JP2012021930A - 肉厚測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】測定箇所が直接に目視できない狭い場所にある場合においても、精度良く、かつ、簡易に測定が可能な肉厚測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】測定対象物である伝熱管11の外壁面における減肉部分の表面に超音波振動子を押し当てて超音波を入射し、底面(内壁面)から反射される複数の底面エコーを受信し、連続して受信した底面エコーの受信時間差データに基づいて減肉部分の肉厚を測定する。このとき、底面エコーが3つ以上観測されたときに、最も減肉が大きい部分に超音波振動子21が当たっていると判定して肉厚測定を行う。このような方法によれば、減肉部分が狭い隙間内に存在し、減肉部分を目視しながら超音波振動子を押し当てる位置を正確に判断することが困難な場合であっても、減肉部分のうち最も大きく減肉している部分の減肉量をある程度正確に把握することが可能となる。
【選択図】図6
【解決手段】測定対象物である伝熱管11の外壁面における減肉部分の表面に超音波振動子を押し当てて超音波を入射し、底面(内壁面)から反射される複数の底面エコーを受信し、連続して受信した底面エコーの受信時間差データに基づいて減肉部分の肉厚を測定する。このとき、底面エコーが3つ以上観測されたときに、最も減肉が大きい部分に超音波振動子21が当たっていると判定して肉厚測定を行う。このような方法によれば、減肉部分が狭い隙間内に存在し、減肉部分を目視しながら超音波振動子を押し当てる位置を正確に判断することが困難な場合であっても、減肉部分のうち最も大きく減肉している部分の減肉量をある程度正確に把握することが可能となる。
【選択図】図6
Description
本発明は、肉厚測定方法に関する。
例えば、火力発電所におけるボイラ装置の内部に設置される過熱器・再熱器等の熱交換器は、多数の伝熱管が並列して配設されることにより構成されるものである。このようなボイラ装置のうち、特に火炉の上部に吊り下げられる吊り下げ式の過熱器・再熱器等においては、その外部を流れる燃焼ガスによって運転中に伝熱管がばたつくことがある。このようなばたつきを回避するために、伝熱管にスペーサと呼ばれる金具を溶接し、隣接する伝熱管に設けられたスペーサ同士を互いに係合させることによって、隣り合う伝熱管間の相対的な位置を規制することが一般的である。
このような構成のものでは、スペーサの係合部分において、伝熱管とスペーサとが擦れあうことにより、伝熱管の外壁に磨耗・減肉が生じることがある。したがって、定期的に減肉の大きさを測定し、必要に応じて伝熱管の交換等のメンテナンスを行う必要がある。
ここで、磨耗・減肉等を測定する手法として、従来、超音波による肉厚測定方法が広く用いられている。この測定方法では、管の外壁面に超音波振動子を接触させて超音波を入射し、管壁の底面での反射により生じる底面エコーを受信する。管の肉厚値dは、管を構成する材料の音速Cと、超音波が管壁の内部を伝播し往復した時間(路程)tから以下の式を用いて算出することができる。
d=C・t/2 ...(1)
しかしながら、上記のような構成のスペーサ付き伝熱管では、伝熱管とスペーサとの間隔が非常に狭い。このため、伝熱管とスペーサとの狭い隙間に振動子を差し入れて手探りで減肉部分に接触させ、測定を行う他はなく、測定の精度が今一つ確保できない状況であった。このため、正確に減肉厚を知るためには、減肉部分をパテにより型取りして減肉厚を測定する等の煩雑な方法を取らざるを得なかった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、測定箇所が直接に目視できない狭い場所にある場合においても、精度良く、かつ、簡易に測定が可能な肉厚測定方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、本発明は、測定対象物の表面から超音波を入射して底面から反射される底面エコーに基づいて肉厚を測定する肉厚測定方法において、前記底面エコーが3つ以上観測されたときに、連続して受信した2つの底面エコーの受信時間差データに基づいて肉厚測定を行うものである。
本発明によれば、肉厚を測定したい箇所が狭い隙間内に存在し、当該箇所を目視しながら測りたい箇所に超音波振動子が位置しているか否かを判断することが困難な場合であっても、肉厚をある程度正確に把握することが可能となる。
