本発明は、給水源から吐水ノズルまでの洗浄水の供給経路に、逆流防止用のエアギャップを形成する開放式タンクを備えた構成において、開放式タンクのタンク内の余剰水を排出するための構成を工夫することにより、タンク内の余剰水の排水性能の向上と装置のコンパクト化の両立を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、衛生洗浄装置がトイレ装置において洋式腰掛便器の上に設置された構成を例にとって説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るトイレ装置1は、人体(使用者)の局部を洗浄する衛生洗浄装置2と、洋式腰掛便器である便器3とを備える。衛生洗浄装置2は、トイレ装置1において、便器3の上に設置された状態で設けられている。衛生洗浄装置2は、便器3に対して着脱可能に取り付けられた構成であってもよく、便器3と一体的に設けられた構成であってもよい。
便器3は、上側を開放側とした凹状のボウル部3aを有する。便器3は、ボウル部3aにおいてトイレ装置1の使用者の尿や便などの排泄物を受ける。
衛生洗浄装置2は、筐体をなすケーシング5内に各種の装置構成を内蔵した装置本体部4と、装置本体部4のケーシング5に対して回動可能に支持された便座6および便蓋7とを有する。衛生洗浄装置2は、便器3に対して、装置本体部4をボウル部3aの後方の上側に位置させ、便座6および便蓋7の回動動作によってボウル部3aの上側の開放部を開閉するように設けられる。
衛生洗浄装置2について、図2および図3を参照して説明する。衛生洗浄装置2のケーシング5は、ベースプレート5aと、ベースプレート5aを上側から覆うケースカバー5b(図1参照)とを有する。ベースプレート5a上に、ケーシング5に内蔵される各種の装置構成が設置される。ベースプレート5aは、略水平板状の底面部5cと、底面部5cの周縁に沿って適宜形成された側壁部とを含む。
図2に示すように、衛生洗浄装置2は、制御部10と、操作部11と、着座検知センサ12と、人体検知センサ13と、洗浄水供給部14と、吐水ノズル15とを有する。なお、図2は、洗浄水の供給経路の構成と制御部10による制御構成を併せて示している。
制御部10は、洗浄水供給部14等の各部の動作を制御する。制御部10は、例えば、操作部11に対する操作に基づく操作部11からの入力信号に応じて、衛生洗浄装置2の各部の動作を制御する。操作部11は、衛生洗浄装置2の装置本体部4に設けてられてもよいし、装置本体部4とは別に設けられてもよい。操作部11は、例えばリモートコントローラとして設けられる。また、制御部10と操作部11との間の通信方式は、有線であっても無線であってもよい。
着座検知センサ12は、使用者の着座として、便座6に着座する直前の使用者や便座6に着座した状態の使用者を検知する。着座検知センサ12は、その検知信号を制御部10に対して出力する。着座検知センサ12は、例えば、赤外線投受光式の測距センサや、便座6に着座した使用者の荷重を検知するスイッチである。
人体検知センサ13は、トイレ装置1が設置されたトイレルーム内に入室した使用者を検知する。人体検知センサ13は、その検知信号を制御部10に対して出力する。人体検知センサ13は、例えば、赤外線信号を利用した焦電センサや、マイクロ波を用いたマイクロ波ドップラセンサ等の電波センサである。
洗浄水供給部14は、水道や貯水タンク等の所定の給水源20から吐水ノズル15を含む複数の吐水部への流路を構成し、給水源20から供給された洗浄水(水)を複数の吐水部に対して選択的に供給する。洗浄水供給部14は、給水源20に接続された止水栓21と、給水バルブユニット22と、開放式タンク40と、洗浄用ポンプ24と、熱交換器25と、流路切替弁26とを有する。
止水栓21は、電磁弁であり、洗浄水供給部14の上流側において、洗浄水供給部14に供給される水の流路を開閉する。つまり、止水栓21は、その開閉動作によって、給水源20から供給される洗浄水の給水と止水とを切り替える流路開閉弁である。止水栓21は、制御部10に接続されており、制御部10からの制御信号に基づいて開閉動作する。止水栓21は、可撓性を有するフレキホース21aを含む流路構成により、給水バルブユニット22に接続されている。
給水バルブユニット22は、上流側への水の逆流を防ぐ逆止弁22aと、水中の異物を捕捉するストレーナ22bと、給水圧にかかわらず水の流量を一定に保つ定流量弁22cと、通電により開弁して下流側への通水/止水を選択的に切り替える電磁弁22dとを有する。電磁弁22dは、制御部10に接続されており、制御部10からの制御信号に基づいて開閉動作する。
開放式タンク40は、給水源20から供給された水を吐水ノズル15に供給する給水経路に設けられている。本実施形態では、開放式タンク40は、給水バルブユニット22の下流側に設けられている。給水バルブユニット22を経た水は、流入配管28を介して開放式タンク40内に流入する。開放式タンク40は、流入配管28から流入した水を内部に貯溜する。
開放式タンク40は、内部にエアギャップを形成することにより、洗浄水供給部14において、開放式タンク40内の水と開放式タンク40の上流側(流入側)とを縁切りさせ、開放式タンク40内と開放式タンク40の上流側とを物理的に遮断する。これにより、吐水ノズル15内の洗浄水やボウル部3a内汚水等が開放式タンク40よりも上流側に逆流することが防止される。
開放式タンク40内の水は、流出配管29に流出する。開放式タンク40の下流側には、流出配管29に設けられたストレーナ30(図3参照)を介して、洗浄用ポンプ24が設けられている。洗浄用ポンプ24は、ポンプ本体部24aと、駆動部としてのモータ部24bとを有し(図3参照)、開放式タンク40内の水を吸い出して開放式タンクの下流側へと供給する。洗浄用ポンプ24は、制御部10に接続されており、洗浄用ポンプ24の駆動動作は、制御部10からの制御信号に基づいて制御される。
洗浄用ポンプ24の下流側には、加熱部として機能する熱交換器25が設けられている。熱交換器25は、熱源としてのヒータを有し、ヒータにより、洗浄用ポンプ24から供給される水を加熱して温水とする。熱交換器25により得られる温水の温度は、例えば、制御部10を介して、操作部11において使用者によって設定される。熱交換器25は、例えば熱源としてセラミックヒータ等を有する瞬間加熱式のものでもよいし、熱源としてシーズヒータ等を有するとともに貯湯タンクを用いた貯湯加熱式のものでもよい。また、加熱部としては、熱交換器に限らず、例えば、マイクロ波を利用したもの等、他の加熱方式を用いたものでもよい。
