JP2020083862A - 神経細胞死抑制、血管内皮細胞障害抑制、神経栄養因子産生促進、抗血栓因子産生促進または認知機能障害抑制のための組成物 - Google Patents

神経細胞死抑制、血管内皮細胞障害抑制、神経栄養因子産生促進、抗血栓因子産生促進または認知機能障害抑制のための組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】認知症等のような脳神経疾患の予防、改善等に寄与しうる有用な機能や作用(神経細胞死抑制作用)を有する組成物を提供すること。【解決手段】ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、神経細胞の活性酸素による細胞死を抑制する、神経細胞死抑制用組成物。【選択図】図2

Description

本発明は、神経細胞死抑制、血管内皮細胞障害抑制、神経栄養因子産生促進、抗血栓因子産生促進または認知機能障害抑制のための組成物に関する。
キノコ類には有用な生理活性物質が多く含まれることが従来から知られている。例えば、カバノアナタケ、マンネンタケ、メシマコブなどは、免疫力増強機能が高いことから、抗ガン剤の原料として利用されている。さらに近年においては、ハナビラタケ、アガリクス、ハタケシメジなどが注目されている。これらキノコの抗ガン作用は、いずれもキノコ類が含有するβ−グルカン(多糖類)の生理活性によることが立証されているが、一部のキノコ類はそれ以外の機能性物質も含有している。例えば、ハナビラタケにおいては、血糖調整機能、抗高脂血症機能、抗アレルギー機能、抗高血圧症機能、QOL向上機能等があると言われている。また、ヤマブシタケ等に代表されるサンゴハリタケ(Hericium)属のきのこは、β−グルカンのほか、ヘリセノン類、エリナシン類などといった機能性物質を含有しており、抗認知症機能、抗痴呆機能などがあると言われている。
先に挙げたキノコ類のなかでもヤマブシタケは、種々の有用な機能性物質を含むことから、近年その需要は拡大する傾向にある。そして現状では、ヤマブシタケを健康食品として消化しやすい形態にするために種々の加工処理が施され、乾燥品、乾燥粉末品、抽出エキスなどの各種商品形態で市場に流通されている。そして、ヤマブシタケを利用した健康食品等としては、従来各種のものが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
特許文献1には、ヤマブシタケの子実体又はその処理物を添加した抗痴呆効果を有する飲食品が開示されている。特許文献2には、ヤマブシタケ等に代表されるβ−グルカンを含有する素材と、乳酸菌の加熱処理菌体(ただし死滅菌)とを有効成分として含有することを特徴とする感染抑制組成物が開示されている。特許文献3には、ヤマブシタケの乾燥子実体を90容量%以上のエタノールで抽出し、エタノール抽出液を得る工程、上記エタノール抽出液を濃縮した後、水を添加する工程、4℃以上、10℃以下の低温下で放置し、液面の浮遊物を収集する工程を含む、ヤマブシタケ由来活性物質の製造方法が開示されている。特許文献4には、ヤマブシタケの子実体の水抽出物を有効成分として含有することを特徴とする、アルツハイマー病を含む老人痴呆症などの治療又は予防に神経成長因子産生増強を要する疾患の治療剤又は予防剤が開示されている。
特開平11−56300号公報 特開2003−40785号公報 特開2009−269911号公報 特許第4410555号公報
しかしながら、ヤマブシタケを利用した特許文献1,2の健康食品や組成物は経口摂取したときに必ずしも吸収されやすい形態であるとは言えず、機能性を十分に得ることが困難であった。そのため、生体に吸収されやすい形態とすることが望まれていたが、従来そのようなものは具体的に提案されていなかった。
また、特許文献3,4の従来技術は、基本的にヤマブシタケのみから有効成分を抽出することを特徴としているものの、その種類や分量は限られていたため、得られる機能性の程度はそれほど高くはない。それゆえ、ヤマブシタケ単独ではなく、例えばヤマブシタケ以外の好ましい原料(大豆等)を併用することにより、得られる機能性の程度をより高めることが望まれていた。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、認知症等のような脳神経疾患の予防、改善等に寄与しうる有用な機能や作用を有する組成物を提供することにある。
そこで、本願発明者らが上記課題に鑑みて鋭意研究を行ったところ、ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌を含む組成物において、いくつかの有用な機能や作用が新規に見いだされ、最終的に下記の解決手段を想到するに至った。以下、上記の課題を解決するための手段[1]〜[8]を列挙する。
[1]ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、神経細胞の活性酸素による細胞死を抑制する、神経細胞死抑制用組成物。
