JP3066748U - 超音波センサ及び探傷検査装置 - Google Patents

超音波センサ及び探傷検査装置

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JP3066748U
JP3066748U JP1999006314U JP631499U JP3066748U JP 3066748 U JP3066748 U JP 3066748U JP 1999006314 U JP1999006314 U JP 1999006314U JP 631499 U JP631499 U JP 631499U JP 3066748 U JP3066748 U JP 3066748U
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正明 酒井
守 中田
和弘 林
富美夫 白神
久志 永溝
信夫 中村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 配管に生じた内外面腐食減肉の検査に対し
て、作業性及び検査精度を向上し、より安全にかつ短時
間にて探傷検査が行える超音波センサ及び探傷検査装置
を提供する。 【解決手段】 超音波センサ50に備わる送信側振動子
11から管1の周方向へ超音波ビームを出射して一周さ
せ受信側振動子12にてこれを受信して、受信した超音
波ビームに基づき演算装置60にて被検査箇所の腐食量
を演算する。このように超音波ビームを一周させること
から、超音波センサの設置場所が限定されず、作業性及
び検査精度を向上し、より安全にかつ短時間にて探傷検
査を行うことができる。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、例えば、石油精製,石油化学等の化学プラントにおいて多用されて いる、原材料や燃料移送用の例えば配管と、該配管を支える、架台やラックと呼 称される、配管支持部材との接触部、等における配管の探傷検査を行う超音波セ ンサ及び探傷検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】
各種プラントにおける配管は、例えば架台やラックと呼称される梁にて支持さ れている。よって、特に屋外配管であってさらにほぼ水平方向に延在するような 配管の場合には、配管と上記梁との接触部分には雨水等が溜まり易く、したがっ て、配管と上記梁との接触部分では配管の外面が腐食し配管の減肉が発生し易い 。このような配管と上記梁との接触部分における当該配管の外面腐食の検出方法 として例えば、図23及び図24に示す方法がある。図23に示す方法は、いわ ゆる軸方向斜角2探触子法と呼ばれるもので、被検査箇所となる管1と支持部材 4との接触箇所を間に挟みかつ上記接触箇所を超音波ビームが管1の軸方向に沿 って通過するように、管1の軸方向に沿って超音波ビームの送信機501と受信 機502とを設置して検査する方法である。この方法では、図示するように管1 の肉厚部分を超音波ビームが管1の内周面と外周面とでV字状に反射しながら進 むため原理的に検出精度及び評価精度が良くなく、又、探傷面の粗さの影響を受 け超音波ビームの伝搬性が良くなく、さらに、管1の下部での作業となり作業姿 勢が悪く安全性、能率性に欠けるという問題がある。図24に示す方法は、いわ ゆる放射線法と呼ばれるもので、被検査箇所に対して放射線検査装置503から 放射線を照射し欠陥をフィルム504へ撮影する方法である。この方法では、撮 影装置の配置の関係から狭隘部には適用できず、又、作業自体大掛かりとなり携 帯性、安全性に欠け、さらに被検査箇所に発錆があると減肉との識別ができない という問題がある。 このように、配管と梁との接触部分における当該配管の外面腐食の非破壊的な 検査手法が未だ十分に確立されていない。したがって、上記外面腐食の検査方法 としては、梁に対して配管を吊り上げて、上記接触部分の外面腐食の有無を目視 にて確認する方法に頼らざるを得ないのが実情である。このような目視検査は、 検査能率が悪く、かつコストが高いという問題がある。又、配管を吊り上げるこ とから、配管復旧後において内部流体のリークが発生することもあり、さらには 、狭隘箇所の配管や大口径の配管については吊り上げること自体が困難であり、 目視検査も行えないという問題がある。 本考案はこのような問題点を解決するためになされたもので、筒状体又は管に 生じた内外面における腐食及び減肉の検査に対して、作業性及び検査精度を向上 し、より安全にかつ短時間にて探傷検査が行える超音波センサ及び探傷検査装置 を提供することを目的とする。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本考案の第1態様の超音波センサは、検査対象物である筒状体の軸方向に沿っ て該筒状体の周囲面を移動され当該筒状体の被検査箇所である周囲面近傍部分の 探傷を行う超音波センサであって、 上記筒状体の周囲面に設置され上記筒状体の周囲に沿った周囲方向へ上記筒状 体の上記周囲面にて反射しながら該周囲面近傍に沿って上記筒状体を進む探傷用 の超音波ビームを出射し、かつ出射された超音波ビームが上記被検査箇所におい て少なくとも当該被検査箇所を含む範囲に拡散する位置に配置される送信側振動 子と、 上記筒状体の周囲面に設置されかつ上記送信側振動子における上記軸方向への 移動に対して上記送信側振動子との配置関係が相対的に変化することなく設置さ れ、かつ上記送信側振動子に対して上記被検査箇所を間に挟んで配置され、かつ 上記送信側振動子から出射され上記被検査箇所の探傷情報を含む入射超音波ビー ムを受信する受信側振動子と、 を備え、 上記筒状体の上記周囲面にて反射しながら該周囲面近傍に沿って上記筒状体を 進む探傷用の超音波ビームを出射するため、上記送信用振動子は、上記筒状体の 軸方向に直交する直交方向と出射時の出射超音波ビームの進行方向とのなす出射 角は、75〜90度内の任意の値をなして配置され、 上記受信側振動子は、上記筒状体の軸方向に直交する直交方向と上記入射超音 波ビームの進行方向とのなす入射角が40〜90度内で出射超音波ビームにおけ る上記出射角とは異なる任意の角度をなして配置される、 ことを特徴とする。
