JP2020076075A - 粘着剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】粘着性及び再剥離性に優れた粘着剤組成物を提供すること。【解決手段】改質セルロース繊維とマトリクス樹脂を配合してなる粘着剤組成物であって、前記改質セルロース繊維が以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上である、粘着剤組成物;改質セルロース繊維(A):イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維;改質セルロース繊維(B):セルロース繊維の水酸基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維。【選択図】なし

Description

本発明は粘着剤組成物に関する。
粘着剤は情報機器、家電、建材、自動車、生活用品といった多岐に渡る分野で利用されており、例えばディスプレイの保護フィルムやラベルシールなどでは、通常は剥離しないほどの粘着性を有しつつも、剥離時には粘着剤が被着体に残存しないことや被着体を破壊しないこと(再剥離性)が要求される。
しかし、粘着性と再剥離性は相反する性質であり、それらを両立させるのは困難である。
粘着性と再剥離性を両立させる方法として、例えば、特許文献1には粘着剤成分を化学的に架橋する方法が、特許文献2には粘着剤にフィラーとしてナノ結晶性セルロースを配合する方法が開示されている。
特開2003−147311号公報 特表2017−533289号公報
しかしながら特許文献1のような架橋による粘着性と再剥離性の両立は、架橋の反応制御が困難であり、安定した効果を得られない。また、特許文献2では、ナノ結晶性セルロースと粘着剤の相溶性が悪いためか十分な効果は得られていない。
本発明は、粘着性および再剥離性に優れた粘着剤組成物に関する。
本発明は、下記の〔1〕〜〔4〕に関する。
〔1〕 改質セルロース繊維とマトリクス樹脂を配合してなる粘着剤組成物であって、前記改質セルロース繊維が以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上である、粘着剤組成物。
改質セルロース繊維(A):イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
改質セルロース繊維(B):セルロース繊維の水酸基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
〔2〕 前記改質セルロース繊維(A)及び前記セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上の改質セルロース繊維並びにマトリクス樹脂を混合する工程を含む、粘着剤組成物の製造方法。
〔3〕 前記〔1〕に記載の粘着剤組成物又は前記〔2〕に記載の粘着剤組成物の製造方法によって製造された粘着剤組成物からなる粘着剤層。
〔4〕 前記〔3〕に記載の粘着剤層を備える粘着シート。
本発明によれば、粘着性および再剥離性に優れた粘着剤組成物を提供することができるという優れた効果を奏する。
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、改質セルロース繊維とマトリクス樹脂とを配合してなるものである。
本発明の粘着剤組成物は優れた粘着性と優れた再剥離性を両立できる効果を発揮する。本発明の粘着剤組成物がこのような優れた効果を発揮できるメカニズムは定かではないが、下記改質セルロース繊維の粘着剤や分散媒への分散性が高いためであると考えられる。本発明の粘着剤組成物はさらに透明性や強度が向上したものである。
〔改質セルロース繊維〕
本発明における改質セルロース繊維とは、以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上であり、改質セルロース繊維(A)を含むものが好ましい。かかる特定の改質セルロース繊維を有する粘着剤組成物は、意外にも再剥離性が高いことが、本発明者らによって見出された。
改質セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境負荷の観点から、天然セルロース繊維を用いることが好ましい。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径や平均繊維長は特に限定されない。平均繊維径としては、例えば、入手容易性の観点から、好ましくは1μm以上であり、同様の観点から、好ましくは100μm以下である。平均繊維長としては、例えば、入手容易性の観点から、好ましくは1000μm以上であり、同様の観点から、好ましくは10000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径や平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
<改質セルロース繊維(A)>
本発明における改質セルロース繊維(A)とは、イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維である。
(イオン性基)
イオン性基を含むセルロース繊維とは、セルロース繊維中にイオン性基を含むように変性されたセルロース繊維のことである。
イオン性基としては、例えば、アニオン性基及びカチオン性基が挙げられる。アニオン性基としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられ、カチオン性基としては、その基内にアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基が挙げられる。改質セルロース繊維(A)への導入効率の観点から、イオン性基としてはアニオン性基が好ましく、アニオン性基としてはカルボキシ基がより好ましい。
イオン性基がアニオン性基である場合、アニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)は、金属イオン及びプロトンからなる群より選択される1種以上である。金属イオンとしては一価のカチオンが好ましく、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。改質セルロース繊維への反応効率の観点から、好ましくはプロトンである。
イオン性基を含むセルロース繊維におけるイオン性基の含有量は、安定的な微細化及び修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上である。同様の観点から、その上限は、好ましくは3.0mmol/g以下であり、より好ましくは2.0mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。イオン性基がアニオン性基の場合のアニオン性基の含有量は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
(修飾基)
改質セルロース繊維(A)においては、イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合している。ここでの結合様式としては、イオン結合及び共有結合(例えば、アミド結合、エステル結合及びウレタン結合等)が挙げられる。
改質セルロース繊維(A)における修飾基としては、各種の炭化水素基(例えば鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基等の炭化水素基)やアルキル基に共重合部位が結合した基等が挙げられる。これらの基は単独で又は2種以上を組み合わせて、改質セルロース繊維(A)に導入されていてもよい。
