JP2020053519A - 研磨用組成物、その製造方法、ならびに研磨用組成物を用いた研磨方法およびこれを含む半導体基板の製造方法 - Google Patents

研磨用組成物、その製造方法、ならびに研磨用組成物を用いた研磨方法およびこれを含む半導体基板の製造方法 Download PDF

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【課題】本発明は、研磨用組成物において、研磨速度を向上させうる手段を提供する。【解決手段】本発明は、砥粒と、炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つからなる研磨速度向上剤と、を含み、前記砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する前記研磨速度向上剤の分子個数(個)の比が0を超えて1以下である、研磨用組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、研磨用組成物、その製造方法、ならびに研磨用組成物を用いた研磨方法およびこれを含む半導体基板の製造方法に関する。
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜(酸化ケイ素)、シリコン窒化物や、金属等からなる配線、プラグなどである。
特許文献1には、塩、可溶性セリウム、カルボン酸、およびシリカ(特にヒュームドシリカ)を含む水性化学機械的研磨組成物によって、高い酸化ケイ素の研磨速度が得られることが開示されている。
特表2001−507739号公報
特許文献1に記載の水性化学機械的研磨組成物では、砥粒のシラノール基数についての言及はない。
一方、本発明者は、研磨速度向上を目的とした検討の結果、研磨用組成物中の砥粒のシラノール基数と、添加剤の種類およびその添加量との関係が研磨速度に大きく影響することを見出した。そこで本発明は、研磨用組成物において、砥粒のシラノール基数に注目した研磨速度の向上手段を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の手段によって解決されうる;
砥粒と、
炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つからなる研磨速度向上剤と、を含み、
前記砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する前記研磨速度向上剤の分子個数(個)の比が0を超えて1以下である、研磨用組成物。
本発明によれば、研磨用組成物において、研磨速度を向上させうる手段が提供される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下の範囲)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
<研磨用組成物>
本発明の一形態は、砥粒と、炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つからなる研磨速度向上剤と、を含み、砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する研磨速度向上剤の分子個数(個)の比が0を超えて1以下である、研磨用組成物に関する。
上記課題が解決されうるメカニズムは詳細には不明であるが、本発明者は以下のように推測している。
分子内の炭素原子および窒素原子の総和が2以上であり、かつ炭化水素基以外の基としてアルコール性ヒドロキシル基、エーテル基、鎖状アミノ基または非芳香族性の環状アミノ基のいずれかの基のみを有する化合物は、分子内に所定の大きさの親水性部位と、所定の大きさの疎水性部位と、を有する。そして、かような分子が砥粒のシラノール基を介して砥粒に何らかの作用することとなる。その結果、砥粒粒子が複数存在したり、研磨用組成物の砥粒以外の成分が存在したりすることで、または砥粒と研磨対象物との関係により発揮することができなかった、砥粒そのものが本来有する機能が引き出され、砥粒によるメカニカル作用を向上させる。この際、砥粒のシラノール基数に対して上記化合物の分子個数が少なすぎると砥粒のメカニカル作用の向上効果が十分に得られない。また、シラノール基数に対して上記化合物の分子個数が過剰となると、砥粒と研磨対象物との衝突頻度が低下し、またはこれらの衝突時の衝撃が緩和されることとなり、メカニカル作用が向上せず、却って低下する場合もある。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
以下、研磨用組成物に含まれうる各成分について説明する。
[研磨対象物]
研磨対象物は、特に制限されず、CMP分野で用いられる公知の研磨対象物に適用することができる。このため、研磨対象物の態様としては、特に制限されないが、平板状部材である層が好ましく、当該層を含む基板がより好ましく、半導体基板がさらに好ましい。例えば、単一層から構成される基板や、研磨対象となる層と、他の層(例えば、支持層や他の機能層)とを含む基板等が挙げられる。
また、研磨対象物は、本発明の効果がより良好に発現されるとの観点から、研磨対象となる面が、ケイ素−酸素結合を有する材料、ケイ素−ケイ素結合を有する材料、またはケイ素−窒素結合を有する材料等のケイ素含有材料を含む構成部分を有する研磨対象物であることが好ましい。ケイ素−窒素結合を有する材料としては、特に制限されないが、例えば、窒化ケイ素(SiN)、炭窒化ケイ素(SiCN)等が挙げられる。ケイ素−酸素結合を有する材料としては、特に制限されないが、例えば、酸化ケイ素、BD(ブラックダイヤモンド:SiOCH)、FSG(フルオロシリケートグラス)、HSQ(水素シルセスキオキサン)、CYCLOTENE、SiLK、MSQ(Methyl silsesquioxane)等が挙げられる。ケイ素−ケイ素結合を有する材料としては、特に制限されないが、例えば、ポリシリコン、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、n型ドープ単結晶シリコン、p型ドープ単結晶シリコン、SiGe等のSi系合金等が挙げられる。これらの中でも、研磨対象となる面がケイ素−酸素結合を有する材料を含む構成部分を有する研磨対象物であることが好ましく、研磨対象となる面が酸化ケイ素を含む構成部分を有する研磨対象物であることがより好ましく、研磨対象となる面が酸化ケイ素のみから構成される層である研磨対象物であることがさらに好ましい。よって好ましい研磨用組成物の具体例の一つは、酸化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、研磨用組成物である。
なお、酸化ケイ素から構成される部分としては、例えばオルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOSタイプ酸化ケイ素面(以下、単に「TEOS」とも称する)や、HDP膜、USG膜、PSG膜、BPSG膜、RTO膜等が挙げられる。これらの中でも、TEOSが好ましい。
研磨対象物が研磨対象となる面がケイ素含有材料を含む構成部分およびケイ素含有材料を含まない他の組成からなる構成部分を含む層である場合、他の組成からなる構成部分は、特に制限されないが、例えば金属を含む構成部分等が挙げられる。金属としては、特に制限されないが、例えば、銅、アルミニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、チタン、タングステン、およびこれらの合金等が挙げられる。
[研磨速度向上剤]
本発明の一形態に係る研磨用組成物は、炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つからなる研磨速度向上剤を必須に含む。研磨速度向上剤は、砥粒のシラノール基数との関係で適切な含有量として含有されることで、研磨速度を向上させる機能を有する。
