JP2020055728A - 硫酸溶液の製造方法 - Google Patents

硫酸溶液の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020055728A
JP2020055728A JP2019026646A JP2019026646A JP2020055728A JP 2020055728 A JP2020055728 A JP 2020055728A JP 2019026646 A JP2019026646 A JP 2019026646A JP 2019026646 A JP2019026646 A JP 2019026646A JP 2020055728 A JP2020055728 A JP 2020055728A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sulfuric acid
anode
acid solution
nickel
cathode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019026646A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7211143B2 (ja
Inventor
寛人 渡邉
Hiroto Watanabe
寛人 渡邉
いつみ 松岡
Itsumi Matsuoka
いつみ 松岡
祐輔 仙波
Yusuke Semba
祐輔 仙波
小林 宙
Chu Kobayashi
宙 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Publication of JP2020055728A publication Critical patent/JP2020055728A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7211143B2 publication Critical patent/JP7211143B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)

Abstract

【課題】不動態化を抑制しながら高いアノード電流密度で金属を高効率に溶解する硫酸溶液の製造方法を提供する。【解決手段】硫酸溶液の製造方法は、槽内が中性膜によりアノード室21およびカソード室22に分けられた電解槽10に、塩化物イオン含有硫酸溶液を初期電解液として供給する初期電解液供給工程と、電解槽10に設けられたアノード13とカソード14とに電流を供給するとともに、アノード室21から、アノード13を構成する金属が溶解した金属溶解電解液を取出す電解液取出工程と、を含んで構成されている。この構成により、アノード13側で溶解した金属がカソード14側に移動することを抑制できるとともに、アノード13側の不動態の形成を抑制できるので、効率よく品質の高い、金属が溶解した硫酸溶液を製造することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、硫酸溶液の製造方法に関する。さらに詳しくは、ニッケルまたはコバルト等の金属が硫酸に溶解した、金属イオンを含有する硫酸溶液の製造方法に関する。
ニッケルまたはコバルトなどの金属は、めっきまたは合金の材料として使用される貴重な金属であるが、近年はめっきまたは合金以外の用途として、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池など二次電池の正極材など電極材料としての使用も増えている。この際に、例えばニッケルは、ニッケルイオンを含有する硫酸溶液として利用されることが多い。コバルトも同様である。
一例として、ニッケルを上記のリチウムイオン電池の正極材として用いる場合、リチウムイオン電池の正極材の一般的な製造方法としては、所定の比率で混合されたニッケルイオンを含む水溶液を中和して前駆体と呼ばれる金属水酸化物を形成し、次にこの前駆体とリチウム化合物を混合して焼成して、正極材を得る方法がある。ここで、上記のニッケルイオンを含有する水溶液は、具体的には硫酸ニッケルまたは塩化ニッケルなどのニッケル塩が溶解した溶液である。上記の製造方法でこの溶液が用いられる場合、溶液中のハロゲン(塩素)を用途のスペック以下に抑制することが必要とされる。
たとえば、上記のニッケルイオンを含有する硫酸溶液は、ニッケル鉱石またはその中間生成物であるニッケル硫化物、その他の含ニッケル化合物などを硫酸で浸出した後、沈殿分離または溶媒抽出等の精製工程で不純物を除去して得ることができる。しかしながら上記の原料を用いた場合、原料あるいは精製工程でハロゲンまたはその他の不純物等が不規則的に混入されており、必要な品質を安定して維持できないという問題がある。
これに対して、必要な品質を安定して維持する方法として、金属ニッケルを硫酸に溶解してニッケルイオンを含有する硫酸溶液を得る方法がある。金属ニッケルは、ニッケル純度99.99%以上の高品質なものが、例えば電気ニッケルとして市場から容易に入手可能であり、この電気ニッケルを2〜5cm四方のサイズに切断したものはさらに取り扱いが容易であり、上記のような大掛かりな精製工程を要することなく前駆体の材料に供することができる。
ただし、ニッケルやコバルトはステンレス等の耐蝕合金に用いられるように、たとえ切断品であっても硫酸などの酸に金属ニッケルや金属コバルトを浸漬するだけでは溶解され難い。このため金属ニッケルの溶解を促進し、ニッケルイオンの濃度を所定の濃度に到達させるための方法がいくつか挙げられる。たとえば、金属ニッケルを硫酸に溶解してニッケルイオンを含有する硫酸溶液を得る方法として、特許文献1に開示されている、金属コバルトを過剰の酸に溶解し溶解後にイオン交換樹脂を用いて過剰の酸を除去して目的のコバルト溶液を得る方法や、特許文献2に開示されているように、粉末状のニッケル(ニッケル粉)、またはニッケル粉を焼結したブリケットを用い、これらを硫酸で溶解してニッケルイオンを含有する硫酸溶液を得る方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の方法は設備が過大に必要となる点が課題であり、一方、特許文献2の方法は、ニッケル粉やニッケルブリケットは、生産量が限られているため安定して入手することが困難な課題がある。このようなことから、市場に流通している板状や塊状の電気ニッケルや電気コバルトを硫酸に短時間で溶解する技術が求められている。
この要求に対する解決法として、たとえば電解法がある。すなわちアノード(陽極)に溶解したい金属を用いるとともに、電解液に硫酸溶液を用い、アノードとカソード(陰極)との間に通電することで、目的とする金属を硫酸に溶解する方法である。
この電解法を用いた例として例えば特許文献3の方法がある。しかし特許文献3の方法では、電解液中のコバルトイオン濃度が増加すると、カソードに電着し、溶解効率が低下する課題がある。水素過電圧が小さい金属をカソードとして使用する方法も記載されているが、一度ニッケルやコバルトがカソード表面に析出すると水素過電圧はニッケルやコバルトに依存するため、特に工業的には、効果的ではない。さらに、コンパクトな設備で生産性良く溶解するには、例えば1000A/m以上の高い電流密度で操業できることが求められるが、一方で後述のように不働態の問題が顕在化する。
このように、効率よくニッケルやコバルトの酸溶液を得ることは容易でなかった。
特開平1−301526号公報 特開2004−067483号公報 特開2003−096585号公報
