JP2020035605A - リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、およびリチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、およびリチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い出力特性と高いエネルギー密度とを高いレベルで両立させた二次電池が得られる正極活物質と、その製造方法を提供する。【解決手段】 ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体 を分級して、少なくとも、第1の粒子群と、第2の粒子群とに分離することと、第1の粒子群と、リチウム化合物とを混合し、得られた第1のリチウム混合物を750℃以上1000℃以下の温度で焼成して第1の焼成体を得ることと、第2の粒子群と、リチウム化合物とを混合し、得られた第2のリチウム混合物を750℃以上1000℃以下の温度で焼成して第2の焼成体を得ることと、第1の焼成体と、第2の焼成体とを混合して、前記リチウム金属複合酸化物の粉体を得ることと、を備え、第2の粒子群は、第1の粒子群よりも大きい平均粒径を有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、本発明は、リチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法、およびリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
近年、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、ノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度や耐久性を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、電動工具やハイブリット自動車をはじめとする車載用電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解質等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムイオンを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池については、現在研究開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料(正極活物質)に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5)などのリチウム金属複合酸化物が提案されている。
これらの正極活物質の中でも、近年、熱安定性に優れ、かつ、高容量であるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)が注目されている。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物などと同じく層状化合物であり、遷移金属サイトにおいてニッケルと、コバルトと、マンガンとを基本的に組成比1:1:1の割合で含んでいる。
一般に、リチウムイオン二次電池の正極抵抗(反応抵抗)は、充電状態を表すSOC(States of Charge)に対して、低SOC側と高SOC側とにおいて急激に増大し、SOCが50%前後においては値が小さくなり、かつSOCに対する変化量も小さくなる。よって、充電初期(低SOC側)と充電末期(高SOC側)の正極抵抗(反応抵抗)を小さくすることで、実際に使用できるSOC領域を広くして、実際に使用できる電気容量を大きくすることができる。例えば、車載用のリチウムイオン二次電池においては、特に、低SOC側での出力特性が重要となる。
例えば、特許文献1では、タップ密度が2.0g/cm以上で且つ平均粒径が0.01〜5μmの正極活物質が開示されている。また、例えば、特許文献2では、複数の一次粒子が互いに結合されて内部に空隙が形成された正極活物質が開示されている。これらの特許文献に記載されるように、小粒径化した正極活物質や、内部に空隙を有する正極活物質は、二次電池の正極において、反応表面積が増加するため、出力特性を向上させることができる。
また、例えば、特許文献3に開示されているように、正極活物質の粒度分布をブロードとすることで、正極における正極活物質の充填率と高め、正極の電極密度を向上させる取り組みも試みられている。正極の電極密度を向上させることにより、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
特開2011−187419号公報 特開2013−012391号公報 国際公開2018/020845号
しかしながら、上記特許文献1、2の正極活物質では、出力特性が向上する反面、生産効率が低く製造コストが増大してしまうという問題があるだけでなく、粒径が小さいことや、粒子内部に空隙を有することから、正極において電極密度を高くすることが困難であり、エネルギー密度が低くなるという問題があった。
一方、特許文献3の正極活物質のように、粒度分布をブロードにするだけでは、小径化したり、内部に空隙を有する正極活物質を用いたりする場合と比較して、二次電池の出力特性が十分ではなく、さらなる改善が求められていた。
このように、従来の正極活物質を用いた二次電池では、出力特性、又は、エネルギー密度のいずれかの点で改善が求められており、出力特性とエネルギー密度という両方の特性を高次元で両立させる正極活物質の開発が望まれていた。本発明は、これら事情を鑑みてなされたものであり、高い出力特性と高いエネルギー密度とを高いレベルで両立させた二次電池が得られる正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様では、六方晶系の層状構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉体を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体 を分級して、少なくとも、第1の粒子群と、第2の粒子群とに分離することと、第1の粒子群と、リチウム化合物とを混合し、得られた第1のリチウム混合物を750℃以上1000℃以下の温度で焼成して第1の焼成体を得ることと、第2の粒子群と、リチウム化合物とを混合し、得られた第2のリチウム混合物を750℃以上1000℃以下の温度で焼成して第2の焼成体を得ることと、第1の焼成体と、第2の焼成体とを混合して、リチウム金属複合酸化物の粉体を得ることとを備え、第2の粒子群は、第1の粒子群よりも大きい平均粒径を有し、リチウム金属複合酸化物の粉体は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び、任意に元素Mを含み、各元素の物質量比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=(1+u):(1−x−y−z):x:y:z[ただし、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.02≦x≦0.50、yは0.02≦y≦0.50、zは0≦z≦0.10であり、0.30≦(x+y+z)≦0.95を満たし、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素]で表される、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
