JP2020083933A - 光硬化性インクジェットインクとそれを用いた化粧シートおよびその製造方法 - Google Patents

光硬化性インクジェットインクとそれを用いた化粧シートおよびその製造方法 Download PDF

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達郎 土屋
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Abstract

【課題】ノズルでの目詰まりやマテリアルコンパチビリティの低下などを生じにくく、臭気が弱い上、塩化ビニル系樹脂からなる保護層と組み合わせても界面破壊や凝集破壊等を生じにくい化粧シートを形成できる光硬化性インクジェットインクおよび化粧シート。【解決手段】光硬化性インクジェットインクは塩酢ビ系樹脂、式(1):で表されるラジカル重合性モノマーを含むラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤、着色剤を含み、インクジェット印刷法によって模様層の前駆層を形成し、光を照射して硬化させて模様層を形成する。【選択図】なし

Description

本発明は、光硬化性インクジェットインク、当該光硬化性インクジェットインクの硬化物からなる模様層を含み、家屋の床等の装飾などに用いられる化粧シート、および当該化粧シートの製造方法に関するものである。
たとえば、家屋の床等に木目などの模様をつけるために、当該模様が印刷された化粧シートを用いる場合がある。
従来の化粧シートとしては、たとえば、基材シートの片面に、グラビア印刷法等によって模様層を形成した上に、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムを加熱圧着して一体化させて保護層を形成したものなどが用いられる。
しかし近年、様々な分野で、印刷法として、オンデマンドで任意の模様等を印刷することが可能なインクジェット印刷法が普及しつつあることから、化粧シートの模様層の形成にも、インクジェット印刷法を利用することが検討されている。
ただし化粧シートには、長期間の使用を考慮して、模様層の耐光性や化粧シートの全体での耐久性等に優れることが求められる。
そこで、化粧シートの模様を印刷するためのインクジェットインクとしては、たとえば、電離放射線や紫外線等の照射によって硬化反応する重合性モノマー等の重合性化合物を含む、硬化性のインクジェットインクが用いられる(特許文献1等参照)。
しかし発明者の検討によると、従来の硬化性のインクジェットインクを用いて化粧シートの模様層を形成した場合には、とくに模様層と保護層との間での界面破壊や、あるいは模様層内での凝集破壊などを生じやすいといった課題がある。
すなわち、従来の硬化性のインクジェットインクの硬化物と、クリアフィルムを形成する塩化ビニル系樹脂とは、基本的に親和性が低い場合が多い。
そのため、上記硬化物からなる模様層と、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層とは、たとえば、従来同様に加熱圧着等によって一体化させても剥離強度が不十分で、両層間での界面破壊を生じやすい。
また、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムは、透明性、柔軟性を高めるために、比較的多量の可塑剤を含んでいるが、可塑剤は、塩化ビニル系樹脂とは化学的に結合していないことから、環境温度によって、あるいは経時的に、保護層から染み出しやすい。
そして、保護層から染み出した可塑剤が模様層との間に介在することで、両層間の剥離強度がさらに低下して、当該両層間での界面破壊をより一層生じやすくなる場合もある。
また、重合性化合物の種類等によっては、硬化性のインクジェットインクを硬化させて形成される模様層の硬化度が不足する。
そして、保護層から染み出して模様層中に染み込んだ可塑剤によって、当該模様層の強度が大きく低下して、模様層の凝集破壊を生じやすくなる場合もある。
さらに、模様層を着色する着色剤として、とくに分子構造の平面性の高い顔料を用いると、当該顔料は、特異的に可塑剤に溶けやすいため、保護層から染み出した可塑剤の影響で、模様層から顔料が溶出したりしやすい。
そして、模様層から溶出した顔料が保護層との界面に介在することで両層間の剥離強度がさらに低下して、当該両層間での界面破壊をより一層生じやすくなる場合もある。
分子構造の平面性の高い顔料としては、たとえば、キナクリドン顔料のうちC.I.ピグメントレッド122、フタロシアニン顔料のうちC.I.ピグメントブルー15などの、インクジェットインク用として一般的な顔料が挙げられる。
これらの顔料は、複数個の平面状の分子が層状に重なり合った結晶構造を形成しやすく、かかる結晶構造を形成することで、可塑剤に特異的に溶けやすくなると考えられる。
また、重合性化合物の種類等によっては、
・ インクジェットインクの粘度が高くなって、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まり等を生じやすい、
・ プラスチック等に対する溶解性が強すぎて、インクジェットプリンタのヘッドのプラスチック部品等を溶解したりしやすく、部材との相性、すなわちマテリアルコンパチビリティが低いため、使用できる部材の材質が制限される、
・ 臭気が強い、
といった課題もある。
特開2001−26099号公報
本発明の目的は、ノズルでの目詰まりやマテリアルコンパチビリティの低下などを生じにくく、かつ臭気が弱い上、とくに塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層と組み合わせても、界面破壊や凝集破壊等を生じにくい化粧シートを形成できる光硬化性インクジェットインクを提供することにある。
また本発明の目的は、かかる光硬化性インクジェットインクの硬化物からなる模様層を含む化粧シート、および当該化粧シートの製造方法を提供することにある。
本発明は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、式(1):
Figure 2020083933
〔式中、Rは水素原子または1価の有機基を示す。〕
で表されるラジカル重合性モノマーを少なくとも含むラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤、および着色剤を含む光硬化性インクジェットインクである。
また本発明は、基材シート、前記基材シートの片面に設けられた、前記本発明の光硬化性インクジェットインクの硬化物からなる模様層、および前記模様層を覆う、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層を含む化粧シートである。
さらに本発明は、
前記基材シートの片面に、前記光硬化性インクジェットインクを用いたインクジェット印刷法によって前記模様層の前駆層を形成する工程、
形成した前記前駆層に光を照射して前記光硬化性インクジェットインクを硬化させて前記模様層を形成する工程、および
形成した前記模様層の上に前記クリアフィルムを加熱圧着して前記保護層を形成する工程、
を含む、前記本発明の化粧シートの製造方法である。
本発明によれば、ノズルでの目詰まりやマテリアルコンパチビリティの低下などを生じにくく、かつ臭気が弱い上、とくに塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層と組み合わせても、界面破壊や凝集破壊等を生じにくい化粧シートを形成できる光硬化性インクジェットインクを提供することができる。
また本発明によれば、かかる光硬化性インクジェットインクの硬化物からなる模様層を含む化粧シート、および当該化粧シートの製造方法を提供することができる。
《光硬化性インクジェットインク》
本発明の光硬化性インクジェットインクは、前述したように、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂(以下「塩酢ビ系樹脂」と略記する場合がある。)、式(1):
Figure 2020083933
〔式中、Rは水素原子または1価の有機基を示す。〕
で表されるラジカル重合性モノマー(以下「ラジカル重合性モノマー(1)」と略記する場合がある。)を少なくとも含むラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤、および着色剤を含んでいる。