本願明細書において、研磨速度向上剤である各化合物は、以下の構造を有する化合物を表すものとする:
「炭素数2以上のアルコール」とは、炭素数が2以上であって、炭化水素基以外の官能基として、少なくとも1つのアルコール性ヒドロキシル基(−OH)のみを有する化合物を表す;
「エーテル」とは、炭化水素基以外の官能基として、少なくとも1つのエーテル基(−O−)のみを有する化合物を表す;
「非芳香族アミン」とは、分子内に芳香環を有さず、炭化水素基以外の官能基として、少なくとも1つのアミノ基(−N(−)−、−N(H)−または−NH)のみを有する化合物を表す;
「エーテルアルコール」とは、炭化水素基以外の官能基として、少なくとも1つのアルコール性ヒドロキシル基(−OH)および少なくとも1つのエーテル基(−O−)のみを有する化合物を表す;
「非芳香族アミノアルコール」とは、分子内に芳香環を有さず、炭化水素基以外の官能基として、少なくとも1つのアルコール性ヒドロキシル基(−OH)および少なくとも1つのアミノ基(−N(−)−、−N(H)−または−NH)のみを有する化合物を表す;
「非芳香族アミノエーテル」とは、分子内に芳香環を有さず、炭化水素基以外の官能基として、少なくとも1つのエーテル基(−O−)および少なくとも1つのアミノ基(−N(−)−、−N(H)−または−NH)のみを有する化合物を表す;
「非芳香族アミノエーテルアルコール」とは、分子内に芳香環を有さず、炭化水素基以外の官能基として、少なくとも1つのアルコール性ヒドロキシル基(−OH)、少なくとも1つのエーテル基(−O−)および少なくとも1つのアミノ基(−N(−)−、−N(H)−または−NH)のみを有する化合物を表す。
本明細書において、「非芳香族」とは、「芳香族」ではないこと、すなわち、分子内に芳香環を有さないことを表す。ここで、「芳香環」とは、芳香族性を有する環状構造を表し、芳香族炭化水素環および芳香族複素環が含まれるものとする。よって、「非芳香族」には、「脂肪族」や「反芳香族」をはじめとして、分子内に芳香環を有さないあらゆる構造が含まれる。なお、「反芳香族」とは、平面の環状構造を有し、環状構造を構成する原子の全てが共役π電子系を構成し、当該共役π電子系が4n個のπ電子を有することを表す。
また、本発明の一形態において用いられる非芳香族アミン、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールは、それぞれ、アミノ基として鎖状アミノ基または非芳香族性の環状アミノ基のみを有する。
なお、本明細書において、鎖状アミノ基とは、窒素原子が環構造の一部を構成しないアミノ基を表し、非芳香族性の環状アミノ基とは、窒素原子が非芳香族含窒素複素環の一部を構成するアミノ基を表す。これらの中でも、アミノ基は、鎖状アミノ基であることが好ましい。
なお、本明細書においては、アミンにはアンモニアおよびアンモニウム塩は含まれないものとする。
また、エーテル基は、非芳香族性または芳香族性の複素環の一部であってもよい。
これらの化合物において、炭化水素基に隣接する炭化水素基以外の官能基は、アルコール性ヒドロキシル基、エーテル基および鎖状アミノ基または非芳香族性の環状アミノ基のみである。
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはこれら2以上の組み合わせからなる基のいずれであってもよい。また、脂肪族炭化水素基および脂環式炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても、不飽和炭化水素基であってもよい。そして、脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
炭素数2以上のアルコールとしては、特に制限されず、公知のアルコールを用いることができる。例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の鎖式アルコールが用いられうる。また、例えば、好ましくは炭素数3〜32、より好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜12の、分子内に環状構造として脂環式環のみを有する、脂環式アルコールが用いられうる。そして、好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12である、分子内に芳香環として芳香族炭化水素環のみを有する、芳香族アルコールが用いられうる。
炭素数2以上のアルコールの具体例は、特に制限されないが、鎖式アルコール類としては、例えば、鎖式モノアルコール類である、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(2−プロパノール)、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、イソプロパノール、イソヘキサノール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、イソドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール(セチルアルコール)、セトステアリルアルコール、デシルテトラデカノール、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ラノリンアルコール等;鎖式ジオール類である、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ブチン−1,4−ジオール、9−オクタデゼン−7,12−ジオール等;鎖式ポリオール類である、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等;鎖式糖アルコール類である、グリセリン、トレイトール、エリスリトール、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、イジトール、ガラクチトール、マンニトール、ボレミトール、ペルセイトール、D−エリトロ−D−ガラクト−オクチトール等が挙げられる。また、脂環式アルコール類としては、例えば、分子内に環状構造として脂環式環のみを有する環式アルコール類が挙げられ、例えば、脂環式モノアルコール類である、シクロヘキシルアルコール等;脂環式ジオール類である、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等;脂環式糖アルコール類である、クエルシトール、イノシトール等;脂環式ポリオール類である、1,3,5−アダマンタントリオール等が挙げられる。そして、芳香族アルコール類としては、例えば、分子内に芳香環として、芳香族炭化水素環のみを有する芳香族モノアルコール類が挙げられ、例えば、芳香族モノアルコール類である、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノール等が挙げられる。
エーテルとしては、特に制限されず、公知のエーテルを用いることができる。例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の鎖式エーテルが用いられうる。また、例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の、分子内に環状構造として脂環式環または非芳香族含酸素複素環のみを有する、非芳香族環式エーテルが用いられうる。そして、例えば、好ましくは炭素数4〜32、より好ましくは4〜20、さらに好ましくは4〜12の、分子内に芳香環として芳香族炭化水素環または含酸素芳香族複素環のみを有する、芳香族エーテルが用いられうる。