また、ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体の体積平均粒径Mvは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。また、ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体は、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上であることが好ましい。
また、少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和晶析して、金属複合水酸化物からなる前記ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体を得ること、を備えることが好ましい。また、少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和晶析することと、得られた晶析物を熱処理して、金属複合水酸化物、及び、金属複合酸化物の少なくとも一方からなる前記ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体を得ること、を備えることが好ましい。また、中和晶析は、連続晶析法を用いて行うことが好ましい。また、第1の粒子群、及び、前記第2の粒子群のうち少なくとも一方を、リチウム化合物と混合する前に熱処理すること、を備えることが好ましい。
本発明の第2の態様では、上記の製造方法により正極活物質を得ること、を備え、正極活物質を含む正極と、負極と、電解質とを含む、リチウムイオン二次電池の製造方法が提供される。
本発明の製造方法は、リチウムイオン二次電池の正極に用いた場合、優れた出力特性と、高いエネルギー密度とを高次元で両立することができる正極活物質を得ることができる。また、本発明の製造方法は、工業的規模の生産においても容易に上記正極活物質を製造することが可能であり、工業的価値は極めて高いものといえる。
図1は、本実施形態に係る正極活物質の製造方法の一例を示した図である。 図2は、本実施形態に係る前駆体の粉体の製造方法の一例を示した図である。 図3は、実施例で用いた評価用のコイン型電池を示した図である。 図4は、第2の焼成体の混合割合とタップ密度との関係を示したグラフである。 図5は、第2の焼成体の混合割合と体積当たりの放電容量との関係を示したグラフである。 図6は、第2の焼成体の混合割合と正極抵抗(SOC80%)との関係を示したグラフである。 図7は、実施例2の正極活物質のSEM像を示す図面代用写真である。 図8は、比較例1の正極活物質のSEM像を示す図面代用写真である。 図9は、参考例1の正極活物質のSEM像を示す図面代用写真である。 図10は、参考例2の正極活物質のSEM像を示す図面代用写真である。
(1)リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法(以下、「正極活物質の製造方法」ともいう。)の一例を示す図である。また、図2は、本実施形態に係る、ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体を製造する方法の一例を示す図である。以下、図1、図2を参照して、正極活物質の製造方法について説明する。なお、以下の説明は、正極活物質の製造方法の一例であって、以下の記載に製造方法を限定するものではない。
図1に示すように、正極活物質の製造方法は、ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体を分級して、第1の粒子群と、第2の粒子群とに分離すること(ステップS10)と、第1の粒子群、及び、第2の粒子群ごとに、リチウム化合物と混合し、第1の混合物、及び、第2の混合物を得ること(ステップS20a、b)と、第1の混合物、及び、第2の混合物を焼成して、第1の焼成体、及び、第2の焼成体を得ること(ステップS30a、b)と、第1の焼成体と、第2の焼成体とを混合して、リチウム金属複合酸化物の粉体を得ること(ステップS40)と、を備える。
[分級:ステップS10]
まず、ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体(以下、「前駆体の粉体」ともいう。)を分級して、少なくとも第1の粒子群と、第2の粒子群とに分離する(ステップS10)。また、第2の粒子群は、第1の粒子群よりも大きい平均粒径を有する。
本実施形態に係る製造方法では、焼成前に、前駆体の粉体を分級した(ステップS10)後、焼成する(ステップS30a、b)ことにより、焼成の際のそれぞれの粒子同士の焼結が抑制され、高いタップ密度を有する正極活物質を得ることができる。この正極活物質を用いた二次電池は、高いエネルギー密度を有し、かつ、正極抵抗が低減されて、高い出力特性を有することができる。
ここで分級とは、流体とともに流動している粒子の力学的挙動の差を利用して、粒子の粒径により、粒子を分けることをいう。ステップS10では、正極活物質の前駆体の粉体を、分級により、粒度分布の異なる2群以上の粒子群に分離する。なお、分級(ステップS10)は、前駆体の粉末を、例えば、3群に分けてもよく、4群以上に分けてもよい。例えば、前駆体の粉末を3群に分けた場合、第1の粒子群、第2の粒子群以外に、第2の粒子群よりも大きい平均粒径を有する第3の粒子群を分離してもよい。
(前駆体の粉体の粒度分布)
前駆体の粉体は、粒径のばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv](以下、「ばらつきの指数」と略記することもある。)が0.80以上であることが好ましく、0.90以上であってもよい。前駆体の粉末のばらつきの指数が上記範囲である場合、前駆体の粉末の粒度分布がブロードであることを示す。そして、チウム金属複合酸化物の粉体の粒度分布は、前駆体の粉体の粒度分布に依存するため、得られるリチウム金属複合酸化物の粉体(正極活物質)の粒度分布もブロードなものとなり、このような正極活物質を用いた二次電池の正極では、エネルギー密度を高めることができる。なお、前駆体の粉体のばらつきの指数の上限については、特に限定されないが、例えば、1.20以下である。
ここで、D90、D10及び体積平均粒径Mvは、レーザー光回折散乱法による粒度分布における、粒度分布曲線における粒子量の体積積算値が、それぞれ小粒径側から全体の90%となる粒径(D90)、全体の10%となる粒径(D10)、全体の50%となる粒径(体積平均粒径Mv)のことである。
このようなブロードな粒度分布を有する前駆体の粉体は、公知の方法により作製することができるが、図2に示すように、少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む混合水溶液を、中和して晶析させること(ステップS1)や、熱処理すること(ステップS2)により製造することが好ましい。以下、各工程について、説明する。
[中和晶析:ステップS1]
本実施形態に係る製造方法は、少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和晶析して、金属複合水酸化物からなる前駆体の粉体を得ること(ステップS1)、を備えてもよい。