本発明の実施形態を図1〜図6によって説明する。本実施形態では、本発明を、火力発電所のボイラ装置内に設置される伝熱管において、隣接する伝熱管と連結金具によって連結されている部分において伝熱管がスペーサと擦れ合うことにより生じる減肉部分の肉厚測定に適用する例によって説明する。
図1には、ボイラ装置1の概略図を示した。ボイラ装置1は、燃料である微粉炭を燃焼させる火炉2と、火炉2の側方に配され、上部で火炉2と連結される排ガス流路3とを有している。火炉2の上部および排ガス流路3には、過熱器4、5、6、再熱器7および節炭器(図示せず)の配管が配置されている。
過熱器、再熱器および節炭器の熱交換器はそれぞれ、多数の伝熱管11を並列して配設することにより構成されるものであるが、特に火炉2の上部において天井壁から吊り下げられる吊り下げ式の過熱器4、5、6、および再熱器7は、多数の伝熱管11が並列して垂直に吊り下げられた構成となっている。
このような吊り下げ式の過熱器4、5、6および再熱器7においては、伝熱管11にスペーサ12(本発明の連結金具に該当)が設けられ、隣り合う伝熱管11のスペーサ12が互いに係合することで、伝熱管11のばたつきが抑制されるようになっている。
図2、図3には、隣り合う伝熱管11A、11Bがスペーサ12A、12Bにより係合している様子を示した。スペーサ12A、12Bは、金属材料により断面略L字状に形成されている。このスペーサ12A、12Bにおいて、L字を構成する2辺のうち1方の辺は取付基部13A、13Bとされ、その端縁は溶接により伝熱管11A、11Bの外壁に固着されている。また他方の辺は、隣接する伝熱管11A、11Bのスペーサ12A、12Bと嵌合する嵌合片14A、14Bとされている。伝熱管11A、11Bの外壁と、各伝熱管11A、11Bに固着されるスペーサ12A、12Bにおける嵌合片14A、14Bとの間の空間は、それぞれ、これと隣接する伝熱管11B、11Aのスペーサ12B、12Aにおける嵌合片14B、14Aを受け入れ可能な嵌合溝15A、15Bとされている。
互いに隣接する伝熱管11A、11Bにおいて対向する位置に、互い違いの姿勢で設けられたスペーサ12A、12Bは、互いの嵌合片14A、14Bが相手側スペーサ12B、12Aの嵌合溝15B、15Aに嵌まり合うことで係合し、これにより、隣り合う伝熱管11A、11B間の相対的な位置が規制される。
ここで、隣接する伝熱管11A、11Bに設けられたスペーサ12A、12Bが互いに係合している部分では、伝熱管11A、11Bの外壁面と、相手側の伝熱管11B、11Aに設けられたスペーサ12B、12Aにおける嵌合片14B、14Aの外壁面(伝熱管11A、11Bの外壁面と対向する面)とが擦れあうことにより、伝熱管11A、11Bの外壁に磨耗・減肉が生じることがある。したがって、定期的に減肉の大きさを測定し、必要に応じて伝熱管11の交換等のメンテナンスを行う必要がある。
伝熱管11A、11Bにおける磨耗・減肉等を測定する手法としては、超音波による肉厚測定方法が用いられる。本実施形態では、超音波の発信および受信が可能な超音波振動子を薄板状の支持部に固定した超音波プローブを用意し、これを伝熱管11とスペーサ12との隙間に差し込んで測定を行う。
本実施形態に好適な超音波プローブ20の例を、図4および図5に示した。この超音波プローブ20は、超音波の発信および受信が可能な超音波振動子21と、この超音波振動子21を支持するための支持板22とを備えている。支持板22は、金属等により細長い帯状に形成された薄板を2枚張り合わせたもので、そのうち上側となる1枚には、先端部に、超音波振動子21をほぼ緊密に収容可能な貫通孔23が設けられている。そして、この貫通孔23の内部に超音波振動子21が固定される。これにより、超音波振動子21はその上面側(測定対象物に向けられる側)の一部が支持板22の上面から僅かに突出する形で支持板22に取り付けられる。超音波振動子21からはケーブル24が支持板22の表面に沿わせるようにして延出され、このケーブル24は、超音波発信器や受信した信号を処理するデータ処理部等を備えた超音波探傷器(図示せず)に接続されている。支持板22において超音波振動子21が取り付けられている先端部を除く部分は、保護フィルム25により覆われている。
次に、このような超音波プローブ20を用いて伝熱管11における減肉部分の肉厚を測定する方法について、伝熱管11Aの減肉部分を測定対象とする場合を例にとり説明する。
