図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明系(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストでコーティングされたウェーハ)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば一つまたは複数のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている投影系(例えば屈折投影レンズ)PSと、を備える。
照明系は、放射の方向や形状の調整またはその他の制御用に、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
支持構造MTは、パターニングデバイスを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスの向きやリソグラフィ装置の構成、あるいはパターニングデバイスが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスを保持する。支持構造は、機械的固定、真空固定、またはパターニングデバイスを保持するその他の固定用技術を用いてもよい。支持構造は例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造は、パターニングデバイスを例えば投影系に対して所望の位置に位置決めできるようにしてもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、例えば基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用されうるいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。このような場合には例えば、放射ビームのパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合がある。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応する。
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、例えばマスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルなどがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、さらに各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
本明細書では「投影系」という用語は、使用される露光光あるいは液浸や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には例えば屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影系」と同義に用いられうる。
ここに図示されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイまたは反射型マスクを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
リソグラフィ装置は二つ以上(二つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)の基板テーブル(及び/または二つ以上のパターニングデバイステーブル)を備えてもよい。このような多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。
図1に示されるようにイルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源がエキシマレーザである場合には、光源SOとリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを含んで構成される。あるいは光源が例えば水銀ランプである場合には、光源はリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系または放射システムと総称される。
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータILはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、当該パターニングデバイスによりパターンが付与される。パターニングデバイスMAを通過した放射ビームBは投影系PSに進入する。投影系PSはビームを基板Wの目標部分Cに投影する。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを順次位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械的交換後や露光走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも一つのモードで使用されうる。
1.ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写される目標部分Cのサイズを制限することになる。
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
投影系PSの最終素子と基板との間に液体を提供する構成は三種類に分類することができる。浴槽型、いわゆる局所液浸システム、及び全域濡れ液浸システムである。浴槽型は基板Wの実質的に全体が液槽に浸される。基板テーブルWTの一部も液層に浸されてもよい。
局所液浸システムは、基板の局所区域にのみ液体を供給する液体供給システムを使用する。液体で満たされる空間は基板上面よりも小さい。液体で満たされた容積または空間は基板Wがその領域の下を移動しているとき投影系PSに対し実質的に静止状態にある。図2乃至図5はそのようなシステムに使用可能である別の供給装置を示す。
全域濡れ構成においては液体は閉じ込められない。基板上面全体と基板テーブルの全体または一部が液浸液で覆われる。少なくとも基板を覆う液体の深さは浅い。液体はフィルム状であってもよく、基板上の薄い液体フィルムであってもよい。液浸液は、投影系及びそれに面する対向表面の領域に供給される。対向表面は基板表面及び/または基板テーブル表面であってもよい。図2乃至図5の液体供給装置(後述)はいずれもこのシステムに使用可能である。しかし、シール機能はなくすか、動作させないか、通常ほどは効果的でないようにして、局所区域のみに液体を封じないようにしてもよい。
局所液体供給システムの四つの異なるタイプが図2乃至図5に示されている。図2及び図3に図示されているように、矢印で示すように液体が少なくとも一つの入口によって基板上に、好ましくは最終素子に対する基板の移動方向に沿って供給される。矢印で示すように、液体は投影系の下を通過した後に少なくとも一つの出口によって除去される。基板が−X方向に要素の下を走査されると、液体が要素の+X側にて供給され、−X側にて除去される。図2は、液体流が矢印で示されている模式的な構成図である。液体が入口を介して供給され、低圧源に接続された出口によって要素の他方側で除去される。図2では液体が最終素子に対する基板の移動方向に沿って供給されるが、こうである必要はない。最終素子の周囲に配置された入口及び出口の様々な方向及び数が可能であり、一例が図3に示され、矢印で示すように、ここでは各側に4組の入口と出口が、最終素子の周囲に規則的なパターンで設けられる。
局所液体供給システムをもつ液浸リソグラフィの解決法が、図4に示されている。液体は、投影系PLの両側にある二つの溝入口によって供給され、入口の半径方向外側に配置された複数の別個の出口によって除去される。入口は、投影ビームを通す穴を中心に有するプレートに設けることができる。液体は、投影系PSの一方側にある一つの溝入口によって供給され、投影系PSの他方側にある複数の別個の出口によって除去され、これによって投影系PSと基板Wとの間に液体の薄膜の流れが生じる。どちらの組み合わせの入口と出口を使用するかの選択は、基板Wの移動方向によって決まる(他方の組み合わせの入口及び出口は作動させない)。なお液体の流れ方向を図4に矢印で示す。
提案されている別の構成は液体閉じ込め構造を液体供給システムに設けることである。液体閉じ込め構造は、投影系の最終素子と基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。これを図5に示す。矢印は流れの方向を示す。
図5は、液体閉じ込め構造12を有する局所液体供給システムまたは流体ハンドリング構造を模式的に示す図である。液体閉じ込め構造12は、投影系の最終素子と対向する表面(例えば、基板テーブルWTまたは基板W)との間の空間11の境界の少なくとも一部に沿って延在する。なお後述の説明で基板Wの表面への言及は、そうではないことを明示していない限り、基板テーブルWTの表面をも意味するものとする。別の物体、例えば投影系に対する基板の移動への言及は、そうではないことを明示していない限り、同一の物体に対する基板テーブルの移動をも含む。液体閉じ込め構造12は、投影系に対してXY面で実質的に静止するが、Z方向(光軸の方向)におけるいくらかの相対運動が存在してもよい。一実施形態では、液体閉じ込め構造と基板Wの表面との間にシールを形成する。このシールは、ガスシール(ガスシールをもつシステムが米国特許出願公開US2004−0207824号に開示されている)や流体シール等の非接触シールであってもよい。
液体閉じ込め構造12は、投影系PLの最終素子と基板Wとの間の空間11の少なくとも一部に液体を収容する。基板Wに対する非接触シール16が投影系の像フィールドの周囲に形成され、投影系PLの最終素子と基板Wとの間の空間に液体が閉じ込められてもよい。この空間の少なくとも一部が液体閉じ込め構造12により形成される。液体閉じ込め構造12は投影系PLの最終素子の下方に配置され、当該最終素子を囲む。液体が、投影系下方かつ液体閉じ込め構造12内部の空間に、液体入口13によってもたらされる。液体出口13によって液体が除去されてもよい。液体閉じ込め構造12は、投影系PSの最終素子の少し上まで延在してもよい。液位が最終素子の上まで上昇することで、液体のバッファが提供される。一実施例においては液体閉じ込め構造12は、上端において内周が投影系またはその最終素子の形状によく一致し、例えば円形または他の任意の適切な形状であってもよい。下端においては、内周が像フィールドの形状によく一致し、例えば長方形でもよいが、これに限られない。
液体は、バリア部材12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成される接触シール、例えばガスシール16によって空間11に保持されてもよい。ガスシールは、例えば空気または合成空気、一実施例ではN2または別の不活性ガスなどの気体によって形成される。ガスシールの気体は、圧力下で入口15を介してバリア部材12と基板Wとの隙間に提供され、出口14から抜き取られる。気体入口15への過剰圧力、出口14の真空レベル、及び隙間の幾何学的形状は、液体を閉じ込める内側への高速の気体流16が存在するように構成される。バリア部材12と基板Wとの間の液体に気体から作用する力が空間11に液体を保持する。入口及び出口は空間11を取り巻く環状溝であってもよい。環状溝は連続していてもよいし不連続であってもよい。気体流れ16は空間11に液体を保持する効果がある。このようなシステムが、本明細書にその全体が援用される米国特許出願公開US2004−0207824号に開示されている。他の実施例では液体閉じ込め構造12がガスシールを有しない。
本発明の一実施形態は、メニスカスが特定の点を越えて前進することを実質的に防止する流体ハンドリング構造で用いる特定の種類の抽出器(extractor)に関する。すなわち、本発明の一実施形態は、例えば液体メニスカスの形態である液体のエッジを、投影系の最終要素と、基板および/または基板テーブルとの間の空間11内の実質的に適当な場所に固定するメニスカス固定(pinning)デバイスに関する。メニスカス固定構成は、例えば米国特許出願公開第2008/0212046号(参照により全体が本明細書に援用される)に記載されている、いわゆるガス引き(gas drag)抽出器原理に依存する。そのシステムでは、角付きの形状に抽出孔を配置することができる。投影系と基板および/または基板テーブルとの間の相対運動の方向、例えばステップ方向および走査方向と角とが位置合わせされる。これは、相対運動の方向と直交して二つの出口が配置される場合と比べて、相対運動の方向における所与の速度において、二つの出口の間でメニスカスに加わる力を軽減するのに役立つ。しかしながら、平面視で任意の形状をとることができる流体ハンドリング構造、または任意の形状に配置された抽出開口のような構成部分を有する流体ハンドリング構造に、本発明の一実施形態を適用することができる。限定的でないリスト内のこのような形状には、楕円(円など)、直線形状(例えば正方形である長方形、例えば菱形である平行四辺形など)、または四つより多くの角を有する角付き形状(四つ以上の先端がある星形など)が含まれてもよい。
