以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
(第1の実施形態)
[画像形成装置の説明]
図1は、画像形成装置200の概略構成図である。なお、以下の説明では、参照符号の末尾の英文字Y、M、C及びKは、それぞれ当該部材がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像の形成に関する部材であることを示している。以下の説明において色を区別する必要が無い場合には、末尾の英文字Y、M、C及びKを除いた参照符号を使用することもある。また、以下では画像形成装置200の一例として中間転写ベルト205を用いた中間転写方式のフルカラーレーザープリンタを説明するが、これに限られるものではない。例えば、記録材搬送ベルトを用いた直接転写方式のフルカラーレーザープリンタなどであってもよい。
不図示のホストPCからコントローラ201を介しエンジンコントローラ202に入力される画像情報に従って、画像形成装置200は転写材としての記録材203にフルカラー画像を形成する。画像形成装置200は、トナーの色毎に画像形成ステーションSY、SM、SC、SKを有する。例としてイエローのトナーによって画像(トナー像)を形成する画像形成ステーションSYを、図2を用いて説明する。
画像形成ステーションSYは、プロセスカートリッジ204Yと、中間転写ベルト205を介してプロセスカートリッジ204Yと反対側に配置されている一次転写ローラ206Yを含む。各画像形成ステーションSY、SM、SC、SKは中間転写ベルト205の回転方向(矢印A方向)に並んで配置されており、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。よって、以下のプロセスカートリッジの説明においては、各色で共通の部材については、添え字を省略する。
プロセスカートリッジ204は、感光体としての感光ドラム301を有する。感光ドラム301は、不図示の駆動手段により矢印B方向に回転駆動される。帯電ローラ302は、不図示の高圧電源から高圧を印加されることで感光ドラム301表面を均一に帯電する。次に、露光手段としてのスキャナユニット207は、エンジンコントローラ202から入力される画像情報に基づき、感光ドラム301へレーザLを照射し、感光ドラム301表面に静電潜像を形成する。
現像ローラ303は不図示の駆動手段によって矢印C方向に回転している。現像ローラ303の表面にコートされた電荷を帯びた現像剤としてのトナーは、感光ドラム301表面の静電潜像に沿って付着することで静電潜像を可視像として現像する。以下、トナーTにより現像された可視像をトナー像とも称する。感光ドラム301の基層は接地されており、一次転写ローラ206には不図示の高圧電源によりトナーと逆極性の電圧が印加されている。そのため一次転写ローラ206と感光ドラム301の間のニップで転写電界が形成され、トナー像が感光ドラム301から中間転写ベルト205へ一次転写する。一次転写しきれず感光ドラム301表面に残ったトナーは、ドラムクリーニングブレード304によって感光ドラム301から除去され、廃トナー容器305に集められる。
トナー補給ローラ306は矢印D方向に回転することで現像ローラ303へトナーTの補給を行い、攪拌機307は矢印E方向に回転することでトナー補給ローラ306へトナーの補給を行う。トナー規制ブレード308は固定されているため、現像ローラ303は自身の回転によりトナー規制ブレード308と摺擦する。現像ローラ303表面にコートされたトナーTはこの摺擦部で帯電しながら量を規制され、その結果濃度の安定した現像が可能になる。以降、現像ローラ303、攪拌機307、トナー補給ローラ306、トナー規制ブレード308からなる構成をまとめて現像ユニット309とも称する。また、感光ドラム301、帯電ローラ302、ドラムクリーニングブレード304、廃トナー容器305、からなる構成をまとめてドラムユニット310とも称する。
図1に示すように、中間転写体としての中間転写ベルト205が矢印A方向に回転することで、各色の画像ステーションSで生成されたトナー像が中間転写ベルト205上に一次転写される。中間転写ベルト205に各色のトナー像が重畳されることで、カラー画像が形成される。給紙カセット208には記録材203が積載されている。給紙ローラ209が駆動されることで記録材203は給紙される。記録材203はレジストローラ対210を介して二次転写ローラ211と二次転写対向ローラ212からなる二次転写部に所定のタイミングで搬送される。具体的には、中間転写ベルト205上に形成されたカラー画像の先端部と記録材203が重なるタイミングで記録材203は搬送される。
記録材203が二次転写ローラ211と二次転写対向ローラ212の間で狭持搬送されている間に、二次転写ローラ211には不図示の電源装置からトナーと逆極性の二次転写電圧が印加される。二次転写対向ローラ212が接地されているため、二次転写ローラ211と二次転写対向ローラ212の間には転写電界が形成される。この転写電界により中間転写ベルト205から記録材203へとカラー画像が二次転写される。
二次転写ローラ211と二次転写対向ローラ212の間の二次転写部でカラー画像が二次転写された記録材203は、定着装置213にて加熱及び加圧される。これにより記録材203上のカラー画像は記録材203に定着される。定着された記録材203は、排紙口214から排紙トレイ215へ搬送され、画像形成プロセスは完了する。一方、二次転写部で転写しきれなかった中間転写ベルト205上のトナーは、クリーニング部材216によって除去される。なお、環境検知手段としての環境センサ218は画像形成装置200が設置されている環境温度や絶対水分量を検知するセンサである。環境センサ218の検知結果に応じて、画像形成条件を制御したり、後述する係数の算出を行ったりする。また、中間転写ベルト205に対向する位置に、濃度センサ311、312が中間転写ベルト205の移動方向と直交する方向に並んで配置されている。濃度センサについては、以下で詳しく説明する。
[濃度センサ]
図3は、濃度センサ311と312の概略構成図である。濃度センサは、LEDなどの発光素子400と、フォトダイオード、CdSなどの受光素子401、402及びホルダー403から構成される。中間転写ベルト205上に形成された検知用画像としてのトナー像(以下、トナーパッチとも称す)に向けて発光素子400から光を照射する。そして、主に中間転写ベルト205からの正反射光、トナーパッチからの乱反射光を受光素子401、402で受光し、トナーパッチの濃度を検知する。そして、検知したトナーパッチの濃度に応じて、画像形成条件を制御することで、濃度補正を行う。