修飾基としての炭化水素基の炭素数は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。なお、炭化水素基の炭素数とは、別に規定の無い限り、一つの修飾基における炭素数のことを意味する。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられる。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、オクタデセン基が挙げられる。
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が置換基でさらに置換された基などが挙げられる。
修飾基が炭化水素基であり、該炭化水素基が置換基を有する場合は、置換基として、例えば炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基;アルコキシ基の炭素数が1〜6の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1〜6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1〜6のジアルキルアミノ基や、水酸基、エーテル、アミド等を用いてもよい。なお、前述の各種の炭化水素基そのものが別の炭化水素基に置換基として結合していてもよい。
アルキル基に共重合部位が結合した基における共重合部位としては、例えば、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(EO/PO)共重合部位等が挙げられる。(EO/PO)共重合部位とは、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)がランダム又はブロック状に重合した構造を意味する。アルキル基に(EO/PO)共重合部位が結合した基としては、例えば下記式(i’)で示される基が挙げられる。
Figure 2020076075
〔式中、Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はそのアミノアルキル基を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す正の数、bはPOの平均付加モル数を示す正の数である。ここで、「そのアミノアルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を構成する水素原子の一つがアミノ基で置換された基を意味する。式(i)中、アミノ基とEO又はPOとの間に、炭素数1〜3のアルキレン基が存在していてもよい。〕
は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から水素原子であることが好ましい。Rが炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である場合、該アルキル基は好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基及びsec−プロピル基である。
aは、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは1以上であり、好ましくは3以上であり、好ましくは6以上であり、好ましくは11以上であり、より好ましくは15以上であり、更に好ましくは20以上であり、更に好ましくは25以上であり、更に好ましくは30以上である。同様の観点から、好ましくは100以下であり、より好ましくは70以下であり、更に好ましくは60以下であり、更に好ましくは50以下であり、更に好ましくは40以下である。
bは、粘着性と再剥離性を両立させる観点から好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上であり、更に好ましくは5以上である。同様の観点から、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、更に好ましくは30以下であり、更に好ましくは25以下であり、更に好ましくは20以下であり、更に好ましくは15以下であり、更に好ましくは10以下である。
前記炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。
(EO/PO)共重合部位中のPOの含有率(モル%)は、前記aとbに基づいて計算することが可能であり、具体的にはb×100/(a+b)より求めることができる。POの含有率は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは5モル%以上であり、更に好ましくは7モル%以上であり、更に好ましくは10モル%以上である。同様の観点から、好ましくは100モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下であり、更に好ましくは85モル%以下であり、更に好ましくは75モル%以下であり、更に好ましくは60モル%以下であり、更に好ましくは50モル%以下であり、更に好ましくは40モル%以下であり、更に好ましくは30モル%以下である。
(EO/PO)共重合部位の分子量は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から好ましくは100以上であり、より好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上であり、より好ましくは500以上であり、より好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは1,500以上である。同様の観点から、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは7,000以下であり、更に好ましくは5,000以下であり、更に好ましくは4,000以下であり、更に好ましくは3,500以下であり、更に好ましくは2,500以下である。
式(i)で表されるEO/PO共重合部位を有するアミンは、式(i’)で示される修飾基を導入するための修飾用化合物であり、該アミンについての詳細は、例えば特許第6105139号公報に記載されている。
前記EO/PO共重合部位を有するアミン(「EOPOアミン」とも称する。)は、例えば、市販品を好適に用いることができ、具体例としては、HUNTSMAN社製のJeffamine M−2070、Jeffamine M−2005、Jeffamine M−2095、Jeffamine M−1000、Jeffamine M−600、Surfoamine B200、Surfoamine L100、Surfoamine L200、Surfoamine L207,Surfoamine L300、XTJ−501、XTJ−506、XTJ−507、XTJ―508;BASF社製のM3000、Jeffamine ED−900、Jeffamine ED−2003、Jeffamine D−2000、Jeffamine D−4000、XTJ−510、Jeffamine T−3000、JeffamineT−5000、XTJ−502、XTJ−509、XTJ−510等が挙げられる。
