JP2020066745A - ラインパイプ用鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた低温靭性を備えるラインパイプ用鋼材を提供する。【解決手段】ラインパイプ用鋼材は、質量%で、C:0.010〜0.060%、Si:0.05〜0.30%、Mn:0.50〜2.00%、P:0〜0.030%、S:0〜0.0100%、Al:0.010〜0.035%、N:0.0010〜0.0080%、Nb:0.010〜0.080%、Ti:0.005〜0.030%、Ni:0.001〜0.50%、Mo:0.05〜0.30%、O:0〜0.0030%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、実施の形態で規定する式(1)を満たす。フェライト分率60〜90%、有効結晶粒径15μm以下、粗大結晶粒率20%以下である。圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、RD面及びND面に垂直な面をTD面として、RD面及びTD面とのなす角度が45°である特定面において、{100}面の集積度が1.50〜2.50である。【選択図】図2

Description

本発明は、鋼材に関し、さらに詳しくは、ラインパイプ用鋼材に関する。
海底に敷設されるパイプラインは、高圧流体を内部に通す。パイプラインはさらに、波浪による繰り返し歪みと、海水圧とを受ける。そのため、海底のパイプラインに使用される鋼管には、高い強度と高い低温靭性とが要求される。
パイプラインは、複数のラインパイプで構成される。ラインパイプ用の鋼管として、電気抵抗溶接鋼管(以下、電縫鋼管という)が利用される場合がある。電縫鋼管の肉厚を厚くすれば、高強度が得られる。しかしながら、肉厚が厚くなれば、脆性破壊が生じやすく、靭性が低下する。そのため、厚肉の電縫鋼管では、優れた靭性が求められる。
低温靭性の指標として、DWTT(Drop Weight Tear Test:落重試験)保証温度がある。DWTT保証温度は、DWTT試験において85%以上の延性破面率を有する温度を意味する。DWTT保証温度が低いほど、低温靭性が高いことを意味する。近年、ラインパイプ用電縫鋼管では、従来よりも優れた低温靭性が要求されている。
国際公開第2012/002481号(特許文献1)は、ラインパイプ用熱延鋼板の低温靭性を高める製造方法を提案する。
特許文献1に開示されたラインパイプ用熱延鋼板は、質量%にて、C=0.02〜0.08%、Si=0.05〜0.5%、Mn=1〜2%、Nb=0.03〜0.12%、Ti=0.005〜0.05%、を満足し、残部がFe及び不可避的不純物元素からなる。当該鋼板表面から板厚の1/2厚の深さにおけるミクロ組織において初析フェライト分率が3%以上20%以下で他が低温変態相及び1%以下のパーライトであり、ミクロ組織全体の個数平均結晶粒径が1μm以上2.5μm以下かつエリア平均粒径が3μm以上9μm以下であり、エリア平均粒径の標準偏差が0.8μm以上2.3μm以下であり、また鋼板表面から板厚の1/2厚の深さにおいて鋼板表面に平行な面に対する{211}方向と{111}方向の反射X線強度比{211}/{111}が1.1以上である。このラインパイプ用鋼板は、厚さ中央部の初析フェライト分率と、平均粒径と、集合組織とを制御することにより、優れた強度及び低温靭性が得られる、と特許文献1には記載されている。
国際公開第2012/002481号
しかしながら、特許文献1に開示される熱延鋼板は、圧延工程前の加熱温度が高く、オーステナイト粒が粗大化する場合がある。この場合、結晶粒が粗大化し、低温靭性が低下し得る。
本発明の目的は、優れた低温靭性を有するラインパイプ用鋼材を提供することである。
本実施形態によるラインパイプ用鋼材は、質量%で、C:0.010〜0.060%、Si:0.05〜0.30%、Mn:0.50〜2.00%、P:0〜0.030%、S:0〜0.0100%、Al:0.010〜0.035%、N:0.0010〜0.0080%、Nb:0.010〜0.080%、Ti:0.005〜0.030%、Ni:0.001〜0.50%、Mo:0.05〜0.30%、O:0〜0.0030%、Ca:0〜0.0050%、V:0〜0.100%、Cr:0〜0.30%、Cu:0〜0.30%、Mg:0〜0.0050%、及び、希土類元素:0〜0.0100%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。厚さ中央部の組織において、フェライト分率は60〜90%であり、有効結晶粒径は15μm以下であり、結晶粒径が20μm以上の結晶粒の面積率である粗大結晶粒率は20%以下である。圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、RD面及びND面に垂直な面をTD面としたとき、RD面とのなす角度が45°であり、かつ、TD面とのなす角度が45°である特定面において、{100}面の集積度が1.50〜2.50である。
0.300≦C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3+Nb/3≦0.380 (1)
ここで、式(1)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
ラインパイプ用鋼材はたとえば、ラインパイプ用熱延鋼板、又は、ラインパイプ用電縫鋼管である。
本実施形態において、有効結晶粒径とは、EBSP−OIM(商標)(Electron Back Scatter Diffraction Pattern−Orientation Image Microscopy)法において、隣り合う測定点の方位差が15°を超えた位置を粒界として、上記粒界に囲まれた領域を結晶粒として得られる粒径及び表面積から計算されるエリア平均粒径を意味する。
本発明によるラインパイプ用鋼材は、優れた低温靭性を有する。
図1は、ラインパイプ用鋼材において、圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、RD面及びND面に垂直な面をTD面としたとき、RD面とのなす角度が45°であり、かつ、TD面とのなす角度が45°である面(以下、特定面ともいう)を示す斜視図である。なお、NDは厚さ方向を示す。 図2は、特定面における{100}面の集積度({100}集積度)と、−30℃でDWTT試験を行った場合の延性破面率(%)との関係を示す図である。 図3は、本実施の形態によるラインパイプ用鋼材の連続冷却変態曲線の模式図である。 図4は、本実施の形態によるラインパイプ用鋼材の製造工程を示すフロー図である。 図5は、引張試験に用いた引張試験片の平面図である。なお、図中の数値は寸法(単位:mm)を示す。 図6は、DWTT試験に用いたDWTT試験片の正面図及び側面図である。なお、図中の数値及びtは寸法(単位:mm)を示す。
本発明者らは、ラインパイプ用鋼材の低温靭性について調査及び検討を行い、次の知見を得た。
本発明者らはまず、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性を高めるために、鋼の集合組織に着目した。
ラインパイプ用鋼等の炭素鋼は、体心立方構造を示し、鋼の集合組織において、{100}面はへき開破面であり、{110}面や{111}面等に比べ、{100}面は、{100}面に平行に亀裂が伝播した時に剥離しやすい結晶面である。
ラインパイプは、天然ガスや原油などの気体や液体が高圧で充填されており、最大応力は鋼管の周方向に働いているため、亀裂は鋼管軸に平行に伝播しやすい。ラインパイプ用電縫鋼管においては、通常、管軸方向がラインパイプ用熱延鋼板の熱間圧延時の圧延方向(以下、RD方向という)であるため、亀裂が伝播しやすいのは、RD方向である。
したがって、{100}面の法線が、RD方向と垂直である場合、亀裂が伝播しやすいと本発明者らは考えた。そこで、{100}面の法線を、RD方向と垂直な方向から45°傾ければ、亀裂の伝播を抑制できると本発明者らは考えた。これにより、{100}面の法線を、RD方向と垂直な方向から最も傾けることができるからである。より具体的には、次のとおりである。
図1は、ラインパイプ用鋼材の厚さ中央部の微小領域の模式図である。ラインパイプ用鋼材が鋼板である場合、図示された微小領域は板厚中央部のものである。ラインパイプ用鋼材が鋼管である場合、板厚中央部は、肉厚中央部に相当する。つまり、図示された微小領域は肉厚中央部のものである。図1において、圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、RD面及びND面に垂直な面をTD面とする。RD面とのなす角度が45°であり、かつ、TD面とのなす角度が45°である面を、特定面とする。なお、ND方向は、厚さ方向(板厚方向又は肉厚方向)を示す。
