JP2020063494A - 鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】758MPa以上の降伏強度と優れた低温靭性とを有する鋼材を提供する。【解決手段】本実施形態による鋼材は、化学組成が質量%で、C:0.020超〜0.060%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.80〜6.00%、P:0.050%以下、S:0.0200%以下、Cr:9.00〜12.00%未満、Ni:0.20〜1.50%、Nb:0.20超〜0.50%、sol.Al:0.005〜0.100%、N:0.002〜0.050%、O:0.020%以下、及び、残部:Fe及び不純物、からなり、かつ、式(1)を満たし、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×108〜2.00×1010個/m2である。降伏強度は758MPa以上であり、−60℃における吸収エネルギーは100J以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材に関し、さらに詳しくは、炭酸ガス(COガス)を含有する環境であるスイート環境での使用に適したスイート環境用鋼材に関する。
油井及びガス井(以下、油井及びガス井を総称して、単に「油井」という)には、油井用継目無鋼管に代表される油井用鋼材が利用されている。油井のうち、炭酸ガスを含有する180℃以下のスイート環境の油井では、油井用鋼材として、API(全米石油協会)で規定されたAPI−13Cr鋼材が多用されている。API−13Cr鋼材は、Cr含有量が13%程度の鋼材であり、優れた耐炭酸ガス腐食性を有する。最近では、鋼材中のC含有量をAPI−13Cr鋼材よりもさらに低減することにより耐食性がさらに高められた、スーパー13Cr鋼材もスイート環境に利用されている。
ところで、油井の深井戸化により、油井用鋼材には従来よりも高い降伏強度が要求されている。上述のAPI−13Cr鋼材、及び、スーパー13Cr鋼材の降伏強度は80ksi級(552〜655MPa未満)であるが、最近では、110ksi以上(758MPa以上)の降伏強度が要求されている。
最近ではさらに、寒冷地や海底等での油井開発が進んでいるため、油井用鋼材には、高い降伏強度だけなく、優れた低温靭性も要求されている。
特開2002−363708号公報(特許文献1)、特開2009−7658号公報(特許文献2)、及び、特開2010−168646号公報(特許文献3)は、高い降伏強度と優れた低温靭性とを備えた油井用鋼材を提案している。
特許文献1に開示されたマルテンサイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.01〜0.1%、Cr:9〜15%、N:0.1%以下、Si:0.05〜1%、Mn:0.05〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:0.1〜7.0%、Al:0.0005〜0.05%を含有し、必要に応じてさらに、Mo:0.05〜5%、Cu:0.05〜3%、Ti:0.005〜0.5%、V:0.005〜0.5%、Nb:0.005〜0.5%、B:0.0002〜0.005%、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜0.005%、及び、REM:0.0003〜0.005%のうちの1種以上を含有し、残部がFe及び不純物からなる。このマルテンサイト系ステンレス鋼ではさらに、旧オーステナイト粒界に析出している炭化物の量が0.5体積%以下である。この文献では、粒界に析出しているM23型の炭化物が靭性低下の原因であり、M23型の炭化物に代えて、M23型の炭化物よりも微細なMC型の炭化物を析出させることで、鋼材のC含有量を極度に下げることなく、良好な靭性が得られると記載されている(段落[0011]及び[0012]参照)。
特許文献2に開示された油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管は、mass%で、C:0.010%未満、Si:1.0%以下、Mn:0.1〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.10%以下、Cr:10〜14%、Ni:0.1〜4.0%、N:0.05%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する。この化学組成を有する鋼に対して焼入れ処理後に450〜550℃での焼戻しを実施することにより、降伏強度が110ksi級の高強度とシャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrsが−60℃以下の優れた低温靭性とを兼備することができる、と特許文献2には記載されている(特許文献2の段落[0008]参照)。
特許文献3に開示された油井用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管は、mass%で、C:0.020%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.1〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.10%以下、Cr:10〜14%、Ni:3%以下、Nb:0.03〜0.2%、N:0.05%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する。この継目無鋼管はさらに、析出Nb量がNb換算で0.020%以上である組織を有する。析出Nbは、主としてNb炭窒化物であり、平均粒径が3〜15nmの球形状の析出物である(特許文献3の段落[0037])。この文献では、Nbを含有して平均粒径が3〜15nm程度の微細なNb炭窒化物を析出することにより、M23型炭化物の粒界析出を抑制し、その結果、靭性が向上すると記載されている(特許文献3の段落[0036]及び[0037]参照)。
特開2002−363708号公報 特開2009−7658号公報 特開2010−168646号公報
上述の特許文献1〜3の油井用鋼材は、API−13Cr鋼材及びスーパー13Cr鋼材と比較して、優れた強度及び低温靭性を有する。しかしながら、特許文献1のマルテンサイト系ステンレス鋼では、110ksi(758MPa)以上の高強度が得られるものの、さらに優れた低温靭性が求められる場合がある。
また、特許文献2及び特許文献3の油井用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管では、炭化物の析出量を少なくするために、C含有量を0.020%以下と低く抑えている。Cはオーステナイト生成元素であるため、C含有量が低くなれば、マルテンサイトが安定して得られず、降伏強度が低下してしまう。C含有量を低くする場合、オーステナイト生成元素であるNi含有量を高めれば、マルテンサイトを安定して得ることができる。しかしながら、Niは高価であるため、Ni含有量を高めれば、製造コストが高くなる。
本開示の目的は、C含有量が0.020%よりも高くても、758MPa以上の降伏強度と優れた低温靭性とを両立可能な鋼材を提供することである。
本開示による鋼材は、化学組成が質量%で、C:0.020超〜0.060%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.80〜6.00%、P:0.050%以下、S:0.0200%以下、Cr:9.00〜12.00%未満、Ni:0.20〜1.50%、Nb:0.20超〜0.50%、sol.Al:0.005〜0.100%、N:0.002〜0.050%、O:0.020%以下、V:0〜0.50%、Cu:0〜2.00%、Mo:0〜1.00%、Ca:0〜0.0100%、Mg:0〜0.0100%、B:0〜0.0050%、及び、残部:Fe及び不純物、からなり、かつ、式(1)を満たし、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mであり、降伏強度が758MPa以上であり、−60℃における吸収エネルギーが100J以上である。
5.7≦Nb/C≦9.7 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本開示による鋼材は、C含有量が0.020%よりも高くても、758MPa以上の降伏強度と優れた低温靭性とを両立可能である。
図1は、C含有量及びNb含有量以外が本実施形態の化学組成の範囲内の鋼材における、Nb含有量及びC含有量と、降伏強度及び低温靭性との関係を示す図である。
本発明者らは、180℃以下のスイート環境での使用を想定された鋼材において、758MPa以上(110ksi以上)の降伏強度と、優れた低温靭性とを両立させる方法について調査検討し、次の知見を得た。なお、本明細書において、スイート環境とは、0.2barよりも高い分圧のCOガスを含有し、HS分圧が0.003bar未満の環境を意味する。
