以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、先端工具91を駆動することで所定の加工作業を行うように構成された作業工具の一例として、ハンマドリル1を例示する。ハンマドリル1は、ツールホルダ39に装着された先端工具91を所定の駆動軸A1に沿って直線状に駆動する動作(以下、ハンマ動作という)と、先端工具91を駆動軸A1周りに回転駆動する動作(以下、ドリル動作という)とを実行可能に構成されている。
まず、ハンマドリル1の概略構成について説明する。図1に示すように、ハンマドリル1の外郭は、ハウジング10によって形成されている。本実施形態では、ハウジング10は、本体ハウジング11と、本体ハウジング11に弾性的に連結されたハンドルハウジング15とを含む。
図1および図2に示すように、本体ハウジング11は、全体としては側面視略L字状に形成されている。本体ハウジング11は、駆動機構3を収容する駆動機構収容部12と、モータ2を収容するモータ収容部13の2つの部分を含む。
駆動機構収容部12は、長尺の箱状体として形成されており、駆動軸A1に沿って延在している。駆動機構収容部12の駆動軸A1方向における一端部内には、先端工具91を着脱可能なツールホルダ39が配置されている。ツールホルダ39は、駆動軸A1周りに回転可能に駆動機構収容部12に支持されている。また、ツールホルダ39は、先端工具91を回転不能、且つ、駆動軸A1方向に直線状に移動可能に保持するように構成されている。なお、駆動機構収容部12のうち、ツールホルダ39が収容されている一端部は、概ね円筒状に形成されている。この円筒状部分の外周部には、補助ハンドル95を着脱可能である。
モータ収容部13は、駆動機構収容部12の駆動軸A1方向におけるもう一方の端部において、駆動機構収容部12に対して相対移動不能に連結固定され、駆動軸A1に交差して、駆動軸A1から離れる方向に突出している。モータ2は、モータシャフト25の回転軸が駆動軸A1に交差する方向(詳細には、駆動軸A1に対して斜め方向)に延在するように、モータ収容部13内に配置されている。
なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸A1の延在方向をハンマドリル1の前後方向と規定し、ツールホルダ39が設けられている一端部側をハンマドリル1の前側(先端領域側ともいう)、反対側を後側と規定する。また、駆動軸A1に直交する方向であって、モータシャフト25の回転軸の延在方向に対応する方向をハンマドリル1の上下方向と規定し、駆動機構収容部12からモータ収容部13が突出する方向を下方向、反対方向を上方向と規定する。更に、前後方向および上下方向に直交する方向を、左右方向と規定する。
図1および図2に示すように、ハンドルハウジング15は、全体としては側面視略C字状の中空体として形成されており、両端部が本体ハウジング11に連結されている。ハンドルハウジング15は、使用者によって把持される把持部16を含む。把持部16は、本体ハウジング11の後方に離間して配置され、駆動軸A1に交差するように、概ね上下方向に延在している。把持部16の上端部の前部には、使用者による押圧操作(引き操作)が可能なトリガ161が設けられている。把持部16の下側には、モータ2等の電源としての充電式バッテリ(バッテリパック)93を着脱可能なバッテリ装着部171が設けられている。ハンマドリル1では、トリガ161が引き操作されると、モータ2が駆動され、ハンマ動作やドリル動作が行われる。
以下、ハンマドリル1の詳細構成について説明する。
まず、本体ハウジング11(駆動機構収容部12およびモータ収容部13)の内部構造について説明する。
駆動機構収容部12は、上述の通り、本体ハウジング11のうち、駆動軸A1に沿って前後方向に延在する部分である。図2に示すように、駆動機構収容部12には、モータ2の動力によって先端工具91を駆動するように構成された駆動機構3が収容されている。本実施形態では、駆動機構3は、運動変換機構30と、打撃要素36と、回転伝達機構37とを含む。運動変換機構30および打撃要素36は、先端工具91を駆動軸A1に沿って直線状に駆動するハンマ動作を行うように構成された機構である。回転伝達機構37は、先端工具91を駆動軸A1周りに回転駆動するドリル動作を行うように構成された機構である。なお、運動変換機構30、打撃要素36、および回転伝達機構37の構成については周知であるため、以下では簡単に説明する。
運動変換機構30は、モータ2の回転運動を直線運動に変換して打撃要素36に伝達するように構成されている。本実施形態では、揺動部材33を用いた運動変換機構30が採用されている。運動変換機構30は、中間シャフト31と、回転体32と、揺動部材33と、ピストンシリンダ35とを含む。中間シャフト31は、駆動軸A1の下側で、駆動軸A1と平行に(前後方向に)延在している。回転体32は、中間シャフト31の外周部に取り付けられている。揺動部材33は、回転体32の外周部に取り付けられ、回転体32の回転に伴って前後方向に揺動される。ピストンシリンダ35は、有底円筒状に形成され、円筒状のスリーブ34内に前後方向に移動可能に支持されている。ピストンシリンダ35は、揺動部材33の揺動に伴って前後方向に往復動される。なお、スリーブ34は、ツールホルダ39の後側に同軸状に連結され、一体化されている。一体化されたツールホルダ39およびスリーブ34は、駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。
打撃要素36は、直線状に動作して先端工具91を打撃することで、先端工具91を駆動軸A1に沿って直線状に駆動するように構成されている。本実施形態では、打撃要素36は、打撃子としてのストライカ361と、中間子としてのインパクトボルト363とを含む。ストライカ361は、ピストンシリンダ35内に、駆動軸A1方向に摺動可能に配置されている。ストライカ361の後方のピストンシリンダ35内部の空間は、空気バネとして機能する空気室として規定されている。インパクトボルト363は、ツールホルダ39内に、駆動軸A1方向に摺動可能に配置されている。