従来一般的に知られている電解法では、金属、例えばニッケルやコバルトを硫酸溶液中に溶解する場合、迅速に金属ニッケルや金属コバルトを溶解するためには、アノードの電流密度を1000A/m程度あるいはそれ以上に高くして電解することが望まれる。しかしこのような高い電流密度で電解法を実施すると、アノードの金属ニッケルや金属コバルトの表面に酸化皮膜が形成され、不動態化(「不働態化」と称する場合もある)が生じてほとんど電流が流れなくなるという問題がある。不動態化の発生を抑制するように電流密度を低くして電解法を実施した場合は、溶解が促進されず、溶解を促進するという本来の目的を達し得ないという問題がある。
特に電池の正極材を製造するために求められるニッケルイオンを含有する硫酸溶液に対しては、ニッケルイオン濃度として100g/リットル程度の高濃度な溶液が求められる。電解液中のニッケルイオンの濃度が増加すると、不動態化はさらに発生しやすくなるという問題があるとともに、カソード側の電極にもニッケルが析出し、溶解効率が低下する問題もある。
コバルトについても同様に、得ようとする溶液のコバルトイオン濃度を上げるに伴って、溶解効率の低下や不動態化が促進される懸念がある。
本発明は上記事情に鑑み、硫酸溶液に対して金属の溶解を促進する方法の一つである電解法において、不動態化を抑制しながら高いアノード電流密度で金属を高効率に溶解する硫酸溶液の製造方法を提供することを目的とする。
第1発明の硫酸溶液の製造方法は、槽内が中性膜によりアノード室およびカソード室に分けられた電解槽に、塩化物イオン含有硫酸溶液を初期電解液として供給する初期電解液供給工程と、前記電解槽に設けられたアノードとカソードとに電流を供給するとともに、前記アノード室から、前記アノードを構成する金属が溶解した金属溶解電解液を取出す電解液取出工程と、を含んで構成されていることを特徴とする。
第2発明の硫酸溶液の製造方法は、第1発明において、前記アノードを構成する金属は、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有することを特徴とする。
第3発明の硫酸溶液の製造方法は、第1発明または第2発明において、前記塩化物イオン含有硫酸溶液の塩化物イオンの濃度が1g/リットル以上20g/リットル以下であることを特徴とする。
第4発明の硫酸溶液の製造方法は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記カソード室の液面を、前記アノード室の液面よりも高くし、オーバーフローによって前記カソード室の液を前記アノード室に移動させることを特徴とする。
第5発明の硫酸溶液の製造方法は、第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記電解液取出工程において、前記アノードとカソードとに、周期的な通停電を繰り返すパルス電流を供給することを特徴とする。
第6発明の硫酸溶液の製造方法は、第5発明において、前記周期的な通停電において、
前記周期的な通停電の1周期における通電時間の比率が、0.8以上1.0未満であることを特徴とする。
第1発明によれば、硫酸溶液の製造方法において、用いられる電解槽が中性膜によりアノード室およびカソード室に分けられているので、アノード側で溶解した金属がカソード側に移動することを抑制できる。また、電解液取出工程、すなわち、アノードとカソードに電流を供給するとともに、アノード室から金属溶解電解液を取出す工程を含んで構成されているので、アノード室から金属イオンの濃度が高い硫酸溶液が取出される。このためアノード室のニッケルイオンの濃度の値が大きくならないので、アノード側の不動態の形成を抑制でき、効率よく品質の高い、金属が溶解した硫酸溶液を製造することができる。
第2発明によれば、アノードを構成する金属が、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有することにより、製造された硫酸溶液を二次電池の正極として使用することができる。
第3発明によれば、硫酸溶液の塩化物イオンの濃度が1g/リットル以上20g/リットル以下とすると、アノード電極の溶解を行う際の電流密度を高くできるので、さらに効率よく硫酸溶液を製造することができる。
第4発明によれば、カソード室の液面を、アノード室の液面よりも高くし、オーバーフローによってカソード室からアノード室へ液体の流れが形成されるので、アノード室からカソード室への金属イオンの移動がさらに抑制される。
第5発明によれば、電解液取出工程において、アノードとカソードとに、周期的な通停電を繰り返すパルス電流を供給することにより、さらに不動態化を抑制できる。
第6発明によれば、通停電の1周期における通電時間の比率が、0.8以上1.0未満であることにより、不動態化を抑制しながら、硫酸溶液の製造の効率を保持できる。
本発明に係る硫酸溶液の製造方法で用いられる電解槽の側面方向からの断面図である。 電解槽に供給されるパルス電流の説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための硫酸溶液の製造方法を例示するものであって、本発明は硫酸溶液の製造方法を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、本明細書で「電解液」は、電解槽10内で電気を通電させるために使用する液体を意味し、最初に電解槽10に供給する「初期電解液」と、電解を行うことで金属が溶解した「金属溶解電解液」と、を含む記載である。また、電解槽10から取出された「電解液」は、本発明の製造方法で製造される「硫酸溶液」である。
図1は、本発明に係る硫酸溶液の製造方法で用いられる電解槽10の側面方向からの断面図である。本発明に係る硫酸溶液の製造方法は、槽内が隔膜12、特に中性膜によりアノード室21およびカソード室22に分けられた電解槽10に、塩化物イオン含有硫酸溶液を初期電解液として供給する初期電解液供給工程と、電解槽10に設けられたアノード13とカソード14とに電流を供給するとともに、アノード室21から、アノード13を構成する金属が溶解した金属溶解電解液を取出す電解液取出工程と、を含んで構成されている。
また、アノード13を構成する金属は、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有することが好ましい。
また、硫酸溶液の塩化物イオンの濃度が1g/リットル以上20g/リットル以下であることが好ましい。
また、カソード室22の液面を、アノード室21の液面よりも高くし、オーバーフローによってカソード室22の液をアノード室21に移動させることが好ましい。
また、電解液取出工程において、アノード13とカソード14とに、周期的な通停電を繰り返すパルス電流を供給することが好ましい。
また、前記周期的な通停電において、前記周期的な通停電の1周期における通電時間の比率が、0.8以上1.0未満であることが好ましい。
以下、本発明に係る硫酸溶液の製造方法で用いる電解槽10について、図面に基づいて説明した後、この電解槽10を使用した硫酸溶液の製造方法について説明する。
<電解槽10の構成>
(電解槽本体11)
電解槽本体11は、内部に硫酸溶液を保持することができる構成をしている。電解槽本体11を構成する材料は公知の材料である。電解槽本体11は、隔膜12によりアノード13が内部に位置するアノード室21と、カソード14が内部に位置するカソード室22と、を含んで構成されている。電解槽本体11の外側には、アノード13、およびカソード14に接続している直流電源17が設けられている。なお図1では、直流電源17からアノード13、またはカソード14と接続した線は電線を表し、この線に沿った矢印は電流の向きを示している。
用いられる電解槽10が隔膜12、特に中性膜によりアノード室21およびカソード室22に分けられているので、アノード13側で溶解した金属がカソード14側に移動することを抑制できる。
(アノード13)
