JP2020041952A - 測位装置、測位方法およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】電波源が移動体に搭載されている場合であっても、高精度の測位を可能とする。【解決手段】電波源からの電波が第1および第2の衛星2,3を経由して受信アンテナ4,5で受信して得られた受信信号は、信号処理部13で処理されて、測位データが出力される。信号処理部13は、相関処理器16,19、測位処理器17を有し、相関処理器16,19は相関処理を行って到達時間差(TDOA)と周波数差(FDOA)を算出する。相関処理器19は、移動体の動揺、移動等により発生するドップラーシフトによるFDOAの変動成分を計測できる高い周波数分解能が設定されている。相関処理器16は、相関処理器19よりも低い周波数分解能を有する。測位処理器17は、相関処理器16で算出されたTDOAと相関処理器19で算出されたFDOAに基づいて電波源の位置を決定する。【選択図】図2
Description
本発明は、測位装置、測位方法およびプログラムに関するものである。
従来、衛星を用いて電波源の位置を決定する測位装置として、特許文献1に記載された装置がある。
この装置は、電波源から送信され2つの衛星で中継された2つの信号を受信局で受信して、到達時間差(TDOA:Time Difference of Arrival)および周波数差(FDOA:Frequency Difference of Arrival)から電波源の位置を決定するものである。
この装置は、電波源から送信され2つの衛星で中継された2つの信号を受信局で受信して、到達時間差(TDOA:Time Difference of Arrival)および周波数差(FDOA:Frequency Difference of Arrival)から電波源の位置を決定するものである。
特許文献1に記載された測位装置は、衛星の移動によって生じる受信電波のドップラーシフトから電波源の位置を決定する。しかしながら、電波源が移動体に搭載されている場合、移動体が動くことによってもドップラーシフトが生じる。移動体には、船舶、自動車、列車等が挙げられる。例えば船舶の場合、船舶の移動と波による動揺によってもドップラーシフトが生じる。したがって、FDOAに移動体が動くことによって生じるドップラーシフトが加わることとなる。そうすると、衛星によるドップラーシフトに移動体が動くことによって生じるドップラーシフトが加わり、FDOAの精度が低下し、結果として測位精度が低下するという課題があった。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、電波源が移動体に搭載されている場合であっても、高精度の測位を可能とすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の測位装置は、電波源からの電波が第1の衛星で中継されて受信された第1の受信信号および電波が第2の衛星で中継されて受信された第2の受信信号について相関処理を行って、第1の受信信号と第2の受信信号との間の到達時間差および周波数差を求めて電波源の位置を決定する測位装置である。この測位装置は、電波源が動くことによって生じる周波数差の変動成分を計測可能な周波数分解能で相関処理を行う第1の相関処理手段と、第1の相関処理手段の周波数分解能よりも低く、衛星の移動により発生する周波数差を計測可能な周波数分解能を有し、相関処理を行う第2の相関処理手段と、第2の相関処理手段で求められた到達時間差および第1の相関処理手段で求められた周波数差に基づいて電波源の位置を決定する測位処理手段と、を備える。
本発明によれば、電波源が移動体に搭載されている場合であっても、周波数差の精度が向上し、高精度の測位が可能となる。
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付す。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る測位装置が適用される測位システムの全体構成を示す。
船舶などの移動体に設置された電波源1から送信された電波は、第1の衛星2および第2の衛星3で中継されてそれぞれ地上の受信局の受信アンテナ4,5を通じて受信される。2つの受信信号はそれぞれ異なる信号経路に沿って地上の受信局に中継されるため、到達時間に差(以下、TDOA)が生じる。
図1は、この発明の実施の形態1に係る測位装置が適用される測位システムの全体構成を示す。
