[0032] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。リソグラフィ装置は、
−放射ビーム(例えば、UV放射、DUV放射、又は任意の他の適切な放射)である投影ビームBを調整するように構成された照明装置(他に照明システムとも呼ばれる)ILと、
−パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構成され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続される支持構造(例えば、マスク支持構造/マスクテーブル)MTと、
−支持テーブル、例えば1つ以上のセンサを支持するためのセンサテーブル、及び/又は、基板Wを特定のパラメータに従って正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WT若しくは「基板サポート」と、
−基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上にパターニングデバイスMAによって投影ビームBに与えられたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
[0033] 照明システムILは、放射を誘導し、整形し、又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
[0034] 支持構造MTは、パターニングデバイスMAを支持、すなわちその重量を支えている。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの配向、リソグラフィ装置の設計及び、例えばパターニングデバイスMAが真空環境で保持されているか否か等の条件に応じた方法でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械式、真空式、静電式又はその他のクランプ技術を用いて、パターニングデバイスMAを保持することができる。支持構造MTは、例えば、必要に応じて固定又は可動式にできるフレーム又はテーブルであってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムに対して確実に所望の位置に来るようにしてもよい。本明細書において「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
[0035] 明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板Wのターゲット部分Cにパターンを生成するように、投影ビームBの断面にパターンを付与するために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、投影ビームBに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板Wのターゲット部分Cにおける所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、投影ビームBに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分Cに生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
[0036] パターニングデバイスMAは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小型ミラーのマトリクス配列を使用し、ミラーは各々、入射する放射ビーム(例えば、投影ビームB)を異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する投影ビームBにパターンを付与する。
[0037] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸流体の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電気光学システム、又はその任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムPSを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
[0038] 本明細書で示すように、リソグラフィ装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
[0039] リソグラフィ装置は、投影システムPSの特性を測定するためのセンサなどの測定装置を保持するように配置された測定テーブル(図1には図示しない)を備えていてもよい。一実施形態においては、測定テーブルは、基板Wを保持するように構成されていない。リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上のテーブル(又はステージ又はサポート)、例えば2つ以上の基板テーブルWT、又は1つ以上の基板テーブルWTと1つ以上のセンサ若しくは測定テーブルとの組み合わせを有するタイプのものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、複数のテーブルが並列使用されてもよいし、あるいは、1つ以上のテーブルで準備工程が行われ、その間に1つ以上の他のテーブルが露光のために使用されてもよい。リソグラフィ装置は、2つ以上のパターニングデバイステーブル(又はステージ又はサポート)、例えば2つ以上のサポート構造MTを有していてもよく、これらは基板テーブルWT、センサテーブル及び測定テーブルと同様に並列使用されてもよい。
[0040] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから投影ビームBを受ける。放射源SOとリソグラフィ装置とは、例えば放射源SOがエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、投影ビームBは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源SOが水銀ランプの場合は、放射源SOがリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
[0041] イルミネータILは、投影ビームBの角度強度分布を調整するように設定されたアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータILの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ−outer及びσ−innerと呼ばれる)を調節することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータILを用いて投影ビームBを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。放射源SOと同様、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一部を形成すると考えてもよいし、又は考えなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一体化部分であってもよく、又はリソグラフィ装置とは別の構成要素であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置は、イルミネータILをその上に搭載できるように構成することもできる。任意選択として、イルミネータILは着脱式であり、別に提供されてもよい(例えば、リソグラフィ装置の製造業者又は別の供給業者によって)。
[0042] 投影ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイスMAを横断した投影ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、投影ビームBを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2の位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを投影ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1の位置決めデバイスPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに投影ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。
[0043] 一般に、支持構造MTの移動は、両方とも第1の位置決めデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2の位置決めデバイスPWの一部を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ロングストロークモジュールは、ショートストロークモジュールを限られた精度で長距離移動させるように構成されている。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対して短距離にわたって支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを高精度で移動させるように構成される。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。
[0044] パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占めるが、ターゲット部分Cの間の空間に配置されてもよい。ターゲット部分Cの間のスペースに位置するマークはスクライブレーンアライメントマークとして知られている。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイが設けられている状況では、マスクアライメントマークM1、M2をダイ間に配置することができる。
[0045] 図示のリソグラフィ装置は、以下の使用モードの少なくとも1つにおいて基板Wを露光するために使用可能である。
[0046] 1.ステップモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、投影ビームBに付与されたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
[0047] 2.スキャンモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、投影ビームBに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分Cの(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分Cの(スキャン方向における)高さが決まる。
[0048] 3.別のモードでは、マスクテーブルMTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、投影ビームBに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般に放射源SOとしてパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
[0049] 上述した使用モードの組み合わせ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