電解槽10に用いられるアノード13には、複数の形態がある。例えばニッケルの酸性溶液を得ようとする場合、アノード13の一つ目の形態としては、工業的に電解精製ないし電解採取した板状の金属ニッケル(電気ニッケル)が該当する。また、二つ目の形態としては、チタン等の酸に対し不溶性の材質でできたバスケットに、小さく切断した金属ニッケルを充填したものが該当する。二つ目の形態の場合、全部が溶解し終わる前に交換する必要があったり、金属を切断するコストおよび手間がかかったりするが、無駄なく効率的に溶解することができる。一つ目の形態の場合、溶解し終わった後はアノード13全体を交換する必要がある。交換は所定の大きさに到達したときに行われる。所定の大きさよりも小さくなった金属ニッケルは、二つ目の形態のバスケットに充填し溶解する2段階の溶解方法を用いることもできる。
(カソード14)
カソード14には、チタン、ステンレス、ニッケル、コバルト、白金などの板状の金属が好適に用いられる。また、アルミや鉄などの表面に前記のニッケルやコバルトなどをメッキした構造のものを用いることもできる。
(隔膜12)
隔膜12は、電解槽本体11の槽内をアノード室21とカソード室22とに分割する。隔膜12は、液体またはイオンの通過を抑制している。具体的に隔膜12としては、中性膜を用いることができる。
中性膜は、高分子膜に微細な穴を設けたものでイオンは透過させるが水はほとんど透過させないという性質を持つ。中性膜は、イオンの極性の選択制はない。具体的に中性膜は、ユアサメンブレンシステム社の商品名Y−9201T型が、耐薬品性に優れ低抵抗な隔膜であり、該当する。
(取出管15、供給管16)
電解槽本体11のアノード室21には、アノード室21からの硫酸溶液を取出すための取出管15が設けられている。電解槽本体11のカソード室22には、カソード室22へ新たな硫酸、または硫酸溶液を供給するための供給管16が設けられている。また、取出管15には、アノード室21から硫酸溶液を取出すための取出しポンプ20が接続されている。加えて供給管16には、供給ポンプ19が接続されている。
ニッケルイオンおよびコバルトイオンは水に比べて比重が重いため、通電に伴ってアノード室21の深部の方が、ニッケル等の濃度が高くなってくる。そのため、アノード室21の、より深部から硫酸溶液を回収すること、すなわち取出管15の開口15aがアノード室21内のアノード13の下方に設けられていることで、ニッケル等の濃度の高い硫酸溶液を回収することができる。
取出管15の開口15aがアノード13の下方に設けられていると、アノード13表面近傍のニッケル濃度が100g/リットルより薄くても、アノード室21の深部から硫酸溶液を回収することでニッケルの濃度が100g/リットルの硫酸溶液を回収ができる。これにより、アノード13表面でのニッケルの不動態化が抑制される。
アノード13の下方に所定の空間が設けられることは好ましいが、その空間が大きくなりすぎると電解槽10の体積が大きくなり設備コストが高くなる。そのため、アノード13の下端から電解槽本体11のアノード室21の底までの深さの目安は、アノード室21の液面高さの10%以上であることが好ましい。
カソード室22に新たな硫酸等を補充する供給管16および供給ポンプ19が設けられるとともに、補充量と同量の硫酸ニッケル溶液をアノード室21から回収することができる取出管15および取出しポンプ20が設けられていることにより、電解槽10の槽内の液量バランスが維持される。
カソード室22に硫酸が補充され、隔膜12、特に中性膜があることにより、カソード室22側の液面はアノード室21の液面より高い位置に維持できる。液面の位置は、隔膜12である濾布の通水性および面積にも依存する。隔膜12の通水性は、カソード室22から液が溢れない範囲に設定する必要がある。
アノード13の下方に、金属溶解電解液を取出すための取出管15の開口15aが設けられているので、比較的比重の大きい金属溶解電解液が効率よく取出される。
(直流電源17)
直流電源17は、パルス電流を供給することができる機能を有している。「パルス電流を供給する」とは、通電(ON)および停電(OFF)の時間を設定して周期的に通停電を繰り返す断続通電を行うことを意味する(パルス通電、またはパルス電解という場合がある)。
図2には、電解槽10に供給されるパルス電流の一例を示す。縦軸が電流値A、横軸が時間Tを表している。図2に示すようにパルス電流は、電流A1が一定時間供給されたあと、その供給が停止され、これらが繰り返される。すなわちパルス電流は、矩形状に供給される。
アノード13近傍の金属イオン濃度が高くなりすぎると不動態化が発生しやすくなる。これを抑制するために、パルス電流を供給する。すなわち、周期的に電流がOFFになると、アノード13からの金属イオンの溶出が一時的に止まり、その間に槽内の液流れを利用して溶出した金属イオンがアノード13近傍から遠ざけられる。その結果アノード13近傍の金属イオン濃度の上昇を抑制できる。
なお、周期に対するON時間の割合はデューティ比と定義される。また、パルス通電を用いた場合の電流密度は、ON時間とOFF時間を含めた平均電流密度として記載する。例えば、ONの時の電流密度が1250A/mでデューティ比が0.8(すなわち80%の時間通電する)の場合、平均電流密度は、1250×0.8=1000A/mとなる。なお、特許請求の範囲に記載の「通停電」の「停」は、完全に電流を0Aまで落としてしまうだけでなく、ONの時よりも電流値をかなり小さくすることも含まれる。なお、デューティ比1の場合は、通電時間の割合が100%である単純な一方向への通電を意味する。
<硫酸溶液の製造方法>
(初期電解液供給工程)
本発明に係る硫酸溶液の製造方法では、最初に、第1実施形態に係る電解槽10に、塩化物イオンを含有する硫酸溶液を、初期電解液として供給する(初期電解液供給工程)。初期電解液は、アノード室21およびカソード室22の両方に供給される。初期電解液は、以下の記載にあるような塩化物イオン濃度および硫酸濃度であることが好ましい。液面の位置は、アノード室21の液面よりもカソード室22の液面が高くなるようにする。
(塩化物イオン濃度)
何の対策も施さずに、硫酸溶液に金属ニッケルをアノード溶解すると、アノード13の表面に容易に酸化皮膜、つまり不動態皮膜が形成され、電流がほとんど流れない不動態化の状態になる。この不動態皮膜の形成はハロゲンイオンの存在、水素イオン濃度(pH)の低下、温度の上昇などにより抑制されるといわれている。本発明者が金属ニッケルのアノード溶解について検討したところ、特に塩化物イオンの電解液への添加が効果的であった。なお、塩化物イオン濃度は、所定の塩化物が電解液に加えられた後の電解液における塩化物イオンの濃度を言う。
電解液中の塩化物イオン濃度は、1g/リットル以上20g/リットル以下が望ましい。不動態皮膜の形成が適切に抑制されるとともに、リチウムイオン電池の正極材の用いられる場合は塩化物イオン濃度が少ないほうが好ましいからである。1g/リットルより少ない場合は、不動態皮膜の形成を抑制する効果が不十分となる。このため金属の電解を行う際の電流密度を1000A/m以上にすることは困難である。また、塩化物濃度は4g/リットル以上がより好ましい。金属ニッケルをアノード溶解する上では、金属ニッケルの溶解度が確保できる濃度まで上げることができる。
ただし、金属イオンを含有する硫酸溶液が、リチウムイオン電池の正極材の製造に用いられる場合、得られる硫酸溶液中の塩化物イオン濃度は少ない方が好ましい。この場合の塩化物イオン濃度は、20g/リットル以下が好ましい。
なお塩化物イオンは、塩化ナトリウムまたは塩化リチウムなどの形で供給することが可能である。ただし、硫酸溶液内の不純物をできるだけ低減するのが好ましいので、塩化ニッケルなど、硫酸溶液に含有する金属イオンと同じイオンの塩化物塩または塩酸などの形で添加することが好ましい。