モータ2が駆動され、ピストンシリンダ35が前方に向けて移動されると、空気室の空気が圧縮されて内圧が上昇する。このため、ストライカ361は、高速に前方に押し出されてインパクトボルト363に衝突し、運動エネルギを先端工具91に伝達する。これにより、先端工具91は駆動軸A1に沿って直線状に駆動され、被加工物を打撃する。一方、ピストンシリンダ35が後方へ移動されると、空気室の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ361が後方へ引き込まれる。先端工具91は、被加工物への押し付けにより、後方へ移動する。運動変換機構30および打撃要素36は、このような動作を繰り返すことで、ハンマ動作を行う。
回転伝達機構37は、モータシャフト25の回転運動をツールホルダ39に伝達するように構成されている。本実施形態では、回転伝達機構37は、複数のギアを含むギア減速機構として構成されており、モータ2の回転は、適宜減速された上でツールホルダ39に伝達される。
本実施形態のハンマドリル1は、駆動機構収容部12の左側部に設けられたモード切替ダイヤル(図示略)の操作により、ハンマドリルモード、ハンマモード、およびドリルモードの3つの動作モードのうち1つを選択可能に構成されている。ハンマドリルモードは、運動変換機構30および回転伝達機構37が駆動されることで、ハンマ動作およびドリル動作が行われる動作モードである。ハンマモードは、回転伝達機構37における動力の伝達が遮断され、運動変換機構30のみが駆動されることで、ハンマ動作のみが行われる動作モードである。ドリルモードは、運動変換機構30における動力の伝達が遮断され、回転伝達機構37のみが駆動されることで、ドリル動作のみが行われる動作モードである。本体ハウジング11内(詳細には、駆動機構収容部12内)には、モード切替ダイヤルに接続され、モード切替ダイヤルで選択された動作モードに応じて運動変換機構30および回転伝達機構37を伝達状態と遮断状態との間で切り替えるモード切替機構が設けられている。かかるモード切替機構の構成については周知であるため、ここでの詳細な説明および図示は省略する。
モータ収容部13は、本体ハウジング11のうち、駆動機構収容部12の後端部に接続して下方に延びる部分である。図2に示すように、モータ収容部13の上側部分には、モータ2が収容されている。本実施形態では、モータ2として、直流ブラシレスモータが採用されている。モータシャフト25の回転軸は、駆動軸A1に対して斜め下前方に延在している。モータシャフト25の上端部は、駆動機構収容部12内に突出しており、この部分に小ベベルギア26が形成されている。小ベベルギア26は、中間シャフト31の後端部に固定された大ベベルギア311に噛合している。
また、モータ収容部13の下側部分(つまり、モータ2よりも下側の領域)の後部内には、ハンドルハウジング15の一部(詳細には、下側連結部18)が配置されている。
次に、ハンドルハウジング15の詳細構成およびその内部構造について説明する。
図2に示すように、ハンドルハウジング15は、把持部16と、コントローラ収容部17と、下側連結部18と、上側連結部19とを含む。なお、本実施形態では、ハンドルハウジング15は、後述する内部部品が組み付けられた状態で、左右に分割された半割体が複数箇所においてネジで連結されることで構成されている。
把持部16は、上述のように、上下方向に延在するように配置されており、上端部の前部には、トリガ161が設けられている。なお、トリガ161は、駆動軸A1上に位置する。把持部16は、長尺の筒状に形成されており、その内部にはスイッチ163が収容されている。スイッチ163は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ161の引き操作に応じてオン状態とされる。スイッチ163は、図示しない配線によって後述のコントローラ41に接続されており、オン状態またはオフ状態を示す信号を、コントローラ41に出力する。
コントローラ収容部17は、把持部16の下端部の下側に接続している。コントローラ収容部17は、矩形箱状に形成されており、把持部16よりも前方に延在している。コントローラ収容部17には、コントローラ41と、変速ダイヤルユニット43が収容されている。
詳細な図示は省略するが、コントローラ41は、制御回路と、三相インバータと、これらが搭載された基板とを含む。制御回路は、CPU、ROM、RAM、タイマ等を含むマイクロコンピュータで構成されている。三相インバータは、6つの半導体スイッチング素子を用いた三相ブリッジ回路を備え、制御回路から出力される制御信号が示すデューティ比に従って三相ブリッジ回路の各スイッチング素子をスイッチング動作させることで、モータ2を駆動する。詳細は後述するが、本実施形態では、コントローラ41は、スイッチ163のオン・オフ状態および後述する各種センサ等の検出結果に基づいて、モータ2の駆動を制御する。
変速ダイヤルユニット43は、使用者による外部操作に応じてモータ2の回転速度を設定するための機器である。変速ダイヤルユニット43は、図示しない配線によってコントローラ41に接続されており、設定された回転速度を示す信号をコントローラ41に出力する。
コントローラ収容部17の下端部(コントローラ41の下方)は、バッテリ93を着脱可能なバッテリ装着部171として構成されている。バッテリ93は、バッテリ装着部171に対して後側から前方へ向かってスライド係合されるのとあわせて、バッテリ装着部171に電気的に接続される。なお、バッテリ93およびバッテリ装着部171の構成については周知であるため、ここでの説明は省略する。
下側連結部18は、ハンドルハウジング15のうち、コントローラ収容部17の前端部に接続して概ね下方に延在する部分である。上側連結部19は、ハンドルハウジング15のうち、把持部16の上端部に接続して前方に延在する部分である。本実施形態では、ハンドルハウジング15は、下側連結部18および上側連結部19を介して、本体ハウジング11に対して相対移動可能に連結されている。以下、下側連結部18および上側連結部19と、本体ハウジング11との連結構造の詳細について説明する。