エーテルの具体例は、特に制限されないが、鎖式エーテル類としては、例えば、ジメトキシメタン、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシエタン)、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。また、非芳香族環式エーテル類としては、例えば、分子内に環状構造として脂環式環のみを有する環式エーテル類である、1,1’−オキシビスシクロヘキサン等;分子内に環状構造として、芳香環を有さず、含酸素非芳香族複素環を有する環式エーテル類である、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、オキセパン、オキセピン、1,2−ジヒドロピラン、3,4−ジヒドロ−2−(ヒドロキシメチル)−2H−ピラン等が挙げられる。芳香族エーテル類としては、例えば、分子内に芳香環として、芳香族炭化水素環のみを有する環式エーテル類である、メチルフェニルエーテル(アニソール、メトキシベンゼン)、エチルフェニルエーテル(フェネトール、エトキシベンゼン)、ジフェニルエーテル等;分子内に含酸素芳香族複素環を有する環式エーテル類である、フラン等が挙げられる。
非芳香族アミンとしては、特に制限されず、分子内に芳香環を有さない、公知のアミンを用いることができる。例えば、好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜12の鎖式アミンが用いられうる。また、例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の、分子内に環状構造として脂環式環または含窒素非芳香族複素環のみを有する非芳香族環式アミンが用いられうる。
アミンの具体例は、特に制限されないが、鎖式アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、n−ジブチルアミン、n−トリブチルアミン、tert−ブチルアミン、N−エチルエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、2−メチル−1,2−プロパンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N−(3−アミノプロピル)−N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N’−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,6,10−トリメチル−2,6,10−トリアザウンデカン等が挙げられる。また、非芳香族環式アミン類としては、例えば、分子内に環状構造として脂環式環のみを有する環式アミン類である、シクロヘキシルアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ジシクロヘキシルアミン等;分子内に環状構造として、芳香環を有さず、含窒素非芳香族複素環を有する環式アミン類である、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、1−メチルピロリジン、2−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、2−エチルピロリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、2−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、1−メチルピペラジン、1−エチルピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4,7−トリアザシクロノナン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン等が挙げられる。
エーテルアルコールとしては、特に制限されず、公知のエーテルアルコールを用いることができる。例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の鎖式エーテルアルコールが用いられうる。また、例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の、分子内に環状構造として脂環式環または含酸素非芳香族複素環のみを有する、非芳香族環式エーテルアルコールが用いられうる。そして、例えば、好ましくは炭素数4〜32、より好ましくは4〜20、さらに好ましくは4〜12の、分子内に芳香環として芳香族炭化水素環または含酸素芳香族複素環のみを有する、芳香族エーテルアルコールが用いられうる。
エーテルアルコールの具体例は、特に制限されないが、鎖式エーテルアルコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メトキシエトキシエタノール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、非芳香族環式エーテルアルコール類としては、例えば、分子内に環状構造として脂環式環のみを有する環式エーテルアルコール類であって、エーテル基を有する糖アルコール類でもある、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ピ二トール等;分子内に環状構造として、芳香環を有さず、含酸素非芳香族複素環を有する環式エーテルアルコール類である、グリセロールホルマール、ヒドロキシテトラヒドロフラン等が挙げられる。そして、芳香族エーテルアルコール類としては、例えば、分子内に芳香環として芳香族炭化水素環のみを有する環式エーテルアルコール類である、4−メトキシフェニルメタノール(アニスアルコール)等;分子内に含酸素芳香族複素環を有する環式エーテルアルコール類である、フルフリルアルコール、フラン−2,5−ビスメタノール等が挙げられる。
非芳香族アミノアルコールとしては、特に制限されず、分子内に芳香環を有さない、公知のアミノアルコールを用いることができる。例えば、好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜12の鎖式アミノアルコールが用いられうる。また、例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の、分子内に環状構造として脂環式環または含窒素非芳香族複素環のみを有する、非芳香族環式アミノアルコールが用いられうる。
非芳香族アミノアルコールの具体例としては、特に制限されないが、鎖式アミノアルコール類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、5−アミノ−1−ペンタノール(ペンタノールアミン)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノエタノールジイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソプロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジアミノプロパン等が挙げられる。また、非芳香族環式アミノアルコール類としては、例えば、分子内に環状構造として脂環式環のみを有する環式アミノアルコール類である、シクロヘキシルジエタノールアミン等;分子内に環状構造として、芳香環を有さず、含窒素非芳香族複素環を有する環式アミノアルコール類である、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジン、1−ピペリジンエタノール、1−エタノール−4−プロパノールピペリジン、3−キヌクリジノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、4−メチルピペラジン−1−エタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等が挙げられる。
