以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る露光装置を示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージMSTと、基板Pを保持して移動可能な基板ステージPSTと、マスクステージMSTに保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに保持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。また、制御装置CONTには、露光処理に関する各種情報を記憶した記憶装置MRYが接続されているとともに、制御装置CONTに対して露光処理に関する各種情報を入力可能な入力装置INPが接続されている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、投影光学系PLの像面側における露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たすための液浸機構1を備えている。液浸機構1は、光路空間K1の近傍に設けられ、液体LQを供給する供給口12及び液体LQを回収する回収口22を有する第1ノズル部材70と、第1供給管13、及び第1ノズル部材70に設けられた供給口12を介して液体LQを供給する液体供給装置11と、第1ノズル部材70に設けられた回収口22、及び回収管23を介して液体LQを回収する液体回収装置21とを備えている。後に詳述するように、第1ノズル部材70の内部には、供給口12と第1供給管13とを接続する流路(供給流路)14が設けられているとともに、回収口22と回収管23とを接続する流路(回収流路)24が設けられている。第1ノズル部材70は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1を囲むように環状に形成されている。
また、本実施形態の露光装置EXは、投影光学系PLの投影領域ARを含む基板P上の一部に、投影領域ARよりも大きく且つ基板Pよりも小さい液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する局所液浸方式を採用している。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板Pに転写している間、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1と、投影光学系PLの像面側に配置された基板Pとの間の露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たし、投影光学系PLと光路空間K1に満たされた液体LQとを介してマスクMを通過した露光光ELを基板Pに照射することによって、マスクMのパターン像を基板Pに投影露光する。制御装置CONTは、液浸機構1の液体供給装置11を使って液体LQを所定量供給するとともに、液体回収装置21を使って液体LQを所定量回収することで、光路空間K1を液体LQで満たし、基板P上に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。
なお、以下の説明においては、投影光学系PLと基板Pとが対向している状態で光路空間K1が液体LQで満たされている場合を主に説明しているが、基板P以外の物体(例えば基板ステージPSTの上面)が投影光学系PLと対向している状態で光路空間K1が液体LQで満たされている場合も同様である。
また、露光装置EXは、気体を吹き出す気体供給機構3を備えている。気体供給機構3は、第1ノズル部材70近傍に設けられ、気体を吹き出す吹出口32を有する第2ノズル部材30と、第2供給管33、及び第2ノズル部材30に設けられた吹出口32を介して気体を吹き出す気体供給装置31とを備えている。後に詳述するように、第2ノズル部材30の内部には、吹出口32と第2供給管33とを接続する流路(供給流路)34が設けられている。第2ノズル部材30は、光路空間K1及び第1ノズル部材70を囲むように環状に形成されており、液浸領域LRの周囲から均一に気体が吹き出される。また、露光装置EXは、回収口22と吹出口32との間に設けられ、吹出口32から吹き出された気体の少なくとも一部を排気する排気口42を備えている。
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(非走査方向)、X軸及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ等の基材上に感光材(フォトレジスト)のような膜部材を塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
露光装置EXは、床面上に設けられたベースBPと、そのベースBP上に設けられたメインコラム9とを備えている。メインコラム9には、内側に向けて突出する上側段部7及び下側段部8が形成されている。照明光学系ILは、マスクステージMSTに保持されているマスクMを露光光ELで照明するものであって、メインコラム9の上部に固定された支持フレーム10により支持されている。
照明光学系ILは、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び露光光ELによるマスクM上の照明領域を設定する視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