[0050] 投影システムPSの最終要素と基板Wとの間に流体を提供する構成は、液浸システム3つの一般的な区分に分類可能である。これらは、浴式構成、局所液浸システム、及びオールウェット液浸システムを含む。本発明は局所液浸システムの使用に係る。
[0051] 局所液浸システムは、流体が基板Wの局所的な区域のみに提供される流体供給システムを用いる。流体によって満たされた区域は、上から見て基板Wの上面よりも小さく、基板Wがその区域の下を移動する間、投影システムPSに対して実質的に静止したままである。流体を局所的な区域に密封するためのメニスカス制御フィーチャが存在していてもよい。これを提供するために提案されている1つの手法が、国際公開第99/49504号に開示されている。メニスカス制御フィーチャはメニスカス固定特徴部であってもよい。
[0052] 図2は、投影システムPSの最終要素と基板テーブルWT又は基板Wとの間の空間11の境界の少なくとも一部に沿って延在する流体ハンドリング構造12(流体閉じ込め構造とも称され得る)を備えた液浸システム(局所流体供給システム又は流体ハンドリングシステムとも称され得る)を概略的に図示している。以下の文章において基板Wの表面を参照するときには、別段の明記がない限り、これに加えて又は代えて、基板テーブルWTの表面も参照するものとする。一実施形態においては、流体ハンドリング構造12と基板Wの表面との間にシールが形成され、これはガスシール16のような非接触シールであってもよい(ガスシールを備えたそのようなシステムが、欧州特許出願公開第1,420,298号明細書に開示されている)。このシールはメニスカス制御フィーチャによって提供可能である。
[0053] 例えば図2に図示されるような流体ハンドリング構造12は、流体を少なくとも部分的に、投影システムPSの最終要素と基板Wとの間の空間11(領域とも称され得る)に閉じ込める。空間11は、少なくとも部分的には、投影システムPSの最終要素の下方に位置決めされこの最終要素を包囲する流体ハンドリング構造12によって形成されている。流体は、開口13によって、投影システムPSの下方の空間11内に、及び流体ハンドリング構造12内に入れられる。流体は、開口13によって除去されてもよい。流体が開口13によって空間11に入れられるのか、それとも空間11から除去されるのかは、基板W及び基板テーブルWTの移動の方向に依存し得る。
[0054] 流体は、使用中に流体ハンドリング構造12の底部と基板Wの表面との間に形成されるガスシール16によって空間11内に閉じ込められ得る。図3に図示するように、流体ハンドリング構造12の下の液浸流体の縁部にはメニスカス320がある。流体ハンドリング構造12の最上部と投影システムPSの最終要素との間には、別のメニスカス400がある。ガスシール16のガスは、インレット15を介して、流体ハンドリング構造12と基板Wとの間のギャップに圧力下で提供される。ガスは、アウトレット14と関連付けられたチャネルを介して抽出される。ガスインレット15の過圧、アウトレット14の真空レベル、及びギャップのジオメトリは、流体を閉じ込める内向きの高速ガス流が存在するように構成される。流体ハンドリング構造12と基板Wとの間で流体にかかるガスの力が、流体を空間11内に閉じ込める。このようなシステムは、米国特許出願公開第2004−0207824号明細書に開示されており、同文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[0055] 図3は、流体ハンドリング構造12を含む液浸システムのメニスカス制御フィーチャを概略的に平面視で図示する。これはガスドラッグの原理を利用するアウトレットを有していてもよく、本発明の一実施形態はこれに係る。メニスカス制御フィーチャの各フィーチャが示されており、これらは例えば、図2においてインレット15及びアウトレット14により提供されるガスシール16によって図示されるメニスカス制御フィーチャに代わり得る。図3のメニスカス制御フィーチャは、抽出器、例えば二相抽出器の形をとる。メニスカス制御フィーチャは複数の離散した開口50を備えている。各開口50は円形であるものとして図示されているが、必ずしもそうでなくてもよい。実際、この形状は必須ではなく、開口50のうち1つ以上は円形、楕円形、直線的(例えば正方形又は長方形)、三角形などから選択された1つ以上であってもよいし、1つ以上の開口は細長であってもよい。
[0056] 開口50の半径方向内側にはメニスカス制御フィーチャが存在していなくてもよい。メニスカス320は、開口50に進入するガス流によって誘発されるドラッグ力によって、開口50の間に押し付けられる。約15m/s、望ましくは約20m/sよりも速いガスドラッグ速度であれば十分である。基板Wからの流体の蒸発の量は減少し、それによって、流体の飛散ならびに熱膨張/収縮効果が減少する。
[0057] 流体ハンドリング構造の底部は様々なジオメトリが可能である。例えば、米国特許出願公開第2004−0207824号明細書又は米国特許出願公開第2010−0313974号明細書に開示されている構造は、いずれであっても本発明の実施形態において使用され得る。本発明の一実施形態は、上から見て任意の形状を有する、又は、任意の形状に配置されたアウトレットなどの構成要素を有する流体ハンドリング構造12に適用されてもよい。そのような形状を非制限的に挙げると、円のような楕円形、矩形、例えば正方形のような直線的形状、あるいは、例えば図3に図示される四芒星以上のような、4つよりも多くの角を有する菱形又は多角形形状といった平行四辺形などが含まれ得る。
[0058] 既知のリソグラフィ装置は、ガスナイフを備えた流体ハンドリング構造12を備え得る。ガスナイフは、液浸流体を空間11に閉じ込めるのを助けるために用いることができる。したがって、ガスナイフは、液浸流体が空間11から抜け出すのを防止するのに便利であり得る。液浸流体が抜け出すと、後で欠陥をもたらすおそれがある。強いガスナイフを提供することは膜引っ張りの防止に有用である。なぜなら、強いガスナイフは、流体ハンドリング構造12に引きずられる液浸流体の量を減少させ又は防止するであろうし、より迅速に膜を破壊して流体ハンドリング構造12に取り残される液浸流体の量を減少させ得るからである。しかしながら、ガスナイフが強いと、ガスナイフが基板Wの表面上で液浸流体の液滴と衝突する際に、強いガスナイフが液浸流体の液滴にガスナイフの内側を通過させないであろうから、ガスナイフの進み側で欠陥を悪化させるかもしれない。つまり、液浸流体の液滴が流体ハンドリング構造12の進み側によって前に押され、それによってセッチングがもたらされ得る。膜引っ張り及びセッチングはいずれも、エラーを増加させ歩留まりを低下させるおそれのある欠陥を引き起こすので、これらの問題の両方に同時に対処する流体ハンドリング構造12を提供するのが有益である。
[0059] 本発明においては、流体ハンドリング構造12を備えた液浸リソグラフィ装置が提供される。流体ハンドリング構造12は、例えば図3に関連して上述したようなものであってもよい。流体ハンドリング構造12は、液浸流体をある領域に閉じ込めるように構成されており、ガスナイフシステムを備える。ガスナイフシステムは、使用中のガスナイフを生成するように構成されていてもよい。ガスナイフは、空間11(領域とも称される)の半径方向外側にあってもよく、液浸流体の閉じ込めに寄与し得る。ガスナイフシステムは、各々が出口60を有する通路を備えている。ガスナイフは、使用中に出口60を出ていくガスによって形成され得る。出口60は、平面視で、ある形状の少なくとも1つの側部を形成する。出口60は、平面視で、その形状の少なくとも1つ、複数、又はすべての側部を形成してもよい。例えば、出口60は、図3に示される四芒星の側部を形成してもよい。形状は複数の側部を有していてもよく、例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10又はそれ以上の任意の適切な数の側部が提供され得る。上述のように、出口60は任意の形状の側部を形成することができ、特に制限的ではない。図3は、スキャン方向110を、四芒星の先端のうち2つと一列に並んでいるものとして図示しているが、そうでなくてもよい。ガスナイフによって形成される形状は、任意の選択された配向でスキャン方向110と整列していてもよい。図4に図示されるように、通路は、複数の対応する第1の出口60aを有する複数の第1の通路70aと、複数の対応する第2の出口60bを有する複数の第2の通路70bとを備えている。ガスナイフは、使用中に第1の出口60a及び第2の出口60bを出ていくガスによって形成される。
[0060] 第1の実施形態においては、少なくとも1つの第1の通路70a及び少なくとも1つの第2の通路70bは、第1の出口60aを出ていくガスのよどみ圧が第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧よりも高くなるように構成されている。よどみ圧とは、等エントロピー過程を用いて流体を静止させた場合に達するであろう圧力である。換言すれば、よどみ圧とは、流体速度がゼロであり、及びすべての運動エネルギが断熱可逆(すなわち等エントロピー)過程によって圧力に変換されている流体のよどみ点における圧力である。異なるよどみ圧は、使用時に、基板W上のガスナイフのよどみ圧が、第1の出口60aによってガスを供給される区域においてより大きく、第2の出口60bによって供給される区域においてより小さくなるように変化することを意味する。これは、膜を破壊して膜引っ張りを低減させるためのディウェッティング点を作り出すのに有用なガスナイフの「強ジェット」と、セッチングを低減させるための「弱ジェット」とを有することと相関している。
[0061] 既知の装置に関しては、ガスナイフのよどみ圧を上昇させると流体ハンドリング構造12の退き側の膜引っ張りが低減されることが知られているが、これは流体ハンドリング構造12の進み側のセッチングに悪影響をもたらし得る。したがって、ガスナイフのよどみ圧の上昇は限定されてもよく、より高いよどみ圧とより低いよどみ圧との釣り合いをとることが必要である。本発明の原理は、流体ハンドリング構造12の一方の側に沿ってより高いよどみ圧とより低いよどみ圧との混合を有することに係り、このより高いよどみ圧とより低いよどみ圧との混合は、進み側かそれとも退き側かに応じて異なる効果を有する。「弱ジェット」(すなわち低いよどみ圧)を提供することは、流体ハンドリング構造12の進み側でのセッチングを低減させ得る。なぜなら、セッチングが実際に発生すると、液浸流体のいくらかの液滴が「弱ジェット」によってガスナイフの半径方向内側に移動し得るからである。均一なガス流及びガス速度を有する既知の装置においては、流体ハンドリング構造の進み側でのセッチングを低減させるために、至る所でガスナイフからのガス流を減少させることが必要である。ところが、ガスのよどみ圧を低くすることは、退き側での膜引っ張りを増大させ得る。しかし、本発明においては、膜引っ張りは、「強ジェット」(すなわち高いよどみ圧)の存在により、よどみ圧の低下による悪影響を受けないであろう。換言すれば、本発明においては、ガスナイフ全体のよどみ圧を至る所で低下させることを要するであろう既知の装置と比較して、「弱ジェット」のよどみ圧が低いことでセッチングが低減され、しかし膜引っ張りは「強ジェット」を用いて改善される。
[0062] 複数の第1の出口60a及び複数の第2の出口60bは、混在して一列に配置されていてもよい。これは、一列の出口に沿って、すなわちガスナイフに沿って、いくつかの第1の出口60aといくつかの第2の出口60bとがあってもよいことを意味している。したがって、ガスナイフは強ジェットと弱ジェットとで形成される。後述するように、これは繰り返しの及び/又は均一なパターン(例えば第1の出口60aと第2の出口60bとが交互)であってもよい。複数の第1の出口60a及び第2の出口60bは、上述のように、平面視で形状の少なくとも1つの側部を形成する。少なくとも1つの第1の通路70aとは、1つ又は複数、場合によってはすべてを意味し得るものであり、例えば各々が前述の形状を有する第1の通路70aのすべてを意味する。同じことが、少なくとも1つの第2の通路70bにも当てはまる。