【0004】 本考案の第2態様の探傷検査装置は、検査対象物である管の軸方向に沿って該 管の周面を移動され当該管の被検査箇所である肉厚部分における外面腐食部分の 探傷を行う超音波センサと、演算装置とを備えた探傷検査装置において、 上記超音波センサは、 上記管の周面に設置され上記管の周方向へ上記管の周面にて反射しながら該周 面近傍に沿って上記管を進む探傷用の超音波ビームを出射し、かつ出射された超 音波ビームが上記被検査箇所において少なくとも当該被検査箇所を含む範囲に拡 散する位置に配置される送信側振動子と、 上記管の周面に設置されかつ上記送信側振動子における上記軸方向への移動に 対して上記送信側振動子との配置関係が相対的に変化することなく設置され、か つ上記送信側振動子に対して上記被検査箇所を間に挟んで配置され、かつ上記送 信側振動子から出射され上記被検査箇所の探傷情報を含む入射超音波ビームを受 信する受信側振動子と、を有し、 上記演算装置は、 上記受信側振動子にて受信した上記入射超音波ビームに基づき、上記被検査箇 所の腐食量を演算し、 上記管の周面にて反射しながら該周面近傍に沿って上記管を進む探傷用の超音 波ビームを出射するため、上記管の軸方向に直交する直径方向と出射時の出射超 音波ビームの進行方向とのなす出射角(θT)が、上記管の直径寸法をD及び肉 厚寸法をtとしたとき、t≧Xを満たす角度にて上記送信用振動子は配置され、 ここで上記Xは、X=D(1−cos(90−θT))/2 にて算出される値であり 、上記出射角(θT)は、75〜90度内の任意の値である、 ことを特徴とする。
【0005】
【考案の実施の形態】
本考案の一実施形態の超音波センサ及び探傷検査装置について、図を参照しな がら以下に説明する。尚、上記超音波センサは、上記探傷検査装置に備わる。又 、各図において、同じ構成部分については同じ符号を付している。 又、以下の説明では、鋼管を例に採り説明するが、本実施形態の超音波センサ 及び探傷検査装置は、円筒状の管に限定されずに、例えば四角パイプのような多 角形の筒状体にも適用することができる。 このような本実施形態の超音波センサ及び探傷検査装置は、図1に示すように 、被検査箇所である管1の肉厚部分2における減肉部3の存在の有無、その位置 、及びその減肉量を検査する場合を例に採り、その検査方法としては、管1の周 方向に超音波ビームを発し、好ましくは一周してきた探傷情報を含む超音波ビー ムを受信し、該受信した超音波ビームに基づき解析を行うものである。尚、上記 減肉部3の発生原因は問わないが、図1に示すように、例えば梁のような管1の 支持部材4と管1との接触部5における肉厚部分2の外面腐食が考えられる。 又、後述するように、本実施形態の超音波センサ及び探傷検査装置による検査 対象は、上記減肉部3に限定されるものではない。 又、本明細書において上記「一周」とは、上記超音波ビームの発生位置と受信 位置とが筒状体の周囲方向にずれることなく完全に一致する場合はもちろんのこ と、詳細後述するが例えば図1に示すように本実施形態における探触子30の場 合のように送信側振動子11と受信側振動子16とが管1の周方向に若干ずれて 配置され超音波ビームは360度に相当する一周を越えて進む場合や、逆に超音 波ビームが360度に相当する一周に満たないで進むように探触子内に送信側振 動子と受信側振動子とが設置されている場合をも含む概念である。
【0006】 図1に示すように、本実施形態の探傷検査装置101は、大別すると、超音波 センサ50と、演算装置60とを備え、さらに演算装置60には、表示装置70 、印字装置80、記憶装置90が接続される構成をなす。又、上記超音波センサ 50には、送信側振動子11及び受信側振動子16を有し、管1の周面1aに接 触する探触子30と、上記送信側振動子11へ電力を供給し、一方上記受信側振 動子16から超音波の供給を受ける超音波送受信装置40とを備える。尚、超音 波送受信装置40と、送信側振動子11及び受信側振動子16とはそれぞれ超音 波ケーブルを介して接続され、送信側振動子11は上記電力供給により超音波ビ ームを出射し、受信側振動子16は超音波ビームを受信しこれを電気信号に変換 して送出する。以下、これらについて詳しく説明する。
【0007】 超音波センサ50を構成する探触子30について図2を参照して説明する。 本実施形態における探触子30は、内部に送信側振動子11をモールドした角 棒状の送信側探触子12と、送信側探触子12と同形状にてなり内部に受信側振 動子16をモールドした受信側探触子17とが、互いの長手方向の側面を混信防 止膜15を介在させて張り合わせた構成をなす。上記送信側探触子12及び受信 側探触子17はともに、幅寸法Iが25mm以下、高さ寸法IIが約25mm、長 さ寸法IIIが45mm以下の大きさであって、主にアクリル樹脂にて成形されて いる。又、上記混信防止膜15は、合成ゴムにてなり、送信側振動子11及び受 信側振動子16において超音波の混信を防止するためのものである。又、検査時 には、送信側探触子12及び受信側探触子17の上記寸法IIIに対応する長手方 向を管1の周面1aに対する接線方向に沿わせて探触子30は配置され、送信側 振動子11及び受信側振動子16は、管1の軸方向に互いに離れた位置に配置さ れる。又、図4に示すように、送信側振動子11は管1の肉厚部分2へ向かって 超音波ビームを出射するように、又、受信側振動子16は肉厚部分2から超音波 ビームを受信するように、送信側振動子11及び受信側振動子16はそれぞれ配 向されている。 又、送信側振動子11は、超音波送受信装置40から供給される電力により2 MHz〜10MHzの周波数にてなる超音波ビームを出射するものである。
【0008】 又、一般的に超音波振動子には、形状が平面又は凸面を有するタイプと、曲面 又は凹面を有するタイプとがあり、上記平面又は凸面タイプでは出射された超音 波ビームはその進行方向に沿って拡散していき、一方、上記曲面又は凹面タイプ では、ある特定範囲での欠陥検出性能を上げるため、出射された超音波ビームは 収束される。本実施形態では、例えば図2に示すように、超音波振動子は平面形 状であり、よって出射された超音波ビームは拡散していく。本実施形態において 、超音波ビームが拡散するタイプの送信側振動子11を使用する理由を以下に示 す。超音波ビームが拡散しないタイプの場合、例えば管の内外面で反射した超音 波が減肉部分に到達したときでも超音波ビームの拡がりが少なく、受信される超 音波の強度は減肉部分の存在位置によって大きく変動する。よって、一度の探傷 走査では減肉を見逃す可能性があるとともに、減肉評価が複雑になる恐れがある 。 これに対し超音波ビームが拡散するタイプでは、超音波が減肉部分に到達した 時点では超音波ビームは十分な拡がりを持ち、よって受信される超音波の強度は 減肉部分の存在位置に左右されにくく、一度の走査で探傷が可能であり減肉評価 も容易になる。よって本実施形態では、平面形状の振動子11を採用している。
