JP2020039296A - 養殖装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】微生物の浄化作用を効率的に活用し、長期にわたって魚介類の飼育に適した環境を維持可能な養殖装置を提供すること。【解決手段】魚介類が飼育される飼育水層16と、水を浄化する微生物が生息する微生物浄化層18と、下段水層20とを上から順次有する養殖槽12を備えており、養殖槽12は、飼育水層16にエアーを供給して飼育水層16の溶存酸素を保持する飼育水層用溶存酸素保持手段40,46,66と、下段水層20にエアーを供給して下段水層20の溶存酸素を保持する下段水層用溶存酸素保持手段40,48と、下段水層20の水を飼育水層16に循環させる水循環手段30,32とを備えている養殖装置10である。【選択図】図1

Description

本発明は、魚介類の陸上養殖を行うための養殖装置に関する。
世界の魚介類の需要が増大する中で、水産資源管理による制約等により、世界の海面漁業生産量の増加は見込めず、今後の魚介類の需要拡大に対しては、養殖が重要な役割を果たすと考えられる。養殖には、海面養殖と陸上養殖があるが、海面養殖は、養殖適地の制約等からその拡大には限界があり、また、自然界の影響により安定した養殖が難しいことから、陸上養殖に対する期待が高まっている。
この陸上養殖は、陸上に人工的に創設した環境下で養殖を行うもので、養殖水として海水等を継続的に引き込みながら循環・排水させるかけ流し式と、養殖水を濾過システムを用いて浄化しながら閉鎖系で循環利用する閉鎖循環式とがある。
従来、閉鎖循環式の養殖装置としては、例えば、魚介類及び養殖水が収容される養殖水槽と、中空状をなし略垂直向きに養殖水槽内に配置される中空管と、当該中空管内下端側に配置され、空気を吹出す気泡ポンプとよりなり、気泡ポンプから吹出された気泡により養殖水を曝気処理するとともに、前記気泡が中空管内の養殖水と混入されることにより当該養殖水を中空管内で上昇させて上部の吐出口から吐出させるエアレーション装置と、養殖水槽内で生じた養殖水中に含まれる魚介類の糞尿等を分解する生物分解層と、前記養殖水槽内で養殖水が一方向へ循環流動する循環流を形成する循環流形成手段とを備え、前記循環流形成手段により形成された循環流の流動方向に対して交差する方向へ流動する旋回流を形成する位置に前記エアレーション装置を設置して、前記循環流及び旋回流により養殖水槽内の養殖水全体を攪拌する魚介類養殖装置が提案されている(特許文献1参照)。
特開2002−320427号公報
上記特許文献1に記載の養殖装置は、エアーが溶け込んだ水が全体に行きわたるとされているが、生物分解層(微生物浄化層)の上方の水層にのみエアーが供給される構成となっており、微生物浄化層の浄化作用が十分でないと考えられる。実際、この特許文献1の養殖装置は、実用化に至っていない。
本発明の課題は、微生物の浄化作用を効率的に活用し、長期にわたって魚介類の飼育に適した環境を維持可能な養殖装置を提供することにある。
本発明者らは、閉鎖循環式養殖装置における水の浄化効果を向上すべく長年研究する中で、まず、微生物浄化層の下側にも水の層(下段水層)を設け、微生物浄化層による水の浄化作用をより効果的に発揮させることに着目した。しかし、微生物浄化層の下側に単に水の層を設けただけではその浄化作用の向上はあまりみられなかった。
そこで、本発明者らはさらに鋭意研究したところ、微生物浄化層の下側の水の層に十分にエアー(酸素)を行きわたる構成とすることにより、微生物浄化層の浄化効率が劇的に向上することを見いだした。この浄化効率の劇的な向上は、従来、微生物浄化層の上部だけにしか微生物が生息できず、微生物浄化層の上部だけで浄化を行っていたものが、微生物浄化層の下部にも微生物の生息が可能となり、微生物浄化層の上部及び下部の広範囲にわたって効率的に浄化が行われるようになったことによるものと考えられる。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1] 魚介類が飼育される飼育水層と、水を浄化する微生物が生息する微生物浄化層と、下段水層とを上から順次有する養殖槽を備えた養殖装置であって、
前記養殖槽は、
前記飼育水層にエアーを供給して該飼育水層の溶存酸素を保持する飼育水層用溶存酸素保持手段と、
