JP2020084844A - 副室式ディーゼル機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】インジェクタから噴射された燃料が副燃焼室内で空気と良好に混合される副室式ディーゼル機関を提供すること。【解決手段】インジェクタ23が燃料を、副燃焼室20内に形成される空気の渦流に対して直交する方向に拡散させて噴射するようにする。【選択図】図2
Description
本発明は、連絡孔によって連通された主燃焼室及び副燃焼室を備えた副室式ディーゼル機関に関する。
例えば特許文献1に示すような、連絡孔によって連通された主燃焼室及び副燃焼室と、副燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタとを備えた副室式ディーゼル機関が広く普及している。上記副室式ディーゼル機関では、ピストンの圧縮行程において、主燃焼室から連絡孔を通って副燃焼室内に空気が流入することで副燃焼室内には空気の渦流が形成され、ピストンが圧縮上死点付近に到達した際に、上記渦流に向かってインジェクタから燃料が円錐形状に噴射される。噴射された燃料は上記渦流によって副燃焼室内で空気と混合されて圧縮自己着火し、これに伴うガス膨張によってピストンを押し下げ仕事を得る。
このとき、エミッションの観点からは、上記着火後に生じた燃焼ガスに含まれるスモークやHCを低減させるため、インジェクタから噴射された燃料は副燃焼室内で空気と均一に混合されるのが好ましい。
しかしながら、上記特許文献1で開示された副室式ディーゼル機関にあっては、インジェクタからの燃料の噴射形状は円錐形状であるため、インジェクタから噴射された燃料の上記渦流に対する投影面積は小さく、副燃焼室内において燃料が充分に拡散されない。そのため、インジェクタから噴射された燃料は副燃焼室内で空気と充分に混合されず、着火後に生じる局所的に過濃な領域や低温の領域で生成されるスモークやHCの量が増大してしまう。
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、インジェクタから噴射された燃料が副燃焼室内で空気と良好に混合される新規且つ改良された副室式ディーゼル機関を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、インジェクタが燃料を、副燃焼室内に形成される空気の渦流に対して直交する方向に拡散させて噴射することによって、上記主たる技術的課題が達成されることを見出した。
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する副室式ディーゼル機関として、連絡孔によって連通された主燃焼室及び副燃焼室と、前記副燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタとを備えた副室式ディーゼル機関において、
前記インジェクタは燃料を、ピストンの圧縮行程において前記主燃焼室から前記連絡孔を通って前記副燃焼室内に流入した空気によって形成される渦流に対して直交する方向に拡散させて噴射する、ことを特徴とする副室式ディーゼル機関が提供される。
前記インジェクタは燃料を、ピストンの圧縮行程において前記主燃焼室から前記連絡孔を通って前記副燃焼室内に流入した空気によって形成される渦流に対して直交する方向に拡散させて噴射する、ことを特徴とする副室式ディーゼル機関が提供される。
好ましくは、前記インジェクタの噴射孔はスリットによって構成される。前記インジェクタの噴射孔は間隔をおいて形成された複数の噴射小孔から構成されてもよい。前記インジェクタから噴射される燃料の噴射中心軸線は、前記渦流の接線方向に対して0乃至90度であるのが良い。好適には、前記インジェクタの噴射孔と対向する前記副燃焼室の断面のうち、前記副燃焼室の内径が最大となる所定断面において、前記副燃焼室の内径をD、前記インジェクタから噴射された燃料の前記渦流に対して直交する方向の幅をdとすると、0.6d≦D≦0.8dである。前記インジェクタには、前記噴射孔が前記渦流の接線方向に対して回動しないようにするための回動防止手段が設けられるのが良い。好適には、前記インジェクタからの燃料の噴射圧は8乃至40MPaである。