本発明の一実施形態が関係する、US2008/0212046のシステムの変形例では、開口が配置される角付き形状のジオメトリにより、好ましい相対運動の方向、例えば走査方向とステップ方向の両方で位置合わせされた角に対して鋭角の角(約60°から90°の範囲で選択される。75°から90°の範囲が望ましく、75°から85°の範囲が最も望ましい)が存在することが可能になる。これにより、位置合わせされた角のそれぞれで速度を増大させることができる。この理由は、走査方向における不安定なメニスカスに起因する液滴の生成が減少するためである。走査方向およびステップ方向の両方と角が位置合わせされると、それらの方向において速度を増加させることができる。走査方向およびステップ方向における運動速度は実質的に等しいことが望ましい。
図6は、本発明の一実施形態で用いる流体ハンドリング構造の一部のメニスカス固定構造を模式的に示す平面図である。例えば図5のメニスカス固定構成14、15、16を置換可能なメニスカス固定デバイスの構造が示される。図6のメニスカス固定デバイスは、第1ラインまたは固定ラインに配置された複数の離散した開口50を備える。それぞれの開口50は円形に描かれているが、必ずしもこれに限られない。実際、開口50の一つまたは複数が、円、正方形、長方形、長円、三角形、細長いスリット等から選択された一つまたは複数であってもよい。各開口は、平面視で0.2mm以上の長さ(すなわち、一つの開口から隣接する開口に向かう方向において)を有している。長さは望ましくは0.5mm以上または1mm以上であり、一実施形態では0.1mm−10mmの範囲から選択され、一実施形態では0.25mm−2mmの範囲から選択される。一実施形態では、長さは0.2mm−0.5mmの範囲から選択され、0.2mm−0.3mmの範囲が望ましい。一実施形態では、各開口の幅は0.1mm−2mmの範囲から選択される。一実施形態では、各開口の幅は0.2mm−1mmの範囲から選択される。一実施形態では、各開口の幅は0.35mm−0.75mmの範囲から選択され、望ましくは約0.5mmである。
図6のメニスカス固定デバイスの開口50はそれぞれ、別個に負圧(under pressure)源に接続されてもよい。代替的にまたは追加的に、開口50のそれぞれまたは複数が、負圧で保持される共通のチャンバまたはマニホールド(環状であってもよい)に接続されてもよい。このようにして、それぞれのまたは複数の開口50における一様な負圧を実現することができる。開口50を真空源に接続してもよいし、および/または流体ハンドリング構造またはシステム(または閉じ込め構造、バリア部材または液体供給システム)を取り囲む大気の圧力を増加して所望の圧力差を生成してもよい。
図6の実施形態では、開口は流体抽出開口である。開口50は、気体および/または液体を流体ハンドリング構造内に通すための入口である。すなわち、開口を空間11からの出口とみなしてもよい。これについては以下でさらに詳細に説明する。
開口50は、流体ハンドリング構造12の表面に形成される。その表面は、使用時に基板および/または基板テーブルと対面する。一実施形態では、開口は、流体ハンドリング構造の平坦面にある。別の実施形態では、基板に対向する流体ハンドリング構造の表面に隆起部(リッジ)が存在してもよい。その実施形態では、開口が隆起部内にあってもよい。一実施形態では、針またはチューブによって開口50が画成されてもよい。針の一部、例えば隣接する針の本体が結合されていてもよい。針が結合して単一の本体を形成してもよい。角付きでもよい形状を単一の本体が形成してもよい。
図7から分かるように、開口50は、例えばチューブまたは細長い通路55の端部にある。望ましくは、使用時に基板Wと対向するように開口が配置される。開口50の縁(すなわち、表面から出る出口)は、基板Wの上面と実質的に平行である。使用時には、基板Wおよび/または基板を支持するように構成された基板テーブルWTの方に開口が向けられる。このことを考える別の方法は、開口50が接続される通路55の長軸が、基板Wの上面と実質的に直交する(+/−45°以内、望ましくは直角から35°、25°または15°以内)ことである。
各開口50は、液体と気体の混合物を抽出するように設計されている。液体は空間11から抽出され、開口50の液体とは反対側の大気から気体が抽出される。これは、矢印100で示すような気流を形成する。この気流は、図6に示すように、開口50の間の実質的に適切な場所にメニスカス90を固定するために有効である。気流は、運動量の遮断(momentum blocking)によって、気流で誘発される圧力勾配によって、および/または液体上の気流の引き込み(剪断)によって液体の閉じ込めを維持するのに役立つ。
開口50は、流体ハンドリング構造が液体を供給する空間を包囲する。すなわち、基板および/または基板テーブルと対向する流体ハンドリング構造の表面の周囲に開口50が分配されてもよい。空間の周囲に実質的に連続して開口が配置されてもよい(一実施形態では、一部の隣接する開口の間の間隔が同一であるが、隣接する開口50の間の間隔が異なっていてもよい)。一実施形態では、角付きであってもよい形状の全周で液体が抽出される。この形状に液体がぶつかるポイントで液体が実質的に抽出される。これが実現される理由は、開口50が(形状内の)空間を一周するように形成されているからである。このようにして、空間11に液体を閉じ込めることができる。動作中に、開口50によってメニスカスを固定することができる。
図6から分かるように、平面視で角付き形状(すなわち、角52を有する形状)を形成するように開口50が配置されてもよい。図6の場合、形状は、曲線のエッジまたは辺54を有する、例えば正方形である菱形などの四辺形である。エッジ54は、負の半径を有してもよい。例えば角52から離れて位置するエッジ54の一部に沿って、角付き形状の中心に向けてエッジ54が湾曲していてもよい。しかしながら、相対運動方向に対するエッジ54上の全ての点の角度の平均が、湾曲のない直線によって表される平均角度のラインと呼ばれてもよい。
形状の主軸110、120を、投影系の下での基板Wの主要な移動方向と整列させてもよい。これは、例えば円形である形状の軸と移動方向とが整列していない形状に開口50を配置する場合よりも、最大走査速度を速くすることに役立つ。この理由は、相対運動方向と主軸とが整列している場合、二つの開口50の間のメニスカスに働く力が減少するからである。例えば、この減少はcosθ倍であってもよい。「θ」は、基板Wが移動する方向に対する、二つの開口50を結ぶ線の角度である。
正方形形状を使用すると、ステップ方向および走査方向における移動を実質的に等しい最大速度にすることができる。これは、走査方向およびステップ方向110、120と、形状のそれぞれの角52とを整列させることで実現することができる。一つの方向、例えば走査方向における移動が、他方の方向、例えばステップ方向における移動よりも高速であることが好ましい場合、形状は菱形であってもよい。このような構成では、菱形の主軸を走査方向と整列させてもよい。菱形形状の場合、それぞれの角が鋭角であってもよいが、例えばステップ方向における相対運動方向に対する、菱形の二つの隣接する辺(またはエッジ)の平均角度のラインの間の角度が、鈍角すなわち90°以上(例えば、約90°−120°の範囲から選択される。一実施形態では90°−105°の範囲から選択され、一実施形態では85°−105°の範囲から選択される)であってもよい。
開口50の形状の主軸を基板の主要な移動方向(通常は走査方向)と整列させ、さらにもう一方の軸を基板の他の主要な移動方向(通常はステップ方向)と整列させることによって、スループットを最適化することができる。θが90°とは異なる任意の構成が、少なくとも一つの移動方向では有利であることが理解されよう。したがって、主軸を主要な移動方向と正確に整列させることが不可欠であるわけではない。
負の半径を持つエッジを設けることの利点は、角をより鋭角にできることである。走査方向と整列させた角52およびステップ方向と整列させた角52の両方に対して、75°−85°の範囲から選択された角度、またはさらに小さい角度を実現可能である。仮に両方の方向で整列させた角52を同じ角度にするためのこの特徴がないとすると、それらの角は90°でなければならなくなる。角を90°未満の角度とすることが望ましい場合、相対運動方向と90°未満になるように整列させた角を選択する必要がある。この場合、他の角は90°より大きい角度になる。
開口を星形に配置してもよい。星形の実施形態では、エッジは曲線ではなく直線である。二つの角52を結ぶ直線の半径方向内側にある点、例えば中間角でエッジが合流してもよい。この構成は、開口をつなぐ線によって画成される、二つの隣接する角52の間のエッジが滑らかである構成と同程度には、高い相対速度でメニスカスを適切に固定できないことがある。開口50により画成されるこのようなラインが角付き形状を画成し、連続的であり、連続的に変わる方向を有していてもよい。星形の実施形態では、形状の辺に沿った中間角がメニスカスを固定してもよい。角が鋭くなるほど、メニスカスを固定するより大きな力が角に集中することになる。鋭角の角では、形状の短い長さのエッジに固定力が集中する。鋭角の角よりも滑らかな曲線を持つ角、例えば曲率半径がより大きな角は長さが長くなるので、より長い曲線の角に沿って、すなわち角の周囲に固定力を分布させる。それゆえに、基板と流体ハンドリング構造との間の特定の相対速度に対して、両方の角に与えられる有効なメニスカス固定力は同一である。しかしながら、規定長のエッジについては、鋭角の角に対する有効な固定力は、滑らかな曲線の角に対する力よりも大きい。基板と流体ハンドリング構造との間の相対速度が小さいとき、鋭角の角で固定されるメニスカスは、滑らかな曲線の角によって固定されるメニスカスよりも不安定である。
図7は、流体ハンドリング構造の下面51に開口50が設けられる様子を示す。しかしながら、必ずしもそうとは限られず、流体ハンドリング構造の下面からの突起部に開口50があってもよい。矢印100は、流体ハンドリング構造の外側から開口50と関連する通路55に入る気体の流れを示す。矢印150は、空間から開口50に入る液体の経路を示す。通路55および開口50は、二相抽出(すなわち、気体と液体)が環状流れモードで発生するように設計されることが望ましい。環状の気流では、気体が実質的に通路55の中心を通って流れ、液体が通実質的に路55の壁面に沿って流れてもよい。脈動の発生が少ない滑らかな流れが得られる。
開口50の半径方向内側にはメニスカス固定構造がなくてもよい。開口50に入る気流によって誘発される牽引力を用いて、開口50の間にメニスカスが固定される。約15m/sよりも大きい気体牽引速度、望ましくは20m/sより大きい速度で十分である。基板からの液体の蒸発量が減少し、これによって液体の飛び跳ねと熱膨張/収縮効果の両方を減少させる。
複数の別個の針(それぞれが開口50と通路55を備えてもよい)、例えばそれぞれ直径が1mmであり3.9mmだけ離れている少なくとも36本の針が、メニスカスを固定するのに効果的であってもよい。一実施形態では、112個の開口50が存在する。開口50は、辺の長さが0.5mm、0.3mm、0.2mmまたは0.1mmの正方形であってもよい。
流体ハンドリング構造の底面を他のジオメトリとすることも可能である。例えば、米国特許出願公開US2004−0207824号に開示された任意の構造を本発明の一実施形態で使用することができる。
図6から分かるように、開口50の外側に細長い隙間61(スリット形状であってもよい)が設けられる。細長い隙間61は、第1ラインに配置された開口50よりも、液浸流体を含む空間からさらに離れて位置してもよい。隙間61は、開口50が配置される第1ラインと実質的に平行であってもよい。細長い隙間が第2ラインすなわちナイフライン(knife line)を形成してもよい。開口50によって形成される形状の外周を第2ラインが取り囲んでもよい。一実施形態では、細長い隙間が連続しており、第1ラインによって形成される形状を完全に取り囲んでもよい。使用時に、隙間61は加圧源(over pressure source)に接続される。隙間61から流れる気体が、開口50によって形成されるメニスカス固定システムを取り囲むガスナイフ(例えば、空気ナイフ)を形成してもよい。このガスナイフの機能については後述する。一実施形態では、細長い隙間は、形状の辺54に沿った複数の別個の隙間(細長くてよい)を含む。複数の隙間が直列に配置されてもよい。
一実施形態では、液体ハンドリングデバイスが上述の通りであるが、ガスナイフ60を持たない。このような実施形態では、液浸液のメニスカスが親液性(lyophilic)の領域、または疎液性(lyophobicity)が比較的低い(すなわち、基板または基板テーブル表面の他の部分よりも液浸液に対する接触角が小さい)領域を横切るように基板テーブルWTが移動すると、液浸液が広がって低疎液性の領域を覆う膜状になってもよい。水の存在時には、疎液性は疎水性のことであり、親液性は親水性のことである。