【0009】 さらに、送信側振動子11及び受信側振動子16はそれぞれ以下のように配向 されている。即ち、送信側振動子11は、送信側振動子11から出射されたとき の超音波ビームである出射超音波ビーム13の進行方向が管1の直径方向に対し てなす鋭角θが40〜90度内の任意の値をなすように配向され、又、受信側振 動子16は、受信側振動子16へ入射する超音波ビームである入射超音波ビーム 18の進行方向が管1の直径方向に対してなす鋭角θが40〜90度内の任意の 値にて、送信側振動子11とは相反する方向に配向される。尚、図14に示すよ うに、出射超音波ビーム13の進行方向が管1の直径方向に対してなす鋭角θ1 の値と、受信側振動子16へ入射する超音波ビームである入射超音波ビーム18 の進行方向が管1の直径方向に対してなす鋭角θ2の値とを異ならせても問題は 生じない。しかしながら、探触子の製造の容易さ等を考慮して上記鋭角θ1と上 記鋭角θ2とは、図4に示すように、同一値であるのが好ましい。即ち、上記出 射超音波ビーム13の進行方向が上記直径方向に対してなす鋭角を例えば45度 に設定して送信側振動子11が配置される場合には、受信側振動子16において も、上記直径方向に対して上記入射超音波ビームの進行方向のなす鋭角が45度 となるように、受信側振動子16は配置することができる。尚、本実施形態では 、上記鋭角θ1と上記鋭角θ2とは同一値である場合を例に採っている。尚、上 記鋭角θ1及びθ2の値は、送信側振動子11から出射された超音波ビームが管 1の周方向に沿って進行し受信側振動子16にて受信され、かつ減肉量が最も高 精度にて検出可能なように、検査される管1の管径サイズや、肉厚の大きさに応 じて、実験データに基づき設定される。
【0010】 上記鋭角θ1及びθ2値の選定方法について図15及び図16を参照して説明 する。管1の外径(D)、肉厚(t)、及び角度θTによって、以下の2つの場 合が考えられる。第1は、図15に示すように、t≧Xの場合、即ち超音波ビー ムが管1の内周面1bで反射しない場合であり、第2は図16に示すようにt< Xの場合、即ち超音波ビームが管1の内周面1bで反射する場合である。ここで 、上記Xは、式、X=D(1−cos(90−θT))/2にて算出される値で ある。 通常、プラントに使用される配管は、日本工業規格(JIS)に規定されてい るものを使用しているので、検査を行う配管の外径寸法や肉厚寸法を上記JIS 規格を参照して、上記鋭角θを決定する。出願人の実験等による経験に基づくと 、管1の腐食等の被検査箇所が管1の外周面1a側に存在する場合、超音波ビー ムは上記外周面1aにて反射しながら外周面1aの近傍に沿って管1の周方向に 進めばよいので、上述の第1のt≧Xの場合、即ち超音波ビームが管1の内周面 1bで反射しない場合を選択する。よって上記鋭角θ1及びθ2は比較的大きな 値を選択することになる。一方、管1の腐食等の被検査箇所が管1の内周面1b 側に存在する場合には、超音波ビームを内周面1bに反射させながら管1の周方 向に進ませる必要があるので、上述の第2のt<Xの場合、即ち超音波ビームが 管1の内周面1bで反射する場合を選択する。よって上記鋭角θ1及びθ2は比 較的小さな値を選択することになる。 具体的には、管の肉厚を表すSch値が80以上の配管が使用されることは稀 であり、よって肉厚寸法としては約25mm以下の場合がほとんどであるので、 上述した、管1の内周面1bの近傍にある欠陥を検出する場合も含めて管の肉厚 部分に存在する欠陥を検出する場合には、上記鋭角θ1及びθ2値としては40 〜75度程度の任意の値を選択することで、ほとんどの管について検査を行うこ とができる。しかしながら、直径1000mmを越えるような大径管や、管の外 周面近傍のみを検査する場合には、上記鋭角θ1及びθ2は約75〜90度の値 を選択する。
【0011】 又、上述したように、送信側振動子11及び受信側振動子16は、それぞれ送 信側探触子12及び受信側探触子17にそれぞれモールドされているので、管1 の管径サイズや、肉厚の大きさに応じて最適な上記鋭角θ1及びθ2の値となる ように送信側振動子11及び受信側振動子16が配向されモールドされた各種の 探触子30が予め用意されている。
【0012】 又、上述のように、本実施形態では超音波ビームが拡散するタイプの送信側振 動子11を使用しており、欠陥部分を超音波ビームが必ず通過するために、送信 側振動子11から送出された超音波ビームが上記減肉部3のような被検査箇所に おいて少なくとも当該被検査箇所を含む範囲に好ましくは管1の肉厚部分2の全 体に拡散する、周面1a上の位置に送信側振動子11を配置する必要がある。こ のような位置に送信側振動子11を配置することで、上記被検査箇所において超 音波ビームは十分な広がりを持つため、受信側振動子16にて受信される超音波 ビームの強度は、管1における例えば減肉部3の存在位置に左右されにくくなる とともに、一度の走査で管1の全周にわたる探傷検査が可能となる。 さらに、上記被検査箇所において超音波ビームが十分な広がりを持つ位置に配 置された送信側振動子11に対して、上記被検査箇所を間に挟み、管1の周方向 に沿って半周以上離れた位置に受信側振動子16を配置するのが好ましい。又、 このように送信側振動子11と受信側振動子16とが周方向に比較的離れて配置 される場合においても、送信側振動子11と受信側振動子16とは連結され、好 ましくは一体的に成形され、送信側振動子11及び受信側振動子16が一体的に 管1の軸方向に移動可能なように構成する必要がある。
【0013】 ここで、送信側振動子11と受信側振動子16とを上記半周以上離れて配置す るのが好ましい理由を以下に説明する。 送信側振動子11は、一定方向に超音波を強く放射する性質、いわゆる指向性 を有する。送信側振動子11から被検査箇所まで十分に離れている場合、超音波 は中心軸(音軸)上がもっとも強く、上記音軸から離れるに従って急激に弱くな る。この特性は、振動子の形状が大きいほど、又、超音波の周波数が高いほど著 しくなる。上記音軸上の音圧を1として、注目する角度における上記音圧を表す 関数が指向計数と呼ばれ、方形形状の振動子の場合には、上記指向計数DRは、 DR=Sin(ka・Sinφ)/(ka・Sinφ)、にて表すことができる 。ここで上記k=2π/λ、λは超音波の波長、aは振動子の径の1/2(振動 子が方形の場合、一辺の長さの1/2)、である。 上記式から、DR=0(音圧が0)となるのはka・Sinφ=πの場合であ り、φ0=Sin−1λ/2a(rad)≒57λ/2a(度)、となる。 例として、超音波の周波数5MHz、正方形平板状の振動子でそのサイズが1 0mm×lOmm、入射角度70度の超音波斜角探触子を使用する場合を考える と、上記φ0=3.68度となる。実際には、DR=0では探傷は不可能である ので、現実的には後述するエコー高さが−6dB、つまり上記音軸上の音圧のほ ぼ半分程度となる値が探傷可能な目安とされることから、これを計算すると、φ −6=1.6度となる。