JP2019108056A - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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一真 青木
達也 今村
Tatsuya Imamura
達也 今村
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Takahiro Oshiumi
恭弘 鴛海
由香里 岡村
Yukari Okamura
由香里 岡村
雄二 岩瀬
Yuji Iwase
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Abstract

【課題】ローモードとハイモードとを、直結モードを介することなく実行できる車両の駆動力制御装置を提供する。【解決手段】ローモードからハイモードへの切り替え、またはハイモードからローモードへの切り替えの要求がある場合に、第1係合機構と第2係合機構とのうちの現在係合している一方の係合機構を解放するとともに(ステップS7)、エンジンを停止させ(ステップS4)、第1係合機構と第2係合機構とのうちの他方の係合機構の入力回転数と出力回転数との差が許容値以下となるように回転機の回転数を制御し(ステップS8)、他方の係合機構における入力回転数と前記出力回転数との差が許容値以下となった(ステップS9で肯定的に判断)ことを条件に、他方の係合機構を係合状態に切り替える(ステップS10)ように構成されている。【選択図】図13

Description

この発明は、少なくとも二つの係合機構を備え、それら係合機構を選択的に係合することにより、複数の走行モードを設定することができる車両の駆動力制御装置に関するものである。
特許文献1には、エンジンが連結されたキャリヤと、第1モータが連結されたサンギヤとを有するシングルピニオン型の第1遊星歯車機構と、第1遊星歯車機構におけるリングギヤが連結されたキャリヤと、駆動輪が連結されたリングギヤとを有するシングルピニオン型の第2遊星歯車機構と、第1遊星歯車機構におけるキャリヤと第2遊星歯車機構におけるサンギヤとを選択的に連結する第1クラッチ機構と、第2遊星歯車機構におけるキャリヤとリングギヤとを選択的に連結する第2クラッチ機構とにより構成された動力分割機構が記載されている。この動力分割機構は、第2クラッチ機構を係合することにより出力側に伝達される動力の割合が比較的大きいローモードを設定でき、第1クラッチ機構を係合することにより前記割合がローモードよりも小さいハイモードを設定でき、第1クラッチ機構および第2クラッチ機構を係合することによりエンジンのトルクがそのまま駆動輪側に伝達される直結モードを設定できる。
特開2017−007437号公報
特許文献1に記載された動力分割機構は、第1クラッチ機構の係合状態と解放状態とを切り替えるとともに、第2クラッチ機構の係合状態と解放状態とを切り替えることによりローモード、ハイモード、直結モードの三つの走行モードを設定できる。一方、ローモードを設定しているときには、第1遊星歯車機構におけるキャリヤと第2遊星歯車機構におけるサンギヤとが相対回転するため、ローモードからハイモードへの切り替えは、通常、直結モードを介して実行される。同様に、ハイモードを設定しているときには、第2遊星歯車機構におけるキャリヤとリングギヤとが相対回転するため、ハイモードからローモードへ切り替えは、通常、直結モードを介して実行される。
しかしながら、極低車速で走行している場合には、直結モードを設定すると、エンジン回転数が自立可能回転数以下になって、エンジンが停止してしまう可能性がある。また、高車速で走行している場合には、直結モードを設定すると、エンジン回転数が上限回転数以上になってしまう可能性がある。つまり、ローモードからハイモードへの切り替えや、ハイモードからローモードの切り替えを適切に実行するための技術的な改善の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、ローモードとハイモードとを、直結モードを介することなく実行できる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジンと、回転機と、前記エンジンが連結された第1回転要素と、前記回転機が連結された第2回転要素と、駆動輪にトルク伝達可能に連結された第3回転要素とを含む複数の回転要素を有する伝動機構とを備え、前記伝動機構は、前記複数の回転要素のうちのいずれか二つの回転要素を選択的に連結する第1係合機構と、前記複数の回転要素のうちのいずれか二つの回転要素を選択的に連結する第2係合機構とを有し、前記第1係合機構を係合状態にしかつ前記第2係合機構を解放状態にすることにより前記エンジンから出力されたトルクのうち前記第3回転要素側に伝達されるトルクの割合が第1所定値となるローモードを設定し、前記第2係合機構を係合状態にしかつ前記第1係合機構を解放状態にすることにより前記割合が前記第1所定値よりも小さい第2所定値となるハイモードを設定し、前記第1係合機構と前記第2係合機構とのそれぞれを係合状態にすることにより前記複数の回転要素が差動することを制限する直結モードを設定するように構成された車両の駆動力制御装置において、前記エンジン、前記回転機、前記第1係合機構、前記第2係合機構を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記ローモードから前記ハイモードへの切り替え、または前記ハイモードから前記ローモードへの切り替えの要求がある場合に、前記第1係合機構と前記第2係合機構とのうちの現在係合している一方の係合機構を解放するとともに、前記エンジンを停止させ、前記第1係合機構と前記第2係合機構とのうちの他方の係合機構の入力回転数と出力回転数との差が許容値以下となるように前記回転機の回転数を制御し、前記他方の係合機構における前記入力回転数と前記出力回転数との差が許容値以下となったことを条件に、前記他方の係合機構を係合状態に切り替えるように構成されていることを特徴とするものである。
この発明においては、ローモードとハイモードとの切り替えを行う場合に、第1係合機構と第2係合機構とのうちの現在係合している一方の係合機構を解放する。したがって、エンジンと回転機と駆動輪とがそれぞれ個別に回転することができる。すなわち、エンジンを停止することができる。そのため、エンジンストールに至ることを抑制でき、またはエンジンが上限回転数以上で回転することを抑制できる。また、走行モードの切り替え過程で回転機の回転数を制御して、係合する側の係合機構の入力回転数と出力回転数との差を小さくし、その状態で、係合機構を係合できるため、係合機構を係合することに伴うショックを抑制できる。
第1駆動装置の一例を説明するためのスケルトン図である。 第2駆動装置の一例を説明するためのスケルトン図である。 電子制御装置(ECU)の構成を説明するためのブロック図である。 各走行モードでのクラッチ機構、ブレーキ機構の係合および解放の状態、モータの運転状態、エンジンの駆動の有無をまとめて示す図表である。 HV-Hiモードでの動作状態を説明するための共線図である。 HV-Loモードでの動作状態を説明するための共線図である。 直結モードでの動作状態を説明するための共線図である。 EV-Loモードでの動作状態を説明するための共線図である。 EV-Hiモードでの動作状態を説明するための共線図である。 シングルモードでの動作状態を説明するための共線図である。 CSモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示す図である。 CDモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示す図である。 直結モードを介することなく、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替えを行う場合の制御例を説明するためのフローチャートである。 フラグf_moveokを設定する制御例を説明するためのフローチャートである。 フラグf_Fokを設定する制御例を説明するためのフローチャートである。 第1駆動力を定めるためのマップの一例を示す模式図である。 フラグf_Vokを設定する制御例を説明するためのフローチャートである。 直結モードを介することなく、HV-LoモードからHV-Hiモードに切り替える場合の制御モードなどの変化の一例を説明するためのタイムチャートである。 HV-LoモードからHV-Hiモードに切り替えた場合における動力分割機構の各回転要素の回転数の変化を説明するための共線図である。 この発明で対象とすることができる車両の他の構成を説明するためのスケルトン図である。 図20に示す車両で設定できるHV-Hiモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図である。 図20に示す車両で設定できるHV-Loモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図である。 この発明で対象とすることができる車両の更に他の構成を説明するためのスケルトン図である。 図23に示す車両で設定できるHV-Hiモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図である。 図23に示す車両で設定できるHV-Loモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図である。
この発明の実施形態における車両の一例を図1および図2を参照して説明する。図1は、前輪1R,1Lを駆動するための第1駆動装置2を示し、図2は、後輪3R,3Lを駆動するための第2駆動装置4を示している。第1駆動装置2は、エンジン5と二つのモータ6,7とを駆動力源として備えたいわゆる2モータタイプの駆動装置であって、第1モータ6は発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG1)によって構成され、エンジン5の回転数を第1モータ6によって制御するとともに、第1モータ6で発電された電力により第2モータ7を駆動し、その第2モータ7が出力する駆動トルクを走行のための駆動トルクに加えることができるように構成されている。なお、第2モータ7は発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG2)によって構成することができる。上記の第1モータ6が、この発明の実施形態における「回転機」に相当する。
エンジン5には、この発明の実施形態における「伝動機構」に相当する動力分割機構8が連結されている。この動力分割機構8は、エンジン5から出力されたトルクを第1モータ6側と出力側とに分割する機能を主とする分割部9と、そのトルクの分割率を変更する機能を主とする変速部10とにより構成されている。