濃度センサ311、312は、中間転写ベルト205の駆動ローラ217に対向する位置に設けられている。また、濃度センサ311、312は、主走査方向(中間転写ベルト205の移動方向に直交する幅方向)に画像形成範囲の中央から±115mmの位置にそれぞれ設置されている。なお、ここでは一例としてトナーパッチの濃度を検知することを説明したが、これに限られるものではない。例えば、各色のトナーで形成されたトナーパッチの位置を検知し、各色のトナーパッチが形成されている位置のずれを求める。そして、位置ずれ量に応じて、画像の書き出しタイミングを調整することで、各色における相対的な位置ずれを補正することもできる。つまり、ここでは一例として濃度センサと称しているが、位置ずれを検知するためも用いることができるため、テスト画像検知センサ311、312と称することもできる。
[感光ドラムが削れるメカニズムの説明]
次に、感光ドラム301が画像形成を行うにつれて削れるメカニズムについて説明する。感光ドラム301の表面が削れる要因としては、感光ドラム301への当接部材の影響が主になる。本実施形態では、図2に示すように帯電ローラ302、現像ローラ303、ドラムクリーニングブレード304(弾性のウレタンブレード)、中間転写ベルト205が感光ドラムの当接部材となる。それぞれ感光ドラム301の長手方向(主走査方向)に渡り当接されている。画像形成装置の画像形成動作により、感光ドラム301の長手方向の膜厚プロファイルが不均一に削れるのは、当接部材の当接状態が長手方向に不均一なためである。
特に、ドラムクリーニングブレード304の影響が大きく、長手方向の端部に行くほどドラムクリーニングブレード304の当接圧が高くなる。このため、画像形成装置の画像形成により、ドラムクリーニングブレード304の長手方向の端部に行くほど、感光ドラム301は削れやすくなり、感光ドラム301の膜厚は長手方向の端部が中央部より薄くなっていく。また、ドラムクリーニングブレード304の材料であるウレタンゴムは、機械的強度は優れるものの、温度により硬度が変化する。温度が上がると硬度は下がり、温度が下がるとゴム性が失われるため硬度が上がる。そのため、温度が高い環境で画像形成が行われた場合は、感光ドラム301の削れ量が相対的に少なくなり、感光ドラム301の長手方向における膜厚差も小さくなる。一方、温度が低い環境で画像形成が行われた場合は、感光ドラム301の削れ量が相対的に多くなり、感光ドラム301の長手方向における膜厚差も大きくなる。
なお、帯電ローラ302は、感光ドラム301への当接圧が小さく、さらに駆動が従動であるため、感光ドラム301の削れ量に与える影響は小さい。また、中間転写ベルト205は、画像形成時に感光ドラム301に当接するものの、当接圧を与えている一次転写ローラ206はスポンジローラであり、当接圧も小さいため、感光ドラム301の削れ量に与える影響は小さい。また、現像ローラ303は、帯電ローラ302よりも当接圧が高いものの、現像ローラ303の表層にはトナーが存在し、感光ドラム301との間で常に潤滑剤としての役割を果たすため、現像ローラ303が感光ドラム301の削れ量に与える影響は小さい。
ただし、現像ローラ303は、ドラムクリーニングブレード304による感光ドラム301の削れ量に間接的に影響を与える。感光ドラム301と現像ローラ303が当接していれば、極性の反転したトナーや極性の小さいトナーが感光ドラム301の表面に現像される。このトナーを、かぶりトナーとも称する。このかぶりトナーがドラムクリーニングブレード304に供給されるため、トナーが潤滑剤の役割を果たし、感光ドラム301の長手方向における中央部と端部での削れ量の差が小さくなる。つまり、現像ローラ303が当接していると、感光ドラム301が長手方向に相対的に均一に削れやすくなり、現像ローラ303が当接していないと、感光ドラム301が長手方向に相対的に不均一に削れやすくなるといえる。現像ローラ303が感光ドラム301に当接している状態で感光ドラム301が回転したか、現像ローラ303と感光ドラム301が離間している状態で感光ドラム301が回転したか、という条件によっても、感光ドラム301の削れ量に与える影響は大きい。
従って、画像形成装置の画像形成が連続で行われたか、間欠で行われたかも感光ドラム301の膜厚プロファイルに影響を与える。画像形成装置は、感光ドラム301の削れ量を抑制するため、画像形成の開始動作時(前回転動作とも称する)において、感光ドラム301の回転速度と現像ローラ303の回転速度が略同じ速さになってから感光ドラム301と現像ローラ303を当接させている。画像形成の終了動作時(後回転動作とも情する)において、感光ドラム301と現像ローラ303を離間してから、それぞれの回転を停止させている。つまり、開始動作時と終了動作時には、感光ドラム301に現像ローラ303が当接していない状態で感光ドラム301が回転する期間がある。従って、開始動作と終了動作が多いほど、つまり間欠印刷が多いほど、感光ドラム301は長手方向において相対的に不均一に削れやすくなる。一方、開始動作と終了動作が少ないほど、つまり連続印刷が多いほど、感光ドラム301は長手方向において相対的に均一に削れやすくなる。
このように、感光ドラム301が長手方向において不均一に削れる一因は、ドラムクリーニングブレード304の当接状態が長手方向において不均一なためである。また削れ量は、画像形成装置の環境温度や、画像形成のジョブが間欠印刷か連続印刷かという印刷条件にも影響を受ける。
[感光ドラム301の構成と電位の説明]
次に、図4を用いて感光ドラム301の層構成を説明する。感光ドラム301の主な構成は下層から、アルミニウム等の導電性材料からなるドラム基体321、光の干渉を抑え上層の接着性を向上させる下引き層322、キャリアを生成する電荷発生層323、発生したキャリアを輸送する電荷輸送層324、である。ドラム基体321は接地されており、感光ドラム301表面が帯電ローラ302により帯電されることで感光ドラム301内側から外側に向けた電界が形成される。スキャナユニット207によるレーザ光が感光ドラム301の表面に照射されると電荷発生層323でキャリアが生成される。このキャリアは前記の電界により移動し、感光ドラム301表面の電荷と対になることで感光ドラム301表面電位を変化させる。