洗浄用ポンプ24の下流側には、流路切替弁26が設けられている。流路切替弁26により、洗浄水の供給先となる複数の吐水部に対する流路の切替えが行われる。洗浄水の供給先には、吐水ノズル15が含まれる。流路切替弁26は、制御部10に接続されており、流路切替弁26の動作は、制御部10からの制御信号に基づいて制御される。なお、衛生洗浄装置2は、洗浄水の供給先として、例えば、所定の吐水口から洗浄水を吐出することにより吐水ノズル15の外面の洗浄(胴体洗浄)を行うノズル洗浄室や、所定の噴霧口から便器3のボウル部3aの表面に洗浄水を噴霧する噴霧ノズル等を有する。
吐水ノズル15は、人体の局部を洗浄するための水(洗浄水)を吐出する。吐水ノズル15は、洗浄水を吐出する複数の吐水孔15aを有する。吐水孔15aは、例えば、おしり洗浄用のおしり洗浄吐水孔およびおしりソフト吐水孔、並びにビデ洗浄用のビデ洗浄吐水孔である。
吐水ノズル15は、電動モータ等で構成されたノズル駆動装置16により、装置本体部4から便器3のボウル部3a内に対して進退可能に設けられている(図3、矢印A1参照)。吐水ノズル15の動作は、制御部10に接続されたノズル駆動装置16を介して、制御部10により制御される。吐水ノズル15は、トイレ装置1の使用者によるスイッチ操作等に応じて、ボウル部3a内に伸び出て吐水孔15aから洗浄水を噴射する。
吐水ノズル15においては、各吐水孔15aに連通する流路が形成されている。これらの流路は、流路切替弁26から各吐水孔15aに連通する人体洗浄用給水流路の一部を構成する。上記の例にならうと、衛生洗浄装置2は、人体洗浄用給水流路として、おしり洗浄吐水孔、おしりソフト吐水孔およびビデ洗浄吐水孔の各吐水孔に連通する洗浄流路を有する。
流路切替弁26により、吐水ノズル15の複数の吐水孔15aへの流路(給水流路)に対して水を供給する流路が切り替えられる。各吐水孔15aに供給された洗浄水は、吐水孔15aから上方へ向けて吐出され、便座6に着座した状態の使用者の局部洗浄等に用いられる。なお、流路切替弁26により切り替えられる流路には、ノズル洗浄室の吐水口に連通する流路や、噴霧ノズルの噴霧口に連通する流路等が含まれる。
図3に、ケーシング5内における開放式タンク40等の配置構成の一例を示す。図3に示すように、本実施形態に係る衛生洗浄装置2において、開放式タンク40は、ケーシング5を構成するベースプレート5a上において、後端部に配置されている。
開放式タンク40は、後述するように全体として細長い略直方体状の外形を有する。開放式タンク40は、平面視において、長手方向を左右方向として、平面視で略矩形状をなすベースプレート5aの後縁部に沿うように設けられている。ベースプレート5aの後縁部において、開放式タンク40は、左右中央に対して左寄りの位置に設けられている。
また、ベースプレート5aの右後角部に、開放式タンク40から洗浄用ポンプ24までの流路に配置されたストレーナ30が設けられており、ストレーナ30の直前方に、洗浄用ポンプ24が設けられている。つまり、洗浄用ポンプ24は、ベースプレート5a上における右端部の後寄りの位置に設けられている。洗浄用ポンプ24は、モータ部24bを前側とする向きで設けられている。
ベースプレート5a上において、前縁部の左右中央位置に、吐水ノズル15が設けられている。具体的には、ベースプレート5aは、前縁部の左右の中間部に、便器3のボウル部3aの平面視形状に対応するように平面視で後側に凸の円弧状をなす円弧部5dを有する。この円弧部5dの左右中央部に、吐水ノズル15が、平面視でその長手方向を前後方向(進退方向)として設けられている。吐水ノズル15は、通常、その先端部を円弧部5dの左右中央部の後側に位置させており、洗浄水を吐水する際に、円弧部5dの左右中央部から前方に突出する。なお、円弧部5dの左右中央部は、ベースプレート5aにおいて側壁部の非形成部位である開放部5hとなっている。
また、ベースプレート5a上において、開放式タンク40の前方に、熱交換器25が設けられている。熱交換器25は、吐水ノズル15の左方に位置する。熱交換器25と吐水ノズル15との間に、流路切替弁26が設けられている。
以上のような構成を備えた衛生洗浄装置2において、開放式タンク40内に貯溜されている水が、洗浄用ポンプ24によって吐水ノズル15へと供給され、吐水ノズル15の吐水孔15aから吐出される。使用者は、開放式タンク40から吸い出される水の量を、操作部11の操作等によって調整することができる。
したがって、例えば、流入配管28から開放式タンク40に供給される水の量に対し、洗浄用ポンプ24によって開放式タンク40から流出する水の量が少ない場合は、開放式タンク40内に余剰水が生じる。この開放式タンク40内の余剰水を外部へ排出するため、開放式タンク40は、オーバーフロー部を有する。オーバーフロー部により排出される水は、後述するように便器3のボウル部3a内に排出される。
本実施形態に係る開放式タンク40について、図4から図12を参照して説明する。図4から図12に示すように、本実施形態に係る開放式タンク40は、全体として細長い略直方体状の外形のタンク本体41を有し、タンク本体41の長手方向を左右方向として、ケーシング5内の後部に設けられている。なお、図1および図4に示すように、開放式タンク40における前後・左右・上下方向は、トイレ装置1における前後・左右・上下方向に対応している。
開放式タンク40は、洗浄水の貯溜空間41aをなすタンク本体41と、タンク本体41内に水を流入させる流入口部42と、吐水ノズル15に対してタンク本体41内の水を流出させる流出口部43とを有する。流入口部42には、流入配管28の下流側が連通接続されており、流出口部43には、流出配管29の上流側が連通接続されている。すなわち、流入配管28から流入口部42を介してタンク本体41内に洗浄水が流入し、タンク本体41内の洗浄水は、流出口部43を介して流出配管29へと流出する。
