JP2020075682A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】両駆動のEV走行モードにおいて、駆動力不足となることを抑制可能なハイブリッド車両の制御装置を提供する。【解決手段】第1モータにより反力トルクを出力させつつエンジントルクで走行するHV走行モードと、第1モータおよび第2モータのトルクで走行するEV走行モードとを設定することが可能なハイブリッド車両の制御装置において、第1モータは、第1上限トルクと第1上限トルクより大きい第2上限トルクとを設定することが可能であり、コントローラは、EV走行モード時にインバータ等の温度が閾値未満か否かを判断し、前記温度が前記閾値未満の場合に前記第2上限トルクを出力するように構成されている。【選択図】図14
Description
この発明は、エンジンとモータとを駆動力源として備えたハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
特許文献1には、エンジンの出力トルクを、動力分割機構により第1モータ側と出力側とに分割し、第1モータ側に伝達された動力を電力として第2モータに伝達し、第2モータから出力されたトルクを、エンジンから直接伝達されるトルクに加算して走行(ハイブリッド走行)するハイブリッド車両が記載されている。なお、ハイブリッド走行は、第1クラッチ機構と第2クラッチ機構とを選択的に係合することにより第1モータ側に伝達する動力に対する出力側に伝達する動力の割合が比較的大きいハイブリッド・ローモードと、前記割合がハイブリッド・ローモードよりも小さいハイブリッド・ハイモードとを設定することができるように構成されている。また、この特許文献1に記載された車両は、ブレーキ機構を係合するとともに、前記第1クラッチ機構と第2クラッチ機構とのいずれか一方のクラッチ機構を係合することにより、エンジンを停止した状態で、駆動モータから第2リングギヤに駆動トルクを伝達して走行するEV走行モード(両駆動モード)を設定することができるように構成されている。
上述したように、特許文献1に記載された車両は、ハイブリッド走行モードおよび両駆動のEV走行モードの設定が可能であり、またこれら各走行モードでは、第1モータのトルクが寄与するように構成されている。具体的には、ハイブリッド走行モードでは、第1モータのトルクによりエンジン回転数が所定の回転数に制御され、両駆動のEV走行モードでは、第2モータに加えて第1モータのトルクにより駆動力が発生させられる。一方、第1モータにおける出力可能な上限トルク(定格トルクとも称される)は、モータやインバータなどの電力装置の耐久性などを考慮した各種条件によって定められているものの、従来知られているEV走行モードでは、一定のトルクを上限トルクとしており、例えば要求駆動力が大きい場合には駆動力不足となるおそれがあった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、両駆動のEV走行モードにおいて、駆動力不足となることを抑制可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジンと、発電機能を有する第1モータと、前記第1モータを駆動するインバータと、前記エンジンが連結された入力要素と、前記第1モータが連結された反力要素と、駆動輪にトルクを伝達可能に連結された出力要素とを有する差動機構と、前記駆動輪にトルクを伝達可能に連結された第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータに電気的に接続された蓄電装置とを備え、前記第1モータにより反力トルクを出力させつつ前記エンジンのトルクで走行するHV走行モードと、前記第1モータおよび前記第2モータのトルクで走行するEV走行モードとを設定することが可能なハイブリッド車両の制御装置において、前記第1モータは、予め定められた所定の条件により第1上限トルクおよび前記第1上限トルクより大きい第2上限トルクを設定することが可能であり、前記第1モータを制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記HV走行モード時に前記反力トルクとして前記第1上限トルクを出力し、かつ前記EV走行モード時に前記第1モータの駆動トルクとして前記第1上限トルクもしくは前記第2上限トルクを出力するように構成され、前記EV走行モード時に前記インバータの温度と前記第1モータの温度と前記蓄電装置の温度との少なくともいずれか一つのパラメータの温度が閾値未満か否かを判断し、前記少なくともいずれか一つのパラメータの温度が前記閾値未満の場合に前記第2上限トルクを出力するように構成されていることを特徴とするものである。
この発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、両駆動のEV走行モードにおいて、第1モータにおける駆動トルクとして、第1上限トルクあるいは第2上限トルクを出力するように構成されている。具体的には、第1モータは、主に走行に使用する第1上限トルクと、主にエンジン始動に使用する第2上限トルク(第1上限トルクより大きいトルク)との出力の設定が可能であって、所定の条件が成立する場合には、前記第2上限トルクの出力の実行をEV走行モードに適用するように構成されている。その所定の条件は、例えば運転者の要求駆動力が大きく、第1上限トルクと第2モータのトルクとに基づく駆動力では前記要求駆動力に満たない場合であって、かつインバータ素子などの温度が閾値未満の場合である。つまり、その条件が成立する場合には、従来、エンジンのクランキングにのみ使用していた比較的大きいトルク(第2上限トルク)をEV走行モードで使用するように構成されている。そのため、要求駆動力が大きい場合であっても、第1モータの駆動トルクとして、第2上限トルクを出力することで、要求駆動力を満たすことができる。つまり、駆動力不足となることを抑制もしくは回避できる。
この発明の実施形態におけるハイブリッド車両(以下、車両と記す)Veの一例を図1および図2を参照して説明する。図1は、前輪1R,1Lを駆動するための第1駆動装置2を示し、図2は、後輪3R,3Lを駆動するための第2駆動装置4を示している。第1駆動装置2は、エンジン5と二つのモータ6,7とを駆動力源として備えたいわゆる2モータタイプの駆動装置であって、第1モータ6は発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG1)によって構成され、エンジン5の回転数を第1モータ6によって制御するとともに、第1モータ6で発電された電力により第2モータ7を駆動し、その第2モータ7が出力する駆動力を走行のための駆動力に加えるように構成されている。なお、第2モータ7は発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG2)によって構成することができる。
