JP2020045266A - 酸化グラフェン分散液、その調製方法 - Google Patents

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Kazuto Hatakeyama
一翔 畠山
禎樹 清水
Sadaki Shimizu
禎樹 清水
伯田 幸也
Yukiya Hakuta
幸也 伯田
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Abstract

【課題】様々な溶媒に対して、分散用添加剤を使用せずに少なくとも1か月間安定な酸化グラフェン分散液やその調製方法を提供する。【解決手段】酸化グラフェン分散液の調製方法は、次の(1)〜(3)の工程を含み、未剥離の酸化グラファイトなどの不純物を除去し、単層剥離した酸化グラフェンのみが分散するようにし、かつ、水以外の溶媒中で分散の妨げとなる層間の水を単層剥離処理の際の水中に完全に開放することを特徴とする。(1)水中の酸化グラファイトを単層剥離処理して、単層グラフェンを含む酸化グラファイト水分散液を得る工程。(2)前記酸化グラファイト水分散液を遠心処理して、沈殿物を除去、上澄みを回収し、単層酸化グラフェン水分散液を得る工程。(3)単層酸化グラフェン水分散液を水又は有機溶媒で溶媒置換処理を行う溶媒置換工程。【選択図】図1

Description

本発明は、様々な溶媒に対し分散用添加剤を用いることなく高い安定性を有する酸化グラフェン分散液やその調製方法などに関する。
近年、酸化グラフェンは、高イオン伝導性、半導体特性、吸着特性等の優れた特性を持つことで、酸化グラフェンの還元体は、高電気伝導性、高熱伝導性、バリア性等の優れた特性を持つことで、ともに注目され、酸化グラフェン及びその還元体は、電池、触媒、センサー、分離膜、吸着剤、潤滑剤、接着剤、腐食コーティング、放熱材、透明電極など広い分野への利用が期待されるようになってきている。
酸化グラフェンやその還元体は、上記のような特性が発揮されるように各技術分野で実用化するためには、用途に応じた溶媒に対し安定に分散させる必要がある。
従来の酸化グラフェン分散液は、その溶媒が、水や極性溶媒、プロトン性溶媒など一部の溶媒に限定されており、また、その分散安定性も十分ではない。それら溶媒に対する分散性を改善しようとする場合や、その他の溶媒に分散させようとする場合には、実用性からは望ましくないとされている分散用添加剤を用いることも知られている。
例えば、特許文献1(特開2010−275186号公報)には、溶液中で安定なグラフェンのコロイド分散系又はマルチグラフェン(グラファイトより大きい面間距離を有する2つ以上のグラフェン層のアセンブリ)分散系を生成するための方法を提供することを課題とし、(i)水を初めとした分散媒中にグラファイト酸化物を分散させることによって、コロイドのグラフェン酸化物分散系又はマルチグラフェン酸化物分散系を形成する工程と(ii)分散系中の前記グラフェン酸化物又はマルチグラフェン酸化物を熱還元する工程とを含む方法の発明が記載され、また、コロイドのグラフェン酸化物分散系の調製として、グラファイト酸化物を脱イオン水に添加し、12時間徹底的に撹拌し、次いで超音波浴中に1時間置いてグラファイト酸化物のコロイド分散系を得た旨、該コロイドのグラフェン酸化物分散系は、肉眼で、及び1000倍の拡大率での光学顕微鏡においてさえ光学的に透明であり、粒子がない旨、還元後のグラフェンの水分散液は、1年を超えて添加剤なしで安定である旨等も記載されている。
特許文献2(特開2011−144071号公報、特許第5337062号公報)には、薄片化黒鉛が安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液を効率良く製造することを課題とし、黒鉛又は黒鉛層間化合物と、少なくとも一種の窒素化合物と、水とを混合してpHが10〜14である混合液とし、上記黒鉛又は上記黒鉛層間化合物を薄片化することを含む薄片化黒鉛分散液の製造方法の発明が記載され、また、薄片化黒鉛が水中に分散してなる薄片化黒鉛分散液の上方部分から試験液を3cm3採取し、この試験液を25℃にて24時間に亘って静置したが沈殿物は生成しなかった旨、該分散液の用途によっては、水以外の分散液が望ましい旨、その場合、薄片化黒鉛分散液を遠心分離などで濃縮して水量を減らしてから、他の溶媒を薄片化黒鉛分散液に加えて混合後に遠心分離などで濃縮する工程を繰返し、薄片化黒鉛の分散媒を交換することも記載されている。
特許文献3(特開2014−009104号公報)には、高濃度であっても保存安定性が良好でかつグラフェンの小片面積が大きいグラフェン分散液を提供することを目的とし、グラフェンを溶媒中で、ポリビニルピロリドンにより分散安定化する発明が記載され、また、溶媒が、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及びこれらの混合溶媒である旨、ポリビニルピロリドンと酸化グラフェンを含有する分散液中、pH11以上の条件下で、還元剤を用いて酸化グラフェンを還元する工程を含む旨、酸化グラフェンの分散液は、酸化グラファイトと溶媒とを混合し、長時間攪拌することにより得ることができる旨、溶媒は、酸化グラフェンを分散させ、ポリビニルピロリドンを溶解させるものであれば特に限定されないが、極性溶媒であることが好ましい旨等も記載されている。
