以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。
<電池>
本発明の実施形態に係る電池の一例として非水電解質二次電池の1種である双極型リチウムイオン二次電池について説明するが、本発明を適用する電池は双極型リチウムイオン二次電池に制限されない。ここで、双極型リチウムイオン二次電池とは、双極型電極を含み、正極と負極との間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。例えば、本発明は、発電要素において電極が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の二次電池にも適用可能である。なお、以下の説明では、双極型リチウムイオン二次電池を単に「電池」と称する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電池10を模式的に表した断面図である。電池10は、外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、図1に示すように、実際に充放電反応が進行する発電要素が外装体12の内部に封止された構造とするのが好ましい。
図1に示すように、本実施形態の電池10の発電要素11は、複数の単電池層20が積層されてなる積層体である。なお、単電池層20の積層回数は、所望する電圧に応じて調節することが好ましい。
単電池層20は、正極30a、負極30bおよび電解質層40から構成される。正極30aは、電解液を含む正極活物質層32aが正極集電体31aに配置されてなる。負極30bは、電解液を含む負極活物質層32bが負極集電体31bに配置されてなる。正極活物質層32aと負極活物質層32bとは、電解質層40を介して互いに向かい合うように配置されている。
以下、正極30aおよび負極30bを総称して「電極30」と称する。「電極30」と称する場合、正極30aまたは負極30bのいずれか一方を意味する場合もあるし、両方を意味する場合もある。また、正極集電体31aおよび負極集電体31bを総称して「集電体31」と称する。「集電体31」と称する場合、正極集電体31aまたは負極集電体31bのいずれか一方を意味する場合もあるし、両方を意味する場合もある。また、正極活物質層32aおよび負極活物質層32bを総称して「電極活物質層32」と称する。「電極活物質層32」と称する場合、正極活物質層32aまたは負極活物質層32bのいずれか一方を意味する場合もあるし、両方を意味する場合もある。
正極30aおよび負極30bは、集電体31の一方の面に電気的に結合した正極活物質層32aが形成され、集電体31の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層32bが形成された双極型電極35を構成する。
なお、図1では、集電体31は、正極集電体31aおよび負極集電体31bを組み合わせた積層構造(2層構造)として図示しているが、単独の材料からなる単層構造であってもよい。
さらに、図1に示す電池10では、正極側の最外層に位置する正極集電体31aに隣接するように正極集電板(正極タブ)34aが配置され、これが延長されて外装体12から導出している。一方、負極側の最外層に位置する負極集電体31bに隣接するように負極集電板(負極タブ)34bが配置され、同様にこれが延長されて外装体12から導出している。
単電池層20の外周部にはシール部(絶縁層)50が配置されている。これにより、電解質層40からの電解液の漏れによる液絡を防止し、電池内で隣り合う集電体31同士が接触したり、発電要素11における単電池層20の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止している。
以下、上述した電池10を構成する電極30の主な構成要素について説明する。
[集電体]
集電体31(隣接する正極集電体31aおよび負極集電体31b)は、正極活物質層32aと接する一方の面から、負極活物質層32bと接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体31を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、導電性を有する樹脂や、金属が用いられうる。
集電体31の軽量化の観点からは、集電体31は、導電性を有する樹脂によって形成された樹脂集電体であることが好ましい。なお、単電池層20間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、樹脂集電体の一部に金属層を設けてもよい。
具体的には、樹脂集電体の構成材料である導電性を有する樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
導電性フィラーの添加量は、集電体31に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、好ましくは、5〜35体積%程度である。
また、集電体31が金属によって形成される場合は、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属のめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体31へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
[電極活物質層(正極活物質層、負極活物質層)]
電極活物質層32(正極活物質層32a、負極活物質層32b)は、電極活物質(正極活物質または負極活物質)および電解液を含む非結着体からなる非結着活物質層であることが好ましい。また、電極活物質層32を構成する電極活物質は、被覆剤(被覆用樹脂と必要に応じて用いる導電助剤とを含む)で被覆されていてもよく、電極活物質層32が必要に応じて導電部材等を含んでもよい。さらに、電極活物質層32は、必要に応じて後述するイオン伝導性ポリマー等を含んでもよい。
ここで、「電極活物質を含む非結着体からなる」とは、電極活物質が結着剤(バインダ)により互いの位置を固定されていない状態であることを意味する。また、電極活物質層32が電極活物質の非結着体からなるか否かは、電極活物質層32を電解液中に完全に含浸した場合に電極活物質層32が崩壊するか否かを観察することで確認できる。
