JP2020084107A - ハロリン酸塩蛍光体及び発光装置 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、耐久性を改善したハロリン酸塩蛍光体及び発光装置を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様は、下記式(I)で表される組成を含む、ハロリン酸塩蛍光体である。
(Sr1−x−yCaxEuy)5(PO4)3Cl (I)
(式(I)中、x、yは、0.2≦x≦0.5、0.04<y≦0.2を満たす数である。)
ハロリン酸塩蛍光体は、下記式(I)で表される組成を含み、下記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
(Sr1−x−yCaxEuy)5(PO4)3Cl (I)
(式(I)中、x、yは、0.2≦x≦0.5、0.04<y≦0.2を満たす数である。)
ハロリン酸塩蛍光体の製造方法は、ハロリン酸塩の組成を構成する各元素を含む化合物を原料とし、化合物中の各元素が式(I)で表される組成となるように各化合物を混合した原料混合物を焼成することによって、式(I)で表される組成を含む蛍光体を製造することができる。原料は、例えばSrを含む化合物、Caを含む化合物、Euを含む化合物、Pを含む化合物、Clを含む化合物が挙げられる。化合物は、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸水素塩、リン酸塩、塩化物が挙げられる。化合物は、水和物の形態であってもよい。空気中での安定性がよく、加熱により容易に分解し、目的とする組成以外の元素が残留しにくく、残留不純物元素による発光強度の低下を抑制しやすいため、Srを含む化合物、Caを含む化合物、Euを含む化合物は、酸化物、炭酸塩が好ましい。また、ハロリン酸塩の組成を構成する元素で構成されている化合物であることから、Caを含む化合物、Caを含む化合物、Euを含む化合物は、塩化物、リン酸塩であってもよい。
原料混合物は、フラックスを含んでいてもよい。原料混合物がフラックスを含むことで、原料間の反応がより促進され、さらには固相反応がより均一に進行するために粒径が大きい焼成物を製造することができる。例えば、焼成物を得るための熱処理が1000℃以上1300℃以下の温度範囲であり、この範囲の温度でフラックスとしてハロゲン化物等を用いた場合には、ハロゲン化物の液相の生成温度とほぼ同じであるため、原料間の固相反応がより均一に進行すると考えられる。フラックスとして用いるハロゲン化物としては、希土類金属、アルカリ金属の塩化物、フッ化物等を利用できる。フラックスは、フラックスに含まれる陽イオンの元素比率を得たい焼成物の組成になるように調節して蛍光体の原料の一部としてフラックを加えることもできるし、得たい焼成物の組成になるように各原料を加えた後、さらに添加する形でフラックスを加えることもできる。
原料混合物は、SiC、石英、アルミナ、BN等の坩堝やボートに載置して、炉内で焼成する。原料混合物を焼成することによって、焼成物の粉末が得られる。
焼成物は、粉砕、分散、固液分離、乾燥等の後処理を行ってもよい。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーションなどの工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーターなどの工業的に通常用いられる装置により行うことができる。焼成物に必要に応じて後処理を行い、粉末状の蛍光体を製造することができる。
ハロリン酸塩を含む蛍光部材を利用した発光装置について説明する。本開示に係る発光装置は、式(I)で表される組成を含むハロリン酸蛍光体を含む蛍光部材と、380nm以上450nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子を含む。
光源には発光素子を用いることができる。発光素子は、蛍光体を効率よく励起するために、発光ピーク波長が、好ましくは390nm以上440nm以下の範囲内であり、より好ましくは400nm以上430nm以下の範囲内である。発光素子を励起光源として用いることにより、発光素子からの光と蛍光体からの蛍光との所望の色温度又は色調を有する混色光を発する発光装置を構成することができる。
第一蛍光体
蛍光部材は、式(I)で表される組成を含むハロリン酸塩蛍光体を第一蛍光体とし、この第一蛍光体とは発光ピークの波長範囲がそれぞれ異なる第二蛍光体及び第三蛍光体を含んでいてもよい。第一蛍光体は、380nm以上450nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子から発せられる光によって、発光スペクトルにおいて450nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する青色光に変換された光を放出する。蛍光部材中に含まれる式(I)で表される組成を含むハロリン酸塩蛍光体は、発光装置の発光スペクトルにおいて、発光装置から発せられる混色光の発光スペクトルを基準光源の発光スペクトルに近づけることによって、発光装置の演色性を向上させることができる。
蛍光部材は、500nm以上600nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第二蛍光体をさらに含むことが好ましい。第二蛍光体は、βサイアロン系蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体、ハロゲンケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、及び硫化物系蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることが好ましい。蛍光部材は、500nm以上600nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する2種以上の第二蛍光体を含んでいてもよい。第二蛍光体は、380nm以上450nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子から発せられる光によって、発光スペクトルにおいて500nm以上600nmの範囲内に発光ピーク波長を有する緑色光に変換された光を放出する。蛍光部材中に含まれる第二蛍光体によって、発光装置の演色性を向上させることができる。
