JP2020061438A - 太陽電池モジュール用の裏面保護シート - Google Patents

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Abstract

【課題】暗色接着剤層により暗色の外観が付与されている太陽電池モジュール用の裏面保護シートであって、熱ラミネート加工時における暗色の接着剤の流出によるラミネータ機器内等の汚染を防止することができる裏面保護シートを提供すること。
【解決手段】複数のシート状基材を、暗色顔料を含有する接着剤からなる暗色接着剤層12を介して積層してなる多層シートであって、暗色接着剤層12は、厚さが3μm以上10μm以下であり、120℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である、太陽電池モジュール用の裏面保護シート1とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池モジュール用の裏面保護シートに関する。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、受光面側から、透明前面基板、受光面側の封止材、太陽電池素子、非受光面側の封止材、裏面保護シートが順に積層された構成であり、太陽光が太陽電池素子に入射することにより発電する機能を有している。
ところで、太陽電池モジュールは、主として意匠性の向上を目的として外観が黒色又はそれに準ずる暗色(本明細書においてはこれらをまとめて「暗色」とも称する)であることが求められる場合がある。この場合、上記の太陽電池モジュールの最外面に配置される裏面保護シートについても、暗色の外観を有するものであることが意匠上の要求として求められる場合が多くある。
このような要求に応えることができる太陽電池モジュール用の裏面保護シートとして、黒色顔料を含有する樹脂を製膜してなる黒色のポリエステル系樹脂シート等、各種の暗色の樹脂シートの開発が進んでいる(特許文献1参照)。
又、暗色の外観を有する裏面保護シートとして、透明又は白色の樹脂基材を積層してなる多層シートにおいて、各樹脂基材を接合する接着剤層を、暗色の接着剤で形成することにより、暗色の外観を付与した保護シートも開発されている(特許文献2参照)。このような層構成からなる裏面保護シートは、特許文献1に開示されているような暗色の樹脂シートのような樹脂基材を形成する樹脂組成物に顔料を練り込んだタイプの有色樹脂シートと比較して、樹脂基材の選択の幅が広がることによる設計の自由度が増す点において有利であり、又、より少ない顔料で意匠性を担保出来る点において経済性においても有利である。
しかしながら、このように接着剤層によって暗色の外観が付与されているタイプの裏面保護シートは、太陽電池モジュールとしての熱ラミネーション法による一体化工程において、暗色の接着剤の一部がラミネータ内に流出して、ラミネータ機器内部や、次バッチの製品を汚染してしまう場合があるという問題が生じていた。
特開2015−9534号公報 国際公開第2016/052641号
本発明は、暗色接着剤層により暗色の外観が付与されている太陽電池モジュール用の裏面保護シートにおいて、熱ラミネート加工時における暗色の接着剤の流出によるラミネータ機器内等の汚染を防止することを目的とする。
本発明者らは、接着剤層により暗色の外観が付与されている太陽電池モジュール用の裏面保護シートにおいて、暗色接着剤層の加熱時の貯蔵弾性率(動的粘弾性)(E’)を最適化することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 複数のシート状基材を暗色顔料を含有する接着剤からなる暗色接着剤層を介して積層してなる多層シートであって、前記暗色接着剤層の厚さが3μm以上10μm以下であり、該暗色接着剤層の120℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である、太陽電池モジュール用の裏面保護シート。
(2) 一の前記シート状基材が、白色のポリエステル系樹脂シートであり、光反射性を有する基材層を形成していて、他の前記シート状基材が、透明なポリエチレン系樹脂シートであり、透明な密着層を形成している、(1)に記載の裏面保護シート。
(3) 前記接着剤が、主剤と硬化剤と、からなり、前記主剤は、ポリウレタンジオールと、脂肪族ポリカーボネートジオール、との混合物、及び、前記暗色顔料を含んでなり、前記ポリウレタンジオールは、脂肪族ポリカーボネートジオールと、1,6へキサンジオール及びポリエステルジオールと、イソホロンジイソシアネートとの反応物である、(1)又は(2)に記載の裏面保護シート。
(4) 前記暗色顔料が、茶色系顔料と、フタロシアニン系顔料と、の混合物である有機系暗色顔料であって、前記茶色系顔料は、ベンズイミダゾロン系顔料、4−[(2,5−ジクロロフェニル)アゾ]−3−ヒドロキシ−N−(2,5−ジメトキシフェニル)−2−ナフタレンカルボキサミド、1−[(4−ニトロフェニル)アゾ]−2−ナフタレノール、ビス[3−ヒドロキシ−4−(フェニルアゾ)−2−ナフタレンカルボン酸]銅塩、C.I.PigmentBrown7、N,N’−ビス(2,4−ジニトロフェニル)−3,3’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)−ビナフト[2,1−b]チオフェン−1,1’−ジオン及びN、N’−(10,15,16,17−テトラヒドロ−5,10,15,17−テトラオキソ−5H−ジナフト[2,3−a:2’3’−i]カルバゾール−4,9−ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の顔料である、(1)から(3)のいずれかに記載の裏面保護シート。
(5) 一の前記シート状基材が、白色のポリエステル系樹脂シートであり、光反射性を有する基材層を形成していて、前記基材層を形成するポリエステル系樹脂シートは、白色顔料を含有し、前記暗色接着剤層を形成する暗色の接着剤は、前記有機系暗色顔料を含有し、前記有機系暗色顔料の粒径が、前記白色顔料の粒径よりも小さい、(4)に記載の裏面保護シート。
(6) 太陽電池素子と、オレフィン系樹脂をベース樹脂とする封止材と、(1)から(5)のいずれかに記載の裏面保護シートと、が積層されてなる、太陽電池モジュール。
本発明によれば、暗色接着剤層により暗色の外観が付与されている太陽電池モジュール用の裏面保護シートにおいて、熱ラミネート加工時における暗色の接着剤の流出によるラミネータ機器内等の汚染を防止することができる。
