以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
(1)通信施設及び通信システム/通信装置の構成
本発明の実施形態の例示としては、図12に例として挙げたような通信装置が設置される局舎とアンテナが取り付けられる鉄塔とを有する施設構成を例に挙げて説明する。
大まかには、局舎内に設置される無線装置側の光/電気・電気/光変換部(図中における符号10)と鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光/電気・電気/光変換部(同符号20)とが設けられ、これら二つの光/電気・電気/光変換部の間に光ファイバ(同符号2A乃至2D)が敷設される。なお、本発明における光/電気・電気/光変換部とは、光信号を電気信号に変換したり、或いは、電気信号を光信号に変換したりするものである。本発明の説明では、光/電気・電気/光変換部を単に「光電変換部」とも表記する。
本発明に係る実施形態の通信システム/通信装置では、無線信号の伝送には光ファイバを用いて無線信号を伝送する光電波融合技術が用いられる。
上述の施設構成における、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法が適用され得る通信システム/通信装置の構成の例を図1に示す。
図に示す通信システム/通信装置は、光電波融合通信装置として構成されているものであり、無線装置側設備としての、局舎内に設置される無線装置側の光/電気・電気/光変換部10(「光電変換部10」と表記する)と、アンテナ側設備としての、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光/電気・電気/光変換部20(「光電変換部20」と表記する)とを有する。
図中において、符号1は局舎内に設置される無線装置を表し、符号3は鉄塔に取り付けられるアンテナを表す。
無線装置1の具体例の一つとして、例えば、公共・電気通信業務用等で固定業務の無線局に使用されるマイクロ波無線装置が挙げられる。
アンテナ3としては、従来の無線通信において用いられてきたアンテナ(具体的には例えば、パラボラアンテナ)を用いることができ、無線電波を受信して当該電波の電界強度に対応する電気信号を出力すると共に入力された電気信号に対応する電界強度の電波を送信するものであれば特定のものには限定されない。
局舎内に設置される無線装置1の高周波入出力用の導波管部分に無線装置側の光電変換部10が取り付けられると共に、鉄塔に取り付けられるアンテナ3の導波管接続口にアンテナ側の光電変換部20が取り付けられ、それらの間が多心の光ファイバケーブルで接続される。
図に示す通信システム/通信装置では、例えば、既存のマイクロ波無線機本体及びパラボラアンテナについては改造が不要であり、導波管部分のみが取り替えられて使用される態様が企図されている。マイクロ波無線設備の局舎側設備(即ち、無線装置側設備)と鉄塔側設備(即ち、アンテナ側設備)との間の導波管を光ファイバに置き換えることにより、局舎内部へと侵入する(言い換えると、流入する)雷サージ電流の主要な侵入経路のうちの一つが除去され、装置の保護に大きな効果が期待される。
マイクロ波無線通信は、周波数分割双方向伝送(「FDD」とも表記される)による送受信の全二重通信を行うため、二組の光電波融合のリンクを逆向きに使用する。アンテナ3を送受信機で共用するために、帯域通過フィルタ22,24(図中では「BPF」と表記される)とサーキュレータ23とによって構成されるアンテナ共用器26が用いられる。
そして、局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10は、無線装置1からアンテナ3に対して送信信号を送る仕組みとして、無線装置1から出力される送信信号としての電気信号が入力されると共に当該電気信号を送信系の電気/光変換部12(図中では「E/O」と表記される)に対して出力するサーキュレータ11と、当該サーキュレータ11から出力される送信信号としての電気信号が入力されると共に当該電気信号を光信号に変換してアンテナ側の光電変換部20へと出射する送信系の電気/光変換部12とを備える。なお、送信系の電気/光変換部12は強度変調器である。
局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10を構成する送信系の電気/光変換部12から出射される送信信号としての光信号は、光ファイバ2Aにより、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20へと伝送される。
無線装置側の光電変換部10は、また、アンテナ3から無線装置1に対して受信信号を送る仕組みとして、アンテナ側の光電変換部20から出射されて光ファイバ2Cによって伝送される受信信号としての光信号が入射されると共に当該光信号を電気信号に変換してサーキュレータ11に対して出力する受信系の光/電気変換部13(図中では「O/E」と表記される)を備える。
ここで、送信信号の周波数をf1とすると共に受信信号の周波数をf2とし、これら送信信号の周波数f1と受信信号の周波数f2とは相互に異なる周波数に設定される(即ち、f1≠f2)。
サーキュレータ11は、また、受信系の光/電気変換部13から出力される受信信号としての電気信号が入力されると共に当該電気信号を無線装置1に対して出力する。
無線装置側の光電変換部10は、さらに、送信系の電気/光変換部12及び受信系の光/電気変換部13や光給電送信部16に対して電力を供給する電源部15と、当該電源部15から電力が供給されてアンテナ側の光電変換部20へと光(即ち、給電用の高出力光)を出射する光給電送信部16とを備える。
局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10の側に設けられる光給電送信部16から出射される給電用の高出力光は、光ファイバ2B,2Dにより、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20へと伝送される。
送信系の電気/光変換部12及び受信系の光/電気変換部13や光給電送信部16へと電力を供給する電源部15は一個でも複数個でも良く、また、アンテナ側の光電変換部20へと光を出射する光給電送信部16は一個でも複数個でも良い。
また、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20は、無線装置1からアンテナ3に対して送信信号を送る仕組みとして、無線装置側の光電変換部10(図に示す例では、具体的には送信系の電気/光変換部12)と光ファイバ2Aによって接続されて当該光ファイバ2Aによって伝送される送信信号(尚、周波数はf1である)としての光信号が入射されると共に当該光信号を電気信号に変換して出力する送信系の光/電気変換部21(図中では「O/E」と表記される)と、当該送信系の光/電気変換部21から出力される送信信号としての電気信号のうちの所定の電気信号(具体的には、無線通信において使用される周波数帯の電気信号であってアンテナ3から送信する対象の電気信号)のみを通過させる帯域通過フィルタ22(図中では「BPF」と表記される)と、当該帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号が入力されると共に当該電気信号をアンテナ3に対して出力するサーキュレータ23とを備える。
アンテナ3は、サーキュレータ23から出力されて入力される送信信号としての電気信号に対応する電界強度の電波を送信する。
サーキュレータ23は、また、アンテナ3から出力される受信信号としての電気信号が入力されると共に当該電気信号を帯域通過フィルタ24(図中では「BPF」と表記される)に対して出力する。