分割部9は、三つの回転要素によって差動作用を行う構成であればよく、遊星歯車機構を採用することができる。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。図1に示す分割部9は、サンギヤ11と、サンギヤ11に対して同心円上に配置された、内歯歯車であるリングギヤ12と、これらサンギヤ11とリングギヤ12との間に配置されてサンギヤ11とリングギヤ12とに噛み合っているピニオンギヤ13と、ピニオンギヤ13を自転および公転可能に保持するキャリヤ14とにより構成されている。そのサンギヤ11が主に反力要素として機能し、リングギヤ12が主に出力要素として機能し、キャリヤ14が主に入力要素として機能する。このキャリヤ14が、この発明の実施形態における「第1回転要素」に相当し、サンギヤ11が、この発明の実施形態における「第2回転要素」に相当する。
エンジン5が出力した動力が前記キャリヤ14に入力されるように構成されている。具体的には、エンジン5の出力軸15に、動力分割機構8の入力軸16が連結され、その入力軸16がキャリヤ14に連結されている。なお、キャリヤ14と入力軸16とを直接連結する構成に替えて、歯車機構などの伝動機構を介してキャリヤ14と入力軸16とを連結してもよい。また、その出力軸15と入力軸16との間にダンパ機構やトルクコンバータなどの機構を配置してもよい。
サンギヤ11に第1モータ6が連結されている。図1に示す例では、分割部9および第1モータ6は、エンジン5の回転中心軸線と同一の軸線上に配置され、第1モータ6は分割部9を挟んでエンジン5とは反対側に配置されている。この分割部9とエンジン5との間で、これら分割部9およびエンジン5と同一の軸線上に、その軸線の方向に並んで変速部10が配置されている。
変速部10は、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されており、サンギヤ17と、サンギヤ17に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ18と、これらサンギヤ17とリングギヤ18との間に配置されてこれらサンギヤ17およびリングギヤ18に噛み合っているピニオンギヤ19と、ピニオンギヤ19を自転および公転可能に保持しているキャリヤ20とを有し、サンギヤ17、リングギヤ18、およびキャリヤ20の三つの回転要素によって差動作用を行う差動機構である。この変速部10におけるサンギヤ17に分割部9におけるリングギヤ12が連結されている。また、変速部10におけるリングギヤ18に、出力ギヤ21が連結されている。このリングギヤ18が、この発明の実施形態における「第3回転要素」に相当する。
上記の分割部9と変速部10とが複合遊星歯車機構を構成するように第1クラッチ機構CL1が設けられている。第1クラッチ機構CL1は、変速部10におけるキャリヤ20を、分割部9におけるキャリヤ14に選択的に連結するように構成されている。この第1クラッチ機構CL1は、湿式多板クラッチなどの摩擦式のクラッチ機構であってもよく、あるいはドグクラッチなどの噛み合い式のクラッチ機構であってもよい。この第1クラッチ機構CL1を係合させることにより分割部9におけるキャリヤ14と変速部10におけるキャリヤ20とが連結されてこれらが入力要素となり、また分割部9におけるサンギヤ11が反力要素となり、さらに変速部10におけるリングギヤ18が出力要素となった複合遊星歯車機構が形成される。したがって、分割部9を構成する各回転要素11,12,14や変速部10を構成する各回転要素17,18,20が、この発明の実施形態における「複数の回転要素」に相当する。
さらに、変速部10の全体を一体化させるための第2クラッチ機構CL2が設けられている。この第2クラッチ機構CL2は、変速部10におけるキャリヤ20とリングギヤ18もしくはサンギヤ17、あるいはサンギヤ17とリングギヤ18とを連結するなどの少なくともいずれか二つの回転要素を連結するためのものであって、摩擦式あるいは噛み合い式のクラッチ機構によって構成することができる。図1に示す例では、第2クラッチ機構CL2は、変速部10におけるキャリヤ20とリングギヤ18とを連結するように構成されている。そして、第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2は、エンジン5および分割部9ならびに変速部10と同一の軸線上に配置され、かつ変速部10を挟んで分割部9とは反対側に配置されている。なお、各クラッチ機構CL1,CL2同士は、図1に示すように、半径方向で内周側と外周側とに並んだ状態に配置されていてもよく、あるいは軸線方向に並んで配置されていてもよい。図1に示すように半径方向に並べて配置した場合には、第1駆動装置2の全体としての軸長を短くすることができる。また、軸線方向に並べて配置した場合には、各クラッチ機構CL1,CL2の外径の制約が少なくなるので、摩擦式のクラッチ機構を採用した場合には、摩擦板の枚数を少なくすることができる。
上記のエンジン5や分割部9あるいは変速部10の回転中心軸線と平行にカウンタシャフト22が配置されている。前記出力ギヤ21に噛み合っているドリブンギヤ23がこのカウンタシャフト22に取り付けられている。また、カウンタシャフト22にはドライブギヤ24が取り付けられており、このドライブギヤ24が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット25におけるリングギヤ26に噛み合っている。さらに、前記ドリブンギヤ23には、第2モータ7におけるロータシャフト27に取り付けられたドライブギヤ28が噛み合っている。したがって、前記出力ギヤ21から出力された動力もしくはトルクに、第2モータ7が出力した動力もしくはトルクを、上記のドリブンギヤ23の部分で加えるように構成されている。このようにして合成された動力もしくはトルクをデファレンシャルギヤユニット25から左右のドライブシャフト29に出力し、その動力やトルクが前輪1R,1Lに伝達されるように構成されている。
さらに、第1駆動装置2は、第1モータ6から出力された駆動トルクを、前輪1R,1Lに伝達することができるように、出力軸15または入力軸16を選択的に固定可能に構成された、摩擦式あるいは噛み合い式の第1ブレーキ機構B1が設けられている。すなわち、第1ブレーキ機構B1により出力軸15または入力軸16を固定することで、分割部9におけるキャリヤ14や、変速部10におけるキャリヤ20を反力要素として機能させ、分割部9におけるサンギヤ11を入力要素として機能させることができるように構成されている。なお、第1ブレーキ機構B1は、第1モータ6が駆動トルクを出力した場合に、反力トルクを発生させることができればよく、出力軸15または入力軸16を完全に固定する構成に限らず、要求される反力トルクを出力軸15または入力軸16に作用させることができればよい。または、出力軸15や入力軸16が、エンジン5の駆動時に回転する方向とは逆方向に回転することを禁止するワンウェイクラッチを第1ブレーキ機構B1に代えて設けてもよい。
第2駆動装置4は、リアモータ30の動力もしくはトルクを後輪3R,3Lに伝達するように構成されている。なお、便宜上、左側の後輪3Lは図示していない。このリアモータ30は、第1モータ6および第2モータ7と同様に、発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MGR)によって構成されている。リアモータ30には、リアモータ30のトルクを増幅する減速段と、リアモータ30のトルクを変化させずにそのまま出力する固定段とを選択的に切り替えることができるように構成された変速機構31が連結されている。
図2に示す変速機構31は、サンギヤ32と、サンギヤ32に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ33と、これらサンギヤ32とリングギヤ33との間に配置されてサンギヤ32とリングギヤ33とに噛み合うピニオンギヤ34と、ピニオンギヤ34を自転および公転可能に保持しているキャリヤ35とを有する、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。
変速機構31のサンギヤ32は、リアモータ30に連結されており、入力要素として機能する。キャリヤ35は、出力軸36に連結されており、出力要素として機能する。そして、変速機構31を固定段として機能させるための第3クラッチ機構CL3が設けられている。この第3クラッチ機構CL3は、変速機構31におけるサンギヤ32とリングギヤ33もしくはキャリヤ35、あるいはリングギヤ33とキャリヤ35とを連結するなどの少なくともいずれか二つの回転要素を連結するためのものであって、摩擦式あるいは噛み合い式のクラッチ機構によって構成することができる。図2に示す例では、第3クラッチ機構CL3は、変速機構31におけるリングギヤ33とキャリヤ35とを連結するように構成されている。
さらに、変速機構31を減速段として機能させるための第2ブレーキ機構B2が設けられている。この第2ブレーキ機構B2は、変速機構31におけるリングギヤ33を選択的に固定するように構成された、摩擦式あるいは噛み合い式の係合機構によって構成することができる。図2に示す第2ブレーキ機構B2は、第2駆動装置4を収容するケースCとリングギヤ33とを係合することにより、リングギヤ33を固定するように構成されている。このように第2ブレーキ機構B2によりリングギヤ33が固定されることでリングギヤ33が反力要素として機能する。なお、第2ブレーキ機構B2は、上記第1ブレーキ機構B1と同様に、リングギヤ33を完全に固定するものに限らない。
変速機構31の出力軸36には、ドライブギヤ37が取り付けられている。出力軸36と平行にカウンタシャフト38が配置されており、そのカウンタシャフト38の一方の端部に、ドライブギヤ37と噛み合うドリブンギヤ39が取り付けられている。このドリブンギヤ39は、ドライブギヤ37よりも大径に形成されており、変速機構31の出力トルクを増幅するように構成されている。カウンタシャフト38の他方の端部には、ドライブギヤ40が取り付けられており、このドライブギヤ40が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット41におけるリングギヤ42に噛み合っている。デファレンシャルギヤユニット41には、ドライブシャフト43が連結されており、そのドライブシャフト43を介して後輪3R,3Lに、リアモータ30から出力された動力が伝達されるように構成されている。
第1モータ6にインバータやコンバータなどを備えた第1電力制御装置44が連結され、第2モータ7にインバータやコンバータなどを備えた第2電力制御装置45が連結され、リアモータ30にインバータやコンバータなどを備えた第3電力制御装置46が連結され、それらの各電力制御装置44,45,46が、リチウムイオン電池やキャパシタなどから構成された蓄電装置47に連結されている。また、上記第1電力制御装置44と第2電力制御装置45および第3電力制御装置46とが相互に電力を供給できるように構成されている。具体的には、第1モータ6が反力トルクを出力することに伴って発電機として機能する場合には、第1モータ6で発電された電力を蓄電装置47を介することなく、第2モータ7やリアモータ30に電力を供給することができるように構成されている。