Si6−zAlzOzN8−z:Eu (IIa)
(式(IIa)中、zは、0<z<4.2を満たす数である。)蛍光体を表す組成中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
Ln3Al5−pGapO12:Ce (IIb)
(式(IIb)中、Lnは、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、pは、0≦p≦3を満たす数である。)
M1 8MgSi4O16Ha2:Eu (IIc)
(式(IIc)中、M1は、Ca、Sr、Ba及びZnからなる選択される少なくとも1種の元素であり、Haは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
M2 2SiO3:Eu (IId)
(式(IId)中、M2は、Ba、Sr、Ca及びMgからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
M3Ga2S4:Eu (IIe)
(式(IIe)中、M3は、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
蛍光部材は、620nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第三蛍光体をさらに含むことが好ましい。第三蛍光体は、フッ化物系蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、窒化物系蛍光体、及び硫化物系蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることが好ましい。蛍光部材は、620nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する2種以上の第三蛍光体を含んでいてもよい。第三蛍光体は、380nm以上450nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子から発せられる光によって、発光スペクトルにおいて620nm以上670nmの範囲内に発光ピーク波長を有する赤色光に変換された光を放出する。蛍光部材中に含まれる第二蛍光体によって、発光装置の演色性を向上させることができる。
A2[M4 1−aMnaF6] (IIIa)
(式(IIIa)中、Aは、アルカリ金属及びアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素又はイオンであり、M4は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、aは、0.01<a<0.2を満たす数である。)
(i−j)MgO・(j/2)Sc2O3・kMgF2・mCaF2・(1−n)GeO2・(n/2)M5 2O3:uMn (IIIb)
(式(IIIb)中、M5は、Al、Ga及びInからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、i、j、k、m、n及びvは、2≦i≦4、0<k<1.5、0<u<0.05、0≦j<0.5、0≦m<1.5、及び0<n<0.5を満たす数である。)
(Ca1−b−cSrbEuc)AlSiN3 (IIIc)
(式(IIIc)中、b及びcは、0≦b≦1.0、0<c<1.0、及びb+c<1.0を満たす数である。)
M6 dM7 eM8 fAl3−gSigNh (IIId)
(式(IIId)中、M6は、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、M7は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M8は、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、d、e、f、g及びhは、それぞれ0.80≦d≦1.05、0.80≦e≦1.05、0.001<f≦0.1、0≦g≦0.5、3.0≦h≦5.0を満たす数である。)
(Ca1−s−t−vSrsBatEuv)2Si5N8 (IIIe)
(式(IIIe)中、s、t及びvは、それぞれ0≦s≦1.0、0≦t≦1.0、0<v<1.0、及びs+t+v≦1.0を満たす数である。)
(Ca1−uSru)S:Eu (IIIf)
(式(IIIf)中、uは、0≦u≦1.0を満たす数である。)
原料として、SrCO3、CaCO3、Eu2O3、(NH4)2HPO4、NH4Clを用いた。これらの原料を仕込み量として、リン(P)のモル比を3として、各元素のモル比がSr:Ca:Eu:P:Cl=3.4:1.2:0.4:3:1.85になるように、秤量した。塩素(Cl)は、焼成時に飛散するため、得られるハロリン酸塩蛍光体の組成1モルにおける塩素のモル比が1となるように多めに調節して原料を秤量した。各原料を、アルミナボールを媒体(メディア)としたボールミルで混合して原料混合物を得た。この原料混合物をるつぼに充填した後、還元雰囲気中で、1100℃、2.5時間の焼成を行い、化学組成式が(Sr0.68Ca0.24Eu0.08)5(PO4)3Clで表される焼成物が得られた。得られた焼成物は、粒子同士が焼結等しているので、アルミナビーズで粉砕し、湿式分散し、その後、粗大粒子や微粒子を取り除くふるい分級を行って、化学組成式が表1で表されるハロリン酸塩蛍光体の粉末を得た。
実施例1と同様の原料を用いて、これらの原料の仕込み量として、Pのモル比を3として、Sr、Ca、Eu、Pの各元素のモル比が表1に示す化学組成式中の各元素のモル比となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、各実施例及び比較例のハロリン酸塩蛍光体の粉末を得た。