本発明の副室式ディーゼル機関においては、インジェクタが燃料を副燃焼室内に形成される空気の渦流に対して直交する方向に拡散させて噴射する。そのため、インジェクタから噴射された燃料の上記渦流に対する投影面積が増大し、噴射された燃料は副燃焼室内で空気と良好に混合される。これにより、着火後に生じる燃焼ガスに含まれるスモークやHCの量が低減され、エミッションが改善されることとなる。
以下、本発明に従って構成された副室式ディーゼル機関の好適実施形態について、添付した図面を参照して、更に詳細に説明する。
図1には、連絡孔によって連通された主燃焼室及び副燃焼室を備えた副室式のディーゼル機関2の構成の一部を断面で示す概略図が示されている。ディーゼル機関2は、シリンダブロック4及びシリンダヘッド6を備えている。
シリンダブロック4の内側には、端面が開放された円筒形状のシリンダ8が形成されており、このシリンダ8内には、クランク10によって往復動させられるピストン12が配置されている。図示の実施形態においては、シリンダヘッド6はシリンダブロック4の上方に載置されており、ピストン12は上下方向に往復動させられる。そして、シリンダブロック4の内側には、シリンダ8の内周面と、ピストン12の頂面と、シリンダヘッド6とによって主燃焼室14が画成される。
シリンダヘッド6には、これがシリンダブロック4と組み合わされたとき、主燃焼室14に新規の空気を送り込むための吸気ポート16及び燃焼室内で生成された燃焼ガスを排出する排気ポート(図示せず)が形成されている。吸気ポート16の出口(つまり主燃焼室14への入口)及び排気ポートの入口(つまり主燃焼室14からの出口)には夫々、所定のタイミングで開閉動するバルブ18が設けられている。シリンダヘッド6には更に、副燃焼室20、及びこれに連通する連絡孔22も設けられている。図1と共に図2(a)乃至(c)も参照して説明すると、図示の実施形態においては、副燃焼室20は全体的に球形状であり、シリンダヘッド6がシリンダブロック4と組み合わされると、副燃焼室20の中心cは主燃焼室14の中心軸oに対して偏心して配置される。連絡孔22は、上方に向かって径方向外側に傾斜して直線状に延びている。連絡孔22における、副燃焼室20に形成された開口22aではない方の開口22bは、シリンダヘッド6の端面に形成されており、シリンダヘッド6がシリンダブロック4と組み合わされると、開口22bは主燃焼室14の上面における径方向中間部に臨み、副燃焼室20と主燃焼室14とが連絡孔22を介して連通される。
図1を参照して説明を続けると、シリンダヘッド6には更に、副燃焼室20内に燃料を噴射するインジェクタ23が設けられている。インジェクタ23は、所謂内開弁式のインジェクタであり、全体的に軸状であって、その内部には軸方向に延びる燃料流路(図示せず)が形成されている。インジェクタ23の軸方向片端面(図示の実施形態においては、下端面)には上記燃料流路から燃料を噴射する噴射孔24が設けられていると共に、軸方向他端部(図示の実施形態においては、上端部)には上記燃料流路に燃料を供給するための口部26が形成されている。インジェクタ23の内部には、図示しないニードル弁が内蔵されており、このニードル弁は、図示しない電磁ソレノイドによりその作動が制御され、図示しないエンジンECUから送られてくる電気信号に基づいて所望の噴射時期で噴射孔24を開閉する。噴射孔24の形状等については後に言及する。図示の実施形態においては、インジェクタ23からの燃料の噴射圧は8乃至40MPaと比較的低圧であってよい。本発明にかかるディーゼル機関においては副室式を採用していることから、直噴式のように高圧(例えば200MPa)で燃料を噴射する必要が無い。そのため、インジェクタ、図示しない燃料ポンプ、後述する燃料通路管、及び図示しない燃料配管等の構造を過剰に堅牢にする必要はなく、噴射装置の製造コストを低く抑えることができる。
インジェクタ23はシリンダヘッド6に挿通され、噴射孔24が副燃焼室20内に露出されると共に、少なくとも口部26を含むインジェクタ23の軸方向他端部がシリンダヘッド6の外側に露出される。そして、口部26には、図示しない固定手段によってシリンダヘッド6に固定された燃料通路管27が接続される。ここで、図1等においては、シリンダ8はシリンダブロック4に一つしか示されていないが、実際には複数個のシリンダ8がシリンダブロック4に形成されており、シリンダ8の数と同数の燃焼室(主燃焼室14及び副燃焼室20)が存在している。つまり、インジェクタ23もシリンダ8の数と同数設置されており、図示しない燃料ポンプにより加圧された燃料は共通の燃料通路管27を介して夫々のインジェクタ23に分配される。
