以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのインクジェットプリンタについて説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの斜視図である。
図において、10はインクジェットプリンタ、Frはフレームであり、該フレームFrは、インクジェットプリンタ10を前側(図において手前側)から見たときの左端から右端にかけて延在させて配設された受け板PBを備え、該受け板PBに沿って、レール15がインクジェットプリンタ10の走査方向に延在させて配設され、レール15に沿ってキャリッジ17が左右方向、すなわち、主走査方向に移動自在に配設される。
該キャリッジ17には、後述される複数の記録ヘッドHdi(i=1、2、…、)(図1)が、図示されない複数のノズルを備えたノズル面を下方に向けて搭載される。前記記録ヘッドHdiは、図示されない記録媒体にインクを吐出し、文字、イメージ等の画像を形成する。
前記フレームFrの左端側に駆動側のプーリ18が、前記フレームFrの右端側に従動側のプーリ19が回転自在に配設され、駆動側のプーリ18と従動側のプーリ19との間に無端ベルト21が走行自在に張設され、該無端ベルト21の所定の箇所に前記キャリッジ17が取り付けられる。そして、前記駆動側のプーリ18にキャリッジ移動用の駆動部としてのキャリッジモータ22が連結される。
したがって、該キャリッジモータ22を駆動し、無端ベルト21を走行させることによって、キャリッジ17を主走査方向に移動させ、各記録ヘッドHdiを主走査方向に移動させることができる。このとき、記録ヘッドHdiから各色のインクが吐出され、キャリッジ17の移動方向に対して直交する方向、すなわち、副走査方向に搬送される前記記録媒体にインクが付着させられ、これにより、記録媒体に前記画像が形成され、印刷が行われる。
前記記録媒体としては、用紙のほかに、塩化ビニル、PET等の樹脂製のフィルム等を使用することができる。
また、20は、後述される第1のインク収容部としての複数のインクタンクIti(i=1、2、…)から各記録ヘッドHdiに各色のインクIni(i=1、2、…)を供給するためのインク供給系である。
前記レール15に沿ってリニアスケール23が配設され、該リニアスケール23の目盛りがキャリッジ17に配設された後述されるエンコーダ35(図6)によって読み取られ、該エンコーダ35のセンサ出力に基づいてキャリッジ17の位置が検出される。また、キャリッジ17の位置の変化及び時間に基づいてキャリッジ17の速度が算出される。
そして、前記受け板PB上における所定の領域に、プレート状の形状を有し、記録媒体を支持するプラテン25が配設され、該プラテン25の下方に、プラテン25上を搬送される記録媒体を負圧によってプラテン25に引き寄せるための図示されない空気吸引機構が配設される。
前記プラテン25の後側(記録媒体の搬送方向におけるプラテン25より上流側)に、媒体後方案内部としての図示されないプリガイドが配設される。該プリガイドは、図示されない繰出しロールから繰り出され、搬送される記録媒体を前記プラテン25に案内する。そのために、記録媒体の搬送方向における前記プリガイドとプラテン25との間に、搬送部材としての搬送ローラ対30が回転自在に配設される。
該搬送ローラ対30は、プラテン25に沿って延在させて回転自在に配設された第1のローラとしての搬送ローラ31、及び該搬送ローラ31より上方において回転自在に配設され、記録媒体を搬送ローラ31に押し付ける第2のローラとしての複数のピンチローラ32から成る。後述される搬送用の駆動部としての搬送モータ34(図6)を駆動し、搬送ローラ31を回転させると、ピンチローラ32が連れ回りで回転させられ、これにより、記録媒体は、搬送ローラ31とピンチローラ32とによって挟まれた状態で繰出しロールから繰り出され、前記プリガイドに沿って搬送され、プラテン25上に送られる。そして、プラテン25によって平坦に支持された記録媒体と記録ヘッドHdiのノズル面とが対向させられ、記録ヘッドHdiからインクIniが吐出され、記録媒体にインクが付着させられる。
なお、シングルパス方式によって印刷が行われる場合は、前記搬送モータ34を駆動して記録媒体を所定の距離搬送した後、搬送モータ34を停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインクIniを吐出することによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。1走査が終了すると、前記搬送モータ34を再び駆動して記録媒体を所定の距離搬送した後、搬送モータ34を停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインクIniを吐出することによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。この動作を繰り返すことによって、記録媒体に画像が形成される。
また、マルチパス方式によって印刷が行われる場合は、前記記録媒体を搬送する距離が記録ヘッドHdiのノズル列より短くされ、複数の走査を行うことによって1ライン分の画像が形成される。
前記フレームFrの前側には、印刷が行われた後の記録媒体を案内するための媒体前方案内部としてのアフターガイド33が配設される。該アフターガイド33は、前記プラテン25から水平方向に排出された記録媒体を下方に向けて案内するために、湾曲した形状を有する。
本実施の形態においては、前記プリガイド、プラテン25及びアフターガイド33のそれぞれに、加熱体としての図示されないヒータが配設され、該各ヒータを通電することによって、プリガイド、プラテン25及びアフターガイド33の順に搬送される記録媒体を適切な温度に加熱し、付着させられたインクIniの乾燥が促進させられる。
ところで、本実施の形態においては、前記キャリッジ17が、レール15に沿ってプラテン25上を移動させられている間は各記録ヘッドHdiによるインクの吐出、すなわち、記録が行われ、キャリッジ17がプラテン25が配設されていない受け板PB上の右端又は左端に置かれているときは、各記録ヘッドHdiによる記録が行われない。