図2および図3に示すように、下側連結部18は、モータ収容部13の下後端部内に突出するように配置された部分であって、モータ収容部13に対し、左右方向に延在する回動軸A2周りに相対回動可能に連結されている。なお、上述のように、モータ収容部13の上側部分にはモータ2が配置されているものの、モータ2の下方には空き領域が存在する。よって、本実施形態では、この空き領域を利用して下側連結部18が配置され、ハンドルハウジング15とモータ収容部13とが連結されている。
図3に示すように、下側連結部18には、回動軸A2を中心軸として、左右の側壁部の間を左右方向に延在するシャフト部181が設けられている。ハンドルハウジング15を構成する左右の半割体には、夫々、回動軸A2に沿って右方および左方に延びる2つの突出部が設けられている。そして、これらの突出部がネジで連結されることにより、シャフト部181が形成されている。下側連結部18の左右の側壁部の外面側には、夫々、シャフト部181の両端部に対応する位置に、凹部183が設けられている。凹部183は、回動軸A2を中心とする円形の断面を有する凹部として構成されている。凹部183内には、環状の弾性部材185が嵌めこまれている。
一方、モータ収容部13の左右の側壁部の内面側には、右方および左方に夫々突出する突出部131が設けられている。突出部131は、概ね円筒状に形成されており、夫々の軸線が、左右方向に延在する一直線上に位置するように配置されている。これらの突出部131の先端部が、凹部183内の弾性部材185に嵌め込まれることで、下側連結部18とモータ収容部13の下後端部とが、弾性部材185を介して連結されている。このような弾性部材185を介した凹凸係合により、下側連結部18は、モータ収容部13に対して回動軸A2周りに相対回動可能に連結されている。また、下側連結部18は、弾性部材185によって、モータ収容部13に対し、全方向に相対移動可能とされている。
図2に示すように、上側連結部19は、駆動機構収容部12の後端部内に突出するように配置され、弾性部材191を介して、駆動機構収容部12に対して相対移動可能に連結されている。本実施形態では、弾性部材191として、圧縮コイルバネが採用されている。弾性部材191の後端部は、上側連結部19の前端部に設けられたバネ受け部190に嵌め込まれている。弾性部材191の前端は、駆動機構収容部12の後端部内に配置された支持壁121の後面に当接している。つまり、弾性部材191は、その弾発力の作用方向が、ハンマ動作時の支配的な振動方向である前後方向と概ね一致するように配置されている。
また、上側連結部19は、バネ受け部190の後側に形成された長穴193を有する。長穴193は、左右方向に上側連結部19を貫通する貫通孔であって、上下方向よりも前後方向に長い。一方、図2および図4に示すように、駆動機構収容部12の内部には、ストッパ部123が設けられている。ストッパ部123は、駆動機構収容部12の左右の側壁部の間を左右方向に延在する柱状部であって、長穴193に挿通されている。
上側連結部19は、無負荷状態では、弾性部材191によって、前後方向において本体ハウジング11から離れる方向(つまり、後方)に付勢され、ストッパ部123が長穴193の前端に当接して上側連結部19の後方への移動を規制する位置で保持されている。なお、無負荷状態とは、先端工具91が被加工物に押し付けられておらず、負荷がかかっていない状態である。このときの本体ハウジング11に対する上側連結部19(ハンドルハウジング15)の相対位置を、最後方位置という。一方、ハンドルハウジング15が回動軸A2周りに前方へ相対回動されると、上側連結部19の長穴193内において、本体ハウジング11のストッパ部123が相対的に後方へ移動して長穴193の前端から離間するため、ストッパ部123に対する長穴193の前後方向および上下方向の相対移動が可能となる。上側連結部19は、弾性部材191の付勢力に抗して、図5に示すように、ストッパ部123が長穴193の後端に当接して上側連結部19の前方への移動を規制する位置まで前方へ相対移動することができる。このときの本体ハウジング11に対する上側連結部19(ハンドルハウジング15)の相対位置を、最前方位置という。
以上に説明した連結構造により、ハンドルハウジング15は、その下端側が本体ハウジング11の下後端部に回動軸A2周りに回動可能に連結される一方、上端側が本体ハウジング11の上後端部に弾性部材191を介して弾性連結されている。モータ2および駆動機構3の駆動に伴って(特に、先端工具91の往復駆動に伴って)、本体ハウジング11には駆動軸A1方向(前後方向)の支配的な振動が発生する。これに対し、ハンドルハウジング15が回動軸A2を中心として相対回動するとともに、弾性部材191がこの振動を吸収することができる。このような構成により、本体ハウジング11に生じる振動がハンドルハウジング15(特に把持部16)に伝達されるのを効果的に抑制することができる。
以下、上側連結部19および下側連結部18の内部構造の詳細について説明する。
図3および図4に示すように、上側連結部19には、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の相対位置を検出するための位置センサ45が設けられている。本実施形態では、位置センサ45として、ホール素子を備えたホールセンサが採用されている。位置センサ45は、基板450に搭載され、本体ハウジング11(駆動機構収容部12)の左側壁部に対向するように、上側連結部19の左前端部に固定されている。より詳細には、位置センサ45は、前後方向において、弾性部材191の後端部と概ね同じ位置に配置されている。本体ハウジング11の左側壁部の内面側には、磁石46が固定されている。位置センサ45は、何れも図示しない配線を介してコントローラ41に電気的に接続されており、磁石46が所定の検出範囲内に配置されている場合、特定の信号(オン信号)をコントローラ41へ出力するように構成されている。
本実施形態では、図4に示すように、本体ハウジング11に対してハンドルハウジング15が最後方位置(初期位置)にあるときには、磁石46は位置センサ45の検出範囲内に配置されており、位置センサ45は、オン信号を出力する。本体ハウジング11に対してハンドルハウジング15が最後方位置から前方へ移動して、所定位置に達すると、磁石46は位置センサ45の検出範囲から離脱し、位置センサ45は、オン信号の出力を停止する。なお、この所定位置(以下、オフ位置という)は、図5に示す最前方位置に対して若干後方に設定されており、ハンドルハウジング15がオフ位置から最前方位置の間にあるときには、位置センサ45はオン信号を出力しない。詳細は後述するが、位置センサ45の検出結果は、コントローラ41によるモータ2の回転速度の制御に使用される。