アンテナ側の光電変換部20は、また、アンテナ3から無線装置1に対して受信信号を送る仕組みとして、サーキュレータ23から出力される受信信号(尚、周波数はf2である)としての電気信号のうちの所定の電気信号(具体的には、無線通信において使用される周波数帯の電気信号であって無線装置1へと送る対象の電気信号)のみを通過させる帯域通過フィルタ24と、当該帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号が入力されると共に当該電気信号を光信号に変換して出射する受信系の電気/光変換部25(図中では「E/O」と表記される)とを備える。なお、受信系の電気/光変換部25は強度変調器である。
鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20を構成する受信系の電気/光変換部25から出射される受信信号としての光信号は、光ファイバ2Cにより、局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10へと伝送される。
アンテナ側の光電変換部20は、さらに、無線装置側の光電変換部10の側に設けられる光給電送信部16と光ファイバ2B,2Dによって接続されて光給電送信部16から出射される光(即ち、給電用の高出力光)を受光して電力に変換すると共に当該電力を送信系の光/電気変換部21や受信系の電気/光変換部25へと供給する光給電受信部27を備える。
なお、光給電送信部16は、光源であり、具体的には例えば半導体レーザ光を出射するレーザ光源である。また、光給電受信部27は具体的には例えば光電変換素子である。
受信系の電気/光変換部25は、無線装置側の光電変換部10(図に示す例では、具体的には受信系の光/電気変換部13)と光ファイバ2Cによって接続される。
無線装置側の光電変換部10の側に設けられる電源部15の電力をアンテナ側の光電変換部20に対して供給する仕組みの一部である光給電受信部27は、一個でも複数個でも良い。そして、無線装置側の光電変換部10の側に設けられる光給電送信部16とアンテナ側の光電変換部20の側に設けられる光給電受信部27とを接続する光ファイバ2B,2Dは、一本の光ファイバケーブルによって構成されるようにしても良く、或いは、複数本の光ファイバケーブルによって構成されるようにしても良い。
ここで、上述のような通信システム/通信装置の例として、例えば、特開2015−27020号公報に記載されている技術が挙げられる。
送信系・受信系の電気/光変換部12,25は、電気信号を光信号に変換するものであり、具体的には、入射された光(即ち、入力光;光搬送波とも呼ばれる)の強度を、入力された電気信号の電圧に応じて変調して光変調波として出射するものである。なお、送信系・受信系の電気/光変換部12,25は、例えば、レーザ光源と外部光変調器との組み合わせや、直接変調が可能な半導体レーザなどにより構成される。
受信系の光/電気変換部13,21は、光信号を電気信号に変換するものであり、具体的には例えばフォトダイオードが用いられ得る。なお、出力を増大させるために必要に応じて高周波増幅器が受信系の光/電気変換部13の後段に付加されるようにしても良い。
無線装置側の光電変換部10は、必要に応じ、送信系の電気/光変換部12から出射された光信号の光強度を増幅して出射する光増幅器や、アンテナ側の光電変換部20から出射されて光ファイバ2Cによって伝送された光信号の光強度を増幅して出射する光増幅器を更に備えるようにしても良い。光増幅器は、入射された光に対して増幅作用を発揮し得るもの(言い換えると、使用する光の波長帯において利得があって増幅器として利用できるもの)であれば、特定の仕組みやものには限定されない。
アンテナ側の光電変換部20は、必要に応じ、送信系の光/電気変換部21から出力される送信信号としての電気信号の送信出力を増幅して出力する高周波増幅器や、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号の受信出力を増幅して出力する高周波増幅器を更に備えるようにしても良い。そして、アンテナ側の光電変換部20が高周波増幅器を備えるようにした場合は、当該高周波増幅器に対しても光給電受信部27によって変換された電力が駆動電力として供給される(言い換えると、当該高周波増幅器の駆動電力が光ファイバ給電によって供給される)。
なお、高周波増幅器は、送信系の光/電気変換部21と送信系の帯域通過フィルタ22との間に設けられ、また、受信系の帯域通過フィルタ24と受信系の電気/光変換部25との間に設けられる。
そして、例えば図1に示すような通信システム/通信装置においてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3への出力(延いては、アンテナ3からの出力)を無線装置側(具体的には例えば、局舎内)でモニタするため、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法は、図2に示すように、無線装置側設備としての、局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10からアンテナ側設備としての、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20へと伝送された送信信号としての光信号がアンテナ側の光電変換部20に於いて送信系の光/電気変換部21によって電気信号へと変換されると共に当該電気信号が分岐されて受信系の電気/光変換部25へと入力されて強度変調された光信号へと変換された上で無線装置側の光電変換部10へと伝送され、無線装置側の光電変換部10に於いて受信系の光/電気変換部13によって光信号から変換されて出力される電気信号の強度に基づいてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度が算定されるようにしている。
上記のような、無線装置側の光電変換部10へと戻ってきた電気信号(具体的には、送信信号としての電気信号から分岐された電気信号である)をスペクトラムアナライザで観測することにより、アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される電気信号のスペクトルを局舎側でモニタすることができる。
また、上記のような、無線装置側の光電変換部10へと戻ってきた電気信号(具体的には、送信信号としての電気信号から分岐された電気信号である)の強度に基づいてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される電気信号(具体的には、送信信号としての電気信号である)の強度を算定する方法は、例えば、アンテナ側の光電変換部20から出力される電気信号の強度の実績値と無線装置側の光電変換部10へと戻ってきた電気信号の強度の観測値とに関するデータが取得されてこれら実績値と観測値との間の関係が予め特定された上で、受信系の光/電気変換部13へ入力される光強度の変化分を補正して算定されるようにすることが考えられる。
なお、送信信号としての電気信号の強度を計測する機序としては、具体的には例えば、パワーセンサやパワーメータ或いはスペクトラムアナライザが用いられ得る。
スペクトラムアナライザが用いられる場合には、送信信号の周波数成分に関するスペクトルやビット誤り率(「BER」とも表記される)が測定されてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号のスペクトルやビット誤り率(延いては、アンテナ3から送出される送信信号のスペクトルやビット誤り率)が測定されるようにしても良い。
(2)第一の実施形態
図3に、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第一の実施形態の例を示す。第一の実施形態についても、図12に示す施設構成のように無線装置側設備とアンテナ側設備とを有する、図1に示すような通信システム/通信装置をベースの構成とする。