タンク本体41は、その大部分をなす下ケース部45と、タンク本体41の上面部を構成する蓋部46とを有する。下ケース部45および蓋部46により、タンク本体41の外形が構成されている。下ケース部45に流出口部43が設けられており、蓋部46に流入口部42が設けられている。
下ケース部45は、上面側を開放させた左右に細長い箱状のケース部材51により構成されている(図10参照)。蓋部46は、全体としてケース部材51の開口形状に対応した板状の蓋部材52により構成されている(図11参照)。図10は、タンク本体41において蓋部材52を取り外した状態を示しており、図11は、蓋部材52の下面側からの斜視図を示している。ケース部材51および蓋部材52は、いずれも樹脂製の部材である。ただし、タンク本体41を構成する部材は、樹脂製のものに限らず、例えば金属製の部材であってもよい。
下ケース部45は、水平面状の底面部47と、底面部47の周囲に沿って垂直状に設けられた側壁部48とを有する。側壁部48は、左右方向を長手方向として互いに対向した前壁面部48aおよび後壁面部48bと、左側を凸側とした半円筒面状の左壁面部48cと、右壁面部48dとを有する。側壁部48は、平面視において略長方形状の閉形状をなし、上方の開口端面となる上端面48eを略水平面に沿わせている。また、側壁部48は、右前側の角部分において、平面視で面取形状をなす傾斜状の面取壁面部48fを有する。
下ケース部45は、右側の略1/3の部分における上側の部分を、他の部分に対してわずかに開口幅(前後方向の開口寸法)が広い幅広部45aとしている。一方、下ケース部45は、左側の端部に、他の部分に対して貯溜空間41aの深さを深くする深底部45bを有する。深底部45bは、下ケース部45の外形をなすとともに、下ケース部45の左側の端部を下側に向けて略筒状に突出させた底側突部49を有する。このため、底面部47は、深底部45b以外の部分における第1底面部47aと、第1底面部47aに対して段下がりの面部であって底側突部49の底部をなす第2底面部47bとを有する。
深底部45bにおいては、底側突部49が下側に突出している分、貯溜空間41aの深さが他の部分に対して深くなっている。なお、底側突部49の周壁部のうち、左側の部分は、側壁部48の左壁面部48cの下方への延設部分であり、右側の部分は、略半円筒状の周壁部49aとなっている。
蓋部46は、下ケース部45の平面視形状、つまり下ケース部45の上方の開口形状に沿う外形を有する。蓋部46は、下ケース部45の上方の開口を塞ぐ蓋本体部をなす部分として、水平面状の本体面部53と、本体面部53の周囲に沿って下側に向けて垂直状に設けられた周壁部54とを有する。
蓋部46は、蓋本体部の平面視形状として、幅広部45aを有する下ケース部45の開口形状に対応した形状を有する。蓋部46は、本体面部53によって下ケース部45の上方開口を塞ぐとともに、周壁部54により下ケース部45の上端部を外側から覆うように、下ケース部45に対して上側から被さる態様で設けられている。
蓋部46は、蓋本体部の周囲において所定の間隔で複数箇所に設けられた係合部55により、下ケース部45に固定されている。本実施形態では、係合部55は、蓋部46の前側に3箇所、後側に3箇所、左側に1箇所、計7箇所に設けられている。係合部55は、弾性変形を利用したいわゆるスナップフィット方式を採用したものであり、蓋部46の周壁部54から下方に向けて突出するとともに開口部をなす係合突片部55aと、下ケース部45の側壁部48の上端部の外側に設けられ係合突片部55aの開口部に嵌る係合突起55bとの係合構造を有する。
また、蓋部46をなす蓋部材52と、下ケース部45をなすケース部材51との間には、シール部材としてのパッキン56が介装されている。パッキン56は、蓋部材52において、周壁部54と、周壁部54に沿って周壁部54の内側に設けられた内側壁部57とにより形成された溝部58に嵌め込まれている。
このような構成において、ケース部材51および蓋部材52は、ケース部材51の側壁部48の上端部を蓋部材52の溝部58に嵌合させパッキン56を挟持するとともに、複数箇所の係合部55による係合作用により、水密状に互いに固定され、タンク本体41を構成する。
また、タンク本体41においては、下ケース部45の右側の前下側の角部に、開放式タンク40の下流側の流路において配管径を切り替えるための配管径切替部60が設けられている。配管径切替部60は、接続を受ける配管の径を互いに異にする上流側接続管部60aおよび下流側接続管部60bを有する。上流側接続管部60aおよび下流側接続管部60bは、下ケース部45から突設された中空状の基部60cから突出した筒状の部分であり、基部60c内の中空部を介して互いに連通している。本実施形態では、配管径切替部60は、洗浄用ポンプ24と熱交換器25との間の流路において用いられる。
また、下ケース部45の右側の後側には、タンク本体41をベースプレート5aにボルト等の固定具により固定するための固定用の突片61が設けられている。また、蓋部46における左右略中央部には、貯溜空間41a内にスケール除去剤等の薬剤を投入するための薬剤投入口62が設けられている。薬剤投入口62は、上方に開口するとともに貯溜空間41a内に臨む開口部をなし、本体面部53の裏面側に突出状に設けられており、薬剤を案内するためのスロープ等の所定のガイド面を有する。
流入口部42は、蓋部46の上側における右端に、上側に突出した部分として設けられている。流入口部42は、蓋部材52に対して流入口形成部材65を取り付けることにより構成されている。蓋部材52は、本体面部53を貫通するように形成されるとともに貯溜空間41aに対する流路を形成する流入口形成部66を有する。流入口形成部66は、流入口形成部材65の取付けを受ける部分として、上側を開放側とした箱状の部分である嵌合口部66aを有する。
流入口形成部材65は、下側を開放側としたドーム状のキャップ部65aを有する。流入口形成部材65は、キャップ部65aを、流入口形成部66の嵌合口部66a内に嵌め込んだ状態で設けられ、流入口形成部66とともに貯溜空間41aの上側に貯溜空間41aに連通した流入側中空部67を形成する(図8参照)。流入口形成部材65は、スナップフィット方式を採用した前後2箇所の係合部66bによって嵌合口部66aに固定されている。係合部66bは、嵌合口部66aの前後の壁部から上方に向けて突出するとともに開口部をなす係合突片部と、キャップ部65aの前後面に設けられ係合突片部の開口部に嵌る係合突起との係合構造を有する。