[2]ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、血管内皮細胞の炎症による障害の発生を抑制する、血管内皮細胞障害抑制用組成物。
[3]前記組成物は、炎症性血管内皮細胞の障害局所における止血機能を促進することを特徴とする手段2に記載の血管内皮細胞障害抑制用組成物。
[4]前記組成物は、炎症性血管内皮細胞における抗血栓機能を促進することを特徴とする手段2に記載の血管内皮細胞障害抑制用組成物。
[5]前記組成物は、炎症性血管内皮細胞における血管弛緩機能を促進することを特徴とする手段2に記載の血管内皮細胞障害抑制用組成物。
[6]ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、ミクログリア細胞と類似の機能を有するマクロファージ及びそれが分化する前の単球における神経栄養因子の産生を促進する、神経栄養因子産生促進用組成物。
[7]ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、ミクログリア細胞と類似の機能を有するマクロファージ及びそれが分化する前の単球における抗血栓因子の産生を促進する、抗血栓因子産生促進用組成物。
[8]ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、高血糖による認知機能障害の発生を抑制する、認知機能障害抑制用組成物。
以上詳述したように、請求項1〜8に記載の発明によると、認知症等のような脳神経疾患の予防、改善等に寄与しうる有用な機能や作用(神経細胞死抑制作用、血管内皮細胞障害抑制作用、神経栄養因子産生促進作用、抗血栓因子産生促進作用、認知機能障害抑制作用)を有する組成物を提供することができる。
本発明を具体化した実施例2の試験結果を示すグラフ。 実施例2の試験結果を示すグラフ。 実施例3の試験結果を示すグラフ。 実施例3の試験結果を示すグラフ。 実施例4の試験結果を示すグラフ。
以下、本発明を具体化した実施形態の神経細胞死抑制、血管内皮細胞障害抑制、神経栄養因子産生促進、抗血栓因子産生促進または認知機能障害抑制のための組成物について詳細に説明する。
本実施形態の組成物は、ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含む乳酸発酵組成物であり、固形状または液体状を呈している。
固形状の乳酸発酵組成物の場合、粉末を成形して所定の形状とした錠剤、タブレット等とすることも可能である。なお、固形状の乳酸発酵組成物の利点は、液状のものに比べて水分が少ないことから保存等に適していることである。また、液体状の乳酸発酵組成物の好適例としてはドリンク剤などがあり、この場合には希釈を要さずそのまま飲むことができるストレートタイプであってもよいほか、飲むときに所定倍率に希釈する濃縮タイプであってもよい。また、本実施形態の液体状の乳酸発酵組成物は、粘性が高い(流動性が低い)液状物(例えばペースト等)であってもよいほか、粘性が低い(流動性が高い)液状物であってもよい。
この乳酸発酵組成物はヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分を含んでいる。ここで、ヤマブシタケ由来原料とは、原料であるヤマブシタケに元々含まれている各種成分及び当該各種成分中に含まれる糖類の乳酸発酵によって生成される乳酸のことを指す。食用キノコ類の一種であるヤマブシタケ(山伏茸、学名:Hericium erinaceum)は、サンゴハリタケ科サンゴハリタケ属に属する食用キノコの一種であって、子実体はかさや柄を形成せず、ゆがんだ球塊状をなし、径及び高さが8cm〜25cm程度になる。一般的にヤマブシタケには、免疫力増強効果がある機能性物質であるβ−グルカン(特にβ1,3−グルカン)が最も多く含まれている(100g中に21.9g)。加えてヤマブシタケには、神経成長因子の生産を促進させる効果を持つ物質であるため抗認知症効果や抗腫瘍活性が期待されているヘリセノン類(Hericenone A,B,C,D,E,F,G,H等)、エリナシン類(erinacine A,B,C,D,E,F,G,H,I等)も含まれているほか、炭水化物、たんぱく質、灰分、糖類、アミノ酸等も含まれている。従って、乳酸発酵されたヤマブシタケ由来成分にも、これらのものが含まれているほか、発酵生成物である乳酸が含まれている。ちなみに、ヤマブシタケは、例えば、マイタケ、メシマコブ、ハタケシメジ、アガリクス、霊芝などに匹敵する量のβ1,3−グルカンが含まれており、有効成分の1つであるβ1,3−グルカンを効率よく取得するための原料として適している。ちなみに、β1,3−グルカンを多く含むヤマブシタケを摂取した場合には、血糖調整、抗高脂血症、抗アレルギー、抗高血圧症、QOL向上等の効果を期待することができる。
