以下に本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
図1〜図5を参照しつつ、本開示の第1実施形態に係る圧電振動素子及び圧電振動子について説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る圧電振動素子を備えた圧電振動子の分解斜視図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3Aは、本開示の第1実施形態に係る圧電振動素子の一方の平面図である。図3Bは、本開示の第1実施形態に係る圧電振動素子の他方の平面図である。図4は、図3AのIV−IV線断面図である。図5は、本開示の第1実施形態に係る圧電振動素子の部分拡大図である。
圧電振動子1は、振動子の一例である。図1に示されるように、本実施形態に係る圧電振動子1は、圧電振動素子10Aと、蓋部材20と、ベース部材30とを備える。なお、本明細書では、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)を圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)の一例として説明する。水晶振動素子は、印加電圧に応じて振動する圧電体として水晶片(Quartz Crystal Element)を利用するものである。
圧電振動素子10Aは、圧電基板11を有する。圧電基板11は、振動基板の一例であり、例えば所定の圧電材料から構成される。圧電基板11は、少なくとも一部に振動する領域を含む振動部110と、振動部110を振動可能なように保持する保持部111を有する。圧電基板11の材料は特に限定されないが、例えば所定の結晶方位を有する水晶材料から構成されてもよい。本実施形態における圧電基板11は、ATカットされた水晶片から構成されている。ATカットされた水晶片は、水晶(Quartz Crystal)の結晶軸(Crystallographic Axes)であるX軸、Y軸、Z軸のうち、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸をそれぞれY´軸及びZ´軸とした場合、X軸及びZ´軸によって特定される面(以下、「XZ´面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)と平行な面を主面として人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)から切り出されたものである。なお、X軸、Z´軸及びY´軸は互いに交差(本実施形態においては直交)する軸であり、以降は当該軸を用いて各構成要素を説明することもある。
ATカットされた水晶片を用いた水晶振動素子は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有し、経時変化特性に優れている上、低コストで製造することが可能である。ATカットされた水晶片を用いた水晶振動素子は、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)を主振動として用いられることが多い。
圧電基板11は、平板状をなしており、その厚さ方向の両側に第1主面12a及び第2主面12bを有する。第1主面12a及び第2主面12bは、XZ´面と平行かつ互いに対向し、X軸に平行な長辺とZ´軸に平行な短辺を有する矩形状をなしている。圧電基板11は、第1主面12a及び第2主面12bの長辺側に、XY´面と平行かつ互いに対向する第1側面13a及び第2側面13bを有する。以下、圧電基板11の長辺が延びるX軸方向(第1方向)を単に「長辺方向」とも呼び、短辺が延びるZ´軸方向(第2方向)を単に「短辺方向」とも呼び、Y´軸方向を「厚さ方向」とも呼ぶ。また、第1主面12aと第2主面12bを特に区別する必要がないときは、これらをまとめて「主面」とも呼ぶ。
なお、圧電基板11は水晶片に限定されるものではなく、例えば圧電単結晶、圧電セラミック、圧電薄膜、又は圧電高分子膜などの任意の圧電材料によって形成された圧電体片であってもよい。圧電単結晶は、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含む。圧電セラミックは、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O3;PZT)、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、メタニオブ酸リチウム(LiNb2O6)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、及び五酸化タンタル(Ta2O5)などを含む。