図示の実施形態においては、シリンダヘッド6に挿通されたインジェクタ23は、燃料通路管27によって軸方向に固定されると共に、回動防止手段28によって周方向にも固定されている。図4に示すとおり、回動防止手段28は平面視において全体的にU字形状であって、上下方向に直線状に延びる係合溝30が形成されている。回動防止手段28には更に、上方に突出する直方体形状の係合片32も形成されている。一方、インジェクタ23の軸方向他端部には、図1と共に図5を参照することによって理解されるとおり、断面が略矩形形状であって回動防止手段28の係合溝30に嵌り込む被係合突出部34が設けられている。さらに、燃料通路管27においてインジェクタ23の口部26が接続される部位には、図1と共に図6を参照することによって理解されるとおり、断面が略矩形形状であって回動防止手段28の係合片32が嵌り込む被係合切欠き部36が形成されている。従って、回動防止手段28の係合溝30がインジェクタ23の被係合突出部34と係合すると共に、回動防止手段28の係合片32がシリンダヘッド6に固定された燃料通路管27の被係合切欠き部36と係合することで、インジェクタ23は周方向に固定されることとなる。所望ならば、図7に示すとおり、回動防止手段28´をボルトの如き適宜の締結具でシリンダヘッド6に直接固定することで、インジェクタ23を周方向に固定してもよい。
次に、図2と共に図3を参照して、インジェクタ23からの燃料の噴射について説明する。
本発明のディーゼル機関においては、インジェクタ23は燃料を、ピストン12の圧縮行程において主燃焼室14から連絡孔22を通って副燃焼室20内に流入した空気によって形成される渦流(これを図2(a)中において矢印で示す)に対して直交する方向に拡散させて噴射することが重要である。図示の実施形態においては、インジェクタ23の噴射孔24は、図3(a)に示すとおり、スリットにより構成されており、このスリットが図2(a)において番号36で示す渦流の接線方向に対して垂直、つまり図2(a)にあっては奥行き方向(図2(b)にあっては左右方向)に直線状に延びており、これと同一方向に噴射孔24から噴射された燃料(これを番号38で示す)は拡散する。所望ならば、噴射孔は、図3(b)において番号24´で示すとおり、間隔をおいて形成された複数の噴射小孔から形成されるようにしてもよい。図2に戻って説明を続けると、図示の実施形態においては、インジェクタ23から噴射される燃料の噴射中心軸線ioは渦流の接線方向に対して垂直(つまり90度)であるが、燃料の噴射中心軸線ioは図2(a)において二点鎖線で示す渦流の接線方向36に対して0乃至90度であればよい。燃料の噴射中心軸線ioを渦流の接線方向36に対して、上記角度範囲に設定することで、噴射孔24から噴射された燃料38が副燃焼室20内で渦流によって良好に流され、副燃焼室20内において空気と良好に混合されることとなる。また、図2(b)に示すとおり、噴射孔24と対向する副燃焼室20の断面のうち、副燃焼室20の内径が最大となる所定断面において、副燃焼室20の内径をD、インジェクタ23から噴射された燃料38の渦流に対して直交する方向の幅をdとすると、0.6d≦D≦0.8dであるのが好ましい。このように設定することで、インジェクタ23から噴射された燃料38が副燃焼室20の内壁面に付着するのが防止され、噴射された燃料の燃焼が良好になる。