エンジン5には、この発明の実施形態における差動機構に相当する動力分割機構8が連結されている。この動力分割機構8は、エンジン5から出力されたトルクを第1モータ6側と出力側とに分割する機能を主とする分割部9と、そのトルクの分割率を変更する機能を主とする変速部10とにより構成されている。
分割部9は、三つの回転要素によって差動作用を行う構成であればよく、遊星歯車機構を採用することができる。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。図1に示す分割部9は、サンギヤ11と、サンギヤ11に対して同心円上に配置された、内歯歯車であるリングギヤ12と、これらサンギヤ11とリングギヤ12との間に配置されてサンギヤ11とリングギヤ12とに噛み合っているピニオンギヤ13と、ピニオンギヤ13を自転および公転可能に保持するキャリヤ14とにより構成されている。そのサンギヤ11が主に反力要素として機能し、リングギヤ12が主に出力要素として機能し、キャリヤ14が主に入力要素として機能する。
エンジン5が出力した動力が前記キャリヤ14に入力されるように構成されている。具体的には、エンジン5の出力軸15に、動力分割機構8の入力軸16が連結され、その入力軸16がキャリヤ14に連結されている。なお、キャリヤ14と入力軸16とを直接連結する構成に替えて、歯車機構などの伝動機構を介してキャリヤ14と入力軸16とを連結してもよい。また、その出力軸15と入力軸16との間にダンパ機構やトルクコンバータなどの機構を配置してもよい。
サンギヤ11に第1モータ6が連結されている。図1に示す例では、分割部9および第1モータ6は、エンジン5の回転中心軸線と同一の軸線上に配置され、第1モータ6は分割部9を挟んでエンジン5とは反対側に配置されている。この分割部9とエンジン5との間で、これら分割部9およびエンジン5と同一の軸線上に、その軸線の方向に並んで変速部10が配置されている。
変速部10は、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されており、サンギヤ17と、サンギヤ17に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ18と、これらサンギヤ17とリングギヤ18との間に配置されてこれらサンギヤ17およびリングギヤ18に噛み合っているピニオンギヤ19と、ピニオンギヤ19を自転および公転可能に保持しているキャリヤ20とを有し、サンギヤ17、リングギヤ18、およびキャリヤ20の三つの回転要素によって差動作用を行う差動機構である。この変速部10におけるサンギヤ17に分割部9におけるリングギヤ12が連結されている。また、変速部10におけるリングギヤ18に、出力ギヤ21が連結されている。
上記の分割部9と変速部10とが複合遊星歯車機構を構成するように第1クラッチ機構CL1が設けられている。第1クラッチ機構CL1は、変速部10におけるキャリヤ20を、分割部9におけるキャリヤ14に選択的に連結するように構成されている。具体的には、入力軸16に回転盤14aが設けられ、その回転盤14aと変速部10におけるキャリヤ20とを係合するように第1クラッチ機構CL1が設けられている。この第1クラッチ機構CL1は、湿式多板クラッチなどの摩擦式のクラッチ機構であってもよく、あるいはドグクラッチなどの噛み合い式のクラッチ機構であってもよい。または、制御信号が入力されることにより連結状態と解放状態とを切り替え、かつ制御信号が入力されていない場合に、制御信号が入力されなくなる直前の状態(連結状態または解放状態)を維持するように構成されたいわゆるノーマルステイ型のクラッチ機構であってもよい。この第1クラッチ機構CL1を係合させることにより分割部9におけるキャリヤ14と変速部10におけるキャリヤ20とが連結されてこれらが入力要素となり、また分割部9におけるサンギヤ11が反力要素となり、さらに変速部10におけるリングギヤ18が出力要素となった複合遊星歯車機構が形成される。すなわち、入力軸16と第1モータ6の出力軸6aと、後述するドリブンギヤ23とが差動回転できるように複合遊星歯車機構が構成されている。
さらに、変速部10の全体を一体化させるための第2クラッチ機構CL2が設けられている。この第2クラッチ機構CL2は、変速部10におけるキャリヤ20とリングギヤ18もしくはサンギヤ17、あるいはサンギヤ17とリングギヤ18とを連結するなどの少なくともいずれか二つの回転要素を連結するためのものであって、摩擦式、噛み合い式、あるいは、ノーマルステイ型のクラッチ機構によって構成することができる。図1に示す例では、第2クラッチ機構CL2は、変速部10におけるキャリヤ20とリングギヤ18とを連結するように構成されている。具体的には、キャリヤ20と一体に回転する回転盤20aが設けられ、その回転盤20aと変速部10におけるリングギヤ18とを係合するように第2クラッチ機構CL2が設けられている。
そして、第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2は、エンジン5および分割部9ならびに変速部10と同一の軸線上に配置され、かつ変速部10を挟んで分割部9とは反対側に配置されている。なお、各クラッチ機構CL1,CL2同士は、図1に示すように、半径方向で内周側と外周側とに並んだ状態に配置されていてもよく、あるいは軸線方向に並んで配置されていてもよい。図1に示すように半径方向に並べて配置した場合には、第1駆動装置2の全体としての軸長を短くすることができる。また、軸線方向に並べて配置した場合には、各クラッチ機構CL1,CL2の外径の制約が少なくなるので、摩擦式のクラッチ機構を採用した場合には、摩擦板の枚数を少なくすることができる。
上記のエンジン5や分割部9あるいは変速部10の回転中心軸線と平行にカウンタシャフト22が配置されている。前記出力ギヤ21に噛み合っているドリブンギヤ23がこのカウンタシャフト22に取り付けられている。また、カウンタシャフト22にはドライブギヤ24が取り付けられており、このドライブギヤ24が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット25におけるリングギヤ26に噛み合っている。さらに、前記ドリブンギヤ23には、第2モータ7におけるロータシャフト27に取り付けられたドライブギヤ28が噛み合っている。したがって、前記出力ギヤ21から出力された動力もしくはトルクに、第2モータ7が出力した動力もしくはトルクを、上記のドリブンギヤ23の部分で加えるように構成されている。このようにして合成された動力もしくはトルクをデファレンシャルギヤユニット25から左右のドライブシャフト29に出力し、その動力やトルクが前輪1R,1Lに伝達されるように構成されている。