電極活物質を含む非結着体からなる電極活物質層32とするためには、電極活物質層32を形成するためのスラリー(以下、「電極活物質スラリー」と称する。)からなる塗膜を乾燥させる工程を実質的に含まないようにする、といった手法が挙げられる。また、電極活物質層32が実質的に結着剤を含まないようにする、といった手法によっても活物質を含む非結着体からなる電極活物質層32を形成することができる。本形態では、乾燥工程を省略し、電極活物質層32が実質的に結着剤を含まないようにする上記2つの手法を両方用いて非結着体からなる電極活物質層32を形成する。
ここで、電極活物質層32が実質的に結着剤を含まないとは、具体的には、結着剤の含有量が、電極活物質層32に含まれる全固形分量(電極活物質層32を構成する部材のうち、固形である部材の分量の合計)100質量%に対して、1質量%以下(下限0質量%)であることを意味する。当該結着剤の含有量は、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
なお、本明細書において電極活物質層32が実質的に含まないとする結着剤とは活物質粒子同士および活物質粒子と集電体31とを結着固定するために用いられる公知の溶媒(分散媒)乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレンおよびスチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。これらのリチウムイオン電池用結着剤は、水又は有機溶媒に溶解又は分散して使用され、溶媒(分散媒)成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質粒子同士および活物質粒子と集電体とを強固に固定する。
電極活物質層32に含まれる電解液は、後述するスラリー調製工程において、電極活物質の分散媒として機能する。電極活物質層32の電解液は、電池10の電解質層40に含まれうる電解液と同じ組成を有する。
電解液は、溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類およびこれらの混合物が挙げられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6LiClO4、Li[(FSO2)2N](LiFSI)等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、およびLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni−Mn−Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni−Mn−Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、またはリチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム−マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、下記の(メタ)アクリレート系共重合体等を用いた被覆用樹脂は、特に炭素材料に対して付着しやすいという性質を有しており、電極活物質層として安定した構造を形成することができる。したがって、下記の(メタ)アクリレート系共重合体等を被覆用樹脂に用いる場合には、構造的に安定した電極材料を提供するという観点からは、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。
(被覆用樹脂)
被覆用樹脂は、電解液等のイオン伝導液を吸収し、膨潤して、ゲル状態となるゲル形成ポリマーを含むことが好適である。ゲル形成性ポリマーは、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂又はこれらの混合物を含むことが好適である。また、ビニル樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを必須構成単量体とするいわゆる(メタ)アクリレート系共重合体が好ましい。(メタ)アクリレート系共重合体としては、特開2018−098204号公報に記載のビニルモノマーを必須構成単量体とする重合体等を用いることができる。
(導電助剤)
導電助剤は、被覆用樹脂とともに電極活物質の表面を被覆する被覆剤として用いられる。導電助剤は、被覆剤中で電子伝導パスを形成し、電極活物質層32の電子移動抵抗を低減することで、電池の高レートでの出力特性向上に寄与し得る。
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;グラファイト、炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、100nm以下であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
(導電部材)
導電部材は、電極活物質層32中で電子伝導パスを形成する機能を有する。特に、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層32の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成していることが好ましい。このような形態を有することで、電極活物質層32中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減されるため、電池の高レートでの出力特性をより一層向上しうる。なお、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層32の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成しているか否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて電極活物質層32の断面を観察することにより確認することができる。
導電部材は、電極活物質層32中で電子伝導パスを形成する機能を有するものであれば制限はなく、この様な機能を有する導電部材としてはアセチレンブラック等の凝集構造を形成する導電性炭素材料および繊維状の形態を有する導電性繊維を好ましく用いることができる。このうち、導電性繊維として具体的には、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレスのような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。