画像形成により感光ドラム301で削れるのは、最表層の電荷輸送層324である。感光ドラム301のドラム膜厚が変化した場合に濃度が変化する理由を、感光ドラム301の表面電位を表現した図5を用いて説明する。(1)はドラム膜厚大(長手方向の中央部)、(2)はドラム膜厚小(長手方向の端部)の電位を表わしている。
まず、帯電ローラ302により感光ドラム301の表面を帯電した電位を帯電電位Vdとする。ドラム膜厚大の状態における帯電電位をVd_膜厚大、ドラム膜厚小の状態における帯電電位をVd_膜厚小とする。ドラム膜厚が小さくなるとドラムの抵抗が下がるため、帯電ローラ302と感光ドラム301の表面との分圧が大きくなり、放電量が大きくなる。この結果、ドラム膜厚小のVd_膜厚小は、ドラム膜厚大のVd_膜厚大より高くなる。なお、分圧が大きくなる一例を説明する。例えば、感光ドラム301の抵抗を100Ω、帯電ローラ302と感光ドラム301の間の空気層の抵抗を100Ωとして、全体に1000Vが印加されるとする。この場合に、感光ドラム301の分圧を500V、帯電ローラ302と感光ドラム301の間の空気層の分圧を500Vと仮定する。感光ドラム301の膜厚が薄くなって抵抗が下がり、感光ドラム301の抵抗が50Ωになると、感光ドラム301の分圧が略333V、帯電ローラ302と感光ドラム301の間の空気層の分圧が略666Vになる。このように、膜厚が薄くなると帯電ローラ302と感光ドラム301の表面との分圧が大きくなる。
帯電された感光ドラム301の表面をレーザ光により露光することによって、感光ドラム301の表面電位は露光電位Vlに変化する。ドラム膜厚大の状態における露光電位をVl_膜厚大、ドラム膜厚小の状態における露光電位をVl_膜厚小とする。ドラム膜厚が小さくなると感光ドラム301の静電容量が大きくなるため、露光によって同じ量の+キャリアが電荷発生層323から発生しても、ドラム膜厚小のVl_膜厚小は、ドラム膜厚大のVl_膜厚大より高くなる。
現像ローラ303は不図示の高圧電源により現像電位Vdcになるように電圧印加されている。現像電位Vdcは露光電位Vlと帯電電位Vdの間に設定されており、レーザ光により露光された領域では、感光ドラム301側にトナーが現像される方向へ電界を発生させる電位差Vcontが形成される。ドラム膜厚大の状態における電位差をVcont_膜厚大、ドラム膜厚小の状態における電位差をVcont_膜厚小とする。トナー濃度は、この電位差Vcontの大きさで決まる。従って、長手方向の中央部のドラム膜厚が長手方向の端部よりも大きくなると、相対的な電位差Vcontが大きくなる。具体的には、Vcont_膜厚大>Vcont_膜厚小となる。この電位差Vcontを埋めるのに必要なトナー量が増えるため、Vcontの大きい長手方向の中央部に形成されるトナー像の濃度は、長手方向の端部に形成されるトナー像の濃度より濃くなり、同じ濃度の画像を形成しようとしても濃度が不均一となる。
[レーザ光量の補正の説明]
図6は、本実施形態におけるレーザ光量の補正のための回路図である。エンジン制御部140はCPU141を有する制御ユニットである。スキャナユニット207は、光量制御回路131、VI変換回路135、レーザドライバIC136、レーザ120を備える。濃度センサ311、312はCPU141に接続され、濃度センサの検知結果をCPU141が取り込み、各種演算を行うことができる。
レーザドライバIC136の電流制御部137は、画像情報を変換して生成されたビデオ信号に応じて、レーザ120に電流を通電してレーザ光を照射するか、ダミー抵抗138に電流を流してレーザ120からレーザ光を照射させないかを切り替える。光量制御回路131はNVRAM133を有し、レーザ光の各走査位置(区画)における電流制御値が記憶されている。CPU141からレーザ発光信号が入力されてから所定時間後に、光量制御回路131の制御部132は、NVRAM133に記憶されているレーザ光の電流制御値の読み出しを開始する。
光量制御回路131の制御部132は、読み出したレーザ光の電流制御値を光量制御回路131に内蔵されたDAコンバータ134によって所定のアナログ電圧値に変換する。光量制御回路131から出力されたアナログ電圧は、VI変換回路135において制御電流IDに変換され、定電流回路139に流れ込む。よって、レーザ電流ILは、定電流回路139に流れる設定電流Isumから、光量制御回路131より出力された制御電流IDを減算することで得られる。つまり、レーザ電流IL=Isum−IDによって求めることができる。制御電流IDを大きくすることで、レーザ電流ILを下げること、つまりレーザ光量を少なくすることができる。
電流制御値は00h〜FFhの256段階で調整でき、最大でレーザ光量を±0.1[μJ]変化させることができるような設定となっている。電流制御値が80hの場合をレーザ電流ILの基準値(基準IL)とする。電流制御値がFFhの場合に制御電流IDは0mAとなる。つまり、レーザ電流IL=設定電流Isumとなる。この場合のレーザ電流ILは基準ILに対しレーザ光量が+0.1[μJ]となる。電流制御値が00hの場合にレーザ電流ILが基準ILに対しレーザ光量が−0.1[μJ]となる。
[感光ドラム301の長手方向の最大露光量プロファイルの補正方法]
図7は、NVRAM133に記憶させるレーザ光量の電流制御値の一例を示したものである。電流制御値は00h〜FFhの256段階で調整でき、最大でレーザ光量を±0.1[μJ]変化させることができるような設定となっている。本実施形態においては、長手方向に分割したレーザ照射区間0〜16の17区画毎に露光量を調整可能である。
前述したように、感光ドラム301の耐久が進むと、感光ドラム301の長手方向にける膜厚に差がでて、中央部が厚く、端部が薄くなる。このような場合に、主走査方向の最大露光量プロファイルを均一にしていると、感光ドラム301の長手方向において、膜厚の差に基づく潜像電位の差が発生していまい、中央部の方が端部よりもトナーの濃度が濃くなってしまう。本実施形態では、第1区間と第15区間に相当する位置に濃度センサ311、312が設置されているため、第1区間と第15区間は、濃度センサ211、312によりテスト画像を検知した結果に基づき、適切に階調補正を行うことができる。よって、感光ドラム301の膜厚が変化しても本来形成したい濃度のトナーが形成できるようにレーザ光量を補正することができる。なお、第1区間を主走査方向における一端の第1端部、第15区間を他端の第2端部と称することもできる。そして、各領域に応じて画像検知手段としての濃度センサが複数配置されているということもできる。