上記液体状の乳酸発酵組成物は水分を含んでおり、その水分としては特に限定されず任意のものが使用可能であるが、例えば天然の硬水が好ましく、特に活性水素を供与する還元力を持った天然の硬水が好ましい。この場合、上記液体状の乳酸発酵組成物は当該天然の硬水由来のミネラル成分を好適に含んだものとなる。ここで、「天然の硬水由来のミネラル分」としては、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等に代表されるアルカリ土類金属、カリウム(K)やナトリウム(Na)等に代表されるアルカリ金属、バナジウム(V)や亜鉛(Zn)等の微量元素などを挙げることができる。なお、天然の硬水のなかでも、アルカリ土類金属が多く含まれているものが好ましく、特にはカルシウムが多く含まれているものが好ましい。その理由は、カルシウム含有量が多いと、植物性乳酸菌の生育には殆ど影響を与えることなく大腸菌等の一般生菌の生育が抑制されることから、腐敗が防止され保存性の向上につながるからである。
本発明において「硬水」とは、WHO(世界保健機関)の基準で硬度が120mg/L以上の水のことをいい、硬度が120mg/L以上180mg/L未満の“硬水”が含まれるほか、硬度が180mg/L以上の“非常な硬水”も含まれる。ここで「硬度」とは、水1L中に溶けているカルシウム及びマグネシウムの含有量を、炭酸カルシウムの含有量に換算して表わした数値のことをいう。本発明ではカルシウム等が多く含まれる“非常な硬水”を使用することが好ましい。
具体的にいうと、この乳酸発酵組成物に使用する天然の硬水としては、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムをミネラル成分として少なくとも含有するとともに、ミネラル成分のうちカルシウム含有量が最も多くかつ100mg/L以上であり、硬度が180mg/L以上のもの(即ち「非常な硬水」)であることが好ましい。この場合において、マグネシウム含有量がカルシウム含有量の1/5以下であり、カリウム含有量及びナトリウム含有量がともにマグネシウム含有量よりも少ないものであることが特に好ましい。このようなミネラルバランスを有するものは、以下のような点で好ましい。即ち、カルシウム含有量が最も多くかつ100mg/L以上であることから、上述した一般生菌生育抑制効果が得やすくなり、保存性の向上が達成されやすくなるからである。また、このようにカルシウム含有量が多いと、摂取することにより例えばインスリンの正常な分泌を促す効果を期待することができ、ひいては糖尿病発生リスクの低減につながるというメリットがある。加えて、骨粗鬆症発生のリスクの低減に関しても寄与しうる。さらに、マグネシウム含有量がカルシウム含有量の1/5以下であることから、これら成分のバランスが好適なものとなり、血流を改善する効果を期待することができる。勿論、カルシウムが少なからず含有されているため、摂取することにより例えば糖尿病発症のリスクの低減につながるというメリットがある。また、ナトリウム含有量がマグネシウム含有量よりも少ないことから、高血圧等の原因ともなりうるナトリウムの過剰接触を未然に防ぐことができる。
ここで、上記液体状の乳酸発酵組成物は大豆の乳酸発酵成分を含んでいる。ここで、大豆の乳酸発酵成分とは、原料である大豆に元々含まれている各種成分及び当該各種成分中に含まれる糖類の乳酸発酵によって生成される乳酸のことを指す。大豆には、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分、糖類、アミノ酸等が含まれているとともに、多くの機能性物質が含まれている。このような機能性物質としては、具体的には、総コレステロールを低下させる大豆レシチン、有益菌を増殖させる作用のあるオリゴ糖、抗酸化作用や血中脂質低下作用が期待できる大豆サポニン、骨粗鬆症の予防や更年期の不調を改善しうるイソフラボンなどが挙げられる。なお、乳酸発酵された大豆由来成分にも、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分、糖類、アミノ酸、機能性物質等が含まれているほか、発酵生成物である乳酸が含まれている。大豆にはたんぱく質が最も多く含まれており、このたんぱく質の一部は乳酸発酵の際の窒素源としても利用される。この大豆由来成分は、液状分及び固形分のいずれであってもよいが、少なくとも固形分を含んでいることが好ましい。大豆由来成分における固形分は、植物性乳酸菌の生菌を内部に保持する好適な保持体となりうるからである。
この乳酸発酵組成物は植物性乳酸菌を含んでいる。植物性乳酸菌とは、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖などの様々な糖を分解することができるため、野菜、豆類、穀類などの植物素材などを原料として発酵を行うことができる乳酸菌のことをいう。この乳酸発酵食品に使用される好適な植物性乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属、バチルス属等が挙げられ、具体的には、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)等を挙げることができる。乳酸発酵組成物にはここに列挙した植物性乳酸菌から選択される1種を単独で用いることができるほか、2種以上を混合して用いることもできる。なお、乳酸発酵組成物には植物性乳酸菌として市販されているものを用いてもよいが、野菜、豆類、穀類などの植物素材にて生息しているものを採取して用いてもよく、あるいは植物以外の素材(例えばヤマブシタケ等のようなキノコ類)にて生息しているものを採取して用いることもできる。なお、植物性乳酸菌を摂取した場合には、免疫力の向上化、発がん物質の排出・分解、便秘・下痢の解消、病原菌感染の予防などの効果を期待することができる。