このうち塩酢ビ系樹脂は硬化性を有さず、光照射してもラジカル重合性化合物とは硬化反応しない。
しかし、塩酢ビ系樹脂は、とくにラジカル重合性モノマー(1)に良好に溶解して光硬化性インクジェットインク中に均一に分散され、かかる分散状態から、光照射によって光硬化性インクジェットインクを硬化させて形成した模様層中に均一に分散される。
そして、模様層中に均一に分散された塩酢ビ系樹脂は、塩化ビニル系樹脂との親和性に優れていることから、当該模様層と、その上に加熱圧着等される、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層との剥離強度を高めるために機能する。
そのため、たとえ可塑剤が保護層から染み出したり、染み出した可塑剤によって模様層から顔料が溶出したりしたとしても、両層間での界面破壊が生じるのを抑制することができる。
一方、ラジカル重合性モノマー(1)は、光硬化性インクジェットインクの使用環境温度下、とくに室温で低粘度の液状を呈し、塩酢ビ系樹脂の良溶媒として機能する。
そのため、ラジカル重合性モノマー(1)を塩酢ビ系樹脂と併用することで、上述したように均一な光硬化性インクジェットインク、および均一な模様層を形成することができる。
また、ラジカル重合性モノマー(1)はラジカル重合性に優れているため、模様層の硬化度を高めることもできる。
そのため、保護層から染み出した可塑剤が染み込んで模様層の強度が低下するのを抑制して、当該模様層が凝集破壊するのを抑制することもできる。
しかもラジカル重合性モノマー(1)は、
・ 低粘度で、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まり等を生じにくい、
・ プラスチック等に対する溶解性が強すぎないため、インクジェットプリンタのヘッドのプラスチック部品等を溶解したりしにくく、マテリアルコンパチビリティが高いため、使用できる部材の材質が制限されたりしにくい、
・ 臭気が弱い、
といった特性をも有しており、光硬化性インクジェットインク用のモノマーとして適している。
したがって、上記塩酢ビ系樹脂とラジカル重合性モノマー(1)とを組み合わせることにより、ノズルでの目詰まりやマテリアルコンパチビリティの低下などを生じにくく、かつ臭気が弱い上、とくに塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層と組み合わせても、界面破壊や凝集破壊等を生じにくい化粧シートを形成できる光硬化性インクジェットインクを提供することができる。
なお、ラジカル重合性モノマー(1)と同様に塩酢ビ系樹脂の良溶媒として機能するモノマーはあまり知られておらず、殆ど唯一の例としては、テトラヒドロフルフリルアクリレートが挙げられる。
しかし、テトラヒドロフルフリルアクリレートは、プラスチック等に対する溶解性が強すぎて、当該プラスチック部品等を溶解したりしやすく、マテリアルコンパチビリティが低い上、臭気が強いため、光硬化性インクジェットインク用のモノマーとしては適していない。
これらのことは、後述する実施例、比較例の結果からも明らかである。
〈塩酢ビ系樹脂〉
塩酢ビ系樹脂としては、繰り返し単位として塩化ビニルと酢酸ビニルとを少なくとも含み、とくにラジカル重合性モノマー(1)に良好に溶解し得る種々の塩酢ビ系樹脂を用いることができる。
塩酢ビ系樹脂の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、日信化学工業(株)製のソルバイン(登録商標)シリーズの、下記の各種グレードの塩酢ビ系樹脂などが挙げられる。
(Aタイプ)
A〔組成:塩化ビニル92質量%、酢酸ビニル3質量%、ビニルアルコール5質量%、重合度:420、数平均分子量Mn:3.5×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕、AL〔組成:塩化ビニル93質量%、酢酸ビニル2質量%、ビニルアルコール5質量%、重合度:300、数平均分子量Mn:2.7×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕、TAO〔組成:塩化ビニル91質量%、酢酸ビニル2質量%、ビニルアルコール7質量%、重合度:360、数平均分子量Mn:1.5×10、ガラス転移温度Tg:77℃〕、TA5R〔組成:塩化ビニル88質量%、酢酸ビニル1質量%、ビニルアルコール11質量%、重合度:300、数平均分子量Mn:2.9×10、ガラス転移温度Tg:78℃〕。
(Cタイプ)
C〔組成:塩化ビニル87質量%、酢酸ビニル13質量%、重合度:420、数平均分子量Mn:3.6×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕、C5R〔組成:塩化ビニル79質量%、酢酸ビニル21質量%、重合度:350、数平均分子量Mn:2.6×10、ガラス転移温度Tg:68℃〕、CH〔組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:650、数平均分子量Mn:5×10、ガラス転移温度Tg:73℃〕、CL〔組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:300、数平均分子量Mn:2.5×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕、CN〔組成:塩化ビニル89質量%、酢酸ビニル11質量%、重合度:750、数平均分子量Mn:4.2×10、ガラス転移温度Tg:75℃〕、CNL〔組成:塩化ビニル90質量%、酢酸ビニル10質量%、重合度:200、数平均分子量Mn:1.2×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕、CLL2〔組成:塩化ビニル84質量%、酢酸ビニル16質量%、重合度:260、数平均分子量Mn:1.6×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕。
(Mタイプ)
M5〔組成:塩化ビニル85質量%、酢酸ビニル14質量%、ジカルボン酸1質量%、重合度:430、数平均分子量Mn:3.3×10、ガラス転移温度Tg:69℃〕、TA3〔組成:塩化ビニル83質量%、酢酸ビニル4質量%、ヒドロキシアルキルアクリレート13質量%、重合度:350、数平均分子量Mn:3.2×10、ガラス転移温度Tg:65℃〕。
中でも、繰り返し単位として第3成分を含まず、塩化ビニルと酢酸ビニルのみを含む塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(以下「塩酢ビ樹脂」と略記する場合がある。)が好ましく、とくに重合度が350以上である塩酢ビ樹脂が好ましい。
繰り返し単位として第3成分を含まない塩酢ビ樹脂は、塩酢ビ系樹脂の中でも塩化ビニル系樹脂との親和性に優れている。
また、塩酢ビ樹脂としては重合度が大きいものほど、塩化ビニル系樹脂との親和性が向上する傾向があり、とくに重合度が350以上である塩酢ビ樹脂が、塩化ビニル系樹脂との親和性に優れている。
そのため、塩酢ビ系樹脂の中でも、重合度が350以上の塩酢ビ樹脂を選択して用いることにより、光硬化性インクジェットインクの硬化物からなる模様層と、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層との剥離強度を、より一層向上することができる。
ただし、重合度が大きすぎる塩酢ビ樹脂を用いると、光硬化性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎ、インクジェットプリンタのノズルからの吐出安定性が低下して、ノズルの目詰まり等を生じやすくなる場合がある。
また、重合度が大きすぎる塩酢ビ系樹脂は、光硬化性インクジェットインク中に良好に溶解することができず、光硬化性インクジェットインクの貯蔵安定性が低下する場合もある。
粘度上昇を抑制して良好な吐出安定性を維持して、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まり等を生じにくくしたり、光硬化性インクジェットインクの貯蔵安定性を向上したりすることを考慮すると、塩酢ビ樹脂の重合度は750以下であるのが好ましい。
これらの条件を満足する好ましい塩酢ビ樹脂としては、たとえば、上述したソルバインシリーズのうちCタイプに属する、C5R(重合度:350)、C(重合度:420)、CH(重合度:650)等が挙げられる。