改質セルロース繊維(A)における修飾基の平均結合量は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは0.01mmol/g以上であり、より好ましくは0.05mmol/g以上であり、更に好ましくは0.1mmol/g以上であり、更に好ましくは0.3mmol/g以上であり、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。同様の観点から、好ましくは3.0mmol/g以下であり、より好ましくは2.5mmol/g以下であり、更に好ましくは2.0mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下であり、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時に改質セルロース繊維(A)に導入されている場合、修飾基の平均結合量は、導入されている修飾基の合計量が前記範囲内であることが好ましい。
改質セルロース繊維(A)における修飾基の導入率は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは10%以上であり、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは50%以上であり、更に好ましくは60%以上であり、更に好ましくは70%以上であり、同様の観点から、好ましくは99%以下であり、より好ましくは97%以下であり、更に好ましくは95%以下であり、更に好ましくは90%以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100%を超えない範囲において、前記範囲内となることが好ましい。
修飾基の平均結合量及び導入率は、修飾基を導入するための化合物、即ち修飾用化合物の添加量や種類、反応温度、反応時間、溶媒の種類等によって調整することができる。修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、改質セルロース繊維(A)において、イオン性基に修飾基が導入された(結合した)量及び割合のことである。修飾基の平均結合量及び導入率は、例えば、イオン性基がアニオン性基の場合には、後述の実施例に記載の方法で算出される。
(改質セルロース繊維(A)の製造方法)
改質セルロース繊維(A)は、例えば、イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、イオン性基がカルボキシ基の場合、特開2018−024967号公報の段落0017〜0106等を参照して改質セルロース繊維(A)を製造することができる。イオン性基がスルホン酸基の場合、セルロース繊維へスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。イオン性基がリン酸基の場合、セルロース繊維へリン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液にリン酸又はリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。修飾基を導入する方法としては、修飾基を有する化合物と、リン酸基を有するセルロース繊維とを混合する方法等が挙げられる。イオン性基がカチオン性基の場合、セルロース繊維にカチオン性基を導入する方法としては、セルロース繊維にアルカリの存在下においてカチオン化剤で処理する方法等が挙げられる。なお、改質セルロース繊維(A)の製造の際には、特開2018−024967号公報における低アスペクト比化処理や微細化工程を省略することができる。
<改質セルロース繊維(B)>
本発明における改質セルロース繊維(B)とは、セルロース繊維の水酸基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維である。
(修飾基)
改質セルロース繊維(B)において、セルロース繊維と修飾基とはエーテル結合を介して結合している。なお、本明細書において、「エーテル結合を介して結合」とは、セルロース繊維の水酸基に修飾基が反応して、エーテル結合した状態を意味する。
改質セルロース繊維(B)における修飾基は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭化水素基である。ここで、置換基を有してもよい炭化水素基において、炭化水素基としては、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、又はシクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基が挙げられる。また、本発明における置換基を有してもよい炭化水素基において、置換基としては、ハロゲン原子、オキシエチレン基等のオキシアルキレン基及び水酸基等が挙げられる。
このような改質セルロース繊維(B)の好適な態様(「態様1」とする)として、例えば、下記一般式(1)で表される修飾基及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基がエーテル結合を介してセルロース繊維に結合しており、セルロースI型結晶構造を有するものが挙げられる。
−CH−CH(R)−R (1)
−CH−CH(R)−CH−(OA)−O−R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRは水素原子又は水酸基を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルを示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す。〕
態様1の具体例としては、例えば、下記一般式(4)で表される改質セルロース繊維が例示される。
Figure 2020076075
〔式中、Rは同一又は異なって、水素、もしくは前記一般式(1)で表される修飾基及び前記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる修飾基を示す。但し、全てのRが同時に水素である場合を除く。mは20以上3000以下の整数が好ましい。〕
一般式(4)で表される改質セルロース繊維(B)は、前記修飾基が導入されたセルロースユニットの繰り返し構造を有するものである。繰り返し構造の繰り返し数として、一般式(4)におけるmは、粘着性と再剥離性を両立させる観点から20以上3000以下の整数が好ましい。
(置換基を有していてもよい炭化水素基)
態様1の改質セルロース繊維(B)は、前記の一般式(1)及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基を単独で又は任意の組み合わせで導入される。なお、導入される修飾基が前記修飾基群のいずれか一方の場合であっても、各修飾基群においては同一の修飾基であっても2種以上が組み合わさって導入されてもよい。
粘着性と再剥離性を両立させる観点から、一般式(1)及び一般式(2)におけるRは水酸基が好ましい。
一般式(1)におけるRの炭素数は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは25以下である。具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、イコシル基、トリアコンチル基等が例示される。
一般式(2)におけるRの炭素数は、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは4以上であり、入手性及び反応性向上の観点から、好ましくは27以下である。具体的には、前記した一般式(1)におけるRと同じものが挙げられる。