本発明の裏面保護シートの層構成を模式的に示す断面図である。 本発明の裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールの層構成の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の裏面保護シート及びその他の部材を熱ラミネート加工によって一体化する工程の説明に供する模式図である。
<太陽電池モジュール>
先ず、本発明の太陽電池モジュール用の裏面保護シート1を用いて構成される太陽電池モジュール10の全体構成について説明する。太陽電池モジュール10は、図2に示すように、受光面側から、透明前面基板2、受光面側の封止材3、太陽電池素子4、非受光面側の封止材5、裏面保護シート1が順に積層された構成からなる。このように、本発明の裏面保護シート1は、太陽電池モジュール10において、太陽電池モジュール10の非受光面側の最外層に配置される。
そして、本発明の裏面保護シート1は、図1に示すように、複数のシート状基材が、暗色接着剤層を介して積層されてなる多層シートである。裏面保護シート1が、少なくともそのいずれかの表面において暗色の外観を保持することができる限りにおいて、上記の複数のシート状基材は特定の基材に限定されない。ただし、これらの複数のシート状基材の組合せによる好ましい層構成の一例として、白色の基材層11と透明な密着層13との組合せからなる層構成を挙げることができる。このような層構成からなる裏面保護シート1は、密着層13の側から見た場合に暗色接着剤層12の暗色の色味によって暗色の外観を需要者に視認させることにより、太陽電池モジュール10の意匠性の向上に寄与することができる。
尚、本明細書において「白色」とは、マンセル表色系での明度が10である完全な白色に加えて、明度9.0以上の白色に近い色味を含む色味のことを言うものとする。又、本明細書において「透明」とは、当該シート状基材の厚さ400μmにおけるヘーズ値が10%以下であることもって、透明とみなすものとする。
透明前面基板2としては、通常、透明ガラス板が用いられる。但し、これに限られず、耐候性を有する透明な樹脂シートを用いることもできる。
受光面側の封止材3、及び、非受光面側の封止材5としては、通常、各種の低密度ポリエチレン(LDPE)、或いは、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等のオレフィン系樹脂からなる厚さ100μm以上400μm以下程度の樹脂シートが用いられる。
太陽電池素子4については特段の制限はない。単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製する結晶シリコン太陽電池の他、アモルファスシリコンや微結晶シリコン、或いはカルコパイライト系の化合物等を用いてなる薄膜系太陽電池(CIGS)等、各種の太陽電池素子を適宜用いることができる。
ここで、受光面側の封止材3、及び、非受光面側の封止材5は、通常、透明又は半透明である。よって、太陽電池モジュール10においては、透明前面基板2の側からの平面視において、太陽電池素子4の隙間の部分から、裏面保護シート1の色を視認することができる。一方、上述の太陽電池素子4は、その表面の色味が暗色である場合が多い。よって、太陽電池モジュール10においては、暗色の外観を有する裏面保護シート1を用いることにより、太陽電池素子4が配置されていない隙間の部分の外観と、太陽電池素子4の表面の外観との色味の差を少なくすることができる。このように、暗色の外観を有する裏面保護シート1を用いることにより、太陽電池モジュール10の外観を統一感のある黒味によって構成して意匠性を向上させることができる。
尚、本明細書において「暗色」とは、色座標におけるL値、a値及びb値の範囲が下記の特定範囲にある「色」のことを言い、黒色は当然にこれに含まれる。特定範囲とは、具体的には、L値については、マンセル表色系で明度4.0以下であり、JISZ8722に準拠して測定した、標準光源D65によるCIE系色座標が、−1≦a≦6.0且つ−10.0≦b≦2.0の範囲にある色味のことを言い、この範囲にある色味を、本明細書においては「暗色」と言うものとする。
[太陽電池モジュールの製造方法]
太陽電池モジュール10は、太陽電池モジュールを構成する上記の各部材、即ち、透明前面基板2、受光面側の封止材3、太陽電池素子4、非受光面側の封止材5、及び、裏面保護シート1を、順次積層してなる積層体を加熱圧着して一体化する熱ラミネート加工により製造することができる。
この熱ラミネート加工は、図3に示すように、上記の積層体を、ラミネータ100の加熱板102に載置し、この状態において、真空引きにより、積層体抑え用ラバー101を積層体に圧着させることにより行うことができる。この熱ラミネート加工の際の加熱温度は、選択される封止材の材料樹脂の融点等に応じて適宜最適化されるが、通常110℃以上190℃以下の範囲内とされる。
従来、上記のような熱ラミネート加工において、裏面保護シートとして暗色接着剤層を含んで構成される多層シートを用いる場合、加熱及び加圧時に、当該裏面保護シートの端部から暗色の接着剤が流出して、例えば、図3に示す積層体抑え用ラバー101の裏面(一例として101Bで示す部分等)を汚染してしまうことが問題となっていた。これに対し、本発明の裏面保護シート1は、熱ラミネート加工時における暗色接着剤層12の過剰な流動を抑制して、暗色の接着剤によるラミネータの汚染を防止することができるようにされている。
<裏面保護シート>
裏面保護シート1は、上述の通り、複数の白色又は透明なシート状基材が、暗色接着剤層12を介して積層されてなる多層シートである(図1参照)。そして、この裏面保護シート1は、暗色接着剤層12の加熱及び加圧時の過剰な流動を抑制して、太陽電池モジュールの製造時におけるラミネータの汚染を防止できるように改良したものである。暗色接着剤層12の加熱及び加圧時の過剰な流動の抑制は、以下に詳細を示すように、暗色接着剤層12の厚さ、及び、暗色接着剤層12の加熱時の貯蔵弾性率(E’)を特定範囲に最適化することによって行うことができる。尚、上記の貯蔵弾性率(E’)の最適化は、例えば、暗色の接着剤の主剤樹脂を構成するモノマー樹脂の配合比を調整することによって行うことができる。
