JP2020037404A - 車両用窓ガラス - Google Patents

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Kazunori Furuhashi
一範 古橋
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Abstract

【課題】クラックが生じにくい車両用窓ガラス及び車両用窓ガラスの製造方法を提供する。【解決手段】本発明の車両用窓ガラス1は、ガラス板11と、前記ガラス板11の表面に形成された10μmより厚く25μm以下の膜厚のカラーセラミック層12と、前記カラーセラミック層12の表面に形成された銀を主成分とする導電体層13と、を備え、前記導電体層13と、前記導電体層13に通電する端子との間が無鉛はんだ14により接続される。本発明の車両用窓ガラス1は、カラーセラミック層12の厚さが、10μmより厚いので、ガラス板1にクラックが発生しにくい。【選択図】図1

Description

本発明は、車両用窓ガラス及び車両用窓ガラスの製造方法に関するものである。
車両用窓ガラスにおいて、ベースとなるガラス板上に銀ペーストで形成された配線と、給電端子との間を接続するはんだ(はんだ合金)は、従来、鉛を含むものが使用されていた。しかし、近年、鉛の環境へ影響等が問題視され、無鉛はんだの使用へと移行している(特許文献1参照)。
無鉛はんだは、鉛を含む有鉛はんだに比べてヤング率が高く、剛性が高い。このため、機械的な応力や、熱膨張係数の違いによる応力が加わった場合、ガラス板にクラック等が発生したり、剥がれたりする可能性がある。
国際公開WO2012/096373号公報
本発明の課題は、クラックが生じにくい車両用窓ガラス及び車両用窓ガラスの製造方法を提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により上記課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、ガラス板と、前記ガラス板の表面に形成された10μmより厚く25μm以下の膜厚のカラーセラミック層と、前記カラーセラミック層の表面に形成された銀を主成分とする導電体層と、を備え、前記導電体層と、前記導電体層に通電する端子との間が無鉛はんだにより接続される車両用窓ガラスである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用窓ガラスであって、前記カラーセラミック層の厚さが、16μm以上であること、を特徴とする車両用窓ガラスである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用窓ガラスであって、前記導電体層は、1枚のスクリーンで塗布して形成されたものであること、を特徴とする車両用窓ガラスである。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラスであって、前記導電体層は、7〜8μmの膜厚であること、を特徴とする車両用窓ガラスである。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用窓ガラスの製造方法であって、セラミックペーストを、開口率が38%より大きく60%より小さいスクリーンで前記ガラス板に印刷してカラーセラミック層の前駆体の塗膜を形成する工程と、銀ペーストを、前記カラーセラミック層の前駆体の塗膜上に、1枚のスクリーンで印刷する工程と、を備える車両用窓ガラスの製造方法である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用窓ガラスの製造方法であって、セラミックペーストの印刷回数が1回である、車両用窓ガラスの製造方法である。
なお、上記構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
本発明によれば、クラックが生じにくい車両用窓ガラス及び車両用窓ガラスの製造方法を提供することができる。
実施形態の車両用窓ガラスの断面図である。 実施形態の車両用窓ガラス1の平面図である。
図1は、実施形態の車両用窓ガラス1の断面図である。図2は、実施形態の車両用窓ガラス1の平面図である。
本実施形態の車両用窓ガラス1は、例えばリアウィンドウとして用いられるものであるが、これに限定されない。図1に示す車両用窓ガラス1は、車両に組み込まれた場合、図中の下が車の外側となり、上が車の内側となる。
図示するように、車両用窓ガラス1は、外側から、ガラス板11と、カラーセラミック層(セラミック焼結層)12と、導電体層13と、無鉛はんだ14と、給電端子15とを備える。
