以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[インクジェット捺染用インク]
まず、本発明のインクジェット捺染用インクについて説明する。
本発明のインクジェット捺染用インクは、水溶性染料と、水と、水溶性有機溶剤と、活性炭粒子とを含有している。そして、インクジェット捺染用インク中における前記水溶性染料の含有率が5.0質量%以上20.0質量%以下であり、かつ、前記活性炭粒子のうち、粒径が50nm以上1000nm以下の粒子が500個/mL以上300000個/mL以下の割合で含有されている。
このような構成により、保存安定性に優れ、高温環境下で保存した場合や長期間保存により、水溶性染料の分解物等の異物が発生した場合でも、当該異物を前記活性炭粒子が効果的に吸着することができ、インクジェット捺染用インクのインクジェット法による吐出特性に悪影響を与えることを効果的に防止することができる。その結果、インクジェット捺染用インクの保存安定性、吐出安定性を優れたものとすることができる。
これに対し、上記の条件を満たさない場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、インクジェット捺染用インク中における、粒径が50nm以上1000nm以下の活性炭粒子の含有量が少なすぎると、水溶性染料の分解物等の異物を十分に吸着することができない。その結果、インクジェット捺染用インクのインクジェット法による吐出特性の経時的な変化が生じやすくなり、インクジェット捺染用インクの保存安定性を十分に優れたものとすることができない。
また、インクジェット捺染用インク中における、粒径が50nm以上1000nm以下の活性炭粒子の含有量が多すぎると、当該活性炭粒子がインクジェット法による吐出安定性に大きな影響を与えてしまい、インクジェット捺染用インクの吐出安定性を十分に優れたものとすることができない。また、インクジェット捺染用インクを用いて製造される染色物の色味に悪影響を与える可能性がある。
また、インクジェット捺染用インク中における、活性炭粒子の個数が前述したのと同様であっても、当該活性炭粒子の粒径が小さすぎ、粒径が50nm以上1000nm以下の活性炭粒子の含有率が少なすぎる場合には、水溶性染料の分解物等の異物を十分に吸着することができない。その結果、インクジェット捺染用インクのインクジェット法による吐出特性の経時的な変化が生じやすくなり、インクジェット捺染用インクの保存安定性を十分に優れたものとすることができない。
また、インクジェット捺染用インク中における、活性炭粒子の個数が前述したのと同様であっても、当該活性炭粒子の粒径が大きすぎ、粒径が50nm以上1000nm以下の活性炭粒子の含有率が少なすぎる場合には、当該活性炭粒子がインクジェット法による吐出安定性に大きな影響を与えてしまい、インクジェット捺染用インクの吐出安定性を十分に優れたものとすることができない。
また、インクジェット捺染用インク中における、水溶性染料の含有率が低すぎると、インクジェット捺染用インクを用いて製造される染色物において十分な色濃度を確保することが困難となる。また、前記活性炭粒子を所定の含有量で含んでいたとしても、水溶性染料に対する前記活性炭粒子の含有率が相対的に高くなってしまい、インクジェット捺染用インクの吐出安定性を十分に優れたものとすることができない。
また、インクジェット捺染用インク中における、水溶性染料の含有率が多すぎると、前記活性炭粒子を所定の含有量で含んでいたとしても、水溶性染料の分解物等の異物を十分に吸着することができない。その結果、インクジェット捺染用インクのインクジェット法による吐出特性の経時的な変化が生じやすくなり、インクジェット捺染用インクの保存安定性を十分に優れたものとすることができない。
上述したように、インクジェット捺染用インク中における、粒径が50nm以上1000nm以下の活性炭粒子の含有量の下限は、500個/mLであればよいが、1000個/mLであるのが好ましく、2000個/mLであるのがより好ましく、3000個/mLであるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中における、粒径が50nm以上1000nm以下の活性炭粒子の含有量の上限は、300000個/mLであればよいが、100000個/mLであるのが好ましく、50000個/mLであるのがより好ましく、30000個/mLであるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性および保存安定性を、より高いレベルで両立することができる。
また、インクジェット捺染用インク中における水溶性染料の含有率の下限は、5.0質量%であればよいが、6.0質量%であるのが好ましく、7.0質量%であるのがより好ましく、8.0質量%であるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中における水溶性染料の含有率の上限は、20.0質量%であればよいが、18.0質量%であるのが好ましく、16.0質量%であるのがより好ましく、14.0質量%であるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性および保存安定性を、より高いレベルで両立しつつ、インクジェット捺染用インクを用いて製造される染色物において十分な色濃度を確保することができる。
<水溶性染料>
本発明のインクジェット捺染用インクは、水溶性染料を含んでいる。
水溶性染料は、一般に、水に対する溶解性に優れており、布帛、特に、セルロース繊維を含有する布帛に対する染着性に優れている。その一方で、水溶液状態では、分解反応等の不本意な反応を生じやすく、保存安定性が低いという問題点を有していたが、本発明によれば、水を含むインクジェット捺染用インク中においても、不本意な反応が進行することを効果的に防止することができ、水溶性染料が有する特長を十分に発揮させつつ、インクジェット捺染用インクの保存安定性、吐出安定性を優れたものとすることができる。
水溶性染料としては、例えば、各種の反応性染料、酸性染料、直接染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応性染料としては、例えば、C.I.リアクティブイエロー2,3,7,15,17,18,22,23,24,25,27,37,39,42,57,69,76,81,84,85,86,87,92,95,102,105,111,125,135,136,137,142,143,145,151,160,161,165,167,168,175,176、C.I.リアクティブオレンジ1,4,5,7,11,12,13,15,16,20,30,35,56,64,67,69,70,72,74,82,84,86,87,91,92,93,95,107、C.I.リアクティブレッド2,3,3:1,5,8,11,21,22,23,24,28,29,31,33,35,43,45,49,55,56,58,65,66,78,83,84,106,111,112,113,114,116,120,123,124,128,130,136,141,147,158,159,171,174,180,183,184,187,190,193,194,195,198,218,220,222,223,226,228,235、C.I.リアクティブバイオレット1,2,4,5,6,22,23,33,36,38、C.I.リアクティブブルー2,3,4,7,13,14,15,19,21,25,27,28,29,38,39,41,49,50,52,63,69,71,72,77,79,89,104,109,112,113,114,116,119,120,122,137,140,143,147,160,161,162,163,168,171,176,182,184,191,194,195,198,203,204,207,209,211,214,220,221,222,231,235,236、C.I.リアクティブグリーン8,12,15,19,21、C.I.リアクティブブラウン2,7,9,10,11,17,18,19,21,23,31,37,43,46、C.I.リアクティブブラック5,8,13,14,31,34,39等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸性染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー1,3,6,11,17,18,19,23,25,36,38,40,40:1,42,44,49,59,59:1,61,65,67,72,73,79,99,104,159,169,176,184,193,200,204,207,215,219,219:1,220,230,232,235,241,242,246、C.I.アシッドイエローオレンジ3,7,8,10,19,22,24,51,51S,56,67,74,80,86,87,88,89,94,95,107,108,116,122,127,140,142,144,149,152,156,162,166,168、C.I.アシッドレッド1,6,8,9,13,18,27,35,37,52,54,57,73,82,88,97,97:1,106,111,114,118,119,127,131,138,143,145,151,183,195,198,211,215,217,225,226,249,251,254,256,257,260,261,265,266,274,276,277,289,296,299,315,318,336,337,357,359,361,362,364,366,399,407,415、447、C.I.アシッドバイオレット17,19,21,42,43,47,48,49,54,66,78,90,97,102,109,126、C.I.アシッドブルー1,7,9,15,23,25,40,61:1,62,72,74,80,83,90,92,103,104,112,113,114,120,127,127:1,128,129,138,140,142,156,158,171,182,185,193,199,201,203,204,205,207,209,220,221,224,225,229,230,239,258,260,264,277:1,278,279,280,284,290,296,298,300,317,324,333,335,338,342,350、C.I.アシッドグリーン9,12,16,19,20,25,27,28,40,43,56,73,81,84,104,108,109、C.I.アシッドブラウン2,4,13,14,19,28,44,123,224,226,227,248,282,283,289,294,297,298,301,355,357,413、C.I.アシッドブラック1,2,3,24,24:1,26,31,50,52,52:1,58,60,63,63S,107,109,112,119,132,140,155,172,187,188,194,207,222等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