従前のAPI−13Cr鋼材やスーパー13Cr鋼材(以下、API−13Cr鋼材及びスーパー13Cr鋼材を纏めて「従前の13Cr鋼材」という)では、焼戻し温度を高めるほど、吸収エネルギーが高くなり、優れた低温靭性が得られる。一方、降伏強度については、焼戻し温度を高めるほど低下するものの、焼戻し温度がAc1変態点を超えると、鋼中にオーステナイトが生成してオーステナイトとマルテンサイトとの二相組織となり、降伏強度が上昇する。そのため、従前の13Cr鋼材ではAc1変態点を超える高温域(たとえば、650℃よりも高い温度)で焼戻しを実施することにより、高い降伏強度と優れた低温靭性とを確保していた。
しかしながら、従前の13Cr鋼材で適用していた、高温焼戻し処理では、降伏強度を80ksi級(552〜655MPa未満)よりも高めることができないことが判明した。
そこで、本発明者らは、上述の従前の13Cr鋼材で適用したアプローチ(高温焼戻し処理)とは異なるアプローチで、180℃以下のスイート環境において、758MPa以上の高い降伏強度と、−60℃での吸収エネルギーが100J以上となる優れた低温靭性との両立を試みた。
本発明者らは、180℃以下のスイート環境での油井用途に適した鋼材の化学組成として、質量%で、C:0.020超〜0.060%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.80〜6.00%、P:0.050%以下、S:0.0200%以下、Cr:9.00〜12.00%未満、Ni:0.20〜1.50%、sol.Al:0.005〜0.100%、N:0.002〜0.050%、O:0.020%以下、V:0〜0.50%、Cu:0〜2.00%、Mo:0〜1.00%、Ca:0〜0.0100%、Mg:0〜0.0100%、B:0〜0.0050%、及び、残部:Fe及び不純物、からなる化学組成が適切であると考えた。
本発明者らはさらに、上述の化学組成の鋼材にさらに0.20%を超えるNbを含有することにより、Nbを、鋼材の強度を高める析出強化因子として利用するだけでなく、ピンニング粒子として鋼材の旧オーステナイト結晶粒を微細化して低温靭性を高める因子としても利用できるのではないかと考えた。
そこで、本発明者らは、化学組成が質量%で、C:0.020超〜0.060%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.80〜6.00%、P:0.050%以下、S:0.0200%以下、Cr:9.00〜12.00%未満、Ni:0.20〜1.50%、Nb:0.20超〜0.50%、sol.Al:0.005〜0.100%、N:0.002〜0.050%、O:0.020%以下、V:0〜0.50%、Cu:0〜2.00%、Mo:0〜1.00%、Ca:0〜0.0100%、Mg:0〜0.0100%、B:0〜0.0050%、及び、残部:Fe及び不純物、からなる鋼材の、降伏強度及び低温靭性について調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは次の知見を得た。
上述の化学組成を有する鋼材では、焼戻し処理時において円相当径が100nm未満の微細なNb含有析出物が析出する。ここで、円相当径とは、後述のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)による組織観察により得られたNb含有析出物の面積を円の面積と仮定した場合の直径(nm)を意味する。以下、円相当径が100nm未満の微細なNb含有析出物を、「微細Nb含有析出物」ともいう。微細Nb含有析出物は、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物、又は、Nb炭窒化物等(Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物の総称)と他の析出物との複合析出物である。微細Nb含有析出物は、析出強化により、鋼材の降伏強度を引き上げる。
一方、上述の化学組成の鋼材の場合、鋼材中に、円相当径が500nm以上のNb含有析出物も存在する。円相当径が500nm以上のNb含有析出物は、ピンニング粒子として機能し、鋼材の旧オーステナイト粒を微細化する。以下、円相当径が500nm以上のNb含有析出物を「ピンニングNb含有析出物」という。ピンニングNb含有析出物は、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物、又は、Nb炭窒化物等と他の析出物との複合析出物である。ピンニングNb含有析出物の特定方法については後述する。
微細Nb含有析出物は鋼材の強化には寄与するものの、鋼材の旧オーステナイト粒の微細化には寄与しない。一方、ピンニングNb含有析出物は、鋼材の旧オーステナイト粒の微細化には大きく寄与するものの、鋼材の強化には寄与しにくい。そのため、Nbを0.20%よりも高く含有する本実施形態の鋼材では、微細Nb含有析出物と、ピンニングNb含有析出物とが共存することにより、高い降伏強度と優れた低温靭性との両立ができる。
しかしながら、本発明者らのさらなる調査の結果、上述の化学組成において、単に0.20%超のNbを含有するだけでは、高い降伏強度と優れた低温靭性との両立が得られない場合があることが分かった。この原因について、本発明者らは、上述の化学組成において、C含有量に対するNb含有量の比に適切な範囲が存在するのではないかと考えた。そこで、本発明者らは、上述の化学組成をベースとして、Nb含有量及びC含有量を変化させ、降伏強度及び低温靭性についてさらに調査を行った。
図1は、C含有量及びNb含有量以外の元素含有量が上述の化学組成の範囲内の鋼材における、Nb含有量及びC含有量と、降伏強度及び低温靭性との関係を示す図である。図1中の「○」印は、鋼材の降伏強度が758MPa以上であり、かつ、−60℃での吸収エネルギーが100J以上であることを示す。図1中の「×」印は、鋼材の降伏強度が758MPa未満である、又は、−60℃での吸収エネルギーが100J未満であることを示す。
図1を参照して、Nb含有量が0.20%を超える範囲において、758MPa以上の降伏強度と、100J以上の−60℃での吸収エネルギーとを両立させるためには、C含有量に対するNb含有量の比が式(1)を満たす必要があることが分かった。
5.7≦Nb/C≦9.7 (1)
そして、式(1)を満たす化学組成の鋼材を適切な条件で製造することにより、鋼材中のピンニングNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mとなり、その結果、758MPa以上の降伏強度と100J以上の−60℃での吸収エネルギーとを両立できることが分かった。
以上の知見により完成した本実施形態の鋼材は、化学組成が質量%で、C:0.020超〜0.060%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.80〜6.00%、P:0.050%以下、S:0.0200%以下、Cr:9.00〜12.00%未満、Ni:0.20〜1.50%、Nb:0.20超〜0.50%、sol.Al:0.005〜0.100%、N:0.002〜0.050%、O:0.020%以下、V:0〜0.50%、Cu:0〜2.00%、Mo:0〜1.00%、Ca:0〜0.0100%、Mg:0〜0.0100%、B:0〜0.0050%、及び、残部:Fe及び不純物、からなり、かつ、式(1)を満たす。そして、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mである。この鋼材の降伏強度は758MPa以上であり、−60℃における吸収エネルギーが100J以上である。
5.7≦Nb/C≦9.7 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上述のNb含有析出物とは、析出物中のNb含有量が質量%で50%以上の析出物である。Nb含有析出物はたとえば、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物、又は、Nb炭窒化物等(Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物の総称)と他の析出物との複合析出物である。
上述の「降伏強度が758MPa以上」とは、ASTM E8に準拠した常温(25℃)大気中での引張試験により得られた0.2%耐力が、758MPa以上であることを意味する。より具体的には、鋼材の厚さ中心位置から採取した直径6.35mm、平行部長さ35mmの丸棒試験片を用いてASTM E8に準拠した常温(25℃)大気中での引張試験により得られた0.2%耐力が、758MPa以上であることを意味する。