まず、測定対象となる伝熱管11Aの外壁面と、隣接する伝熱管11Bに設けられたスペーサ12Bにおける嵌合片14Bの外壁面(伝熱管11Aの外壁面と対向する面)との隙間に、超音波プローブ20において超音波振動子21が取り付けられている先端部分を挿入する。このとき、超音波プローブ20において超音波振動子21が取り付けられている側の面を測定対象となる伝熱管11A側に向けた姿勢で挿入を行う。そして、伝熱管11Aの減肉部分に超音波振動子21を押し当てる。
ここで、伝熱管11の適切なメンテナンスを行い、火力発電所の運転に支障をきたさないようにするためには、減肉部分のうち最も大きく減肉している部分の減肉量をある程度正確に把握し、適切な交換時期を判断する必要がある。
しかし、伝熱管11Aの外壁面と相手側スペーサ12Bにおける嵌合片14Bの外壁面との隙間は非常に狭いため、最も減肉量が大きい部分に超音波振動子21が位置していることを目視で正確に確認することは難しい。
そこで、作業者は、最も減肉量が大きい部分に超音波振動子21が当たっていると思われる位置で超音波プローブ20を支持し、超音波振動子21から超音波を発信させる。発信された超音波の一部は管壁の底面(伝熱管11Aの内壁面)で反射して再び表面(伝熱管11Aの外壁面)まで戻り、超音波振動子21により受信される。これが底面エコーとして観測される。作業者は、底面エコーが3つ以上確認された場合に、減肉部分の底部(最も減肉が大きい部分)に超音波振動子21が当たっていると判定し、エコー間距離測定法によって減肉部分の肉厚を測定する。超音波が伝熱管11Aの管壁内部を伝播し往復した時間、すなわち連続する2つの底面エコーの受信時間差をt、伝熱管11Aを構成する材料中の音速をCとすると、肉厚dは下記式(1)で算出される。
d=C・t/2 ...(1)
ここで、底面エコーが3つ以上確認された場合に、減肉部分の底部に超音波振動子21が当たっていると判定する理由は、以下のようである。
図6には、伝熱管11Aの減肉部分Wに超音波振動子21を押し当てて測定を行う様子を示している(なお、分かりやすく示すため、超音波プローブ20における超音波振動子21以外の構成、隣接する伝熱管11B、およびスペーサ12A、12Bを省略して示してある)。超音波振動子21から発信された超音波は、伝熱管11Aの管壁内部を伝わり、底面(伝熱管11Aの内壁面)で反射されて再び表面(伝熱管11Aの外壁面)へ戻る。表面へ戻った超音波の一部は、表面で反射されて伝熱管11Aの内部に戻り、底面で反射されることを繰り返す。図中、超音波の経路を1点鎖線で示している。
ここで、超音波振動子21が減肉部分Wの底部(最も減肉量が大きい部分)に当たっていれば、超音波はほぼ伝熱管11Aの直径方向に沿って入射し、伝熱管11Aの内壁断面が描く曲線の接線に対してほぼ垂直に当たって反射されると考えてよい。言い換えれば、入射波および反射波は伝熱管11Aの内壁断面が描く曲線の法線に沿って往復する。このため、超音波の管壁内部での往復が数度繰り返されても、反射波の到達位置は超音波振動子21の押し当て位置から大きくずれることはない。このため、底面エコーが繰り返し観測されることとなる。
これに対し、超音波振動子21が減肉部分Wの底部からずれた位置に当たっていると、超音波は伝熱管11Aの直径方向に対して斜めに入射し、伝熱管11Aの内壁断面が描く曲線の接線に対して斜めに当たり、接線への入射角と等しい反射角をとる方向へ反射される。このため、反射波の到達位置が超音波振動子21の設置位置からずれることとなる。超音波振動子21の減肉部分Wの底部からのずれが大きいほど、あるいは超音波の反射回数が多くなるほど、超音波振動子21の押し当て位置からの反射波到達位置のずれが大きくなると考えられる。
したがって、底面エコーの観測回数が多ければ、超音波振動子21の減肉部分の底部からのずれが小さく、逆に、底面エコーが観測されないか観測回数が少なければ、超音波振動子21の減肉部分の底部からのずれが大きいと判断できる。このため、底面繰返しエコーが3つ以上確認された場合に、減肉部分の底部に超音波振動子21が当たっていると判定することとした。
以上のように本実施形態によれば、測定対象物である伝熱管11Aの外壁面における減肉部分Wの表面に超音波振動子21を押し当てて超音波を入射し、底面(伝熱管11の内壁面)から反射される底面エコーを受信する。このとき、底面エコーが3つ以上観測されたときに、最も減肉が大きい部分に超音波振動子21が当たっていると判定し、連続して受信した2つの底面エコーの受信時間差データに基づいて減肉部分Wの肉厚を測定する。このような方法によれば、減肉部分Wが狭い隙間内に存在し、減肉部分Wを目視しながら超音波振動子21を押し当てる位置を正確に判断することが困難な場合であっても、減肉部分Wのうち最も大きく減肉している部分の減肉量をある程度正確に把握し、適切な交換時期等を判断することが可能となる。