特にこの乳酸発酵組成物には、活きたままの植物性乳酸菌が多く含まれており、具体的には生菌数が1gあたり1.0×10個以上含まれている。なお、植物性乳酸菌の生菌の多くは活性を維持したまま保持されており、例えば乳酸発酵された大豆由来成分における固形分がある存在する場合には、特にその中に保持されている。一方、乳酸発酵食品において植物性乳酸菌を除く一般細菌(大腸菌等)の生菌数は、植物性乳酸菌の生菌数に比べて非常に少ないことが要求され、具体的には1gあたり1.0×10個以下であることが好ましく、6.0×10個以下であることがより好ましく、1gあたり3.0×10個以下であることが特に好ましい。一般細菌の生菌数が少なければ少ないほど、腐敗しにくくなり保存性が向上するからである。
この乳酸発酵食品はイチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分を含んでいる。イチョウ葉由来原料は、ギンコライド、テルペン・ラクトン、フラボン・グリコシド等の有効成分を含有しており、これらはその発酵成分にも同様に含有されている。ギンコライドは、イチョウ葉の香り成分の一種であって、動脈硬化の予防、冷え性や肩こりの改善、老人性痴呆症の治療などに効果があると言われている。テルペン・ラクトンには、血管に血栓ができるのを予防する効果、血流改善効果、アレルギー発作の炎症反応を抑制する効果などがあると言われている。フラボン・グリコシドはフラボノイドの一種であって、強力な抗酸化作用が特徴で、血管壁を丈夫にする働きや炎症を抑える効果などがあると言われている。
この乳酸発酵組成物に含まれる水分、ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌の比率(重量比)は特に限定されず、任意の比率で混合されることができる。また、これらの成分以外のものが成分として含まれていても勿論構わない。具体的には、体に良いと考えられるその他の有効成分が添加されていてもよく、あるいは風味、香り、色等を付与するための成分(香料等)が添加されていてもよい。
この乳酸発酵組成物を摂取する際の濃度としては特に限定されず、原液のままであっても希釈したものであってもよいが、希釈する場合においてその濃度は例えば0.05%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、1%以上が特に好ましい。
次に、本実施形態の乳酸発酵組成物を製造する方法につき、ここでは液体状の乳酸発酵組成物を例に挙げて説明する。液体状の乳酸発酵組成物は、基本的にエキス抽出工程、エキス分離工程、原料混合工程、加熱殺菌工程及び乳酸発酵工程を経て製造される。
エキス抽出工程では、水と大豆との混合物を煮沸して、水相中に大豆エキスを溶出させる。ここで、水としては、例えば活性水素を供与する還元力を持った天然の硬水を使用してもよく、具体的には、三重県松阪市飯高町、大台山系台高山脈の地中深い鍾乳洞窟から湧き出た天然の還元水である「命の硬水(商品名)」が好適である。上記「命の硬水」は、酸化還元電位(ORP)がマイナスの値(即ち0mV未満である)を示すものである点で好ましく、具体的には−69mVという値を示すものである。
上記エキス抽出工程において、具体的には以下のようにすることが好適である。まず、水に大豆を常温で浸漬処理し、大豆に水を十分に浸透させ、大豆中の水溶性成分(即ち大豆エキス)が水相中に溶出されやすいような状態とする。勿論、大豆エキスはこの時点でもある程度水に溶出している。このときの水の配合量は大豆の配合量よりも多く、例えば質量比で3倍〜20倍程度とされる。浸漬処理の時間は例えば1時間〜48時間程度とされるが、抽出量を向上させるために例えば5時間以上とすることが好ましい。所定時間の浸漬処理の後、大豆及び天然の硬水の混合物を100℃で1時間〜5時間程度に加熱して煮沸処理し、殺菌する。この処理により混合物中に含まれている一般生菌の数を、乳酸発酵に支障がない程度まで減じることができる。
続くエキス分離工程では、エキス抽出工程を経た混合物を従来公知のろ過装置を用いてろ過して固形分である大豆残渣を除去し、大豆エキスを得るようにする。
続く原料混合工程では、得られた大豆エキスと、ヤマブシタケ粉末、イチョウ葉由来原料及び糖類とを混合する。このとき、水を適宜足してもよい。ヤマブシタケ粉末としては、従来公知の手法により、ヤマブシタケの子実体を乾燥、粉末化したものを使用することができる。イチョウ葉由来原料としては、例えばアルコール等の溶媒を用いてイチョウ葉から有効成分を抽出して得られるイチョウ葉エキス等を使用することができる。糖類としては、乳酸菌の発酵に利用可能なものであれは特に限定されず、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、シュークロース等のうちから選択される1種または2種以上を使用することができる。