[0063] あるいは、この実施形態において、第1の出口60aを出ていくガス及び第2の出口60bを出ていくガスの速度(ν)が比較されてもよい。すなわち、よどみ圧ではなく速度が参照されてもよい。この速度はそれぞれ、第1のガス出口60aを出ていくガスの第1のガス出口60aにおける流出速度及び/又は第2のガス出口60bを出ていくガスの第2のガス出口60bにおける流出速度である。よどみ圧は、第1の出口60a及び第2の出口60bのうちいずれかを出ていくガスの速度に関係している。よどみ圧の上昇はρν2の上昇に対応し、ここで、ρは第1の出口60a及び第2の出口60bを出ていくガスの密度である。このように、よどみ圧の変化は速度の変化と関連付け可能であり、速度は、以下の実施形態で説明するように、第1の出口60a及び第2の出口60bを出ていくガスのパラメータとして用いられ得る。値の変換が必要であろうが、原理は同じままであることは理解されよう。
[0064] 任意の数の第1の通路70a及び第2の通路70bがあってもよく、第1の出口60a及び第2の出口60bは、例えば離散した円形孔、又は他の形状の孔、又はスリットなど、様々な形状で形成され得る。
[0065] ガスナイフは、使用中に、第1の出口60a及び第2の出口60bを出ていくガスによって形成される。換言すれば、ガスナイフは、使用中に、第1の出口60a及び第2の出口60bの両方を出ていくガスによって形成される。このようにして、ガスナイフはよどみ圧プロファイルを有するように形成され、ガスナイフに沿ったよどみ圧プロファイルは、ガスが、ガスナイフに沿った任意の特定の点において、第1の出口60aを出たのかそれとも第2の出口60bを出たのかに応じて変化する。
[0066] これは、ガスナイフが、第1の出口60a及び第2の出口60bを出ていくガスから形成されることを意味する。つまり、ガスナイフを形成するガスは、そのガスがどの通路を通るかに応じて、よどみ圧が異なるということである。よって、ガスナイフのよどみ圧プロファイルは、ガスナイフの長さに沿って同一ではない。
[0067] 第2の出口60bでは、ガスはより低いよどみ圧(すなわち弱ジェット)で流出する。つまり、基板Wの表面上に存在する液浸流体の液滴は、例えば、流体ハンドリング構造12の進み側では通過することができる。したがって、ガスナイフと衝突する液浸流体の液滴は、通過可能であり、空間11内に進入することができる。これにより、基板Wの表面に沿って押されてウォーターマークを生じさせる液滴の数が減少し又は防止され得る。
[0068] 第1の出口60aでは、ガスはより高いよどみ圧(すなわち強ジェット)で流出する。つまり、ガスは、高いよどみ圧の離散した点を形成し得る。ガスナイフのうちよどみ圧がより高い区域は、例えば、流体ハンドリング構造12の退き側で、膜引っ張りによって形成された膜を破壊する。換言すれば、これらのより圧力の高い離散した点は、下にある液浸流体の膜を貫通する。つまり、流体ハンドリング構造12の退き側で液浸流体が基板Wの表面に沿って引っ張られる程度が減少し又は防止され、それによって、基板Wの表面が流体ハンドリング構造12の下を通過する際に取り残される液浸流体が減少し又は防止され得るとともに、基板Wの表面上の膜の厚さも減少し得る。このように、ガスが異なるよどみ圧で流出する第1の出口60a及び第2の出口60bからガスナイフを形成することにより、流体ハンドリング構造12に対する液浸流体の位置に応じて、すなわち流体ハンドリング構造12の進み側であるのかそれとも退き側であるのかに応じて、膜引っ張り及び/又はセッチングが低減又は防止され得る。
[0069] 第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧は、好適にはおよそ5ミリバールに等しいかそれより高く、又は好適にはおよそ10ミリバールに等しいかそれより高くてもよい。第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧は、好適にはおよそ500ミリバールに等しいかそれより低く、又は好適にはおよそ400ミリバールに等しいかそれより低くてもよい。第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧は、好適にはおよそ5ミリバールから500ミリバールの間、又はより好適にはおよそ10ミリバールから400ミリバールの間であってもよい。第1の出口60aを出ていくガスのよどみ圧は、好適にはおよそ40ミリバールに等しいかそれより高く、又は好適にはおよそ100ミリバールに等しいかそれより高くてもよい。第1の出口60aを出ていくガスのよどみ圧は、好適にはおよそ500ミリバールに等しいかそれより低く、又は好適にはおよそ400ミリバールに等しいかそれより低くてもよい。第1の出口60aを出ていくガスのよどみ圧は、好適にはおよそ40ミリバールから500ミリバールの間、又はより好適にはおよそ100ミリバールから400ミリバールの間であってもよい。
[0070] 少なくとも1つの第1の通路70aは第1の入口65aを有していてもよく、少なくとも1つの第2の通路70bは第2の入口65bを有していてもよい。すべての出口に対応する入口があってもよい。したがって、第1の通路70aは対応する第1の入口65a及び第1の出口60aを有していてもよく、第2の通路70bは対応する第2の入口65b及び第2の出口65aを有していてもよい。第1の通路70aは1つよりも多くの入口又は出口を有していてもよい。第2の通路70bは1つよりも多くの入口又は出口を有していてもよい。
[0071] 第1の通路70aと第2の通路70bとの間のピッチは、第1の入口65aの断面積の中心から第2の入口65bの断面積の中心までの距離として定められる。後述するように、異なるパターンの第1の通路70a及び第2の通路70bが用いられる場合には、ピッチは隣接する入口の断面積の中心の間の距離として定められる。ピッチは、好適にはおよそ100μmに等しいかそれより大きく、又はより好適にはおよそ200μmであってもよい。ピッチは、好適にはおよそ1000μmに等しいかそれより小さく、又は好適にはおよそ500μm、又はより好適にはおよそ400μmであってもよい。ピッチは、好適にはおよそ100μmから1000μmの間、又は好適にはおよそ100μmから500μmの間、又はより好適には、ピッチはおよそ200μmから400μmの間であってもよい。
[0072] 異なる出口60a,60bにおけるよどみ圧を変化させ得る手法には様々なものがある。例えば、第1の通路70aと第2の通路70bとが異なる流量を有するガス源に接続されてもよい。例えば、少なくとも1つの第1の通路70aが第1のガス源に接続されてもよく、少なくとも1つの第2の通路70bが第2のガス源に接続されてもよい。第2の出口60bからのガスを、第1の出口60aを出ていくガスと比較してより低いよどみ圧で提供する、別の方法があり得る。例えば、第1の通路70a及び/又は第2の通路70bは可変又は固定絞りを備えていてもよく、これが流れの量を許容するので、第1の通路70a及び/又は第2の通路70bのよどみ圧が制御され得る。
[0073] 具体的な一構成を以下の第2の実施形態で説明する。第2の実施形態は、ここに説明される点を除き、第1の実施形態と同一であってもよい。第2の実施形態においては、第1の通路70aの形状及び第2の通路70bの形状は、第1の出口60aを出ていくガスのよどみ圧が第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧よりも高くなるように構成することが可能である。これは、任意選択的には、第1の実施形態において既に説明した異なる出口60a及び60bにおけるよどみ圧を変化させる手法に追加的なものであってもよいし、又はそれに代わるものであってもよい。様々な異なる寸法の通路が用いられ得るが、第1の入口65a、第1の出口60a、第2の入口65b、及び第2の出口60bの各々の断面積は、第2の通路70bを出ていくガスのよどみ圧に対して第1の通路70aを出ていくガスのよどみ圧を制御するように選択され得る。したがって、これらの断面積は、いくつかが互いに同一の寸法であってもよいし、又はすべてが互いに異なっていてもよい。
[0074] 第2の実施形態において、第1の比とは第1の入口に対する第1の出口の比であり、第2の比とは第2の入口に対する第2の出口の比である。異なる出口におけるよどみ圧は、第2の比に対して第1の比を制御することによって制御され得る。本実施形態においては、第2の比は第1の比よりも大きい。つまり、第2の出口60bと第2の入口65bとの間での面積の比例的な差は、第1の出口60aと第1の入口65aとの間での面積の比例的な差よりも大きい。以下の説明から明らかになるように、これは、第2の出口60bと第2の入口65bとの断面積が略一定である、又は、第1の出口60aと第1の入口65aとの間で断面積が略一定であるバリエーションを含み得る。
[0075] 第1の入口65a、第1の出口60a、第2の入口65b、及び第2の出口60bの断面積は、それらの寸法が上述のよどみ圧変動を発生するように互いに対して選択される限りは、無理のない任意の寸法であり得る。例えば、第1の入口65a、第1の出口60a、第2の入口65b、及び/又は第2の出口60bのうち少なくとも1つの直径は、およそ50μmに等しいかそれより大きく、又はより好適にはおよそ70μmであってもよい。第1の入口65a、第1の出口60a、第2の入口65b、及び/又は第2の出口60bのうち少なくとも1つの直径は、およそ300μmに等しいかそれより小さく、又はより好適にはおよそ200μmであってもよい。第1の入口65a、第1の出口60a、第2の入口65b、及び/又は第2の出口60bのうち少なくとも1つの直径は、およそ50μmから300μmの間、又はより好適にはおよそ70μmから200μmの間であってもよい。
[0076] 一実施形態においては、第1の出口65aの断面積は第1の入口60aの断面積に略等しいかそれより小さく、第2の出口65bの断面積は第2の入口60bの断面積に略等しいかそれより大きい。第2の比は第1の比よりも大きいので、これは、第1の通路70aは第1の入口60aから第1の出口65aへと断面積が縮小し得ること、第2の通路70bは略同一の断面積の第2の入口60b及び第2の出口65bを有し得ること、又は第2の通路70bは第2の入口60bから第2の出口65bへと断面積が拡大し得ること、又は第1の入口60a及び第1の出口60bの断面積は略同一であり得ること、そして、第2の通路70bは第2の入口60bから第2の出口65bへと断面積が拡大し得ることを意味する。
[0077] 第2の実施形態においては、第1の通路70aの各々は第1の入口65aを有し、第2の通路70bの各々は第2の入口65bを有し、第1の出口60aは第1の入口65aと略同一の断面積を有し、第2の出口60bは第2の入口65bよりも大きい断面積を有する。図3に示される出口60は、第1の出口60aを介してガスナイフを形成するガスのよどみ圧が第2の出口60bを介してガスナイフを形成するガスとは異なるよどみ圧であるように、上述のように色々な出口寸法を有していてもよい。図4からわかるように、第2の通路70bを通るガス流は、第2の出口60bに接近するにつれて膨張するので、ガスナイフを形成するために第2の出口60bを出ていく際のガスのよどみ圧は低下し得る。図4は、ガスナイフの一部の長さに沿った流体ハンドリング構造12の断面図を示す。
[0078] 第1の入口65aと第2の入口65bとは、共通のマニホルドと流体連通しており、及び/又は共通のガス源に接続されている。例えば、ガス源75が、第1の入口65a及び第2の入口65bにガスを提供してもよい。