即ち、上記探触子から射出される超音波は、入射角度を 70度としているので計算上、68.4〜71.6度の広がりを持つことになる 。 次に、この値を基に、超音波のビームの広がり幅について図21を参照して考 える。尚、超音波斜角探傷法では図21に示すような記号が使われ、又、説明の 簡略化のため図21では平板を例に採る。ここで、θ:入射角度、Y:探触子〜 被検査箇所の傷までの距離、W:ビーム路程,つまり超音波の進んだ距離、d: 被検査箇所における傷の深さ、である。 上述のように、超音波はθ=68.4〜71.6度の範囲の広がりを有し、例 えばY=100mmの位置では、W=100/sin70=106mmであり、 d1=W・COSθ=106・COS68.4=36.8mm、d2=W・CO Sθ=106・COS71.6=31.5mm、となる。よって上記Y=100 mmの位置では、超音波は、上記d1−d2=5.3mmの幅を持っていること になる。
【0014】 実際の配管の場合を考える。 例として6B,Sch40(外径165.2mm、肉厚7.1mm)の管にお いて、被検査箇所を中心として該管の周方向にそれぞれ1/4周の位置に送信側 振動子及び受信側振動子を配置したとする。よって送信側振動子と受信側振動子 との間は、半周離れている。 この場合、外周長さ=165.2×π=518.9mmであり、1/4周では 、約130mmとなる。尚、該130mmが上記「Y」に対応する。W=130 /sin70=138mm、d1=W・COSθ=138・COS68.4=5 0.8mm、d2=W・COSθ=138・COS71.6=43.5mm、と なる。よって、上記d1−d2=7.3mmとなる。したがって、被検査箇所に 対して周方向に1/4周の位置に送信側振動子を配置したとすると、上記被検査 箇所では、ほぼ当該配管の肉厚全体に超音波が拡がっていることになる。
【0015】 結果として、6Bより大口径の配管の場合には、送信側振動子から被検査箇所 までの距離が少なくとも1/4周離れていれば、被検査箇所において超音波は十 分に拡散されていると考えられる。又、実際に曲率を持った配管に探触子を接触 させた場合、コンピュータによるシミュレーションによれば、超音波の入射点で 超音波は上記計算上よりもさらに広がっている。この傾向は、曲率が大きければ 大きいほど、即ち配管が小径であればあるほど顕著になってくる。したがって、 6Bより小口径の配管については、この影響が大きく寄与する。よって、実際に は送信側振動子は、被検査箇所に対して周方向に1/4周よりも短い位置に配置 しても、被検査箇所において超音波は当該被検査箇所を含む範囲のみならず配管 の肉厚全体に十分に拡散していると考えられ、そのような位置に配置される送信 側振動子に対して、上記被検査箇所を間に挟んで周方向へ最低半周離れた位置に 受信側振動子を配置すれば、十分な探傷精度にて探傷検査が行えることになる。
【0016】 本実施形態では、図1に示すように、被検査箇所の減肉部3に対して管1のほ ぼ半周離れた位置に送信側振動子11が配置され、かつ該送信側振動子11から 周方向に1周した位置に受信側振動子16が配置されているので、減肉部3にお いては肉厚部分2の全体に超音波ビームが拡散しており、上述のように一度の走 査で管1の全周にわたる探傷検査が可能である。
【0017】 又、本実施形態では、上述のように送信側振動子11と受信側振動子16とを 一体的にモールドして探触子30を作製しているので、送信側振動子11と受信 側振動子16との相互の配置関係が相対的に変化することなく、送信側振動子1 1及び受信側振動子16を管1の軸方向に移動させることができる。したがって 、探傷検査精度が向上するとともに、探傷検査における操作性を極めて向上させ ることができる。 又、水平方向に延在する配管はその下部に雨水等が残留しやすく該下部では外 面腐食等を発生している場合が多い。よって、そのような外面腐食等を発生して いる表面に探触子を設置し管の軸方向に移動させても、表面状態が悪いため検査 精度は悪くなってしまう。しかしながら、配管上面は比較的表面状態が良いので 、本実施形態のように、探触子30を用いて超音波ビームを管1の周方向に一周 させて探傷検査を行う場合には、探触子30を上記配管上面に設置することがで きるので高い、検査精度を得ることができる。
【0018】 尚、図4に示すように、探触子30の接触面31を管1の周面1aに直接に接 触させた場合、上記接触面31と周面1aとは線接触となり、送信側振動子11 及び受信側振動子16に対する超音波ビームの入出量が少なくなる。よって実際 の検査時には、図5に示すように、探触子30はシュー37を介して管1に載置 される。上記シュー37は、管1の周面1aに沿った曲面をなし上記周面1aに 接触する接触面37aと、管1の軸方向に平行な平面であり探触子30が載置さ れる載置面37bとを有しアクリル樹脂にてなる。又、探触子30の接触面31 はシュー37の載置面37bに接着される。このようにシュー37を用いること で、送信側振動子11及び受信側振動子16に対する超音波ビームの入出量が増 え、検査精度を安定させることができるとともに、管1の周面1aの曲率に起因 する感度低下の補正を行うこともできる。
【0019】 又、実際の検査時には、図3に示すように、探触子30を管1の軸方向へ移動 させながら探傷を行うことから、図6に示すような探触子移動治具150が使用 される。探触子移動治具150は、スライドレール151と、該スライドレール 151に対して滑動可能に係合するスライドモジュール152と、スライドレー ル151のそれぞれの端部に取り付けられるスライドレール151を支持する脚 部材153,154とを備える。又、スライドモジュール152には、シュー3 7付きの探触子30がアーム156を介して取り付けられる。又、検査対象の管 1が鋼管である場合には、脚部材153,154にはそれぞれマグネット155 ,155が取り付けられる。尚、本実施形態において、探触子30の上記軸方向 への移動速度は、約10mm/sである。 このような探触子移動治具150は、例えば管1と支持部材4との接触部5に おける減肉を検査する場合には、支持部材4の上方を上記軸方向に沿って探触子 30が通過するように、スライドレール151の延在方向を管1の軸方向に一致 させ、マグネット155,155を管1に吸着させて探触子移動治具150を管 1に設置する。このような探触子移動治具150を使用すれば、スライドモジュ ール152を移動させるだけで容易に減肉検査を行うことができる。