各原料の配合比は特に限定されず任意に設定されうるが、水の配合比については最も多くすることが好ましく、例えば70質量%〜95質量%程度に設定される。また、大豆はヤマブシタケ粉末やイチョウ葉由来原料よりも多く配合されてもよく、糖類は乳酸発酵に必要な量だけ適宜配合される。より具体的な例を挙げると、大豆を3質量%〜10質量%程度配合し、ヤマブシタケ粉末を1質量%〜10質量%程度配合し、イチョウ葉由来原料(イチョウ葉エキス)を1質量%〜5質量%程度配合し、糖類を2質量%〜10質量%程度配合してもよい。
続く加熱殺菌工程では、原料混合工程を経た原料の混合物を加熱殺菌する。具体的には、前記混合物を加圧状態で100℃超の温度にて10分以上加熱する高圧滅菌処理を行い、乳酸発酵工程前に一般生菌の数を確実に減じておくことが好ましい。この後、原料の混合物を乳酸菌が生育しやすい温度域(例えば約35℃)まで自然にまたは強制的に冷却し、発酵槽に投入する。そして、続く乳酸発酵工程では、加熱殺菌後の前記混合物に上述した植物性乳酸菌を添加し、35℃の温度を維持しつつ30時間〜100時間程度培養して、乳酸発酵を行わせることにより、液体状の乳酸発酵組成物が製造される。その後、これを所定の容器に充填することで製品が完成する。
以下、本実施形態の各種組成物をより具体化したいくつかの実施例を示す。
<実施例1>
乳酸発酵組成物(乳酸発酵食品)の作製
まず、天然の硬水である上記「命の硬水」10Lに大豆2kgを常温で15時間浸漬処理し、上記天然の硬水を大豆に十分に浸透させることによって、大豆中の水溶性成分が水相中に溶出されやすいような状態にした。浸漬処理の後、大豆及び水の混合物を100℃で3時間加熱して煮沸処理することで、殺菌を行うとともに大豆中の水溶性成分の抽出を行った。次に、煮沸処理された前記混合物をろ過し、固形分である大豆残渣を除去し、乳酸発酵に供する大豆エキスを得た。この段階で、大豆エキスと、ヤマブシタケ粉末、イチョウ葉エキス粉末及び糖類とを混合した。その際、大豆エキスが約6.0質量%、ヤマブシタケ粉末が約2.5質量%、イチョウ葉エキス粉末が約1.0質量%、グルコースが8.5質量%となるように混合し、残りが水となるように上記天然の硬水を足した。次に、原料の混合物を121℃で20分の条件で高圧滅菌した後、35℃まで自然冷却し、発酵槽に投入した。続く乳酸発酵工程では、高圧滅菌後の前記混合物に植物性乳酸菌を添加し、35℃の温度を維持しつつ72時間培養して、乳酸発酵を行わせることにより、ドリンク剤の形態をなす液体状の乳酸発酵食品を作製した。そして、この製造方法によれば、液体状の乳酸発酵食品を効率よく確実に製造することができた。
<実施例2>
乳酸発酵組成物を用いた、神経細胞の活性酵素による細胞死に対する効果の確認試験
認知症を代表とする神経変性疾患は、加齢に伴い神経細胞が細胞死を起こして脱落してしまい脳機能が低下する病気であると考えられている。加齢による神経細胞死の原因の一つとして、活性酸素産生量が増加することが考えられる。そこで、本実施例では、実施例1で作製した乳酸発酵組成物(液体状の乳酸発酵食品)を用いるとともに、培養神経細胞の活性酵素による細胞死に対する効果の有無を確認した。
この試験では、培養神経細胞としてSH−SY5Y細胞を選択した。具体的には、10%牛胎児血清添加D−MEM培地で継代培養し、増殖期にあるSH−SY5Y細胞を用いた。そして、この細胞を96wellプレートに播種した後、24時間後に培地を入れ換え、その際に過酸化水素水を複数の濃度(0μM、10μM、25μM、75μM、100μM)に設定して添加した。その後、細胞を24時間培養した後、細胞死の発生状況(具体的には細胞生存率(%))をMTTアッセイ法により解析した。その結果を図1のグラフに示す。このグラフにおいて横軸は過酸化水素水濃度(μM)であり、縦軸は細胞生存率(%)である。
図1のグラフから明らかなように、SH−SY5Y細胞に活性酸素である過酸化水素水を加えると、濃度依存的に細胞死を起こすことが判明した。また、この細胞死はMTTアッセイで検出することができるとともに、顕微鏡下での観察からアポトーシスではなくネクローシス様の細胞死であることがわかった。そこで、最も強い細胞死を起こした100μMの濃度で過酸化水素を添加して、以後の実験を行うこととした。
次に、過酸化水素による細胞死を実施例1の乳酸発酵組成物が抑制するか否かについて検討した。この試験では、上記の過酸化水素添加培養液に対して、乳酸発酵食品を複数の濃度(0.05%、0.1%、0.5%、1%、5%)で添加し、細胞死の発生状況をMTTアッセイ法により解析した。ここでは対照として、無添加区を1つ、ヤマブシタケ抽出物のみを添加した試験区を1つ、イチョウ葉抽出物のみを添加した試験区を2つ設定し、乳酸発酵食品添加区と比較検討した。その結果を図2のグラフに示す。このグラフにおいて横軸は各被検液の濃度であり、縦軸は細胞生存率(%)である。
