JP2020037056A - 中空糸膜束、中空糸膜モジュール及びカートリッジ - Google Patents
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Abstract
【課題】低発塵性及び高耐久性が同時に実現される中空糸膜モジュールを与える中空糸膜束、並びにこれを備える中空糸膜モジュール及びカートリッジを提供する。【解決手段】一端と他端とを有する複数のポリケトン中空糸膜と、前記複数のポリケトン中空糸膜の前記一端、前記他端又はこれらの両者を、前記ポリケトン中空糸膜の中空部開口を保持したままで互いに固定して固定端面を与える接着剤とを有する、中空糸膜束であって、前記ポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量が200ppm以下である、中空糸膜束。【選択図】図1
Description
本発明は、中空糸膜束、中空糸膜モジュール及びカートリッジに関する。
従来から、超純水製造プロセスや、半導体材料用樹脂組成物の精製プロセス、医薬品製造工程等の、各種異物除去プロセスにおいて、ポリケトン中空糸膜を容器内に収容してなる膜モジュールを用いる方法が検討されている。ポリケトンは、その高い結晶性により、高力学特性、高融点、耐有機溶媒性及び耐薬品性等の優れた特性を有し、更に、水及び各種有機溶媒との親和性にも優れることから、ポリケトン中空糸膜は上記水処理プロセスに好適である。例えば、特許文献1は、半透膜の性能を有する薄膜層がポリケトン支持層に積層されていることを特徴とする正浸透膜においてポリケトン支持層が平板形状又は中空糸形状であってよいことを記載し、図1においてポリケトン中空糸膜のモジュールを示している。
例えば、中空糸膜モジュールは、筒状容器内に複数本の中空糸膜が束ねられて収容されているとともに、該中空糸膜の各々の端部が筒状容器の各々の端部に接着剤で固定された構造を有している(例えば、特許文献1の上記図1を参照のこと。)。この固定は、容器内に中空糸膜束を収容した後、容器(及び中空糸膜)の両端の各々を接着剤に接触させ、該接着剤を固化させ、次いで中空糸膜の両端が開口するように中空糸膜両端部の余剰部分を切断することによって行う。しかしこの方法では、中空糸膜モジュールの使用時に、中空糸膜及び/又は接着剤の成分の純水(処理水)中への混入(すなわち発塵)という問題、並びに中空糸膜のリークが経時的に顕著になり耐久性に欠けるという問題があった。
本発明は上記の課題を解決し、低発塵性及び高耐久性が同時に実現される中空糸膜モジュールを与える中空糸膜束、並びにこれを備える中空糸膜モジュール及びカートリッジを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題点を解消するために鋭意検討を進めた結果、純水中への中空糸膜成分及び/又は接着剤成分の混入の原因が、中空糸膜束を製造する際の、接着剤を固化させた後の中空糸膜余剰部分の切断にあることを明らかにした。より具体的には、本発明者らは、ポリケトンを溶解するために用いた溶媒が、中空糸膜中に残存して中空糸膜及び接着剤の劣化を進行させること、及び、中空糸膜及び接着剤のこのような劣化した部分が、中空糸膜余剰部分の切断によって発塵し、モジュール化後の(すなわちモジュール使用時の)、発塵及びリークの原因になることを突き止めた。そして、中空糸膜に残存する溶媒の量を低減することで、低発塵性かつ高耐久性を実現する中空糸膜モジュールを与える中空糸膜束が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の構成を包含する。
[1] 一端と他端とを有する複数のポリケトン中空糸膜と、
前記複数のポリケトン中空糸膜の前記一端、前記他端又はこれらの両者を、前記ポリケトン中空糸膜の中空部開口を保持したままで互いに固定して固定端面を与える接着剤とを有する、中空糸膜束であって、
前記ポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量が200ppm以下である、中空糸膜束。
[2] 前記固定端面において、前記ポリケトン中空糸膜と前記接着剤との合計面積に対する前記ポリケトン中空糸膜の面積の比率である充填率が、30面積%以上である、上記態様1に記載の中空糸膜束。
[3] 前記接着剤が、熱硬化性樹脂である、上記態様1又は2に記載の中空糸膜束。
[4] 前記ポリケトン中空糸膜の平均貫通孔径が0.02μm〜0.4μmである、上記態様1〜3のいずれかに記載の中空糸膜束。
[5] 上記態様1〜4のいずれかに記載の中空糸膜束と、容器とを備える中空糸膜モジュールであって、
前記接着剤は、前記中空糸膜束を前記容器に固定している、中空糸膜モジュール。
[6] 上記態様5に記載の中空糸膜モジュールを備える、カートリッジ。
[1] 一端と他端とを有する複数のポリケトン中空糸膜と、
前記複数のポリケトン中空糸膜の前記一端、前記他端又はこれらの両者を、前記ポリケトン中空糸膜の中空部開口を保持したままで互いに固定して固定端面を与える接着剤とを有する、中空糸膜束であって、
前記ポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量が200ppm以下である、中空糸膜束。
[2] 前記固定端面において、前記ポリケトン中空糸膜と前記接着剤との合計面積に対する前記ポリケトン中空糸膜の面積の比率である充填率が、30面積%以上である、上記態様1に記載の中空糸膜束。
[3] 前記接着剤が、熱硬化性樹脂である、上記態様1又は2に記載の中空糸膜束。
[4] 前記ポリケトン中空糸膜の平均貫通孔径が0.02μm〜0.4μmである、上記態様1〜3のいずれかに記載の中空糸膜束。
[5] 上記態様1〜4のいずれかに記載の中空糸膜束と、容器とを備える中空糸膜モジュールであって、
前記接着剤は、前記中空糸膜束を前記容器に固定している、中空糸膜モジュール。
[6] 上記態様5に記載の中空糸膜モジュールを備える、カートリッジ。
本発明によれば、低発塵性かつ高耐久性を実現する中空糸膜モジュールを与える中空糸膜束、並びにこれを備える中空糸膜モジュール及びカートリッジが提供される。
以下、本発明の実施形態の例について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本開示で、図面に付された同一の符号は、同様の構造及び/又は機能を有する要素を意図する。
<中空糸膜束>
本発明の一態様は、
一端と他端とを有する複数のポリケトン中空糸膜と、
該複数のポリケトン中空糸膜の一端、他端又はこれらの両者を、ポリケトン中空糸膜の中空部開口を保持したままで互いに固定して固定端面を与える接着剤とを有する、中空糸膜束であって、
ポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量が200ppm以下である、中空糸膜束を提供する。
本発明の一態様は、
一端と他端とを有する複数のポリケトン中空糸膜と、
該複数のポリケトン中空糸膜の一端、他端又はこれらの両者を、ポリケトン中空糸膜の中空部開口を保持したままで互いに固定して固定端面を与える接着剤とを有する、中空糸膜束であって、
ポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量が200ppm以下である、中空糸膜束を提供する。
[ポリケトン中空糸膜]
(ポリケトン中空糸膜の材質)
ポリケトン中空糸膜は、典型的には、ポリケトンの三次元に等方的なナノフィブリル構造を有する。典型的な態様において、ポリケトン中空糸膜は、一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含む。ポリケトン中空糸膜中のポリケトンの含有率は、ポリケトンが本来持つ耐熱性及び耐薬品性を反映させるという観点から、多いほど好ましい。ポリケトン中空糸膜中のポリケトン含有率は、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が更に好ましい。ポリケトン中空糸膜中のポリケトンの含有率は、該中空糸膜を構成する成分のうちポリケトンのみを溶解する溶媒によってポリケトンを溶解除去する方法、又は、ポリケトン以外を溶解する溶媒によってポリケトン以外を溶解除去する方法によって確認される。
(ポリケトン中空糸膜の材質)
ポリケトン中空糸膜は、典型的には、ポリケトンの三次元に等方的なナノフィブリル構造を有する。典型的な態様において、ポリケトン中空糸膜は、一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含む。ポリケトン中空糸膜中のポリケトンの含有率は、ポリケトンが本来持つ耐熱性及び耐薬品性を反映させるという観点から、多いほど好ましい。ポリケトン中空糸膜中のポリケトン含有率は、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が更に好ましい。ポリケトン中空糸膜中のポリケトンの含有率は、該中空糸膜を構成する成分のうちポリケトンのみを溶解する溶媒によってポリケトンを溶解除去する方法、又は、ポリケトン以外を溶解する溶媒によってポリケトン以外を溶解除去する方法によって確認される。