圧電薄膜は、例えば石英及びサファイアなどの基板上に上記の圧電セラミックをスパッタリング法などによって成膜したものを含む。圧電高分子膜は、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びフッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体(P(VDF/TrFE))などを含む。上記の各種圧電材料は、互いに積層されていてもよく、他の部材に積層されてもよい。さらに、圧電基板11は圧電体片に限られず、圧電性を有しない又は圧電性の小さい絶縁体材料によって形成された振動基板であってもよく、半導体材料や導電体材料によって形成された振動基板であってもよい。
圧電基板11には、第1励振電極14a、第2励振電極14b、第1引出電極15a、第2引出電極15b、第1接続電極16a、第2接続電極16b、貫通孔17、第1凹部18a及び第2凹部18bが設けられる。
第1励振電極14aは、圧電基板11の第1主面12aに設けられている(図3A参照)。第2励振電極14bは、圧電基板11の第2主面12bに設けられている(図3B参照)。これらの第1励振電極14aと第2励振電極14bは略全体が重なり合うように、圧電基板11を挟んで互いに対向して配置されている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bが配置された領域は、圧電基板11の振動部110に含まれる。なお、本実施形態において第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、圧電基板11の第1主面12a及び第2主面12bの長辺及び短辺からそれぞれ所定の間隔を空けて設けられているが、これらの励振電極は、圧電基板の主面の長辺及び短辺の少なくともいずれか一方に接して設けられてもよい。
第1引出電極15aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aを電気的に接続する電極である。第2引出電極15bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bを電気的に接続する電極である。第1引出電極15aは、圧電基板11の第1主面12aにおいて、貫通孔17と第1側面13aとの間を、第1励振電極14aから第1接続電極16aに向かって長辺方向に引き出されて設けられている。第2引出電極15bは、圧電基板11の第2主面12bにおいて、貫通孔17と第2側面13bとの間を、第2励振電極14bから第2接続電極16bに向かって長辺方向に引き出されて設けられている。第1引出電極15aと第2引出電極15bは、いずれも圧電基板11の保持部111に配置されている。
第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、第1励振電極14a及び第2励振電極14bをベース部材30に形成された電極と電気的に接続させるための電極である。第1接続電極16aは、圧電基板11の長辺方向の一方(本実施形態では、保持部111側)の端部において、圧電基板11の第1主面12aから第1側面13aを経由して第2主面12bに至るように引き回されている。同様に、第2接続電極16bは、圧電基板11の長辺方向の一方の端部において、圧電基板11の第2主面12bから第2側面13bを経由して第1主面12aに至るように引き回されている。すなわち、第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、いずれも圧電基板11の一部を厚み方向に挟むように設けられる。また、圧電基板11の主面を平面視したとき、第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、短辺方向の両端に設けられている。
上述の構成により、第1励振電極14aは、第1引出電極15aを介して第1接続電極16aに電気的に接続される。第2励振電極14bは、第2引出電極15bを介して第2接続電極16bに電気的に接続される。なお、第1接続電極16aが圧電基板11の第2主面12bに引き回されることにより、第1接続電極16aと第2接続電極16bが圧電振動素子10Aのベース部材30と対向する側の主面に配置されることとなる。従って、圧電振動素子10Aをベース部材30に搭載する際に、第1励振電極14a及び第2励振電極14bをベース部材30に形成された電極と電気的に接続させやすくなる。
また、本実施形態では、第1励振電極14a、第2励振電極14b、第1引出電極15a、第2引出電極15b、第1接続電極16a及び第2接続電極16bが、いずれもX軸を基準に線対称となるように形成されている。これにより、圧電基板11の両主面間で電極の配置の区別がなくなる。従って、圧電振動素子10Aをベース部材30に搭載する際にY´軸方向の向きを考慮する必要がなくなり、製造工程が簡易化される。
