JP2020066316A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車速の急速な変化に伴うエンジン回転数の変化に起因する振動などの異常を回避もしくは抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供する。【解決手段】ハイブリッド車両の車速の変化速度が予め定めた所定値を超えているか否かを判断し(ステップS1)、記車速の変化速度が予め定めた所定値を超えている場合には、いずれかの可変速モードから前記固定モードを経由して前記他の可変速モードに切り替える制御の内容を、前記車速の変化速度が前記所定値以下の場合の制御内容とは異ならせる(ステップS2)。例えば、走行モードの切り替えを制限もしくは禁止し、あるいは実車速が走行モードを切り替えるべき車速に到る前に走行モードを切り替える。【選択図】図13

Description

この発明は、エンジンとモータとが連結された差動機構が無段変速機構として機能するように構成されたハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
この種のハイブリッド車両の一例が特許文献1に記載されている。そのハイブリッド車両において無段変速機構として機能する差動機構が、二組の遊星歯車機構によって構成されており、第1遊星歯車機構にエンジンと第1モータとが連結されている。その第1遊星歯車機構における他の回転要素が第2遊星歯車機構において入力要素として機能する回転要素に連結され、第2遊星歯車機構における他の回転要素が出力要素となっていて出力ギヤに連結されている。さらに第2遊星歯車機構は反力要素となる回転要素を有しており、その反力要素が第1クラッチによってエンジンに選択的に連結されてエンジントルクが反力となるように構成されている。そして、第2遊星歯車機構におけるいずれか二つの回転要素を選択的に連結して第2遊星歯車機構の全体を一体化させる第2クラッチが設けられている。なお、第2モータが、前記出力ギヤから終減速機であるデファレンシャルギヤに至る動力伝達経路の途中に連結されている。
上記の各遊星歯車機構の一例は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、その場合、第1遊星歯車機構における入力要素はキャリヤ、第1モータが連結された反力要素はサンギヤ、出力要素はリングギヤである。また、第2遊星歯車機構において前記リングギヤに連結されている回転要素(入力要素)はキャリヤ、出力要素はリングギヤ、反力要素はサンギヤである。
エンジンを駆動して走行している場合、第1モータによって反力を発生させることにより、エンジン回転数が第1モータによって制御され、その場合、第1モータは発電機として機能する。第1モータで発生した電力は第2モータに供給されて第2モータがモータとして機能し、走行のための駆動力を発生する。すなわち、エンジンが出力した動力の一部が第1モータによって電力に変換された後、第2モータによって機械的な動力に逆変換され、このようなエネルギ変換を行いつつ、エンジンは最適燃費運転点での回転数になるように第1モータによってその回転数が制御される。
特許文献1に記載されたハイブリッド車両では、第1クラッチを係合させた駆動モード、第2クラッチを係合させた駆動モード、両方のクラッチを係合させた駆動モードの三つの駆動モードを設定することができる。第1クラッチを係合させた駆動モードでは、第1モータの回転数を増大させるのに伴ってエンジン回転数が増大し、また反対に第1モータの回転数を低下させるのに伴ってエンジン回転数が低下する。すなわち、エンジン回転数を第1モータによって連続的に変化させることのできる無段変速モードとなる。また、第1クラッチを係合させた状態で第1モータの回転を止めた状態では、エンジン回転数に対して出力ギヤの回転数が高回転数になる。したがって無段変速機構として機能する上記の二組の遊星歯車機構によって構成されている差動機構は変速比が「1」より小さい第1のオーバードライブ状態となる。
これに対して第2クラッチを係合させた駆動モードでは、第1モータの回転数を増大させるのに伴ってエンジン回転数が増大し、また第1モータの回転数を低下させるのに伴ってエンジン回転数が低下し、したがってこの場合も無段変速モードとなる。なお、この場合の出力ギヤの回転数は、上記の第1のオーバードライブ状態での回転数より低回転数となるが、エンジン回転数より高回転数になるので、この場合もオーバードライブ状態(第2のオーバードライブ状態)になる。
さらに、第1クラッチおよび第2クラッチを共に係合させると、第2遊星歯車機構のみに限らず第1遊星歯車機構の全体が一体化され、各回転要素が一体となって回転する。したがってこの状態ではエンジン回転数と出力ギヤの回転数とが同じになるから変速比は「1」であり、固定段もしくは固定モードと称することのできる駆動モードである。
特開2017−7437号公報
特許文献1に記載されたハイブリッド車両では、上記の第1のオーバードライブ状態を設定することにより高車速時のエンジンや第1モータの回転数を低下させることができる。また、上記の第2のオーバードライブ状態を設定することにより、駆動力を大きくすることができる。したがって、車速やアクセル開度(要求駆動力)などの走行状態の変化に応じて各クラッチの係合および解放の状態を変更して駆動モードを切り替えることになる。その駆動モードの切り替えは、一方のクラッチを解放し、かつ他方のクラッチを係合させて行うことになる。その場合、クラッチの差回転数(駆動側の回転数と従動側の回転数との差)が大きいと、係合ショックあるいは変速ショックが生じるので、走行状態の変化の過程で変速比がほぼ「1」になった時点で両方のクラッチを共に係合状態とし、ついで、切り替え後の駆動モードを設定するクラッチを係合状態に維持しつつ他方のクラッチを解放する。すなわち、固定段(以下、固定モードと記す)を経由して駆動モードを切り替える。こうすることにより、回転数の急激な変化やそれに伴うショックを回避もしくは抑制することができる。しかしながら、固定モードでは、エンジンと出力ギヤ(もしくは駆動輪)とが、相対回転数が変化しないように連結されるから、車速の変化に応じてエンジン回転数が変化させられる。例えば、制動操作などによって減速し、それに伴って第1のオーバードライブ状態から第2のオーバードライブ状態に切り替える場合、モードの切り替えの過程で固定モードが設定されると、車速の低下に応じてエンジン回転数が引き下げられる。そのため、車速の変化が急激(急速)であれば、エンジン回転数が急激に引き下げられて振動が生じたり、あるいはエンジンストールに到ったりする可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、変速比を連続的に変化させることのできる駆動モード同士の間での切り替えを、変速比が固定されている固定モードを経由して行うとしても、車速の急激もしくは急速な変化に伴う振動やエンジンストールを抑制もしくは回避することのできるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジンが出力したトルクをモータと出力部材とに分割する差動機構を備え、前記エンジンの回転数と前記出力部材の回転数との比率である変速比を変化させることの可能な走行モードである少なくとも二つの可変速モードと、前記変速比が所定の一定値に固定される走行モードである固定モードを選択でき、かついずれかの可変速モードから他の可変速モードに切り替える際に前記固定モードを設定するように構成されたハイブリッド車両の制御装置において、前記ハイブリッド車両の車速の変化速度が予め定めた所定値を超えているか否かを判断し、前記車速の変化速度が予め定めた所定値を超えている場合には、前記いずれかの可変速モードから前記固定モードを経由して前記他の可変速モードに切り替える制御の内容を、前記車速の変化速度が前記所定値以下の場合の制御内容とは異ならせることを特徴としている。