図2に示すように、下側連結部18には、加速度センサユニット5が設けられている。より詳細には、加速度センサユニット5は、シャフト部181の前側で、下側連結部18の下端部内において、弾性支持部6によって、本体ハウジング11に対して相対移動可能に弾性支持されている。
以下、加速度センサユニット5の構成について説明する。図6〜図9に示すように、本実施形態では、加速度センサユニット5は、センサ本体51と、センサ本体51を収容するケース53とを含む。
詳細な図示は省略するが、センサ本体51は、加速度センサと、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータと、これらが搭載された基板とを含む。本実施形態では、加速度センサは、駆動軸A1周りのハウジング10の回転に対応する情報として、加速度を検出する。なお、本実施形態では、加速度センサユニット5は、駆動軸A1から離れた下側連結部18内で、駆動軸A1の真下に配置されている。この位置では、駆動軸A1周りのハウジング10の回転を、左右方向の動きとしてとらえうる。そこで、ハウジング10の駆動軸A1周りの回転に対応する情報(物理量、指標)として、少なくとも左右方向の加速度を検出可能な周知の加速度センサが採用されている。
センサ本体51のマイクロコンピュータは、加速度センサによって検出された加速度を適宜演算処理し、ハウジング10の駆動軸A1周りの回転が所定の限界値を超えているか否かについて判断する。そして、ハウジング10の駆動軸A1周りの回転が所定の限界値を超えている場合には、特定の信号(以下、エラー信号という)をコントローラ41に出力する。なお、ハウジング10の駆動軸A1周りの回転が所定の限界値を超えた場合とは、ハウジング10が過度に駆動軸A1周りに回転してしまった状態に対応する。このような状態は、典型的には、ドリル動作中に先端工具91が被加工物に埋まってしまう等の理由で、ツールホルダ39が回転不能な状態(ロック状態、ブロッキング状態ともいう)に陥り、ハウジング10に過大な反動トルクが作用している場合に発生するものである。
なお、センサ本体51はマイクロコンピュータを備えず、加速度センサの検出結果を示す信号をそのままコントローラ41に出力し、コントローラ41が上述の判断を行ってもよい。センサ本体51から出力された信号に基づくハンマドリル1の動作制御については、後で詳述する。
ケース53は、センサ収容部531と、4つの連結部533とを含む。センサ収容部531は、前方に開口する、矩形箱状の部分である。センサ本体51は、センサ収容部531内に収容されてモールドされ、ケース53と一体化されている。連結部533は、センサ収容部531の四隅に設けられた有底円筒状の部分であって、円筒状の周壁と円形の底壁とによって規定された凹部を有する。底壁の中央部には、貫通孔535が形成されている。左右一対の連結部533は、夫々の軸線が左右方向に延在するように、同軸状に配置されている。また、夫々の底壁が対向するように(つまり、夫々の凹部の開口が互いに離れる方向を向くように)配置されている。なお、上側の一対の連結部533と、下側の一対の連結部533とは、前後方向において互いに異なる位置にある。詳細には、上側の一対はセンサ収容部531の上端部の上面側に配置されており、下側の一対はセンサ収容部531の下端部の後面側に配置されている。
以下、弾性支持部6の構成について説明する。弾性支持部6は、加速度センサユニット5を弾性支持するように構成されており、本実施形態では、4つの弾性部材62と、2本の支持ピン61とを含む。
弾性部材62は、円筒状に構成されている。本実施形態では、弾性部材62は、高分子発泡体(より詳細には、ウレタンスポンジ)によって形成されている。4つの弾性部材62は、夫々、ケース53の4つの連結部533(凹部)内に、径方向に圧縮された状態で嵌め込まれている。なお、各弾性部材62は、連結部533(凹部)よりも軸方向(左右方向)に長く構成されている。このため、各弾性部材62の一部は、連結部533から外側へ突出している。
支持ピン61は、金属製の円柱部材である。本実施形態では、支持ピン61は、高炭素鋼の一例であるSUJ材(高炭素クロム軸受鋼鋼材)によって形成されている。支持ピン61は、左右一対の連結部533および弾性部材62に挿通されている。なお、支持ピン61の径は、連結部533の底壁の貫通孔535よりも小さく、支持ピン61は、弾性部材62とのみ接触しており、ケース53とは接触しない。また、支持ピン61の両端部は、左右の連結部533に嵌め込まれた弾性部材62から外側へ突出し、下側連結部18に連結されている。より詳細には、図9に示すように、下側連結部18の左右の側壁部には、互いに対向して右方および左方に夫々突出するピン支持部187が2つずつ設けられている。各ピン支持部187は、円筒状に構成され、ピン挿入孔188を有する。支持ピン61は、その両端部がピン挿入孔188に遊嵌されることで、下側連結部18に連結されている。弾性部材62は、連結部533の底壁とピン支持部187の突出端の間で左右方向に圧縮された状態で保持されている。
なお、上述のように、本実施形態では、ハンドルハウジング15は、左右の半割体で構成されている。支持ピン61の両端部が左右の半割体の夫々のピン挿入孔188に遊嵌された状態で、左右の半割体がネジ(図示略)で連結固定されることで、加速度センサユニット5が弾性支持部6によって弾性支持されることになる。