前記下段水層にエアーを供給して該下段水層の溶存酸素を保持する下段水層用溶存酸素保持手段と、
前記下段水層の水を飼育水層に循環させる水循環手段と、
を備えていることを特徴とする養殖装置。
[2] 下段水層用溶存酸素保持手段が、下段水層に配置され、該下段水層に直接エアーを供給する下段水層用エアー供給手段を具備することを特徴とする上記[1]に記載の養殖装置。
[3] 水循環手段が、
下段水層に一端が配置されると共に飼育水層又はその上方に他端が配置された水循環配管、及び該水循環配管にエアーを導入し揚水する循環用エアー供給手段を具備するエアーリフト式循環手段と、
下段水層に一端が配置されると共に飼育水層又はその上方に他端が配置された水循環配管、及び下段水層の水を吸引し水循環配管を介して飼育水層に揚水する循環用ポンプを具備するポンプ式循環手段とを備え、
下段水層用溶存酸素保持手段が、
前記エアーリフト式循環手段の循環用エアー供給手段と、
該循環用エアー供給手段のエアーを下段水層へ吸引する前記ポンプ式循環手段の循環用ポンプとを具備して構成されることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の養殖装置。
[4] 水循環手段が、
下段水層に一端が配置されると共に飼育水層又はその上方に他端が配置された水循環配管、及び下段水層の水を吸引し水循環配管を介して飼育水層に揚水する循環用ポンプを具備するポンプ式循環手段を備え、
下段水層用溶存酸素保持手段が、
微生物浄化層を貫通して下段水層及び飼育水層を連通する通水路と、
該通水路を介して飼育水層の水を下段水層へ吸引する前記ポンプ式循環手段の循環用ポンプとを具備して構成されることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の養殖装置。
[5] ポンプ式循環手段が、養殖槽の中央部に配置されると共に、エアーリフト式循環手段が、養殖槽の周囲に配置されていることを特徴とする上記[3]又は[4]記載の養殖装置。
[6] ポンプ式循環手段の水循環配管が、他端側にエアー導入部を具備することを特徴とする上記[3]〜[5]のいずれか記載の養殖装置。
[7] 微生物浄化層の下部又は下方に微生物浄化層用エアー供給手段を具備することを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか記載の養殖装置。
[8] さらに、養殖槽から移送される一部の水を濾過する濾過槽と、該濾過槽で濾過した水を養殖槽に返送する水返送手段とを備えていることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれか記載の養殖装置。
[9] 水返送手段が、濾過槽に一端が配置されると共に、養殖槽に他端が配置された水返送配管と、該水返送配管を介して濾過槽の水を養殖槽へ返送する返送用ポンプとを具備することを特徴とする上記[8]記載の養殖装置。
[10] 水返送配管が、他端側にエアー導入部を具備することを特徴とする上記[9]記載の養殖装置。
本発明の養殖装置によれば、微生物の浄化作用を効率的に活用し、長期にわたって魚介類の飼育に適した環境を維持することができる。
本発明の一実施形態に係る養殖装置の概略側面図である。 本発明の一実施形態に係る養殖装置の概略平面図である。 本発明の一実施形態に係る養殖装置の微生物浄化層の説明図である。 本発明の一実施形態に係る養殖装置のエアーリフト式循環手段の説明図である。 本発明の一実施形態に係る養殖装置の水循環手段を利用した下段水層用溶存酸素保持手段の説明図である。 本発明の一実施形態に係る養殖装置の水返送手段の水返送配管の説明図である。
本発明の養殖装置は、魚介類が飼育される飼育水層と、水を浄化する微生物が生息する微生物浄化層と、下段水層とを上から順次有する養殖槽を備えており、養殖槽は、飼育水層にエアーを供給して飼育水層の溶存酸素を保持する飼育水層用溶存酸素保持手段と、下段水層にエアーを供給して下段水層の溶存酸素を保持する下段水層用溶存酸素保持手段と、下段水層の水を飼育水層に循環させる水循環手段とを備えている。