本実施形態においては、液体LQとして純水が用いられる。純水はArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能である。マスクステージMSTは、マスクMを真空吸着(又は静電吸着)により保持する。マスクステージMSTの下面には非接触軸受である気体軸受(エアベアリング)85が複数設けられている。マスクステージMSTは、エアベアリング85によりマスクステージ定盤2の上面(ガイド面)に対して非接触支持されている。マスクステージMST及びマスクステージ定盤2の中央部にはマスクMのパターン像を通過させる開口部がそれぞれ形成されている。マスクステージ定盤2は、メインコラム9の上側段部7に防振装置86を介して支持されている。すなわち、マスクステージMSTは、防振装置86及びマスクステージ定盤2を介してメインコラム9の上側段部7に支持された構成となっている。防振装置86によって、メインコラム9の振動がマスクステージMSTを支持するマスクステージ定盤2に伝わらないように、マスクステージ定盤2とメインコラム9とが振動的に分離されている。
マスクステージMSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含むマスクステージ駆動装置MSTDの駆動により、マスクMを保持した状態で、マスクステージ定盤2上において、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微少回転可能である。マスクステージMST上には移動鏡81が設けられている。また、移動鏡81に対向する位置にはレーザ干渉計82が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及びθZ方向の回転角(場合によってはθX、θY方向の回転角も含む)はレーザ干渉計82によりリアルタイムで計測される。レーザ干渉計82の計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計82の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動し、マスクステージMSTに保持されているマスクMの位置制御を行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、複数の光学素子で構成されており、それら光学素子は鏡筒PKで保持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4、1/5、あるいは1/8の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1は鏡筒PKより露出している。
投影光学系PLを保持する鏡筒PKの外周にはフランジPFが設けられており、投影光学系PLはフランジPFを介して鏡筒定盤5に支持されている。鏡筒定盤5は、メインコラム9の下側段部8に防振装置87を介して支持されている。すなわち、投影光学系PLは、防振装置87及び鏡筒定盤5を介してメインコラム9の下側段部8に支持された構成となっている。また、防振装置87によって、メインコラム9の振動が投影光学系PLを支持する鏡筒定盤5に伝わらないように、鏡筒定盤5とメインコラム9とが振動的に分離されている。
基板ステージPSTは、基板Pを保持する基板ホルダPHを有しており、基板ホルダPHを支持して移動可能である。基板ホルダPHは、例えば真空吸着等により基板Pを保持する。基板ステージPST上には凹部93が設けられており、基板Pを保持するための基板ホルダPHは凹部93に配置されている。そして、基板ステージPSTのうち凹部93以外の上面94は、基板ホルダPHに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面となっている。
基板ステージPSTの下面には非接触軸受である気体軸受(エアベアリング)88が複数設けられている。基板ステージPSTは、エアベアリング88により基板ステージ定盤6の上面(ガイド面)に対して非接触支持されている。基板ステージ定盤6は、ベースBP上に防振装置89を介して支持されている。また、防振装置89によって、ベースBP(床面)やメインコラム9の振動が基板ステージPSTを支持する基板ステージ定盤6に伝わらないように、基板ステージ定盤6とメインコラム9及びベースBP(床面)とが振動的に分離されている。
基板ステージPSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDの駆動により、基板Pを基板ホルダPHを介して保持した状態で、基板ステージ定盤6上でXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。更に基板ステージPSTは、Z軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能である。したがって、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板ステージPSTの側面には移動鏡83が設けられている。また、移動鏡83に対向する位置にはレーザ干渉計84が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計84によりリアルタイムで計測される。また、露光装置EXは、基板ステージPSTに保持されている基板Pの表面の面位置情報を検出する斜入射方式のフォーカス・レベリング検出系を備えている。レーザ干渉計84の計測結果は制御装置CONTに出力される。フォーカス・レベリング検出系の検出結果も制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDを駆動し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角(θX、θY)を制御して、基板Pの表面を投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面に合わせ込むとともに、レーザ干渉計84の計測結果に基づいて、基板PのX軸方向、Y軸方向、及びθZ方向における位置制御を行う。