このような構成により、加速度センサユニット5は、ハンドルハウジング15および支持ピン61から完全に離間した状態で(非接触状態で)、ハンドルハウジング15に対し、前後方向、上下方向、および左右方向を含む全方向に相対移動可能とされている。具体的には、円筒状の弾性部材62が、支持ピン61の軸周りの周方向において、支持ピン61の全周を取り囲んでおり、更に、連結部533(詳細には、周壁)が、径方向外側で弾性部材62の全周を取り囲んでいる。よって、支持ピン61の軸に交差する全方向(つまり、左右方向以外の全方向)では、弾性部材62のうち、支持ピン61と連結部533(詳細には、周壁)の間に介在する部分が弾性変形することで、ハンドルハウジング15に対する加速度センサユニット5の相対移動を許容する。また、左右方向においては、弾性部材62のうち、連結部533(詳細には、底壁)とピン支持部187の間に介在する部分が弾性変形することで、ハンドルハウジング15に対する加速度センサユニット5の相対移動を許容する。
なお、連結部533の周壁と支持ピン61との間の距離は、連結部533の底壁とピン支持部187との間の距離よりも短い。これにより、支持ピン61の軸に直交する方向(例えば、前後方向および上下方向)における弾性部材62のバネ定数よりも、軸方向(左右方向)におけるバネ定数の方が小さく設定されている。言い換えると、弾性部材62は、前後方向や上下方向に比べて左右方向に変形しやすい特性を有するということができる。
以下、コントローラ41によるモータ2の駆動制御について、簡単に説明する。
本実施形態では、コントローラ41(より詳細には、コントローラ41のCPU)によって、所謂ソフトノーロード制御が行われる。ソフトノーロード制御とは、スイッチ163がオン状態にある場合、無負荷状態ではモータ2を低速で駆動し、負荷状態となると回転速度を上昇させるモータ2の駆動制御手法であって、無負荷時低速回転制御とも称されるものである。
本実施形態では、ソフトノーロード制御における無負荷状態と負荷状態の判別に、位置センサ45の検出結果が用いられる。上述のように、位置センサ45は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の相対位置を検出するものである。無負荷状態では、弾性部材191の付勢力により、上側連結部19は最後方位置に配置されており(図2および図4参照)、位置センサ45は磁石46を検出して、オン信号を出力している。コントローラ41は、位置センサ45からの出力がオンの場合、モータ2は無負荷状態にあると判定し、スイッチ163がオフ状態からオン状態とされると、低速でモータ2の駆動を開始する。モータ2の駆動に伴い、モード切替ダイヤル(図示略)を介して選択された動作モードに応じて駆動機構3が駆動され、ハンマ動作およびドリル動作のうち少なくとも一方が遂行される。
使用者が把持部16を把持した状態で、先端工具91を被加工物に押し付けると、ハンドルハウジング15が回動軸A2周りに相対的に前方へ回動し、上側連結部19が弾性部材191を圧縮しつつ、最後方位置から前方へ移動する。上側連結部19がオフ位置へ到達すると、位置センサ45はオン信号の出力を停止する。コントローラ41は、位置センサ45からの出力のオンからオフへの変化を、無負荷状態から負荷状態への移行と認識する。コントローラ41は、低速駆動中に、負荷状態への移行を認識すると、モータ2を高速で駆動する。なお、無負荷状態および負荷状態の夫々における回転速度の設定方法は特に限定されるものではないが、例えば、変速ダイヤルユニット43を介して設定された回転速度が負荷状態の回転速度として用いられる。この場合、この速度よりも低い回転速度(予め設定された速度あるいは負荷状態の回転速度に応じて算出される速度)が、無負荷状態の回転速度として用いられる。トリガ161の引き操作が解除され、スイッチ163がオフ状態となると、コントローラ41はモータ2の駆動を停止する。
更に、本実施形態では、ソフトノーロード制御に加え、加速度センサユニット5の検出結果に基づく制御も行われる。より詳細には、モータ2が低速で駆動されている場合、高速で駆動されている場合の何れにおいても、コントローラ41は、加速度センサユニット5から出力されたエラー信号を認識した場合、モータ2の駆動を停止する。上述のように、エラー信号は、本体ハウジング11の駆動軸A1周りの過度な回転(所謂、振り回され状態)を示すものである。よって、この過度な回転が、ツールホルダ39のロック状態に起因するものである場合に、それ以上の回転を防止するためである。なお、コントローラ41は、エラー信号に加え、他の情報(例えば、先端工具91に作用しているトルク、モータ2の駆動電流)に基づいて、過度な回転が生じているか否かを判断してもよい。また、コントローラ41は、モータ2への通電を停止するのみならず、ロータの慣性でモータシャフト25の回転が継続するのを防止するために、モータ2を電気的に制動することが好ましい。
以上に説明したように、本実施形態のハンマドリル1では、加速度センサユニット5は、弾性支持部6によって弾性支持されている。ハンマドリル1の動作中には、モータ2および駆動機構3の駆動に伴って、ハウジング10に振動が発生する。本実施形態では、加速度センサユニット5は、本体ハウジング11に弾性連結されたハンドルハウジング15に配置されることによって、振動からの保護が図られている。更に、加速度センサユニット5が弾性支持部6によって弾性支持されることで、精密機器としての加速度センサを、振動から更に確実に保護することができる。
また、本実施形態では、弾性支持部6は、支持ピン61と弾性部材62とを含む。支持ピン61は、ハウジング10とは別体として形成され、ハウジング10に連結されている。弾性部材62は、左右方向以外の全方向において、支持ピン61と加速度センサユニット5(連結部533)との間に介在している。つまり、加速度センサユニット5は、左右方向以外の全方向において、弾性部材62を介して、ハウジング10ではなく、支持ピン61によって支持されている。
従来、電動工具のハウジングに収容された精密機器が弾性支持される場合には、ハウジングと精密機器(ケースを含む)の間に弾性部材が配置されることが一般的である。ハウジングには、製造時に寸法誤差が生じる場合がある。また、互いに連結された複数の部分で構成されるハウジングの場合、寸法誤差が累積したり、組立誤差が生じたりするため、寸法誤差がより大きくなる傾向がある。更に、ハウジングの材質によっては、水を吸収する等の理由で、変形が生じる場合もある。このような場合、ハウジングと精密機器の間に配置された弾性部材が本来とは異なる弾性変形を生じてしまう。つまり、加速度センサユニット5の弾性支持状態、つまり加速度センサユニット5への振動伝達状態が、ハウジングの寸法誤差の影響で変動してしまう。