非芳香族アミノエーテルとしては、特に制限されず、分子内に芳香環を有さない、公知のアミノエーテルを用いることができる。アミノエーテルとしては、特に制限されず、公知のアミノエーテルを用いることができる。例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の鎖式アミノエーテルが用いられうる。また、例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の、分子内に環状構造として脂環式環、含窒素非芳香族複素環または含酸素非芳香族複素環のみを有する、非芳香族環式アミノエーテルが用いられうる。
非芳香族アミノエーテルの具体例としては、特に制限されないが、鎖式アミノエーテル類としては、例えば、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。また、非芳香族環式アミノエーテル類としては、例えば、分子内に環状構造として、芳香環を有さず、含窒素非芳香族複素環または含酸素非芳香族複素環を有する環式アミノエーテル類である、モルホリン、1,4,7,10,13−ペンタオキサシクロペンタデカン−2−メタンアミン等が挙げられる。
非芳香族アミノエーテルアルコールとしては、特に制限されず、分子内に芳香環を有さない、公知のアミノエーテルアルコールを用いることができる。アミノエーテルアルコールとしては、特に制限されず、公知のアミノエーテルアルコールを用いることができる。例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の鎖式アミノエーテルアルコールが用いられうる。また、例えば、好ましくは炭素数2〜32、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜12の、分子内に環状構造として脂環式環、含窒素非芳香族複素環または含酸素非芳香族複素環のみを有する、非芳香族環式アミノエーテルアルコールが用いられうる。
非芳香族アミノエーテルアルコールの具体例としては、特に制限されないが、鎖式アミノエーテルアルコール類としては、例えば、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール等が挙げられる。また、非芳香族環式アミノエーテルアルコール類としては、例えば、分子内に環状構造として、芳香環を有さず、含窒素非芳香族複素環または含酸素非芳香族複素環を有する環式アミノエーテルアルコール類である、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン等が挙げられる。
研磨速度向上剤として機能する上記の化合物では、アルコールは炭素数2以上のものに限定され、エーテルは2以上の炭化水素基を有する化合物であり、アミンは炭化水素基と窒素原子を有するアミノ基を有する。したがって、本発明に係る研磨速度向上剤は、分子内の炭素原子および窒素原子の総和が2以上となる。分子内の炭素数および窒素数の総和は、特に制限されないが、3以上であることが特に好ましく、4以上であることが極めて好ましい。また、分子内の炭素数および窒素数の総和は、6以下であることが特に好ましく、5以下であることが極めて好ましい。この範囲であると、研磨速度がより向上する。
また、分子内の炭素数は、特に制限されないが、2以上であることが特に好ましく、3以上であることが極めて好ましく、4以上であることが最も好ましい。また、分子内の炭素数は、特に制限されないが、6以下であることが特に好ましく、5以下であることが極めて好ましい。この範囲であると、研磨速度がより向上する。
分子内のアルコール性ヒドロキシル基、エーテル基、鎖状アミノ基および非芳香族性の環状アミノ基の総和は、1以上であり、2以上であることが好ましい。また、分子内のアルコール性ヒドロキシル基、エーテル基、鎖状アミノ基および非芳香族性の環状アミノ基の総和は、特に制限されないが、3以下であることが好ましい。この範囲であると、研磨速度がより向上する。
研磨速度向上剤として機能する上記の化合物は、分子内に環状構造として脂環式環のみを有し、任意に鎖状構造をさらに有してもよい脂環式化合物、分子内に環状構造として含窒素非芳香族複素環または含酸素非芳香族複素環を有し、任意に脂環式環または鎖状構造をさらに有してもよい複素環式化合物、または分子内に環状構造を有せず、鎖状構造のみを有する鎖式化合物が好ましく、分子内に環状構造として脂環式環のみを有し、任意に鎖状構造をさらに有してもよい脂環式化合物、分子内に環状構造として含窒素非芳香族複素環または含酸素非芳香族複素環のみを有し、任意に鎖状構造をさらに有してもよい複素環式化合物、または分子内に環状構造を有せず、鎖状構造のみを有する鎖式化合物がより好ましく、鎖式化合物である、炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミノアルコール、またはエーテルアルコールがさらに好ましく、鎖式化合物である、炭素数2以上のアルコール、エーテル、またはエーテルアルコールがよりさらに好ましく、鎖式化合物である、エーテル、またはエーテルアルコールが特に好ましい。
なお、上記具体例化合物の中でも、研磨速度向上効果、入手容易性、安全性およびコスト等の観点からの好ましい具体例としては、エタノール、2−プロパノール、ジメトキシエタン、トリオキサン、グリセロールホルマール、テトラヒドロピラン、2,3−ジヒドロピラン、3,4−ジヒドロ−2−(ヒドロキシメチル)−2H−ピラン、ヒドロキシテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタノール、N−エチルエチレンジアミン、ジエチルアミン、およびペンタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種等が挙げられる。
研磨速度向上剤の分子量は、特に制限されないが、33以上であることが好ましく、45以上であることがより好ましく、60以上であることがさらに好ましく、90以上であることが特に好ましい。また、研磨速度向上剤の分子量は、特に制限されないが、1000未満であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、150以下であることがさらに好ましく、130以下であることが特に好ましく、110以下であることが最も好ましい。この範囲であると、研磨速度がより向上する。なお、研磨速度向上剤の分子量は、原子量の総和より算出することができ、重合体等の分子量分布が存在するものについては、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)法、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)法、HPLC−タンデム四重極質量分析法などの質量分析(MS)法;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法等により測定することができる。
研磨速度向上剤としては、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
なお、研磨速度向上剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
研磨速度向上剤の含有量は、砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する研磨速度向上剤の分子個数(個)の比(本明細書において、単に「研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比」とも称する)が0を超えて1以下となる量である。研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比が0、すなわち研磨用組成物が研磨速度向上剤を含有しない場合、本発明のような研磨速度向上効果は得られない。研磨速度をより向上させる観点から、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比は、0.005以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。一方、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比が1を超えても、研磨速度向上効果は得られない。研磨速度をより向上させる観点から、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比は、0.9以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.15以下であることがさらに好ましく、0.1以下であることが特に好ましく、0.05以下であることが最も好ましい。