特許文献4(特開2014−118563号公報)には、絶縁特性及び機械的物性が優秀な酸化グラフェンを絶縁材料として使う場合、該酸化グラフェンの分散性の確保のために、酸化グラフェンに対して常用性が優秀な溶媒を特定化させることで、従来技術の問題を解決した絶縁層組成物を提供することを目的とし、酸化グラフェン及びこれを含む絶縁材料と、溶媒極性指標が5.5以上の極性溶媒を含む絶縁層組成物の発明が記載され、また、酸化グラフェン(炭素/酸素の比が10/1で、表面にエポキシ及びアルコール官能基を含むhofman酸化グラフェン)を各種溶媒で超音波分散させたところ、極性指標が5.5以上の溶媒である水(極性指標9.0)、エチレングリコール(同6.9)、ジメチルスルホキシド(同7.2)、ジメチルホルムアミド(同6.4)、N−メチルピロリドン(同7.0)、テトラヒドロフラン(同6.0)の場合には、酸化グラフェンを分散させた直後及び3週後にもその分散性をそのまま維持することが確認された旨が記載されている。
特許文献5(特開2015−101494号公報)には、ドメインサイズの低下を招くことなく十分に薄片化されたグラフェン分散液を簡便に製造することを目的とし、黒鉛層間化合物を加熱することにより、黒鉛層の層間距離を拡大させた加熱処理物を得た後、得られた加熱処理物を極性溶媒中で超音波処理して超音波処理液を得、次いで当該超音波処理液をレーザーアブレーション法で処理することからなるグラフェン(ドメインサイズが、10nm〜10μmで、膜厚が1〜100nm)分散液の製造方法の発明が記載され、また、極性溶媒を非極性溶媒や他の極性溶媒に置換したグラフェン分散液としても良い旨も記載されている。
特許文献6(特開2017−218373)には、高分散性で、電極材料として用いた場合に高い導電性とイオン伝導性を維持することが可能な形態のグラフェン(この文献では、単層グラフェンが積層した薄片状の形態を持つ物質も含めてグラフェンとされている。)を提供することを課題とし、酸化グラフェンと、酸性基を有する表面処理剤とを水溶液や水と極性溶媒に混合液の溶媒中で混合した後に、酸化グラフェンをビーズミル、超音波処理、ジェットミル等により微細化する微細化工程を行い、その後に還元処理を施し、さらに高せん断ミキサーにより撹拌処理した後に溶媒をNMPなどの有機溶媒で置換する発明が記載され、また、有機溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの極性の高いものが使用できる旨等も記載されている。
特許文献7(特許第6274355号公報)には、高分散性であり、高導電性、かつ酸化耐性、すなわち電気化学的安定性が高いグラフェン(単層グラフェンが積層した構造体で、厚みが好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下のもの)を提供することを目的とし、酸化グラフェンと、一般式(1)で表される化合物とを溶媒(水、又は、水と溶媒(エタノール、メタノール、1-プロパノール等))中に分散している状態で混合した後に、酸化グラフェンを還元処理し、さらに溶媒を有機溶媒に置換する有機溶媒置換工程を有する表面処理グラフェン/有機溶媒分散液の製造方法の発明が記載されている。
特開2010−275186号公報 特開2011−144071号公報(特許第5337062号公報) 特開2014−9104号公報 特開2014−118563号公報 特開2015−101494号公報 特開2017−218373号公報 特許第6274355号公報(PCT/JP2017/006088)
本発明者は、上述のような従来の酸化グラフェン分散液やグラフェン分散液について検討したが、次の(ア)〜(カ)のような問題点などが存在することを認識した。
(ア)特許文献1には、グラフェンの水分散液が1年を超えて添加剤なしで安定であった旨が記載されているが、酸化グラフェン分散液の分散安定性や、有機溶媒を分散溶媒とする酸化グラフェン分散液について開示されていない。
(イ)特許文献2、3、6、7には、分散剤、酸化グラフェン用表面処理剤などの分散用添加剤を用いて酸化グラフェン分散液の分散安定性を達成する旨が記載されているが、そのような分散用添加剤は、酸化グラフェンやその還元体が本来有する機能や物性を損なう可能性があるので、含有しない方が望ましい。
(ウ)特許文献4には、溶媒極性指標が5.5以上の極性溶媒を分散溶媒とする酸化グラフェン分散液について記載されているが、溶媒極性指標が5.5未満の極性溶媒や非極性溶媒を分散溶媒とする酸化グラフェン分散液やその分散安定性について記載されていない。
(エ)特許文献5には、グラフェン分散液のグラフェンをレーザーアブレーション法等で十分に薄片化することは記載されているが、膜厚が1〜100nmのグラフェンを許容するもので、酸化グラフェン分散液について記載されていないし、未剥離のものを除去することや、単層剥離した酸化グラフェンを分散するようにすること等は全く開示されていない。
(オ)用途によっては、酸化グラフェンは硫黄原子の含有量が低い方が望ましい場合があるが、酸化グラフェン分散液中の酸化グラフェンの硫黄原子含有量を低減する手段について開示したものが存在しない。
(カ)従来の酸化グラフェン分散液は、溶媒が、水以外の極性溶媒や非極性溶媒である場合、分散安定性が十分でない。特に、非極性溶媒の酸化グラフェン分散液については安定なものの例が知られていない。
本発明は、上述のような従来技術や該従来技術に対する本発明者の前記認識を背景としてなされたものであり、様々な溶媒に対して、分散用添加剤を使用せずに少なくとも1か月間安定な酸化グラフェン分散液やその調製方法を提供することを課題とする。