[配管減肉試験片による肉厚測定試験]
外壁面を所定の厚さだけ研削して減肉部を形成したモデル配管を用いて、超音波による肉厚測定を行った試験例について説明する。
外壁面を所定の厚さだけ研削して減肉部を形成したモデル配管を用いて、超音波による肉厚測定を行った試験例について説明する。
<試験例1>
図7には、モデル配管30の側面図を示した。外径45mm、公称肉厚8.4mmの鋼管(TP1−A)、および外径54mm、公称肉厚4.0mmの鋼管(TP1−B)を準備した。各鋼管の外壁面の3箇所を、それぞれ、研削面が鋼管の外壁断面および内壁断面が作る曲線の接線と平行となるように研削した。3箇所の研削部31、32、33の研削量G1、G2、G3はそれぞれ0.5mm、1.0mm、1.5mmとした。これを試験サンプルとした。
図7には、モデル配管30の側面図を示した。外径45mm、公称肉厚8.4mmの鋼管(TP1−A)、および外径54mm、公称肉厚4.0mmの鋼管(TP1−B)を準備した。各鋼管の外壁面の3箇所を、それぞれ、研削面が鋼管の外壁断面および内壁断面が作る曲線の接線と平行となるように研削した。3箇所の研削部31、32、33の研削量G1、G2、G3はそれぞれ0.5mm、1.0mm、1.5mmとした。これを試験サンプルとした。
図8に示すように、超音波振動子21を研削部31、32、33において幅方向の中心位置(最も深く研削されている位置;図8中点線で示す)から両外側方向に向かってそれぞれ0.5mmピッチで移動させ、超音波を照射して底面繰返しエコーを観察した。また、エコー間距離測定法によって減肉部分の肉厚を測定した。
なお、超音波探傷器としてPANAMETORIX社製 EPOCH III、超音波振動子として株式会社検査技術研究所製 10K3I−LP(周波数:10MHz、帯域:広帯域)をそれぞれ使用し、接触媒質としてはソニコートを使用した。
肉厚測定値をB1−B2エコー法により測定した。なお、探傷感度は研削部上の中心でB1エコーが80%程度となるような感度とした。但し、サンプルTP1−Bでは残肉厚が薄いことにより、研削量1.0mm、1.5mmの研削部ではB1エコーが送信エコーおよびノイズに接近しすぎて明確に識別できなくなったため、探傷感度を研削部上の中心でB2エコーが80%程度となるような感度とし、B2−B3エコー間で肉厚を測定した。
表1には、サンプルTP1−Aにおける研削深さ0.5mmの研削部において、探触子を研削部の中心から図8の+方向、−方向に0.5mmピッチで、最大±3.0mmまで移動させた場合における、エコー識別状態、およびエコー間距離測定法による肉厚測定値を示した。エコー識別状態は、B1〜B4エコーについて、明確に識別できた場合を○、明確でないが識別は可能であった場合を△、識別できなかった場合を×で示した。
同様に、TP1−Aの研削深さ1.0mmの研削部での試験結果を表2に、TP1−Aの研削深さ1.5mmの研削部での試験結果を表3に、TP1−Bの研削深さ0.5mmの研削部での試験結果を表4に、TP1−Bの研削深さ1.0mmの研削部での試験結果を表5に、TP1−Bの研削深さ1.5mmの研削部での試験結果を表6に、それぞれ示した。
表1〜表6より、明確な二つのエコー(B1−B2エコーまたはB2−B3エコー)が得られた範囲の肉厚測定値は安定しており、0.1mm程度のバラツキしかなかった。ただし、TP1−Bの研削深さ1.0mmの研削部では例外的に肉厚測定値のバラツキが大きかったが、これは測定部裏面側のスケールが部分的に剥離して不均一な状態になっていたのが原因であった。
以上のことより、今回測定試験した配管減肉試験片と同程度の管径、管肉厚の管において、3つ以上の明確な底面エコーが得られている状態であれば、精度良く肉厚が測定できているといえる。
[発電所における使用済み鋼管を用いた肉厚測定試験]
発電所における過熱器、再熱器から使用済みの伝熱管を取り外して減肉部の超音波による肉厚測定を行った上、切断して肉厚を実測した結果と比較した試験例について説明する。
発電所における過熱器、再熱器から使用済みの伝熱管を取り外して減肉部の超音波による肉厚測定を行った上、切断して肉厚を実測した結果と比較した試験例について説明する。