(ガラス板11)
ガラス板11は、曲げ加工により湾曲した形状を備えていることが好ましい。例えば、ガラス板11が後部窓ガラスとして使用される場合は、略台形の湾曲した形状を有するものとするとよい。
ガラス板11は、風冷強化法や化学強化法によって、表面に圧縮応力層(外部圧力応用力)を形成させた強化ガラスや、2枚のガラス板を樹脂フィルムによって貼り合わせた合わせガラスであってもよい。
ガラス板11の材質としては、ISO16293−1で規定されているようなソーダ石灰珪酸塩ガラスの他、公知のガラス組成のものを使用することができる。また、ガラス板11の材質として、鉄やコバルト等の着色成分がガラス組成の成分として適宜調整され、グレー、緑、青などの色調を呈するものも使用してもよい。
(カラーセラミック層12)
カラーセラミック層12は、窓枠へ車両用窓ガラス1を接着した際の、ウレタン系接着剤の外部よりの日射による劣化防止、および車両用窓ガラス1の車内側の面に形成された導電体層13の配線等を外部から隠す等の目的で形成されるもので、好ましくは、黒色のものが使用される。
カラーセラミック層12は、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)とガラス板11の軟化点温度よりも低い軟化点温度を有するガラス材料とを有するカラーセラミック組成物である。
組成物として、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)の粉末、およびガラス材料であるガラスフリットの粉末が、ビヒクルと共に混練され形成されたセラミックペーストがスクリーン印刷によってガラス板11の表面に塗布され、その塗布物が焼成されて形成されたものを用いることができる。
耐熱性顔料は、セラミックカラーに目的の色を付与するために配合される。その粒径は、セラミックペーストへの分散性や発色性を考慮して適宜決定され、50%粒子径において、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μm程度のものを使用することができる。
耐熱性顔料としては、慣用の耐熱性顔料を使用できる。黒色を呈するための顔料例としては、銅−クロム複合酸化物、鉄−マンガン複合酸化物、銅−クロム−マンガン複合酸化物、コバルト−鉄−クロム複合酸化物、マグネタイト等が挙げられる。また、茶色を呈するための顔料例としては、亜鉛−鉄複合酸化物、亜鉛−鉄−クロム複合酸化物等が挙げられる。
さらに、青色系顔料の例として、コバルトブルー、緑色系顔料の例として、クロムグリーン、コバルト−亜鉛−ニッケル−チタン複合酸化物、コバルト−アルミニウム−クロム複合酸化物等が挙げられる。
これら顔料の他にも、白色系顔料(チタン白、酸化亜鉛等)、赤色系顔料(ベンガラ等)、黄色系顔料(チタンイエロー、チタン−バリウム−ニッケル複合酸化物、チタン−アンチモン−ニッケル複合酸化物、チタン−アンチモン−クロム複合酸化物等)を使用することもできる。
ガラスフリットは、カラーセラミックをガラス板に結着させ、カラーセラミック層12を形成するためのものである。ガラスフリットとしては、カラーセラミックにおいて慣用的に使用されているガラスフリットを使用できる。そのようなガラスフリットの例として、ホウケイ酸系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ビスマス系ガラスなどが挙げられる。これらのガラスフリットは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ガラスフリットの軟化点温度は、ガラス板11の曲げ成形温度、例えば、600〜750℃より低いものが好ましく、380〜600℃、好ましくは400〜580、より好ましくは410〜550℃程度のもが使用できる。
ガラスフリットの粒径は、スクリーン印刷時のセラミックペーストの塗布性を考慮して適宜決定され、例えば、50%粒子径において、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは1〜4μm程度のものを使用できる。
カラーセラミック層12において、ガラス材料(ガラスフリットが焼成されたもの)含有量は、50〜95質量%、好ましくは、60〜80質量%とすることができる。この含有量は、カラーセラミック層12のガラス板11への結着性、カラーセラミック層12の色調を考慮して、適宜調整することができる。