なお、第1励振電極14a、第2励振電極14b、第1引出電極15a、第2引出電極15b、第1接続電極16a及び第2接続電極16bの配置やパターン形状は限定されるものではなく、他の部材との電気的接続を考慮して適宜変更されてもよい。
貫通孔17、第1凹部18a及び第2凹部18bは、いずれも圧電振動素子10Aの振動を振動部110に閉じ込め、かつ圧電振動素子10Aの外部から印加される応力を緩和させるため、圧電基板11の保持部111に設けられている。貫通孔17は、圧電基板11を厚さ方向に貫通する孔である。第1凹部18a及び第2凹部18bは、いずれも圧電基板11を貫通せず、厚さ方向に窪んだ溝である。第1凹部18aは、圧電基板11の第1主面12aから第2主面12bに向かって窪み、第2凹部18bは、圧電基板11の第2主面12bから第1主面12aに向かって窪んでいる。なお、貫通孔17が貫通する方向、並びに第1凹部18a及び第2凹部18bが窪む方向は、圧電基板11の主面と直交する方向(すなわち、Y´軸方向)に限られず、主面に対して斜めの角度を有する方向も含むものとする。貫通孔17、第1凹部18a及び第2凹部18bの配置及び大きさの詳細については後述する。
蓋部材20及びベース部材30は、圧電振動素子10Aを収容するための保持器(ケース又はパッケージ)の構成の一部である。
蓋部材20は、接合部材40を介してベース部材30に接合される。本実施形態において蓋部材20は、ベース部材30に向かって開口した窪みを有する。蓋部材20は、ベース部材30の第1主面32aに対向する矩形状の天面部21と、開口の全周に亘って天面部21の主面の法線方向に延在する側壁部22を有する(図2参照)。当該側壁部22のベース部材30と対向する端面が、接合部材40を介してベース部材30に接合されることにより、圧電振動素子10Aが内部空間に収容される。なお、蓋部材はベース部材に接合されたときに圧電振動素子10Aを内部空間に収容することができる形状であればよく、その形状は特に限定されない。
蓋部材20の材質は特に限定されないが、例えば、金属などの導電材料で構成されてもよい。この場合、蓋部材20にシールド機能を付加することができ、さらに蓋部材20に接地電位を供給することによりシールド機能の向上を図ることができる。あるいは、蓋部材20は、絶縁材料又は導電材料・絶縁材料の複合構造であってもよい。
ベース部材30は、圧電振動素子10Aを励振可能に保持するものである。ベース部材30は、例えば、基体31、第1電極パッド33a、第2電極パッド33b、第1ビア電極34a、第2ビア電極34b、第1外部電極35a、第2外部電極35b、第3外部電極35c、第4外部電極35d、第1導電性保持部材36a、第2導電性保持部材36b及び封止枠37を有する。
基体31は、平板状をなし、XZ´面に平行かつ互いに対向する矩形状の第1主面32a及び第2主面32bを有する。
第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31の第1主面32aに設けられている。圧電振動素子10Aがベース部材30に搭載される際に、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、それぞれ、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを介して圧電振動素子10Aの第1接続電極16a及び第2接続電極16bに電気的に接続される。これにより、圧電振動素子10Aでは、圧電基板11の保持部111側が固定端であり、振動部110側が自由端となる。なお、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、導電性接着剤が熱硬化して形成されたものである。
第1ビア電極34a及び第2ビア電極34bは、基体31を厚さ方向に貫通するビアホール内に形成されている。