硫酸溶液の塩化物イオンの濃度が1g/リットル以上20g/リットル以下とすると、アノード電極の溶解を行う際の電流密度を高くできるので、さらに効率よく硫酸溶液を製造することができる。
なお、塩化物イオン濃度の範囲については、金属ニッケルをアノード溶解した場合については、上記の1g/リットル以上20g/リットル以下が望ましいが、金属コバルトの場合も同様である。ただし、金属コバルトの場合は、塩化物イオン濃度が0g/リットルであっても溶解が進む場合がある。
(硫酸濃度)
初期電解液として供給される硫酸(「フリー硫酸」あるいは「遊離硫酸」ともいう)の濃度の値はできるだけ小さいほうが好ましい。硫酸の濃度の値が小さいと、電解槽10から取出された、金属イオンを含有する硫酸溶液を中和するための薬剤費用が低減できるためである。
ただし、初期電解液として供給される硫酸の濃度の値が小さくなると、電解液の電気伝導度(単に「電導度」あるいは「伝導度」ともいう)が低下して液抵抗が増加したり、カソード14での水素イオンの拡散限界電流値が低下することで電圧が高くなったりするという弊害が発生する。電気代および中和用の薬剤費用を考えた場合に、最も経済的な条件に設定することが望ましい。このためpH計または電気伝導率計(単に「電導度計」や「導電率計」などとも呼ばれる)などを用いて最適な遊離濃度となるように、電流量やカソード14側に供給する硫酸溶液の供給量を調整することが好ましい。
(電解液取出工程)
本発明に係る硫酸溶液の製造方法では、次に、第1実施形態に係る電解槽10に設けられたアノード13とカソード14とに電流を供給するとともに、アノード室21から、アノード13を構成する金属が溶解した金属溶解電解液を取出す(電解液取出工程)。この金属溶解電解液は、電解槽10から取出されると硫酸溶液となる。金属溶解電解液は、以下の記載にあるような金属イオン濃度、電解液温度であることが好ましい。なお、電解液取出工程は、アノード13等に電流を供給すると同時に金属溶解電解液を取出す場合と、電流の供給が終わった後に金属溶解電解液を取出す場合が含まれる。
カソード室22には供給管16から硫酸が補充される。そして、カソード室22側の液面はアノード室21の液面より高くし、オーバーフローによってカソード室22からアノード室21に液を移動させる。具体的には、隔膜12を保持している板材にオーバーフロー管18を設けることで、カソード室22からアノード室21に液を移動させる。そして硫酸の補充量と同量の硫酸コバルト溶液をアノード室21の下方より回収する方法を用いることもできる。または、オーバーフロー構造を採用する代わりにカソード室22からアノード室21にポンプにより液を移動させることも可能である。
カソード室22の液面を、アノード室21の液面よりも高くし、オーバーフローによって、カソード室22からアノード室21へ液体の流れが形成されるので、アノード室21からカソード室22への金属イオンの移動がさらに抑制される。
硫酸溶液の製造方法が、電解液取出工程、すなわち、アノード13とカソード14に電流を供給するとともに、アノード室21から金属溶解電解液を取出す工程を含んで構成されているので、アノード室21から金属イオンの濃度が高い硫酸溶液が取出されるので、アノード13側の不動態の形成を抑制でき、効率よく品質の高い、金属が溶解した硫酸溶液を製造することができる。
(金属イオン濃度)
本発明に係る硫酸溶液の製造方法で製造された硫酸溶液の金属イオン濃度は、硫酸溶液の用途により決定される。たとえば2次電池の正極材に用いるニッケル原料として硫酸溶液が用いられる場合には、硫酸溶液のニッケルイオンの濃度が90〜100g/リットル程度の高濃度のニッケルイオンを含有する硫酸溶液が必要となる。
コバルトの場合も、正極材のコバルト原料として使用するためには、コバルト濃度が100g/l程度の高濃度の硫酸コバルト溶液が望まれる。コバルトの量もアノード13に流れた電流値によって溶解量が決定するので、溶解量が所望のコバルトイオン濃度になるようにカソード室22に硫酸を補充し、同量の硫酸コバルト溶液をアノード室21から回収する。
硫酸溶液中の金属イオン濃度は、以下のパラメータにより決定される。すなわち、アノード13が金属ニッケルの場合、アノード13での反応がすべてニッケルの溶解であれば、アノード13に供給される電流値によって溶解量が決定する。その溶解量が所望のニッケルイオン濃度になるようにカソード室22に硫酸が補充され、同量の金属溶解電解液がアノード室21から硫酸溶液として取出される。
アノード13を構成する金属が、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有することにより、製造された硫酸溶液が二次電池の正極として使用される。
なお、初期電解液として、アノード室21に供給される硫酸溶液は、所定のニッケルイオン濃度以上の硫酸溶液であることが好ましい。この場合、金属溶解電解液は、取出しが始まった直後から所定のニッケルイオン濃度であるため、所定のニッケルイオン濃度の硫酸溶液を、当初から得ることができる。また初期電解液として、アノード室21に供給される硫酸溶液が、所定のニッケルイオン濃度未満である場合、溶解を開始した当初の、所定のニッケルイオン濃度に達していない硫酸溶液は、アノード室21側に繰り返すようにしても問題ない。このときアノード室21に繰り返す流量に合わせてカソード室22に供給する硫酸量を調整する。また、電解液内のニッケルイオン濃度を均一にするために、アノード室21内の電解液がポンプ等で撹拌されるような構成にしても問題ない。
(電解液温度)
電解槽10内の電解液温度は高い方が好ましい。電解液温度が高いとアノード溶解するニッケルが不動態化することを抑制できる。ただし、電解液温度を高くするほど電解槽10などの設備材質の耐熱性および加熱に要するコストがかかるため、生産性およびコストを考慮し最も経済的な条件に設定することが望ましい。工業的に一般的な材料である塩化ビニールの耐熱を考慮すると、電解液温度は65℃以下、好ましくは50〜60℃程度の温度が好ましい。
(電流効率の評価)
本発明に係る硫酸溶液の製造方法により硫酸溶液を製造すると、短時間で効率よく金属イオンを含有した硫酸溶液が得られる。この際に加えた電流が、金属の溶解にどの程度寄与しているかを電流効率として算出した。電流効率は、以下の数1に示すように、アノード13の重量減少分からカソード14の重量増加分を減じたものを、通電量から求めた理論溶解量で除した百分率で求めた。そして、電流効率が90%以上であれば効率よく電解できていると判断した。
[数1]
電流効率(%)=(アノード13減少重量 − カソード14増加重量)/理論溶解量 × 100・・・数1
(その他)
本発明に係る電解槽10では、アノード13側の溶液の電気伝導度またはpHを公知の測定機器を用いて測定し、硫酸の供給量および通電する電流の調整など操業管理に用いることも可能である。
また、以下に示す本発明の実施例では、電解での通電はアノード13のニッケル板やコバルト板に連続して、アノード13とカソード14の極性を変えずに通電する一般的な方法、すなわち一方向通電、および一定周期で短時間の停電を繰り返しながら通電する断続通電(「パルス通電」ともいう)が採用されているが、アノード13とカソード14の極性を一定周期で定期的に反転させるPR通電と呼ばれる通電方法が採用される場合もある。これらの通電方法はアノード13の不動態化の発生を抑制する効果があるので、その分電流密度を上昇させて生産効率を向上したり、添加する塩化物濃度を低減したりして硫酸溶液をさらに高純度化することもできる。
(実施例1)
実施例1では、中性膜を隔膜12として、アノード室21とカソード室22が分離された電解槽10が用いられた。また、電解槽10では、アノード13およびカソード14として、金属ニッケル板が電極間距離45mmで設置された。それぞれの有効面積は16cmとした。
