JP2020084358A - 仮撚中空マルチフィラメント糸、その製造方法、および織編物 - Google Patents

仮撚中空マルチフィラメント糸、その製造方法、および織編物 Download PDF

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Abstract

【課題】織編物とした場合に深みのある高発色性と防透性とが両立された、仮撚中空マルチフィラメント使用布帛を提供する。【解決手段】無機微粒子とポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる単繊維で構成される仮撚中空マルチフィラメント糸である。前記単繊維は、無機微粒子を0〜5質量%含有し、単繊維繊度が1.0〜3.0dtexであり、かつ、仮撚中空マルチフィラメント糸は、捲縮率が15〜50%であり、トルクが30〜70T/Mであり、交絡数が40〜100(個/m)である。【選択図】なし

Description

本発明は、織編物とした場合に、深みのある高発色性と防透性とを両立する仮撚中空マルチフィラメント糸、その製造方法、および織編物に関する。
ポリエステル繊維は寸法安定性又は耐久性などに優れるため、衣料用、産業用又は医療用のような幅広い分野において、好適に用いられる。そして、衣料分野に用いられる織編物においては、市場では軽量化及び薄地化が求められている。それに伴い、薄くても中が透けて見えず、汗などで濡れた場合でも下着等が透けて見えないという性能(防透性)が必要とされている。
防透性に優れる織編物を得るための繊維として、無機微粒子(例えば、酸化チタン微粒子)を含有し、中空部を有するポリエステル繊維が知られている(例えば、特許文献1)。
特開2016−113714号公報
しかしながら、防透性をよりいっそう向上させようとして、繊維に無機微粒子をより高濃度に含有させると、繊維の表面に多くの無機微粒子が露出する。こうした露出した無機微粒子は紡糸時にガイド摩耗などを引き起こすため、製糸性を低下させてしまうとともに、多くの無機微粒子が白色微粒子であるために、発色性が劣るという欠点がある。そして、発色性を高めるために、染色時の染料使用量を増加させると、糸条が劣化しやすくなるという問題がある。
つまり、無機微粒子の含有量が少ないブライト糸を使用すると透けやすくなり、高い防透性を得ようとして無機微粒子を高濃度で含有させると発色性が劣るという、二律背反が存在するものであった。すなわち、従来技術においては、無機微粒子の含有量が少ない場合であっても、優れた発色性と防透性とを両立する仮撚中空マルチフィラメント糸については得られていなかった。
本発明は、このような従来技術の欠点を解消するものであり、無機微粒子の含有量が十分に低減されても織編物とした場合に防透性に優れ、且つ少ない染料でも高い発色性を得ることが出来る仮撚中空マルチフィラメント糸を使用した布帛を提供することを目的とする。
すなわち、本発明者らは、該仮撚条件と仮撚中空マルチフィラメント糸における中空率との関係と、防透性に与える影響について詳細に検討したところ、従来の知見に反して、通常用いない緩やかな仮撚条件にて仮撚加工を行った仮撚中空マルチフィラメント糸は、捲縮率、トルクおよび交絡数が同時に特定範囲となり、この仮撚中空マルチフィラメント糸を含む織編物では、光の反射及び屈折が効果的に発現し、防透性に優れるという知見を見出した。そして、これにより、無機微粒子の含有量が十分に低減されても、織編物とした場合の防透性に優れ、さらに高発色性がいっそう向上された仮撚中空マルチフィラメント糸を得ることができるという知見を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記を要旨とする。
(1)無機微粒子とポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる単繊維で構成される仮撚中空マルチフィラメント糸であって、前記単繊維は、無機微粒子を0〜5質量%含有し、単繊維繊度が1.0〜3.0dtexであり、かつ、仮撚中空マルチフィラメント糸は、捲縮率が15〜50%であり、トルクが30〜70T/Mであり、交絡数が40〜100(個/m)であることを特徴とする、仮撚中空マルチフィラメント糸。
(2)(1)の仮撚中空マルチフィラメント糸の製造方法であって、
単繊維繊度が1.0〜3.0dtexである単繊維で構成される中空マルチフィラメント糸に対し、仮撚温度130〜170℃、かつ仮撚速度400〜600m/分の条件で仮撚加工を施すことを特徴とする、仮撚中空マルチフィラメントの製造方法。
(3)(1)の仮撚中空マルチフィラメント糸を含むことを特徴とする、織編物。