そこで、本実施の形態においては、受け板PB上の右端が、キャリッジ17の位置の原点合わせを行うためのホームポジションにされ、受け板PB上の左端が、キャリッジ17をプラテン25上から退避させるとともに、折り返すための退避ポジションにされる。
そして、ホームポジションには、各記録ヘッドHdiと対向させてキャップユニット43が配設される。該キャップユニット43は、インクジェットプリンタ10が長時間使用されない場合に、記録ヘッドHdiのノズル面をキャップで覆い、定期的に記録ヘッドHdiからインクを吸引することによって、ノズル内のインクIniの粘度が高くなってノズルが詰まったり、ノズルにごみ等が付着したりするのを防止する。
また、前記退避ポジションには、各記録ヘッドHdiと対向させて、ノズルを良好な状態に保持するための、ノズル面を払拭するワイプユニット44が配設される。
次に、インクタンクItiから各記録ヘッドHdiに各色のインクIniを供給するインク供給系20について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるインク供給系の概略図、図3は本発明の第1の実施の形態における分岐部を示す図、図4は本発明の第1の実施の形態における合流部を示す図である。
図において、20はインク供給系、ItiはインクIniを収容するインクタンク、Hti(i=1、2、…)は、該インクタンクIti内に配設され、インクタンクItiに収容されたインクIniを所定の第1の設定温度としての収容インク設定温度、本実施の形態においては、30〔℃〕に加熱するための加熱体としてのインクヒータ、Rmi(i=1、2、…)は、インクタンクItiと記録ヘッドHdiとの間に配設され、インクタンクIti内のインクIniを記録ヘッドHdiに供給するためのインク流路、Rsi(i=1、2、…)は、インク流路Rmiを分岐させることによってインク流路Rmiと並列に形成された環流路である。前記インクタンクIti内には、後述される第1の温度検出部としての、かつ、収容部温度検出部としての温度センサ41(図6)が配設され、該温度センサ41は、インクタンクItiのインクIniの温度、すなわち、収容部温度としてのタンク内インク温度τ1を検出する。
なお、本実施の形態において、インクタンクItiは、インクカートリッジから成り、インクジェットプリンタ10の所定の箇所に形成された図示されない取付部に対して着脱自在に配設される。
また、インクIniとして各種の種類のインクを使用することができ、本実施の形態においては、水、水溶性有機溶剤、顔料等を含有する水系インクが使用される。ところで、水系インクは気泡が発生しやすいので、記録ヘッドHdiのノズルからインク滴を吐出したときに、吐出不良が発生し、画像にドット抜けが発生しやすい。したがって、水系インクを使用する場合には、インクIniの脱気を確実に行う必要がある。
そこで、本実施の形態においては、前記インク流路Rmiに、上流側から下流側にかけて、インクタンクItiのインクIniを吸引して記録ヘッドHdiに向けて供給する送液ポンプ45、第2の温度検出部としての、かつ、流入温度検出部としての温度センサ46、及び送液ポンプ45によって送られたインクIniの脱気、すなわち、インクIni内に存在している溶存気体としての溶存酸素を除去する脱気装置としての脱気モジュール47が配設され、該脱気モジュール47に、脱気モジュール47に配設された後述される中空糸54(図5)内を減圧するか又は真空にする吸引ポンプとしての真空ポンプ48が接続される。なお、前記脱気モジュール47において、インクIniは、インク流入口h1から脱気モジュール47内に流入し、インク流出口h2から脱気モジュール47外に流出する。また、脱気によってインクIniから除去された溶存酸素は、空気流出口h3から脱気モジュール47外に流出し、空気流路Rai(i=1、2、…)を流れ、真空ポンプ48に送られる。
前記脱気モジュール47を、インクタンクItiと記録ヘッドHdiとの間の任意の箇所に配設することができるが、インク流路Rmiに存在する樹脂配管部、ジョイント部等から空気がインク流路Rmi内に進入することがあるので、脱気モジュール47は、可能な限り記録ヘッドHdiの近傍に配設されるのが好ましい。
送液ポンプ45によって供給され、脱気モジュール47に流入するインクIniの温度、すなわち、流入インク温度τ2を検出するために、前記温度センサ46は、可能な限り脱気モジュール47のインク流入口h1の近傍、好ましくはインク流入口h1に配設される。
前記環流路Rsiは、脱気モジュール47のインク流出口h2側とインク流入口h1側とを結んで形成され、インク流出口h2から脱気モジュール47外に流出したインクIniは、環流路Rsiを流れた後、インク流入口h1から脱気モジュール47内に流入する。
そのために、前記インク流路Rmiにおける脱気モジュール47より下流側、本実施の形態においては、脱気モジュール47と記録ヘッドHdiとの間に分岐部q1が配設され、該分岐部q1において前記環流路Rsiがインク流路Rmiから分岐させられる。また、前記インク流路Rmiにおける脱気モジュール47より上流側、本実施の形態においては、送液ポンプ45と温度センサ46との間に合流部q2が配設され、該合流部q2において前記環流路Rsiがインク流路Rmiに合流させられる。
そして、前記環流路Rsiに循環ポンプ49が配設され、該循環ポンプ49は、環流路Rsiにおいて、脱気モジュール47から流出したインクIniを循環させ、脱気モジュール47に流入させる。
前記分岐部q1は、可能な限り脱気モジュール47のインク流出口h2の近傍に配設されるのが好ましい。また、前記合流部q2は、可能な限り脱気モジュール47のインク流入口h1の近傍に配設されるのが好ましいが、環流路Rsiを流れた後の流入インク温度τ2を温度センサ46によって検出することができるように、本実施の形態においては、送液ポンプ45と温度センサ46との間に配設される。
前記分岐部q1として、「T」字状の形状を有する管継手、すなわち、T管が使用され、分岐部q1は、入口h11を脱気モジュール47に向けて、第1の出口h12を記録ヘッドHdiに向けて、第2の出口h13を循環ポンプ49に向けて配設され、第1、第2の出口h12、h13に第1、第2の弁としての開閉弁v11、v12が配設される。