第一の実施形態の無線送信信号のモニタ方法は、無線装置側設備としての、局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10からアンテナ側設備としての、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20へと伝送された送信信号としての光信号がアンテナ側の光電変換部20に於いて送信系の光/電気変換部21によって電気信号へと変換されてから送信系方向性結合器31によって分岐されて減衰器33によって減衰された後に受信系方向性結合器32を介して受信系の電気/光変換部25へと入力されて強度変調された光信号へと変換された上で無線装置側の光電変換部10へと伝送され、無線装置側の光電変換部10に於いて受信系の光/電気変換部13によって光信号から変換されて出力される電気信号の強度に基づいてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号のスペクトルのモニタを実現し、さらに電気信号の強度が算定されるようにしている。
第一の実施形態では、アンテナ側の光電変換部20の側に、送信系の帯域通過フィルタ22とサーキュレータ23との間に送信系方向性結合器31が設けられると共に受信系の帯域通過フィルタ24と受信系の電気/光変換部25との間に受信系方向性結合器32が設けられ、さらに、送信系方向性結合器31から分岐して受信系方向性結合器32へと至る経路上に減衰器33が設けられる。
第一の実施形態では、また、無線装置側の光電変換部10の側に、受信系の光/電気変換部13とサーキュレータ11との間の前記受信系の光/電気変換部13の側に第一の方向性結合器51が設けられると共に前記サーキュレータ11の側に受信用帯域通過フィルタ59が設けられる。
第一の実施形態では、さらに、第一の方向性結合器51によって分岐される出力に対してモニタ用帯域通過フィルタ52が接続されると共に当該モニタ用帯域通過フィルタ52からの出力に対してモニタ用パワーメータ53が接続される。
送信系方向性結合器31は、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号を分岐する(別言すると、電力を分配する)機能を備える。
送信系方向性結合器31によって分岐された送信信号のことを「モニタ用信号」と呼ぶ。モニタ用信号の周波数は送信信号と同じでf1である。
減衰器33は、送信系方向性結合器31によって分岐されたモニタ用信号としての電気信号の電力を所定の値だけ減衰させた上で出力する機能を備える。
受信系方向性結合器32は、送信系方向性結合器31によって分岐されて減衰器33を通過したモニタ用信号としての電気信号(別言すると、分配された電力)を、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波する(別言すると、受信信号の電力と合成する)機能を備える。
アンテナ側の光電変換部20では、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号が送信系方向性結合器31によって分岐され、一方はサーキュレータ23へと入力され、他方(尚、モニタ用信号である)は減衰器33へと入力される。
減衰器33によって減衰された上で出力されるモニタ用信号としての電気信号は、受信系方向性結合器32へと入力され、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波されて受信系方向性結合器32から出力される。
受信系方向性結合器32から出力されるモニタ用信号(周波数f1)及び受信信号(周波数f2)としての電気信号は、受信系の電気/光変換部25によって光信号へと変換された上で出射され、光ファイバ2Cにより、無線装置側の光電変換部10へと伝送される。
ここで、受信系の電気/光変換部25へと入力される電気信号が過入力(即ち、線形応答の領域を越えた状態)になると信号が歪んでしまうため、過入力を避ける必要がある。つまり、モニタ用信号(周波数f1)と受信信号(周波数f2)とを合わせた電気信号に関して受信系の電気/光変換部25への入力には上限があることになる。また、一方の信号の受信系の電気/光変換部25への入力が小さすぎるとその信号はノイズに埋もれ易くなり、品質が維持できなくなる。
このため、モニタ用信号が減衰器33を経由するようにした上で、送信系方向性結合器31の結合度,減衰器33の減衰量,及び受信系方向性結合器32の結合度が、モニタ用信号の強度と受信信号の強度とが大凡同じ程度になるようにそれぞれ調整されることが好ましい。なお、受信信号は伝播の条件によっては信号強度の低下が大きい場合もあるので、通常時にはモニタ用信号を受信信号よりも小さく設定することも考えられる。そのことも踏まえ、大凡同じ程度とは、具体的には例えば、モニタ用信号が受信信号の1倍から1/100倍程度の範囲であれば、過入力にならない条件で、ノイズに埋もれずに測定もし易いと考えられる。
無線装置側の光電変換部10では、光ファイバ2Cによって伝送されるモニタ用信号(周波数f1)及び受信信号(周波数f2)としての光信号が、受信系の光/電気変換部13へと入射され、当該受信系の光/電気変換部13によって電気信号へと変換される。
受信系の光/電気変換部13から出力されたモニタ用信号及び受信信号としての電気信号は第一の方向性結合器51によって分岐され、一方は受信用帯域通過フィルタ59へと入力され、他方はモニタ用帯域通過フィルタ52へと入力される。
受信用帯域通過フィルタ59へと入力されたモニタ用信号及び受信信号としての電気信号のうちの受信信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf2の電気信号)のみが、受信用帯域通過フィルタ59を通過し、サーキュレータ11を経由して無線装置1へと入力される。
他方、モニタ用帯域通過フィルタ52へと入力されたモニタ用信号及び受信信号としての電気信号のうちのモニタ用信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf1の電気信号)のみが、モニタ用帯域通過フィルタ52を通過し、モニタ用パワーメータ53へと入力される。
モニタ用パワーメータ53は、入力されたモニタ用信号としての電気信号の強度を計測する。
そして、計測されたモニタ用信号としての電気信号の強度に基づいて、アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度が算定され、延いてはアンテナ3から送出される送信信号の出力強度が算定される。
アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度は、例えば、アンテナ側の光電変換部20から出力される電気信号(具体的には、送信信号としての電気信号である)の強度の実績値と無線装置側の光電変換部10へと戻ってきた電気信号(具体的には、送信信号としての電気信号から分岐された電気信号である)の強度の観測値とに関するデータが取得されてこれら実績値と観測値との間の関係が予め特定された上で、受信系の光/電気変換部13へ入力される光強度の変化分を補正して算定されるようにすることが考えられる。
上記の計算は後述する第四の実施形態の中に示すものと同様である。なお、上記の計算を行うには、受信系の電気/光変換部25の光変調度と受信系の電気/光変換部25への入力電気信号の強度との間に一意の関係が成り立つ必要がある。同じ入力電気信号強度であっても得られる光変調度が変動する場合には、基準となる強度を得るために後述する第二の実施形態の構成とすることが考えられる。
なお、モニタ用帯域通過フィルタ52及びモニタ用パワーメータ53の代わりにスペクトラムアナライザが設けられて第一の方向性結合器51によって分岐された電気信号のうちのモニタ用信号(周波数f1)の周波数成分に関する強度が計測されることによってアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度(延いては、アンテナ3から送出される送信信号の出力強度)が特定されるようにしても良い。
スペクトラムアナライザが設けられる場合には、第一の方向性結合器51によって分岐された電気信号のうちのモニタ用信号(周波数f1)の周波数成分に関するスペクトルやビット誤り率が測定されてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号のスペクトルやビット誤り率(延いては、アンテナ3から送出される送信信号のスペクトルやビット誤り率)が測定されるようにしても良い。