しかし、前述したように、第1区間と第15区間の内側の区間は、感光ドラム301の膜厚が厚いため、第1区間と第15区間よりもトナーの濃度が濃くなってしまう。また、第1区間と第15区間の外側の区間は、感光ドラム301の膜厚が薄いため、第1区間と第15区間よりもトナーの濃度が薄くなってしまう。よって、感光ドラム301の長手方向において均一な濃度でトナー像を形成するためには、第2区間から第14区間の最大露光量を低く、第0区間と第16区間の最大露光量を高く補正する必要がある。
そのために、濃度センサ311、312によってテスト画像を検知することができる第1区間、第15区間の最大露光量Sを基準として、各区間における最大露光量の補正値を、感光ドラム301の膜厚に応じて求める。なお、第1区間と第15区間は濃度センサ311、312によってテスト画像を検知することで階調補正が実行されるため、最大露光量の補正は行わず、基準とする。つまり、第1区間と第15区間における最大露光量補正値は0[μJ]であるともいえる。
まず、感光ドラム301の表面が削れにくく、形成するトナー像の濃度が最も濃くなる、長手方向の中央部である第8区間の最大露光量の補正値を求める。基準である第1区間と第15区間の最大露光量と第8区間の最大露光量の差分を最大露光量の補正値X[μJ]と定義し、決定する。図7中のMの部分が第8区間における最大露光量、Sの部分が第1区間と第15区間における最大露光量である。次に、第0区間から第1区間を通り第8区間、及び第16区間から第15区間を通り第8区間までの最大露光量を左右対称に連続的に繋げることで全区間の最大露光量を決定する。そして、それぞれの区間において、基準の最大露光量から各区間における最大露光量を差し引くことで、最大露光量プロファイルを作成する。これが、各区間における最大露光量の補正値となる。なお、本実施形態では最大露光量プロファイルは、長手方向の距離に対し2次関数的に光量が変化するように作成したが、プロファイルはその限りではなく、装置構成等に応じて最適化することができる。
[最大露光量の補正値の算出方法]
次に、最大露光量の補正値の算出方法について説明する。本実施形態においては、主走査方向の最大露光量プロファイルを画像形成装置の使われ方や状態に応じて変化させることで、長手方向におけるトナー像の濃度ムラを抑制する。
本実施形態においては、まず主走査方向の最大露光量プロファイルの補正の方法として、トナー像の濃度が相対的に最も高くなる第8区間の濃度を第1区間と第15区間に近づけるための最大露光量の補正値X[μJ]を求める。そして、第8区間の最大露光量を用いて、長手方向におけるトナー像の濃度を均一にするように補正を行う。従って、濃度センサ311と312の検知区間である長手方向の端部の第1区間と第15区間の膜厚と、最も膜厚が削れ難い長手方向の中央部の第8区間の膜厚の差を精度よく予測する必要がある。
長手方向における感光ドラム301の膜厚の差は、画像形成が行われる環境や現像ローラ303と感光ドラム301の当接状態で補正した、感光ドラム301の積算回転数などから予測する。これらのパラメータは、前述したように画像形成が行われる環境に応じて、ドラムクリーニングブレード304の硬度が変わるため、感光ドラム301の削れ量が変わること。また、連続印刷や間欠印刷といった印刷条件によって前回転動作と後回転動作の頻度が変わるため、現像ローラ303が当接しているか離間しているかに応じて、感光ドラム301の削れ量が変わるためである。
また、第8区間の最大露光量の補正値X[μJ]を決定する上で、最大露光量プロファイル補正実行前の耐久に応じて予め定められた基準となる最大露光量も考慮する必要がある。最大露光量プロファイルによる補正実行前の基準となる最大露光量によって、最大露光量の変化幅に対する潜像電位の変化幅も異なるためである。また、第8区間の最大露光量の補正値X[μJ]を決定する上で、トナーの帯電量も考慮する必要がある。トナーの帯電量が異なると、感光ドラム301の潜像電位を埋めるのに必要なトナー量が異なってくるためである。
このように、長手方向におけるトナー像の濃度ムラを発生させる複数の要因の影響分を補正して、第8区間の最大露光量の補正値X[μJ]を最終的に決定する必要がある。本実施形態においては、以下の係数を定義することで、第8区間の最大露光量の補正値Xを求める。つまり、感光ドラム301のこれまでの画像形成が行われる環境や現像ローラ303の当接離間状態で補正した、感光ドラム301の積算回転数による補正係数としてC1を定義する。また、補正実行前のもともとの最大露光量による補正係数としてC2、環境によるトナー帯電量の変化を補正係数としてC3、現像ユニット309の寿命による補正係数としてC4を定義する。
第8区間の最大露光量の補正値X[μJ]は、スキャナユニット207で補正可能な光量の上下限値±0.1[μJ]に対し、以下の式(1)のように4つの補正係数C1からC4を乗算して決定される。補正係数C1からC4は1.0以下の値となる。
第8区間の最大露光量の補正値X=0.1×C1×C2×C3×C4・・・(1)
補正係数C1〜C4、第8区間の最大露光量の補正値X、最終的な最大露光量プロファイルの算出は、エンジン制御部140内のCPU141で行われる。
次に、図8のフローチャートを用いて最大露光量プロファイルの算出方法について説明する。S101において、CPU141は画像形成装置200をスタンバイ状態とする。S102において、CPU141は画像形成を行うための印刷ジョブを受信したか否かを判断する。印刷ジョブを受信していない場合は、スタンバイ状態で待機する。印刷ジョブを受信した場合は、S103に進む。
S103において、CPU141は画像形成が行われる環境や現像ローラ303の当接離間状態で補正した、感光ドラム301の積算回転数から補正係数C1を決定する。補正係数C1は、長手方向の端部である第1区間と第15区間の膜厚と、長手方向の中央部である第8区間の膜厚の差を精度よく予測するための係数である。前述したように、感光ドラム301の長手方向の削れ量が変化する要因として、環境によるドラムクリーニングブレード304の硬度の変化の影響と、現像ローラ303が感光ドラム301に当接しているか、離間しているかの影響が挙げられる。そのため、係数C1は、現時点の画像形成が行われる環境と現像ローラ303の当接離間状態で補正した積算回転数を、感光ドラム301の寿命0%に相当する回転数で割った値としている。積算回転数は、画像形成が行われる環境や現像ローラ303の当接離間状態で重み付けをするため、画像形成時の環境温度と1ジョブあたりの印刷枚数からドラム削れ量に相当するカウント値に置き換え、1ジョブ毎に加算していく。