この発明においては、車速の変化速度が所定値を超えて速い場合には、いずれかの可変速モードから固定モードを経由して他の可変速モードに切り替える制御の内容が、車速の変化速度が所定値以下の場合の制御内容とは異なる制御内容とされる。例えば、車速の変化速度が所定値以下であれば、固定モードを経由した可変速モード同士の間の切り替えが許可されるのに対して、車速の変化速度が所定値を超えている場合に、いずれかの可変速モードから他の可変速モードへの切り替えが禁止される。あるいは、車速の変化速度が所定値以下であれば、車速が予め定めた切り替え車速に達することによりいずれかの可変速モードから他の可変速モードへの切り替え制御が開始されるのに対して、車速の変化速度が所定値を超えている場合には、車速が上記の予め定めた切り替え速度に達する以前にいずれかの可変速モードから他の可変速モードへの切り替え制御が開始される。したがって、この発明によれば、車速が急激もしくは急速に低下する際に固定モードが設定されていること、もしくは固定モードが設定され続けていることが回避されるので、エンジン回転数が過度に引き下げられたり、それに伴って振動が悪化したり、あるいはエンジンストールに到ったりすることを抑制もしくは回避することができる。
第1駆動装置の一例を説明するためのスケルトン図である。 第2駆動装置の一例を説明するためのスケルトン図である。 電子制御装置(ECU)の構成を説明するためのブロック図である。 各走行モードでのクラッチ機構、ブレーキ機構の係合および解放の状態、モータの運転状態、エンジンの駆動の有無をまとめて示す図表である。 HV Hiモードでの動作状態を説明するための共線図である。 HV Loモードでの動作状態を説明するための共線図である。 直結モードでの動作状態を説明するための共線図である。 EV Loモードでの動作状態を説明するための共線図である。 EV Hiモードでの動作状態を説明するための共線図である。 シングルモードでの動作状態を説明するための共線図である。 CDモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示す図である。 CSモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示す図である。 この発明の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。 車速に基づいてしきい値を求めるためのマップの一例を示す図である。 図13に示す制御を行った場合の車速やその変化速度、および各要求の変化の一例を示すタイムチャートである。 この発明の制御装置で実行される制御の他の例を説明するためのフローチャートである。 図16に示す制御を行った場合の車速やその変化速度、および各要求の変化の一例を示すタイムチャートである。
この発明の実施形態における制御装置は、エンジン回転数と出力部材の回転数との比率である変速比を変化させることのできる第1の走行モードと、その変速比が所定の一定値に固定される走行モードである固定モードと、変速比を変化させることのできる他の走行モードである第2走行モードとを設定でき、かつ第1走行モードと第2走行モードとの間でモード切替を行う場合に、固定モードを経由する(固定モードを一時的に設定する)ように構成されたハイブリッド車両を対象とする制御装置である。この種のハイブリッド車両の一例を図1および図2を参照して説明する。図1は、前輪1R,1Lを駆動するための第1駆動装置2を示し、図2は、後輪3R,3Lを駆動するための第2駆動装置4を示している。第1駆動装置2は、エンジン5と二つのモータ6,7とを駆動力源として備えたいわゆる2モータタイプの駆動装置であって、第1モータ6は発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG1)によって構成され、エンジン5の回転数を第1モータ6によって制御するとともに、第1モータ6で発電された電力により第2モータ7を駆動し、その第2モータ7が出力する駆動力を走行のための駆動力に加えるように構成されている。なお、第2モータ7は発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG2)によって構成することができる。上記の第1モータ6が、この発明の実施形態における「モータ」に相当する。
エンジン5には、この発明の実施形態における「差動機構」に相当する動力分割機構8が連結されている。この動力分割機構8は、エンジン5から出力された動力を第1モータ6側と出力側とに分割する機能を主とする分割部9と、その動力の分割率を変更する機能を主とする変速部10とにより構成されている。
分割部9は、三つの回転要素によって差動作用を行う構成であればよく、遊星歯車機構を採用することができる。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。図1に示す分割部9は、サンギヤ11と、サンギヤ11に対して同心円上に配置された、内歯歯車であるリングギヤ12と、これらサンギヤ11とリングギヤ12との間に配置されてサンギヤ11とリングギヤ12に噛み合っているピニオンギヤ13と、ピニオンギヤ13を自転および公転可能に保持するキャリヤ14とにより構成されている。そのサンギヤ11が主に反力要素として機能し、リングギヤ12が主に出力要素として機能し、キャリヤ14が主に入力要素として機能する。
エンジン5が出力した動力が前記キャリヤ14に入力されるように構成されている。具体的には、エンジン5の出力軸15に、動力分割機構8の入力軸16が連結され、その入力軸16がキャリヤ14に連結されている。なお、キャリヤ14と入力軸16とを直接連結する構成に替えて、歯車機構などの伝動機構を介してキャリヤ14と入力軸16とを連結してもよい。また、その出力軸15と入力軸16との間にダンパ機構やトルクコンバータなどの機構を配置してもよい。
サンギヤ11に第1モータ6が連結されている。図1に示す例では、分割部9および第1モータ6は、エンジン5の回転中心軸線と同一の軸線上に配置され、第1モータ6は分割部9を挟んでエンジン5とは反対側に配置されている。この分割部9とエンジン5との間で、これら分割部9およびエンジン5と同一の軸線上に、その軸線の方向に並んで変速部10が配置されている。