(3)第二の実施形態
図4及び図5に、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第二の実施形態の例を示す。第二の実施形態についても、図12に示す施設構成のように無線装置側設備とアンテナ側設備とを有する、図1に示すような通信システム/通信装置をベースの構成とする。
第二の実施形態の無線送信信号のモニタ方法は、無線装置側設備としての、局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10からアンテナ側設備としての、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20へと伝送された送信信号としての光信号がアンテナ側の光電変換部20に於いて送信系の光/電気変換部21によって電気信号へと変換されてから送信系方向性結合器31によって分岐されて減衰器33によって減衰された後に受信系方向性結合器32を介して受信系の電気/光変換部25へと入力されて強度変調された光信号へと変換された上で無線装置側の光電変換部10へと伝送され、また、アンテナ側の光電変換部20に於いて局部発振器35によって生成された基準信号としての電気信号が受信系方向性結合器32を介して受信系の電気/光変換部25へと入力されて強度変調された光信号へと変換された上で無線装置側の光電変換部10へと伝送され、無線装置側の光電変換部10に於いて受信系の光/電気変換部13によって光信号から変換されて出力される送信信号としての電気信号の強度と基準信号としての電気信号の強度とに基づいてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号のスペクトルのモニタを実現し、さらに電気信号の強度が算定されるようにしている。
第二の実施形態では、アンテナ側の光電変換部20の側に、送信系の帯域通過フィルタ22とサーキュレータ23との間に送信系方向性結合器31が設けられると共に受信系の帯域通過フィルタ24と受信系の電気/光変換部25との間に受信系方向性結合器32が設けられ、さらに、送信系方向性結合器31から分岐して受信系方向性結合器32へと至る経路上に減衰器33が設けられると共に当該減衰器33と受信系方向性結合器32との間に方向性結合器34が設けられる。
第二の実施形態では、さらに、方向性結合器34に対して電気信号を入力することが可能であるように局部発振器35が接続される。
第二の実施形態では、また、無線装置側の光電変換部10の側に、受信系の光/電気変換部13とサーキュレータ11との間に前記受信系の光/電気変換部13の側から順に第一の方向性結合器51,第二の方向性結合器54,及び受信用帯域通過フィルタ59が設けられる。
第二の実施形態では、さらに、第一の方向性結合器51によって分岐される出力に対してモニタ用帯域通過フィルタ52が接続されると共に当該モニタ用帯域通過フィルタ52からの出力に対してモニタ用パワーメータ53が接続され、加えて、第二の方向性結合器54によって分岐される出力に対して基準用帯域通過フィルタ55が接続されると共に当該基準用帯域通過フィルタ55からの出力に対して基準用パワーメータ56が接続される。
送信系方向性結合器31は、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号を分岐する(別言すると、電力を分配する)機能を備える。
送信系方向性結合器31によって分岐された送信信号のことを第一の実施形態と同様に「モニタ用信号」と呼ぶ。モニタ用信号の周波数は送信信号と同じでf1である。
減衰器33は、送信系方向性結合器31によって分岐されたモニタ用信号としての電気信号の電力を所定の値だけ減衰させた上で出力する機能を備える。
受信系方向性結合器32は、送信系方向性結合器31によって分岐されて減衰器33及び方向性結合器34を通過したモニタ用信号としての電気信号(別言すると、分配された電力)及び局部発振器35から出力されて方向性結合器34を経由した基準信号としての電気信号を、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波する(別言すると、受信信号の電力と合成する)機能を備える。
局部発振器35は、強度に関してモニタ用信号と対比される信号(「基準信号」と呼ぶ)を生成して出力する機能を備える。基準信号としては、所定の周波数で所定の強度(言い換えると、既知の強度)の信号が出力され、具体的には例えば周波数f3の正弦波の信号が出力される。
基準信号の周波数f3は、モニタ用信号(即ち、送信信号から分岐された信号)の周波数f1とは異なり且つ受信信号の周波数f2とも異なる周波数に設定される(即ち、f1≠f2,f1≠f3,及びf2≠f3)。モニタ用信号の周波数f1,受信信号の周波数f2,及び基準信号の周波数f3は、具体的には例えば図5に示すような関係に設定されることが考えられる(但し、周波数f1,f2,及びf3の相互の大小関係は図5に示す例に限定されるものではない)。
アンテナ側の光電変換部20では、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号が送信系方向性結合器31によって分岐され、一方はサーキュレータ23へと入力され、他方(尚、モニタ用信号である)は減衰器33へと入力される。
減衰器33によって減衰された上で出力されるモニタ用信号としての電気信号は、方向性結合器34を経由して受信系方向性結合器32へと入力される。
局部発振器35から出力される基準信号としての電気信号は、方向性結合器34を介し、減衰器33から出力されるモニタ用信号としての電気信号と合波された上で受信系方向性結合器32へと入力される。
受信系方向性結合器32へと入力されたモニタ用信号及び基準信号としての電気信号は、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波されて受信系方向性結合器32から出力される。
受信系方向性結合器32から出力されるモニタ用信号(周波数f1),受信信号(周波数f2),及び基準信号(周波数f3)としての電気信号は、受信系の電気/光変換部25によって光信号へと変換された上で出射され、光ファイバ2Cにより、無線装置側の光電変換部10へと伝送される。
ここで、受信系の電気/光変換部25へと入力される電気信号が過入力(即ち、線形応答の領域を越えた状態)になると信号が歪んでしまうため、過入力を避ける必要がある。つまり、モニタ用信号(周波数f1),受信信号(周波数f2),及び基準信号(周波数f3)を合わせた電気信号に関して受信系の電気/光変換部25への入力には上限があることになる。また、一部の信号の受信系の電気/光変換部25への入力が小さすぎるとその信号はノイズに埋もれ易くなり、品質が維持できなくなる。
このため、モニタ用信号が減衰器33を経由するようにした上で、送信系方向性結合器31の結合度,減衰器33の減衰量,及び受信系方向性結合器32の結合度、並びに局部発振器35の信号出力強度は、モニタ用信号の強度,基準信号の強度,及び受信信号の強度が大凡同じ程度になるようにそれぞれ調整されることが好ましい。なお、受信信号は伝播の条件によっては信号強度の低下が大きい場合もあるので、通常時にはモニタ用信号及び基準信号を受信信号よりも小さく設定することも考えられる。そのことも踏まえ、大凡同じ程度とは、具体的には例えば、モニタ用信号や基準信号が受信信号の1倍から1/100倍程度の範囲であれば、過入力にならない条件で、ノイズに埋もれずに測定もし易いと考えられる。
無線装置側の光電変換部10では、光ファイバ2Cによって伝送されるモニタ用信号(周波数f1),受信信号(周波数f2),及び基準信号(周波数f3)としての光信号が、受信系の光/電気変換部13へと入射され、当該受信系の光/電気変換部13によって電気信号へと変換される。