具体的には、例えば、反応槽内において、少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む混合水溶液に、撹拌しながら中和剤水溶液を添加して、中和反応により複合水酸化物の粒子を共沈させる。中和晶析(ステップS1)により、少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む複合水酸化物(金属複合水酸化物)を得ることができる。
少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む混合水溶液は、例えば、ニッケル、コバルト及びマンガンの硫酸塩溶液、硝酸塩溶液、塩化物溶液などを用いることができる。また、混合水溶液は、元素Mを含んでもよい。混合水溶液に含まれる金属元素の組成は、得られる金属複合水酸化物の粒子に含まれる金属元素の組成とほぼ一致する。したがって、目的とする金属複合水酸化物の粒子の金属元素の組成と同じになるように混合水溶液の金属元素の組成を調製することができる。
中和剤水溶液は、特に限定されず、例えば、アルカリ水溶液を用いることができ、水酸化アルカリの水溶液を用いるのが好ましい。より具体的には、水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
また、中和剤水溶液と併せて、錯化剤を原料水溶液に添加してもよい。錯化剤は、反応槽内の水溶液(少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む混合水溶液と、中和剤水溶液と、錯化剤を用いる場合は錯化剤と、を混合させた水溶液)(以下、「反応水溶液」ということもある)中で金属イオンと結合して錯体を形成可能なものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。錯化剤としては、例えば、アンモニウムイオン供給体を用いることができる。アンモニウムイオン供給体としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを用いることができる。錯化剤を添加することにより、反応水溶液中の金属イオンの溶解度を調整することができる。
また、中和晶析(ステップS1)の条件は、最終的に得られるリチウム金属複合酸化物の粉体(正極活物質)のばらつき指数が0.80以上となる金属複合酸化物粒子を共沈させることができる条件で行うことが好ましく、公知の方法を適宜、用いることができる。また、中和晶析(ステップS1)は、例えば、バッチ方式による晶析法を用いても、連続晶析法を用いてもよい。
なお、バッチ方式による晶析法とは、反応槽内の反応水溶液で中和反応が進行し、定常状態になった後に金属複合水酸化物の粒子を回収する方法である。また、連続晶析法は、純水を収容した反応槽内に、所望のpHとなるように中和剤水溶液を添加しながら、少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液と、必要に応じて錯化剤を適量添加し、得られた反応水溶液中で中和反応により生成した金属複合水酸化物の粒子を含む水溶液をオーバーフローから回収する方法である。
本実施形態に係る製造方法においては、よりブロードな粒度分布を有する前駆体の粉体を得るという観点から、中和晶析(ステップS1)は、連続晶析法を用いて行うことが好ましい。また、連続晶析法は、大量生産に向いており、製造コストも低減できる。
また、中和晶析(ステップS1)により得られる金属複合酸化物の粒度分布は、最終的に得られるリチウム金属複合酸化物の粉体の粒度分布に反映されるため、粒度分布がブロードな金属複合酸化物の粒子を共沈させることが好ましい。よって、中和晶析(ステップS1)後に得られる金属複合水酸化物の粉体は、例えば、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上であることが好ましい。
なお、中和晶析(ステップS1)において、反応水溶液の液温、反応水溶液のpH、反応水溶液の撹拌条件などの晶析の各条件は、得られる金属複合水酸化物の粒子の粒度分布がブロードとなるような条件となるように適宜調整すればよく、例えば、これらは公知の方法や条件を用いてもよい。
中和晶析(ステップS1)において、中和反応後に回収した金属複合水酸化物の粒子は、反応水溶液に含まれる不純物成分を除去するために洗浄、水洗した後、ろ過して乾燥してもよい。洗浄は、アルカリ水溶液や純水などを用いる公知の方法を用いてもよい。また、水洗、ろ過及び乾燥も、公知の方法を用いてもよい。
[熱処理:ステップS2]
また、図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、中和晶析(ステップS1)で得られた晶析物を熱処理して、金属複合水酸化物、及び、金属複合酸化物の少なくとも一方からなる前駆体の粉体を得ること(ステップS2)を備えてもよい。なお、後述するように、熱処理(ステップS2)は、分級(ステップS10)後の第1の粒子群、及び/又は、第2の粒子群に行ってもよい。
ステップS2は、後述するリチウム化合物との混合(ステップS20a、b)の前に、前駆体の粉体を熱処理し、前駆体の粉体に含まれる水分の少なくとも一部を除去する工程である。前駆体の粉体中に残留する水分の少なくとも一部を除去することにより、後述する焼成(ステップS30a,b)で得られるリチウム金属複合酸化物の粉体(正極活物質)のLi/Meがばらつくことを防ぐことができる。
熱処理(ステップS2)は、Li/Meのばらつきをより低減させるという観点から、前駆体の粉体を、十分に酸化させ、前駆体の粉体中の水酸化物がすべて酸化物まで転化した、金属複合酸化物を得てもよい。なお、正極活物質のLi/Meにばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしも、金属複合水酸化物のすべてを、金属酸化物に転換する必要はない。
熱処理(ステップS2)は、前駆体の粉末中の残留水分の少なくとも一部が除去される温度まで加熱すればよく、例えば、105℃以上700℃以下の温度で熱処理することが好ましい。また、熱処理を行う雰囲気は、特に限定されず、例えば、容易に操作が行えるという観点から、空気気流中において行うことが好ましい。
(分級)
次いで、前駆体の粉体を、少なくとも、第1の粒子群(小粒径)、及び、第2の粒子群(大粒径)に分級する。本実施形態で用いられる分級の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、乾式分級であってもよく、湿式分級であってもよい。なお、流体が気体の場合は乾式分級、流体が液体の場合は湿式分級となる。以下、それぞれの分級の方法について、さらに詳しく説明する。
(乾式分級)
乾式分級は、コンプレッサー等により加圧された気体を流動媒体とし、この気体とともに前駆体の粉体(粒子)を分級装置に導入し、粒子に働く慣性力、又は、遠心力を利用して粒径により粒子を分ける。