船舶などの移動体に設置された電波源1から送信された電波は、第1の衛星2および第2の衛星3で中継されてそれぞれ地上の受信局の受信アンテナ4,5を通じて受信される。2つの受信信号はそれぞれ異なる信号経路に沿って地上の受信局に中継されるため、到達時間に差(以下、TDOA)が生じる。
2つの衛星の位置と受信局の位置は既知であることから、2つの異なる信号経路を経た信号のTDOAは、電波源1の位置情報を提供する。電波受信時点での衛星の位置から決まるTDOAが一定となる点の軌跡は地球表面に曲線を描き、電波源1はこの曲線上に存在する。一方、中継する衛星2,3は地球に対して移動しているため、受信アンテナ4,5を通じて受信される信号はドップラー効果により周波数がずれる。2つの衛星の移動ベクトルは異なることから、2つの衛星で中継されたそれぞれの信号のドップラー周波数に差(以下、FDOA)が生じる。TDOAの場合と同様に、電波受信時点での衛星の位置および速度から決まるFDOAが一定となる点の軌跡は地球表面に曲線を描き、電波源1はこの曲線上に存在する。TDOA曲線とFDOA曲線は一般に異なることから、両曲線の交点から電波源1の位置を決定できる。測位装置6は、受信信号からTDOAとFDOAを算出して電波源1の位置を決定している。
測位装置6は、図2に示すように、受信アンテナ4および受信アンテナ5を通じて受信された第1と第2の受信信号をそれぞれ周波数変換するダウンコンバータ11,12と、周波数変換された受信信号を信号処理して測位結果を出力する信号処理部13と、測位結果を表示する表示器18と、を備えている。また、信号処理部13は、周波数変換された受信信号をアナログからデジタルに変換するA/D変換処理器14,15、TDOAとFDOAを算出する相関処理器16,19、TDOAとFDOAから測位結果を出力する測位処理器17を備えている。
受信アンテナ4,5を通じて受信された信号は、アナログ信号である電波周波数信号(以下、RF信号)であり、ダウンコンバータ11,12にそれぞれ送られる。ダウンコンバータ11,12はRF信号を中間周波数信号(以下、IF信号)に周波数変換して信号処理部13に送る。信号処理部13は、以下に詳細に示すように、周波数変換された信号から相関処理と測位処理を行って、測位データを送出する。
信号処理部13のA/D変換処理器14,15は周波数変換された信号をデジタル信号に変換して相関処理器16,19に送る。A/D変換処理器14が出力する信号が、衛星2(第1の衛星)で中継されて受信アンテナ4で受信された第1の受信信号である。A/D変換処理器15が出力する信号が、衛星3(第2の衛星)で中継されて受信アンテナ5で受信された第2の受信信号である。相関処理器16は、A/D変換処理器14,15から供給された第1の受信信号と第2の受信信号をメモリに記憶し、記憶した第1の受信信号と第2の受信信号に対して相関処理を行う。
具体的には、相関処理器16は、受信アンテナ4で受信された第1の受信信号S1(t)と受信アンテナ5で受信された第2の受信信号S2(t)に対して、時間差τと周波数差fを設定して次式で表される相互相関値C(τ,f)を計算する。ここで、S2*(t)はS2(t)の複素共役を示す。
この式は、第1の受信信号S1(t)と第2の受信信号S2(t)の時間をτ、周波数をfだけずらし乗算したものを0からTまで積分することを表す。Tは測定時間を示す。τおよびfを相関処理器によって定められた刻み幅で変化させながら計算し、相互相関値C(τ,f)がピーク値をとるτおよびfを求める。この相互相関値が最大となるτがTDOAであり、fがFDOAである。相関処理器16は、fを粗い刻み幅で変化させる。
相関処理器19は、相関処理器16と同様な構成を有し、同様に動作する。相関処理器16と異なる点は、fを相関処理器16よりも細かい刻み幅で変化させる点である。
ここで、電波源1が移動体に設置されている場合、FDOAに移動体が動くことによって生じるドップラーシフトが加わることとなり、衛星2,3によるドップラーシフトに移動体が動くことによって生じるドップラーシフトが加算され、FDOAの精度が低下する。そこで、移動体が動くことによって生じるドップラーシフトを補正できるように、相関処理器19の周波数fの分解能を電波源1が設置された移動体が動くことによって生じるドップラーシフトによるFDOAの変動成分を計測できる程度まで高くしている。相関処理器16の周波数fの分解能は、衛星の移動により発生する周波数差を計測可能な程度である。