発光スペクトルの測定
得られたハロリン酸塩蛍光体について、発光特性を測定した。蛍光体の発光特性は、分光蛍光光度計(製品名:QE−2000、大塚電子株式会社製)を用いて、励起光として波長420nmの光を各蛍光体に照射し、室温(25℃±5℃)における発光スペクトルを測定した。図2は、実施例3のハロリン酸塩蛍光体の発光スペクトルを示す図である。得られた発光スペクトルから、発光ピーク波長λp(nm)を求めた。
実施例3及び比較例1のハロリン酸塩蛍光体について、蛍光分光光度計(製品名:F−4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、各蛍光体のそれぞれの発光ピーク波長にて、室温(25℃±5℃)で350nm以上430nm以下の範囲で励起スペクトルを測定した。図3は、実施例3のハロリン酸塩蛍光体の励起スペクトルを示す図である。図3は、最大強度を100%として、各波長における相対強度(%)を示す励起スペクトルを示した。
得られたハロリン酸塩蛍光体について、組成分析を行ったハロリン酸塩蛍光体のSr、Ca、Eu及びOの各元素は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)(製品名:Optima8300、株式会社池田理化製)を用いて各元素のモル比を測定した。また、ハロリン酸塩蛍光体のCl元素は、電位差滴定装置(製品名:AT−5000、京都電子工業株式会社製)を用いて元素のモル比を測定した。蛍光体の組成において、Pのモル比3を基準として、各元素のモル比を算出した。その結果を「分析モル比」として、以下の表1に示した。
第一蛍光体は、実施例4から6及び比較例2の発光装置において、表2に示す実施例1から3及び比較例1のハロリン酸塩蛍光体のうちいずれかを用いた。
第二蛍光体は、式(IIe)で表される組成を有し、式(IIe)中、HaがClを含むハロゲンケイ酸塩蛍光体と、式(IIb)で表される組成を有し、式(IIb)中、LnがLuを含む希土類アルミン酸塩蛍光体(以下、「LAG蛍光体」ともいう。)を用いた。
第三蛍光体は、式(IIIc)で表される組成を有する窒化物系蛍光体(以下、「SCASN蛍光体」ともいう。)と、式(IIIb)で表されるゲルマン酸塩蛍光体(以下、「MGF蛍光体」ともいう。)を用いた。
CIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclairage)1931表色系における色度座標でxが0.346、yが0.355付近となるように第一蛍光体71、第二蛍光体72及び第三蛍光体73を配合した蛍光体70と、シリコーン樹脂とを混合分散した後、さらに脱泡することにより蛍光部材用樹脂組成物を得た。蛍光部材用樹脂組成物中の蛍光体総量は樹脂100質量部に対して190質量部であった。また、蛍光部材用樹脂組成物中の樹脂100質量部に対して第一蛍光体71は160質量部、第二蛍光体72の合計量は21質量部、第三蛍光体73の合計量は9質量部であった。次に図1に示すような凹部を有する成形体40を準備し、凹部の底面に発光ピーク波長が420nmであり、窒化ガリウム系化合物半導体を有する発光素子をリードフレーム20に配置した後、蛍光部材料樹脂組成物を、発光素子10の上に注入、充填し、さらに加熱することで樹脂組成物を硬化させた。このような工程により実施例4から6及び比較例2の発光装置を作製した。
得られた発光装置は、25℃又は85℃の環境試験機内にて電流100mAで連続点灯させ、1500時間経過させて、耐久性試験を行った。耐久性試験前の発光装置の色度座標におけるx値、y値を初期値とし、これらの初期値から耐久性試験後の発光装置のx値、y値の差分の絶対値をΔx、Δyとした。また、耐久性試験前の各発光装置の光束を100とし、耐久性試験後の各発光装置の相対光束維持率(%)を測定した。結果を表2に示す。
Claims (7)
- 下記式(I)で表される組成を含む、ハロリン酸塩蛍光体。
(Sr1−x−yCaxEuy)5(PO4)3Cl (I)
(式(I)中、x、yは、0.2≦x≦0.5、0.04<y≦0.2を満たす数である。) - 前記式(I)中、xが、0.22≦x≦0.4を満たす数である、請求項1に記載のハロリン酸塩蛍光体。
- 前記式(I)中、yが、0.06≦y≦0.15を満たす数である、請求項1又は2に記載のハロリン酸塩蛍光体。
- 発光スペクトルが450nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のハロリン酸塩蛍光体。
- 前記請求項1から4のいずれか1項に記載のハロリン酸塩蛍光体を含む蛍光部材と、380nm以上450nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子を含む発光装置。
- 前記蛍光部材が、500nm以上600nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第二蛍光体をさらに含み、
前記第二蛍光体が、βサイアロン系蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体、ハロゲンケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、及び硫化物系蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光体である、請求項5に記載の発光装置。 - 前記蛍光部材が、620nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第三蛍光体をさらに含み、
前記第三蛍光体が、フッ化物系蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、窒化物系蛍光体、及び硫化物系蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光体である、請求項5又は6に記載の発光装置。
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