さらに、第1駆動装置2は、第1モータ6から出力された駆動トルクを、前輪1R,1Lに伝達することができるように、出力軸15または入力軸16を選択的に固定可能に構成された、摩擦式あるいは噛み合い式の第1ブレーキ機構B1が設けられている。すなわち、第1ブレーキ機構B1を係合して出力軸15または入力軸16を固定することにより、分割部9におけるキャリヤ14や、変速部10におけるキャリヤ20を反力要素として機能させ、分割部9におけるサンギヤ11を入力要素として機能させることができるように構成されている。なお、第1ブレーキ機構B1は、第1モータ6が駆動トルクを出力した場合に、反力トルクを発生させることができればよく、出力軸15または入力軸16を完全に固定する構成に限らず、要求される反力トルクを出力軸15または入力軸16に作用させることができればよい。または、出力軸15や入力軸16が、エンジン5の駆動時に回転する方向とは逆方向に回転することを禁止するワンウェイクラッチを第1ブレーキ機構B1に代えて設けてもよい。
第2駆動装置4は、リアモータ30の動力もしくはトルクを後輪3R,3Lに伝達するように構成されている。なお、便宜上、左側の後輪3Lは図示していない。このリアモータ30は、第1モータ6および第2モータ7と同様に、発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MGR)によって構成されている。リアモータ30には、リアモータ30のトルクを増幅する減速段と、リアモータ30のトルクを変化させずにそのまま出力する固定段とを選択的に切り替えることができるように構成された変速機構31が連結されている。
図2に示す変速機構31は、サンギヤ32と、サンギヤ32に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ33と、これらサンギヤ32とリングギヤ33との間に配置されてサンギヤ32とリングギヤ33とに噛み合うピニオンギヤ34と、ピニオンギヤ34を自転および公転可能に保持しているキャリヤ35とを有する、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。
変速機構31のサンギヤ32は、リアモータ30に連結されており、入力要素として機能する。キャリヤ35は、出力軸36に連結されており、反力要素として機能する。そして、変速機構31を固定段として機能させるための第3クラッチ機構CL3が設けられている。この第3クラッチ機構CL3は、変速機構31におけるサンギヤ32とリングギヤ33もしくはキャリヤ35、あるいはリングギヤ33とキャリヤ35とを連結するなどの少なくともいずれか二つの回転要素を連結するためのものであって、摩擦式あるいは噛み合い式のクラッチ機構によって構成することができる。図2に示す例では、第3クラッチ機構CL3は、変速機構31におけるリングギヤ33とキャリヤ35とを連結するように構成されている。
さらに、変速機構31を減速段として機能させるための第2ブレーキ機構B2が設けられている。この第2ブレーキ機構B2は、変速機構31におけるリングギヤ33を選択的に固定するように構成された、摩擦式あるいは噛み合い式の係合機構によって構成することができる。図2に示す第2ブレーキ機構B2は、第2駆動装置4を収容するケースなどの固定部Cとリングギヤ33とを係合することにより、リングギヤ33を固定するように構成されている。このように第2ブレーキ機構B2によりリングギヤ33が固定されることでリングギヤ33が反力要素として機能する。なお、第2ブレーキ機構B2は、リングギヤ33を完全に固定するものに限らない。
変速機構31の出力軸36には、ドライブギヤ37が取り付けられている。出力軸36と平行にカウンタシャフト38が配置されており、そのカウンタシャフト38の一方の端部に、ドライブギヤ37と噛み合うドリブンギヤ39が取り付けられている。このドリブンギヤ39は、ドライブギヤ37よりも大径に形成されており、変速機構31の出力トルクを増幅するように構成されている。カウンタシャフト38の他方の端部には、ドライブギヤ40が取り付けられており、このドライブギヤ40が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット41におけるリングギヤ42に噛み合っている。デファレンシャルギヤユニット41には、ドライブシャフト43が連結されており、そのドライブシャフト43を介して後輪3R,3Lに、リアモータ30から出力された動力が伝達されるように構成されている。
第1モータ6にインバータやコンバータなどを備えた第1電力制御装置44が連結され、第2モータ7にインバータやコンバータなどを備えた第2電力制御装置45が連結され、リアモータ30にインバータやコンバータなどを備えた第3電力制御装置46が連結され、それらの各電力制御装置44,45,46が、リチウムイオン電池、キャパシタ、全固体電池などから構成された蓄電装置47に電気的に連結されている。また、上記第1電力制御装置44と第2電力制御装置45および第3電力制御装置46とが相互に電力を供給できるように構成されている。具体的には、第1モータ6が反力トルクを出力することに伴って発電機として機能する場合には、第1モータ6で発電された電力を蓄電装置47を介することなく、第2モータ7やリアモータ30に電力を供給することができるように構成されている。
なお、上記の蓄電装置47は、上述したようにリチウムイオン電池、キャパシタ、全固体電池などによって構成されるものの、それら蓄電デバイスは、それぞれ特性が異なる。したがって、車両Veは、蓄電装置47を単一の蓄電デバイスから構成するに限られず、上記の各蓄電デバイスの特性を考慮して複数の蓄電デバイスから構成してもよい。
上記の各電力制御装置44,45,46におけるインバータやコンバータ、エンジン5、各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2を制御するための電子制御装置(ECU)48が設けられている。このECU48は、この発明の実施形態における「コントローラ」に相当するものであり、マイクロコンピュータを主体にして構成されている。図3は、ECU48の構成の一例を説明するためのブロック図である。図3に示す例では、統合ECU49、MG-ECU50、エンジンECU51、および、クラッチECU52によりECU48が構成されている。