[0079] 第2の実施形態は図4に図示されている。図4は、2つの第1の通路70aと2つの第2の通路70bとを示す。各通路の数はずっと多くてもよい。
[0080] 本実施形態においては、第1の出口60a及び第2の出口60bを出ていくガスの相対的なよどみ圧を制御するために、通路の形状及びバリエーションが多くの異なる手法で形成され得る。通路の形状はガス出口60を出ていくガスに影響し得るものであり、通路の内部形状は、所望のよどみ圧、又は第1の出口60aを出ていくガスと第2の出口60bを出ていくガスとのよどみ圧の比を達成するように選択可能である。
[0081] 例えば、第2の通路70bは、第2の通路70bの全長にわたって、断面積が拡大してもよい。第2の通路70bは、第2の通路70bの全長にわたって、断面積が同一のままであってもよいし、又は拡大してもよい。換言すれば、第2の通路70bの断面積は、第2の入口65bから第2の出口60bへと単調増加してもよい。第2の通路70bの断面積は、第2の入口65bからの距離とともに線形増加するか、又はより高い次数のその距離の累乗に比例して増加してもよい。例えば、第2の通路70bの直径は、図4及び図5に示されるように線形増加してもよい。第2の通路70bは、第2の入口65bから第2の出口60bへと円錐台形状を形成してもよい。
[0082] 第2の通路70bを通過するガスが第2の通路70bの壁71b(側部とも称され得る)から分離することを回避するように断面積の拡大を制御するのが有用であろう。第1の通路70a及び第2の通路70bを通過するガス流は層状であってもよい。断面積の変動を制御することで、層流ガスが第2の通路70bの壁71bから分離することが防止され得る。ガス流の分離は、乱流及びガスナイフの効率の損失をもたらし得る。
[0083] 分離は、第2の通路70bの壁71bを好適な角度範囲内に維持することによって低減又は回避され得る。図4の第2の通路70bのうち1つの近接図が図5に示されている。図示するように、第2の通路70bは第2の長軸SMAを有し得る。第2の長軸SMAは、第2の入口65bの断面積の中心及び第2の出口60bの断面積の中心を通っていてもよい。第2の通路70bの壁71bの角度θは、第2の通路70bを通る第2の長軸SMAに対して決定され得る。第2の長軸SMAに対する第2の通路70bの側部の角度θは、好適にはおよそ0.5°から7°の間であってもよい。この角度は、第2のガス出口60bを出ていくガスのよどみ圧プロファイルを制御するように選択され得る。例えばアブレーション技術又は放電加工(EDM)を用いることによってこの大きさの角度を有する通路を作り出すためには、既知の製造技術が用いられ得る。
[0084] 代替的には、第2の通路70bの長さに沿って(一定割合でも様々な割合でも)断面積を拡大させることに代えて、第2の通路70bは、図6に図示されるように、一定の断面積を有する通路の複数の部分で形成されてもよい。例えば、第2の通路70bは、第1の部分72bの長さに沿って略均一な断面積を有する第1の部分72bと、第2の部分73bの長さに沿って略均一な断面領域を有する第2の部分73bとを備えていてもよい。第2の部分73bは第1の部分73aよりも大きな断面積を有していてもよい。図6に図示するように、これによって、第1の部分72bと第2の部分73bとの間に段形状がもたらされる。
[0085] 第2の通路70bは、実際には、各々が一定の断面積を有するいくつかの小さな部分に分けられていてもよい。図6は2つの部分のみを有して図示されているが、これらの部分の形状によって第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧が第1の出口60aを出ていくガスよりも低くなる限りは、任意の数の部分が用いられ得る。例えばこれは、上述のように、これらの部分の断面積が第2の入口65bから第2の出口60bへと拡大することを意味し得る。一定の断面の部分の間の移行は、図6に示されるよりも緩やかであってもよい。
[0086] 具体的な一構成を以下の第3の実施形態で説明する。第3の実施形態は、ここに説明される点を除き、第1の実施形態と同一であってもよい。第3の実施形態においては、第1の通路70aの形状及び第2の通路70bの形状は、第1の出口60aを出ていくガスのよどみ圧が第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧よりも高くなるように構成することが可能である。これは、任意選択的には、第1の実施形態において既に説明した異なる出口60a及び60bにおけるよどみ圧を変化させる手法に追加的なものであってもよいし、又はそれに代わるものであってもよい。第1の通路70aの各々は第1の入口65aを有し、第2の通路70bの各々は第2の入口65bを有し、第1の入口65aは第1の出口60aよりも大きい断面積を有し、第2の出口60bは第2の入口65bと略同一の断面積を有する。基本的には、これによって、第2の実施形態において上述したように、第1のガス出口60aを出ていくガスと第2のガス出口60bを出ていくガスとの間のよどみ圧差が同一になり得る。しかしながら、この場合、第1の通路70aを通るガス流は、第1の出口60aに接近するにつれて閉じ込められる(例えば制限される)ので、それによって、ガスナイフを形成するために第1の出口60aを出ていく際のガスのよどみ圧が上昇し得る。
[0087] 第1の入口65aと第2の入口65bとは、共通のマニホルドと流体連通しており、及び/又は共通のガス源に接続されている。例えば、ガス源75が、第1の入口65a及び第2の入口65bにガスを提供してもよい。
[0088] 第3の実施形態は図7に図示されている。図7は、ガスナイフの一部の長さに沿った流体ハンドリング構造12の断面図を示す。図7は、2つの第1の通路70a及び2つの第2の通路70bを示す。各通路70の数はずっと多くてもよい。
[0089] 本実施形態においては、第1の出口60a及び第2の出口60bを出ていくガスの相対的なよどみ圧を制御するために、通路の形状及びバリエーションが多くの異なる手法で形成され得る。通路の形状はガス出口60を出ていくガスに影響し得るものであり、通路の内部形状は、所望のよどみ圧、又は第1の出口60aを出ていくガスと第2の出口60bを出ていくガスとのよどみ圧の比を達成するように選択可能である。
[0090] 例えば、第1の通路70aは、第1の通路70aの全長にわたって、断面積が縮小してもよい。第1の通路70aの断面積は、第1の通路70aの全長に沿って、断面積が同一のままであってもよいし、又は縮小してもよい。換言すれば、第1の通路70aの断面積は、第1の入口65aから第1の出口60aへと単調減少してもよい。第1の通路70aの断面積は、第1の入口65aからの距離とともに線形減少するか、又はより高い次数のその距離の累乗に比例して減少してもよい。例えば、第1の通路70aの直径は、図7に示されるように線形減少してもよい。第1の通路70aは、第1の入口65aから第1の出口60aへと円錐台形状を形成してもよい。
[0091] 第1の通路70aを通過するガスが第1の通路70aの壁(側部とも称され得る)から分離することを回避するように断面積の縮小を制御するのが有用であろう。第1の通路70a及び第2の通路70bを通過するガスは層状であってもよい。断面積の変動を制御することで、層流ガスが第1の通路70aの壁74aから分離することが防止され得る。ガス流の分離は、乱流及びガスナイフの効率の損失をもたらし得る。
[0092] 分離は、第1の通路70aの壁74aを好適な角度範囲内に維持することによって低減又は回避され得る。図7の第1の通路70aのうち1つの近接図が図8に示されている。図示するように、第1の通路70aは、図8に図示されるような第1の長軸FMAを有し得る。第1の長軸FMAは、第1の入口65aの断面積の中心及び第1の出口60aの断面積の中心を通っていてもよい。第1の通路70aの壁74aの角度θは、第1の通路70aを通る第1の長軸FMAに対して決定され得る。これは、第2の実施形態について図5に図示されたのと同様の手法で決定されてもよい。第1の長軸FMAに対する第1の通路70aの側部の角度θは、好適にはおよそ0.5°に等しいかそれより大きくてもよい。角度θは、好適にはおよそ30°に等しいかそれより小さくてもよく、又はより好適にはおよそ10°に等しいかそれより小さくてもよい。角度θは、好適にはおよそ0.5°から30°の間であってもよく、又はより好適には、角度θはおよそ0.5°から10°の間であってもよい。この角度は、第1のガス出口60aを出ていくガスのよどみ圧プロファイルを制御するように選択され得る。例えばアブレーション技術又は放電加工(EDM)を用いることによってこの大きさの角度を有する通路を作り出すためには、既知の製造技術が用いられ得る。
[0093] 代替的には、第1の通路70aの長さに沿って(一定割合でも様々な割合でも)断面積を縮小させることに代えて、第1の通路70aは、図9に図示されるように、一定の断面積を有する通路の複数の部分で形成されてもよい。本実施形態では第1の通路70aの寸法が第1の入口65aから第1の出口60aへと縮小している点を除き、これは、第2の実施形態について図6に図示されたバリエーションと同様である。例えば、第1の通路70aは、第1の部分の長さに沿って略均一な断面積を有する第1の部分と、第2の部分の長さに沿って略均一な断面積を有する第2の部分とを備えていてもよい。第2の部分は第1の部分よりも小さな断面積を有していてもよい。図9に図示するように、これによって、第1の部分と第2の部分との間に段形状がもたらされる。
[0094] 第1の通路70aは、各々が一定の断面積を有するいくつかの小さな部分に分けられていてもよい。図9は2つの部分のみを有して図示されているが、これらの部分の形状によって第2の出口60bを出ていくガスのよどみ圧が第1の出口60aを出ていくガスよりも低くなる限りは、任意の数の部分が用いられ得る。例えばこれは、上述のように、これらの部分の断面積が第1の入口65aから第1の出口60aへと縮小することを意味し得る。一定の断面の部分の間の移行は、図9に示されるよりも緩やかであってもよい。
[0095] 第4の実施形態においては、第2の通路70bは第2の実施形態に関連して説明したように変化してもよく、第1の通路70aは第3の実施形態に関連して説明したように変化してもよい。
[0096] 強ジェット及び弱ジェットを提供すること、すなわち第1から第4の実施形態のいずれかに関連して説明したように第1の出口60a及び第2の出口60bを用いることは、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にし得るとともに、ガスナイフの半径方向内側の位置から半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限し得る。換言すれば、少なくとも1つの第1の通路70aの形状及び少なくとも1つの第2の通路70bの形状は、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にするように構成されていてもよく、及びガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限するように構成されていてもよい。したがって、第1の出口60a及び第2の出口60bによって形成されるガスナイフは、後述する別の実施形態において提供される少なくとも1つの出口200に関連して説明されるものと同じ利点を有し得る。特に、流体ハンドリング構造12の進み側では、流体が弱ジェットを通過し得るので、液浸流体はガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置へと移動することが可能であってもよく、流体ハンドリング構造12の退き側では、強ジェットが、半径方向内側の位置から半径方向外側の位置への液浸流体の移動を制限し得る。上述のように、既知の装置において、高いよどみ圧と低いよどみ圧とを混合させず、よどみ圧が低いガスナイフが用いられた場合と比較して、強ジェットは、膜引っ張りを低減し得る。