【0020】 尚、本実施形態では、上述したように、探触子30は送信側探触子12及び受 信側探触子17を張り合わせた構成にてなるが、図7に示すように、一本の探触 子35にて、その両端部にそれぞれ送信側振動子11と受信側振動子16とをモ ールドしたタイプとすることもできる。 さらに又、図17に示すような探触子38を用いることもできる。探触子38 では、送信側振動子11と受信側振動子16とは管の軸方向に対して同位置に配 置されている。尚、探触子35及び探触子38では、上記混信防止膜15は設け ていない。
【0021】 又、図22に示すように、送信側探触子130と受信側探触子131と別個独 立させ、これらを管1の軸方向に離して配置してもよい。この場合、送信側探触 子130から出射された超音波は図示するように複数回の螺旋を描いて受信側探 触子131に到達する。又、探傷検査を行うときには、送信側探触子130と受 信側探触子131とを同期して上記軸方向へ移動する必要があることから、送信 側探触子130及び受信側探触子131は連結され一体的に移動可能であるのが 好ましい。
【0022】 次に、演算装置60について説明する。 演算装置60は、受信側振動子16にて受信された超音波ビームの強度に従い 、超音波送受信装置40から供給される、図18及び図19に示すような電気信 号に基づいて、管1の肉厚部分2の腐食深さを演算する装置である。尚、図18 は、管1に減肉部3が無い場合における上記電気信号の波形を示しており、図1 9は、減肉部3が有る場合における上記電気信号の波形を示している。又、演算 装置60は、その演算結果を、CRTのような表示装置70に、管1の軸方向へ 探触子30が移動した範囲内で最も腐食深さの大きい腐食部分及びその深さを例 えば管1の直径方向の断面図に表して表示可能であり、又、管1の軸方向におけ る位置とその位置における腐食深さとの関係を表した表を印字装置80にて印字 することもできる。又、演算装置60は、上記演算結果を例えば半導体メモリを 有する記憶装置90に記憶させる。尚、記憶装置90の具体的構成は上記半導体 メモリに限定されるものではない。
【0023】 次に、演算装置60の動作について説明する。 演算装置60は、図8に示すように、基本動作として、「前処理」、「主処理 」、「後処理」の各動作を行う。 上記「前処理」は、当該探傷検査装置101が表示装置70、印字装置80、 記憶装置90等の解析動作に必要な条件を備えているかを調査し、条件が満たさ れていれば「主処理」を行う準備として各装置に対して初期設定を行う処理工程 である。 上記「主処理」には、主な動作として図9に示すように、「探傷検査」、「フ ァイル操作」、「印字」、「解析」の各動作がある。「主処理」が始まった時点 で表示装置70には上記の各々の動作が選択できるよう表示されており、検査員 はキーボード等からの入力により実行したい動作を選択する。 上記「探傷検査」を選択した場合には、図10に示すように、検査員はまず、 ステップ(図内では「S」にて示す)101にて検査対象物の名称、外径、標準 の肉厚、測定範囲、後述の補正値等の探傷条件の入力を行う。該入力により演算 装置60は、ステップ102にて、「データ入力前処理」として、探触子30か ら超音波送受信装置40を介して探傷データを受け取る準備を行い、検査開始準 備が整ったことを表示装置70の画面に表示し測定の開始を待つ。
【0024】 検査員が探触子30の走査を開始すると同時に、検査員がキーボードの任意の キーを押下することにより探傷動作が開始される。これによりステップ103に て、超音波センサ50からは検査している管1を一周して受信側振動子16にて 受信された超音波ビームの強度(以下超音波信号強度と称す)が、上記図18及 び図19に示すようなアナログ信号として逐次出力され、演算装置60は該アナ ログ信号をデジタル信号に変換して超音波信号強度データとして取り込む。尚、 図20に示す「腐食部エコー高さ」に示す値が上記超音波信号強度データに相当 する。又、上記腐食部エコー高さとは、例えば図19に示す上記アナログ信号に おける、高さIVに相当する。 演算装置60は、ステップ104にて、取り込んだ上記超音波強度信号データ を記憶装置90に設けたメモリーに蓄積していくと共に、ステップ105にて減 肉量への演算を行い、ステップ106にて減肉量データとして上記メモリーに蓄 積する。又、演算装置60は、ステップ107にて演算の終了毎に表示装置70 に上記減肉量を表示する。ステップ108にて終了判断が実行され、検査員が探 触子30の走査を終了すると同時に、キーボードの任意のキーを押下することに より、探傷動作は終了し「解析」動作に移行する。
【0025】 上記「ファイル操作」では、図11に示すように、検査員は、「既存のファイ ルを開く」か「新規に保存する」のいずれかを選択する。「新規に保存する」動 作は、検査結果を磁気記録装置等に保存する動作である。まず演算装置60は、 ステップ111にて、上記磁気記録装置等の空き容量が、検査記録を保存するた めの容量以上であることを確認し、ステップ112にて保存するための領域を確 保する。次に、演算装置60は、ステップ113にて、入力されている探傷条件 を上記磁気記録装置等に保存するとともに、上記メモリーに蓄積された上記超音 波強度信号データを保存する。以上で「新規に保存する」動作は終了し「主処理 」に戻る。 上記「既存のファイルを開く」動作は、検査時に上記磁気記録装置等に保存し たデータを事後に解析する場合に選択される。検査員により該「既存のファイル を開く」が選択された場合、演算装置60は、ステップ121にて、保存されて いたファイルから探傷条件を読み出した後、ステップ122にて、上記超音波強 度信号データを読み出し、ステップ123にて、上記メモリーに蓄積する。ステ ップ124では、上記メモリー内の超音波強度信号を減肉量に変換し、ステップ 125にて、上記メモリーに蓄積する。以上で「既存のファイルを開く」動作は 終了し「解析」動作に移行する。
【0026】 上記「解析」動作では、演算装置60は、図12に示すようにまずステップ1 31,132にて、上記「探傷検査」もしくは上記「ファイル操作」にて、あら かじめ上記メモリーに蓄積されている上記探傷条件及びデータ量に異常がないこ とを確認する。異常があればここで動作を中断するが、正常であればステップ1 33にて上記探傷範囲とデータ量とから個々のデータに対する管1の軸方向の位 置情報を算出し、ステップ134にて、該位置情報と、該位置情報に対応する減 肉量とを表示装置70に表示する。表示の方法は、横軸に管1の軸方向の距離、 縦軸に減肉量を表示した図(以下、軸方向断面図と称す)である。次に、演算装 置60は、ステップ135にて、最大減肉部と予想される部分を算出し、最大減 肉量及びその位置を表示する。同時に、表示装置70の画面には、検査範囲の任 意の位置における減肉量を表示させるため、ステップ136にて、上記任意の位 置を指定するためのカーソルを表示し、ステップ137,138にて演算装置6 0は、検査員が指示したカーソル位置近傍の上記軸方向断面図の拡大表示を行う と共に当該カーソル位置における減肉量を表示させる。ステップ139にて解析 終了か否かが判断され、解析続行の場合にはステップ138へ戻り、解析終了の 場合には上記主処理へ戻る。 上記「印字」動作では、解析の結果等をプリンターにより印字する。