統合ECU49は、車両Veに搭載された種々のセンサからデータが入力され、その入力されたデータと、予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて、MG-ECU50、エンジンECU51、およびクラッチECU52に指令信号を出力するように構成されている。統合ECU49に入力されるデータの一例を図3に示してあり、車速、アクセル開度、第1モータ(MG1)6の回転数、第2モータ(MG2)7の回転数、リアモータ(MGR)30の回転数、エンジン5の出力軸15の回転数(エンジン回転数)、変速部10におけるカウンタシャフト22の回転数である出力回転数、各クラッチ機構CL1,CL2,CL3や各ブレーキ機構B1,B2に設けられたピストンのストローク量、蓄電装置47の温度、各電力制御装置44,45,46の温度、第1モータ6の温度、第2モータ7の温度、リアモータ30の温度、分割部9や変速部10あるいは変速機構31などを潤滑するオイル(ATF)の温度、蓄電装置47の充電残量(SOC)、触媒温度などのデータが、統合ECU49に入力される。
そして、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいて第1モータ6の運転状態(出力トルクや回転数)、第2モータ7の運転状態(出力トルクや回転数)、リアモータ30の運転状態(出力トルクや回転数)を求めて、それらの求められたデータを指令信号としてMG-ECU50に出力する。同様に、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいてエンジン5の運転状態(出力トルクや回転数)を求めて、その求められたデータを指令信号としてエンジンECU51に出力する。同様に、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2の伝達トルク容量(「0」を含む)を求めて、それらの求められたデータを指令信号としてクラッチECU52に出力する。
MG-ECU50は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて各モータ6,7,30に通電するべき電流値を求めて、各モータ6,7,30に指令信号を出力する。各モータ6,7,30は、交流式のモータであるから、上記の指令信号は、インバータで生成するべき電流の周波数や、コンバータで昇圧するべき電圧値などが含まれる。
エンジンECU51は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて電子スロットルバルブの開度を定めるための電流、点火装置で燃料を着火するための電流、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブの開度を定めるための電流、吸気バルブや排気バルブの開度を定めるための電流値などを求め、それぞれのバルブや装置に指令信号を出力する。すなわち、エンジン5の出力(パワー)や、エンジン5の出力トルク、もしくはエンジン回転数を制御するための指示信号を、エンジンECU51から出力する。
クラッチECU52は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2の係合圧を定めるアクチュエータに通電するべき電流値を求めて、それぞれのアクチュエータに指令信号を出力する。
上記の第1駆動装置2は、エンジン5から駆動トルクを出力して走行するHV走行モードと、エンジン5から駆動トルクを出力することなく、第1モータ6や第2モータ7から駆動トルクを出力して走行するEV走行モードとを設定することが可能である。さらに、HV走行モードは、第1モータ6を低回転数で回転させた場合(「0」回転を含む)に、変速部10におけるリングギヤ18の回転数よりもエンジン5(または入力軸16)の回転数が高回転数となるHV-Loモードと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数よりもエンジン5(または入力軸16)の回転数が低回転数となるHV-Hiモードと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数とエンジン5(または入力軸16)の回転数が同一である直結モードとを設定することが可能である。
またさらに、EV走行モードは、第1モータ6および第2モータ7から駆動トルクを出力するデュアルモード(以下、両駆動モードとも称す)と、第1モータ6から駆動トルクを出力せずに第2モータ7のみから駆動トルクを出力するシングルモードとを設定することが可能である。更にデュアルモードは、第1モータ6から出力されたトルクの増幅率が比較的大きいEV-Loモードと、第1モータ6から出力されたトルクの増幅率が比較的小さいEV-Hiモードとを設定することが可能である。なお、シングルモードでは、第1クラッチ機構CL1を係合した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行することや、第2クラッチ機構CL2を係合した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行すること、あるいは各クラッチ機構CL1,CL2を解放した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行することが可能である。
それらの各走行モードは、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、第1ブレーキ機構B1、およびエンジン5、各モータ6,7を制御することにより設定される。図4に、これらの走行モードと、各走行モード毎における、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、第1ブレーキ機構B1の係合および解放の状態、第1モータ6および第2モータ7の運転状態、エンジン5からの駆動トルクの出力の有無の一例を図表として示してある。図中における「●」のシンボルは係合している状態を示し、「−」のシンボルは解放している状態を示し、「G」のシンボルは主にジェネレータとして運転することを意味し、「M」のシンボルは主にモータとして運転することを意味し、空欄はモータおよびジェネレータとして機能していない、または第1モータ6や第2モータ7が駆動のために関与していない状態を意味し、「ON」はエンジン5から駆動トルクを出力している状態を示し、「OFF」はエンジン5から駆動トルクを出力していない状態を示している。