変速部10は、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されており、サンギヤ17と、サンギヤ17に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ18と、これらサンギヤ17とリングギヤ18との間に配置されてこれらサンギヤ17およびリングギヤ18に噛み合っているピニオンギヤ19と、ピニオンギヤ19を自転および公転可能に保持しているキャリヤ20とを有し、サンギヤ17、リングギヤ18、およびキャリヤ20の三つの回転要素によって差動作用を行う差動機構である。この変速部10におけるサンギヤ17に分割部9におけるリングギヤ12が連結されている。また、変速部10におけるリングギヤ18に、出力ギヤ21が連結されている。このリングギヤ18もしくは出力ギヤ21がこの発明の実施形態における「出力部材」に相当する。
上記の分割部9と変速部10とが複合遊星歯車機構を構成するように第1クラッチ機構CL1が設けられている。第1クラッチ機構CL1は、変速部10におけるキャリヤ20を、分割部9におけるキャリヤ14に選択的に連結するように構成されている。この第1クラッチ機構CL1は、湿式多板クラッチなどの摩擦式のクラッチ機構であってもよく、あるいはドグクラッチなどの噛み合い式のクラッチ機構であってもよい。この第1クラッチ機構CL1を係合させることにより分割部9におけるキャリヤ14と変速部10におけるキャリヤ20とが連結されてこれらが入力要素となり、また分割部9におけるサンギヤ11が反力要素となり、さらに変速部10におけるリングギヤ18が出力要素となった複合遊星歯車機構が形成される。
さらに、変速部10の全体を一体化させるための第2クラッチ機構CL2が設けられている。この第2クラッチ機構CL2は、変速部10におけるキャリヤ20とリングギヤ18もしくはサンギヤ17、あるいはサンギヤ17とリングギヤ18とを連結するなどの少なくともいずれか二つの回転要素を連結するためのものであって、摩擦式あるいは噛み合い式のクラッチ機構によって構成することができる。図1に示す例では、第2クラッチ機構CL2は、変速部10におけるキャリヤ20とリングギヤ18とを連結するように構成されている。そして、第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2は、エンジン5および分割部9ならびに変速部10と同一の軸線上に配置され、かつ変速部10を挟んで分割部9とは反対側に配置されている。なお、各クラッチ機構CL1,CL2同士は、図1に示すように、半径方向で内周側と外周側とに並んだ状態に配置されていてもよく、あるいは軸線方向に並んで配置されていてもよい。図1に示すように半径方向に並べて配置した場合には、第1駆動装置2の全体としての軸長を短くすることができる。また、軸線方向に並べて配置した場合には、各クラッチ機構CL1,CL2の外径の制約が少なくなるので、摩擦式のクラッチ機構を採用した場合には、摩擦板の枚数を少なくすることができる。
上記のエンジン5や分割部9あるいは変速部10の回転中心軸線と平行にカウンタシャフト22が配置されている。前記出力ギヤ21に噛み合っているドリブンギヤ23がこのカウンタシャフト22に取り付けられている。また、カウンタシャフト22にはドライブギヤ24が取り付けられており、このドライブギヤ24が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット25におけるリングギヤ26に噛み合っている。さらに、前記ドリブンギヤ23には、第2モータ7におけるロータシャフト27に取り付けられたドライブギヤ28が噛み合っている。したがって、前記出力ギヤ21から出力された動力もしくはトルクに、第2モータ7が出力した動力もしくはトルクを、上記のドリブンギヤ23の部分で加えるように構成されている。このようにして合成された動力もしくはトルクをデファレンシャルギヤユニット25から左右のドライブシャフト29に出力し、その動力やトルクが前輪1R,1Lに伝達されるように構成されている。
さらに、第1駆動装置2は、第1モータ6から出力された駆動トルクを、前輪1R,1Lに伝達することができるように、出力軸15または入力軸16を選択的に固定可能に構成された、摩擦式あるいは噛み合い式の第1ブレーキ機構B1が設けられている。すなわち、第1ブレーキ機構B1を係合して出力軸15または入力軸16を固定することにより、分割部9におけるキャリヤ14や、変速部10におけるキャリヤ20を反力要素として機能させ、分割部9におけるサンギヤ11を入力要素として機能させることができるように構成されている。なお、第1ブレーキ機構B1は、第1モータ6が駆動トルクを出力した場合に、反力トルクを発生させることができればよく、出力軸15または入力軸16を完全に固定する構成に限らず、要求される反力トルクを出力軸15または入力軸16に作用させることができればよい。または、出力軸15や入力軸16が、エンジン5の駆動時に回転する方向とは逆方向に回転することを禁止するワンウェイクラッチを第1ブレーキ機構B1として設けてもよい。
第2駆動装置4は、リヤモータ30の動力もしくはトルクを後輪3R,3Lに伝達するように構成されている。なお、便宜上、左側の後輪3Lは図示していない。このリヤモータ30は、第1モータ6および第2モータ7と同様に、発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MGR)によって構成されている。リヤモータ30には、リヤモータ30のトルクを増幅する減速段と、リヤモータ30のトルクを変化させずにそのまま出力する直結段とを選択的に切り替えることができるように構成された変速機構31が連結されている。
図2に示す変速機構31は、サンギヤ32と、サンギヤ32に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ33と、これらサンギヤ32とリングギヤ33との間に配置されてサンギヤ32とリングギヤ33とに噛み合うピニオンギヤ34と、ピニオンギヤ34を自転および公転可能に保持しているキャリヤ35とを有する、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。
変速機構31のサンギヤ32は、リヤモータ30に連結されており、入力要素として機能する。キャリヤ35は、出力軸36に連結されており、反力要素として機能する。そして、変速機構31を固定段として機能させるための第3クラッチ機構CL3が設けられている。この第3クラッチ機構CL3は、変速機構31におけるサンギヤ32とリングギヤ33もしくはキャリヤ35、あるいはリングギヤ33とキャリヤ35とを連結するなどの少なくともいずれか二つの回転要素を連結するためのものであって、摩擦式あるいは噛み合い式のクラッチ機構によって構成することができる。図2に示す例では、第3クラッチ機構CL3は、変速機構31におけるリングギヤ33とキャリヤ35とを連結するように構成されている。