乾式分級に用いる分級装置は、公知のものを利用すればよく、例えば前者の分級装置としては、エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製)等を利用でき、後者の分級装置としては、エアロファインクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)、ターボクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)、マイクロスピン(日本ニューマチック工業株式会社製)、ミクロンセパレータ(ホソカワミクロン株式会社製)、ターボフレックス(ホソカワミクロン株式会社製)等を利用することができる。流動媒体としては、特に限定されることはなく、空気、窒素等を用いることができるが、空気を用いるのが好ましい。
(湿式分級)
湿式分級は、前駆体の粉体(粒子)を媒体に分散させてスラリー(懸濁液)とし、このスラリーを分級装置に導入して粒子を分ける。例えば、前駆体の粉体として、中和晶析により得られた金属複合水酸化物を用いる場合には、必要に応じて洗浄を施したうえで、晶析後のスラリーをそのまま分級処理に供してもよい。
湿式分級に用いる分級装置は、公知のものを利用すればよく、ハイドロサイクロン(日本化学機械製造株式会社)、ナノカット/マイクロカット(Krettek社製)等を利用することができる。媒体としては、特に限定されることはなく、例えば、水を用いるのが好ましい。湿式分級後は、必要に応じて純水等により洗浄を施したうえで、ろ過して乾燥する。洗浄、ろ過、及び乾燥の各処理は、特にその方法を限定されることはなく、公知の方法や条件を用いることができる。
(分級点)
分級処理に当たり、分級点(カットポイント)は特に限定されることはなく、分級に供する前駆体の粉体の粒度分布と、第1の粒子群、及び、第2の粒子群として所望する平均粒径(粒度分布)を勘案して、適宜設定すればよい。
具体的には、粒子群を、第1の粒子群(小粒径)と、第2の粒子群(大粒径)の2群に分離する場合には、第1の粒子群:第2の粒子群を、例えば、質量比で5:95〜95:5の割合、好ましくは10:90〜90:10の割合、より好ましくは15:85〜85:15の割合となるように分級点を設定することができる。なお、前駆体の粉体は、3群以上に分離してもよく、粒子群を3群以上に分離する場合は、複数の分級点を設定してもよい。
前駆体の粉体を分級した場合、分級後に得られるそれぞれの粒子群は、分級前の前駆体の粉体と比較して、狭くシャープな粒度分布を有する。なお、第1の粒子群、及び、第2の粒子群のばらつきの指数は、分級前の前駆体の粉体のばらつきの指数よりも小さければ特に限定されないが、例えば、0.8未満であってもよい。
また、第1の粒子群(小粒径)の体積平均粒径Mvは、第2の粒子群(大粒径)の体積平均粒径Mvよりも小さければ特に限定されないが、例えば、分級前の前駆体の粉体の体積平均粒径Mvよりも小さくてもよい。また、第2の粒子群(大粒径)の体積平均粒径Mvは、例えば、分級前の前駆体の粉体の体積平均粒径Mvよりも大きくてもよい。第1の粒子群、及び、第2の粒子群のばらつきの指数は、分級後に得られるそれぞれの粒子群の粒度分布は、所望する電池特性等に応じて、適宜、調整することができる。
ところで、後述する焼成(ステップS30a、b)において、一般的に小粒径の粒子ほど焼結を開始する温度が低下し、より低温で複数の粒子が結合した粗大な焼結体を形成しやすくなる。よって、焼成温度は、混合したリチウムの拡散や結晶構造の安定化の面では高温とするのが好ましいが、反面、焼成温度が高温である場合、焼結による粗大化が顕著となるので、両者のバランスに応じて、焼成温度を調製することが要求される。
よって、分級前の前駆体の粉体や、分級後の複数の粒子群を焼成(ステップS30a、b)前に混合した粉体の場合、分級して得られたそれぞれの粒子群と比較して、粒度分布がブロードになっているので、特に、第1の粒子群(小粒径)中の粒子が焼結してしまう温度Xで焼成を行うことがある。この場合、小粒径の粒子が、大粒径の粒子を巻き込んで焼結して、極めて粗大な焼結体を形成することがある(図8(A)、図8(B)、比較例1参照)。
一方、分級した第1の粒子群(小粒径)の粒子と、第2の粒子群(大粒径)の粒子を、上記と同じ温度Xで焼成した場合、第2の粒子群(大粒径)では、焼結が生じる小粒径の粒子がほとんど含まれていないので、焼結はほぼ認められない(図10(A)、図10(B)、参考例2参照)。また、第1の粒子群(小粒径)の粒子群は、この温度Xで焼結が進行するが、第1の粒子群(小粒径)中には、大粒径の粒子がほとんど含まれていないので、焼結体の粒径も自ずと制限され、極めて粗大な粒子となることはない(図9(A)、図9(B)、参考例1参照)。
したがって、前駆体の粉体を分級(ステップS10)した後に、第1の粒子群、第2の粒子群をそれぞれ単独で焼成(ステップS30a、b)して、焼成後に、分級時の質量比で、第1の焼成体、及び、第2の焼成体を混合(ステップS40)した試料をA、前駆体の粉体を分級せずに焼成した試料をBとした場合、両者(試料A、B)の焼成温度を含めた焼成条件をすべて同一としたとしても、試料Aの方が試料Bよりも、粗大な焼結体の含有率が低くなり、焼結による粒子の粗大化に伴う、タップ密度の低下や、電気化学特性の低下を抑制することができる(図7(A)、(B)、実施例1と、図8(A)、図8(B)、比較例1とを参照)。
[リチウム化合物との混合:ステップS20a、b]
次いで、第1の粒子群、及び、第2の粒子群ごとに、リチウム化合物と混合し、第1の混合物、及び、第2の混合物を得る(ステップS20a、b)。また、リチウム化合物との混合(ステップS20a、b)では、元素Mを含む化合物を混合してもよい。
リチウム化合物は、特に限定されず、リチウムを含む公知の化合物を用いることができ、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、又は、これらの混合物などが用いられる。これらの中でも、残留不純物の影響が少なく、焼成温度で溶解するという観点から、炭酸リチウム、水酸化リチウム、又は、これらの混合物が好ましい。
第1の粒子群、又は、第2の粒子群と、リチウム化合物と、任意に元素Mとの混合方法は、特に限定されず、前駆体の粒子等の形骸が破壊されない程度で、第1の粒子群、又は、第2の粒子群と、リチウム化合物と、任意に元素Mとが十分に混合されればよい。なお、第1の粒子群と、リチウム化合物とを混合する条件と、第2の粒子群と、リチウム化合物とを混合する条件と、は、同一の条件としてもよく、それぞれ異なる条件としてもよい。
混合方法としては、例えば、一般的な混合機を使用して混合することができ、例えばシェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いて混合することができる。なお、第1のリチウム混合物、及び、第2のリチウム混合物は、焼成(ステップS30a、g)の前に、十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合、得られるリチウム金属複合酸化物の粉体(正極活物質)の個々の粒子間でLiとLi以外の元素の組成がばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じることがある。