また、従来の手法では除去が困難であった、酸化グラフェン中の硫黄含有量が少ない酸化グラフェン分散液やその調製方法を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題のもとで鋭意研究し、次の(A)〜(E)のような知見を得た。
(A)酸化グラフェン分散液を、次の(1)〜(3)の工程により調製し、未剥離の酸化グラファイトなどの不純物を除去し、単層剥離した酸化グラフェン(以下、「単層酸化グラフェン」ということがある。)のみが分散するようにし、かつ、水以外の溶媒中で分散の妨げとなる層間の水を単層剥離処理の際の水中に完全に開放することにより、分散用添加剤を使用することなく得られる酸化グラフェン分散液は、良好な分散安定性を示す。
(1)水中の酸化グラファイトを単層剥離処理して、単層酸化グラフェンを含む酸化グラファイト水分散液を得る工程。
(2)前記酸化グラファイト水分散液を遠心処理して、沈殿物を除去、上澄みを回収し、単層酸化グラフェン水分散液を得る工程。
(3)単層酸化グラフェン水分散液を水又は有機溶媒で溶媒置換処理を行う溶媒置換工程。
(B)上記(2)、(3)の工程を組み合わせることにより、得られる酸化グラフェン分散液中の酸化グラフェンの硫黄含有量を1atm%以下(例えば、0.3atm%程度)に大幅に少なくすることができる。
(C)前記調製方法で得られた酸化グラフェン分散液のうち、極性溶媒を用いた酸化グラフェン分散液の分散安定性は、少なくとも1か月間波長330nmの可視光吸収が完全分散状態の50%以上である。
(D)前記調製方法で得られた酸化グラフェン分散液のうち、非極性溶媒を用いた酸化グラフェン分散液は、少なくとも1か月間波長330nmの可視光吸収が完全分散状態の50%未満である相の体積が50%以下である。
(E)上記調製方法で得られた酸化グラフェン分散液を用いて製造した、酸化グラフェン/ポリマー複合体や還元型酸化グラフェン/ポリマー複合体は、酸化グラフェンや還元型酸化グラフェンがポリマーマトリックス中に均一、緻密に分散し、還元型酸化グラフェン/ポリマー複合体の場合、優れた電気伝導性を示す。
本発明は、上述のような知見に基づくものであり、本件では、次のような発明が提供される。
<1>極性溶媒を溶媒とし、分散用添加剤を含有せず、少なくとも1か月間、波長330nmの可視光吸収が完全分散状態の50%以上である酸化グラフェン分散液。
<2>前記極性溶媒は、溶媒極性指標が5.5未満のものである<1>に記載の酸化グラフェン分散液。
<3>前記極性溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトン、及び、テトラヒドロフラン(THF)からなる群より選択される1種又は2種以上を含むものである<1>又は<2>に記載の酸化グラフェン分散液。
<4>非極性溶媒を溶媒とし、分散用添加剤を含有せず、少なくとも1か月間、波長330nmの可視光吸収が完全分散状態の50%未満である相の体積が50%以下である酸化グラフェン分散液。
<5>分散液中の酸化グラフェンの硫黄含有量が1.0atm%以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液。
<6>次の(1)〜(3)の工程を含む、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法。
(1)水中の酸化グラファイトを単層剥離処理して、単層酸化グラフェンを含む酸化グラファイト水分散液を得る工程。
(2)前記酸化グラファイト水分散液を遠心処理して、沈殿物を除去、上澄みを回収し、単層酸化グラフェン水分散液を得る工程。
(3)単層酸化グラフェン水分散液を水又は有機溶媒で溶媒置換処理を行う溶媒置換工程。
<7>前記酸化グラファイト単層剥離処理が、酸化グラファイトを含む水に対する超音波印加処理又は撹拌処理である<6>に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法。
<8>前記溶媒置換処理は、分散液を遠心処理する工程、上澄み液除去後の沈殿物を置換用溶媒と混合する工程を含む置換工程を1回又は2回以上行うものである<6>又は<7>に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法。
<9><6>〜<8>のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法において、さらに、調製された所定の有機溶媒の分散液を別の有機溶媒で溶媒置換する工程を1回又は2回以上含む酸化グラフェン分散液の調製方法。
<10><1>〜<5>のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液と、該分散液の溶媒に溶解可能なポリマー又はポリマー溶液とを混合し、乾燥することを含む酸化グラフェン/ポリマー複合体の製造方法。
<11><10>に記載された製造方法により得られた酸化グラフェン/ポリマー複合体の酸化グラフェンを還元することを含む還元型酸化グラフェン/ポリマー複合体の製造方法。
本発明の酸化グラフェン分散液は、分散用添加剤を含有することなく、優れた分散安定性を有する。
本発明の酸化グラフェン分散液の調製方法によれば、分散用添加剤を使用することなく一般的に用いられている手法により調製されたものと比較して優れた分散安定性を有する酸化グラフェン分散液を得ることができる。