上記の各電力制御装置44,45,46におけるインバータやコンバータ、エンジン5、各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2を制御するための電子制御装置(ECU)48が設けられている。このECU48は、この発明の実施形態における「コントローラ」に相当するものであり、マイクロコンピュータを主体にして構成されている。図3は、ECU48の構成の一例を説明するためのブロック図である。図3に示す例では、統合ECU49、MG-ECU50、エンジンECU51、およびクラッチECU52によりECU48が構成されている。
統合ECU49は、車両に搭載された種々のセンサからデータが入力され、その入力されたデータと、予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて、MG-ECU50、エンジンECU51、およびクラッチECU52に指令信号を出力するように構成されている。統合ECU49に入力されるデータの一例を図3に示してあり、車速、アクセル開度、第1モータ(MG1)6の回転数、第2モータ(MG2)7の回転数、リアモータ(MGR)30の回転数、エンジン5の出力軸15の回転数(エンジン回転数)、変速部10におけるリングギヤ18またはカウンタシャフト22の回転数である出力回転数、各クラッチ機構CL1,CL2,CL3や各ブレーキ機構B1,B2に設けられたピストンのストローク量、蓄電装置47の温度、各電力制御装置44,45,46の温度、第1モータ6の温度、第2モータ7の温度、リアモータ30の温度、分割部9や変速部10あるいは変速機構31などを潤滑するオイル(ATF)の温度、蓄電装置47の充電残量(SOC)などのデータが、統合ECU49に入力される。
そして、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいて第1モータ6の運転状態(出力トルクや回転数)、第2モータ7の運転状態(出力トルクや回転数)、リアモータ30の運転状態(出力トルクや回転数)を求めて、それらの求められたデータを指令信号としてMG-ECU50に出力する。同様に、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいてエンジン5の運転状態(出力トルクや回転数)を求めて、その求められたデータを指令信号としてエンジンECU51に出力する。さらに、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2の伝達トルク容量(「0」を含む)を求めて、それらの求められたデータを指令信号としてクラッチECU52に出力する。
MG-ECU50は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて各モータ6,7,30に通電するべき電流値を求めて、各モータ6,7,30に指令信号を出力する。各モータ6,7,30は、交流式のモータであるから、上記の指令信号は、インバータで生成するべき電流の周波数や、コンバータで昇圧するべき電圧値などが含まれる。
エンジンECU51は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて電子スロットルバルブ5bの開度を定めるための電流、点火装置で燃料を着火するための電流、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブの開度を定めるための電流、吸気バルブや排気バルブの開度を定めるための電流値などを求め、それぞれのバルブや装置に指令信号を出力する。すなわち、エンジン5の出力(パワー)や、エンジン5の出力トルク、もしくはエンジン回転数を制御するための指示信号を、エンジンECU51から出力する。
クラッチECU52は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2の係合圧を定めるアクチュエータに通電するべき電流値を求めて、それぞれのアクチュエータに指令信号を出力する。
上記の第1駆動装置2は、エンジン5から駆動トルクを出力して走行するHV走行モードと、エンジン5から駆動トルクを出力することなく、第1モータ6や第2モータ7から駆動トルクを出力して走行するEV走行モードとを設定することが可能である。さらに、HV走行モードは、第1モータ6を低回転数で回転させた場合(「0」回転を含む)に、変速部10におけるリングギヤ18の回転数よりもエンジン5(または入力軸16)の回転数が高回転数となるHV-Loモードと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数よりもエンジン5(または入力軸16)の回転数が低回転数となるHV-Hiモードと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数とエンジン5(または入力軸16)の回転数が同一になる、すなわち動力分割機構8を構成する各回転要素の差動が制限される直結モードとを設定することが可能である。なお、HV-Loモードが、この発明の実施形態における「ローモード」に相当し、HV-Hiモードが、この発明の実施形態における「ハイモード」に相当する。
またさらに、EV走行モードは、第1モータ6および第2モータ7から駆動トルクを出力するデュアルモードと、第1モータ6から駆動トルクを出力せずに第2モータ7のみから駆動トルクを出力するシングルモードとを設定することが可能である。更にデュアルモードは、第1モータ6から出力されたトルクの増幅率が比較的大きいEV-Loモードと、第1モータ6から出力されたトルクの増幅率が比較的小さいEV-Hiモードとを設定することが可能である。なお、シングルモードでは、第1クラッチ機構CL1を係合した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行することや、第2クラッチ機構CL2を係合した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行すること、あるいは各クラッチ機構CL1,CL2を解放した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行することが可能である。
それらの各走行モードは、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、第1ブレーキ機構B1、およびエンジン5、各モータ6,7を制御することにより設定される。図4に、これらの走行モードと、各走行モード毎における、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、第1ブレーキ機構B1の係合および解放の状態、第1モータ6および第2モータ7の運転状態、エンジン5からの駆動トルクの出力の有無の一例を図表として示してある。図中における「●」のシンボルは係合している状態を示し、「−」のシンボルは解放している状態を示し、「G」のシンボルは主にジェネレータとして運転することを意味し、「M」のシンボルは主にモータとして運転することを意味し、空欄はモータおよびジェネレータとして機能していない、または第1モータ6や第2モータ7が駆動のために関与していない状態を意味し、「ON」はエンジン5から駆動トルクを出力している状態を示し、「OFF」はエンジン5から駆動トルクを出力していない状態を示している。
各走行モードを設定した場合における動力分割機構8の各回転要素の回転数、およびエンジン5、各モータ6,7のトルクの向きを説明するための共線図を図5ないし図10に示している。共線図は、動力分割機構8における各回転要素を示す直線をギヤ比の間隔をあけて互いに平行に引き、これらの直線に直交する基線からの距離をそれぞれの回転要素の回転数として示す図であり、それぞれの回転要素を示す直線にトルクの向きを矢印で示すとともに、その大きさを矢印の長さで示している。
図5および図6に示すようにHV-HiモードやHV-Loモードでは、エンジン5から駆動トルクを出力し、第1クラッチ機構CL1と第2クラッチ機構CL2とのいずれか一方を係合するとともに、第1モータ6から反力トルクを出力する。その場合の第1モータ6の回転数は、エンジン5の燃費や第1モータ6の駆動効率などを考慮した第1駆動装置2全体としての効率(燃料や電力のトータルの消費エネルギー量を前輪1R,1Lのエネルギー量で除算した値)が最も良好となるように制御される。上記の第1モータ6の回転数は連続的に変化させることができ、その第1モータ6の回転数と車速とに基づいてエンジン回転数が定まる。したがって、動力分割機構8は、無段変速機として機能できる。
上記のように第1モータ6から反力トルクを出力することにより、第1モータ6が発電機として機能する場合には、エンジン5の動力の一部が第1モータ6により電気エネルギーに変換される。そして、エンジン5の動力から第1モータ6により電気エネルギーに変換された動力分を除いた動力が変速部10におけるリングギヤ18に伝達される。その第1モータ6から出力する反力トルクは、動力分割機構8を介してエンジン5から第1モータ6側に伝達されるトルクの分割率に応じて定められる。この動力分割機構8を介してエンジン5から第1モータ6側に伝達されるトルクと、リングギヤ18側に伝達されるトルクとの比、すなわち動力分割機構8におけるトルクの分割率は、HV-LoモードとHV-Hiモードとで異なる。
具体的には、第1モータ6側に伝達されるトルクを「1」とした場合、HV-Loモードではリングギヤ18側に伝達されるトルクの割合であるトルク分割率は、「1/(ρ1×ρ2)」となり、HV-Hiモードではそのトルク分割率は、「1/ρ1」となる。すなわち、エンジン5から出力されたトルクのうちリングギヤ18に伝達されるトルクの割合は、HV-Loモードでは、「1/(1−(ρ1×ρ2))」となり、HV-Hiモードでは、「1/(ρ1+1)」となる。ここで、「ρ1」は分割部9のギヤ比(リングギヤ12の歯数とサンギヤ11の歯数との比率)であり、「ρ2」は変速部10のギヤ比(リングギヤ18の歯数とサンギヤ17の歯数との比率)である。なお、ρ1およびρ2は、「1」よりも小さい値に設定されている。したがって、HV-Loモードが設定されている場合には、HV-Hiモードが設定されている場合と比較して、リングギヤ18に伝達されるトルクの割合が大きくなる。上記HV-Loモードを設定した場合にエンジン5から出力されたトルクのうちリングギヤ18に伝達されるトルクの割合「1/(1−(ρ1×ρ2))」が、この発明の実施形態における「第1所定値」に相当し、HV-Hiモードを設定した場合にエンジン5から出力されたトルクのうちリングギヤ18に伝達されるトルクの割合「1/(ρ1+1)」が、この発明の実施形態における「第2所定値」に相当する。なお、エンジン5で発生させるトルクによりエンジン5の回転数を増大させている場合には、エンジン5で発生させたトルクからエンジン5の回転数を増大させるために要するトルクを減算したトルクが、エンジン5から出力されるトルクとなる。すなわち、エンジン5の出力軸15から実質的に出力されるトルクが、上記エンジン5から出力されるトルクとなる。