<試験例2>
中部電力株式会社碧南火力発電所3号機において、使用済み吊り下げ式再熱器管のスペーサ取り付け箇所を数箇所切断して試験サンプルとした。各試験サンプルにおいて減肉箇所1箇所ずつ、計2箇所(サンプル2−1、2−2)を測定対象とした。超音波振動子を減肉部の底部(最も減肉している部分)表面に接触させ、超音波を照射してエコー間距離測定法により肉厚を測定した。また、各試験サンプルにおいて、測定対象となる減肉箇所を含む断面を光学顕微鏡により観察して減肉部の最小肉厚(最も減肉している部分の肉厚)を測定した。また、減肉部周辺の健全箇所の肉厚をノギスで測定した。
中部電力株式会社碧南火力発電所3号機において、使用済み吊り下げ式再熱器管のスペーサ取り付け箇所を数箇所切断して試験サンプルとした。各試験サンプルにおいて減肉箇所1箇所ずつ、計2箇所(サンプル2−1、2−2)を測定対象とした。超音波振動子を減肉部の底部(最も減肉している部分)表面に接触させ、超音波を照射してエコー間距離測定法により肉厚を測定した。また、各試験サンプルにおいて、測定対象となる減肉箇所を含む断面を光学顕微鏡により観察して減肉部の最小肉厚(最も減肉している部分の肉厚)を測定した。また、減肉部周辺の健全箇所の肉厚をノギスで測定した。
2本の試験サンプルについて測定結果を例示する。サンプル2−1の減肉部の断面写真を図9に、超音波のチャートを図11にそれぞれ示した。また、サンプル2−2の減肉部の断面写真を図10に、超音波のチャートを図12にそれぞれ示した。
図11、図12から分かるように、超音波測定ではB1〜B4エコーを識別できた。また、サンプル2−1では顕微鏡観察による減肉部の最小肉厚が3.64mm、超音波により測定した減肉部の肉厚が3.6mmであり、サンプル2−2では顕微鏡観察による減肉部の最小肉厚が3.96mm、超音波により測定した減肉部の肉厚が3.9mmであった。このように、超音波による肉厚測定値は顕微鏡観察による実測値とよく一致していた。
<試験例3>
中部電力株式会社碧南火力発電所1号機および4号機において、使用済み吊り下げ式再熱器管および二次過熱器管におけるスペーサ取り付け箇所を数箇所切断して試験サンプルとした。再熱器管において減肉箇所9箇所(サンプル3−1〜3−9)、二次過熱器管において減肉箇所2箇所(サンプル3−10、3−11)を測定対象とした。
中部電力株式会社碧南火力発電所1号機および4号機において、使用済み吊り下げ式再熱器管および二次過熱器管におけるスペーサ取り付け箇所を数箇所切断して試験サンプルとした。再熱器管において減肉箇所9箇所(サンプル3−1〜3−9)、二次過熱器管において減肉箇所2箇所(サンプル3−10、3−11)を測定対象とした。
各試験サンプルを対となるスペーサと組み合わせた状態で、管の外壁面とスペーサとの間隙を、スキマゲージを用いて測定した。そして、この隙間に小型の超音波振動子を差し込んで減肉部の表面に接触させて超音波を照射し、波形を観測した。底面エコーが3つ以上現われる状態の時にエコー間距離測定法により肉厚を測定した。
また、対となるスペーサを外した状態で、減肉部を目視して最大限肉部位を確認しつつその表面に超音波振動子を接触させ、超音波を照射してエコー間距離測定法により肉厚を測定した。
その後、試験サンプルを、断面が最大減肉部位を含むように切断し、切断面を光学顕微鏡により観察して減肉部の最小肉厚(最も減肉している部分の肉厚)と減肉部周辺の健全部の肉厚を測定した。
なお、スキマゲージとしてはJIS B7524に規定されるもの(株式会社永井ゲージ製作所製)を使用した。超音波探傷器としてオリンパス社製 EPOCH1000i、超音波振動子として株式会社検査技術研究所製 10K3I−LP(周波数:10MHz、帯域:広帯域)をそれぞれ使用し、接触媒質としてはソニコートを使用した。
表7には、各測定箇所について、管の表面とスペーサとの間隙、スペーサと組み合わせた状態およびスペーサを取り外した状態での超音波による肉厚測定値、切断面の実測による減肉部および周辺健全部の肉厚測定値をそれぞれ示した。
全ての測定箇所で、底面エコーが3つ以上得られた良好な状態で肉厚測定が実施できた。対となるスペーサを組み合わせた狭い状態での測定値とスペーサ部を外して測定しやすくした状態での測定値を比較した結果、ほぼ同様の測定値が得られていた。またと超音波による肉厚測定値は切断面の顕微鏡観察による肉厚の実測値によく一致していた。
[発電所において据え付けられた状態の伝熱管の肉厚測定試験]