所定の厚みを有するカラーセラミック層12が介在することで無鉛はんだ14からガラス板11への応力を緩和できるような理由は明らかではない。カラーセラミック層12は、前記ガラス材料と、前記耐熱性顔料との焼成物であり、カラーセラミック層12は、気孔を含む多孔体となる。カラーセラミック層12は、ガラス11よりは柔軟な材料となるため、所定の厚みを有するカラーセラミック層12においては、応力の緩和が生じているのではないかと推察される。
ビヒクルは、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)の粉末、およびガラス材料であるガラスフリットの粉末を、ペースト化し、スクリーン印刷などの塗布工程に適用するために配合されるもので、分散媒とバインダーとを有するものである。ビヒクルは、印刷性(塗布性)を考慮して適宜配合され、例えば、カラーセラミックペースト全体に対して、10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%含有させることができる。
分散媒は、常温での揮発性が低く、ガラスフリットが軟化する温度よりも低い温度で揮発する程度の沸点を有するものが好ましく、例えば、50〜250℃程度のものを使用できる。
分散媒との例としては、脂肪族アルコール(例えば、2−エチルー1−ヘキサノール、オクタノール、デカノール等の飽和又は不飽和C6−3。脂肪族アルコール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のC1−4アルキルセロソルブ類等)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のC1−4アルキルセロソルブアセテート類)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール等のC1−4アルキルカルビトール類等)、カルビトールアセテート類(エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のC1−4アルキルセロソルブアセテート類)、脂肪族多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、グリセリン等)、脂環族アルコール類[例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール類1テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール類(例えば、モノテルペンアルコール等)等]、芳香族力ルボン酸エステル類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸ジC1−10アルキルエステル、ジブチルベンジルフタレート等のフタル酸ジC1−10アルキルアラルキルエステル等)、これら混合物等が挙げられる。
バインダーとして、カラーセラミックペーストに適度な粘度を与え、200〜550℃、好ましくは220〜400℃程度で分解できるものであればよい。
その例としては、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体など)、熱硬化性樹脂(熱硬化性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等)、これらの混合物等などが挙げられる。アクリル系樹脂が好ましい。バインダーのビヒクル全体に対する割合は、5〜80質量%、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%としてもよい。
(導電体層13)
導電体層13は、図2に示すように、ガラス板11の側辺両側のカラーセラミック層12上に形成された、バスバー13aと、両バスバー13aを連結して所定間隔で平行に配列された、線条13bとを有する。
導電体層13は、銀金属(銀、又は銀合金)、とガラス板11の軟化点温度よりも低い軟化点温度を有するガラス材料とを有する導電体組成物である。組成物は、銀を主成分とする銀ペーストを、カラーセラミック層12の上に、所定パターンに従ってスクリーン印刷によって塗布され、その塗布物が焼成されて形成されている。導電体層13は、例えばデフォッガやデフロスタの熱線プリントであるが、放送受信用のアンテナプリントであってもよい。
カラーセラミック層12及び導電体層13は、前述のように、スクリーン印刷及び乾燥の後、ともに焼結される。
銀ペーストは、銀、又は銀合金からなる銀粉末、導電体組成物でのガラス材料となるガラスフリット、ビヒクル、必要に応じてその他添加剤を含むものである。
導電体組成物中の銀金属の含有量、及び銀ペースト中の銀粉末の粒径は、導電体層13の比抵抗を考慮して適宜決定される。導電体組成物中の銀金属の含有量は、例えば、85〜99質量%、好ましくは88〜98質量%とすることができる。