さらに、変速機構31を減速段として機能させるための第2ブレーキ機構B2が設けられている。この第2ブレーキ機構B2は、変速機構31におけるリングギヤ33を選択的に固定するように構成された、摩擦式あるいは噛み合い式の係合機構によって構成することができる。図2に示す第2ブレーキ機構B2は、第2駆動装置4を収容するケースCとリングギヤ33とを係合することにより、リングギヤ33を固定するように構成されている。このように第2ブレーキ機構B2によりリングギヤ33が固定されることでリングギヤ33が反力要素として機能する。なお、第2ブレーキ機構B2は、上記第1ブレーキ機構B1と同様に、リングギヤ33を完全に固定するものに限らない。
変速機構31の出力軸36には、ドライブギヤ37が取り付けられている。出力軸36と平行にカウンタシャフト38が配置されており、そのカウンタシャフト38の一方の端部に、ドライブギヤ37と噛み合うドリブンギヤ39が取り付けられている。このドリブンギヤ39は、ドライブギヤ37よりも大径に形成されており、変速機構31の出力トルクを増幅するように構成されている。カウンタシャフト38の他方の端部には、ドライブギヤ40が取り付けられており、このドライブギヤ40が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット41におけるリングギヤ42に噛み合っている。デファレンシャルギヤユニット41には、ドライブシャフト43が連結されており、そのドライブシャフト43を介して後輪3R,3Lに、リヤモータ30から出力された動力が伝達されるように構成されている。
第1モータ6にインバータやコンバータなどを備えた第1電力制御装置44が連結され、第2モータ7にインバータやコンバータなどを備えた第2電力制御装置45が連結され、リヤモータ30にインバータやコンバータなどを備えた第3電力制御装置46が連結され、それらの各電力制御装置44,45,46が、リチウムイオン電池やキャパシタなどから構成された蓄電装置47に連結されている。また、上記第1電力制御装置44と第2電力制御装置45および第3電力制御装置46とが相互に電力を供給できるように構成されている。具体的には、第1モータ6が反力トルクを出力することに伴って発電機として機能する場合には、第1モータ6で発電された電力を蓄電装置47を介することなく、第2モータ7やリヤモータ30に供給することができるように構成されている。さらに、蓄電装置47を冷却するための冷却ファンFが設けられている。この冷却ファンFは、蓄電装置47の温度が過度に高くなることにより、蓄電装置47の出力が制限されることを抑制するためや、蓄電装置47の耐久性が低下することを抑制するために設けられている。
上記の各電力制御装置44,45,46におけるインバータやコンバータ、エンジン5、各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2を制御するための電子制御装置(ECU)48が設けられている。このECU48は、マイクロコンピュータを主体にして構成されている。図3は、ECU48の構成の一例を説明するためのブロック図である。図3に示す例では、統合ECU49、MG ECU50、エンジンECU51、およびクラッチECU52によりECU48が構成されている。
統合ECU49は、車両に搭載された種々のセンサからデータが入力され、その入力されたデータと、予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて、MG ECU50、エンジンECU51、およびクラッチECU52に指令信号を出力するように構成されている。統合ECU49に入力されるデータの一例を図3に示してあり、車速、アクセル開度、第1モータ(MG1)2の回転数、第2モータ(MG2)7の回転数、リヤモータ(MGR)30の回転数、エンジン5の出力軸15の回転数(エンジン回転数)、変速部10におけるリングギヤ18またはカウンタシャフト22の回転数である出力回転数、各クラッチ機構CL1,CL2,CL3や各ブレーキ機構B1,B2に設けられたピストンのストローク量、蓄電装置47の温度、各電力制御装置44,45,46の温度、第1モータ6の温度、第2モータ7の温度、リヤモータ30の温度、分割部9や変速部10あるいは変速機構31などを潤滑するオイル(ATF)の温度、蓄電装置47の充電残量(SOC)などのデータが、統合ECU49に入力される。
そして、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいて第1モータ6の運転状態(出力トルクや回転数)、第2モータ7の運転状態(出力トルクや回転数)、リヤモータ30の運転状態(出力トルクや回転数)を求めて、それらの求められたデータを指令信号としてMG ECU50に出力する。同様に、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいてエンジン5の運転状態(出力トルクや回転数)を求めて、その求められたデータを指令信号としてエンジンECU51に出力する。さらに、統合ECU49に入力されたデータなどに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2の伝達トルク容量(「0」を含む)を求めて、それらの求められたデータを指令信号としてクラッチECU52に出力する。
MG ECU50は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて各モータ6,7,30に通電するべき電流値を求めて、各モータ6,7,30に指令信号を出力する。各モータ6,7,30は、交流式のモータであるから、上記の指令信号は、インバータで生成するべき電流の周波数や、コンバータで昇圧するべき電圧値などが含まれる。
エンジンECU51は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて電子スロットルバルブの開度を定めるための電流、点火装置で燃料を着火するための電流、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブの開度を定めるための電流、吸気バルブや排気バルブの開度を定めるための電流値などを求め、それぞれのバルブや装置に指令信号を出力する。すなわち、エンジン5の出力(パワー)や、エンジン5の出力トルク、もしくはエンジン回転数を制御するための指示信号を、エンジンECU51から出力する。
クラッチECU52は、上記のように統合ECU49から入力されたデータに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2,CL3、および各ブレーキ機構B1,B2の係合圧を定めるアクチュエータに通電するべき電流値を求めて、それぞれのアクチュエータに指令信号を出力する。なお、統合ECU49は、上記の他に、蓄電装置47の温度に応じて冷却ファンFに通電する電流値を求めて、冷却ファンFを駆動するアクチュエータに信号などを出力するように構成されている。