リチウム化合物は、第1及び第2のリチウム混合物中のNiとCoとMnと元素Mとの合計モル量(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(以下、「Li/Me」ということがある。)が、0.95以上1.50以下となるように、混合される。つまり、第1のリチウム混合物、及び、第2のリチウム混合物におけるLi/Meが、得られるリチウム金属複合酸化物の粉体(正極活物質)におけるLi/Meと同じになるように混合される。なお、Li/Meの値は、後述する組成式中の(1+u)の値に相当する。これは、焼成(ステップS30a、b)前後で、Li/Me、及び、Li以外の各金属元素のモル比は変化しないので、このリチウム化合物との混合(ステップS20a、b)における、第1及び第2のリチウム混合物のLi/Meが、正極活物質のLi/Meとなるからである。
なお、第1の粒子群、又は、第2の粒子群と、リチウム化合物とを混合する(ステップS20a、b)前に、第1の粒子群、又は、第2の粒子群を、熱処理してもよい。熱処理の条件は、上述したステップS2と同様の条件とすることができる。
[焼成:ステップS30a、b]
次いで、第1のリチウム混合物、及び、第2のリチウム混合物のそれぞれを、酸化雰囲気中で750℃以上1000℃以下の温度で焼成して、第1の焼成体、及び、第2の焼成体を得る(ステップS30a、b)。リチウム混合物を焼成すると、粒子群(前駆体)中の粒子に、リチウム化合物中のリチウムが拡散するので、多結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物の粒子からなる、焼成体が形成される。
焼成温度は、750℃以上1000℃以下であり、好ましくは750℃以上950℃以下である。焼成温度が750℃未満である場合、リチウムの拡散が十分に行われなくなり、余剰のリチウムや未反応の粒子が残ったり、結晶構造が十分整わなくなったりして、十分な電池特性が得られないという問題が生じる。また、焼成温度が1000℃を超える場合、形成されたリチウム金属複合酸化物の粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じる可能性がある。異常粒成長が生じると、焼成後の粒子が粗大となってしまい粒子形態を保持できなくなる可能性があり、正極活物質を形成したときに、比表面積が低下して、正極抵抗が上昇して電池容量が低下するという問題が生じる。
焼成の雰囲気は、酸化性雰囲気が好ましく、酸素濃度が20容量%以上100容量%以下の雰囲気とすることが好ましい。また、焼成に用いられる炉は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。なお、焼成時間は、特に限定されず、例えば、1時間以上24時間以下であってもよい。
焼成によって得られた第1の焼成体、及び、第2の焼成体は、粒子間の焼結は比較的、抑制されているが、弱い焼結や凝集により粗大な粒子を形成していることがある。このような場合には、さらに、第1の焼成体、及び、第2の焼成体を解砕する工程(不図示)を備えてもよい。解砕により上記焼結や凝集を解消して粒度分布を調整することができる。
[焼成体の混合:ステップS40]
次いで、第1の焼成体と、第2の焼成体とを混合して、リチウム金属複合酸化物の粉体を得る(ステップS40)。
第1の焼成体と、第2の焼成体との混合割合は、特に限定されず、目的とする特性に応じて、適宜、混合割合を調製してもよい。すなわち、図4〜6に示されるように、タップ密度などの粉体特性、電池容量、正極抵抗などの電気化学特性は、第1の焼成体(小粒径)と第2の焼成体(大粒径)との混合割合で加成性(直線的な関係)が成り立つため、正極活物質として求められる特性に応じて、適宜、混合割合を調製することができる(図4〜図6の参考例1、2参照)。第1の焼成体と、第2の焼成体との混合割合は、例えば、第1の焼成体:第2の焼成体を、質量比で5:95〜95:5の割合、好ましくは10:90〜90:10の割合、より好ましくは15:85〜85:15の割合となるように混合してもよい。なお、本実施形態の製造方法で得られた正極活物質は、第1の焼成体(小粒径)と第2の焼成体(大粒径)との混合割合から想定されるよりも高いタップ密度、体積当たりの放電容量や、低い正極抵抗を有することができる(図4〜図6の実施例1、2参照)。
[リチウムイオン二次電池用の正極活物質]
上述した本実施形態の製造方法により、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び、任意に元素Mを含み、六方晶系の層状構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉体を含有する正極活物質を得ることができる。この正極活物質を正極に用いた二次電池は、出力特性が向上し、かつ、高いエネルギー密度を有することができる。以下、本実施形態に係る製造方法により得られる正極活物質の特性について、説明する。
(組成)
リチウム金属複合酸化物の粉体は、各元素の物質量比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=(1+u):(1−x−y−z):x:y:z[式中、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.15≦x≦0.50、yは0.15≦y≦0.50、zは0≦z≦0.10であり、0.30≦(x+y+z)≦0.85を満たし、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素]で表される。なお、上記組成式は、リチウム金属複合酸化物の粉体(粒子)全体の平均モル比を表している。
また、リチウム金属複合酸化物の粉体は、組成式:Li1+uNi1−x−y−zCoMn2+α(式中、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb及びTaから選択される少なくとも1種の元素であり、−0.05≦u≦0.50、0.15≦x≦0.50、0.15≦y≦0.50、0≦z≦0.10、0.30≦x+y+z≦0.85、−0.5≦α≦0.5である。)で表されてもよい。なお、組成式中のαは、0であってもよい。
上記モル比、及び、組成式において、Coの含有量を示すxの範囲は、0.15≦x≦0.50、好ましくは0.20≦x≦0.50、より好ましくは0.20≦x≦0.40である。xの値がこの範囲である場合、正極活物質を用いて得られた二次電池は、良好な電池容量を有し、かつ、正極抵抗(反応抵抗)が低下することにより、より高い出力特性を有する。
上記モル比、及び、組成式において、Mnの含有量を示すyの範囲は、0.15≦y≦0.50、好ましくは0.20≦y≦0.50、より好ましくは0.20≦a≦0.40である。yの値がこの範囲である場合、正極活物質を用いて得られた二次電池は、電池容量や出力特性が良好であるだけでなく、熱安定性が向上する。
任意に添加する元素Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素である。また、元素Mは、結晶中のNi、Co、Mnの何れかと一部置換可能な元素であることが好ましい。
上記モル比、及び、組成式において、元素Mの含有量を示すzが0を超える場合、熱安定性や保存特性を向上させることができ、好ましくは0.0<z≦0.10である。元素Mは、正極活物質10の内部に均一固溶していてもよいし、また、一次粒子の表面を覆う、二次粒子の表面を膜状に覆う、二次粒子の表面に微粒子状に存在するなど粒子内で分布が偏析していてもよい。
上記モル比、及び、組成式において、Liの含有量を示す(1+u)の範囲は、0.95≦(1+u)≦1.50であり、つまり−0.05≦u≦0.50である。uの値がこの範囲である場合、正極抵抗(反応抵抗)が低下して電池の出力が向上する。