表1は、環境条件や1ジョブあたりの印刷枚数に応じたカウント値を示している。なお、表1に記載していない1ジョブあたりの印刷枚数の場合には、前後の印刷枚数の値を線形補間してカウント値を算出する。500枚以上の場合も同様に線形補間を行う。また、画像形成時の環境温度は、環境センサ218により検知する。そして、表1に示したカウント値の加算処理は、CPU141により行われる。そして、以下の式(2)に示すように、積算したカウント値(カウント積算値)を、感光ドラム301の膜厚が寿命0%となる状態に相当する最大のカウント値(カウント最大値)で割ることで補正係数C1を決定する。つまり、補正係数C1は、感光体の膜厚に関する第1係数と称することもできる。
C1=カウント積算値/カウント最大値・・・(2)
低温環境においては、ドラムクリーニングブレード304の硬度が高くなり、感光ドラム301の長手方向の中央部と端部における削れ量の差が大きくなる。つまり、感光ドラム301の膜厚差が大きくなるため、カウント値を通常環境や高温環境より大きくしている。また、1ジョブあたりの印刷枚数が少ないほど、現像ローラ303と感光ドラム301が離間状態で回転する期間が相対的に長くなり、感光ドラム301の長手方向の中央部と端部における削れ量の差が大きくなる。つまり、感光ドラム301の膜厚差が大きくなるため、1ジョブあたりの印刷枚数が少ないほど、1枚あたりのカウント値を大きくしている。例えば、低温環境において1ジョブあたりの印刷枚数が2枚であれば、1枚当たりのカウント値は、0.10/2=0.05となる。低温環境において1ジョブあたりの印刷枚数が500枚であれば、1枚当たりのカウント値は、10.00/500=0.02となる。なお、表1では一例としてA4用紙の印刷枚数としているが、用紙サイズはA4に限られるものではなく、対応する紙サイズごとにカウント値を設定することが可能である。
表1を用いて具体的な一例を説明すると、通常環境において、A4用紙の印刷枚数が4枚の印刷ジョブが複数回行われた場合は、1ジョブ毎にカウント値0.08が加算される。最大カウント値は、感光ドラム301の製品寿命を鑑み2000としており、例えば、カウント積算値が500に到達した場合の補正係数C1は、500/2000=0.25となる。
S104において、CPU141は補正前の最大露光量から補正係数C2を決定する。本実施形態における画像形成装置200は、スキャナユニット207の構成上の制限として、最大露光量は0.21μJ以下、且つ0.40μJ以上には出来ない構成となっている。そのため本実施形態では、感光ドラム301に潜像を形成する場合の基準となる最大露光量を、感光ドラム301の第1区間と第15区間の膜厚の絶対値に合わせて、長手方向において一律に最小0.23μJ〜最大0.30μJの範囲で調整を行うこととした。これは、感光ドラム301の膜厚が変わった場合にも所定の表面電位を得るためである。補正前の最大露光量によって、同じ補正量を加えても表面電位の変化幅は異なる。従って、最大露光量の補正値Xも補正前の最大露光量に応じて変更する必要がある。
補正係数C1は、第1区間と第15区間の膜厚と、最も膜厚が削れ難い中央部の第8区間の膜厚の差を予測し、精度よく補正するための係数であった。一方、補正係数C2は第1区間と第15区間の膜厚の絶対値を予測し、精度よく補正するための係数である。画像形成が行われる環境や現像ローラ303と感光ドラム301の当接離間状態で補正した、カウント積算値に基づき第1区間と第15区間の膜厚の絶対値を予測する。そして、得られたカウント積算値から補正係数C1が得られる。補正係数C1が決まれば、基準となる最大露光量が決定し、基準となる最大露光量に応じて補正係数C2を決定することができる。表2は、補正前の最大露光量に対する補正係数C2を示している。つまり、補正係数C2を補正前の露光量に関する第2係数と称することもできる。
感光ドラム301の耐久が進み、膜厚が薄くなるにつれて、静電容量は大きくなる。そのため、所定の潜像電位を得るためには、最大露光量も大きくしていく必要がある。最大露光量が大きくなると、露光量の変化幅に対する潜像電位の変化幅も小さくなっていく。このため、補正前の最大露光量が大きくなるにしたがって、補正係数C2も大きくしている。
S105において、CPU141は印刷時の環境における絶対水分量から補正係数C3を決定する。本実施形態における現像剤としてのトナーは、環境の絶対水分量に応じて帯電性が異なり、低水分量環境だと帯電量が高くなり、高水分量環境だと帯電量が小さくなる。そのため、感光ドラム301の潜像電位を埋めるのに必要なトナー量が環境の絶対水分量で異なる。従って、最大露光量の補正値Xも、環境の絶対水分量に応じて変更する必要がある。表3は、環境の絶対水分量に対する補正係数C3を示している。つまり、補正係数C3は環境に関する第3係数と称することもできる。なお、環境の絶対水分量は、環境センサ218を用いて計測する。
絶対水分量が大きくなると、トナーの帯電量は小さくなるため、同じ潜像電位の差でもトナー濃度の差が大きくなり、画像の色度差が大きくなってしまう。そのため、絶対水分量が大きくなるにしたがって、補正係数C3を大きくしている。
S106において、CPU141は現像ユニット309の残寿命から補正係数C4を決定する。つまり、補正係数C4は、現像手段の寿命に関する第4係数と称することもできる。本実施形態における現像剤としてのトナーは、現像ユニット309内で何度も摺擦、撹拌されていると、トナー母体表面の外添剤が取れたり、トナー母体に埋め込まれたりして、帯電性が失われて帯電量が小さくなっていく。従って、前述した絶対水分量と同じ理由で、現像ユニット309の耐久状態に応じて最大露光量の補正値Xを補正する必要がある。本実施形態においては、現像ユニット309の残寿命を現像ローラ303の回転数や、トナーTの残量などから所定の算出方法で算出し、その現像ユニット309の残寿命に応じて、最大露光量の補正値Xを変更する。表4は、現像ユニット309の残寿命に対する補正係数C4を示している。
現像ユニット309の残寿命に応じて、トナーの帯電量は小さくなっていくため、現像ユニット309の残寿命が少なくなると、補正係数C4を大きくしている。なお、表4では残寿命100%は現像ユニット309の新品状態、残寿命0%は製品としての寿命が終了した状態であり、そのまま使いつづけると画像弊害などが発生する可能性がある状態としている。