本発明によれば、特定の仮撚条件で仮撚加工を施すことにより、捲縮率、トルクおよび交絡数が同時に特定範囲となり、この仮撚中空マルチフィラメント糸を含む織編物では、光の反射及び屈折が効果的に発現し、無機微粒子の含有量が低減されても、織編物とした場合に防透性および高発色性に優れる仮撚中空マルチフィラメント糸を提供することができる。さらに、本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸は、無機微粒子の含有量が十分に低減されるために製糸性に優れる。さらに、本発明によれば、防透性と高発色性に優れる織編物を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
(仮撚中空マルチフィラメント糸)
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸は、単繊維から構成されるものである。単繊維は無機微粒子を0〜5質量%、およびポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなるものである。本発明の仮撚中空マルチフィラメントは、いわゆるブライト糸ともいう。無機微粒子としては、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム又は酸化亜鉛の微粒子などが挙げられ、特に限定されるものではないが、なかでも酸化チタン微粒子は。防透性、又は汎用性に優れ、コストメリットも高いため好ましい。
酸化チタン微粒子は、酸化チタンからなる微粒子であれば特に限定されないが、ルチル型であってもよいしアナターゼ型であってもよい。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸において、捲縮率は、15〜50%の範囲であり、好ましくは20〜40%であり、より好ましくは20〜35%である。捲縮率が25%未満であると、布帛にした場合、ストレッチ性が劣り好ましくないという問題があり、50%を超えると、ストレッチ性が過度に高くなり、さらに捲縮率が過度に高くなるために、光の反射及び屈折が適切に行われず防透性に劣り、発色性が十分に向上されないという問題がある。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸の捲縮率は、下記(I)から算出した数値である。
捲縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100 (I)
A1:糸条に90.91×10−3cN/dtexの張力を掛けながらかせ取りし、かせに1.47×10−4cN/dtexの荷重をかけた状態で30分沸水処理した後、24時間放置した後のかせ長である。
A0:A1測定後、荷重を1.46×10−3cN/dtexから4.4×10−2cN/dtexに変更したときのかせ長である。
捲縮率は、例えば仮撚加工時の条件(例えば、ヒーター温度、オーバーフィード率、仮撚係数)を制御することで、調整することができる。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸において、トルクは、30〜70(T/M)であり、好ましくは35〜65(T/M)であり、より好ましくは40〜50(T/M)。トルクが30(T/M)未満であると、交絡数との兼ね合いもあるが、トルク数が低いと捲縮特性が低下する方向でありストレッチ性に欠け好ましくない。一方で、70(T/M)を超えると、製編織工程でのビリが発生する等取扱いに問題があり好ましくないばかりか、トルクが過度に高くなるために、光の反射及び屈折が適切に行われず防透性に劣り、発色性が十分に向上されないという問題がある。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸において、交絡数は、40〜100(個/m)であり、好ましくは50〜90(個/m)である。交絡数が40(個/m)未満であると、フィラメント間の集束性が低下することから、パッケージからの解除性に問題があり好ましくない。一方で100(個/m)を超えるとフィラメント間の集束性が高過ぎて、織編物にした場合、交絡部が虫食い状態に見え、発色性が十分に向上されないばかりか、品位面で問題があり好ましくないという問題がある。
単繊維における無機微粒子の含有量は0〜5質量%であり、0〜3質量%であることが好ましく、0〜2質量%であることがより好ましい。本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸においては、後述するように中空部を有する構造を有し、且つ、上述のような特定の物性(捲縮率、トルク、交絡数)を同時に充足するため、光の反射及び屈折が効果的に発現し、発色性を高めるために無機微粒子の含有量が低減されても、織編物とした場合に防透性に優れるものとなる。さらに、光の反射及び屈折が効果的に発現し、高発色性にいっそう優れる。さらに、無機微粒子の含有量が十分に低減されているために、紡糸操業性又は工程通過性にも優れる。また、無機微粒子の含有量が少ないほど、捲縮率、トルク、交絡数を好ましい範囲としやすくなる。