上述の「−60℃における吸収エネルギーが100J以上」とは、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験において、−60℃における吸収エネルギーが100J以上であることを意味する。より具体的には、鋼材の厚さ中心位置から採取した、10mm×10mm×55mmのVノッチ試験片は、Vノッチ試験片の長手方向(Longitudinal−direction)は鋼材の幅方向に平行であり、Vノッチ角度が45°であり、ノッチ深さが2mmであり、ノッチ底半径が0.25mmであり、ノッチが鋼材の軸方向に延びており、このVノッチ試験片を用いて、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験を実施して得られた−60℃における吸収エネルギーが100J以上であることを意味する。
鋼材の厚さ中心位置とは、鋼材が鋼板である場合、鋼板の板厚中心位置に相当し、鋼材が棒鋼である場合、棒鋼の軸方向に垂直な断面での中心位置に相当し、鋼材が鋼管である場合、肉厚中心位置に相当する。鋼材の幅方向とは、鋼材が鋼板である場合、鋼板の圧延方向及び板厚方向に垂直な方向(鋼板の幅方向)に相当し、鋼材が棒鋼である場合、棒鋼の径方向に相当し、鋼材が鋼管である場合、鋼管の軸方向(長手方向)及び肉厚方向に垂直な方向に相当する。鋼材の軸方向とは、鋼材が鋼板である場合、圧延方向に相当し、鋼材が棒鋼又は鋼管である場合、鋼管又は棒鋼の中心軸に平行な方向に相当する。
上記鋼材の化学組成は、V:0.01〜0.50%を含有してもよい。
上記鋼材の化学組成は、Cu:0.10〜2.00%、及び、Mo:0.10〜1.00%からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
上記鋼材の化学組成は、Ca:0.0005〜0.0100%、Mg:0.0005〜0.0100%、及び、B:0.0005〜0.0050%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上記鋼材は、油井用鋼管であってもよい。ここで、油井用鋼管とは、油井及び/又はガス井の掘削、原油及び/又は天然ガスの採取に用いられる鋼管を意味する。油井用鋼管とはたとえば、ケーシング、チュービング、ドリルパイプ等である。油井用鋼管は好ましくは継目無鋼管である。
上記鋼材は特に、180℃以下のスイート環境での油井用途に適する。ここで、スイート環境とは、0.2barよりも高い分圧のCOガスを含有し、HS分圧が0.003bar未満の環境を意味する。ただし、上記鋼材は、180℃以下のスイート環境での油井用途に限定されない。上記鋼材は、高い降伏強度と優れた低温靭性が要求される用途に広く適用可能である。なお、ここでいう「油井」とは、油井及びガス井の総称である。
以下、本実施形態による鋼材について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態による鋼材は、油井用途に適しており、さらに具体的には、180℃以下のスイート環境の油井用途に適している。本実施形態による鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.020超〜0.060%
炭素(C)は、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Cはさらに、熱間加工工程及び焼入れ処理工程において500nm以上の円相当径のNb含有析出物(ピンニングNb含有析出物)を形成し、ピンニング効果により鋼材の結晶粒を微細化する。これにより、鋼材の低温靭性が高まる。Cはさらに、焼戻し処理工程において100nm未満の円相当径のNb含有析出物(微細Nb含有析出物)を形成して、析出強化により鋼材の強度を高める。C含有量が0.020%以下であれば、C以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.060%を超えれば、C以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材の低温靭性が低下してしまう。したがって、C含有量は0.020超〜0.060%である。C含有量の好ましい下限は0.021%であり、さらに好ましくは0.023%である。C含有量の好ましい上限は0.055%であり、さらに好ましくは0.050%である。
Si:0.05〜1.00%
ケイ素(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が0.05%未満であれば、Si以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Si含有量が1.00%を超えれば、Si以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜1.00%である。Si含有量の好ましい下限は0.07%であり、さらに好ましくは0.10%である。Si含有量の好ましい上限は0.98%であり、さらに好ましくは0.90%である。
Mn:0.80〜6.00%
マンガン(Mn)は、鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Mn含有量が0.80%未満であれば、Mn以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、これらの効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が6.00%を超えれば、Mn以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Mn含有量は0.80〜6.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.85%であり、さらに好ましくは0.90%であり、さらに好ましくは0.95%であり、さらに好ましくは1.00%であり、さらに好ましくは1.50%超である。Mn含有量の好ましい上限は5.95%であり、さらに好ましくは5.50%である。
P:0.050%以下
燐(P)は不純物である。すなわち、P含有量は0%超である。Pは、粒界に偏析して鋼材の耐炭酸ガス腐食性を低下する。粒界に偏析したPはさらに、鋼材の低温靭性を低下する。したがって、P含有量は0.050%以下である。P含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.035%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、P含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、より好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。
S:0.0200%以下
硫黄(S)は不純物である。すなわち、S含有量は0%超である。Sは、粒界に偏析して鋼材の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.0200%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0100%であり、さらに好ましくは0.0050%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、S含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、より好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
Cr:9.00〜12.00%未満
クロム(Cr)は、鋼材の耐食性を高め、特に、鋼材の耐炭酸ガス腐食性を高める。Cr含有量が9.00%未満であれば、Cr以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、この効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が12.00%以上であれば、Cr以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、フェライトが生成しやすくなり、マルテンサイトが安定して得られにくくなる。したがって、Cr含有量は9.00〜12.00%未満である。Cr含有量の好ましい下限は9.20%であり、さらに好ましくは9.50%である。Cr含有量の好ましい上限は11.95%であり、さらに好ましくは11.90%である。
Ni:0.20〜1.50%
ニッケル(Ni)は、鋼材の耐炭酸ガス腐食性、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)、及び、耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)を高める。Niはさらに、オーステナイト生成元素であり、マルテンサイト組織を得られやすくする。Ni含有量が0.20%未満であれば、Ni以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、これらの効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が1.50%を超えれば、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は0.20〜1.50%である。Ni含有量の好ましい下限は0.25%であり、さらに好ましくは0.28%である。Ni含有量の好ましい上限は1.45%であり、さらに好ましくは1.40%である。