なお、本実施形態の電池10においては、電極活物質層32の構成部材として、上記の電極活物質や、必要に応じて用いられる導電部材、イオン伝導性ポリマー、リチウム塩、被覆剤(被覆用樹脂、導電助剤)以外の部材を適宜使用しても構わない。しかしながら、電池のエネルギー密度を向上させる観点から、充放電反応の進行にあまり寄与しない部材は、含有させないほうが好ましい。
本実施形態の電池10において、電極活物質層32の厚さは、正極活物質層32aについては、好ましくは150〜1500μmであり、より好ましくは180〜950μmであり、さらに好ましくは200〜800μmである。また、負極活物質層32bの厚さは、好ましくは150〜1500μmであり、より好ましくは180〜1200μmであり、さらに好ましくは200〜1000μmである。電極活物質層32の厚さが上述した下限値以上の値であれば、電池のエネルギー密度を十分に高めることができる。一方、電極活物質層32の厚さが上述した上限値以下の値であれば、電極活物質層32の構造を十分に維持することができる。本形態の製造方法によれば、電極活物質スラリーにおいて結着剤を実質的に含まないため、結着剤を含む電極活物質スラリーを厚膜化する際に生じうるクラックの発生などが起こらず、上述した下限値以上の厚膜である電極活物質層32を得ることができる。また、電極活物質層に含まれる電解液量については、特に制限はないが、電極活物質層100質量%に対して好ましくは3〜70質量%であり、より好ましくは5〜65質量%であり、さらに好ましくは5〜60質量%であり、特に好ましくは6〜50質量%である。
<電極の製造方法>
本発明の一形態は、電極30の製造方法に関するものである。本実施形態に係る電極30の製造方法によれば、電極活物質および電解液を含む電極活物質層32が集電体31の表面に形成された電池用電極が製造される。このようにして製造された電極30は、例えば上述した実施形態に係る双極型電池等の非水電解質二次電池として用いられうる。
以下、本実施形態に係る電極30の製造方法について、詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る電極30の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態に係る電極30の製造方法は、図2に示すように、活物質製造工程(S10)と、スラリー調製工程(S20)と、塗工工程(S30)と、吸液工程(S40)とを含むことができる。なお、活物質製造工程(S10)と、スラリー調製工程(S20)と、塗工工程(S30)とは連続して行っても、別々の場所でそれぞれ行っても良く、電極活物質が被覆剤で被覆されていない場合には活物質製造工程(S10)は行われない。
(活物質製造工程)
活物質製造工程(S10)では、電極活物質の表面を被覆剤によって被覆した電極活物質(以下、「被覆電極活物質」とも称する。)を製造する。被覆電極活物質の製造方法は、特に制限されないが、例えば以下の方法が挙げられる。まず、電極活物質を万能混合機に入れて10〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂および溶媒を含む溶液(被覆用樹脂溶液)を1〜90分間かけて滴下混合する。この際の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好適に使用できる。その後、さらに導電助剤を添加し、混合する。そして、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に、10〜150分間保持することにより、被覆電極活物質を得ることができる。
(スラリー調製工程)
スラリー調製工程(S20)では、電極活物質および分散媒である電解液を混合して電極活物質スラリーを調製する。電極活物質スラリーは、電極活物質および電解液を必須に含む混合物である。ここで、電極活物質スラリーに含まれる固形分((被覆)電極活物質、導電部材、イオン伝導性ポリマー、リチウム塩など)の具体的な構成(種類や含有量など)については、上述において説明したものと同様の構成が採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、必要に応じて少量の結着剤を塗布液に添加しても構わない。ただし、結着剤の含有量は、上述したように、電極活物質層32に含まれる全固形分量100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
電極活物質スラリーを構成する電解液(分散媒)の一部は、最終的に電極活物質層32を構成する電解液となる。電極活物質スラリーを構成する電解液(分散媒)は、上述した電極活物質層32を構成する電解液と同様のため、ここでは詳細な説明を省略する。電極活物質スラリーに含まれる電解液量は、電極活物質層32に必要な電解液量よりも多くなるように調整する。電解液を多く含む程、電極活物質スラリーの粘度は低下するため、後述する塗工工程において塗膜の厚さ(膜厚)が均一になるように塗工することができる。電極活物質スラリーに含まれる電解液量については、塗工工程において均一な膜厚が得られる程度の粘度を電極活物質スラリーが有する限り特に制限はないが、電極活物質スラリー100質量%に対して好ましくは5〜80質量%であり、より好ましくは10〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%であり、特に好ましくは30〜60質量%である。
ここで、電極活物質スラリーに含まれる各成分を混合して電極活物質スラリーを調製する方法については特に制限はなく、部材の添加順、混合方法等、従来公知の知見が適宜参照されうる。具体的には、プラネタリーミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ディスパージャー等のブレード型撹拌機が好ましく、特に固練りをするという観点からはプラネタリーミキサーが特に好ましい。また、混合の具体的な方法についても特に制限はないが、最終固形分濃度よりも高い固形分濃度で固練りを実施した後に分散媒成分を追加してさらに混合を行うことで電極活物質スラリーを調製することが好ましい。なお、混合時間は特に制限されず、均一な混合が達成されればよい。一例として、固練りおよびその後の混合はそれぞれ10〜60分程度行えばよく、各工程は一度に行ってもよいし数回に分けて行ってもよい。
(塗工工程)
塗工工程(S30)では、上記で得られた電極活物質スラリーを集電体31の表面に塗工して略均一な膜厚を有する塗膜を形成する。この塗膜は、最終的に電極活物質層32を構成することとなる。