本発明の養殖装置は、下段水層用溶存酸素保持手段により下段水層にエアーを供給して、下段水層の溶存酸素を、所定量以上(微生物浄化層の少なくとも下部において微生物が生息可能な量以上)に保持することから、微生物浄化層の上部のみならず下部においても微生物が生息可能となり、微生物浄化層の機能を最大限活用して水の浄化を効果的に行うことができる。また、下段水層の水を飼育水層に循環させ、これに伴って酸素が豊富な飼育水層の水が下段水層に循環されることから、これによっても微生物浄化層の下部に酸素が十分に供給され、微生物浄化層の上部及び下部を含む広範囲にわたって微生物の生息が可能となり、微生物浄化層の機能を最大限に活用することができる。
本発明の養殖装置は、養殖槽を備えている。養殖槽は、上記のように飼育水層、微生物浄化層及び下段水層を有しているが、各層の間に各種機能層が設けられていてもよい。また、下段水層の下にさらに微生物浄化層が設けられていてもよく、微生物浄化層及び下段水層が繰り返し設けられていてもよい。
養殖槽には、養殖のための水(以下、養殖水ということがある)及び養殖対象の魚介類(以下、養殖魚ということがある)が収容されるが、その形状や大きさは、養殖魚の種類や量によって適宜設定することができる。例えば、縦1〜15m程度、横1〜15m程度、高さ1〜5m程度の大きさの養殖槽を例示することができる。
本発明の養殖装置において用いられる養殖水としては、養殖魚を飼育(養殖)できるものであれば特に制限されるものではなく、養殖魚の種類に応じて、例えば、淡水、海水、人工海水等を用いることができる。海水や人工海水を用いる場合、塩分濃度は2.3〜3.0%に調整することが好ましく、2.5〜2.8%に調整することがより好ましい。
本発明の養殖対象となる魚介類としては、淡水魚介類、海水魚介類のいずれであってもよい。具体的に、クエ、マハタ、シマアジ、ヒラメ、ヒラマサ、カレイ、カワハギ、クルマエビ、アワビ等を例示することができる。
養殖槽における飼育水層は、微生物浄化層の上方の通常は最上段に位置する層であり、この飼育水層において、魚介類が飼育(養殖)される。
この飼育水層には、飼育水層用溶存酸素保持手段により、エアーが供給され、飼育水層の溶存酸素が所定濃度以上(例えば、7.5ppm以上)に保持される。飼育水層用溶存酸素保持手段としては、飼育水層に酸素(空気)を導入できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、飼育水層に配置されたエアーストーン、エアー供給パイプ等の飼育水層に直接エアーを供給する飼育水層用エアー供給手段を挙げることができる。なお、飼育水層に配置されたエアー供給手段とは、エアー発生部が飼育水層に配置されているものを意味する(以下、エアー供給手段については同様)。また、飼育水層用溶存酸素保持手段は、水循環手段や水返送手段を利用した手段であってもよい。水循環手段や水返送手段を利用した手段については、後述する。
微生物浄化層は、飼育水層と下段水層との間に位置する層である。微生物浄化層の厚さは、用途によって適宜設定することができ、例えば、100mm〜1000mm程度であり、200〜400mm程度が好ましい。なお、この微生物浄化層は、通常、脚付ボード等の支持台上に設けられる。
微生物浄化層は、水を浄化する微生物が生息できる濾材を備えるものであり、濾材としては、例えば、サンゴ、貝殻、木炭、ゼオライト、石英、セラミックボール、麦飯石等を挙げることができる。これらの濾材は、例えば、3〜20mm程度の大きさのものを用いることができる。微生物浄化層においては、濾材をより小さな網目のネット上に載置したり、濾材を収容したネット袋を積載したりすることにより構成することができる。
微生物浄化層に生息する微生物としては、水を浄化する微生物であれば特に制限はなく、例えば、残餌や魚介類の排泄物等に含まれるアンモニアを硝化するアンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌等の硝化菌や、脱窒菌を挙げることができる。
微生物浄化層は、上記のような濾材から構成されるものであることから、飼育水層の水は、微生物浄化層を通って下段水層へ移動する。養殖水が、この微生物浄化層の上面及び下面に接し、また、微生物浄化層を通過することにより、養殖水は浄化される。