ポリケトンの合成において、一酸化炭素と共重合させるオレフィンとしては、目的に応じて任意の種類の化合物を選択できる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の鎖状オレフィン、スチレン、α −メチルスチレン等のアルケニル芳香族化合物、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン等の環状オレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化アルケン、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、及び酢酸ビニル等が挙げられる。ポリケトン中空糸膜の力学特性及び耐熱性の観点からは、共重合させるオレフィンの種類は、1〜3種類であることが好ましく、1〜2種類であることがより好ましく、1種類であることが更に好ましい。
本発明の好適な形態の1つにおいては、ポリケトンが、下記化学式(1):
{式中、Rは、置換又は非置換の、炭素数2〜20の炭化水素基である。}で表される繰り返し単位を含む。Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上を含むことができる。ポリケトンを構成する繰り返し単位(すなわちケトン繰り返し単位)は1種類又は2種類以上の組合せであることができる。
ポリケトン中空糸膜の力学特性及び耐熱性の観点からは、上記化学式(1)のRの炭素数は2〜8がより好ましく、2〜3が更に好ましく、2が最も好ましい。特に、ポリケトンを構成する繰り返し単位は、下記化学式(2):
で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を多く含むほど好ましい。力学特性及び耐熱性の観点からは、ポリケトンを構成する繰り返し単位中の1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合は、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合は100モル%でもよい。一方、ポリケトンを構成する繰り返し単位には、後述するように1−オキソトリメチレン繰り返し単位以外の構造が0.1モル%以上含まれていてもよい。なおここで上記100モル%とは、公知の元素分析、NMR(核磁気共鳴)、ガスクロマトグラフィー等の分析装置において、ポリマー末端基を除いて1−オキソトリメチレン以外の繰り返し単位が観測されないことを言う。典型的には、ポリケトンを構成する繰り返し単位の構造及び各構造の量は、NMRによって確認される。
ポリケトンが、例えば4級アンモニウム基及びスルホン酸基のような官能基を有する場合、カチオン化又はアニオン化された、イオン交換能を持つポリケトン中空糸膜が得られる。
ポリケトン中空糸膜においては、必要に応じて、耐薬品性及び耐熱性を向上させる目的で、ポリケトンが三次元架橋処理されていてもよい。ポリケトンが三次元架橋されていることにより、溶媒に対して不溶化され、熱に対しての変形も改善される。三次元架橋構造としては特に制限は無く、例えば加熱処理によるアルドール縮合構造、ジアミン化合物による架橋構造(すなわちメチレン鎖で架橋されたピロール環構造、詳細は国際公開第2010/33027号パンフレットを参照)等が挙げられる。三次元架橋はポリケトン中空糸膜を形成した後に行われることが好ましい。架橋反応度の好ましい範囲としては、ポリケトン中空糸膜が晒される薬品及び溶媒、並びに温度により異なるが、ポリケトンをヘキサフルオロイソプロパノール(25℃)中で3時間攪拌したとき、溶解前のポリケトンの質量に対する、溶解せずに固形分として残ったポリケトンの質量の比率が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
ポリケトンは、例えば、パラジウム、ニッケルなどを触媒として用いて、一酸化炭素とオレフィンを重合させることにより得ることができる。ポリケトンの製造方法としては特に制限はなく、例えば国際公開第2003/055934号パンフレットに記載されるような公知の方法を用いて製造することができる。
ポリケトンを溶解させる溶媒は特に限定されず、ヘキサフルオロイソプロパノール、プロピレンカーボネート、m−クレゾール等の有機溶媒、レゾルシン水溶液、塩化亜鉛、塩化亜鉛/塩化カルシウム、塩化亜鉛/塩化リチウム、塩化亜鉛/チオシアン酸カルシウム、塩化亜鉛/塩化カルシウム/塩化リチウム、塩化亜鉛/塩化カルシウム/チオシアン酸カルシウム等の金属塩水溶液等の公知の溶媒を用いることができる。膜厚方向に均一な孔径を持つ中空糸膜を製造するには、前記した溶媒の選択と、ポリケトンドープを相分離させる凝固液の組み合わせとが重要である。詳しくは、溶媒としてはポリケトンを十分良好に溶解させる溶媒を選択し、凝固液としてはポリケトンドープを適切な速度で相分離させる非溶媒を選択することが重要である。上記の理由より、ポリケトン中空糸膜を製造するために用いる溶媒としては、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、レゾルシン水溶液等が好ましい。
ポリケトンを溶解させる溶媒のポリケトン中空糸膜中の残存量は、カートリッジ化した中空糸膜の発塵防止の観点から、中空糸膜の全構成成分に対して、質量基準で、200ppm以下であることが必要である。該残存量は100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、1ppm以下であることが最も好ましい。
ここで、全構成成分とは、前述の4級アンモニウム基及びスルホン酸基のような官能基や、中空糸膜本来の性能を妨げない範囲内で添加する、後述の無機フィラー、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、親水性高分子、タンパク吸着性物質等の、機能性物質も含んだ構成成分をいう。
溶媒残存量は、1H−NMR方法で測定される値である。
ここで、全構成成分とは、前述の4級アンモニウム基及びスルホン酸基のような官能基や、中空糸膜本来の性能を妨げない範囲内で添加する、後述の無機フィラー、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、親水性高分子、タンパク吸着性物質等の、機能性物質も含んだ構成成分をいう。
溶媒残存量は、1H−NMR方法で測定される値である。
ポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量を上記範囲に制御する手段としては、これらに限定されないが例えば、熱水による洗浄、超純水による洗浄、他の溶媒(例えば、2−プロパノール、アセトン、ヘキサン安堵の有機溶媒)による洗浄等が挙げられる。より具体的には、中空糸膜束を設置した容器に、電気抵抗率18.2MΩ以上かつ80℃以上の熱水を100ml/分以上で連続的に供給し続ける洗浄方法等を好ましく例示できる。
以下、ポリケトン中空糸膜の製造方法の一例として、レゾルシン水溶液を用いた方法を説明する。
レゾルシン水溶液中のレゾルシン濃度としては、ポリケトンの溶解性及び構造の観点から60〜80質量%が好ましく、より好ましくは60〜75質量%、さらに好ましくは60〜70質量%である。ポリケトン粉末は、該レゾルシン水溶液と混合され、加熱及び撹拌されて、必要に応じて減圧下又は加圧下で脱泡され、ポリケトンドープとなる。この際使用するポリケトンの極限粘度と、ドープ中のポリケトン濃度(以下ポリマー濃度ともいう)との組合せは、ポリケトン中空糸膜の構造を維持する力学的強度、成形性、及び均一な溶解の確保の観点から、極限粘度が0.1〜10dl/gかつポリマー濃度が1〜50質量%の範囲での組合せが好ましく、極限粘度が0.5〜6dl/gかつポリマー濃度が3〜20質量%の範囲での組合せがより好ましい。上記組合せは、ポリケトンドープの粘度及びポリケトン中空糸膜の構造を考慮しながら適宜決められる。特に、ポリマー濃度は最終的なポリケトン中空糸膜の孔径に影響を与えるため、その調整は重要である。
レゾルシン水溶液中のレゾルシン濃度としては、ポリケトンの溶解性及び構造の観点から60〜80質量%が好ましく、より好ましくは60〜75質量%、さらに好ましくは60〜70質量%である。ポリケトン粉末は、該レゾルシン水溶液と混合され、加熱及び撹拌されて、必要に応じて減圧下又は加圧下で脱泡され、ポリケトンドープとなる。この際使用するポリケトンの極限粘度と、ドープ中のポリケトン濃度(以下ポリマー濃度ともいう)との組合せは、ポリケトン中空糸膜の構造を維持する力学的強度、成形性、及び均一な溶解の確保の観点から、極限粘度が0.1〜10dl/gかつポリマー濃度が1〜50質量%の範囲での組合せが好ましく、極限粘度が0.5〜6dl/gかつポリマー濃度が3〜20質量%の範囲での組合せがより好ましい。上記組合せは、ポリケトンドープの粘度及びポリケトン中空糸膜の構造を考慮しながら適宜決められる。特に、ポリマー濃度は最終的なポリケトン中空糸膜の孔径に影響を与えるため、その調整は重要である。