また、前記合流部q2として、分岐部q1と同様に、T管が使用され、合流部q2は、第1の入口h21を送液ポンプ45に向けて、第2の入口h22を循環ポンプ49に向けて、出口h23を脱気モジュール47に向けて配設され、第1、第2の入口h21、h22に第3、第4の弁としての開閉弁v21、v22が配設される。
インクIniは、開閉弁v11、v21が開かれ、開閉弁v12、v22が閉じられるとインク流路Rmiを流れ、開閉弁v12、v22が開かれ、開閉弁v11、v21が閉じられると環流路Rsiを流れる。なお、インクIniがインク流路Rmiを流れる際は開閉弁v12、v22が閉じられているので、インクIniが環流路Rsiに逆流することがない。また、インクIniは、環流路Rsiを流れているときにインク流路Rmiを流れない。
本実施の形態においては、開閉弁v11、v21として常開型の電磁弁が、開閉弁v12、v22として常閉型の電磁弁が使用される。
次に、前記脱気モジュール47について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における脱気モジュールの概念図である。
図において、47は外部還流方式の脱気モジュール、Hsは該脱気モジュール47のハウジングであり、該ハウジングHsに、前記インク流入口h1、インク流出口h2及び空気流出口h3が形成される。
また、Iniは各色のインク、50は、ハウジングHs内に形成され、インク流入口h1から流入したインクIniをインク流出口h2に送るインク通路、51、52は該インク通路50内でインクIni内の溶存酸素を脱気するのに伴って発生した気体、本実施の形態においては、脱気酸素を収集するヘッダ、54は前記インク通路50内においてヘッダ51、52間に配設された複数の中空糸である。前記ヘッダ51、52のうちの一方、本実施の形態においては、ヘッダ51は、空気流出口h3を介して空気流路Raiに接続される。
前記中空糸54は、気体を透過させ、液体を透過させない樹脂材料から成る中空状(ストロー状)の糸によって形成される。前記樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリー4−メチルペンテン1等のポリオレフィン系樹脂、又はポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂を使用することができる。
インク流路Rmiを流れるインクIniは、インク流入口h1から脱気モジュール47内に流入し、インク通路50を流れ、その間に、真空ポンプ48が作動させられるのに伴って、脱気が行われる。
すなわち、真空ポンプ48の作動に伴って、中空糸54内の空間Spが減圧されるか又は真空にされ、インク通路50を流れるインクIni内の溶存酸素が、中空糸54の側壁膜56を透過して空間Sp内に吸引され、ヘッダ51に集められた後、空気流出口h3から排出され、空気流路Raiを介して真空ポンプ48に送られる。
そして、脱気が行われたインクIniは、インク流出口h2から流出し、インク流路Rmiを流れる。
前記脱気モジュール47においては、中空糸54外に形成された断面積の大きいインク通路50をインクIniが流れ、中空糸54内に形成された断面積の小さい空間Spが減圧されるか又は真空にされて、インクIni内の溶存酸素の脱気が行われるので、脱気時における圧力損失を小さくしたまま、インクIni内の溶存酸素を十分に脱気することができる。
なお、脱気モジュール47として、DIC社製の「SEPAREL EF−G5」、「SEPAREL EF−002A」等を使用することができる。
次に、インクジェットプリンタ10の制御装置について説明する。
図6は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの制御ブロック図である。
図において、10はインクジェットプリンタ、41、46は温度センサ、55は操作パネル、57はセンサ群、80は、前記インクジェットプリンタ10の全体のシーケンスを制御し、印刷制御を行う制御部、81は不揮発性メモリから成る第1の記憶装置としてのROM、82は揮発性メモリから成る第2の記憶装置としてのRAM、83は上位装置としての図示されないホストコンピュータから印刷データ及び制御コマンドを受けるインタフェース制御部である。
前記エンコーダ35はキャリッジ17の位置を検出するためにリニアスケール23の目盛りを読み込む。
また、前記温度センサ41はタンク内インク温度τ1を検出し、温度センサ46は流入インク温度τ2を検出する。
前記操作パネル55は、インクジェットプリンタ10の状態を表示するためのLED画面等から成る図示されない表示部、及びインクジェットプリンタ10に操作者が指示を入力するためのスイッチ、キー等から成る図示されない操作部を備える。なお、操作パネル55がタッチパネルによって形成されている場合、操作パネル55は表示部として機能するとともに、操作部としても機能する。
また、前記センサ群57は、インクジェットプリンタ10の動作状態を監視するための各種のセンサ、例えば、記録媒体の位置を検出する媒体位置検出センサ、インクジェットプリンタ10の置かれた印刷環境を検出する温度センサ、湿度センサ等から成る。
前記制御部80は、図示されない演算装置としてのCPU、入出力ポート、タイマ等を備え、ROM81に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。ROM81には、前記プログラムのほかに、各種の設定値、本実施の形態においては、前記収容インク設定温度である30〔℃〕、及び脱気モジュール47内に流入するインクIniの第2の設定温度としての流入インク設定温度、本実施の形態においては、25〔℃〕が記録される。また、RAM82には、前記印刷データに基づいて生成され、通常の印刷を行うための画像データのほかに、各種の制御用のデータが一時的に記録される。なお、前記RAM82は、前記CPUが演算を行う際にワークエリアとして機能する。
そして、前記制御部80は、記録処理部Pr1、搬送処理部Pr2、キャリッジ駆動処理部Pr3、インク加熱処理部Pr4、インク供給処理部Pr5等を備える。
前記記録処理部Pr1は、前記ホストコンピュータから送られた印刷データ及び制御コマンドに基づいて画像データを生成し、ヘッド駆動部Dr1を介して記録ヘッドHdiを駆動して記録媒体に画像を形成する。