これに対し、本実施形態では、左右方向以外の全方向において、支持ピン61と加速度センサユニット5との間に介在する弾性部材62が弾性変形し、加速度センサユニット5への振動伝達を抑制することになる。支持ピン61は、ハウジング10とは別体として形成されて、ハウジング10に連結されているため、左右方向以外の全方向において、弾性部材が本来とは異なる弾性変形を生じてしまう可能性を低減することができる。このため、本実施形態では、上述の従来の弾性支持構造に比べ、ハウジング10の寸法誤差の影響を受けにくく、より安定した加速度センサユニット5の弾性支持状態が実現される。
また、本実施形態では、弾性部材62は、支持ピン61の軸周りの周方向において、支持ピン61の全周を取り囲むように配置されている。そして、加速度センサユニット5は、弾性部材62の径方向外側で弾性部材62の全周を取り囲む連結部533を有する。つまり、弾性部材62は、軸に交差する全方向(つまり、左右方向以外の全方向)において、支持ピン61と加速度センサユニット5の間に介在する。よって、軸に交差する全方向において、ハウジング10の寸法誤差の影響を受けにくい加速度センサユニット5の弾性支持状態を実現することができる。また、本実施形態では、弾性支持部6は、円柱状の2本の支持ピン61と、各支持ピン61の外周部に2つずつ嵌合された合計4つの円筒状の弾性部材62とで構成されている。このように、製造や組み付けが容易な支持ピン61と弾性部材62とで、加速度センサユニット5を複数箇所(詳細には4箇所)で弾性支持する合理的な構成が実現されている。
更に、支持ピン61は、ピン支持部187のピン挿入孔188に、遊嵌されている。つまり、支持ピン61は、ハウジング10(詳細にはハンドルハウジング15)に対して遊びをもった状態で連結されている。このため、ハウジング10の寸法誤差の影響を、この遊びによって、更に効果的に抑えることができる。
本実施形態では、ハンマドリル1は、ハンマ動作およびドリル動作を遂行可能に構成されている。そして、加速度センサユニット5は、左右方向におけるハウジング10の動きを、駆動軸A1周りのハウジング10の回転として検出するように構成されている。駆動軸A1周りのハウジング10の回転は、ドリル動作に特有の動作状態であって、ドリル動作中にツールホルダ39がロック状態に陥った場合等に生じうるものである。弾性支持部6(弾性部材62)の左右方向におけるバネ定数は、他の方向(例えば、前後方向および上下方向)におけるバネ定数よりも小さく設定されている。駆動軸A1周りの過度な回転(所謂、振り回され状態)が生じているか否かを判別する場合には、誤検出の抑制のため、駆動軸A1周りの比較的小さなハウジング10の動き(つまり、左右方向における動き)は、加速度センサユニット5へ伝達されないことが好ましい。本実施形態では、弾性支持部6のバネ定数を上述のように設定することで、左右方向以外の方向では安定した加速度センサユニット5の弾性支持状態を実現しつつ、振り回され状態の誤検出を抑制し、より正確な検出を可能としている。そして、コントローラ41(CPU)は、この検出結果に基づいて、振り回され状態が生じた場合、モータ2の駆動を適切に停止させることができる。
なお、本実施形態では、加速度センサユニット5は、左右方向においては、弾性部材62を介してハウジング10(ハンドルハウジング15の下側連結部18)に支持されている。このため、左右方向における弾性支持状態は、他の方向に比べると、ハウジング10の寸法誤差の影響を受ける可能性がある。しかしながら、振り回され状態は、左右方向の比較的大きな動きに対応するため、振り回され状態の検出自体への影響は、実質的には生じない。よって、本実施形態では、以上に説明したように、製造および組み付けが容易で、左右方向以外の全方向において安定した弾性支持状態を実現可能な構成が採用されている。なお、左右方向において、弾性部材62の一端は、ピン支持部187に当接するのではなく、例えば、支持ピン61に固定された止め輪に当接していてもよい。この場合は、左右方向を含む全方向において、更にハウジング10の寸法誤差の影響を受けにくい弾性支持構造を実現することができる。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る打撃工具は、例示されたハンマドリル1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すハンマドリル1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
電動工具は、バッテリまたは外部の交流電源から供給される電力によって動作し、工作等に使用されるツール一般をいうものであって、ハンマドリル1に限られるものではない。電動工具の他の例として、先端工具を駆動軸に沿って往復動させる往復動工具(例えば、電動ハンマ、レシプロソー)、先端工具を所定の駆動軸周りに回転駆動する回転工具(例えば、グラインダ、サンダ、ポリッシャ)が挙げられる。
弾性支持部6は、駆動軸A1周りの過度な回転(振り回され状態)を検出するための加速度センサユニット5以外の検出部を弾性支持してもよい。以下に、図10を参照して、弾性支持部6による精密機器の弾性支持の変形例について説明する。なお、この変形例の説明では、上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を用いて、その説明を簡略化または省略する。
図10に示すように、本変形例では、加速度センサユニット50は、弾性支持部6によって弾性支持されている。本変形例では、コントローラ41は、ハウジング10の前後方向の振動に基づいて、モータ2の回転速度を変更する(ソフトノーロード制御を行う)とともに、ハウジング10の駆動軸A1周りの回転に基づいて、モータ2の駆動を停止するように構成されている。そこで、加速度センサユニット50は、ハウジング10の前後方向の振動およびハウジング10の駆動軸A1周りの回転に対応する情報(物理量、指標)として、前後方向および左右方向の加速度を検出するように構成されている。加速度センサユニット50は、少なくとも前後方向および左右方向の加速度を検出可能な周知の加速度センサを含むセンサ本体52と、ケース53とを含む。ケース53の構成は、上記実施形態と同一である。