一般式(2)におけるAは、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基を形成する。Aの炭素数は、入手性及びコストの観点から、好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは4以下である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が例示される。
一般式(2)におけるnは、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。nは、分散性、入手性及びコストの観点から、好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下である。
一般式(2)におけるAとnの組み合わせとしては、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが0以上20以下の数の組み合わせである。
一般式(1)で表される修飾基の具体例としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、イコシル基、プロピルヒドロキシエチル基、ブチルヒドロキシエチル基、ペンチルヒドロキシエチル基、ヘキシルヒドロキシエチル基、ヘプチルヒドロキシエチル基、オクチルヒドロキシエチル基、2−エチルヘキシルヒドロキシエチル基、ノニルヒドロキシエチル基、デシルヒドロキシエチル基、ウンデシルヒドロキシエチル基、ドデシルヒドロキシエチル基、ヘキサデシルヒドロキシエチル基、オクタデシルヒドロキシエチル基、イソオクタデシルヒドロキシエチル基、イコシルヒドロキシエチル基、トリアコンチルヒドロキシエチル基等が挙げられる。
一般式(2)で表される修飾基の具体例としては、例えば、3−ブトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル−3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル−3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は0以上50以下であればよく、例えば、前記したエチレンオキシド等のオキシアルキレン基を有する置換基において付加モル数が10、12、13、20モルの置換基が例示される。
(導入率)
態様1の改質セルロース繊維(B)において、セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する修飾基の導入率は、修飾基の種類により一概には限定できないが、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは0.0001モル以上であり、また、セルロースI型結晶構造を有し、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、好ましくは1.5モル以下である。ここで、結合した修飾基が複数種の修飾基で構成されている場合、結合した修飾基の導入率は、各修飾基の導入率の合計である。なお、本明細書において、改質セルロース繊維(B)における修飾基の導入率は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
<改質セルロース繊維(B)の製造方法>
本発明における改質セルロース繊維(B)は、上記したようにセルロース繊維に、修飾基、好ましくは前記の修飾基を有していてもよい炭化水素基がエーテル結合を介して結合しているが、修飾基の導入は、特に限定なく公知の方法に従って行うことができる。以下、態様1の改質セルロース繊維(B)を製造する方法の具体的な例を説明する。
(態様1の改質セルロース繊維(B)を製造する方法)
態様1の改質セルロース繊維(B)の製造方法の具体例として、原料のセルロース繊維に対し、塩基存在下、特定の化合物を反応させる態様が挙げられる。
また、製造工程数低減の観点から、あらかじめ微細化されたセルロース繊維を原料のセルロース繊維として用いてよく、その場合の平均繊維径は、入手性およびコストの観点から、好ましくは1nm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性の観点から、好ましくは500nm以下である。
(塩基)
塩基としては、特に制限はないが、エーテル化反応を進行させる観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、特開2017−053077号公報の段落0053〜0058に記載の塩基が挙げられる。
塩基の量は、原料のセルロース繊維の無水グルコースユニットに対して、エーテル化反応を進行させる観点から、好ましくは0.01当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下である。
なお、前記原料のセルロース繊維と塩基の混合は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
原料のセルロース繊維と塩基の混合は、均一に混合できるのであれば、温度や時間は特に制限はない。
次に、前記で得られた原料のセルロース繊維と塩基の混合物に、修飾用化合物(本明細書において「エーテル化剤」ともいう)、好ましくは置換基を有していてもよい炭化水素基を導入するための化合物を添加して、原料のセルロース繊維とかかる化合物とを反応させる。かかる化合物としては、反応性を有する環状構造基を有する化合物を用いることが好ましく、エポキシ基を有する化合物を用いることがより好ましい。
一般式(1)で表される修飾基をエーテル結合を介して結合させることができる化合物としては、例えば、特開2017−053077号公報の段落0079〜0084に記載の酸化アルキレン化合物が挙げられる。
一般式(2)で表される修飾基をエーテル結合を介して結合させることができる化合物としては、例えば、特開2017−053077号公報の段落0085〜0091に記載のグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
修飾用化合物の量は、得られる改質セルロース繊維(B)における修飾基の所望の導入率により決めることができるが、反応性の観点から、原料のセルロース繊維の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下である。
(エーテル化反応)
前記化合物と原料のセルロース繊維とのエーテル化反応は、溶媒の存在下で、両者を混合することにより行うことができる。溶媒としては、特に制限はなく、前記塩基を存在させる際に使用することができると例示した溶媒を用いることができる。エーテル化反応の詳細については、特開2017−053077号公報の段落0070〜0075の記載を参照することができる。
このようにして得られた態様1の改質セルロース繊維(B)を、公知の微細化処理、例えば、有機溶媒中で高圧ホモジナイザー等を用いた処理を行ってもよい。
上記の改質セルロース繊維(A)及び(B)のいずれに関しても、改質セルロース繊維は、分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状の改質セルロース繊維を得て、これを使用することもできる。ここで「粉末状」とは、改質セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。
粉末状の改質セルロース繊維としては、例えば、前記セルロース繊維の分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;前記セルロース繊維の分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;前記セルロース繊維の分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、前記セルロース繊維の分散液を大気中で噴霧し、乾燥させる方法である。