中空糸膜の製造においては、比較的ポリケトンドープの粘度が高い方が中空形状の成形において適している。この観点から、成形温度でのドープ粘度は100〜5000poiseであることが好ましい。ドープ粘度が100poise以上である場合、ポリケトン中空糸膜の成型時に糸切れが生じにくく、連続して糸を作ることが容易になる。一方、ドープ粘度が5000poise以下である場合、内部の中空を作ることが容易であり好ましい。ドープ粘度は200〜4000poiseであることがより好ましく、300〜2000poiseであることが更に好ましい。押し出しの際のドープ温度は、上記の好ましいドープ粘度にするために適宜調節されるが、通常は20〜90℃が好ましい。20℃以上である場合、ドープ粘度の過度の増大を回避して膜の厚みを均一にすることができるとともに、ドープ中の溶質の析出を回避できる。また90℃以下である場合、ドープ中の溶媒が蒸発することによるドープの組成の変化を回避でき、目的の構造制御が容易になる。
ポリケトン中空糸膜は、二重管オリフィス(円筒二重管オリフィス)、C型オリフィス等の紡糸口金を用いて製造することができる。二重管オリフィスを用いる場合、外側の輪状オリフィスからはポリケトンドープを、内側の円状オリフィスからは液体又は気体を、空気中へ吐出することが好ましい。内側の円状オリフィスからの吐出物は、中空糸膜形状の制御性の観点からは気体であることが好ましく、紡糸の安定性の観点からは液体であることが好ましい。内側の円状オリフィスから気体を吐出する場合、該気体としては乾燥させた窒素が好ましい。内側の円状オリフィスから液体を吐出する場合、膜厚方向で均一な構造を形成する観点から、該液体は後述の凝固液と近い、又は同じ組成にすることが好ましい。また、中空部の形状維持の点から、内側の円状オリフィスから流す液体又は気体は、0.01MPa以上の圧力をかけて吐出されることが好ましい。
次いで、空気中へ押し出されたポリケトンドープから、乾式又は湿式でポリケトンを析出させることにより、凝固した微多孔構造が形成される。レゾルシン水溶液を溶媒とした場合、空気中へ押し出された、中空部に気体又は液体が充填されたポリケトンドープは、メタノール、水、又はそれらの混合溶媒等の、レゾルシンが溶解可能な凝固液に浸漬する。そして凝固した中空糸膜には、洗浄、及び必要に応じた溶媒置換又は温水処理が行われる。乾燥処理は行っても行わなくてもよい。
上述のようにして得たポリケトン中空糸膜を、必要に応じて延伸してもよい。延伸は1軸方向で行われ、延伸倍率は5倍以下が好ましい。5倍以下である場合、延伸時にポリケトン中空糸膜が破断せず好ましい。延伸は、凝固液中でポリケトンドープを凝固させた直後に行ってもよいし、ポリケトン中空糸膜の乾燥後に、必要ならば加熱して、行なってもよい。加熱延伸を実施する場合、延伸速度は1cm長あたり秒速0.5cm以下で行なうことが好ましい。ポリケトン中空糸膜の孔を構成する繊維状組織は太さが1μm程度、又はそれ以下と非常に細く、空隙率の高い構造であるため、延伸速度は遅いことが好ましい。ポリケトン中空糸膜の孔を扁平孔にする場合は、1軸方向の延伸で1.2〜5倍の延伸を行なう。
ポリケトン中空糸膜に所望の機能を付与するという観点で、ポリケトン中空糸膜を構成するポリケトンの少なくとも1つの水素原子を他の基に置換する場合、置換方法としては、例えば電子線、γ線、プラズマ等の照射によってポリケトンにラジカルを発生させた後、望みの機能を発現する官能基を有する反応性モノマーを付加させる方法が挙げられる。反応性モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸及びそれらの誘導体、アリルアミン、p−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。上記の置換処理は、ポリケトンを中空糸膜に成型する前に行ってもよいし、中空糸膜に成型した後に行ってもよいが、成型性の観点から、中空糸膜に成型した後に行う方が好ましい。
ポリケトン中空糸膜を構成するポリケトンの極限粘度(これは分子量の指標である)は、特に制限はしないが、力学特性及び成型性の観点から、0.1〜20dl/gであることが好ましい。極限粘度が0.1dl/g以上のポリケトンより構成されるポリケトン中空糸膜は、強度が高く濾材としての使用において好適である。更に、極限粘度が0.1dl/g以上のポリケトンは、水及び種々の有機溶媒に易溶なオリゴマー成分の含有量が少ない。このようなポリケトンを成型して得られるポリケトン中空糸膜は、不純物の混入が許されない濾材として好適に使用される。一方、極限粘度が20dl/g以下であるポリケトンは、製造コストの点で有利であり、また均一な中空糸膜に製膜することが容易であるため実用面で有利である。ポリケトンの極限粘度は、より好ましくは0.3dl/g以上、更に好ましくは0.5dl/g以上、更に好ましくは1dl/g以上であり、より好ましくは10dl/g以下、更に好ましくは6dl/g以下である。上記極限粘度は、以下の定義式:
{式中、tは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールの25℃での粘度管の流過時間であり、そしてTは、ポリケトンがヘキサフルオロイソプロパノールに溶解している希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質(すなわちポリケトン)質量値である。}
に基づいて求められる値である。
に基づいて求められる値である。
例えば、ポリケトンの溶媒としてレゾルシンを用いる場合、成型後のポリケトン中空糸膜中のレゾルシンの残存量は、溶媒の残存量と同様に、カートリッジ化した中空糸膜の発塵防止の観点から、中空糸膜の全構成成分に対して、質量基準で、200ppm以下であることが必要である。該残存量は100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、1ppm以下であることが最も好ましい。
ポリケトンの融点については特に制限はないが、ポリケトンの融点は高いほど高温環境での使用に有利である。ポリケトンの融点は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることが更に好ましく、240℃以上であることが最も好ましい。上記融点は、示差熱測定の昇温過程におけるポリケトンの融解による吸熱開始点とする。
ポリケトンの結晶化度は、強度、寸法安定性、耐熱性、及び耐薬品性の観点から、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。上記結晶化度(%)は、示差熱測定の昇温過程における融解の吸熱ピーク面積をΔH(J/g)、ポリケトン結晶の融解熱をΔH0(J/g)とすると、結晶化度(%)=ΔH/ΔH0×100で求められる。
ポリケトン中空糸膜は、本来の性能を妨げない範囲内で、無機フィラー、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、親水性高分子、タンパク吸着性物質等の、機能性物質を含んでもよい。具体的には、ポリケトン中空糸膜は、機械的強度、耐衝撃性、及び耐熱性を上げるために、無機フィラーとしてガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、又はカーボンナノチューブ等を含んでもよい。また、ポリケトン中空糸膜は、光及び酸化に対する安定性を向上させるために、光安定剤として紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を含んでもよく、酸化防止剤としてフェノール系、リン系、又は硫黄系の酸化防止剤等を含んでもよい。更に、ポリケトン中空糸膜は、帯電防止剤として各種界面活性剤等を含んでもよい。また、親水性を上げるために、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コラーゲン等の親水性高分子等を含んでもよい。また、ポリケトン中空糸膜は、タンパク吸着性を上げるためにニトロセルロース等を含んでもよい。
上記機能性物質の合計含有量は、ポリケトン100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。該合計含有量が30質量部以下であれば、ポリケトン中空糸膜の強度の低下、並びに機能性物質の脱落及び溶出が生じにくく好ましい。該合計含有量は、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
(ポリケトン中空糸膜の形態)
ポリケトン中空糸膜は、長手方向に貫通した空隙(以下、中空部ともいう)を内部に少なくとも1つ有する。好ましい態様において、中空糸膜の径断面はリング形状を有する。
ポリケトン中空糸膜は、長手方向に貫通した空隙(以下、中空部ともいう)を内部に少なくとも1つ有する。好ましい態様において、中空糸膜の径断面はリング形状を有する。