Nb:0.20超〜0.50%
ニオブ(Nb)はC又はN等と結合してNb含有析出物を形成する。Nb含有析出物のうち、円相当径が500nm以上のピンニングNb含有析出物は、ピンニング効果により鋼材の旧オーステナイト粒を微細化する。これにより、鋼材の低温靱性が高まる。さらに、Nb含有析出物のうち、円相当径が100nm未満の微細Nb含有析出物は、析出強化により鋼材の降伏強度を高める。Nb含有量が0.20%以下であれば、Nb以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Nb含有量が0.50%を超えれば、Nb以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、Nb含有析出物が過剰に生成して鋼材の低温靱性が低下する。したがって、Nb含有量は0.20超〜0.50%である。Nb含有量の好ましい下限は0.21%であり、さらに好ましくは0.22%である。Nb含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
sol.Al:0.005〜0.100%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。sol.Al含有量が0.005%未満であれば、Al以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、sol.Al含有量が0.100%を超えれば、Al以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、粗大な酸化物系介在物が生成して、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、sol.Al含有量は0.005〜0.100%である。sol.Al含有量の好ましい下限は0.008%であり、さらに好ましくは0.015%である。sol.Al含有量の好ましい上限は0.095%であり、さらに好ましくは0.085%である。本明細書にいうsol.Al含有量は、酸可溶Alの含有量を意味する。
N:0.002〜0.050%
窒素(N)はオーステナイト生成元素であり、マルテンサイトを安定して生成しやすくする。N含有量が0.002%未満であれば、N以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、N含有量が0.050%を超えれば、N以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、粗大な窒化物が生成してしまい、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、N含有量は0.002〜0.050%である。N含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.008%である。N含有量の好ましい上限は0.045%であり、さらに好ましくは0.042%である。
O:0.020%以下
酸素(O)は不純物である。すなわち、O含有量は0%超である。Oは粗大な酸化物を形成し、鋼材の低温靱性を低下する。したがって、O含有量は0.020%以下である。O含有量の好ましい上限は0.010%であり、さらに好ましくは0.005%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、O含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、O含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。
本実施形態による鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態による鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
上述の鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Vを含有してもよい。
V:0〜0.50%
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、V含有量は0%であってもよい。Vが含有される場合、Vは炭化物、窒化物、又は、炭窒化物(以下、炭化物、窒化物及び炭窒化物を纏めて「炭窒化物等」という)を形成する。V炭窒化物等は、ピンニング効果により鋼材の旧オーステナイト粒を微細化し、鋼材の低温靱性を高める。Vはさらに、焼戻し時に微細な炭化物を形成して、析出強化により鋼材の降伏強度を高める。V含有量が少しでも含有されれば、これらの効果がある程度得られる。しかしながら、V含有量が0.50%を超えれば、V以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、Vを含有する粗大な炭窒化物等が過剰に生成して、鋼材の低温靱性を低下する。したがって、V含有量は0〜0.50%である。V含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。V含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.20%である。
上述の鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu及びMoからなる群から選択される1種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の耐炭酸ガス腐食性を高める。
Cu:0〜2.00%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。Cuは鋼材の耐炭酸ガス腐食性を高める。Cu含有量が少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が2.00%を超えれば、Cu以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜2.00%である。Cu含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cu含有量の好ましい上限は1.50%であり、さらに好ましくは1.00%である。
Mo:0〜1.00%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mo含有量は0%であってもよい。Moは鋼材の耐炭酸ガス腐食性を高める。Mo含有量が少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、Mo含有量が1.00%を超えれば、Mo以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、Mo含有量は0〜1.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Mo含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%である。
上述の鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg、及び、Bからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の熱間加工性を高める。
Ca:0〜0.0100%
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ca含有量は0%であってもよい。Caが含有される場合、Caは、鋼材中の硫化物を微細化し、鋼材の熱間加工性を高める。Caが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が0.0100%を超えれば、Ca以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.0100%である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0015%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%である。
Mg:0〜0.0100%