本発明者らは、上記のように、捲縮率、トルク、交絡数の何れも、同時に特定範囲とすることで、染色時の染料の使用量を少なくした場合でも発色性に優れるとともに、酸化チタン微粒子の含有量を低減させても防透性に優れる仮撚中空マルチフィラメント糸が得られることを見出し、本発明を完成させたのである。
本発明におけるポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、又はシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリエステルからなる樹脂が挙げられる。または、これらのポリエステルに付加部分としてイソフタル酸、スルホイソフタル酸成分、又はジオール成分(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、又はジエチレングリコール)を共重合したもの、又は、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの化合物であって、土壌中又は水中に長時間放置されると、微生物の作用によって、二酸化炭素と水とに分解されるポリエステル)などが挙げられる。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸を構成する単繊維の繊度は1.0〜3.0dtexであり、1.5〜2.5dtexであることが好ましい。単糸繊度が3.0dtex以下であると、例えばフィラメント数を増加させた場合に総繊度が太くなり過ぎることがなく、織編物とした場合に薄地化が可能となることに加え、織編物表面のカバー性が向上する。一方、1.0dtex以上であると、好ましい形状の中空部を形成することができるため防透性及び強度に優れる。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸は、全単繊維中において、中空率が3%以上である単繊維の本数が3.0%以上であることが好ましい。これにより、織編物とした場合に、染料の使用量が少ない場合であっても発色性に優れるとともに、酸化チタン微粒子の含有量が少ない場合であっても防透性がいっそう向上することができる。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸は、中空部を有する単繊維からなる。具体的には、仮撚加工後に、中空率が3%以上である単繊維の本数が、全単繊維の本数のうち3.0%以上であることが好ましく、全単繊維の本数のうち4.0%以上の割合で含まれることがより好ましい。捲縮率、トルクおよび交絡数を同時に特定の範囲とするような仮撚加工が施され、かつ特定の中空率で中空部が維持(残存)されることで、無機微粒子の含有量を過度に高めずとも、織編物を構成する単繊維間での十分な空隙と単繊維の中空部における空気層での光の反射及び屈折現象がいっそう適切に発現させ得ることから、発色性および防透性に顕著に優れる仮撚中空マルチフィラメント糸とすることができる。さらに、こうした織編物においては、単繊維および織編物における十分な空気層が存在するため、遮熱性(涼感性)にも優れたものとなる。なぜなら、空気は熱伝導率が非常に低く、さらに光の反射率を高めることにより透過率が低くなるからである。
仮撚中空マルチフィラメント糸を構成する単繊維における中空部の個数は特に限定されず、1個であってもよいし複数個であってもよい。中空部の個数が1個であると、紡糸性がより良好となる。また、強度および防透性に優れる観点から、中空部は繊維断面の中心部に配されることが好ましい。中空部の個数が複数個であると、空気層が多数存在することにより、防透性及び遮熱性が向上するとともに、仮撚加工後の中空率を制御しやすいという利点がある。
仮撚中空マルチフィラメント糸を構成する単繊維の形状は特に限定されず、丸断面であってもよいし、三角形、四角形又は多葉形状などのような異形断面であってもよい。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸の伸度は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜35%であることが好ましい。