他の成分は、実質的にはガラス板11の軟化点温度よりも低い軟化点温度を有するガラス材料からなり、このガラス成分は、ガラスフリットを焼成して形成することができる。銀粉末の粒径は、50%粒子径において、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜7μm程度のものを使用することができる。
銀ペーストで使用されるガラスフリットと、ビヒクルは、カラーセラミックペーストの項で述べたガラスフリット、ビヒクルと同様のものを適用することができ、ビヒクルの配合割合は、ペースト全体に対して、10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%含有させることができる。
導電体組成物は、該組成物の導電性を確保する必要があることから、銀金属の含有率を高めとする必要があり、カラーセラミック層よりも、ガラス材料の含有率が低いものとなっている。導電体層13の厚膜化によって、本発明の目的を達成できる可能性はあるが、導電体層13を厚膜化するためには、銀ペーストをガラス板11に多めに塗布する必要がある。銀ペーストのガラス板11への塗布は、スクリーン印刷により行うことができるが、生産効率向上のためには、印刷回数は1回とすることが好ましい。そのため、スクリーンを少なくとも2枚重ねることで、銀ペーストのガラス板への吐出量を増やすことがなされる。この方法による塗布では、導電体層13の厚膜化は、導電体層表面の粗面化を促すことになる。
導電体層13表面の粗面化は、無鉛はんだ14がアンカー効果により、強固に導電体層に接合するようになる。こうなると、無鉛はんだ14が、ガラス板11に与える応力が、より大きくなる。生産効率を考慮したうえで、カラーセラミック層12を厚膜化を図ると、結果として、車両用窓ガラス1において、ガラス板11にクラックが生じやすくなる。これを考慮すると、導電体層13の厚みは、7〜8μmとすることが好ましい。この厚みであれば、導電体層13の粗面化を生じせしめることなく、導電体層13を効率良く形成することができる。
(無鉛はんだ14)
無鉛はんだ14は、導電体層13で形成された、デフォッガ熱線やアンテナ線と給電端子15とを接合する。
無鉛はんだ14は、例えば、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系無鉛はんだであるがこれに限定されない。ただし、無鉛はんだ14による銀線の銀くわれ、すなわち導電体層13中の銀が無鉛はんだ14に拡散し、導電体層14中の銀の含有率が低下することを抑制するため、無鉛はんだ14は、Agを含むことが好ましい。
無鉛はんだ中、Snの含有量95質量%以上含んでいるものは使用され、その含有量は、好ましくは95〜99質量%、より好ましくは96〜98質量%とされる。Agの含有量は、5質量%以下で、好ましくは1.5〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%とされる。無鉛はんだがCuを含む場合、1.5質量%以下で、好ましくは1〜0.1質量%含むものとすることができる。
(給電端子15)
給電端子15は、車両に積載された電源(図示せず)と接続されるものであり、導電体層13に電流を供給するために設けられるものである。端子15の材料としては、導電性物質が良好で、機械加工が容易なものが好ましく、銅、黄銅(真鍮)のようなものを使用できる。
給電端子15の構造例としては、無鉛はんだ14と接合する一対の端子座15aと、これらを連結する脚部15bと、電気ケーブルを接続させるための部位(図示せず)を有するものが挙げられる。
このようにして、ガラス板11と、カラーセラミック層12と、導電体層13と、無鉛はんだ14と、給電端子15とが積層された車両用窓ガラス1が製造される。
(クラック発生)
ここで、導電体層13により形成されたデフォッガ配線やアンテナ配線には、給電端子15を介して、電流が流れたり遮断されたりする。これにより、ガラス板11は加熱と冷却とが繰り返される。また、大気環境の影響によって、加熱と冷却が繰り返される。
無鉛はんだ14は、従来の有鉛はんだと比べてヤング率が大きく、剛性が高いため、ガラス板11の膨張収縮に対して柔軟に追従しにくい。したがって、ガラス板11との熱膨張係数が異なると、ガラス板11に応力が加わり、クラック(亀裂、割れ、ヒビ等)が生じやすい。
上述のように、本発明者らは、無鉛はんだ14を用いた場合であっても、カラーセラミック層12及び導電体層13の膜厚等が所定の条件の場合、ガラス板11の加熱・冷却を繰り返しても、ガラス板11が割れにくいことを見出した。以下、その実験結果について説明する。