中空糸膜束を接着剤によって固定する方法としては、通常、中空糸膜モジュール等における容器に収容された状態の中空糸膜束の端部を、流動状態にある接着剤に接触させ、その後、接着剤を固化(例えば、硬化、溶媒除去等によって)させ、更に中空糸膜束の端部の余剰部分を切断除去する方法が用いられる。接着剤の典型的な接触方法は、中空糸膜束の端部の接着剤への浸漬(本開示で、ポッティングともいう。)である。接着剤は、中空糸膜間に浸入する一方で中空部には浸入しないことが望まれる。中空部に接着剤が浸入すると、中空糸膜束の余剰部分を除去した後にも、中空部が接着剤で目詰まりしたままとなって、発塵、透水性低下、リーク、処理水の品質低下等の原因となる場合がある。一方、中空糸膜内及び中空糸膜間への接着剤の浸入が不十分であると、モジュールの耐久性低下、リーク等の原因となる場合がある。
上記観点から、ポリケトン中空糸膜の孔径(すなわち多孔膜における細孔の孔径)の標準偏差を平均孔径で除した値である孔径均一度パラメータは、好ましくは0〜1.0であり、より好ましくは0〜0.8、更に好ましくは0〜0.6である。孔径均一度パラメータが上記範囲であることは、細孔サイズの各ポリケトン中空糸膜内での均一性が良好であることを意味する。細孔サイズが過度が大きい箇所では接着剤が中空部にも浸入して目詰まりが生じやすい。一方細孔サイズが過度に小さい箇所では中空糸膜内及び中空糸膜間への接着剤の浸入が不十分になりやすい。孔径均一度パラメータが上記範囲である場合、接着剤のポリケトン中空糸膜への浸入状態が良好に制御されるため、接着剤の中空部への浸入を防止しつつ中空糸膜間を接着剤によって良好に固定できる。特に、接着剤が親水性樹脂を含む場合、ポリケトン中空糸膜を構成するポリケトンもまた親水性であることから中空糸膜と樹脂との親和性が高い(すなわち中空部内にも樹脂が浸入しやすい)が、孔径均一度パラメータが上記範囲である場合、接着剤の浸入が中空糸膜の一部で顕著に生じることを良好に回避できる。
上記平均孔径は、良好な透水量(フラックス)を得る観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは150nm以上であり、良好な分離性能を得る観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは180m以下、更に好ましくは160nm以下である。
上記平均孔径及び孔径均一度パラメータは例えば以下の方法で測定する。すなわち、ポリケトン中空糸膜の径断面の電子顕微鏡画像を撮影し、画像解析装置を用い、対象孔の円相当径を孔径として求める。中空糸膜の厚み方向に視野をずらしながら例えば5視野計測し、計測した全孔の円相当径について算術平均値と標準偏差とを計算し、前者を平均孔径(μm)、後者を孔径の標準偏差(μm)とする。孔径の標準偏差を平均孔径で除した値を孔径均一度パラメータとする。
中空部の体積を含めた中空糸膜全体の体積に対する中空部の割合、すなわち中空率は特に制限されないが、低すぎると膜の分離効率が低下する傾向があり、また高すぎると中空糸膜の力学特性が低下する傾向がある。このような観点から、中空率は、10〜70体積%であることが好ましく、20〜60体積%であることがより好ましい。上記中空率は、中空糸膜の内径r及び外径Rから、下記計算式: 中空率(%)=(r2/R2)×100に従って算出される。
中空糸膜1本が有する中空部の数には特に制限はなく、1本であっても複数本であってもよい。中空糸膜は1本で用いてもまたマルチフィラメントとして用いてもよい。中空糸膜の断面の外形としては円、楕円、三角、星形、アルファベット型等の従来公知の形状を適用することができる。中空部の径断面形状は、円形、扁平形等とすることができる。
ポリケトン中空糸膜の外径は、良好な透水量(フラックス)を得る観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは500μm以上、更に好ましくは800μm以上であり、良好な濾過面積を得る観点から、好ましくは10000μm以下、より好ましくは5000μm以下、更に好ましくは3000μm以下である。
ポリケトン中空糸膜の内径は、良好な透水量(フラックス)を得る観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは250μm以上、更に好ましくは400μm以上である。
外圧による中空糸潰れを抑制するという観点からは、中空糸膜の膜厚は大きい方が好ましい。この観点から、中空糸膜における内径と外径の比(=内径/外径)は0.8未満であることが好ましい。一方で、中空糸膜の中空部の断面積に対して膜厚が大きすぎると、圧力損失が大きくなりすぎる。そのため、中空糸膜における内径/外径の比は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
中空糸膜の厚みは、外径と中空率との兼ね合いによって選択されるが、好ましくは8〜1700μm、より好ましくは30〜800μm、更に好ましくは50〜200μmである。
なお、ポリケトン中空糸膜の最大孔径は、バブルポイント法(ASTM F316−86又はJIS K3832に準拠)で測定したときに、濾過用フィルターとしての捕捉効率の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下、最も好ましくは200μm以下である。最大孔径は、良好な透水量(フラックス)を得る観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。
ポリケトン中空糸膜の平均貫通孔径は、好ましくは0.01〜0.4μmである。平均貫通孔径は、ハーフドライ法(ASTM E1294−89に準拠)により測定される値である。平均貫通孔径が0.01μm以上である場合、圧力損失の著しい増大又は透過流束の著しい減少が防止される。一方、平均貫通孔径が0.4μm以下である場合、中空糸強度が確保され、カートリッジ組立工程における中空糸のこすれ等に起因するリークの発生を回避できる。ポリケトン中空糸膜の平均貫通孔径は、0.02〜0.4μmがより好ましく、0.03〜0.3μmが更に好ましく、0.05〜0.2μmが特に好ましい。
ポリケトン中空糸膜は、空隙率5〜95体積%を有することが好ましい。空隙率は、下記数式:
空隙率(%)=(1−G/ρ/V)×100
{式中、Gはポリケトン中空糸膜の質量(g)であり、ρはポリケトン中空糸膜を構成する全ての樹脂の質量平均密度(g/cm3)であり、Vはポリケトン中空糸膜の体積(cm3)である。}により算出される。上記数式において、質量平均密度ρは、ポリケトン中空糸膜が、ポリケトンとは密度の異なる樹脂と、ポリケトン樹脂との複合化によって構成される場合、各々の樹脂の密度にその構成質量比率を乗じた値の和である。例えば、ρA及びρBの密度をそれぞれ持つ繊維がGA及びGBの質量比率で構成された不織布に、密度ρpのポリケトンがGpの質量比率で複合されているときには、質量平均密度は、下記数式:
質量平均密度=(ρA・GA+ρB・GB+ρp・Gp)/(GA+GB+Gp)
で表される。空隙率が5体積%以上のポリケトン中空糸膜は、透過流束が大きく、粒子捕集効率が良好で、閉塞までの時間が長い等の利点を有する。一方、ポリケトン中空糸膜の空隙率が95体積%以下の場合、該ポリケトン中空糸膜は機械的強度が極端に低くなることがない。ポリケトン中空糸膜の空隙率としては30〜95体積%がより好ましく、40〜90体積%が更に好ましく、50〜90体積%が更に好ましく、70〜80体積%が最も好ましい。
空隙率(%)=(1−G/ρ/V)×100
{式中、Gはポリケトン中空糸膜の質量(g)であり、ρはポリケトン中空糸膜を構成する全ての樹脂の質量平均密度(g/cm3)であり、Vはポリケトン中空糸膜の体積(cm3)である。}により算出される。上記数式において、質量平均密度ρは、ポリケトン中空糸膜が、ポリケトンとは密度の異なる樹脂と、ポリケトン樹脂との複合化によって構成される場合、各々の樹脂の密度にその構成質量比率を乗じた値の和である。例えば、ρA及びρBの密度をそれぞれ持つ繊維がGA及びGBの質量比率で構成された不織布に、密度ρpのポリケトンがGpの質量比率で複合されているときには、質量平均密度は、下記数式:
質量平均密度=(ρA・GA+ρB・GB+ρp・Gp)/(GA+GB+Gp)
で表される。空隙率が5体積%以上のポリケトン中空糸膜は、透過流束が大きく、粒子捕集効率が良好で、閉塞までの時間が長い等の利点を有する。一方、ポリケトン中空糸膜の空隙率が95体積%以下の場合、該ポリケトン中空糸膜は機械的強度が極端に低くなることがない。ポリケトン中空糸膜の空隙率としては30〜95体積%がより好ましく、40〜90体積%が更に好ましく、50〜90体積%が更に好ましく、70〜80体積%が最も好ましい。