塗工工程における電極活物質スラリーの塗工によって得られる塗膜の膜厚について特に制限はなく、上述した電極活物質層32の厚さが達成されるように適宜設定すればよい。塗膜の膜厚は、好ましくは150〜3000μmであり、より好ましくは300〜1000μmであり、さらに好ましくは400〜900μmであり、特に好ましくは650〜750μmである。
塗工工程における塗工を実施するための塗工手段についても特に制限はなく、従来公知の塗工手段が適宜用いられうる。なかでも、平坦性の高い表面を有する塗膜(電極活物質層32)を得るという観点からは、塗工時に比較的高いせん断応力が加えられるような塗工速度で電極活物質スラリーの塗工を行うことができる塗工手段が用いられることが好ましい。なかでも、スリットから電極活物質スラリーを塗出して塗工するスリットダイコータによる塗工方式は薄膜の塗工および塗工厚みの均一性に優れていることから、好適な塗工手段の一例である。
本実施形態に係る塗工工程では、電極活物質スラリーを塗工して塗膜を得た後に、得られた塗膜に対して加熱による乾燥処理を施さない。これにより、電極活物質層32のひび割れを抑制できるとともに、乾燥処理に必要な製造コストを削減することができる。電極活物質スラリーの塗工後に加熱乾燥しない場合には、電極活物質スラリーの塗工後に所望の面積に電極を切り出すことが難しい。よって、本実施形態に係る電極30の製造方法においては、所望の面積となるように電極活物質スラリーを集電体31の表面に塗工することが必要となる。そのためには、予め塗工部分以外の集電体31の表面にマスキング処理等を施してもよい。
(吸液工程)
図3は、図2のフローチャートの吸液工程(S40)のサブルーチンフローチャートである。
吸液工程(S40)では、吸液材を介して塗膜を厚み方向に加圧する加圧工程と、塗膜への加圧を除圧する除圧工程と、を複数回繰り返す。塗膜を加圧することによって、塗膜の膜厚を所望の厚さに調整することができる。また、吸液材を介して加圧することによって、塗膜に含まれる電解液を吸液材に確実に吸収させることができる。なお、吸液材に吸収させる電解液は、塗膜の最終形態である電極活物質層に不要な電解液のみであり、塗膜に含まれる電解液の一部である。このように、吸液工程(S40)では、塗膜の膜厚の調整と塗膜中の電解液量の調整を同じ工程の中で行うことができる。
図4は、本実施形態に係る吸液工程を実施するための電極30の製造装置100を模式的に示す側面図である。電極30の製造装置100は、プレス部110と、吸液材120と、交換部130と、集電体31および塗膜32Mを載置する載置台140と、制御部150と、を有することが好ましい。なお、電極30の製造装置100は、吸液工程を実施することができる限りにおいて、図4に示す形態に限定されない。
プレス部110は、加圧工程において電極活物質スラリーの塗工によって得られた塗膜32Mに対してプレス処理を施す。このプレス処理を施す際には、塗膜32Mの表面に吸液材120を配置した状態でプレスを行う。プレス部110は、加圧面110Sを備え、加圧面110Sを吸液材120を介して塗膜32Mに対して面接触させることによって、塗膜32Mの全面に均一に圧力を加えられる装置であることが好ましい。プレス部110の構成は、特に限定されないが、例えば、流体圧(油圧や気体圧)方式やクランク方式等の公知のプレス機を使用することができる。
吸液材120は、プレスの際に滲出する余分な電解液を吸収することができる形態であれば特に制限されないが、例えば、不織布、織布、紙または多孔性樹脂からなる。不織布および織布の構成材料としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのポリオレフィン、ポリイミド、またはアラミドなどを単独または混合して用いることができる。多孔性樹脂の構成材料としては、本技術分野でセパレータとして使用される材料として従来公知の材料を用いることができる。このような多孔性樹脂の構成材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HEP)などの炭化水素系樹脂、ポリイミド、アラミドなどが使用でき、異なる多孔性樹脂を積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造を有する積層体など)を用いてもよい。また、多孔性樹脂にはガラス繊維を混合して用いてもよい。
不織布や紙は、織布や多孔性樹脂に比べて安価なため、材料コストを削減することができる。一方で、織布は、不織布に比べて厚み精度が高く面方向の厚みを均一にできるため、電解液の吸液量が面方向にばらつくことを抑制して、より精度の高い電極形成を行うことができる。また、多孔性樹脂は、不織布に比べて厚み精度と空孔率の精度が高いため、電解液の吸液量が面方向にばらつくことを抑制して、より一層精度の高い電極形成を行うことができる。以上の材料コストと電極形成の精度の観点から、吸液材120に用いる材料および形態を適宜選択して用いることが好ましい。
交換部130は、長尺状の吸液材120が巻回されて保持された供給ローラー131と、電解液を吸収した吸液材120を巻き取る巻取ローラー132と、吸液材120をプレス部110と塗膜32Mとの間に保持する保持ローラー133と、を有する。巻取ローラー132が吸液材120を巻き取ると、供給ローラー131からは新しい吸液材120が引き出される。これにより、交換部130は、塗膜32Mと電解液を吸収した吸液材120を電解液を含まない吸液材120に交換することができる。
制御部150は、プレス部110および交換部130の作動を制御する。具体的には、制御部150は、ROMやRAMから構成される記憶部と、CPUを主体に構成される演算部と、各種データや制御指令の送受信を行う入出力部と、を有する。入出力部は、プレス部110および交換部130に電気的に接続する。
以下、図3および図5A〜図5Eを参照して、電極30の製造装置100を用いて実施する吸液工程(S40)について説明する。なお、本実施形態では、吸液工程は、制御部150がプレス部110および交換部130の作動を制御して実施する形態を説明するが、これに限定されず、手動により吸液工程を実施してもよい。
吸液工程では、まず、図5Aに示すように、電極活物質スラリーの塗膜32Mが形成された集電体31を載置台140に配置する。
次に、図5Bに示すように、交換部130の供給ローラー131から吸液材120を引き出して、吸液材120を塗膜32Mとプレス部110の加圧面110Sとの間に配置する。