膜の形成は、液体メニスカスと基板または基板テーブルとの相対運動速度(走査速度)が臨界速度より大きいか否かによって決まることがある。開口50によって固定されるメニスカスに対して、臨界速度は、液体ハンドリング構造12と基板および/または基板テーブルの対向表面との間の、それを越えるとメニスカスがもはや安定できなくなる相対速度である。臨界速度は対向表面の特性によって決まる。対向表面の接触角が大きくなるほど、一般に臨界速度も大きくなる。一旦膜が形成し始めると、たとえ基板が移動してメニスカスがより接触角の大きい領域を越えたとしても、膜が成長し続けることがある。このような接触角のより大きな領域では、臨界速度もより大きくなる。メニスカスが以前接触していた領域(すなわち、接触角がより小さな領域)の臨界速度で基板が移動する場合、走査速度は現在の臨界速度より小さくてもよい。
少しの遅れの後に、膜が大きな液滴に分かれる場合があるが、これは望ましくない。ある場合には、これに続く基板テーブルWTの移動のために液滴がメニスカスと衝突することがあり、この衝突が液浸液内に気泡を生じさせることがある。(例えば、疎水性の存在下で)疎液性が比較的低い領域が、基板のエッジ、基板テーブル上の平坦な付着可能部材(例えば、ステッカー)などの除去可能な構造、位置決め構造(例えば、エンコーダグリッドまたは位置合わせマスク)、および/またはセンサ(例えば、ドースセンサ、画像センサまたはスポットセンサ)を含む場合がある。一実施形態では、(例えば、疎水性の存在下で)疎液性の比較的低い領域が、コーティングまたは表面処理の劣化によって形成されることがある。コーティングまたは表面処理は、(例えば、疎水性の存在下で)表面の疎液性を増加させるために表面に施されることもある。
一実施形態では、ガスナイフ60は、基板または基板テーブル上に残されたあらゆる液膜の厚さを低減するように機能してもよい。膜の厚さを低減すると、膜が液滴に分かれる可能性を低減することができる。追加的にまたは代替的に、ガスナイフ60からの気流が液体を開口50に向けて追い立てて抽出されるようにしてもよい。
一実施形態では、ガスナイフ60は膜の形成を弱めるように作用する。これを実現するため、ガスナイフ隙間61とメニスカス固定開口50の中心線間の距離を、1.5mmから4mmの範囲、望ましくは2mmから3mmの範囲から選択することが望ましい。(一実施形態では、ガスナイフ隙間61は複数の隙間を有する。)隙間61が配置される第2ラインは、通常、開口50が形成される第1線の後に続き、その結果、隙間61と開口50の隣接するもの同士の間の距離が上述の範囲内になる。第2ラインは開口50のラインと平行であってもよいが、2009年9月3日に出願された米国特許出願第61/239,555号(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されるように必ずしもそうとは限らない。
(複数の隙間が第2ラインに沿って存在する)隣接する隙間61の間、および隣接する開口50の間の距離を一定に維持することが望ましい場合がある。一実施形態では、隙間61および開口50の中心線の長さに沿って、このことが望ましい。一実施形態では、流体ハンドリングデバイスの一つ以上のコーナー領域内で一定の距離であってもよい。
ガスナイフは、開口50間の空間を横切って圧力勾配を形成するほど開口50に十分に近接していることが望ましい。例えば流体ハンドリング構造12の下方に、液体の層(すなわち液膜)または液滴が集積可能である停滞域が存在しないことが望ましい。一実施形態では、2009年9月3日に出願された米国特許出願第61/239,555号および米国特許出願公開第2007/0030464号(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されるように、開口50を通る気体の流速が、細長い隙間61を通る気体の流速と結合されてもよい。したがって、隙間61から開口50まで実質的に内側に流速が向けられてもよい。開口50および隙間61を通る気体の流速が同一である場合、流速が「均衡している」と呼ぶことがある。液体残渣、例えば液膜の厚さを最小化するので、均衡した気流が望ましい。
本明細書の他の箇所で述べるように、任意の閉じた形状を形成するように開口50が配置されてもよい。閉じた形状には、例えば、平行四辺形などの四辺形、菱形、長方形、正方形、または円などの楕円を非限定のリスト内に含んでもよい。いずれの場合にも、ガスナイフ60のための隙間61が、開口50によって形成される形状と実質的に同様の形状を有してもよい。開口50によって形成される形状のエッジと、隙間61によって形成される形状との間の距離は、上述した範囲内である。一実施形態では、距離が一定であることが望ましい。
図8は、本発明の一実施形態にしたがった流体ハンドリング構造の一部の模式的な断面図を示す。平面内で、流体ハンドリング構造は、円、楕円、長円、三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、または少なくとも二つ、望ましくは四つ以上の角を有する角付き形状を含む任意の形状をとるが、これらに限定されない。液体が閉じ込められる空間11と、流体ハンドリング構造の外部である領域、例えば流体ハンドリング構造外部の環境大気内の領域との間の境界に、複数の開口50および隙間61が上述のような態様で配置されてもよい。空間から流体ハンドリング構造内に液体を抽出するときに使用するために、複数の開口50が第1ラインに配置されてもよい。開口61が第2ラインに設けられ、ガスナイフデバイスを形成するように配置されてもよい。ガスナイフからの気体が、第1ラインの開口50に向けて液体を移動させてもよい。本発明の一実施形態では、空間から流体ハンドリング構造内への液体の抽出時に使用するために、複数の開口50の代わりに細長い開口を第1ラインに設けてもよい。
第1ラインおよび第2ラインよりも液浸液からさらに離れて、一つ以上の開口71が第3ラインすなわち液体ラインに設けられてもよい。第4ライン、すなわち液滴ナイフラインに配置された開口72によって、第2ガスナイフデバイスが形成されてもよい。(一実施形態では、開口72は複数の開口72を有する。)第4ラインは、液浸液を閉じ込める空間11から第3ラインよりも遠くに配置される。第2ガスナイフデバイスを通る気流は主に内側に向けられてもよく、したがって気流の大半が開口71を通過する。一実施形態では、一つ以上の開口71および第2ガスナイフデバイスの隙間72を通る気流が均衡する。
この実施形態の流体ハンドリング構造は、第1の複数の開口50と共に作用する第1ガスナイフデバイスを備える。この組み合わせが、液浸液の主要な抽出を実行する。
流体ハンドリング構造は、開口71の第3ラインと共に作用する第2ガスナイフデバイスを有する。一つ以上の開口および関連するガスナイフのさらなる組み合わせを設けることで、予期しない利点があることが分かっている。
単一のガスナイフデバイスと単一の関連する開口のラインとを備える、図7に示すような構成は、基板Wおよび/または基板テーブルWTの表面に液体残渣を残すことがある。液体残渣は、液膜または複数の液滴の形態をしている場合がある。しばらくして、膜が複数の液滴に分かれることがある。液滴がより大きな液滴に成長して許容できないほど大きくなることがある。本明細書で説明するように、走査速度が対向表面の一部に対する臨界走査速度を越えると、液体残渣が残ることがある。例えば、連続接触角を持つ表面について、走査速度がその表面の臨界走査速度を越えて増加すると、これが生じることがある。液体残渣は、接触角の変化する表面の一部の場所に残ることがあり、そのため、たとえ走査速度が一定であっても走査速度が臨界走査速度を超える。このような部分は、例えば液体メニスカスがエッジを横断する瞬間の、基板のエッジ、シャッタ部材、センサまたはセンサ目標などの構造のエッジであってもよい。
大気圧への接続によって、例えば、大気に接続されかつガスナイフデバイスと開口50、71との間に位置する空間によって、ガスナイフデバイスが開口50、71のラインから分離される構成では、さらなる問題が生じることがある。ガスナイフデバイスと開口との間に液体が集積して大きな液滴を形成することがある。投影系PSおよび流体ハンドリング構造に対する基板Wおよび/または基板テーブルWTからの移動方向が変化すると、このような大きな液滴が、液浸液の前進するメニスカスと衝突することがある。液滴とメニスカスとの衝突によって、気体の混入が生じ、小さなまたはより大きな気泡を生成することがある。さらに、衝突によって引き起こされたメニスカスの攪乱が気泡を形成することがある。気泡の形成は望ましくない。本明細書で説明するような構成は、上述の問題または他の問題の一つ以上を軽減するのに役立つことがある。
二つのガスナイフデバイスおよび関連する開口を抽出のために流体ハンドリング構造に設けると、それぞれの組み合わせの設計および/またはプロセス制御パラメータを、それぞれの組み合わせの特定の目的(異なっていてよい)に合わせて選択することが可能になる。第1ガスナイフを形成する、第2ラインの開口61を出る気体の流速は、第2ガスナイフデバイスを形成する、第4ラインの開口72を出る気体の流速よりも小さくてよい。
一実施形態では、第1ガスナイフデバイスの気体の流量を比較的小さくすることが望ましい場合がある。なぜなら、上述したように、第1ラインの複数の開口50を通る流れは、かなりの量の液体を含む二相であるからである。第2ラインの隙間61および第1ラインの複数の開口50を通る流量が、不安定な二相流の様式である場合、例えば流量が大きすぎる場合、二相流が力の変動(例えば振動)を引き起こすことがあり、これは望ましくない。他方、第2ラインの隙間61および/または第1ラインの複数の開口50を通る流れの様式が安定するほど、例えば流量が小さいほど、投影系PSおよび流体ハンドリング構造に対する基板Wおよび/または基板テーブルWTの所与の移動速度においてガスナイフデバイスを通過する液浸液の漏れが大きくなる。したがって、単一ガスナイフ構成における気体の流量は、本質的に、これらの二つの相反する要求の妥協であった。
第2ガスナイフデバイスおよび関連する抽出を流体ハンドリング構造に設けることで、第1ガスナイフデバイスでより低い流量を使用することが可能になる。第2ガスナイフデバイスを使用して、第1ガスナイフデバイスを越えて通過する液滴を取り除くことができる。さらに、第4ラインの隙間72および第3ラインの一つ以上の開口71を通る気体の流量が比較的大きくてもよい。この理由は、流れの大部分が気体であるからである。有利なことに、この増大した流量が、基板Wおよび/または基板テーブルWTの表面からの液滴の除去性能を向上させる。
ある構成では、第1ガスナイフデバイスを形成するために第2ラインの隙間61を出る気体の流量は、毎分100リットル以下であってもよく、望ましくは毎分75リットル以下であり、望ましくは毎分約50リットル以下である。特定の構成では、第2ガスナイフデバイスを形成するために第4ラインの開口72を出る気体の流量は、毎分60リットル以上であってもよく、望ましくは毎分100リットル以上であり、望ましくは毎分約125リットル以上である。
一実施形態では、第2ラインの隙間61を通る気体の流量を制御するコントローラ63が設けられる。一実施形態では、コントローラ63は、第1ラインの開口50を通る気体の流量も制御してもよい。コントローラ63は、加圧源64(例えばポンプ)および/または負圧源65(例えばポンプ、加圧を与えるのと同じポンプである可能性がある)を制御してもよい。コントローラ63は、所望の流量を達成するために、一つ以上の適切な流量制御弁に接続されてもよい。コントローラは、一つ以上の開口50と関連付けられた、抽出流の流量を測定するための一つ以上の二相流量計か、隙間61と関連付けられた、供給される気体の流量を測定するための流量計か、またはその両方に接続されてもよい。二相流量計の適切な構成は、2009年6月3日に出願された米国特許出願第61/213,657号に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
コントローラ73(コントローラ63と同一であってもよい)が、隙間72を通る気体の流量を制御するために設けられる。コントローラ73は、一つ以上の開口71を通る気体の流量も制御する。コントローラ73は、加圧源74(例えばポンプ)および/または負圧源75(例えばポンプ、加圧を与えるのと同じポンプである可能性がある)を制御してもよい。所望の流量を提供するために、コントローラ73に接続されコントローラ73により制御される一つ以上の適切な制御弁が存在してもよい。コントローラは、一つ以上の開口71を通る流れを測定するように構成された一つ以上の二相流量計か、隙間72を通る流れを測定するように構成された一つ以上の流量計か、またはその両方によって提供される流れ測定に基づき値を制御してもよい。このような構成は、第1および第2ラインに関連づけられた流れ成分に対する構成と同様であってもよい。