衛星の移動により発生するドップラー周波数は、数十Hz以上となる。これに対して電波源1が設置された移動体が、例えば船舶である場合、船舶の移動と揺動により発生するドップラー周波数の変動周波数は、100mHz程度である。FDOAは、数km〜数100kmの測位精度を得るために、概ね数mHz〜数100mHzの精度が必要である。移動体が移動することにより、移動体の位置に100km程度の誤差が発生しうる。移動体が移動する場合でも移動体の位置誤差を数10km程度以下で求められるように、相関処理器19は、10mHz程度の周波数分解能を設定する。相関処理器16は、50mHz程度の周波数分解能を設定する。相関処理器19の周波数分解能は、電波源1が設置された移動体が動くことによって生じるドップラーシフトによるFDOAの変動成分を計測できる程度の周波数分解能である。これによって、電波源1が移動体に設置されている場合であっても、移動体が動くことによって生じるドップラーシフトの影響も含めて、FDOAを正確に計測することができる。
測位処理器17は、相関処理器16で算出されたTDOAからTDOA曲線をマッピングし、相関処理器19で算出されたFDOAからFDOA曲線をマッピングし、TDOA曲線とFDOA曲線の交点から、電波源1の位置を決定する。
表示器18は、測位処理器17が出力した電波源1の測位処理結果を表示する。
表示器18は、測位処理器17が出力した電波源1の測位処理結果を表示する。
図2に示した、相関処理器16,19と測位処理器17は、具体的には、図3に示すように、制御部111と記憶部112とを備えるコンピュータから構成される。制御部111はプロセッサを備え、記憶部112に記憶された動作プログラムを実行することにより、上述の第1の受信信号と第2の受信信号に相関演算を実行し、電波源1の位置を測定する。記憶部112は、制御部111のワークエリアとして機能すると共に制御部111の動作プログラムを記憶する。
相関処理器16,19の相関処理と測位処理器17の測位処理の流れを図4に示す。
A/D変換処理器14,15から供給された第1の受信信号と第2の受信信号に対して、相関処理器19においてTDOAおよびFDOAを算出するための第1の相関処理を行う(ステップS101)。
そして相関処理器16においてTDOAおよびFDOAを算出するための第2の相関処理を行う(ステップS102)。
A/D変換処理器14,15から供給された第1の受信信号と第2の受信信号に対して、相関処理器19においてTDOAおよびFDOAを算出するための第1の相関処理を行う(ステップS101)。
そして相関処理器16においてTDOAおよびFDOAを算出するための第2の相関処理を行う(ステップS102)。
相関処理器16は、衛星の移動により発生するドップラーシフトによるFDOAを計測可能な周波数分解能を有しており、電波源1が設置された移動体が動くことによって生じるドップラーシフトによるFDOAの変動成分を計測できる程度の周波数分解能は有していない。したがって、電波源1が移動体に設置されている場合には、相関処理器16により算出されたFDOAは、電波源1が動くことによって生じるドップラーシフトによるFDOAの変動成分を含んでいる。ただし、TDOAに関しては移動体の動揺、移動等により発生するドップラーシフトによる影響は受けないので、TDOAは電波源1が静止している場合と変わらない。
これに対し、相関処理器19は、相関処理器16の周波数分解能よりも高い周波数分解能であって、電波源1が設置された移動体が動くことによって生じるドップラーシフトによるFDOAの変動成分を計測できる周波数分解能を有している。相関処理器19は、電波源1が船舶のような移動体に設置されている場合であっても、電波源1が設置された移動体が動くことによって生じるドップラーシフトの影響を受けない計測精度が高いFDOAを算出する。
相関処理器16は算出されたTDOAを測位処理器17に送り、相関処理器19は算出されたFDOAを測位処理器17に送る。これによって測位処理器17は、第1の相関処理で算出されたFDOAと第2の相関処理で算出されたTDOAを取得する(ステップS103)。
測位処理器17は、相関処理器16から取得されたTDOAからTDOA曲線をマッピングし(ステップS104)、相関処理器19から取得されたFDOAからFDOA曲線をマッピングする(ステップS105)。マッピングの様子を図5に例示する。TDOAからTDOA曲線を生成する際に、2つの衛星の位置を利用する。FDOAからFDOA曲線を生成する際に、2つの衛星の位置および速度を利用する。衛星の位置と速度は、衛星事業者等から得る衛星の軌道情報から計算する。TDOA曲線とFDOA曲線の交点から、電波源1の位置を決定する(ステップS106)。測位処理器17は、相関処理器16で求められた到達時間差および相関処理器19で求められた周波数差に基づいて電波源1の位置を決定する測位処理手段である。