発電所において据え付けられた状態の過熱器、再熱器における伝熱管のスペーサ部で超音波による肉厚測定を行った試験例について説明する。
発電所において据え付けられた状態の過熱器、再熱器における伝熱管のスペーサ部で超音波による肉厚測定を行った試験例について説明する。
<試験例4>
中部電力株式会社碧南火力発電所1号機に設置されている吊り下げ式二次過熱器、三次過熱器、および再熱器管のスペーサ設置箇所204箇所を測定対象とした。なお、測定対象としたスペーサ設置箇所は、図13および図14に示すタイプのスペーサ、または、図15および図16に示すタイプのスペーサが設置されている箇所である。
図13および図14に示す構成の伝熱管40に設けられるスペーサ41は、上下方向に延びる一対の直線部42,43が並列して設けられ、その一対の直線部42、43における長さ方向の一端部が互いに連結したU形形状を有している。一対の直線部42、43のうち一方の直線部42は断面楔形に形成されている。楔形に形成された直線部42と他方の直線部43との間の空間は、相手側スペーサ41における楔形に形成された直線部42の先端部(連結されている側とは逆側の端部)を受け入れ可能な楔形断面のガイド溝44とされている。隣接して互いに同一方向に配置された伝熱管40A、40Bにおける互いに対向する位置に設けられる一対のスペーサ41A、41Bは、互いに上下方向が逆となる向きで配置され、楔形に形成された直線部42A、42Bとガイド溝44A、44Bとが互いに嵌まり合うことで、隣接する伝熱管40A、40Bが互いに連結される。
図15および図16に示す構成のものは、隣接する伝熱管50A、50Bのうち一方の伝熱管50Aに1個の雄形スペーサ52を溶接固着し、他方の伝熱管50Bに2個の雌形スペーサ53を固着して設けている。雄形スペーサ52は、伝熱管50Aの外壁面から外側方向に向かって突出する基端部54と、この基端部54の上半部および下半部における突出端から伝熱管50Aの外周方向に沿って延設される突条部55A、55Bを備えている。上半部および下半部の突条部55A、55Bは互いに逆方向へ向かって延設されている。2個の雌形スペーサ53は、雄形スペーサ52の突条部55A、55Bに対応する位置にそれぞれ設けられ、突条部55A、55Bを緩く拘束する溝部56を備えている。
中部電力株式会社碧南火力発電所1号機に設置されている吊り下げ式二次過熱器、三次過熱器、および再熱器管のスペーサ設置箇所204箇所を測定対象とした。なお、測定対象としたスペーサ設置箇所は、図13および図14に示すタイプのスペーサ、または、図15および図16に示すタイプのスペーサが設置されている箇所である。
図13および図14に示す構成の伝熱管40に設けられるスペーサ41は、上下方向に延びる一対の直線部42,43が並列して設けられ、その一対の直線部42、43における長さ方向の一端部が互いに連結したU形形状を有している。一対の直線部42、43のうち一方の直線部42は断面楔形に形成されている。楔形に形成された直線部42と他方の直線部43との間の空間は、相手側スペーサ41における楔形に形成された直線部42の先端部(連結されている側とは逆側の端部)を受け入れ可能な楔形断面のガイド溝44とされている。隣接して互いに同一方向に配置された伝熱管40A、40Bにおける互いに対向する位置に設けられる一対のスペーサ41A、41Bは、互いに上下方向が逆となる向きで配置され、楔形に形成された直線部42A、42Bとガイド溝44A、44Bとが互いに嵌まり合うことで、隣接する伝熱管40A、40Bが互いに連結される。
図15および図16に示す構成のものは、隣接する伝熱管50A、50Bのうち一方の伝熱管50Aに1個の雄形スペーサ52を溶接固着し、他方の伝熱管50Bに2個の雌形スペーサ53を固着して設けている。雄形スペーサ52は、伝熱管50Aの外壁面から外側方向に向かって突出する基端部54と、この基端部54の上半部および下半部における突出端から伝熱管50Aの外周方向に沿って延設される突条部55A、55Bを備えている。上半部および下半部の突条部55A、55Bは互いに逆方向へ向かって延設されている。2個の雌形スペーサ53は、雄形スペーサ52の突条部55A、55Bに対応する位置にそれぞれ設けられ、突条部55A、55Bを緩く拘束する溝部56を備えている。