各走行モードを設定した場合における動力分割機構8の各回転要素の回転数、およびエンジン5、各モータ6,7のトルクの向きを説明するための共線図を図5ないし図10に示している。共線図は、動力分割機構8における各回転要素を示す直線をギヤ比の間隔をあけて互いに平行に引き、これらの直線に直交する基線からの距離をそれぞれの回転要素の回転数として示す図であり、それぞれの回転要素を示す直線にトルクの向きを矢印で示すとともに、その大きさを矢印の長さで示している。
図5に示すようにHV-Hiモードでは、エンジン5から駆動トルクを出力し、第2クラッチ機構CL2を係合するとともに、第1モータ6から反力トルクを出力する。また、図6に示すようにHV-Loモードでは、エンジン5から駆動トルクを出力し、第1クラッチ機構CL1を係合するとともに、第1モータ6から反力トルクを出力する。上記HV-HiモードやHV-Loモードが設定されている場合の第1モータ6の回転数は、エンジン5の燃費や第1モータ6の駆動効率などを考慮した第1駆動装置2全体としての効率(消費エネルギー量を前輪1R,1Lのエネルギー量で除算した値)が最も良好となるように制御される。上記の第1モータ6の回転数は連続的に変化させることができ、その第1モータ6の回転数と車速とに基づいてエンジン回転数が定まる。したがって、動力分割機構8は、無段変速機として機能できる。
上記のように第1モータ6から反力トルクを出力することにより、第1モータ6が発電機として機能する場合には、エンジン5の動力の一部が第1モータ6により電気エネルギーに変換される。そして、エンジン5の動力から第1モータ6により電気エネルギーに変換された動力分を除いた動力が変速部10におけるリングギヤ18に伝達される。その第1モータ6から出力する反力トルクは、動力分割機構8を介してエンジン5から第1モータ6側に伝達されるトルクの分割率に応じて定められる。この動力分割機構8を介してエンジン5から第1モータ6側に伝達されるトルクと、リングギヤ18側に伝達されるトルクとの比、すなわち動力分割機構8におけるトルクの分割率は、HV-LoモードとHV-Hiモードとで異なる。
具体的には、第1モータ6側に伝達されるトルクを「1」とした場合、HV-Loモードではリングギヤ18側に伝達されるトルクの割合であるトルク分割率は、「1/(ρ1×ρ2)」となり、HV-Hiモードではそのトルク分割率は、「1/ρ1」となる。すなわち、エンジン5から出力されたトルクのうちリングギヤ18に伝達されるトルクの割合は、HV-Loモードでは、「1/(1−(ρ1×ρ2))」となり、HV-Hiモードでは、「1/(ρ1+1)」となる。ここで、「ρ1」は分割部9のギヤ比(リングギヤ12の歯数とサンギヤ11の歯数との比率)であり、「ρ2」は変速部10のギヤ比(リングギヤ18の歯数とサンギヤ17の歯数との比率)である。なお、ρ1およびρ2は、「1」よりも小さい値に設定されている。したがって、HV-Loモードが設定されている場合には、HV-Hiモードが設定されている場合と比較して、リングギヤ18に伝達されるトルクの割合が大きくなる。なお、エンジン5で発生させるトルクによりエンジン5の回転数を増大させている場合には、エンジン5で発生させたトルクからエンジン5の回転数を増大させるために要するトルクを減算したトルクが、エンジン5から出力されるトルクとなる。
そして、第1モータ6により発電された電力が第2モータ7に供給される。その場合、必要に応じて蓄電装置47に充電されている電力も第2モータ7に供給される。なお、第2モータ7とリアモータ30とは、エンジン5から伝達される駆動トルクに、さらに駆動トルクを加算するように機能するものであって、車両Ve全体としての駆動力を制御する上では、第2モータ7とリアモータ30とを同一のものとみなすことができるため、第2モータ7に代えて、または第2モータ7に加えてリアモータ30に電力を供給するように構成してもよい。以下では、加算するための駆動トルクを第2モータ7のみから出力する例を挙げて説明している。
直結モードでは、各クラッチ機構CL1,CL2が係合されることにより、図7に示すように動力分割機構8における各回転要素が同一回転数で回転する。すなわち、エンジン5の動力の全てが動力分割機構8から出力される。言い換えると、エンジン5の動力の一部が、第1モータ6や第2モータ7により電気エネルギーに変換されることがない。したがって、電気エネルギーに変換する際に生じる電気抵抗などを要因とした損失がないため、動力の伝達効率を向上させることができる。
さらに、図8および図9に示すようにEV-LoモードとEV-Hiモードとでは、第1ブレーキ機構B1を係合するとともに各モータ6,7から駆動トルクを出力して走行する(両駆動モード)。具体的には、図8に示すようにEV-Loモードでは、第1ブレーキ機構B1および第1クラッチ機構CL1を係合するとともに、各モータ6,7から駆動トルクを出力して走行する。すなわち、第1ブレーキ機構B1により、出力軸15またはキャリヤ14が回転することを制限するための反力トルクを作用させる。その場合における第1モータ6の回転方向は、正方向になり、かつ出力トルクの向きは、その回転数を増大させる方向となる。また、図9に示すようにEV-Hiモードでは、第1ブレーキ機構B1および第2クラッチ機構CL2を係合するとともに、各モータ6,7から駆動トルクを出力して走行する。すなわち、第1ブレーキ機構B1により、出力軸15またはキャリヤ14が回転することを制限するための反力トルクを作用させる。その場合における第1モータ6の回転方向は、エンジン5の回転方向(正方向)とは反対方向(負方向)になり、かつ出力トルクの向きは、その回転数を増大させる方向となる。
また、変速部10のリングギヤ18の回転数と第1モータ6の回転数との回転数比は、EV-Loモードの方がEV-Hiモードよりも大きくなる。すなわち、同一車速で走行している場合には、EV-Loモードを設定する場合の方が、EV-Hiモードを設定する場合よりも第1モータ6の回転数が高回転数になる。つまり、EV-Loモードの方が、EV-Hiモードよりも減速比が大きい。そのため、EV-Loモードを設定することにより大きな駆動力を得ることができる。なお、上記のリングギヤ18の回転数は、出力部材(あるいは出力側)の回転数であって、図1のギヤトレーンでは、便宜上リングギヤ18から駆動輪までの各部材のギヤ比は1とする。そして、シングルモードでは、図10に示すように第2モータ7のみから駆動トルクを出力しており、かつ各クラッチ機構CL1,CL2が解放されていることにより、動力分割機構8の各回転要素は停止した状態になる。したがって、エンジン5や第1モータ6を連れ回すことによる動力損失を低減することができる。