測位処理器17は電波源位置決定データを表示器18に送る。表示器18は、測位処理器17が出力した電波源1の測位結果を表示する(ステップS107)。これによって、電波源1が動くことによって生じるドップラーシフトの影響を受けずに、FDOAを正確に計測することができ、正確な測位結果を得ることができる。
実施の形態1では、2つの周波数分解能を有する相関処理器を設け、低い周波数分解能を有する相関処理器から算出されたTDOAと高い周波数分解能を有する相関処理器から算出されたFDOAを用いて測位を行っている。低い周波数分解能の相関処理に比して高い周波数分解能の相関処理の方が、演算量が多く演算時間がかかることから演算処理負担を軽減する。
演算時間を考慮して相関処理器16,19の処理を選択することも可能である。例えば、測位装置6に、相関処理器16のみを選択あるいは相関処理器16および19を選択するスイッチが設けられている。電波源1が静止している場合および波が穏やかであるような場合には、操作者が低分解能の相関処理器16のみを選択するためにスイッチを切り替える。この場合、測位処理器17には低分解能の相関処理器16から算出されたTDOAとFDOAが入力される。電波源1は波による動揺をほとんど受けないので、FDOAの精度は十分であり、演算処理に負荷をかけることなく位置を決定できる。また、位置精度をそれほど高く求めない場合も、操作者は低分解能の相関処理器16のみを選択するためにスイッチを切り替えることにより、より早く測位結果を得ることができる。逆に、波が荒いような場合および位置精度のより高い測位結果を得たい場合は、操作者は両方の相関処理器16,19を選択するためにスイッチを切り替える。この場合は上述した低い周波数分解能の相関処理器16から算出されたTDOAと高い周波数分解能の相関処理器19から算出されたFDOAが選択されて測位処理器17に入力される。したがって、電波源1の移動等によるドップラーシフトの影響を考慮した高い精度で位置を決定できる。
(実施の形態2)
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。図6は、実施の形態2に係る測位装置のブロック図である。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、周波数分解能が高い相関処理器19の出力段にFDOA変動周波数算出器20を追加した点、周波数分解能が低い相関処理器16と測位処理器17の間にFDOA補正処理器21を追加し、FDOA変動周波数算出器20の出力がFDOA補正処理器21に入力される点である。FDOA補正処理器21には、相関処理器16で求められたFDOAとFDOA変動周波数算出器20が算出する周波数差の変動の中心周波数が入力される。FDOA補正処理器21は、相関処理器16で求められたFDOAをFDOA変動周波数算出器20の出力だけ変化させて補正する。測位処理器17は、相関処理器16で求められたTDOAとFDOA変動周波数算出器20で補正されたFDOAに基づいて電波源1の位置を決定する。測位処理器17は、相関処理器19で求められたTDOAを使用してもよい。
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。図6は、実施の形態2に係る測位装置のブロック図である。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、周波数分解能が高い相関処理器19の出力段にFDOA変動周波数算出器20を追加した点、周波数分解能が低い相関処理器16と測位処理器17の間にFDOA補正処理器21を追加し、FDOA変動周波数算出器20の出力がFDOA補正処理器21に入力される点である。FDOA補正処理器21には、相関処理器16で求められたFDOAとFDOA変動周波数算出器20が算出する周波数差の変動の中心周波数が入力される。FDOA補正処理器21は、相関処理器16で求められたFDOAをFDOA変動周波数算出器20の出力だけ変化させて補正する。測位処理器17は、相関処理器16で求められたTDOAとFDOA変動周波数算出器20で補正されたFDOAに基づいて電波源1の位置を決定する。測位処理器17は、相関処理器19で求められたTDOAを使用してもよい。