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mg含有量は0%であってもよい。Mgが含有される場合、Mgは、鋼材中のSを硫化物として無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Mgが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が0.0100%を超えれば、Mg以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Mg含有量は0〜0.0100%である。Mg含有量の好ましい下限は0%超であり、より好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0012%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0090%であり、より好ましくは0.0050%である。
B:0〜0.0050%
硼素(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、B含有量は0%であってもよい。Bが含有される場合、Bは、鋼材の熱間加工性を高める。Bが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、B含有量が0.0050%を超えれば、B以外の他の元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、鋼材中に粗大なB窒化物が生成して、鋼材の低温靱性が低下する。したがって、B含有量は0〜0.0050%である。B含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0006%である。B含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
[式(1)について]
本実施形態の鋼材の化学組成はさらに、上述の各元素の含有量が上述の範囲内であり、かつ、式(1)を満たす。
5.7≦Nb/C≦9.7 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
F1=Nb/Cと定義する。F1が5.7未満であれば、各元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、C含有量に対してNb含有量が少なすぎる。この場合、円相当径が500nm以上のピンニングNb含有析出物が十分に析出しにくく、鋼材の旧オーステナイト粒を十分に微細化できない。その結果、鋼材の低温靭性が低下する。一方、F1が9.7を超えれば、各元素の含有量が本実施形態で説明する範囲内であっても、C含有量に対してNb含有量が多すぎる。この場合、円相当径が500nm以上のピンニングNb含有析出物が過剰に析出し、特に、粗大なNb含有析出物が多く析出する。その結果、旧オーステナイト粒径の微細化による靱性の向上よりも、粗大なNb含有析出物による靱性劣化が顕著となり、結果として、鋼材の低温靭性が低下する。F1が5.7〜9.7であれば、C含有量に対するNb含有量が適切である。そのため、後述の適切な製造条件で製造することを前提として、円相当径が500nmのピンニングNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mとなり、優れた低温靭性(−60℃での吸収エネルギーが100J以上)が得られる。さらに、円相当径が100nm未満の微細Nb含有析出物も十分に形成されているため、758MPa以上の高い降伏強度が得られる。
なお、F1は、算出された値の小数点第2位の数値を四捨五入して得られる値である。
[ピンニングNb含有析出物の個数密度について]
本実施形態の鋼材ではさらに、円相当径が500nm以上のNb含有析出物(ピンニングNb含有析出物)の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mである。ここで、Nb含有析出物とは、析出物中のNb含有量が質量%で50%以上の析出物であり、具体的には、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物、又は、Nb炭窒化物等(Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物の総称)と他の析出物との複合析出物である。
Nb含有析出物の個数密度(個/m)は次の方法で求めることができる。鋼材の厚さ中央位置から組織観察用サンプルを採取する。鋼材の厚さ中央位置とは、鋼材が鋼板の場合、鋼板の板厚中央位置を意味する。鋼材が鋼管である場合、肉厚中央位置を意味する。鋼材が棒鋼である場合、中心軸を含む位置を意味する。組織観察用サンプルの被検面は鋼材の軸方向に垂直な面とする。鋼材の軸方向とは、鋼材が鋼板である場合、圧延方向を意味し、鋼材が鋼管又は棒鋼である場合、鋼管又は棒鋼の中心軸に平行な方向を意味する。
組織観察用サンプルの被検面中の任意の5視野(各視野面積は120μm×90μm)に対して、1000倍の倍率でSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)による反射電子による組織観察を実施し、各視野から、コントラストに基づいて析出物を特定する。特定された各析出物に対して、SEMのエネルギー分散型X線分析法(Energy Dispersive X−ray Spectrometry:以下、「EDS」ともいう。)による成分分析を実施する。EDSによる成分分析の結果、質量%で50%以上のNbを含有する析出物を、Nb含有析出物と特定する。5視野で特定された各Nb含有析出物の円相当径を、画像処理により求める。そして、5視野で特定されたNb含有析出物のうち、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数をカウントする。5視野で特定された、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数と、5視野の総面積とに基づいて、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度(個/m)を求める。
円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10未満であれば、ピンニングに寄与するNb含有析出物が少なすぎる。この場合、式(1)を満たす化学組成を有する鋼材であっても、十分な低温靱性が得られない。具体的には、−60℃における吸収エネルギーが100J未満になる。一方、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が2.00×1010を超えれば、円相当径が500nm以上のNb含有析出物が過剰に多く生成されてしまい、ピンニング効果に寄与しない粗大なNb含有量析出物が多く存在する。この場合、式(1)を満たす化学組成を有する鋼材であっても、十分な低温靱性が得られず、−60℃における吸収エネルギーが100J未満になる。
円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010であれば、ピンニングに寄与する500nm以上の円相当径のNb含有析出物が適切な数だけ存在している。そのため、式(1)を満たす化学組成を有する鋼材の旧オーステナイト粒が適切に微細化されており、十分な低温靱性が得られる。つまり、−60℃における吸収エネルギーが100J以上になる。また、この場合、円相当径が100nm未満の微細Nb含有析出物も適切な量が存在しているため、式(1)を満たす化学組成を有する鋼材の降伏強度が758MPa以上になる。
円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度の好ましい下限は、1.20×10であり、さらに好ましくは1.30×10であり、さらに好ましくは1.50×10である。円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度の好ましい上限は1.50×1010であり、さらに好ましくは1.00×1010であり、さらに好ましくは9.00×10であり、さらに好ましくは8.00×10である。なお、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の円相当径の上限は特に限定されないが、たとえば、2000nmである。
[鋼材の降伏強度YS]
本実施形態による鋼材の降伏強度YSは758MPa以上(110ksi以上)である。上述の式(1)を満たす化学組成を有し、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mであれば、降伏強度は758MPa以上となる。