蓄電装置47の充電残量(SOC)、車速、要求駆動力などに基づいて上記の各走行モードを定めるように構成されている。この発明の実施形態では、蓄電装置47の充電残量を維持するように各走行モードを設定するCS(Charge Sustain)モードと、蓄電装置に充電された電力を積極的に使用するCD(Charge Depleting)モードとを、蓄電装置47の充電残量に応じて選択するように構成されている。具体的には、蓄電装置47の充電残量が低下している場合などに、CSモードを選択し、蓄電装置47の充電残量が比較的多い場合などにCDモードを選択するように構成されている。
図11には、CSモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示している。このマップの横軸は車速を示し、縦軸は要求駆動力を示している。なお、車速は車速センサにより検出されたデータから求めることができ、要求駆動力はアクセル開度センサにより検出されたデータから求めることができる。
図11に示す例では、後進走行している場合には、要求駆動力の大きさに関わらずシングルモードを設定し、また前進走行しており、要求駆動力が比較的小さい場合(減速要求を含む)に、シングルモードを設定するように構成されている。このシングルモードを設定する領域は、第2モータ7やリアモータ30の特性に基づいて定められている。なお、シングルモードを設定する領域にハッチングを付してある。
また、前進走行しており、かつ要求駆動力が比較的大きい場合には、HV走行モードが設定される。なお、HV走行モードは、低車速域から高車速域に亘って駆動力を出力できるため、蓄電装置47の充電残量が下限値近傍となった場合などには、シングルモードが設定されるべき領域であっても、HV走行モードを設定することがある。
さらに、HV走行モードを設定する場合においては、車速と要求駆動力に応じてHV-LoモードやHV-Hiモード、あるいは直結モードのいずれかのモードを選択するように構成されている。具体的には、比較的低車速の場合や要求駆動力が比較的大きい場合に、HV-Loモードが選択され、比較的高車速でかつ要求駆動力が比較的小さい場合に、HV-Hiモードが選択され、車両Veの運転状態がHV-LoモードとHV-Hiモードとを設定する領域の間の運転点(車速と要求駆動力とに基づいた値)の場合に、直結モードが選択されるように構成されている。
また、上記のHV-Loモード、直結モード、HV-Hiモードは、図11に示す各ラインを運転点が横切ることにより切り替えるように構成されている。具体的には、図11における「Lo←Fix」のラインを運転点が右側から左側に向けて横切った場合や、下側から上側に向けて横切った場合に、直結モードからHV-Loモードに切り替えるように構成され、「Lo→Fix」のラインを運転点が左側から右側に向けて横切った場合や、上側から下側に向けて横切った場合に、HV-Loモードから直結モードに切り替えるように構成されている。同様に、図11における「Fix←Hi」のラインを運転点が右側から左側に向けて横切った場合や、下側から上側に向けて横切った場合に、HV-Hiモードから直結モードに切り替えるように構成され、「Fix→Hi」のラインを運転点が左側から右側に向けて横切った場合や、上側から下側に向けて横切った場合に、直結モードからHV-Hiモードに切り替えるように構成されている。
図12には、CDモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示している。このマップの横軸は車速を示し、縦軸は要求駆動力を示している。なお、車速は車速センサにより検出されたデータから求めることができ、要求駆動力はアクセル開度センサにより検出されたデータから求めることができる。
図12に示す例では、後進走行している場合には、要求駆動力の大きさに関わらずシングルモードを設定し、また前進走行しており、要求駆動力が第1駆動力F1よりも小さい場合(減速要求を含む)に、シングルモードを設定するように構成されている。このシングルモードを設定する領域は、第2モータ7やリアモータ30の特性などに基づいて定められている。なお、シングルモードを設定する領域にハッチングを付してある。
また、前進走行しており、かつ要求駆動力が第1駆動力F1よりも大きい場合には、デュアルモードが設定される。さらに、第1車速V1よりも高車速である場合や、第2車速V2よりも高車速でありかつ要求駆動力が第2駆動力F2よりも大きい場合には、HV走行モードが設定される。なお、HV走行モードは、低車速域から高車速域に亘って駆動力を出力できるため、蓄電装置47の充電残量が下限値近傍となった場合などには、シングルモードやデュアルモードが設定されるべき領域であっても、HV走行モードを設定することがある。
さらに、HV走行モードを設定する場合においては、車速と要求駆動力に応じてHV-LoモードやHV-Hiモード、あるいは直結モードのいずれかの走行モードを選択するように構成されている。具体的には、比較的低車速の場合や要求駆動力が比較的大きい場合に、HV-Loモードが選択され、比較的高車速でかつ要求駆動力が比較的小さい場合に、HV-Hiモードが選択され、車両Veの走行状態がHV-LoモードとHV-Hiモードとを設定する領域の間の運転点(車速と要求駆動力とに基づいた値)の場合に、直結モードが選択されるように構成されている。
また、上記のHV-Loモード、直結モード、HV-Hiモードは、図12に示す各ラインを運転点が横切ることにより切り替えるように構成されている。具体的には、図12における「Lo⇔Fix」のラインを運転点が横切った場合に、直結モードとHV-Loモードとが相互に切り替えられるように構成されている。同様に、図12における「Fix⇔Hi」のラインを運転点が横切った場合に、HV-Hiモードと直結モードとが相互に切り替えられるように構成されている。
なお、図11や図12に示す走行モードを設定する領域や、HV走行モードを設定する条件下におけるモードの切り替えを行うためのラインは、第1駆動装置2を構成する各部材の温度や、蓄電装置47あるいは電力制御装置44,45,46の温度、もしくは蓄電装置47の充電残量などに応じて変動するように構成してもよい。
このように構成された車両Veは、上述したようにHV-LoモードやHV-Hiモードでは、エンジン回転数が第1モータ6によって制御される。具体的には、エンジン始動時は、第1モータ6でエンジン1をクランキングし、HV-LoモードやHV-Hiモードで走行中は、所定のエンジン回転数に制御すべく第1モータ6で反力トルクを出力する。また、この第1モータ6の定格トルク(上限トルク)は、第1モータ6の温度や第1モータ6を駆動するインバータの温度、あるいは、電力制御装置44の耐久性を考慮して定められる。その定格トルクは、エンジン始動時における定格トルクと走行中の定格トルクとでは異なり、エンジン始動時の定格トルクの方が走行中の定格トルクより大きく設定される。すなわち、エンジン始動時の定格トルクは、クランキングに要するトルクであるから、走行中に出力するトルクより短時間であり、またエンジン回転数を可及的(速やか)に上昇させるため要求されるトルクも大きくなる。それに対して、走行中に出力するトルクは、エンジン1のクランキングに比べて長時間になるため、その定格トルクはエンジン始動時に比べて小さくなる。