受信系の光/電気変換部13から出力されたモニタ用信号,受信信号,及び基準信号としての電気信号は第一の方向性結合器51によって分岐され、一方は第二の方向性結合器54へと入力され、他方はモニタ用帯域通過フィルタ52へと入力される。
モニタ用帯域通過フィルタ52へと入力されたモニタ用信号,受信信号,及び基準信号としての電気信号のうちのモニタ用信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf1の電気信号)のみが、モニタ用帯域通過フィルタ52を通過し、モニタ用パワーメータ53へと入力される。
モニタ用パワーメータ53は、入力されたモニタ用信号としての電気信号の強度を計測する。
他方、第二の方向性結合器54へと入力されたモニタ用信号,受信信号,及び基準信号としての電気信号は当該第二の方向性結合器54によって分岐され、一方は受信用帯域通過フィルタ59へと入力され、他方は基準用帯域通過フィルタ55へと入力される。
受信用帯域通過フィルタ59へと入力されたモニタ用信号,受信信号,及び基準信号としての電気信号のうちの受信信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf2の電気信号)のみが、受信用帯域通過フィルタ59を通過し、サーキュレータ11を経由して無線装置1へと入力される。
他方、基準用帯域通過フィルタ55へと入力されたモニタ用信号,受信信号,及び基準信号としての電気信号のうちの基準信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf3の電気信号)のみが、基準用帯域通過フィルタ55を通過し、基準用パワーメータ56へと入力される。
基準用パワーメータ56は、入力された基準信号としての電気信号の強度を計測する。
そして、モニタ用パワーメータ53によって計測されたモニタ用信号としての電気信号の強度と基準用パワーメータ56によって計測された基準信号としての電気信号の強度とに基づいて、アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度が算定され、延いてはアンテナ3から送出される送信信号の出力強度が算定される。
アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度は、例えば、モニタ用信号の強度の計測値と基準信号の強度の設定値(尚、基準信号については信号強度の絶対値が既知である)とが比較されて算定される。
具体的には例えば、局部発振器35から出力される基準信号についての信号強度の設定値がPr[dBm]である場合に無線装置側の光電変換部10の側で計測されたモニタ用信号の強度がpm[dBm]であると共に基準信号の強度がps[dBm]であるとき、アンテナ側の光電変換部20に於いて方向性結合器34へと入力されたモニタ用信号の強度をpi[dBm](尚、未知である)とすると以下の数式1が成り立つ。
(数1) pi:Pr = pm:ps
数式1において局部発振器35の出力信号強度Prの値は設定値として既知であると共にモニタ用信号の強度pm及び基準信号の強度psの値は計測値として既知であるので、数式1に基づき、方向性結合器34へと入力されたモニタ用信号の強度pi[dBm]が計算される。
その上で、アンテナ側の光電変換部20の側の送信系方向性結合器31の結合度及び減衰器33の減衰量が考慮されて、送信系方向性結合器31から出力されてサーキュレータ23へと入力された送信信号の強度が計算される。
なお、モニタ用帯域通過フィルタ52及びモニタ用パワーメータ53並びに基準用帯域通過フィルタ55及び基準用パワーメータ56の代わりにスペクトラムアナライザが設けられて第一の方向性結合器51によって分岐された電気信号のうちのモニタ用信号(周波数f1)の周波数成分に関する強度及び基準信号(周波数f3)の周波数成分に関する強度が計測されることによってアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度(延いては、アンテナ3から送出される送信信号の出力強度)が特定されるようにしても良い(尚この場合には、第二の方向性結合器54は不要である)。
スペクトラムアナライザが設けられる場合には、第一の方向性結合器51によって分岐された電気信号のうちのモニタ用信号(周波数f1)の周波数成分に関するスペクトルやビット誤り率が測定されてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号のスペクトルやビット誤り率(延いては、アンテナ3から送出される送信信号のスペクトルやビット誤り率)が測定されるようにしても良い。
(4)第三の実施形態
図6に、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第三の実施形態の例を示す。第三の実施形態についても、図12に示す施設構成のように無線装置側設備とアンテナ側設備とを有する、図1に示すような通信システム/通信装置をベースの構成とする。
第三の実施形態の無線送信信号のモニタ方法は、無線装置側設備としての、局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10からアンテナ側設備としての、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20へと伝送された送信信号としての光信号がアンテナ側の光電変換部20に於いて送信系の光/電気変換部21によって電気信号へと変換されてから送信系方向性結合器31によって分岐されて信号強度が計測され、当該計測された信号強度の結果に相当する電気信号が光コンバータ38によって光信号へと変換された上で無線装置側の光電変換部10へと伝送されるようにしている。
第三の実施形態では、アンテナ側の光電変換部20の側に、送信系の帯域通過フィルタ22とサーキュレータ23との間に送信系方向性結合器31が設けられると共に受信系の帯域通過フィルタ24と受信系の電気/光変換部25との間に受信系方向性結合器32が設けられ、さらに、送信系方向性結合器31から分岐して受信系方向性結合器32へと至る経路上に方向性結合器36が設けられる。
第三の実施形態では、さらに、方向性結合器36によって分岐される出力に対してパワーセンサ37が接続されると共に当該パワーセンサ37からの出力に対して光コンバータ38(「メディアコンバータ」とも呼ばれる)が接続される。
第三の実施形態では、また、無線装置側の光電変換部10の側に、受信系の光/電気変換部13とサーキュレータ11との間の前記受信系の光/電気変換部13の側に第一の方向性結合器51が設けられると共に前記サーキュレータ11の側に受信用帯域通過フィルタ59が設けられる。
第三の実施形態では、さらに、第一の方向性結合器51によって分岐される出力に対してスペクトラムアナライザ58が接続される。
送信系方向性結合器31は、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号を分岐する(別言すると、電力を分配する)機能を備える。
送信系方向性結合器31によって分岐された送信信号のことを第一の実施形態と同様に「モニタ用信号」と呼ぶ。モニタ用信号の周波数は送信信号と同じでf1である。
受信系方向性結合器32は、送信系方向性結合器31によって分岐されて方向性結合器36を通過したモニタ用信号としての電気信号(別言すると、分配された電力)を、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波する(別言すると、受信信号の電力と合成する)機能を備える。
方向性結合器36は、送信系方向性結合器31によって分岐されるモニタ用信号としての電気信号をパワーセンサ37への入力と受信系方向性結合器32への入力とに分岐する機能を備える。
モニタ用信号のうち方向性結合器36によって分岐されてパワーセンサ37へと入力される信号のことを「強度モニタ用信号」と呼ぶ。強度モニタ用信号の周波数は送信信号と同じでf1である。
パワーセンサ37は、入力される電気信号の強度を計測して電気信号として出力する機能を備える。