コントローラ63、73のうちの一つまたは両方は、対応するガスナイフの気体流量に比例して、開口50、71を通る気流を制御するように構成されてもよい。一実施形態では、ガスナイフを通る気体の流量は、対応する開口50,71を通る全流量とは最大20%または最大10%異なっている。一実施形態では、開口50、71を通る気体流量は、対応する一つ以上の隙間61、72を通る気体流量と一致するように制御されてもよい。一実施形態では、一つ以上の隙間61、72またはガスナイフを通る気体流量は、対応する開口50、71を通る気体流量と実質的に同一であってもよい。
開口50、71を通る気体流量を、それぞれのガスナイフの気体流量と一致するように構成することは、ガスナイフから流出する気体の実質的に全てが、対応する開口50、71に流れ込むことを意味してもよい。気流は、内向き、メニスカスに向けて、または液体残渣源に向けてであってもよい。単独のガスナイフは実質的に対称的な圧力ピークを生成し、気体はそのピークから離れて両方の方向に流れる。しかしながら、実施形態におけるガスナイフのそれぞれまたは両方について気流が均衡しているので、ガスナイフは代わりに、ガスナイフの一つ以上の隙間61、72と対応する開口50、71との間に圧力勾配を形成してもよい。外側に向かう(図7および8の右方向)ガス流、すなわちガスナイフのそれぞれから液浸液を含む空間から離れる流れは、わずかであるかまたはなくてもよい。
一実施形態では、コントローラ63、73は、ガスナイフが必要であるときにアクティブになるように、ガスナイフのそれぞれまたは両方の作動を制御してもよい。言い換えると、ガスナイフは、適切な所定の条件下でスイッチオフされてもよい。例えば、走査速度が臨界速度を安全に下回っているときはガスナイフをスイッチオフし、現在メニスカスの下にある表面またはメニスカスに接近している表面の臨界速度を走査速度が上回るときあるいは上回りそうなときにガスナイフをスイッチオンする。例えば、基板の中心部が流体ハンドリング構造12の下を移動するとき、ガスナイフの一方または両方がスイッチオフされてもよい。接触角は、基板のこの部分にわたり一定であり、その部分についての臨界走査速度は、越えないように十分に高くてもよい。形状のメニスカスが例えば基板、センサ、シャッタ部材またはセンサ目標のエッジを越えて移動する前に、移動する間におよび/または移動した後に、ガスナイフの一方または両方が使用可能であってもよい。
リソグラフィ装置の構造では、リソグラフィ装置の予期された動作モードのいずれに対しても、特に内側のガスナイフは必要でないことがある。したがって、一実施形態では、内側のガスナイフが省略されてもよい。このような実施形態では、図12に示すように、第2ラインの隙間61が省略されてもよい。加圧源64が必要でないこともある。リソグラフィ装置のこの変形は、本出願で述べられる他の実施形態および変形例とともに適用可能であることを理解すべきである。
一つ以上の開口71および隙間72が配置される第3および第4ラインは、全体的に、一つ以上の開口50および隙間61が形成される第1および第2ラインの後に続いてもよい。一実施形態では、一つ以上の開口71によって形成される形状は、一つ以上の開口50によって形成される形状とは異なる。第3および第4ラインは、例えば一実施形態では第1から第4ラインは、ライン間が一定の間隔になるように平行であることが望ましい場合がある。
一実施形態では、第2ラインの隙間61の幅、すなわち第1から第4ラインを横切る方向の幅は、40μmから75μmの範囲から選択され、望ましくは約50μmである。
一実施形態では、第2ガスナイフデバイスの形成に用いられる、第4ラインの隙間72は、第2ラインの隙間61に対して上述したのと同じ特徴を有してもよい。第1ガスナイフデバイスの隙間61と同様に、単一のスリットとして、または複数の細長い隙間として隙間72を形成してもよい。一実施形態では、第4ラインの隙間72の幅、すなわち第1から第4ラインを横断する方向における幅は、20μmから50μmの範囲から選択され、望ましくは30μmである。
第3ラインの一つ以上の開口71は、単一の細長いスリットとして、または複数の細長い開口として形成されてもよい。一実施形態では、第3ラインの一つ以上の開口71の幅、すなわち第1から第4ラインを横断する方向の幅は、100μmから200μmの範囲から選択され、望ましくは150μmである。代替的に、第3ラインの一つ以上の開口71は、第1ラインの一つ以上の開口50と同様に配置されてもよい。
一実施形態では、流体ハンドリング構造の下面51は、下面の外側部分51aが第4ラインの隙間72から少なくとも2mm、望ましくは5mmだけ延出するように、配置されてもよい。流体ハンドリング構造の下面51のこの外側部分51aは、基板Wおよび/または基板テーブルWTの表面とともにダンパとして機能し、第3ラインの一つ以上の開口71から離れる気流を低減する。したがって、このような構成は、特に比較的速い走査速度において、例えば流体ハンドリング構造から離れる液滴の形態をした液体の漏れを低減することができる。
図8に示す実施形態では、流体ハンドリング構造の下面51に凹部80が設けられる。凹部80は、第2ラインと第3ラインの間の第5ライン、すなわち凹部ラインに設けられてもよい。一実施形態では、第1から第4ラインのいずれかと平行になるように、望ましくは少なくとも第2ライン、第3ライン、またはその両方と平行になるように、凹部80が配置される。
凹部80は、周囲大気などの大気、例えば流体ハンドリング構造の外側の領域に気体導管82によって接続される一つ以上の開口81を備えてもよい。凹部80は、望ましくは外部大気に接続されるとき、第1ガスナイフデバイスおよび第1ラインの関連する一つ以上の開口50を、第2ガスナイフデバイスおよび第3ラインの関連する一つ以上の開口71から分離するように機能してもよい。凹部80は、両側に位置する構成要素の動作を分離する。したがって、凹部の半径方向内側の構造は、半径方向外側の構造から切り離される。
一般に、第1ガスナイフと第2ガスナイフを分離する所望の機能を提供するために、凹部80の容積は十分に大きくなければならないことを理解すべきである。しかしながら、凹部80の容積が大きくなるほど、凹部内に液体が集積する可能性が高くなり、および/または凹部80内に集積する液体の量が多くなる。基板Wおよび/または基板テーブルWTの表面上に放出される大きな液滴を形成することがあるので、このような液体の集積は望ましくない。代替的にまたは追加的に、凹部80に集積する液体は、走査方向が変化するときにメニスカスと衝突することがあり、その結果、上述した問題のうち一つ以上が生じる。
凹部80の大きさの選択は妥協であってもよい。一実施形態では、流体ハンドリング構造の下面51に対する凹部80の深さD1は、0.25mmから0.75mmの範囲から選択することができ、望ましくは約0.5mmである。一実施形態では、凹部80の幅、すなわち第1から第5ラインを横切る方向の幅は、1mmから15mmの範囲、望ましくは1mmから10mmの範囲、望ましくは2mmから3mmの範囲から選択することができる。
一実施形態では、凹部80の大きさは、第1ガスナイフと第2ガスナイフを分離する所望の機能を確実にすることを主に目的として選択されてもよい。例えば、凹部80の大きさは、上述した例より大きくてもよい。このような実施形態では、凹部内の液体の集積を低減するために、または凹部内に集積するあらゆる液体の効果を改善するために、もしくはその両方のために、追加の手段をとってもよい。
凹部80の両側に、流体ハンドリング構造の下面51のそれぞれの部分51b、51cがあってもよい。それぞれの部分51b、51cは、第3ラインの一つ以上の開口71のエッジおよび第2ラインの隙間61から凹部80のエッジをそれぞれ分離してもよい。(隙間61および一つ以上の開口71のこれらのエッジは、第2および第3ラインではないことに注意する。なぜなら、ラインは開口の断面の中心を通過するからである。したがって、エッジはラインからは離れている。)凹部80の両側にある流体ハンドリング構造の下面51の部分51b、51cは、基板Wおよび/または基板テーブルWTの表面とともに、それぞれダンパとして機能してもよい。このようなダンパは、第1および第2ガスナイフからそれぞれの開口50、71に向けて気体が確実に流れるようにするのを助けてもよい。
凹部80の両側にある流体ハンドリング構造の下面51の部分51b、51cの大きさの選択は、妥協であってもよい。流体ハンドリング構造の下面51の部分51b、51cの大きさが、必要に応じてダンパとして機能するほど十分に大きくすることが必要である場合がある。第2ラインと第4ラインの間の総距離を、所与のしきい値よりも確実に大きくすることが必要である場合がある。この理由は、第2ラインと第3ラインの間の距離は、液膜90が確実に液滴に分かれるような十分な大きさである必要があるためである。第2ラインと第3ラインの間の距離を少なくとも所与のしきい値と同じ大きさにすることで、基板Wおよび/または基板テーブルWTの表面から第3ラインの一つ以上の開口71を通る液体の除去を容易にすることができる。しかしながら、第2ラインの隙間61のエッジと第3ラインの一つ以上の開口71のエッジとの間の離隔距離が大きくなるほど、液体集積の可能性が大きくなり、および/または凹部の下方に集積する液体の量が多くなる。これは、例えば上述したような問題を引き起こすことがある。
一実施形態では、凹部80と第1ガスナイフデバイスとの間の、流体ハンドリング構造の下面の部分51cの幅は、少なくとも1mmであってもよく、望ましくは少なくとも2mmである。部分51cの幅は、第1から第5ラインを横断する方向における、凹部80の最も近いエッジから、第2ラインの隙間61のエッジの間の離隔距離であってもよい。流体ハンドリング構造の下面51の部分51cは、第1ガスナイフデバイスと凹部80との間に隙間または開口を持たずに連続的であってもよい。
一実施形態では、凹部80と第3ラインの一つ以上の開口71との間の、流体ハンドリング構造の下面51の部分51bの幅は、少なくとも1mmであってもよく、望ましくは少なくとも2mmである。部分51bの幅は、第1から第5ラインを横断する方向における、一つ以上の開口71のエッジと凹部80の最も近いエッジとの間の離隔距離であってもよい。流体ハンドリング構造の下面51の部分51bは、第3ラインの一つ以上の開口71と凹部80との間に隙間または開口を持たずに連続的であってもよい。
凹部80内に液体が集積する可能性の低減を助けるために、鋭角のエッジを持たない形状に凹部が設けられてもよい。表面が滑らかに丸みを帯びていてもよい。液体が容易に集積するので、鋭角のエッジは望ましくない。例えば、凹部表面の周囲の任意の点における最小曲率半径が少なくとも0.1mm、望ましくは0.2mmより大きくなるように、凹部80の形状が構成されてもよい。
一実施形態では、流体ハンドリング構造のこれらの区画の全幅が、2mmから20mmの範囲、望ましくは4mmから16mmの範囲から選択されるように、凹部80の大きさ、および凹部の両側の流体ハンドリング構造の下面51の部分51b、51cの大きさが選択される。凹部80の大きさおよび部分51b、51cの大きさは、第2ラインの隙間61と第3ラインの一つ以上の開口71との間の離隔距離であってもよい。
一実施形態では、流体ハンドリング構造は、周囲大気などの大気に、例えば流体ハンドリング構造の外部領域に気体導管によって接続される一つ以上の開口を、流体ハンドリング構造の下面51に備えてもよい。例えば、大気に接続されるこのような開口が、上述のような凹部を包含していない実施形態に設けられてもよい。このような構成を使用して、第2ガスナイフデバイスおよび第3ラインの関連する一つ以上の開口71から、第1ガスナイフデバイスおよび第1ラインの関連する一つ以上の開口50を分離することができる。
上述のように、特に第2ラインの隙間61と第3ラインの一つ以上の開口71との間での、流体ハンドリング構造の下面51上の液体の集積は、望ましくないことがある。集積した液体は、投影系および流体ハンドリング構造に対する基板Wおよび基板テーブルWTの相対移動の方向が変化するときに、問題を引き起こす場合がある。一実施形態では、本明細書で説明する流体ハンドリング構造を備えるリソグラフィ装置は、基板テーブルWTおよびその上に保持される基板Wを移動するように構成されるポジショナPWのアクチュエータシステムを制御するように構成されたコントローラPWCを備えてもよい。
投影系PSに対する基板テーブルWTの速度が特定の速度を超える場合に、上述のように集積した液体によって引き起こされることがある問題を低減するための手段を講じるように、コントローラPWCが構成されてもよい。例えば、対向面の一部に対する第1ガスナイフデバイスの臨界速度に一致するように、またはこの臨界速度をわずかに下回るように、速度が選択されてもよい。例えば半径方向外側へのガスナイフを通る液浸液の漏れが所与の量を超えるときの、投影系PSに対する基板テーブルWTの速度として、臨界速度を考えることができる。このような臨界速度は、ガスナイフデバイスの構造、ガスナイフデバイスの気体流量、および/または、そのポイントでの基板および/または基板テーブルWTの表面の性質に依存してもよいことは認められるだろう。