無添加区の細胞生存率を100とした場合、図2のグラフから明らかなように、ヤマブシタケ抽出物のみを添加した試験区、イチョウ葉抽出物のみを添加した試験区の細胞生存率は100以下となった。即ち、これらの試験区では、試験に供したいずれの濃度においても細胞死を抑制することはなかった。それに対し、乳酸発酵食品を0.1%以上添加した試験区においては、細胞生存率が100を超える値を示し、過酸化水素による細胞死を抑制する傾向が認められた。とりわけ、乳酸発酵食品を5%添加した試験区においては、細胞生存率が30%ほど増加し、明らかに過酸化水素による細胞死を抑制することがわかった。
以上のことから、本実施形態の乳酸発酵組成物は、ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌を有効成分としてバランスよく含んでいるばかりでなく、各成分が乳酸発酵を経ることで生体に吸収されやすい形態になっていると考えられた。よって、乳酸発酵を経ていないヤマブシタケ抽出物を単独で用いた場合や、乳酸発酵を経ていないイチョウ抽出物を単独で用いた場合と比較して、機能性が複合的・総合的に高まり、その結果として上記のような細胞死抑制作用が機能性として得られるに至ったものと考えられた。そして、本実施形態の乳酸発酵食品を人間等の哺乳類が適量摂取した場合には、神経細胞であるニューロンの活性酵素による細胞死の抑制につながり、ひいてはアルツハイマー型認知症等のような脳神経疾患の予防、改善、進行阻止、進行遅延等に寄与しうると推論される結果となった。以上説明したように本実施形態によれば、神経細胞の活性酸素による細胞死を抑制する好適な神経細胞死抑制用組成物を提供することができる。
<実施例3>
炎症血管内皮細胞及びヒト単球/マクロファージの遺伝子発現に対し、乳酸発酵組成物が及ぼす効果の確認試験
認知症などの神経変性疾患の発症には、血管内皮や血中免疫関連細胞の炎症が影響を与えると考えられている。本実施形態の乳酸発酵食品に含まれるヤマブシタケには、神経成長を促すヘリセノンや、自然免疫賦活作用のあるβ−グルカンなどが含まれており、認知機能障害を抑制する作用があると言われている。そこで本実施例では、ヒト血管内皮細胞及びヒト末梢血単球/マクロファージの遺伝子発現に及ぼす乳酸発酵食品含有成分の影響を解析した。
この試験では、炎症性血管内皮細胞として、コラーゲン処理培養プレートで培養したヒト血管内皮細胞(HUVEC)を選択した。この細胞に対し、最終濃度0%〜2.0%となるように乳酸発酵食品を添加した後、細菌毒素エンドトキシン(LPS)を10μg/mL)添加して24時間培養した。その後、各ウェルの細胞からRNAを抽出してcDNAを調製し、血管内皮細胞における血液凝固・炎症関連遺伝子の発現量をRT−PCRを用いて測定した。ここでは、炎症・凝固惹起タンパクである組織因子(TF:tissue factor)、抗血栓性タンパクであるトロンボモジュリン(TM:thrombomodulin)、プロテインC受容体(EPCR:endothelial protein C receptor)、細胞接着タンパクのVCAM−1(vascular cell adhesion molecule−1)、ICAM−1(intercellular adhesion molecule−1)、血管内皮細胞一酸化窒素合成酵素(e−NOS:endothelial nitric oxide synthase)、及び線溶阻害因子である組織プラスミノゲンアクチベータインヒビタ−1(PA−1:tissue plasminogen activatorinhibitor−1)を測定因子として選択して調査を行った。その結果を図3(a)〜(c)のグラフに示す。各グラフにおいて横軸は濃度(%)であり、縦軸はmRNAの発現量である。
炎症・凝固惹起因子の組織因子(TF)遺伝子の発現はLPS刺激で増加するとともに、乳酸発酵食品は濃度依存的にTF遺伝子の発現量を高めることがわかった(図3(a)参照)。プロテインC受容体(EPCR)遺伝子の発現はLPS刺激で低下するものの、乳酸発酵食品は濃度依存的に同遺伝子の発現量を高めることがわかった(図3(b)参照)。血管内皮NO産生酵素(e−NOS)遺伝子の発現はLPS刺激で増加することがわかった。また、乳酸発酵食品は、0.02%を至的濃度としてe−NOSの発現量を高め、それ以上の濃度では逆に発現量を低下させることもわかった(図3(c)参照)。これらに対して、細胞接着タンパク(VCAM−1、ICAM−1)、抗凝固因子(TM)、線溶阻害因子(PAI−1)遺伝子の発現量には変化がみられなかった。
次の試験では、ミクログリア細胞の機能に及ぼす効果を解析するために、ミクログリア細胞と機能が類似するとされるヒト末梢血単球を用いた。そしてこの単球を0%〜5%の乳酸発酵食品を含む専用無血清培地で7日間培養した後、各ウェルの培養細胞からRNAを抽出してcDNA を調製した。そして、単球/マクロファージにおける血液凝固・炎症関連遺伝子、神経細胞栄養因子などの遺伝子発現量をRT−PCRを用いて測定した。その結果を図4(a)〜(e)のグラフに示す。各グラフにおいて横軸は濃度(%)であり、縦軸はmRNAの発現量である。