研磨速度向上剤の含有量は、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基の比が本発明の範囲を満たせば特に制限されず、研磨用組成物の体積(L)に対して、0g/Lを超え、0.002g/L以上であることが好ましく、0.004g/L以上であることがより好ましい。この範囲であると、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比の制御の容易性がより向上し、研磨速度向上効果がより得られやすくなる。また、研磨速度向上剤の含有量は、特に制限されないが、研磨用組成物の体積(L)に対して、0.4g/L以下であることが好ましく、0.1g/L以下であることがより好ましく、0.05g/L以下であることがさらに好ましく、0.03g/L以下であることが特に好ましい。この範囲であると、コストを削減することができ、また研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比の制御の容易性もより向上し、研磨速度向上効果がより得られやすくなる。よって、好ましい研磨速度向上剤の含有量の範囲の具体例の一つは、0g/Lを超えて0.05g/L未満である。
[砥粒]
本発明の一形態に係る研磨用組成物は、砥粒を必須に含む。砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨し、研磨速度を向上させる機能を有する。
砥粒は、シラノール基を有するものであれば特に制限されない。その具体例としては、シリカ;アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子をシランカップリング剤によって表面処理した粒子;等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましく、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカがより好ましく、コロイダルシリカがさらに好ましい。コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法が挙げられ、いずれの製造方法で製造されたコロイダルシリカであっても好適に用いることができる。しかしながら、金属不純物低減の観点から、高純度で製造できるゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカが特に好ましい。
さらに、砥粒は、表面修飾されていてもよい。なかでも、特に好ましいのは、有機酸を固定化したコロイダルシリカである。研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、例えばコロイダルシリカの表面に有機酸の官能基が化学的に結合することにより行われている。コロイダルシリカと有機酸を単に共存させただけではコロイダルシリカへの有機酸の固定化は果たされない。有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica throughquantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。あるいは、カルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2−ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
砥粒の平均一次粒子径は、特に制限されないが、5nm以上であることが好ましく、7nmであることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、25nm以上であることが特に好ましい。この範囲であると、研磨速度が向上する。また、砥粒の平均一次粒子径は、特に制限されないが、120nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、研磨面の欠陥発生頻度をより低下することができ、研磨効率が向上する。なお、砥粒の平均一次粒子径の値は、BET法で測定される砥粒の比表面積(BET比表面積)に基づいて、シリカ粒子の形状が真球であると仮定して算出することができる。
研磨用組成物中の砥粒の平均二次粒子径は、特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましい。この範囲であると、研磨速度が向上する。また、研磨用組成物中の砥粒の平均二次粒子径は、特に制限されないが、250nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。この範囲であると、研磨面の欠陥発生頻度をより低下することができ、研磨効率が向上する。なお、砥粒の平均二次粒子径の値は、レーザー回折散乱法に代表される動的光散乱法により算出することができる。
砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数の下限は、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比の値が本発明の範囲を満たせば特に制限されないが、0個/nmを超え、1個/nm以上であることが好ましく、2個/nm以上であることがより好ましく、3個/nm以上であることがさらに好ましく、4個/nm以上であることが特に好ましい。この範囲であると、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比の制御の容易性が向上する。また、砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数の上限は、特に制限されないが、10個/nm以下であることが好ましく、8個/nm以下であることがより好ましく、7個/nm以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、砥粒と研磨対象物と間の疎水性相互作用が向上し、研磨速度が向上する。よって、好ましい砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数の範囲の具体例の一つとしては、0個/nmを超えて10個/nm以下の範囲が挙げられる。
砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数は、G.W.シアーズによるAnalytical Chemistry, vol.28, No.12, 1956, 1982〜1983に記載された中和滴定を用いたシアーズ法により算出することができる。シアーズ法は、コロイダルシリカメーカーがシラノール基数を評価する際に一般的に使用される分析手法であり、pH4からpH9まで変化させるのに必要な水酸化ナトリウム水溶液量からシラノール基数を算出する方法である。シラノール基数は下記式より算出する。
砥粒のBET法で測定される比表面積は、特に制限されないが、20m/g以上300m/g以下であることが好ましく、40m/g以上180m/g以下であることがより好ましく、70m/g以上130m/g以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数、ひいては研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比を好ましい範囲へと制御することがより容易となる。