直接染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8,9,10,11,12,22,27,28,39,44,50,58,86,87,98,105,106,130,137,142,147,153、C.I.ダイレクトオレンジ6,26,27,34,39,40,46,102,105,107,118、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,24,31,54,62,69,79,80,81,83,84,89,95,212,224,225,226,227,239,242,243,254、C.I.ダイレクトバイオレット9,35,51,66,94,95、C.I.ダイレクトブルー1,15,71,76,77,78,80,86,87,90,98,106,108,160,168,189,192,193,199,200,201,202,203,218,225,229,237,244,248,251,270,273,274,290,291、C.I.ダイレクトグリーン26,28,59,80,85、C.I.ダイレクトブラウン44,44:1,106,115,195,209,210,212:1,222,223、C.I.ダイレクトブラック17,19,22,32,51,62,108,112,113,117,118,132,146,154,159,169等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、水溶性染料としては、酸性染料が好ましく、C.I.アシッドブラック172、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー87、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドレッド138、C.I.アシッドイエロー110、C.I.アシッドオレンジ95、C.I.アシッドオレンジ94、C.I.アシッドバイオレット97,C.I.アシッドブラック52、C.I.アシッドブラック52:1およびC.I.アシッドイエロー79よりなる群から選択される1種または2種以上であるのがより好ましい。
これらの水溶性染料は、優れた発色性を有する一方で、インクジェット捺染用インクの構成成分として用いたときに、長期保存等をした場合に、当該インクジェット捺染用インク中に異物を生じやすいという問題が、従来においては、より顕著に発生していた。これに対し、本発明では、インクジェット捺染用インクが、これらの水溶性染料を含む場合であっても、上記のような問題の発生を効果的に防止することができる。すなわち、インクジェット捺染用インクが、前記の水溶性染料を含んでいると、本発明による効果がさらに顕著に発揮される。
<水>
本発明のインクジェット捺染用インクは、水を含んでいる。
水は、前述した水溶性染料の溶媒として機能する。このような水を含むことにより、インクジェット捺染用インクは、好適な流動性、粘度を有するものとなり、インクジェット法による吐出を好適に行うことができる。また、インクジェット捺染用インクが付与される記録媒体である布帛へのダメージをより効果的に抑制できる。また、VOC(揮発性有機化合物)の問題を抑制する観点からも好ましい。
インクジェット捺染用インク中における水の含有率の下限は、特に限定されないが、40.0質量%であるのが好ましく、45.0質量%であるのがより好ましく、50.0質量%であるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中における水の含有率の上限は、特に限定されないが、80.0質量%であるのが好ましく、75.0質量%であるのがより好ましく、70.0質量%であるのがさらに好ましい。
これにより、前記水溶性染料等の含有率を比較的高いものとしつつ、インクジェット捺染用インクの吐出安定性をより優れたものとすることができる。
<水溶性有機溶剤>
本発明のインクジェット捺染用インクは、水に加えて、さらに、水溶性有機溶剤を含んでいる。
これにより、インクジェット捺染用インクの保湿性を向上させることができ、インクジェットヘッド等での乾燥等により、インクジェット捺染用インクの固形分が不本意に析出してしまうこと等をより効果的に防止することができる。また、インクジェット捺染用インクの粘度をより好適に調整することができる。このようなことから、インクジェット法によるインクジェット捺染用インクの吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
水溶性有機溶剤の1気圧下での沸点は、180℃以上300℃以下であるのが好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの保湿性をさらに向上させることができ、インクジェットヘッド等での乾燥等により、インクジェット捺染用インクの固形分が不本意に析出してしまうこと等をさらに効果的に防止することができる。このようなことから、インクジェット法によるインクジェット捺染用インクの吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。また、インクジェット捺染用インクを吐出した後、必要時においては、比較的容易に揮発させることができ、製造される染色物中に、水溶性有機溶剤が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。
水溶性有機溶剤としては、分子内に少なくとも1個の水酸基を有する化合物を用いることができ、例えば、アルキルモノアルコール類;アルキルジオール類;グリセリン;トリエタノールアミン;トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、水溶性有機溶剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエタノールアミンが好ましく、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエタノールアミンがより好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの粘度が必要以上に上昇することをより効果的に防止しつつ、インクジェット捺染用インクの保湿性をより優れたものとすることができ、インクジェット法によるインクジェット捺染用インクの吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
インクジェット捺染用インク中における水溶性有機溶剤の含有率の下限は、特に限定されないが、4.0質量%であるのが好ましく、9.0質量%であるのがより好ましく、11.0質量%であるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中における水溶性有機溶剤の含有率の上限は、特に限定されないが、30.0質量%であるのが好ましく、25.0質量%であるのがより好ましく、20.0質量%であるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの粘度をより好適なものとしつつ、インクジェット捺染用インクの保湿性をより好適に向上させることができる。その結果、インクジェット法によるインクジェット捺染用インクの吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
また、インクジェット捺染用インク中における水の含有率をXW[質量%]、インクジェット捺染用インク中における水溶性有機溶剤の含有率をXH[質量%]としたとき、XH/XWの下限は、特に限定されないが、0.020であるのが好ましく、0.050であるのがより好ましく、0.10であるのがさらに好ましい。また、XH/XWの上限は、特に限定されないが、0.40であるのが好ましく、0.35であるのがより好ましく、0.30であるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの粘度をより好適なものとしつつ、インクジェット捺染用インクの保湿性をより好適に向上させることができる。その結果、インクジェット法によるインクジェット捺染用インクの吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
<活性炭粒子>
前述したように、本発明のインクジェット捺染用インクは、活性炭粒子を含んでいる。
インクジェット捺染用インク中において、活性炭粒子は、水溶性染料の分解物等の異物を吸着する吸着剤として機能する。
活性炭粒子の条件を以下のようにすることにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性を確保しつつ、前述の異物の吸着機能を有効に発揮することができる。
前述したように、本発明のインクジェット捺染用インクは、粒径が50nm以上1000nm以下の活性炭粒子を所定の割合で含有していればよいが、粒径が50nm以上200nm以下の活性炭粒子を2000個/mL以上30000個/mL以下の割合で含有しているのが好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性をより優れたものとしつつ、高温環境下で保存した場合や長期間保存により、水溶性染料の分解物等の異物が発生した場合でも、当該異物を活性炭粒子がより効果的に吸着することができる。したがって、インクジェット捺染用インクの保存安定性および吐出安定性を、より高いレベルで両立することができる。
上記のように、インクジェット捺染用インク中における、粒径が50nm以上200nm以下の活性炭粒子の含有量の下限は、2000個/mLであるのが好ましいが、2500個/mLであるのがより好ましく、3000個/mLであるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中における、粒径が50nm以上200nm以下の活性炭粒子の含有量の上限は、30000個/mLであるのが好ましいが、25000個/mLであるのがより好ましく、20000個/mLであるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