アンテナ側の光電変換部20では、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号が送信系方向性結合器31によって分岐され、一方はサーキュレータ23へと入力され、他方(尚、モニタ用信号である)は方向性結合器36へと入力される。
方向性結合器36へと入力されたモニタ用信号は当該方向性結合器36によって分岐され、一方は受信系方向性結合器32へと入力され、他方(尚、強度モニタ用信号である)はパワーセンサ37へと入力される。
受信系方向性結合器32へと入力されたモニタ用信号としての電気信号は、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波されて受信系方向性結合器32から出力される。
受信系方向性結合器32から出力されるモニタ用信号(周波数f1)及び受信信号(周波数f2)としての電気信号は、受信系の電気/光変換部25によって光信号へと変換された上で出射され、光ファイバ2Cにより、無線装置側の光電変換部10へと伝送される。
ここで、受信系の電気/光変換部25へと入力される電気信号が過入力(即ち、線形応答の領域を越えた状態)になると信号が歪んでしまうため、過入力を避ける必要がある。つまり、モニタ用信号(周波数f1)と受信信号(周波数f2)とを合わせた電気信号に関して受信系の電気/光変換部25への入力には上限があることになる。また、一方の信号の受信系の電気/光変換部25への入力が小さすぎるとその信号はノイズに埋もれ易くなり、品質が維持できなくなる。
このため、送信系方向性結合器31の結合度,方向性結合器36の結合度,及び受信系方向性結合器32の結合度は、モニタ用信号の強度と受信信号の強度とが大凡同じ程度になるようにそれぞれ調整されることが好ましい。なお、受信信号は伝播の条件によっては信号強度の低下が大きい場合もあるので、通常時にはモニタ用信号を受信信号よりも小さく設定することも考えられる。そのことも踏まえ、大凡同じ程度とは、具体的には例えば、モニタ用信号が受信信号の1倍から1/100倍程度の範囲であれば、過入力にならない条件で、ノイズに埋もれずに測定もし易いと考えられる。
無線装置側の光電変換部10では、光ファイバ2Cによって伝送されるモニタ用信号(周波数f1)及び受信信号(周波数f2)としての光信号が、受信系の光/電気変換部13へと入射され、当該受信系の光/電気変換部13によって電気信号へと変換される。
受信系の光/電気変換部13から出力されたモニタ用信号及び受信信号としての電気信号は、第一の方向性結合器51によって分岐され、一方は受信用帯域通過フィルタ59へと入力され、他方はスペクトラムアナライザ58へと入力される。
スペクトラムアナライザ58ではモニタ用信号(周波数f1)のスペクトルのモニタを行うことが可能である。スペクトラムアナライザ58にはモニタ用信号(周波数f1)に加えて受信信号(周波数f2)も入力されるが、周波数帯が異なるため、帯域通過フィルタなしでモニタ用信号(周波数f1)のみのスペクトルの測定が可能である。
アンテナ3から送出される送信信号のビット誤り率の測定を行う場合には、第一の方向性結合器51とスペクトラムアナライザ58の間にモニタ用帯域通過フィルタを追加し、スペクトラムアナライザ58の変わりにビット誤り率測定器を用いて測定をすることができる。
受信用帯域通過フィルタ59へと入力されたモニタ用信号及び受信信号としての電気信号のうちの受信信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf2の電気信号)のみが、受信用帯域通過フィルタ59を通過し、サーキュレータ11を経由して無線装置1へと入力される。
他方、パワーセンサ37へと入力された強度モニタ用信号としての電気信号についてはパワーセンサ37によって信号強度が計測され、パワーセンサ37が計測結果に関する電気信号を出力する。
パワーセンサ37から出力される計測結果に相当する電気信号は、光コンバータ38によって光信号へと変換された上で光ファイバ2Eによって無線装置側の光電変換部10の側へと伝送され、例えばデータ処理を行う適当な受信装置39によって受信される。なお、計測結果に相当する光信号とモニタ用信号(周波数f1)及び受信信号(周波数f2)としての光信号とが異なる波長の光信号として多重されて同じ光ファイバを共用するようにし、計測結果に相当する光信号を伝送する光ファイバ2Eとモニタ用信号及び受信信号としての光信号を伝送する光ファイバ2Cとが一本の光ファイバによって構成されるようにしても良い。
そして、パワーセンサ37によって計測されて光コンバータ38及び光ファイバ2Eを介して受信装置39によって受信された強度モニタ用信号の強度に基づいて(尚、アンテナ側の光電変換部20の側の送信系方向性結合器31の結合度及び方向性結合器36の結合度が考慮される)、アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度が算定され、延いてはアンテナ3から送出される送信信号の出力強度が算定される。
(5)第四の実施形態
図7及び図8に、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第四の実施形態の例を示す。第四の実施形態については、図12に示す施設構成のように無線装置側設備とアンテナ側設備とを有する、図1に示すような通信システム/通信装置をベースの構成としつつ、アンテナ側の光電変換部20を構成する受信系の電気/光変換部25(尚、強度変調器である)の代わりに位相変調器41が設けられる。位相変調器41としては、具体的には例えばニオブ酸リチウム位相変調器が用いられる。
第四の実施形態の無線送信信号のモニタ方法は、無線装置側設備としての、局舎内に設置される無線装置側の光電変換部10からアンテナ側設備としての、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20へと伝送された送信信号としての光信号がアンテナ側の光電変換部20に於いて送信系の光/電気変換部21によって電気信号へと変換されてから送信系方向性結合器31によって分岐されて減衰器33によって減衰された後に受信系方向性結合器32を介して位相変調器41へと入力されて位相変調された光信号へと変換された上で無線装置側の光電変換部10へと伝送され、無線装置側の光電変換部10に於いて分散補償器43によって波長分散が与えられることで強度変調された光信号に変換されて出力される送信信号としての光信号の強度と、波長分散が与えられた後に受信系の光/電気変換部13によって光信号から変換されて出力される送信信号としての電気信号の強度とに基づいてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号のスペクトルのモニタを実現し、さらに電気信号の強度が算定されるようにしている。
第四の実施形態では、アンテナ側の光電変換部20の側に、送信系の帯域通過フィルタ22とサーキュレータ23との間に送信系方向性結合器31が設けられると共に受信系の帯域通過フィルタ24と位相変調器41との間に受信系方向性結合器32が設けられ、さらに、送信系方向性結合器31から分岐して受信系方向性結合器32へと至る経路上に減衰器33が設けられる。
第四の実施形態では、また、無線装置側の光電変換部10の側に、受信系の光/電気変換部13のアンテナ側の光電変換部20の側に(言い換えると、アンテナ側の光電変換部20の側に設けられる位相変調器41から無線装置側の光電変換部10へと至った光ファイバ2Cが接続されるように)分散補償器43が設けられると共に、当該分散補償器43と受信系の光/電気変換部13との間に第一の方向性結合器44が設けられる。
第四の実施形態では、また、無線装置側の光電変換部10の側に、受信系の光/電気変換部13とサーキュレータ11との間の前記受信系の光/電気変換部13の側に第二の方向性結合器47が設けられると共に前記サーキュレータ11の側に受信用帯域通過フィルタ59が設けられる。