液浸機構1の液体供給装置11は、液体LQを収容するタンク、加圧ポンプ、供給する液体LQの温度を調整する温度調整装置、及び液体LQ中の異物を取り除くフィルタユニット等を備えている。液体供給装置11には第1供給管13の一端部が接続されており、第1供給管13の他端部は第1ノズル部材70に接続されている。液体供給装置11の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。なお、液体供給装置11のタンク、加圧ポンプ、温度調整機構、フィルタユニット等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場等の設備を代用してもよい。
また、第1供給管13の途中には、液体供給装置11から送出され、投影光学系PLの像面側に供給される液体LQの単位時間当たりの量を制御するマスフローコントローラと呼ばれる流量制御器19が設けられている。流量制御器19による液体供給量の制御は制御装置CONTの指令信号のもとで行われる。
液浸機構1の液体回収装置21は、真空ポンプ等の真空系、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。液体回収装置21には回収管23の一端部が接続されており、回収管23の他端部は第1ノズル部材70に接続されている。液体回収装置21の液体回収動作は制御装置CONTにより制御される。なお、液体回収装置21の真空系、気液分離器、タンク等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場等の設備を代用してもよい。
気体供給機構3の気体供給装置31は、ケミカルフィルタやパーティクル除去フィルタ等を含むフィルタユニットを備えており、フィルタユニットを介したクリーンな気体を供給可能である。気体供給装置31は、露光装置EXが収容されたチャンバ内部の気体とほぼ同じ気体を供給する。本実施形態においては、気体供給装置31は、空気(ドライエア)を供給する。なお、気体供給装置31から供給される気体としては、窒素ガス(ドライ窒素)等であってもよい。気体供給装置31には第2供給管33の一端部が接続されており、第2供給管33の他端部は第2ノズル部材30に接続されている。気体供給装置31の気体供給動作は制御装置CONTにより制御される。
また、気体供給機構3は、第2供給管33の流路の途中に設けられ、気体供給装置31から第2ノズル部材30に供給される気体の単位時間当たりの量を調整可能な調整装置38を備えている。調整装置38は、例えばバルブ機構を含んで構成されており、調整装置38の動作は制御装置CONTに制御される。制御装置CONTは、調整装置38のバルブの開度を調整することによって、第2ノズル部材30に対する単位時間当たりの気体供給量を調整することができる。制御装置CONTは、調整装置38を使って、第2ノズル部材30に対する単位時間当たりの気体供給量を調整することによって、第2ノズル部材30に設けられた吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整可能である。なお、調整装置38は、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整可能であれば任意の構成を採用可能である。
第1ノズル部材70は第1支持機構91に支持されており、第1支持機構91はメインコラム9の下側段部8に接続されている。第1ノズル部材70を第1支持機構91を介して支持しているメインコラム9と、投影光学系PLの鏡筒PKをフランジPFを介して支持している鏡筒定盤5とは、防振装置87を介して振動的に分離されている。したがって、第1ノズル部材70で発生した振動が投影光学系PLに伝達されることは防止されている。また、メインコラム9と、基板ステージPSTを支持している基板ステージ定盤6とは、防振装置89を介して振動的に分離されている。したがって、第1ノズル部材70で発生した振動が、メインコラム9及びベースBPを介して基板ステージPSTに伝達されることが防止されている。また、メインコラム9と、マスクステージMSTを支持しているマスクステージ定盤2とは、防振装置86を介して振動的に分離されている。したがって、第1ノズル部材70で発生した振動がメインコラム9を介してマスクステージMSTに伝達されることが防止されている。
第2ノズル部材30は第2支持機構92に支持されており、第2支持機構92はメインコラム9の下側段部8に接続されている。メインコラム9と鏡筒定盤5とは防振装置87を介して振動的に分離されているため、第2ノズル部材30で発生した振動が投影光学系PLに伝達されることが防止されている。また、メインコラム9と基板ステージ定盤6とは防振装置89を介して振動的に分離されているため、第2ノズル部材30で発生した振動が基板ステージPSTに伝達されることが防止されている。また、メインコラム9とマスクステージ定盤2とは防振装置86を介して振動的に分離されているため、第2ノズル部材30で発生した振動がマスクステージMSTに伝達されることが防止されている。
また、第2支持機構92は、第2ノズル部材30を駆動する駆動装置95を備えている。駆動装置95は、第2支持機構92に支持されている第2ノズル部材30をX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。駆動装置95は、例えばローレンツ力で駆動するボイスコイルモータやリニアモータ等によって構成されている。ローレンツ力で駆動するボイスコイルモータ等はコイル部とマグネット部とを有し、それらコイル部とマグネット部とは非接触状態で駆動する。そのため、第2ノズル部材30を駆動する駆動装置95を、ボイスコイルモータ等のローレンツ力で駆動する駆動装置によって構成することで、振動の発生を抑制することができる。
駆動装置95の動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、駆動装置95を駆動することにより、第2支持機構92に支持されている第2ノズル部材30の位置及び姿勢(傾き)を調整可能である。また、第2ノズル部材30が駆動装置95によって駆動されるので、第2ノズル部材30に設けられた吹出口32は、第1ノズル部材70に設けられた回収口22に対して可動となっている。