上記の「発明を実施するための形態」の欄において説明したものと同様の形状の超音波プローブを準備した。支持板となる板材としては、上側の板材として厚さ0.3mmのスキマゲージ用リーフ、下側の板材として厚さ0.05mmのスキマゲージ用リーフを準備した。上側のリーフの先端部に貫通孔を形成し、このリーフを下側のリーフと重ね合わせて接着し、貫通孔の内部に超音波振動子を接着剤により固定した。超音波振動子から導出されているケーブルを上側のスキマゲージ用リーフの表面に沿わせるようにして導出し、超音波探傷器に接続した。ケーブル保護のため、スキマゲージ用リーフにおいて超音波振動子が固定されている先端部分を除く全体をビニールにより包み込んで固定した。
なお、超音波探傷器としてPANAMETORIX社製 EPOCH III、超音波振動子として株式会社検査技術研究所製 10K3I−LP(周波数:10MHz、帯域:広帯域)をそれぞれ使用し、接触媒質としてはソニコートを使用した。
隣り合う管の間にくさびを打ち込んで可能な限り隙間を開いた状態で、各測定箇所となる管の外壁面とスペーサとの間隙を、スキマゲージを用いて測定した。
次いで、この隙間に上記した超音波プローブの先端部を差し込み、超音波振動子を管の表面に接触させた。超音波探傷器をSUS347HTB材で音速5700m/sとなるように設定して超音波を照射し、波形を観測した。底面エコーが3つ以上現われる状態の時に、エコー間距離測定法により肉厚を測定した。測定結果を表8に示した。
間隙測定値が1.2mm上の箇所では全て、超音波プローブを差し込んでの肉厚測定が可能であり、間隙測定値が1.1mmの場合、13箇所のうち9箇所で超音波プローブを差し込んでの肉厚測定が可能であった。測定可能な全ての箇所で、多数の底面エコーが確認でき、エコー間距離測定法による肉厚測定が可能であった。
<試験例5>
中部電力株式会社碧南火力発電所2号機に設置されている吊り下げ式二次過熱器、三次過熱器、および再熱器管のスペーサ設置箇所94箇所を測定対象とした。
中部電力株式会社碧南火力発電所2号機に設置されている吊り下げ式二次過熱器、三次過熱器、および再熱器管のスペーサ設置箇所94箇所を測定対象とした。
なお、測定対象としたスペーサ設置箇所は全て、ストッパを有するタイプのスペーサが設置されている箇所であるので、その構成を図17、図18を参照しつつ説明する。スペーサ61A、61Bは、金属材料により断面略L字状に形成されている。L字を構成する2辺のうち1方の辺は取付基部62A、62Bとされ、その端縁は溶接により伝熱管60A、60Bの外壁に固着されている。また他方の辺は嵌合片63A、63Bとされ、この嵌合片63A、63Bと伝熱管60A、60Bの外壁との間の空間は嵌合溝64A、64Bとされている。隣接する伝熱管60A、60Bにおいて互いに対向する位置に、互い違いの姿勢で設けられたスペーサ61A、61Bは、互いの嵌合片63A、63Bが相手側スペーサ62B、62Aの嵌合溝64B、64Aに嵌まり合うことで係合し、これにより、隣り合う伝熱管60A、60B間の相対的な位置が規制される。さらに、スペーサ61A、61Bの係合状態が解除されないように、一方の伝熱管60Aの側面にストッパ65Aが溶接によって取り付けられている。このような場合、ストッパ65Aによって伝熱管60Aの外壁面と相手側スペーサ61Aの嵌合片63Bとの隙間がストッパ65Aによって前方から塞がれる状態となるので、減肉箇所の目視による確認がいっそう困難となる。
超音波プローブとしては、先端(超音波振動子を固定する側の端部)から約20mm内側までの部分を幅7mmに加工したこと、スキマゲージ用リーフにおいて超音波振動子が固定されている先端部分を除く全体を裏面側からアクリル板で補強したこと、支持板(重ね合わせた2枚のリーフ)の厚さが0.2〜0.3mmとなるように2枚のリーフを選択したこと以外は、上記試験例4と同様にして作成したものを用いた。
なお、超音波探傷器としてPANAMETORIX社製 EPOCH III、超音波振動子として株式会社検査技術研究所製 10K3I−LP(周波数:10MHz、帯域:広帯域)をそれぞれ使用し、接触媒質としてはソニコートを使用した。
隣り合う管の間にくさびを打ち込んで可能な限り隙間を開いた状態で、各測定箇所となる管の外壁面とスペーサとの間隙を、スキマゲージを用いて測定した。
この隙間に上記した超音波プローブの先端部を差し込み、超音波振動子を管の表面に接触させた。超音波探傷器をSTBA24−S材で音速5900m/s、SA213T91材で音速5900m/s、SUS347HTB材で音速5700m/sとなるように設定して超音波を照射し、波形を観測した。底面エコーが3つ以上現われる状態の時にエコー間距離測定法により肉厚を測定した。測定結果を表9に示した。