インクジェット捺染用インク中における活性炭粒子の平均粒径の下限は、100nmであるのが好ましく、110nmであるのがより好ましく、120nmであるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中における活性炭粒子の平均粒径の上限は、600nmであるのが好ましく、550nmであるのがより好ましく、500nmであるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性をより優れたものとしつつ、高温環境下で保存した場合や長期間保存により、水溶性染料の分解物等の異物が発生した場合でも、当該異物を活性炭粒子がより効果的に吸着することができる。したがって、インクジェット捺染用インクの保存安定性および吐出安定性を、より高いレベルで両立することができる。
なお、本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、個数平均の平均粒径のことを指す。平均粒径は、例えば、マイクロトラックベル社 粒度分布測定装置 MT3300 EXIIを用いた測定により求めることができる。
インクジェット捺染用インク中に含まれる活性炭粒子の最大粒径の上限は、10000nmであるのが好ましく、9000nmであるのがより好ましく、8000nmであるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中に含まれる活性炭粒子の最大粒径の下限は、特に限定されないが、1500nmであるのが好ましく、2000nmであるのがより好ましく、2500nmであるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性をより優れたものとしつつ、高温環境下で保存した場合や長期間保存により、水溶性染料の分解物等の異物が発生した場合でも、当該異物を活性炭粒子がより効果的に吸着することができる。したがって、インクジェット捺染用インクの保存安定性および吐出安定性を、より高いレベルで両立することができる。
なお、活性炭粒子の最大粒径は、例えば、マイクロトラックベル社 粒度分布測定装置 MT3300 EXIIを用いた測定により求めることができる。
インクジェット捺染用インク1mL当たりに含まれる粒径が2000nm以上の活性炭粒子の上限は、60000個であるのが好ましく、50000個であるのがより好ましく、40000個であるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク1mL当たりに含まれる粒径が2000nm以上の活性炭粒子の下限は、特に限定されないが、10個であるのが好ましく、50個であるのがより好ましく、100個であるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性をより優れたものとしつつ、高温環境下で保存した場合や長期間保存により、水溶性染料の分解物等の異物が発生した場合でも、当該異物を活性炭粒子がより効果的に吸着することができる。したがって、インクジェット捺染用インクの保存安定性および吐出安定性を、より高いレベルで両立することができる。
<尿素類>
本発明のインクジェット捺染用インクは、尿素類を含んでいてもよい。
尿素類は、インクジェット捺染用インクの保湿剤として機能したり、水溶性染料の染着性を向上させる染着助剤として機能したりする。
尿素類としては、例えば、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
インクジェット捺染用インク中における尿素類の含有率の下限は、0.50質量%であるのが好ましく、1.0質量%であるのがより好ましく、1.5質量%であるのがさらに好ましい。また、インクジェット捺染用インク中における尿素類の含有率の上限は、10.0質量%であるのが好ましく、8.0質量%であるのがより好ましく、6.0質量%であるのがさらに好ましい。
これにより、前記水溶性染料等の含有率が低くなることを防止し、これらの機能を十分に発揮させつつ、前述したような尿素類を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができる。
<その他の成分>
本発明のインクジェット捺染用インクは、前述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、これらの成分を「その他の成分」とも言う。
このような成分としては、例えば、水溶性染料以外の染料、顔料等の各種着色剤;pH調整剤;エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等のキレート化剤;安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンゾイソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−3−メチルフェノール等の防腐剤・防かび剤;ベンゾトリアゾール等の防錆剤;防炎剤;各種分散剤;界面活性剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;酸素吸収剤;溶解助剤;浸透剤等が挙げられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば、分子内にイソチアゾリン環構造を有する化合物を好適に用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。
その他の成分の含有率は、6.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましい。
なお、その他の成分の含有率の下限は、0質量%である。
本発明のインクジェット捺染用インクの25℃における表面張力の下限は、20mN/mであるのが好ましく、21mN/mであるのがより好ましく、23mN/mであるのがさらに好ましい。また、本発明のインクジェット捺染用インクの25℃における表面張力の上限は、50mN/mであるのが好ましく、40mN/mであるのがより好ましく、30mN/mであるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェットヘッドのノズルの目詰まり等がより生じにくくなり、インクジェット捺染用インクの吐出安定性がより向上する。また、ノズルの詰まりを生じた場合でも、ノズルにキャップをすることによる回復性をより優れたものとすることができる。
なお、表面張力としては、ウィルヘルミー法により測定した値を採用することができる。表面張力の測定は、表面張力計(例えば、協和界面科学社製、CBVP−7等)を用いることができる。
本発明のインクジェット捺染用インクの25℃における粘度の下限は、2mPa・sであるのが好ましく、3mPa・sであるのがより好ましく、4mPa・sであるのがさらに好ましい。また、本発明のインクジェット捺染用インクの25℃における粘度の上限は、10mPa・sであるのが好ましく、8mPa・sであるのがより好ましく、6mPa・sであるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット捺染用インクのインクジェット法による吐出安定性がより優れたものとなる。
なお、粘度は、振動式粘度計を用いたJIS Z8809に準拠した測定により求めることができる。
本発明のインクジェット捺染用インクは、インクジェット法による吐出に供されるものであればよく、インクジェット法としては、例えば、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式等のオンデンマンド方式等が挙げられるが、本発明のインクジェット捺染用インクは、特に、ピエゾ振動子を用いたインクジェットヘッドより吐出されるものであるのが好ましい。
これにより、インクジェットヘッド内での水溶性染料の変性をより効果的に防止し、インクジェット法による吐出安定性をより優れたものとすることができる。
また、本発明のインクジェット捺染用インクは、圧力室内のインクジェット捺染用インクを循環させる循環路を備えたインクジェットヘッドにより吐出されるものであるのが好ましい。
循環に供されたインクジェット捺染用インクは、含有する成分がむらなく均一に存在することとなる。そして、インクジェット捺染用インクを循環に供した後にインクジェットヘッドより吐出することにより、幅広い粘度範囲のインクジェット捺染用インクを好適に吐出することができ、特に、粘度が比較的高いインクジェット捺染用インクを好適に吐出することができる。その結果、インクジェット法による吐出安定性をより確実に優れたものとすることができる。
インクジェット捺染用インクの循環の程度は、特に限定されないが、以下に述べるような条件を満足するのが好ましい。
前記インクジェットヘッドの最大吐出量に対するインクジェット捺染用インクの循環流量の比率の下限は、0.05であるのが好ましく、0.07であるのがより好ましく、0.10であるのがさらに好ましい。また、前記インクジェットヘッドの最大吐出量に対するインクジェット捺染用インクの循環流量の比率の上限は、20であるのが好ましく、15であるのがより好ましく、10であるのがさらに好ましい。
これにより、ノズル近傍のインクの局所的な乾燥を効果的に防止できるので、インクジェット捺染用インクの固形分が不本意に析出してしまうこと等をさらに効果的に防止することができる。このようなことから、インクジェット法による吐出安定性をさらに確実に優れたものとすることができる。
なお、本発明のインクジェット捺染用インクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェット装置については、後に詳述する。
[インクジェット捺染用インクセット]
次に、本発明に係るインクジェット捺染用インクセットについて説明する。
本発明に係るインクジェット捺染用インクセットは、複数のインクジェット捺染用インクを備えている。そして、インクジェット捺染用インクセットを構成する少なくとも1つのインクジェット捺染用インクが、前述した本発明のインクジェット捺染用インクである。
このような構成により、保存安定性、吐出安定性に優れたインクジェット捺染用インクを備えるインクセットを提供することができる。
本発明に係るインクジェット捺染用インクセットを構成する複数のインクジェット捺染用インクのうち、少なくとも1つが前述した本発明のインクジェット捺染用インクであればよく、前述した本発明のインクジェット捺染用インクではないインクジェット捺染用インクを備えていてもよいが、本発明に係るインクジェット捺染用インクセットは、本発明のインクジェット捺染用インクを2つ以上備えているのが好ましく、本発明のインクジェット捺染用インクを3つ以上備えているのがより好ましい。