砥粒の真比重は、特に制限されないが、1.80g/cmを超え2.20g/cm以下であることが好ましく、1.90g/cm以上2.18g/cm以下であることがより好ましく、2.00g/cm以上2.15g/cm以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数、ひいては研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比を好ましい範囲へと制御することがより容易となる。
砥粒の大きさ(平均一次粒子径、平均二次粒子径)、真比重、BET比表面積、および砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数は、それぞれ砥粒の製造方法の選択等により適切に制御することができる。
砥粒としては、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
なお、砥粒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
砥粒の含有量は、特に制限されないが、研磨用組成物の総質量に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比の制御の容易性がより向上し、研磨速度がより向上する。また、砥粒の含有量は、特に制限されないが、研磨用組成物の総質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、コスト削減に繋がり、また研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比の制御の容易性がより向上し、研磨速度がより向上する。
[分散媒]
本発明の一形態に係る研磨用組成物は、分散媒(溶媒)をさらに含むことが好ましい。分散媒は、各成分を分散または溶解させる機能を有する。
分散媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
分散媒としては、特に制限されないが、水を含むことが好ましい。分散媒中の水の含有量は、特に制限されないが、分散媒の総質量に対して50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、水のみであることがさらに好ましい。水は、洗浄対象物の汚染や他の成分の作用を阻害することを防止するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、水としては、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
また、分散媒は、各成分の分散性または溶解性を向上させることができる場合、有機溶媒であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。ただし、本明細書において、有機溶媒には、前述の炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテル、非芳香族アミノエーテルアルコールは含まれないものとする。すなわち、炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテル、非芳香族アミノエーテルアルコールは、ここで述べる分散媒とは異なるものとして取り扱う。有機溶媒としては、これら以外のものであれば特に制限されず、公知の有機溶媒を用いることができる。水と有機溶媒との混合溶媒とする場合は、水と混和する有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒を用いる場合は、水と有機溶媒とを混合し混合溶媒を作製した後、混合溶媒に各成分を添加し混合してもよいし、有機溶媒に各成分を分散または溶解させた後に、水と混合してもよい。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
[pH調整剤]
本発明の一形態に係る研磨用組成物は、pH調整剤をさらに含むことが好ましい。pH調整剤は、主として研磨用組成物のpHを調整する目的で添加される。
pH調整剤は、pH調整機能を有する化合物であれば特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、酸およびアルカリ等が挙げられるが、これらの中でも酸が好ましい。なお、これらは、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよい。
本明細書において、アルカリには、前述の非芳香族アミン、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテル、非芳香族アミノエーテルアルコールは含まれないものとする。すなわち、非芳香族アミン、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテル、非芳香族アミノエーテルアルコールは、ここで述べるpH調整剤としてのアルカリとは異なるものとして取り扱う。
酸としては、無機酸または有機酸のいずれを用いてもよい。無機酸としては、特に制限されないが、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸およびそれらの塩等が挙げられる。有機酸としては、特に制限されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸および乳酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸イセチオン酸およびそれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、酢酸、マレイン酸または硝酸であることがより好ましく、酢酸であることがさらに好ましい。
アルカリとしては、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア(水酸化アンモニウム)、テトラメチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
なお、pH調整剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
研磨用組成物中のpH調整剤の含有量(濃度)は、特に制限されず、研磨用組成物が所望のpHとなる量を適宜選択すればよい。
[他の成分]
本発明の一形態に係る研磨用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に制限されず、例えば、濡れ剤、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤、溶存ガス、酸化剤、還元剤等の公知の研磨用組成物に用いられる成分を適宜選択しうる。
[pH]
本発明の一形態に係る研磨用組成物のpHは、特に制限されないが、12以下であることが好ましく、7未満であることがより好ましく、6未満であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましい。この範囲であると、特に好ましい研磨対象物である窒化ケイ素、酸化ケイ素において、研磨速度が向上する。また、pHは、特に制限されないが、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましく、3以上であることが特に好ましい。この範囲であると、pH調整剤の使用量をより低減でき、コストを削減することができる。また、砥粒の分散安定性が向上する。よって、好ましいpH範囲の具体例の一つとしては、1以上7未満の範囲等が挙げられる。
<研磨用組成物の製造方法>