中空糸膜の膜厚100%に対する、中空糸膜内の接着剤浸入部分の厚みの比率(本開示で、界面深さ比率ともいう。)は、接着剤による中空糸膜の良好な固定の指標である。上記界面深さ比率は、好ましくは10〜100%、より好ましくは50〜100%、更に好ましくは70〜100%である。上記界面深さ比率は、高い方が好ましいが、中空糸膜の中空部に接着剤が浸入しているとモジュールの分離性能が低下するため、中空部には接着剤が浸入していないことが望ましい。上記界面深さ比率は、下記の方法で求められる。中空糸膜の長手方向に垂直な断面を任意の5箇所について光学顕微鏡(キーエンス製VHX−5000)で撮影し、それぞれの断面画像において任意の2点の中空糸外径から内径に向かい侵入している樹脂の含浸を測定し、計10点の平均値を樹脂侵入長Lとする。中空糸の膜厚Dに対する樹脂侵入長Lの割合(L/D×100)を界面深さ比率とする。
(ポリケトン中空糸膜の物性)
中空糸膜束は、複数本のポリケトン中空糸膜で構成されている。中空糸膜モジュールを形成する際、ポリケトン中空糸膜は、屈曲部を有して容器内に収容される場合がある。屈曲部におけるポリケトン中空糸膜の変形による中空部径断面積の低下を良好に防止する観点から、ポリケトン中空糸膜は、良好な靱性を有していることが望ましい。
中空糸膜束は、複数本のポリケトン中空糸膜で構成されている。中空糸膜モジュールを形成する際、ポリケトン中空糸膜は、屈曲部を有して容器内に収容される場合がある。屈曲部におけるポリケトン中空糸膜の変形による中空部径断面積の低下を良好に防止する観点から、ポリケトン中空糸膜は、良好な靱性を有していることが望ましい。
ポリケトン中空糸膜の引張強度は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは10MPa以上、更に好ましくは30MPa以上であり、好ましくは500MPa以下、より好ましくは300MPa以下、更に好ましくは100MPa以下である。引張強度は、JIS−L−1013に準じて測定される値である。
[接着剤]
接着剤は、典型的には樹脂で構成されている。樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂としては、疎水性樹脂及び親水性樹脂のいずれも使用できる。
接着剤は、典型的には樹脂で構成されている。樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂としては、疎水性樹脂及び親水性樹脂のいずれも使用できる。
ポリケトン中空糸膜と接着剤との親和性の観点で、接着剤は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
又は、例えば、中空糸膜モジュールを半導体製造工程で用いる場合には、良好な分離性能を得る観点から、疎水性樹脂、特にポリエチレン樹脂が好適である。
接着剤は、樹脂に加え、添加剤(例えばシリカ粒子等)とを含んでよい。
典型的な態様において、接着剤は流動状態でポリケトン中空糸膜と接触させる。流動状態の接着剤の例としては、未硬化のウレタン樹脂又はエポキシ樹脂、及び、樹脂と溶媒とを含む樹脂溶液、樹脂と分散媒とを含む樹脂分散体等が挙げられる。
[中空糸膜束]
図1及び2は、本発明の一態様に係る中空糸膜束の例を示す図である。図1及び2を参照し、中空糸膜束10,20においては、複数のポリケトン中空糸膜11の一端、他端又はこれらの両者が、接着剤12によって、ポリケトン中空糸膜11の中空部開口を保持したままで互いに固定されて固定端面Eが形成されている。図1は、ポリケトン中空糸膜11の一端同士及び他端同士がそれぞれ接着剤12で固定されて2つの固定端面Eが形成されている例を示している。図2は、ポリケトン中空糸膜11が屈曲部Bを有して屈曲され、一端及び他端が接着剤12で固定されて1つの固定端面Eが形成されている例を示している。
図1及び2は、本発明の一態様に係る中空糸膜束の例を示す図である。図1及び2を参照し、中空糸膜束10,20においては、複数のポリケトン中空糸膜11の一端、他端又はこれらの両者が、接着剤12によって、ポリケトン中空糸膜11の中空部開口を保持したままで互いに固定されて固定端面Eが形成されている。図1は、ポリケトン中空糸膜11の一端同士及び他端同士がそれぞれ接着剤12で固定されて2つの固定端面Eが形成されている例を示している。図2は、ポリケトン中空糸膜11が屈曲部Bを有して屈曲され、一端及び他端が接着剤12で固定されて1つの固定端面Eが形成されている例を示している。
固定端面Eにおいて、ポリケトン中空糸膜11と接着剤12との合計面積に対するポリケトン中空糸膜の面積の比率である充填率は、中空糸膜束を備える中空糸膜モジュールにおいて透水量(フラックス)が良好であるという観点から、好ましくは30面積%以上、より好ましくは45面積%以上、更に好ましくは60面積%以上である。上記充填率は、中空糸膜モジュールにおいて中空糸膜束の外部の通液を良好に確保する観点、及び中空糸膜束の製造容易性の観点から、好ましくは90面積%以下、より好ましくは80面積%以下、更に好ましくは70面積%以下である。
中空糸膜束のサイズは所望に応じて任意に設計できるが、例えば、図1及び2を参照し、中空糸膜束最大長さL11が50〜3000mm、中空糸膜束最大径D11が1〜2000mm、接着剤最大長さL12が2〜1000mm、接着剤最大径D12が2〜2500mmであってよい。
<中空糸膜モジュール>
図3は、本発明の一態様に係る中空糸膜モジュールの例を示す図である。図3は、図1に示す中空糸膜束10を備える中空糸膜モジュール100を示している。図3を参照し、中空糸膜モジュール100は、中空糸膜束10と、容器2とを備える。接着剤12は、ポリケトン中空糸膜11の一端及び他端のそれぞれを、中空部開口を保持したままで容器2の両端のそれぞれに固定している。
図3は、本発明の一態様に係る中空糸膜モジュールの例を示す図である。図3は、図1に示す中空糸膜束10を備える中空糸膜モジュール100を示している。図3を参照し、中空糸膜モジュール100は、中空糸膜束10と、容器2とを備える。接着剤12は、ポリケトン中空糸膜11の一端及び他端のそれぞれを、中空部開口を保持したままで容器2の両端のそれぞれに固定している。
典型的な態様において、中空糸膜モジュール100は、複数のポリケトン中空糸膜11の一端同士及び他端同士を整束すること、ポリケトン中空糸膜11を、一端及び他端がそれぞれ該容器2の両端のそれぞれに配置されるように該容器2に収容し、次いで、容器2の両端を、流動状態の接着剤(例えば、樹脂未硬化物(樹脂が硬化性樹脂である場合)、樹脂溶液、樹脂分散体等)に接触させた後固化させて接着剤12を形成し、最後にポリケトン中空糸膜11の端部の余剰部分を切断除去して中空部開口を露出させることで製造できる。余剰部分を切断する際は、発塵を極力抑えるべく、押し切りすることが望ましい。例えばかんな型切断機又はギロチン型切断機で切断することが望ましい。
[容器2]
容器2は、例えば筒形状(好ましくは円筒形状)であってよい。典型的な態様において、容器2は、被処理水導入部21と、被処理水取出し部22と、処理水取出し部23,24とを有する。被処理水導入部、被処理水取出し部及び処理水取出し部の位置、寸法及び数は所望に応じて任意に設計でき、被処理水が被処理水導入部21から容器2内に供給され、中空糸膜を浸透して中空部に到達した処理水が処理水取出し部23,24から取出され、中空糸膜を透過しなかった被処理水が被処理水取出し部22から排出されるように構成されればよい。
一態様において、処理水取出し部23が閉止バルブ等で閉止されていてもよい。この場合、処理水は処理水取出し部24のみから取り出される。
容器2は、例えば筒形状(好ましくは円筒形状)であってよい。典型的な態様において、容器2は、被処理水導入部21と、被処理水取出し部22と、処理水取出し部23,24とを有する。被処理水導入部、被処理水取出し部及び処理水取出し部の位置、寸法及び数は所望に応じて任意に設計でき、被処理水が被処理水導入部21から容器2内に供給され、中空糸膜を浸透して中空部に到達した処理水が処理水取出し部23,24から取出され、中空糸膜を透過しなかった被処理水が被処理水取出し部22から排出されるように構成されればよい。
一態様において、処理水取出し部23が閉止バルブ等で閉止されていてもよい。この場合、処理水は処理水取出し部24のみから取り出される。
容器2は、例えば樹脂、金属等で構成されている。モジュールが使い捨てされる場合のコスト低減、及び耐圧性の観点から、容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ABS樹脂、及び塩化ビニル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。好ましい態様において、中空糸膜モジュールは、カートリッジ型である。カートリッジ型とされる場合の容器は、水処理システム等の目的の分離システムに適用された後、使用寿命を超えた際に当該システムから簡便に取外して交換可能であるような任意の形状に設計されてよい。
容器内に収容されるポリケトン中空糸膜の本数は、好ましくは1〜20000000本、より好ましくは100〜100000本、更に好ましくは100〜10000本である。