ここで、本発明の裏面保護シートを構成する複数のシート状基材は、上述した通り特定の基材に限定はされない。但し、複数のシート状基材が、裏面保護シートの主たる部分を構成する基材層11と、透明な密着層13を構成し、これらが、暗色接着剤層12によって接合されている多層シートである裏面保護シート1を、本発明の裏面保護シートの好ましい実施形態の具体例として挙げることができる。
上記層構成からなる裏面保護シート1において、基材層11は、太陽電池モジュール10との一体化後に要求されるバリア性、耐候性、絶縁性等を裏面保護シートに付与する樹脂層である。
更に、この基材層11は、例えば、後に詳しく説明する通り、暗色接着剤層12を、発電に寄与する近赤外線を透過する層とした場合において、太陽電池素子4に直接受光されずに裏面保護シート1まで到達した入射光を反射して、再び太陽電池素子4に向かわせる機能を有する光反射層でもあることがより好ましい。
次に、暗色接着剤層12は、裏面保護シート1において基材層11と密着層13との接合を維持する層である。そして、この暗色接着剤層12は、尚且つ、裏面保護シート1に、暗色の外観を付与する層でもある。裏面保護シート1は、この暗色接着剤層12の暗色の外観を、少なくとも密着層13の側の表面上から視認することが可能な層構成とされている。
一方、密着層13は、裏面保護シート1において、太陽電池モジュール10との一体化時に非受光面側の封止材5との良好な密着性を発現させる機能を有する樹脂層である。又、この密着層13は、暗色接着剤層12の暗色の外観を、この層を通して見た場合に、十分に暗色の外観として視認できる程度の透明性を有する層でもあればよい。この透明性は具体的な特定の光線透過率等によって限定はされない。各々の裏面保護シートにおいて要求される意匠性を保持することができる程度の透明性を有するものであれば、例えば、半透明の樹脂層等であってもよい。
基材層11と密着層13とが暗色接着剤層12を介して接合されている層構成からなる裏面保護シート1の総厚さは、必要最低限の絶縁性や耐候性を担保するために150μm以上であることが好ましく、経済性の低下を回避する観点から400μm以下であることが好ましく、180μm以上240μm以下であることがより好ましい。
[基材層]
基材層11を形成する樹脂組成物のベース樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、より好ましくは、耐熱性と耐加水分解性に優れる耐加水分解ポリエチレンテフタレート(HR−PET)、或いは、ポリエチレンナフタレート(PEN)等、各種のポリエステル系樹脂を用いることができる。
又、上述の通り、基材層11を光反射層としての機能も発揮しうる層とするためには、同層を形成する樹脂組成物に適量の白色顔料を含有させて白色の樹脂層とすればよい。この白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素等を用いることができる。これらの中でも、特に、粒径が0.2μm以上1.5μm以下の酸化チタンを用いることが好ましい。このような白色顔料を含む樹脂層は、太陽電池素子の発電に寄与する近赤外線をよく反射するため、基材層11を、このような白色の樹脂層とすることにより、太陽電池モジュール10の発電効率の向上させることができる。
ここで、白色顔料の粒径は、日本電子社製の透過型電子顕微鏡(JEM−1230)を用いて白色顔料の一次粒径を写真に撮影した後、その画像をマウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(MAC−View Ver.3)にて統計処理を行い算出して得られる値を採用する。粒径の算出にあたっては体積基準の円相当径を採用する。本明細書における各種の樹脂や無機フィラーの粉末材料の粒径は、いずれも上記方法によって測定した粒径のことを言うものとする。
基材層11に白色顔料を含有させて光反射層とする場合、その含有量は、基材層11の厚さに応じて適宜調整すればよい。例えば、基材層11の厚さが、50μm以上200μm以下の範囲にあるとき、白色顔料の含有量は、同層の樹脂成分に対し、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。上記含有量が上記割合未満であると、「近赤外線を反射する機能」が不十分となりやすく、又、同含有量が上記割合を超えると、製膜性の低化やブリードアウト等による基材層11の平滑性の低下が問題となる一方、それ以上の添加による反射率の向上効果が認められなくなる。
基材層11には、上記のベース樹脂と白色顔料の他、更に、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
基材層11を構成する樹脂シートは、以上説明したベース樹脂及びその他の成分を含んでなる樹脂組成物を、押し出し法、Tダイ法、キャスト成形法、インフレーション法、その他の公知の各種成形法によりシート状に成形することによって得ることができる。又、これらの樹脂シートは、上記の樹脂組成物を、テンター方式、或いは、チューブラー方式等により、1軸ないし2軸方向に延伸加工して得ることができる延伸樹脂シート、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート等であってもよい。
尚、裏面保護シート1の主たる部分を構成する基材層11の厚さは、120μm以上330μm以下であることが好ましく、150μm以上220μm以下であることがより好ましい。
[暗色接着剤層]
暗色接着剤層12は、暗色顔料を含有してなる暗色の接着剤により形成されている接着層であり、尚且つ、裏面保護シート1に暗色の外観による好ましい意匠性を付与する層である。そして、この暗色接着剤層12は、意匠性に寄与するのみならず、上述の通り、加熱及び加圧時の過剰な流動が適切に抑制されている点を特徴とする。そして、このような抑制は、暗色接着剤層12の厚さと加熱時の貯蔵弾性率(E’)が最適化されていることにより実現されている。
暗色接着剤層12の厚さは、3μm以上10μm以下であればよい。暗色接着剤層12の厚さが3μm未満であると、接着強度が不十分となりやすい。一方、この厚さが10μmを超えると、貯蔵弾性率(E’)が最適化されていたとしても、加熱及び加圧時の暗色接着剤層12の流動による暗色の接着剤の流出を十分に抑制することが困難となる。
尚、暗色接着剤層12は、同層に求められる接着性を良好に保つ観点から、ガラス転移点(Tg)については、15℃以上30℃以下であることが好ましい。ここで、本明細書における暗色接着剤層のガラス転移点(Tg)とは、以下に詳細を説明する暗色の接着剤が硬化して暗色接着剤層が形成された後、即ち、接着剤が硬化した後における同層のガラス転移点(Tg)の温度(℃)のことを言うものする。