(実験内容)
1.カラーセラミック層12、導電体層13のガラス板11への形成
ガラス板11(300mm角(厚さ3.5mm)の平板ガラス)の周縁部にカラー(黒色)セラミックペーストをスクリーン印刷によって塗布し、120℃で20分間乾燥し、カラーセラミック層13の前駆体塗膜をガラス板11の周縁部に額縁状に形成した。
その後、銀ペーストをスクリーン印刷によって、カラーセラミック層12の前駆体の塗膜上、及びガラス板11上に塗布し、120℃で10分間乾燥し、導電体層13の前駆体塗膜を形成した。
各前駆体塗膜が形成されたガラス板11を、公知の風冷強化炉で、曲げ加工、及び風冷強化処理をし、カラーセラミック層12、及び導電体層13が形成されたガラス板11を得た。
導電体層13は、ガラス板11の側辺両側のカラーセラミック層12上に形成された、幅18mm、長さ250mmのバスバー13aと、両バスバー13aを連結し、40mm間隔で平行に配列された、線幅0.5mの線条13bとを有する。
各実施例、比較例のカラーセラミック層12の厚み、導電体層13の厚み、導電体層の表面粗さ(Ra)、スクリーン印刷の条件は表1に示すとおりである。
2.導電体層13(バスバー13a)への無鉛はんだ14を介しての給電端子15の接合
0.3〜0.6g量のSn(98質量%)−Ag(2質量%)からなる無鉛はんだ14を加熱して、給電端子15の端子座15aに付着させた。
その後、無鉛はんだ14にフラックスを塗布し、導電体層13(バスバー13a)上に無鉛はんだ14を局所加熱して、導電体層13(バスバー13a)への無鉛はんだ14を介しての給電端子15の接合を行った。
尚、本実施例では、ガラス板11への無鉛はんだ14の影響を見るための実験として、平板ガラスを用いたが、車両ガラスに使用される三次元に曲げ加工されたガラス板であっても同様の結果が得られることは言うまでもない。
3.無鉛はんだ14による接合部の良否評価
接合部の良否を、耐冷熱サイクル試験を車両用窓ガラス1に行うことで評価した。具体的には、20℃ →−40℃(90分)→20℃ →105℃(120分)→20℃を1サイクルとし、60サイクルを繰り返し実施した後のガラス板11へのクラック発生有無を観察した。
また、導電体層13と端子座15aの接合面に対して垂直方向に、プッシュ・プルゲージで給電端子15を80Nの強度で引っ張ることで、接合物の接合強度を測定した。ガラス板11へのクラックの発生が無く、接合部で、剥がれが生じないものを良品と判定した。
以下、試験結果を示す。
なお、前記スクリーンには、日本特殊織物株式会社によるスマートメッシュが使用された。メッシュの種類、#110、#135、#180、#200は、スクリーンメッシュ規格であり、1インチ(25.4mm)角内の線の数を表している。使用されたスクリーンにおいて、スクリーンの線幅、メッシュオープニング(線間距離)、及び開口率は、それぞれ、以下のとおりである。
スクリーンの線幅が同じ場合、メッシュを構成する線の数が多いほどスクリーンがきめ細かくなってガラスへのペースト吐出量が下がる傾向がある。
なお、カラーセラミック層12を形成するためには、印刷の回数を1回とできるように、メッシュオープニングが140〜180μm(好ましくは150〜170μm)、開口率が40〜60%(好ましくは45〜55%)のスクリーンを使用することが好ましいことがわかる。また、導電体層13を形成するためには、印刷の回数を1回とできるように、メッシュオープニングが53〜93μm(好ましくは63〜83μm)、開口率が24〜39%(好ましくは28〜36%)のスクリーンを使用することが好ましい。
(カラーセラミック層12の膜厚に関する考察)
表に示すように、カラーセラミック層12の厚さが10μm(#180を1回)の場合は、導電体層13の膜厚にかかわらず、ガラス板11にクラックが発生した。
カラーセラミック層12の厚さが18μm(#110を1回)の場合は、導電体層13の膜厚が7〜8μmにおいて、ガラス板11にクラックが発生しなかったが、導電体層13の膜厚が10μm以上において、ガラス板11にクラックが発生した。
カラーセラミック層12の厚さが20μm(#180を2回)の場合は、導電体層13の膜厚にかかわらずガラス板11にクラックが発生しなかった。
カラーセラミック層12は、10μm(#180を1回)の場合、導電体層13の厚さやスクリーン印刷の回数にかかわらす、クラックが発生することが分かった。
したがって、カラーセラミック層12の厚さは、10μmより厚いことが好ましい。さらに、18μm以上であることがより好ましい。