<改質セルロース繊維の特性>
改質セルロース繊維は、その原料として天然セルロース繊維を使用していることに起因して、セルロースI型結晶構造を有している。セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうちのセルロースI型結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
改質セルロース繊維のセルロースI型結晶化度は、再剥離性の観点から、好ましくは30%以上であり、より好ましくは35%以上であり、更に好ましくは40%以上であり、更に好ましくは45%以上である。また、使用するセルロース原料のコストの観点から、好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下であり、更に好ましくは85%以下であり、更に好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロース繊維や改質セルロース繊維等におけるセルロースI型結晶化度は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
改質セルロース繊維の平均繊維径は、改質セルロース繊維とマトリクス樹脂等とを混合する前に改質セルロース繊維の微細化処理を行うか否かによって異なる。微細化処理を行う場合の平均繊維径は、マトリクス樹脂との分散性の観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは0.5nm以上であり、更に好ましくは1.0nm以上であり、更に好ましくは2.0nm以上であり、更に好ましくは3.0nm以上である。同様の観点から、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、更に好ましくは20nm以下であり、更に好ましくは10nm以下であり、更に好ましくは6.0nm以下であり、更に好ましくは5.0nm以下である。一方、微細化処理を行わない場合の平均繊維径は特に限定されず、原料のセルロース繊維と同程度でよい。改質セルロース繊維の平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
改質セルロース繊維の平均繊維長は、改質セルロース繊維とマトリクス樹脂等とを混合する前に改質セルロース繊維の微細化処理を行うか否かによって異なる。微細化処理を行う場合の平均繊維長は、再剥離性の観点から、好ましくは150nm以上であり、より好ましくは200nm以上である。同様の観点から、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは750nm以下であり、更に好ましくは500nm以下であり、更に好ましくは400nm以下である。一方、微細化処理を行わない場合の平均繊維長は特に限定されず、原料のセルロース繊維と同程度でよい。改質セルロース繊維の平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
改質セルロース繊維の平均アスペクト比、すなわち平均繊維長/平均繊維径の値は、再剥離性の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは20以上であり、更に好ましくは40以上であり、更に好ましくは50以上であり、その上限は好ましくは250以下であり、より好ましくは200以下であり、更に好ましくは150以下であり、更に好ましくは100以下であり、更に好ましくは90以下である。同様の観点から、平均アスペクト比が前記範囲内にある場合、アスペクト比の標準偏差は、好ましくは60以下であり、より好ましくは50以下であり、更に好ましくは45以下であり、下限は特に設定されないが、経済性の観点から、好ましくは4以上である。改質セルロース繊維の平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
本発明の粘着剤組成物における改質セルロース繊維の配合量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。一方、前記配合量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
〔マトリクス樹脂〕
マトリクス樹脂は、粘着剤組成物のマトリクスとなる樹脂成分であり、用途や所望の特性に応じて、適宜選択できる。
このようなマトリクス樹脂としては、単独で粘着性を有する樹脂や、硬化剤と併用することにより粘着性を発揮するものが好ましい。マトリクス樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含むものが挙げられ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、水溶性酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、シアノアクリレート、エチレン酢酸ビニル等が挙げられる。樹脂は、水不溶性のものがより好ましく、この場合、後述する改質セルロース繊維の分散や混合を容易に行うことができる。上述した中では、粘着性と再剥離性を両立させる観点から、アクリル樹脂が好ましい。樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を重合して得られる樹脂である。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体でもよく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量との共重合体でもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、粘着性と再剥離性を両立させる観点から好ましい。
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐脂肪族アルコールのアクリル酸エステル、及び対応するメタクリル酸エステル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は二種類以上を併用することができる。
本発明の粘着剤組成物におけるマトリクス樹脂の配合量は、所望の効果を発揮させる観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。一方、溶媒又は分散媒の量を考慮しない場合、前記配合量は、所望の効果を発揮させる観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。さらに、溶媒又は分散媒の量を考慮する場合、前記配合量は、同様の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。なお、ここでいう「溶媒又は分散媒」とは、粘着剤層を形成させる観点や、粘着剤組成物の取り扱い性や成型加工性改善の目的で添加することができる、マトリクス樹脂を溶解又は分散させる後述の成分である。
所望の効果を発揮させる観点から、本発明の粘着剤組成物における改質セルロース繊維とマトリクス樹脂との質量比(改質セルロース繊維/マトリクス樹脂)は特定の範囲を満たすことが好ましい。具体的には、前記質量比は好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.02以上であり、一方、前記質量比は好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.03以下である。