また、本発明の酸化グラフェン分散液の調製方法によれば、一般的に用いられている手法により調製されたものと比較して、酸化グラフェン中の硫黄原子の含有量を大幅に少なくすることができる。
本発明の実施例として作製された、(a)メタノール、(b)エタノール、(c)アセトン、(d)THFを溶媒とする酸化グラフェン分散液の1か月経過時の分散液上部の紫外可視近赤外分光光度計による測定結果。比較のために完全分散液(水分散液)の結果もグラフ内に示している。 比較例として作製された、(a)メタノール、(b)エタノール、(c)アセトン、(d)THFを溶媒とする酸化グラフェン分散液の1か月経過時の分散液上部の紫外可視近赤外分光光度計による測定結果。比較のために完全分散液(水分散液)の結果もグラフ内に示している。 本発明の実施例として作製された、酢酸エチル、トルエンを溶媒とする酸化グラフェン分散液の作製直後及び1か月経過時の写真。 本発明の実施例として作製された、(a)酢酸エチル、(b)トルエンを溶媒とする酸化グラフェン分散液の1か月経過時の分散液上部の紫外可視近赤外分光光度計による測定結果。比較のために完全分散液(水分散液)の結果もグラフ内に示している。 比較例として作製された、酢酸エチル、トルエンを溶媒とする酸化グラフェン分散液の作製直後及び1か月経過時の写真。 比較例として作製された、(a)酢酸エチル、(b)トルエンを溶媒とする酸化グラフェン分散液の1か月経過時の上澄み液の紫外可視近赤外分光光度計による測定結果。比較のために完全分散液(水分散液)の結果もグラフ内に示している。 本発明の実施例として作製された、(a)水、(b)メタノール、(c)エタノール、(d)アセトン、(e)THFを溶媒とする酸化グラフェン分散液中の酸化グラフェンの原子間力顕微鏡像。 比較例として作製された、(a)水、(b)メタノール、(c)エタノール、(d)アセトン、(e)THFを溶媒とする酸化グラフェン分散液中の酸化グラフェンの原子間力顕微鏡像。 本発明の実施例として作製された酸化グラフェン/ポリ塩化ビニル(PVC)複合体の(a)CCDカメラ像及び(b)断面走査型原子顕微鏡像。 比較例として作製された酸化グラフェン/PVC複合体の(a)CCDカメラ像及び(b)断面SEM像。
以下、本発明の酸化グラフェン分散液やその調製方法等について、実施形態と実施例に基づいて説明する。重複説明は適宜省略する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
本発明の酸化グラフェン分散液は、次の(1)〜(3)のような工程により調製することができる。
(1)水中の酸化グラファイトを単層剥離処理して、単層酸化グラフェンを含む酸化グラファイト水分散液を得る工程。
(2)前記酸化グラファイト水分散液を遠心処理して、沈殿物を除去、上澄みを回収し、単層酸化グラフェン水分散液を得る工程。
(3)単層酸化グラフェン水分散液を水又は有機溶媒で溶媒置換処理を行う溶媒置換工程。
用いる酸化グラファイトは、後述の実施例に記載されたような公知の手法により得られたもので良く、通常、酸素原子を10atm%程度以上含有するグラファイトの酸化物であり、酸素官能基としてエポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基の1種又は2種以上を有する。
酸化グラフェンは、酸化グラファイトを剥離することで得られる酸化グラファイトの1層に相当するもの(すなわち、「単層酸化グラフェン」)で、一度単層剥離されたものであれば、再集合体も含む。
酸化グラフェンは、一度水中で完全に単層剥離した酸化グラフェンとすることで、層間の水及び硫酸イオンを開放する。単層剥離の手段としては、限定するものではないが、酸化グラファイトを含む水に対する超音波印加処理、撹拌処理などを採用することができる。単層剥離の促進のため、凍結及び凍結後の融解処理、レーザーアブレーション処理などの公知の単層剥離のための処理手段を補助的に採用することもできる。
酸化グラファイトの単層剥離処理後の酸化グラファイト水分散液は、単層剥離した酸化グラフェン以外に未剥離の酸化グラファイトなどの不純物が残存しているので、遠心処理して該不純物を沈殿除去し、上澄みを採取して単層剥離した酸化グラフェンのみが分散した酸化グラフェン水分散液が得られる。
上記で得られた酸化グラフェン水分散液は、水又は各種の有機溶媒で溶媒置換処理することにより、種々の溶媒の安定な酸化グラフェン水分散液を得ることができる。
置換用溶媒は、限定されず、極性溶媒、非極性溶媒を含むすべての溶媒から選択される1種類の溶媒または2種類以上の混合溶媒を用いることができる。
溶媒置換処理は、分散液を遠心処理する工程、上澄み液除去後の沈殿物を置換用溶媒と混合して分散液とする工程を含む置換工程を1回又は2回以上、好ましくは3回以上行うことで実施することができる。水と置換用溶媒の相溶性が悪い場合には、水と置換用溶媒との双方に相溶性の良い別の置換用溶媒で予め溶媒置換しておくこともできる。
溶媒置換後の酸化グラフェン水分散液は、必要により、超音波印加などにより分散性を向上させることもできる。
本発明の酸化グラフェン分散液の調製方法は、分散用添加剤を全く使用せず、調製された酸化グラフェン分散液も分散用添加剤を含有しない。
分散用添加剤としては、分散剤、分散安定剤、表面処理剤などが挙げられる。
本発明では、水分散液についても水で溶媒置換処理を行うことにより、後述の実施例に見られるように、酸化グラフェン中の硫黄含有量が1atm%以下(好ましくは0.3atm%以下)に低減された酸化グラフェン水分散液が得られる。同様に有機溶媒で溶媒置換した酸化グラフェン分散液においても酸化グラフェン中の硫黄含有量が同程度に低減される。