なお、前記記録ヘッドHdiには、ノズルごとに駆動素子としての図示されないピエゾ素子が配設される。該ピエゾ素子の両端に配設された電極間に所定の電圧が印加されると、電圧に応じてピエゾ素子が駆動され、伸縮させられ、これにより、ノズルにインクIniを送る流路の側壁が変形させられる。そして、インクの流路の断面積がピエゾ素子の伸縮に応じて変化することによって、インクの流路の断面積の変化分の量のインクIniがインク滴となってノズルから吐出される。
前記搬送処理部Pr2は、モータ駆動部Dr2を介して搬送モータ34を駆動し、前記搬送ローラ対30(図2)を回転させ、記録媒体を副走査方向に搬送する。
また、前記キャリッジ駆動処理部Pr3は、モータ駆動部Dr3を介して、PWM制御によってキャリッジモータ22を駆動し、無端ベルト21を走行させ、キャリッジ17を主走査方向に往復移動させる。そのために、キャリッジ駆動処理部Pr3は、ROM81からキャリッジ17の目標位置及び目標速度を読み出し、前記エンコーダ35のセンサ出力を受け、該センサ出力をA/D変換してキャリッジ17の位置を検出し、制御値としてのPWM制御信号を発生させてキャリッジモータ22に送る。該キャリッジモータ22は、PWM制御信号を受けて、PWM制御信号のデューティに比例させて回転速度を変化させ、キャリッジ17を加速したり減速したりして目標速度で目標位置に移動させる。そして、キャリッジ駆動処理部Pr3は、キャリッジ17の位置を記録処理部Pr1に送り、該記録処理部Pr1は、キャリッジ17の位置に合わせて、記録ヘッドHdiのノズルから画像データに基づいて算出されたタイミングでインクIniを吐出させる。
前記インク加熱処理部Pr4は、温度センサ41によって検出されたタンク内インク温度τ1に基づいて、ヒータ駆動部Dr4を介してインクヒータHtiをオン・オフさせ、インクタンクIti内のインクIniの温度を30〔℃〕にする。
本実施の形態においては、インクタンクIti内のインクIniの温度が30〔℃〕にされると、インク流路Rmiを流れ、脱気モジュール47内に流入するまでにインクIniの温度が低くなったとしても、脱気モジュール47内に流入するときのインクIniの温度、すなわち、脱気モジュール47内のインクIniの温度を25〔℃〕以上に維持することができる。したがって、本実施の形態においては、脱気モジュール47内に流入するときのインクIniの温度が25〔℃〕以上になるようにインクヒータHtiによってインクタンクIti内のインクIniが加熱され、温度が30〔℃〕にされる。
前記インク供給処理部Pr5は、流入インク温度τ2に基づいて、弁制御部Dr5を介して開閉弁v11を開閉し、弁制御部Dr6を介して開閉弁v12を開閉し、弁制御部Dr7を介して開閉弁v21を開閉し、弁制御部Dr8を介して開閉弁v22を開閉し、ポンプ駆動部Dr9を介して送液ポンプ45を作動し又は停止させ、ポンプ駆動部Dr10を介して真空ポンプ48を作動し又は停止させ、ポンプ駆動部Dr11を介して循環ポンプ49を作動し又は停止させる。
ところで、記録ヘッドHdiに供給されるインクIniの粘度はインクIniの温度によって変動するので、インクIniの温度が低く、インクIniの粘度が記録ヘッドHdiにおけるインクIniの吐出性能に対応していないと、記録ヘッドHdiから記録媒体にインクIniを適正に吐出させることができず、画像品位が低下してしまう。
そこで、インクIniの温度を高くするために、インクタンクItiに前記インクヒータHtiが配設され、インクヒータHtiによってインクタンクIti内のインクIniが加熱されるが、記録ヘッドHdiに供給されるインクIniの温度が十分に高くなっていないと、インクIniの粘度を記録ヘッドHdiにおけるインクIniの吐出性能に対応させることができない。
また、インクIni内に溶存酸素が存在していると、溶存酸素による気泡が原因で記録ヘッドHdiにおいてインクIniの吐出不良が発生し、画像にドット抜けが発生してしまう。
そこで、溶存酸素を除去するために、インク流路Rmiに前記脱気モジュール47が配設されるが、インク流路Rmiを流れるインクIniの温度が十分に高くなっていないと、インクIni内の溶存酸素を十分に脱気することができない。
図7はインクの温度と飽和溶存酸素量との関係を示す図である。図において、横軸にインクIniの温度τ〔℃〕を、縦軸に飽和溶存酸素量Q〔mg/L〕を採ってある。
液体、例えば、インクIniにおける飽和溶存酸素量Qは気圧、インクIniの温度τ等によって決まり、気圧を一定の値にすると、図に示されるように、インクIniの温度τが高いほど、飽和溶存酸素量Qは少なくなり、インクIniの温度τが低いほど、飽和溶存酸素量Qは多くなる。
したがって、インクIniを温度τが低い状態で長期間放置すると、溶存酸素は飽和しにくくなり、脱気モジュール47によってインクIniの脱気を行っても、溶存酸素の量が少なくならない。その結果、記録ヘッドHdiにおいてインクIniの吐出不良が発生し、画像にドット抜けが発生してしまう。
そこで、本実施の形態においては、インク経路Rmiを流れるインクIniを環流路Rsiに送って循環させることによって、前記タンク内インク温度τ1及び流入インク温度τ2を管理するようにしている。
図8は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
まず、操作者が操作パネル55の操作部を操作してインクジェットプリンタ10の運転を開始すると、前記インク加熱処理部Pr4は、インク加熱処理を行い、温度センサ41によって検出されたタンク内インク温度τ1に基づいて、ヒータ駆動部Dr4を介してインクヒータHtiをオン・オフし、タンク内インク温度τ1を30〔℃〕に維持する。
そして、前記インク供給処理部Pr5は、並列処理によってインク供給処理を行い、温度センサ46によって検出された流入インク温度τ2に基づいて、弁制御部Dr5〜Dr8を介して開閉弁v11、v12、v21、v22を開閉し、ポンプ駆動部Dr9〜Dr11を介して送液ポンプ45、真空ポンプ48及び循環ポンプ49の作動を制御し、流入インク温度τ2を25〔℃〕以上に維持してインクIniの脱気を行い、インクIniを記録ヘッドHdiに供給する。