上記の第1駆動装置2は、エンジン5から駆動トルクを出力して走行するHV走行モードと、エンジン5から駆動トルクを出力することなく、第1モータ6や第2モータ7から駆動トルクを出力して走行するEV走行モードとを設定することが可能である。さらに、HV走行モードは、第1モータ6を低回転数で回転させた場合(「0」回転を含む)に、変速部10におけるリングギヤ18の回転数よりもエンジン5(または入力軸16)の回転数が高回転数となるHV Loモードと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数よりもエンジン5(または入力軸16)の回転数が低回転数となるHV Hiモードと、変速部10におけるリングギヤ18の回転数とエンジン5(または入力軸16)の回転数が同一である直結モードとを設定することが可能である。HV LoモードおよびHV Hiモードでは、走行中に第1モータ6の回転数を変化させることによりエンジン回転数が変化する。すなわち、エンジン回転数とリングギヤ18の回転数(出力回転数)との比率である変速比が変化する。したがって、これらのHV LoモードおよびHV Hiモードがこの発明の実施形態における可変速モードに相当する。また、直結モードでは、変速比が変化しないので、直結モードがこの発明の実施形態における「固定モード」に相当する。
またさらに、EV走行モードは、第1モータ6および第2モータ7から駆動トルクを出力するデュアルモードと、第1モータ6から駆動トルクを出力せずに第2モータ7のみから駆動トルクを出力するシングルモードとを設定することが可能である。更にデュアルモードは、第1モータ6から出力されたトルクの増幅率が比較的大きいEV Loモードと、第1モータ6から出力されたトルクの増幅率が比較的小さいEV Hiモードとを設定することが可能である。なお、シングルモードでは、第1クラッチ機構CL1を係合した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行することや、第2クラッチ機構CL2を係合した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行すること、あるいは各クラッチ機構CL1,CL2を解放した状態で第2モータ7のみから駆動トルクを出力して走行することが可能である。
それらの各走行モードは、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、第1ブレーキ機構B1、およびエンジン5、各モータ6,7を制御することにより設定される。図4に、これらの走行モードと、各走行モード毎における、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、第1ブレーキ機構B1の係合および解放の状態、第1モータ6および第2モータ7の運転状態、エンジン5からの駆動トルクの出力の有無の一例を図表として示してある。図中における「●」のシンボルは係合している状態を示し、「−」のシンボルは解放している状態を示し、「G」のシンボルは主にジェネレータとして運転することを意味し、「M」のシンボルは主にモータとして運転することを意味し、空欄はモータおよびジェネレータとして機能していない、または第1モータ6や第2モータ7が駆動のために関与していない状態を意味し、「ON」はエンジン5から駆動トルクを出力している状態を示し、「OFF」はエンジン5から駆動トルクを出力していない状態を示している。なお、シングルモードでの走行中に、エンジン5から動力を出力し、第1モータ6をジェネレータとして機能させてエンジン5から出力された動力の全てを電気エネルギに変換することができ、その場合であっても、エンジン5は駆動力源として機能していないため、図中では「OFF」と示している。
この発明の実施形態における可変速モードである上述したHV HiモードやHV Loモードでの動作を共線図を用いて説明する。共線図は、動力分割機構8における各回転要素を示す直線をギヤ比の間隔をあけて互いに平行に引き、これらの直線に直交する基線からの距離をそれぞれの回転要素の回転数として示す図であり、それぞれの回転要素を示す直線にトルクの向きを矢印で示すとともに、その大きさを矢印の長さで示している。
図5および図6に示すようにHV HiモードやHV Loモードでは、エンジン5から駆動トルクを出力し、第1クラッチ機構CL1と第2クラッチ機構CL2とのいずれか一方を係合するとともに、第1モータ6から反力トルクを出力する。その場合の第1モータ6の回転数は、エンジン5の燃費や第1モータ6の駆動効率などを考慮した第1駆動装置2全体としての効率(消費エネルギ量を前輪1R,1Lのエネルギ量で除算した値)が最も良好となるように制御される。上記の第1モータ6の回転数は連続的に変化させることができ、その第1モータ6の回転数と車速とに基づいてエンジン回転数が定まる。したがって、動力分割機構8は、無段変速機として機能する。
上記のように第1モータ6から反力トルクを出力することにより、第1モータ6が発電機として機能する場合には、エンジン5の動力の一部が第1モータ6により電気エネルギに変換される。そして、エンジン5の動力から第1モータ6により電気エネルギに変換された動力分を除いた動力が変速部10におけるリングギヤ18に伝達される。その第1モータ6側に伝達される動力とリングギヤ18側に伝達される動力との比率は、HV LoモードとHV Hiモードとで異なる。
具体的には、第1モータ6側に伝達される動力を「1」とした場合、HV Loモードではリングギヤ18側に伝達される動力の割合である動力分割率は、「1/(ρ1×ρ2)」となり、HV Hiモードではその動力分割率は、「1/ρ1」となる。ここで、「ρ1」は分割部9のギヤ比(リングギヤ12の歯数とサンギヤ11の歯数との比率)であり、「ρ2」は変速部10のギヤ比(リングギヤ18の歯数とサンギヤ17の歯数との比率)である。なお、ρ1およびρ2は、「1」よりも小さい値に設定されている。したがって、HV Loモードが設定されている場合には、HV Hiモードが設定されている場合と比較して、リングギヤ18に伝達される動力の割合が大きくなる。
そして、第1モータ6により発電された電力が第2モータ7に供給される。その場合、必要に応じて蓄電装置47に充電されている電力も第2モータ7に供給される。なお、第2モータ7とリヤモータ30とは、エンジン5から伝達される駆動力に、さらに駆動力を加算するように機能するものであって、車両全体としての駆動力を制御する上では、第2モータ7とリヤモータ30とを同一のものとみなすことができるため、第2モータ7に代えて、または第2モータ7に加えてリヤモータ30に電力を供給するように構成してもよい。以下では、加算するための駆動力を第2モータ7のみから出力する例を挙げて説明している。
直結モードでは、各クラッチ機構CL1,CL2が係合されることにより、図7に示すように動力分割機構8における各回転要素が同一回転数で回転する。すなわち、エンジン5の動力の全てが動力分割機構8から出力される。言い換えると、エンジン5の動力の一部が、第1モータ6や第2モータ7により電気エネルギに変換されることがない。したがって、電気エネルギに変換する際に生じる電気抵抗などを要因とした損失がないため、動力の伝達効率を向上させることができる。