流入口形成部材65のキャップ部65aの上側には、流入配管28の下流側の接続を受ける部分として、筒状の接続管部65bが設けられている。接続管部65bは、正面視においてキャップ部65aの中央部から左下がりに下る直線状の管路を形成し、左斜め下側に向けて開口している。また、流入口形成部材65においては、接続管部65bの管路の基端側に連通するように、突出管部65cが設けられている(図8参照)。突出管部65cは、キャップ部65aの中央部から流入側中空部67内に臨むように下方に向けて筒状に突設されており、上下方向に沿う直線状の管路を形成している。接続管部65bおよび突出管部65cにより、鋭角状に屈曲した入水流路65dが形成されている。
流入口形成部66において、嵌合口部66aの下側には、洗浄水を貯溜空間41a内に導くガイド流路69を形成するガイド流路形成部70が設けられている。ガイド流路69は、流入側中空部67に対して下側に連続した空間部分であって、流入側中空部67と貯溜空間41aとの間の流路である。ガイド流路形成部70は、その下部を本体面部53より下側に略箱状に突出させており、本体面部53等とともに、貯溜空間41a内に臨んで開口した流入開口部70aを形成している。本実施形態では、ガイド流路形成部70は、流入開口部70aを左側に向けて開口させるように形成されている。
ガイド流路形成部70は、突出管部65cの下方において、突出管部65cから下方に向けて流入した洗浄水を受けて流入開口部70aに導くガイド面70bを有する。ガイド面70bは、流入開口部70aへ向けて左下がりに傾斜ないし湾曲した面部分を含む。ガイド流路形成部70は、流入開口部70aを形成する部分として、ガイド面70bをなす右下側面部70cと、前側面部70dとを有する(図11参照)。
また、流入口形成部材65には、貯溜空間41aを大気に開放させるための大気開放用の孔部65eが形成されている。本実施形態では、大気開放用の孔部65eは、キャップ部65aにおける接続管部65bの基部の右側の部位に、前後2箇所に設けられている。
流出口部43は、下ケース部45の左側の下部の前側に突設されている。流出口部43は、ケース部材51に対して流出口形成部材72を取り付けることにより構成されている。ケース部材51は、流出口形成部材72の取付けを受ける部分として、流出口形成部73を有する。
流出口形成部73は、底側突部49をなす左壁面部48cの下部の前側において、左壁面部48cを略前後方向に貫通するように筒状に形成された貫通管部73aを有する。貫通管部73aの左壁面部48cからの外側への突出部分に、流出口形成部材72が取り付けられている。
流出口形成部材72は、貫通管部73aの外側の突出部分に取り付けられる中空状の本体部72aを有し、本体部72aから、筒状の接続管部72bが突設されている。接続管部72bは、流出配管29の上流側の接続を受ける部分であり、底側突部49の前方において、略水平状の管路を形成し、右側に向けて開口している。接続管部72bにより、右方に向かう直線状の排水経路が形成されている。
開放式タンク40は、タンク本体41内に溜まった水の水位を検知する水位センサであるフロートセンサ75を有する。フロートセンサ75は、上下方向を軸方向とする軸状のセンサ本体部75aと、センサ本体部75aを貫通させた態様でフランジ状に設けられた円筒状のフロート部75bとを有する。フロートセンサ75は、タンク本体41において左側に設けられた深底部45b内において、本体面部53から下方に向けて突設されたセンサ取付部76に支持された状態で設けられている。
フロートセンサ75は、センサ本体部75aにおいて上下2つのリードスイッチを有し、フロート部75bによってタンク本体41内の水位の変動にともなって上下動する。フロートセンサ75は、その上下動にともない2つのリードスイッチのオン/オフにより、タンク本体41内の水位として、最低水位H1と最高水位H2を検知するように構成されている(図8参照)。フロートセンサ75は、センサ本体部75aの上端部を本体面部53に形成された開口部53aから外部に臨んで露出させており、リードスイッチからの信号線75cを延出させている。フロートセンサ75の検出信号は、信号線75cを介して制御部10に入力される。なお、水位センサとしては、タンク本体41内の水位を検知することができるものであれば適宜のセンサが用いられる。
フロートセンサ75による水位検知を用いた給水動作は、例えば次のような態様で行われる。着座検知センサ12により使用者の着座が検知されると、制御部10は、止水栓21を開き、フロートセンサ75によって最低水位H1が検知されるまで、開放式タンク40への給水を行う。そして、操作部11の操作等による局部の洗浄時には、開放式タンク40への給水が行われるとともに、洗浄用ポンプ24が駆動し、洗浄水が吐水ノズル15へと供給される。ここで、洗浄用ポンプ24は、タンク本体41内の水位が最低水位H1以上であることを条件に駆動し、タンク本体41内の水位が最高水位H2に達すると、開放式タンク40への給水が停止する。
このような開放式タンク40においては、図8に示すように、貯溜空間41aに対する流入口となる突出管部65cの開口端の高さ位置H0に対し、タンク本体41内の最高水位H2は下方に位置している。高さ位置H0と最高水位H2との高さの差ΔHにより、タンク本体41内においてエアギャップが形成されている。かかるエアギャップにより、洗浄水の供給経路における逆流が防止される。
以上のような構成を備えた開放式タンク40は、タンク本体41内の余剰水を外部へ排出するための排出口として、第1排出口81および第2排出口82を有する。第1排出口81および第2排出口82は、タンク本体41の内外を連通させるように設けられており、いずれも上方に向けて開口している。また、第1排出口81および第2排出口82は、流入口部42とタンク本体41内の水面との間にエアギャップが形成されるように設けられている。
第1排出口81について説明する。第1排出口81は、タンク本体41において、左右方向について中央部よりも右側寄りの位置に設けられている。具体的には、第1排出口81は、左右方向について、下ケース部45の幅広部45aに位置し、前後方向について、前壁面部48aと後壁面部48bとの間の中間部に設けられている。第1排出口は、平面視において、流入口部42の流入開口部70aの近傍であって、流入開口部70aの左斜め後側に位置している。