仮撚中空マルチフィラメント糸を構成する単糸は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の添加剤(例えば、着色剤、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、又は香料)を含有していてもよい。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸は、構成繊維である全単繊維のうち、ある一定の中空部を有する単繊維の本数の割合が特定範囲であることが好ましい。これにより本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸を織編物とした場合に、単繊維中に空気層が十分に保持されるため、前述のように防透性及び遮熱性が顕著に向上する。そして、織編物とした場合の空気層を十分に保持し太陽光の拡散反射効果を高めるためには、仮撚中空マルチフィラメント糸のフィラメント数は多いほうが好ましい。具体的には、フィラメント数が10〜200本であることが好ましく、20〜120本であることがより好ましい。フィラメント数が10本以上であると中空部の合計が大きくなるため、防透性又は遮熱性により優れる。一方、フィラメント数が200本以下であると仮撚中空マルチフィラメント糸の強度が弱すぎることがなく、織編物とした場合に、摩擦時にピリング又は単糸切れに起因する毛羽などのような欠陥を抑制できる。
(仮撚中空マルチフィラメント糸の製造方法)
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸の製造方法は、特定の中空マルチフィラメント糸を特定条件下、仮撚加工するものである。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸の原糸となる中空マルチフィラメント糸は、前述のように、単繊維が無機微粒子を0〜5質量%、およびポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなるものである。また、前記中空マルチフィラメント糸を構成する単繊維の繊度は1.0〜3.0dtexであることが好ましい。
原糸となる中空マルチフィラメント糸を構成する単繊維の中空率は4〜30%が好ましく、5〜15%であることがより好ましい。仮撚前の単繊維の中空率が4%以上であると、仮撚後の単繊維においても十分な中空部(空気層)が存在することに起因して、防透性がより高められる。また、中空率が30%以下であると、仮撚加工を施した場合に中空部が過度に潰れることを抑制できる。
本明細書において、単繊維の中空率は、以下のように測定できる。中空マルチフィラメント糸、又は仮撚中空マルチフィラメント糸の単繊維横断面を、光学顕微鏡を用いて倍率345倍にて断面写真を撮影し、この断面写真から画像処理により、全体の面積と中空部の面積を測定し、全体の面積に対する中空部の面積を算出する。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸の製造方法は、上記の中空マルチフィラメント糸を仮撚温度130〜170℃(好ましくは140〜160℃)、かつ仮撚速度400〜600m/分(好ましくは450〜550m/分)の条件で仮撚加工する。
仮撚加工時の温度が、130℃未満であると得られた加工糸の熱収縮が高くなり布帛にした場合、収縮度合いが不安定になることから、寸法安定性に欠け好ましくない、170℃を超えると、上記の捲縮率、トルクおよび交絡数を特定の範囲とすることが困難となるばかりか、部分的に融着したり強度低下による切れ毛羽を誘発したりする可能性があり好ましくない。
仮撚加工時の速度が、400m/分未満であると生産量が少なくなるため、加工コストが高くなる、600m/分を超えると、上記の捲縮率、トルクおよび交絡数を特定の範囲とすることが困難となるばかりか、糸切れや毛羽などを誘発しやすく加工操業性や品質に問題があるため好ましくない。
通常は、衣料用途などにおいて織編物に嵩高性を付与するためのマルチフィラメント糸の仮撚加工条件については、例えば仮撚加工温度は190〜210℃程度であり、仮撚速度は1000〜1200m/分程度であることが好ましい。なぜなら、これら範囲の下限以下となると嵩高性が不十分となるためである。しかし、本発明においては上述のように、通常の仮撚加工では用いない緩やかな条件にて仮撚加工を施し、捲縮率、トルクおよび交絡数を同時に特定の範囲とすることができ、前述のように、無機微粒子の含有量を過度に高めずとも、織編物を構成する単繊維間での十分な空隙と単繊維の中空部における空気層での光の反射及び屈折現象がいっそう適切に発現させ得る、発色性および防透性の何れも顕著に優れる仮撚中空マルチフィラメント糸とすることができる。さらに、本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸は、全単繊維のうち、ある一定の中空部を有する単繊維の本数の割合が好ましい範囲であると防透性及び遮熱性がいっそう向上する。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸の製造方法においては、その他の仮撚加工条件としては、本発明の効果を損なわない範囲で特に限定されないが、例えば、延伸糸を仮撚原糸とする場合には、延伸倍率が0.9〜1.2倍が好ましく、1.0〜1.1倍がより好ましい。また、延伸糸の場合は、オーバーフィード率が−2〜5%であることが好ましい。また、加撚張力は延伸繊度の1/20〜1/5(g)が好ましく、解撚張力/加撚張力で表される加撚解撚比は、1.5〜3.0程度が好ましい。