FDOA変動周波数算出器20は、相関処理器19で求められた複数の時点での周波数差を周波数領域に変換して、周波数差の変動の中心周波数を求める変動周波数算出手段である。FDOA補正処理器21は、相関処理器16で求められた周波数差を、FDOA変動周波数算出器20で求められた中心周波数分変化させる周波数差補正手段である。
相関処理から測位処理までの流れを図7に示す。
A/D変換処理器14,15から供給された第1の受信信号と第2の受信信号に対して、相関処理器19において第1の相関処理を行い、FDOAの変動データを生成する(ステップS201)。
移動体が、例えば船舶である場合、波の動揺によるドップラー周波数を算出するためには、数周期のFDOAの変動データが必要である。そこで、相関処理器19は、波の周期の数周期分の時間(例えば、1周期10秒で6周期分とすると、1分間程度)にわたって、複数回の相関処理を行ってFDOAの変動データを生成する。FDOAの変動データとは、異なる時点で計測された複数のFDOAである。
A/D変換処理器14,15から供給された第1の受信信号と第2の受信信号に対して、相関処理器19において第1の相関処理を行い、FDOAの変動データを生成する(ステップS201)。
移動体が、例えば船舶である場合、波の動揺によるドップラー周波数を算出するためには、数周期のFDOAの変動データが必要である。そこで、相関処理器19は、波の周期の数周期分の時間(例えば、1周期10秒で6周期分とすると、1分間程度)にわたって、複数回の相関処理を行ってFDOAの変動データを生成する。FDOAの変動データとは、異なる時点で計測された複数のFDOAである。
FDOAの変動データ104は、図8(a)に示すように、(1)衛星の移動の差異に起因するドップラー成分101、(2)電波源1が設置された移動体の動揺によるドップラー成分102、(3)電波源1が設置された移動体の移動によって発生するドップラー成分103を含んでいる。ここで、移動体の移動によって発生するドップラー成分については、移動体が停止または等速直線運動をしている場合は無視することができる。
また、相関処理器16においてTDOAおよびFDOAを算出するための第2の相関処理を行う(ステップS202)。
相関処理器19は、生成されたFDOAの変動データをFDOA変動周波数算出器20に送る。これによってFDOA変動周波数算出器20は、第1の相関処理で算出されたFDOAの変動データを取得する(ステップS203)。FDOA変動周波数算出器20は、このFDOAの変動データをFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理し、周波数領域に変換して、周波数スペクトラムの中心周波数を算出する(ステップS204)。中心周波数とは、周波数スペクトラムにおいて強度が最大になる周波数である。この中心周波数は、図8(b)に示すように、電波源1が設置された移動体が動くことによって生じるドップラー周波数の中心周波数に相当する。FDOA変動周波数算出器20は、算出されたドップラー周波数の中心周波数をFDOA補正処理器21に送る。
この実施の形態2では、FDOAの変動成分を定常成分と中心周波数で略正弦波状に変化する変動成分の組合せであるという簡便なモデルを用いている。FDOA変動周波数算出器20は、略正弦波状に変化する変動成分の中心周波数を算出する。
また、相関処理器16は、算出されたFDOAをFDOA補正処理器21に送る。相関処理器16で算出されたFDOAは、(1)衛星の移動の差異に起因するドップラー成分、(2)移動体の動揺によるドップラー成分、(3)移動体の移動によって発生するドップラー成分の3つの成分を含んでいる。したがって、相関処理器16で算出されたFDOAは、移動体の動揺、移動等により発生するドップラー周波数分だけ周波数がずれる。このずれ分は、FDOA変動周波数算出器20で算出した中心周波数に相当する。
FDOA補正処理器21は、相関処理器16で算出したFDOAを、FDOA変動周波数算出器20で出力した中心周波数分変化させ、電波源1が設置された移動体の動揺、移動等により発生するドップラーシフトによるFDOAの変化を補正する(ステップS205)。FDOA補正処理器21は、補正されたFDOAを測位処理器17に送る。測位処理器17は、相関処理器16で算出されたTDOAと補正されたFDOAをマッピングし、電波源1の位置決定データを生成する(ステップS206)。表示器18は、測位処理器17で生成された位置決定データに基づき電波源1の測位結果を表示する(ステップS207)。