[0097] 上記の実施形態のうちいずれにおいても、第1の通路70a及び第2の通路70bの形状は、特に限定的なものではなく、これらの通路は任意の形状とすることができる。例えば、第1の入口65a、第1の出口60a、第2の入口65b、及び/又は第2の出口60bのうち少なくとも1つは、断面が概ね円形であってもよい。第1の通路70a及び/又は第2の通路70bの全体を通じて円形の形状を提供することは、第1の通路70a及び/又は第2の通路70bのそれぞれの側部からのガス流の分離を低減又は防止するのに役立ち得る。
[0098] 上記の実施形態のうちいずれにおいても、第1の通路70a及び第2の通路70bは交互であってもよい。換言すれば、2つの第2の通路70bの間に1つの第1の通路70aがあってもよいし、その逆でもよい。代替的には、第1の通路70a及び第2の通路70bは、繰り返しのパターンで提供されてもよい。例えば、単一の第1の通路70aに続いて2つの第2の通路70b、又は3つの第2の通路70b、又は4つの第2の通路70b、といった具合で提供されてもよいし、その逆でもよい。任意の数の第1の通路70aに続いて任意の数の第2の通路70bが存在してもよい。第1の通路70aと第2の通路70bとの数は同一であってもよく、例えば、1つの第1の通路70aに続いて1つの第2の通路70bがあってもよいし、又は2つの第1の通路70aに続いて2つの第2の通路70b、又は3つの第1の通路70aに続いて3つの第2の通路70bがある、といった具合でもよい。各タイプの通路の数は同一でなくてもよく、例えば、2つの第1の通路70aに続いて3つの第2の通路70bがある、といった具合でもよい。第1の通路70a及び第2の通路70bのパターンは、ガスナイフの長さに沿って所望のよどみ圧変動を提供するように、所望の手法で構成されていてもよい。
[0099] 上述のように、流体ハンドリング構造12が基板Wに対して移動された後、液浸流体が取り残され得る。上述のようにガスナイフのよどみ圧プロファイルを変化させることは、取り残される液浸流体を減らすのに役立ち得るが、これは、液浸流体の表面にかかるせん断応力を検討することによって、さらに減らすことが可能であろう。
[00100] 上記の実施形態のうちいずれにおいても、第1の出口60a及び第2の出口60bは、流体ハンドリング構造12の表面80上に位置している。表面80は、使用時には、基板Wの上面90に対向し、実質的に平行であってもよい。上述したように、また図7に図示されるように、第1の通路70aは、第1の入口65aの断面積の中心及び第1の出口60aの断面積の中心を通る第1の長軸FMAを有していてもよく、第2の通路70bは、第2の入口65b及び第2の出口60bの断面積の中心を通る第2の長軸SMAを有していてもよい。第1の長軸FMA及び/又は第2の長軸SMAは、使用時には基板Wの上面90に対して角度をつけられていてもよい。これは図10において、第1の長軸FMAに関して図示されている。換言すれば、第1の通路70a及び/又は第2の通路70bは傾斜していてもよい。角度αは、好適にはおよそ10°に等しいかそれより大きくてもよく、又はより好適にはおよそ30°であってもよい。角度αは、好適にはおよそ75°に等しいかそれより小さくてもよく、又はより好適にはおよそ60°であってもよい。角度αは、好適にはおよそ10°から75°の間であってもよく、又はより好適にはおよそ30°から60°の間であってもよい。
[00101] 第1の通路70a及び/又は第2の通路70bを傾斜させて設けることによって、液浸流体の表面にかかるせん断応力が増加し得るとともに、第1の出口60a及び/又は第2の出口60bの下への流入があり得る。この流入は、内向きのせん断応力(場合によっては大きな内向きのせん断応力)を有していてもよく、このことは、使用時、すなわち液浸流体を空間11の内部に閉じ込める際に、液浸流体をガスナイフの半径方向内側に維持しつつ、液浸流体の液滴が流体ハンドリング構造12内の半径方向内側を通過するのに役立ち得る。
[00102] 上記の実施形態のうちいずれにおいても、流体ハンドリング構造12はさらに、ガスナイフの半径方向内側に流体抽出器を備えていてもよい。流体抽出器は少なくとも1つの抽出器出口85を有していてもよい。流体抽出器は、図3との関連で説明した抽出器と同一のものであってもよく、抽出器出口85は開口50に対応していてもよい。抽出器出口85は、流体ハンドリング構造12の、第1の出口60a及び第2の出口60bと同じ表面80上にあってもよい。同じ表面上にあるということは、抽出器出口85と第1の出口60a及び/又は第2の出口60bとがいずれも流体ハンドリング構造12の同じ側、例えば、流体ハンドリング構造12の、使用中の基板Wの上面90に対向する側にあることを意味する。表面80は、後述するように、高さのバリエーションを有していてもよい。表面80は、抽出器出口85と第1の出口60a及び/又は第2の出口60bとを、例えば両者の間で流体ハンドリング構造12の物理的な部分として、接続し得る。流体ハンドリング構造12の表面80は、使用時には基板Wの上面90に対向し、実質的に平行であってもよい。使用時、すなわちガスナイフが上昇しているときに、第1の出口60a及び第2の出口60bが抽出器出口85よりも基板Wから遠い距離にあるように、表面80には段があってもよい。一例が図11に図示されており、抽出器出口85と第1の通路70aのうち1つとの断面を示している。ガスナイフの長さに沿った異なる点で異なる断面をとれば、第1の通路70aではなく第2の通路70bが図示されるであろう。
[00103] 段は、図11に図示されるように垂直段であってもよいし、角度をつけられていてもよい。すなわち、表面80の高さが異なる部分の間の差は、角度をつけられ、すなわち傾斜されていてもよい。あるいは、段は湾曲していてもよい。第1の出口60a及び第2の出口60bの高さを変化させると、基板Wの表面上で結果として生じるガスナイフの効果を変化させるとともに、欠陥を低減するのに役立ち得る。このようにしてガスナイフを上昇させることは、擾乱力を低減させ得る。抽出器出口85と第1の出口60a(及び第2の出口60b)との高さの差は、好適にはおよそ50μmに等しいかそれより大きく、又はより好適にはおよそ100μmであってもよい。抽出器出口85と第1の出口60a(及び第2の出口60b)との高さの差は、好適にはおよそ1000μmに等しいかそれより小さく、又はより好適にはおよそ600μmであってもよい。抽出器出口85と第1の出口60a(及び第2の出口60b)との高さの差は、好適にはおよそ50μmから1000μmの間、又はより好適にはおよそ100μmから600μmであってもよい。
[00104] 上記の実施形態のうちいずれにおいても、ガスナイフの半径方向外側にガスを供給するために、ガス供給開口86が任意選択的に設けられてもよい。ガス供給開口86は図11に図示されているが、図11には存在していなくてもよく、又は、先の図面のうちいずれかの説明に関連して存在していてもよい。ガス供給開口86は、ガスナイフに隣接する区域にガスを供給するように構成されていてもよい。ガス供給開口86は、図11に図示されるように、基板Wの表面90から、ガスナイフと同一の距離で位置していてもよい。このように、ガス供給開口86とガスナイフのための出口(すなわち60a及び60b)とは、基板Wから抽出器出口85と同一の距離にあってもよいし、又は、ガス供給開口86とガスナイフのための出口(すなわち60a及び60b)とは、基板Wまで抽出器出口85とは異なる距離にあってもよい。ガス供給開口86は、基板から、ガスナイフよりも遠い距離で設けられてもよい。これは図示しない。つまり、ガスナイフのための出口(すなわち60a及び60b)とガス供給開口86との間に、上述したものと類似の段が提供されてもよい。この段は、垂直であっても、角度をつけられていても、湾曲していてもよい。
[00105] 上述の実施形態のうちいずれかによるデバイス製造方法が提供され得る。デバイスを製造する方法は、上述の実施形態のうちいずれかを備えたリソグラフィ装置を用いてもよい。例えば、デバイス製造方法はパターン形成された放射ビームを基板W上に投影するステップを備えていてもよく、このパターン形成された放射ビームは液浸流体の領域(すなわち空間11)を通過する。デバイス製造方法は、流体ハンドリング構造12を用いて液浸流体を領域に閉じ込める、さらなるステップを備えていてもよい。流体ハンドリング構造12は、領域の半径方向外側にガスナイフを生成するガスナイフシステムを備えている。デバイス製造方法はこのガスナイフシステムを用いるステップも備えていてもよく、ガスナイフは閉じ込めるステップに寄与する。ガスナイフシステムは、各々が出口を有する一連の通路を備えている。ガスナイフは、出口を出ていくガスによって形成され得る。通路は、複数の対応する第1の出口60aを有する複数の第1の通路70aと、複数の対応する第2の出口60bを有する複数の第2の通路70bとを備えている。少なくとも1つの第1の通路及び少なくとも1つの第2の通路は、第1の出口を出ていくガスのよどみ圧が第2の出口を出ていくガスのよどみ圧よりも高くなるように構成されており、ここで、複数の第1の通路及び複数の第2の通路は、第1の出口と第2の出口とが平面視である形状の側部を形成するように、混在して一列に配置される。複数の第1の通路及び複数の第2の通路は、平面視で、その形状の少なくとも1つ、複数、又はすべての側部を形成してもよい。
[00106] 上述のように、セッチング及び/又は膜引っ張りを低減又は防止することによって欠陥を防止することの低減の手法を提供するのが有益である。第5の実施形態は、流体ハンドリング構造12を備えた液浸リソグラフィ装置を含む。流体ハンドリング構造12は、液浸流体の流れを空間11(領域とも称され得る)に閉じ込めるように構成されている。流体ハンドリング構造12は、使用中のガスナイフを備える。ガスナイフは、空間11の半径方向外側に形成されていてもよく、液浸流体の閉じ込めに寄与するように構成されていてもよい。流体ハンドリング構造は、少なくとも1つの出口と、その少なくとも1つの出口を出ていくガスによって形成されるガスナイフとを備えており、この少なくとも1つの出口は、ガスナイフが平面視である形状の側部を形成するように配置されており、この少なくとも1つの出口は、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にするように構成されたジオメトリを有するとともに、ガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限するように構成されている。
[00107] したがって、平面視で側部を形成する(ガスナイフを形成する)少なくとも1つの出口のジオメトリは、一方向への液滴の移動を可能にするように、及び別の一方向への液滴の移動を制限するように構成され得る。平面視でのジオメトリ(すなわち、平面視で少なくとも1つの出口によって形成される側部の形状)は、液浸流体の液滴が半径方向外側の位置からガスナイフに接近するときに、そのジオメトリが、ガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にし得るように構成されていてもよい。例えばこれは、この側部が流体ハンドリング構造12の進み側であるときに発生し得る。さらに、ジオメトリは、液浸流体の液滴が半径方向内側の位置からガスナイフに接近するときに、そのジオメトリが、ガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限し得るように構成されていてもよい。例えばこれは、この側部が流体ハンドリング構造12の退き側であるときに発生し得る。このように、その側部が流体ハンドリング構造12の進み側であるのかそれとも退き側であるのかに応じて、同じ側部が、移動を可能にするように及び制限するように、液浸流体の液滴の移動を制御し得る。換言すれば、平面視でのジオメトリは、流体ハンドリング構造12の進み側であるときには上述のように液浸流体の液滴の移動を可能にするように、しかし、流体ハンドリング構造12の退き側であるときには上述のように液浸流体の液滴の移動を制限するように構成され得る。