次に、制御部150は、プレス部110を塗膜32Mに対して接近離反させて塗膜32Mの加圧と除圧を複数回繰り返すようにプレス部110の作動を制御する。これにより、制御部150は、加圧工程(S42)および除圧工程(S43)を複数回繰り返す制御を実施する。以下、図3を参照して、繰り返しの制御について詳細に説明する。
まず、ステップS41では、n=0とし、初期設定を実施する。次に、ステップS42(加圧工程)では、図5Cに示すように、プレス部110の加圧面110Sを塗膜32Mに対して接近させる。プレス部110は、吸液材120を塗膜32Mに対して接触させた状態で、吸液材120を介して塗膜32Mに対して厚み方向にプレス圧力を負荷して加圧し、加圧状態を所定時間保持する。プレス圧力が負荷されると塗膜32Mから余分な電解液が滲出する。この滲出した電解液は、塗膜32Mの表面に配置された吸液材120に吸収される。
次に、ステップS43(除圧工程)では、図5Dに示すように、プレス部110を塗膜32Mから離間させる。これにより、プレス部110から塗膜32Mに対して負荷されたプレス圧力が取り除かれる。
次に、ステップS44では、nを1つインクリメント(n=n+1)する。すなわち、nは加圧工程および徐圧工程を行った回数(以下、繰り返し回数ともいう)を意味する。続くステップS45では、繰り返し回数nが、基準となる繰り返し回数nSに達したか否かを判断する。ここでは、加圧工程および除圧工程を複数回(少なくとも2回以上)実施したか否か(すなわち、nが2以上か否か)を判断する。
なお、ステップS45の判断の基準となる繰り返し回数nSは、2に限定されず、予め定めた3以上の繰り返し回数nSとしてもよい。この場合、判断の基準となる繰り返し回数nSは、プレス圧力や加圧保持時間等の特定の条件において、規定の膜厚および電解液の含有量となる塗膜32Mが得られる繰り返し回数nSを予め実験により求め、その値を基準繰り返し回数nSとして決定することができる。ここで、「規定の膜厚および電解液の含有量となる塗膜32M」とは、最終形態である電極活物質層32を意味する。すなわち、塗膜32Mの「規定の膜厚および電解液の含有量」とは、上述した好ましい実施形態に係る電極活物質層32の厚さおよび電解液の含有量に相当する。また、予め判断の基準となる繰り返し回数nSを上記のように決定した値とする場合、後述するステップS46の判断を省略することができる。
基準の繰り返し回数nSが2である場合、ステップS45において繰り返し回数nが2に達していないと判断された場合(S45:「NO」)には、ステップS47(交換工程)に進む。
ステップS47では、制御部150は、交換部130の巻取ローラー132を回転させて電解液を吸収した吸液材120を図5D中の矢印方向に巻き取るように交換部130の作動を制御する。これにより、供給ローラー131から電解液を含まない吸液材120を引き出して塗膜32Mとプレス部110の加圧面110Sとの間に配置する。ステップS47(交換工程)は、プレス部110によるn回目(n≧2)の加圧工程(S42)の前に毎回実施することが好ましい。
交換工程(S47)を実施することによって、吸液材120の吸液性能が劣化しないため、効率的に電解液を吸液材120に吸収させることができる。なお、交換工程(S47)を実施せずに、同じ吸液材120を複数回の加圧工程に用いてもよい。交換工程(S47)を実施しない場合は、電極30の製造装置100の交換部130を省略することができる。また、この場合、吸液材120は、プレス部110の加圧面110Sに取り付けるか、塗膜32Mの上に敷いて使用してもよい。
ステップS47の後、ステップS48に進み、プレス部110のプレス圧力の設定値を前回の加圧工程におけるプレス圧力以上の圧力に設定した後、ステップS42〜S44を繰り返す。すなわち、n回(n≧2)繰り返した全ての回の加圧工程において、n回目の加圧工程におけるプレス圧力は、n−1回目の加圧工程におけるプレス圧力以上の圧力となるように設定する。複数回の加圧工程のプレス圧力は、一定にしてもよいし、始めの数回だけ一定にした後で上昇させてもよいし、低いプレス圧力から徐々に上昇させてもよい。
繰り返し回数nが少ない状態では塗膜32Mに含まれる電解液の残存量が多いため、塗膜32Mは柔らかく変形しやすい。このため、初回から大きなプレス圧力で加圧を実施すると、塗膜32Mが面方向に広がるように変形し、所望の電極30の形状を得ることができない場合がある。したがって、本実施形態のように、複数回の加圧工程のプレス圧力を一定または低いプレス圧力から上昇させることによって、塗膜32Mが面方向に変形することを抑制することができる。プレス圧力を上昇させる場合は、プレス圧力を一定にする場合に比べて、少ない繰り返し回数nで電解液の吸液および塗膜32Mの成形を完了することができるため、製造時間を短縮することができる。また、プレス圧力を一定にする場合は、繰り返し回数nのみを制御すればよいので、プレス圧力を上昇させる場合に比べて、制御を簡単にすることができる。
また、本発明らの検討によれば、同じプレス圧力で比較した場合、繰り返し回数nが増加して吸液材120の累積吸液量が多くなる程、一回あたりの吸液量は減少することが判明した。すなわち、1回目の吸液量は2回目以降の吸液量よりも多くなる。これは、繰り返し回数nが少ない状態では塗膜32Mに含まれる電解液の残存量が多く塗膜は柔らかく変形しやすいため、より多くの電解液が滲出することによるものと考えられる。したがって、単回のみの加圧工程で吸液量を調整しようとすると吸液量の誤差が大きくなるため、塗膜32Mに含まれる電解液量の調整が困難となる。本実施形態のように、繰り返し回数nを2回以上とすることによって、吸液量の微調整が可能になるため、不要な電解液のみを吸液して注液工程を削減できる。また、上述したように初回の加圧工程では、塗膜32Mは柔らかく変形しやすい。したがって、単回のみの加圧工程で膜厚を調整しようとすると成形の誤差が大きくなるため、塗膜32Mの膜厚の調整が困難となる。本実施形態のように、繰り返し回数nを2回以上とすることによって、塗膜32Mの膜厚の成形も高精度に行うことができる。以上のように、複数回の加圧工程および除圧工程を実施することによって、電解液量の調整および塗膜32Mの膜厚の調整をより高精度に行うことができる。