そして、尚且つ、暗色接着剤層12は、120℃での貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であればよく、5.0×10Pa以上3.5×10Pa以下であることが好ましい。尚、暗色接着剤層の貯蔵弾性率(E‘)の値については、下記実施例に示す方法により測定することができる。
暗色接着剤層12の厚さが3μm以上10μm以下である時に、上記の貯蔵弾性率(E’)を1.0×10Pa以上とすることにより、上述のような通常の加熱温度の範囲(110℃以上190℃以下)での熱ラミネート加工時に、暗色接着剤層12の流動による暗色の接着剤の流出を十分に抑制することができる。尚、この場合、尚且つ、同層のガラス転移点(Tg)は、15℃以下であることがより好ましい。
一方、暗色接着剤層12の厚さが上記範囲である時に、上記の貯蔵弾性率(E’)を5.0×10Pa以下とすることにより、暗色接着剤層12に求められる接着強度、即ち、基材層11と密着層13との層間の接合強度を十分に維持することができる。尚、この場合、尚且つ、同層のガラス転移点(Tg)を30℃以下であることがより好ましい。
暗色接着剤層12を形成する暗色の接着剤は、上記の貯蔵弾性率(E’)に関する要件を満たしうるものである限り、特定の接着剤に限定されないが、一例として、特開2012−79902号公報に開示されている主剤と硬化剤からなる2液タイプの接着剤に、更に適切な暗色顔料を添加してなる接着剤を好ましい暗色の接着剤の具体例として挙げることができる。上記文献に開示されている接着剤は、主剤と硬化剤とを使用直前に混合するタイプの接着剤であり、主剤と硬化剤には、塗布性、ハンドリング性の観点から、溶剤が含まれることが好ましい。以下、この2液タイプの接着剤を構成する主剤、硬化剤及び溶剤、及び、これに添加する暗色顔料について順次説明する。
暗色接着剤層12を形成する暗色の接着剤の主剤成分は、ポリウレタンジオールと、脂肪族ポリカーボネートジオール、との混合物を含むものであることが好ましい。主剤を構成するポリウレタンジオール、及び、脂肪族ポリカーボネートジオールは、ともに水酸基を有するポリオールであり、イソシアネート基を有する硬化剤と反応して、接着剤層を構成する。主剤をポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとを所定量配合した混合物とすることによって、接着剤層の接着性及び耐候性を向上させることができる。
上記の暗色の接着剤の主剤に含まれるポリウレタンジオールは、脂肪族ポリカーボネートジオール、1,6へキサンジオール、及び、必要に応じて配合されるポリエステルジオーと、イソホロンジイソシアネートとを反応させて得られる反応物であることが好ましい。
ポリエステルジオールは、1,6へキサンジオールと同様に水酸基を2つ以上有するポリオールであるが、その基本骨格に嵩高い芳香族環を有するカルボン酸とのエステルとすることもできることから、イソホロンジイソシアネートと反応して得られるポリウレタンジオールに優れた硬化速度と凝集力を付与することができる。ポリエステルジオールとしては、例えば、イソフタル酸を使用して製造した芳香族ポリエステルジオールを挙げることができる。なお、本発明においてポリエステルジオールは、定法に従って、所定のカルボン酸化合物とジオールの組合せを採択することによって製造することができる。
上記のポリエステルジオールの数平均分子量は、3000〜4000であることが好ましい。ポリエステルジオールの数平均分子量が3000以上であると、硬化剤との反応性が良くなるため好ましく、ポリエステルジオールの数平均分子量が4000以下であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。
主剤成分であるポリウレタンジオールを製造する反応系における1,6へキサンジオールの配合量は、脂肪族ポリカーボネートジオール100質量部に対し、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。1,6へキサンジオールの配合量が5質量部以上であると、耐久性のある接着剤成分を得ることができるため好ましく、15質量部以下であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。
ポリウレタンジオールを製造する反応系においてポリエステルジオールを更に配合する場合、その配合量は、脂肪族ポリカーボネートジオール100質量部に対し、50質量部以下の範囲であることが好ましい。50質量部以下の範囲内でポリエステルジオールを配合することにより、暗色接着剤層12の接着耐久性を向上させることができる。但し、同配合量が50質量部を超えると、暗色接着剤層12の上記の高温領域(120℃)での貯蔵弾性率(E’)を1.0×10Pa以上に保持することが困難となり、又、溶剤への溶解性も低下する点において好ましくない。
尚、裏面保護シートの暗色接着剤層の貯蔵弾性率(E’)の測定については、同層を形成する暗色の接着剤が特定できる場合には、例えば、後述の実施例に記載したような方法により同一の接着剤で測定用試料を作成することにより、当該裏面保護シートの暗色接着剤層の貯蔵弾性率(E’)を測定することができる。又、その他、例えば、裏面保護シートから物理的処理により暗色接着剤層を表面に露出させた上で、マイクロ粘弾性顕微鏡(VE−AFM:Visco−Elasticity Atomic Force Microscopy)(日立ハイテクノロジー社製)等の測定装置により、同層の貯蔵弾性率(E‘)を測定することも可能である。
尚、上記の反応系においては、ポリエステルジオールの配合量の増減によって、暗色接着剤層12の上記の高温領域(120℃)での貯蔵弾性率を、必要に応じて適切な範囲内に調整することもできる。具体的には、上記範囲(50質量部以下)の範囲内で、ポリエステルジオールの配合量を増加することにより、上記貯蔵弾性率(E’)を下げることができる。同様に同配合量を減少させることにより、貯蔵弾性率(E’)を上げることができる。
暗色の接着剤の主剤成分は、上記において説明した通り、ポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物であることが好ましい。又、この混合物中におけるポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールの質量比率は、ポリウレタンジオール100質量部に対して、脂肪族ポリカーボネートジオール10質量部以上20質量部以下の割合であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネートジオールの量が10質量部以上であると、密着力が適度に低下するため好ましく、20質量部以下であると、ポリウレタンジオールと硬化剤との反応が起こりやすくなるため好ましい。