続いて、制御部80は印刷を行う。そのために、前記搬送処理部Pr2は、モータ駆動部Dr2を介して搬送モータ34を駆動し、搬送ローラ対30を回転させ、記録媒体を副走査方向に搬送し、キャリッジ駆動処理部Pr3は、モータ駆動部Dr3を介してキャリッジモータ22を駆動し、無端ベルト21を走行させ、キャリッジ17を主走査方向に移動させ、ヘッド駆動処理部Pr1は、ヘッド駆動部Dr1を介して記録ヘッドHdiを駆動し、インクIniを記録媒体に吐出させる。
印刷が終了すると、制御部80は印刷が終了した旨の通知、すなわち、印刷終了通知をインク加熱処理部Pr4に送る。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 操作者が操作部を操作してインクジェットプリンタ10の運転を開始する。
ステップS2 インク加熱処理部Pr4はインク加熱処理を行い、処理を終了する。
ステップS3 インク供給処理部Pr5はインク供給処理を行う。
ステップS4 制御部80は印刷を行い、処理を終了する。
次に、インク加熱処理のサブルーチンについて説明する。
図9は本発明の第1の実施の形態におけるインク加熱処理のサブルーチンを示す図である。
インク加熱処理部Pr4は、ヒータ駆動部Dr4を介してインクタンクIti内のインクヒータHtiをオンにしてインクIniを加熱し、制御部80に配設されたタイマによって計時を行い、あらかじめ設定されたサンプリング時間Tmが経過するのを待機する。サンプリング時間Tmが経過すると、インク加熱処理部Pr4は、温度センサ41によってタンク内インク温度τ1を検出し、タンク内インク温度τ1が30〔℃〕より低いかどうかを判断する。
なお、前記サンプリング時間Tmは、タンク内インク温度τ1が30〔℃〕になるように制御を行うに当たり、タンク内インク温度τ1に不感帯を形成し、インクヒータHtiのオン・オフにヒステリシスを形成するために設定され、これにより、短時間にインクヒータHtiのオン・オフが繰り返されるのが防止される。
タンク内インク温度τ1が30〔℃〕以上になった場合、前記インク加熱処理部Pr4は、ヒータ駆動部Dr4を介してインクタンクIti内のインクヒータHtiをオフにし、前記タイマによって計時を行い、サンプリング時間Tmが経過するのを待機する。サンプリング時間Tmが経過すると、インク加熱処理部Pr4は、温度センサ41によってタンク内インク温度τ1を検出し、タンク内インク温度τ1が30〔℃〕より低いかどうかを判断する。
そして、タンク内インク温度τ1が30〔℃〕より低い場合、インク加熱処理部Pr4は、制御部80から印刷終了通知が送られたかどうかを判断し、印刷終了通知が送られなかった場合、インク加熱処理を継続し、印刷終了通知が送られた場合、インク加熱処理を終了する。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS2−1 インク加熱処理部Pr4はインクヒータHtiをオンにする。
ステップS2−2 インク加熱処理部Pr4はサンプリング時間Tmが経過するのを待機する。サンプリング時間Tmが経過した場合はステップS2−3に進む。
ステップS2−3 インク加熱処理部Pr4はタンク内インク温度τ1を検出する。
ステップS2−4 インク加熱処理部Pr4はタンク内インク温度τ1が30〔℃〕より低いかどうかを判断する。タンク内インク温度τ1が30〔℃〕より低い場合はステップS2−2に戻り、タンク内インク温度τ1が30〔℃〕以上である場合はステップS2−5に進む。
ステップS2−5 インク加熱処理部Pr4はインクヒータHtiをオフにする。
ステップS2−6 インク加熱処理部Pr4はサンプリング時間Tmが経過するのを待機する。サンプリング時間Tmが経過した場合はステップS2−7に進む。
ステップS2−7 インク加熱処理部Pr4はタンク内インク温度τ1を検出する。
ステップS2−8 インク加熱処理部Pr4はタンク内インク温度τ1が30〔℃〕より低いかどうかを判断する。タンク内インク温度τ1が30〔℃〕より低い場合はステップS2−9に進み、タンク内インク温度τ1が30〔℃〕以上である場合はステップS2−6に戻る。
ステップS2−9 インク加熱処理部Pr4は印刷終了通知が送られたかどうかを判断する。印刷終了通知が送られた場合はリターンし、印刷終了通知が送られなかった場合はステップS2−1に戻る。
次に、インク供給処理のサブルーチンについて説明する。
図10は本発明の第1の実施の形態におけるインク供給処理のサブルーチンを示す図である。
インク供給系20の初期状態において、開閉弁v11、v21は開かれ、開閉弁v12、v22は閉じられている。
インク供給処理部Pr5は、ポンプ駆動部Dr9を介して送液ポンプ45を作動させるとともに、ポンプ駆動部Dr10を介して真空ポンプ48を作動させる。これにより、インクタンクIti内のインクIniは、インク流路Rmiに沿って脱気モジュール47に向けて流れる。
続いて、インク供給処理部Pr5は、前記タイマによって計時を行い、サンプリング時間Tmが経過するのを待機し、サンプリング時間Tmが経過すると、温度センサ46によって流入インク温度τ2を検出し、該流入インク温度τ2が25〔℃〕より低いかどうかを判断する。
そして、前記インク供給処理部Pr5は、流入インク温度τ2が25〔℃〕になった場合、インク流路Rmiを流れるインクIniを記録ヘッドHdiに送り、流入インク温度τ2が25〔℃〕より低い場合、ポンプ駆動部Dr9を介して送液ポンプ45を停止させるとともに、ポンプ駆動部Dr11を介して循環ポンプ49を作動させる。このとき、インク供給処理部Pr5は、弁制御部Dr5、Dr7を介して開閉弁v11、v21を閉じ、弁制御部Dr6、Dr8を介して開閉弁v12、v22を開き、環流路RsiにおいてインクIniを循環させる。
なお、前記サンプリング時間Tmは、流入インク温度τ2が25〔℃〕になるように制御を行うに当たり、流入インク温度τ2に不感帯を形成し、循環ポンプ49の作動及び停止にヒステリシスを形成するために設定され、これにより、短時間に循環ポンプ49の作動及び停止が繰り返されるのが防止される。
このとき、脱気モジュール47内において、真空ポンプ48の作動に伴って、中空糸54内の空間Spが減圧されるか又は真空にされ、インク通路50を流れるインクIni内の溶存酸素は、中空糸54の側壁膜56を透過して空間Sp内に吸引され、空気流出口h3から排出され、真空ポンプ48に送られる。
