JP2020090732A - わた - Google Patents
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Abstract
Description
このような防寒衣類に保温性を持たせる目的で使用される素材形態としては、羽毛、わた、最近では、粒状わたといった素材が使用されているのが一般的になってきている。
他方、吸放湿性、吸湿発熱性を有するアクリル系繊維やセルロース系繊維が開発されている(以下の特許文献1、2参照)。これらの繊維をわたに適用して温かさや軽さの機能を発現することも試みられているが、単に混用するだけでは、わた内の緻密な空気層が得られないことから、保温性に関して十分満足できるものは得られていない。
また、近年では、世界的に地球環境への意識が高まっており、廃プラスチック化や二酸化炭素の排出量の削減といった課題が企業に課せられている。また、この取り組みは、企業イメージにも大きく左右されるところである。
一般に、植物繊維カポックは、これまで、軽量、撥水性、繊維が緻密な特性を持つ素材であることから、救命胴衣などの資材分野、枕やぬいぐるみなどの寝具、雑貨品の単なる詰めわたとして使用されていた。
しかしながら、植物繊維カポックのわた生産における加工に関しては、いくつかの問題点があった。その一つは、わた状にするとき、繊維長が短いため繊維が脱落し易いことである、また、製品のドライクリーニング後の繊維のへたりが発生し、高品質なわたを提供する上ではカポックの使用は敬遠されていた。
以下の特許文献3では、カポック綿と他の素材とを、結合剤を介して不均一に混合結合されている複合基材が開示されているが、結合剤を付与した後にキュアリングする工程が必要であり、風合いが低下し、生産性が悪化することもあった。また、本基材は車輛資材に限ったものであり、衣料用わたに要求される機能である吸湿発熱性、吸放湿性、保温性、更には低目付けを謳ったものではなく、本分野での実用化は進んでいない。
[1]吸放湿繊維と疎水性繊維が混合されてなるシート状のわたであって、
該吸湿性繊維としての天然植物繊維カポック、及びセルロース繊維の合計混率が、20〜60wt%であり、かつ、該天然植物繊維カポックの混率と該セルロース繊維の混率のそれぞれが、40wt%以下であり、
該疎水性繊維としての合成繊維の混率が、40〜80wt%であり、かつ、
目付が、60〜180g/m2である、ことを特徴とするわた。
[2]吸湿発熱値が2〜8℃であり、吸放湿性が3〜10%であり、かつ、保温性が60〜75%である、前記[1]に記載のわた。
[3]前記セルロース繊維の単繊維繊度が、1.0dtex以上10dtex以下であり、かつ、前記合成繊維の単繊維繊度が1.0dtex以上10dtex以下である、前記[1]又は[2]に記載のわた。
本実施形態のわたは、吸放湿繊維と疎水性繊維が混合されてなるシート状のわたであって、
該吸湿性繊維としての天然植物繊維カポック、及びセルロース繊維の合計混率が、20〜60wt%であり、かつ、該天然植物繊維カポックの混率と該セルロース繊維の混率のそれぞれが、40wt%以下であり、
該疎水性繊維としての合成繊維の混率が、40〜80wt%であり、かつ、
目付が、60〜180g/m2である、ことを特徴とする。
本実施形態のわたは、好ましくは、吸湿発熱値が2〜8℃であり、吸放湿性が3〜10%であり、かつ、保温性が60〜75%であるものである。また、前記セルロース繊維の単繊維繊度は、1.0dtex以上10dtex以下であり、かつ、前記合成繊維の単繊維繊度は、1.0dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
本明細書中、用語「吸湿性繊維」とは、天然植物繊維カポック、セルロース繊維等の公定水分率6%以上の繊維をいう。
カポックとは、東南アジアを中心に広く生育されるパンヤ科の木であり、その種子から採れる繊維(わた毛)を利用する目的で広く栽培されている。天然植物繊維カポックは、繊維長2〜7mmほどの環境負荷が小さい植物繊維であり、極めて軽くて、緻密であるうえに、中空率約80%という高中空構造であることを特徴とする。
本明細書中、用語「シート状のわた」とは、繊維を積層してシート状に広げ(ウェブという。)、繊維間を適度に結合させて、布状(不織布様)に仕上げたものである。繊維間を結合させる手段としては、接着剤樹脂による化学的接着(ケミカルボンド、レジンボンド)、加熱による融着(サーマルボンド)、鉤(かぎ)付きの針による機械的な絡み合わせ(ニードルパンチ)、高圧水流の噴射による絡み合わせる水流交絡あるいはスパンレース、ウェブを縫い合わせるステッチボンド等が挙げられ、特に制限はないが、本実施形態では、カポック繊維の脱落を防ぐために接着剤樹脂をシート表面に塗布して接着する方法が好ましい。
本実施形態のわたの目付が60g/m2未満であると、カポックを混繊した時に均繊性が損なわれ、目付が180g/m2を超えると、シート状わたの本来の形態や薄さなどといった要件が満たされない。本実施形態のわたの目付は、好ましくは60g/m2以上150g/m2以下である。