本発明の酸化グラフェン分散液の調製方法では、上記(1)〜(3)の工程により、未剥離の酸化グラファイトなどの不純物を除去し、単層剥離した酸化グラフェンのみが分散するようにし、かつ、水以外の溶媒中で分散の妨げとなる層間の水を単層剥離処理の際の水中に完全に開放したことにより、得られた酸化グラフェン分散液は、後述の実施例に見られるように、分散用添加剤を含有することなく良好な分散安定性を有することができたと考えられる。
すなわち、本発明の調製方法により得られる酸化グラフェン分散液は、少なくとも1か月間分散安定性を保持している。
本発明の酸化グラフェン分散液における分散安定性の保持とは、極性溶媒を用いた場合は、330nmの可視光を完全分散状態(水分散液)と比較して50%以上吸収することであり、また、非極性溶媒を用いた場合は、分散液中の波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%未満である相(上澄み液)の体積が50%以下であることである。
本発明の酸化グラフェン分散液は、該分散液の溶媒に溶解可能なポリマー又はポリマー溶液と混合し、得られた混合物を乾燥することで、酸化グラフェンが均一に分散し、緻密な構造を有する酸化グラフェン/ポリマー複合体を得ることができる。酸化グラフェン分散液に混合されるポリマーは、ポリマーやポリマー組成物単独でもよいが、予め適宜の溶媒に溶解したポリマー溶液とすることもできる。また、乾燥と同時又は相前後して所定形状の複合体に成形することもできる。さらに、得られた複合体を成形用材料として最終的な形状の複合体に成形することもできる。
前記混合時や前記成形時には、前記溶解、混合の短時間化や酸化グラフェンのより高分散化のために超音波印加を行うこともできる。
前記成形用材料としての、又は、最終的な形状の複合体について、その中に分散された酸化グラフェンを熱、光、還元剤などを用いる公知の方法により還元して、還元型酸化グラフェンが均一に分散し、緻密な構造を有し、電気伝導性や高熱伝導性の優れた還元型酸化グラフェン/ポリマー複合体を得ることもできる。
なお、還元型酸化グラフェンとは、酸化グラフェン中の酸素官能基の少なくとも一部を除去されたものを意味する。
以下、本発明を実施例などに基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<<実施例:酸化グラフェン分散液の調製>>
<試料の作製:Hummers法により酸化グラファイトの作製>
氷水浴中で2gのグラファイト(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、和光特級、純度98.0%)と2gの硝酸ナトリウム(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、和光一級、純度98.0%)を濃硫酸に加え30分撹拌した。35±2℃の水浴(AS ONE Corporation、WBS-80M)に移し、10gの過マンガン酸カリウム(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、試薬特級、純度99.3%)を加え、40分撹拌した。氷水浴に移し、100 mlの純水を少しずつ加えた。80±5℃の水浴(AS ONE Corporation、WBS-80M)に移し、20分撹拌した。氷水浴に移し、200mlの純水を加えた後、過酸化水素(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、試薬特級、純度30.0-35.5%)を溶液の色が変わるまで約5ml加えた。得られた懸濁液を遠心機(Beckman Coulter, Inc.、Avanti J-26S XP)を用い、遠心することで上澄みと沈殿に分けた。上澄みを捨て、約7倍に希釈した希塩酸(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、試薬特級、純度35.0-37.0%)を加えよく振り混ぜた。再び遠心し、上澄みを捨て、希塩酸を加えよく振った。この遠心と希塩酸中での撹拌の操作を3回繰り返した。最終的に得られた沈殿に、純水を加えよく振り混ぜ、遠心し上澄みを捨てた。この遠心と純水中での撹拌の操作を3回繰り返した。最終的に得られた沈殿は、シャーレ上で50℃の乾燥機(AS ONE Corporation、ETTAS ON-300S)中で約3日間乾燥した。これにより、フィルム状の酸化グラファイトを得た。
<酸化グラファイトの単層剥離による溶媒置換用の単層酸化グラフェン水分散液の調製>
2gの酸化グラファイトに純水を2L加えた。これに超音波洗浄機(SND Co., Ltd.、US-10NS)を用い、2時間超音波を印加した。得られた懸濁液を遠心機(Beckman Coulter, Inc.、Avanti J-26S XP)を用いて遠心し、慎重に上澄みのみを回収することで、沈殿(未剥離の酸化グラファイトなどの不純物)を除去した。これにより、溶媒置換に用いられる単層酸化グラフェン水分散液を得た。
<各々の溶媒への溶媒置換>