特に、色の三原色、すなわち、シアン、マゼンタおよびイエローに対応する3種について、本発明のインクジェット捺染用インクを備えているのが好ましい、なお、色の三原色については、その色濃度によって、さらに細分化されていてもよい。例えば、シアン、マゼンタおよびイエローに加え、ライトシアン、ライトマゼンタおよびライトイエローを備えていてもよい。
また、本発明に係るインクジェット捺染用インクセットは、上記の有彩色のインクに加えて、無彩色のインク、より具体的には、黒色のインクを、さらに備えているのが好ましい。この場合、当該無彩色のインクが、前述した本発明のインクジェット捺染用インクであるのが好ましい。
[インクジェット捺染方法]
次に、本発明に係るインクジェット捺染方法について説明する。
本発明に係るインクジェット捺染方法は、布帛に対し、本発明のインクジェット捺染用インクをインクジェット方式により付与する吐出工程と、前記布帛に対し、付与された前記インクジェット捺染用インクの染着処理する染着処理工程とを有する。
これにより、インクジェット捺染用インクを所望のパターンで好適に吐出することができ、布帛に対する染着性に優れ、所望のパターンで設けられた染色部を有する染色物を好適に製造することができる。
<吐出工程>
吐出工程では、インクジェット法により本発明のインクジェット捺染用インクを液滴として吐出し、記録媒体である布帛に、当該液滴を付着させる。これにより、所望の像を形成する。像の形成には、複数種のインクジェット捺染用インク、例えば、本発明のインクジェット捺染用インクを用いてもよい。
インクジェット捺染用インクを吐出するインクジェット法は、いずれの方式でもよく、例えば、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式等のオンデンマンド方式等が挙げられる。
なお、インクジェット捺染用インクの吐出に用いるインクジェット装置については、後に詳述する。
<染着処理工程>
染着処理工程では、記録媒体である布帛に付着した水溶性染料を定着させる。
染着処理工程は、通常、高温加湿の条件で行う。
染着処理工程での処理温度の下限は、特に限定されないが、90℃であるのが好ましく、95℃であるのがより好ましく、98℃であるのがさらに好ましい。また、染着処理工程での処理温度の上限は、特に限定されないが、150℃であるのが好ましく、130℃であるのがより好ましく、120℃であるのがさらに好ましい。
これにより、布帛やインクジェット捺染用組成物の構成成分等の不本意な変性、劣化等をより効果的に防止しつつ、より効率よく水溶性染料を定着させることができる。
染着処理工程の処理時間の下限は、特に限定されないが、1分間であるのが好ましく、2分間であるのがより好ましく、3分間であるのがさらに好ましい。また、染着処理工程の処理時間の上限は、特に限定されないが、120分間であるのが好ましく、90分間であるのがより好ましく、60分間であるのがさらに好ましい。
これにより、布帛に対する水溶性染料の染着性をより優れたものとしつつ、染色物の生産性をより優れたものとすることができる。
染着処理工程での高温加湿処理には、各種のスチーマー、例えば、マチス社製、スチーマーDHe型等を用いることができる。
本発明に係るインクジェット捺染方法では、必要に応じて、吐出工程、染着処理工程以外の工程を有していてもよい。
例えば、吐出工程に先立って、記録媒体としての布帛に対して前処理を施す前処理工程を有していてもよい。
前処理には、例えば、公知の前処理剤を用いることができるが、前処理剤は、一般に、糊剤、pH調整剤およびヒドロトロピー剤を含んでいる。
糊剤としては、例えば、グア、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ナトリウム、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、アルギン誘導体、あるいは、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊、エマルジョン等を好適に用いることができる。
また、pH調整剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム等の酸アンモニウム塩等を好適に用いることができる。
また、ヒドロトロピー剤としては、例えば、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等のアルキル尿素等の各種の尿素類を用いることができる。
なお、前処理剤は、例えば、さらに、シリカを含んでいてもよい。
また、例えば、染着処理工程の後、必要に応じて、染料が定着された布帛に対する洗浄処理を行う洗浄工程を有していてもよい。
洗浄工程は、例えば、染料が定着された布帛を水道水で揉み洗いした後に、40℃以上70℃以下の温水中に、ノニオン性ソーピング剤を添加した洗浄液中に、適宜撹拌しながら浸漬することにより行うことができる。洗浄液中への浸漬時間は、例えば、5分間以上60分間以下とすることができる。その後、洗浄液中に水道水を入れながら揉み洗いをすることにより洗浄剤を除去することができる。
<布帛>
次に、インクジェット捺染用インクが付与される記録媒体としての布帛について説明する。
布帛としては、例えば、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等の各種織物を用いることができる。
また、布帛を構成する繊維の太さは、例えば、10d以上100d以下とすることができる。
布帛を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維およびこれらの繊維を2種以上用いた混紡品等が挙げられる。また、これらとレーヨン等の再生繊維あるいは木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡品を用いてもよい。
[インクジェット装置]
次に、本発明に係るインクジェット装置について説明する。
本発明に係るインクジェット装置は、本発明のインクジェット捺染用インクを吐出するインクジェットヘッドを備える。
これにより、インクジェット捺染用インクの吐出安定性を優れたものとし、水溶性染料の染着性に優れた染色物の製造に好適に用いることができるインクジェット装置を提供することができる。
インクジェットヘッドは、ピエゾ振動子を用いたものであるのが好ましい。
これにより、インクジェットヘッド内での水溶性染料の変性をより効果的に防止し、インクジェット法による吐出安定性をより優れたものとすることができる。
インクジェットヘッドは、圧力室内の前記インクジェット捺染用インクを循環させる循環路を備えているのが好ましい。
これにより、インクジェット法による吐出安定性をより確実に優れたものとすることができる。
インクジェットヘッドの最大吐出量に対するインクジェット捺染用インクの循環流量の比率の下限は、0.05であるのが好ましく、0.07であるのがより好ましく、0.10であるのがさらに好ましい。また、インクジェットヘッドの最大吐出量に対するインクジェット捺染用インクの循環流量の比率の上限は、20であるのが好ましく、15であるのがより好ましく、10であるのがさらに好ましい。
これにより、インクジェット法による吐出安定性をさらに確実に優れたものとすることができる。
以下、本発明に係るインクジェット装置の好適な実施形態である第1実施形態および第2実施形態について、添付図面を参照しつつより詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のインクジェット装置の構成図である。図2は、図1に示すインクジェット装置が有するインクジェットヘッドの断面図である。図3は、図2に示すインクジェットヘッドの部分的な分解斜視図である。図4は、図2に示すインクジェットヘッドが有する圧電素子の断面図である。図5は、図2に示すインクジェットヘッドにおけるインクの循環の説明図である。図6は、図2に示すインクジェットヘッドのうち循環インク室の近傍の平面図および断面図である。
本実施形態のインクジェット装置100は、インクを布帛12に吐出するインクジェット方式の印刷装置である。インクジェット装置100には、インクを貯留するインク容器14が設置される。例えば、インクジェット装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、またはインクを補充可能なインクタンクがインク容器14として利用される。インクジェット装置100は、例えば、複数種のインクに対応する複数個のインク容器14を備えていてもよい。
インクジェット装置100は、制御ユニット20と搬送機構22と移動機構24とインクジェットヘッド26とを備えている。制御ユニット20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含み、インクジェット装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構22は、制御ユニット20による制御のもとで布帛12をY方向に搬送する。
移動機構24は、制御ユニット20による制御のもとでインクジェットヘッド26をX方向に往復させる。X方向は、布帛12が搬送されるY方向に交差する方向であり、Y方向に直交する方向である。移動機構24は、インクジェットヘッド26を収容する箱型の搬送体242と、搬送体242が固定された搬送ベルト244とを備えている。なお、複数のインクジェットヘッド26を搬送体242に搭載した構成や、インク容器14をインクジェットヘッド26とともに搬送体242に搭載した構成であってもよい。
インクジェットヘッド26は、インク容器14から供給されるインクを、制御ユニット20による制御のもとで複数のノズルNから布帛12に吐出する。搬送機構22による布帛12の搬送と搬送体242の反復的な往復とに並行して、各インクジェットヘッド26が布帛12にインクを吐出することで、布帛12の表面に所望の画像が形成される。なお、X−Y平面に垂直な方向を以下ではZ方向と表記する。各インクジェットヘッド26によるインクの吐出方向、典型的には鉛直方向が、Z方向に相当する。
インクジェットヘッド26の複数のノズルNはY方向に配列されている。複数のノズルNは、X方向に相互に間隔をあけて並設された第1列L1と第2列L2とに区分される。第1列L1および第2列L2の各々は、Y方向に直線状に配列された複数のノズルNの集合である。なお、第1列L1と第2列L2との間で各ノズルNのY方向に位置を相違させること、例えば、千鳥配置やスタガ配置とすること等も可能であるが、以下、第1列L1と第2列L2とで各ノズルNのY方向の位置を一致させた構成である場合について説明する。インクジェットヘッド26においてY方向に平行な中心軸を通過するとともにZ方向に平行な平面、すなわち、Y−Z平面を以下の説明では「中心面O」と表記する。