[00108] ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にするということは、流体ハンドリング構造12が基板Wの表面上の液浸流体の液滴に接近する場合に、液滴と衝突してその液滴を基板Wの表面に沿って前方に押す(これは欠陥を引き起こし得る)代わりに、液滴がガスナイフを通過して流体ハンドリング構造12内に入り得るので、セッチングによる欠陥の発生が低減又は防止されることを意味する。ガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限又は防止するということは、流体ハンディング構造12が基板Wに対して移動した後でその基板の表面上により少ない液浸流体が取り残されるので、膜引っ張りによる欠陥の発生が低減又は防止され得ることを意味する。
[00109] 上述のように、先に知られている装置に関しては、ガスナイフのよどみ圧を上昇させると膜引っ張りが低減され得るが、セッチングには悪影響をもたらされ得ることが知られている。したがって、ガスナイフのよどみ圧の上昇は限定されてもよく、より高いよどみ圧とより低いよどみ圧との釣り合いをとることが必要である。本実施形態は、先に知られている装置で実施されるよりも高いよどみ圧が流体ハンドリング構造12の退き側で依然として用いられ得る程度まで、(液滴が半径方向内側へと移動することを可能にすることによって)流体ハンドリング構造12の進み側でのセッチングを低減させ得る。したがって、より高いよどみ圧を提供することが可能であり、これにより、既知の装置を使用するのに比べて、流体ハンドリング構造12の進み側でのセッチング効果を最小化又は維持しつつ、流体ハンドリング構造12の退き側での膜引っ張りを低減することができる。これらの利点は、進み側に1つのギャップ210を設けることによって達成され得る(すなわち、複数のギャップが設けられてもよいが、必須ではない)。これは、進み側の単一のギャップがセッチングを低減し、セッチングの低減がガスナイフに用いられる全体的なよどみ圧の上昇を可能にし、したがって上昇したよどみ圧により退き側の膜引っ張りが低減されるからである。もっとも、複数のギャップ210を備えたジオメトリを有することで、提供されるこれらの利点を改善することが可能である。例えば、平面視で形状の各側部に少なくとも1つのギャップ210を有することには、これらの利点が流体ハンドリング構造12の移動の方向にかかわらず達成され得るという長所がある(すなわち、流体ハンドリングが任意の方向に移動するとき、進み側にはギャップ210がある)。
[00110] 第5の実施形態において説明したジオメトリを有するガスナイフは、第1から第4の実施形態における弱ジェット及び強ジェットと同じ利点を有し得る。より詳細には、第1から第4の実施形態においては、進み側は弱ジェットであるから液滴がガスナイフの半径方向内側に通過することができ、流体ハンドリング構造12の進み側にギャップ210を設けることによって、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動が可能になり、セッチングの低減に関して同じ利点がもたらされる。また、第1から第4の実施形態においては、退き側は強ジェットであるから液滴はガスナイフの半径方向外側に移動することを防止され、ガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限するギャップ210が上述のように設けられるとき、ガスナイフはより高いよどみ圧となり得るので、膜引っ張りの低減に関して同じ利点がもたらされる。さらに、本明細書において説明されるジオメトリを用いて設けられるギャップ210の利点は、このギャップ210は、進み側にあるときには液滴の進入を可能にするが、ギャップ210は、退き側にあるときには、液滴の外側への移動を防止又は制限し得るという点である。したがって、ギャップ210が退き側に設けられているときには、膜引っ張りが低減又は防止され得る。
[00111] 既知の流体ハンドリング構造は概して出口を有しており、これらの出口を出ていくガスがガスナイフを形成する。一般的に、ガスナイフは、直線状であるか又は連続形状をなす出口によって形成されることが知られている。第5の実施形態においては、少なくとも1つの出口のジオメトリ(すなわち、平面視での形状の側部のジオメトリ)は、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にし、ガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限するように構成されたレイアウトを提供するように構成されている。換言すれば、平面視での側部の構造は、この機能を提供する。
[00112] より詳細には、流体ハンドリング構造12は少なくとも1つの出口200を備えており、ガスナイフはその少なくとも1つの出口200を出ていくガスによって形成され得る。少なくとも1つの出口200は、ガスナイフが平面視である形状を形成するように、又はより具体的には、平面視である形状の側部を形成するように、配置されている。例えば、この形状は、図3に図示される形状と類似のものであってもよく、少なくとも1つの出口200は図3に図示される出口60に対応していてもよい。なお、第5の実施形態において参照される出口200は、第1、第2、第3、及び/又は第4の実施形態との関連で説明されたような形状の通路を有していてもよいし、有していなくてもよい。いずれにしても、ガスナイフは、少なくとも1つの出口200のジオメトリによって様々な形状を形成し得る。
[00113] 第5の実施形態においては、ギャップ210が、平面視で形状の側部のうち少なくとも1つに沿って形成され得る。(このギャップは図3には図示しない。)ギャップ210は図12aに示されている。図12aは、形状の側部のうち1つの少なくとも一部の近接図である。例えば、図12aは、ギャップ210を含むように改変されてはいるが、図3の四芒星形状の下部右手側の少なくとも一部の近接図であり得る。ギャップ210は、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にするように構成されている。例えば、ギャップ210は開口を提供してもよく、その開口において、流体ハンドリング構造12の進み側で流体ハンドリング構造12と衝突する基板Wの表面上の液滴が流体ハンドリング構造12の下を通過してもよいし、空間11に進入してもよい。そのような液滴の考え得る移動を、図12aでは矢印A2によって示している。流体ハンドリング構造12がガスナイフの半径方向外側の液浸流体の液滴に到達すると、その液滴は相対移動によってガスナイフの縁部に沿って移動し、ギャップ210に到達すると、液滴はガスナイフの内側に移動し得る。
[00114] 平面視で形状の側部のうち少なくとも1つに沿って複数のギャップ210が形成されていてもよい。1つよりも多くの側部に少なくとも1つのギャップ210があってもよい。ギャップ210が他の側部に形成される場合には、ギャップ210における少なくとも1つの出口200の形状は、ガスナイフの異なる部分でも同一の効果を提供するように、鏡写しであるか又は回転されていてもよい。一例においては、ガスナイフによって形成される形状は、図3に図示されるような四芒星であり、各側部に複数のギャップ210が形成されている。各側部のギャップ210の数は同一であってもよい。任意の数のギャップ210があるのが実用的であり、例えば、各側部に1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又はそれよりも多くのギャップ210があってもよい。
[00115] 基板Wと流体ハンドリング構造12との相対移動が、側部が流体ハンドリング構造12の進み側であるような方向のときには、その側部の先にある液浸流体の液滴がガスナイフの縁部に沿って押され、欠陥(すなわちセッチング)を作り出し得る。ギャップ210は、液浸流体の液滴がガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置へと通過してセッチングを低減することを可能にする。液浸流体の液滴がガスナイフに到達する点と、液滴が内側に移動することを可能にするギャップ210との間の距離は、平均液滴距離と称される。ギャップ210を通過する前には、ガスナイフの縁部に沿った液滴の移動は、依然としてセッチングをもたらし得る。同じ側部に沿って複数のギャップ210を設けるのが有益であろう。平均液滴距離は、セッチングを低減するように最適化され得る。すなわち、液浸流体の液滴を捕捉するのに十分なほど大きい。
[00116] ギャップ210は、およそ200μmから1000μmの間であってもよい。これらは例示的な値であって、ギャップ210の寸法は、液浸流体がガスナイフの半径方向内側に進入することを可能にする尤度を最適化するように、任意の合理的な値から選択され得る。
[00117] ギャップ210を備える側部の一部はその側部に沿って2つの端部220,230を備えていてもよく、ギャップ210は少なくとも1つの出口200の2つの端部220,230の間に形成されていてもよい。2つの端部220,230は形状の少なくとも一部を形成していてもよい。2つの端部のうち、第1の端部220は屈曲を備えていてもよい。屈曲は、図12aに図示されるような湾曲部であってもよい。第1の端部220は、流体ハンドリング構造12の退き側における、取り残された液浸流体の液滴の、ガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への移動を制限するように構成されていてもよい。そのような液滴の考え得る移動を、図12aでは矢印A1によって示している。この液滴の移動は、基板Wがスキャン方向とは反対の方向で流体ハンドリング構造12に対して移動されるときに発生し得るものであり、スキャン方向は図12aでは矢印110によって図示されている。第1の端部220は、図12aに図示されるように、わずかに湾曲しているだけであってもよい。第1の端部220は、もっと湾曲していてもよいし、U字形状又はフック形状を形成していてもよい。第1の端部220は真っ直ぐであってもよいが、端は開口のその部分の残りに対して角度をつけられていてもよい。換言すれば、第1の端部220は、2つの直線部分の間に屈曲を備えていてもよい。
[00118] 複数のギャップ210がある場合には、複数の端部220,230があってもよく、特に複数の端部220は各々が屈曲を備えている。
[00119] 第1の端部220は、液浸流体の液滴が流体ハンドリング構造12の外側を通過する場合に、その液滴がガスナイフの一部に遭遇し、第1の端部220に収集されるように位置決めされる。第1の端部220は、液浸流体の液滴を収集してもよく、及び/又は転向させてもよい。流体ハンドリング構造12は、任意選択的には、第1の端部220によって集められた液滴を除去するための液滴抽出器240を備えていてもよい。液滴抽出器240は、図3との関連で上述した抽出器に類似のものであってもよい。例えば、液滴抽出器240は、二相抽出器であってもよい。図12aには液滴抽出器240が図示されているが、これは任意選択的なものであり、例えば図12bなど、別の図面に設けられてもよい。複数の第1の端部220があってもよい。ギャップ210と同数の第1の端部220があってもよい。
[00120] 2つの端部のうち他方は、任意選択的には直線状の端部230であってもよい。これは、例えば図12aの移動A2に続いて基板Wがスキャン方向110で流体ハンドリング構造12に対して移動するときに、液滴がガスナイフの内側に進入するのを可能にするためには有利であろう。これにより、流体ハンドリング構造12の進み側で液滴がガスナイフの内側に進入することが可能になる。