一方、カラーセラミック層12の厚さは、25μm超えになると、生産効率が低下するという問題がある。
したがって、本実施形態のカラーセラミック層12の厚さは、10μmより厚く、25μm以下であることが好ましく、18μm以上22μm以下であることがより好ましい。
セラミック層12の厚さが10μmとなるのは、#180を1回の場合である。すなわち、開口率が38%の場合である。したがって、開口率は38%より大きいことが好ましい。
セラミック層12の厚さが18μmとなるのは、#110を1回の場合である。すなわち、開口率は48%なので、開口率は48%以上であることがより好ましい。
なお、セラミック層12の厚さが25μmとなるのは、開口率が60%以上の場合である。
(導電体層13に関する考察)
上述のように、カラーセラミック層12の厚さが10μmの場合は、導電体層13の膜厚にかかわらず、ガラス板11にクラックが発生した。
カラーセラミック層12の厚さが18μmの場合は、導電体層13の膜厚が7〜8μmにおいて、ガラス板11にクラックが発生しなかったが、導電体層13の膜厚が10μm以上において、ガラス板11にクラックが発生した。
カラーセラミック層12の厚さが20μmの場合は、導電体層13の膜厚にかかわらずガラス板11にクラックが発生しなかった。
これは、カラーセラミック層12の厚さが10μm及び20μmの場合、カラーセラミック層12の厚さの影響が強いため、導電体層13の厚さに関係なく、ガラス板11のクラックの有無が決定されていると考えられる。
すなわち、カラーセラミック層12の厚さが10μmの場合、カラーセラミック層12が薄いので、無鉛はんだ14とガラス板11との間の熱膨張の差によって生じる応力を緩衝することができず、ガラス板11にクラックが発生する。
カラーセラミック層12の厚さが20μmの場合、カラーセラミック層12が厚いので、無鉛はんだ14とガラス板11との間の熱膨張の差によって生じる応力が緩衝され、ガラス板11にクラックが発生しない。
一方、カラーセラミック層12の厚さが18μmの場合、カラーセラミック層12の厚さがガラスのクラックの有無に与える影響が流動的であると考えられる。
したがって、導電体層13の状態もガラスのクラックの有無に影響を与え、導電体層13が、スクリーン印刷を1回行って厚さが7〜8μmである場合、ガラス板11にクラックが発生せず、スクリーン印刷を2回行って厚さが10μm以上である場合、ガラス板11にクラックが発生すると考えられる。
これは、導電体層13を形成する際のスクリーンを重ねる枚数が影響すると考えられる。
導電体層13は、2枚のスクリーンで塗布されて形成されたものであると、1枚のスクリーンで塗布されて形成された場合より導電体層13の表面が粗くなる。表面が粗くなるほど、アンカー効果で導電体層13と無鉛はんだ14との接着が強くなる。接着力が強すぎると、ガラス板11の膨張係数と無鉛はんだ14の熱膨張係数との差によってガラス板11へ加わる応力が大きく、クラックが発生しやすくなる。
一方、導電体層13を、1枚のスクリーンで塗布して形成した場合、導電体層13の表面は2枚のスクリーンで塗布して形成した場合と比べて滑らかである。このため、1枚のスクリーンで塗布して形成した場合、2枚のスクリーンで塗布して形成した場合と比べて導電体層13と無鉛はんだ14との間の接着力が弱い。したがってガラス板11の膨張係数と無鉛はんだ14の熱膨張係数との差によって生じる応力が緩和され、ガラス板11がクラック生じにくくなる。なお、この場合であっても、導電体層13と無鉛はんだ14とが剥がれることはなかった。
すなわち、導電体層13と無鉛はんだ14との間の接着力は、剥がれが生じるほどではないが、無鉛はんだ14とガラス板11との間の熱膨張の差を緩衝する程度に弱かったためガラス板11にクラックの発生が生じなかったと考えられる。
ゆえに、実施形態の導電体層13は、カラーセラミック層12の厚さが18μmの場合、1枚のスクリーンで塗布して形成したものとしてもよい。
導電体層13を形成するためには、1枚のスクリーンできるように、メッシュオープニングは#200、すなわち開口率32%が好ましい。
(実施形態の効果)
(1)本実施形態の車両用窓ガラス1は、ガラス板11と、ガラス板11の表面に形成されたカラーセラミック層12と、カラーセラミック層12の表面に形成された銀を主成分とする導電体層13と、を備え、導電体層13と、導電体層3に通電する端子15との間が無鉛はんだ14により接続されている。そして、カラーセラミック層12の厚さが、10μmより厚く25μm以下である。
本実施形態によると、カラーセラミック層12の厚さが、10μmより厚いので、ガラス板1にクラックが発生しにくい。