アノード室21の液面高さを120mmとなるように、初期電解液として、アノード室21に以下の硫酸溶液が供給された。この初期電解液は、水に硫酸ニッケルの結晶を溶解し、硫酸および塩酸で酸濃度や塩化物濃度を調製することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が29g/リットル、塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。
カソード室22からオーバーフローしない程度に、初期電解液としてアノード室21よりも高くするように、初期電解液としてカソード室22に以下の硫酸溶液が供給された。この初期電解液は、濃度196g/リットルの硫酸に、塩酸を供給してカソード室22内での塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。実施例1の金属溶解前の条件を表1に示す。
電解槽10に設けられたアノード13およびカソード14に、電流密度2000A/mとなるように電流が供給された。この際、電解液の温度は60℃になるように制御された。電流が供給されると同時に、カソード室22に、供給ポンプ19を用いて濃度196g/リットルである硫酸と塩酸とが合計で0.6mリットル/minだけ供給管16により電解槽10に供給された。このときの塩酸の量は、カソード室22内の塩化物イオン濃度が3g/リットルになるように調整されている。加えて、アノード室21の底から5mm上方の位置にある、取出管15の開口15aから、取出しポンプ20により金属溶解電解液が取出された。取出された金属溶解電解液の量は、蒸発量を無視すれば、供給されている、硫酸と塩酸の合計量と同じである。
実施例1の結果を表2に示す。取出された金属溶解電解液のニッケルイオン濃度は、103g/リットルであり、電池の正極の製造に用いるのに十分なニッケルイオン濃度であった。また、電流密度も十分に高く、効率的に硫酸溶液が得られた。加えて22Ahの通電の実施に対し、カソード14へのニッケルの再電着がわずかにあったが、電流効率を確認したところ96%であり、効率的に電解が行われていることがわかった。さらに、カソード室22のニッケルイオン濃度を測定したところ6g/リットルであり、カソード室22へのニッケルイオンの移動を抑制できたことがわかった。
(実施例2)
初期電解液としてアノード室21およびカソード室22に以下の硫酸溶液が供給された点以外のパラメータは実施例1と同じである。実施例2のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸ニッケルを溶解し、硫酸および塩酸で調整することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が26g/リットル、塩化物イオン濃度が5g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度193g/リットルの硫酸に、塩酸を供給して塩化物イオン濃度が5g/リットルとなっているものである。実施例2の金属溶解前の条件を表1に示す。
実施例2の結果を表2に示す。取出された金属溶解電解液のニッケルイオン濃度は、104g/リットルであり、電池の正極の製造に用いるのに十分なニッケルイオン濃度であった。また、電流密度も十分に高く、効率的に硫酸溶液が得られた。加えて22Ahの通電の実施に対し、カソード14へのニッケルの再電着がわずかにあったが、電流効率を確認したところ98%であり、効率的に電解が行われていることがわかった。さらに、カソード室22のニッケルイオン濃度を測定したところ5g/リットルであり、カソード室22へのニッケルイオンの移動を抑制できたことがわかった。
(実施例3)
初期電解液としてアノード室21およびカソード室22に以下の硫酸溶液が供給された点、電極の有効面積を32cmとした点、電流密度を1000A/mとした点以外のパラメータは実施例1と同じである。実施例3のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸ニッケルを溶解し、硫酸および塩酸で調整することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が25g/リットル、塩化物イオン濃度が6g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度192g/リットルの硫酸に、塩酸を供給して塩化物イオン濃度が6g/リットルとなっているものである。実施例3の金属溶解前の条件を表1に示す。
実施例3の結果を表2に示す。取出された金属溶解電解液のニッケルイオン濃度は、105g/リットルであり、電池の正極の製造に用いるのに十分なニッケルイオン濃度であった。また、電流密度も十分に高く、効率的に硫酸溶液が得られた。加えて22Ahの通電の実施に対し、カソード14へのニッケルの再電着がわずかにあったが、電流効率を確認したところ98%であり、効率的に電解が行われていることがわかった。さらに、カソード室22のニッケルイオン濃度を測定したところ4g/リットルであり、カソード室22へのニッケルイオンの移動を抑制できたことがわかった。
(実施例4)
実施例4は、アノード13およびカソード14に金属コバルト板が用いられた点、初期電解液としてアノード室21、カソード室22に以下の硫酸溶液が供給された点以外のパラメータは実施例1と同じである。実施例4のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸コバルトを溶解し、硫酸および塩酸で調整することで、コバルトイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が29g/リットル、塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度196g/リットルの硫酸に、塩酸を供給して塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。実施例4の金属溶解前の条件を表1に示す。
実施例4の結果を表2に示す。取出された金属溶解電解液のコバルトイオン濃度は、102g/リットルであり、電池の正極の製造に用いるのに十分なコバルトイオン濃度であった。また、電流密度も十分に高く、効率的に硫酸溶液が得られた。加えて22Ahの通電の実施に対し、カソード14へのニッケルの再電着がわずかにあったが、電流効率を確認したところ96%であり、効率的に電解が行われていることがわかった。さらに、カソード室22のコバルトイオン濃度を測定したところ6g/リットルであり、カソード室22へのコバルトイオンの移動を抑制できたことがわかった。
(実施例5)
実施例5は、アノード13およびカソード14に金属コバルト板が用いられた点、初期電解液としてアノード室21、カソード室22に以下の硫酸溶液が供給された点以外のパラメータは実施例3と同じである。実施例5のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸コバルトを溶解し、硫酸および塩酸で調整することで、コバルトイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が29g/リットル、塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度196g/リットルの硫酸に、塩酸を供給して塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。実施例5の金属溶解前の条件を表1に示す。