また、上述した効果をより一層向上することを考慮すると、塩酢ビ樹脂の重合度は、上記の範囲でも400以上であるのが好ましく、700以下であるのが好ましい。
以上で説明した各種塩酢ビ系樹脂の1種または2種以上を用いることができる。
塩酢ビ系樹脂の割合は、光硬化性インクジェットインクの総量の5質量%以上、とくに6質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下、とくに10質量%以下であるのが好ましい。
塩酢ビ系樹脂の割合がこの範囲未満では、当該塩酢ビ系樹脂を配合することによる、前述した、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層と、模様層との剥離強度を高める効果が十分に得られない場合がある。
そして、とくに可塑剤が保護層から染み出したり、染み出した可塑剤によって模様層から顔料が溶出したりした際等に、当該両層間で界面破壊が生じるのを良好に抑制できないことがある。
一方、塩酢ビ系樹脂の割合が上記の範囲を超える場合には、光硬化性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎ、インクジェットプリンタのノズルからの吐出安定性が低下して、ノズルの目詰まり等を生じやすくなる場合がある。
また、過剰の塩酢ビ系樹脂を良好に溶解することができず、光硬化性インクジェットインクの貯蔵安定性が低下する場合もある。
しかも塩酢ビ系樹脂は、保護層中に含まれる可塑剤によって溶解したり膨潤したりしやすい。
そのため、塩酢ビ系樹脂の割合が増加することと、相対的にラジカル重合性モノマー(1)の割合が少なくなって模様層の硬化度が不足することとが相まって、保護層から染み出した可塑剤が模様層中に染み込んだ際に、当該模様層の強度が低下しやすくなる。
そして、強度低下によって模様層の凝集破壊を生じやすくなる場合がある。
これに対し、塩酢ビ系樹脂の割合を上述した範囲とすることにより、光硬化性インクジェットインクの吐出安定性や貯蔵安定性を良好な範囲に維持しながら、模様層の凝集破壊や保護層との界面剥離をより一層良好に抑制することができる。
〈ラジカル重合性モノマー(1)〉
ラジカル重合性モノマー(1)としては、前述した式(1)中のRが水素原子または任意の1価の有機基である種々の化合物を用いることができる。
に該当する1価の有機基は炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、炭化水素の水素原子は置換基で置換されていてもよい。
また、有機基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を含んでいてもよい。
炭化水素基としては、たとえば、炭素数1以上の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3以上の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3以上の脂環式炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
中でも炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3〜30の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数4〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基等が好ましく、とくに炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基が好ましい。
炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、カプリル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、セリル基、メリシル基等が挙げられる。
また置換基としては、たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、シアノ基、トリメチルシリル基などが挙げられる。
とくにラジカル重合性モノマー(1)としては、式(1)中のRがメチル基である、式(1−1):
Figure 2020083933
で表される2−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(以下「FX−AO−MA」と略記する場合がある。)が好ましい。
上記式(1−1)で表されるFX−AO−MAは、光硬化性インクジェットインクを低粘度化して吐出安定性を向上したり、塩酢ビ系樹脂の溶解性や着色剤等の分散性を向上して、光硬化性インクジェットインクの貯蔵安定性を向上したりする効果に優れている。
また、FX−AO−MAは、たとえば、後述する顔料分散液において顔料を分散させるために用いる分散剤の溶解性にも優れており、当該顔料分散液の分散媒としても好適に使用できる。
上記ラジカル重合性モノマー(1)の1種または2種以上を用いることができる。
ラジカル重合性モノマー(1)の割合は、光硬化性インクジェットインクの総量の30質量%以上、とくに35質量%以上であるのが好ましく、60質量%以下、とくに55質量%以下であるのが好ましい。
ラジカル重合性モノマー(1)の割合がこの範囲未満では、当該ラジカル重合性モノマー(1)を配合することによる、塩酢ビ系樹脂を良好に溶解する効果が十分に得られないことがある。
そして、光硬化性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎ、インクジェットプリンタのノズルからの吐出安定性が低下して、ノズルの目詰まり等を生じやすくなる場合がある。
また、相対的に割合が多くなる塩酢ビ系樹脂の全量を良好に溶解することができず、光硬化性インクジェットインクの貯蔵安定性が低下する場合もある。
さらに、ラジカル重合性モノマー(1)を含むラジカル重合性化合物の全体の割合が少なくなることで、模様層の硬化度が不足する傾向がある。
そのため、可塑剤によって溶解したり膨潤したりしやすい塩酢ビ系樹脂の割合が相対的に増加することと相まって、保護層から染み出した可塑剤が模様層中に染み込んだ際に、当該模様層の強度が低下することがある。
そして、強度低下によって模様層の凝集破壊を生じやすくなる場合がある。
また、模様層の硬化度の不足を補うために、その他のラジカル重合性化合物の割合を多くした場合には、その種類等にもよるが、ノズルでの目詰まりやマテリアルコンパチビリティの低下などを生じやすくなったりする場合がある。
また、臭気が強くなる場合もある。
一方、ラジカル重合性モノマー(1)の割合が上記の範囲を超える場合には、相対的に塩酢ビ系樹脂の割合が少なくなるため、前述した、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層と、模様層との剥離強度を高める効果が十分に得られなくなる。
そして、とくに可塑剤が保護層から染み出したり、染み出した可塑剤によって模様層から顔料が溶出したりした際等に、当該両層間で界面破壊が生じるのを良好に抑制できない場合がある。
これに対し、ラジカル重合性モノマー(1)の割合を前述した範囲とすることにより、光硬化性インクジェットインクの吐出安定性や貯蔵安定性を良好な範囲に維持しながら、模様層の凝集破壊や保護層との界面剥離を、より一層良好に抑制することができる。
また、ノズルでの目詰まりやマテリアルコンパチビリティの低下などを生じにくく、かつ臭気が弱い光硬化性インクジェットインクとすることもできる。
〈他のラジカル重合性化合物〉
ラジカル重合性化合物としては、上記ラジカル重合性モノマー(1)のみ〔2種以上のラジカル重合性モノマー(1)を併用する場合を含む。以下同様。〕を用いてもよいし、光硬化性インクジェットインクにさらに他の特性を付与するために、他のラジカル重合性化合物を併用してもよい。
かかる他のラジカル重合性化合物としては、上記ラジカル重合性モノマー(1)と共重合反応し得る種々の単官能、2官能ないし3官能以上の多官能のラジカル重合性化合物いずれも使用可能である。
(ウレタンアクリレート)
中でも、他のラジカル重合性化合物としてはウレタンアクリレートが好ましい。
ウレタンアクリレートを併用すると、光硬化性インクジェットインクの硬化物の柔軟性を高めることができる。