そして、第1モータ6により発電された電力が第2モータ7に供給される。その場合、必要に応じて蓄電装置47に充電されている電力も第2モータ7に供給される。なお、第2モータ7とリアモータ30とは、エンジン5から伝達される駆動トルクに、さらに駆動トルクを加算するように機能するものであって、車両全体としての駆動トルクを制御する上では、第2モータ7とリアモータ30とを同一のものとみなすことができるため、第2モータ7に代えて、または第2モータ7に加えてリアモータ30に電力を供給するように構成してもよい。以下では、加算するための駆動トルクを第2モータ7のみから出力する例を挙げて説明している。
直結モードでは、各クラッチ機構CL1,CL2が係合されることにより、図7に示すように動力分割機構8における各回転要素が同一回転数で回転する。すなわち、エンジン5の動力の全てが動力分割機構8から出力される。言い換えると、エンジン5の動力の一部が、第1モータ6や第2モータ7により電気エネルギーに変換されることがない。したがって、電気エネルギーに変換する際に生じる電気抵抗などを要因とした損失がないため、動力の伝達効率を向上させることができる。
さらに、図8および図9に示すようにEV-LoモードとEV-Hiモードとでは、第1ブレーキ機構B1を係合するとともに各モータ6,7から駆動トルクを出力して走行する。図8および図9に示すように、第1モータ6の回転数に対する変速部10におけるリングギヤ18の回転数である回転数比は、EV-Loモードの方がEV-Hiモードよりも小さくなる。すなわち、EV-Loモードの方が、EV-Hiモードよりも減速比が大きい。そのため、EV-Loモードを設定することにより大きな駆動力を得ることができる。なお、シングルモードでは、図10に示すように第2モータ7のみから駆動トルクを出力しており、かつ各クラッチ機構CL1,CL2が解放されていることにより、動力分割機構8の各回転要素は停止した状態になる。したがって、エンジン5や第1モータ6を連れ回すことによる動力損失を低減することができる。
蓄電装置47の充電残量(SOC)、車速、要求駆動力などに基づいて上記の各走行モードを定めるように構成されている。この実施形態では、蓄電装置47の充電残量を維持するように各走行モードを設定するCS(Charge Sustain)モードと、蓄電装置47に充電された電力を積極的に使用するCD(Charge Depleting)モードとを、蓄電装置47の充電残量に応じて選択するように構成されている。具体的には、蓄電装置47の充電残量が低下している場合などに、CSモードを選択し、蓄電装置47の充電残量が比較的多い場合などにCDモードを選択するように構成されている。
図11には、CSモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示している。このマップの横軸は車速を示し、縦軸は要求駆動力を示している。なお、車速は車速センサにより検出されたデータから求めることができ、要求駆動力はアクセル開度センサにより検出されたデータから求めることができる。
図11に示す例では、後進走行している場合には、要求駆動力の大きさに関わらずシングルモードを設定し、また前進走行しており、要求駆動力が比較的小さい場合(減速要求を含む)に、シングルモードを設定するように構成されている。このシングルモードを設定する領域は、第2モータ7やリアモータ30の特性に基づいて定められている。なお、シングルモードを設定する領域にハッチングを付してある。
また、前進走行しており、かつ要求駆動力が比較的大きい場合には、HV走行モードが設定される。なお、HV走行モードは、低車速域から高車速域に亘って駆動力を出力できるため、蓄電装置47の充電残量が下限値近傍となった場合などには、シングルモードが設定されるべき領域であっても、HV走行モードを設定することがある。
さらに、HV走行モードを設定する場合においては、車速と要求駆動力に応じてHV-LoモードやHV-Hiモード、あるいは直結モードのいずれかのモードを選択するように構成されている。具体的には、比較的低車速の場合や要求駆動力が比較的大きい場合に、HV-Loモードが選択され、比較的高車速でかつ要求駆動力が比較的小さい場合に、HV-Hiモードが選択され、車両の運転状態がHV-LoモードとHV-Hiモードとを設定する領域の間の運転点(車速と要求駆動力とに基づいた値)の場合に、直結モードが選択されるように構成されている。
また、上記のHV-Loモード、直結モード、HV-Hiモードは、図11に示す各ラインを運転点が横切ることにより切り替えるように構成されている。具体的には、図11における「Lo←Fix」のラインを運転点が右側から左側に向けて横切った場合や、下側から上側に向けて横切った場合に、直結モードからHV-Loモードに切り替えるように構成され、「Lo→Fix」のラインを運転点が左側から右側に向けて横切った場合や、上側から下側に向けて横切った場合に、HV-Loモードから直結モードに切り替えるように構成されている。同様に、図11における「Fix←Hi」のラインを運転点が右側から左側に向けて横切った場合や、下側から上側に向けて横切った場合に、HV-Hiモードから直結モードに切り替えるように構成され、「Fix→Hi」のラインを運転点が左側から右側に向けて横切った場合や、上側から下側に向けて横切った場合に、直結モードからHV-Hiモードに切り替えるように構成されている。
図12には、CDモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示している。このマップの横軸は車速を示し、縦軸は要求駆動力を示している。なお、車速は車速センサにより検出されたデータから求めることができ、要求駆動力はアクセル開度センサにより検出されたデータから求めることができる。
図12に示す例では、後進走行している場合には、要求駆動力の大きさに関わらずシングルモードを設定し、また前進走行しており、要求駆動力が第1駆動力F1よりも小さい場合(減速要求を含む)に、シングルモードを設定するように構成されている。このシングルモードを設定する領域は、第2モータ7やリアモータ30の特性などに基づいて定められている。なお、シングルモードを設定する領域にハッチングを付してある。
また、前進走行しており、かつ要求駆動力が第1駆動力F1よりも大きい場合には、デュアルモードが設定される。さらに、第1車速V1よりも高車速である場合や、第2車速V2よりも高車速でありかつ要求駆動力が第2駆動力F2よりも大きい場合には、HV走行モードが設定される。なお、HV走行モードは、低車速域から高車速域に亘って駆動力を出力できるため、蓄電装置47の充電残量が下限値近傍となった場合などには、シングルモードやデュアルモードが設定されるべき領域であっても、HV走行モードを設定することがある。
さらに、HV走行モードを設定する場合においては、車速と要求駆動力に応じてHV-LoモードやHV-Hiモード、あるいは直結モードのいずれかの走行モードを選択するように構成されている。具体的には、比較的低車速の場合や要求駆動力が比較的大きい場合に、HV-Loモードが選択され、比較的高車速でかつ要求駆動力が比較的小さい場合に、HV-Hiモードが選択され、車両の走行状態がHV-LoモードとHV-Hiモードとを設定する領域の間の運転点(車速と要求駆動力とに基づいた値)の場合に、直結モードが選択されるように構成されている。
また、上記のHV-Loモード、直結モード、HV-Hiモードは、図12に示す各ラインを運転点が横切ることにより切り替えるように構成されている。具体的には、図12における「Lo⇔Fix」のラインを運転点が横切った場合に、直結モードとHV-Loモードとが相互に切り替えられるように構成されている。同様に、図12における「Fix⇔Hi」のラインを運転点が横切った場合に、HV-Hiモードと直結モードとが相互に切り替えられるように構成されている。
なお、図11や図12に示す走行モードを設定する領域や、HV走行モードを設定する条件下におけるモードの切り替えを行うためのラインは、第1駆動装置2を構成する各部材の温度や、蓄電装置47あるいは電力制御装置44,45,46の温度、もしくは蓄電装置47の充電残量などに応じて変動するように構成してもよい。
HV-Hiモードは、第1クラッチ機構CL1が解放されていることにより、図5に示すように分割部9におけるキャリヤ14と変速部10におけるキャリヤ20とが相対回転できるため、車速とエンジン5の回転数とに応じて第1クラッチ機構CL1の入力回転数(例えば、分割部9におけるキャリヤ14の回転数)と出力回転数(例えば、変速部10におけるキャリヤ20の回転数)との差が大きくなる場合がある。そのような状況でHV-HiモードからHV-Loモードへの切り替えの要求があるときには、通常、第1クラッチ機構CL1の入力回転数と出力回転数との差が小さくなるように、第1モータ6によりエンジン5の回転数を変更し、その後、第1クラッチ機構CL1を係合する。すなわち、一時的に直結モードを設定する。ついで、第2クラッチ機構CL2を解放する。
同様に、HV-Loモードは、第2クラッチ機構CL2が解放されていることにより、図6に示すように変速部10におけるキャリヤ20とリングギヤ18とが相対回転できるため、車速とエンジン5の回転数とに応じて第2クラッチ機構CL2の入力回転数(例えば、変速部10におけるキャリヤ20の回転数)と出力回転数(例えば、変速部10におけるリングギヤ18の回転数)との差が大きくなる場合がある。そのような状況でHV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えの要求があるときには、通常、第2クラッチ機構CL2の入力回転数と出力回転数との差が小さくなるように、第1モータ6によりエンジン5の回転数を変更し、その後、第2クラッチ機構CL2を係合する。すなわち、一時的に直結モードを設定する。ついで、第1クラッチ機構CL1を解放する。
一方、HV-HiモードとHV-Loモードとの切り替えを行う場合には、走行状況などに応じて直結モードを設定できない場合がある。具体的には、低速の場合に直結モードを設定すると、エンジン5の回転数がエンジンストールに至る回転数まで低下する可能性がある。したがって、低速の場合には、エンジン5を回転した状態を維持しつつ直結モードを設定することができない。また、高車速の場合に直結モードを設定すると、エンジン5の許容上限回転数以上にエンジン回転数が増大する可能性がある。したがって、高車速の場合も、低車速の場合と同様に、エンジン5を回転した状態を維持しつつ直結モードを設定することができない。