加圧工程において、塗膜32Mの単位面積あたりに負荷するプレス圧力は、繰り返し回数nや塗膜32Mの膜厚によっても異なるが、好ましくは0.01〜2MPaであり、より好ましくは0.1〜1.5MPaであり、さらに好ましくは0.1〜1MPaである。特に、初回のプレス圧力は、好ましくは0.01〜1MPaであり、より好ましくは0.01〜0.5MPaであり、さらに好ましくは0.05〜0.2MPaであり、塗膜32Mが面方向に変形しない程度の値に設定することが好ましい。加圧状態を保持する時間は、プレス圧力や塗膜32Mの膜厚によっても異なるが、好ましくは0.1〜5秒、より好ましくは0.5〜3秒、さらに好ましくは1〜2秒に設定することができる。プレス圧力および加圧保持時間が上記範囲であると、塗膜32Mの面方向の変形を抑制しつつ塗膜32Mの電解液を吸液材120に十分に吸収させることができる。
ステップS45において繰り返し回数が2に達した場合(S45:「YES」)には、ステップS46に進む。
ステップS46では、塗膜32Mが規定の膜厚および電解液の含有量に達したか否かを判断する。なお、上述したように、予め実験等によって規定の膜厚および電解液の含有量が得られる基準繰り返し回数nSを決定する場合は、ステップS46の判断を省略することができる。
ステップS46において、塗膜32Mが規定の膜厚および電解液の含有量に達していない場合(S46:「NO」)には、ステップS47、S48に進み、ステップS42〜S44を繰り返す。塗膜32Mの膜厚の測定方法は、特に限定されないが、例えば、加圧工程におけるプレス部110の加圧面110Sの変位量を検出し、予め測定した加圧前の膜厚から加圧面110Sの加圧方向(塗膜32Mの厚み方向)の変位量を差し引いた値を膜厚として算出する方法等が挙げられる。ここで、加圧前の膜厚の測定には、公知のマイクロメータを使用することができる。また、電解液の含有量は、予め測定した塗膜32Mに含まれる電解液量から累積吸液量を差し引いた値として算出することができる。ここで、累積吸液量は、電解液を吸収した吸液材120の重量から電解液を吸収する前の吸液材120の重量を差し引いた値として算出することができる。電解液を吸収した吸液材120の重量は、例えば、交換部130の供給ローラー131および巻取ローラー132に荷重計を取り付けることにより測定することができる。荷重計としては、例えば、公知のロードセルやばね秤を用いることができる。
ステップS46において、塗膜32Mが規定の膜厚および電解液の含有量に達した場合(S46:「YES」)には、図2のフローチャートに戻り、処理を終了する。これにより、図5Eに示すように、電極30(正極30aまたは負極30b)が完成する。
なお、上述した電極30の製造方法では、塗工工程(S30)によって得られた塗膜32Mを切り出した後に一枚毎に吸液工程(S40)を実施する例を示しているが、これに限定されず、ロールトゥロール方式を用いて連続的に塗工工程および吸液工程を行ってもよい。
<電極以外の構成要素>
以上、本発明の好ましい実施形態に係る電池10の構成要素のうち、電極30、電極30の製造方法および電極30の製造装置について詳細に説明したが、その他の構成要素については、従来公知の知見が適宜参照されうる。
[電解質層]
電解質層40は、セパレータに電解質が保持されてなる層であり、正極活物質層32aと負極活物質層32bとの間にあって両者が直接に接触することを防止する。本実施形態の電解質層40に使用される電解質は、特に制限はなく、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質などが挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保されうる。
電解液は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液の構成材料は、上述の電極活物質層32に使用される電解液と同様のため説明を省略する。なお、電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.1〜3.0Mであることが好ましく、0.8〜2.2Mであることがより好ましい。また、電解液には溶媒およびリチウム塩のほかに添加剤を含んでもよく、添加剤を使用する場合の使用量は、添加剤を添加する前の電解液100質量%に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の電解液が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HEP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
ゲルポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
セパレータは、電解質を保持して正極30aと負極30bとの間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極30aと負極30bとの間の隔壁としての機能を有する。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
[正極集電板および負極集電板]
集電板34a、34bを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板34a、34bの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板34aと負極集電板34bとでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[シール部]
シール部50は、集電体31同士の接触や単電池層20の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部50を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム:EPDM)、等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いてもよく、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いてもよい。なかでも、耐食性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが好ましい。
[外装体]
図1に示す本実施形態では、外装体12は、ラミネートフィルムによって袋状に構成されているが、これに限定されず、例えば、公知の金属缶ケースなどを用いてもよい。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点からは、外装体12は、ラミネートフィルムによって構成することが好ましい。ラミネートフィルムには、例えば、ポリプロピレン(PP)、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。また、外部から掛かる発電要素11への群圧を容易に調整することができ、所望の電解質層40の厚みへと調整容易であることから、外装体12はアルミネートラミネートがより好ましい。