本発明のディーゼル機関においては、インジェクタ23は燃料を、ピストン12の圧縮行程において主燃焼室14から連絡孔22を通って副燃焼室20内に流入した空気によって形成される渦流(これを図2(a)中において矢印で示す)に対して直交する方向に拡散させて噴射することが重要である。図示の実施形態においては、インジェクタ23の噴射孔24は、図3(a)に示すとおり、スリットにより構成されており、このスリットが図2(a)において番号36で示す渦流の接線方向に対して垂直、つまり図2(a)にあっては奥行き方向(図2(b)にあっては左右方向)に直線状に延びており、これと同一方向に噴射孔24から噴射された燃料(これを番号38で示す)は拡散する。所望ならば、噴射孔は、図3(b)において番号24´で示すとおり、間隔をおいて形成された複数の噴射小孔から形成されるようにしてもよい。図2に戻って説明を続けると、図示の実施形態においては、インジェクタ23から噴射される燃料の噴射中心軸線ioは渦流の接線方向に対して垂直(つまり90度)であるが、燃料の噴射中心軸線ioは図2(a)において二点鎖線で示す渦流の接線方向36に対して0乃至90度であればよい。燃料の噴射中心軸線ioを渦流の接線方向36に対して、上記角度範囲に設定することで、噴射孔24から噴射された燃料38が副燃焼室20内で渦流によって良好に流され、副燃焼室20内において空気と良好に混合されることとなる。また、図2(b)に示すとおり、噴射孔24と対向する副燃焼室20の断面のうち、副燃焼室20の内径が最大となる所定断面において、副燃焼室20の内径をD、インジェクタ23から噴射された燃料38の渦流に対して直交する方向の幅をdとすると、0.6d≦D≦0.8dであるのが好ましい。このように設定することで、インジェクタ23から噴射された燃料38が副燃焼室20の内壁面に付着するのが防止され、噴射された燃料の燃焼が良好になる。
本発明の副室式ディーゼル機関においては、インジェクタ23が燃料を副燃焼室20内に形成される空気の渦流に対して直交する方向に拡散させて噴射する。そのため、インジェクタ8から噴射された燃料38の上記渦流に対する投影面積が増大し、噴射された燃料38は副燃焼室20内で空気と良好に混合される。これにより、着火後に生じる燃焼ガスに含まれるスモークやHCの量が低減され、エミッションが改善されることとなる。
以上本発明のディーゼル機関について添付図面を参照して詳述したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。例えば、本実施形態においては、シリンダヘッドはシリンダブロックの上面に載置されてピストンは上下方向に往復動しているが、これに替えて、シリンダヘッドをシリンダブロックの横面に載置してピストンが横(水平)方向に往復動するようにしてもよい。
2:ディーゼル機関
12:ピストン
14:主燃焼室
20:副燃焼室
22:連絡孔
23:インジェクタ
24:噴射孔
28:回動防止手段
12:ピストン
14:主燃焼室
20:副燃焼室
22:連絡孔
23:インジェクタ
24:噴射孔
28:回動防止手段
Claims (7)
- 連絡孔によって連通された主燃焼室及び副燃焼室と、前記副燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタとを備えた副室式ディーゼル機関において、
前記インジェクタは燃料を、ピストンの圧縮行程において前記主燃焼室から前記連絡孔を通って前記副燃焼室内に流入した空気によって形成される渦流に対して直交する方向に拡散させて噴射する、ことを特徴とする副室式ディーゼル機関。 - 前記インジェクタの噴射孔はスリットによって構成される、請求項1に記載の副室式ディーゼル機関。
- 前記インジェクタの噴射孔は間隔をおいて形成された複数の噴射小孔から構成される、請求項1に記載の副室式ディーゼル機関。
- 前記インジェクタから噴射される燃料の噴射中心軸線は、前記渦流の接線方向に対して0乃至90度である、請求項1乃至3のいずれかに記載の副室式ディーゼル機関。
- 前記インジェクタの噴射孔と対向する前記副燃焼室の断面のうち、前記副燃焼室の内径が最大となる所定断面において、前記副燃焼室の内径をD、前記インジェクタから噴射された燃料の前記渦流に対して直交する方向の幅をdとすると、0.6d≦D≦0.8dである、請求項1乃至4のいずれかに記載の副室式ディーゼル機関。
- 前記インジェクタには、前記噴射孔が前記渦流の接線方向に対して回動しないようにするための回動防止手段が設けられる、請求項1乃至5のいずれかに記載の副室式ディーゼル機関。
- 前記インジェクタからの燃料の噴射圧は8乃至40MPaである、請求項1乃至6のいずれかに記載の副室式ディーゼル機関。
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