降伏強度はASTM E8に準拠した引張試験により得られる。具体的には、鋼材の厚さ中央位置から、丸棒試験片を採取する。ここで、鋼材の厚さ中央位置とは、鋼材が鋼板の場合、鋼板の板厚中央位置を意味する。鋼材が鋼管である場合、肉厚中央位置を意味する。鋼材が棒鋼である場合、中心軸を含む位置を意味する。丸棒試験片の直径は6.35mmとし、平行部の長さは35mmとする。丸棒試験片の軸方向は、鋼材の軸方向と平行とする。ここで、鋼材の軸方向とは、鋼材が鋼板である場合、圧延方向を意味し、鋼材が鋼管又は棒鋼である場合、中心軸と平行な方向を意味する。丸棒試験片を用いて、常温(25℃)、大気中にて引張試験を実施して、降伏強度(MPa)を求める。本明細書では、上述の引張試験で得られた0.2%耐力を、降伏強度(MPa)と定義する。
本実施形態の鋼材の降伏強度は800MPa以上であってもよく、810MPa以上であってもよく、830MPa以上であってもよい。しかしながら、低温靭性を考慮すれば、降伏強度の下限はなるべく低い方が好ましく、758MPa以上が好ましい。本実施形態の鋼材の降伏強度の上限は特に限定されないが、たとえば、900MPaである。
[鋼材の低温靭性]
本実施形態の鋼材は優れた低温靭性を有し、具体的には、−60℃における吸収エネルギーが100J以上である。
鋼材の低温靭性は次の方法で求めることができる。鋼材の厚さ中央位置から、ASTM E23に準拠したVノッチ試験片を採取する。鋼材の厚さ中央位置とは、鋼材が鋼板の場合、鋼板の板厚中央位置を意味する。鋼材が鋼管である場合、肉厚中央位置を意味する。鋼材が棒鋼である場合、中心軸を含む位置を意味する。Vノッチ試験片の長手方向(Longitudinal−direction)に垂直な断面は10mm×10mmの正方形とし、Vノッチ試験片の長手方向の長さは55mmとする。つまり、Vノッチ試験片は、いわゆるフルサイズ試験片である。Vノッチ試験片の長手方向は、鋼材の幅方向と平行である。ここで、鋼材の幅方向とは、鋼材が鋼板である場合、鋼板の圧延方向及び板厚方向に垂直な方向(つまり、鋼板の幅方向)を意味する。鋼材が鋼管である場合、鋼材の幅方向は、鋼管の中心軸方向及び肉厚方向に垂直な方向を意味する。鋼材が棒鋼である場合、鋼材の幅方向は、棒鋼の径方向を意味する。Vノッチ試験片の長さ中央位置(つまり、長さ55mmの中央位置)に、Vノッチを形成する。Vノッチ角度を45°とし、ノッチ深さを2mmとし、ノッチ底半径を0.25mmとする。Vノッチの延びる方向は鋼材の軸方向に平行とする。ここで、鋼材の軸方向とは、鋼材が鋼板である場合、圧延方向を意味する。鋼材が鋼管又は棒鋼である場合、中心軸に平行な方向を意味する。ASTM E23に準拠して、−60℃に冷却したVノッチ試験片に対してシャルピー衝撃試験を実施する。5個のVノッチ試験片に対して上述のシャルピー衝撃試験を実施し、得られた吸収エネルギーの算術平均値を、−60℃での吸収エネルギー(J)と定義する。本実施形態の鋼材では、上述のとおり、−60℃での吸収エネルギーが100J以上である。
[ミクロ組織]
本実施形態による鋼材のミクロ組織は、主としてマルテンサイトからなる。本明細書において「マルテンサイト」とは、フレッシュマルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトの両方を含む。「主としてマルテンサイトからなる」とは、ミクロ組織中のマルテンサイトの体積率が90%以上であることを意味する。組織の残部は、残留オーステナイトである。つまり、残留オーステナイトの体積率は0〜10%である。残留オーステナイトの体積率はなるべく低い方が好ましい。組織中のマルテンサイトの体積率の好ましい下限は90%であり、さらに好ましくは95%である。さらに好ましくは、金属組織は、マルテンサイト単相である。
上述の組織において、少量の残留オーステナイトは、著しい強度の低下を招かず、かつ、鋼の靭性を顕著に高める。しかしながら、残留オーステナイトの体積率が高すぎれば、鋼の強度が顕著に低下する。したがって、残留オーステナイトの体積率は0〜10%である。強度確保の観点から、より好ましい残留オーステナイトの体積率は0〜5%である。上述のとおり、本実施形態の鋼材の組織は、マルテンサイト単相でもよい。したがって、この場合、残留オーステナイトの体積率は0%になる。一方、少しでも残留オーステナイトが存在する場合、残留オーステナイトの体積率は0超〜10%以下であり、さらに好ましくは0超〜5%である。
なお、マルテンサイトの体積率を求める場合、次のX線回折法を用いて求める。具体的には、鋼材の厚さ中央位置から、X線回折用サンプルを採取する。鋼材の厚さ中央位置とは、鋼材が鋼板の場合、鋼板の板厚中央位置を意味する。鋼材が鋼管である場合、肉厚中央位置を意味する。鋼材が棒鋼である場合、中心軸を含む位置を意味する。X線回折用サンプルのサイズは、X線回折を実施できれば、特に限定されない。X線回折用サンプルのサイズはたとえば、15mm×15mm×2mmである。採取された試験片を用いて、α相(フェライト又はマルテンサイト)の(200)面、α相の(211)面、γ相(オーステナイト)の(200)面、γ相の(220)面、及び、γ相の(311)面の各々のX線強度を測定し、各面の積分強度を算出する。X線回折強度の測定において、X線回折装置のターゲットをCoとし、出力を20kV−10mAとする。算出後、α相の各面と、γ相の各面との組み合わせ(2×3=合計6組)ごとに、次式を用いて残留オーステナイト体積率Vγを求める。
γ=100/{1+(Iα×Rγ)/(Iγ×Rα)}
ここで、式中の「Iα」はα相の積分強度であり、「Iγ」はγ相の積分強度である。「Rα」はα相の結晶学的理論計算値であり、「Rγ」はγ相の結晶学的理論計算値である。上記各面の体積率Vγの算術平均値を、残留オーステナイトの体積率(vol.%)と定義する。得られた残留オーステナイトの体積率から、次の式を用いて、マルテンサイトの体積率(vol.%)を求める。
マルテンサイトの体積率=100−残留オーステナイトの体積率Vγ
なお、式(1)を満たす上述の化学組成の鋼材において、降伏強度が758MPa以上であれば、少なくとも、マルテンサイトの体積率が90%以上である。
[鋼材の形状及び用途]
本実施形態による鋼材の形状は、特に限定されない。鋼材はたとえば鋼管、鋼板、棒鋼等である。本実施形態の鋼材は、高い降伏強度と優れた低温靭性が要求される用途に広く適用可能であり、特に、スイート環境の油井用鋼材に好適である。油井用鋼材とは、油井及び/又はガス井の掘削、原油及び/又は天然ガスの採取に用いられる鋼材を意味する。鋼材が鋼管である場合、油井用鋼管とはたとえば、ケーシング、チュービング、ドリルパイプ等である。本実施形態の鋼材が油井用鋼管である場合、油井用鋼管は溶接鋼管であってもよいし、継目無鋼管であってもよい。好ましくは、油井用鋼管は継目無鋼管である。本実施形態の鋼材が油井用鋼管である場合、鋼管の外径、肉厚は特に限定されない。
[製造方法]
本実施形態による鋼材の製造方法は、熱間加工工程と、焼入れ工程と、焼戻し工程とを備える。本実施形態では、鋼材の製造方法の一例として、鋼管の製造方法を説明し、より具体的には、鋼管の一例である継目無鋼管の製造方法を説明する。以下、各工程について詳述する。
[熱間加工工程]
熱間加工工程では、準備された素材を熱間加工して中間鋼材を製造する。鋼材が継目無鋼管である場合、中間鋼材は素管(Hollow Shell)に相当する。
素材は第三者から購入して準備してもよい。また、素材を製造して準備してもよい。素材を製造して準備する場合、たとえば、次の方法により素材を製造する。
上述の化学組成を有する溶鋼を用いて素材を製造する。具体的には、溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを分塊圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の工程により素材(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を準備する。なお、本例では、継目無鋼管の製造方法を例に、本実施形態の鋼材の製造方法を説明するが、素材としてビレットを用いた場合の鋼材(継目無鋼管)の製造方法を以下に説明する。
熱間加工工程では、始めに、ビレットを加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100〜1300℃である。加熱炉から抽出されたビレットに対して熱間加工を実施して、素管(継目無鋼管)を製造する。たとえば、熱間加工方法としてマンネスマン法を実施して、素管を製造する。この場合、穿孔機により丸ビレットを穿孔圧延して素管を製造する。穿孔圧延する場合、穿孔比は特に限定されないが、たとえば、1.0〜4.0である。穿孔圧延されたビレットをさらに、マンドレルミル、レデューサー、サイジングミル等により延伸圧延して素管を製造する。熱間加工工程での累積の減面率は特に限定さないが、たとえば、20〜70%である。
マンネスマン法以外の他の熱間加工方法により、ビレットから素管を製造してもよい。たとえば、本実施形態の鋼材がカップリングのように短尺の厚肉の鋼管である場合、エルハルト・プッシュベンチ法等の熱間鍛造により素管を製造してもよい。また、ユジーンセジュルネ法等の熱間押出により素管を製造してもよい。