実施例5の結果を表2に示す。取出された金属溶解電解液のコバルトイオン濃度は、103g/リットルであり、電池の正極の製造に用いるのに十分なコバルトイオン濃度であった。また、電流密度も十分に高く、効率的に硫酸溶液が得られた。加えて22Ahの通電の実施に対し、カソード14へのニッケルの再電着がわずかにあったが、電流効率を確認したところ98%であり、効率的に電解が行われていることがわかった。さらに、カソード室22のコバルトイオン濃度を測定したところ4g/リットルであり、カソード室22へのコバルトイオンの移動を抑制できたことがわかった。
(比較例1)
比較例1では、アノード室21およびカソード室22に以下の初期電解液が供給された。アノード室21の初期電解液は、水に硫酸ニッケルを溶解し、硫酸で調整することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が33g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度200g/リットルの硫酸である。すなわち、アノード室21およびカソード室22には塩化物イオンは存在していない。これ以外のパラメータは実施例1と同じである。比較例1の金属溶解前の条件を表1に示す。
比較例1の結果を表2に示す。比較例1では、電流を流し始めた後すぐに、電圧が急激に増加し、アノード13から酸素が発生したため、溶解を中止した。すなわち比較例1の条件では、電流密度を上げることができず、効率的に硫酸溶液を得ることができなかった。
(比較例2)
初期電解液としてアノード室21およびカソード室22に以下の硫酸溶液が供給された点、電流密度を1000A/mとした点、アノード室21およびカソード室22の液温を30度に調整した点以外のパラメータは実施例1と同じである。比較例2のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸ニッケルを溶解し、硫酸および塩酸で調整することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が26g/リットル、塩化物イオン濃度が6g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度192g/リットルの硫酸に、塩酸を供給して塩化物イオン濃度が6g/リットルとなっているものである。比較例2の金属溶解前の条件を表1に示す。
比較例2の結果を表2に示す。比較例2では、電流を流し始めた後すぐに、電圧が急激に増加し、アノード13から酸素が発生したため、溶解を中止した。すなわち比較例2の条件では、電流密度を上げることができず、効率的に硫酸溶液を得ることができなかった。
(比較例3)
比較例3では、図1の電解槽10が用いられたが、この際隔膜12が除去された。また初期電解液は以下のものが供給された。この初期電解液は、硫酸および塩酸で調整することで、硫酸濃度が29g/リットル、塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。この隔膜12がない点、初期電解液の点以外のパラメータは、実施例4と同じである。比較例3の金属溶解前の条件を表1に示す。
比較例13の結果を表2に示す。通電後しばらくして、アノード13とカソード14がショートした。カソード14を取り出し確認したところ、コバルトがデンドライト状に析出していた。すなわち効率的に硫酸溶液を得ることが困難であることがわかった。
Figure 2020055728
Figure 2020055728
(実施例6)
電解槽10に設けられたアノード13およびカソード14に、周期的な通停電を繰り返すパルス電流が供給された点、アノード13およびカソード14の電極有効面積が異なる点、初期電解液としてアノード室21およびカソード室22に以下の硫酸溶液が供給された点以外のパラメータは実施例1と同じである。実施例6では、電解槽10に設けられたアノード13およびカソード14の有効面積は32cmとした。また、周期1秒で、ON時間0.85秒、デューティ比0.85、平均電流密度1000A/mとなるようにパルス電流が供給された。また、実施例6のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸ニッケルを溶解し、硫酸および塩酸で調整することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、遊離硫酸濃度が32g/リットル、塩化物イオン濃度が1g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度199g/リットルの硫酸に、塩酸を供給して塩化物イオン濃度が1g/リットルとなっているものである。実施例6の金属溶解前の条件を表3に示す。
実施例6の結果を表4に示す。取出された金属溶解電解液のニッケルイオン濃度は、100g/リットルであり、電池の正極の製造に用いるのに十分なニッケルイオン濃度であった。また、電流密度も十分に高く、効率的に硫酸溶液が得られた。加えて21Ahの通電の実施に対し、電流効率を確認したところ98%であり、効率的に電解が行われていることがわかった。さらに、カソード室22のニッケルイオン濃度を測定したところ4g/リットルであり、カソード室22へのニッケルイオンの移動を抑制できたことがわかった。
(実施例7)
電解槽10に設けられたアノード13およびカソード14に、周期的な通停電を繰り返すパルス電流が供給された点、アノード13およびカソード14の電極有効面積が異なる点、初期電解液としてアノード室21およびカソード室22に以下の硫酸溶液が供給された点以外のパラメータは実施例6と同じである。実施例7では、電解槽10に設けられたアノード13およびカソード14の有効面積は20cmとした。また、周期2秒で、ON時間1.9秒、デューティ比0.95、平均電流密度1600A/mとなるようにパルス電流が供給された。加えて、実施例7のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸ニッケルを溶解し、硫酸および塩酸で調整することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、遊離硫酸濃度が30g/リットル、塩化物イオン濃度が2g/リットルとなっているものである。またカソード室22の初期電解液は、濃度197g/リットルの硫酸に、塩酸を供給して塩化物イオン濃度が2g/リットルとなっているものである。実施例7の金属溶解前の条件を表3に示す。
実施例7の結果を表4に示す。取出された金属溶解電解液のニッケルイオン濃度は、102g/リットルであり、電池の正極の製造に用いるのに十分なニッケルイオン濃度であった。また、電流密度も十分に高く、効率的に硫酸溶液が得られた。加えて22Ahの通電の実施に対し、電流効率を確認したところ96%であり、効率的に電解が行われていることがわかった。さらに、カソード室22のニッケルイオン濃度を測定したところ5g/リットルであり、カソード室22へのニッケルイオンの移動を抑制できたことがわかった。
(比較例4)
電解槽10に設けられたアノード13およびカソード14に、実施例6とは異なるパルス電流が供給された点以外のパラメータは実施例6と同じである。比較例4では、周期1秒で、ON時間0.5秒、デューティ比0.5となるようにパルス電流が供給された。比較例4の金属溶解前の条件を表3に示す。
比較例4の結果を表4に示す。通電後しばらくして、電圧が急激に増加し、アノード13から酸素が発生したため、溶解を中止した。すなわち効率的に硫酸溶液を得ることが困難であることがわかった。
Figure 2020055728
Figure 2020055728
10 電解槽
12 隔膜
13 アノード
14 カソード
15 取出管
15a 開口
17 直流電源
21 アノード室
22 カソード室