FDOAを補正しない場合と補正した場合の電波源1の位置を決定した状態を図9に示す。地図上において横方向の曲線が相関処理器16で算出されたTDOAの点の軌跡であるTDOA曲線である。そして、縦方向の曲線のうち左側の曲線が相関処理器16で算出された補正される前のFDOAの点の軌跡であるFDOA曲線である。これに対して、矢印方向である右側にずれた縦方向の曲線がFDOA補正処理器21で補正されたFDOAの点の軌跡であるFDOA曲線である。地図上のTDOA曲線とFDOA曲線の交点が電波源1の位置を示す。FDOAの補正がなされたことにより、電波源1が船舶のような移動体に設置されている場合であっても、電波源1の正しい位置が決定されることになる。
この実施の形態では、相関処理器16で算出されたFDOAをFDOA変動周波数算出器20で算出された中心周波数分、FDOA補正処理器21で変化させ、移動体の動揺、移動等により発生するドップラーシフトによるFDOAの変化を補正する。これにより、FDOAの精度が向上する。その結果、測位精度が向上する。
(実施の形態3)
次に、この発明の第3の実施形態について説明する。図10は、実施の形態3に係る測位装置のブロック図である。実施の形態3が実施の形態2と異なる点は、移動体類別データベース22と移動体類別処理器23を追加した点である。移動体類別データベース22は、電波源が設置された移動体の属性とその移動体が動くことによって生じるドップラー周波数との関係を示すデータベースである。移動体類別処理器23は、変動周波数算出手段が求めた中心周波数に基づき、移動体類別データベース22から、移動体の属性を求める類別手段である。
次に、この発明の第3の実施形態について説明する。図10は、実施の形態3に係る測位装置のブロック図である。実施の形態3が実施の形態2と異なる点は、移動体類別データベース22と移動体類別処理器23を追加した点である。移動体類別データベース22は、電波源が設置された移動体の属性とその移動体が動くことによって生じるドップラー周波数との関係を示すデータベースである。移動体類別処理器23は、変動周波数算出手段が求めた中心周波数に基づき、移動体類別データベース22から、移動体の属性を求める類別手段である。
FDOA変動周波数算出器20で算出されたドップラー周波数の中心周波数は移動体類別処理器23に入力され、移動体類別処理器23は入力されたデータに基づき移動体類別データベース22にアクセスする。
ここで移動体類別データベース22は、移動体の動揺、移動等により発生するドップラー周波数と移動体の種類・大きさ等の属性の関係を示すデータベースである。例えば船舶のような移動体は、その船の種類、大きさ等の属性によって航行可能速度、操舵性能、波に対する揺れの特性等が異なり、移動体の動揺、移動等により発生するドップラー周波数と相関関係を有する。例えば、図11に示すように、船の大きさに対してドップラー周波数は関連性を有している。この移動体類別データベース22は、種類・大きさが既知の複数の移動体を用いてドッラー周波数を事前に実測、または数値計算により算出し、データベース化されている。
移動体類別データベース22にアクセスした移動体類別処理器23は、ドップラー周波数の中心周波数から対応する移動体の大きさ、種類等の属性を類別する。類別結果は、移動体類別処理器23から表示器18に送出される。表示器18は、測位処理器17から出力された電波源1の測位結果とともに、移動体類別処理器23から出力された移動体類別結果を表示する。
この実施の形態では、FDOA変動周波数算出器20から出力されたドップラー周波数の中心周波数と、移動体類別データベース22を用いることで、電波源1が設置された移動体の大きさ、種類等の属性を判別できる。
本実施の形態は、移動体として船舶を中心に説明したが、これに限らず自動車、列車等にも適用可能である。
衛星2,3で中継された第1と第2の信号を第1の受信アンテナ4と第2の受信アンテナ5とで受信する例を示したが、受信アンテナの数と種類は任意である。例えば、第1の信号と第2の信号を共通のアンテナで受信し、受信後の両信号を分離してもよい。
また、例示した各ブロック図は、例示であり、同一の機能を実現できるならば、回路構成自体は任意である。
衛星2,3で中継された第1と第2の信号を第1の受信アンテナ4と第2の受信アンテナ5とで受信する例を示したが、受信アンテナの数と種類は任意である。例えば、第1の信号と第2の信号を共通のアンテナで受信し、受信後の両信号を分離してもよい。
また、例示した各ブロック図は、例示であり、同一の機能を実現できるならば、回路構成自体は任意である。