一方、脱気が行われたインクIniは、インク流出口h2から流出し、インク流路Rmiを流れる。
続いて、インク供給処理部Pr5は、前記タイマによって計時を行い、あらかじめ設定された設定時間Tcが経過するのを待機し、設定時間Tcが経過すると、温度センサ46によって流入インク温度τ2を検出し、流入インク温度τ2が25〔℃〕より低いかどうかを判断する。
この場合、設定時間Tcは、インクIniが、循環ポンプ49から吐出され、環流路Rsiを流れた後、合流部q2からインク流路Rmiを流れ、分岐部q1から再び環流路Rsiを流れて循環ポンプ49に吸引されるまでに通る流路を循環流路としたとき、インクIniが循環流路を流れる時間である。
流入インク温度τ2が25〔℃〕より低い場合、インク供給処理部Pr5は、設定時間Tcが経過するのを待機し、流入インク温度τ2が25〔℃〕以上になるまでインクIniの循環を繰り返す。
また、流入インク温度τ2が25〔℃〕以上になった場合、インク供給処理部Pr5は、ポンプ駆動部Dr11を介して循環ポンプ49を停止させ、ポンプ駆動部Dr9を介して送液ポンプ45を作動させ、インク流路Rmiを流れるインクIniを記録ヘッドHdiに送る。このとき、インク供給処理部Pr5は、弁制御部Dr6、Dr8を介して開閉弁v12、v22を閉じ、弁制御部Dr5、Dr7を介して開閉弁v11、v21を開く。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS3−1 インク供給処理部Pr5は送液ポンプ45を作動させる。
ステップS3−2 インク供給処理部Pr5は真空ポンプ48を作動させる。
ステップS3−3 インク供給処理部Pr5はサンプリング時間Tmが経過するのを待機する。サンプリング時間Tmが経過した場合はステップS3−4に進む。
ステップS3−4 インク供給処理部Pr5は流入インク温度τ2を検出する。
ステップS3−5 インク供給処理部Pr5は流入インク温度τ2が25〔℃〕より低いかどうかを判断する。流入インク温度τ2が25〔℃〕より低い場合はステップS3−6に進み、流入インク温度τ2が25〔℃〕以上である場合はステップS3−11に進む。
ステップS3−6 インク供給処理部Pr5は送液ポンプ45を停止させるとともに、循環ポンプ49を作動させ、インクIniを循環させる。
ステップS3−7 インク供給処理部Pr5は設定時間Tcが経過するのを待機する。設定時間Tcが経過した場合はステップS3−8に進む。
ステップS3−8 インク供給処理部Pr5は流入インク温度τ2を検出する。
ステップS3−9 インク供給処理部Pr5は流入インク温度τ2が25〔℃〕より低いかどうかを判断する。流入インク温度τ2が25〔℃〕より低い場合はステップS3−7に戻り、流入インク温度τ2が25〔℃〕以上である場合はステップS3−10に進む。
ステップS3−10 インク供給処理部Pr5は循環ポンプ49を停止させ、送液ポンプ45を作動させる。
ステップS3−11 インク供給処理部Pr5はインクIniを記録ヘッドHdiに送り、リターンする。
次に、インクジェットプリンタ10の実施例及び比較例について説明する。
まず、インクIniを環流路Rsiにおいて循環させることなく記録ヘッドHdiに供給して印刷を行い、ドット抜けが発生したかどうかを判断することによって、インクジェットプリンタ10の評価を行った。
図11は本発明の第1の実施の形態におけるインクを環流路において循環させることなく記録ヘッドに供給して印刷を行った場合のインクジェットプリンタの評価結果を示す図である。
実施例1及び2並びに比較例1及び2においては、開閉弁v11、v21を開き、開閉弁v12、v22を閉じた状態で、送液ポンプ45及び真空ポンプ48を作動させ、インクタンクIti内のインクIniを脱気モジュール47に供給し、脱気モジュール47においてインクIniの脱気を行った後、インクIniを記録ヘッドHdiに供給した。また、温度センサ46によって流入インク温度τ2を検出するとともに、溶存酸素濃度計によって、脱気モジュール47によるインクIniの脱気前及び脱気後の溶存酸素量を検出した。
そして、比較例3においては、開閉弁v11、v21を開き、開閉弁v12、v22を閉じた状態で、送液ポンプ45を作動させ、インクタンクIti内のインクIniを脱気モジュール47に供給し、真空ポンプ48を作動させず、脱気モジュール47においてインクIniの脱気を行わず、インクIniを記録ヘッドHdiに供給した。また、温度センサ46によって流入インク温度τ2を検出するとともに、溶存酸素濃度計によって、インクIniが脱気モジュール47内に流入する前(又は脱気モジュール47から流出した後)の溶存酸素量を検出した。
溶存酸素濃度計として、ガルバニ電池型、ポーラログラフ型等の市販の溶存酸素濃度計、例えば、東亜ディーケーケー社製の「DO−32A」、「DO−24P」等、又はセントラル科学社製の「UC−12−SOL」を使用することができる。
なお、使用されるインクIniは、インクタンクItiに充填される前に、インクジェットプリンタ10が使用される際の温度、例えば、常温下で一日放置され、溶存酸素濃度計によって溶存酸素量が飽和溶存酸素量に近い値を採ることが確認された。
また、インクIniは、インクタンクItiに充填される前に、加熱又は冷却され、温度が所定の値にされる。
インクジェットプリンタ10の評価は、インクジェットプリンタ10によって印刷を行い、記録媒体に形成された画像を目視し、ドット抜けが発生したかどうかを判断することによって行った。
○はドット抜けが発生しなかったことを、△はドット抜けがわずかに発生したことを、×はドット抜けが多く発生したことを表す。
〔実施例1〕
流入インク温度τ2を30〔℃〕にすると、脱気前の溶存酸素量は5.7〔mg/L〕に、脱気後の溶存酸素量は1.8〔mg/L〕になり、記録媒体に形成された画像にドット抜けは発生しなかった。
〔実施例2〕
インクIniの温度を25〔℃〕にすると、脱気前の溶存酸素量は6.0〔mg/L〕に、脱気後の溶存酸素量は2.0〔mg/L〕になり、記録媒体に形成された画像にドット抜けは発生しなかった。
〔比較例1〕
インクIniの温度を20〔℃〕にすると、脱気前の溶存酸素量は6.4〔mg/L〕に、脱気後の溶存酸素量は2.5〔mg/L〕になり、記録媒体に形成された画像にドット抜けがわずかに発生した。