そのため、この発明の実施形態における車両の駆動力制御装置は、直結モードを介することなく、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替えを行えるように構成されている。その制御の一例を図13に示している。図13に示す制御例は、ECU48により、低速走行時にHV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えの要求がある場合に実行される。
図13に示す例では、まず、直結モードを介することなくHV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えを行う条件が成立した場合にオンに設定されるフラグf_moveokがオンであるか否かを判断する(ステップS1)。
図14には、フラグf_moveokを設定するためのフローチャートの一例を示している。図14に示す例では、まず、現在、フラグf_moveokがオンであるか否かを判断する(ステップS11)。すなわち、図14に示すフローチャートを前回実行した場合に、フラグf_moveokがオンに設定された状態でリターンしたか否かを判断する。
現在、フラグf_moveokがオンであることにより、ステップS11で肯定的に判断された場合は、現在設定されている走行モードがHV-Hiモードであるか否かを判断する(ステップS12)。このステップS12は、各クラッチ機構CL1,CL2の状態やエンジン5および各モータ6,7の状態などに応じて判断することができる。
現在設定されている走行モードがHV-HiモードであることによりステップS12で肯定的に判断された場合は、フラグf_moveokをオフに切り替えて(ステップS13)、リターンする。それとは反対に、現在設定されている走行モードがHV-Hiモードでないことにより、すなわち、現在設定されている走行モードがHV-Loモードや直結モードあるいはEV走行モードであることによりステップS12で否定的に判断された場合には、フラグf_moveokをオンに維持して(ステップS14)、リターンする。
一方、現在、フラグf_moveokがオフであることによりステップS11で否定的に判断された場合は、フラグf_Fokおよびフラグf_Vokがオンであるか否か、ならびにエンジン5停止することが可能か否かを判断する(ステップS15)。ステップS15におけるフラグf_Fokは、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替えを、要求駆動力を充足しながら実行できる場合にオンに設定されるフラグである。具体的には、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替え過渡期に、第2モータ7の駆動トルクのみで要求駆動力を充足できる場合にオンに設定される。また、ステップS15におけるフラグf_Vokは、直結モードを設定するとした場合に、エンジン回転数がエンジンストールに至る回転数となる車速以下の場合にオンに設定されるフラグである。さらに、エンジン5を停止することが可能な否かは、エンジン5を駆動しておく要求があるか否かに基づいて判断することができる。
図15には、フラグf_Fokを設定するためのフローチャートの一例を示している。図15に示す例では、まず、要求駆動力Fが第1駆動力a以下か否かを判断する(ステップS21)。この第1駆動力aは、第2モータ7の駆動トルクのみで充足できる駆動力に定められている。一方、第2モータ7から出力可能な駆動トルク(最大トルク)は、第2モータ7の定格トルク以外に第2モータ7の温度状態や、第2電力制御装置45の温度状態、あるいは蓄電装置47のSOCや温度状態などに応じて変動する。さらに、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替え過渡期に第1モータ6がモータとして機能する場合には、蓄電装置47から出力可能な電力から第1モータ6により消費される電力を除いた分の電力が第2モータ7に供給されることになり、その電力に応じて第2モータ7から出力可能な駆動トルクが定まる。
図16には、第1駆動力aを定めるための図を模式的に示している。図16には、横軸に車速を採り、縦軸に駆動力を採っている。図中における細い実線は、第2モータ7の定格トルクに基づいた値である。すなわち、第2モータ7から最大トルクを出力した場合の駆動力である。したがって、第2モータ7におけるコイルの温度や、第2モータ7に設けられた磁石の温度などに応じて、第2モータ7から出力できるトルクが制限され、その場合、第2モータ7の出力トルクに応じた駆動力は、図16における原点側に変動する。一方、第2電力制御装置45や蓄電装置47の温度条件などに応じて第2モータ7に供給できる電力が変動する。図16には、第2モータ7に供給できる電力が制限された場合に、第2モータ7から出力できるトルクに応じた駆動力を細い破線で示している。したがって、図16に示す条件下では、第2モータ7から出力できる最大トルクに応じた駆動力は、細い破線で示す領域内となる。そのため、第1駆動力aは、図16に太い実線で示したように第2モータ7や蓄電装置47などの現在の条件に応じて第2モータ7から出力できる最大トルクに応じた駆動力から、一定値を減算した駆動力に定められている。
要求駆動力が第1駆動力a以下であることによりステップS21で肯定的に判断された場合は、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替え過渡期に、第2モータ7の駆動トルクのみで要求駆動力を充足できるため、フラグf_Fokをオンに設定し(ステップS22)、リターンする。それとは反対に、要求駆動力が第1駆動力aよりも大きいことによりステップS21で否定的に判断された場合は、要求駆動力が第2駆動力b以上であるか否かを判断する(ステップS23)。このステップS23は、フラグf_Fokをオフに切り替えるか否かを判断するためのステップである。したがって、第2駆動力bは、第1駆動力aよりも大きくかつ第2モータ7から出力できる最大トルクに応じた駆動力よりも小さい値に定められている。なお、図16には、第2駆動力bを太い破線で示している。
要求駆動力が第2駆動力b以上であることによりステップS23で肯定的に判断された場合は、フラグf_Fokをオフに設定し(ステップS24)、リターンする。それとは反対に要求駆動力が第2駆動力b未満であることによりステップS23で否定的に判断された場合は、フラグf_Fokの設定を維持して(ステップS25)、リターンする。すなわち、このルーチンを前回実行したときに、フラグf_Fokがオフの場合は、フラグf_Fokがオフの状態を維持し、このルーチンを前回実行したときに、フラグf_Fokがオンの場合は、フラグf_Fokがオンの状態を維持する。
図17には、フラグf_Vokを設定するためのフローチャートの一例を示している。図17に示す例では、まず、車速Vが第1車速α以下、または車速Vが第2車速β以上か否かを判断する(ステップS31)。この第1車速αは、直結モードを設定した場合にエンジンストールに至る車速よりも所定値、高車速側に定められている。または、直結モードを設定した場合におけるエンジン5の回転数が、動力分割機構8の固有振動数以上となるように定められている。また、第2車速βは、直結モードを設定した場合にエンジン回転数が上限回転数以上となる車速に定められている。
車速Vが第1車速α以下であること、または車速Vが第2車速β以上であることによりステップS31で肯定的に判断された場合は、フラグf_Vokをオンに設定して(ステップS32)、リターンする。それとは反対に車速Vが第1車速αと第2車速βとの間の車速であることによりステップS31で否定的に判断された場合は、車速Vが第3車速γ以上でありかつ第4車速δ以下であるか否かを判断する(ステップS33)。このステップS33は、フラグf_Vokをオフに切り替えるか否かを判断するためのステップである。したがって、第3車速γは、第1車速αよりも高車速に定められ、第4車速δは、第2車速βよりも低車速に定められている。
車速Vが第3車速γ以上でありかつ第4車速δ以下であることによりステップS33で肯定的に判断された場合は、フラグf_Vokをオフに設定して(ステップS34)、リターンする。それとは反対に車速Vが第3車速γ未満であること、または第4車速δよりも高車速であることによりステップS33で否定的に判断された場合は、フラグf_Vokの設定を維持して(ステップS35)、リターンする。すなわち、このルーチンを前回実行したときに、フラグf_Vokがオフの場合は、フラグf_Vokがオフの状態を維持し、このルーチンを前回実行したときに、フラグf_Vokがオンの場合は、フラグf_Vokがオンの状態を維持する。
図15や図17に示すフローチャートを実行することにより設定されるフラグf_Fokおよびフラグf_Vokがオンである場合には、直結モードを設定することによりエンジンストールに至る可能性があり、または直結モードを設定することによりエンジン回転数が上限回転数となる可能性がある。また、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替え過渡期に駆動力が低下しない。そのため、直結モードを設定することなくHV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替えを行うことが好ましい。また、この制御例では、エンジン5を一時的に停止してHV-LoモードからHV-Hiモードに切り替えるように構成されている。したがって、フラグf_Fokおよびフラグf_Vokがオンであり、かつエンジン5を停止することができることにより図14におけるステップS15で肯定的に判断された場合は、フラグf_moveokをオンに設定して(ステップS16)、リターンする。それとは反対にフラグf_Fokとフラグf_Vokとのいずれか一方がオフであること、またはエンジン5を停止することができないことによりステップS15で否定的に判断された場合は、フラグf_moveokをオフに設定して(ステップS17)、リターンする。
図14に示すフローチャートに基づいてフラグf_moveokがオフされていることにより図13におけるステップS1で否定的に判断された場合は、現在設定されている走行モードを維持する(ステップS2)。したがって、例えば、各クラッチ機構CL1,CL2が入力される油圧や電力などの制御量に応じて係合する構成の場合は、その制御量を維持する。また、各クラッチ機構CL1,CL2が、いわゆるノーマルステイ型のクラッチ機構の場合には、特に制御信号を入力しない。なお、ノーマルステイ型のクラッチ機構とは、解放するための制御信号が入力された場合に係合状態から解放状態に切り替え、かつ係合するための制御信号が入力された場合に解放状態から係合状態に切り替え、さらに解放するための制御信号および係合するための制御信号が入力されていないときには、現状の状態(係合状態や解放状態)を維持するように構成されたクラッチ機構である。