なお、鋼管の円周方向は、鋼板の板幅方向と異なり、湾曲している。しかしながら、上述の微小領域では、円周方向はほぼ直線であり、実質的に直線のTD方向に一致する。そのため、図1で示す特定面は、ラインパイプ用電縫鋼管においても、同様に示される。
図1を参照して、圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、RD面及びND面に垂直な面をTD面としたとき、RD面とのなす角度が45°であり、かつ、TD面とのなす角度が45°である特定面において、{100}面が集積すれば、最も亀裂が進展しやすい面での剥離が抑制されると、本願発明者らは考えた。
以上の考えに基づいて、本発明者らは、特定面における{100}面の集積度(以下、{100}集積度という)と、−30℃でDWTT試験を行った場合の延性破面率(%)との関係について調査を行った。
図2は、{100}集積度と、−30℃でDWTT試験を行った場合の延性破面率(%)との関係を示す図である。図2は次のとおり得られた。
後述の実施例における表1に示す鋼Aの組成を有するスラブを用いて、ラインパイプ用電縫鋼管を製造した。
具体的にはスラブを、加熱炉で、1060〜1200℃の温度に加熱した。加熱されたスラブに対して粗圧延を実施した。粗圧延の最終スタンド出側の温度T0は900〜985℃、及び、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間t0は50〜230秒であった。粗圧延後、760〜800℃で仕上げ圧延を行って、鋼板を製造した。仕上げ圧延後の鋼板に対して、ROT(ランアウトテーブル)冷却を実施した。
以上の製造工程により鋼板を製造した。得られたラインパイプ用熱延鋼板を巻取り、ホットコイルの形態のラインパイプ用熱延鋼板を得た。
得られたラインパイプ用熱延鋼板を用いて上述の方法で製管し、外径が304.8〜660.4mm、肉厚12〜25mmのラインパイプ用電縫鋼管を製造した。
後述の方法に基づいて、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction Patterns:後方散乱電子線回折)法を用いて、{100}集積度を測定した。EBSD法での測定条件は倍率:400倍、視野面積:200μm×500μm、測定ステップ:0.3μmとした。
得られたラインパイプ用電縫鋼管に対して低温靭性試験を実施した。より具体的には、API規格の5L3(Recommended practice for conducting drop weight tear test)の規定に準拠して、−30℃でDWTT試験を行い、延性破面率を求めた。
図2を参照して、{100}集積度の増加に伴い、延性破面率は高まる。そして、{100}集積度が1.50を超えれば、延性破面率が85%以上となる。{100}集積度が1.50を超えた場合さらに、{100}集積度が高くなっても、延性破面率はそれほど大きく変化しない。つまり、{100}集積度に対する延性破面率は、{100}集積度1.50付近で変曲点を有する。このように、{100}集積度1.50付近の変曲点を境に、延性破面率が85%以上となり、低温靭性に優れたラインパイプ用電縫鋼管が得られることを、本発明者らは初めて知見した。
本発明者らは、ラインパイプ用鋼材の低温靭性についてさらに調査及び検討を行い、次の知見を得た。
(A)鋼の組織がフェライト主体であれば、微細な結晶粒を得ることができ、鋼の低温靭性が高まる。圧延時の加熱温度を1200℃以下として、結晶粒の粗大化を抑制する。さらに、圧延後の未再結晶組織に多数の核生成サイトを生成して、多数の新たなフェライト粒が生成するよう冷却を制御する。この場合、最終的なフェライト粒が微細になり、その結果、鋼の低温靭性が高まる。
一方、鋼の組織がベイナイト主体であれば、旧オーステナイト粒をそのまま受け継いだ結晶粒の中にラス(細長い組織)が生成するものの、それらの方位はブロックごとに揃い、各ブロックが実質的に一つの結晶粒となる。そのため、ベイナイトにおける結晶粒の大きさは、旧オーステナイト粒の大きさで決まる。そのため、結晶粒が粗大化しやすく、その結果、鋼の低温靭性が低下しやすい。したがって、本実施形態のラインパイプ用鋼材では、組織をフェライト主体とする。
(B)C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、及びNbはいずれも、ラインパイプ用鋼材の連続冷却変態図(Continuous Cooling Transformation Diagram:CCT線図)のS曲線(フェライト領域、パーライト領域、及び、ベイナイト領域)に影響を与える。
F1=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3+Nb/3と定義する。F1が低すぎれば、CCT線図のS曲線は左側にシフトし過ぎる。この場合、鋼の低温靭性が低下する。この理由は次のとおりである。
オーステナイトからフェライトに変態する際の駆動力(相変態の駆動力)の大きさは、鋼材温度に相関する。鋼材温度が高い場合、相変態の駆動力は小さい。そのため、フェライト変態核は生成されにくい。さらに、鋼材温度が高いため、フェライト粒の成長は早い。その結果、フェライト粒が粗大化する。一方、鋼材温度が低い場合、相変態の駆動力は大きい。そのため、フェライト変態核が生成されやすい。さらに、鋼材温度が低いため、フェライト粒の成長は遅い。その結果、フェライト粒が微細化する。
CCT線図のS曲線は左側にシフトし過ぎた場合、鋼材温度が高い状態でフェライト領域に入る。そのため、上記のとおり、フェライト粒が粗大化して、有効結晶粒径が大きくなる。さらに、混粒組織になりやすいため、粗大結晶粒率が大きくなる。この場合、鋼の低温靭性が低下する。F1が低すぎればさらに、焼入れ性が低下して十分な強度が得られない。
一方、F1が高すぎれば、S曲線が右側にシフトし過ぎる。この場合、冷却曲線がフェライトノーズにかかりにくくなる。その結果、ベイナイト、マルテンサイト等の硬質組織の生成量が多くなり、組織中のフェライト分率が低下する。その結果、鋼の低温靭性が低下する。
図3は、本実施の形態によるラインパイプ用鋼材の連続冷却変態図(Continuous Cooling Transformation Diagram:CCT線図)の一例である。図3中、Fはフェライトノーズ、Pはパーライトノーズ、及びBはベイナイトノーズを示す。F1が0.300〜0.380であれば、各相のS曲線(フェライト、パーライト、ベイナイト)がCCT線図において適度な位置に配置される。この場合、図3中の冷却曲線C1のように、主としてフェライト領域を通って冷却することができる。そのため、フェライト主体の組織を生成でき、高い強度及び低温靭性を得ることができる。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態によるラインパイプ用鋼材は、質量%で、C:0.010〜0.060%、Si:0.05〜0.30%、Mn:0.50〜2.00%、P:0〜0.030%、S:0〜0.0100%、Al:0.010〜0.035%、N:0.0010〜0.0080%、Nb:0.010〜0.080%、Ti:0.005〜0.030%、Ni:0.001〜0.50%、Mo:0.05〜0.30%、O:0〜0.0030%、Ca:0〜0.0050%、V:0〜0.100%、Cr:0〜0.30%、Cu:0〜0.30%、Mg:0〜0.0050%、及び、希土類元素:0〜0.0100%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。厚さ中央部の組織において、フェライト分率は60〜90%であり、有効結晶粒径は15μm以下であり、結晶粒径が20μm以上の結晶粒の面積率である粗大結晶粒率は20%以下である。圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、RD面及びND面に垂直な面をTD面としたとき、RD面とのなす角度が45°であり、かつ、TD面とのなす角度が45°である特定面において、{100}面の集積度が1.50〜2.50である。
0.300≦C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3+Nb/3≦0.380 (1)
ここで、式(1)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記化学組成は、Ca:0超〜0.0050%を含有してもよい。上記化学組成は、V:0超〜0.100%、Cr:0超〜0.30%、及び、Cu:0超〜0.30%、からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。上記化学組成は、Mg:0超〜0.0050%、及び、希土類元素:0超〜0.0100%、からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