抗凝固因子(TM)遺伝子の発現量は、乳酸発酵食品の添加により濃度依存的に著しく増加することがわかった(図4(a)参照)。EPCR遺伝子の発現量は、乳酸発酵食品の添加により濃度依存的に著しく増加することがわかった(図4(b)参照)。炎症・凝固惹起因子TF遺伝子の発現量は、乳酸発酵食品の添加により濃度依存的に著しく増加することがわかった(図4(c)参照)。線溶阻害因子PAI−1遺伝子の発現量は、乳酸発酵食品の添加により濃度依存的に増加し、特に1%以上の乳酸発酵食品の存在下で著しく増加することがわかった(図4(d)参照)。神経栄養因子(BDNF)遺伝子の発現量は、0.2%〜1%の乳酸発酵食品を至的濃度として増加し、それ以上の濃度では逆に低下することがわかった(図4(e)参照)。
以上のことから、本実施形態の乳酸発酵食品には、炎症血管内皮細胞に対して、傷害局所における止血機能の促進と炎症の拡大を阻止する作用、血管弛緩による血液流動性を高める作用があると考えられた。また、本実施形態の乳酸発酵食品には、単球/マクロファージに対して、細胞周囲の体液の流動性を高める作用、傷害時には凝固促進と線溶阻止とにより出血を阻止するとともに、神経の成長を促す神経栄養因子(BDNF)の産生を高める作用があるものと考えられた。そして、本実施形態の乳酸発酵食品を人間等の哺乳類が適量摂取した場合には、脳内の血管内皮細胞の炎症が阻止され当該細胞の機能障害が起きにくくなるとともに、脳ミクログリア細胞の生存・成長等が促進され、ひいては血管性認知症等のような脳神経疾患の予防、改善、進行阻止、進行遅延等に寄与しうると推論される結果となった。なお、上記各種の作用により機能性が複合的・総合的に高められたのは、本実施形態の乳酸発酵組成物が、ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌を有効成分としてバランスよく含んでいるばかりでなく、各成分が乳酸発酵を経ることで生体に吸収されやすい形態になっているからであると考えられた。
以上説明したように本実施形態によれば、炎症性血管内皮細胞の障害局所における止血機能の促進、同細胞における抗血栓機能の促進、同細胞における血管弛緩機能の促進という作用により、血管内皮細胞の炎症による障害の発生を抑制する好適な血管内皮細胞障害抑制用組成物を提供することができる。また、ミクログリア細胞と類似の機能を有するマクロファージ及びそれが分化する前の単球における神経栄養因子の産生を促進する好適な神経栄養因子産生促進用組成物を提供することができる。さらに、マクロファージ及び単球における抗血栓因子の産生を促進する好適な抗血栓因子産生促進用組成物を提供することができる。
<実施例4>
糖負荷マウスモデルにおける身体状態、認知機能の変化に対し、乳酸発酵組成物が及ぼす影響の確認試験
近年、the action to control cardiovascular risk in diabetes−memory in diabetes(ACCORD−MIND)研究など、多くの研究から血糖の上昇に伴う認知機能の低下が報告されている。ヤマブシダケには、抗腫瘍活性や認知機能改善効果が期待されているほか、D−スレイトール、D−アラビニトール、パルミチン酸などの抗酸化物質を含むことから血中脂質量を調整し、血糖値を低減させる効果も期待されている。そこで本実施例では、認知機能や脳組織への糖負荷の影響、及び乳酸発酵組成物の影響を糖負荷モデル動物を用いて検討した。
試験に用いる動物としては、ddY系雄性マウス3週齢を用いた。このマウスをコントロール群(a群)、乳酸発酵食品摂取群(b群)、糖負荷(高血糖)群(c群)、糖負荷(高血糖)+乳酸発酵食品摂取群(d群)、の4つに群分けし、各群6匹として4か月間糖負荷試験を行った。食事については、糖負荷を加えない群(即ちa、b群)に対し通常餌を与える一方、糖負荷を加える群(即ちc、d群)に対しIO Rodent P.D. with 60% Kcal from Fat(Dyed Blue)(SLC)を与えた。飲水については、コントロール群(即ちa群)に対し通常の水道水を与える一方、 糖負荷を加える群(即ちc、d群)に対し10%LD104 (Meltodextrin)(SLC)を水道水で10%に希釈したものを与えた。また、乳酸発酵食品を摂取させる群(即ちb群)に対しては、実施例4で作製した液体状乳酸発酵食品を水道水で30%に希釈したものを、飲水として与えた。そして、上記a〜dの各群について、身体状況の変化を調査するために、体重及び血糖値を各月の初旬に測定して比較した。その結果を表1に示す。また、認知機能の変化を調査するために、各群のマウスを前日から絶食させて八方迷路にて試験した。この八方迷路試験では、報酬である食餌に対する探索行動における試行達成時間を上記a〜dの各群について測定し、それらを比較した。その結果を図5のグラフに示す。このグラフにおいて縦軸は1回目のトライアルのときの試行達成時間(秒)であり、横軸は試験日(試験開始から経過した月数)である。