(体積平均粒径)
リチウム金属複合酸化物の粉体は、体積平均粒径Mvが8μm以上20μm以下であることが好ましく、8μm以上15μm以下であることがより好ましい。リチウム金属複合酸化物の粉体の体積平均粒径Mv(以下、平均粒径(Mv)ともいう。)が上記範囲である場合、後述する粒度のばらつきと、粒度による組成勾配と、を組み合わせることにより、正極活物質を用いた二次電池は、高い出力特性と、正極への高い充填性を有することによる高い電池容量とをより高いレベルで両立させることができる。
一方、リチウム金属複合酸化物の粉体の平均粒径(Mv)が8μm未満である場合、正極への高い充填性が得られないことがある。また、リチウム金属複合酸化物の粉体の平均粒径が20μmを超える場合、高い出力特性や、高い電池容量が得られないことがある。なお、平均粒径(Mv)は、レーザー光回折散乱式粒度分布計により測定される体積積算値から求めることができる。
(粒度分布のばらつき)
リチウム金属複合酸化物の粉体は、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv](以下、「ばらつき指数」と略記することもある。)が、0.80以上である。ここで、ばらつき指数は、レーザー光回折散乱法による粒度分布における、粒度分布曲線における粒子量の体積積算で90%での粒径(D90)と10%での粒径(D10)、及び、平均粒径(Mv)とによって算出される値である。
リチウム金属複合酸化物の粉体のばらつき指数が0.80以上である場合、粒度分布が比較的ブロードであるため、正極活物質の正極での充填性が高く、高い体積エネルギー密度を有する二次電池を得ることができる。
一般的に、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の粒度分布がブロードである場合、正極活物質に、平均粒径(Mv)に対して粒径が小さい微粒子や、平均粒径(Mv)に対して粒径の大きい粗大粒子が多く存在する。これらの微粒子や粗大粒子が多く混在する正極活物質では、充填密度が高くなることはよく知られており、このような正極活物質を用いれば体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。よって、リチウム金属複合酸化物の粉体の粒径のばらつき指数が0.80未満である場合、体積エネルギー密度が低下することがある。ばらつき指数の上限については、特に限定されないが、後述する正極活物質の製造方法を用いた場合、上限は1.20以下程度となる。
なお、本実施形態に係る正極活物質は、上述したリチウム金属複合酸化物の粉体を含むものであり、実質的にリチウム金属複合酸化物の粉体から構成されてもよく、また、本発明の効果を阻害しない範囲で、リチウム金属複合酸化物の粉体と、他のリチウム金属複合酸化物の粉体とを含んでもよい。
3.リチウムイオン二次電池
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法(以下、「二次電池の製造方法」ともいう。)は、上述した製造方法により正極活物質を得ること、を備え、得られる二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極と、電解質とを含む。リチウムイオン二次電池は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素により構成されることができ、例えば、正極、負極、及び非水系電解液を備える。また、二次電池は、例えば、正極、負極、及び固体電解質を備えた全固体二次電池であってもよい。以下、正極以外の各構成要素について、説明する。
なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(正極)
上記の正極活物質を用いて、二次電池の正極を作製する。以下に正極の製造方法の一例を説明する。まず、上記の正極活物質(粉体状)、導電材および結着剤(バインダー)を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
正極合材中のそれぞれの材料の混合比は、リチウム二次電池の性能を決定する要素となるため、用途に応じて、調整することができる。材料の混合比は、公知のリチウム二次電池の正極と同様とすることができ、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下とし、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下としてもよい。
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して溶剤を飛散させ、シート状の正極が作製される。必要に応じ、電極密度を高めるべくロールプレス等により加圧することもある。このようにして得られたシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等し、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、前記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
導電材は、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤(バインダー)は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸などを用いることができる。
必要に応じ、正極活物質、導電材および活性炭を分散させて、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(負極)
負極は、金属リチウム、リチウム合金等を用いることができる。また、負極は、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いてもよい。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、非水系電解液を用いることができる。非水系電解液は、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いてもよい。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状を示す塩をいう。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
また、リチウムイオン二次電池が全固体二次電池の場合、非水系電解質としては、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
無機固体電解質として、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が用いられる。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、酸素(O)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等が挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、硫黄(S)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P等が挙げられる。