(織編物)
本発明の織編物は、本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸を含む。本発明の織編物は、防透性に顕著に優れる。本発明の織編物は、本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸を30質量%以上の混用率で含むことが好ましく、50質量%以上の混用率で含むことがより好ましい。混用率が30質量%以上であると、高発色性、高堅牢度性を得ることが出来る
なお混用の方法としては、混繊、混紡、交撚、交織又は交編が挙げられる。
本発明の織編物において、仮撚中空マルチフィラメント糸を用いる箇所は特に限定されず、表面及び裏面のうち何れに使用してもよい。
本発明の織編物が織物の場合、その組織の具体例としては、平織、綾織、朱子織、又は絡み織が挙げられる。織物密度としては、経糸密度が80本/2.54cm以上であることが好ましく、緯糸密度が50本/2.54cm以上であることが好ましい。経糸密度、又は緯糸密度がこの範囲であると、織物中の構成繊維の間の空隙が過度に多くならず、防透性により優れる。
本発明の織編物が編物の場合、その組織の具体例としては、カノコ、フライス又はスムースが上げられる。編地密度としては、(2.54cmあたりのコース数)×(2.54cmあたりのウェール数)の値が1000以上であることが好ましい。編地密度が1000以上であると、複数の構成繊維の間の空隙が過度に多くならず、防透性又は遮熱性により優れる。
本発明の織編物が織物の場合、1100〜2200のカバーファクターを有することが好ましい。また、本発明の織編物が編地の場合、15〜50のカバーファクターを有することが好ましい。カバーファクターがこうした範囲であると、厚手となることなく、良好な防透性を発現することができる。
カバーファクター(CF)は、織物の場合は下記式(II)によって算出され、編物の場合は下記式(III)によって算出される。
CF=WAD×√DT+WED×√DT (II)
CF=CD×√DT+WD×√DT (III)
上記式中の略語は、以下のものを示す。
DT:マルチフィラメント糸の繊度(dtex)
WAD:経糸密度(本/2.54cm)
WED:緯糸密度(本/2.54cm)
CD:コース密度(本/2.54cm)
WD:ウェール密度(本/2.54cm)
本発明の織編物は、30〜300g/mの目付けを有することが好ましい。目付けがこうした範囲であると、厚手となることなく、良好な防透性を発現することができる。
本発明の仮撚中空マルチフィラメント糸を含む織編物のWI値は、19以下が好ましく、16以下がより好ましく、14以下がいっそう好ましく、12以下であることが特に好ましい。該WI値は、中空マルチフィラメント糸及び仮撚中空マルチフィラメント糸の中空率、酸化チタン微粒子の含有量、仮撚加工条件などを調整することにより適宜設定することができる。
後述するように、WI値は防透性の指標であり、この値が低いほど防透性に優れることを示す。なお、WI値の求め方は、実施例にて後述する。
本発明の織編物は防透性に顕著に優れ、さらに遮熱性及び風合いも良好である。そのため、一般衣料用途のみならず、水着などのスポーツ用途、ブラウスなどのオフィス用ユニフォーム用途、又は白衣などの医療用途において、特に好適に用いられる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
なお、各々の物性の測定方法又は評価方法は以下の通りである。
<WI値(防透性)>
測定対象である織編物を、マクベス社製MS−2020型分光光度計を使用し、視野2°の測色条件で、試料の裏面に白板および黒板を設置したときのWI(Lab)の差について、湿潤時試料(WIw)及び乾燥時試料(WId)で測色し、両者の差(WIw−WId)をWIとした。
なお、乾燥時試料とは、織編物を、20℃かつ65%RHの環境下で24Hrs調整した試料である。湿潤時試料とは、織編物を、20℃かつ65%RHの環境下で24Hrs調整した試料に対し、この試料と同質量の水分を含ませた試料である。
<中空率>
中空マルチフィラメント糸、又は仮撚中空マルチフィラメント糸の単繊維横断面を、光学顕微鏡を用いて倍率345倍にて断面写真を撮影し、この断面写真から画像処理により、全体の面積と中空部の面積を測定し、全体の面積に対する中空部の面積を算出した。
<全単繊維における、中空率が3%以上である単繊維の割合>