なお、上記の主剤には、主剤成分であるポリウレタンジオール、脂肪族ポリカーボネートジオールの他に、必要に応じて、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。
上記の暗色の接着剤の硬化剤は、ポリイソシアネート化合物を主成分とするものであることが好ましい。このポリイソシアネート化合物は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、このイソシアネート基が主剤のポリウレタンジオール化合物中の水酸基と反応することにより、ポリウレタンジオール化合物を架橋する。このようなポリイソシアネート化合物としては、上記において説明した主剤のポリウレタンジオール化合物を架橋することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」)、イソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート(以下、「ヌレート変性IPDI」)等を好ましい硬化剤として例示することができる。これらのポリイソシアネート化合物の中でも、HDIとヌレート変性IPDIとを組み合わせた混合物が水酸基に対する反応性を向上させる観点より好ましい。なお、硬化剤をHDIとヌレート変性IPDIとの混合物とする場合、HDIとヌレート変性IPDIは、70:30〜50:50(質量比)の範囲で使用することが好ましい。
上記の暗色の接着剤の接着剤成分である主剤及び硬化剤には、良好な塗布性及びハンドリング適正を得るために、溶剤成分を添加することが好ましい。このような溶剤成分としては、上記酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステルを挙げることができるがこれに限定されない。なお、既に述べたように上記の接着剤は、主剤と硬化剤の2液剤として構成されるが、主剤で使用される溶剤成分と硬化剤で使用される溶剤成分はそれぞれ独立に選択され、同一でもあってもよく、異なっていてもよい。
上記において説明した暗色の接着剤は、主剤と硬化剤を主成分とするものであるが、主剤と硬化剤の配合比率は、(ポリイソシアネート化合物由来のイソシアネート基)/(ポリウレタンジオール化合物由来の水酸基)の比が1.0以上3.5以下の範囲であることが好ましく、更に、1.2以上3.0以下の範囲にあることが好ましい。主剤成分のポリウレタンジオール化合物と硬化剤成分のポリイソシアネート化合物との配合比率が上記範囲にあることにより、各基材を強固に接合することができる接着剤を得ることができる。
上記において説明した暗色の接着剤等により形成される暗色接着剤層12は、単に、暗色の意匠性を発揮することのみに寄与する層であってもよいが、この層を、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線については、これを吸収せずに透過させることができる近赤外線を透過する層とすることがより好ましい。これにより、裏面保護シート1を用いて構成される太陽電池モジュール10においては、暗色層における近赤外線の吸収に起因する温度上昇や発電に寄与しうる光の減衰による太陽電池モジュール10の発電効率の低下を回避することもできる。尚、本明細書において「波長750nm以上1500nm以下の光線を透過する」とは、波長750nm以上1500nm以下の光線を15%以上透過、好ましくは50%以上透過、更に好ましくは60%以上透過することを意味するものとする。
暗色接着剤層12を、暗色の外観を呈するものでありながら、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過する層とするためには、暗色接着剤層12を形成する樹脂組成物中に赤外線透過性を有する有機系暗色顔料を添加すればよい。
暗色接着剤層12に含有させる暗色顔料としては、カーボンブラック等の汎用的な黒色顔料を含め、その他、各種の有機系顔料等を適宜用いることができる。但し、本発明の裏面保護シート1においては、以下に詳細を説明する、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる有機系暗色顔料」(以下、この混合顔料のことを、「ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料」とも言う)を、特に好ましく用いることができる。この「ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料」は、裏面保護シート1に優れた暗色の外観と、高い赤外線透過性を備えさせることができる。尚、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」が、近赤外線、特には、波長800nm以上900nm以下付近での赤外線透過性について、特に優れた光学特性を有すものであることは、例えば、上述の特許文献2においても実証されている通りである。
上述の、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」に含有される顔料成分のうち、「茶色系顔料」としては、ベンズイミダゾロン系顔料、4−[(2,5−ジクロロフェニル)アゾ]−3−ヒドロキシ−N−(2,5−ジメトキシフェニル)−2−ナフタレンカルボキサミド、1−[(4−ニトロフェニル)アゾ]−2−ナフタレノール、ビス[3−ヒドロキシ−4−(フェニルアゾ)−2−ナフタレンカルボン酸]銅塩、N,N’−ビス(2,4−ジニトロフェニル)−3,3’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)−ビナフト[2,1−b]チオフェン−1,1’−ジオン及びN、N’−(10,15,16,17−テトラヒドロ−5,10,15,17−テトラオキソ−5H−ジナフト[2,3−a:2’3’−i]カルバゾール−4,9−ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の顔料を、用いることができる。