図2、図3に示すように、インクジェットヘッド26は、第1ノズルとしての第1列L1の各ノズルNに関連する要素と、第2ノズルとしての第2列L2の各ノズルNに関連する要素とが中心面Oを挟んで面対称に配置された構造である。すなわち、インクジェットヘッド26のうち中心面Oを挟んでX方向の正側の部分である第1部分P1と、X方向の負側の部分である第2部分P2とで、構造は実質的に共通する。第1列L1の複数のノズルNは第1部分P1に形成され、第2列L2の複数のノズルNは第2部分P2に形成されている。中心面Oは、第1部分P1と第2部分P2との境界面に相当する。
図2、図3に示すように、インクジェットヘッド26は、流路形成部30を備えている。流路形成部30は、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する構造体である。流路形成部30は、連通板である第1流路基板32と圧力室形成板である第2流路基板34とが積層して構成されている。第1流路基板32および第2流路基板34の各々は、Y方向に長尺な板状部材である。第1流路基板32のうちZ方向の負側の表面Faに、例えば、接着剤を利用して第2流路基板34が設置される。
図2に示すように、第1流路基板32の表面Faの面上には、第2流路基板34のほか、振動部42と複数の圧電素子44と保護部材46と筐体部48とが設置されている。他方、第1流路基板32のうちZ方向の正側、すなわち、表面Faとは反対側の表面Fbにはノズルプレート52と吸振体54とが設置されている。インクジェットヘッド26の各要素は、概略的には第1流路基板32や第2流路基板34と同様にY方向に長尺な板状部材であり、例えば、接着剤により相互に接合される。第1流路基板32と第2流路基板34とが積層される方向や第1流路基板32とノズルプレート52とが積層される方向を、Z方向として把握することも可能である。
ノズルプレート52は、複数のノズルNが形成された板状部材であり、例えば、接着剤を利用して第1流路基板32の表面Fbに設置されている。複数のノズルNの各々は、インクを通過させる円形状の貫通孔である。ノズルプレート52には、第1列L1を構成する複数のノズルNと第2列L2を構成する複数のノズルNとが形成されている。具体的には、ノズルプレート52のうち中心面OからみてX方向の正側の領域に、第1列L1の複数のノズルNがY方向に沿って形成され、X方向の負側の領域に、第2列L2の複数のノズルNがY方向に沿って形成されている。ノズルプレート52は、第1列L1の複数のノズルNが形成された部分と第2列L2の複数のノズルNが形成された部分とにわたり連続する単体の板状部材である。
図2、図3に示すように、第1流路基板32には、第1部分P1および第2部分P2の各々について、空間Raと複数の供給路61と複数の連通路63とが形成される。空間Raは、平面視で、すなわちZ方向からみて、Y方向に沿う長尺状に形成された開口であり、供給路61および連通路63はノズルN毎に形成された貫通孔である。複数の連通路63は平面視でY方向に配列し、複数の供給路61は、複数の連通路63の配列と空間Raとの間でY方向に配列している。複数の供給路61は、空間Raに共通に連通している。また、任意の1個の連通路63は、当該連通路63に対応するノズルNに平面視で重なっている。具体的には、第1部分P1の任意の1個の連通路63は、第1列L1のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通している。同様に、第2部分P2の任意の1個の連通路63は、第2列L2のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通している。
図2、図3に示すように、第2流路基板34は、第1部分P1および第2部分P2の各々について複数の圧力室Cが形成された板状部材である。複数の圧力室Cは、Y方向に配列している。各圧力室Cは、ノズルN毎に形成されて平面視でX方向に沿う長尺状の空間である。
図2に示すように、第2流路基板34のうち第1流路基板32とは反対側の表面には振動部42が設置されている。振動部42は、弾性的に振動可能な板状部材、すなわち、振動板である。なお、所定の板厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について板厚方向の一部を選択的に除去することで、第2流路基板34と振動部42とを一体に形成することも可能である。
図2に示すように、第1流路基板32の表面Faと振動部42とは、各圧力室Cの内側で相互に間隔をあけて対向している。圧力室Cは、第1流路基板32の表面Faと振動部42との間に位置する空間であり、当該空間に充填されたインクに圧力変化を発生させる。各圧力室Cは、例えば、X方向を長手方向とする空間であり、ノズルN毎に個別に形成されている。第1列L1および第2列L2の各々について、複数の圧力室CがY方向に配列している。図2、図3に示すように、任意の1個の圧力室Cのうち中心面O側の端部は、平面視で連通路63に重なり、中心面Oとは反対側の端部は平面視で供給路61に重なる。したがって、第1部分P1および第2部分P2の各々において、圧力室Cは、連通路63を介してノズルNに連通するとともに、供給路61を介して空間Raに連通している。
図2に示すように、振動部42のうち圧力室Cとは反対側の面上には、第1部分P1および第2部分P2の各々について、相異なるノズルNに対応する複数の圧電素子44が設置されている。圧電素子44は、駆動信号の供給により変形する受動素子である。複数の圧電素子44は、各圧力室Cに対応するようにY方向に配列している。任意の1個の圧電素子44は、図4に示すように、相互に対向する第1電極441と第2電極442との間に圧電体層443を介在させた積層体である。なお、第1電極441および第2電極442の一方を、複数の圧電素子44にわたり連続する電極、すなわち、共通電極とすることもできる。第1電極441と第2電極442と圧電体層443とが平面視で重なる部分が圧電素子44として機能する。なお、駆動信号の供給により変形する部分、すなわち、振動部42を振動させる能動部を圧電素子44として画定することもできる。このように、本実施形態に係るインクジェットヘッド26は第1圧電素子と第2圧電素子とを備えている。例えば、第1圧電素子は、中心面OからみてX方向の一方側の圧電素子44であり、第2圧電素子は、中心面OからみてX方向の他方側の圧電素子44である。圧電素子44の変形に連動して振動部42が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することで、圧力室Cに充填されたインクが連通路63とノズルNとを通過して吐出される。
保護部材46は、複数の圧電素子44を保護するための板状部材であり、振動部42の表面に設置される。保護部材46のうち振動部42側の表面に形成された凹部に複数の圧電素子44が収容されている。
振動部42のうち流路形成部30とは反対側の表面には配線基板28の端部が接合されている。配線基板28は、制御ユニット20とインクジェットヘッド26とを電気的に接続する複数の図示しない配線が形成された可撓性の実装部品である。配線基板28のうち、保護部材46に形成された開口部と筐体部48に形成された開口部とを通過して外部に延出した端部が制御ユニット20に接続されている。例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板28が好適に採用される。
筐体部48は、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するためのケースである。筐体部48のうちZ方向の正側の表面が、例えば、接着剤で第1流路基板32の表面Faに接合されている。
図2に示すように、筐体部48には、第1部分P1および第2部分P2の各々について空間Rbが形成されている。筐体部48の空間Rbと第1流路基板32の空間Raとは、相互に連通する。空間Raと空間Rbとで構成される空間は、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するインク貯留室Rとして機能する。インク貯留室Rは、複数のノズルNについて共用される共通インク室である。第1部分P1および第2部分P2の各々にインク貯留室Rが形成される。第1部分P1のインク貯留室Rは、中心面OからみてX方向の正側に位置し、第2部分P2のインク貯留室Rは、中心面OからみてX方向の負側に位置する。筐体部48のうち第1流路基板32とは反対側の表面には、インク容器14から供給されるインクをインク貯留室Rに導入するための導入口482が形成されている。
図2に示すように、第1流路基板32の表面Fbには、第1部分P1および第2部分P2の各々について吸振体54が設置されている。吸振体54は、インク貯留室R内のインクの圧力変動を吸収する可撓性のフィルムである。図3に示すように、吸振体54は、第1流路基板32の空間Raと複数の供給路61とを閉塞するように第1流路基板32の表面Fbに設置されてインク貯留室Rの壁面を構成する。
図2に示すように、第1流路基板32のうちノズルプレート52に対向する表面Fbには循環インク室65が形成されている。循環インク室65は、平面視でY方向に延在する長尺状の有底孔である。第1流路基板32の表面Fbに接合されたノズルプレート52により、循環インク室65の開口は閉塞される。
図5に示すように、循環インク室65は、第1列L1および第2列L2に沿って複数のノズルNにわたり連続する。具体的には、第1列L1の複数のノズルNの配列と第2列L2の複数のノズルNの配列との間に循環インク室65が形成されている。したがって、図2に示すように、循環インク室65は、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する。以上のように、本実施形態の流路形成部30は、第1部分P1における圧力室Cである第1圧力室および連通路63である第1連通路と、第2部分P2における圧力室Cである第2圧力室および連通路63である第2連通路と、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する循環インク室65とが形成された構造体である。図2に示すように、第1実施形態の流路形成部30は、循環インク室65と各連通路63との間を仕切る隔壁部69を含む。
なお、前述の通り、第1部分P1および第2部分P2の各々において複数の圧力室Cおよび複数の圧電素子44がY方向に配列している。したがって、第1部分P1および第2部分P2の各々における複数の圧力室Cまたは複数の圧電素子44にわたり連続するように、循環インク室65がY方向に延在すると換言することができる。また、図2、図3に示すように、循環インク室65とインク貯留室Rとが相互に間隔をあけてY方向に延在し、当該間隔内に圧力室Cと連通路63とノズルNとが位置するということもできる。