Claims (6)

  1. 槽内が中性膜によりアノード室およびカソード室に分けられた電解槽に、塩化物イオン含有硫酸溶液を初期電解液として供給する初期電解液供給工程と、
    前記電解槽に設けられたアノードとカソードとに電流を供給するとともに、前記アノード室から、前記アノードを構成する金属が溶解した金属溶解電解液を取出す電解液取出工程と、
    を含んで構成されている、
    ことを特徴とする硫酸溶液の製造方法。
  2. 前記アノードを構成する金属は、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の硫酸溶液の製造方法。
  3. 前記塩化物イオン含有硫酸溶液の塩化物イオンの濃度が1g/リットル以上20g/リットル以下である、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硫酸溶液の製造方法。
  4. 前記カソード室の液面を、前記アノード室の液面よりも高くし、
    オーバーフローによって前記カソード室の液を前記アノード室に移動させる、
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の硫酸溶液の製造方法。
  5. 前記電解液取出工程において、
    前記アノードとカソードとに、周期的な通停電を繰り返すパルス電流を供給する、
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の硫酸溶液の製造方法。
  6. 前記周期的な通停電において、
    前記周期的な通停電の1周期における通電時間の比率が、0.8以上1.0未満である、
    ことを特徴とする請求項5に記載の硫酸溶液の製造方法。
JP2019026646A 2018-05-16 2019-02-18 硫酸溶液の製造方法 Active JP7211143B2 (ja)