本発明の粘着剤組成物は、マトリクス樹脂の硬化剤や硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化剤としては、樹脂の種類に応じて適宜選択でき、例えば、樹脂がアクリル樹脂である場合の硬化剤としては、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。硬化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、硬化剤は、硬化促進剤として作用する場合もある。
硬化剤の割合は、マトリクス樹脂や硬化剤の種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、マトリクス樹脂100質量部に対して好ましくは0.1〜300質量部である。
〔溶媒又は分散媒〕
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成させる観点から、更に、溶媒や分散媒を配合することが好ましい。
本発明の粘着剤組成物に配合され得る溶媒又は分散媒としては、例えば、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メタクリル酸メチル、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒又は分散媒を使用する場合、その量としては、例えば、マトリクス樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは300質量部以上であり、一方、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。
〔他の添加剤〕
なお、本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて、他の添加剤を含んでいても良い。他の添加剤としては、架橋剤、タッキファイヤー、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤などが挙げられる。
〔粘着剤組成物の製造方法〕
本発明の粘着剤組成物は、上記に例示した各構成要素を混合して製造することができる。例えば、上記の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上の改質セルロース繊維とマトリクス樹脂とを混合する工程を含む製造方法により、粘着剤組成物を製造することができる。より具体的には、例えば、適切な溶媒又は分散媒で希釈して混合する方法、改質セルロース繊維を例えば含有水分率5%未満の乾燥体にして混合する方法、改質セルロース繊維を種々の方法で濃縮してスラリーとして混合する方法、超音波破砕機とホモジナイザーを単独で又は組み合わせて攪拌しながら混合する方法、減圧攪拌機を用いて混合する方法などが挙げられる。
〔粘着剤層〕
本発明の粘着剤層は、前述の本発明の粘着剤組成物又は前述の本発明の粘着剤組成物の製造方法によって製造された粘着剤組成物からなるものである。粘着剤層の形成方法は、特に限定されるものではなく、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、ブラシコーティングなどの公知の塗工方法を採用することができる。
本発明の粘着剤層の厚みは特に制限はなく、層の耐久性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、経済性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは100μm以下である。なお、層の厚みは、塗工時の設定や粘着剤組成物中の溶媒又は分散媒の割合を調整することにより、所望の値とすることができる。
本発明の粘着剤層における改質セルロース繊維の配合量は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。一方、前記配合量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
本発明の粘着剤層におけるマトリクス樹脂の配合量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。一方、前記配合量は、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下である。
本発明の粘着剤層には、本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。層における任意成分の配合量は、好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下である。任意成分が2種以上の場合、任意成分の量は各任意成分の合計量である。
所望の効果を発揮させる観点から、本発明の粘着剤層における改質セルロース繊維とマトリクス樹脂との質量比(改質セルロース繊維/マトリクス樹脂)は特定の範囲を満たすことが好ましい。なお、具体的な好ましい質量比は、粘着剤組成物における好ましい質量比と同様である。
〔粘着シート〕
本発明の粘着シートは、前記本発明の粘着剤層を備えるものであり、粘着剤層が支持体の表面に形成されたものが好ましい態様である。本発明の粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルムと称されるものが包含される。
粘着シートにおける粘着剤層は支持体の片面又は両面に有する。粘着剤層が剥離シートに保持された形態等、支持体が無い態様も、本発明の粘着シートに包含される。
支持体の素材としては、公知の粘着シートに用いられている素材、例えば、紙、プラスチック、織布、不織布、金属又はセラミックスが挙げられる。
粘着シートにおける粘着剤組成物の塗工量は、充分な粘着性を発揮する観点から、好ましくは30.0g/m以上であり、より好ましくは40.0g/m以上である。一方、費用対効果の観点から、該塗工量は好ましくは100.0g/m以下であり、より好ましくは80.0g/m以下である。粘着シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔セルロース繊維における結晶構造の確認〕
セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、「RigakuRINT 2500VC X−RAY diffractometer」)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kv、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出する。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
〔セルロース繊維の平均繊維径〕
(1)測定対象のセルロース繊維の平均繊維径が数ナノメートル〜百ナノメートル程度であると見込まれる場合、次のようにしてセルロース繊維の平均繊維径を求める。
測定対象のセルロース繊維に水又はエタノールを加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅とみなすことができる。
(2)測定対象のセルロース繊維の平均繊維径が百ナノメートル程度を超え、最大で数千マイクロメートル程度であると見込まれる場合、次のようにしてセルロース繊維の平均繊維径を求める。