さらに、図8および図9に示すようにEV LoモードとEV Hiモードとでは、第1ブレーキ機構B1を係合するとともに各モータ6,7から駆動トルクを出力して走行する。図8および図9に示すように、第1モータ6の回転数と変速部10におけるリングギヤ18の回転数との比は、EV Loモードの方がEV Hiモードよりも大きくなる。すなわち、EV Loモードの方が、EV Hiモードよりも減速比が大きい。そのため、EV Loモードを設定することにより大きな駆動力を得ることができる。なお、シングルモードでは、図10に示すように第2モータのみから駆動トルクを出力しており、かつ各クラッチ機構CL1,CL2が解放されていることにより、動力分割機構8の各回転要素は停止した状態になる。したがって、エンジン5や第1モータ6を連れ回すことによる動力損失を低減することができる。
蓄電装置47の充電残量(SOC)、車速、要求駆動力などに基づいて上記の各走行モードを定めるように構成されている。この実施形態では、蓄電装置47の充電残量を維持するように各走行モードを設定するCS(Charge Sustain)モードと、蓄電装置に充電された電力を積極的に使用するCD(Charge Depleting)モードとを、蓄電装置47の充電残量に応じて選択するように構成されている。具体的には、蓄電装置47の充電残量が低下している場合などに、CSモードを選択し、蓄電装置47の充電残量が比較的多い場合などにCDモードを選択するように構成されている。
図11には、CSモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示している。このマップの横軸は車速を示し、縦軸は要求駆動力を示している。なお、車速は車速センサにより検出されたデータから求めることができ、要求駆動力はアクセル開度センサにより検出されたデータから求めることができる。
図11に示す例では、後進走行している場合には、要求駆動力の大きさに関わらずシングルモードを設定し、また前進走行しており、要求駆動力が比較的小さい場合(減速要求を含む)に、シングルモードを設定するように構成されている。このシングルモードを設定する領域は、第2モータ7やリヤモータ30の特性に基づいて定められている。なお、シングルモードを設定する領域にハッチングを付してある。
また、前進走行しており、かつ要求駆動力が比較的大きい場合には、HV走行モードが設定される。なお、HV走行モードは、低車速域から高車速域に亘って駆動力を出力できるため、蓄電装置47の充電残量が下限値近傍となった場合などには、シングルモードが設定されるべき領域であっても、HV走行モードを設定することがある。
さらに、HV走行モードを設定する場合においては、車速と要求駆動力に応じてHV LoモードやHV Hiモード、あるいは直結モード(Fixモード)のいずれかのモードを選択するように構成されている。具体的には、比較的低車速の場合や要求駆動力が比較的大きい場合に、HV Loモードが選択され、比較的高車速でかつ要求駆動力が比較的小さい場合に、HV Hiモードが選択され、車両の運転状態がHV LoモードとHV Hiモードとを設定する領域の間の運転点(車速と要求駆動力とに基づいた値)の場合に、直結モードが選択されるように構成されている。
また、上記のHV Loモード、直結モード、HV Hiモードは、図11に示す各ラインを運転点が横切ることにより切り替えるように構成されている。具体的には、図11における「Lo←Fix」のラインを運転点が右側から左側に向けて横切った場合や、下側から上側に向けて横切った場合に、直結モードからHV Loモードに切り替えるように構成され、「Lo→Fix」のラインを運転点が左側から右側に向けて横切った場合や、上側から下側に向けて横切った場合に、HV Loモードから直結モードに切り替えるように構成されている。同様に、図11における「Fix←Hi」のラインを運転点が右側から左側に向けて横切った場合や、下側から上側に向けて横切った場合に、HV Hiモードから直結モードに切り替えるように構成され、「Fix→Hi」のラインを運転点が左側から右側に向けて横切った場合や、上側から下側に向けて横切った場合に、直結モードからHV Hiモードに切り替えるように構成されている。したがって、HV LoモードからHV Hiモードに切り替える場合、およびそれとは反対にHV HiモードからHV Loモードに切り替える場合、その切り替え過程で一時的に直結モード(固定モード)を設定する。言い換えれば、HV LoモードとHV Hiモードとの間の切り替えは、直結モード(固定モード)を経由して行われる。
図12には、CDモードが選択されている際に各走行モードを定めるためのマップの一例を示している。このマップの横軸は車速を示し、縦軸は要求駆動力を示している。なお、車速は車速センサにより検出されたデータから求めることができ、要求駆動力はアクセル開度センサにより検出されたデータから求めることができる。
図12に示す例では、後進走行している場合には、要求駆動力の大きさに関わらずシングルモードを設定し、また前進走行しており、要求駆動力が第1駆動力F1よりも小さい場合(減速要求を含む)に、シングルモードを設定するように構成されている。このシングルモードを設定する領域は、第2モータ7やリヤモータ30の特性などに基づいて定められている。なお、シングルモードを設定する領域にハッチングを付してある。
また、前進走行しており、かつ要求駆動力が第1駆動力F1よりも大きい場合には、デュアルモードが設定される。さらに、第1車速V1よりも高車速である場合や、第2車速V2よりも高車速でありかつ要求駆動力が第2駆動力F2よりも大きい場合には、HV走行モードが設定される。なお、HV走行モードは、低車速域から高車速域に亘って駆動力を出力できるため、蓄電装置47の充電残量が下限値近傍となった場合などには、シングルモードやデュアルモードが設定されるべき領域であっても、HV走行モードを設定することがある。
さらに、HV走行モードを設定する場合においては、車速と要求駆動力に応じてHV LoモードやHV Hiモード、あるいは直結モードのいずれかの走行モードを選択するように構成されている。具体的には、比較的低車速の場合や要求駆動力が比較的大きい場合に、HV Loモードが選択され、比較的高車速でかつ要求駆動力が比較的小さい場合に、HV Hiモードが選択され、車両の走行状態がHV LoモードとHV Hiモードとを設定する領域の間の運転点(車速と要求駆動力とに基づいた値)の場合に、直結モードが選択されるように構成されている。
また、上記のHV Loモード、直結モード、HV Hiモードは、図12に示す各ラインを運転点が横切ることにより切り替えるように構成されている。具体的には、図12における「Lo←Fix」のラインや「Lo→Fix」のラインを運転点が横切った場合に、直結モードとHV Loモードとが相互に切り替えられるように構成されている。同様に、図12における「Fix←Hi」のラインや「Fix→Hi」のラインを運転点が横切った場合に、HV Hiモードと直結モードとが相互に切り替えられるように構成されている。したがって、CDモードにおいても、HV LoモードからHV Hiモードに切り替える場合、およびそれとは反対にHV HiモードからHV Loモードに切り替える場合、その切り替え過程で一時的に直結モード(固定モード)を設定する。言い換えれば、HV LoモードとHV Hiモードとの間の切り替えは、直結モード(固定モード)を経由して行われる。