つまり、第1モータ6は、予め定められた各種の条件によって出力可能な上限トルク(すなわち定格トルク)を設定するように構成されている。なお、これ以降の説明では、上記エンジン始動時における定格トルクを「短時間定格トルク」と記し、走行中における定格トルクを「長時間定格トルク」と記す。図13は、その短時間定格トルクと長時間定格トルクとの関係を示す図であって、縦軸に第1モータ6のトルク、横軸に第1モータ6の回転数を示している。この図13からも把握できるように短時間定格トルクは、長時間定格トルクより大きなトルクを出力することが可能である。なお、上記の長時間定格トルクが、この発明の実施形態における「第1上限トルク」に相当し、短時間定格トルクが、この発明の実施形態における「第2上限トルク」に相当する。
一方、EV走行モードにおいても第1モータ6はトルクを出力する。具体的には、上述したようにEV-LoモードやEV-Hiモードの両駆動モードにおいて駆動トルクを出力する。この両駆動のEVモードにおける第1モータ6の定格トルクは、上記のHV走行モードと同様、第1モータ6やインバータなどの各種予め定められた所定の条件(温度や耐久性など)によって定められる。そして、基本的には走行中のトルクであるから定格トルクは、長時間定格トルクに設定される。
しかしながら、例えば両駆動のEV走行モードにおいて、要求駆動力が大きい場合には、第2モータ7のトルクと第1モータ6の長時間定格トルクとを出力した場合であっても、その要求される駆動力に満たない場合がある。つまり駆動力不足となるおそれがある。そこで、この発明の実施形態では、両駆動のEV走行モードにおいて駆動力不足となることを抑制するように構成されている。以下に、ECU48で実行される制御例について説明する。
図14は、その制御の一例を示すフローチャートであって、所定の短時間毎に繰り返し実行される。具体的に説明すると、先ず運転者の要求駆動力が長時間定格トルクにおける駆動力より大きいか否かを判断する(ステップS1)。つまり、通常設定される第1モータ6の定格トルク(長時間定格トルク)と、第2モータ7の出力可能なトルクとの駆動力より、運転者の要求する駆動力の方が大きいか否かを判断する。なお、要求駆動力は、運転者のアクセル操作に基づくアクセル開度と車速とから求められる。
したがって、このステップS1で肯定的に判断された場合、すなわち要求駆動力が長時間定格トルクにおける駆動力より大きい場合には、ついでインバータ素子の温度が閾値未満か否かを判断する(ステップS2)。これは第1モータ6を駆動するインバータ(INV)素子の温度が予め定められた所定の温度(すなわち閾値)より小さいか否かを判断するステップであって、前記所定の温度は第1モータ6が短時間定格トルクを出力した場合のインバータ素子の上限温度、あるいは、インバータを構成する電力制御装置44の耐久性を考慮して設定される。つまり、このステップS2は、ステップS1で要求駆動力が大きいと判断された場合に、長時間定格トルクより大きい短時間定格トルクを出力可能か否かを判断するように構成されている。なお、このインバータ素子の温度は温度センサによって検出してもよく、あるいは、インバータへの通電時間によってその温度を推定してもよい。
したがって、このステップS2で肯定的に判断された場合、すなわちインバータ素子の温度が閾値未満であると判断された場合には、短時間定格トルクの出力を実行する(ステップS3)。つまり、通常であれば長時間定格トルクを出力するのに対して、ステップS1およびステップS2の判断が成立する場合には、トルク値が大きい短時間定格トルクの出力の実行を許可する。言い換えれば、従来知られている制御では、短時間定格トルクをエンジン始動のみに使用していたものを、上述した条件が成立する場合には両駆動のEV走行モードにも使用するように構成されている。
なお、上記のステップS2では、短時間定格トルクを出力するか否かの判断をインバータ素子の温度をパラメータとして判断したものの、このパラメータは、インバータ素子の温度に限られず、第1モータ6の温度や蓄電装置47の温度などをパラメータとしてもよい。つまり、各種機器や駆動回路の過度の発熱あるいは耐久性などを考慮して短時間定格トルクを出力可能か否かを判断するように構成してよい。
一方、上述したステップS1で否定的に判断された場合、すなわち要求駆動力が長時間定格トルクにおける駆動力以下の場合には、従来通り長時間定格トルクの出力を実行する(ステップS4)。つまり、長時間定格トルクで要求駆動力を満たすことができる場合には、従来知られているように長時間定格トルクを出力する。
また同様に、ステップS2で否定的に判断された場合、すなわちインバータ素子の温度が閾値以上の場合にも、長時間定格トルクの出力を実行する。つまり、インバータ素子の温度が閾値以上であるため、短時間定格トルクの出力を許容できず、長時間定格トルクを出力する。
つぎに、図14で説明した制御例を実行した場合におけるタイムチャートについて説明する。図15は、そのタイムチャートを示す図であって、アクセル開度、車速、各モータ6,7のトルク、蓄電装置47の出力、第1クラッチ機構CL1の係合状態、第2クラッチ機構CL2の係合状態の変化をそれぞれ示している。なお、この図15に示すタイムチャートは、第2クラッチ機構CL2を解放、第1クラッチ機構CL1を係合したLoモード(EV-LoモードあるいはHV-Loモード)での停車状態から発進する例を示している。
具体的には、その停車状態から(t0時点)、アクセルONされると、蓄電装置47の電力により第2モータ7が駆動し、第2モータ7のトルクが増大する(t1時点)。またそれに伴って、車速が増大する。なお、この時点では比較的要求駆動力が小さいため、第2モータ7のトルクのみで走行するシングルモードが設定されている。
ついで、車速ならびにアクセル開度の増大により要求駆動力が増大し、第2モータ7の最大トルクでは要求駆動力を満たすことができなくなり、両駆動モード(EV-Loモード)が開始される(t2時点)。したがって、このt2時点で第2モータ7に加えて第1モータ6のトルクが出力される。なお、第2モータ7はこの時点で最大トルク(すなわち上限トルク)に達するので、第2モータ7のトルクは一定となる。