S107において、CPU141は補正係数C1からC4を用いて、感光ドラム301の長手方向における最大露光量プロファイルを算出する。まず初めに、濃度センサ311、312の検知区間である、第1区間と第15区間の最大露光量の補正値を0[μJ]に決定する。次に、長手方向の中心部である第8区間の最大露光量の補正値X[μJ]を決定する。なお、本実施形態においては露光量の補正値の上限を0.1[μJ]として、前述した式(1)にあらわすように、補正係数C1からC4を0.1[μJ]に掛けることで最大露光量の補正値X[μJ]を決定する。
次に、第8区間以外の区間の最大露光量プロファイルを作成する。例として、本実施形態(実施例1)により求めた最大露光量プロファイルを図9に示す。なお、図9における第8区間の最大露光量の補正値Xは0.05、補正前の基準となる最大露光量は0.27μJである。第1区間と第15区間の最大露光量が0.27μJ、第8区間の最大露光量が0.22μJとなり、残りの区間の最大露光量は、2次関数で連続的につないで算出している。しかし、算出方法はこれに限られるものではなく、求める精度に応じて例えば線形補間により算出することも可能である。
S108において、CPU141はS107で作成した最大露光量プロファイルに基づき、露光量を補正して画像形成を行う。S109において、CPU141は印刷ジョブによって指示された印刷枚数の画像を形成すると、印刷動作を終了する。S110において、CPU141は今回の印刷ジョブにおける感光ドラム301の削れ量に相当するカウント値をカウント積算値に加算して、一連の処理を終了する。
前述した本実施形態の制御を行った場合と、本実施形態の制御を行わなかった比較例の場合における、感光ドラム301の長手方向における画像の濃度ムラの比較について説明する。なお、以下[1]〜[7]の条件でサンプルとなる画像を形成し、サンプルとなる画像の長手方向における色度差(記録材と形成した画像の色度差)を比較した。
[1]新品の画像形成装置を用いて、低温環境である15℃において、1ジョブあたり4枚の印刷を10000回繰り返す。
[2]記録材は、GFC−081(キヤノン製普通紙A4サイズ)である。
[3]形成する画像は、全面1次色画像(最も光量に対して感度が高い50%濃度)とする。なお、ここで言う50%濃度とは、256階調の画像において、画像データがFFhであるピクセル数の面積率を表わしており、市松模様で画像が作られている。
[4]感光ドラム301の削れ量を示す積算回転数に対応したカウント積算値は、以下のように求める。本実施形態の制御においては、カウント積算値は0.15×10000=1500になる。一方、比較例の制御においては、画像形成を行う環境の違いに応じた影響は考慮されず、通常環境で1ジョブあたり4枚の印刷を10000回繰り返していたとみなす。よって、カウント積算値は0.08×10000=800となる。
[5]ドラムユニット310の補正前の最大露光量は、本実施例は0.28μJ、比較例は0.25μJとする。
[6]画像形成を行う環境は、23℃50%(絶対水分量は8.9g/m^3)とする。
[7]現像ユニット309の残寿命は60%とする。
上記の条件[1]〜[7]において、補正係数C1〜C4を求める。まず、本実施形態における補正係数C1は、1500/2000=0.75となる。補正係数C2は、補正係数C1が0.75となることから、0.94となる。補正係数C3は、絶対水分量が8.9g/m^3であることから、0.76となる。補正係数C4は、現像ユニット309の残寿命が60%であることから、0.94となる。
一方、比較例における補正係数C1は、800/2000=0.4となる。補正係数C2は、補正係数C1が0.4となることから、0.85となる。補正係数C3は、絶対水分量が8.9g/m^3であることから、0.76となる。補正係数C4は、現像ユニット309の残寿命が60%であることから、0.94となる。
これら補正係数と式(1)より、本実施形態における補正値Xと、比較例における補正値Xを求める。
実施形態における補正値X=0.1×C1×C2×C3×C4=0.1×0.75×0.94×0.76×0.94=0.054
比較例における補正値X=0.1×C1×C2×C3×C4=0.1×0.4×0.85×0.76×0.94=0.024
図10に、本実施形態における算出した最大露光量プロファイルと、比較例における算出した最大露光量プロファイルを示す。点線Aが比較例の最大露光量プロファイル、実線Bが本実施形態の最大露光量プロファイルである。
実線Bは、第8区間の最大露光量が0.23μJとなり、濃度センサ311、312の検知区間である、第1区間と第15区間の最大露光量が0.28[μJ]となる。残りの区間の最大露光量も2次関数で連続的に繋いで最大露光量プロファイルを作成する。一方、点線Aは、第8区間の最大露光量が0.225[μJ]となり、第1区間と第15区間の最大露光量が0.25[μJ]になる。残りの区間の最大露光量も2次関数で連続的に繋いで最大露光量プロファイルを作成する。
図11は、図10の最大露光量プロファイルを用いてサンプル画像を形成した場合における、長手方向の色度を示した図である。点線Cは比較例の色度プロファイル、実線Dは本実施形態の色度プロファイルである。点線Cの色度は、長手方向における端部で36.5程度、長手方向における中央部で45程度であり、端部と中央部で8.5程度の色度差があることがわかる。一方、実線Dの色度は、長手方向における端部で37程度、長手方向における中央部で41程度であり、端部と中央部で4程度の色度差があることがわかる。つまり、本実施形態における露光量の補正により、比較例の露光量の補正より、長手方向における色度ムラを抑えられていることがわかる。
本実施形態における最大露光量プロファイルは、第1区間と第15区間の最大露光量と第8区間の最大露光量の差が、比較例における最大露光量プロファイルより大きくなっている。第1区間と第15区間においては、濃度センサ311、312でテスト画像を検知した結果に基づき、適切に色度を補正することができる。この状態において、本実施形態においては最大露光量プロファイルを適切に作成することで、長手方向の中央部と端部の濃度ムラを抑制している。具体的には、長手方向の中央部と端部における、感光ドラム301上の潜像電位Vlと現像ローラ303に印加されている電位Vdcとの差であるVcontの差分が、本実施形態の方が比較例より小さくなる。よって、現像されるトナー量の差が減少することで濃度ムラを抑制できている。