中空糸膜モジュールの濾過面積(ポリケトン中空糸膜の外径換算)は所望に応じて適宜設計されてよいが、例えば0.03m2〜0.1m2、又は0.1m2〜5.0m2、又は5.0m2〜50m2であることができる。
<カートリッジ>
一態様において、中空糸膜モジュールは、これを備えるカートリッジとして各種水処理システム内に配置される。カートリッジの形状は所望に応じて任意に設計してよい。
一態様において、中空糸膜モジュールは、これを備えるカートリッジとして各種水処理システム内に配置される。カートリッジの形状は所望に応じて任意に設計してよい。
<用途>
一態様において、中空糸膜モジュールは1本又は複数本の直列若しくは並列の配列によって水処理システムを構成できる。水処理システムは例えば超純水製造システムである。本発明に係る中空糸膜モジュールは、高透水量かつ高分離性能を有することから、被処理水中の有機化合物、粒状物等を良好に除去して、例えば半導体製造におけるウエハ洗浄用水等として好適に使用可能な超純水を与えることができる。水処理システムの濾過面積(外径換算)は、例えば、0.1〜5m2、又は5〜50m2であってよい。
また、別の一態様において、中空糸膜モジュールは、半導体材料用樹脂組成物の精製プロセスに用いることができる。本発明に係る中空糸膜モジュールは、高透水量かつ高分離性能を有することから、樹脂組成物の凝集体の除去にも、好適に用いることが出来る。
一態様において、中空糸膜モジュールは1本又は複数本の直列若しくは並列の配列によって水処理システムを構成できる。水処理システムは例えば超純水製造システムである。本発明に係る中空糸膜モジュールは、高透水量かつ高分離性能を有することから、被処理水中の有機化合物、粒状物等を良好に除去して、例えば半導体製造におけるウエハ洗浄用水等として好適に使用可能な超純水を与えることができる。水処理システムの濾過面積(外径換算)は、例えば、0.1〜5m2、又は5〜50m2であってよい。
また、別の一態様において、中空糸膜モジュールは、半導体材料用樹脂組成物の精製プロセスに用いることができる。本発明に係る中空糸膜モジュールは、高透水量かつ高分離性能を有することから、樹脂組成物の凝集体の除去にも、好適に用いることが出来る。
以下、本発明の例示の態様について実施例を挙げて更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
<評価方法>
(1)中空糸膜束の特性
(i)成型後のポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量
中空糸膜30mgを10gのヘキサフルオロイソプロパノール-d6に溶解させ、1.18mgのクロロホルムを添加し、NMR(Bruker AvanceII 400)で測定を行い、1H−NMRスペクトルを得た。ヘキサフルオロイソプロパノールのシグナルを4.38ppmに設定した。クロロホルムのシグナル7.28ppmの積分値Ic、溶媒由来のシグナルの積分値の合計値Irを得た。以下の計算式より溶媒残存量を計算した。
溶媒残存量(ppm)={Ir/(Ic×溶媒由来のシグナルのプロトン数)×1.18}/30×106
(1)中空糸膜束の特性
(i)成型後のポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量
中空糸膜30mgを10gのヘキサフルオロイソプロパノール-d6に溶解させ、1.18mgのクロロホルムを添加し、NMR(Bruker AvanceII 400)で測定を行い、1H−NMRスペクトルを得た。ヘキサフルオロイソプロパノールのシグナルを4.38ppmに設定した。クロロホルムのシグナル7.28ppmの積分値Ic、溶媒由来のシグナルの積分値の合計値Irを得た。以下の計算式より溶媒残存量を計算した。
溶媒残存量(ppm)={Ir/(Ic×溶媒由来のシグナルのプロトン数)×1.18}/30×106
(ii)ポリケトン多孔質膜の充填率
ポリケトン中空糸膜を20本抜き出し、重量を測定し、中空糸膜20本当たりの重さW20を得た。中空糸膜束の重量を測定し、中空糸膜束重量WHを得た。以下の式により中空糸膜本数を算出した。
中空糸膜本数N(本)=WH/W20×20
後段に記載される方法でポリケトン中空糸膜の外径Rから算出される中空糸膜1本当たりの断面積A1に中空糸膜本数Nを乗じて、中空糸膜束の占有面積を算出した。容器の接着剤が注入される箇所における最も狭い断面積ACに対する中空糸膜束の占有面積の比率から充填率を算出した。
充填率(%)=(中空糸膜本数N×中空糸膜1本当たりの断面積A1)/(容器の断面積AC)×100
ポリケトン中空糸膜を20本抜き出し、重量を測定し、中空糸膜20本当たりの重さW20を得た。中空糸膜束の重量を測定し、中空糸膜束重量WHを得た。以下の式により中空糸膜本数を算出した。
中空糸膜本数N(本)=WH/W20×20
後段に記載される方法でポリケトン中空糸膜の外径Rから算出される中空糸膜1本当たりの断面積A1に中空糸膜本数Nを乗じて、中空糸膜束の占有面積を算出した。容器の接着剤が注入される箇所における最も狭い断面積ACに対する中空糸膜束の占有面積の比率から充填率を算出した。
充填率(%)=(中空糸膜本数N×中空糸膜1本当たりの断面積A1)/(容器の断面積AC)×100
(iii)ポリケトン多孔質膜の最大孔径及び平均貫通孔径
最大孔径は、PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用い、浸液としてPMI社製のガルウィック(表面張力=15.6dynes/cm)を用い、JISK3832(バブルポイント法)に準拠して測定した。平均貫通孔径は、ASTME1294−8に準拠し、ハーフドライ法により測定した。
最大孔径は、PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用い、浸液としてPMI社製のガルウィック(表面張力=15.6dynes/cm)を用い、JISK3832(バブルポイント法)に準拠して測定した。平均貫通孔径は、ASTME1294−8に準拠し、ハーフドライ法により測定した。
(iv)ポリケトン多孔質膜の外径及び膜厚
中空糸膜の長手方向に垂直な断面を任意の5箇所について光学顕微鏡(キーエンス製VHX−5000)で撮影し、それぞれの断面画像において任意の2点の内径及び外径を測定し、計10点の数平均値として得られる中空糸膜の平均内径r(μm)及び平均外径R(μm)をそれぞれ内径及び外径とした。平均内径r及び平均外径Rより、(R−r)/2に従って得られる中空糸膜の平均厚みを膜厚Dとした。
中空糸膜の長手方向に垂直な断面を任意の5箇所について光学顕微鏡(キーエンス製VHX−5000)で撮影し、それぞれの断面画像において任意の2点の内径及び外径を測定し、計10点の数平均値として得られる中空糸膜の平均内径r(μm)及び平均外径R(μm)をそれぞれ内径及び外径とした。平均内径r及び平均外径Rより、(R−r)/2に従って得られる中空糸膜の平均厚みを膜厚Dとした。
(v)ポリケトン多孔質膜の空隙率
糸長5cmの試験片を10本切り取り、その総重量G(g)を測った。(iv)で求められた平均外径R(μm)と平均内径r(μm)とから、ポリケトンの質量密度1.3g/cm3として、以下の計算式:
空隙率(%)=[1−G/10/1.3/5/{(R2−r2)×10-8×π/4}]×100
より中空糸膜の空隙率を算出した。
糸長5cmの試験片を10本切り取り、その総重量G(g)を測った。(iv)で求められた平均外径R(μm)と平均内径r(μm)とから、ポリケトンの質量密度1.3g/cm3として、以下の計算式:
空隙率(%)=[1−G/10/1.3/5/{(R2−r2)×10-8×π/4}]×100
より中空糸膜の空隙率を算出した。
(2)モジュール性能
(i)透水量
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側の片側(図3の符号22)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号21)に送液配管をつなぎ、中空糸膜モジュールの内径側の片側(図3の符号23)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の24)に排液配管をつないだ。中空糸膜モジュールの外径側(図3の符号21)にポンプで純水を中空糸膜モジュールに送液した。ポンプ及びバルブを操作し、膜間圧力を50kPaに調整し、中空糸膜モジュールの内径側(図3の符号24)から排出される単位時間当たりの水量を透水量(m3/m2/hr)とした。
(i)透水量
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側の片側(図3の符号22)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号21)に送液配管をつなぎ、中空糸膜モジュールの内径側の片側(図3の符号23)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の24)に排液配管をつないだ。中空糸膜モジュールの外径側(図3の符号21)にポンプで純水を中空糸膜モジュールに送液した。ポンプ及びバルブを操作し、膜間圧力を50kPaに調整し、中空糸膜モジュールの内径側(図3の符号24)から排出される単位時間当たりの水量を透水量(m3/m2/hr)とした。