投影系PSに対する基板テーブルWTの速度は、所与の速度を超えてもよい。投影系に対する基板テーブルの移動方向の変更が必要となる場合がある。一実施形態では、速度が所与の速度を超えており、かつ基板テーブルの移動方向を変更する必要がある場合に、投影系PSに対する基板テーブルの速度を所与の速度未満に最初に低減するように、コントローラPWCが構成される。続いて、コントローラPWCは、方向の変更を開始してもよい。したがって、例えば第1ガスナイフデバイスの臨界速度を超えて方向の変更が生じることはもはやなく、第1および第2ガスナイフデバイスの間に集積した液浸液によって引き起こされる問題を最小化または軽減する。
図8に示すような流体ハンドリング構造12を使用することで、70μmよりも大きな液滴を基板上に残すことなく、投影系PSに対する基板テーブルWTなどのテーブルの走査速度を1m/sにすることができる。対照的に、単一ラインの開口および同様の走査速度で作動する関連するガスナイフデバイスを備える構成は、基板Wなどの対向表面上に最大300μmの液滴を残してしまうことがある。こうして、例えば基板のエッジなどの構造のエッジをメニスカスが横切る場所で、および/またはメニスカスが親液性領域(水に対して親水性であってもよい親液性領域)を横切る場所で、本発明の一実施形態による流体ハンドリング構造の性能を、以前の構成と比較して改善することができる。本発明の一実施形態を適用することで、液浸液の損失を減らし、および/または攪乱力の原因を減らすことに役立つ。
別のタイプの流体ハンドリングデバイスは、いわゆる単相抽出器である。単相抽出器が二相流体を抽出するように作動してもよい。いわゆる単相抽出器は、負圧源に接続された例えばマイクロシーブ(micro-sieve)である多孔質部材を備える。液体で覆われた細孔を通して液体が抽出されるが、液体ではなく気体で覆われた細孔を通しては抽出が起こらない。気体で覆われた細孔のそれぞれを越えて液体のメニスカスが延出し、そのメニスカスの毛細管力によって細孔内の液体の抽出が防止される。このようにして、単相の抽出が促進される。これは、流体ハンドリング構造内の振動を低下させる観点から有利である。このような流体ハンドリング構造は、例えばUS2006−0038968に記載されている。
本発明の一実施形態を、上述した流体ハンドリング構造のいずれかとともに用いることができる。本発明の一実施形態は、あらゆる液滴が合体から逃れてより大きな液滴を形成する可能性を最小化することを目的とする。液浸液が存在し基板Wおよび/または基板テーブルWTと流体ハンドリング構造12との間に広がる空間の半径方向外側の位置を定める流体のメニスカスが、表面上の液滴と衝突すると、空間内の液浸液の中に気泡が含まれることがある。このような気泡は基板Wに対して通常は静止している。したがって最終的には気泡が露光領域に存在し、その領域のあらゆる露光が気泡の存在のために結像誤差を含むことになる。
図9は、液浸空間11から液体が失われ得るメカニズムを説明する5つの図(図9.1〜図9.5)を含む。これは、例えば、基板Wと基板テーブルWTの表面の間のエッジを横切る間である。基板テーブルWTの表面と基板との間に、流体抽出器を配置することができる隙間があってもよい。流体抽出器は、隙間に進入する液体、隙間に捕らわれる気体(および、隙間が液浸空間の下を通過するときに隙間の上方に位置する液浸空間11の中に逃げ込むことがある気体)、またはこれらの両方を除去することができる。このような流体抽出器の一実施形態は、気泡抽出シール(BES:bubble extraction seal)である。流体抽出器は、隙間内に負圧を生成する負圧源を有してもよい。図9に示したものと同一の機構は、任意のテーブルの高さが変化したとき液体損失につながることがある。例えば、センサの端部とセンサが位置する(例えば搭載される)テーブルとの間に高さの変化が存在することがある。一実施形態では、テーブルは、投影系の下方で基板を別の基板と交換するために使用されるテーブルであってもよい。
大きな気泡を生じうる液滴は、基板のエッジが空間11の下方を通過するときに液浸空間11から失われる液体から形成されることがある。これら液体の一部は、BES(図9.2参照)に局所的にくっついて残ったメニスカスによって形成される。メニスカスのこの部分が抽出器50に向けて後退すると、流体ハンドリング構造のガスダンパ表面(気体が空気である場合は、空気ダンパ)に膜が形成されることがある。ガスダンパ表面は、抽出器50とガスナイフ開口61との間にある流体ハンドリング構造12の領域である。ステンレス鋼で作られてもよい流体ハンドリング構造12の表面の後退接触角が小さいために、この膜が形成されることがある(図9.3参照)。膜が形成される場所に応じて、抽出器50を介して膜が抽出されるか、またはガスナイフ開口61に向けて膜が輸送される。使用時にガスナイフ開口の下方に存在する再循環ゾーン(図9.4および9.5参照)のために、二つの抽出領域が発生することがある。ガスナイフ開口の下方に位置する液滴が大きくなりすぎた場合、小さな液滴が放出されてもよい。小さな液滴は、最終的には一つまたは複数の大きな気泡を形成することがある。
本発明の一実施形態は、抽出器の半径方向外側に存在しうる液体マニピュレータ(例えば構造)に向けられている。液体マニピュレータは、小さな液滴が合体して表面上で(例えばガスダンパ表面で)大きな液滴になるのを防止するのに役立つことができる。一実施形態では、液体マニピュレータは、抽出器に向かう表面から液滴を除去するのに役立つ。一実施形態では、液体マニピュレータは受動的であり、例えば可動部分を持たない。
一実施形態では、液体マニピュレータは、液滴が合体して大きな液滴になる可能性を少なくし、および/または表面上の液滴を抽出器に輸送し、および/または、抽出器が一列に並んだ複数の抽出開口50である場合、気体ダンパ上の液滴が二つの抽出開口50の間を通り過ぎる可能性を低下させる。一実施形態では、液体マニピュレータは抽出器50に向けて液滴を輸送するのに役立つ。
図10は、液滴が合体して大きな液滴になることを防止するまたは減少させる解決策を模式的に示す。
本発明の一実施形態は、(針状の液体)抽出開口50(例えば二相抽出開口)の配列と少なくとも一つのガスナイフ開口61との間の液浸フードの底面の一部にある複数の溝500(または一連の溝)を含む。溝500は、半径方向に少なくとも部分的に整列している。すなわち、溝500は、(例えば平面視で円形である液体閉じ込め構造12の)半径方向と整列する成分、または抽出開口50および/またはガスナイフ開口61の直線配列と直交する成分を持つ方向を有する。溝は細長く、また空間11を通過する方向に整列している。一実施形態では、その方向が空間の中心を通過する。一実施形態では、溝が実質的に同心に整列し(co-aligned)、および/または(随意に細長い)抽出器および/またはガスナイフ開口61に対して角度が付けられている。
溝500とともに二つの領域が設けられてもよい。二つの領域は、開口50の半径方向にすぐ外側の領域と、外側ガスナイフ72の半径方向にすぐ内側の領域である。
変形例は、例えば直線、のこぎり歯状、波形、正弦波状、または非対称形状など、細長方向で断面が異なる溝500を含んでもよい。
液体閉じ込め構造12の下の基板のエッジ(例えば、基板のエッジと周囲のテーブルとの間の隙間)などのエッジを走査することで、例えばガスナイフ61と抽出開口50との間の、液体閉じ込め構造12のガスダンパ表面に液滴が捕捉されることがある。このような液滴は、合体によって成長することがある。大きすぎる液滴は不安定になり、液体ハンドリング構造の表面を離れ落ちて基板Wに当たる。液浸空間11の前進するメニスカスとこのような衝突が生じると、大きな気泡欠陥が生じる場合がある。ツインラインの概念(図8に関して説明した。実質的に平行な二つのガスナイフを使用するためにそのように呼ばれる)では、外側ガスナイフ開口72と抽出開口71との間の領域に液滴が捕らわれることがある。
本発明の一実施形態は、ガスナイフ61と抽出開口50との間に捕捉される液滴の量を顕著に減少させることができる。この実施形態は、ガスナイフ61と抽出開口50との間に、抽出開口50のラインと実質的に直交する成分を持つ方向に整列させた小溝500を有する。
溝500は、ガスナイフ61と平行な方向における液滴の移動を避けるのに役立つ。溝500は、小さな液滴が結合してより大きな液滴になるのを、防止はしないが減少させるのに役立ってもよい。一実施形態では、溝500は、ガスナイフ61と抽出開口50の間の表面に液滴を保持し、液滴を抽出開口50に導く。
さらに、溝500は、抽出開口またはスリット50に向けて液滴を導くのに役立ってもよい。毛細管効果のために、または局所圧力勾配によってこれが可能になる。
一実施形態では、溝500は、深さが60μm、溝の間のピッチが120μmである粗い溝である溝付き表面を備えてもよい。適切な溝の深さは30−90μmであり、適切な溝のピッチは80−160μmである。溝が同様の深さを有してもよい。溝が表面に周期的に配置されてもよい。
二つ以上の溝のサイズを採用してもよい。これらは、粗い溝と細かい溝である。粗い溝は誘導溝とみなすことができる。粗い溝は、溝に沿って液体の流れを動的に導く。細かい溝は、表面の疎水性または親水性の性質を強化する。したがって、表面特性の強化のために疎液性(例えば水が存在するときは疎水性)または親液性(例えば水が存在するときは親水性)の表面が必要とされる場所に、細かい溝を使用することができる。細かい溝は、毛細管力を利用して、液浸液を抽出開口50に輸送することができる。細かい溝は、0.1−2μmの断面寸法(深さおよび/または幅)を有することが望ましい。
粗い溝は、30−90μmの断面寸法(深さおよび/または幅)を有することが望ましい。粗い溝の場合、溝の特性は、表面の疎液性(例えば水が存在するときは疎水性)または親液性(例えば水が存在するときは親水性)の性質より優勢である。通常は、しかし排他的ではなく、粗い溝を疎液性(例えば水が存在するときは疎水性)の表面と組み合わせて使用する。その場合、バリアによって液滴を保持することができ、また溝が液体の流れを導くことができる。粗い溝は、以下のうちの一つまたは複数の防止を目的とすることができる。すなわち、ガスナイフ61および/または抽出器の細長い方向(例えば抽出開口50のライン)と平行に液浸液の液滴が輸送されることの防止、および/または隣接する抽出開口50の間に液浸液の液滴が輸送されることの防止である。一実施形態では、細かい溝と粗い溝との間のサイズを持つ溝が存在し、この溝が上述した方法の組み合わせで機能する。
図10の実施形態では、溝500は、溝の内側が液浸液に対して望ましくは親液性である(すなわち、一実施形態では、液浸液が液浸液に対し70°未満の後退接触角を有する)粗い溝であってもよい。抽出開口50、71のラインに向かって液体が導かれてもよい。
一実施形態では、図10の溝500は細かい溝であってもよい。細かい溝の場合、溝の内側が液浸液に対して親液性であることが望ましい。一実施形態では、液浸液が70°未満の後退接触角を有してもよい。これは、液滴が広がって(smear out)表面上に膜を形成するのを促進し、その結果、抽出開口50、71を通して表面から液体を膜として除去することができる。
一実施形態では、細かい溝のみが存在する。一実施形態では、粗い溝のみが存在する。一実施形態では、細かい溝と粗い溝の両方が存在する。図11−14は、様々な異なる実施形態を示す。一実施形態では、抽出開口50に対して溝が放射状である。液体を一つの抽出開口50に導く方向に溝が広がってもよい。粗い溝が抽出開口50のラインと直交していてもよい。しかしながら、一実施形態では、細かい溝をそのように構成することは望ましくない。なぜなら、そのような構成は、抽出開口50間の隙間を通した液体の漏れにつながりうるからである。
一実施形態では、中間サイズの溝を使用してもよい。このような中間の溝は、液浸液を特定の方向(例えば、一つの抽出開口50に向かう方向)に輸送すること、隣接する抽出開口50間での液滴の動きを妨げること、またはその両方に対して有益である。平面視で角付き形状の(例えば、図6に図示したような)システムでは、角に位置する抽出開口50に通じる溝が、他の抽出開口50(例えば、実質的に直線に配置された抽出開口)に通じる溝よりも多く存在する。
図11は、図6ないし8に示した流体閉じ込め構造12内での溝500の使用を模式的に示す。
開口50とガスナイフ開口61との間の表面の典型的な寸法は約1mmであり、例えば0.5mmと1.5mmの間である。
本発明の一実施形態の目的は、上述の問題を本質的に解決することである。溝は、液滴が合体して、抽出開口50とガスナイフ開口61の間の流体ハンドリング構造12の表面上でより大きな液滴になることを防止または減少させることを目的としている。溝は、液滴を抽出開口50に導いてもよい。これは、基板のエッジが液浸空間の下を通過するとき、例えば基板Wのエッジ周りの隙間を横切るときに形成される、ガスナイフ開口61および/または液滴の近傍の気流の再循環の結果、抽出開口50とガスナイフ開口61との間に大きな液滴が形成されることを妨げるのに役立つ。これがなければこの表面上に形成されることになる液滴は、液浸空間11内の液体の液浸液メニスカスと後に衝突して、空間内に気泡を導入することになるだろう。
溝が形成される表面から材料を除去することで、溝を形成してもよい。代替的にまたは追加的に、表面に材料を追加することで(例えば隆起部を堆積することで)溝を形成してもよい。一実施形態では、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を表面に堆積させて、模様のついたPMMAの隆起部の間に溝を形成してもよい。