本発明の他の一形態は、砥粒と、炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つからなる研磨速度向上剤と、を、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基総数の比が0を超えて1以下となるよう混合する工程を含む、研磨用組成物の製造方法に関する。すなわち、当該形態は、砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する研磨速度向上剤の分子個数(個)が0を超えて1以下となるよう、砥粒の種類および添加量、ならびに研磨速度向上剤の種類および添加量を決定し、これらを混合することを含む、研磨用組成物の製造方法である。
各成分を混合する際の混合方法は特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。また混合温度は特に制限されないが、一般的には10〜40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
なお、研磨用組成物の製造方法における、各成分の好ましい態様(種類、特性、構造、含有量等)は、上記各成分の説明と同様である。また、製造される研磨用組成物の好ましい特性をはじめとする種々の特徴についても、上記研磨用組成物の説明と同様である。
<研磨方法>
本発明の他の一形態は、上記の研磨用組成物を用いて、または、上記の製造方法によって研磨用組成物を製造した後、得られた研磨用組成物を用いて、研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法に関する。
研磨装置、研磨条件としては、特に制限されず、公知の装置、条件を適宜用いることができる。
研磨装置は、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
研磨条件は、特に制限されず、研磨用組成物および研磨対象物の特性に応じて適切な条件を適宜設定することができる。研磨荷重については、特に制限されないが、一般的には、単位面積当たり0.1psi以上10psi以下であることが好ましく、0.5psi以上8psi以下であることがより好ましく、1psi以上6psi以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を得つつ、荷重による基板の破損や、表面に傷などの欠陥が発生することをより抑制することができる。定盤回転数およびキャリア回転数は、特に制限されないが、一般的には、それぞれ、10rpm以上500rpm以下であることが好ましく、20rpm以上300rpm以下であることがより好ましく、30rpm以上200rpm以下であることがさらに好ましい。研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)を採用してもよい。研磨用組成物の供給量(研磨用組成物の流量)は、研磨対象物全体が覆われる供給量であればよく、特に制限されないが、一般的には、100mL/min以上5000mL/min以下であることが好ましい。研磨時間は、目的とする研磨結果が得られるよう適宜設定すればよく特に制限されないが、一般的には、5秒間以上180秒間以下であることが好ましい。
研磨終了後の研磨済研磨対象物は、水による洗浄後に、スピンドライヤやエアブロー等により表面に付着した水滴を払い落とすことによって、表面を乾燥させてもよい。
<半導体基板の製造方法>
本発明の他の一形態は、上記の研磨方法によって、研磨対象物を研磨する工程(研磨工程)を含む、半導体基板の製造方法に関する。すなわち、当該形態は、研磨対象物である半導体基板の形成に用いられる基板材料に対して、これらの研磨用組成物で研磨することを含む、半導体基板の製造方法である。
なお、当該製造方法において、その他の工程については、公知の半導体基板の製造方法に採用されうる工程を適宜採用することができる。
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
<砥粒の評価>
砥粒A(コロイダルシリカ、表面処理なし)の平均一次粒子径(nm)、平均二次粒子径(nm)、砥粒の単位表面積当たりのシラノール基数、および真比重(g/cm)は、以下の方法により測定した。
[平均一次粒子径(nm)]
砥粒の平均一次粒子径(nm)は、BET法で3〜5回連続で測定した値から算出した砥粒のBET比表面積S(m/g)の平均値を基に、砥粒の形状が真球であると仮定して、平均一次粒子径(nm)=2727/Sの式により算出した。
まず、砥粒を105℃で12時間以上加温して水分を除去した。次いで、乾燥した砥粒を乳鉢で擂り潰し、あらかじめ重量を測定したセル(Wa’(g))に砥粒を約0.2g入れて重量を測定した(Wb’(g))後、5分以上、比表面積計(株式会社島津製作所製、flowsorb II2300)の加温部で180℃に保温した。その後、測定部に装着し、脱気時の吸着面積A(m)を計測した。当該A値を用いて、下記式1により、比表面積S(m/g)を算出した。砥粒Aの平均一次粒子径の値を表1に示す。
[平均二次粒子径(nm)]
研磨用組成物中の砥粒の平均二次粒子径は、動的光散乱式粒子径・粒度分布装置(日機装株式会社製、UPA−UTI151)を用いて、体積平均粒子径(体積基準の算術平均径;Mv)の値を測定した。砥粒Aの平均二次粒子径は、65nmであった。
[会合度]
上記求めた平均二次粒子径(nm)および平均一次粒子径(nm)の値を用いて、平均二次粒子径(nm)/平均一次粒子径(nm)の式により、会合度を算出した。砥粒Aの会合度は、2.2であった。
[砥粒の単位表面積当たりのシラノール基数(個/nm)の算出方法]
砥粒の単位表面積当たりのシラノール基数は、G.W.シアーズによるAnalytical Chemistry, vol.28, No.12, 1956, 1982〜1983に記載された中和滴定を用いたシアーズ法により算出した。
まず、固形分として1.50gの砥粒を200mLビーカーに採取し、約100mLの純水を加えてスラリーとした後、30gの塩化ナトリウムを添加して溶解した。次に、1N(g/L)塩酸を添加してスラリーのpHを約3.0〜3.5に調整した後、スラリーが150mlになるまで純水を加える。このスラリーに対して、自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM−1700)使用して、25℃で0.1N水酸化ナトリウムを用いてpHが4.0になるよう調整し、さらに、pH滴定によってpHを4.0から9.0に上げるのに要した0.1N水酸化ナトリウム溶液の容量V(L)を測定した。砥粒の単位表面積当たりのシラノール基数は、下記式により算出した。砥粒Aの単位表面積当たりのシラノール基数を表1に示す。
[砥粒の真比重(g/cm)]
砥粒の真比重(g/cm)は以下の方法により測定した。まず、るつぼに砥粒の水分散液を固形分(砥粒)で約15gとなるよう入れ、市販のホットプレートを使用して、約200℃で水分を蒸発させた。続いて、砥粒の空隙に残留した水分も除去するために、電気炉(アドバンテック株式会社製、焼成炉)にて300℃で1時間の熱処理を行い、処理後の乾燥砥粒を乳鉢で擂り潰した。そして、あらかじめ精密天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GH−202)にて重量を測定した100mL比重瓶(Wa(g))に、上記にて作製した乾燥砥粒を10g入れて重量を測定した(Wb(g))後、エタノールを20mL加えて、減圧したデシケータ内で30分間脱気した。その後、比重瓶内をエタノールで満たし、栓をして重量を測定した(Wc(g))。砥粒の重量測定を終えた比重瓶は内容物を廃棄し、洗浄後にエタノールで満たし重量を測定した(Wd(g))。これらの重量と測定時のエタノールの温度t(℃)から、下記式2および3により、砥粒の真比重を算出した。砥粒Aの真比重Sgは、2.1g/cmであった。
<研磨用組成物の調製>
[研磨用組成物1の調製]