この微生物浄化層には、微生物浄化層の下部又は下方に微生物浄化層用エアー供給手段が設けられていることが好ましい。微生物浄化層用エアー供給手段としては、例えば、エアー供給パイプ等を挙げることができる。この微生物浄化層用エアー供給手段を常時又は定期的に用いることにより、微生物浄化層の内部や上面に堆積した残餌や魚介類の排泄物等を吹き上げ、飼育水層に放出することができるため、微生物浄化層の目詰まりを防ぎ、通水性を維持することができる。
下段水層は、微生物浄化層の下方に位置する層であり、その厚さ(水深)としては、例えば、100mm〜1000mm程度であり、200〜400mm程度が好ましい。この下段水層に十分に酸素(空気)が供給されることにより、微生物浄化層の下部の微生物が活性化され、微生物浄化層全体の浄化作用が飛躍的に向上する。
この下段水層には、下段水層用溶存酸素保持手段により、エアーが供給され、下段水層の溶存酸素が所定濃度以上(例えば、飼育水層と同程度)に保持される。下段水層用溶存酸素保持手段としては、下段水層に酸素(空気)を導入できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、下段水層に配置されたエアーストーン、エアー供給パイプ等の下段水層に直接エアーを供給する下段水層用エアー供給手段を挙げることができる。また、下段水層用溶存酸素保持手段は、水循環手段を利用した手段であってもよい。水循環手段を利用した手段については、後述する。
本発明の養殖槽は、下段水層の水を飼育水層に循環させる水循環手段を備えており、かかる水循環手段は、例えば、下段水層に一端が配置されると共に、飼育水層又はその上方に他端が配置された水循環配管を具備している。したがって、養殖水は、飼育水層から微生物浄化層を介して下段水槽へ、下段水槽から飼育水層へと循環し、これにより、養殖槽内の水が効果的に浄化される。
本発明における水循環手段としては、具体的に、水循環配管、及び水循環配管にエアーを導入し揚水する循環用エアー供給手段を具備するエアーリフト式循環手段や、水循環配管、及び下段水層の水を吸引し水循環配管を介して飼育水層に揚水する循環用ポンプを具備するポンプ式循環手段を挙げることができる。これらの水循環手段は、単独又は組み合わせて、1又は複数設けることができる。なお、ポンプ式循環手段及びエアーリフト式循環手段を用いる場合、ポンプ式循環手段が、養殖槽の中央部に配置されると共に、エアーリフト式循環手段が、養殖槽の周囲に配置されることが好ましい。これにより、水循環手段を下段水層用溶存酸素保持手段としてより有効に利用することができる。
エアーリフト式循環手段は、上記のように、循環用エアー供給手段を具備するものであり、水循環配管内に導入されるエアーのリフト作用により、水循環配管内で上昇する水の流れを形成することで揚水し、下段水層の水を飼育水層に循環させる。このエアーリフト式循環手段は、エアーと混合された水を飼育水層に供給することができることから、飼育水層用溶存酸素保持手段としての機能も果たす。循環用エアー供給手段としては、水循環配管内に設けられたエアーストーン等を例示することができる。
ポンプ式循環手段は、下段水層の水を吸引し水循環配管を介して飼育水層に揚水する循環用ポンプを具備するものであり、循環用ポンプにより下段水層の水を吸引・揚水して、下段水層の水を飼育水層に循環させる。循環用ポンプとしては、下段水層に設けられた水中ポンプや、養殖槽の外部に設けられたジェットポンプ等を例示することができる。
ポンプ式循環手段を用いる場合、水循環配管の他端側(飼育水層側)にエアー導入部を設けることが好ましい。すなわち、水循環配管を介して下段水層の水を飼育水層に循環する際に、エアーを混合させることにより、ポンプ式循環手段を飼育水層用溶存酸素保持手段として機能させることができる。このエアーの導入は、エアーポンプ等による機械的なエアー導入方式であってもよいし、水流による吸引を利用した非機械的なエアー導入方式であってもよい。
上記のように、水循環手段を利用した飼育水層用溶存酸素保持手段を用いることにより、飼育水層に十分な量の溶存酸素を維持することができる。また、養殖水にエアーを混入させて循環させることにより、飼育水層の表面に大小からなる多数の泡沫が発生し浮遊する。この水面に浮遊する泡沫は、アンモニアの発生原因となる残餌や魚介類の排泄物を捕獲することができ、この泡沫を収集して除去することにより、アンモニアの発生原因を容易かつ迅速に取り除くことができる。例えば、養殖槽の濾過槽への排水口付近に、枠状浮体を浮遊させておくことにより、枠内に泡沫が収集され、この枠内の泡沫を除去することができる。