なお、無機固体電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN−LiI−LiOH等を用いてもよい。
有機固体電解質としては、イオン電導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。なお、固体電解質を用いる場合は、電解質と正極活物質の接触を確保するため、正極材中にも固体電解質を混合させてもよい。
(二次電池の形状、構成)
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータ、及び非水系電解液や、正極、負極、及び固体電解質で構成される本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
非水系電解質として非水系電解液を用いる場合、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
次に、本発明の一実施形態に係る正極活物質について、実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下、実施例及び比較例における分析方法及び評価方法を説明する。なお、本実施例では、特に断りがない限り、金属複合水酸化物の粒子、正極活物質および二次電池の製造には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
[組成]
リチウム金属複合酸化物の粉体(全体)の組成分析は、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8100)を用いて行った。
[ばらつき指数]
粒度分布の指標となる体積平均粒径Mv、D10、D90などは、レーザー回折式粒度分布計(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラック)により測定した。測定されたそれぞれの値を用いて、[(D90−D10)/Mv]で表されるばらつき指数を算出した。
[粒子形状]
リチウム金属複合酸化物の粉体を構成する粒子の外観については、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S−4700)により観察した。図7〜図10に、後述する実施例2(図7)、比較例1(図8)、参考例1(図9)、参考例2(図10)で得られた正極活物質をそれぞれ観察したSEM像を示す。
(電気化学特性評価)
得られた正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形し、正極(評価用電極)PEを作製した。作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した後、この正極PEを用いて2032型のコイン型電池CBAを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。負極NEには、直径17mm厚さ1mmのリチウム(Li)金属を用い、電解液には、1MのLiClO4を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータSEには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池CBAは、ガスケットGAとウェーブワッシャーWWを有し、正極缶PCと負極缶NCとで2032型のコイン型電池CBAに組み立てた。
(初期充放電容量)
コイン型電池CBAを作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極PEに対する電流密度を0.1mA/cmとして、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し初期充電容量とし、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を初期放電容量とした。なお、初期充放電容量の測定には、マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
なお、体積当たりの初期放電容量(mAh/cm)は、重量当たりの放電容量(mAh/g)の値を、タップ密度(g/cm)の値を乗ずることよって、算出した。
(正極抵抗)
正極抵抗(反応抵抗)は、測定温度に温度調節したコイン型電池CBAを充電電位4.1Vで充電して、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して、図4(A)に示すナイキストプロットを作成し、図4(B)に示した等価回路を用いてフィッティング計算して、正極抵抗(反応抵抗)の値を算出した。
[実施例1]
(晶析工程:ステップS1)
反応槽(60L)に純水を所定量入れ、攪拌しながら槽内温度を49℃に設定した。この反応槽内にニッケル:コバルト:マンガンのモル比が85:5:10となるように、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンの2.0Mの混合水溶液と、アルカリ溶液である25質量%水酸化ナトリウム溶液、錯化剤として25質量%アンモニア水を反応槽に同時に連続的に添加した。このとき混合水溶液の滞留時間は8時間となるように流量を制御し、反応槽内のpHを12.0〜12.6に、アンモニア濃度を10〜14g/Lに調整した。反応槽が安定した後、オーバーフロー口から金属複合水酸化物の粒子を含むスラリーを回収した後、濾過を行い金属複合水酸化物のケーキを得た。濾過を行ったデンバー内にある複合水酸化物140gに対して1Lの純水を通液することで、不純物の洗浄を行った。
濾過後の粉を乾燥し、Ni0.85Co0.05Mn0.10(OH)2+α(0≦α≦0.4)で表される金属複合水酸化物の粒子を得た。得られた金属複合水酸化物の粒子の体積平均粒径Mvは、12.0μmであり、粒径のばらつき指数は0.96であった。
(分級工程:ステップS10)
得られた金属複合水酸化物の粒子を、乾式分級機(日鉄鉱業株式会社製エルボージェットLabo型)を用い、小粒径側と大粒径側の質量比率が30:70となるようにカットポイントを設定して分級処理を行った。得られた第1の粒子群(小粒径側の粒子群:s1)の体積平均粒径Mvは5.6μm、粒径のばらつき指数は0.56であり、第2の粒子群(大粒径側の粒子群:s2)の体積平均粒径Mvは13.4μm、粒径のばらつき指数は0.75であった。また得られた第1の粒子群(s1)と第2の粒子群(s2)の質量比率は28:72であった。第1の粒子群(s1)と第2粒子群(s2)の粒径、比表面積、タップ密度を表1に示す。
(混合工程:ステップS20a)
得られた第1の粒子群(s1)を、大気雰囲気下で600℃に5時間保持する熱処理(ステップS2)を行った。第1の粒子群(s1)は、熱処理により金属複合水酸化物から金属複合酸化物へ転化した。熱処理後の第1の粒子群(s1)に対して、水酸化リチウムを、リチウム量(Li)とニッケル、コバルト及びマンガンの合計メタル量(Me)との原子比(以下、Li/Meと表す)が1.02になるように秤量した。その後、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて金属複合水酸化物の粒子と十分に混合し、第1のリチウム混合物を得た。
(焼成工程:ステップS30a)