なお、上記実施形態では、加速度センサユニット50は、弾性支持部6を介して、本体ハウジング11ではなく、ハンドルハウジング15(詳細には、下側連結部18)に支持されている(図2参照)。しかしながら、本変形例では、加速度センサユニット50は、弾性支持部6を介して、本体ハウジング11に支持されている。これは、ハンドルハウジング15よりも、本体ハウジング11の方が、ハンマ動作に伴って生じる前後方向の振動を、より確実に検出できるためである。
本変形例でも、下側連結部180は、モータ収容部13の下端部内に配置されて、回動軸A2周りに回動可能に本体ハウジング11に連結されている。但し、上記実施形態の下側連結部18(図2参照)に比べ、モータ収容部13内で前方に延びている部分の長さが短い。そこで、下側連結部180の前側、且つ、モータ2(図2参照)の下側の空き領域に、加速度センサユニット50が弾性支持されている。詳細な図示は省略するが、モータ収容部13の左右の側壁部には、ピン挿入孔188を有するピン支持部187(図9参照)が設けられている。そして、ピン挿入孔188に遊嵌された支持ピン61および弾性部材62によって、加速度センサユニット50が支持されている。
弾性支持部6の構成は、上記実施形態で説明した通りである。よって、支持ピン61の軸に交差する全方向(つまり、左右方向以外の全方向)では、弾性部材62のうち、支持ピン61と連結部533(詳細には、周壁)の間に介在する部分が弾性変形することで、本体ハウジング11に対する加速度センサユニット50の相対移動を許容する。また、左右方向においては、弾性部材62のうち、連結部533(詳細には、底壁)とピン支持部187の間に介在する部分が弾性変形することで、本体ハウジング11に対する加速度センサユニット50の相対移動を許容する。
本変形例におけるモータ2の駆動制御について、簡単に説明する。
センサ本体52のマイクロコンピュータは、加速度センサによって検出された前後方向の加速度を適宜演算処理し、本体ハウジング11の前後方向の振動が所定の限界値を超えているか否かを判断する。そして、本体ハウジング11の前後方向の振動が所定の限界値を超えている場合に、特定の信号(以下、振動信号という)をコントローラ41(図2参照)に対して出力する。なお、本体ハウジング11の前後方向の振動が所定の限界値を超えた場合とは、先端工具91による被加工物の打撃が開始され、モータ2が無負荷状態から負荷状態へ移行した状態に対応する。コントローラ41は、スイッチ163(図2参照)がオン状態であり、加速度センサユニット50から振動信号が出力されていない間(つまり、先端工具91による被加工物の打撃が行われていない間)は、モータ2を低速で駆動する。コントローラ41は、加速度センサユニット50から振動信号が出力されると(つまり、先端工具91による被加工物の打撃が開始されると)、モータ2の回転速度を上昇させる。
このように、本変形例では、コントローラ41は、加速度センサユニット50によって検出された前後方向の加速度に基づいて、ソフトノーロード制御を行う。
また、コントローラ41は、上記実施形態と同様、加速度センサユニット50から、振り回され状態が生じたことを示すエラー信号が出力された場合には、モータ2の駆動を停止する。
本変形例では、加速度センサユニット5は、ハウジング10の前後方向における運動状態の一例として、本体ハウジング11の前後方向の振動を検出している。駆動機構3によってハンマ動作が遂行される場合、先端工具91の被加工物に対する押し付けに応じて(つまり、無負荷状態から負荷状態への移行に応じて)、駆動軸A1の延在方向の振動の大きさが変化する。上記実施形態と同様、本変形例でも、ハウジング10の寸法誤差の影響を受けにくい弾性支持部6により、前後方向において、加速度センサユニット50への安定した振動伝達状態が実現されている。よって、加速度センサユニット50は、ハウジング10の前後方向の振動に対応する情報(加速度)を精度よく検出することができる。これにより、コントローラ41は、適切なソフトノーロード制御を行うことができる。
更に、弾性支持部6(弾性部材62)は、前後方向と左右方向とで互いに異なるバネ定数を有する。これにより、各方向において適切な度合いで振動伝達が抑制された状態で、加速度センサユニット50を弾性支持することが可能となる。
具体的には、前後方向の振動を正確に検出するためには、前後方向の振動が加速度センサユニット50へある程度伝達されることが好ましい。一方で、駆動軸A1周りの過度な回転が生じているか否かを判別する場合には、誤検出の抑制のため、駆動軸A1周りの比較的小さなハウジング10の動きは、加速度センサユニット50へ伝達されないことが好ましい。本変形例では、弾性支持部6の前後方向のバネ定数は、左右方向のバネ定数よりも高く設定されており、加速度センサユニット50には、前後方向の振動がある程度伝達される一方、左右方向の比較的小さな振動の伝達は抑制されている。よって、加速度センサユニット50は、ハウジング10の前後方向の振動および駆動軸A1周りの回転に対応する情報を適切に検出することができる。そして、コントローラ41は、加速度センサユニット50によって検出された情報に基づいて、前後方向の振動に応じてモータ2の回転速度を制御したり、過度な回転が生じた場合に駆動機構3によるドリル動作を停止させたりすることができる。
弾性支持部6によって支持される検出部は、上記実施形態および変形例で例示された加速度センサユニット5、50に限られない。例えば、上記変形例の加速度センサユニット50は、上記実施形態の加速度センサユニット5と同様、振り回され状態のみを検出するように構成されていてもよい。また、加速度センサユニット50は、ハウジング10(本体ハウジング11)の前後方向の振動のみを検出するように構成されていてもよい。この場合も、上記変形例と同様、ハウジング10の寸法誤差の影響を受けにくい弾性支持部6により、駆動軸A1の延在方向である前後方向において、加速度センサユニット50への安定した振動伝達状態が実現されるため、加速度センサユニット50は、ハウジング10の前後方向の振動に対応する情報を精度よく検出することができる。