【0027】 又、「減肉量の計算」、即ち、演算装置60において、受信側振動子16にて 受信された超音波ビームに基づく上記腐食深さの演算は、以下に説明する検量線 、及び補正値を使用して行われる。 まず、上記検量線について説明する。管1の管径サイズや、管1の材質等に対 して、種々の腐食深さを有する種々のサンプル用の管を作成し、これらそれぞれ のサンプル管について、探触子30を使用してそれぞれ受信される超音波ビーム の強度に対応する電気信号を予めそれぞれ測定する。そしてこれらの種々の測定 結果に基づき、上記腐食深さと上記電気信号との関係を表した、図20の(b) に示すような、それぞれの検量線を上記各サンプル管毎に予め作成し、これらの 検量線を表すデータを演算装置60に予め格納しておく。 尚、このような検量線は、任意に追加、選択が可能であり、実測結果に基づき 修正を施した検量線を追加することにより特殊な材料、使用条件下等の検査にも 柔軟に対応することができる。
【0028】 次に上記補正値について説明する。同じ管径サイズ、材質等であり、かつ同じ 腐食深さを有するサンプル管においても、新しい管のように、探触子30が摺動 する該管1の周面1aが滑らかな場合と、旧管のように、探触子30が摺動する 周面1aが腐食している場合とでは、受信側振動子16に受信される超音波ビー ムの強度は異なることを出願人は実験の過程で気がついた。そこで、探触子30 が摺動する周面1aの表面粗さに拘わらず高精度にて腐食深さを演算することが できるように、出願人は、探触子30が摺動する周面1aの表面粗さに基づき、 上記検量線により演算された腐食深さ値を補正するための補正値を作成し、該補 正値を演算装置60に予め格納している。
【0029】 したがって実際の検査時には、図13に示すようにまずステップ141にて、 検査される管1の管径サイズや材質の情報、さらに上記補正値に対応する情報で あって、探触子30が摺動する周面1aの表面粗さの情報を、検査員が演算装置 60に入力することで、ステップ142にて演算装置60は上記検量線の中から 最適な検量線を自動的に選択する。そして、演算装置60は、ステップ143に て、選択した検量線を使用して、受信側振動子16にて受信された超音波ビーム の強度に対応した電気信号に基づき粗い腐食深さ値を演算し、さらに上記粗い腐 食深さ値に対して上記補正値に基づく補正を行うことで、演算結果としての最終 的な腐食深さ値を、ステップ144にてバッファに格納する。具体的に図20を 参照して説明すると、演算装置60にて上記超音波信号強度データとして演算さ れた腐食部エコー高さの値が例えば0.8であるとき、演算装置60は、所定の 検量線に基づき上記0.8に対応する推定腐食率40%を出力する。
【0030】 以上のように構成される探傷検査装置101における探傷検査動作について説 明する。 例えば管1の支持部材4と管1との接触部5における外面腐食の有無を検査す る場合、最も容易に設置可能であることから図1に示すように、支持部材4に対 向する位置に探触子30を設置する。ここで、該探触子30にはシュー37を設 けたものであり、図6を参照して上述したように探触子30は探触子移動治具1 50を用いて管1の周面1aに設置するのが便利である。尚、探触子30の設置 位置は、支持部材4に対向する位置に限定されるものではなく、周面1aにおけ る任意の位置に設置可能である。又、使用する探触子30は、検査する管1の管 径等に応じて、上述の鋭角θが上述の40〜90度内となるように配向されモー ルドされた探触子30が選択される。 次に、検査員は、上述したように、検査する管1の管径等の探傷条件の入力を 行った後、探触子30を管1の軸方向に移動させて探傷データを採集する。よっ て上述のように演算装置60は、減肉量の演算を行いその結果を例えば表示装置 70に表示し、又、記憶装置90に格納する。このようにして一つの検査箇所に 対する探傷検査を終了する。
【0031】 このように本実施形態の探傷検査装置によれば、超音波ビームを管1の周方向 に一周させ、一周してきた超音波ビームを受信して腐食箇所の減肉量を演算する ことから、検査対象物である管1に対して探触子30の設置場所が限定されない 。但し、上述のように、予想される腐食箇所での管の肉厚部分において、送信側 振動子11から送出された超音波ビームが十分に拡散する箇所に上記送信側振動 子11は配置される必要がある。 例えば、管1の支持部材4と管1との接触部5における外面腐食を検査する場 合、従来のように管1を吊り上げる必要はなく、さらに、最も容易に検査作業が 行える場所に探触子30を設置することができる。例えば水平に延在する管1に て垂直方向において管1の下部を支持部材4が支持しているときには、支持部材 4に対向する管1の上部に探触子30を設置すればよい。さらに又、上記探触子 30を管1の軸方向に沿って直線状に一度スライド走査させるだけで該管1の腐 食減肉の検査を行うことができる。このように本実施形態の探傷検査装置は、管 1の内外面に発生した腐食減肉の検査に対して作業性を向上させると共に、短時 間で探傷検査を行うことを可能にする。又、配管を吊り上げる必要がないので、 安全に検査が行え、かつ従来発生した漏洩問題の発生もない。又、減肉量の演算 において、探触子30を移動させる管1の周面1aの滑らかさに応じて上記補正 値を適用することから、より高い精度にて減肉量を求めることができる。又、検 査記録は、デジタル情報として保存されるため、検査記録の保守管理を容易にす る。
【0032】 上述の実施形態では、送信側振動子11から出射された超音波ビームは管1を 一周して受信側振動子16にて受信されるように構成しているが、超音波ビーム は必ずしも管1を一周する必要はない。即ち、管1の周方向において腐食検査を 行う箇所を間に挟むようにして、超音波ビームが管1の好ましくは半周以上にわ たり進むような、例えば3/4周する位置に送信側振動子11及び受信側振動子 16を設置してもよい。尚、このように、送信側振動子11を有する送信側探触 子12と、受信側振動子16を有する受信側探触子17とを分離した状態におい ても、両者を同期させて管1の軸方向へ同時に移動させるために、両者を連結し 、好ましくは両者を一体的に構成する。