本発明の養殖装置においては、下段水層にエアーを十分に供給して下段水層の溶存酸素を所定濃度以上に保持することが重要である。このような下段水層にエアーを保持するための下段水層用溶存酸素保持手段としては、水循環手段を利用した手段が好ましい。
すなわち、下段水層用溶存酸素保持手段の一実施形態としては、エアーリフト式循環手段の循環用エアー供給手段と、循環用エアー供給手段のエアーを下段水層へ吸引するポンプ式循環手段の循環用ポンプとを具備して構成される。また、下段水層用溶存酸素保持手段の他の実施形態としては、微生物浄化層を貫通して下段水層及び飼育水層を連通する通水路と、通水路を介して飼育水層の水を下段水層へ吸引するポンプ式循環手段の循環用ポンプとを具備して構成される。これらの下段水層用溶存酸素保持手段は、組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の養殖装置は、養殖槽の他に、養殖槽から移送される一部の水を濾過する濾過槽と、濾過槽で濾過した水を養殖槽に返送する水返送手段とを備えていることが好ましい。
濾過槽は、養殖槽から移送される水(例えば、養殖槽からオーバーフローした水)を濾過する槽であり、公知の濾過手段を備えている。この濾過槽においては、主として、飼育水層の泡沫と共に移送される残餌や魚介類の排泄物等を除去する。濾過手段としては、濾過マット等を例示することができる。濾過槽の形状、大きさやその数は、養殖槽の大きさ等に応じて適宜設定することができる。
水返送手段は、濾過槽に一端が配置されると共に、養殖槽に他端が配置された水返送配管と、水返送配管を介して濾過槽の水を養殖槽へ返送する返送用ポンプとを具備していることが好ましい。返送用ポンプとしては、濾過槽内に設けられた水中ポンプや、濾過槽の外部に設けられたジェットポンプ等を例示することができる。
また、水返送手段の水返送配管には、他端側(養殖槽側)にエアー導入部が設けられていることが好ましい。すなわち、水返送配管を介して濾過槽の水を養殖槽に返送する際に、エアーを混合させることにより、水返送手段を飼育水層用溶存酸素保持手段として機能させることができる。このエアーの導入は、エアーポンプ等による機械的なエアー導入方式であってもよいし、水流による吸引を利用した非機械的なエアー導入方式であってもよい。
以下、図面を用いて本発明の養殖装置をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、本実施形態に制限されるものではない。図1は、本発明の一実施形態に係る養殖装置の概略側面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る養殖装置の概略平面図であり、図3は、本発明の一実施形態に係る養殖装置の微生物浄化層の説明図である。図4は、本発明の一実施形態に係る養殖装置のエアーリフト式循環手段の説明図であり、図5は、本発明の一実施形態に係る養殖装置の水循環手段を利用した下段水層用溶存酸素保持手段の説明図であり、図6は、本発明の一実施形態に係る養殖装置の水返送手段の水返送配管の説明図である。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態に係る養殖装置10は、養殖槽12と養殖槽12に連通する濾過槽14とを備えている。
図2に示すように、養殖槽12は、上部が開放された平面視して矩形の槽であり、例えば、内部に50tの養殖水が収容される。
図1に示すように、養殖槽12は、養殖魚が飼育される飼育水層16と、水を浄化する微生物が生息する微生物浄化層18と、下段水層20とを、上から順次有している。
飼育水層16は、クエなどの養殖対象の魚介類が飼育される水層であり、養殖槽12の最上段に位置する。その厚さ(水深)は、例えば1〜2m程度である。
図1及び図3に示すように、微生物浄化層18は、飼育水層16と下段水層20の中間に位置する層であり、脚付の格子状ボード22上に目開き0.5〜3mm程度のネット24を載置し、その上に3〜20mm程度の大きさの濾過材26を配置して、通水可能に構成されている。また、ネット24上には、微生物浄化層用エアー供給手段としてのエアパイプ28が微生物浄化層全体にわたって設けられている。微生物浄化層18の厚さ(濾過材26の厚さ)は、200〜400mm程度である。