図6に示すように、1個のノズルNは、第1区間n1と第2区間n2とを含んでいる。第1区間n1と第2区間n2とは、同軸に形成されて相互に連通する円形状の空間である。第2区間n2は、第1区間n1からみて流路形成部30側に位置する。第2区間n2の内径d2は、第1区間n1の内径d1よりも大きい。以上のように各ノズルNを階段状に形成した構成によれば、各ノズルNの流路抵抗を所望の特性に設定し易いという利点がある。また、図6に示すように、各ノズルNの中心軸Qaは、連通路63の中心軸Qbからみて循環インク室65とは反対側に位置する。
図6に示すように、ノズルプレート52のうち流路形成部30に対向する表面には、第1部分P1および第2部分P2の各々について複数の循環路72が形成されている。第1循環路である第1部分P1の複数の循環路72は、第1列L1の複数のノズルNに1対1に対応する。また、第2循環路である第2部分P2の複数の循環路72は、第2列L2の複数のノズルNに1対1に対応する。
各循環路72は、X方向に延在する長尺状の有底孔であり、インクを流通させる流路として機能する。循環路72は、ノズルNから離間した位置、具体的には、当該循環路72に対応するノズルNからみて循環インク室65側に形成されている。
図6に示すように、各循環路72は、ノズルNのうち第2区間n2の内径d2と同等の流路幅Waで直線状に形成されている。また、循環路72のY方向の寸法である流路幅Waは、圧力室CのY方向の寸法である流路幅Wbよりも小さい。したがって、循環路72の流路幅Waが圧力室Cの流路幅Wbよりも大きい構成と比較して循環路72の流路抵抗を大きくすることができる。他方、ノズルプレート52の表面に対する循環路72の深さDaは、全長にわたり一定である。具体的には、各循環路72は、ノズルNの第2区間n2と同等の深さに形成されている。以上の構成によれば、循環路72と第2区間n2とを相異なる深さに形成する構成と比較して、循環路72および第2区間n2を形成し易いという利点がある。なお、流路の「深さ」とは、Z方向における流路の深さを意味する。
第1部分P1における任意の1個の循環路72は、第1列L1のうち当該循環路72に対応するノズルNからみて循環インク室65側に位置する。また、第2部分P2における任意の1個の循環路72は、第2列L2のうち当該循環路72に対応するノズルNからみて循環インク室65側に位置する。そして、各循環路72のうち中心面Oとは反対側、すなわち、連通路63側の端部は、当該循環路72に対応する1個の連通路63に平面視で重なる。すなわち、循環路72は、連通路63に連通する。他方、各循環路72のうち中心面O側、すなわち、循環インク室65側の端部は、循環インク室65に平面視で重なる。すなわち、循環路72は、循環インク室65に連通する。以上のように、複数の連通路63の各々が循環路72を介して循環インク室65に連通する。したがって、図6に破線の矢印で図示される通り、各連通路63内のインクは循環路72を介して循環インク室65に供給される。すなわち、第1列L1に対応する複数の連通路63と第2列L2に対応する複数の連通路63とが1個の循環インク室65に対して共通に連通する。
図6には、任意の1個の循環路72のうち循環インク室65に重なる部分の流路長Laと、循環路72のうち連通路63に重なる部分の流路長Lbと、循環路72のうち流路形成部30の隔壁部69に重なる部分の流路長Lcとが図示されている。流路長Lcは、隔壁部69の厚さに相当する。隔壁部69は、循環路72の絞り部分として機能する。したがって、隔壁部69の厚さに相当する流路長Lcが長いほど、循環路72の流路抵抗が増大する。本実施形態では、流路長Laが流路長Lbよりも長く、流路長Laが流路長Lcよりも長いという関係が成立する。さらに、本実施形態では、流路長Lbが流路長Lcよりも長いという関係が成立する。以上の構成によれば、流路長Laや流路長Lbが流路長Lcよりも短い構成と比較して、連通路63から循環路72を介して循環インク室65にインクが流入し易いという利点がある。
以上のように、本実施形態では、圧力室Cが連通路63と循環路72とを介して間接的に循環インク室65に連通する。すなわち、圧力室Cと循環インク室65とは直接的には連通しない。以上の構成において、圧電素子44の動作により圧力室C内の圧力が変動すると、連通路63内を流動するインクのうちの一部がノズルNから外部に吐出され、残りの一部が連通路63から循環路72を経由して循環インク室65に流入する。本実施形態では、圧電素子44の1回の駆動により連通路63を流通するインクのうち、ノズルNを介して吐出されるインクの量である吐出量が、連通路63を流通するインクのうち循環路72を介して循環インク室65に流入するインクの量である循環量を上回るように、連通路63とノズルと循環路72とのイナータンスが選定される。全部の圧電素子44を一斉に駆動した場合を想定すると、複数のノズルNによる吐出量の合計よりも、複数の連通路63から循環インク室65に流入する循環量の合計のほうが多い、と換言することができる。
具体的には、例えば、連通路63を流通するインクのうち循環量の比率が70%以上、すなわち、吐出量の比率が30%以下となるように、連通路63とノズルと循環路72との各々の流路抵抗が決定される。以上の構成によれば、インクの吐出量を確保しながら、ノズルの近傍のインクを効果的に循環インク室65に循環させることが可能である。概略的には、循環路72の流路抵抗が大きいほど、循環量が減少する一方で吐出量が増加し、循環路72の流路抵抗が小さいほど、循環量が増加する一方で吐出量が減少する、という傾向がある。
図5に示すように、インクジェット装置100は、循環機構75を備えている。循環機構75は、循環インク室65内のインクをインク貯留室Rに供給、すなわち循環するための機構である。図示を省略するが、循環機構75は、例えば、循環インク室65からインクを吸引するポンプ等の吸引機構と、インクに混在する気泡や異物を捕集するフィルター機構と、インクの加熱により増粘を低減する加温機構とを備えている。循環機構75により気泡や異物が除去されるとともに増粘が低減されたインクが、循環機構75から導入口482を介してインク貯留室Rに供給される。以上のように、インク貯留室R→供給路61→圧力室C→連通路63→循環路72→循環インク室65→循環機構75→インク貯留室Rという経路でインクが循環する。
図5に示すように、循環機構75は、Y方向における循環インク室65の両側からインクを吸引する。すなわち、循環機構75は、循環インク室65のうちY方向の負側の端部の近傍と循環インク室65のうちY方向の正側の端部の近傍とからインクを吸引する。なお、Y方向における循環インク室65の一方の端部のみからインクを吸引する構成では、循環インク室65の両端部間でインクの圧力に差異が発生し、循環インク室65内の圧力差に起因して連通路63内のインクの圧力がY方向の位置に応じて相違し得る。したがって、各ノズルNからのインクの吐出特性、例えば、吐出量や吐出速度等がY方向の位置に応じて相違する可能性がある。以上の構成とは対照的に、本実施形態では、循環インク室65の両側からインクが吸引されるため、循環インク室65の内部における圧力差が低減される。したがって、Y方向に配列する複数のノズルNにわたりインクの吐出特性を高精度に近似させることが可能である。ただし、循環インク室65内でのY方向における圧力差が特段の問題とならない場合には、循環インク室65の一方の端部からインクを吸引する構成も採用され得る。
以上のように、本実施形態のインクジェット装置100は、第1ノズルおよび第2ノズルが設けられたノズルプレート52と、インクが供給される第1圧力室および第2圧力室と、前記第1ノズルと前記第1圧力室とを連通させる第1連通路と、前記第2ノズルと前記第2圧力室とを連通させる第2連通路と、前記第1連通路と前記第2連通路との間に位置する循環インク室65とが設けられた流路形成部30と、前記第1圧力室および前記第2圧力室の各々に圧力変化を発生させる圧力発生部とを有するインクジェットヘッド26を備えている。そして、ノズルプレート52には、前記第1連通路と前記循環インク室65とを連通させる第1循環路、および、前記第2連通路と前記循環インク室とを連通させる第2循環路が設けられている。
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のインクジェット装置の斜視図である。図8は、図7に示すインクジェット装置が有するメインタンクの斜視図である。図9は、図7に示すインクジェット装置が有するインクジェットヘッドの外観斜視図である。図10は、図9に示すインクジェットヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面図である。図11は、図9に示すインクジェットヘッドのノズル配列方向と平行な方向の断面図である。図12は、図9に示すインクジェットヘッドのノズル板の平面図である。図13Aから図13Fは、図9に示すインクジェットヘッドの流路部材を構成する各部材の平面図である。図14Aおよび図14Bは、図9に示すインクジェットヘッドの共通インク室部材を構成する各部材の平面図である。図15は、本実施形態のインクジェット装置でのインク循環システムの一例を示すブロック図である。図16は、図10のA−A’断面図である。図17は、図10のB−B’断面図である。
インクジェット装置B400の外装B401内に機構部B420が設けられている。ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色用のメインタンクB410であるメインタンクB410k、メインタンクB410c、メインタンクB410m、メインタンクB410yの各インク収容部B411は、例えば、アルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部B411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケースB414内に収容される。これにより、メインタンクB410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバーB401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダーB404が設けられている。カートリッジホルダーB404には、メインタンクB410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブB436を介して、メインタンクB410の各インク排出口B413と各色用のインクジェットヘッドB424とが連通し、インクジェットヘッドB424から記録媒体である布帛に対してインクを吐出することができる。