以上説明した本発明の一実施形態に係る電極30の製造方法および電極30の製造装置は、以下の効果を奏する。
上述したように本発明の実施形態に係る電極30の製造方法では、まず、電極活物質および電解液を含む電極活物質スラリーを集電体31の表面に塗工して塗膜32Mを形成する。その後、吸液材120を介して塗膜32Mを厚み方向に加圧する加圧工程と、塗膜32Mへの加圧を除圧する除圧工程と、を複数回繰り返して塗膜32Mに含まれる電解液の一部を吸液材120に吸収させる。
上述したように本発明の実施形態に係る電極30の製造装置100は、電極活物質スラリーが集電体の表面に塗工されて形成された塗膜32Mに含まれる電解液の一部を吸収する吸液材120と、吸液材120を介して塗膜32Mを厚み方向に加圧するプレス部110と、プレス部110の作動を制御する制御部150と、を有する。ここで、電極活物質スラリーは、電極活物質および電解液を含む。制御部150は、プレス部110を塗膜32Mに対して接近離反させて塗膜32Mの加圧と除圧を複数回繰り返すようにプレス部110の作動を制御する。
上記電極30の製造方法および電極30の製造装置100によれば、加圧および除圧を1回のみ実施するに比べて、加圧および除圧を複数回繰り返して電解液を吸液材120に吸収させることによって吸液量の微調整が可能になる。これにより、塗膜に含まれる電解液の量を高精度に調整できるため、電池性能を向上させることができる。また、加圧によって塗膜32Mを成形する工程の中で吸液工程を実施するため、工数が増加しない。さらに、電解液を含む電極活物質スラリーから塗膜32Mを形成するため、塗膜32Mを成形した後に電解液を注液する注液工程を削減することができる。その結果、製造コストを抑えることができる。
また、n回(n≧2)繰り返した全ての回の加圧工程において、n回目の加圧工程におけるプレス圧力は、n−1回目の加圧工程におけるプレス圧力以上の圧力であることが好ましい。加圧回数が少ない状態では塗膜32Mに含まれる電解液の残存量が大きく、大きなプレス圧力で加圧を実施すると、塗膜32Mが面方向に広がるように変形し、所望の電極30の形状を得ることができない場合がある。複数回の加圧工程のプレス圧力を一定または低いプレス圧力から徐々に上昇させることによって、塗膜32Mが面方向に変形することを抑制することができる。これにより、電極30の面方向の変形を抑制しつつ、塗膜32Mの膜厚および塗膜32Mに含まれる電解液量を高精度に調整することができる。
また、n回目(n≧2)の加圧工程の前に、電解液を吸収した吸液材120を電解液を含まない吸液材120に交換する交換工程を有することが好ましい。加圧および除圧の繰り返しの際に、毎回吸液材120を交換することによって、効率的に電解液を吸液材120に吸収させることができる。これにより、塗膜32Mに含まれる電解液量をより高精度に調整することができる。
また、吸液材120は、不織布、織布、紙または多孔性樹脂であることが好ましい。不織布や紙は、織布や多孔性樹脂に比べて安価なため、材料コストを削減することができる。一方で、織布および多孔性樹脂は、不織布に比べて寸法精度が高いため、電解液の吸液量が面方向にばらつくことを抑制して、より精度の高い電極形成を行うことができる。以上の材料コストと電極形成の精度の観点から、吸液材120に用いる材料および形態を適宜選択して用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、「部」は特に断りのない限り、「質量部」を意味する。
<負極活物質被覆用樹脂溶液の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、酢酸エチル83部とメタノール17部とを仕込み68℃に昇温した。
次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2−エチルヘキシルメタクリレート242.8部、酢酸エチル52.1部およびメタノール10.7部を配合したモノマー配合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.263部を酢酸エチル34.2部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.583部を酢酸エチル26部に溶解した開始剤溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて連続的に追加した。さらに、沸点で重合を4時間継続した。溶媒を除去し、樹脂582部を得た後、イソプロパノールを1,360部加えて、樹脂固形分濃度30質量%のビニル樹脂からなる負極活物質被覆用樹脂溶液を得た。
<被覆負極活物質の作製>
難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)((株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F))88.4部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、上記で得られた負極活物質被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)を樹脂固形分として10部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]1.6部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し30分保持し、被覆負極活物質を得た。なお、被覆負極活物質がコア−シェル構造を有していると考えると、コアとしての難黒鉛化性炭素粉末の平均粒子径は9μmであった。また、被覆負極活物質100質量%に対する、アセチレンブラックの固形分量は1.6質量%であった。
<被覆正極活物質の作製>