上記ラインパイプ用鋼材は、たとえば、ラインパイプ用熱延鋼板、及びラインパイプ用電縫鋼管である。
上記ラインパイプ用電縫鋼管は、管軸方向の降伏強度が450〜540MPaであり、管軸方向の引張強度が510〜625MPaである。
上記ラインパイプ用電縫鋼管は、肉厚が12〜25mmであり、外径が304.8〜660.4mmであってもよい。
以下、本実施形態のラインパイプ用鋼材について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態のラインパイプ用鋼材は、ラインパイプ用熱延鋼板、又は、ラインパイプ用電縫鋼管である。ラインパイプ用鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.010〜0.060%
炭素(C)は、鋼の強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、炭化物が生成し、鋼の低温靭性及び延性が低下する。C含有量が高すぎればさらに、溶接性が低下する。したがって、C含有量は0.010〜0.060%である。C含有量の好ましい下限は0.025%であり、さらに好ましくは0.030%である。C含有量の好ましい上限は、0.058%である。
Si:0.05〜0.30%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜0.30%である。Si含有量の好ましい下限は、0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Si含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.21%である。
Mn:0.50〜2.00%
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼の強度が高くなりすぎ、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.50〜2.00%である。Mn含有量の好ましい下限は、0.80%であり、さらに好ましくは1.00%である。Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、さらに好ましくは1.50%である。
P:0〜0.030%
燐(P)は不純物である。Pは、鋼の低温靭性を低下する。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。具体的には、P含有量は0〜0.030%である。P含有量の好ましい上限は0.020%であり、さらに好ましくは0.015%である。一方、P含有量は、0%であってもよい。ただし、脱燐コスト低減の観点から、P含有量は0%超であってもよく、0.001%以上であってもよく、0.005%以上であってもよい。
S:0〜0.0100%
硫黄(S)は不純物である。Sは、Mnと結合してMn系硫化物を形成する。そのため、鋼の低温靭性及び耐SSC性が低下する。したがって、S含有量はなるべく低い方が好ましい。具体的には、S含有量は0〜0.0100%である。S含有量の好ましい上限は0.0080%であり、さらに好ましくは0.0050%である。一方、S含有量は、0%であってもよい。ただし、脱硫コスト低減の観点から、S含有量は0%超であってもよく、0.0001%以上であってもよく、0.0010%以上であってもよく、0.0020%以上であってもよい。
Al:0.010〜0.035%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、Al窒化物が粗大化し、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Al含有量は、0.010〜0.035%である。Al含有量の好ましい下限は0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。Al含有量の好ましい上限は0.030%である。本明細書において、Al含有量は鋼中の全Al含有量を意味する。
N:0.0010〜0.0080%
窒素(N)は、窒化物を形成して、加熱工程中のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。この場合、圧延工程においてオーステナイト粒が微細化し、変態後の結晶粒が微細になる。その結果、鋼の低温靭性が高まる。Nはさらに、固溶強化により鋼の強度を高める。N含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、N含有量が高すぎれば、炭窒化物を粗大化し、鋼の低温靭性を低下する。したがって、N含有量は0.0010〜0.0080%である。N含有量の好ましい下限は、0.0020%であり、さらに好ましくは0.0025%である。N含有量の好ましい上限は0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
Nb:0.010〜0.080%
ニオブ(Nb)は、鋼中のCやNと結合して微細なNb炭窒化物を形成する。Nb炭窒化物により、結晶粒の粗大化が抑制され有効結晶粒径が小さくなる。そのため、鋼の低温靭性を高める。さらに、微細なNb炭窒化物は、分散強化により鋼の強度を高める。Nb含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、Nb炭窒化物が粗大化し、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0.010〜0.080%である。Nb含有量の好ましい下限は、0.015%である。Nb含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
Ti:0.005〜0.030%
チタン(Ti)は、鋼中のNと結合してTiNを形成し、固溶したNによる鋼の低温靭性の低下を抑制する。さらに、微細なTiNが分散析出することにより、結晶粒の粗大化を抑制する。これにより、鋼の低温靭性が高まる。Ti含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、TiNが粗大化したり、粗大なTiCが生成する。この場合、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0.005〜0.030%である。Ti含有量の好ましい下限は、0.007%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ti含有量の好ましい上限は0.020%であり、さらに好ましくは0.017%である。
Ni:0.001〜0.50%
ニッケル(Ni)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Ni含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、この効果が飽和する。したがって、Ni含有量は0.001〜0.50%である。Ni含有量の好ましい下限は、0.05%であり、さらに好ましくは0.07%である。Ni含有量の好ましい上限は0.20%である。
Mo:0.05〜0.30%
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Moはさらに、オーステナイト粒を微細化し、鋼の低温靭性を高める。Mo含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、鋼の現地溶接性が低下する。したがって、Mo含有量は0.05〜0.30%である。Mo含有量の好ましい下限は、0.15%である。Mo含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.18%である。
O:0〜0.0030%
酸素(O)は不純物である。Oは酸化物を形成して、鋼の耐水素誘起割れ性を低下する。Oはさらに、鋼の低温靭性を低下する。したがって、O含有量はなるべく低い方が好ましい。具体的には、O含有量は0〜0.0030%である。O含有量の好ましい上限は0.0025%である。一方、O含有量は、0%であってもよい。ただし、脱酸コスト低減の観点から、O含有量は0%超であってもよく、0.0001%以上であってもよく、0.0010%以上であってもよく、0.0015%以上であってもよく、0.0020%以上であってもよい。
本実施の形態によるラインパイプ用鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、ラインパイプ用鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態のラインパイプ用鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