なお、図11や図12に示す走行モードを設定する領域や、HV走行モードでのHiモードとLoモードとの切り替えを行うためのラインは、第1駆動装置2を構成する各部材の温度や、蓄電装置47あるいは電力制御装置44,45,46の温度、もしくは蓄電装置47の充電残量などに応じて変動するように構成してもよい。
この発明で対象とするハイブリッド車両では、その一例を上述したように、エンジン5を駆動して走行するHVモードでのHiモードとLoモードとの間でモードを切り替える場合、直結モードを一時的に設定する。これらのモードの切り替えは、第1クラッチ機構CL1と第2クラッチ機構CL2との係合および解放の状態を変更することにより実行され、またその係合および解放の状態の変更は、ショックの抑制や耐久性の向上などの要請からトルクが急変しないように所定の時間を掛けて実行される。これに対して、直結モードは、前述したように各クラッチ機構CL1,CL2を共に係合させて設定されるから、エンジン5と出力ギヤ21あるいは前輪1R,1Lとが回転数差が変化しないように連結(直結)される。すなわち、車速の変化に応じてエンジン回転数が変化させられる。したがって、車速の変化が急激もしくは急速であれば、モードの切り替えの過程で直結モードが設定されている間に、エンジン回転数が急激にもしくは急速に変化させられる。エンジン回転数が過度に引き下げられると振動が生じたり、あるいはエンジンストールに到ったりするので、この発明に係る制御装置は、そのような不都合を回避するために、走行モードの切り替えの制御を以下に説明するように実行する。
図13はその制御の一例を説明するためのフローチャートであって、例えばハイブリッド車両がHV Hiモードで走行している場合に、前述した統合ECU49によって実行される。図13に示す制御例では、先ず、車速の変化速度ΔVが予め定めたしきい値αを超えているか否かが判断される(ステップS1)。車速の変化速度ΔVは、車速センサによって得られる車速信号を時間微分することによって求めることができる。あるいは図13に示すルーチンを所定の短時間ごとに繰り返し実行し、その短時間ごとの車速の差分あるいは直近の複数の差分の平均値などを車速の変化速度ΔVとしてもよい。また、しきい値αは、走行モードの切り替えに要する時間や車速などに基づいて、直結モードが設定されている間にエンジン回転数が過度に低下しないように定められており、実車による実験やシミュレーションなどによって予め求めておくことができる。その一例を図14に模式的に示してある。ここに示す例は、車速に応じて大きい値に設定されるしきい値αの例であり、所定の車速以下であれば、しきい値αは一定値に維持され、所定車速を超える車速の場合には、車速の増大に応じてしきい値αの値が大きくなる。高車速の場合には、エンジン回転数も高回転数になっていて急速に減速しても、エンジン回転数が直結モード中に、振動を悪化させたりあるいはエンジンストールに到ったりする低回転数になりにくいからである。
ステップS1で肯定的に判断された場合には、走行モードの切り替え(モード遷移)が制限される(ステップS2)。一例として、HV Hiモードで走行している状態で車速の低下によって前述した図11あるいは図12に示すマップに基づきHV Loモードへの切り替え判断が成立しても、その切り替えが禁止される。したがって、この場合は設定するべき走行モードとして、HV Hiモードが選択される。
これに対してステップS1で否定的に判断された場合、すなわち車速の変化速度ΔVがしきい値α以下の場合には、通常のモード要求が行われる(ステップS3)。この通常のモード要求は、前述した図11あるいは図12に示すマップに基づく走行モードの選択であり、例えば車速などの走行状態がHV Hiモードの領域からHV Loモードの領域の走行状態に変化した場合、HV Hiモードから直結モードに一旦切り替え、その後にHV Loモードに切り替える制御要求である。すなわち、この発明では、車速の変化速度ΔVがしきい値αを超えている場合には、走行モードの切り替えのための制御の内容が、車速の変化速度ΔVがしきい値α以下の場合の制御の内容とは異なるものとされる。
上記のステップS2の制御あるいはステップS3の制御が実行された後に走行モードの調停(モード調停)が実行される(ステップS4)。すなわち、走行モードの切り替えについて実行するべき制御が確定される。具体的には、車速の変化速度ΔVがしきい値αを超えていることにより走行モードの切り替えがステップS2で制限された場合には、その時点に設定されている走行モードを継続して設定することになる。これに対して車速の変化速度ΔVがしきい値以下であることにより通常のモード要求がステップS3でなされた場合には、前述した図11や図12のマップに基づいて定まる走行モードを設定することになる。
このようにしてステップS4で確定もしくは選択された走行モードを駆動装置で実際に設定するように制御指令(モード遷移指令)が出力される(ステップS5)。その後、リターンする。なお、ステップS2の制御内容が走行モードり切り替えの禁止であれば、ステップS5での制御は、その時点に既に設定されているHV Hiモードを継続させる制御となる。
上記の制御を行った場合の車速やその変化速度ΔV、さらには各要求の変化を図15にタイムチャートで示してある。ここに示す例は、車速がある程度高車速であることによりHV Hiモードで走行している状態で制動操作などに基づいて減速し、その結果、HV Loモードへの切り替えの判断がマップに基づいて成立した例である。所定の車速で走行している状態でのt1時点に減速操作され、車速が低下する。その変化速度(もしくは減速度)がしきい値αを超えることにより、t1時点もしくはその直後にモード遷移の制限要求が成立する。
図11あるいは図12に示すように、ハイブリッド車両の運転点(運転状態)は、車速が低下することによりHV Hiモードの領域からHV Loモードの領域に変化する。したがって、図15に示すように車速がそれらの運転領域の境界線で表される境界車速(切替車速)を越えると(t2時点)、そのt2時点に走行モードをHV HiモードからHV Loモードに切り替える判断、すなわち基本切替要求が成立する。しかしながら、この時点では上述したモード遷移の制限要求が成立しているので、これらの要求の調停の結果としての調停後切替要求は成立しない。すなわち走行モードは従前のままとなる。
そして、車速が「0」などの所定の車速まで低下すると(t3時点)、車速の変化速度ΔVがしきい値α以下となり、それに伴ってモード遷移制限要求が不成立となる。この時点で前述した基本切替要求が成立していると、調停後切替要求が成立し、走行モードを基本切替要求に即して切り替える制御が実行される。
したがって、HV HiモードからHV Loモードに切り替えることに伴って過渡的に直結モードを設定し、また走行モードの切り替えに所定の時間を要するとしても、直結モードを一時的に設定する時点には車速の変化速度ΔVが遅くなっているから、直結モードが設定されている間の車速の変化量すなわちエンジン回転数の低下量が小さくなる。そのため、エンジン回転数が車速の低下によって過度に低回転数に引き下げられることを回避もしくは抑制でき、その結果、エンジン回転数の低下による振動やエンジンストールに到ることなどを抑制もしくは回避することができる。