「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」に用いる「茶色系顔料」として、上記の中でも、暗色水性プライマーコーティング液中の顔料の分散性や接着性向上効果を最大化する観点から、「ベンズイミダゾロン系顔料」を、特に好ましく用いることができる。ベンズイミダゾロン系顔料とは、下記一般式(1)で表されるベンズイミダゾロン骨格を有する顔料である。具体的には、C.I.PigmentYellow120、C.I.PigmentYellow151、C.I.PigmentYellow154、C.I.PigmentYellow175、C.I.PigmentYellow180、C.I.PigmentYellow181、C.I.PigmentYellow194、C.I.PigmentRed175、C.I.PigmentRed176、C.I.PigmentRed185、C.I.PigmentRed208、C.I.PigmentViolet32、C.I.PigmentOrange36、C.I.PigmentOrange62、C.I.PigmentOrange72、C.I.PigmentBrown25等が挙げられるが、これに限るものではない。色域の観点からC.I.PigmentBrown25がより好ましい。
Figure 2020061438
上述の、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」に含有される顔料成分のうち、「フタロシアニン系顔料」とは、フタロシアニン骨格を有する顔料であり、各種金属が配位されたフタロシアニンをも含む概念である。具体的には、C.I.PigmentGreen7、C.I.PigmentGreen36、C.I.PigmentGreen37、C.I.PigmentBlue16、C.I.PigmentBlue75、又は、C.I.PigmentBlue15等が挙げられる。
尚、基材層11が白色顔料を含有する場合においては、上記の暗色顔料の粒径が、この白色顔料の粒径よりも小さい場合には、暗色の接着剤が積層体材料の層間から流出した場合に、ラミネータ内部の微細の凹凸により付着しやすく、この場合にラミネータ汚染の問題は特に顕在化し易い。しかしながら、暗色接着剤層12の過剰流動を独自の規準で最適した裏面保護シート1によれば、このような場合においても、暗色接着剤の流出によるラミネータ汚染を十分に回避することができる。
上記の各層に含まれる顔料(フィラー)の粒径について、例えば、白色顔料として用いる酸化チタンの粒径が0.25μm以上であり、有機系暗色顔料の粒径が0.2μm以下である組合せのように、粒径差にも着目して選択された白色顔料と暗色顔料との組合せを、裏面保護シート1における顔料の特に好ましい組合せの一例として挙げることができる。
[密着層]
透明な密着層13は、太陽電池モジュール10を構成する封止材に対する所望の密着性を有する樹脂、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂からなり、尚且つ、透明な樹脂層であればよい。このような密着層13を、裏面保護シート1の最表面に配置することによって、意匠性と、近赤外線の透過性とを維持しながら、裏面保護シート1の非受光面側の封止材5に対する密着性を十分に向上させることができる。
尚、裏面保護シート1の従たる部分を構成する密着層13の厚さは、15μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上60μm以下であることがより好ましい。
<裏面保護シートの製造方法>
本発明の裏面保護シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、基材層11及び密着層13をそれぞれ形成するシート状基材を暗色の接着剤によって接合する公知のドライラミネート加工により製造することができる。尚、暗色の接着剤としては、上述の通り、主剤と硬化剤からなる2液タイプの接着剤を使用することが好ましい。
上記のドライラミネート加工において、暗色顔料を含む主剤と硬化剤とからなる2液タイプの暗色の接着剤は、接合する基材の表面に塗布され、続いて塗布された接着剤から溶剤成分が蒸発することによって、基材の表面に接着剤膜を形成させる。この接着剤膜は、被接合基材の表面と接合された状態で硬化し、暗色接着剤層12となる。
以下、実施例、比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<裏面保護シートの製造>
基材層と密着層を形成する各シート状基材を、暗色顔料を含有する接着剤を介して積層するドライラミネーション法により実施例及び比較例とする裏面保護シートを製造した。各シート状基材としては、以下に記す「白色のポリエステル系樹脂シート」及び「透明なポリエチレン系樹脂シート」を用い、接着剤としては以下に記す「暗色の接着剤」を用いた。又、「暗色の接着剤」からなる「暗色接着剤層」の厚さについては、各実施例及び比較例毎に、それぞれ暗色接着剤層の厚さが、表1の記載の「厚さ(μm)」となるように接着剤の塗工量を調整した。そして、45℃、120時間のエージング処理により「暗色接着剤層」を硬化させて、各実施例及び比較例の裏面保護シートを完成させた。
[基材層]
全ての実施例及び比較例の基材層を形成するシート状基材として、下記の白色のポリエステル系樹脂シートを用いた。
(白色のポリエステル系樹脂シート)
白色顔料として、平均粒径0.25μmの酸化チタン(TiO)を樹脂成分中に10質量%の濃度で含有する、ポリエチレン・テレフタレート(PET)からなる厚さ150μmの樹脂フィルム。
[密着層]
全ての実施例及び比較例の密着層を形成するシート状基材として、下記の透明なポリエチレン系樹脂シートを用いた。
(透明なポリエチレン系樹脂シート)
密度0.920g/cmの低密度ポリエチレン(LDPE)からなる厚さ30μmの樹脂フィルム。
[暗色接着剤層]
各実施例及び比較例毎に下記の通りに調製した暗色顔料を含む主剤と硬化剤とからなる暗色の接着剤を用いた。
(ポリウレタンジオール)
接着剤の主剤成分であるポリウレタンジオールを、以下のように4種類の異なる調合によってポリウレタンジオール1〜4としてそれぞれ製造した。
(「ポリウレタンジオール1」の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」(以下、「PDC1000」と略す。))を100質量部、1、6−ヘキサンジオール(5質量部)、イソホロンジイソシアネート(27.5質量部)、酢酸エチル(132.5質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、「ポリウレタンジオール1」の50%溶液を得た。