[00121] 第5の実施形態においては、使用時に、基板Wがスキャン方向110で流体ハンドリング構造12に対して移動され得る。少なくとも1つの開口200の形状の一部が、少なくとも1つの開口200の他の部分と重なり合っていてもよい。例えば、スキャン方向110に垂直な平面内で端部230又は220のうち一方が他方の端部220又は230と重なり合うように位置決めされていてもよい。これは、スキャン方向110に垂直な平面内にはギャップが存在しないことを意味し得る。換言すれば、スキャン方向110では(すなわち、スキャン方向に沿って見ると)、端部220及び230の各々の先端の間にはギャップが存在しない。換言すれば、スキャン方向110では、すなわち、図12aのスキャン方向110で見た場合、端部220及び230は互いに重なり合っている。
[00122] 重なり合っていること、すなわちスキャン方向110に沿ってギャップがないということは、液滴がガスナイフの内側にあり流体ハンドリング構造12がスキャン方向110に沿って移動している場合には、液滴は、どこに位置していようと、ガスナイフに遭遇するであろうことを意味する。基板Wが流体ハンドリング構造12に対してスキャン方向110に平行に移動する限りは、液滴は、流体ハンドリング構造12に対してスキャン方向110に平行に移動しようとするので、例えば端部230又は220によって形成されるガスナイフの一部に到達するであろう。このことは、ガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限すること又は防止さえすることに役立つ。
[00123] 図12aは、少なくとも1つの出口200をスリットとして図示している。例えば、少なくとも1つの出口200によって形成される形状は、図12aに図示されるように、ギャップ210を有する連続的な形状であってもよい。少なくとも1つの出口200は、流体ハンドリング構造12においてスリット(すなわち連続的な溝)として形成されていてもよく、これを通ってガスが出ていく。代替的には、ガスナイフの少なくとも一部は、複数の出口を出ていくガスによって形成されていてもよい。少なくとも1つの出口200がスリットによって形成されている場合には、平面視での形状は、1つの側部のみにギャップ210が形成されている1つの連続的なスリットによって形成されていてもよい。したがって、流体ハンドリング構造12がギャップ210が進み側にあるように配向されているときには、ジオメトリは、ガスナイフの半径方向内側への液浸流体の液滴の移動を可能にするように構成されるが、その一方で、流体ハンドリング構造12がギャップ210が退き側にあるように配向されているときには、ジオメトリは、ガスナイフの半径方向外側への液浸流体の液滴の移動を制限するように構成される。ギャップ210は、スリットの第1端とスリットの第2端との間に形成され得る。例えば、少なくとも1つの出口200によって略連続的なスリットとして形成される形状は菱形であってもよいが、その形状の1つの側部に沿って、図12aに図示されているもののようなスリットの二端の間に、ギャップ210が形成されてもよい。
[00124] 例えば、少なくとも1つの出口200は、図12bに図示されるように、多くの離散した開口であってもよい。ガスはこれらの開口を出て、上述したのと同じ手法でガスナイフを形成する。開口は円形として図示されているが、任意の形状であってよく、特に限定的ではない。ガスナイフが複数の開口によって形成されている場合には、ギャップ210は、2つの隣接する開口の縁部の間の距離よりも幅広くてもよい。ギャップ210は、2つの隣接する開口の縁部の間の距離の1倍よりも大きくてもよい。ギャップは、最大で、2つの隣接する開口の縁部の間の距離のおよそ5倍であってもよい。
[00125] 第5の実施形態においては、上述のジオメトリを提供することに代えて又はこれと並んで、少なくとも1つの出口200が複数の離散した開口を備えていてもよく、各開口の間の距離及び各開口の寸法は、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液滴の移動を可能にするように選択及び変更されてもよく、ガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を、例えば側部が流体ハンドリング構造12の進み側であるのかそれとも退き側であるのかに応じて、制限するように構成されている。例えば、少なくとも1つの出口200は、例えば段落[0053]において上述したように、第1の出口60a及び第2の出口60bと置換されてもよい。
[00126] 第5の実施形態においては、上述したように、流体ハンドリング構造12が基板Wに対して移動された後、液浸流体が流体ハンドリング構造12の退き側に取り残され得る。上述のようにガスナイフのよどみ圧を変化させることは、取り残される液浸流体を減らすのに役立ち得るが、これは、液浸流体の表面にかかるせん断応力を検討することによって、さらに減らすことが可能であろう。
[00127] 第5の実施形態においては、少なくとも1つの出口200は流体ハンドリング構造12の表面上に位置している。この表面は図8及び図9に図示される表面80と類似のものであろう。表面80は、図13に図示されるように、使用時には基板Wの上面90に対向し、実質的に平行であってもよい。少なくとも1つの出口200は、その少なくとも1つの出口200の断面積の中心を通る長軸を有していてもよい。少なくとも1つの出口200の長軸は、使用時には基板Wの上面90に対して角度をつけられていてもよい。これは、断面では、第1の通路70aが少なくとも1つの出口200で置換されている点を除き、図10と同一であるように見えるかもしれない。換言すれば、少なくとも1つの出口200は傾斜していてもよい。角度αは、好適にはおよそ10°に等しいかそれより大きくてもよく、又はより好適にはおよそ30°であってもよい。角度αは、好適にはおよそ75°に等しいかそれより小さくてもよく、又はより好適にはおよそ60°であってもよい。角度αは、好適にはおよそ10°から75°の間であってもよく、又はより好適にはおよそ30°から60°の間であってもよい。
[00128] 少なくとも1つの出口200を傾斜させて設けることによって、液浸流体の表面にかかるせん断応力が増加し得るとともに、少なくとも1つの出口200の下への流入があり得る。この流入は、内向きのせん断応力(場合によっては大きな内向きのせん断応力)を有していてもよく、このことは、液浸流体の液滴が、進み側にあるときには流体ハンドリング構造12内の半径方向内側に通過すること、及び、使用時に退き側にあるときには液浸流体をガスナイフの半径方向内側に維持すること、すなわち、液浸流体を空間11の内部に閉じ込めてガスナイフの半径方向外側への液浸流体の液滴の移動を制限することに役立ち得る。
[00129] 第5の実施形態においては、流体ハンドリング構造12はさらに、ガスナイフの半径方向内側に流体抽出器を備えていてもよい。流体抽出器は少なくとも1つの抽出器出口85を有していてもよい。流体抽出器は、図3との関連で説明した抽出器と同一のものであってもよく、抽出器出口85は開口50に対応していてもよい。抽出器出口85は、流体ハンドリング構造12の、少なくとも1つの出口200と同じ表面80上にあってもよい。一例が図14に図示されており、抽出器出口85と少なくとも1つの出口200との断面を示している。見てわかるように、これは断面では、第1の通路70a(及び第2の通路70b)が少なくとも1つの出口200で置換されている点を除き、上述した図11と同じようである。同じ表面80上にあるということは、抽出器出口85と少なくとも1つの出口200とがいずれも流体ハンドリング構造12の同じ側、例えば、流体ハンドリング構造12の、使用中の基板Wの上面90に対向する側にあることを意味する。表面80は、後述するように、高さのバリエーションを有していてもよい。表面80は、抽出器出口85と第1の出口60a及び/又は第2の出口60bとの間の接続を提供し得る。換言すれば、抽出器出口85、第1の出口60a、及び/又は第2の出口60bは、流体ハンドリング構造12の1つの構成要素の連続的な表面である同じ表面80上に提供されてもよい。流体ハンドリング構造12の表面80は、使用時には基板Wの上面90に対向し、実質的に平行であってもよい。使用時、すなわちガスナイフが上昇しているときに、少なくとも1つの出口200が抽出器出口85よりも基板Wから遠い距離にあるように、表面80には段があってもよい。
[00130] 段は、図14に図示されるように垂直段であってもよいし、角度をつけられていてもよい。すなわち、表面80の高さが異なる部分の間の差は、角度をつけられ、すなわち傾斜されていてもよい。あるいは、段は湾曲していてもよい。少なくとも1つの出口200の高さを変化させると、基板Wの表面上で結果として生じるガスナイフの効果を変化させるとともに、欠陥を低減するのに役立ち得る。このようにしてガスナイフを上昇させることは、擾乱力を低減させ得る。抽出器出口85と少なくとも1つの出口200との高さの差は、好適にはおよそ50μmに等しいかそれより大きく、又はより好適にはおよそ100μmであってもよい。抽出器出口85と少なくとも1つの出口200との高さの差は、好適にはおよそ1000μmに等しいかそれより小さく、又はより好適にはおよそ600μmであってもよい。抽出器出口85と少なくとも1つの出口200との高さの差は、好適にはおよそ50μmから1000μmの間であってもよく、又はより好適にはおよそ100μmから600μmであってもよい。
[00131] 第5の実施形態においては、ガスナイフの半径方向外側にガスを供給するために、ガス供給開口86が任意選択的に設けられてもよい。ガス供給開口86は、ガスナイフの外側に設けられてもよい。ガス供給開口86は、第5の実施形態の任意のバリエーションを備えていてもよいし、又は備えていなくてもよい。ガス供給開口86は、ガスナイフに隣接する区域にガスを供給するように構成されていてもよい。ガス供給開口86は、図14に図示されるように、基板Wの上面90から、ガスナイフと同一の距離で位置していてもよい。見てわかるように、図14は、第1の通路70a(及び第2の通路70b)が少なくとも1つの出口200で置換されている点を除き、上述した図11と略同一である。このように、ガス供給開口86と少なくとも1つの出口200とは、基板Wから抽出器出口85と同一の距離にあってもよいし、又は、ガス供給開口86と少なくとも1つの出口200とは、基板Wまで抽出器出口85とは異なる距離にあってもよい。ガス供給開口86は、基板Wから、ガスナイフよりも遠い距離で設けられてもよい。これは図示しない。つまり、少なくとも1つの出口200とガス供給開口86との間に、上述したものと類似の段が提供されてもよい。この段は、垂直であっても、角度をつけられていても、湾曲していてもよい。
[00132] 第5の実施形態によるデバイス製造方法が提供され得る。デバイスを製造する方法は、第5の実施形態に関係する任意のバリエーションを備えたリソグラフィ装置を用いてもよい。例えば、デバイス製造方法は、液浸流体の領域を通過するパターン形成された放射ビームを基板上に投影することと、ガスナイフシステムを備えた液浸システムの流体ハンドリング構造を用いて液浸流体をその領域に閉じ込めることと、ガスナイフシステムを用いて、その領域の半径方向外側に、閉じ込めるステップに寄与するガスナイフを生成することと、を備えていてもよく、流体ハンドリング構造は、少なくとも1つの出口と、その少なくとも1つの出口を出ていくガスによって形成されるガスナイフとを備えており、この少なくとも1つの出口は、ガスナイフが平面視である形状の側部を形成するように配置されており、この少なくとも1つの出口は、ガスナイフの半径方向外側の位置からガスナイフの半径方向内側の位置への液浸流体の液滴の移動を可能にするように構成されるとともにガスナイフの半径方向内側の位置からガスナイフの半径方向外側の位置への液浸流体の液滴の移動を制限するように構成されたジオメトリを有する。