上述のラインパイプ用鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Caを含有してもよい。
Ca:0〜0.0050%、
カルシウム(Ca)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは、MnSの形態を制御して、球状化する。この場合、鋼の低温靭性が高まる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、粗大な酸化物系介在物が形成される。したがって、Ca含有量は0〜0.0050%である。Ca含有量は0%であってもよい。Ca含有量の好ましい下限は、0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0015%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0045%である。
上述のラインパイプ用鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、V、Cr及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は鋼の強度を高める。
V:0〜0.100%
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは巻取り工程において鋼中のCやNと結合して微細な炭窒化物を形成し、鋼の強度を高める。微細なV炭窒化物はさらに、結晶粒の粗大化を抑制して鋼の低温靭性を高める。しかしながら、V含有量が高すぎれば、V炭窒化物が粗大化し、鋼の低温靭性が低下する。したがって、V含有量は、0〜0.100%である。V含有量は0%であってもよい。V含有量の好ましい下限は、0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。V含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.060%である。
Cr:0〜0.30%
クロム(Cr)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Crは鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。しかしながら、Cr含有量が高すぎれば、焼入れ性が高くなりすぎて鋼の低温靭性が低下する。したがって、Cr含有量は0〜0.30%である。Cr含有量は0%であってもよい。Cr含有量の好ましい下限は、0%超であり、さらに好ましくは0.01%である。Cr含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Cu:0〜0.30%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuは鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、焼入れ性が高くなりすぎて鋼の低温靭性が低下する。Cu含有量が高すぎればさらに、液体金属脆化により、鋳造時や熱間圧延時に表面の割れを引き起こす。したがって、Cu含有量は0〜0.30%である。Cu含有量は0%であってもよい。Cu含有量の好ましい下限は、0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cu含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
上述のラインパイプ用鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Mg及び希土類元素からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。これらの元素は脱酸剤及び脱硫剤として機能する。
Mg:0〜0.0050%
マグネシウム(Mg)は、任意の元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Mgは、脱酸剤及び脱硫剤として機能する。また、微細な酸化物を生じて、HAZの靭性の向上にも寄与する。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、酸化物が凝集又は粗大化し易くなる。その結果、耐HIC性の低下、又は、母材部又はHAZの靱性の低下が起こる恐れがある。したがって、Mg含有量は0〜0.0050%である。Mg含有量は0%であってもよい。Mg含有量の好ましい下限は、0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0030%である。
希土類元素:0〜0.0100%
希土類元素(REM)は、任意の元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、REMは、脱酸剤及び脱硫剤として機能する。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、粗大な酸化物が生成される。その結果、耐HIC性の低下、又は、母材部又はHAZの靱性の低下が起こる恐れがある。したがって、REM含有量は0〜0.0100%である。REM含有量は0%であってもよい。REM含有量の好ましい下限は、0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0010%である。REM含有量の好ましい上限は0.0070%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
ここで、REMとは、原子番号39番のイットリウム(Y)、ランタノイドである原子番号57番のランタン(La)〜原子番号71番のルテチウム(Lu)及び、アクチノイドである原子番号89番のアクチニウム(Ac)〜103番のローレンシウム(Lr)からなる群から選択される1種以上の元素である。
[式(1)について]
上記化学組成はさらに、式(1)を満たす。
0.300≦C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3+Nb/3≦0.380 (1)
ここで、式(1)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。また、式(1)中の元素記号に対応する元素が含有されていない場合、式(1)中の対応する元素記号には「0」が代入される。
上述のとおり、本実施の形態の化学組成において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、及びNb含有量は鋼の焼入れ性を高める。
F1=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3+Nb/3と定義する。F1が低すぎれば、CCT線図のS曲線は左側にシフトし過ぎる。この場合、鋼の低温靭性が低下する。この理由は次のとおりである。
オーステナイトからフェライトに変態する際の駆動力(相変態の駆動力)の大きさは、鋼材温度に相関する。鋼材温度が高い場合、相変態の駆動力は小さい。そのため、フェライト変態核は生成されにくい。しかしながら鋼材温度が高いため、フェライト粒の成長は早い。その結果、フェライト粒が粗大化する。一方、鋼材温度が低い場合、相変態の駆動力は大きい。そのため、フェライト変態核が生成されやすい。しかしながら鋼材温度が低いため、フェライト粒の成長は遅い。その結果、フェライト粒が微細化する。
CCT線図のS曲線が左側にシフトし過ぎた場合、鋼材温度が高い状態でフェライト領域に入る。そのため、上記のとおり、フェライト粒が粗大化して、有効結晶粒径が大きくなる。さらに、混粒組織になりやすいため、粗大結晶粒率が大きくなる。この場合、鋼の低温靭性が低下する。F1が低すぎればさらに、焼入れ性が低下して十分な強度が得られない。
一方、F1が高すぎれば、CCT線図のS曲線が右側(長時間側)にシフトする。この場合、ベイナイトやマルテンサイトといった硬質組織が生成しやすくなり、組織中のフェライト分率が低下する。その結果、鋼の低温靭性が低下する。F1が高すぎればさらに、鋼の焼入れ性が高くなりすぎ、鋼の低温靭性を低下する。
F1が0.300〜0.380であれば、図3に示す冷却曲線C1を実施した場合、鋼の温度をフェライト領域に保持しやすい。そのため、鋼材の厚さ中央部のフェライト分率を60〜90%にすることができ、鋼の低温靭性を高めることができる。F1の好ましい上限は、0.35である。
[フェライト分率について]
本実施形態によるラインパイプ用鋼材の厚さ中央部の組織は、フェライト、ベイニティックフェライト、及びパーライトからなり、残部は、析出物及び/又は介在物である。ここで、厚さ中央部とは、板厚又は肉厚をtmmとした場合、板厚中央又は肉厚中央から、板厚方向又は肉厚方向に±20%tの範囲(つまり、表面から板厚方向又は肉厚方向に40〜60%tの範囲)を意味する。