インクジェットヘッドB424は、ノズル板B1と、流路板B2と、壁面部材としての振動板部材B3とを積層接合している。そして、振動板部材B3を変位させる圧電アクチュエーターB11と、共通インク室部材B20と、カバーB29とを備えている。
ノズル板B1は、インクを吐出する複数のノズルB4を有している。
流路板B2は、ノズルB4に通じる個別インク室B6、個別インク室B6に通じる流体抵抗部B7、流体抵抗部B7に通じるインク導入部B8を形成している。また、流路板B2は、ノズル板B1側から複数枚の板状部材B41、B42、B43、B44、B45を積層接合して形成され、これらの板状部材B41、B42、B43、B44、B45と振動板部材B3を積層接合して流路部材B40が構成されている。
振動板部材B3は、インク導入部B8と共通インク室部材B20で形成される共通インク室B10とを通じる開口としてのフィルター部B9を有している。
振動板部材B3は、流路板B2の個別インク室B6の壁面を形成する壁面部材である。この振動板部材B3は、2層構造とし、流路板B2側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層とで形成され、第1層で個別インク室B6に対応する部分に変形可能な振動領域B30を形成している。
ここで、ノズル板B1には、図12にも示すように、複数のノズルB4が千鳥状に配置されている。
流路板B2を構成する板状部材B41には、図13Aに示すように、個別インク室B6を構成する貫通溝部B6aと、流体抵抗部B51、循環路B52を構成する貫通溝部B51a、B52aとが形成されている。
同じく板状部材B42には、図13Bに示すように、個別インク室B6を構成する貫通溝部B6bと、循環路B52を構成する貫通溝部B52bが形成されている。
同じく板状部材B43には、図13Cに示すように、個別インク室B6を構成する貫通溝部B6cと、循環路B53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部B53aが形成されている。
同じく板状部材B44には、図13Dに示すように、個別インク室B6を構成する貫通溝部B6dと、流体抵抗部B7なる貫通溝部B7aと、インク導入部B8を構成する貫通溝部B8aと、循環路B53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部B53bが形成されている。
同じく板状部材B45には、図13Eに示すように、個別インク室B6を構成する貫通溝部B6eと、インク導入部B8を構成するノズル配列方向を長手方向とする、フィルター下流側インク室となる貫通溝部B8bと、循環路B53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部B53cが形成されている。
振動板部材B3には、図13Fに示すように、振動領域B30と、フィルター部B9と、循環路B53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部B53dとが形成されている。
このように、流路部材を複数の板状部材を積層接合して構成することで、簡単な構成で複雑な流路を形成することができる。
以上の構成により、流路板B2および振動板部材B3からなる流路部材B40には、各個別インク室B6に通じる流路板B2の面方向に沿う流体抵抗部B51、循環路B52および循環路B52に通じる流路部材B40の厚み方向の循環路B53が形成される。なお、循環路B53は後述する循環共通インク室B50に通じている。
一方、共通インク室部材B20には、共通インク室B10と循環共通インク室B50が形成されている。
共通インク室部材B20を構成する第1共通インク室部材B21には、図14Aに示すように、圧電アクチュエーター用貫通孔B25aと、下流側共通インク室B10Aとなる貫通溝部B10aと、循環共通インク室B50となる底のある溝部B50aが形成されている。
同じく第2共通インク室部材B22には、図14Bに示すように、圧電アクチュエーター用貫通孔B25bと、上流側共通インク室B10Bとなる溝部B10bとが設けられている。
また、第2共通インク室部材B22には、共通インク室B10のノズル配列方向の一端部と供給ポートB71を通じる供給口部となる貫通孔B71aが設けられている。
同様に、第1共通インク室部材B21および第2共通インク室部材B22には、循環共通インク室B50のノズル配列方向の他端部と循環ポートB81を通じる貫通孔B81a、B81bが設けられている。
なお、図14において、底のある溝部については面塗りを施して示している。以下の図についても同様である。
このように、共通インク室部材B20は、第1共通インク室部材B21および第2共通インク室部材B22によって構成され、第1共通インク室部材B21を流路部材B40の振動板部材B3側に接合し、第1共通インク室部材B21に第2共通インク室部材B22を積層して接合している。
ここで、第1共通インク室部材B21は、インク導入部B8に通じる共通インク室B10の一部である下流側共通インク室B10Aと、循環路B53に通じる循環共通インク室B50とを形成している。また、第2共通インク室部材B22は、共通インク室B10の残部である上流側共通インク室B10Bを形成している。
このとき、共通インク室B10の一部である下流側共通インク室B10Aと循環共通インク室B50とはノズル配列方向と直交する方向に並べて配置されるとともに、循環共通インク室B50は共通インク室B10内に投影される位置に配置される。
これにより、循環共通インク室B50の寸法が流路部材B40で形成される個別インク室B6、流体抵抗部B7およびインク導入部B8を含む流路に必要な寸法による制約を受けることがなくなる。
そして、循環共通インク室B50と共通インク室B10の一部が並んで配置され、循環共通インク室B50は共通インク室B10内に投影される位置に配置されることで、ノズル配列方向と直交する方向のヘッドの幅を抑制することができ、ヘッドの大型化を抑制できる。共通インク室部材B20は、ヘッドタンクやインクカートリッジからインクが供給される共通インク室B10と循環共通インク室B50を形成する。
一方、振動板部材B3の個別インク室B6とは反対側に、振動板部材B3の振動領域B30を変形させる駆動手段としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエーターB11を配置している。
この圧電アクチュエーターB11は、図11に示すように、ベース部材B13上に接合した圧電部材B12を有し、圧電部材B12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材B12に対して所要数の柱状の圧電素子B12A、B12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
ここでは、圧電部材B12の圧電素子B12Aは駆動波形を与えて駆動させる圧電素子とし、圧電素子B12Bは駆動波形を与えないで単なる支柱として使用しているが、すべての圧電素子B12A、B12Bを駆動させる圧電素子として使用することもできる。
そして、圧電素子B12Aを振動板部材B3の振動領域B30に形成した島状の厚肉部である凸部B30aに接合している。また、圧電素子B12Bを振動板部材B3の厚肉部である凸部B30bに接合している。
この圧電部材B12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、外部電極にフレキシブル配線部材B15が接続されている。
このように構成した循環型吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドB424においては、例えば、圧電素子B12Aに与える電圧を基準電位から下げることによって圧電素子B12Aが収縮し、振動板部材B3の振動領域B30が下降して個別インク室B6の容積が膨張することで、個別インク室B6内にインクが流入する。
その後、圧電素子B12Aに印加する電圧を上げて圧電素子B12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材B3の振動領域B30をノズルB4に向かう方向に変形させて個別インク室B6の容積を収縮させることにより、個別インク室B6内のインクが加圧され、ノズルB4からインクが吐出される。
そして、圧電素子B12Aに与える電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材B3の振動領域B30が初期位置に復元し、個別インク室B6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通インク室B10から個別インク室B6内にインクが充填される。そこで、ノズルB4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ち等を行なうこともできる。また、上述した実施形態では、個別インク室B6に圧力変動を与える圧力発生手段として積層型圧電素子を用いて説明したが、これに限定されず、薄膜状の圧電素子を用いることも可能である。さらに、個別インク室B6内に発熱抵抗体を配し、発熱抵抗体の発熱によって気泡を生成して圧力変動を与えるものや、静電気力を用いて圧力変動を生じさせるものを使用することができる。
次に、循環型吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドを用いたインク循環システムの一例を、図15を用いて説明する。
図15に示すように、インク循環システムは、メインタンクB410、インクジェットヘッドB424、供給タンクB417、循環タンクB415、コンプレッサーB422、真空ポンプB421、第1送液ポンプB416、第2送液ポンプB412、レギュレーターB419、供給側圧力センサーB418および循環側圧力センサーB423で構成されている。供給側圧力センサーB418は、供給タンクB417とインクジェットヘッドB424との間であって、インクジェットヘッドB424の供給ポートB71に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサーB423は、インクジェットヘッドB424と循環タンクB415との間であって、インクジェットヘッドB424の循環ポートB81に繋がった循環路側に接続されている。