分散媒である水(脱イオン水)に、砥粒Aを、調製される研磨用組成物中において下記表1の含有量となる量として添加し、酢酸を用いてpH4.0に調製した。その後、攪拌混合し研磨用組成物1を調製した(混合温度約25℃、混合時間:約10分)。なお、当該研磨用組成物(液温:25℃)のpHは、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))によって確認した。
[研磨用組成物2〜22]
分散媒である水(脱イオン水)に、砥粒Aと、表1に示す研磨速度向上剤とを、それぞれ調製される研磨用組成物中において下記表1の含有量となる量として添加し、酢酸を用いてpH4.0に調製した。その後、攪拌混合し研磨用組成物2〜22を調製した(混合温度約25℃、混合時間:約10分)。なお、当該研磨用組成物(液温:25℃)のpHは、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))によって確認した。
各研磨用組成物の処方を下記表1に示す。なお、下記表1において、炭素数2以上のアルコールは、C2以上のアルコールと表記した。
<研磨用組成物の評価>
[研磨用組成物中における、砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する研磨速度向上剤の分子個数(個)の比]
砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する研磨速度向上剤の分子個数(個)の比は、下記(1)の手順で1L当たりのシラノール基の総数を算出した後、下記(2)により1L当たりの研磨速度向上剤の分子個数をさらに算出し、これらの結果を用いて下記(3)によって算出した。
(1)1L当たりのシラノール基の総数の算出
研磨用組成物1L当たりのシラノール基数Tsの総数は、以下のように算出した:
まず、砥粒1個当たりの体積vを下記式により求めた。ここで、×10−21は単位を整えるための計算である。
次いで、上記得られた砥粒Aの真比重Sgの値(2.1g/cm)を用いて、砥粒1個当たりの質量mを下記式により求めた。
続いて、研磨用組成物1L当たりの砥粒の個数Nを下記式により求めた。
また、砥粒1個当たりの表面積sを下記式により求めた。
さらに、上記得られた砥粒Aの単位表面積当たりのシラノール基数ρの値(5.7個/nm)を用いて、研磨用組成物1L当たりのシラノール基の総数Ts[個/L]を下記式により求めた。
(2)1L当たりの研磨速度向上剤の分子個数の算出
研磨用組成物1L当たりの研磨速度向上剤の分子個数Nを下記式により求めた。本計算において、アボガドロ定数Nは6.022×1023個/molとした。ここで、×10−3は単位を整えるための計算である。
(3)シラノール基の総数(個)に対する研磨速度向上剤の分子個数(個)の比の算出
上記算出された研磨用組成物1L当たりの研磨速度向上剤の分子個数N[個/L]の値から、上記算出された研磨用組成物1L当たりのシラノール基の総数Ts[個/L]の値を割って、研磨用組成物中における、砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する研磨速度向上剤の分子個数(個)の比(研磨速度向上剤の分子個数(個)/シラノール基の総数(個))を算出した。
各研磨用組成物の計算結果を下記表2に示す。
[研磨速度]
(CMP工程)
上記で調整された各研磨用組成物を用いて、研磨対象物としては、表面に厚さ10000ÅのTEOS膜を形成したシリコンウェーハ(200mm、ブランケットウェーハ)を使用した。それぞれのウェーハを60mm×60mmのチップに切断したクーポンを試験片とし、下記の条件により研磨した際のTEOS膜の研磨速度(TEOS RR)を測定した。
−研磨装置および研磨条件−
・研磨装置:日本エンギス株式会社製 小型卓上研磨機 EJ380IN
・研磨パッド:ニッタ・ハース株式会社製 硬質ポリウレタンパッド IC1010
・研磨圧力:3.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同様)
・研磨定盤(プラテン)回転速度:60rpm
・ヘッド(キャリア)回転速度:60rpm
・研磨用組成物(スラリー)の流量:100mL/min
・研磨時間:1min
(研磨速度)
研磨速度は、研磨対象物の研磨前後の膜厚を光干渉式膜厚測定装置(株式会社SCREENホールディングス製、ラムダエースVM2030)によって求めて、その差を研磨時間で除することにより評価した(下記式参照)。各研磨用組成物の研磨速度を下記表2に示す。
また、研磨用組成物1を使用した際の研磨速度を基準とした、各研磨用組成物を使用した際の研磨速度の上昇率を評価した(下記式参照)。上昇率が50%以上であると実用上極めて有用である。各研磨用組成物の上昇率を下記表2に示す。
上記表1および表2に示すように、本発明に係る研磨用組成物2〜7、10〜22、24〜30および32は、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基の総数の比が0を超えて1以下の範囲内であり、顕著な研磨速度向上効果を示すことが確認された。一方、本発明の範囲外である、研磨速度向上剤を含まない研磨用組成物1や、研磨速度向上剤の分子個数/砥粒のシラノール基の総数の比が範囲外の研磨用組成物8、9、23および31は、研磨速度向上効果は小さく、十分な効果は得られないことが確認された。

Claims (10)

  1. 砥粒と、
    炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つからなる研磨速度向上剤と、を含み、
    前記砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する前記研磨速度向上剤の分子個数(個)の比が0を超えて1以下である、研磨用組成物。
  2. 前記砥粒の単位表面積あたりのシラノール基数が、0個/nmを超えて10個/nm未満である、請求項1に記載の研磨用組成物。
  3. 前記研磨速度向上剤の含有量は、0g/Lを超えて0.05g/L未満である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
  4. 前記砥粒がシリカを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
  5. 前記研磨速度向上剤の分子量が1000未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
  6. pHが1以上7未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
  7. 酸化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
  8. 砥粒と、
    炭素数2以上のアルコール、エーテル、非芳香族アミン、エーテルアルコール、非芳香族アミノアルコール、非芳香族アミノエーテルおよび非芳香族アミノエーテルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つからなる研磨速度向上剤と、を、
    前記砥粒が有するシラノール基の総数(個)に対する前記研磨速度向上剤の分子個数(個)の比が0を超えて1以下となるよう混合する工程を含む、
    研磨用組成物の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、または、
    請求項8の方法によって研磨用組成物を製造した後、得られた研磨用組成物を用いて、
    研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
  10. 請求項9に記載の研磨方法によって、研磨対象物を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
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