[00133] さらなるデバイス製造方法は、液浸流体の領域を通過するパターン形成された放射ビームを基板上に投影することと、ガスナイフシステムを備えた液浸システムの流体ハンドリング構造を用いて液浸流体をその領域に閉じ込めることと、その領域の半径方向外側にガスナイフを生成することと、を備えていてもよく、流体ハンドリング構造は少なくとも1つの出口を備え、その少なくとも1つの出口は、平面視である形状の側部を形成するガスナイフを形成するように配置されており、側部はその側部に沿った2つの端部を備え、平面視でその形状のその側部に沿ったその2つの端部の間にはギャップが形成され、端部のうち一方は屈曲された端部を備え、使用中には基板が流体ハンドリング構造に対してスキャン方向で移動され、形状はスキャン方向に垂直な平面内ではギャップが視認できないように重なり合っている。
[00134] なお、第5の実施形態の任意のバリエーションが、上述したいずれかのバリエーションと組み合わせて、特に、第1、第2、第3、及び/又は第4の実施形態のいずれかと組み合わせて、用いられてもよい。例えば、少なくとも1つの出口200を提供するために第1の出口60a及び第2の出口60bが用いられてもよい。
[00135] 上述の実施形態のいずれにおいても、図15に図示されるように、少なくとも1つの追加的なガスアウトレット300が設けられ得る。図15は、複数の追加的なガスアウトレット300を除き、図3と同一である。少なくとも1つの追加的なガスアウトレット300は、上述した実施形態のいずれか、例えば本明細書において説明される第1から第4の実施形態のうちいずれかを備えていてもよい。少なくとも1つの追加的なガスアウトレット300は、(図15においては離散した開口50によって図示されている)メニスカス制御フィーチャとガスナイフとの間に位置していてもよい。第1から第4の実施形態との関連では、これはメニスカス制御フィーチャと出口60との間であってもよい。この文脈において、「間」という語は、メニスカス制御フィーチャの半径方向外側、及び出口60の半径方向内側を意味する。
[00136] 前述のように、基板Wは流体ハンドリング構造12に対して移動され、液浸流体は、例えば流体ハンドリング構造12の退き側で、流体ハンドリング構造12に引きずられ得る。基板Wの表面上で液浸流体のメニスカスが壊れると、流体膜が基板W上に残される。この膜は、流体ハンドリング構造12のトレーリング/退き側の全長にわたって後退する。後退する膜は壊れ、基板上で三角形のパターンの液滴となる。トレーリング側とは、基板Wの相対的な移動に応じて、流体ハンドリング構造12の任意の側であり得る。トレーリング側は、基板Wと流体ハンドリング構造12との間の相対的な移動の方向が変更されれば、変化し得る。これらの液浸流体液滴は、上述したようにウォーターマーク欠陥をもたらし得る。もっとも、流体ハンドリング構造12のトレーリング側の長さに沿ってドライスポットを提供すると、液浸流体膜の後退によって生じるウォーターマーク欠陥を低減させるのに役立ち得ることがわかっている。
[00137] 既に述べたように、メニスカス制御フィーチャとガスナイフとの間にガスを提供するために、少なくとも1つの追加的なガスアウトレット300が用いられてもよい。この追加的なガスアウトレット300は、ガスを提供するために用いられる離散した開口であってもよい。例えば、少なくとも1つの追加的なガスアウトレット300によって提供されるガスは、CO2ガスであってもよい。このガスは、流体ハンドリング構造12のトレーリング側の長さに沿って局所的なドライスポットを作り出すために提供されてもよい。追加的なガスアウトレット300を出ていくガスのよどみ圧は、使用中のガスナイフを形成する出口60を出ていくガスのよどみ圧と概ね同じであるかそれより高くてもよい。
[00138] ドライスポットを作り出すこと又は促進することによって、膜は壊され、流体ハンドリング構造12のトレーリング側の長さに沿った、より小さな別々の膜となるであろう。このより小さな別々の膜は、流体ハンドリング構造12のトレーリング側の全長にわたって後退するのではなく、流体ハンドリング構造12のトレーリング側の長さに沿ったいくつかの位置から後退してもよい。いくつかのより小さな部分で後退することにより、液滴は基板Wの表面上でより小さな後退三角パターンを形成し得る。したがって、これにより、基板Wの表面上に残される液浸流体の全体量及び/又は液滴の数が減少し得る。換言すれば、より小さな三角パターンになった液浸流体の全体量は、流体ハンドリング構造12のトレーリング側の全長に沿って後退する膜からより大きな三角パターンの液滴が形成された場合のそれよりも少ない。このように、メニスカス制御フィーチャとガスナイフとの間のドライスポットを促進するために、少なくとも1つの追加的なガスアウトレット300が提供されて、基板W上に残される液浸流体を減少させ得る。
[00139] この効果は、追加的なアウトレット300を1つ用いるだけで作り出すことが可能であろう。例えば、1つの追加的なガスアウトレット300を流体ハンドリング構造12のトレーリング側に沿って設置することは、液浸流体が1つではなく2つの別々の膜部分で後退することを意味し得る。追加的なガスアウトレット300は、好適には、流体ハンドリング構造12のトレーリング側の長さを等分するように配置されていてもよい。例えば、追加的なガスアウトレット300は、流体ハンドリング構造12のトレーリング側に沿って概ね中央の位置に設けられてもよい。代替的には、1つよりも多くの追加的なガスアウトレット300が設けられてもよい。例えば、流体ハンドリング構造12の複数の側部に又は側部毎に、1つの追加的なガスアウトレット300が設けられてもよい。1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10など、最大で50又はそれよりもさらに多くの追加的なガスアウトレット300が、少なくとも1つ、複数、又はすべての側部に設けられてもよい。流体ハンドリング構造12の異なる側部に異なる数の追加的なガスアウトレット300があってもよいし、あるいは少なくとも2つの側部が互いに同数の追加的なガスアウトレット300を有していてもよい。追加的なガスアウトレット300の数は特に限定的ではなく、任意の適切な数が用いられ得る。より多数の追加的なガスアウトレット300を有するということは、基板W上に取り残される液浸流体の量がさらに減少され得ること、及び残りの液浸流体が基板上に取り残される区域が基板Wの外縁の方に位置し得ることを意味する。
[00140] ピッチは、1つの追加的なガスアウトレット300の中心から隣接する追加的なガスアウトレット300の中心までの距離として定められてもよい。これは、流体ハンドリング構造12の単一の側部に沿って定められる可能性が高い。このピッチは、隣り合う出口60の間のピッチのおよそ20から100倍大きくてもよい。このピッチは、およそ1mmに等しいかそれより大きくてもよい。最大ピッチは、追加的なガスアウトレット300が1つしか設けられていない流体ハンドリング構造12の側部の長さによって定義され得る。換言すれば、1つの側部に沿って追加的なガスアウトレット300が1つしか設けられていないのであれば、最大ピッチは1つの側部の長さより大きくない。一例として、追加的なガスアウトレット300が側部の真ん中に設けられる場合には、ピッチは側部の長さの半分となる。また、膜引っ張り時間の長さは、トレーリング側に沿ってその数の追加的なガスアウトレット300が設けられるにつれて減少するであろう。膜引っ張り時間とは、ガスナイフが基板W上の外側に水の液滴を失う時間であり得る。これは、ガスナイフとメニスカス制御フィーチャとの間で流体が後退を開始するときに止まる。ピッチは、基板Wの表面上での液浸流体液滴の推定又は測定される形態に応じて選択され得る。
[00141] 図示しないが、少なくとも1つの追加的なガスアウトレット300は、第5の実施形態を備えていてもよい。これは、追加的なガスアウトレット300が抽出器出口85(メニスカス制御フィーチャに対応し得る)と少なくとも1つの出口200(上述の出口60に代わる)との間に提供され得る点を除き、上述したものと実質的に同一であり得る。この文脈において、「間」という語は、メニスカス制御フィーチャの半径方向外側、及び少なくとも1つの出口200の半径方向内側を意味する。
[00142] この文章では集積回路の製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書に記載のリソグラフィ装置には、例えば集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造といった、他の用途もあり得ることを理解されたい。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板Wは、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板Wに塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに、基板Wは、例えば多層集積回路を生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板Wという用語は、既に複数の処理済み層を含む基板Wも指すことができる。
[00143] 実施形態のいずれにおいても、ガスナイフのために用いられる及び/又はガス供給開口によって供給されるガスは、任意の適切なガスであり得る。最適なことには、ガスはCO2を含むか、あるいは純粋なCO2である。
[00144] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。用語「レンズ」は、状況が許せば、屈折及び反射光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか1つ又は組み合わせを指す。
[00145] 以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、説明したものとは別の方法で実施することができることが理解されよう。
[00146] 本発明の1つ以上の実施形態は、デバイス製造方法において用いられ得る。
[00147] 本明細書において想定される液体供給システムは幅広く解釈されなければならない。特定の実施形態においては、これは、液体を投影システムと基板及び/又は基板テーブルとの間の空間に提供する機構又は構造の組み合わせであってもよい。1つ以上の構造物や、1つ以上の液体開口、1つ以上のガス開口、又は二相流のための1つ以上の開口を含む1つ以上の流体開口の組み合わせを備えていてもよい。開口はそれぞれ、液浸空間へのインレット(若しくは流体ハンドリング構造からのアウトレット)、又は液浸空間からのアウトレット(若しくは流体ハンドリング構造へのインレット)であってもよい。一実施形態においては、空間の表面が基板及び/又は基板テーブルの一部であってもよく、又は、空間の表面が基板及び/又は基板テーブルの表面を完全に覆っていてもよく、又は、空間が基板及び/又は基板テーブルを包んでいてもよい。液体供給システムは、任意選択的には、液体の位置、量、品質、形状、流量、又は任意の他の特徴を制御するための1つ以上の要素をさらに含んでいてもよい。
[00148] 上記の説明は例示的なものであり、限定するものではない。したがって、以下に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に対して変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。