一方、フラグf_moveokがオンであることによりステップS1で肯定的に判断された場合は、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えの要求があるか否かを判断する(ステップS3)。このステップS3は、例えば、図11や図12に示すマップに基づいて設定される走行モードが、HV-LoモードからHV-Hiモードに切り替わったか否か、あるいはHV-Loモードを設定する走行状態であるものの、種々の要因によりHV-Loモードを設定することが制限され、HV-Hiモードに切り替える要求があるか否かなどに基づいて判断することができる。
ここで、HV-Loモードを設定することが制限される要因の一例について簡単に説明する。HV走行モードは、上述したようにエンジン5からリングギヤ18に機械的に伝達されるトルクに、第2モータ7のトルクを合成して走行する。一方、分割部9のピニオンギヤが過回転となることを抑制するためにエンジン5の上限回転数は、HV-HiモードよりもHV-Loモードが低回転数に定められており、その結果、エンジン5から出力されるトルクや動力もHV-HiモードよりもHV-Loモードが低くなる。しかしながら、上述したように動力分割機構8によるリングギヤ18側に分割されるトルクの分割率は、HV-Loモードの方がHV-Hiモードよりも大きい。そのため、エンジン5からリングギヤ18に伝達されるトルクは、HV-Loモードの方がHV-Hiモードよりも大きくなる。その結果、走行モードに依らずに第2モータ7から同一のトルクを出力できる場合には、HV-Loモードの方がHV-Hiモードよりも大きな駆動力を得ることができる。
他方、第1モータ6側に伝達されるトルクは、HV-Loモードの方がHV-Hiモードよりも小さいことにより、第1モータ6で発電される電力が少なくなる場合がある。その場合、第1モータ6から第2モータ7に供給できる電力は、HV-Loモードの方がHV-Hiモードよりも少なくなる。しかしながら、蓄電装置47からも第2モータ7に充分な電力を供給することができる場合には、第1モータ6による発電電力によらずに第2モータ7から出力できるため、第2モータ7から出力可能な駆動トルクは変化しない。それに対して、蓄電装置47から出力可能な電力は、SOCや蓄電装置47の温度などにより制限されるため、蓄電装置47から第2モータ7に供給できる電力が少なくなる場合がある。そのような場合には、第1モータ6で発電される電力が大きいHV-Hiモードの方が、第2モータ7から大きな駆動トルクを出力することができるため、上述したようにエンジン5からリングギヤ19に伝達されるトルクがHV-Loモードよりも小さいとしても、前輪1R,1Lに伝達することができるトータルの駆動トルクが大きくなる場合がある。このような状況では、HV-Loモードを設定することを制限する。つまり、HV-Loモードで走行している場合に、蓄電装置47から出力できる電力が制限された場合には、図11や図12に示すマップに基づいた走行モードがHV-Loモードであっても、HV-Hiモードへの切り替えの要求がされる場合がある。
したがって、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えの要求があることによりステップS3で肯定的に判断された場合には、ステップS4以降の各ステップを実行することにより、直結モードを介することなく、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えを行う。それとは反対に、現在設定されている走行モードがHV-Loモードでない場合や、HV-LoモードからHV-Hiモード以外の走行モードへの切り替え要求がある場合、あるいはHV-Loモードを維持している場合などであって、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えの要求がないことによりステップS3で否定的に判断された場合には、ステップS2に移行し、すなわち現在の走行モードを維持して、リターンする。
ステップS4では、エンジン5の運転モードを停止処理に切り替える。この停止処理とは、エンジン5への燃料の供給を停止するとともに、エンジン回転数を「0」にする制御である。したがって、実質的には、第1クラッチ機構CL1を係合した状態でのシングルモードを設定することになる。なお、エンジン5を停止する手段としては、エンジン5への燃料の供給を停止することに加えて、吸入空気量を低減することや、第1モータ6によりエンジン5の回転数を低下させるトルクを付与すること、あるいは第1ブレーキ機構B1により出力軸15の回転数を低下させるようにトルクを付与することが挙げられる。
この制御例では、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えは、まず、第1クラッチ機構CL1を解放し、第2クラッチ機構CL2の入力回転数と出力回転数との差を低減させ、その後、第2クラッチ機構CL2を係合するように構成されている。その場合、第1モータ6の制御モードは、第1クラッチ機構CL1を解放する前は、HV-Loモードと同様であり、第1クラッチ機構CL1を解放した後は、第2クラッチ機構CL2の入力回転数と出力回転数との差を低減させる同期制御に切り替わる。そのため、ステップS4についで、現在の制御モードがHV-Loモードであるか否かを判断する(ステップS5)。このステップS5は、第1クラッチ機構CL1が係合しているか否かに基づいて判断することができる。
現在の走行モードがHV-LoモードであることによりステップS5で肯定的に判断された場合は、第1モータ6の目標回転数を、現在の回転数に定め、かつ第1モータ6の出力トルク(Tg)を「0」に定める(ステップS6)。この第1モータ6の現在の回転数は、図示しないレゾルバなどにより検出できる。なお、このステップS6では、第1クラッチ機構CL1が噛み合い式のクラッチ機構とした場合の制御であり、そのため、噛み合い面の摩擦力を低下させるために、第1モータ6の出力トルクを「0」に定めている。したがって、第1クラッチ機構CL1が摩擦式のクラッチ機構の場合には、ステップS6を実行しなくてもよい。
上述したように第1モータ6の回転数およびトルクを制御した後に、第1クラッチ機構CL1を解放する制御信号を出力し、第2クラッチ機構CL2を係合する制御信号を出力せずに(ステップS7)、リターンする。このステップS7は、要は、第2クラッチ機構CL2を解放したまま、第1クラッチ機構CL1を解放すればよい。すなわち、各クラッチ機構CL1,CL2を解放したシングルモードに切り替える。ここでは、各クラッチ機構CL1,CL2がノーマルステイ型のクラッチ機構としているため、係合する制御信号や解放する制御信号をそれぞれ出力するか否かを示している。
一方、現在の制御モードがHV-LoモードでないことによりステップS5で否定的に判断された場合、すなわち同期制御に移行している場合には、第1モータ6の目標回転数を、第2クラッチ機構CL2の入力回転数と出力回転数との差が「0」になる回転数X1に定めるとともに、第1モータ6の出力トルクは、目標回転数と実際の回転数との偏差を用いてPID制御により定められるトルクに設定する(ステップS8)。すなわち、第1モータ6の回転数を目標回転数に追従させるように第1モータ6のトルクを制御する。
第1モータ6の目標回転数X1は、以下の式(1)や(2)から求めることができる。式(1)は、HV-Hiモードを設定した場合におけるエンジン回転数Neと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数Npと、第1モータ6の回転数Ngとの関係を示し、式(2)は、HV-Hiモードを設定した場合におけるエンジン回転数Neと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数Npと、第1モータ6の回転数Ngとの関係を示している。したがって、ステップS8では、式(1)におけるNeに「0」を代入し、Npに現在の車速に対応したリングギヤ18の回転数を代入することで、第1モータ6の目標回転数X1を求めることができる。
Ne=(1/(1+ρ1))Np+(ρ1/(1+ρ1))Ng…(1)
Ne=(1/(1-ρ1×ρ2))Np-((ρ1×ρ2)/(1-ρ1×ρ2))Ng…(2)
ついで、第1モータ6の回転数が、目標回転数X1の許容範囲になったか否かを判断する(ステップS9)。この許容範囲は、各クラッチ機構CL1,CL2を摩擦式のクラッチ機構とした場合には、スリップによる発熱量などに基づいて定めることができ、噛み合い式のクラッチ機構の場合には、噛み合い歯の形状などに基づいて定めることができる。すなわち、係合する側のクラッチ機構の入力回転数と出力回転数との差が許容値以下になったか否かをステップS9で判断している。したがって、第1モータ6の回転数に代えて、係合する側のクラッチ機構の入力回転数と出力回転数とをそれぞれ検出して、その回転数の差が許容値以下になったか否かを判断してもよい。なお、噛み合い式のクラッチ機構の場合には、噛み合い歯の形状に応じて一方向の相対回転のみを許容する場合があり、その場合には、ステップS9の許容範囲を一方向に定めてもよい。
第1モータ6の回転数が、目標回転数の許容範囲でないことによりステップS9で否定的に判断された場合は、ステップS8にリターンする。それとは反対に第1モータ6の回転数が、目標回転数の許容範囲であることによりステップS9で肯定的に判断された場合は、第1クラッチ機構CL1を解放する制御信号をオフのまま、第2クラッチ機構CL2を係合する制御信号をオンに切り替えて(ステップS10)、リターンする。すなわち、第1クラッチ機構CL1を解放させた状態を維持しつつ、第2クラッチ機構CL2を係合して、HV-Hiモードを設定する。
図18には、直結モードを介することなく、HV-LoモードからHV-Hiモードに切り替える場合の制御モードなどの変化の一例を示している。図18に示すt0時点では、HV-Loモードが設定されていることにより、エンジン5および第1モータ6が回転している。なお、図中における回転の向きは、エンジン5の回転方向を「正」として示している。また、エンジン5から要求される駆動トルクを出力し、第1モータ6が反力トルクを出力している。なお、図中におけるトルクの向きは、エンジン5の回転数が増大する方向へのトルクの向きを「正」として示し、第1モータ6については、エンジン5と同一方向に第1モータ6が回転した場合に、その回転数が増大する方向へのトルクの向き、およびエンジン5とは反対方向に第1モータ6が回転した場合に、その回転数が減少する方向へのトルクの向きを「正」として示している。
t1時点でHV-Loモードが制限されてHV-Hiモードへの切り替えが要求されている。その結果、HV-Loモードを制限するためのフラグがオンに切り替えられている。また、t1時点では、要求駆動力が第1駆動力a以上であり、かつ車速が第1車速α以上であることにより、フラグf_Fokおよびフラグf_Vokがともにオフになっている。そのため、フラグf_moveokがオフになっている。その結果、図13におけるステップS1で否定的に判断されることにより、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えが行われていない。