第1外部電極35a、第2外部電極35b、第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、基体31の第2主面32bのそれぞれの角部に設けられ、実装基板(不図示)の端子と電気的に接続される。また、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、それぞれ、第1ビア電極34a及び第2ビア電極34bを介して第1外部電極35a及び第2外部電極35bに電気的に接続される。これにより、第1外部電極35a及び第2外部電極35bから、第1ビア電極34a及び第2ビア電極34b、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33b、並びに第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを経由して、圧電振動素子10Aの第1接続電極16a及び第2接続電極16bにそれぞれ電圧を印加することができる。本実施形態では、ベース部材30の一方の短辺付近に配置された第1外部電極35a及び第2外部電極35bは、圧電振動素子10Aの入出力信号が供給される入出力電極であり、ベース部材30の他方の短辺付近に配置された第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、圧電振動素子10Aの入出力信号が供給されないダミー電極である。このようなダミー電極には、圧電振動子1が実装される実装基板(不図示)上の他の電子素子の入出力信号のいずれも供給されなくてもよく、あるいは例えば接地電位が供給されてもよい。
なお、第1電極パッド33a、第2電極パッド33b、第1ビア電極34a、第2ビア電極34b、第1外部電極35a、第2外部電極35b、第3外部電極35c及び第4外部電極35dの配置関係は上記例に限定されるものではない。
封止枠37は、基体31の第1主面32aを平面視したとき矩形の枠状をなしており、導電材料により構成されている。
接合部材40は、ベース部材30の封止枠37と蓋部材20の側壁部22の端面との間に全周に亘って設けられている。蓋部材20は、接合部材40及び封止枠37を介してベース部材30に接合される。
このように、蓋部材20とベース部材30の両者が封止枠37及び接合部材40を介して接合されることによって、圧電振動素子10Aが蓋部材20とベース部材30によって囲まれた内部空間(キャビティ)に封止される。なお、当該内部空間の圧力は、大気圧力よりも低圧な真空状態であれば、圧電振動素子10Aに形成された各種電極の酸化による経時変化などが低減できるため好ましい。
上述のとおり構成される圧電振動子1においては、第1外部電極35a及び第2外部電極35bを介して、圧電振動素子10Aの第1励振電極14a及び第2励振電極14bに交番電界が印加される。これにより、厚みすべり振動モードなどの所定の振動モードによって圧電基板11の振動部110が振動し、当該振動に伴う共振特性が得られる。
次に、貫通孔17、第1凹部18a及び第2凹部18bの構成の詳細について説明する。図5に示されるように、貫通孔17は、圧電基板11の保持部111のうち短辺方向の中央付近に配置されている。より具体的には、貫通孔17は、圧電基板11の主面を平面視したとき、長辺方向においては第1励振電極14a(又は第2励振電極14b)と圧電基板11の長辺方向の保持部111側の端部との間の領域であって、短辺方向においては第1接続電極16aと第2接続電極16bとの間の領域に配置されている。なお、例えば「短辺方向における第1接続電極16aと第2接続電極16bとの間の領域」とは、二次元平面において第1接続電極16aと第2接続電極16bに挟まれた領域に限られず、第2方向において第1接続電極16aと第2接続電極16bとの間であれば、第1方向にずれた領域も含むものとする。貫通孔17の形状は特に限定されないが、本実施形態では、圧電基板11の第1主面12a及び第2主面12bにおける開口部が矩形状を有する形状である。
第1凹部18a及び第2凹部18bは、貫通孔17より短辺方向における外側に設けられている。第1凹部18aは、圧電基板11の第1主面12aを平面視したとき、長辺方向においては第1励振電極14aと第2接続電極16bとの間の領域であって、短辺方向においては貫通孔17を挟んで第1引出電極15aと異なる側(すなわち、第2接続電極16b側)に設けられている。また、第2凹部18bは、圧電基板11の第2主面12bを平面視したとき、長辺方向においては第2励振電極14bと第1接続電極16aとの間の領域であって、短辺方向においては貫通孔17を挟んで第2引出電極15bと異なる側(すなわち、第1接続電極16a側)に設けられている。また、第1凹部18aは、貫通孔17から圧電基板11の第2側面13bに至るまで短辺方向に延在して設けられている。第2凹部18bは、貫通孔17から圧電基板11の第1側面13aに至るまで短辺方向に延在して設けられている。このように、各凹部が貫通孔17から圧電基板11の一方の側面に至るまで延在して設けられることにより、各凹部が貫通孔及び側面に至るまで延在しない構成に比べて、振動部110への振動の閉じ込めの効果及び圧電基板11の外部から印加される応力の緩和の効果の向上が見込まれる。