回路の全部又は一部を専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのプログラムを、コンピュータが読み取り可能なCD−ROM、DVD−ROMなどの記録媒体に格納して配布し、前記プログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の各機能を実現することができるコンピュータを構成してもよい。そして、各機能をOS(Operating System)とアプリケーションとの分担、またはOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを記録媒体に格納してもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
1 電波源、2,3 衛星、4,5 受信アンテナ、6 測位装置、11,12 ダウンコンバータ、13 信号処理部、14,15 A/D変換処理器、16 相関処理器(第2の相関処理手段)、19 相関処理器(第1の相関処理手段)、17 測位処理器、18 表示器、20 FDOA変動周波数算出器、21 FDOA補正処理器、22 移動体類別データベース、23 移動体類別処理器。
Claims (5)
- 電波源からの電波が第1の衛星で中継されて受信された第1の受信信号および前記電波が第2の衛星で中継されて受信された第2の受信信号について相関処理を行って、前記第1の受信信号と前記第2の受信信号との間の到達時間差および周波数差を求めて前記電波源の位置を決定する測位装置であって、
前記電波源が動くことによって生じる周波数差の変動成分を計測可能な周波数分解能で前記相関処理を行う第1の相関処理手段と、
前記第1の相関処理手段の周波数分解能よりも低く、衛星の移動により発生する周波数差を計測可能な周波数分解能を有し、前記相関処理を行う第2の相関処理手段と、
前記第2の相関処理手段で求められた到達時間差および前記第1の相関処理手段で求められた周波数差に基づいて前記電波源の位置を決定する測位処理手段と、
を備えた測位装置。 - 前記第1の相関処理手段で求められた複数の時点での周波数差を周波数領域に変換して、周波数差の変動の中心周波数を求める変動周波数算出手段と、
前記第2の相関処理手段で求められた周波数差を、前記変動周波数算出手段で求められた中心周波数分変化させる周波数差補正手段と、
を備え、
前記測位処理手段は、前記第2の相関処理手段で求められた到達時間差と前記周波数差補正手段で求められた周波数差に基づいて前記電波源の位置を決定する、
請求項1に記載の測位装置。 - 電波源が設置された移動体の属性とその移動体が動くことによって生じるドップラー周波数との関係を示すデータベースと、
前記変動周波数算出手段が求めた前記中心周波数に基づき、前記データベースから、前記移動体の属性を求める類別手段と、
をさらに備えた請求項2に記載の測位装置。 - 電波源からの電波が第1の衛星で中継されて受信された第1の受信信号および前記電波が第2の衛星で中継されて受信された第2の受信信号について、電波源が動くことによって生じる周波数差の変動成分を計測可能な周波数分解能をもって第1の相関処理を行って、到達時間差と周波数差を求めるステップと、
前記第1の相関処理の周波数分解能よりも低く、衛星の移動により発生する周波数差を計測可能な周波数分解能を有し、前記第1の受信信号および前記第2の受信信号について第2の相関処理を行って、到達時間差と周波数差を求めるステップと、
前記第2の相関処理で求められた前記到達時間差および前記第1の相関処理で求められた前記周波数差に基づいて前記電波源の位置を求めるステップと、
を備えた測位方法。 - コンピュータに、
電波源からの電波が第1の衛星で中継されて受信された第1の受信信号および前記電波が第2の衛星で中継されて受信された第2の受信信号について、電波源が動くことによって生じる周波数差の変動成分を計測可能な周波数分解能をもって第1の相関処理を行って、到達時間差と周波数差を求めるステップと、
前記第1の相関処理の周波数分解能よりも低く、衛星の移動により発生する周波数差を計測可能な周波数分解能をもって、前記第1の受信信号および前記第2の受信信号について第2の相関処理を行って、到達時間差と周波数差を求めるステップと、
前記第2の相関処理で求められた前記到達時間差および前記第1の相関処理で求められた前記周波数差に基づいて前記電波源の位置を求めるステップと、
を実行させるプログラム。
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