このように、感光ドラム301の長手方向における膜厚の削れ量に応じて、適切に露光量を補正することで、長手方向における画像の濃度ムラを抑制することができた。また、濃度センサ311、312によりテスト画像を検知することができる領域を基準として、長手方向における各領域の露光量の補正値を求めることができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、補正後の最大露光量がスキャナユニット207の構成上の制限を超えない範囲で制御される場合について説明した。しかし、補正係数C1〜C4の決定に寄与する各種条件によっては、補正される最大露光量が構成上の制限を超える場合がある。本実施形態においては、最大露光量プロファイルの補正を行うタイミングを色度階調補正の実行タイミングに合わせて行う。さらに、濃度センサ311、312の検知結果を補正することで、長手方向における濃度ムラを抑制するように露光量を補正する方法について説明する。なお、画像形成装置の構成など、先の第1の実施形態と同様の構成については、ここでの詳しい説明は省略する。
先の第1の実施形態においては、感光ドラム301の長手方向における露光量を補正することで、長手方向における中央部と端部の画像の濃度ムラを抑制することができた。しかし、レーザ素子の出力安定性の観点からレーザ光量を大きく変化させることが出来ないなど、なんらかの画像形成装置の構成の制限で、長手方向における各区間の最大露光量を適正値に補正出来ない場合がある。本実施形態においては、適正な最大露光量の補正値が画像形成装置の露光手段が露光可能な制限値を超える場合においても、長手方向における画像の濃度ムラを抑制する方法について説明する。
[階調補正の説明]
階調補正の方法について説明する。まず、濃度センサ311、312によって、階調補正用のテスト画像としてのトナーパッチの濃度検知を行う。そして、濃度を所定の変換テーブルで色度に換算し、画像形成装置における特有の入出力特性を測定する。そして、入出力特性に応じて作成された補正テーブルに基づき、画像信号の補正を行う。
本実施形態においては、各色20階調のトナーパッチを形成する。そして、各トナーパッチを濃度センサ311、312により検知することで階調補正を行っている。なお、階調補正は階調値にずれが生じたと予測される所定のタイミングで実行される。例えばカートリッジを交換した場合、画像形成装置が設置されている環境が所定以上に変化した場合、所定枚数の画像形成を行った場合、前回の階調補正から所定時間以上の経過した場合、などである。
トナーパッチの濃度測定は、中間転写ベルト205上に形成されたトナーパッチに対し発光素子400から光を照射し、正反射光、及び乱反射光を受光素子401、402で受光することで行う。しかし、中間転写ベルト205の表面性にはムラがあり、耐久が進むとともにその表面性は変化する。トナーパッチを検知する場合には、中間転写ベルト205の表面からの反射光量も含めて検知するため、中間転写ベルト205の表面性のムラや変化はトナーパッチによるトナー濃度測定の誤差要因となる。そこで、中間転写ベルト205の一周に渡ってトナーが付着していない中間転写ベルト205からの反射光量を下地として測定して基準値としてRAMに記憶しておく。次に、トナーパッチからの反射光量を測定して、トナーパッチが形成された位置に対応する中間転写ベルト205の反射光量からの反射光量の低下率を求める。求めた低下率を所定の換算式、または換算テーブルによって、トナーパッチのトナー濃度に換算している。
本実施形態では、各色20階調、各パッチの長さが8mmのトナーパッチを形成する。トナーパッチの副走査方向における長さは、各色間のスペース領域、濃度センサ311、312の調整用トナーパッチ等を足し合わせると930mmである。よって、周長が950mmである中間転写ベルト205の一周内に収まるように、トナーパッチを形成することができる。
トナーパッチを形成する前の準備として、中間転写ベルト205をクリーニングなどを行う(前処理)。そして、中間転写ベルト205の下地を検知する基準値の測定を中間転写ベルト205の一周にかけて行う(測定A)。その後、トナーパッチを中間転写ベルト205上に形成し、トナーパッチの測定を中間転写ベルト205の一周にかけて行う(測定B)。測定が終了すると、再度中間転写ベルト205のクリーニングなどを行う。(後処理)本実施形態では、画像形成速度は190mm/sec、中間転写ベルト205の周長は950mmである。測定A+測定Bで制御時間は約10secを要する。さらに、前処理、後処理を加えると約30secの制御時間となる。
[最大露光量の補正値の算出方法]
次に、図12のフローチャートを用いて、最大露光量プロファイルの算出方法について説明する。S201において、CPU141は色度階調補正の実行要求があるか否かを判断する。階調補正の実施要求がなければ、S213に進んで画像形成装置200をスタンバイ状態とする。階調補正の実行要求があれば、S202に進む。なお、S202〜206は、先の第1の実施形態におけるS103〜S107と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
S207において、CPU141は算出した最大露光量が、画像形成装置における露光量の制限範囲内であるか否かを判断する。制限範囲内である場合は、S208に進む。S208において、CPU141はトナーパッチを形成させ、濃度センサ311、312でトナーパッチを検知させる。そして、S212に進む。
制限範囲外である場合は、S209において、CPU141は最大露光量プロファイルの再算出を行う。つまり、露光量が制限値を超えないように再度露光量の補正を行う。再算出においては、最大露光量プロファイルの中で最大、又は最小となる露光量を、上限値、又は下限値に設定する。S210において、CPU141はトナーパッチを形成させ、濃度センサ311、312でトナーパッチを検知させる。そして、S211において、CPU141は濃度センサ311、312で検知した検知結果の補正を行う。以下、この検知結果の補正について、詳しく説明する。
先の第1の実施形態においては、最大露光量プロファイルを補正する場合に、濃度センサ311、312の検知結果に影響が無いように、第1区間と第15区間の最大露光量に補正は行わなかった。本実施形態においても同様に、第1区間と第15区間の最大露光量に補正は行わない。しかし、濃度センサ311、312の検知結果を、感光ドラム301のこれまでの画像形成を行った環境や、現像ローラ303の当接離間状態で補正したカウント積算値に応じて補正することで、長手方向における画像色度の変化量が小さくなるように補正する。表5は、カウント積算値と色度階調補正量の関係を示している。