本実施形態において、貫通孔17のX軸方向の長さLxは、第1凹部18aのX軸方向の長さ(以下、第1凹部18aの「幅」とも呼ぶ。)La及び第2凹部18bのX軸方向の長さ(以下、第2凹部18bの「幅」とも呼ぶ。)Lbより長い(La,Lb<Lx)。なお、第1凹部18aの幅Laと第2凹部18bの幅Lbは同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。また、貫通孔17のZ´軸方向の長さWxは、圧電基板11の主面を平面視したときの第1接続電極16aと第2接続電極16bの間のZ´軸方向の距離Dより短い(Wx<D)。すなわち、圧電基板11の保持部111のうち、第1接続電極16aと第2接続電極16bとの間の領域のように、X軸方向に比較的広い空間が確保される領域には、X軸方向の長さが長い貫通孔17が形成される。他方、第1励振電極14aと第2接続電極16bとの間、並びに、第2励振電極14bと第1接続電極16aとの間のように、X軸方向に確保される空間が比較的狭い領域には、幅が狭い第1凹部18a及び第2凹部18bがそれぞれ形成される。貫通孔17、第1凹部18a、及び第2凹部18bをこのように配置することにより、例えば特許文献1に開示されるように励振電極と接続パッドとの間にスリットを設ける構成に比べて、保持部111の長辺方向の長さを短くすることができる。従って、本実施形態によると、圧電振動素子10Aの小型化を図りつつ、圧電振動素子10Aの外部から印加される応力を緩和することができる。
また、例えば圧電基板が水晶部材により構成される場合に、ウェットエッチングにより貫通孔を形成しようとすると、水晶結晶が有する異方性の特性により、エッチングが水晶部材の主面と垂直には進まず、主面に対して斜めに進むことがある。従って、当該水晶部材を貫通させるためには、貫通孔の開口部を広く取らざるを得ず、保持部のサイズが大きくなりかねない。この点、本実施形態に係る第1凹部18aの幅La及び第2凹部18bの幅Lbは、貫通孔17のX軸方向の長さLxより短く、開口部が小さい。ここで、第1凹部18a及び第2凹部18bは、圧電基板11を貫通しておらず、エッチングが途中で止まってもよい。従って、本実施形態によると、ウェットエッチングを用いた簡易な工法により、貫通孔17、第1凹部18a及び第2凹部18bを形成することができる。
さらに、第1凹部18a及び第2凹部18bの深さは、圧電基板11の厚さ方向の中心線lを超えるように(すなわち、圧電基板11の厚さの半分より深くなるように)形成されている(図5参照)。このように、第1凹部18a及び第2凹部18bの深さが圧電基板11の厚さの半分より深い場合、保持部111から振動部110に伝わる応力をより一層緩和することができる。なお、これらの凹部の深さは特に限定されず、圧電基板11の厚さの半分以下でもよい。
また、第1凹部18a及び第2凹部18bは、それぞれ、圧電基板11の保持部111において第1引出電極15a及び第2引出電極15bと異なる側に形成されている。これにより、凹部がこれらの引出電極と同じ側に形成され、凹部の内部に沿って引出電極が形成される構成に比べて、引出電極の断線が発生するリスクを低減させることができる。
加えて、例えば上記特許文献1に記載される圧電振動子は、一対のパッド電極が振動素子の両面にそれぞれ形成されるため、振動素子を基板に搭載する際に、一方のパッド電極は導電性部材により接続され、他方のパッド電極はワイヤボンディングにより接続されている。すなわち、振動素子の基板への接続において異なる2種類の工法を要する。他方、本実施形態では、第1接続電極16aが圧電基板11の第2主面12bまで引き回されていることにより、第1接続電極16a及び第2接続電極16bのいずれもが、ベース部材30と対向する側の主面に形成される。従って、本実施形態によると、導電性接着剤を用いた1種類の工法で圧電基板11をベース部材に接続することができるため、特許文献1に開示された構成に比べて製造工程を簡易にすることができる。
なお、上述の実施形態では、第1凹部18aと第2凹部18bとが長辺方向において同じ位置、かつ保持部111のうちX軸正方向側(すなわち、振動部110に近い側)に形成される例が示されているが、これらの2つの凹部は長辺方向において異なる位置に形成されてもよく、また保持部111のうちX軸負方向側に形成されてもよい。
次に、図6から図9を参照して、上記第1実施形態の様々な変形例に係る圧電振動素子10B〜10Dについて説明する。図6から図8は、本開示の第1実施形態の変形例に係る圧電振動素子の平面図である。図9は、図8に示すIX−IX線断面図である。なお、図6から図8は、図3Aと同じ方向を示した平面図である。圧電振動素子10B〜10DはいずれもX軸を基準に線対称であるため、図3Bと同じ方向を示した平面図を省略する。また、本実施形態以降では、上述した実施形態と対応する構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、上述した実施形態と異なる点について説明する。