なお、コントローラ41は、ハウジング10の前後方向の振動に基づいて、ソフトノーロード制御以外の制御を行ってもよい。例えば、無負荷状態ではスイッチ163がオン状態であってもモータ2を駆動せず、スイッチ163がオン状態で負荷状態に移行した場合に、モータ2の駆動を開始してもよい。また、コントローラ41は、モータ2の回転速度の制御は行わず(つまり、スイッチ163がオン状態で所定の回転速度でモータ2を駆動し)、振り回され状態の検出に応じて、先端工具91の回転駆動を停止する制御のみを行ってもよい。なお、駆動機構3が、回転伝達機構37を伝達状態と遮断状態の間で電気的に切り替えるように構成されたクラッチ(例えば、電磁クラッチ)を備えている場合には、コントローラ41は、クラッチを遮断状態に切り替えることでドリル動作を停止させてもよい。
また、検出部によって検出される電動工具の動作状態は、ハウジング10の前後方向の振動、駆動軸A1周りの回転に限られるものではなく、例えば、コントローラ41による制御に利用される別の動作状態であってもよい。例えば、モータ2の駆動状態や、ツールホルダ39の回転状態であってもよい。検出される動作状態に応じて、それに対応する情報も変更されうる。ハウジング10の前後方向の振動および駆動軸A1周りの回転に対応する情報も、必ずしも加速度である必要はなく、他の物理量(例えば、変位量、速度、角速度等)が採用されてもよい。ハウジング10の前後方向の振動に対応する情報と、駆動軸A1周りの回転に対応する情報とが、別の種類の情報(物理量)であってもよい。検出される情報に応じて、採用される検出部の種類やその配置位置も変更されうる。例えば、検出部は、ジャイロセンサを含む構成であってもよい。
弾性支持部6は、ハウジング10とは別体として形成されてハウジング10に連結された支持部材と、少なくとも一方向において、支持部材と検出部の間に介在する弾性部材とを含む限りにおいて、適宜、変更が可能である。よって、例えば、支持ピン61および弾性部材62の形状、数、配置位置、材質等は変更されてもよい。
支持ピン61は、例えば、角柱状、円筒状、円弧状であってもよいし、1つでも3つ以上であってもよい。また、支持ピン61は、必ずしも両端部がハウジング10に連結されている必要はなく、一方の端部のみが片持ち状に支持されていてもよい。なお、支持ピン61は、上記実施形態のように、ハウジング10に対して遊びをもった状態で連結されていることが好ましいが、固定状に連結されることが排除されるものではない。また、支持ピン61は必ずしも金属製である必要はない。
同様に、弾性部材62も、例えば、直方体状、円柱状、球状であってもよいし、1つでも、複数であってもよい。また、上記実施形態および変形例では、弾性部材62は、支持ピン61の全周を取り囲む円筒状に形成されており、軸に交差する全ての方向において、支持ピン61と加速度センサユニット5、50(連結部533)の間に介在している。しかしながら、1または複数の弾性部材が、一方向(例えば、前後方向)においてのみ、あるいは複数の方向(例えば、前後方向および上下方向)において、支持部材と検出部の間に介在していてもよい。この場合、弾性支持部6全体としてのバネ定数は、電動工具の種類や、検出される情報に応じて適宜設定されればよく、複数の方向において(例えば、前後方向と上下方向とで)、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、弾性部材62は、バネ、ゴム、あるいはウレタン以外の合成樹脂で構成されていてもよい。
更に、ハウジング10(本体ハウジング11、ハンドルハウジング15)、駆動機構3、モータ2の構成も、適宜、変更されうる。例えば、ハウジング10は、弾性連結構造を備えない単一のハウジングとして構成されていてもよい。また、例えば、モータ2および駆動機構3を少なくとも収容する第1ハウジングと、第1ハウジングの少なくとも一部を覆い、第1ハウジングに対して弾性連結された第2ハウジングとを含むハウジングが採用されてもよい。この場合、典型的には、把持部は第2ハウジングに設けられる。ハウジングの形状やハウジング内のモータ2や駆動機構3の配置は、適宜変更可能である。
上記実施形態および変形例の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。ハンマドリル1は、本発明の「電動工具」の一例である。モータ2は、本発明の「モータ」の一例である。先端工具91は、本発明の「先端工具」の一例である。駆動機構3は、本発明の「駆動機構」の一例である。ハウジング10は、本発明の「ハウジング」の一例である。加速度センサユニット5、50の各々は、本発明の「検出部」の一例である。弾性支持部6、支持ピン61、弾性部材62は、夫々、本発明の「弾性支持部」、「支持部材」、「弾性部材」の一例である。連結部533(詳細には、連結部533の周壁)は、本発明の「連結部」の一例である。コントローラ41(CPU)は、本発明の「制御部」の一例である。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、実施形態に示すハンマドリル1および上述の変形例、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記第1方向は、駆動軸の延在方向である。
[態様2]
前記第2方向は、前記駆動軸に直交する方向である。
[態様3]
前記弾性部材は、前記第2方向以外の方向において、前記支持部材と前記検出部の間に介在する。
[態様4]
前記ハウジングに連結されて前記駆動軸に直交する方向に延在する把持部を備え、
前記駆動軸の延在方向を前後方向、前記把持部の延在方向を上下方向、前記前後方向および前記上下方向に直交する方向を左右方向と定義した場合、前記第2方向は、前記左右方向である。
[態様5]
前記検出部は、加速度センサを含む。
[態様6]
前記モータは、モータシャフトを有し、前記モータシャフトの回転軸が前記駆動軸に交差するように、前記駆動軸よりも下側に配置されており、
前記加速度センサは、前記ハウジングにおいて前記モータよりも下側の領域に収容されている。