50mlの酸化グラフェン水分散液を遠心機(Beckman Coulter, Inc.、Avanti J-26S XP)を用い遠心し、酸化グラフェンを沈殿させた。上澄み除去後、沈殿物の酸化グラフェンに置換用の溶媒を加えよく振り混ぜた。置換用の溶媒として極性プロトン性溶媒である純水、エタノール(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、和光一級、純度99.5%)及びメタノール(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、試薬特級、純度99.8%)、極性非プロトン性溶媒であるアセトン(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、試薬特級、純度99.5%)及びTHF(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、試薬特級、純度99.5%)、非極性溶媒である酢酸エチル(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、有機合成用、純度99.5%)及びトルエン(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、和光一級、純度99.0%)を用いた。非極性溶媒(酢酸エチル、トルエン)の分散液を作製する場合は、一度エタノール分散液を作製し、その分散液を各非極性溶媒で同様に置換した。遠心、上澄み除去、沈殿物への置換用溶媒添加と振り混ぜからなる一連の置換操作は3回繰り返し、完全に溶媒を置換した。これらの置換操作の繰り返し後、各分散液は最後に超音波洗浄機(SND Co., Ltd.、US-10NS)を用いて超音波を2時間印加した。これにより、各々の酸化グラフェン分散液50mlを得た。
<<比較例:一般的手法による酸化グラフェン分散液の作製>>
上記<試料の作製>において得られた酸化グラファイト50mgに50mlの各種溶媒(純水、メタノール、エタノール、アセトン、THF、酢酸エチル、トルエン)を加え、超音波洗浄機(SND Co., Ltd.、US-10NS)を用い、2時間超音波を印加し、純水以外の有機溶媒について、一般的手法により作製された比較例の酸化グラフェン分散液を得た。純水を用いた溶媒については、上記単層から成る酸化グラフェン水分散液の調製と同様に、得られた懸濁液を遠心機(Beckman Coulter, Inc.、Avanti J-26S XP)を用いて遠心し、慎重に上澄みのみを回収することで、沈殿物(未剥離の酸化グラファイトなどの不純物)を除去して、一般的手法により作製された比較例の酸化グラフェン水分散液を得た。なお、純水以外の有機溶媒の場合、分散液の遠心分離により全ての分散物が沈殿してしまうので、前記遠心等の処理を施していない。
<極性溶媒を分散溶媒とする酸化グラフェン分散液の分散性評価>
上記実施例、比較例で作製された極性溶媒を溶媒とする酸化グラフェン分散液を1か月静止後、紫外可視近赤外分光光度計(Shimadzu Corporation、SolidSpec-3700 DUV)により分散性を評価した。紫外可視近赤外分光測定は、目視で確認した分散液の上澄み液、または上澄み液が確認できない場合は分散液上部を採取し行った。図1に、実施例の1か月静止後の各分散液について、200〜800nmの範囲における波長と吸光度との関係を水分散液の完全分散状態のものと対比して示す。また、図2に、比較例(一般的手法)の1か月静止後の各分散液について、200〜800nmの範囲における波長と吸光度との関係を水分散液の完全分散状態のものと対比して示す。
比較例の一般的手法による酸化グラフェン分散液では、吸光度が極めて低い値に止まったのに対し、実施例の酸化グラフェン分散液では、高い吸光度を示した。
表1に、本発明の実施例と比較例(一般的手法)の各分散液における1か月静止後の波長330nmの可視光吸収を完全分散状態(水分散液)に対する割合として示す。一般的手法により作製した極性溶媒を溶媒とする酸化グラフェン分散液は、1か月経過後には波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%を大幅に下回っていたが、実施例の分散液は、すべての溶媒において、波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%以上を維持していることが確認された。特に、メタノール、エタノール、THFは90%を上回り、完全分散状態に近い状態を保持していた。
Figure 2020045266
<非極性溶媒を溶媒とする酸化グラフェン分散液の分散性評価>
作製された非極性溶媒を溶媒とする酸化グラフェン分散液について、分散性の時間経過による変化を目視観察するとともに、1か月静止後、目視による観察と紫外可視近赤外分光光度計(Shimadzu Corporation、SolidSpec-3700 DUV)による透過光の測定により分散性を評価した。紫外可視近赤外分光測定は、目視で確認した分散液の上澄み液、または上澄み液が確認できない場合は分散液上部を採取し行った。図3と図5は、それぞれ実施例と比較例の分散液作製直後及び1か月静止後の分散液の光学写真を示している。また、図4と図6は、それぞれ実施例と比較例の紫外可視近赤外分光光度計による測定結果を示している。
紫外可視近赤外分光測定分散性の時間経過による変化の目視観察では、非極性溶媒を溶媒とする酸化グラフェン分散液は、上述の極性溶媒の場合よりも一般的に分散性が低いことが観察された一方で、非極性溶媒の実施例は、上澄み液部の体積の増加速度が大幅に低い点で非極性溶媒の比較例よりも分散性が良好であることも観察された。