(ii)リーク
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側に純水を貯め、中空糸膜モジュールの内径側の片側(図3の符号23)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号24)に圧縮空気配管をつないだ。圧縮空気圧を50kPaに設定し、中空糸膜モジュールの内径側(図3の符号24)へ送気した。中空糸膜モジュールの外径側(図の符号21又は22)から空気が検出されるとリークが有ると評価し、空気が検出されなければリークが無いと判断した。
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側に純水を貯め、中空糸膜モジュールの内径側の片側(図3の符号23)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号24)に圧縮空気配管をつないだ。圧縮空気圧を50kPaに設定し、中空糸膜モジュールの内径側(図3の符号24)へ送気した。中空糸膜モジュールの外径側(図の符号21又は22)から空気が検出されるとリークが有ると評価し、空気が検出されなければリークが無いと判断した。
(iii)発塵性
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側の片側(図3の符号22)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号21)に送液配管をつなぎ、中空糸膜モジュールの内径側の片側(図3の符号23)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号24)に排液配管をつないだ。中空糸膜モジュールの外径側(図の符号21)にポンプで純水を1L/分の流速で24時間流して、中空糸膜モジュールの内径側(図3の24)のから流し洗浄をした。1L/分の流速を維持したまま、パーティクルカウンター(リオン社製KS−42A)で0.1μm〜0.15μmの粒子数を測定し、24時間の粒子積算数(個/日)を評価した。
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側の片側(図3の符号22)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号21)に送液配管をつなぎ、中空糸膜モジュールの内径側の片側(図3の符号23)には閉止バルブを繋ぎ、もう片側(図3の符号24)に排液配管をつないだ。中空糸膜モジュールの外径側(図の符号21)にポンプで純水を1L/分の流速で24時間流して、中空糸膜モジュールの内径側(図3の24)のから流し洗浄をした。1L/分の流速を維持したまま、パーティクルカウンター(リオン社製KS−42A)で0.1μm〜0.15μmの粒子数を測定し、24時間の粒子積算数(個/日)を評価した。
(iv)耐久性
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側(図3の21および22)に配管をつなぎ、ポンプで50℃に温調した純水を中空糸膜モジュールに送液した。ポンプ及びバルブを操作し、膜間圧力を100kPaに調製し、30日間送液を続けた。
30日間送液後、(ii)のリークテストを行い、リークの有無を評価した。
各実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールの外径側(図3の21および22)に配管をつなぎ、ポンプで50℃に温調した純水を中空糸膜モジュールに送液した。ポンプ及びバルブを操作し、膜間圧力を100kPaに調製し、30日間送液を続けた。
30日間送液後、(ii)のリークテストを行い、リークの有無を評価した。
<ポリケトン中空糸膜及び中空糸膜モジュールの作製>
[実施例1]
エチレンと一酸化炭素とが完全交互共重合した極限粘度3.0dl/gのポリケトンポリマーを、ポリマー濃度12.0質量%で70質量%のレゾルシンを含む水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
40℃に保温した二重管オリフィス紡口を用い、温度を50℃に調整した上記ドープを外側輪状オリフィスから、40質量%のメタノール水溶液を内側の円状オリフィスから、同時に、濃度40質量%のメタノール水溶液からなる20℃の凝固浴に吐出した。吐出線速はドープとメタノール水溶液は共に3.4m/分とした。このとき二重オリフィス紡口は凝固浴液面より80mm上方に設置した。凝固浴内には駆動ローラーが設置されており、ドープは凝固浴内のローラーによって10.5m/分の一定速度で延伸しながら紡糸を行った。ドープは凝固浴内に40秒滞留させ、凝固させた。中空糸膜は水洗しながら巻き取り、一晩純水中で静置した。その後、得られた中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を100ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を6時間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は78%、平均貫通孔径190nm、外形650μm、内径450μm、溶媒残存量は100ppm以下であった。
[実施例1]
エチレンと一酸化炭素とが完全交互共重合した極限粘度3.0dl/gのポリケトンポリマーを、ポリマー濃度12.0質量%で70質量%のレゾルシンを含む水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
40℃に保温した二重管オリフィス紡口を用い、温度を50℃に調整した上記ドープを外側輪状オリフィスから、40質量%のメタノール水溶液を内側の円状オリフィスから、同時に、濃度40質量%のメタノール水溶液からなる20℃の凝固浴に吐出した。吐出線速はドープとメタノール水溶液は共に3.4m/分とした。このとき二重オリフィス紡口は凝固浴液面より80mm上方に設置した。凝固浴内には駆動ローラーが設置されており、ドープは凝固浴内のローラーによって10.5m/分の一定速度で延伸しながら紡糸を行った。ドープは凝固浴内に40秒滞留させ、凝固させた。中空糸膜は水洗しながら巻き取り、一晩純水中で静置した。その後、得られた中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を100ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を6時間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は78%、平均貫通孔径190nm、外形650μm、内径450μm、溶媒残存量は100ppm以下であった。
上記ポリケトン中空糸膜3077本を、5cm径、30cm長の円筒状プラスチックハウジング内に充填し、両端部をウレタン樹脂接着剤(主剤:東ソー製コロネート4428、硬化剤:東ソー製ニッポラン4221を質量比1:1で混合する)で固定することにより、図3に示す構造を有する中空糸膜モジュールを作製した。
このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:52%
透水量:1.57(m3/m2/hr)
発塵性:43個/日
耐久性:リークなし
このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:52%
透水量:1.57(m3/m2/hr)
発塵性:43個/日
耐久性:リークなし
[実施例2]
実施例1と同様の条件で中空糸膜を巻き取り、一晩純水中で静置後、中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を200ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を20分間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は78%、平均貫通孔径190nm、外径645μm、内径450μm、溶媒残存量は198ppmであった。
実施例1と同様の条件で中空糸膜を巻き取り、一晩純水中で静置後、中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を200ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を20分間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は78%、平均貫通孔径190nm、外径645μm、内径450μm、溶媒残存量は198ppmであった。