〔比較例2〕
インクIniの温度を15〔℃〕にすると、脱気前の溶存酸素量は7.3〔mg/L〕に、脱気後の溶存酸素量は2.8〔mg/L〕になり、記録媒体に形成された画像にドット抜けがわずかに発生した。
〔比較例3〕
インクIniの温度を15〔℃〕にすると、溶存酸素量は7.3〔mg/L〕になり、記録媒体に形成された画像にドット抜けが多く発生した。
実施例1及び2並びに比較例1〜3から分かるように、流入インク温度τ2が高いほど脱気前の溶存酸素量が少なくなり、また、脱気前の溶存酸素量が少ないほど、脱気後の溶存酸素量が少なくなった。
そして、実施例1及び2から分かるように、脱気後の溶存酸素量が2.0〔mg/L〕以下になると、ドット抜けが発生せず、画像品位を向上させることができる。
また、比較例1〜3から分かるように、脱気後の溶存酸素量が2.5〔mg/L〕以上になると、ドット抜けが発生し、画像品位が低下してしまう。
このことから、脱気後の溶存酸素量が2.3〔mg/L〕以下、好ましくは、2.0〔mg/L〕以下になるように流入インク温度τ2を25〔℃〕以上に維持すると、ドット抜けが発生せず、画像品位を向上させることができる。
次に、インクIniを環流路Rsiにおいて循環させた後に記録ヘッドHdiに供給して印刷を行い、ドット抜けが発生したかどうかを判断することによって、インクジェットプリンタ10の評価を行った。
図12は本発明の第1の実施の形態におけるインクを環流路において循環させた後に記録ヘッドに供給して印刷を行った場合のインクジェットプリンタの評価結果を示す図である。
実施例3及び4並びに比較例4においては、開閉弁v11、v21を開き、開閉弁v12、v22を閉じた状態で、送液ポンプ45を作動させ、インクタンクIti内のインクIniを脱気モジュール47に供給した後、開閉弁v11、v21を閉じ、開閉弁v12、v22を開き、送液ポンプ45を停止させ、真空ポンプ48及び循環ポンプ49を作動させ、インクIniを所定の循環回数N〔回〕だけ環流路Rsiを循環させ、インクIniの脱気を行った。インクIniを所定の循環回数N〔回〕だけ環流路Rsiを循環させた後、循環ポンプ49を停止させ、開閉弁v11、v21を開き、開閉弁v12、v22を閉じ、送液ポンプ45を作動させ、インクIniを記録ヘッドHdiに供給した。
前記循環回数N〔回〕は、循環ポンプ49の吐出口から循環ポンプ49の吸引口までの前記循環流路を満たすインクIniの重量M〔g〕、及び環流路RsiにおいてインクIniを循環させている間に循環ポンプ49から吐出されるインクIniの総重量、すなわち、吐出重量ΣG〔g〕に基づいて算出される。
すなわち、前記循環流路の容積をV〔L〕とし、インクIniの密度をγ〔g/L〕ととしたとき、循環流路を満たすインクIniの重量M〔g〕は、
M=V・γ 〔g〕
であり、循環ポンプ49を作動させたときの1回転数当たりの単位吐出重量をE〔g/r〕とし、循環ポンプ49を作動させたときの総回転数をRp〔r〕としたとき、前記吐出重量ΣG〔g〕は、
ΣG=E・Rp 〔g〕
であるので、循環回数N〔回〕は、
N=ΣG/M
=E・Rp/V・γ 〔回〕
になる。
なお、使用されるインクIniは、インクタンクItiに充填される前に、インクジェットプリンタ10が使用される際の温度、例えば、常温下で一日放置され、溶存酸素濃度計によって溶存酸素量が飽和溶存酸素量に近い値を採ることが確認された。
また、インクIniは、インクタンクItiに充填される前に、加熱又は冷却され、温度が15〔℃〕にされる。
インクジェットプリンタ10の評価は、インクジェットプリンタ10によって印刷を行い、記録媒体に形成された画像を目視し、ドット抜けが発生したかどうかを判断することによって行った。
○はドット抜けが発生しなかったことを、△はドット抜けがわずかに発生したことを表す。
〔実施例3〕
循環回数を3〔回〕にすると、記録媒体に形成された画像にドット抜けは発生しなかった。
〔実施例4〕
循環回数を2〔回〕にすると、記録媒体に形成された画像にドット抜けは発生しなかった。
〔比較例4〕
循環回数を1〔回〕にすると、記録媒体に形成された画像にドット抜けがわずかに発生した。
実施例3及び4並びに比較例4から分かるように、循環回数が2〔回〕以上であれば、画像にドット抜けが発生せず、画像品位を向上させることができる。
また、比較例4から分かるように、循環回数が1〔回〕であると、画像にドット抜けが発生し、画像品位が低下してしまう。
このことから、インクIniの温度が25〔℃〕より低い場合に、循環回数を2〔回〕以上にすると、画像にドット抜けが発生せず、画像品位を向上させることができる。
このように、本実施の形態においては、インク流路Rmiに、流入インク温度τ2を検出する温度センサ46が配設され、温度センサ46によって検出された流入インク温度τ2に基づいて循環ポンプ49が作動させられ、環流路RsiにおいてインクIniが循環させられるので、記録ヘッドHdiに供給されるインクIniの温度が低くなるのを抑制することができる。
したがって、記録ヘッドHdiの吐出性能に対応する粘度を有するインクIniが記録ヘッドHdiに供給されるので、インクIniを印刷に使用することができ、インクIniが無駄に消費されることがない。
また、循環ポンプ49が作動させられ、環流路RsiにおいてインクIniが循環させられるので、脱気モジュール47によってインクIniの脱気を十分に行うことができる。したがって、インクIni内の溶存酸素による気泡が原因で記録ヘッドHdiにおいてインクIniの吐出不良が生じることがなく、画像にドット抜けが発生することがない。その結果、画像品位を向上させることができる。
本実施の形態においては、サンプリング時間Tmが経過するごとにタンク内インク温度τ1を検出することによって、タンク内インク温度τ1に不感帯が形成され、インクヒータHtiのオン・オフにヒステリシスが形成されるようになっているが、収容インク設定温度に不感帯を形成し、インクヒータHtiのオン・オフにヒステリシスを形成することによって、短時間にインクヒータHtiのオン・オフが繰り返されるのを防止することができる。