上述のとおり、鋼の厚さ中央部の組織のフェライト分率が60%以上であり、フェライト粒が微細であれば、鋼の低温靭性が高まる。なお、本明細書において、フェライト分率は、フェライトの面積率を意味する。
フェライト分率が60%未満の場合、有効結晶粒径及び/又は粗大結晶粒率が大きくなりすぎる。その結果、低温靭性が低下する。
一方、Cを含有する本実施形態における化学組成においては、フェライト分率が90%以下の金属組織が形成されやすい。
したがって、本実施形態によるラインパイプ用鋼材の厚さ中央部の組織において、フェライト分率は60〜90%である。フェライト分率の好ましい下限は65%であり、さらに好ましくは70%であり、さらに好ましくは75%である。
フェライト分率とは、フェライト面積率を意味し、次の方法で測定される。ラインパイプ用鋼材の厚さ中央部から試料を採取する。ラインパイプ用鋼材がラインパイプ用電縫鋼管である場合は、電縫溶接部から管周方向に90°ずれた位置の肉厚中央部から試料を採取する。
採取された試料をコロイダルシリカ研磨剤で30〜60分研磨する。研磨された試料をEBSP−OIM(商標)を用いて解析し、フェライト分率を求める。視野範囲は、肉厚中央部を中心として、200μm(圧延方向)×500μm(厚さ方向)とする。観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとする。
具体的には、EBSP−OIM(商標)に装備されているKAM(Kernel Average Misorientation)法にてフェライト分率を求める。
KAM法では、測定データのうち、任意のひとつの正六角形のピクセルを中心のピクセルとする。この中心のピクセルに隣り合う6個のピクセルを用いた第一近似(全7ピクセル)、又はこれらの6個のピクセルのさらにその外側の12個のピクセルも用いた第二近似(全19ピクセル)、又はこれら12個のピクセルのさらに外側の18個のピクセルも用いた第三近似(全37ピクセル)について、各ピクセル間の方位差を求める。求めた方位差を平均し、得られた平均値をその中心のピクセルの値とする。この操作をピクセル全体に対して行う。本実施の形態では、第三近似により隣接するピクセル間の方位差5°以下となるものを表示させる。本実施の形態では、視野範囲の全面積に対する、方位差第三近似1°以下と算出されたピクセルの面積分率をフェライト分率と定義する。方位差第三近似1°を超えるものは、ベイナイト等のフェライト以外の組織とする。
[有効結晶粒径について]
本実施形態のラインパイプ用鋼材ではさらに、ラインパイプ用鋼材の厚さ中央部での有効結晶粒径が15μm以下である。有効結晶粒径が大きすぎれば、鋼の低温靭性が低下する。本実施形態では、上述の有効結晶粒径が15μm以下であるため、優れた低温靭性が得られる。有効結晶粒径の好ましい上限は、13μmであり、さらに好ましくは10μmである。
有効結晶粒径は、EBSP−OIM(商標)を用いて測定する。具体的には、フェライト分率の測定と同様に試料を採取及び研磨する。研磨された試料をEBSP−OIM(商標)を用いて解析する。より具体的には、一定測定ステップごとの方位測定で、隣り合う測定点の方位差が、15°を超えた位置を粒界とする。15°は大傾角粒界の閾値であり、一般的に結晶粒界として認識されている。粒界に囲まれた領域を結晶粒として、その粒径及び結晶粒の表面積を求める。得られた粒径及び表面積からエリア平均粒径を求める。本明細書中において、求めたエリア平均粒径を有効結晶粒径とする。なお、視野範囲は、肉厚中央部を中心として、200μm(圧延方向)×500μm(厚さ方向)とする。観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとする。
[粗大結晶粒率について]
上述のEBSP−OIM(商標)を用いた測定において、ラインパイプ用鋼材の厚さ中央部での結晶粒径が20μm以上の結晶粒の面積率を「粗大結晶粒率」と定義する。結晶粒が粗大である場合、鋼の低温靭性が低下する。粗大結晶粒率が20%以下であれば、優れた低温靭性が得られる。粗大結晶粒率の好ましい上限は、18%であり、さらに好ましくは15%である。粗大結晶粒率は低い程好ましい。
粗大結晶粒率は、EBSP−OIM(商標)を用いて測定する。フェライト分率の測定と同様に試料を採取及び研磨する。研磨された試料をEBSP−OIM(商標)を用いて解析する。視野範囲は、肉厚中央部を中心として、200μm(圧延方向)×500μm(厚さ方向)とする。観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとする。EBSP−OIM(商標)測定において観察した測定対象の面積をN、粗大結晶粒の面積をnとして、式(2)に代入することで求めることができる。
粗大結晶粒率(%)=(n/N)×100 (2)
[特定面における{100}面の集積度:1.50〜2.50]
本実施形態によるラインパイプ用鋼材において、圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、RD面及びND面に垂直な面をTD面としたとき、RD面とのなす角度が45°であり、かつ、TD面とのなす角度が45°である特定面において、{100}面の集積度が1.50〜2.50である。これにより、最も亀裂が進展しやすい面での剥離が抑制される。その結果、亀裂の伝播を抑制でき、鋼の低温靭性が高まる。
{100}集積度が1.50未満の場合、低温靭性が低下する。{100}集積度の上限は特に限定されないが、−30℃のDWTT保証温度において、2.50であれば十分である。したがって、{100}集積度は1.50〜2.50である。{100}集積度の好ましい下限は1.60であり、さらに好ましくは1.70であり、さらに好ましくは1.80であり、さらに好ましくは2.00である。{100}集積度の好ましい上限は2.40である。
[{100}集積度の測定方法]
{100}集積度は、EBSP−OIM(商標)を用いて測定する。具体的には、ラインパイプ用鋼材の厚さ中央部から試料を採取する。ラインパイプ用鋼材がラインパイプ用電縫鋼管である場合は、電縫溶接部から管周方向に90°ずれた位置の肉厚中央部から試料を採取する。
採取された試料をコロイダルシリカ研磨剤で30〜60分研磨する。研磨された試料について、EBSP−OIM(商標)のEBSD法を用いて解析する。EBSD法での測定条件は、倍率:400倍、視野面積:200μm×500μm、測定ステップ:0.3μmとする。EBSD測定により、球面調和関数法を用いて、特定面に垂直な方向に対する逆極点図のTexture解析により、{100}集積度を求める。
なお、微視的には、ラインパイプ用電縫鋼管の円周方向は、ラインパイプ用熱延鋼板のTD方向と一致する。そのため、図1で示す特定面は、ラインパイプ用電縫鋼管においても、同様に示される。したがって、ラインパイプ用鋼材がラインパイプ用電縫鋼管又はラインパイプ用熱延鋼板であるかに関わらず、{100}集積度は同様に測定される。
後述の製造工程を実施することにより、厚さ中央部の組織において、フェライト分率を60〜90%以上、有効結晶粒径を15μm以下、及び粗大結晶粒率を20%以下とすることができる。さらに、{100}集積度を1.50〜2.50とすることができる。その結果、DWTT保証温度を−30℃以下として低温靭性を高めることができる。
[管軸方向の降伏強度YS]
本実施形態のラインパイプ用鋼材がラインパイプ用電縫鋼管である場合、管軸方向の降伏強度YSは450〜540MPaであることが好ましい。降伏強度YSが450MPa以上であれば、ラインパイプ用電縫鋼管として要求される強度をより満足しやすい。降伏強度YSが540MPa以下であれば、ラインパイプ用電縫鋼管を用いて形成されたパイプラインを敷設する際の、曲げ変形又は座屈抑制の点で有利である。降伏強度YSのさらに好ましい下限は460MPaであり、さらに好ましくは480MPaである。降伏強度YSのさらに好ましい上限は530MPaであり、さらに好ましくは520MPaである。
[管軸方向の引張強度TS]
本実施形態のラインパイプ用鋼材がラインパイプ用電縫鋼管である場合、管軸方向の引張強度TSは510〜625MPaであることが好ましい。引張強度TSが510MPa以上であれば、ラインパイプ用電縫鋼管として要求される強度をより満足しやすい。引張強度TSが625MPa以下であれば、ラインパイプ用電縫鋼管を用いて形成されたパイプラインを敷設する際の、曲げ変形又は座屈抑制の点で有利である。引張強度TSのさらに好ましい下限は530MPaであり、さらに好ましくは540MPaであり、さらに好ましくは545MPaである。引張強度TSのさらに好ましい上限は620MPaであり、さらに好ましくは600MPaである。