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF−3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。
〔改質セルロース繊維(A)のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−701」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)
〔改質セルロース繊維(A)の修飾基の平均結合量及び導入率(イオン結合)〕
修飾基の結合量を次のIR測定方法によって求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させたイオン性基を含むセルロース繊維又は改質セルロース繊維を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、次式により、イオン結合による修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。以下はイオン性基がカルボキシ基の場合を示す。以下の「1720cm−1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のイオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の結合量(mmol/g)=[カルボキシ基を含むセルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×[(カルボキシ基を含むセルロース繊維の1720cm−1のピーク強度−改質セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度)/カルボキシ基を含むセルロース繊維の1720cm−1のピーク強度]
修飾基の導入率(%)=100×(修飾基の結合量(mmol/g))/(カルボキシ基を含むセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g))
〔改質セルロース繊維(A)の修飾基の平均結合量及び導入率(アミド結合)〕
アミド結合による修飾基の平均結合量は、下記式により算出する。
修飾基の結合量(mmol/g)=(カルボキシ基を含むセルロース繊維中カルボキシ基含有量(mmol/g))−(改質セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g))
修飾基の導入率(%)=100×(修飾基の結合量(mmol/g))/(カルボキシ基を含むセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g))
〔改質セルロース繊維(B)の修飾基の導入率〕
まず最初に、得られた改質セルロース繊維(B)中に含有される修飾基の含有量%(質量%)を、Analytical Chemistry, Vol.51, No.13, 2172(1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出する。以下に手順を示す。
(i)200mLメスフラスコにn−オクタデカン0.1gを加え、ヘキサンにて標線までメスアップを行い、内標溶液を調製する。
(ii)精製、乾燥を行った改質セルロース繊維100mg、アジピン酸100mgを10mLバイアル瓶に精秤し、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓する。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、160℃のブロックヒーターにて1時間加熱する。
(iv)加熱後、バイアルに内標溶液3mL、ジエチルエーテル3mLを順次注入し、室温で1分間攪拌する。
(v)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(ジエチルエーテル層)をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製、「GC2010Plus」)にて分析し、エーテル化剤を定量する。
(vi)これとは別に、改質セルロース繊維に代えて、改質に使用したエーテル化剤5mg、10mg、15mgを用いて、前記(i)〜(v)と同様の方法で分析を行い、エーテル化剤の検量線を作成する。
分析条件は以下のとおりである。
カラム:アジレント・テクノロジー社製DB−5(12m、0.2mm×0.33μm)
カラム温度:100℃→10℃/min→280℃(10min Hold)
インジェクター温度:300℃、検出器温度:300℃、打ち込み量:1μL
作成した検量線と、使用したエーテル化剤の検出量から改質セルロース繊維中の修飾基の含有量(質量%)を算出する。
得られた修飾基の含有量から、下記数式(1)を用いて導入率(無水グルコースユニット1モルに対する置換基のモル量)を算出する。
(数式1)
導入率=(W1/Mw)/((100−W1)/162.14)
W1:改質セルロース繊維中の修飾基の含有量(質量%)
Mw:導入したエーテル化剤の分子量(g/mol)
〔改質セルロース繊維(A)におけるセルロース繊維(換算量)〕
改質セルロース繊維(A)におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される修飾用化合物が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=改質セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾用化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される修飾用化合物が2種類以上の場合
各修飾用化合物のモル比率(即ち、添加される修飾用化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がイオン結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンである場合は「共重合部を含めた修飾用化合物全体の分子量」を指し、修飾基を有する化合物が第4級アンモニウム化合物又はホスホニウム化合物である場合は「(共重合部を含めた修飾用化合物全体の分子量)−(陰イオン成分の分子量)」を指す。
一方、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン又は第2級アミンである場合、「(共重合部を含めた修飾基を有する化合物全体の分子量)−18」である。
〔改質セルロース繊維(B)におけるセルロース繊維(換算量)〕
改質セルロース繊維(B)におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される修飾用化合物が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Bによって算出する。
<式B>
セルロース繊維量(換算量)(g)=改質セルロース繊維の質量(g)×162/〔162+修飾用化合物の分子量(g/mol)×平均付加モル数〕
(2)添加される修飾用化合物が2種類以上の場合
各修飾用化合物のモル比率(即ち、添加される修飾用化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
〔セルロース繊維の調製〕