t2時点で要求駆動力が低下し始めることにより、エンジン5の出力トルクが低下し、それに伴って第1モータ6の反力トルクが低下する。その結果、駆動力が低下するため、車速が低下し始めている。そして、t3時点で、要求駆動力が第1駆動力a以下になることにより、フラグf_Fokがオンに切り替えられ、t4時点で、車速が第1車速α以下になることにより、フラグf_Vokがオンに切り替えられるとともに、フラグf_moveokがオンに切り替えられている。その結果、図13におけるステップS1で肯定的に判断される。また、ここに示す例では、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替え要求があるため、図13におけるステップS2も肯定的に判断される。
したがって、エンジン5の制御モードが停止処理に切り替えられ、かつ第2クラッチ機構CL2の入力回転数と出力回転数との差を低減させるように第1モータ6が制御される。すなわち、キャリヤ20の回転数が、車速に応じたリングギヤ18の回転数となるように第1モータ6の回転数が制御され、かつ第1モータ6の出力トルクが「0」に制御される。さらに、t5時点では、第1クラッチ機構CL1を解放するための制御信号がオンに切り替えられて、第1クラッチ機構CL1が解放し始める。
t6時点で、第1クラッチ機構CL1が解放されると、制御モードが同期制御(同期モード)に切り替えられる。その結果、第1モータ6の目標回転数を、第2クラッチ機構CL2の入力回転数と出力回転数との差が「0」になる回転数に定め、目標回転数X1と実際の回転数との偏差に基づいて第1モータ6の出力トルクが制御される。したがって、図に示す例では、第1モータ6の回転数が、負の方向に次第に増大するとともに、t6時点から一時的に第1モータ6の出力トルクが負方向に増大している。
そして、第1モータ6の回転数が、目標回転数X1の許容範囲内となることにより(t7時点)、図13におけるステップS9で肯定的に判断されるため、第2クラッチ機構CL2を係合するための制御信号がオンに切り替えられる。ついで、t8時点で第2クラッチ機構CL2が係合したことにより、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えの要求がなくなるため、図13におけるステップS2で否定的に判断される。その結果、HV-Hiモードで走行するようにエンジン5や第1モータ6が制御される。
図18に示す例では、HV-Hiモードが設定された後に、第2モータ7の駆動トルクを増大させることにより駆動力が増大し、それに伴って加速している。そして、t9時点で、要求駆動力が第2駆動力b以上になることにより、フラグf_Fokがオフに切り替えられるとともに、フラグf_moveokがオフに切り替えられている。また、t10時点で、車速が第3車速γ以上になることにより、フラグf_Vokがオフに切り替えられている。なお、HV-Hiモードが設定された後は、例えば、第1モータ6の回転数を正方向に増大させることによりエンジン5をモータリングすることができる。したがって、HV-Hiモードを設定した後は、必要に応じてエンジン5を始動させて走行してもよい。
図19には、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替え過渡期における動力分割機構8の各回転要素の回転数の変化を示している。図19(a)は、HV-Loモードを設定している状態であるため、図6に示す例と同様に、エンジン5および第1モータ6が制御されている。
その状態で、HV-LoモードからHV-Hiモードへの切り替えが開始されると、まず、エンジン5が停止され、かつ第1モータ6の出力トルクが「0」に制御される。したがって、図19(b)に示すようにエンジン5の回転数が「0」になり、それに伴って第1モータ6の回転数が正方向に増大する。
ついで、第1クラッチ機構CL1が解放されることにより、キャリヤ14とキャリヤ20とが相対回転することができるようになる。そのため、車速とは関係することなく、エンジン5や第1モータ6の回転数を変動させることができるようになる。その結果、図19(c)に示すように第1モータ6の回転数とエンジン5の回転数と分割部9におけるサンギヤ11およびリングギヤ12の歯数比とに応じて、リングギヤ12の回転数が変動する。上述したようにエンジン5は、停止されているため、第1モータ6の回転数を制御することにより、リングギヤ12の回転数をリングギヤ18の回転数に一致させることができる。言い換えると、第2クラッチ機構CL2の入力側回転部材であるキャリヤ20と出力側回転部材であるリングギヤ18とを同一の回転数で回転させることができる。そのため、図19(c)では、第1モータ6の回転方向を負方向としつつ、その回転数を目標回転数に向けて制御している。
そして、図19(d)に示すように変速部10における各回転要素の回転数が一致した時点で、第2クラッチ機構CL2を係合することによりHV-Hiモードが設定される。
上述したように低車速時に直結モードを介することなくHV-LoモードとHV-Hiモードとを切り替えることにより、エンジンストールに至ることを抑制できる。さらに、動力分割機構8などの固有振動数は、構造上、比較的低周波数となるため、エンジン5を停止することにより、エンジン回転数が動力分割機構8などの固有振動数と一致した状態が維持されることを抑制できる。その結果、動力分割機構8などの振動が増大することによる騒音の発生を抑制できる。また、高車速時には、直結モードを設定しないことにより、エンジン5が過回転することを抑制できる。その結果、エンジン5を構成する部材の耐久性が低下することを抑制できる。さらに、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替えを、要求駆動力が低いときに実行することにより、HV-LoモードとHV-Hiモードとの切り替え過渡期における駆動力の低下分を、第2モータ7から出力することができる。その結果、駆動力の低下を抑制でき、ショックが発生することや、運転者が違和感を抱くことを抑制できる。なお、第1モータ6により係合する側のクラッチ機構の入力回転数と出力回転数との差を低下させてから、クラッチ機構を係合するため、クラッチ機構を係合することに伴うショックを抑制できる。
なお、この発明は、HV-LoモードからHV-Hiモードに切り替える場合に限らず、HV-HiモードからHV-Loモードに切り替える場合にも同様に制御してもよい。
この発明は、上述した各実施例に限定されないのであって、この発明の目的を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。具体的には、少なくとも二つの係合機構を備え、一方の係合機構を係合することによりローモードを設定し、他方の係合機構を係合することによりハイモードを設定し、双方の係合機構を係合することにより直結モードを設定することができるように構成された車両を対象とすることができる。以下、図20ないし図25を参照して他の車両の構成およびHV-HiモードとHV-Loモードとを設定した場合における各回転要素の運転状態について説明する。なお、図1に示す例と同様の構成については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図20は、この発明の実施形態における車両の他の構成について説明するためのスケルトン図を示している。図20に示す車両は、エンジン5が直接連結された第1差動機構PL1と、第1モータ6が直接連結された第2差動機構PL2とを備えている。
第1差動機構PL1は、エンジン5の出力軸15(または入力軸16)に連結されたサンギヤS1と、サンギヤS1と同心円状に配置されたリングギヤR1と、サンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合うピニオンギヤP1と、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に保持するキャリヤC1とを備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。
第2差動機構PL2は、第1モータ6に連結されたサンギヤS2と、第1差動機構PL1におけるリングギヤR1に連結されたキャリヤC2と、出力ギヤ21に連結されたリングギヤR2とを備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。なお、出力ギヤ21には、図1に示す例と同様にドリブンギヤ23が連結され、前輪1R,1Lにトルクを伝達することができるように構成されている。
そして、上記第1差動機構PL1におけるサンギヤS1とキャリヤC1とを係合して、第1差動機構PL1を構成する各回転要素を一体に回転させる第4クラッチ機構CL4と、第1差動機構PL1におけるキャリヤC1と第2差動機構PL2におけるリングギヤR2とを係合する第5クラッチ機構CL5とを備えている。なお、エンジン5の出力軸15には、第1ブレーキ機構B1が設けられている。上記第4クラッチ機構CL4、第5クラッチ機構CL5は、第1クラッチ機構CL1や第2クラッチ機構CL2と同様に摩擦式のクラッチ機構であってもよく、噛み合い式のクラッチ機構であってもよい。
上述した車両は、第4クラッチ機構CL4を係合することにより、リングギヤR2に伝達されるトルクの割合が小さいHV-Hiモードを設定することができ、第5クラッチ機構CL5を係合することにより、リングギヤR2に伝達されるトルクの割合が大きいHV-Loモードを設定することができる。
図21には、図20における車両で設定できるHV-Hiモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図を示している。上述したようにHV-Hiモードは、第4クラッチ機構CL4を係合する。したがって、第1差動機構PL1を構成する各回転要素は一体に回転する。つまり、第2差動機構PL2におけるキャリヤC2がエンジン5と同一回転数となり、入力要素として機能する。そして、第2差動機構PL2におけるサンギヤS2に第1モータ6から反力トルクを伝達することにより、第2差動機構PL2におけるリングギヤR2からトルクが出力される。すなわち、サンギヤS2が反力要素として機能し、リングギヤR2が出力要素として機能する。なお、HV-Hiモードでは、エンジン5から出力されたトルクのうち第1モータ6側に伝達されるトルクを「1」とした場合に、リングギヤR2に伝達されるトルクの割合は、「1/ρ4」となる。ここでは、リングギヤR1の歯数とサンギヤS1の歯数との比率を「ρ3」とし、リングギヤR2の歯数とサンギヤS2の歯数との比率を「ρ4」としている。