1か月経過時の紫外可視近赤外分光測定では、実施例の酢酸エチル分散液上部は波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%以上であることが示された(図4)。一方で、実施例のトルエンや比較例では、上澄み液が形成され、上澄み液部は、波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%未満であった(図4、図6)。それ故、非極性溶媒の酸化グラフェン分散液については、その分散性評価について、極性溶媒と異なる指標が必要であることが明らかとなった。
1か月経過時の目視観察では、比較例の一般的な手法により作製した非極性溶媒を溶媒とする酸化グラフェン分散液は、1か月経過時には分散液中の波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%未満である相(上澄み液)の体積が、全体の50%以上であったのに対し(図5)、実施例では、1か月経過時も分散液中の波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%未満である相(上澄み液)の体積が、全体の50%以下であることが目視観察により確認された(図3)。したがって、非極性溶媒の酸化グラフェン分散液の分散性評価については、1か月経過時の分散液中の波長330nmの可視光吸収が完全分散状態(水分散液)の50%未満である相(上澄み液)の体積がその指標として有効であることが確認された。
<原子間力顕微鏡による酸化グラフェンの分散性評価>
実施例と比較例の各溶媒(水、メタノール、エタノール、アセトン、THF)の分散液中の酸化グラフェンを原子間力顕微鏡で観察した。測定サンプルは、分散液をマイカ基板上に滴下し、乾燥させることで作製した。実施例、比較例それぞれの酸化グラフェンの顕微鏡像をそれぞれ図7、図8に示す。水分散液では、実施例、比較例とも、厚さ1nm前後のシート状物質が確認された。厚さ1nmは酸化グラフェン1層の厚みに相当することから、すべて単層で分散していること(完全分散状態)が示された。しかしながら、メタノール、エタノール、アセトン、THF分散液では、実施例、比較例で大きな差異が見られた。すなわち、比較例のメタノール、エタノール、アセトン、THF分散液では、単層の酸化グラフェンは確認されず、3μm以上(原子間力顕微鏡の測定限界以上)の厚みを持つものも多数観察されたのに対し、実施例のメタノール、エタノール分散液では単層で分散していること(完全分散状態)が確認された。また、実施例のアセトン、THF分散液では、数十nm程度の厚みを持つ酸化グラフェンも確認されたが、比較例でみられたような3μm以上の厚さを持つようなものは観察されなかった。これは、実施例でみられる数十nm程度の厚みを持つ酸化グラフェンは、一度単層剥離された単層グラフェンが単層〜数十層に再集合したものであり、剥離前の酸化グラファイトが存在しないからである。
<X線光電子分光測定による含有元素測定>
実施例と比較例の各溶媒(水、メタノール、アセトン、酢酸エチル)の分散液中の酸化グラフェンについて、その元素組成をX線光電子分光装置(Thermo Fisher Scientific、SigmaProbe)で測定した。その結果を表2〜7に示す。水分散液の結果は7つの異なったサンプルの平均値であるが、それ以外の結果は1つのサンプルの値である。酸化グラフェン中の硫黄含有量は、比較例では1.1〜2.8atm%であるのに対し、実施例では0.2〜0.3atm%と大幅に低減できたことが確認された。
Figure 2020045266
Figure 2020045266
Figure 2020045266
Figure 2020045266
<<実施例、比較例:酸化グラフェン/ポリ塩化ビニル複合体の作製>>
実施例の酸化グラフェンTHF分散液50ml(酸化グラフェン50mg相当)を遠心分離機(Beckman Coulter, Inc.、Avanti J-26S XP)を用い遠心し、酸化グラフェンを沈殿させた。これをTHFでメスアップし全量を約40mlとした。これに超音波洗浄機(SND Co., Ltd.、US-10NS)を用いて超音波を印加しながら1gのポリ塩化ビニル(PVC)(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、(C2H3Cl)n n:about 1100)を加え完全に溶かした。超音波洗浄機(SND Co., Ltd.、US-10NS)を用いて超音波を印加しながら直径11.5cmの結晶皿に、得られた酸化グラフェン/PVC混合液を少しずつ滴下及び乾燥を繰り返すことで、実施例のシート状酸化グラフェン/PVC複合体を得た。
また、比較例(一般的手法)で作製した酸化グラフェンTHF分散液を用いる以外は上記実施例と同様にして比較例のシート状酸化グラフェン/PVC複合体を作製した。
<酸化グラフェン/PVC複合体中の酸化グラフェン分散度の評価>
実施例と比較例の酸化グラフェン/PVC複合体について、CCDカメラ(Shimadzu Corporation、SFT-3500)による表面観察及び走査型電子顕微鏡(Hitachi High-Tech、SU-8000)による断面観察により酸化グラフェンの分散度を調べた。実施例のCCDカメラ像及び断面SEM像を図5に、比較例のCCDカメラ像及び断面SEM像を図6にそれぞれ示す。両複合体において酸化グラフェンがPVCマトリックス中に均一に分散していることが示されたが、実施例では比較例と比べPVCマトリックス中の酸化グラフェンが緻密に分散していることが確認された。