また、本実施の形態においては、サンプリング時間Tmが経過するごとに流入インク温度τ2を検出することによって、流入インク温度τ2に不感帯が形成され、循環ポンプ49の作動及び停止にヒステリシスが形成されるようになっているが、流入インク設定温度に不感帯を形成し、循環ポンプ49の作動及び停止にヒステリシスを形成することによって、短時間に循環ポンプ49の作動及び停止が繰り返されるのを防止することができる。
さらに、本実施の形態においては、前記循環回数N〔回〕を算出する際に、循環ポンプ49を作動させたときの1回転数当たりの単位吐出重量E〔g/r〕、及び循環ポンプ49を作動させたときの総回転数Rp〔r〕に基づいて吐出重量ΣG〔g〕が算出されるようになっているが、循環ポンプ49を作動させたときの単位時間当たりの吐出重量、及び循環ポンプ49を作動させたときの作動時間に基づいて吐出重量ΣG〔g〕を算出することができる。
次に、インクタンクItiと送液ポンプ45との間にサブタンクを配設するようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図13は本発明の第2の実施の形態におけるインク供給系の概略図である。
図において、20はインク供給系、ItiはインクIniを収容する第1のインク収容部としてのインクタンク、Sti(i=1、2、…)は該インクタンクItiからインクIniを受けて収容する第2のインク収容部としてのサブタンクSti、Hti(i=1、2、…)は該サブタンクSti内に配設され、サブタンクStiに収容されたインクIniを所定の第1の設定温度としての収容インク設定温度、本実施の形態においては、30〔℃〕に加熱するための加熱体としてのインクヒータである。
この場合、インクタンクItiは、インクカートリッジから成り、画像形成装置としてのインクジェットプリンタ10におけるサブタンクStiより高い位置に形成された取付部に対して着脱自在に配設される。インクタンクIti内のインクIniはインクタンクItiとサブタンクStiとの高低差によって、すなわち、インクIniの自重によってサブタンクStiに供給される。
インクタンクItiとサブタンクStiとはインクチューブ61によって接続され、該インクチューブ61に第5の弁としての開閉弁v31が配設される。該開閉弁v31を開閉することによってインクタンクIti内のインクIniをサブタンクStiに選択的に供給することができる。
したがって、記録ヘッドHdiにインクIniが供給され、記録ヘッドHdiから記録媒体にインクIniが吐出させられ、画像が形成されている間でも、開閉弁v31を閉じ、その間に、インクタンクItiを交換することができるので、連続印刷を行うことができる。
次に、循環ポンプ49としてチューブポンプを使用するようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図14は本発明の第3の実施の形態における循環ポンプの断面図である。
図において、49は循環ポンプであり、本実施の形態においては、循環ポンプ49としてチューブポンプが使用される。
前記循環ポンプ49は、「U」字状の形状を有し、下端に開放縁egを備えたケース72を備え、該ケース72内に、循環ポンプ49を作動させ、インクIniを圧送する圧送機構Meが収容される。該圧送機構Meは、ケース72の内周面に沿って取り付けられたチューブユニット73、及び該チューブユニット73より径方向内方において回転自在に配設されたロータ74を備える。
前記チューブユニット73は、可撓性及び弾性を有する材料によって形成された筒状体から成るチューブ76、前記ケース72の開放縁egの近傍に取り付けられ、前記チューブ76の一端側に配設された第1のコネクタCin、前記開放縁egの近傍に取り付けられ、前記チューブ76の他端側に配設された第2のコネクタCou等を備える。
また、前記ロータ74は、前記ケース72に対して回転自在に配設されたシャフトsh1、該シャフトsh1に取り付けられたコア77、ロータ74の回転方向における複数箇所、本実施の形態においては、2箇所において、コア77から径方向外方に向けて突出させて形成されたアームam1、am2、及び該各アームam1、am2の先端において、チューブ76と当接させて回転自在に配設された回転体としてのコロr1、r2を備える。
本実施の形態においては、アームam1、am2が、シャフトsh1を中心にして、互いに180〔°〕の角度を成すように直線上に配置されるので、コロr1、r2は、シャフトsh1を挟んで、互いに対向させて配置される。
この場合、シャフトsh1の中心からケース72の内周面までの距離をLcとし、ロータ74の径方向寸法である、シャフトsh1の中心からコロr1、r2とチューブ76とが当接する当接点pt1、pt2までの距離をLrとし、チューブ76の肉厚をwとしたとき、距離Lc、Lrの差ΔLは、
ΔL=2・w
にされる。したがって、チューブ76が、当接点pt1、pt2においてコロr1、r2によって押し付けられ、内周面同士が密着させられるので、チューブ76によって形成されるインクIniの流路が閉じられる。
前記シャフトsh1は、ポンプ用の駆動部としての図示されない駆動モータと連結され、駆動モータを正方向に駆動すると、ロータ74が図における時計回り方向、すなわち、正方向に回転させられる。
このとき、ロータ74は、コロr1、r2によってチューブ76をしごきながら回転させられるので、チューブ76内のインクIniがロータ74の回転方向と同じ方向に移動させられる。すなわち、ロータ74が正方向に回転させられると、第1のコネクタCinから吸引されたインクIniがチューブ76内を正方向に移動させられ、第2のコネクタCouから吐出される。
本実施の形態においては、アームam1、am2が互いに180〔°〕の角度を成すように配設されるので、ロータ74が回転方向におけるいずれの位置に置かれていても、コロr1、r2のうちの少なくとも一方が必ずチューブ76に押し付けられ、ロータ74の回転に伴って、インクIniがチューブ76内を正方向に移動させられ、第2のコネクタCouから吐出される。
本実施の形態において、循環ポンプ49を作動させたときの総回転数Rp〔r〕は、駆動モータの回転数に基づいて算出される。
前記各実施の形態においては、インクジェットプリンタ10について説明しているが、本発明を、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。