図6に示される圧電振動素子10B及び図7に示される圧電振動素子10Cは、圧電振動素子10Aと比べて、圧電基板11の主面を平面視したとき、2つの凹部の形成位置が異なる。
圧電振動素子10Bにおける第1凹部18c及び第2凹部18dは、圧電振動素子10Bの主面を平面視したとき、圧電基板11の長辺方向において一部が重なるように形成されている。すなわち、第1凹部18cと第2凹部18dは、Z´軸と平行な仮想線mと重なるように形成されている。
圧電振動素子10Cにおける第1凹部18e及び第2凹部18fは、圧電振動素子10Cの主面を平面視したとき、圧電基板11の長辺方向において重ならないように形成されている。すなわち、第1凹部18eと第2凹部18fは、Z´軸と平行な仮想線mと重ならないように形成されている。
このように、2つの凹部の相対的な位置関係は特に限定されない。例えば、圧電基板11の主面を平面視したとき、2つの凹部は、各凹部を短辺方向に延長させた場合に凹部の幅の全てが重なっていてもよく、一部が重なっていてもよく、あるいは全てが重なっていなくてもよい。
図8に示される圧電振動素子10Dは、圧電振動素子10Aと比べて、2つの凹部の開口部の大きさが異なる。
第1凹部18gは、その短辺方向の両端が貫通孔17及び圧電基板11の第2側面13bに接せず、貫通孔17と第2側面13bとの間において圧電基板11の内部に形成されている。第2凹部18hは、その短辺方向の両端が貫通孔17及び圧電基板11の第1側面13aに接せず、貫通孔17と第1側面13aとの間において圧電基板11の内部に形成されている。
このように、第1凹部18g及び第2凹部18hの大きさ及び形状は特に限定されず、凹部は貫通孔17から一方の側面に至るまで連続的に形成されていなくてもよい。また、本実施形態においては、第1凹部18g及び第2凹部18hが圧電基板11の長辺方向における貫通孔17の中央付近に形成されているが、これらの2つの凹部が形成される位置は貫通孔17の当該中央付近でなくてもよい。さらに、これらの2つの凹部は、圧電振動素子10B,10Cのように、圧電基板11の長辺方向において一部が重なっていてもよく、あるいは全部が重なっていなくてもよい。
図10は、本開示の第2実施形態に係る圧電振動素子の平面図である。また、図11は、本開示の第2実施形態に係る圧電振動素子の部分拡大図である。
図10に示されるように、圧電振動素子10Eは、合計4つの凹部が形成される点において圧電振動素子10Aと異なる。圧電振動素子10Eは、第1主面12aから第2主面12bに向かって窪んだ第1凹部18i及び第3凹部18kと、第2主面12bから第1主面12aに向かって窪んだ第2凹部18j及び第4凹部18lを有する。第1凹部18i及び第2凹部18jは、貫通孔17から圧電基板11の第2側面13bに至るまで短辺方向に延在して設けられている。第3凹部18k及び第4凹部18lは、貫通孔17から圧電基板11の第1側面13aに至るまで短辺方向に延在して設けられている。
圧電基板11の主面を平面視したとき、第1凹部18iと第2凹部18j、及び、第3凹部18kと第4凹部18lは、長辺方向に沿って並んで配置されている。具体的に、第1凹部18iと第2凹部18jは、圧電基板11の主面を平面視したとき、長辺方向においては互いに重ならず、短辺方向においては少なくとも一部(本実施形態においては全部)が互いに重なるように設けられている。同様に、第3凹部18kと第4凹部18lは、圧電基板11の主面を平面視したとき、長辺方向においては互いに重ならず、短辺方向においては少なくとも一部(本実施形態においては全部)が互いに重なるように設けられている。本実施形態では、第1凹部18i、第2凹部18j、第3凹部18k及び第4凹部18lの窪みの深さは、いずれも圧電基板11の厚さの半分より深い。すなわち、圧電基板11の第1側面13a側及び第2側面13b側のそれぞれにおいて、圧電基板11の厚さ方向の中心線l上に2つの凹部が介在することとなる(図11参照)。このように、圧電振動素子10Eでは、振動の伝搬方向(すなわち、X軸方向)に2つの凹部が介在するため、圧電振動素子10A〜10Dに比べて外部から印加される応力をさらに緩和させることができる。
なお、各凹部の深さは、必ずしも圧電基板11の厚さの半分より深くなくてもよい。また、各凹部の短辺方向の長さはこれに限られず、圧電振動素子10Dと同様に貫通孔17から一方の側面に至るまで延在していなくてもよい。
図12は、本開示の第3実施形態に係る圧電振動素子の断面図である。また、図13は、本開示の第3実施形態に係る圧電振動素子の平面図である。なお、図12は、図2と同じ方向を示した圧電振動子の断面図であり、図13は、図3Aと同じ方向を示した平面図である。圧電振動素子10FはX軸を基準に線対称であるため、図3Bと同じ方向を示した平面図を省略する。