図22には、図20における車両で設定できるHV-Loモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図を示している。図22に示すように、HV-Loモードは、第5クラッチ機構CL5を係合する。したがって、第1差動機構PL1におけるキャリヤC1と第2差動機構PL2におけるリングギヤR2とが一体に回転する。また、上述したように第1差動機構PL1におけるリングギヤR1と第2差動機構PL2におけるキャリヤC2とが連結されている。したがって、第1差動機構PL1におけるサンギヤS1が入力要素として機能し、第2差動機構PL2におけるサンギヤS2が反力要素として機能し、第2差動機構PL2におけるリングギヤR2が出力要素として機能する。その結果、第1差動機構PL1におけるサンギヤS1のトルクが、第2差動機構PL2におけるリングギヤR2に伝達される。なお、HV-Loモードでは、エンジン5から出力されたトルクのうち第1モータ6側に伝達されるトルクを「1」とした場合に、リングギヤR2に伝達されるトルクの割合は、「1+ρ3+(ρ3/ρ4)」となる。すなわち、HV-Hiモードと比較して、HV-Loモードでは、エンジン5からリングギヤR2に伝達されるトルクの割合が大きくなる。
上述したように図20に示す車両も、第4クラッチ機構CL4と第5クラッチ機構CL5との一方を係合することによりHV-Hiモードが設定され、他方を係合することによりHV-Loモードが設定される。さらに、第4クラッチ機構CL4と第5クラッチ機構CL5との双方を係合することにより直結モードが設定される。したがって、図1に示す車両と同様に、直結モードを介することなくHV-HiモードとHV-Loモードとの切り替えを行うことが好ましい場合がある。
図23は、この発明の実施形態における車両の更に他の構成について説明するためのスケルトン図を示している。図23に示す車両は、エンジン5が直接連結された第3差動機構PL3と、第1モータ6が直接連結された第4差動機構PL4とを備えている。
第3差動機構PL3は、エンジン5の出力軸15に連結されたキャリヤC3と、サンギヤS3と、出力ギヤ21に連結されたリングギヤR3とを備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。なお、出力ギヤ21には、図1に示す例と同様にドリブンギヤ23が連結され、前輪1R,1Lにトルクを伝達することができるように構成されている。
第4差動機構PL4は、第1モータ6に連結されたリングギヤR4と、第3差動機構PL3におけるサンギヤS3に連結されたキャリヤC4と、サンギヤS4とを備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。
そして、上記第4差動機構PL4におけるキャリヤC4とリングギヤR4とを係合して、第4差動機構PL4を構成する各回転要素を一体に回転させる第6クラッチ機構CL6と、第3差動機構PL3におけるキャリヤC3と第4差動機構PL4におけるサンギヤS4とを係合する第7クラッチ機構CL7とを備えている。なお、エンジン5の出力軸15には、ブレーキ機構B1が設けられている。上記第6クラッチ機構CL6、第7クラッチ機構CL7は、第1クラッチ機構CL1や第2クラッチ機構CL2と同様に摩擦式のクラッチ機構であってもよく、噛み合い式のクラッチ機構であってもよい。
上述した車両は、第7クラッチ機構CL7を係合することにより、リングギヤR3に伝達されるトルクの割合が大きいHV-Loモードを設定することができ、第6クラッチ機構CL6を係合することにより、リングギヤR3に伝達されるトルクの割合が小さいHV-Hiモードを設定することができる。
図24には、図23における車両で設定できるHV-Hiモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図を示している。図24に示すように、HV-Hiモードは、第6クラッチ機構CL6を係合する。したがって、第4差動機構PL4を構成する各回転要素は一体に回転する。つまり、第1モータ6のトルクが第4差動機構PL4におけるキャリヤC4にそのまま伝達される。そして、エンジン5から第3差動機構PL3におけるキャリヤC3にトルクを入力し、第1モータ6から第4差動機構PL4におけるキャリヤC4を介して第3差動機構PL3におけるサンギヤS3に反力トルクを伝達することにより、第3差動機構PL3におけるリングギヤR3からトルクが出力される。すなわち、第3差動機構PL3におけるキャリヤC3が入力要素として機能し、サンギヤS3が反力要素として機能し、リングギヤR3が出力要素として機能する。なお、HV-Hiモードでは、エンジン5から出力されたトルクのうち第1モータ6側に伝達されるトルクを「1」とした場合に、リングギヤR3に伝達されるトルクの割合は、「1/ρ5」となる。ここで、「ρ5」はリングギヤR3の歯数とサンギヤS3の歯数との比率である。
図25には、図23における車両で設定できるHV-Loモードでの各回転要素の運転状態を説明するための共線図を示している。図25に示すように、HV-Loモードは、第7クラッチ機構CL7を係合する。したがって、第3差動機構PL3におけるキャリヤC3と第4差動機構PL4におけるサンギヤS4とが一体に回転する。また、上述したように第3差動機構PL3におけるサンギヤS3と第4差動機構PL4におけるキャリヤC4とが連結されている。したがって、第3差動機構PL3におけるキャリヤC3が入力要素として機能し、第4差動機構PL4におけるリングギヤR4が反力要素として機能し、第3差動機構PL3におけるリングギヤR3が出力要素として機能する。その結果、第3差動機構PL3におけるキャリヤC3のトルクが、第3差動機構PL3におけるリングギヤR3に伝達される。なお、HV-Loモードでは、エンジン5から出力されたトルクのうち第1モータ6側に伝達されるトルクを「1」とした場合に、リングギヤR3に伝達されるトルクの割合は、「(1+ρ6)/ρ5」となる。ここで、「ρ6」はリングギヤR4の歯数とサンギヤS4の歯数との比率である。したがって、HV-Hiモードと比較して、HV-Loモードでは、エンジン5からリングギヤR3に伝達されるトルクの割合が大きくなる。なおまた、第1モータ5の回転数を「0」にした場合におけるエンジン回転数とリングギヤR3の回転数との比である減速比は、HV-Loモードの方がHV-Hiモードよりも大きい。
上述したように図23に示す車両も、第6クラッチ機構CL6と第7クラッチ機構CL7との一方を係合することによりHV-Hiモードが設定され、他方を係合することによりHV-Loモードが設定される。さらに、第6クラッチ機構CL6と第7クラッチ機構CL7との双方を係合することにより直結モードが設定される。したがって、図1に示す車両と同様に、直結モードを介することなくHV-HiモードとHV-Loモードとの切り替えを行うことが好ましい場合がある。
上述した図1、図20、図23に示す車両の構成を包括的に示すとすれば、以下のような構成となる。すなわち、『エンジンが連結された第1回転部材と、回転機が連結された第2回転部材と、駆動輪が連結された第3回転部材との少なくとも三つの回転部材を有し、前記三つの回転部材のうちのいずれか一つの第1回転要素と、前記三つの回転要素のうちの他のいずれか一つの第2回転要素と、第3回転要素とによって差動作用を行う第1差動機構と、前記三つの回転要素のうちの更に他の一つの第4回転要素と、前記第3回転要素に連結されている第5回転要素と第6回転要素とによって差動作用を行う第2差動機構とにより構成された差動機構と、前記第6回転要素と前記第1回転要素または前記第2回転要素とを連結し、またその連結を解く第1係合機構と、前記第1回転要素と前記第2回転要素と前記第3回転要素とのうちの少なくともいずれか二つの回転要素、または前記第4回転要素と前記第5回転要素と前記第6回転要素とのうちの少なくともいずれか二つの回転要素を連結し、またその連結を解く第2係合機構とを備えた車両』である。そして、第1係合機構と第2係合機構とのいずれか一方を係合することによりエンジンから駆動輪に伝達されるトルクの割合が比較的大きい第1モード(HV-Loモード)を設定し、第1係合機構と第2係合機構との他方を係合することでエンジンから駆動輪に伝達されるトルクの割合が比較的小さい第2モータ(HV-Hiモード)を設定し、第1係合機構と第2係合機構とのそれぞれを係合することにより直結モードを設定することができる車両が、この発明における車両に含まれる。
1R,1L…前輪、 2,4…駆動装置、 5…エンジン、 6,7,30…モータ、 6a,15…出力軸、 8…動力分割機構、 9…分割部、 10…変速部、 11,17,32,S1,S2,S3,S4…サンギヤ、 12,18,26,33,42,R1,R2,R3,R4…リングギヤ、 14,20,35,C1,C2,C3,C4…キャリヤ、 16…入力軸、 21,36…出力ギヤ、 23,39…ドリブンギヤ、 48…電子制御装置(ECU)、 B1,B2…ブレーキ機構、 CL,CL1,CL2,CL3,CL4,CL5,CL6,CL7…クラッチ機構、 PL1,PL2,PL3,PL4…差動機構、 C…固定部。

Claims (1)

  1. エンジンと、
    回転機と、
    前記エンジンが連結された第1回転要素と、前記回転機が連結された第2回転要素と、駆動輪にトルク伝達可能に連結された第3回転要素とを含む複数の回転要素を有する伝動機構と
    を備え、
    前記伝動機構は、前記複数の回転要素のうちのいずれか二つの回転要素を選択的に連結する第1係合機構と、前記複数の回転要素のうちのいずれか二つの回転要素を選択的に連結する第2係合機構とを有し、前記第1係合機構を係合状態にしかつ前記第2係合機構を解放状態にすることにより前記エンジンから出力されたトルクのうち前記第3回転要素側に伝達されるトルクの割合が第1所定値となるローモードを設定し、前記第2係合機構を係合状態にしかつ前記第1係合機構を解放状態にすることにより前記割合が前記第1所定値よりも小さい第2所定値となるハイモードを設定し、前記第1係合機構と前記第2係合機構とのそれぞれを係合状態にすることにより前記複数の回転要素が差動することを制限する直結モードを設定するように構成された車両の駆動力制御装置において、
    前記エンジン、前記回転機、前記第1係合機構、前記第2係合機構を制御するコントローラを備え、
    前記コントローラは、
    前記ローモードから前記ハイモードへの切り替え、または前記ハイモードから前記ローモードへの切り替えの要求がある場合に、前記第1係合機構と前記第2係合機構とのうちの現在係合している一方の係合機構を解放するとともに、前記エンジンを停止させ、
    前記第1係合機構と前記第2係合機構とのうちの他方の係合機構の入力回転数と出力回転数との差が許容値以下となるように前記回転機の回転数を制御し、
    前記他方の係合機構における前記入力回転数と前記出力回転数との差が許容値以下となったことを条件に、前記他方の係合機構を係合状態に切り替えるように構成されている
    ことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
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