調製例1(針葉樹の酸化パルプ由来のアニオン変性セルロース繊維)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9,900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25g、臭化ナトリウム12.5g、次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化セルロース繊維を得た。0.01Mの塩酸及びイオン交換水を用いて、得られた酸化セルロース繊維を十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。その後、マグネティックスターラー、攪拌子を備えたバイアル瓶に、得られた酸化セルロース繊維を絶乾質量で7.2g仕込み、処理液の質量が360gとなるまで、イオン交換水を添加した。処理液を95℃で24時間撹拌した後に脱水処理を行うことで、アニオン変性セルロース繊維を得た。また、このアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.6mmol/gであった。
調製例2(改質セルロース繊維の酢酸エチル分散液)
調製例1で得られたアニオン変性セルロース繊維をアセトン、次いで分散媒としての酢酸エチルで溶媒置換した後、マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、絶乾質量で1.5g仕込んだ。続いて、EOPOアミン(ハンツマン社製、商品名:Jeffamine M−2070)を、アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.6molに相当する量を該ビーカーに仕込み、酢酸エチル300gで溶解させた。反応液を室温(25℃)で2時間撹拌して反応させることで、アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基に(EO/PO)共重合部位を有するアミノ基がイオン結合した改質セルロース繊維(即ち、改質セルロース繊維(A))の酢酸エチル懸濁液を得た(セルロース含有量0.5質量%)。次に、得られた懸濁液を高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)にて150MPaで5パス処理した。この処理によって、微細化された改質セルロース繊維が酢酸エチルに分散した分散体(改質セルロース繊維含有量0.5質量%)を得た。この改質セルロース繊維のセルロースI型結晶化度は77%、平均繊維径は3.3nm、修飾基の平均結合量は0.9mmol/g、修飾基の導入率は56%であった。
〔粘着剤組成物の製造〕
実施例1
調製例2で得られた分散体及びマトリクス樹脂としてのアクリル系粘着剤(東亞合成社製:アロンタックS−1511X)を表1に示す配合量となるよう混合し、マグネティックスターラーにて室温(25℃)で2時間撹拌して粘着剤組成物を得た。この組成物を塗工可能な粘度にまで分散媒を留去し、塗工用のワニスを得た。得られたワニスをバーコーターを用いて被着体であるガラス基板上に塗布厚200μmで塗工した。100℃で1分間乾燥し、分散媒を除去した後、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。
実施例2
硬化剤としてイソシアネート系架橋剤(東ソー社製:コロネートL)を表1に示す配合量で添加したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層を形成した。
実施例3〜6
被着体の素材を表1に記載のもの(PE:ポリエチレン樹脂、PP:ポリプロピレン樹脂、SUS:ステンレス板、紙:市販のコピー用紙)に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層を形成した。
比較例1
改質セルロース繊維を添加しないこと以外は実施例2と同様にして粘着剤層を形成した。
比較例2
改質セルロース繊維の代わりにセルロース繊維(ダイセル社製:セリッシュFD−100G、平均繊維径:50nm)を添加したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層を形成した。
〔粘着剤組成物の評価〕
試験例1(粘着性)
各実施例及び各比較例で得られた粘着剤層にPETフィルムを貼り合せ、室温で3日間熟成した。熟成後、十分に粘着されておりPETフィルムを下に向けても落下しなかったものを粘着性に優れる:○、落下したものを粘着性に劣る:×とした。
試験例2(再剥離性)
各実施例及び各比較例で得られた粘着剤層を室温で3日間熟成した後、粘着剤層をピンセットでつまみ剥離した。剥離の際に、粘着剤の被着体への残存や被着体の破壊が見られなかったものを再剥離性に優れる:○、粘着剤の被着体への残存や被着体の破壊が見られたものを再剥離性に劣る:×とした。
Figure 2020076075
表1より、実施例の粘着剤組成物は、被着体の種類に関わらず、粘着性、再剥離性ともに優れていることがわかった。一方、本発明に係る改質セルロース繊維を含有しない粘着剤組成物は、粘着性を有しているものの再剥離性の点で本発明よりも明らかに劣っていることがわかった(比較例1)。また、比較例2においては、セルロース繊維が良好に分散せず、各成分の撹拌後に静置した後、速やかに沈殿物が生じることが確認できたので、粘着剤の製造を行うことができなかった。比較例2におけるかかる現象が生じた理由としては、用いたセルロース繊維は疎水性基で改質されていないものだったので、粘着剤や分散媒への分散性が低いことによるものと考えられる。一方、本発明に係る改質セルロース繊維は粘着剤や分散媒への分散性が高いため、優れた粘着性と優れた再剥離性を両立できたものと考えられる。
本発明の粘着剤組成物は、情報機器、家電、建材、自動車、生活用品の各種部材の材料として利用することができる。

Claims (6)

  1. 改質セルロース繊維とマトリクス樹脂を配合してなる粘着剤組成物であって、前記改質セルロース繊維が以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上である、粘着剤組成物。
    改質セルロース繊維(A):イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
    改質セルロース繊維(B):セルロース繊維の水酸基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
  2. 前記改質セルロース繊維が改質セルロース繊維(A)を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
  3. 改質セルロース繊維(A)におけるイオン性基がカルボキシ基である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
  4. 以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上の改質セルロース繊維並びにマトリクス樹脂を混合する工程を含む、粘着剤組成物の製造方法。
    改質セルロース繊維(A):イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
    改質セルロース繊維(B):セルロース繊維の水酸基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物又は請求項4に記載の粘着剤組成物の製造方法によって製造された粘着剤組成物からなる粘着剤層。
  6. 請求項5に記載の粘着剤層を備える粘着シート。
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