そして、上記硬化物からなる模様層の、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層に対する密着性を向上して、剥離強度をさらに高めることができる。
とくに、ガラス転移温度Tgが+30℃以下であるウレタンアクリレートを選択して用いると、光硬化性インクジェットインクからなる模様層と、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層との剥離強度をより一層向上することができる。
この理由を、発明者は次のように推測している。
すなわち模様層上に、塩化ビニル系樹脂からなるクリアフィルムを加熱圧着して保護層を形成する際の一般的なプレス条件は、これに限定されないが、たとえば、圧力:40kgf/cm、温度:140℃(1分間予熱→5分間加熱プレス→6分間冷却)程度であるのが好ましい。
ガラス転移温度Tgが+30℃以下であるウレタンアクリレートは、かかる通常のプレス条件のうち予熱〜加熱プレス時に、迅速かつ良好に軟化ないし溶融して、保護層に対してさらに良好に密着する。
そして、その後の冷却によって固化する際に、ウレタンアクリレートの結晶がきれいに配列される結果、模様層と保護層とがより強固に密着されて、当該両層間の剥離強度が向上する。
ただし、ウレタンアクリレートのガラス転移温度Tgが低すぎる場合には、硬化したとはいえ硬化後の模様層が柔らかすぎて、保護層から染み出した可塑剤が模様層中に染み込みやすくなる傾向がある。
そして、可塑剤が染み込むことで模様層の強度が低下して、当該模様層の凝集破壊を生じやすくなる場合がある。
硬化後の模様層への可塑剤の染み込みとそれに伴う模様層の凝集破壊とを抑制することを考慮すると、ウレタンアクリレートのガラス転移温度Tgは−50℃以上であるのが好ましい。
また、これらの効果をより一層向上することを考慮すると、ウレタンアクリレートのガラス転移温度Tgは、上記の範囲でも−40℃以上であるのが好ましく、+20℃以下であるのが好ましい。
また、ラジカル重合反応に寄与するウレタンアクリレートの平均官能基数は2以上であるのが好ましく、3以下であるのが好ましい。
平均官能基数が2未満では、硬化後の網目構造が粗になりすぎて、模様層の耐光性や化粧シートの全体での耐久性が不足する場合がある。
一方、平均官能基数が3を超えるウレタンアクリレートは、硬化後の網目構造が密になりすぎて、上述したように熱圧着時に軟化したり溶融したりしにくくなって、模様層と保護層との剥離強度が低下する場合がある。
これに対し、平均官能基数が上記の範囲であるウレタンアクリレートを選択して用いることにより、模様層の耐光性や化粧シートの全体での耐久性を良好に維持しながら、なおかつ前述したメカニズムによって、模様層と保護層との剥離強度を高めることができる。
また、光硬化性インクジェットインクの、インクジェットプリンタのノズルからの吐出安定性や貯蔵安定性の低下を抑制することを考慮すると、ウレタンアクリレートの粘度(60℃)は15Pa・s以下、とくに12Pa・s以下であるのが好ましい。
これらの条件を満足する好ましいウレタンアクリレートの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマー(登録商標)シリーズのうち、下記の各種ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
・ 脂肪族ウレタンアクリレート
CN929〔ガラス転移温度Tg:+17℃、平均官能基数:3、粘度(60℃):2.75Pa・s〕、CN940〔ガラス転移温度Tg:−43℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):5.75Pa・s〕、CN965〔ガラス転移温度Tg:−37℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):9.975Pa・s〕、CN981〔ガラス転移温度Tg:+22℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):6.19Pa・s〕、CN984〔ガラス転移温度Tg:+24℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):0.66Pa・s〕、CN986〔ガラス転移温度Tg:−40℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):5.5Pa・s〕、CN991〔ガラス転移温度Tg:+27℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):0.66Pa・s〕、CN996〔ガラス転移温度Tg:+8℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):7.525Pa・s〕、CN9002〔ガラス転移温度Tg:−50℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):3Pa・s〕、CN9005〔ガラス転移温度Tg:−10℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):9.1Pa・s〕、CN9007〔脂肪族ウレタンアクリレート、ガラス転移温度Tg:+1℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):4.5Pa・s〕、CN9178〔脂肪族ウレタンアクリレート、ガラス転移温度Tg:−7℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):2Pa・s〕、CN9290〔ガラス転移温度Tg:−28℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):13Pa・s〕、CN9783〔ガラス転移温度Tg:+30℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):15Pa・s〕。
・ 芳香族ウレタンアクリレート
CN972〔ガラス転移温度Tg:−47℃、平均官能基数:3、粘度(60℃):4.1Pa・s〕、CN978〔ガラス転移温度Tg:−18℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):3.2Pa・s〕、CN992〔ガラス転移温度Tg:+27℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):0.545Pa・s〕、CN9783〔ガラス転移温度Tg:+30℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):15Pa・s〕。
・ 特殊ウレタンアクリレート
CN2921〔ガラス転移温度Tg:−13℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):3Pa・s〕。
上記ウレタンアクリレートの1種または2種以上を用いることができる。
ウレタンアクリレートの割合は、光硬化性インクジェットインクの総量の10質量%以上、とくに12質量%以上であるのが好ましく、20質量%以下、とくに18質量%以下であるのが好ましい。
ウレタンアクリレートの割合が上記の範囲未満では、当該ウレタンアクリレートを配合することによる、前述した、模様層と保護層との剥離強度を高める効果が十分に得られない場合がある。
一方、ウレタンアクリレートの割合が上記の範囲を超える場合には、光硬化性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎ、インクジェットプリンタのノズルからの吐出安定性が低下して、ノズルの目詰まり等を生じやすくなる場合がある。
また、相対的に塩酢ビ系樹脂の良溶媒であるラジカル重合性モノマー(1)の割合が少なくなって、光硬化性インクジェットインクの貯蔵安定性が低下する場合もある。
また、相対的に塩酢ビ系樹脂の割合が少なくなって、前述した、模様層と保護層との剥離強度を高める効果が十分に得られない場合もある。
さらに、相対的にラジカル重合性モノマー(1)の割合が少なくなり、模様層の硬化度が不足して強度が低下して、模様層の凝集破壊を生じやすくなる場合もある。