図12に示されるように、圧電振動素子10Fは、圧電基板11がメサ型構造をなしている点において圧電振動素子10A〜10Eと異なる。本実施形態における圧電基板11は、主面を平面視したときの中央を含む中央部Rinと、当該中央部Rinの周縁に枠上に位置する周縁部Routを有する。中央部Rinの厚さは、周縁部Routの厚さより厚い。具体的に、圧電基板11の第1主面12a側及び第2主面12b側の両側において、中央部Rinが周縁部RoutからY´軸正負方向に突出し、第1主面12a側及び第2主面12b側の両方がメサ形状となる両面メサ型構造をなしている。このように、圧電基板11がメサ型構造をなすことにより、中央部Rinから周縁部Routへの振動漏れがさらに抑制される。
なお、周縁部の形状は枠状に限定されるものではなく、中央部に並ぶように中央部の両側端辺に配置されてもよく、中央部の片側端辺に配置されてもよい。また、圧電基板11の形状は両面メサ型構造に限定されるものではなく、第1主面側又は第2主面側のいずれかがメサ形状となる片面メサ型構造であってもよいし、中央部と周縁部との厚さが連続的に変化するコンベックス形状またはベベル形状であってもよい。
以上、本開示の例示的な実施形態について説明した。振動素子10A〜10Fは、振動基板11と、振動基板11の厚さ方向の両側の主面にそれぞれ設けられた第1励振電極14a及び第2励振電極14bと、振動基板11の主面を平面視したとき振動基板11の第1方向の一方の端部に配置され、それぞれが第1励振電極14a及び第2励振電極14bのいずれかと電気的に接続された第1接続電極16a及び第2接続電極16bと、振動基板11の厚さ方向に振動基板11を貫通する貫通孔17と、振動基板11の厚さ方向に窪んだ少なくとも一つの凹部と、を備え、振動基板11の主面を平面視したとき、貫通孔17は、第1方向と交差する第2方向において第1接続電極16aと第2接続電極16bとの間の領域に設けられ、振動基板11の主面を平面視したとき、少なくとも一つの凹部は、第1方向において、第1励振電極14a及び第2励振電極14bのいずれか一方と、第1接続電極16a及び第2接続電極16bのいずれか一方との間の領域に設けられ、貫通孔17の第1方向の長さは、少なくとも一つの凹部の第1方向の長さより長い。これにより、保持部111の長辺方向の長さを短くすることができるため、振動素子の小型化を図りつつ、振動素子の外部から印加される応力を緩和することができる。
また、振動素子10A〜10C,10E,10Fにおいて、少なくとも一つの凹部は、貫通孔17から振動基板の側面に至るように第2方向に延在する。これにより、凹部が貫通孔及び側面に至るまで延在しない構成に比べて、振動部110への振動の閉じ込めの効果及び保持部111から振動部110に伝わる応力の緩和の効果の向上が見込まれる。
また、振動素子10A〜10Fにおいて、少なくとも一つの凹部の窪みの深さは、振動基板の厚さの半分より深い。これにより、凹部の窪みの深さが振動基板の厚さの半分以下である構成に比べて、保持部111から振動部110に伝わる応力をより一層緩和することができる。
また、振動素子10A〜10D,10Fは、振動基板11の一方の主面において、第1励振電極14aから振動基板11の一方の端部に向かって引き出された第1引出電極15aと、振動基板11の他方の主面において、第2励振電極14bから振動基板11の一方の端部に向かって引き出された第2引出電極15bと、を備え、第1凹部18a,18c,18e,18gと第1引出電極15aは、貫通孔17を挟んで第2方向における互いに異なる側に設けられ、第2凹部18b,18d,18f,18hと第2引出電極15bは、貫通孔17を挟んで第2方向における互いに異なる側に設けられている。これにより、凹部が引出電極と同じ側に形成される構成に比べて、引出電極の断線が発生するリスクを低減させることができる。
また、振動素子10Eでは、振動基板11の主面を平面視したとき、第1凹部18iと第2凹部18jは、第1方向においては互いに重ならず、かつ第2方向においては少なくとも一部が互いに重なるように、第1方向に沿って並んで配置され、第1凹部18iの窪みの深さ及び第2凹部18jの窪みの深さは、それぞれ、振動基板11の厚さの半分より深い。これにより、振動の伝搬方向に2つの凹部が介在することとなるため、圧電振動素子10A〜10D,10Fに比べて外部から印加される応力をさらに緩和させることができる。
なお、以上説明した各実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本開示の特徴を含む限り本開示の範囲に包含される。