【0033】 又、図2に示すように送信側探触子12と受信側探触子17とがセットされた 探触子30を2つ使用して、超音波ビームが管1の例えば半周や3/4周する位 置にこれらの探触子30を連結して配置してもよい。そして、一方の探触子30 では送信側振動子11のみを動作させ、他方の探触子30では受信側振動子16 のみを動作させて探傷検査を行うこともできる。尚、管の周囲に配置する探触子 30の数は上述の2つに限定されるものではない。 このように超音波ビームが管1の例えば半周や3/4周する位置に探触子30 、又は送信側振動子11及び受信側振動子16を配置する方法は、例えば管1の 周面の複数箇所に例えば腐食箇所が存在することが分かっている場合、それぞれ の腐食箇所に対応して、該腐食箇所を超音波ビームが通過するように腐食箇所を 挟むようにして、それぞれの探触子30、又は送信側振動子11及び受信側振動 子16を配置することで、それぞれの腐食箇所における減肉量を測定することが でき、便利である。尚、複数の腐食箇所に対する探傷検査を同時に行うと、各超 音波センサどうしで混信を起こす可能性があるので、例えば探傷検査を行ってい る時間を各探傷検査装置間でずらしたりする工夫が必要である。
【0034】 又、上述の実施形態では、検査対象物として管1を例に採ったが、これに限定 されるものではなく、多角形の断面を有する筒状体であってもよい。この場合に は、超音波ビームは、該筒状体の周囲面に沿って進行するように送信側振動子1 1から超音波ビームが出射される。又、この場合には、例えば探触子が上記筒状 体の周囲面における平面部分に設置されるときには、該筒状体の軸方向に直交し かつ該筒状体の中心を通過する直交方向に対して上記出射超音波ビーム及び入射 超音波ビームが90度の角度をなすように、送信側振動子11及び受信側振動子 16は配向される。 さらに、検査対象物は、例えばタンク状の容器のような比較的軸方向への長さ が短い中空体であってもよく、該中空体の肉厚部分の探傷検査を行うために本実 施形態の超音波センサ及び探傷検査装置を適用することもできる。
【0035】 又、上述の実施形態では、演算装置60は、受信側振動子16にて受信された 超音波ビームの強度に基づき腐食部分の減肉量を演算していているが、これに限 定されるものではなく、例えば送信側振動子から出射した超音波ビームの周波数 に対して、受信される超音波ビームの周波数の変化や、管の周方向及び軸方向へ の腐食幅,腐食面積,及び腐食体積等を考慮した多変量解析に基づき上記減肉量 を演算することもできる。
【0036】 又、上述の実施形態では、管1の外周面側における腐食を例に採ったが、これ に限定されるものではない。例えば、上述したように、管の内周面側における腐 食を検出する場合や、平板をロールして大径管を形成した場合等における溶接部 内部の欠陥を検出する場合や、溶接部を形成する溶接金属の腐食を検出する場合 等にも、上述の実施形態における超音波センサ及び探傷検査装置を適用すること ができる。
【0037】
【考案の効果】
以上詳述したように本考案の第1態様の超音波センサによれば、筒状体の軸方 向への移動に対して配置関係が相対的に変化しない送信側振動子と受信側振動子 とを備え、かつ、被検査箇所において超音波ビームが少なくとも当該被検査箇所 を含む範囲に拡散する位置に上記送信側振動子を配置することから、送信側振動 子から超音波ビームを筒状体の周囲へ出射し、従来に比べて高精度にてかつ良好 な操作性にて探傷検査を行うことができる。
【0038】 又、本考案の第2態様の探傷検査装置によれば、筒状体の軸方向への移動に対 して配置関係が相対的に変化しない送信側振動子と受信側振動子とを備え、かつ 、被検査箇所において超音波ビームが少なくとも当該被検査箇所を含む範囲に拡 散する位置に上記送信側振動子を配置して、送信側振動子から出射した超音波ビ ームを筒状体の周囲に沿って一周させて受信側振動子にて受信し、受信した超音 波ビームに基づき演算装置にて腐食量を演算するようにしたことより、検査対象 物の筒状体において設置が容易な箇所に超音波センサを設置することができ、該 超音波センサを上記筒状体の軸方向に沿って直線状に一度スライド走査させるだ けで該筒状体の腐食減肉の検査を行うことができる。したがって筒状体の内外面 に発生した腐食減肉の検査に対して作業性及び検査精度を向上しより安全にかつ 短時間で探傷検査を行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本考案の一実施形態の探傷検査装置の構成を
示す図である。
【図2】 図1に示す探触子の構造を示す斜視図であ
る。
【図3】 図1に示す探触子の移動方向を表す斜視図で
ある。
【図4】 図1に示す探触子において、出射超音波ビー
ム及び入射超音波ビームのそれぞれの進行方向が管の直
径方向に対してなす鋭角部分を表す図である。
【図5】 図1に示す探触子が取り付けられるシューの
斜視図である。
【図6】 検査時において、図1に示す探触子を管の軸
方向へ移動させるための探触子移動治具を示す図であ
る。
【図7】 図1に示す探触子の他の実施形態における構
造を示す斜視図である。
【図8】 図1に示す演算装置の主な動作を示すフロー
チャートである。
【図9】 図8に示す主処理のサブルーチンにおけるフ
ローチャートである。
【図10】 図9に示す探傷検査のサブルーチンにおけ
るフローチャートである。
【図11】 図9に示すファイル操作のサブルーチンに
おけるフローチャートである。
【図12】 図9に示す解析のサブルーチンにおけるフ
ローチャートである。
【図13】 図10及び図11に示す減肉量の計算のサ
ブルーチンにおけるフローチャートである。
【図14】 図1に示す探触子において、出射超音波ビ
ーム及び入射超音波ビームのそれぞれの進行方向が管の
直径方向に対してなす鋭角部分を表す図である。
【図15】 送信側振動子から送出された超音波ビーム
の進行方向を示す図である。
【図16】 送信側振動子から送出された超音波ビーム
の進行方向を示す図である。
【図17】 図1に示す探触子のさらに別の実施形態に
おける構造を示す斜視図である。
【図18】 図1に示す超音波送受信装置から演算装置
へ送出されるアナログ信号を示す図である。
【図19】 図1に示す超音波送受信装置から演算装置
へ送出されるアナログ信号を示す図である。
【図20】 (a)は図1に示す演算装置内における検
査結果情報を説明するための図であり、(b)は図1に
示す演算装置に記憶される検量線を示すグラフである。
【図21】 超音波振動子から出射された超音波の拡が
りを説明するための図である。
【図22】 送信側探触子と受信側探触子とをそれぞれ