(「ポリウレタンジオール2」の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(「PDC1000」)を100質量部、下記の通りに製造した「ポリエステルジオール」(20質量部)、1、6−ヘキサンジオール(2質量部)、イソホロンジイソシアネート(23.8質量部)、酢酸エチル(175.8質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、「ポリウレタンジオール2」の50%溶液を得た。
(ポリエステルジオールの製造)
窒素雰囲気下、攪拌機、窒素導入管を備えたフラスコに、エチレングリコール(32.3質量部)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(270.8質量部)、1、6−ヘキサンジオール(122.9質量部)、アジピン酸(228.1質量部)、イソフタル酸(664質量部)を加え、180℃から220℃にて窒素にてバブリングさせ、酸価2mgKOH/gまで反応させ、酢酸エチル(860質量部)を加え、「ポリエステルジオール」の50%溶液を得た。
(「ポリウレタンジオール3」の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに「PDC1000」を100質量部、上記の「ポリエステルジオール」(50質量部)、1、6−ヘキサンジオール(2質量部)、イソホロンジイソシアネート(23.8質量部)、酢酸エチル(175.8質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、「ポリウレタンジオール3」の50%溶液を得た。
(「ポリウレタンジオール4」の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに「PDC1000」を100質量部、1、6−ヘキサンジオール(2質量部)、イソホロンジイソシアネート(40.5質量部)、酢酸エチル(175.8質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、「ポリウレタンジオール4」の50%溶液を得た。
(脂肪族ポリカーボネートジオール)
接着剤の主剤成分である脂肪族ポリカーボネートジオールとして、数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)を用いた。
(暗色顔料)
:ベンズイミダゾロン系顔料(PigmentBrown25、粒径0.08μm)と、フタロシアニン系顔料(非晶質型フタロシアニン系顔料青(PigmentBlue15、粒径0.15〜0.20μm))とを、ベンズイミダゾロン系顔料とフタロシアニン系顔料との含有量比が52.5:47.5となるように混合した混合物を実施例及び比較例に用いる「暗色顔料」とした。この「暗色顔料」の平均粒径は、0.11μmであった。粒径の測定は上述の方法により行った。
(主剤a1の調製)
上記で製造した主剤成分である「ポリウレタンジオール1」と「脂肪族ポリカーボネートジオール」及び、「暗色顔料」を混合して、実施例1に用いる接着剤の主剤とする「主剤a1」を調製した。各モノマーの配合比は「ポリウレタンジオール1」100質量部に対して「脂肪族ポリカーボネートジオール」15質量部、暗色顔料については、主剤の全樹脂成分中における含有量が、25質量%となるように配合した。
(主剤a2の調製)
上記で製造した主剤成分である「ポリウレタンジオール2」と「脂肪族ポリカーボネートジオール」及び、「暗色顔料」を混合して、実施例1〜2及び比較例1〜2に用いる接着剤の主剤とする「主剤a2」を調製した。各モノマーの配合比は「ポリウレタンジオール1」100質量部に対して「脂肪族ポリカーボネートジオール」10質量部、暗色顔料については、主剤の全樹脂成分中における含有量が、25質量%となるように配合した。
(主剤bの調製)
「ポリウレタンジオール2」に替えて、「ポリウレタンジオール3」を用いたことの他は、上記「主剤a2」と同一の配合で、比較例3に用いる接着剤の主剤とする「主剤b」を調製した。
(主剤cの調製)
「ポリウレタンジオール2」に替えて、「ポリウレタンジオール4」を用いたことの他は、上記「主剤a2」と同一の配合で、比較例4に用いる接着剤の主剤とする「主剤c」を調製した。
(硬化剤)
接着剤を構成する硬化剤として、イソホロンジイソシアネートのヌレート体100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート系2官能ポリウレタンジイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製「デュラネートD101」)150質量部からなる硬化剤を用いた。
(主剤と硬化剤の配合)
上記で製造した各「主剤」と「硬化剤」を使用し、各実施例及び各比較例の裏面保護シートの製造例に用いる「暗色の接着剤」を製造した。尚、全ての実施例及び比較例において主剤と硬化剤の配合割合は、各主剤100質量部に対して硬化剤20質量部の割合とした。主剤と硬化剤の配合は、主剤及び硬化剤を溶剤に溶解させてそれぞれ50質量%溶液(酢酸エチル溶液)として行った。尚、上記接着剤には、主剤と硬化剤の合計100質量部に対して1.5質量部のシランカップリング剤を添加した。使用したシランカップリング剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。
<裏面保護シートの評価>
各実施例及び比較例の裏面保護シートについて、暗色接着剤層の貯蔵弾性率(E’)とガラス転位点(Tg)とを下記の通りの試験方法により測定した。そして、各実施例及び比較例の裏面保護シートの、層間強度とラミネート時汚染の程度について、それぞれ以下の評価方法によって評価を行った。測定結果及び評価結果を表1に示す。
<試験例1:(暗色接着剤層の貯蔵弾性率(E’)(Pa)>
各実施例及び比較例の各裏面保護シートについて、上記エージング処理を経て硬化した後の暗色接着剤層の貯蔵弾性率(E’)(Pa)(℃)を、以下の測定条件により測定し、120℃時点での貯蔵弾性率(E‘)を求めた。測定結果は、「E’(Pa)」として表1に示す。
(測定条件)