そして、更にアクセルペダルが踏み込まれ、アクセル開度ならびに車速が増大することにより、要求駆動力が増大し、第1モータ6は短時間定格トルクを出力する(t3時点)。つまり、第1モータ6は、より大きなトルクを出力するように制御される。そして、その短時間定格トルクの出力に伴って、第1モータ6を駆動するインバータの温度を温度センサによって検出、あるいは、短時間定格トルクの出力開始に伴ってタイマーを起動させ、間接的にインバータ素子の温度を推定する。
ついで、短時間定格トルクを所定時間(t3時点からt4時点)、出力することで上記のインバータ素子の温度が高くなり閾値温度に達したら、第1モータ6のトルクを低下させる(t4時点)。つまり、一時的に増大させていた出力トルクを低下させ、言い換えれば第1モータ6の出力トルクを短時間定格トルクから長時間定格トルクに移行する(t4時点からt5時点)。また、この第1モータ6のトルクの低下は、駆動力の低下によるショックの発生を抑制すべく漸次的に低下させられる。
なお、短時間定格トルクの出力は、図15に示す例では、t3時点からt4時点の所定時間に制御されるものの、この短時間定格トルクを出力する所定時間は、インバータ素子の温度、第1モータ6の温度、蓄電装置47の温度、あるいは、それら機器の耐久性などによって適宜変更される。例えば短時間定格トルクを出力開始した時点でのインバータ素子の温度が比較的低い場合には、この所定時間が長くなる。
また、蓄電装置47の出力は、図15に示すように、各モータ6,7のトルクの増大に比例(あるいは相似)して変化する。さらに、第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2の係合状態は、この図15に示す例では、上述したようにLoモードでの停止状態からシングルモード、EV-Loモードで加速する例であるから、第1クラッチ機構CL1が係合状態、第2クラッチ機構CL2が解放状態とされている。
このように、この発明の実施形態では、両駆動のEV走行モードにおいて、第1モータ6における駆動トルクとして短時間定格トルクあるいは長時間定格トルクを出力するように構成されている。具体的には、第1モータ6は、主に走行に使用する長時間定格トルクと、主にエンジン始動に使用する短時間定格トルクとの出力の設定が可能であって、その短時間定格トルクの出力の実行を所定の条件が成立する場合にはEV走行モードに適用するように構成されている。その所定の条件は、運転者の要求駆動力が大きく、長時間定格トルクと第2モータ7のトルクとに基づく駆動力では前記要求駆動力に満たない場合であって、かつインバータ素子などの電力制御装置44の温度が閾値未満の場合である。つまり、その条件が成立する場合には、従来、エンジン1のクランキングにのみ使用していた大きいトルク(短時間定格トルク)をEV走行モードで使用するように構成されている。そのため、要求駆動力が大きい場合であっても、第1モータ6の駆動トルクとして、短時間定格トルクを出力することで、要求駆動力を満たすことができる。つまり、駆動力不足となることを抑制もしくは回避できる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上述した例に限定されないのであって、この発明の目的を達成する範囲で適宜変更してもよい。例えば上述した例では、ステップS2の判断において、インバータ素子の温度、あるいは、その他第1モータ6の温度や蓄電装置47の温度などによって短時間定格トルクの出力を実行するか否かを判断したものの、これら各パラメータは、少なくともいずれか一つの条件が成立した場合に、短時間定格トルクの出力を実行可能と判断してもよく、あるいは、複数のパラメータを協調させて前記判断をしてもよい。
また、上述した図15のタイムチャートでは、短時間定格トルクの出力をt3時点からt4時点の所定時間としたものの、これは例えばインバータ素子などの温度が低下することで再度、短時間定格トルクを出力するように構成してもよい。さらに、この発明の実施形態は、図1および図2に示すパワートレーン以外のパワートレーンを備えたハイブリッド車両の制御装置に適用してもよい。
1R,1L…前輪、 2,4…駆動装置、 3R,3L…後輪、 5…エンジン、 6…第1モータ、 7…第2モータ、 6a,15,36…出力軸、 8…動力分割機構、 9…分割部、 10…変速部、 11,17,32…サンギヤ、 12,18,26,33,42…リングギヤ、 13,19,34…ピニオンギヤ、 14,20,35…キャリヤ、 16…入力軸、 21…出力ギヤ、 22,38…カウンタシャフト、 23,39…ドリブンギヤ、 24,28,37,40…ドライブギヤ、 25,41…デファレンシャルギヤユニット、 27…ロータシャフト、 29,43…ドライブシャフト、 30…リアモータ、 31…変速機構、 44,45,46…電力制御装置、 47…蓄電装置、 48,49,50,51,52…ECU、 B1,B2…ブレーキ機構、 CL1,CL2,CL3…クラッチ機構、 C…固定部、 Ve…車両。
Claims (1)
- エンジンと、
発電機能を有する第1モータと、前記第1モータを駆動するインバータと、
前記エンジンが連結された入力要素と、前記第1モータが連結された反力要素と、
駆動輪にトルクを伝達可能に連結された出力要素とを有する差動機構と、
前記駆動輪にトルクを伝達可能に連結された第2モータと、
前記第1モータおよび前記第2モータに電気的に接続された蓄電装置とを備え、
前記第1モータにより反力トルクを出力させつつ前記エンジンのトルクで走行するHV走行モードと、前記第1モータおよび前記第2モータのトルクで走行するEV走行モードとを設定することが可能なハイブリッド車両の制御装置において、
前記第1モータは、予め定められた所定の条件により第1上限トルクおよび前記第1上限トルクより大きい第2上限トルクを設定することが可能であり、
前記第1モータを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記HV走行モード時に前記反力トルクとして前記第1上限トルクを出力し、かつ前記EV走行モード時に前記第1モータの駆動トルクとして前記第1上限トルクもしくは前記第2上限トルクを出力するように構成され、
前記EV走行モード時に前記インバータの温度と前記第1モータの温度と前記蓄電装置の温度との少なくともいずれか一つのパラメータの温度が閾値未満か否かを判断し、
前記少なくともいずれか一つのパラメータの温度が前記閾値未満の場合に前記第2上限トルクを出力するように構成されている
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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