なお、この発明の制御装置は、車速の変化に伴ってエンジン回転数が何らかの不都合を生じる回転数になることを抑制もしくは回避するように構成された装置である。したがって、走行モードの切り替えの過渡時に直結モードが一時的に設定されることによる不都合を抑制もしくは回避するためには、上述した制御に替えて図16に示す制御を実行することとしてもよい。図16はこの発明の制御装置で実行する他の制御例を説明するためのフローチャートであり、この制御例は、エンジン回転数が大きく変化してしまう以前に直結モードを一時的に設定するように走行モードの切り替えを実行する制御例である。
図16に示す制御例においても、先ず、車速の変化速度ΔVが予め定めたしきい値αを超えているか否かが判断される(ステップS11)。ステップS11で肯定的に判断された場合には、走行モードの切り替え(モード遷移)を優先的に実行する要求が成立する(ステップS12)。ここで、モード遷移を優先する要求とは、車速の変化に伴って切り替え判断が成立することが予想される走行モードの切り替えを、その切り替え判断(切り替え要求)が成立する前に実行することの要求である。例えば、HV Hiモードで走行している状態で車速が低下した場合、切り替えて設定する走行モードはHV Loモードであるから、ステップS12では車速がそれらの走行モードの境界車速にまで低下する以前に、言い換えれば図11や図12に示すマップに基づく走行モード切り替えの判断が成立する以前に、そのような走行モードの切り替え判断を成立させる。
これに対してステップS11で否定的に判断された場合、前述した図13に示す制御例と同様に、通常のモード要求が行われる(ステップS13)。この通常のモード要求は、例えば車速などの走行状態がHV Hiモードの領域からHV Loモードの領域の走行状態に変化した場合、HV Hiモードから直結モードに一旦切り替え、その後にHV Loモードに切り替える制御要求である。
そして、前述した図13に示す制御例と同様に、上記のステップS12の制御あるいはステップS13の制御が実行された後に走行モードの調停(モード調停)が実行される(ステップS14)。具体的には、モード遷移優先要求が成立している場合には、直ちに走行モードを切り替えることが選択され、これとは反対に通常のモード要求が成立している場合には、車速が各走行モードの境界車速に低下するのを待って走行モードを切り替えることが選択される。ついで、ステップS14で確定もしくは選択された走行モードを駆動装置で実際に設定するように制御指令(モード遷移指令)が出力される(ステップS15)。その後、リターンする。
上記の図16に示す制御を行った場合の車速やその変化速度ΔV、さらには各要求の変化を図17にタイムチャートで示してある。ここに示す例は、車速がある程度高車速であることによりHV Hiモードで走行している状態で制動操作などに基づいて減速し、それに伴ってHV Loモードに切り替える例である。所定の車速で走行している状態でのt11時点に減速操作され、車速が低下する。その変化速度(もしくは減速度)がしきい値αを超えることにより、t11時点もしくはその直後にモード遷移優先要求が成立する。
図11あるいは図12に示すように、車速が低下することによりハイブリッド車両の運転点(運転状態)がHV Hiモードの領域からHV Loモードの領域に変化すると、走行モードをそのように切り替える判断が成立する。しかしながらt11時点もしくはその直後では、車速が境界車速まで低下していないので、図11や図12に示すマップに基づく走行モードの切り替え判断は成立しない。図16に示す制御例では、マップに基づく走行モードの切り替え判断によらずに、モード遷移優先要求によって走行モードの切り替え判断を成立させる。したがって、基本切替要求が成立していないものの、これらの要求の調停の結果としての調停後切替要求が成立する。すなわち走行モードをHV HiモードからHV Loモードに切り替える。
その後、車速が境界車速を越えて低下すると(t12時点)、走行モードを切り替える基本切替要求が成立する。しかしながら、調停後切替要求が既に成立しているので、走行モードの切り替え制御はそのまま継続され、新たな変更はない。そして、車速が「0」などの所定の車速まで低下すると(t13時点)、車速の変化速度ΔVがしきい値α以下となり、それに伴ってモード遷移優先要求が不成立となる。この時点で前述した基本切替要求が成立していると、調停後切替要求が成立したままとなる。すなわち、走行モードはHV Loモードとされる。
したがって、HV HiモードからHV Loモードに切り替えることに伴って過渡的に直結モードを設定し、また走行モードの切り替えに所定の時間を要するとしても、直結モードを一時的に設定する時点の車速が充分に高車速であるから、直結モードが設定されている間の車速の変化によってエンジン回転数が過度に低回転数に引き下げられることがない。そのため、エンジン回転数の低下による振動やエンジンストールに到ることなどを抑制もしくは回避することができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、図1および図2に示すパワートレーン以外のパワートレーンを備えたハイブリッド車両の制御装置に適用することができる。また、直結モードでは車速の変化に応じてエンジン回転数が強制的に変化させられることは減速時に限られず、増速時にも生じるので、この発明の制御装置は車速が増大することに伴う走行モードの切り替えのための制御にも適用することができる。
1R,1L…前輪、 2…第1駆動装置、 5…エンジン、 6…第1モータ、 7…第2モータ、 8…動力分割機構、 9…分割部、 10…変速部、 11,17,32…サンギヤ、 12,18,26,33,42…リングギヤ、 13,19,34…ピニオンギヤ、 14,20,35…キャリヤ、 30…リヤモータ、 47…蓄電装置、 CL1…第1クラッチ機構、 CL2…第2クラッチ機構、 CL3…第3クラッチ機構、 48…ECU、 49…統合ECU、 50…MG ECU、 51…エンジンECU、 52…クラッチECU、 F…冷却ファン。

Claims (1)

  1. エンジンが出力したトルクをモータと出力部材とに分割する差動機構を備え、前記エンジンの回転数と前記出力部材の回転数との比率である変速比を変化させることの可能な走行モードである少なくとも二つの可変速モードと、前記変速比が所定の一定値に固定される走行モードである固定モードを選択でき、かついずれかの可変速モードから他の可変速モードに切り替える際に前記固定モードを設定するように構成されたハイブリッド車両の制御装置において、
    前記ハイブリッド車両の車速の変化速度が予め定めた所定値を超えているか否かを判断し、
    前記車速の変化速度が予め定めた所定値を超えている場合には、前記いずれかの可変速モードから前記固定モードを経由して前記他の可変速モードに切り替える制御の内容を、前記車速の変化速度が前記所定値以下の場合の制御内容とは異ならせる
    ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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