図7に示した抽出システムの起こり得る望ましくない特徴は、ガスナイフ開口61から半径方向内側に流れる気流が、流体ハンドリング構造12の表面よりも基板Wにはるかに近くなることである。これにより、対向表面の液滴に加わるのと同じ大きさの力を、流体ハンドリング構造12の表面の液滴に、気流によって加えられないことがある。
図12は、流体閉じ込め構造12の一実施形態を示す。図12は、流体閉じ込め構造12の下面の平面図である。下面は、使用時に、例えば基板Wまたは基板テーブルあるいは測定テーブルなどのテーブルであってもよい対向表面と対抗する面である。図12の流体閉じ込め構造12は、図6に示したタイプである。しかしながら、図8に示した流体閉じ込め構造12のタイプにも、その原理を等しく適用することができる。図12の抽出開口50は、図8の抽出開口71であってもよい。図12のガスナイフ開口61は、図8のガスナイフ開口72であってもよい。
図12の実施形態では、液体マニピュレータが、ガスナイフ61と抽出開口50のラインとの間の表面で液滴が合体する可能性を低減する構造である。液体マニピュレータは、表面の一連の溝500のかたちをしている。上述のように、表面から材料を除去するか、または表面に材料を追加して溝500が形成されてもよい。溝500は細長い。溝500の細長方向は空間11を通過する。一実施形態では、抽出開口50に向かう表面からの液滴の除去を助けるように溝500が構成される。
一実施形態では、図12に示すように、それぞれの抽出開口50が、それに関連する少なくとも一つの溝500を有する。関連づけられた溝500は、自身の関連する抽出開口50を通過する方向に細長い。液滴への溝500の毛管作用が、溝500に沿って液滴を抽出開口50に向けて引き出すのに有効であってもよい。ガスナイフ61から抽出開口50への気流が、溝500に沿って液滴を移動させる追加のまたは代替的な力を提供してもよい。
一実施形態では、抽出開口50と関連づけられる図12の溝500は、細かいタイプの溝でありまた親液性である。このようにすると、溝500に着地する液滴が広がって、開口50によって液滴を膜として除去することができる。
一実施形態では、抽出開口50と関連づけられた溝500、または溝500の少なくとも一部は、細かいサイズのものではない。例えば、抽出開口50と関連づけられた一つまたは複数の溝500が粗いタイプの溝であってもよい。一実施形態では、溝500は、溝500内の表面の液滴を捕らえることによって液滴の合体を防止するのに役立つ。溝500は親液性になるように作成される。溝500は抽出開口50に向けて液滴を導く。ガスナイフ61から抽出開口50への気流は、関連づけられた抽出開口50に向けて溝500に沿って液滴を移動させるのに有効である。一実施形態では、ガスナイフ61および/または抽出開口50のラインと平行の方向に液滴が移動する能力を制限することによって、液滴の合体を妨げる。
図13は、以下に述べる点を除き、図12の実施形態と同一である実施形態を示す。図13において、抽出開口50は、(例えば図6に示したような)平面視で角付き形状であるラインを形成する。角の抽出開口50Aは、角付き形状の辺に沿って位置する、すなわち角でない部分に位置する他の抽出開口50よりも、多くの溝500と関連づけられる。
隣接する抽出開口50の間に、一連の溝600が存在する。溝600は細長い。溝600の細長方向は、抽出開口50のラインと平行な成分を有する。一実施形態では、隣接する抽出開口50の間の溝600は、抽出開口50のラインと平行である。溝600は、抽出開口50のラインと直交する成分を有する方向において、隣接する抽出開口50の間を通過する液滴が存在する可能性を低下させるように構成される。この目的のために、溝600は、粗いタイプかつ疎液性(すなわち、液浸液が例えば70°、望ましくは90°、望ましくは100°以上の後退接触角を有する)であることが望ましい。したがって、溝600と遭遇する液滴が適所に保持され、溝が液滴バリアとして機能する。一実施形態では、大きな接触角ヒステリシスが存在し、これは液滴がさらに内側に移動することを防止するのに役立つ。溝600は、液浸空間11の半径方向外側の位置で、液滴の液体の流れを阻止する役割をしてもよい。
一実施形態では、溝600は、細かいタイプまたは中間タイプのものであってもよい。溝が親液性である場合、溝と接触する液滴が広がって、抽出開口50によって液滴を膜として抽出することができる。毛管作用が液滴に作用し、溝600がその間に位置する抽出開口50の一方または他方に液滴を向かわせることができる。
一実施形態では、抽出開口50と関連づけられた溝600は、細かいタイプの溝であり疎液性である。例えば、抽出開口50と関連づけられた溝600は、0.1−2μmの間の深さおよび/または幅を有してもよい。粗いスケールの溝については、非平滑表面と液滴との間の動的な相互作用によって液滴の流れが導かれてもよい。いずれにしても、液体が溝に進入せず、突起部の間の溝の中に気体が留まり表面が疎液性の表面として機能するように、溝のサイズが選択されてもよい。細かいまたは中間の溝600が疎液性である場合、溝600を越えた液滴の移動の防止に役立つように溝が作用してもよい。
一実施形態では、図12または13に示すように、液体閉じ込め構造12は、抽出開口50の間に溝600のみを備え、溝500は備えない。
上述のように、溝500、600は、平坦でない断面形状を細長方向に有してもよい。一例を図14に示す。図14は、開口50のラインと直交する方向に沿った図13の液体閉じ込め構造12を通る断面である。図示のように、各溝600は直角三角形の断面形状を有する。直角三角形の斜辺はガスナイフ61の側にある。直角三角形の垂線は、空間11に近い側にある。このようにすると、空間11に向かって移動する液滴に対して、溝600への進入が促進されるが、三角形の直交面によって、溝600から空間11に向けての移動が妨げられる。表面を越えて液体が流れる好ましい方向を表面が有していてもよい。
適切な他の溝の断面形状は、楕円、半円、正方形、長方形、台形、または平行四辺形を含んでもよいが、これらに限定されない。
図15−20は、上述した、および例えばUS2006−0038968に記載の単相抽出器における溝の使用のアイデアを示す。このような単相抽出器は、使用時に基板Wまたはテーブルなどの対向表面と対面し空間11を取り囲む流体閉じ込め構造12の底面または下面上の多孔質部材700から構成される。多孔質部材700の対向表面とは反対側のチャンバ710に負圧が加えられる。
液浸液で覆われた多孔質部材700の細孔を通して液浸液が通過する。液浸液で覆われていない(すなわち、多孔質部材700と対向表面との間に広がるメニスカス90の半径方向外側の)細孔は、それぞれの細孔を横切って広がる液体のメニスカスによって塞がれる。単相抽出モードにおいて、液体を塞ぐ表面張力は、チャンバ710に与えられる負圧よりも大きい。
多孔質部材700を通した抽出速度を増加させるために(例えば、空間11から液体が逃れるおそれを低減するために)、より高い負圧がチャンバ710に与えられる。これは欠点となり、望ましくない二相流を生み出しうる。
図15−20の実施形態では、平面視でそのフットプリントを増大させることなく、多孔質部材700の全表面積が増大している。これは、多孔質部材700に溝を形成することで達成される。言い換えると、対向表面に対面する多孔質部材700の表面に少なくとも一つの凹部および/または突起部が形成される。多孔質部材700の表面積を増大することで、同一の負圧に対してより高い抽出速度が得られる。したがって、真の単一相流で液浸液を抽出することができ、これによって二相流で生じる脈動を回避し、装置重量を低減することができる。追加的にまたは代替的に、多孔質部材700に溝/波形を設けることで、全体的に、多孔質部材700および液体閉じ込め構造12の剛性を高めることにつながる。走査方向またはステップ方向に細長方向があるように溝/波形を形成してもよく、また(図19および20に示すように)多孔質部材700の一部または全体にわたり溝/波形を形成してもよい。一実施形態では、平面視で、空間または開口50、71の形状と実質的に同一または同様の形状に溝/波形を形成してもよい。
一実施形態では、少なくとも一つの凹部および/または突起部が少なくとも一つの溝の一部であってもよい。一実施形態では、多孔質部材700が複数の溝を有する。一実施形態では、溝が実質的に平行である。一実施形態では、複数の実質的に平行な溝が波形を形成してもよい。一実施形態では、多孔質部材700の表面の少なくとも一部が実質的に平坦である。
図15の実施形態では、溝が正弦波状の断面を有する。しかしながら、図16、17および18に示すように、図16に示した(空間11から離れた方を向く斜辺を有する)直角三角形などの他の形状が適切であることもある。図17および18に示すように、溝が台形の断面形状を有していてもよい。一実施形態では、台形は規則的な台形(図17)である。一実施形態では、台形は不規則な台形(図18)である。台形の一辺は底部に対して直角である。その辺は空間11に最も近い。
図19は、空間11を取り囲む多孔質部材700の平面図である。多孔質部材700は、x方向における空間11の両側で平坦である。y方向における、空間11の両側および多孔質部材700の平坦部分両側に、溝が存在する。溝はx方向と整列した細長方向を有する。
代替実施形態では、図20に示すように、波形がy方向に整列される。図20では、多孔質部材700の全体が波形である。
一実施形態では、液体マニピュレータが液滴の形成を防止するのに役立つ。疎液性材料で形成された液体マニピュレータをガスダンパ表面(抽出器50の半径方向外側の基板および/またはテーブルに対面する液体ハンドリング構造12の表面)に適用することによって、メニスカスが後退するときに後退接触角(〜70°または90°対0°)がより大きくなるために、ガスダンパ上に液浸液の膜が形成されにくくなる。したがって、ガスダンパ上に残る液体が少なくなり、この結果液体の集積も少なくなる。ガスダンパ表面の疎液性のために、ガスダンパの後ろに残される液滴またはガスダンパと接触する液滴が反射されてもよい。液滴は重力のために最終的に基板または基板テーブルの上に残る。しかしながら、ガスダンパから離れる前に、液滴が結合してより大きな液滴になることはない。これは、液体マニピュレータが存在しない場合よりも、液滴がメニスカスと衝突した結果として空間内に大きな気泡が含まれる可能性が小さくなることを意味する。図10に示し図10に関連して上述したような溝(単数または複数)によって、液体マニピュレータ上の液滴が半径方向内側に移動するのを防止することができる。
メニスカスが構造(例えば、基板のエッジと交差する間の基板のエッジまたは基板テーブルのエッジ)で固定されるとき、液体マニピュレータの一部の濡れが失われる(de-wetting)ことは起こりそうにない。この理由は、メニスカスが疎液性または超疎液性(例えば、疎水性または超疎水性)コーティングと作る接触角がはるかに大きく、したがって、よくあるように、ガスダンパが親液性(例えば、親水性)であるときのC型断面と比較して、メニスカスがS型断面となるからである。疎液性または超疎液性から親水性への遷移がある場合(以下のいくつかの実施形態で述べる)、疎液性/超疎液性領域と親液性の領域との間の境界をメニスカスが通過するときに、メニスカスの断面形状が変化する。
むき出しのステンレス鋼と比較して、疎液性または超疎液性のコーティングは非常に小さな接触角を有するので、固定構造を横切った後の部分的な濡れの喪失を軽減することができる。
さらに、本発明の一実施形態における接触角ヒステリシスは、典型的に、(流体ハンドリング構造を作成するのに使用されることがある)ステンレス鋼のものよりも小さい。したがって、液滴を配置するのに必要な力が小さい。ステンレス鋼の場合、接触角ヒステリシスは通常、ステンレス鋼の粗さおよび前処理に応じて、50−70°のオーダーであるである。いくつかの疎水性材料/コーティングの場合、ヒステリシスを〜20°の値に容易に低下させることができる。このヒステリシスは液滴の粘性の測定単位であり、したがって液滴はそのような疎液性表面にくっつきにくくなる。
このようなコーティングの例は、Lipocer(商標)としても知られるポリジメチルシロキサン、例えばテフロン(登録商標)などのフッ素重合体を含むコーティングがある。
コーティングは超疎液性(例えば超疎水性)のコーティングであってもよい。超疎液性コーティングは、例えば160°の初期後退接触角を有してもよく、120°から最大180°まで取り得る。作用後、後退接触角は約100°まで減少することがある。これは、初期後退接触角が90−95°であるが、動作中は60°に低下することがあり、おそらく70−95°の範囲である通常の疎液性コーティングに匹敵する