第1排出口は、上下両側を開口させた四角筒状の部分であって下ケース部45の底面部47を上下方向に貫通する態様で形成された第1オーバーフロー管83として設けられている。第1オーバーフロー管83は、上下方向について区分される部分として、底面部47よりも上側の部分、つまり貯溜空間41a内において底面部47から上方に突出した上側突出部83aと、底面部47よりも下側の部分、つまり貯溜空間41aの外部において底面部47から下方に突出した下側突出部83bとを有する。第1オーバーフロー管83は、上下方向についてその大部分を上側突出部83aとしている。
第1オーバーフロー管83は、左右方向を長手方向とする長方形状の横断面形状を有し、上下の開口形状(上開口部83gおよび下開口部83hの開口形状)を長方形状としている。したがって、第1オーバーフロー管83は、いずれも底面部47に対して垂直状の壁部である前壁部83c、後壁部83d、左壁部83eおよび右壁部83fを有する。第1オーバーフロー管83は、上下方向の全体について横断面の形状・寸法を一定としている。第1オーバーフロー管83は、その内周面によって長方形状の流路断面形状をなす上下方向の流路83jを形成している。
第1排出口81は、貯溜空間41a内で開口した第1オーバーフロー管83の上開口部83gが水平面に沿うように設けられている。つまり、第1オーバーフロー管83の上開口部83gは、その開口端面を水平面に沿わせている。第1オーバーフロー管83は、その配設位置において、上開口部83gの高さが貯溜空間41aの上下方向の中央位置より上側に位置するように設けられている。
第1オーバーフロー管83の下側突出部83bの周囲には、シール部材としてのパッキン84が設けられている。パッキン84は、底面部47の下面側において、下側突出部83bと、下側突出部83bの外側に設けられた突条部85とにより下側突出部83bの外形に沿って形成された溝部86に嵌め込まれている。
一方、開放式タンク40が設置されるベースプレート5a側には、下側突出部83bを挿嵌させる四角筒状の排出口部5eが設けられている(図9参照)。排出口部5eは、ベースプレート5aの底面部5cから上側に突設されており、底面部5cを貫通するように上下両側を開口させている。
このような構成において、開放式タンク40がベースプレート5a上に設置されることで、排出口部5eは、下側突出部83bを挿嵌させるとともに、上端部を溝部86に嵌合させ、下ケース部45とともにパッキン84を挟持する。これにより、第1オーバーフロー管83と排出口部5eとが水密状に接続され、貯溜空間41a内とケーシング5の下側の外部とを連通させる排水流路が構成されている。つまり、排出口部5eの下側の開口部5fが、ケーシング5の外部への排出口となる。なお、第1オーバーフロー管83の下開口部83hは、排出口部5e内に位置している。
また、底面部47の左側の部分の下面側には、位置決め用の突起87が下方に向けて突設されている。突起87は、ベースプレート5aの底面部5cに上向きに突設された筒状の位置決め筒部5gに差し込まれる。
第2排出口82について説明する。第2排出口82は、タンク本体41において、左右方向について略中央部に設けられている。したがって、第2排出口82は、第1排出口81に対して左方に位置している。
第2排出口82は、上側を開口させた有底円筒状の部分であって下ケース部45の底面部47を上下方向に貫通する態様で形成された第2オーバーフロー管93を有する。第2オーバーフロー管93は、タンク本体41において、前後方向について前側寄りの位置、つまり前壁面部48aの近傍の位置に設けられている。第2オーバーフロー管93は、上下方向について区分される部分として、底面部47よりも上側の部分、つまり貯溜空間41a内において底面部47から上方に突出した上側突出部93aと、底面部47よりも下側の部分、つまり貯溜空間41aの外部において底面部47から下方に突出した下側突出部93bとを有する。第2オーバーフロー管93は、上下方向についてその大部分を上側突出部93aとしている。
第2オーバーフロー管93は、円形状の横断面形状を有し、上側の開口形状(上開口部93gの開口形状)を円形状としている。したがって、第2オーバーフロー管93は、底面部47に対して垂直状の円筒状の周壁部93cを有する。また、第2オーバーフロー管93は、下側突出部93bにおいて第2オーバーフロー管93の底面部をなす底部93dを有し、下側突出部93bを底面部47の下側において円筒状に突出させている。第2オーバーフロー管93は、上下方向の全体について横断面の形状・寸法を一定としている。第2オーバーフロー管93は、円形状の流路断面形状をなす上下方向の流路93jを形成している。
本実施形態では、第2オーバーフロー管93の開口面積(流路面積)は、第1オーバーフロー管83の開口面積(流路面積)よりも小さい。ただし、両オーバーフロー管の開口面積(流路面積)の大小関係は特に限定されない。
第2排出口82は、貯溜空間41a内で開口した第2オーバーフロー管93の上開口部93gが水平面に沿うように設けられている。つまり、第2オーバーフロー管93の上開口部93gは、その開口端面を水平面に沿わせている。第2オーバーフロー管93は、その配設位置において、上開口部93gの高さが貯溜空間41aの上下方向の中央位置より上側に位置するように設けられている。
第2排出口82は、第2オーバーフロー管93の下側突出部93bにおける周壁部93cを前後方向に貫通する態様で形成された接続管部94を有する。接続管部94は、前後両側を開口させた筒状の部分であり、後側の部分94cを下側突出部93bの内部に突出させており(図12参照)、前側の部分を前突出部94aとして前壁面部48aより前方に突出させている。接続管部94は、その内周面によって円形状の流路断面形状をなす前後方向の流路94bを形成している。