循環タンクB415の一方は、第1送液ポンプB416を介して供給タンクB417と接続されており、循環タンクB415の他方は、第2送液ポンプB412を介してメインタンクB410と接続されている。これにより、供給タンクB417から供給ポートB71を通ってインクジェットヘッドB424内にインクが流入し、循環ポートB81から排出されて循環タンクB415へ排出され、さらに第1送液ポンプB416によって循環タンクB415から供給タンクB417へインクが送られることによってインクが循環する。
また、供給タンクB417にはコンプレッサーB422がつなげられていて、供給側圧力センサーB418で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、循環タンクB415には真空ポンプB421がつなげられていて、循環側圧力センサーB423で所定の負圧が検知されるよう制御される。これにより、インクジェットヘッドB424内を通ってインクを循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
また、インクジェットヘッドB424のノズルB4から液滴を吐出すると、供給タンクB417および循環タンクB415内のインク量が減少していくため、適宜メインタンクB410から第2送液ポンプB412を用いて、メインタンクB410から循環タンクにインクを補充することが好ましい。メインタンクB410から循環タンクB415へのインク補充のタイミングは、循環タンクB415内のインクの液面高さが所定高さよりも下がったらインク補充を行う等、循環タンクB415内に設けた液面センサー等の検知結果によって制御することができる。
次に、インクジェットヘッドB424内におけるインクの循環について説明する。共通インク室部材B20の端部に、共通インク室B10に連通する供給ポートB71と、循環共通インク室B50に連通する循環ポートB81が形成されている。供給ポートB71および循環ポートB81は、それぞれ、チューブを介してインクを貯蔵する供給タンクB417、循環タンクB415につなげられている。そして、供給タンクB417に貯留されているインクは、供給ポートB71、共通インク室B10、インク導入部B8、流体抵抗部B7を経て、個別インク室B6へ供給される。
さらに、個別インク室B6内のインクが圧電部材B12の駆動によりノズルB4から吐出される一方で、吐出されずに個別インク室B6内に留まったインクの一部もしくは全ては流体抵抗部B51、循環路B52、B53、循環共通インク室B50、循環ポートB81を経て、循環タンクB415へと循環される。
なお、インクの循環は、インクジェットヘッドB424の動作時のみならず、動作休止時においても実施することができる。動作休止時に循環することによって、個別インク室B6内のインクは常にリフレッシュされるとともに、インクに含まれる成分の凝集や沈降を抑制できるので好ましい。
[染色物]
本発明に係る記録物である染色物は、前述した本発明のインクジェット捺染用インクを用いて製造されたものであり、例えば、前述したインクジェット捺染方法を用いて製造することができる。
これにより、インクジェット捺染用インクを所望のパターンで好適に吐出することができ、布帛に対する染着性に優れ、所望のパターンで設けられた染色部を有する染色物を提供することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明が適用されるインクジェット装置は、前述した物に限定されない。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インクジェット捺染用インクの調製
(実施例1)
まず、水溶性染料である酸性染料としてのC.I.アシッドブラック172と、水溶性有機溶剤としてのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールおよびトリエタノールアミンと、尿素と、所定の粒度分布を有する活性炭粒子と、超純水とを用意した。
これらを所定の比率で混合することにより、表1に示す組成のインクジェット捺染用インクを調製した。
表1で示す含有率は固形分である活性炭粒子を含まない水溶性成分のみに対する含有率を質量%しめしてあり、本明細書で記載される含有率はすべてこの規定による。
(実施例2〜12)
インクジェット捺染用インクの調製に用いる成分の種類、インクジェット捺染用インクの調製に用いる活性炭粒子の粒度分布、各成分の配合比率を調整し、表1に示す組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクジェット捺染用インクを調製した。
(比較例1〜10)
インクジェット捺染用インクの調製に用いる成分の種類、インクジェット捺染用インクの調製に用いる活性炭粒子の粒度分布、各成分の配合比率を調整し、表1に示す組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクジェット捺染用インクを調製した。
前記各実施例および各比較例のインクジェット捺染用インクの条件を表1にまとめて示す。なお、表1中、「%」は、質量%を表す。また、表1中に示す活性炭粒子の粒度に関する測定は、ナノレベル50nm〜1000nmの測定に関しては、マイクロトラックベル社 粒度分布測定装置 MT3300 EXII、ミクロンレベルの2000nm以上の領域に関しては、シスメックス社 FPIA−3000を用いて行った。また、表1中、水溶性染料としてのC.I.アシッドブラック172を「AK172」、水溶性有機溶剤としてのトリエチレングリコールモノブチルエーテルを「TEGBE」、水溶性有機溶剤としてのプロピレングリコールを「PG」、水溶性有機溶剤としてのトリエタノールアミンを「TEA」と示した。また、前記各実施例のインクジェット捺染用インクは、いずれも、表面張力が23mN/m以上30mN/m以下の範囲内の値であった。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面科学社製、CBVP−7)を用いて、25℃にて、ウィルヘルミー法により測定した。また、前記各実施例のインクジェット捺染用インクの25℃における粘度は、いずれも、4mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内の値であった。なお、インクジェット捺染用インクの粘度は、振動式粘度計(セニコック社製、VM−100)を用いたJIS Z8809に準拠した測定により求めた。
[2]評価
[2−1]吐出安定性
製造直後の前記各実施例および各比較例のインクジェット捺染用インクを、それぞれ、所定のインク収容容器に充填した。
その後、当該収容容器を、図1〜図6に示す構成のインクジェット装置に装着し、インクジェット捺染用インクを、循環を経て吐出し、記録媒体としてのA4サイズの普通紙に、記録解像度1440×720dpiでベタパターンを付着させた。なお、インクジェットプリンターの動作環境は40℃、20RH%とした。また、インクジェットヘッドの最大吐出量に対するインクジェット捺染用インクの循環流量の比率は5となるようにした。
記録媒体上にベタパターンを30枚記録した際のノズル抜けの本数を調べ、以下の基準に従い評価した。ノズル抜け本数が少ないほど、吐出安定性に優れていると言える。C以上を良好なレベルとした。
A:全ノズル数に対するノズル抜けを生じたものの割合が0%であった。
B:全ノズル数に対するノズル抜けを生じたものの割合が0%超0.5%以下であった。
C:全ノズル数に対するノズル抜けを生じたものの割合が0.5%超1.0%以下であった。
D:全ノズル数に対するノズル抜けを生じたものの割合が1.0%超1.5%以下であった。
E:全ノズル数に対するノズル抜けを生じたものの割合が1.5%超であった。
[2−2]保存安定性
前記各実施例および各比較例のインクジェット捺染用インクを、それぞれ、所定のインク収容容器に充填し、60℃の環境で5日間放置した。
その後、前記[2−1]と同様にして、インクジェット装置に装着し、インクジェット捺染用インクを吐出し、さらに、同様の基準に従い評価を行った。
これらの結果を表2にまとめて示す。
表2から明らかなように、本発明では優れた結果が得られた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
また、水溶性染料として、C.I.アシッドブラック172の代わりに、C.I.リアクティブブラック39、C.I.リアクティブオレンジ13、C.I.リアクティブレッド218、C.I.リアクティブブルー72、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドイエロー110、C.I.ダイレクトイエロー132、C.I.ダイレクトブルー199を用いた以外は、前記各実施例と同様にしてインクジェット捺染用インクを製造し、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の評価が得られた。
また、前記のインクジェット捺染用インクのうち異なる複数種のインク、より具体的には、異なる色のインクを組み合わせて用い、布帛上に、フルカラーの画像を形成して染色物を製造したところ、製造直後のインク、70℃の環境下に6日間静置したインクのいずれを用いた場合にも、鮮明なフルカラー画像を形成することができた。また、これらは、いずれも、優れた染着性を示した。
また、インクジェット捺染用インク中における水溶性有機溶剤の含有率を4.0質量%以上30.0質量%以下の範囲内で変更し、インクジェット捺染用インク中における尿素の含有率を0.50質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変更し、インクジェット捺染用インク中における水の含有率(XW[質量%])に対するインクジェット捺染用インク中における水溶性有機溶剤の含有率(XH[質量%])の比率(XH/XW)を0.020以上0.40以下の範囲内で変更した以外は、前記各実施例と同様にしてインクジェット捺染用インクを製造し、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の傾向の評価が得られた。
また、図1〜図6に示す構成のインクジェット装置の代わりに、図7〜図17に示す構成のインクジェット装置を用いた以外は、前記と同様に染色物を製造し、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。また、インクジェットヘッドの最大吐出量に対するインクジェット捺染用インクの循環流量の比率を、0.05以上20以下の範囲内で変更した以外は、前記と同様にしてインクジェット捺染用インクを吐出して前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の傾向の評価が得られた。