その結果、表1に示されるように、体重は各群で経月的に増加し、とりわけ糖負荷を加える群(即ちc、d群)では糖負荷を加えない群(即ちa、b群)よりも体重増加が大きくなる傾向があった。具体的には、4か月目においては、糖負荷群であるc群の体重は、コントロール群であるa群の約150%程度となった。糖負荷を加えつつ乳酸発酵食品を自由摂取させたd群の体重は、コントロール群であるa群の約120%となり、c群ほど体重の増加が顕著ではなかった。なお、糖負荷を加えずに乳酸発酵食品を自由摂取させたb群の体重は、コントロール群であるa群の約85%となった。
また、コントロール群であるa群、糖負荷に加えずに乳酸発酵食品を自由摂取させたb群、糖負荷を加えつつ乳酸発酵食品を自由摂取させたd群の血糖値は、いずれも4か月を通じて平均120mg/dLであった。これに対して、糖負荷群であるc群の血糖値は、経月的に上昇し、4か月目には約220mg/dLとなった。つまり、血糖値は糖負荷を加えることで増加するものの、糖負荷を加えつつ乳酸発酵食品を自由摂取させることにより、コントロール群であるa群と同程度まで血糖値が回復する傾向が認められた。
八方迷路試験を行ったところ、図5のグラフに示されるように、試験開始から経過した月数が増えるにつれて、全体として試行達成時間が短くなる傾向が認められた。また、コントロール群であるa群に比べて、糖負荷を加えたc群のほうが、試行達成時間が長くなる傾向が認められたため、マウスの認知機能に何らかの障害が起きていることが示唆された。これに対し、糖負荷を加えつつ乳酸発酵食品を自由摂取させたd群では、糖負荷を加えたc群より試行達成時間が短くなる傾向があり、糖負荷による認知機能障害の発生が抑制されていることが示唆された。なお、糖負荷を加えずに乳酸発酵食品を自由摂取させたb群では、他の群よりも試行達成時間が短くなる傾向が認められ、マウスの認知機能が向上していることが示唆された。
以上のことから、いくつかの有効成分をバランスよく含み機能性が複合的・総合的に高められている本実施形態の乳酸発酵食品には、マウスに対して高血糖による認知機能障害を抑制する作用、血糖値の上昇を抑制する作用、記憶力を改善する作用があることがわかった。そして、本実施形態の乳酸発酵食品をマウスと同じ哺乳類である人間が適量摂取した場合においても、同様の作用が期待できるものと考えられた。以上説明したように本実施形態によれば、高血糖による認知機能障害の発生を抑制する好適な認知機能障害抑制用組成物を提供することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段2において、前記組成物は、炎症性血管内皮細胞の障害局所における止血機能を促進する遺伝子(TF)の発現を増幅すること。
(2)上記手段2において、前記組成物は、炎症性血管内皮細胞における抗血栓機能を促進する遺伝子(EPCR)の発現を増幅すること。
(3)上記手段2において、前記組成物は、炎症性血管内皮細胞における血管弛緩機能を促進する遺伝子(e−NOS)の発現を増幅すること。
(4)上記手段6において、前記組成物は、神経栄養因子の産生を促進する遺伝子(BDNF)の発現を増幅すること。
(5)上記手段7において、前記組成物は、抗血栓因子の産生を促進する遺伝子(TM、EPCR)の発現を増幅すること。

Claims (8)

  1. ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、神経細胞の活性酸素による細胞死を抑制する、神経細胞死抑制用組成物。
  2. ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、血管内皮細胞の炎症による障害の発生を抑制する、血管内皮細胞障害抑制用組成物。
  3. 前記組成物は、炎症性血管内皮細胞の障害局所における止血機能を促進することを特徴とする請求項2に記載の血管内皮細胞障害抑制用組成物。
  4. 前記組成物は、炎症性血管内皮細胞における抗血栓機能を促進することを特徴とする請求項2に記載の血管内皮細胞障害抑制用組成物。
  5. 前記組成物は、炎症性血管内皮細胞における血管弛緩機能を促進することを特徴とする請求項2に記載の血管内皮細胞障害抑制用組成物。
  6. ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、ミクログリア細胞と類似の機能を有するマクロファージ及びそれが分化する前の単球における神経栄養因子の産生を促進する、神経栄養因子産生促進用組成物。
  7. ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、ミクログリア細胞と類似の機能を有するマクロファージ及びそれが分化する前の単球における抗血栓因子の産生を促進する、抗血栓因子産生促進用組成物。
  8. ヤマブシタケ由来原料の乳酸発酵成分、大豆の乳酸発酵成分、イチョウ葉由来原料の乳酸発酵成分及び植物性乳酸菌の生菌をその有効成分として含み、高血糖による認知機能障害の発生を抑制する、認知機能障害抑制用組成物。
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