これに対し、ウレタンアクリレートの割合を上述した範囲とすることにより、光硬化性インクジェットインクの吐出安定性や貯蔵安定性を良好な範囲に維持しながら、模様層の凝集破壊や保護層との界面剥離をより一層良好に抑制することができる。
(アミン変性アクリレートオリゴマー)
他のラジカル重合性化合物としては、アミン変性アクリレートオリゴマーを併用してもよい。
アミン変性アクリレートオリゴマーの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマー(登録商標)シリーズのうち、下記の各種アミン変性アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
CN371〔反応性アミン共開始剤、アミン価:136mgKOH/g〕、CN373〔反応性アミン共開始剤、アミン価:235mgKOH/g〕、CN383〔反応性アミン共開始剤、平均官能基数:1、アミン価:150mgKOH/g〕、CN386〔反応性アミン共開始剤、平均官能基数:2、アミン価:200mgKOH/g〕、CN501〔アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー、平均官能基数:4、ガラス転移温度Tg:63℃〕、CN550〔アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー、平均官能基数:4、ガラス転移温度Tg:3℃〕、CN551〔アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー、平均官能基数:4、ガラス転移温度Tg:23℃〕。
これらアミン変性アクリレートオリゴマーの1種または2種以上を用いることができる。
アミン変性アクリレートオリゴマーの割合は、任意に設定することができる。
(N−ビニルラクタムモノマー)
また、他のラジカル重合性化合物としては、式(2)
Figure 2020083933
〔式中nは1〜7を示す。〕
で表されるN−ビニルラクタムモノマーを併用してもよい。
N−ビニルラクタムモノマーの具体例としては、たとえば、式(2)中のnが3である、式(2−1):
Figure 2020083933
で表されるN−ビニル−2−ピロリドン、および式(2)中のnが5である、式(2−2):
Figure 2020083933
で表されるN−ビニル−ε−カプロラクタム(以下「VCAP」と略記する場合がある。)等の少なくとも1種を用いることができる。
N−ビニルラクタムモノマーの割合も、任意に設定することができる。
(4−アクリロイルモルホリン)
さらに、他のラジカル重合性化合物としては、式(3):
Figure 2020083933
で表される4−アクリロイルモルホリン(以下「ACMO」と略記する場合がある。)を併用してもよい。
ACMOの割合も、任意に設定することができる。
上記アミン変性アクリレートオリゴマー、N−ビニルラクタムモノマー、およびACMOは、いずれも光ラジカル重合開始剤の増感剤として、光硬化性インクジェットインクの光感度を向上して、光硬化の速度を高めるために機能する。
中でもN−ビニルラクタムモノマーは、かかる機能に優れている上、塩酢ビ系樹脂の溶解性にも優れている。
そのため、N−ビニルラクタムモノマーを併用すると、ラジカル重合性モノマー(1)による塩酢ビ系樹脂の溶解を補助して、光硬化性インクジェットインクの吐出安定性や貯蔵安定性を向上することもできる。
とくに式(2−2)のVCAPは、これらの機能に優れており、他のラジカル重合性化合物として好適に用いることができる。
〈光ラジカル重合開始剤〉
光ラジカル重合開始剤としては、任意の波長の光の照射によってラジカルを発生させて、上述したラジカル重合性化合物をラジカル重合反応させることができる種々の化合物が、いずれも使用可能である。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、たとえば、下記の各種化合物等が挙げられる。
ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、特開2008−280427号公報の一般式(1)で表されるベンゾフェノン化合物等のベンゾフェノン類またはその塩。
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン、特開2008−280427号公報の一般式(2)で表されるチオキサントン化合物等のチオキサントン類またはその塩。
エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。
アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン、4′−ジメチルアミノアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン等のアセトフェノン類。
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類。
ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ‐1‐(4−モルホリノフェニルブタン)−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、9,10−フェナンスレンキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン類。
9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体。
ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビスフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類。
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリハロメチルトリアジン、ベンジル、メチルベンゾイル、ベンゾイル蟻酸メチル、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルフォリノブチロフェノン等。
これら光重合開始剤の1種または2種以上を用いることができる。
光ラジカル重合開始剤の割合は、任意に設定することができる。
ただし、光硬化性インクジェットインクに良好な光硬化性を付与することを考慮すると、当該光硬化性インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、とくに0.5質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下、とくに10質量%以下であるのが好ましい。
〈増感剤〉
本発明の光硬化性インクジェットインクには、必要に応じて、前述したアミン変性アクリレートオリゴマー以外の他の増感剤を配合してもよい。
増感剤は、紫外線の照射によって励起状態となり、光ラジカル重合開始剤と相互作用して、当該光ラジカル重合開始剤におけるラジカルの発生を助けるために機能する。
とくに、光源としてLEDを使用する場合には、その波長域が狭いことから、光硬化性インクジェットインクが感度を有する波長域を広げて感度を向上する、すなわち増感するために増感剤を配合するのが好ましい。
増感剤としては、上述した光ラジカル重合開始剤のうち、たとえば、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンの混合物などのチオキサントン類またはその塩や、ベンゾフェノンと2,3−および4−メチルベンゾフェノンの共晶混合物、メチル−2−ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルフェニルサルファイド、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはその塩、2−エチルアントラキノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)などが挙げられる。