カポック繊維は、天然繊維であるため不均一な形状であるが、繊維長7〜15mm、単繊維繊度0.15dtex以上0.30dtex以下の範囲であることが好ましい。
セルロース繊維は、繊維長30〜60mm、単繊維繊度1.0dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
合成繊維は、繊維長30〜60mm、単繊維繊度1.0dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
尚、以下の実施例では、具体的な材料名や数値等を挙げて説明しているが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
各繊維の公定水分率としては、JIS 0105 繊維製品の物理試験方法通則記載の測定方法で測定した値を採用した。
天然植物繊維カポック(繊度0.15〜0.30dtex、繊維長9〜15mmの範囲、公定水分率6%以上)、キュプラ・アンモニウム・レーヨン繊維(繊度1.4dtex、繊維長51mm、公定水分率11%)、ポリエステル繊維(繊度3.3dtex、繊維長51mm、公定水分率0.4%)を、20:30:50の比率で、混綿、カーディング、シート状に積層させ、レジンボンド法にて、平均目付90g/m2、157cm幅のシート状に形成されたわたを得た。
植物繊維カポックとポリエステル繊維を30:70の比率で含有させる以外は、実施例1と同様にして、混綿、カーディング、シート状に積層させ、レジンボンド法にて、平均目付90g/m2、157cm幅のシート状に形成されたわたを得た。
植物繊維カポック、キュプラ・アンモニウム・レーヨン繊維、ポリエステル繊維を30:20:50の比率で含有させる以外は、実施例1と同様にして、混綿、カーディング、シート状に積層させ、レジンボンド法にて、平均目付90g/m2、157cm幅のシート状に形成されたわたを得た。
植物繊維カポックとポリエステル繊維を40:60の比率で含有させる以外は、実施例1と同様にして、混綿、カーディング、シート状に積層させ、レジンボンド法にて、平均目付90g/m2、157cm幅のシート状に形成されたわたを得た。
ポリエステル繊維(繊度3.3dt、繊維長51mm)を混綿、カーディング、シート状に積層させ、レジンボンド法にて、平均目付90g/m2、157cm幅のシート状に形成されたポリエステル100wt%のわたを得た。
ポリエステル繊維中空糸(繊度6.6dtex、繊維長51mm)を混綿、カーディング、シート状に積層させ、レジンボンド法にて、平均目付90g/m2、157cm幅のシート状に形成されたポリエステル100wt%のわたを得た。
(1)吸湿発熱性(℃)
わた試料12cm×12cmを恒温乾燥機内で105℃、1時間放置させた後、一般に言う環境試験室にて、温度20℃、湿度5%RHの環境下6時間放置させた後、温度20℃、湿度65%RHの環境下に5分間放置したときのわたの表面温度変化のピーク値を赤外線サーモグラフィーにて測定して、高湿度環境による温度上昇(℃)を算出した。
わた試料20cm×20cmを恒温乾燥機内で105℃、2時間放置させて絶乾状態にした後、このわた重量を基に、温度30℃、湿度95%RHの初期の環境下に5時間放置させた後、温度30℃、湿度30%RH環境下に5時間放置した時のわたの重量変化を経時的に測定していき、わたの絶乾重量から算出される吸湿された初期の環境下での水分率の最大値から、その後の環境下で放出された水分率の最小値の差を算出した。
JIS L 1096 A法(恒温法)に準じて測定するものであり、外気温度は、21.8℃、発熱体表面温度は、36℃とした。
わた試料30cm×30cm(目付90g/m2)をポリエステル平織生地(繊度 経:56dtex、緯:84dtex、密度 経:48本/cm、緯:35本/cm)で袋状にして四方を本縫いし、そのサンプルを一般商業洗い石油系ドライクリーニングにて3回処理した。その後、ポリエステル生地を外し、わたのシート形状やわた偏りを以下の評価基準で官能評価した:
「〇」:問題なし、
「△」:やや形状・わたの偏り発生、
「×」:著しくわたの損傷あり。
上記評価基準において、「△」以上の評価を良好と判断した。
それぞれ作製したわたの吸湿発熱性、吸放湿性、保温性、洗濯耐久性の測定結果を以下の表1に示す。
Claims (3)
- 吸放湿繊維と疎水性繊維が混合されてなるシート状のわたであって、
該吸湿性繊維としての天然植物繊維カポック、及びセルロース繊維の合計混率が、20〜60wt%であり、かつ、該天然植物繊維カポックの混率と該セルロース繊維の混率のそれぞれが、40wt%以下であり、
該疎水性繊維としての合成繊維の混率が、40〜80wt%であり、かつ、
目付が、60〜180g/m2である、ことを特徴とするわた。 - 吸湿発熱値が2〜8℃であり、吸放湿性が3〜10%であり、かつ、保温性が60〜75%である、請求項1に記載のわた。
- 前記セルロース繊維の単繊維繊度が、1.0dtex以上10dtex以下であり、かつ、前記合成繊維の単繊維繊度が1.0dtex以上10dtex以下である、請求項1又は2に記載のわた。
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