上記のように全単繊維における中空率を算出し、中空率が3%以上である単繊維の本数をカウントした。そして、全単繊維における、中空率が3%以上である単繊維の割合を、下記式により求めた。
割合(%)={中空率が3%以上である単繊維の本数/全単繊維本数}×100
<捲縮率>
仮撚中空マルチフィラメント糸の捲縮率は、下記(I)から算出した。
捲縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100 (I)
A1:糸条に90.91×10−3cN/dtexの張力を掛けながらかせ取りし、かせに1.47×10−4cN/dtexの荷重をかけた状態で30分沸水処理した後、24時間放置した後のかせ長である。
A0:A1測定後、荷重を1.46×10−3cN/dtexから4.4×10−2cN/dtexに変更したときのかせ長である。
<発色性>
織編物において、目視確認し下記基準で評価した。
○:深みのある色合いで、発色性に優れている。
×:発色性に劣っている。
<トルク>
以下のようにして測定を行った。先ず、試料(仮撚糸)が旋回しないように0.0294(cN/dtex)の荷重をかけ、試料長200cmを採取した。次に、採取した試料の両端間の距離を2cmにしてほぼ平行に把持し、中心部(100cmの所)に0.00294(cN/dtex)の荷重をかけてV字型にして固定した。次いで、荷重を外してV字型下部をテンションフリーの状態にした。このとき、試料の残留トルクによる旋回が発生するので、その旋回が静止するまで放置した。旋回が静止した後、その旋回数を検撚機にて測定し、1メートル当たりの撚数をトルク(T/M)として算出した。
<交絡数>
「JIS L1013:2010 化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.15 交絡度」に記載の方法で交絡度を測定し、1m当たりの交絡数を算出することにより求めた。
実施例1〜3、比較例1、2(中空マルチフィラメント糸の製造)
ポリエステル樹脂(PET樹脂、極限粘度:0.65)と酸化チタン微粒子とを、酸化チタン微粒子の含有量が表1に示す通りとなるように溶融混合し、樹脂組成物とした。この樹脂組成物を、中空用紡糸口金を用いて温度295℃で紡糸し、引取速度3000m/分で引き取って、同心円状の中空マルチフィラメント糸(170dtex/72フィラメント)を得た。中空マルチフィラメント糸の紡糸時に切糸はなく、製糸性は良好であった。
(仮撚中空マルチフィラメント糸の製造)
上記のようにして得られた中空マルチフィラメント糸に対して、村田機械株式会社製の仮撚機「ベルト式33H仮撚機」を用い、表1に示した条件で仮撚加工を施し、実施例1〜3、比較例1、2の仮撚中空マルチフィラメント糸を得た。
(織物の製造)
上記のようにして得られた仮撚中空マルチフィラメント糸170dtex72フィラメントを経糸及び緯糸に配し、実施例1〜3、比較例1、2の織物を得た(綾組織、経糸密度:108本/2.54cm、緯糸密度:59本/2.54cm)。
この織物に対して、常法に従って精練し、下記処方にて温度130分で30分間染色を行った。
染料 UVITEX EBF:0.8%omf
助剤 ニッカサンソルトSN−130:0.5g/l
酢酸:0.2ml/l
染色後、仕上げ加工を行った。
実施例、比較例にて得られた評価を表1にまとめて示す。
実施例1〜3で得られた仮撚中空マルチフィラメント糸は、特定の仮撚条件で仮撚加工を施すことにより、捲縮率、トルクおよび交絡数が同時に特定範囲となった。この仮撚中空マルチフィラメント糸を含む織編物では、光の反射及び屈折が効果的に発現し、無機微粒子の含有量が低減されても、織編物とした場合に防透性および高発色性に優れるものであった。

Claims (3)

  1. 無機微粒子とポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物からなる単繊維で構成される仮撚中空マルチフィラメント糸であって、
    前記単繊維は、無機微粒子を0〜5質量%含有し、単繊維繊度が1.0〜3.0dtexであり、かつ、仮撚中空マルチフィラメント糸は、捲縮率が15〜50%であり、トルクが30〜70T/Mであり、交絡数が40〜100(個/m)であることを特徴とする、仮撚中空マルチフィラメント糸。
  2. 請求項1に記載の仮撚中空マルチフィラメント糸の製造方法であって、
    単繊維繊度が1.0〜3.0dtexである単繊維で構成される中空マルチフィラメント糸に対し、仮撚温度130〜170℃、かつ仮撚速度400〜600m/分の条件で仮撚加工を施すことを特徴とする、仮撚中空マルチフィラメントの製造方法。
  3. 請求項1に記載の仮撚中空マルチフィラメント糸を含むことを特徴とする、織編物。
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