熱間加工により製造された素管を放冷する。熱間加工により製造された素管は、常温まで放冷せずに、熱間製管後に補熱(再加熱)した後、焼入れを実施してもよい。
補熱による焼入れ後、焼入れ工程を再度実施してもよい。焼入れ工程及び焼戻し工程は1回実施してもよいし、複数回実施してもよい。熱間製管後に補熱した後焼入れを実施した場合、残留応力を除去することを目的として、焼入れ後であって次工程の熱処理前に、応力除去焼鈍し処理(SR処理)を実施してもよい。
[焼入れ工程]
焼入れ工程では、熱間加工工程で製造された中間鋼材に対して、焼入れを実施する。本明細書において、「焼入れ」とは、中間鋼材をAc3点以上の焼入れ温度に加熱し、その後、急冷することを意味する。好ましい焼入れ温度は750〜950℃である。焼入れ温度は、補熱、又は加熱を実施する熱処理炉の炉温に相当する。
焼入れ温度が高すぎれば、旧オーステナイト粒の結晶粒が粗大になり、鋼材の低温靭性が低下する。一方、焼入れ温度が低すぎれば、円相当径が500nm以上のNb含有析出物(ピンニングNb含有析出物)が十分に生成せず、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10未満となる。焼入れ温度がAc3点〜950℃であれば、円相当径が500nm以上のNb含有析出物が十分に生成して、個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mとなり、旧オーステナイト粒を微細化できる。そのため、鋼材の低温靭性を高めることができる。焼入れ温度の好ましい下限は750℃であり、さらに好ましくは800℃であり、さらに好ましくは820℃である。焼入れ温度の好ましい上限は940℃であり、さらに好ましくは930℃であり、さらに好ましくは910℃である。
さらに、焼入れ温度での中間鋼材の保持時間は5〜60分である。保持時間が5分未満であれば、焼入れ温度が750〜950℃であっても、500nm以上の円相当径のNb含有析出物が十分に生成しない。そのため、旧オーステナイト粒が十分に微細にならず、中間鋼材の低温靭性が低下する。一方、保持時間が60分を超えれば、焼入れ温度がAc3点〜950℃であっても、オーステナイト粒が粗大になる。そのため、鋼材の低温靭性が低下する。式(1)を満たす化学組成の中間鋼材のAc3点〜950℃の焼入れ温度での保持時間が5〜60分であれば、円相当径が500nm以上のNb含有析出物が十分に生成して、個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mとなり、旧オーステナイト粒を微細化できる。そのため、鋼材の低温靭性を高めることができる。
上記焼入れ温度で上記時間保持した後、鋼材を焼入れ(急冷)する。焼入れ方法はたとえば、焼入れ温度から中間鋼材(素管)を連続的に冷却し、素管の表面温度を連続的に低下させる。連続冷却処理の方法は特に限定されず、周知の方法でよい。連続冷却処理の方法はたとえば、水冷である。水冷方法はたとえば、水槽に素管を浸漬して冷却する方法や、シャワー水冷又はミスト冷却により素管を加速冷却する方法である。焼入れでの平均冷却速度はたとえば、300℃/分以上である。
[焼戻し工程]
焼戻し工程では、上述の焼入れ工程を実施した後、焼戻しを実施する。本明細書において、「焼戻し」とは、焼入れ後の中間鋼材を再加熱して、Ac1変態点以下の焼戻し温度で中間鋼材を保持することを意味する。
焼戻し温度は、鋼材の化学組成、及び、得ようとする降伏強度YSに応じて適宜調整する。つまり、本実施形態の化学組成を有する中間鋼材(素管)に対して、焼戻し温度を調整して、鋼材の降伏強度YSを758MPa以上に調整する。ここで、焼戻し温度とは、焼入れ後の中間鋼材を加熱して、保持する際の熱処理炉の温度に相当する。
本実施形態の式(1)を満たす上述の化学組成の鋼材の場合、従来の13Cr鋼材と異なり、焼戻し温度の低下とともに低温靭性も連続的に低下していくのではなく、焼戻し温度が500〜650℃未満となる温度域において、低温靭性が再び上昇する。この原因については定かではないが、0.20%超のNbを含有する本実施形態の化学組成の鋼材で特有の現象である。したがって、焼戻し温度を500〜650℃とする。
焼戻し温度が500℃未満であれば、十分な低温靭性が得られない。一方、焼戻し温度が650℃を超えれば、本実施形態の化学組成の鋼材において、758MPa以上の降伏強度が得られない。
焼戻し温度が500〜650℃であれば、他の製造条件を満たすことを前提として、本実施形態の化学組成を有する鋼材において、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mとなり、かつ、微細Nb含有析出物も十分に生成する。そのため、鋼材の降伏強度が758MPa以上となり、−60℃での吸収エネルギーが100J以上になる。焼戻し温度のより好ましい下限は540℃であり、さらに好ましくは560℃である。焼戻し温度のより好ましい上限は640℃であり、さらに好ましくは630℃である。
焼戻し温度での保持時間は5〜60分である。焼戻し温度での保持時間が短すぎれば、十分な低温靭性が得られない。一方、焼戻し温度での保持時間が長すぎれば、本実施形態の化学組成の鋼材において、758MPa以上の降伏強度が得られない。焼戻し温度での保持時間が5〜60分であれば、他の製造条件を満たすことを前提として、本実施形態の化学組成を有する鋼材において、降伏強度が758MPa以上となり、優れた低温靭性が得られる。
[温間矯正工程]
上述の焼戻し処理を実施した後、中間鋼材(素管)に対して、必要に応じて、温間での矯正加工(温間矯正)を実施してもよい。つまり、温間矯正工程は実施しなくてもよい。温間矯正工程を実施する場合、上述のとおり、焼戻し温度が500〜650℃であれば、温間矯正を実施するときの中間鋼材の温度が適切であり、温間矯正により過度のひずみが導入されにくい。そのため、上述の焼戻し温度は、温間矯正を実施する場合においても適切である。なお、中間鋼材に曲がりが発生していない場合、温間矯正工程を実施する必要はない。
以上の製造方法により、本実施形態による鋼材を製造することができる。上述の製造方法では、一例として鋼管(継目無鋼管)の製造方法を説明した。しかしながら、本実施形態による鋼材は、鋼板や他の形状であってもよい。鋼板や他の形状の製造方法も、上述の製造方法と同様に、たとえば、熱間加工工程と、焼入れ工程と、焼戻し工程とを備える。
なお、上述の製造方法は一例であり、他の製造方法によって製造されてもよい。つまり、式(1)を満たす上述の化学組成を有し、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mとなる本実施形態の鋼材を製造できれば、製造方法は特に限定されない。上記製造方法は、本実施形態の鋼材を製造する好ましい一例である。
表1に示す化学組成を有する、溶鋼を製造した。表1中の「−」は、該当する元素含有量が検出限界未満であったことを示す。
Figure 2020063494
上記溶鋼を用いて連続鋳造法により、外径310mmの丸ビレットを鋳造した。製造された丸ビレットを1250℃に加熱した後、熱間加工(マンネスマン法による穿孔圧延及び延伸圧延)を実施して、外径244.48mm、肉厚13.84mmの継目無鋼管を製造した。製造した継目無鋼管から、後述する評価試験に用いる試験片が採取できる大きさで、かつ、厚さ13.84mmの湾曲した板状(断面が円弧状)の供試材を採取した。
採取した各試験番号の供試材について、焼入れ処理及び焼戻し処理を実施した。具体的には、焼入れ処理では、各試験番号の供試材に対して、表2に示す焼入れ温度T1℃で、保持時間t1分保持した後、水槽に浸漬して水冷を実施した。焼戻し処理では、焼入れ処理後の供試材に対して、表2に示す焼戻し温度T2℃で保持時間t2分保持した後、常温まで放冷した。なお、焼入れ処理を行った熱処理炉の炉温を焼入れ温度T1(℃)とし、焼戻し処理を行った熱処理の炉温を焼戻し温度T2(℃)とした。
Figure 2020063494
[評価試験]
上記の焼戻し処理後の各試験番号の供試材に対して、Nb析出物個数密度測定試験、降伏強度評価試験、及び、低温靭性評価試験を実施した。
[Nb析出物個数密度測定試験]
各試験番号の供試材の板幅中央位置であって、かつ、板厚(肉厚)中央位置から、組織観察用サンプルを採取した。組織観察用サンプルの被検面は、各試験番号の供試材を採取した継目無鋼管の軸方向に垂直な面とした。組織観察用サンプルの被検面を鏡面研磨した後、被検面中の任意の5視野(各視野面積は120μm×90μm)に対して、1000倍の倍率でSEMによる組織観察を実施した。そして、各視野において、コントラストに基づいて析出物を特定した。特定された各析出物に対して、SEMに付属したEDSによる成分分析を実施した。EDSによる成分分析の結果、質量%で50%以上のNbを含有する析出物を、Nb含有析出物と特定した。5視野で特定された各Nb含有析出物の円相当径を、画像処理により求めた。そして、5視野で特定されたNb含有析出物のうち、円相当径が500nm以上のNb含有析出物(ピンニングNb含有析出物)の個数をカウントした。5視野で特定された、円相当径が500nm以上のNb含有析出物(ピンニングNb含有析出物)の個数と、5視野の総面積とに基づいて、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度(個/m)を求めた。求めた個数密度を表2中の「ピンニングNb含有析出物個数密度」欄に示す。