接続管部94の前突出部94aに、排水パイプ95の一端側が接続されている。排水パイプ95は、接続管部94から前方に延設されており、他端側を排出口95aとしている。排水パイプ95は、ベースプレート5a上において前後方向に配されており、吐水ノズル15の左方に位置し、排出口95aをベースプレート5aの円弧部5dの中央部近傍に位置させるように延設されている(図3参照)。排水パイプ95は、平面視で排出口95aがベースプレート5aの開放部5h側に向けて開口するように、他端側(先端側)の端部を屈曲させて排出口95aを右側に向けて開口させている。
このように、第2排出口82については、第2排出口82を構成する第2オーバーフロー管93および接続管部94、並びに接続管部94に接続された排水パイプ95により、貯溜空間41a内とケーシング5の内部とを連通させる排水流路が構成されている。
以上のように第1排出口81および第2排出口82を有する開放式タンク40において、第2排出口82の開口位置の高さは、第1排出口81の開口位置の高さよりも低くなっている。
図9に示すように、本実施形態において、上下方向の高さ位置に関し、第1排出口81の開口位置P1は、第1オーバーフロー管83の上開口部83gの開口端面の高さ位置である。また、第2排出口82の開口位置P2は、第2オーバーフロー管93の上開口部93gの開口端面の高さ位置である。そして、第2排出口82の開口位置P2の高さが、第1排出口81の開口位置P1よりも低い位置となっている。第1排出口81の開口位置P1は、側壁部48の上端面48eと略同じ高さとなっている。なお、第1排出口81の開口位置P1および第2排出口82の開口位置P2は、いずれもタンク本体41内における最高水位H2よりも高い位置である(図8参照)。
本実施形態では、タンク本体41は、第1排出口81および第2排出口82の開口位置の高さに関して次のような構成を備える。第1オーバーフロー管83および第2オーバーフロー管93が立っている底面部47の第1底面部47aの上面47cは、略水平状の(わずかに左下がりの)面である。第1オーバーフロー管83および第2オーバーフロー管93それぞれの上面47cからの突出長さ、つまり上面47cを基準とした上側突出部83aおよび上側突出部93aそれぞれの高さは、上側突出部93aよりも上側突出部83aの方が高くなっている。本実施形態では、上側突出部83aと上側突出部93aの高さの比は約3:2となっている。
また、第2排出口82は、タンク本体41の底部に立設された筒状の部分として、底面部47上に突出した第2オーバーフロー管93の上側突出部93aを有する。上側突出部93aは、底面部47の第1底面部47aの上面47c上に立設された円筒状の部分である。
また、本実施形態では、第1排出口81も第2排出口82と同様にタンク本体41の底部に立設された筒状の部分を有する。かかる筒状の部分は、底面部47上に突出した第1オーバーフロー管83の上側突出部83aであり、上側突出部83aは、第1底面部47aの上面47c上に立設された四角筒状の部分である。
また、本実施形態に係る開放式タンク40において、タンク本体41は、流入口部42と、第1排出口81および第2排出口82との間に設けられた整流部としての整流板部96を有する。
整流板部96は、貯溜空間41a内を仕切るように、底面部47に対して垂直状に設けられた板状の部分である。本実施形態では、整流板部96は、蓋部材52において、本体面部53から垂直状に下方に向けて延出しており、樹脂成形品である蓋部材52の一部としてリブ状に設けられている(図11参照)。
整流板部96は、貯溜空間41aを形成する蓋部46の本体面部53と下ケース部45の底面部47(第1底面部47a)との間において、上下方向について略全体にわたって設けられている。つまり、本体面部53から下方に向けて延設された整流板部96は、その下端を底面部47の上面47cに接触ないし略接触させるように設けられており、貯溜空間41a内において隔壁状の部分を構成する。
整流板部96は、タンク本体41内において、左右方向について幅広部45aが形成された部分に設けられている。詳細には、側壁部48において、全体的に面一状の後壁面部48bに対して、前壁面部48aは、幅広部45aを形成する右側の壁面部分の上部に、前側に膨出状に突出した膨出部48gを有する。前壁面部48aにおいて膨出部48gが形成された部分の右側には面取壁面部48fが形成されている。
このような側壁部48の前右側の壁面部分に対向するように、貯溜空間41a内に整流板部96が設けられている。整流板部96は、側壁部48の前右側の壁面部分の形状に沿うように、平面視で所定の屈曲形状を有する。具体的には、整流板部96は、屈曲形状をなす面部として、横壁面部96a、縦壁面部96b、および傾斜壁面部96cを有する。
横壁面部96aは、左右方向に平行状な壁面部である。縦壁面部96bは、横壁面部96aの左側に設けられ、横壁面部96aに対して前側に屈曲し、横壁面部96aとともに略直角状をなす壁面部である。傾斜壁面部96cは、横壁面部96aの右側に設けられ、横壁面部96aに対して後側に鈍角をなすように屈曲した傾斜状の壁面部である。整流板部96は、これらの壁面部によりなす横断面の形状・寸法を上下方向について略一定としている。
整流板部96は、その左側の端部となる縦壁面部96bの前端部を、前壁面部48aに接触ないし略接触させている。ここで、縦壁面部96bは、膨出部48gを有する前壁面部48aの段差状の壁面形状に沿うように、下部に略「L」字状の切欠部96dを有する(図11参照)。一方、整流板部96は、その右側の端部となる傾斜壁面部96cの右端部を、側壁部48に対して離間させている。つまり、整流板部96の右側の端部と側壁部48との間には、隙間97が形成されている(図12参照)。
整流板部96は、タンク本体41内において、流入口部42の流入開口部70aが設けられた部分と、第1オーバーフロー管83および第2オーバーフロー管93が設けられた部分とを領域的に仕切るように設けられている。すなわち、整流板部96の前側に、流入開口部70aが左に向けて開口するように形成されており、整流板部96の横壁面部96aの後側に、第1オーバーフロー管83が設けられており、整流板部96の横壁面部96aと縦壁面部96bの角部の左後方に、第2オーバーフロー管93が設けられている。特に、第1オーバーフロー管83は、整流板部96の横壁面部96aと後壁面部48bとの間の略中央部に位置している。なお、流入開口部70aをなすガイド流路69の後側の壁部、つまり前側面部70dに対して後方で略対向する壁部は、整流板部96の傾斜壁面部96cの一部(左上の角部分)となっている。