降伏強度YS及び引張強度TSは、以下の方法で測定できる。ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から管周方向に90°ずれた位置から全厚の引張試験片を採取する。引張試験片は、引張試験片の長手方向がラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向に対して平行となる。引張試験片の横断面(引張試験片の幅方向及び肉厚方向に対して平行な断面)の形状は円弧状である。引張試験片の平行部の長さは50.8mmとし、平行部の幅は38.1mmとする。本実施形態においては、上記の引張試験片を用いて、API規格の5CTの規定に準拠して、常温にて引張試験を実施する。常温とはたとえば24℃である。引張試験の結果に基づいて、降伏強度YS及び引張強度TSを求める。
[製造方法]
上述のラインパイプ用鋼材の製造方法の一例を説明する。図4は、ラインパイプ用鋼材製造工程の一例を示すフロー図である。
図4を参照して、本製造方法では、上述した化学組成を満たす溶鋼を用いて、素材であるスラブを製造する(素材準備工程:S0)。製造されたスラブを加熱炉で加熱する(加熱工程:S1)。加熱したスラブを粗圧延機及び仕上げ圧延機で圧延して鋼板を製造する(圧延工程:S2)。圧延工程(S2)では、スラブに対して粗圧延を実施して、粗圧延板を製造する(粗圧延工程:S21)。粗圧延板に対して、仕上げ圧延機により仕上げ圧延を実施して、鋼板を製造する(仕上げ圧延工程:S22)。製造された鋼板をROT(ランアウトテーブル)で冷却する(ROT冷却工程:S3)。ROT冷却工程(S3)では、初めに、水冷装置で鋼板を強冷却する(強冷却工程S31)。強冷却後、鋼板に対して徐冷却を実施する(徐冷却工程:S32)。ROT冷却後の鋼板を巻き取る(巻取り工程:S4)。以上の製造工程により、ラインパイプ用熱延鋼板が製造される。
さらに、ラインパイプ用熱延鋼板を成形及び溶接して製管し、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する(製管工程:S5)。以下、それぞれの工程について詳しく説明する。
[素材準備工程(S0)]
上述の化学組成を有する素材を準備する。具体的には、上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼を用いて、素材(スラブ)を製造する。連続鋳造法により鋳片(スラブ)を製造してもよい。溶鋼を用いてインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延して素材(スラブ)を製造してもよい。
[加熱工程(S1)]
加熱工程(S1)では、製造されたスラブを加熱炉で加熱する。加熱炉でのスラブの加熱温度は1060〜1200℃であるのが好ましい。加熱温度が1060℃以上であれば、圧延後の析出強化が得られ、適切な強度が得られる。加熱温度が1200℃以下であれば、結晶粒(オーステナイト粒)の粗大化を抑制できる。加熱温度が1200℃以下であればさらに、次工程の粗圧延の最終スタンド出側の温度T0を適度に保つことができる。したがって、加熱温度は1060〜1200℃である。好ましい加熱温度の下限は1100℃である。好ましい加熱温度の上限は1160℃である。
[圧延工程(S2)]
圧延工程(S2)では、加熱工程(S1)で加熱されたスラブを、粗圧延機及び仕上げ圧延機を用いて熱間圧延して、鋼板にする。圧延工程(S2)は、粗圧延工程(S21)及び仕上げ圧延工程(S22)を備える。粗圧延機及び仕上げ圧延機ともに、一列に並んだ複数の圧延スタンドを備え、各圧延スタンドはロール対を備える。
[粗圧延工程(S21)]
粗圧延工程(S21)では、準備されたスラブに対して粗圧延を実施して、粗圧延板を製造する。
粗熱延機としては、たとえば複数のスタンドを備える多段式の熱延機が用いられる。たとえば、1〜3スタンドの2段式又は4段式熱延機によって往復又は一方向の圧延を行う方法が挙げられる。
粗圧延のトータル圧下率は、本実施形態の作用効果を得ることができれば特に限定されるものではないが、好ましくは、60〜75%である。
粗圧延終了直後から、次工程の仕上げ圧延開始までの時間は、粗圧延の最終スタンド出側の温度に応じて制御する。なお、粗圧延終了直後とは、粗圧延の最終スタンド出側から5m以内のことを意味する。
粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間は短いほうが好ましい。粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間が短ければ、粗圧延後、仕上げ圧延前の鋼材中において、再結晶しにくくなる。この場合、粗圧延で扁平化した結晶粒の形及び粒内に導入した加工歪を保持したまま、仕上げ圧延を実施できる。その結果、仕上げ圧延及び冷却後の組織において、平均結晶粒径の微細化と{100}面の特定面への集積がさらに促進しやすくなる。
粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間は、粗圧延の最終スタンド出側の温度に応じて変えることができる。より具体的には、粗圧延の最終スタンド出側の温度が低ければ、扁平化した結晶粒の形を保持しやすくなる。この場合、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間を長くできる。粗圧延の最終スタンド出側の温度が高ければ、扁平化した結晶粒の形を保持しにくくなる。この場合、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間は短くする必要がある。
粗圧延の最終スタンド出側の温度T0(℃)と、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間t0(s)とは、以下の式(3)を満たす。
0(s)≦−3.7T0+3686 (3)
F2=−3.7T0+3686と定義する。加熱温度が上記範囲内であり、t0(s)がF2以下であれば、再結晶せず、粗圧延で扁平化した結晶粒の形を保持しやすくなる。その結果、さらに、{100}面が特定面に集積しやすくなる。一方、t0(s)がF2を超えれば、再結晶するため、粗圧延で扁平化した結晶粒の形を保持できない。その結果、{100}面が特定面に集積しにくくなる。
[仕上げ圧延工程(S22)]
仕上げ圧延工程では、得られた粗圧延板に対して、仕上げ圧延機により仕上げ圧延を実施して、鋼板を製造する。
仕上げ圧延工程では、一列に並んだ複数の圧延スタンド(各圧延スタンドは一対のワークロールを有する)を含むタンデム圧延機を用いてタンデム圧延を実施して、複数のパスを実施してもよいし、一対のワークロールを有するゼンジミア圧延機等によるリバース圧延を実施して、複数のパスを実施してもよい。
仕上げ圧延工程において、仕上げ圧延機の最終スタンドの出側での鋼板の表面温度を、仕上げ圧延温度(℃)と定義する。仕上げ圧延温度(℃)は、低温であるのが好ましい。低温とは、具体的には、800℃以下である。仕上げ圧延温度が800℃以下であれば、圧延集合素組織及びその変態集合組織が発達する。これにより、{100}集積度を高めることができる。
ただし、仕上げ圧延温度(℃)は、Ar3変態温度以上であるのが好ましい。仕上げ圧延温度がAr3変態温度以上であれば、鋼板の圧延抵抗を低減させることができ、生産性が高まる。仕上げ圧延温度がAr3変態温度以上であればさらに、フェライト及びオーステナイトの二相域で鋼板が圧延されることを防ぐことができる。この場合、鋼板のミクロ組織が層状組織を形成するのを抑制することができ、機械的性質が高まる。したがって、仕上げ圧延温度はAr3変態温度以上であるのが好ましい。上述の化学組成を有する本実施形態のラインパイプ用鋼材において、Ar3変態温度は、700〜750℃である。
仕上げ圧延でのトータル圧下率は60〜80%とするのが好ましい。この場合、{100}集積度がさらに高まる。
以上より、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間t0(s)がF2以下であり、仕上げ圧延温度が低温であれば、{100}集積度が1.50以上となる。
仕上げ圧延後の鋼板の板厚は、12〜25mmである。本実施形態の製造方法を用いれば、板厚を12mm以上としても、優れた靭性が得られる。
[ROT冷却工程(S3)]
ROT(ランアウトテーブル)冷却工程(S3)では、圧延工程(S2)で製造された鋼板を冷却する。ROT冷却工程(S3)は、強冷却工程(S31)と徐冷却工程(S32)とを備えるのが好ましい。これにより、ラインパイプ用鋼材の厚さ中央部の組織において、フェライト分率が高まり、鋼の低温靭性が高まる。以下、この点について詳述する。
図3は、本実施の形態によるラインパイプ用鋼材のCCT線図の一例である。図3中、Fはフェライトノーズ、Pはパーライトノーズ、及びBはベイナイトノーズを示す。