実施例1と同様の方法で上記ポリケトン中空糸膜3083本を用いて、中空糸モジュール膜を作製した。このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:51%
透水量:1.60(m3/m2/hr)
発塵性:78個/日
耐久性:リークなし
充填率:51%
透水量:1.60(m3/m2/hr)
発塵性:78個/日
耐久性:リークなし
[実施例3]
エアギャップを50mmに変更した以外は実施例1と同じ条件で中空糸膜を作製し、一晩超純水中で静置後、中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を200ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を6時間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は79%、平均貫通孔径200nm、外径670μm、内径480μm、溶媒残存量は100ppm以下であった。
実施例1と同様の方法で上記ポリケトン中空糸膜2824本を用いて、中空糸モジュール膜を作製した。このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:51%
透水量:1.96(m3/m2/hr)
発塵性:31個/日
耐久性:リークなし
エアギャップを50mmに変更した以外は実施例1と同じ条件で中空糸膜を作製し、一晩超純水中で静置後、中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を200ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を6時間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は79%、平均貫通孔径200nm、外径670μm、内径480μm、溶媒残存量は100ppm以下であった。
実施例1と同様の方法で上記ポリケトン中空糸膜2824本を用いて、中空糸モジュール膜を作製した。このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:51%
透水量:1.96(m3/m2/hr)
発塵性:31個/日
耐久性:リークなし
[実施例4]
ポリマー濃度を10質量%、濃度70質量%のレゾルシンを含む水溶液をドープに用いた以外は実施例1と同じ条件で中空糸膜を作製し、一晩超純水中で静置後、中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を200ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を6時間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は80%、平均貫通孔径400nm、外径630μm、内径430μm、溶媒残存量は100ppm以下であった。
実施例1と同様の方法で上記ポリケトン中空糸膜3137本を用いて、中空糸モジュール膜を作製した。このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:50%
透水量:2.78(m3/m2/hr)
発塵性:18個/日
耐久性:リークなし
ポリマー濃度を10質量%、濃度70質量%のレゾルシンを含む水溶液をドープに用いた以外は実施例1と同じ条件で中空糸膜を作製し、一晩超純水中で静置後、中空糸膜を容器に設置し、電気抵抗率18.2MΩかつ80℃の熱水を200ml/分で容器に供給し続けながら、中空糸の洗浄を6時間実施した。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は80%、平均貫通孔径400nm、外径630μm、内径430μm、溶媒残存量は100ppm以下であった。
実施例1と同様の方法で上記ポリケトン中空糸膜3137本を用いて、中空糸モジュール膜を作製した。このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:50%
透水量:2.78(m3/m2/hr)
発塵性:18個/日
耐久性:リークなし
[比較例1]
実施例1と同様の条件で中空糸膜を巻き取った。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は78%、平均貫通孔径190nm、外径650μm、内径440μm、溶媒残存量は896ppmであった。
実施例1と同様の方法で上記ポリケトン中空糸膜3059本を用いて、中空糸モジュール膜を作製した。このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:52%
透水量:1.45(m3/m2/hr)
発塵性:621個/日
耐久性:リーク有り
実施例1と同様の条件で中空糸膜を巻き取った。得られた中空糸膜は長さ80cmに切断し、イソプロパノール中に浸漬して溶媒置換を行い、室温にて風乾した。このようにして得られたポリケトン中空糸膜の空隙率は78%、平均貫通孔径190nm、外径650μm、内径440μm、溶媒残存量は896ppmであった。
実施例1と同様の方法で上記ポリケトン中空糸膜3059本を用いて、中空糸モジュール膜を作製した。このモジュールの特性は下記のとおりであった。
充填率:52%
透水量:1.45(m3/m2/hr)
発塵性:621個/日
耐久性:リーク有り
本発明の中空糸膜束及びこれを備える中空糸膜モジュールは、半導体用超純水製造システム等の各種水処理システムに好適に適用できる。
10,20 中空糸膜束
11 ポリケトン中空糸膜
12 接着剤
2 容器
21 被処理水導入部
22 被処理水取出し部
23,24 処理水取出し部
100 中空糸膜モジュール
B 屈曲部
E 固定端面
11 ポリケトン中空糸膜
12 接着剤
2 容器
21 被処理水導入部
22 被処理水取出し部
23,24 処理水取出し部
100 中空糸膜モジュール
B 屈曲部
E 固定端面
Claims (6)
- 一端と他端とを有する複数のポリケトン中空糸膜と、
前記複数のポリケトン中空糸膜の前記一端、前記他端又はこれらの両者を、前記ポリケトン中空糸膜の中空部開口を保持したままで互いに固定して固定端面を与える接着剤とを有する、中空糸膜束であって、
前記ポリケトン中空糸膜中の溶媒残存量が200ppm以下である、中空糸膜束。 - 前記固定端面において、前記ポリケトン中空糸膜と前記接着剤との合計面積に対する前記ポリケトン中空糸膜の面積の比率である充填率が、30面積%以上である、請求項1に記載の中空糸膜束。
- 前記接着剤が、熱硬化性樹脂である、請求項1又は2に記載の中空糸膜束。
- 前記ポリケトン中空糸膜の平均貫通孔径が0.02μm〜0.4μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空糸膜束。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の中空糸膜束と、容器とを備える中空糸膜モジュールであって、
前記接着剤は、前記中空糸膜束を前記容器に固定している、中空糸膜モジュール。 - 請求項5に記載の中空糸膜モジュールを備える、カートリッジ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018164232A JP2020037056A (ja) | 2018-09-03 | 2018-09-03 | 中空糸膜束、中空糸膜モジュール及びカートリッジ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018164232A JP2020037056A (ja) | 2018-09-03 | 2018-09-03 | 中空糸膜束、中空糸膜モジュール及びカートリッジ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020037056A true JP2020037056A (ja) | 2020-03-12 |
Family
ID=69737235
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018164232A Pending JP2020037056A (ja) | 2018-09-03 | 2018-09-03 | 中空糸膜束、中空糸膜モジュール及びカートリッジ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020037056A (ja) |
-
2018
- 2018-09-03 JP JP2018164232A patent/JP2020037056A/ja active Pending
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