このように、整流板部96は、タンク本体41内において、流入開口部70aから水が流入する領域98を、第1オーバーフロー管83および第2オーバーフロー管93の配設領域(以下「排出口配設領域」という。)に対して区画するように設けられている(図12参照)。言い換えると、整流板部96は、タンク本体41内において流入開口部70aから水が流入する領域98を、側壁部48の右前側の部分とともに囲繞するように設けられている。
以上のような構成を備えた本実施形態に係る開放式タンク40における水の流れについて説明する。開放式タンク40に対しては、流入配管28から供給される水が、流入口部42における入水流路65dから流入側中空部67を介してガイド流路69に流入する(図8、矢印F1参照)。
ガイド流路69に流入した水は、ガイド面70b上を流れて流入開口部70aから貯溜空間41a内に流入する(図8、矢印F2参照)。ここで、整流板部96により、タンク本体41内において、流入開口部70aから水が流入する領域98が排出口配設領域から区画されていることから、タンク本体41内の貯溜水に対する流入開口部70aからの流入水の着水にともなう水跳ねや水面の乱れが排出口配設領域における貯溜水に影響することが抑制される。タンク本体41内に流入する水については、上述したように、フロートセンサ75のセンシングによって給水量が制御される。
一方、貯溜空間41a内の貯溜水は、洗浄用ポンプ24の駆動により、流出口部43における排水流路から流出配管29へと排出される(図7、矢印F3参照)。タンク本体41から流出した水は、流出配管29によりストレーナ30を介して洗浄用ポンプ24に導かれ、洗浄用ポンプ24から熱交換器25を経て、流路切替弁26により選択された所定の流路を通って吐水ノズル15に供給され、所定の吐水孔15aから吐出される。
次に、開放式タンク40における第1排出口81および第2排出口82による作用について説明する。例えば、開放式タンク40内に流入する水量に対し、洗浄用ポンプ24の動作によって開放式タンク40から流出する水量が小さい場合等、タンク本体41内の水位が上昇して第2排出口82の開口位置P2を超えると、タンク内の水が第2オーバーフロー管93内に流入し、余剰水として外部に排出される。
第2オーバーフロー管93内に流入した水は、下側突出部93b内を介して接続管部94に流入し、排水パイプ95により前方に導かれ、排出口95aから排出される。排出口95aから排出された水は、ベースプレート5a上を伝って流れ、開放部5hから便器3のボウル部3a内へと排出される(図3、矢印G1参照)。
また、例えば、開放式タンク40からの排水量に対して給水量が多いこと等により、タンク内の水位がさらに上昇し、タンク本体41内の水位が上昇して第1排出口81の開口位置P1を超えると、タンク内の水が第1オーバーフロー管83内に流入し、余剰水として外部に排出される。第1オーバーフロー管83内に流入した水は、下開口部83hを介してベースプレート5aの開口部5fから下方に向けてケーシング5の外部へと排出される(図9、矢印G2参照)。
このように、本実施形態に係る開放式タンク40は、タンク内の余剰水の排出構造として、タンク内の水位の上昇に関して第1段階としてオーバーフロー部として機能する第2排出口82と、第2段階としてオーバーフロー部として機能する第1排出口81とを有し、2段階のオーバーフロー構造を有する。すなわち、タンク内の水位として、第2排出口82の開口位置P2が第1のオーバーフロー水位となり、第1排出口81の開口位置P1が第2のオーバーフロー水位となり、タンク内の水位が各オーバーフロー水位を超えると、タンク内の洗浄水が第2排出口82および/または第1排出口81によりタンク外に排出されることになる。
そして、これらの排出口のうち高い方の開口位置である第1排出口81の開口位置P1は、貯溜空間41aに対する流入口となる突出管部65cの開口端の高さ位置H0に対して下方に位置している。高さ位置H0と開口位置P1との高さの差ΔP1が、タンク内の余剰水の排出構造についてのエアギャップとなる(図8、図9参照)。すなわち、仮にタンク内の水位が開口位置P1に達したとしても、第1排出口81により余剰水が排出されることから、高さの差ΔP1によるエアギャップが維持され、洗浄水の供給経路における逆流が防止される。
同様に、低い方の開口位置である第2排出口82の開口位置P2は、高さ位置H0に対して下方に位置しており、高さ位置H0と開口位置P2との高さの差ΔP2が、タンク内の余剰水の排出構造についてのエアギャップとなる。すなわち、仮にタンク内の水位が開口位置P2に達したとしても、第2排出口82により余剰水が排出されることから、高さの差ΔP2によるエアギャップが維持され、洗浄水の供給経路における逆流が防止される。このように、第1排出口81および第2排出口82は、流入口部42とタンク本体41内の水面との間にエアギャップが形成されるように設けられている。
以上のような構成の本実施形態に係る開放式タンク40を備えた衛生洗浄装置2によれば、開放式タンク40においてタンク内の余剰水の排水性能を向上させることができるとともに、装置のコンパクト化を図ることができる。
すなわち、本実施形態に係る開放式タンク40によれば、第1排出口81および第2排出口82による2段階のオーバーフロー構造を有することから、単独の排水構造を有する構成との比較において、各オーバーフロー管の開口面積や管径を大きくすることなく、タンク内の酔浄水の排水性能を向上させることができる。
また、各オーバーフロー管の開口面積や管径の拡大化を抑制できることから、例えば排水パイプ95等、余剰水を便器のボウル部に導くための排水用の配管について、その流路面積が大きくなることを回避することができる。これにより、衛生洗浄装置2において開放式タンク40の前側等に配設される各種装置・機器等に対して排水用の配管が干渉することを避けることが容易となり、装置のコンパクト化を実現することができる。
また、第1排出口81および第2排出口82を有する構成によれば、各オーバーフロー管の高さを抑制しながら、タンク内の余剰水を排出するための開口面積を十分に確保することが可能となる。このような点からも、開放式タンク40の高さ寸法を抑えることができ、装置のコンパクト化を図ることができる。以上のように、本実施形態に係る開放式タンク40によれば、タンク内の余剰水の排水性能の向上と装置のコンパクト化の両立を実現することが可能となる。