第四の実施形態では、さらに、第一の方向性結合器44によって分岐される出力に対して光パワーメータ46が接続され、加えて、第二の方向性結合器47によって分岐される出力に対してモニタ用帯域通過フィルタ48が接続されると共に当該モニタ用帯域通過フィルタ48からの出力に対してモニタ用パワーメータ49が接続される。
送信系方向性結合器31は、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号を分岐する(別言すると、電力を分配する)機能を備える。
送信系方向性結合器31によって分岐された送信信号のことを第一の実施形態と同様に「モニタ用信号」と呼ぶ。モニタ用信号の周波数は送信信号と同じでf1である。
減衰器33は、送信系方向性結合器31によって分岐されたモニタ用信号としての電気信号の電力を所定の値だけ減衰させた上で出力する機能を備える。
受信系方向性結合器32は、送信系方向性結合器31によって分岐されて減衰器33を通過したモニタ用信号としての電気信号(別言すると、分配された電力)を、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波する(別言すると、受信信号の電力と合成する)機能を備える。
アンテナ側の光電変換部20では、送信系の帯域通過フィルタ22から出力される送信信号としての電気信号が送信系方向性結合器31によって分岐され、一方はサーキュレータ23へと入力され、他方(尚、モニタ用信号である)は減衰器33へと入力される。
減衰器33によって減衰された上で出力されるモニタ用信号としての電気信号は、受信系方向性結合器32へと入力され、受信系の帯域通過フィルタ24から出力される受信信号としての電気信号と合波されて受信系方向性結合器32から出力される。
受信系方向性結合器32から出力されるモニタ用信号(周波数f1)及び受信信号(周波数f2)としての電気信号は、位相変調器41へと入力される。
ここで、位相変調器41へと入力される電気信号が過入力(即ち、強度変調に変換した際に線形応答の領域を越えた状態)になると信号が歪んでしまうため、過入力を避ける必要がある。つまり、モニタ用信号(周波数f1)と受信信号(周波数f2)とを合わせた電気信号に関して位相変調器41への入力には上限があることになる。また、一方の信号の位相変調器41への入力が小さすぎるとその信号はノイズに埋もれ易くなり、品質が維持できなくなる。
このため、モニタ用信号が減衰器33を経由するようにした上で、送信系方向性結合器31の結合度,減衰器33の減衰量,及び受信系方向性結合器32の結合度は、モニタ用信号の強度と受信信号の強度とが大凡同じ程度になるようにそれぞれ調整されることが好ましい。なお、受信信号は伝播の条件によっては信号強度の低下が大きい場合もあるので、通常時にはモニタ用信号を受信信号よりも小さく設定することも考えられる。そのことも踏まえ、大凡同じ程度とは、具体的には例えば、モニタ用信号が受信信号の1倍から1/100倍程度の範囲であれば、過入力にならない条件で、ノイズに埋もれずに測定もし易いと考えられる。
位相変調器41には光源40が接続される。光源40としては、具体的には例えば半導体レーザ光を出射するレーザ光源が用いられる。
光源40は無線装置側の光電変換部10の側に設けられ、光源40から出射された光は光ファイバ2Fを介してアンテナ側の光電変換部20の側へと伝送されて位相変調器41へと入射される。なお、光源40から出射される光と送信信号(周波数f1)としての光信号とが異なる波長の光信号として多重されて同じ光ファイバを共用するようにし、光源40から出射される光を伝送する光ファイバ2Fと送信信号としての光信号を伝送する光ファイバ2Aとが一本の光ファイバによって構成されるようにしても良い。
受信系方向性結合器32から出力されるモニタ用信号及び受信信号としての電気信号は位相変調器41によって位相が変調されると共に光信号へと変換された上で出射され、言い換えると、光源40からの光に対して位相変調器41によってモニタ用信号及び受信信号としての電気信号に基づいて位相変調が加えられて光信号が生成された上で出射され、光ファイバ2Cにより、無線装置側の光電変換部10へと伝送される。
位相変調された光信号は、時間的には強度変化が無いため、そのまま光/電気変換部で検波すると信号成分のない一定値の直流の出力となってしまう。そのため位相変調された光信号を強度変調された光信号に変換する必要がある。無線信号を用いて位相変調された光信号は、適切な波長分散を与えることで強度変調に変換することが可能である。
無線装置側の光電変換部10では、光ファイバ2Cによって伝送されるモニタ用信号(周波数f1)及び受信信号(周波数f2)としての光信号が、分散補償器43へと入射され、当該分散補償器43によって前記光信号に対して波長分散が与えられる。
分散補償器43から出射されたモニタ用信号及び受信信号としての光信号は第一の方向性結合器44へと入力されると共に当該第一の方向性結合器44によって分岐され、一方は光パワーメータ46へと入射され、他方は受信系の光/電気変換部13へと入射される。
光パワーメータ46は、入射されたモニタ用信号としての光信号の強度を計測する。
他方、受信系の光/電気変換部13へと入射されたモニタ用信号及び受信信号としての光信号は電気信号へと変換された上で出力され、さらに第二の方向性結合器47へと入力されると共に当該第二の方向性結合器47によって分岐され、一方は受信用帯域通過フィルタ59へと入力され、他方はモニタ用帯域通過フィルタ48へと入力される。
受信用帯域通過フィルタ59へと入力されたモニタ用信号及び受信信号としての電気信号のうちの受信信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf2の電気信号)のみが、受信用帯域通過フィルタ59を通過し、サーキュレータ11を経由して無線装置1へと入力される。
他方、モニタ用帯域通過フィルタ48へと入力されたモニタ用信号及び受信信号としての電気信号のうちのモニタ用信号に相当する電気信号(即ち、周波数がf1の電気信号)のみが、モニタ用帯域通過フィルタ48を通過し、モニタ用パワーメータ49へと入力される。
モニタ用パワーメータ49は、入力されたモニタ用信号としての電気信号の強度を計測する。
そして、光パワーメータ46によって計測されたモニタ用信号としての光信号の強度とモニタ用パワーメータ49によって計測されたモニタ用信号としての電気信号の強度とに基づいて、アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度が算定され、延いてはアンテナ3から送出される送信信号の出力強度が算定される。
アンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度は、モニタ用信号としての光信号の強度の計測値と電気信号の強度の計測値とが用いられて算定される。
このため、校正用の計測が行われ、位相変調器41,光ファイバ2C,分散補償器43,及び受信系の光/電気変換部13のリンクゲインG[dB]が予め求められる。
具体的には、校正用の光が光源40から出射されて位相変調器41へと入射されると共に校正用の電気信号が強度P[dBm]で位相変調器41へと入力され、校正用の光が位相変調された上で出射されて光ファイバ2Cによって分散補償器43へと伝送される。
分散補償器43から出力される光の強度が光パワーメータ46によって計測される。光パワーメータ46によって計測される光の強度をa0[dBm]とする。
また、受信系の光/電気変換部13から出力される電気信号の強度がモニタ用パワーメータ49によって計測される。モニタ用パワーメータ49によって計測される電気信号の強度をb0[dBm]とする。
上述の校正用の計測においては以下の数式2が成り立つ。
(数2) P = b0+G
ここに、
P:位相変調器41へと入力される電気信号の強度[dBm],
b0:受信系の光/電気変換部13から出力されて分岐された電気信号の強度[dBm]
(光パワーメータ46によって計測される光の強度がa0のとき),
G:位相変調器41からモニタ用パワーメータ49までのリンクゲイン[dB]
をそれぞれ表す。
