実際の厚みで校正し、擬似減肉部の実際の厚みと超音波の伝搬時間との関係を求める。
間隔Yを有する送信用探触子52及び受信用探触子53を、減肉部13が中央部となるようにその両側の配管10の外表面に、配管10の軸心に沿うように、接触媒質を介して配置する。このとき、受信用探触子53を、雌型スペーサ12の係合部16の凹部62内に配置しているが、送信用探触子52を配置してもよい。
そして、送信用探触子52から配管10に進入し減肉部13を介して受信用探触子53に届く超音波の伝搬時間を求め、準備工程で求めた関係から減肉部13の厚みを求める。
上記した方法で、一方の減肉部13の厚みを求めた後は、送信用探触子52及び受信用探触子53を、他方の減肉部14が中央部となるようにその両側の配管10の外表面に、配管10の軸心に沿うように、接触媒質を介して配置して減肉部14の厚みを求める。
ここでは、発電所のボイラ装置内に設置された熱交換器を構成する配管を用い、この配管と雌型スペーサの係合部の突出部との接触により、配管に生じた減肉部の厚みを測定した結果について説明する。
配管は、外径約50mm、公称肉厚8.0mmの鋼管であり、発生した4箇所の減肉部(後述する表2の(a)〜(d))について厚み測定を行った。
超音波探触子には、コンポジット斜角探触子 5K5×5A45(ジャパンプローブ(株)製)を使用した。なお、送信用探触子と受信用探触子との間隔Yは、31mmに調整した。
接触媒質には、ソニコート BS400(太陽日酸ガス&ウェルディング(株)製)を使用した。
この校正用配管は、上記した減肉部が形成された配管と同じ仕様のものであり、減肉量が、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、である擬似減肉部(合計6箇所:後述する表1の(1)〜(6))を、人為的に形成する加工がなされている。
前記実施の形態においては、本発明の配管減肉部の厚さ測定方法及びこれに用いる厚さ測定装置を、火力発電所のボイラ装置内に配置される配管の減肉部に適用した場合について説明したが、狭隘な領域に生じた減肉部における配管の厚み測定であれば、火力発電所に限定されるものではなく、例えば、化学プラントや製鉄所、自動車工場、食品工場等に配置されたボイラ装置に配置される配管の減肉部に適用することもできる。
また、前記実施の形態においては、超音波探触子に横波を用いた超音波斜角探触子を使用した場合について説明したが、縦波を用いた超音波斜角探触子を使用することもでき、また、配管に生じた減肉部の厚みに対応した超音波の伝搬時間の変化が得られれば、他の超音波探触子を使用することもできる。
Claims (5)
- ボイラ装置内に設置される配管と対向物とが、当接又は僅少の隙間を有した状態で対向配置され、前記ボイラ装置の使用に際し、前記配管と前記対向物との接触により前記配管に生じた減肉部の厚みを測定する方法において、
超音波の送信用探触子及び受信用探触子を、深さの異なる複数の擬似減肉部が形成された校正用配管の表面に所定の間隔を有して配置し、前記送信用探触子から前記校正用配管に進入し前記擬似減肉部を介して前記受信用探触子に届く超音波の伝搬時間を求め、該超音波の伝搬時間と前記擬似減肉部の実際の厚みとの関係を求める準備工程と、
前記送信用探触子及び前記受信用探触子を、前記減肉部が形成された前記配管の表面に前記間隔を有して配置し、前記送信用探触子から前記配管に進入し前記減肉部を介して前記受信用探触子に届く超音波の伝搬時間を求め、前記準備工程で求めた前記関係から、前記減肉部の厚みを求める減肉部厚み測定工程とを有することを特徴とする配管減肉部の厚さ測定方法。 - 請求項1記載の配管減肉部の厚さ測定方法において、前記送信用探触子及び前記受信用探触子はそれぞれ斜角探触子であることを特徴とする配管減肉部の厚さ測定方法。
- 請求項1又は2記載の配管減肉部の厚さ測定方法において、前記対向物は、前記配管に隣り合って平行に配置された他の配管に設けられた第1の支持金物であって、前記配管に設けられた第2の支持金物と前記第1の支持金物との係合により、前記配管と前記他の配管とが自由度を有した状態で連結されていることを特徴とする配管減肉部の厚さ測定方法。
- 請求項1又は2記載の配管減肉部の厚さ測定方法において、前記対向物は、前記配管に隣り合って交差状態で配置される他の配管であることを特徴とする配管減肉部の厚さ測定方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の配管減肉部の厚さ測定方法に用いる配管減肉部の厚さ測定装置であって、平面視してΠ字状となった支持部材を有し、該支持部材の両側先部に前記送信用探触子と前記受信用探触子がそれぞれ設けられていることを特徴とする配管減肉部の厚さ測定装置。
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