得られたリチウム混合物を、酸素気流中にて820℃で10時間保持して焼成し、その後、解砕して第1の焼成体(リチウム金属複合酸化物の粒子)を得た。
(混合工程、焼成工程:ステップS20b、ステップS30b)
同様に第2の粒子群(s2)に対しても、第1の粒子群(s1)と同じ条件で熱処理、水酸化リチウムとの混合、焼成、解砕を行い、第2の焼成体(リチウム金属複合酸化物の粒子)を得た。
(混合工程:ステップS40)
第1の焼成体と第2の焼成体を、質量比で、第1の焼成体(s1):第2の焼成体(s2)=28:72となるように混合し、リチウム金属複合酸化物の粉体からなる正極活物質を得た。得られた正極活物質の体積平均粒径Mvは12.2μm、粒径のばらつき指数は0.78であった。またタップ密度は2.61g/cmであった。
得られた正極活物質の初期充放電容量、及び、正極抵抗(反応抵抗)値(SOC80%とSOC20%)の測定結果を表2に示す。
(実施例2)
混合工程(ステップS40)において、質量比で、第1の焼成体:第2の焼成体=50:50となるように混合した以外は実施例1と同じ条件で正極活物質を作製し、電気化学特性評価に供した。作製した正極活物質の体積平均粒径Mvは11.2μm、粒径のばらつき指数は0.88であった。またタップ密度は2.53g/cmであった。また、電気化学特性評価の測定結果を表2に示す。
(比較例1)
実施例1の分級工程(ステップS10)で得られた第1の粒子群(s1)と第2の粒子群(s2)の金属複合水酸化物の粒子を質量比でs1:s2=28:72となるように混合した。つまり、分級前の金属複合水酸化物の粒子を模擬した試料である。この金属複合水酸化物の粒子を実施例1と同じ条件で、熱処理、水酸化リチウムとの混合、焼成工程を行い、実施例1の混合工程は行わず正極活物質を作製し、電気化学特性評価に供した。
作製した正極活物質の体積平均粒径Mvは14.5μm、粒径のばらつき指数は0.88であった。またタップ密度は2.20g/cmであった。また、電気化学特性評価の測定結果を表1に示す。
(参考例1)
実施例1の焼成工程(ステップS30a)で得られた第1の焼成体(s1)のみを用いて正極活物質とし、電気化学特性評価に供した。作製した正極活物質の体積平均粒径Mvは9.7μm、粒径のばらつき指数は1.01であった。またタップ密度は2.11g/cmであった。また、電気化学特性評価の測定結果を表1に示す。
(参考例2)
実施例1の焼成工程(ステップS30a)で得られた第2の焼成体(s2)のみを用いて正極活物質とし、電気化学特性評価に供した。作製した正極活物質の体積平均粒径Mvは13.4μm、粒径のばらつき指数は0.65であった。またタップ密度は2.67g/cmであった。また、電気化学特性評価の測定結果を表1に示す。
[評価結果]
実施例の正極活物質では、比較例1の正極活物質と比較して、高いタップ密度、及び、体積当たりの放電容量(mAh/cm)を有する。また、タップ密度は、図4の参考例1、及び、参考例2に示されるように、粒子径が大きい粒子の割合が多くなるほど、大きくなるという加成性(直線的な関係)があると想定されるが、実施例の正極活物質では、想定されるタップ密度よりも、より高いタップ密度を有する。また、図5に示されるように、実施例の正極活物質では、タップ密度と同様に、参考例1、2から想定される体積当たりの放電容量(mAh/cm)よりも、高い放電容量を有する。
さらに、実施例の正極活物質では、比較例1の正極活物質と比較して、低い正極抵抗(SOC80%、SOC20%)を有す。図6に示されるように、実施例の正極活物質では、参考例1、2から想定される正極抵抗(SOC80%)よりも、より低い正極抵抗を有し、より出力特性が向上していることが示された。

Claims (8)

  1. 六方晶系の層状構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉体を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体を分級して、少なくとも、第1の粒子群と、第2の粒子群とに分離することと、
    前記第1の粒子群と、リチウム化合物とを混合し、得られた第1のリチウム混合物を750℃以上1000℃以下の温度で焼成して第1の焼成体を得ることと、
    前記第2の粒子群と、リチウム化合物とを混合し、得られた第2のリチウム混合物を750℃以上1000℃以下の温度で焼成して第2の焼成体を得ることと、
    前記第1の焼成体と、前記第2の焼成体とを混合して、前記リチウム金属複合酸化物の粉体を得ることとを備え、
    前記第2の粒子群は、前記第1の粒子群よりも大きい平均粒径を有し、
    前記リチウム金属複合酸化物の粉体は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び、任意に元素Mを含み、各元素の物質量比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=(1+u):(1−x−y−z):x:y:z[ただし、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.02≦x≦0.50、yは0.02≦y≦0.50、zは0≦z≦0.10であり、0.30≦(x+y+z)≦0.95を満たし、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素]で表される、
    リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 前記ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体の体積平均粒径Mvは、5μm以上20μm以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体は、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上である、請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和晶析して、金属複合水酸化物からなる前記ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体を得ること、を備える、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和晶析することと、得られた晶析物を熱処理して、金属複合水酸化物、及び、金属複合酸化物の少なくとも一方からなる前記ニッケル、コバルト、及び、マンガンを含む化合物の粉体を得ること、を備える、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記中和晶析は、連続晶析法を用いて行う、請求項4又は請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 前記第1の粒子群、及び、前記第2の粒子群のうち少なくとも一方を、リチウム化合物と混合する前に熱処理すること、を備える、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の製造方法により正極活物質を得ること、を備え、前記正極活物質を含む正極と、負極と、電解質とを含む、リチウムイオン二次電池の製造方法。
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