例えば、濃度センサ311、312のトナーパッチの検知結果が色度39に相当する濃度であり、その時のカウント積算値が2000だった場合、補正後の色度は39+1.5=40.5となる。濃度センサ311、312による検知結果を、実際の色度よりもプラス側に補正することで、所望の色度よりもプラス側にトナーパッチPの濃度が出ていると補正する。これにより、階調補正としては濃度がマイナス側になるようにするため、画像形成時に実際に作成される画像は色度が小さくなる。なお、表5では色度検知結果が色度39だった場合の補正量しか示していないが、他の色度でも予め設定されたテーブルに従って補正量が算出される。本実施形態においては、最も光量に対して感度が高い色度39について一例として説明した。39以外の色度の補正量は、39の場合より少なくなる。
S211にて検知結果を補正した場合は、補正した検知結果に基づき、S212において、CPU141は画像信号の補正テーブルを更新して、色度階調補正を終了する。S208にて検知結果を補正しなかった場合は、補正していない検知結果に基づき、S212において、CPU141は画像信号の補正テーブルを更新して、色度階調補正を終了する。
色度階調補正が終了すると、S213において、CPU141は画像形成装置200をスタンバイ状態とする。S214において、CPU141は画像形成を行うための印刷ジョブを受信したか否かを判断する。印刷ジョブを受信していない場合は、スタンバイ状態で待機する。印刷ジョブを受信した場合は、S215に進む。以降、S215〜S217は、先の第1の実施形態におけるS108〜S110と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
前述した本実施形態の制御を行った場合と、本実施形態の制御を行わなかった比較例の場合委における、感光ドラム301の長手方向における画像の濃度ムラの比較について説明する。なお、以下[1]〜[7]の条件でサンプルとなる画像を形成し、サンプルとなる画像の長手方向における色度差(記録材と形成した画像の色度差)を比較した。
[1]スキャナユニット207の構成の制限から最大露光量には下限値があり、各区間の最大露光量を0.21μJ以下には出来ない。
[2]記録材は、GFC−081(キヤノン製普通紙A4サイズ)である。
[3]形成する画像は、全面1次色画像(最も光量に対して感度が高い濃度50%。狙いの色度は38)とする。
[4]感光ドラム301の削れ量を示す積算回転数に対応したカウント積算値は2000とする。
[5]ドラムユニット310の補正前の最大露光量は0.30μJとする。
[6]画像形成を行う環境は、30℃80%(絶対水分量は21.7g/m^3)とする。
[7]現像ユニット309の残寿命は0%とする。
上記の条件[1]〜[7]において、補正係数C1〜C4を求める。まず、本実施形態における補正係数C1は、2000/2000=1.0となる。補正係数C2は、補正係数C1が1.0となることから、1.0となる。補正係数C3は、絶対水分量が21.7g/m^3であることから、1.0となる。補正係数C4は、現像ユニット309の残寿命が0%であることから、1.0となる。
これら補正係数と式(1)より、第8区間の最大露光量の補正値Xを求める。
補正値X=0.1×C1×C2×C3×C4=0.1×1.0×1.0×1.0×1.0=0.10
ドラムユニット310の補正前の最大露光量は0.30μJであり、第8区間の最大露光量の補正値Xが0.10μJとなったので、第8区間の最大露光量は0.30−0.10=0.20μJとしたい。しかし、スキャナユニット207の構成上の制限から最大露光量を0.21μJ以下に出来ない。よって、本実施形態においては第8区間を下限値の0.21μJに設定し、第1区間、第15区間は0.30μJのままにして、残りの区間の最大露光量も2次関数で連続的に繋いで最大露光量プロファイルを作成する。
図13に、本実施形態における算出した最大露光量プロファイルと、計算上の理想の最大露光量プロファイルを示す。点曲線Eが計算上の理想の最大露光量プロファイルであり、実曲線Fが本実施形態の最大露光量プロファイルである。実横線は最大露光量の下限値である0.21μJを示している。
点曲線Eにおいては、第8区間の最大露光量が0.20μJとなっているが、実曲線Fはスキャナユニット207の制限を考慮し、最大露光量を0.21μJとして、最大露光量プロファイルを形成している。実曲線Fでは、最大露光量の補正量が足りていないため、濃度センサ311、312によるトナーパッチの検知結果を補正する。ここで、カウント積算値は2000のため、表5よりトナーパッチの検知結果による色度補正量は+1.5となり、この補正された検知結果をもとに、画像信号の補正テーブルを作成し、画像を出力した。
図14は、本実施形態の補正を行った場合の色度プロファイルと、本実施形態の補正を行っていない比較例の色度プロファイルを示した図である。実線Gが本実施形態における色度プロファイル、点線Hが比較例の色度プロファイルである。最大露光量補正値の制限値が無い場合は、長手方向における各区間の最大露光量を点線Hのように所望の値まで変化させれば良い。しかし、最大露光量補正値の制限値があり、長手方向における各区間の最大露光量を所望の値に出来ない場合は、最大露光量の補正とともに濃度センサ311、312の検知結果を補正して、実線Gのように色度プロファイルを補正する。
点線Hの色度プロファイルは、最大露光量の補正量が足りていないため、長手方向の中央部の色度が狙いの色度38より大きくずれてしまっている。実線Gの色度プロファイルは、濃度センサ311、312の検知結果を補正した分、濃度センサ311、312の検知位置に対応する長手方向の端部の色度は38より小さくなってしまっている。しかし、長手方向の中央部の色度は狙いの色度38に近づいている。つまり、長手方向の各領域における最大の色度ずれ量を比較すると、点線Hより実線Gの色度プロファイルの方が小さくできていることがわかる。
このように、画像形成装置の構成の制限などで最大露光量の補正値の制限がある場合でも、長手方向の各領域における最大の色度ずれ量をなるべく小さくすることで、画像全体の色味のすれ量を抑制することができた。
なお、感光ドラム301の表面に静電潜像を形成する光源としてレーザスキャナを採用したが、これに限られるものではなく、例えば光源はLEDでも良い。また、現像剤としてのトナーも帯電性がネガとなるトナーについて説明したが帯電性がポジとなるトナーでも良い。また、中間転写方式の画像形成装置の説明を行ったが、これに限られるものではなく、モノクロの画像形成装置や直接転写方式の画像形成装置でもよい。また、色度による階調補正を説明したが、濃度による階調補正でも良い。