独立された実施形態を示す斜視図である。
【図23】 従来の探傷検査方法を示す図である。
【図24】 従来の探傷検査方法を示す図である。
【符号の説明】
1…管、2…肉厚部分、4…支持部材、11…送信側振
動子、12…送信側探触子、13…出射超音波ビーム、
15…混信防止膜、16…受信側振動子、17…受信側
探触子、18…入射超音波ビーム、30…探触子、37
…シュー、37a…接触面、37b…載置面、40…超
音波送受信装置、50…超音波センサ、60…演算装
置、70…表示装置、80…印字装置、90…記憶装
置、101…探傷検査装置、150…探触子移動治具。
フロントページの続き (72)考案者 林 和弘 岡山県倉敷市広江7丁目4−8−9 (72)考案者 白神 富美夫 岡山県浅口郡金光町占見191−5 (72)考案者 永溝 久志 三重県鈴鹿市神戸7−7−22−201 (72)考案者 中村 信夫 三重県四日市市日永3−26−4

Claims (5)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検査対象物である筒状体の軸方向に沿っ
    て該筒状体の周囲面を移動され当該筒状体の被検査箇所
    である周囲面近傍部分の探傷を行う超音波センサであっ
    て、 上記筒状体の周囲面に設置され上記筒状体の周囲に沿っ
    た周囲方向へ上記筒状体の上記周囲面にて反射しながら
    該周囲面近傍に沿って上記筒状体を進む探傷用の超音波
    ビームを出射し、かつ出射された超音波ビームが上記被
    検査箇所において少なくとも当該被検査箇所を含む範囲
    に拡散する位置に配置される送信側振動子(11)と、 上記筒状体の周囲面に設置されかつ上記送信側振動子に
    おける上記軸方向への移動に対して上記送信側振動子と
    の配置関係が相対的に変化することなく設置され、かつ
    上記送信側振動子に対して上記被検査箇所を間に挟んで
    配置され、かつ上記送信側振動子から出射され上記被検
    査箇所の探傷情報を含む入射超音波ビームを受信する受
    信側振動子(16)と、 を備え、 上記筒状体の上記周囲面にて反射しながら該周囲面近傍
    に沿って上記筒状体を進む探傷用の超音波ビームを出射
    するため、上記送信用振動子は、上記筒状体の軸方向に
    直交する直交方向と出射時の出射超音波ビームの進行方
    向とのなす出射角は、75〜90度内の任意の値をなし
    て配置され、 上記受信側振動子は、上記筒状体の軸方向に直交する直
    交方向と上記入射超音波ビームの進行方向とのなす入射
    角が40〜90度内で出射超音波ビームにおける上記出
    射角とは異なる任意の角度をなして配置される、 ことを特徴とする超音波センサ。
  2. 【請求項2】 検査対象物である管の軸方向に沿って該
    管の周面を移動され当該管の被検査箇所である肉厚部分
    における外面腐食部分の探傷を行う超音波センサ(5
    0)と、演算装置(60)とを備えた探傷検査装置にお
    いて、 上記超音波センサは、 上記管の周面に設置され上記管の周方向へ上記管の周面
    にて反射しながら該周面近傍に沿って上記管を進む探傷
    用の超音波ビームを出射し、かつ出射された超音波ビー
    ムが上記被検査箇所において少なくとも当該被検査箇所
    を含む範囲に拡散する位置に配置される送信側振動子
    (11)と、 上記管の周面に設置されかつ上記送信側振動子における
    上記軸方向への移動に対して上記送信側振動子との配置
    関係が相対的に変化することなく設置され、かつ上記送
    信側振動子に対して上記被検査箇所を間に挟んで配置さ
    れ、かつ上記送信側振動子から出射され上記被検査箇所
    の探傷情報を含む入射超音波ビームを受信する受信側振
    動子(16)と、を有し、 上記演算装置は、 上記受信側振動子にて受信した上記入射超音波ビームに
    基づき、上記被検査箇所の腐食量を演算し、 上記管の周面にて反射しながら該周面近傍に沿って上記
    管を進む探傷用の超音波ビームを出射するため、上記管
    の軸方向に直交する直径方向と出射時の出射超音波ビー
    ムの進行方向とのなす出射角(θT)が、上記管の直径
    寸法をD及び肉厚寸法をtとしたとき、t≧Xを満たす
    角度にて上記送信用振動子は配置され、ここで上記X
    は、X=D(1−cos(90−θT))/2 にて算出され
    る値であり、上記出射角(θT)は、75〜90度内の
    任意の値である、 ことを特徴とする探傷検査装置。
  3. 【請求項3】 上記受信側振動子は、上記管の軸方向に
    直交する直径方向と上記入射超音波ビームの進行方向と
    のなす入射角が40〜90度内で出射超音波ビームにお
    ける上記出射角とは異なる任意の角度をなして配置さ
    れ、 上記送信側振動子は、上記管の周方向に沿って上記超音
    波ビームの反進行方向に上記被検査箇所から1/4周離
    れた位置に配置され、 上記受信側振動子は、上記送信側振動子に対して上記周
    方向へ1/2周離れて配置され、 上記送信側振動子から出射された超音波ビームは上記管
    の周方向に一周して上記受信側振動子に受信される、請
    求項2記載の探傷検査装置。
  4. 【請求項4】 上記演算装置は、 周面が滑らかな管と、周面が滑らかな管の場合と同一の
    腐食減肉量を有し周面が腐食している管とのそれぞれに
    ついて予め上記被検査箇所の減肉量を演算してこれらの
    減肉量に基づいた補正値を格納し、被検査管の周面の腐
    食程度に基づき上記補正値を利用して該被検査管におけ
    る減肉量を演算する、請求項3記載の探傷検査装置。
  5. 【請求項5】 上記超音波センサは、上記送信側振動子
    が樹脂材にてモールドされた送信側探触子(12)と、
    上記受信側振動子が樹脂材にてモールドされた受信側探
    触子(17)と、上記送信側探触子と上記受信側探触子
    とに挟まれた界面に設けられ送受信の混信を防止する混
    信防止膜(15)とを有し、上記送信側探触子と上記受
    信側探触子とは上記管の接線方向に沿って隣接しかつ上
    記管の軸方向において異なる位置にて配置され、かつ上
    記送信側探触子、上記受信側探触子、及び上記混信防止
    膜は一体的に成形される、請求項4記載の探傷検査装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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