実施例、比較例の各裏面保護シートの製造に用いた上記の各「暗色の接着剤」を離型フィルム上に塗布して上記と同条件で硬化させ、厚さ0.1mmの接着剤単膜を表面に形成したフィルムを、5mm×20mmに切り出したものを暗色接着剤層の貯蔵弾性率測定用の試料とした。そして、これらの各試料について接着剤単膜の貯蔵弾性率(E‘)を測定した。そして、この測定で得た測定値を、各実施例、比較例の暗色接着剤層の貯蔵弾性率とみなした。測定機器としては、UBM社製レオゲル・E−4000を用い、引っ張りモードにて下記条件のもと測定した。
初期荷重100g、連続加振モード、波形:正弦波、周波数10hz、昇温速度3℃/min。
<試験例2:(暗色接着剤層のガラス転移点(Tg)(℃))>
各実施例及び比較例の各裏面保護シートについて、上記エージング処理を経て硬化した後の暗色接着剤層のガラス転移点(Tg)(℃)を、示差走査熱量(DSC)測定によって得たDSC曲線から求めた。尚、上記の「暗色接着剤層」のDSC測定は、各裏面保護シートの暗色接着剤層の部分をナイフで削りとって得た試料について測定した。測定結果は、「Tg(℃)」として表1に示す。
<評価例1:(層間接着強度)>
実施例及び比較例の各裏面保護シートについて、基材層と密着層間の接着強度、即ち、暗色接着剤層の接着強度を測定した。この測定は、JIS K6854−3に準じて行い。下記基準で評価した。評価結果は、「層間接着強度」として表1に示す。
(評価基準)
○ 接着強度 5N/15mm幅以上
× 接着強度 5N/15mm幅以上
<評価例2:(ラミネート時の汚染防止性)>
180mm□の白板半強化ガラス(AGCファブリテック(株)製:3KWE33)、同サイズの受光面側の封止材(EVA:450μm、商品名:MLCE−62−T、シーアイ化成社製)、T−SEC製単結晶セル(TSS63TN)、非受光面側の封止材(受光面側の封止材と同一サイズ同一材料)、及び、上記各実施例又は各比較例の保護シート(同サイズにカットしたもの)を順次積層し、真空ラミネータを用いて下記ラミネート条件で融着一体化し、実施例、比較例のラミネート時の汚染防止性を評価するための太陽電池モジュールの試験製造を行った。評価結果は、「ラミネート時汚染防止性」として表1に示す。
(ラミネート条件)
真空ラミネータにて圧力100kPaにて150℃で15分間圧着した後、高温層にて150℃30分間静置するスタンダードキュア条件でラミネートを行った。
(評価基準)
○:上記試験製造後に真空ラミネータの裏面保護シートの積層体抑え用ラバーの裏面端部(図3に示す積層体抑え用ラバー101の裏面101Bで示す部分に対応する部分)に暗色接着剤の流出による汚染が観察された。
×:上記試験製造後に真空ラミネータの裏面保護シートの積層体抑え用ラバーの裏面端部(図3に示す積層体抑え用ラバー101の裏面101Bで示す部分に対応する部分)に暗色接着剤の流出による汚染が観察されなかった。
Figure 2020061438
表1より、本発明の裏面保護シートは、暗色の外観を有することにより、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与することができる裏面保護シートであって、接着剤層の接着強度を維持しながら、熱ラミネート加工時における暗色の接着剤の流出によるラミネータ機器内等の汚染を防止することができる裏面保護シートであることが分かる。
1、1A 裏面保護シート
11 基材層
12 暗色接着剤層
13 密着層
2 透明前面基板
3 受光面側の封止材
4 太陽電池素子
5 非受光面側の封止材
10 太陽電池モジュール
100 ラミネータ
101 積層体抑え用ラバー
102 加熱板

Claims (6)

  1. 複数のシート状基材を暗色顔料を含有する接着剤からなる暗色接着剤層を介して積層してなる多層シートであって、
    前記暗色接着剤層の厚さが3μm以上10μm以下であり、該暗色接着剤層の120℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である、太陽電池モジュール用の裏面保護シート。
  2. 一の前記シート状基材が、白色のポリエステル系樹脂シートであり、光反射性を有する基材層を形成していて、
    他の前記シート状基材が、透明なポリエチレン系樹脂シートであり、透明な密着層を形成している、請求項1に記載の裏面保護シート。
  3. 前記接着剤が、主剤と硬化剤と、からなり、
    前記主剤は、ポリウレタンジオールと、脂肪族ポリカーボネートジオール、との混合物、及び、前記暗色顔料を含んでなり、
    前記ポリウレタンジオールは、脂肪族ポリカーボネートジオールと、1,6へキサンジオール及びポリエステルジオールと、イソホロンジイソシアネートとの反応物である、請求項1又は2に記載の裏面保護シート。
  4. 前記暗色顔料が、茶色系顔料と、フタロシアニン系顔料と、の混合物である有機系暗色顔料であって、
    前記茶色系顔料は、ベンズイミダゾロン系顔料、4−[(2,5−ジクロロフェニル)アゾ]−3−ヒドロキシ−N−(2,5−ジメトキシフェニル)−2−ナフタレンカルボキサミド、1−[(4−ニトロフェニル)アゾ]−2−ナフタレノール、ビス[3−ヒドロキシ−4−(フェニルアゾ)−2−ナフタレンカルボン酸]銅塩、C.I.PigmentBrown7、N,N’−ビス(2,4−ジニトロフェニル)−3,3’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)−ビナフト[2,1−b]チオフェン−1,1’−ジオン及びN、N’−(10,15,16,17−テトラヒドロ−5,10,15,17−テトラオキソ−5H−ジナフト[2,3−a:2’3’−i]カルバゾール−4,9−ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の顔料である、請求項1から3のいずれかに記載の裏面保護シート。
  5. 一の前記シート状基材が、白色のポリエステル系樹脂シートであり、光反射性を有する基材層を形成していて、
    前記基材層を形成するポリエステル系樹脂シートは、白色顔料を含有し、
    前記暗色接着剤層を形成する暗色の接着剤は、前記有機系暗色顔料を含有し、
    前記有機系暗色顔料の粒径が、前記白色顔料の粒径よりも小さい、請求項4に記載の裏面保護シート。
  6. 太陽電池素子と、
    オレフィン系樹脂をベース樹脂とする封止材と、
    請求項1から5のいずれかに記載の裏面保護シートと、が積層されてなる、太陽電池モジュール。
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