[降伏強度評価試験]
各試験番号の供試材の板幅中央位置であって、かつ、板厚(肉厚)中央位置から、丸棒試験片を採取した。丸棒試験片の直径は6.35mmとし、平行部の長さは35mmとした。平行部は、供試材を採取した継目無鋼管の軸方向に平行であった。採取した丸棒試験片を用いて、ASTM E8に準拠して、常温(25℃)、大気中での引張試験を実施した。引張試験で得られた0.2%耐力を、降伏強度(MPa)とした。
[低温靭性評価試験]
各試験番号の供試材の板幅中央位置であって、かつ、板厚(肉厚)中央位置から、ASTM E23に準拠したVノッチ試験片を採取した。Vノッチ試験片の長手方向に垂直な断面は10mm×10mmの正方形とし、Vノッチ試験片の長手方向の長さは55mmとした。つまり、フルサイズのVノッチ試験片を準備した。Vノッチ試験片の長手方向は、供試材を採取した継目無鋼管の中心軸方向と肉厚方向とに垂直な方向(つまり、供試材を採取した継目無鋼管の円周方向の接線方向)とした。Vノッチ試験片の長さ中央位置でVノッチを形成した。Vノッチ角度を45°とし、ノッチ深さを2mmとし、ノッチ底半径を0.25mmとした。Vノッチの延びる方向は、供試材を採取した継目無鋼管の中心軸と平行な方向とした。ASTM E23に準拠して、−60℃に冷却したVノッチ試験片に対してシャルピー衝撃試験を実施した。5個のVノッチ試験片に対して上述のシャルピー衝撃試験を実施し、得られた吸収エネルギーの算術平均値を、−60℃での吸収エネルギー(J)と定義した。
なお、各試験番号の供試材のマルテンサイトの体積率を次の方法で求めた。供試材の肉厚中央位置から、X線回折用サンプルを採取した。X線回折用サンプルのサイズは、15mm×15mm×2mmとした。採取されたX線回折用サンプルを用いて、X線回折法により、α相(フェライト又はマルテンサイト)の(200)面、α相の(211)面、γ相(オーステナイト)の(200)面、γ相の(220)面、及び、γ相の(311)面の各々のX線強度を測定し、各面の積分強度を算出した。X線回折法におけるX線回折強度の測定において、X線回折装置のターゲットをCoとし、出力を20kV−10mAとした。算出後、α相の各面と、γ相の各面との組み合わせ(2×3=合計6組)ごとに、次式を用いて残留オーステナイト体積率Vγを求めた。
γ=100/{1+(Iα×Rγ)/(Iγ×Rα)}
ここで、式中の「Iα」はα相の積分強度であり、「Iγ」はγ相の積分強度である。「Rα」はα相の結晶学的理論計算値であり、「Rγ」はγ相の結晶学的理論計算値である。上記各面の体積率Vγの算術平均値を、残留オーステナイトの体積率(vol.%)と定義した。得られた残留オーステナイトの体積率から、次の式を用いて、マルテンサイトの体積率(vol.%)を求めた。
マルテンサイトの体積率=100−残留オーステナイトの体積率Vγ
測定の結果、いずれの試験番号においても、マルテンサイトの体積率は90%以上であった。
[試験結果]
試験結果を表2に示す。表2を参照して、試験番号1〜20の化学組成はいずれも適切であり、F1が式(1)を満たした。さらに、製造条件(焼入れ温度T1、保持時間t1、焼戻し温度T2、保持時間t2)も適切であった。そのため、これらの試験番号において、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度は、1.00×10〜2.00×1010個/mであった。その結果、これらの試験番号の降伏強度は758MPa以上であった。さらに、−60℃での吸収エネルギーは100J以上であり、優れた低温靭性を示した。
一方、試験番号21及び22では、化学組成は適切であったものの、F1が低すぎて、式(1)を満たさなかった。そのため、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度は、1.00×10個/m未満であった。その結果、−60℃での吸収エネルギーが100J未満であった。
試験番号23及び24では、化学組成は適切であったものの、F1が高すぎて、式(1)を満たさなかった。そのため、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度は、2.00×1010個/mを超えた。その結果、−60℃での吸収エネルギーが100J未満であった。
試験番号25では、Nb含有量が低すぎた。その結果、降伏強度が758MPa未満であった。微細Nb含有析出物の生成量が不足し、その結果、降伏強度が低かったと考えられる。
試験番号26では、化学組成が適切であり、F1が式(1)を満たしたものの、焼入れ温度が低すぎた。そのため、熱処理中にオーステナイトへの逆変態が完全には生じなかった。その結果、降伏強度が758MPa未満となった。
試験番号27では、化学組成が適切であり、F1が式(1)を満たしたものの、焼入れ温度が高すぎた。そのため、円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10個/m未満となった。その結果、−60℃での吸収エネルギーが100J未満であった。焼入れ温度が高すぎたため、ピンニングNb含有析出物の個数密度が不十分となり、その結果、旧オーステナイト粒を十分に微細化できなかったと考えられる。
試験番号28では、化学組成が適切であり、F1が式(1)を満たしたものの、焼戻し温度が低すぎた。そのため、化学組成が適切であり、F1が式(1)を満たしていても、−60℃での吸収エネルギーが100J未満であった。
試験番号29では、化学組成が適切であり、F1が式(1)を満たしたものの、焼戻し温度が高すぎた。そのため、化学組成が適切であり、F1が式(1)を満たしていても、降伏強度が758MPa未満であった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
本実施形態による鋼材は、高い降伏強度と優れた低温靭性が要求される用途に広く適用可能であり、特に、スイート環境の油井用鋼材に好適である。より具体的には、本実施形態による鋼材は、180℃以下のスイート環境の油井用途のケーシング、チュービング、ドリルパイプ等の油井用鋼管として好適である。

Claims (5)

  1. 化学組成が質量%で、
    C:0.020超〜0.060%、
    Si:0.05〜1.00%、
    Mn:0.80〜6.00%、
    P:0.050%以下、
    S:0.0200%以下、
    Cr:9.00〜12.00%未満、
    Ni:0.20〜1.50%、
    Nb:0.20超〜0.50%、
    sol.Al:0.005〜0.100%、
    N:0.002〜0.050%、
    O:0.020%以下、
    V:0〜0.50%、
    Cu:0〜2.00%、
    Mo:0〜1.00%、
    Ca:0〜0.0100%、
    Mg:0〜0.0100%、
    B:0〜0.0050%、及び、
    残部:Fe及び不純物、からなり、かつ、式(1)を満たし、
    円相当径が500nm以上のNb含有析出物の個数密度が1.00×10〜2.00×1010個/mであり、
    降伏強度が758MPa以上であり、
    −60℃における吸収エネルギーが100J以上である、
    鋼材。
    5.7≦Nb/C≦9.7 (1)
    ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載の鋼材であって、
    前記化学組成は、
    V:0.01〜0.50%を含有する、
    鋼材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の鋼材であって、
    前記化学組成は、
    Cu:0.10〜2.00%、及び、
    Mo:0.10〜1.00%からなる群から選択される1種以上を含有する、
    鋼材。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の鋼材であって、
    Ca:0.0005〜0.0100%、
    Mg:0.0005〜0.0100%、及び、
    B:0.0005〜0.0050%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、
    鋼材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の鋼材であって、
    前記鋼材は、油井用鋼管である、
    鋼材。
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