間隙測定値が1.3mm以上では全て、超音波プローブを差し込んでの肉厚測定が可能であり、間隙測定値が1.2mmの5箇所のうち4箇所で超音波プローブを差し込んでの肉厚測定が可能であった。測定可能な全ての位置で多数の底面繰り返しエコーが確認でき、エコー間距離測定法による肉厚測定が可能であった。
<試験例6>
中部電力株式会社碧南火力発電所2号機に設置されている吊り下げ式過熱器において、垂直に設置されている管と水平に設置されている管とが交差する箇所33箇所を測定対象とした。
中部電力株式会社碧南火力発電所2号機に設置されている吊り下げ式過熱器において、垂直に設置されている管と水平に設置されている管とが交差する箇所33箇所を測定対象とした。
超音波探傷器としてPANAMETORIX社製 EPOCH III、超音波振動子として株式会社検査技術研究所製 10K3I−LP(周波数:10MHz、帯域:広帯域)をそれぞれ使用し、接触媒質としてはソニコートを使用した。
隣り合う管の間にくさびを打ち込んで可能な限り隙間を開いた状態で、各測定箇所となる管の交差部分の間隙を、スキマゲージを用いて測定した。
この隙間に超音波振動子を差し込んで管の表面に接触させた。超音波探傷器をSTBA24−S材で音速5900m/s、SA213T91材で音速5900m/s、SUS347HTB材で音速5700m/sとなるように設定して超音波を照射し、波形を観測した。底面エコーが3つ以上現われる状態の時にエコー間距離測定法により肉厚を測定した。測定結果を表10に示した。
全ての測定対象箇所で多数の底面エコーが確認でき、エコー間距離測定法による肉厚測定が可能であった。このように、伝熱管とスペーサとの隙間だけでなく、管の交差部分においても、本発明の方法で測定が可能であった。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、超音波プローブ20の支持板22を、2枚の薄板を貼り合わせ、上側の1枚に超音波振動子21を収容可能な貫通孔23を設けたものとしたが、超音波プローブの構成は上記実施形態の限りではなく、例えば1枚の薄板からなる支持板に貫通孔または非貫通孔を設け、この貫通孔または非貫通孔の内部に超音波振動子を収容したものであっても構わない。
(2)本発明の肉厚測定方法は、実施形態および実施例に例示したような、ボイラ装置に設置される伝熱管とスペーサとの隙間や伝熱管の交差部分の隙間における減肉部分の測定に限らず、目視による測定箇所の確認が困難な狭い場所での肉厚測定に好ましく適用することができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、超音波プローブ20の支持板22を、2枚の薄板を貼り合わせ、上側の1枚に超音波振動子21を収容可能な貫通孔23を設けたものとしたが、超音波プローブの構成は上記実施形態の限りではなく、例えば1枚の薄板からなる支持板に貫通孔または非貫通孔を設け、この貫通孔または非貫通孔の内部に超音波振動子を収容したものであっても構わない。
(2)本発明の肉厚測定方法は、実施形態および実施例に例示したような、ボイラ装置に設置される伝熱管とスペーサとの隙間や伝熱管の交差部分の隙間における減肉部分の測定に限らず、目視による測定箇所の確認が困難な狭い場所での肉厚測定に好ましく適用することができる。
1...ボイラ装置
11...伝熱管
12...スペーサ(連結金具)
11...伝熱管
12...スペーサ(連結金具)
Claims (3)
- 測定対象物の表面から超音波を入射して底面から反射される底面エコーに基づいて肉厚を測定する肉厚測定方法において、
前記底面エコーが3つ以上観測されたときに、連続して受信した2つの底面エコーの受信時間差データに基づいて肉厚測定を行うものである、肉厚測定方法。 - 前記測定対象物が、火力発電所のボイラ装置内に設置される伝熱管の減肉部分であって、
前記減肉部分が、前記伝熱管において隣接する伝熱管と連結金具によって連結されている部分において生じるものである、請求項1に記載の肉厚測定方法。 - 前記測定対象物が、火力発電所のボイラ内に設置される伝熱管の減肉部分であって、
前記減肉部分が、管軸方向を互いに異なる方向に向けて配置される複数の伝熱管が互いに交差する部分において生じるものである、請求項1に記載の肉厚測定方法。
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