図3に示すとおり、フェライトノーズはパーライトノーズ及びベイナイトノーズよりも高い位置に存在する。図3中の破線C2は従来の冷却工程による冷却曲線(冷却曲線C2)を示す。冷却曲線C2はパーライトノーズを経由してもよい。従来の冷却方法では、冷却過程において、フェライトノーズ、パーライトノーズ及び/又はベイナイトノーズのすべてを均一の速度で経由する。そのため、組織中にパーライト及び/又はベイナイトが多く生成し、組織中のフェライト分率が低下する。
そこで、本実施形態では、たとえば破線C1の冷却曲線(冷却曲線C1)に沿って冷却を行う。具体的には、冷却初期では、フェライトノーズ近傍まで強冷却を実施する(S31)。強冷却により鋼が急速に冷却されると、鋼内に多数の歪みが生じ、その結果、未再結晶組織に多数の核生成サイトが生じる。強冷却後、徐冷却を実施する(S32)。このとき、鋼の温度を図3中のフェライト領域内に保持する。これにより、強冷却時に生成した多数の核生成サイトから微細なフェライトが生成される。その結果、組織中のフェライト分率が高まり、かつ、結晶粒が微細化される。そのため、鋼の低温靭性が高まる。冷却曲線C1は、パーライトノーズを通過してもよい。
[強冷却工程(S31)]
初めに、鋼板を強冷却する。強冷却はたとえば、水冷装置による水冷である。水冷直前の鋼板の表面温度は特に限定しないが、Ar3変態温度以上であるのが好ましい。水冷直前の鋼板の表面温度がAr3変態温度以上であれば、粒成長により結晶粒が粗大化することによる強度の低下を防止できる。
強冷却工程(S31)での冷却速度をV1(℃/s)とする。V1は、熱伝導により計算される。V1は、板厚中央部で5℃/s以上であるのが好ましい。冷却速度V1が5℃/s未満の場合、冷却による過冷度が不足するため、フェライトの核生成サイトを十分に得ることができない。この場合、フェライト粒の生成量が少なくなるため、フェライト粒が粗大化し、鋼の低温靭性が低下する。したがって、冷却速度V1は5℃/s以上である。冷却速度V1の好ましい下限は7℃/sであり、さらに好ましくは8℃/sである。
強冷却工程(S31)では、鋼板の表面温度が580〜680℃になるまで、鋼板を冷却する。換言すれば、強冷却停止温度T1は580〜680℃である。強冷却停止温度T1が低すぎれば、CCT線図において、鋼板温度がフェライト領域を通過してパーライト領域及び/又はベイナイト領域に到達する。この場合、フェライト分率が低下し、鋼の低温靭性が低下する。一方、強冷却停止温度T1が高すぎれば、初析フェライトを強化するNbの析出が過時効となり、鋼の強度が低下する。強冷却停止温度T1を580〜680℃にすれば、後工程の徐冷却工程(S4)で徐冷却することにより、フェライト分率を60%以上とすることができ、鋼の低温靭性が高まる。好ましい強冷却停止温度T1は600〜670℃であり、さらに好ましくは610〜670℃である。
[徐冷却工程(S32)]
強冷却工程(S31)で強冷却した鋼板に対して、徐冷却を実施する。
徐冷却工程(S32)での冷却速度をV2(℃/s)とする。冷却速度V2は、板厚中央部で2.0〜4.0℃/sであるのが好ましい。冷却速度V2が遅すぎれば、次工程以降での、徐冷却停止温度T2及び巻取り温度T3が高くなりすぎる。この場合、結晶粒が粗大化し、鋼の低温靭性が低下する。冷却速度V2が速すぎれば、CCT線図において、鋼板温度がフェライト領域を通過して、パーライト領域及び/又はベイナイト領域に到達する。この場合、フェライト分率が低下し、鋼の低温靭性が低下する。したがって、冷却速度V2は2.0〜4.0℃/sである。
徐冷却工程(S32)では、鋼板の表面温度が500〜670℃になるまで、鋼板を冷却する。換言すれば、徐冷却停止温度T2は500〜670℃である。徐冷却停止温度T2が低すぎれば、CCT線図において、鋼板温度がフェライト領域を通過して、パーライト領域及び/又はベイナイト領域に到達する。この場合、フェライト分率が低下し、鋼の低温靭性が低下する。徐冷却停止温度T2が高すぎれば、鋼の強度が低下する。したがって、徐冷却停止温度T2は500〜670℃である。徐冷却停止温度T2の好ましい下限は580℃であり、さらに好ましくは590℃である。徐冷却停止温度T2の好ましい上限は650℃であり、さらに好ましくは635℃であり、さらに好ましくは620℃である。
[巻取り工程(S4)]
巻取り工程(S4)では、ROT冷却工程(S3)により冷却された鋼板を巻取り、コイル状のラインパイプ用熱延鋼板にする。
コイル状のラインパイプ用熱延鋼板は徐冷却工程終了後、空冷された後、巻取り処理される。巻取り時の鋼板の表面温度(以下、巻取り温度という)T3は、500〜650℃である。巻取り温度T3が低すぎれば、粗大結晶粒率が高くなり、鋼の低温靭性が低下する。一方、巻取り温度T3が高すぎれば、結晶粒が粗大化して、鋼の低温靭性が低下する。したがって、巻取り温度T3は、500〜650℃である。好ましいT3は510〜600℃であり、さらに好ましくは520〜560℃である。
以上の製造工程により、本実施形態のラインパイプ用熱延鋼板が製造される。
[製管工程(S5)]
コイル状のラインパイプ用熱延鋼板を巻き戻しながら、周知の方法により、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する。具体的には、ラインパイプ用熱延鋼板を連続した成形ロールによる曲げ加工により筒状(オープンパイプ)にする。続いて、オープンパイプの継ぎ目部、つまりラインパイプ用熱延鋼板の長手方向の両端面を電縫溶接法により溶接する。以上の工程により、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する。
以上の製造工程により製造されたラインパイプ用鋼材(ラインパイプ用熱延鋼板及びラインパイプ用電縫鋼管)では、厚さ中央部の組織において、フェライト分率を60〜90%以上、有効結晶粒径を15μm以下、及び粗大結晶粒率を20%以下とすることができる。さらに、{100}集積度を1.50〜2.50とすることができる。その結果、DWTT保証温度を−30℃以下として低温靭性を高めることができる。さらに、ラインパイプ用電縫鋼管における管軸方向において450〜540MPaの降伏応力、及び、510〜625MPaの引張強度を得ることができる。
表1に示す鋼A〜鋼Mの溶鋼を連続鋳造してスラブを製造した。
Figure 2020066745
鋼A〜鋼Mの複数のスラブを用いて、表2に示す試験番号1〜試験番号21のラインパイプ用電縫鋼管を製造した。
Figure 2020066745
具体的にはスラブを、加熱炉で、表2に示す加熱温度に加熱した。加熱されたスラブに対して粗圧延を実施した。粗圧延の最終スタンド出側での温度T0(℃)、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間t0(秒)及びF2は表2に示すとおりであった。粗圧延後、表2に示す仕上げ圧延温度で仕上げ圧延を行って、鋼板を製造した。未再結晶温度域での圧下率は、いずれの試験番号も60〜80%であった。仕上げ圧延温度は、試験番号19以外は、Ar3変態温度以上であった。
仕上げ圧延後の鋼板に対して、ROT冷却を実施した。仕上げ圧延終了から強冷却開始までの時間は20秒以内とした。ROT冷却工程においては、試験番号20以外は、5℃/s以上の冷却速度V1にて、580〜680℃である強冷却停止温度T1となるまで強冷却した。次いで、2.0〜4.0℃/sの冷却速度V2にて、500〜670℃である徐冷却停止温度T2(但し、T1>T2を満足する)となるまで徐冷却した。
以上の製造工程により鋼板を製造した。得られた鋼板を、500〜650℃の巻取り温度T3(但し、T2>T3を満足する)にて巻取り、ホットコイルの形態のラインパイプ用熱延鋼板を得た。
得られたラインパイプ用熱延鋼板を用いて上述の方法で製管し、外径が304.8〜660.4mm、肉厚12mm以上のラインパイプ用電縫鋼管を製造した。
[試験方法]
[強度試験]
各試験番号のラインパイプ用電縫鋼管から引張試験片を採取した。具体的には、ラインパイプ用電縫鋼管を軸方向に見てラインパイプ用電縫鋼管の溶接部から90°の位置(電縫鋼管から管周方向に90°ずれた位置)から全厚の管軸方向の引張試験片を採取した。引張試験片の横断面は弧状であり、引張試験片の長手方向は、鋼管の長手方向と平行であった。引張試験片のサイズは図5に示すとおりであり、平行部の長さは50.8mm、平行部の幅は38.1mmであった。図5中の数値は、試験片の対応する部位の寸法(単位はmm)を示す。引張試験片を用いて、API規格の5CTの規定に準拠して、常温にて引張試験を実施した。試験結果に基づいて、ラインパイプ用電縫鋼管の降伏強度YS(MPa)及び引張強度TS(MPa)を求めた。
[ミクロ組織]