Applications Claiming Priority (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018094222 2018-05-16
JP2018094222 2018-05-16
JP2018103725 2018-05-30
JP2018103725 2018-05-30
JP2018181732 2018-09-27
JP2018181732 2018-09-27

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020055728A true JP2020055728A (ja) 2020-04-09
JP7211143B2 JP7211143B2 (ja) 2023-01-24

Family

ID=70106399

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019026646A Active JP7211143B2 (ja) 2018-05-16 2019-02-18 硫酸溶液の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7211143B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020055729A (ja) * 2018-05-16 2020-04-09 住友金属鉱山株式会社 硫酸溶液の製造方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003096585A (ja) * 2001-09-21 2003-04-03 Furukawa Co Ltd 硫酸コバルト溶液の製造方法
JP2011225963A (ja) * 2010-04-15 2011-11-10 Solar Applied Materials Technology Corp ルテニウム−コバルト系合金の電気化学溶解方法
JP2020026576A (ja) * 2018-05-16 2020-02-20 住友金属鉱山株式会社 硫酸溶液の製造方法およびこの製造方法で用いられる電解槽
JP2020056093A (ja) * 2018-05-16 2020-04-09 住友金属鉱山株式会社 硫酸溶液の製造方法およびこの製造方法で用いられる電解槽

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003096585A (ja) * 2001-09-21 2003-04-03 Furukawa Co Ltd 硫酸コバルト溶液の製造方法
JP2011225963A (ja) * 2010-04-15 2011-11-10 Solar Applied Materials Technology Corp ルテニウム−コバルト系合金の電気化学溶解方法
JP2020026576A (ja) * 2018-05-16 2020-02-20 住友金属鉱山株式会社 硫酸溶液の製造方法およびこの製造方法で用いられる電解槽
JP2020056093A (ja) * 2018-05-16 2020-04-09 住友金属鉱山株式会社 硫酸溶液の製造方法およびこの製造方法で用いられる電解槽

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020055729A (ja) * 2018-05-16 2020-04-09 住友金属鉱山株式会社 硫酸溶液の製造方法
JP7211144B2 (ja) 2018-05-16 2023-01-24 住友金属鉱山株式会社 硫酸溶液の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7211143B2 (ja) 2023-01-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5250683B2 (ja) Pb−free廃はんだからの有価金属の回収方法
JP2014501850A (ja) チオ硫酸塩溶液からの金および銀の電気的回収
JP7259389B2 (ja) 硫酸溶液の製造方法
JP2009270188A (ja) 高純度水酸化リチウムの製造方法
CN102560560B (zh) 圆筒状射流态直接电沉积设备及使用其电积金属的方法
KR102611287B1 (ko) 황산 용액의 제조 방법, 및 이 제조 방법에서 이용되는 전해조
CN203200349U (zh) 一种制备高纯钴的隔膜电解槽
CN102839389A (zh) 一种新型膜法金属氯化物电积精炼生产方法
JP2016186115A (ja) 金属の電解採取方法
CN102828205A (zh) 一种新型金属电积精炼工艺
JP2020055728A (ja) 硫酸溶液の製造方法
JP2013076109A (ja) 金属マンガンの電解採取による製造方法
CN104651880B (zh) 一种脱铜分氰联立工艺处理银冶炼含氰贫液的方法
KR101397743B1 (ko) 고순도 니켈의 제조 방법
JP2005298870A (ja) 電解採取による金属インジウムの回収方法
JP7207024B2 (ja) 硫酸溶液の製造方法
JP7211144B2 (ja) 硫酸溶液の製造方法
RU2766336C1 (ru) Способ получения раствора серной кислоты и используемый в нем электролизер
CN202519346U (zh) 一种带有阳极材料存储箱的无残极串联电解装置
US7794582B1 (en) Method of recovering metal ions recyclable as soluble anode from waste plating solutions
JP5344278B2 (ja) 金属インジウム製造方法及び装置
CN103374732A (zh) 一种带有阳极材料存储箱的无残极串联电解装置
JP7188239B2 (ja) 電解槽および酸溶液の製造方法
JP2012172193A (ja) 電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法
JP6473102B2 (ja) コバルトの電解採取方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211007

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220817

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220908

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221213

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221226

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7211143

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150