様々な技術を用いて、薄膜の形態であることが多い超疎液性コーティングを堆積させることができる。これらには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の化学蒸着、カーボンナノチューブおよび壁、変調RFグロー放電、マイクロ波PECVD、フッ化ポリマーの自己組織化などを含む。一般に、フッ化炭素化合物は表面エネルギーが小さいために、水および油を反発することが分かっている。テフロンはフッ化炭素化合物であり、テフロンのようなコーティングを異なる方法で堆積させる。この方法は、無線周波プラズマによる前駆フッ化炭素の重合、イオンビームスパッタリング、RFスパッタリングを含む。A. Satyaprasad、V JainおよびS. K. nemaによる、「Deposition of superhydrophobic nanostructured Teflon-like coating using expanding plasma arc」と題する論文(Applied Surface Science 253 (2007) 5462-5466)でさらに詳細をみることができ、参照によりその全体が本明細書に援用される。Xue-Mei Li、David ReinhoudtおよびMercedes Crego-Calamaが「What do we need for a superhydrophobic surface? A review on the recent progress in the preparation of superhydrophobic surfaces」(Chemical Society Reviews 2007, 36, 1350-1368)の中で超疎水性コーティングを適用する技術を議論しており、その全体が参照により本明細書に援用される。Paul Roach、Neil ShirtcliffeおよびMichael Newtonによる、「Progress in superhydrophobic surface development」(Soft Matter, 2008, 4, 224-240)と題する論文が超疎水性コーティングを適用する技術を開示しており、その全体が参照により本明細書に援用される。
疎水性表面の利点は、汚染物の集積がされにくいことである。
図21は、表面が液浸液に対して疎液性にされる実施形態を示す。抽出開口50とガスナイフ開口61との間の流体ハンドリング構造12の表面(いわゆる気体ダンパ)の材料が、70°以上、望ましくは90°以上、より望ましくは100°以上、さらにより望ましくは110°、120°、130°または140°以上の後退接触角を液浸液が有するように(例えばコーティングによって)作られる。表面は疎水性であっても超疎水性であってもよい。一実施形態では、気体ダンパ表面に対して150°以上の接触角を液浸液が有する。
疎液性コーティングは、ガスナイフ開口61から、ガスナイフ開口61と抽出開口50の直線配列との間の任意の点まで広がる。
抽出開口50とガスナイフ開口61との間の全表面を疎液性コーティングが覆うと、よりよい結果が得られることがある。
ガスナイフ61を持たず、かつ例えば上述のように単相抽出器として動作する多孔質抽出を使用可能な構成で、疎液性コーティングを適用してもよい。
露光光に著しくさらされるわけではないので、このコーティングはDUV耐性である必要なないが、液浸液耐性、例えば超純水耐性でなければならない(適切なコーティングは、例えばテフロンおよびLipocerであってもよい)。
図22は、図6の流体ハンドリング構造12の断面を平面で示す。クロスハッチングで示すように、開口50とガスナイフ61との間の表面の一部は、液浸液が70°以上、望ましくは90°以上の後退接触角を持つように作られる。したがって、開口50とガスナイフ61との間の表面の一部のみが液浸液に対して疎液性であるときに、本発明の一実施形態の利点を得ることができる。しかしながら、別の斜めのクロスハッチングで示す別の領域によって示されるように、表面のより大きなまたはより小さな面積がコーティングで覆われてもよい。クロスハッチングされた領域に加えてまたはその代わりに、異なるハッチングの付けられた領域の全てまたは一部を、例えば液浸液に対して疎液性にしてもよい。
米国特許出願公開US2005/0175776号に記載されるように、超疎液性コーティングがロータス(lotus)面であってもよい。
一実施形態では、疎液性または超疎液性表面が、上述の溝、特に細かい溝を備える。
一実施形態では、抽出開口50から離れた下面が超疎液性である。抽出開口50に近接して、下面は親液性となる。例えば、流体ハンドリング構造12のむき出しのステンレス鋼が存在したとする。液浸液(例えば、UPW)は典型的に、むき出しのステンレス鋼に対して0、10、20または最大30°の後退接触角を有する。
一実施形態では、液浸液が下面と作る接触角が抽出開口50からの距離とともに変化する。これは、例えば、疎液性または超疎液性コーティングを付与する前の下面の構造(例えばテクスチャリング)によって達成することができる。表面がより構造化されている位置では、コーティングがより疎液性になる。表面に異なる接触角を与えるコーティングは、多くの異なる塗布技術(例えばスプレーコーティング)によって塗布することができる。
液浸液が表面と作る接触角は、少なくとも部分的には表面の表面エネルギーに起因する。接触角勾配を有する表面は、表面エネルギー勾配を有する表面と呼ばれることがある。表面エネルギーは、下面上の液浸液の液滴を抽出開口50に向けて移動する力を与えるのに十分であってもよい。一実施形態では、下面の表面エネルギー勾配は、抽出開口50とガスナイフ開口61との間で異なっていてもよい。表面エネルギー勾配が、ガスナイフ開口61から抽出開口50(ここで液滴を除去することができる)に向けて液滴を輸送してもよい。液滴が輸送される距離が短い限り、液浸液の他の場所に構造を適用してもよい。
液滴を移動させる表面エネルギー勾配について、表面によって加えられる力は、表面にあるときに液滴が示すヒステリシスを乗り越えなければならない。表面エネルギーによって誘起される液滴の移動を実現するための最小の力は、表面に対する液浸液の接触角の関数である。
液滴の動きが、液滴の開始位置とは無関係な予測可能な挙動であることが望ましい。一実施形態では、液滴を移動させるための最小の力と液滴の移動する距離との間の関係が線形である。この線形関係を実現するために、接触角の余弦が、接触角ではなく距離とともに線形に変化する。一実施形態では、余弦は、表面上の接触角における極大差である。図24aに示される流体ハンドリング構造12の下面の実施形態に対して、図24bは、表面上のある位置における表面の接触角の余弦と、抽出開口50とガスナイフ開口61との間の全距離の割合をLとしたときの(すなわち、距離xがLに等しい)、抽出開口50からのその位置の距離との間の例示的な関係を示す。
一実施形態では、疎液性粒子を用いて表面を疎液性にし、抽出開口50からの距離によって付与する疎液性粒子の量を変動させる(例えば、単位表面積に付与される粒子の密度、または粒子によって覆われる表面の割合を変動させる)ことによって、接触角の変化を実現することができる。ガスナイフ開口61に向かうにつれて接触角を滑らかに遷移させることが望ましい。この理由は、下面と基板との間に広がる液体のメニスカスが固定されずに下面に沿って移動することができるからである。しかしながら、抽出開口から離れると接触角が増加するために、メニスカスが抽出開口50から離れて移動すると、メニスカスの移動に対する抵抗が増加する。したがって、メニスカスの固定(図23を参照して後述する)を原因とする液体の損失を低減することができる。
疎液性または超疎液性のコーティングはゼロでない接触角ヒステリシスを有することが多く、これは望ましいことである。ゼロでない接触角ヒステリシスは、メニスカスに作用する毛管力に対抗する固定ヒステリシス力につながる。この結果、メニスカスの位置の制御が改善され、これによって応答時間が短縮される。
一実施形態では、疎液性または超疎液性の領域が、上述のように疎液性の細かい溝の使用によって提供される。
上述の原理を、液浸リソグラフィ装置の他の領域に適用することができる。例えば、流体ハンドリング構造の上面を疎液性または超疎液性とし、上述のように、抽出開口50とガスナイフ61との間の下面と同じように上面を処理してもよい。加えて、投影ビームPBが伝播しない投影系の下面を同様に処理してもよい。
一実施形態では、抽出開口50とガスナイフ61との間の同心溝1000が流体ハンドリング構造12の下面に設けられる。これは、流体ハンドリング構造12の断面図である図23に示されている。溝1000は、幅が約50μm、深さが約20μmであり、鋭いエッジ(例えば、半径が1μm未満)を備えていてもよい。溝1000の半径方向内側の辺には表面処理がなされておらず、例えばむき出しのステンレス鋼のような親液性表面が残されている。しかしながら、溝1000の半径方向外側かつガスナイフ61の半径方向内側に、疎液性または超疎液性の表面が存在してもよい。一実施形態では、疎液性または超疎液性の表面は、ステッカーの形態である。一実施形態では、疎液性または超疎液性の表面は、本文書の他の箇所で述べたようなコーティングである。
溝1000の内側の同心エッジは、固定構造として機能する。同心エッジは、気体ダンパの完全な濡れを回避する(内側部分のみが濡れる)。溝1000が気体1020の再循環渦から離れて位置する場合、溝1000のエッジからメニスカスの固定が解除されたとき、溝1000の下面の半径方向内側部分は、戻り走査中に完全に濡れが失われる。濡れの喪失が図23の矢印1010によって示されている。溝1000のエッジからメニスカスの固定が解除されることが予想される。溝1000の半径方向内側の表面は、メニスカスのBESからの固定が解除された後に濡れがなくなり、下面上のメニスカス位置が抽出開口50に向けて半径方向内側に移動する。
溝1000は、溝1000でメニスカスを固定して、抽出開口50とガスナイフ61との間の領域の完全な濡れを回避する。そうすることによって、特定領域の濡れがないときに液体が喪失するおそれが軽減される。溝1000は、数十マイクロメートルの幅および深さである。
本明細書で述べた変形形態のいずれかに基づく一実施形態では、二相抽出器として作用する一つまたは複数の開口50、71を使用することについて説明してきたが、いずれの実施形態における一つまたは複数の開口も、米国特許出願公開US2006−0038968号(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているような多孔質部材またはマイクロシーブで置き換えることができる。それぞれの多孔質部材は、単相または二相の流体流内の液体を抽出するように作用することができる。一実施形態では、気流が半径方向内向きに向けられてもよいが、多孔質部材を通して抽出される代わりに、気体供給開口と多孔質部材との間に位置する気体抽出開口によって気流が抽出されてもよい。このような実施形態では、気流は、ガスナイフデバイスによって対向表面上に残される液体残渣を削減するのに役立つ。したがって、本発明の一実施形態は、少なくとも図8および9を参照して述べた実施形態によって実現されるのと同様の利益を実現する構成で実装されてもよい。
理解されるように、上述した構造のいずれも任意の他の構造とともに使用することができ、この出願で保護されるものは明確に説明した組み合わせに限られない。
IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について本文書において特に言及をしてきたが、本明細書で述べたリソグラフィ装置は、他の応用形態も有していることを理解すべきである。例えば、集積された光学システム、磁気領域メモリ用の誘導及び検出パターン(guidance and detection pattern)、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造といった応用である。当業者は、このような代替的な応用形態の文脈において、本明細書における「ウェハ」または「ダイ」という用語のいかなる使用も、それぞれより一般的な用語である「基板」または「目標部分」と同義とみなすことができることを認められよう。本明細書で参照された基板は、例えばトラック(通常、レジスト層を基板に付加し、露光されたレジストを現像するツール)、計測ツール及び/または検査ツールで露光の前後に加工されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示は、そのような基板処理工具または他の工具に対しても適用することができる。さらに、例えば多層ICを作製するために二回以上基板が加工されてもよく、その結果、本明細書で使用された基板という用語は、複数回処理された層を既に含む基板のことも指してもよい。
本明細書で使用される「照射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)照射(例えば、365、248、193、157、または126nmの波長を有する)を含む、あらゆるタイプの電磁気照射を包含する。「レンズ」という用語は、文脈の許す限り、屈折光学要素及び反射光学要素を含む様々なタイプの光学要素のうちの任意の一つまたはその組み合わせを指す場合もある。