<<実施例、比較例:光還元による還元型酸化グラフェン/PVC複合体の作製>>
実施例と比較例の酸化グラフェン/PVC複合体に高圧水銀ランプ(USHIO Inc.、SX-U1501HQ)を4時間照射することで、実施例と比較例の還元型酸化グラフェン/PVC複合体を得た。光照射は両面行った。
<還元型酸化グラフェン/PVC複合体の電気特性評価(酸化グラフェン等の分散性評価)>
実施例と比較例の還元型酸化グラフェン/PVC複合体について、還元前と還元後でファンクションジェネレータ(IVIUM TECHNOLOGIES、CompactStat)による1Vの電圧印加時の電流値を測定した。その結果を表6に示す。なお、測定は4端子測定法で行い、電極幅は1cmである。比較例では、還元前後とも電流値が測定限界以下(5nA以下)であったのに対し、実施例では、還元後は40nAの電流が確認された。これは、実施例、比較例の複合体中の酸化グラフェンは、光還元により還元され、電子が流れる還元型酸化グラフェンとなったが、実施例では比較例より還元型酸化グラフェンがPVCマトリックス中に均一、緻密に(すなわち、凝集せずに)分散し、電子移動のネットワークが広く接続されたことに起因する。また、これは、酸化グラフェン/PVC複合体における酸化グラフェンのPVCマトリックス中の均一、緻密な分散、及び、酸化グラフェン分散液における酸化グラフェンの溶媒中の均一、緻密な分散を示しており、本発明の進歩性を明確に示した実用的結果だと言える。
Figure 2020045266
本発明によれば、各種の極性溶媒や非極性溶媒を分散溶媒とした分散安定性の優れた酸化グラフェン分散液を得ることができる。また、本明細書の実施例などではポリマーに電気伝導性を付加するフィラーとしての可能性を調査し、各分散溶媒と親和性のあるポリマーやポリマー組成物中に均一に分散、混合した複合体を得ることで、従来のものより高い電気伝導性を有する複合体の作製が可能であることを述べたが、産業上の利用可能性についてはこれに限定されるものではない。考えうる応用範囲において、使用できる溶媒が限定されることは多くの場面で見受けられ、本発明はそのニーズに答えるものである。それ故、酸化グラフェンの高イオン電導性、半導体特性、吸着性など、又は、酸化グラフェン還元体の電気伝導性、高熱伝導性などの優れた機能を発揮する材料、部品、製品などとして、電池、触媒、センサー、分離膜、吸着剤、潤滑剤、接着剤、放熱材、透明電極などの幅広い分野で利用され得る。

Claims (11)

  1. 極性溶媒を溶媒とし、分散用添加剤を含有せず、少なくとも1か月間、波長330nmの可視光吸収が完全分散状態の50%以上である酸化グラフェン分散液。
  2. 前記極性溶媒は、溶媒極性指標が5.5未満のものである請求項1に記載の酸化グラフェン分散液。
  3. 前記極性溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトン、及び、テトラヒドロフラン(THF)からなる群より選択される1種又は2種以上を含むものである請求項1又は2に記載の酸化グラフェン分散液。
  4. 非極性溶媒を溶媒とし、分散用添加剤を含有せず、少なくとも1か月間、波長330 nmの可視光吸収が完全分散状態の50%未満である相の体積が50%以下である酸化グラフェン分散液。
  5. 分散液中の酸化グラフェンの硫黄含有量が1.0atm%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液。
  6. 次の(1)〜(3)の工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法。
    (1)水中の酸化グラファイトを単層剥離処理して、単層酸化グラフェンを含む酸化グラファイト水分散液を得る工程。
    (2)前記酸化グラファイト水分散液を遠心処理して、沈殿物を除去、上澄みを回収し、単層酸化グラフェン水分散液を得る工程。
    (3) 単層酸化グラフェン水分散液を水又は有機溶媒で溶媒置換処理を行う溶媒置換工程。
  7. 前記酸化グラファイト単層剥離処理が、酸化グラファイトを含む水に対する超音波印加処理又は撹拌処理である請求項6に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法。
  8. 前記溶媒置換処理は、分散液を遠心処理する工程、上澄み液除去後の沈殿物を置換用溶媒と混合する工程を含む置換工程を1回又は2回以上行うものである請求項6又は7に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液の調製方法において、さらに、調製された所定の有機溶媒の分散液を別の有機溶媒で溶媒置換する工程を1回又は2回以上含む酸化グラフェン分散液の調製方法。
  10. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化グラフェン分散液と、該分散液の溶媒に溶解可能なポリマー又はポリマー溶液とを混合し、乾燥することを含む酸化グラフェン/ポリマー複合体の製造方法。
  11. 請求項10に記載された製造方法により得られた酸化グラフェン/ポリマー複合体の酸化グラフェンを還元することを含む還元型酸化グラフェン/ポリマー複合体の製造方法。
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