(2)また、カラーセラミック層12の厚さが、18μm以上の場合、クラックがより発生しにくい。さらに、カラーセラミック層12の厚さが、20μm以上の場合、ガラス板1にクラックがさらに発生しにくい。
(3)実施形態の車両用窓ガラス1カラーセラミック層12の厚さが18μmで、導電体層13が1枚のスクリーンで塗布して形成されたものであるので、ガラス板1にクラックが発生しにくい。
(4)実施形態の車両用窓ガラス1の導電体層13は、カラーセラミック層12の厚さが、18μmの場合、7〜8μmの膜厚であるので、ガラス板1にクラックが発生しにくい。
1:車両用窓ガラス、11:ガラス板、12:カラーセラミック層、13:導電体層、14:無鉛はんだ、15:給電端子
本発明の課題は、クラックが生じにくい車両用窓ガラス及び車両用窓ガラスを提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により上記課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、ガラス板と、前記ガラス板の表面に形成された10μmより厚く25μm以下の膜厚のカラーセラミック層と、前記カラーセラミック層の表面に形成された銀を主成分とする導電体層と、を備え、前記導電体層と、前記導電体層に通電する端子との間が、Sn−Ag系、又はSn−Ag−Cu系の無鉛はんだにより接続される車両用窓ガラスである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用窓ガラスであって、前記無鉛はんだのSn含有量が95質量%〜99質量%である、車両用窓ガラスである
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用窓ガラスであって、前記無鉛はんだのAg含有量が1.5質量%〜5質量%である、車両用窓ガラスである
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラスであって、前記カラーセラミック層の厚さが1μm以上で、前記導電体層が7〜8μmの膜厚であること、を特徴とする車両用窓ガラスである。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用窓ガラスであって、前記カラーセラミック層の厚さが20μmであること、を特徴とする車両用窓ガラスである
請求項6に記載の発明は、 請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用窓ガラスであって、前記導電体層は、1枚のスクリーンで塗布して形成されたものであること、を特徴とする車両用窓ガラスである。
なお、上記構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
本発明によれば、クラックが生じにくい車両用窓ガラスを提供することができる。

Claims (6)

  1. ガラス板と、
    前記ガラス板の表面に形成された10μmより厚く25μm以下の膜厚のカラーセラミック層と、
    前記カラーセラミック層の表面に形成された銀を主成分とする導電体層と、を備え、
    前記導電体層と、前記導電体層に通電する端子との間が無鉛はんだにより接続される車両用窓ガラス。
  2. 請求項1に記載の車両用窓ガラスであって、
    前記カラーセラミック層の厚さが、16μm以上であること、
    を特徴とする車両用窓ガラス。
  3. 請求項1又は2に記載の車両用窓ガラスであって、
    前記導電体層は、1枚のスクリーンで塗布して形成されたものであること、
    を特徴とする車両用窓ガラス。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラスであって、
    前記導電体層は、7〜8μmの膜厚であること、
    を特徴とする車両用窓ガラス。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用窓ガラスの製造方法であって、
    セラミックペーストを、開口率が38%より大きく60%より小さいスクリーンで前記ガラス板に印刷してカラーセラミック層の前駆体の塗膜を形成する工程と、
    銀ペーストを、前記カラーセラミック層の前駆体の塗膜上に、1枚のスクリーンで印刷する工程と、
    を備える車両用窓ガラスの製造方法。
  6. 請求項5に記載の車両用窓ガラスの製造方法であって、セラミックペーストの印刷回数が1回である、車両用窓ガラスの製造方法。
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