ラインパイプ用電縫鋼管について、上述の方法に基づいて、EBSP−OIM(商標)を用いて、厚さ中央部のフェライト分率、有効結晶粒径、及び粗大結晶粒率を測定した。有効結晶粒径測定でのEBSP−OIM(商標)の測定条件は倍率:400倍、視野面積:200μm×500μm、測定ステップ:0.3μmとした。
EBSP−OIM(商標)における解析ソフトとして、TSLソリューションズ社製の「TSL OIM Analysis 7(商標)」を用いた。
また、上記フェライト分率の測定において、母材部の肉厚中央部の金属組織における残部(つまり、フェライト以外の組織)の種類も確認した。
[{100}集積度]
ラインパイプ用電縫鋼管について、上述の方法に基づいて、EBSP−OIM(商標)を用いて、{100}集積度を測定した。EBSP−OIM(商標)での測定条件は倍率:400倍、視野面積:200μm×500μm、測定ステップ:0.3μmとした。
[低温靭性試験]
各試験番号のラインパイプ用電縫鋼管からDWTT試験片を採取した。採取位置は引張り試験片と同じ溶接部から90°の位置であった。採取位置から管周方向に採取された円弧状の部材を展開して平板状とし、90°位置にノッチを加工した。DWTT試験片のサイズは図6に示すとおりであった。図6中の数値は、試験片の対応する部位の寸法(単位はmm)を示す。tは肉厚(単位はmm)を示す。DWTT試験片の長手方向は、ラインパイプ用電縫鋼管の円周方向に相当した。DWTT試験片に対して、ASTM E 436の規定に準拠して、DWTT試験を行った。延性破面率が85%となる最低温度(DWTT保証温度)を求めた。DWTT保証温度が、−30℃以下の場合、低温靭性が高いと評価した。
[試験結果]
表3に試験結果を示す。表3中、「P,B」の表記は、パーライト及びベイナイトの少なくとも一方であることを意味する。
Figure 2020066745
表1〜表3を参照して、試験番号1〜試験番号13の鋼の化学組成は適切であり、式(1)を満たした。さらに、いずれの試験番号の製造条件も適切であった。そのため、試験番号1〜試験番号13のフェライト分率は60〜90%であり、有効結晶粒径は15μm以下であり、粗大結晶粒率は20%以下であった。さらに、{100}集積度は1.50〜2.50であった。その結果、DWTT保証温度は−30℃以下であり、優れた低温靭性を示した。さらに、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向の降伏強度YSはいずれも450〜540MPaであり、引張強度TSはいずれも510〜625MPaであった。
一方、試験番号14では、製造条件は適切であったものの、F1が式(1)下限未満であった。そのため、結晶粒が粗大化し、有効結晶粒径が15μmを超えた。さらに、{100}集積度が1.50未満であった。そのため、DWTT保証温度が−30℃よりも高く、低温靭性が低かった。
試験番号15では、製造条件は適切であったものの、F1が式(1)の上限を超えた。そのため、フェライト分率が60%未満となり、ベイナイト主体組織となった。ベイナイト主体組織であるため、{100}集積度は1.50以上であったものの、有効結晶粒径が15μmを超え、粗大結晶粒率も20%を超えた。そのため、DWTT保証温度が−30℃より高く、低温靭性が低かった。さらに、ラインパイプ用電縫鋼管の降伏強度YSが540MPaを超え、引張強度TSが625MPaを超え、高すぎた。
試験番号16では、加熱温度が1200℃を超えた。そのため、粗圧延の最終スタンド出側での温度T0が高くなりすぎ、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間t0がF2を超えた。そのため、結晶粒が粗大化し、有効結晶粒径が15μmを超え、粗大結晶粒率も20%を超えた。さらに、{100}集積度が1.50未満であった。その結果、DWTT保証温度が−30℃よりも高くなり、低温靭性が低かった。
試験番号17では、加熱温度が1060℃未満であった。そのため、結晶粒が粗大化し、有効結晶粒径が15μmを超え、粗大結晶粒率も20%を超えた。さらに、{100}集積度が1.50未満であった。その結果、DWTT保証温度が−30℃よりも高くなり、低温靭性が低かった。
試験番号18では、仕上げ圧延温度が高すぎた。そのため、{100}集積度が1.50未満であった。その結果、DWTT保証温度が−30℃よりも高くなり、低温靭性が低かった。
試験番号19では、仕上げ圧延温度が低すぎた。そのため、粗大結晶粒率が20%を超えた。さらに、{100}集積度が1.50未満であった。その結果、DWTT保証温度が−30℃よりも高くなり、低温靭性が低かった。
試験番号20では、V1が5℃/s未満であった。そのため、結晶粒が粗大化し、有効結晶粒径が15μmを超え、粗大結晶粒率も20%を超えた。そのため、{100}集積度が1.50未満であった。その結果、DWTT保証温度が−30℃よりも高くなり、低温靭性が低かった。
試験番号21では、粗圧延終了直後から仕上げ圧延開始までの時間t0がF2を超えた。そのため、{100}集積度が1.50未満であった。その結果、DWTT保証温度が−30℃よりも高くなり、低温靭性が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.010〜0.060%、
    Si:0.05〜0.30%、
    Mn:0.50〜2.00%、
    P:0〜0.030%、
    S:0〜0.0100%、
    Al:0.010〜0.035%、
    N:0.0010〜0.0080%、
    Nb:0.010〜0.080%、
    Ti:0.005〜0.030%、
    Ni:0.001〜0.50%、
    Mo:0.05〜0.30%、
    O:0〜0.0030%、
    Ca:0〜0.0050%、
    V:0〜0.100%、
    Cr:0〜0.30%、
    Cu:0〜0.30%、
    Mg:0〜0.0050%、及び、
    希土類元素:0〜0.0100%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、
    厚さ中央部の組織において、フェライト分率が60〜90%であり、有効結晶粒径が15μm以下であり、結晶粒径が20μm以上の結晶粒の面積率である粗大結晶粒率が20%以下であり、
    圧延方向に垂直な面をRD面、圧延面をND面、前記RD面及び前記ND面に垂直な面をTD面としたとき、前記RD面とのなす角度が45°であり、かつ、前記TD面とのなす角度が45°である特定面において、{100}面の集積度が1.50〜2.50である、ラインパイプ用鋼材。
    0.300≦C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3+Nb/3≦0.380 (1)
    ここで、式(1)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載のラインパイプ用鋼材であって、
    前記化学組成は、質量%で、
    Ca:0超〜0.0050%、を含有する、ラインパイプ用鋼材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のラインパイプ用鋼材であって、
    前記化学組成は、質量%で、
    V:0超〜0.100%、
    Cr:0超〜0.30%、及び、
    Cu:0超〜0.30%、からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、ラインパイプ用鋼材。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のラインパイプ用鋼材であって、
    前記化学組成は、質量%で、
    Mg:0超〜0.0050%、及び、
    希土類元素:0超〜0.0100%、からなる群から選択される1種以上を含有する、ラインパイプ用鋼材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のラインパイプ用鋼材であって、
    前記ラインパイプ用鋼材は、ラインパイプ用熱延鋼板である、ラインパイプ用鋼材。
  6. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のラインパイプ用鋼材であって、
    前記ラインパイプ用鋼材は、ラインパイプ用電縫鋼管である、ラインパイプ用鋼材。
  7. 請求項6に記載のラインパイプ用電縫鋼管であって、
    管軸方向の降伏強度が450〜540MPaであり、管軸方向の引張強度が510〜625MPaである、ラインパイプ用電縫鋼管。
  8. 請求項7に記載のラインパイプ用電縫鋼管であって、
    肉厚が12〜25mmであり、外径が304.8〜660.4mmである、ラインパイプ用電縫鋼管。
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