ニッケル・アルミ・コバルト酸リチウム(NCA)(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製)140.0部を万能混合機に入れ、室温、15m/sで撹拌した状態で、上記で得られた正極活物質被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)0.48部にジメチルホルムアミド14.6部を追加混合した溶液を3分かけて滴下混合し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]8.6部を混合し、60分撹拌したままで140℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し5時間保持し、被覆正極活物質を得た。なお、被覆正極活物質がコア−シェル構造を有していると考えると、コアとしてのニッケル・アルミ・コバルト酸リチウム粉末の平均粒子径は6μmであった。また、被覆正極活物質100質量%に対する、アセチレンブラックの固形分量は0.1質量%であった。
<電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)に、Li[(FSO2)2N](LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させて、電解液を得た。
<負極活物質スラリーの調製>
上記で得た被覆負極活物質から、平均粒子径(D50)20μmのものを616部取り分け、平均粒子径(D50)5μmのものを264部取り分け、これに導電部材としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)76.5部を添加し、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液637.7部を添加した。この混合物を、混合撹拌機(DALTON社製、5DM−r型(プラネタリーミキサー))を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で30分撹拌することにより、固練りを実施した。
その後、上記で得た電解液638.9gをさらに添加し、上記と同様の混合撹拌機を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で10分×3回撹拌することにより、攪拌希釈を実施した。このようにして、負極活物質スラリーを得た。なお、このようにして得られた負極活物質スラリーの固形分濃度は41質量%であった。
<正極活物質スラリーの調製>
上記で得た被覆正極活物質1543.5部に導電部材としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)31.5部を添加し、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液393.8部を添加した。この混合物を、混合撹拌機(DALTON社製、5DM−r型(プラネタリーミキサー))を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で30分撹拌することにより、固練りを実施した。
その後、上記で得た混合物に電解液417.6部をさらに添加し、上記と同様の混合撹拌機を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で10分×3回撹拌することにより、攪拌希釈を実施した。このようにして、正極活物質スラリーを得た。なお、このようにして得られた正極活物質スラリーの固形分濃度は66質量%であった。
<樹脂集電体の作製>
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマー(登録商標)PL500A」、サンアロマー(株)製](B−1)75質量%、アセチレンブラック(AB)(デンカブラック(登録商標))20質量%、樹脂集電体用分散剤(A)として変性ポリオレフィン樹脂(三洋化成工業(株)製ユーメックス(登録商標)1001)5質量%を180℃、100rpm、滞留時間10分の条件で溶融混練して樹脂集電体用材料を得た。得られた樹脂集電体用材料を、押し出し成形することで、樹脂集電体(20%AB−PP)を得た。
<電極の作製>
上記で得られた負極活物質スラリーを樹脂集電体の一方の面に自走型ダイコータを用いて目付け量127mg/cm2、膜厚730μmで塗布し、負極用塗膜を得た(塗工工程)。同様に、上記で得られた正極活物質スラリーを樹脂集電体の一方の面に自走型ダイコータを用いて目付け量163mg/cm2、膜厚690μmで塗布し、正極用塗膜を得た(塗工工程)。
上記で得られた負極用塗膜および樹脂集電体を油圧プレス装置の載置台にセットした。次に、吸液材として負極用塗膜よりも大きな寸法に切り出されたポリプロピレン製不織布(厚み120μm、目付50g/m2)を複数枚用意し、油圧プレス装置の加圧面と負極用塗膜との間に一枚の不織布を配置した。油圧プレス装置の加圧面を負極用塗膜に対して接近させて、不織布を介して負極用塗膜を厚み方向に0.8MPaで加圧し、加圧した状態を1秒間保持した(加圧工程)。これにより、不織布に負極用塗膜の電解液の一部を吸収させた。その後、油圧プレス装置の加圧面を負極用塗膜から離反させて負極用塗膜への加圧を除圧した(除圧工程)。次に、加圧面と負極用塗膜との間に配置された電解液を吸収した不織布を電解液を含まない不織布に交換した(交換工程)。この加圧工程および除圧工程を7回繰り返した。加圧工程の前には、毎回不織布を交換した。加圧工程においてプレス圧力は、毎回0.8MPaとし、一定とした。
正極用塗膜についても同様に、加圧工程、除圧工程および交換工程を実施した。加圧工程および除圧工程は、6回繰り返した。また、加圧工程におけるプレス圧力は、毎回0.1MPaとし、一定とした。繰り返し回数およびプレス圧力以外の条件は、負極用塗膜と同じとした。
不織布を交換する毎に、交換後の電解液を吸収した不織布の重さを秤量し、下記式(1)に従って塗膜の単位面積あたりの吸液量を算出した。
式(1):単位面積あたりの吸液量(mg/cm2)=(電解液を吸収した不織布の重さ(mg)−電解液を吸収する前の不織布の重さ(mg))/塗膜の面積(cm2)
なお、塗膜の面積とは、厚み方向から平面視した際の面積のことを意味する。
上記で得られた塗膜の単位面積あたりの吸液量から累積吸液量を算出した。図6は、加圧工程および除圧工程の繰り返し回数nと累積吸液量との関係を示すグラフである。
図6に示すように、繰り返し回数nが増加して累積吸液量が多くなる程、1回あたりの吸液量は減少することが分かった。これは、繰り返し回数nが少ない状態では塗膜に含まれる電解液の残存量が多く塗膜は柔らかく変形しやすいため、より多くの電解液が滲出するためと考えられる。この結果から、単回のみの加圧では吸液量の微調整が難しいことが分かった。したがって、複数回の加圧を行うことによって吸液量をより高精度に調整することができることが分かった。