また、その他の増感剤としては、たとえば、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−エチル−4−(ジメチルアミノベンゾエート)等のベンゾエート化合物、ナフタレンベンゾオキサゾリル誘導体、チオフェンベンゾオキサゾリル誘導体、スチルベンベンゾオキサゾリル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2−イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、ピリドトリアゾール、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
増感剤としては、以上で説明した各種の増感剤の中から、光源からの光の波長域、および光ラジカル重合開始剤の吸収波長域に応じて増感に適した吸収波長域を有するものを、それぞれ1種または2種以上用いることができる。
増感剤の割合は、任意に設定することができる。
ただし、良好な増感効果を得ることを考慮すると、光硬化性インクジェットインクの総量の0.01質量%以上、とくに0.5質量%以上であるのが好ましく、5質量%以下、とくに4質量%以下であるのが好ましい。
〈着色剤〉
着色剤としては、光硬化性インクジェットインクの色味に応じた各色の、種々の顔料、染料等を用いることができる。
とくに、模様層の耐光性等を向上することを考慮すると、種々の無機顔料および/または有機顔料が好ましい。
このうち無機顔料としては、たとえば、酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物や、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された中性、酸性、塩基性等の種々のカーボンブラックが挙げられる。
また有機顔料としては、たとえば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(たとえば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料等)、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が挙げられる。
顔料の具体例としては、下記の各種顔料が挙げられる。
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
顔料は、光硬化性インクジェットインクの色目に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
たとえば、カーボンブラックで黒色を表現する場合、より青黒く見せるためにシアン顔料を添加してもよい。
また顔料としては、保護層から染み出した可塑剤に対する溶解性を抑えて、模様層と保護層との間での界面破壊を抑制することを考慮すると、分子中に塩素原子および/または臭素原子を含む顔料を用いるのが好ましい。
とくに顔料として、基本的に分子構造の平面性の高い、たとえば、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料等の多環式顔料を用いる場合、その分子中に塩素原子や臭素原子を導入することで、可塑剤に対する溶解性を有効に抑制することができる。
先に説明したように、分子構造の平面性の高い顔料は、複数個の平面状の分子が層状に重なり合った結晶構造を形成しやすく、特異的に可塑剤に溶けやすい。
これに対し、分子中に塩素原子や臭素原子を導入すると分子構造の平面性が崩され、上記結晶構造を形成しにくくなって、可塑剤に対する溶解性を抑えることができると考えられる。
なお顔料としては、その全量を、分子中に塩素原子および/または臭素原子を含む顔料としてもよいし、一部の顔料のみを、分子中に塩素原子および/または臭素原子を含む顔料として、他は通常の顔料を併用してもよい。
一部の顔料のみを、分子中に塩素原子および/または臭素原子を含む顔料とした場合も、上述したように分子構造の平面性が崩されて結晶構造を形成しにくくなるため、可塑剤に対する溶解性を抑えることができる。
分子中に塩素原子および/または臭素原子を含む顔料の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種の顔料が挙げられる。
(マゼンタ顔料)
マゼンタ顔料としては、前述したように可塑剤に溶けやすいC.I.ピグメントレッド122(キナクリドン骨格に2つのメチル基を含む)に代えて、下記の各種顔料の少なくとも1種を用いることで、可塑剤に対する顔料の溶解性を抑制することができる。
C.I.ピグメントレッド202〔キナクリドン骨格に、メチル基に代えて2つの塩素原子を導入した化合物。〕、C.I.ピグメントレッド209〔キナクリドン骨格に、メチル基に代えて2つの塩素原子を導入した化合物。ただしC.I.ピグメントレッド209とは2つの塩素原子の置換位置が異なる。〕、C.I.ピグメントレッド254〔ジケトピロロピロール骨格に、2つの4−クロロフェニル基を導入した化合物。〕。
(シアン顔料)
シアン顔料として、分子構造の平面性が高く、かつ分子中に塩素原子、または臭素原子を導入した顔料は知られていない。
しかしシアン顔料で、かつ前述したように可塑剤に溶けやすいC.I.ピグメントブルー15(フタロシアニン骨格を含む)に対して、下記顔料の少なくとも1種を併用すると、全体での色味を大きく変化させずに、可塑剤に対する顔料の溶解性を抑制できる。
C.I.ピグメントグリーン7〔フタロシアニン骨格に塩素原子を導入した化合物。〕、C.I.ピグメントグリーン36〔フタロシアニン骨格に塩素と臭素を導入した化合物〕。
顔料は、光硬化性インクジェットインク中での分散安定性を向上するために、表面を処理してもよい。
また顔料は、前述したように、FX−AO−MA等の分散媒中に分散させた顔料分散液の状態で、光硬化性インクジェットインクの製造に用いてもよい。
顔料分散液には、顔料を良好に分散させるために、分散剤等を添加してもよい。
分散剤としては、たとえば、高分子系分散剤、界面活性剤等の種々の分散剤が、いずれも使用可能である。
顔料等の着色剤の割合は、当該着色剤の種類や光硬化性インクジェットインクの色味等に応じて、任意に設定することができる。
《化粧シートおよびその製造方法》
本発明の化粧シートは、上記本発明の硬化性インクジェットインクの硬化物からなる模様層を有すること以外は、従来同様に構成することができる。
すなわち、本発明の化粧シートは、基材シート、当該基材シートの片面に設けられた上記模様層、および当該模様層を覆う、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層を含む。
上記本発明の化粧シートは、本発明のインクジェットインクの硬化物からなる模様層を備えるため、界面破壊や凝集破壊等を生じにくい上、模様層の耐光性や化粧シートの全体での耐久性等にも優れている。
基材シートとしては、たとえば、塩化ビニル系樹脂のシート等が挙げられる。
かかる本発明の化粧シートは、本発明の製造方法によって製造することができる。
すなわち、基材シートの片面に、本発明の光硬化性インクジェットインクを用いたインクジェット印刷法によって模様層の前駆層を形成する工程、
形成した前駆層に、紫外線等の光を照射して光硬化性インクジェットインクを硬化させて模様層を形成する工程、および
形成した模様層の上にクリアフィルムを加熱圧着して前記保護層を形成する工程、
を経て、本発明の化粧シートを製造することができる。
光硬化性インクジェットインクを硬化させる際の、紫外線等の照射条件は、これに限定されないが、たとえば、積算光量で表して2.7J/cm程度であるのが好ましい。
ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性モノマー(1)を含む本発明の光硬化性インクジェットインクによれば、かかる条件による紫外線等の照射によって、高い硬化度を有し、界面破壊や凝集破壊等を生じにくい上、耐光性に優れた模様層を形成できる。
また、全体での耐久性に優れた化粧シートを製造することもできる。
また、加熱圧着の条件は、従来の、グラビア印刷法等によって模様層を形成した上に、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層を加熱圧着して一体化させて保護層を形成する場合と同等程度であるのが好ましい。
具体的には、加熱圧着の条件は、前述したように、圧力:40kgf/cm、温度:140℃(1分間予熱→5分間加熱プレス→6分間冷却)程度であるのが好ましい。
これにより、紫外線等の照射工程を加えるだけで、他は従来の化粧シートの製造設備をそのままで用いて、本発明の化粧シートを製造することができる。