この微生物浄化層18においては、残餌や排泄物から生じるアンモニアが分解(硝化)される。また、微生物浄化層18上や内部に堆積する残餌や排泄物は、定期的にエアパイプ28のエアーにより吹き上げられ、これにより、微生物浄化層18の目詰まりが防止され、通水性が維持される。
下段水層20は、微生物浄化層18下方に位置する層であり、その厚さ(水深)は、150〜400mm程度である。
養殖槽12においては、下段水層20の水は、水循環手段の水循環配管30、32を介して飼育水層16に循環されるように構成されている。本実施形態においては、このような水循環手段として、エアーリフト式循環手段34(図2中、養殖槽12の内側面に沿って、上下各4個、左右各2個の計10個)と、ポンプ式循環手段36(図2中、中央1個)が設けられている。
図4に示すように、エアーリフト式循環手段34は、一端(下端)が下段水層20に配置され、他端(上端)が飼育水層16の上方に配置されており、その両端の開口部が養殖槽12の内方を向いた水循環配管30を具備している。水循環配管30の下部には、外部のエアーポンプ38に接続されたエアーストーン40が設けられている。このエアーストーン40の発生するエアーの上昇に伴って、下段水層20の養殖水が水循環配管30内に取り込まれると共に水循環配管30内を上昇し、エアーが混合された養殖水が飼育水層16内に循環される。したがって、飼育水層16の養殖水には多量のエアーが混合され、飼育水層16の溶存酸素を所定濃度以上に保持することができる。
また、図1及び図2に示すように、養殖槽12の中央部に設けられたポンプ式循環手段36は、一端(下端)が下段水層20に配置され、他端(上端)が飼育水層16に配置された水循環配管32と、下段水層20の養殖水を吸引し飼育水層16まで揚水する吸水ポンプ42とを備えている。水循環配管32の飼育水層16側は分岐し、4か所の放水口44から四方から放水するようになっている。また、水循環配管32の各放水口44付近には、エアー導入部46が設けられており、このエアー導入部46より外気(エアー)が引き込まれ、水と混合されて、飼育水層16内に放出される。したがって、このポンプ式循環手段36によっても、飼育水層16の養殖水に多量のエアーを混入させることが可能となる。
なお、ポンプ式循環手段36は、脚付の格子状ボード22の上から飼育水層16の水面上方まで延びる枠体(本実施形態においては、平面視して正方形)に包囲されている。これにより、ポンプ式循環手段36からより遠い周辺部からの水の引き込みを可能としている。
ここで、図5に示すように、このポンプ式循環手段36の吸水ポンプ42は、上記エアーリフト式循環手段34のエアーストーン40から放出されるエアーを、下段水層20に吸引し、これにより、下段水層20の溶存酸素濃度を高める(下段水層用溶存酸素保持手段)。
また、図1、図2及び図5に示すように、ポンプ式循環手段36の近傍には、微生物浄化層18を貫通し、飼育水層16及び下段水層20を連通する通水路48が4つ設けられている。ポンプ式循環手段36の吸水ポンプ42は、この通水路48から、溶存酸素の豊富な飼育水層16の養殖水を下段水層20に(微生物浄化層18を介することなく)直接引き込み、これにより、下段水層20の溶存酸素濃度を高める(下段水層用溶存酸素保持手段)。
このように養殖槽12においては、水循環手段(エアーリフト式循環手段34,ポンプ式循環手段36)を利用して下段水層20の溶存酸素濃度を高めている。
また、養殖装置10は、上記のように濾過槽14を備えている。図1及び図2に示すように、養殖槽12の側壁上部の一部には、切欠き部50が形成されており、この切欠き部50に、濾過槽14に養殖水を案内するオーバーフロー管52が設けられている。
濾過槽14は、上部に濾過マット54が配置された第1濾過槽14aと、吸水ポンプ56及び水返送配管58が設けられた第2濾過槽14bとが中央壁60を隔てて併設されている。この第1濾過槽14a及び第2濾過槽14bは中央壁60の中央部に設けられた通水口62を介して連通している。