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明の実施形態は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の一つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式をとってもよいし、そのコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)であってもよい。機械で読み取り可能な命令は2以上のコンピュータプログラムにより実現されてもよい。それら2以上のコンピュータプログラムは一つまたは複数の異なるメモリ及び/またはデータ記録媒体に記録されていてもよい。
本明細書に記載のコントローラは、リソグラフィ装置の少なくとも一つの構成要素内部に設けられた一つまたは複数のコンピュータプロセッサによって一つまたは複数のコンピュータプログラムが読み取られたときに動作可能であってもよい。コントローラは信号を受信し処理し送信するのに適切ないかなる構成であってもよい。一つまたは複数のプロセッサは少なくとも一つのコントローラに通信可能に構成されていてもよい。例えば、複数のコントローラの各々が上述の方法のための機械読み取り可能命令を含むコンピュータプログラムを実行するための一つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。各コントローラはコンピュータプログラムを記録する記録媒体及び/またはそのような媒体を受けるハードウェアを含んでもよい。コントローラは一つまたは複数のコンピュータプログラムの機械読み取り可能命令に従って動作してもよい。
本発明の一つまたは複数の実施形態はいかなる液浸リソグラフィ装置に適用されてもよい。上述の形式のものを含むがこれらに限られない。液浸液が浴槽形式で提供されてもよいし、基板の局所領域のみに提供されてもよいし、非閉じ込め型であってもよい。非閉じ込め型においては、液浸液が基板及び/または基板テーブルの表面から外部に流れ出ることで、基板テーブル及び/または基板の覆われていない実質的に全ての表面が濡れ状態であってもよい。非閉じ込め液浸システムにおいては、液体供給システムは液浸流体を閉じ込めなくてもよいし、液浸液の一部が閉じ込められるが完全には閉じ込めないようにしてもよい。
本明細書に述べた液体供給システムは広く解釈されるべきである。ある実施形態においては投影系と基板及び/または基板テーブルとの間の空間に液体を提供する機構または構造体の組み合わせであってもよい。一つまたは複数の構造体、及び一つまたは複数の流体開口の組み合わせを含んでもよい。流体開口は、一つまたは複数の液体開口10、一つまたは複数の気体開口、一つまたは複数の二相流のための開口を含む。開口のそれぞれは、液浸空間への入口(または流体ハンドリング構造からの出口)または液浸空間からの出口(または流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。一実施例においては、液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの一部であってもよい。あるいは液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの表面を完全に含んでもよいし、液浸空間が基板及び/または基板テーブルを包含してもよい。液体供給システムは、液体の位置、量、性質、形状、流速、またはその他の性状を制御するための一つまたは複数の要素をさらに含んでもよいが、それは必須ではない。一実施形態では、液浸液が水であってもよい。上述の説明は例示であり限定することを意図していない。よって、当業者であれば請求項の範囲から逸脱することなく本発明の変形例を実施することが可能であろう。
要約すると、本開示は、以下の節のうち一つ以上を含むことができる様々な実施形態を提供する。
1.リソグラフィ装置の流体ハンドリング構造であって、該流体ハンドリング構造の外部領域に液浸流体を備えるように構成された空間の境界に、
使用時に基板および/またはテーブルの方に向けられる第1ラインに配置される少なくとも一つの開口を備える抽出器と、
使用時に前記基板および/または前記テーブルと対向する表面上にあり、該表面上の液滴が合体する可能性を低下させる液体マニピュレータと、
を連続的に備えることを特徴とする、流体ハンドリング構造。
2.前記液体マニピュレータは、前記抽出器に向かう液滴を前記表面から除去するのに役立つことを特徴とする上記1に記載の流体ハンドリング構造。
3.前記液体マニピュレータが構造であることを特徴とする上記1または2に記載の流体ハンドリング構造。
4.前記液体マニピュレータが前記表面の一連の溝であることを特徴とする上記1ないし3のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
5.リソグラフィ装置の流体ハンドリング構造であって、該流体ハンドリング構造の外部領域に液浸流体を備えるように構成された空間の境界に、
使用時に基板および/またはテーブルの方に向けられる少なくとも一つの開口を備える抽出器と、
使用時に前記基板および/または前記テーブルに対向する、前記流体ハンドリング構造の表面の複数の溝と、
を連続的に備えることを特徴とする流体ハンドリング構造。
6.前記抽出器が前記表面に形成されることを特徴とする上記5に記載の流体ハンドリング構造。
7.前記抽出器が多孔質部材を備えることを特徴とする上記6に記載の流体ハンドリング構造。
8.前記溝が前記多孔質部材内の波形によって形成されることを特徴とする上記7に記載の流体ハンドリング構造。
9.前記溝が細長であり、前記空間を通過する方向に整列されることを特徴とする上記4ないし8に記載の流体ハンドリング構造。
10.前記方向が前記空間の中央を通過することを特徴とする上記9に記載の流体ハンドリング構造。
11.細長方向の断面における前記溝の形状が、直線、のこぎり刃状、波形、正弦波形、台形の繰り返し、または非対称形を含むグループから選択されることを特徴とする上記4ないし10のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
12.前記抽出器が、前記空間を取り囲むライン内に複数の抽出開口を備えることを特徴とする上記4ないし11のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
13.各抽出開口が関連する少なくとも一つの溝を有し、各関連する溝が、関連する抽出開口を通過する方向に細長いことを特徴とする上記12に記載の流体ハンドリング構造。
14.各溝が0.1−2μmの深さおよび/または幅を有することを特徴とする上記13に記載の流体ハンドリング構造。
15.前記ラインが、平面視において角付き形状であることを特徴とする上記12ないし14のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
16.前記角付き形状の角に位置する各抽出開口が、前記角付き形状の角でない位置にある抽出開口よりも多数の関連する溝を有することを特徴とする上記15に記載の流体ハンドリング構造。
17.前記溝の少なくとも一つは、前記複数の抽出開口のうちの二つの間のラインと平行な成分を持つ方向に細長いことを特徴とする上記12ないし16のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
18.前記少なくとも一つの溝が30−90μmの深さおよび/または幅を有することを特徴とする上記17に記載の流体ハンドリング構造。
19.前記複数の溝が前記抽出器の半径方向外側にあることを特徴とする上記4ないし18のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
20.前記抽出器が負圧源に接続された多孔質部材を備えることを特徴とする上記1ないし11のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
21.前記抽出器が、使用時に基板および/または前記基板を支持するように構成された基板テーブルの方に向けられる、第1ラインに配置された細長い開口または複数の開口を備えることを特徴とする上記1ないし11のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
22.前記溝は、溝同士の間に80−160μmのピッチを有することを特徴とする上記4ないし21のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
23.前記液浸流体が、前記溝とともに70°よりも大きな後退接触角を作ることを特徴とする上記4ないし22のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
24.前記液浸流体が、前記溝とともに70°よりも小さな後退接触角を作ることを特徴とする上記4ないし22のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
25.前記液浸流体が、前記流体ハンドリング構造の下面の少なくとも一部とともに疎液性の接触角を有することを特徴とする上記1ないし24のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
26.前記流体ハンドリング構造の下面の少なくとも一部がコーティングされることを特徴とする上記25に記載の流体ハンドリング構造。
27.前記流体ハンドリング構造の下面の少なくとも一部が、抽出開口のラインとガスナイフ開口との間の表面を備えることを特徴とする上記25または26に記載の流体ハンドリング構造。
28.前記流体ハンドリング構造の下面の少なくとも一部が表面エネルギー勾配を与えることを特徴とする上記25ないし27のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
29.前記抽出器が第1ラインを形成し、
前記抽出器が、前記空間を取り囲みかつ前記液体マニピュレータまたは前記溝の半径方向外側に位置する細長い隙間を有する第2ラインに配置される、第1ガスナイフデバイスをさらに備えることを特徴とする上記1ないし28のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
30.前記第1ガスナイフデバイスの半径方向外側の第3ラインにある細長い開口または複数の開口と、
第4ライン内に細長い隙間を有し、前記第3ラインの半径方向外側に位置する第2ガスナイフデバイスと、
をさらに備えることを特徴とする上記29に記載の流体ハンドリング構造。
31.リソグラフィ装置の流体ハンドリング構造であって、
使用時に基板および/またはテーブルを含む対向表面と対面する少なくとも一つの開口を備える細長い抽出器と、
使用時に前記対向表面と対面する前記流体ハンドリング構造の表面の複数の溝であって、実質的に同心に配列されるとともに前記抽出器に対して角度が付けられた、複数の溝と、
を備える流体ハンドリング構造。
32.リソグラフィ装置の流体ハンドリング構造であって、
使用時に基板および/またはテーブルを含む対向表面の方に向けられるガスナイフを形成するように構成された少なくとも一つのガスナイフ開口と、
使用時に前記基板および/または前記基板テーブルと対面する前記流体ハンドリング構造の表面の複数の溝であって、実質的に同心に配列されるとともに前記ガスナイフ開口に対して角度が付けられた、複数の溝と、
を備える流体ハンドリング構造。
33.リソグラフィ装置の流体ハンドリング構造であって、
使用時に基板および/またはテーブルを含む対向表面と対面する多孔質部材を備える抽出器を備え、
前記対向表面と対面する前記多孔質部材の表面が、少なくとも一つの凹部および/または突起部を備えることを特徴とする流体ハンドリング構造。
34.前記少なくとも一つの凹部および/または突起部が少なくとも一つの溝の一部であることを特徴とする上記33に記載の流体ハンドリング構造。
35.前記多孔質部材の表面が前記溝を複数備えることを特徴とする上記34に記載の流体ハンドリング構造。
36.前記複数の溝が実質的に平行であることを特徴とする上記35に記載の流体ハンドリング構造。
37.前記実質的に平行な複数の溝が波形を形成することを特徴とする上記36に記載の流体ハンドリング構造。
38.前記多孔質部材の表面の少なくとも一部が実質的に平坦であることを特徴とする上記33ないし37のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
39.上記1ないし38のいずれかに記載の流体ハンドリング構造を備えるリソグラフィ装置。
40.基板を支持する基盤テーブルと、前記基板の目標部分に投影ビームを投影する投影系とを備え、前記投影系と前記基板の間の空間、前記投影系と前記基板テーブルの間の空間、またはその両方に液浸液を供給しかつ閉じ込めるように前記流体ハンドリング構造が構成されることを特徴とする上記39に記載のリソグラフィ装置。
41.上記1ないし38のいずれかに記載の流体ハンドリング構造を使用し、
前記流体ハンドリング構造または投影系と、基板または基板を支持する基板テーブルとの間、またはその両方の間の空間に液体を供給し、
前記基板の目標部分上にパターン付与されたビームを投影することを含むデバイス製造方法。