また、本実施形態に係る開放式タンク40においては、第2排出口82の開口位置P2の高さは、第1排出口81の開口位置P1の高さよりも低くなっている。
このような構成によれば、タンク内の水位の上昇に関し、第1段階として先に第2排出口82からの排水が行われるので、比較的小さい水位の変動(上昇)によって一度に大量の水が余剰水としてタンク外に排出されることを防止することができる。また、第2排出口82および第1排出口81による2段階の排水が行われるので、何等かの原因でタンク内の水位が上昇する際、最初の段階でオーバーフローした水を使用者に気付かせることができる。これにより、タンク内の水位の異常を早期に発見することが可能となる。
また、本実施形態に係る開放式タンク40においては、第2排出口82は、タンク本体41の底部に立設された筒状の部分を有する。
このような構成によれば、例えばオーバーフロー口(排水口)としてタンク本体41の側壁部48に直接的に開口した開口部を設けた壁孔式の構成との比較において、排水性能の確保が容易となるとともに、開放式タンク40の小型化を図ることができる。すなわち、壁孔式の構成の場合、排水性能を確保するために開口部を大きくする上で形状的な制約が比較的大きく、また、開口部を大きくすることは、開放式タンク40の小型化の妨げとなる。この点、本実施形態のように第2排出口82をタンク内において筒状の部分として上方に開口させた構成とすることにより、排水性能を確保するために開口部を大きくすることが容易となり、しかも開放式タンク40の小型化を容易に図ることが可能となる。結果として、衛生洗浄装置2のコンパクト化に寄与することができる。
特に、本実施形態に係る開放式タンク40においては、第2排出口82に加え、第1排出口81も、上方に向けて開口した筒状の部分を有する。このような構成によれば、タンク内の余剰水を排出するための構成における排水性能をより向上させることができるとともに、装置のコンパクト化を効果的に図ることができる。
また、第2排出口82は、第2オーバーフロー管93の上開口部93gの開口形状を円形状とするとともに、開口端面を水平面に沿わせている。このような構成によれば、タンク内の水位が上昇する過程において、第2オーバーフロー管93に対して、その上開口部93gの全周から同時的かつ均等に水が流入することになるため、良好な排水性能を得ることができる。
また、本実施形態に係る開放式タンク40において、タンク本体41は、流入口部42と、第1排出口81および第2排出口82との間に設けられた整流板部96を有する。
このような構成によれば、流入口部42からタンク本体41内に流入する水が整流部によって整流されることから、タンク本体41内の水位を安定させることができる。また、タンク本体41内の貯溜水に対する流入開口部70aからの流入水の着水にともなう水跳ねや水面の乱れが排出口配設領域における貯溜水に影響することを抑制することができる。
したがって、整流板部96を設けた構成によれば、タンク本体41内の貯溜水に対する流入水の着水にともなう水跳ねや水面の乱れにより、タンク内への水の供給にともなって第1オーバーフロー管83や第2オーバーフロー管93に水が入ってしまうことを防止することができる。これにより、タンク内の全体的な水位の上昇とは無関係に第1排出口81や第2排出口82から排水が行われることを防ぐことができる。
第1排出口81および第2排出口82において、流路内にスケールが付着・堆積することは、流路を閉塞して排水性能を低下させる原因となる。このため、排水流路内にスケールが付着・堆積することを避ける観点から、タンク内の水位が全体的に過度に上昇する異常時以外は、可能な限り第1排出口81および第2排出口82には水が入らないことが好ましい。そこで、整流板部96を設けた構成により、第1排出口81や第2排出口82に水が入ることを防ぐことができ、スケールの付着・堆積による排水性能の低下を防ぐことができる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る衛生洗浄装置は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態においては、第1排出口81の上方の開口形状は長方形状であり、第2排出口82の上方の開口形状は円形状であるが、これらの開口形状は特に限定されない。したがって、これらの排出口の開口形状は、三角形状や六角形状等の他の多角形状や楕円形状等であってもよい。
また、上述した実施形態においては、整流部としての整流板部96は、蓋部46をなす蓋部材52の一部として形成されたものであるが、このような構成に限定されるものではない。整流部としては、下ケース部45をなすケース部材51の一部として設けられたものであったり、ケース部材51および蓋部材52とは別体の部材により構成されたものであったりしてもよい。
また、上述した実施形態において、第1排出口81による排水流路の下流側は、直接的にベースプレート5aの下方に向けて開口しており、第2排出口82による排水経路の下流側は、下ケース部45の前方に向けて開口するとともに排水パイプ95によって前方に延設されているが、各排出口による排水流路の構成は特に限定されない。両方の排水流路が第1排出口81のように下方に向けて開口した構成であってもよく、両方の排水流路が第2排出口82のように前方に向けて開口した構成であってもよい。
ただし、タンク内の水位の上昇において、より高い水位で排水を行う第1排出口81は、第2排出口82に対して予備的な排水口として設けられているものであるため、第2排出口82による排水流路は、上述した実施形態のように、下ケース部45の前方に向けて開口するとともに排水パイプ95によって前方に延設された構成であることが好ましい。これにより、第1排出口81によって排水が行われる緊急時以外は、第2排出口82および排水パイプ95により、タンク内の余剰水を、便器3のボウル部3a内に排出することができる。また、第1排出口81については、排水流路の下流側を直接的にベースプレート5aの下方に向けて開口させた構成であることから、第1排出口81による排水流路に排水パイプを設ける必要がないため、装置の小型化を図ることができる。