しかも、塩酢ビ系樹脂を含む本発明の光硬化性インクジェットインクによれば、かかる条件による加熱圧着によって、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層との間で界面破壊等を生じにくい化粧シートを製造することができる。
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、これらの例によって限定されるものではない。
〈実施例1〉
(顔料分散液の調製)
下記の各成分を、表1に示す割合で配合し、撹拌したのちビーズミルを用いて分散させて顔料分散液を調製した。
顔料:カーボンブラックLFF、三菱ケミカル(株)製のMA8
分散剤:リューブリゾル(Lubrizol)社製のソルスパース(SOLSPERSE、登録商標)32000
FX−AO−MA:ラジカル重合性モノマー(1)、前述した式(1−1)の2−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、(株)日本触媒製のFX−AO−MA
Figure 2020083933
(光硬化性インクジェットインクの調製)
塩酢ビ系樹脂としてはソルバインCH〔塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:650、数平均分子量Mn:5×10、ガラス転移温度Tg:73℃、日信化学工業(株)製〕を用いた。
当該塩酢ビ系樹脂と、下記の各成分とを表2に示す割合で配合して十分に溶解するまで撹拌し、次いで先に調製した顔料分散液を表2に示す割合で加えてさら撹拌したのち、5μmのメンブランフィルタを用いてろ過して光硬化性インクジェットインクを調製した。
FX−AO−MA:ラジカル重合性モノマー(1)、前述した式(1−1)の2−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、(株)日本触媒製のFX−AO−MA
CN965:脂肪族ウレタンアクリレート、ガラス転移温度Tg:−37℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):9.975Pa・s、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマーCN965
VCAP:N−ビニル−ε−カプロラクタム
増感剤:2,4−ジエチルチオキサントン、ランブソン(LAMBSON)社製のDETX
光重合開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド〔BASF社製のイルガキュア(IRGACURE、登録商標)819〕
Figure 2020083933
〈実施例2〉
塩酢ビ系樹脂として、日信化学工業(株)製のソルバインCN〔塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル89質量%、酢酸ビニル11質量%、重合度:750、数平均分子量Mn:4.2×10、ガラス転移温度Tg:75℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例3〉
塩酢ビ系樹脂として、日信化学工業(株)製のソルバインC5R〔塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル79質量%、酢酸ビニル21質量%、重合度:350、数平均分子量Mn:2.6×10、ガラス転移温度Tg:68℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例4〉
塩酢ビ系樹脂として、日信化学工業(株)製のソルバインC〔塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル87質量%、酢酸ビニル13質量%、重合度:420、数平均分子量Mn:3.6×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例5〉
塩酢ビ系樹脂として、日信化学工業(株)製のソルバインCNL〔塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル90質量%、酢酸ビニル10質量%、重合度:200、数平均分子量Mn:1.2×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例6〉
塩酢ビ系樹脂として、日信化学工業(株)製のソルバインCL〔塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:300、数平均分子量Mn:2.5×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例7〉
塩酢ビ系樹脂として、第3成分を含む日信化学工業(株)製のソルバインA〔組成:塩化ビニル92質量%、酢酸ビニル3質量%、ビニルアルコール5質量%、重合度:420、数平均分子量Mn:3.5×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈比較例1〉
塩酢ビ系樹脂に代えて、塩素化ポリプロピレン樹脂〔塩素含有率:41%、日本製紙ケミカル(株)製の814HS〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈比較例2〉
塩酢ビ系樹脂に代えて、塩素化ポリプロピレン樹脂〔塩素含有率:36%、日本製紙ケミカル(株)製の390S〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈比較例3〉
ラジカル重合性モノマー(1)に代えて、当該ラジカル重合性モノマー(1)と同様に塩酢ビ系樹脂の良溶媒として機能するテトラヒドロフルフリルアクリレート(以下「THFA」と略記する場合がある。)を、顔料分散液、および光硬化性インクジェットインクの調製にそれぞれ同量ずつ、計49.8質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈比較例4〉
ラジカル重合性モノマー(1)に代えて、25質量部のTHFAと、顔料分散液の分を合わせて計24.8質量部のEC−A〔反応性希釈剤、エトキシジエチレングリコールアクリレート、共栄社化学(株)製のライトアクリレート(登録商標)EC−A〕とを配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
上記各実施例、比較例で調製した光硬化性インクジェットインクについて、下記の各試験を実施して特性を評価した。
〈剥離強度〉
ピエゾ方式のインクジェットプリンタに、実施例、比較例で調製した光硬化性インクジェットインクを用いて、塩化ビニル系樹脂製の基材シートの片面にベタ印刷をして、模様層の前駆層を形成したのち、形成した前駆層に紫外線を照射〔積算光量:2.7J/cm〕して光硬化性インクジェットインクを硬化させて模様層を形成した。
次いで、形成した模様層の上に、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムを、圧力:40kgf/cm、温度:140℃(1分間予熱→5分間加熱プレス→6分間冷却)の条件で加熱圧着して保護層を形成して、化粧シートを製造した。
そして、製造した化粧シートを切り出して幅50mm×長さ150mmの試験片を作製し、当該試験片の化粧シートと保護層とをはく離速度200mm/分でT字剥離した際の剥離強度を測定して、下記の基準で、剥離強度の良否を評価した。
◎:剥離強度は30N/50mm以上であった。
○:剥離強度は27.5N/50mm以上、30N/50mm未満であった。
△:剥離強度は25N/50mm以上、27.5N/50mm未満であった。
×:剥離強度は25N/50mm未満であった。
〈吐出安定性〉
ピエゾ方式のインクジェットプリンタに、実施例、比較例で調製した光硬化性インクジェットインクを用いてA4用紙に2枚連続してベタ印刷をし、吐出不良による印刷の抜け(ノズル抜け)を確認して、下記の基準で吐出安定性を評価した。
○:1枚目、2枚目ともにノズル抜けは見られなかった。
△:1枚目に僅かにノズル抜けが見られたが、2枚目にはノズル抜けは見られなかった。
×:1枚目、2枚目ともにノズル抜けが見られた。
〈マテリアルコンパチビリティ〉