ここで、光ファイバの伝送路での損失の変化やレーザの出力の変動などにより、光パワーメータ46によって計測される光の強度がa0からaへと変化した際の補正については、b[dBm]∝2a[dBm]の関係があることを用いて、校正で用いた光入力a0を用いてPは以下の数式3で補正できる。
(数3) P = b+2(a0−a)+G
ここに、
P:位相変調器41へと入力される電気信号の強度[dBm],
b:受信系の光/電気変換部13から出力されて分岐された電気信号の強度[dBm]
(光パワーメータ46によって計測される光の強度がaのとき),
a0:校正用の計測の際に光パワーメータ46によって計測される光の強度[dBm],
G:位相変調器41からモニタ用パワーメータ49までのリンクゲイン[dB]
をそれぞれ表す。
第四の実施形態の場合には、位相変調器41に関して入力電気信号に対する光変調度の効率が安定していると共に、光ファイバの伝送路での損失やレーザの出力の変動があってもそれら影響を補正することが可能であるので、位相変調器41へと入力された電気信号の強度P[dBm]を良好な精度で推定することが可能である。
ここで、分散補償器43によって追加的に与えられる波長分散の最適値は、位相変調を強度変調に変換することで、受信系の光/電気変換部13より出力される電気信号(f1およびf2)を極大とする値である。受信系の光/電気変換部13から出力されて分岐された電気信号の強度b0と分散補償器43によって追加的に与えられる波長分散Dadd[ps/nm]との間には以下の数式4の関係がある。
ここに、
b0:受信系の光/電気変換部13から出力されて分岐された電気信号の強度[dBm],
a:光ファイバ2Cの損失[dB/km],
L:光ファイバ2Cの長さ[km],
λ:光の波長[nm],
Dfiber:光ファイバ2Cの単位長さ当たりの波長分散[ps/nm/km],
Dadd:分散補償器43によって追加的に与えられる波長分散[ps/nm],
fRF:位相変調器41へと入力される電気信号の搬送波周波数[Hz],
c:光の速さ[m/s]
をそれぞれ表す。
数式4から、Daddの値によりb0は増減を繰り返すことがわかる。雑音に対して十分強い電気信号を得るために、b0が極大となるDaddを挿入することが望ましい。
光ファイバ2Cの長さLが十分小さく、分散補償器43によって追加的に与えられる波長分散Daddが零の場合はcosの項が零となるためb0=0となるものの、適切なDaddが与えられると位相変調器41へと入力される電気信号の強度Pは極大値をとることがわかる。cosの項が零となる極小値の状態は、強度が時間的に一定であり、位相変調の光信号であることを意味する。位相変調の光信号に対して波長分散が加わると周波数ごとに異なる位相変化が与えられることで、光信号は位相変調から強度変調に変換されていく。極大値は光信号が位相変調から完全に強度変調に変換されている状態となる。
なお、光パワーメータ46の代わりにスペクトラムアナライザが設けられて第一の方向性結合器44によって分岐された光信号のうちのモニタ用信号(周波数f1)の周波数成分に関する強度が計測されたり、モニタ用帯域通過フィルタ48及びモニタ用パワーメータ49の代わりにスペクトラムアナライザが設けられて第二の方向性結合器47によって分岐された電気信号のうちのモニタ用信号(周波数f1)の周波数成分に関する強度が計測されたりすることによってアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号の強度(延いては、アンテナ3から送出される送信信号の出力強度)が特定されるようにしても良い。
スペクトラムアナライザが設けられる場合には、第二の方向性結合器47によって分岐された電気信号のうちのモニタ用信号(周波数f1)の周波数成分に関するスペクトルやビット誤り率が測定されてアンテナ側の光電変換部20からアンテナ3へと出力される送信信号としての電気信号のスペクトルやビット誤り率(延いては、アンテナ3から送出される送信信号のスペクトルやビット誤り率)が測定されるようにしても良い。
以上のように構成された無線送信信号のモニタ方法によれば、アンテナ側の光電変換部20から出力される信号を前記アンテナ側の光電変換部20から離れた場所に於いてモニタすることができるので、アンテナ側の光電変換部20が例えば高所に設置されているような場合でもアンテナ3から出力される信号の品質の検査や点検にかかる手間や労力を軽減することが可能になると共に検査や点検の際の危険を回避することが可能になる。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では図12に例として挙げた施設構成や図1に例として挙げた通信システム/通信装置をベースの構成として本発明が適用されるようにしているが、本発明が適用され得る施設構成やシステム構成・装置構成は上述の実施形態におけるものに限られるものではなく、鉄塔に設置されるアンテナ側設備と鉄塔外に設置される無線装置側設備とを有するものとして構成される通信装置に対して広く一般的に適用することができる。
本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第四の実施形態に関連し、位相変調器41へと入力された電気信号の強度P[dBm]の推定精度を検証した実施例を図9乃至図11を用いて説明する。
本発明に係る無線送信信号のモニタ方法が実際に適用される場合、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20の側に設けられる位相変調器41が気温の大きな変化に曝されたり位相変調器41への光入力が変動したりすることが想定される。
そこで、本実施例では、位相変調器41が曝される気温の変化や位相変調器41への光入力の変動が当該位相変調器41へと入力された電気信号の強度の推定精度に与える影響が検証された。
本実施例で用いられた実験系を図9に示す。実験系に用いられた機器それぞれの仕様は以下の通りである。
(光源)
半導体レーザ
光の波長:1563.866[nm]
出力光強度:13[dBm]
(位相変調器)
LN光変調器
帯域幅:12[GHz]
入力電気信号強度:0[dBm]
(高周波信号発生器)
周波数:6820[MHz]
信号出力:2.25[dBm]
信号波形:正弦波
(分散補償器)
分散補償方式:ファイバーブラッググレーティング型
付与分散:−1425.1[ps/nm]
(光/電気変換器)
フォトダイオード
帯域幅:12[GHz]
本実施例では、位相変調器がインキュベータの中に設置され、当該インキュベータの温度が−10[℃]から50[℃]までの範囲で変化させられた。
本実施例では、また、光源から出力されて位相変調器へと入力される光の強度がおよそ−23[dBm]から−12[dBm]までの範囲で変化させられた。
インキュベータの温度が変化させられると共に光入力の強度が変化させられながら位相変調器41へと入力された電気信号の強度P[dBm]が推定され、インキュベータの温度別に推定誤差を整理して図10に示す結果が得られ、また、光入力の強度別に推定誤差を整理して図11に示す結果が得られた。
なお、推定誤差は、高周波信号発生器からの出力強度の設定値と数式3によって推定された位相変調器へと入力された電気信号の強度との差分である。
図10に示す結果から、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第四の実施形態の場合、温度が変化しても推定誤差は絶対値で0.5[dB]よりも小さいことが確認された。
また、図11に示す結果から、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第四の実施形態の場合、光入力の強度が変動しても推定誤差は絶対値で0.5[dB]よりも小さいことが確認された。
以上の結果から、本発明に係る無線送信信号のモニタ方法の第四の実施形態では、鉄塔上部に設置されるアンテナ側の光電変換部20の側に設けられる位相変調器41が気温の大きな変化に曝されたり位相変調器41への光入力が変動したりしても、位相変調器41へと入力された電気信号の強度を良好な精度で推定することが可能であることが確認された。