濾過槽14においては、養殖槽12から送られてきた養殖水が、第1濾過槽14aの濾過マット54を通過する際、養殖水に含まれる残餌や排泄物等の大部分が濾過されると共に、濾過マット54により捕獲されなかったより小さな残餌等は第1濾過槽14aの底部に沈殿する。第1濾過槽14aに溜まった養殖水は、通水口62から第2濾過槽14bに送られ、その後、第2濾過槽14bの吸水ポンプ56によって水返送配管58を介して養殖槽12の飼育水層16に戻される(水返送手段)。
図6に示すように、水返送配管58は、一端が第2濾過槽14bに配置され、他端が養殖槽12(飼育水層16)に配置されている。水返送配管58の放水口64付近には、エアー導入部66が設けられており、このエアー導入部66より外気(エアー)が引き込まれ、水と混合されて、飼育水層16内に放水される。したがって、この水返送手段としての水返送配管58によっても、飼育水層16の養殖水に多量のエアーを混入させて、溶存酸素濃度を高めることが可能となる。
続いて、上記説明した養殖装置10の動作を説明する。
養殖槽12においては、飼育水層16の養殖水は、微生物浄化層18を通過して下段水層20に移送されると共に、中央近傍に設けられた通水路48内を通過して直接下段水層20に移送される。
下段水層20まで到達した養殖水は、養殖槽12の周囲に配置された水循環配管30及び中央に配置された水循環配管32により、飼育水層16に戻される。この際、飼育水層16に戻される水には、水循環配管30のエアーストーン40や水循環配管32のエアー導入部46によりエアーが混合される。したがって、飼育水層16の溶存酸素濃度を高め、所定濃度以上に保持することができる。
一方、下段水層20においては、吸水ポンプ42により水循環配管30のエアーストーン40から下段水層20に引き寄せたエアーや、吸水ポンプ42により通水路48を介して下段水層20に引き寄せた溶存酸素濃度の高い飼育水層16の養殖水によって、その溶存酸素濃度を高く保持することができる。したがって、微生物浄化層18は、下方からもエアー(酸素)の供給を受けることが可能となり、微生物浄化槽18の微生物の生息範囲やその活性を高め、効果的に養殖水を浄化することができる。
また、養殖槽12の養殖水の一部はオーバーフローして、濾過槽14へと移送される。濾過槽14には、上記エアーストーン40やエアー導入部46によるエアーの混合により生じた水面上の泡沫により捕獲された残餌や排泄物等が運搬されてくる。この残餌や排泄物等を第1濾過槽14aの濾過マット54で濾過する。また、濾過マット54で濾過されない小さな残餌や排泄物等は第1濾過槽14aの底部に沈殿する。定期的に、濾過マット54を交換し、第1濾過槽14aの沈殿物を取り除くことにより、水をきれいな状態に保つことができる。
第2濾過槽14bに移送された養殖水は、吸水ポンプ56により、水返送配管58を介して、エアー導入部66のエアーを混合した状態で飼育水層16に戻される。したがって、この濾過槽14からの返送によっても、養殖槽12の飼育水層16の溶存酸素濃度は高められる。
以上のように、養殖装置10においては、水循環配管30、32や水返送配管58から、エアーが混合された状態で、飼育水層16に養殖水が戻されるので、飼育水層16には十分な量のエアー(酸素)が供給され、飼育水層16の溶存酸素濃度は高く維持される。
また、下段水層20においては、エアーストーン40によるエアーの一部を導入させると共に、通水路48を通じて溶存酸素濃度の高い飼育水層16の養殖水を積極的に導入することから、下段水層20内の溶存酸素量が高く維持される。したがって、微生物浄化層18は、下方からもエアー(酸素)の供給を受けることが可能となり、微生物浄化槽18の微生物の生息範囲やその活性を高め、効果的に養殖水を浄化することができる。
本発明者らは、実際に、養殖装置10と同様の装置を用いてクエ等の養殖を行っているが、養殖魚が病気にかかることなく、かつ、養殖水を長期間交換することなく、養殖を行っている。また、飼育水層での溶存酸素濃度が高いことから、撒き餌の際に養殖魚が酸素不足になるということがなく、養殖魚が大量の餌を食べることが可能となり、養殖魚は従来に比して早く大きく育つ。さらに、複雑な機器を用いることなく装置を構成することができるので、施設整備のイニシャルコスト、電気使用料等のランニングコストも従来の装置に比べて格段に安価である。
本発明の養殖装置は、魚介類を陸上養殖できるものであることから、産業上有用である。