実施例、比較例で調製した光硬化性インクジェットインク中に、NBRの試験片を60℃で1か月間に亘って浸漬したのち引き上げ、表面に付着した光硬化性インクジェットインクを拭き取ったのち秤量した。そして、浸漬前後の試験片の質量変化率(%)を求めて、下記の基準でマテリアルコンパチビリティを評価した。
○:質量変化率は2%未満であった。
△:質量変化率は2%以上、5%未満であった。
×:質量変化率は5%以上であった。
以上の結果を表3、表4に示す。
Figure 2020083933
Figure 2020083933
表3、表4の実施例1〜7、比較例1〜4の結果より、塩酢ビ系樹脂とラジカル重合性モノマー(1)とを組み合わせることにより、マテリアルコンパチビリティの低下などを生じにくく、かつ塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層と組み合わせても、界面破壊や凝集破壊等を生じにくい化粧シートを形成できる光硬化性インクジェットインクが得られることが判った。
また実施例1〜7の結果より、塩酢ビ系樹脂としては、繰り返し単位として第3成分を含まない塩酢ビ樹脂であって、なおかつ重合度が350以上、750以下、とくに400以上、700以下であるものを用いるのが、良好な吐出安定性を維持しながら、界面破壊や凝集破壊等をさらに抑制して、剥離強度を高める上で好ましいことが判った。
〈実施例8〉
ウレタンアクリレートとして、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマーCN966〔脂肪族ウレタンアクリレート、ガラス転移温度Tg:−60℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):70Pa・s〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例9〉
ウレタンアクリレートとして、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマーCN9002〔ガラス転移温度Tg:−50℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):3Pa・s〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例10〉
ウレタンアクリレートとして、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマーCN929〔ガラス転移温度Tg:+17℃、平均官能基数:3、粘度(60℃):2.75Pa・s〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例11〉
ウレタンアクリレートとして、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマーCN992〔ガラス転移温度Tg:+27℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):0.545Pa・s〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例12〉
ウレタンアクリレートとして、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマーCN994〔ガラス転移温度Tg:+44℃、平均官能基数:2、粘度(60℃):0.7Pa・s〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例13〉
ウレタンアクリレートに代えて、2官能のアルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート〔ガラス転移温度Tg:−38℃、アルケマ(ARKEMA)社製のサートマーCD561〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例14〉
N−ビニルラクタムモノマーとしてのVCAPに代えて、4−アクリロイルモルホリンとしてのACMOを同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例15〉
カーボンブラックに代えて、マゼンタ顔料としてのC.I.ピグメントレッド254(以下「PR254」と略記する場合がある。)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例16〉
カーボンブラックに代えて、マゼンタ顔料としてのC.I.ピグメントレッド122(以下「PR122」と略記する場合がある。)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
上記各実施例、比較例で調製した光硬化性インクジェットインクについて、前述した各試験を実施して特性を評価した。
結果を表5、表6に示す。
Figure 2020083933
Figure 2020083933
表5、表6の実施例8〜13、および表3の実施例1の結果より、界面破壊や凝集破壊等をさらに抑制して、剥離強度を高める上で、ラジカル重合性化合物としては、ウレタンアクリレートを含んでいるのが好ましく、ウレタンアクリレートとしては、ガラス転移温度Tgが−50℃以上、+30℃以下、とくに−40℃以上、+20℃以下であるものを用いるのが好ましいことが判った。
また実施例1、14の結果より、他のラジカル重合性化合物としては、VCAP等のN−ビニルラクタムモノマーが好ましいことが判った。
さらに、実施例15、16の結果より、マゼンタ顔料としては、分子構造の平面性の高いPR122よりも、分子中に塩素原子を導入して平面性を崩したPR254の方が、剥離強度を高める上で好ましいことが判った。

Claims (7)

  1. 塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、式(1):
    Figure 2020083933
    〔式中、Rは水素原子または1価の有機基を示す。〕
    で表されるラジカル重合性モノマーを少なくとも含むラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤、および着色剤を含む光硬化性インクジェットインク。
  2. 前記塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂は、繰り返し単位として塩化ビニルと酢酸ビニルのみを含み、かつ重合度が350以上、750以下の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂である請求項1に記載の光硬化性インクジェットインク。
  3. 前記ラジカル重合性化合物は、ガラス転移温度Tgが−50℃以上、+30℃以下のウレタンアクリレートをさらに含む請求項1または2に記載の光硬化性インクジェットインク。
  4. 前記ラジカル重合性化合物は、式(2):
    Figure 2020083933
    〔式中nは1〜7を示す。〕
    で表されるN−ビニルラクタムモノマーをさらに含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
  5. 前記着色剤は、分子中に塩素原子、および臭素原子からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む顔料である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
  6. 基材シート、前記基材シートの片面に設けられた、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインクの硬化物からなる模様層、および前記模様層を覆う、塩化ビニル系樹脂のクリアフィルムからなる保護層を含む化粧シート。
  7. 前記請求項6に記載の化粧シートの製造方法であって、
    前記基材シートの片面に、前記光硬化性インクジェットインクを用いたインクジェット印刷法によって前記模様層の前駆層を形成する工程、
    形成した前記前駆層に光を照射して前記光硬化性インクジェットインクを硬化させて前記模様層を形成する工程、および
    形成した前記模様層の上に前記クリアフィルムを加熱圧着して前記保護層を形成する工程、
    を含む化粧シートの製造方法。
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