10 養殖装置
12 養殖槽
14 濾過槽
14a 第1濾過槽
14b 第2濾過槽
16 飼育水層
18 微生物浄化層
20 下段水層
22 格子状ボード
24 ネット
26 濾過材
28 エアパイプ
30 水循環配管
32 水循環配管
34 エアーリフト式循環手段
36 ポンプ式循環手段
38 エアーポンプ
40 エアーストーン
42 吸水ポンプ
44 放水口
46 エアー導入部
48 通水路
50 切欠き部
52 オーバーフロー管
54 濾過マット
56 吸水ポンプ
58 水返送配管
60 中央壁
62 通水口
64 放水口
66 エアー導入部

Claims (10)

  1. 魚介類が飼育される飼育水層と、水を浄化する微生物が生息する微生物浄化層と、下段水層とを上から順次有する養殖槽を備えた養殖装置であって、
    前記養殖槽は、
    前記飼育水層にエアーを供給して該飼育水層の溶存酸素を保持する飼育水層用溶存酸素保持手段と、
    前記下段水層にエアーを供給して該下段水層の溶存酸素を保持する下段水層用溶存酸素保持手段と、
    前記下段水層の水を飼育水層に循環させる水循環手段と、
    を備えていることを特徴とする養殖装置。
  2. 下段水層用溶存酸素保持手段が、下段水層に配置され、該下段水層に直接エアーを供給する下段水層用エアー供給手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の養殖装置。
  3. 水循環手段が、
    下段水層に一端が配置されると共に飼育水層又はその上方に他端が配置された水循環配管、及び該水循環配管にエアーを導入し揚水する循環用エアー供給手段を具備するエアーリフト式循環手段と、
    下段水層に一端が配置されると共に飼育水層又はその上方に他端が配置された水循環配管、及び下段水層の水を吸引し水循環配管を介して飼育水層に揚水する循環用ポンプを具備するポンプ式循環手段とを備え、
    下段水層用溶存酸素保持手段が、
    前記エアーリフト式循環手段の循環用エアー供給手段と、
    該循環用エアー供給手段のエアーを下段水層へ吸引する前記ポンプ式循環手段の循環用ポンプとを具備して構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の養殖装置。
  4. 水循環手段が、
    下段水層に一端が配置されると共に飼育水層又はその上方に他端が配置された水循環配管、及び下段水層の水を吸引し水循環配管を介して飼育水層に揚水する循環用ポンプを具備するポンプ式循環手段を備え、
    下段水層用溶存酸素保持手段が、
    微生物浄化層を貫通して下段水層及び飼育水層を連通する通水路と、
    該通水路を介して飼育水層の水を下段水層へ吸引する前記ポンプ式循環手段の循環用ポンプとを具備して構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の養殖装置。
  5. ポンプ式循環手段が、養殖槽の中央部に配置されると共に、エアーリフト式循環手段が、養殖槽の周囲に配置されていることを特徴とする請求項3又は4記載の養殖装置。
  6. ポンプ式循環手段の水循環配管が、他端側にエアー導入部を具備することを特徴とする請求項3〜5のいずれか記載の養殖装置。
  7. 微生物浄化層の下部又は下方に微生物浄化層用エアー供給手段を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の養殖装置。
  8. さらに、養殖槽から移送される一部の水を濾過する濾過槽と、該濾過槽で濾過した水を養殖槽に返送する水返送手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の養殖装置。
  9. 水返送手段が、濾過槽に一端が配置されると共に、養殖槽に他端が配置された水返送配管と、該水返送配管を介して濾過槽の水を養殖槽へ返送する返送用ポンプとを具備することを特徴とする請求項8記載の養殖装置。
  10. 水返送配管が、他端側にエアー導入部を具備することを特徴とする請求項9記載の養殖装置。
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