次に、図2〜図5を参照しながら、第1ノズル部材70及び第2ノズル部材30について説明する。図2は第1ノズル部材70及び第2ノズル部材30近傍を示す概略斜視図の一部破断図、図3は第1ノズル部材70及び第2ノズル部材30を下側から見た斜視図、図4はYZ平面と平行な側断面図、図5はXZ平面と平行な側断面図である。
第1ノズル部材70は、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1の近傍に設けられている。第1ノズル部材70は環状部材であって、基板P(基板ステージPST)の上方において第1光学素子LS1を囲むように配置されている。第1ノズル部材70は、その中央部に投影光学系PL(第1光学素子LS1)を配置可能な穴部70Hを有している。第1ノズル部材70は、複数の部材を組み合わせて構成されており、全体として平面視略円形状に形成されている。なお、第1ノズル部材70は一つの部材によって構成されていてもよい。第1ノズル部材70は、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ジュラルミン、及びこれらを含む合金によって形成可能である。
また、第1ノズル部材70の少なくとも一部には、液体LQへの不純物の溶出を抑えるための表面処理が施されている。そのような表面処理としては、第1ノズル部材70に酸化クロムを付着する処理が挙げられ、例えば株式会社神鋼環境ソリューションの「GOLDEP」処理あるいは「GOLDEP WHITE」処理が挙げられる。本実施形態においては、第1ノズル部材70のうち液体LQと接触する液体接触面の少なくとも一部に、上述の表面処理が施されている。
第1ノズル部材70は、傾斜部70Bと、光路空間K1に対して傾斜部70Bの上端部より外側に張り出した張出部70Aと、光路空間K1に対して傾斜部70Bの下端部の内側に設けられた底板部70Dとを有している。第1光学素子LS1は、傾斜部70Bによって形成された穴部70Hの内側に配置される。傾斜部70Bの内側面(穴部70Hの内側面)70Tは、投影光学系PLの第1光学素子LS1の側面LTと対向して、第1光学素子LS1の側面LTに沿うようにすり鉢状に形成されている。具体的には、第1光学素子LS1の側面LT及び第1ノズル部材70の傾斜部70Bの内側面70Tは、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜している。本実施形態においては、第1光学素子LS1の側面LT及び第1ノズル部材70の傾斜部70Bの内側面70Tは、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面(すなわちXY平面)に対して所定角度(例えば、ほぼ45°)傾斜している。そして、傾斜部70Bの内側面70Tと第1光学素子LS1の側面LTとの間には所定のギャップG1が設けられている。ギャップG1が設けられていることにより、第1ノズル部材70で発生した振動が、投影光学系PL(第1光学素子LS1)側に直接的に伝達することが防止されている。また、傾斜部70Bの内側面70Tは、液体LQに対して撥液性(撥水性)となっており、投影光学系PLの第1光学素子LS1の側面LTと傾斜部70Bの内側面70Tとの間のギャップG1への液体LQの浸入が抑制されている。なお、傾斜部70Bの内側面70Tを撥液性にするための撥液化処理としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))等のフッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料、シリコン系樹脂材料等の撥液性材料を被覆する処理等が挙げられる。
底板部70Dの一部は、Z軸方向に関して、投影光学系PLの第1光学素子LS1の下面T1と基板P(基板ステージPST)との間に配置されている。また、底板部70Dの中央部には、露光光ELが通過する開口部74が形成されている。開口部74は、露光光ELが照射される投影領域ARよりも大きく形成されている。これにより、投影光学系PLを通過した露光光ELは、底板部70Dに遮られることなく、基板P上に到達できる。本実施形態においては、開口部74は平面視略十字状に形成されている。
第1ノズル部材70のうち、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面と対向する下面75は、XY平面と平行な平坦面となっている。本実施形態における第1ノズル部材70の下面75とは、底板部70Dの下面及び傾斜部70Bの下面を含むものであり、底板部70Dの下面と傾斜部70Bの下面とは連続している。ここで、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面はXY平面とほぼ平行であるため、第1ノズル部材70の下面75は、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面と対向するように、且つ基板Pの表面と略平行となるように設けられた構成となっている。以下の説明においては、第1ノズル部材70の下面75を適宜、「ランド面75」と称する。
基板Pの表面と第1光学素子LS1の下面T1との距離は、基板Pの表面とランド面75との距離よりも長くなっている。すなわち、第1光学素子LS1の下面T1は、ランド面75より高い位置に設けられている。そして、ランド面75には光路空間K1に満たされた液体LQが接触するようになっており、第1光学素子LS1の下面T1にも光路空間K1に満たされた液体LQが接触するようになっている。すなわち、第1ノズル部材70のランド面75及び第1光学素子LS1の下面T1は、光路空間K1に満たされた液体LQと接触する液体接触面となっている。
ランド面75は、第1ノズル部材70のうち、基板ステージPSTに保持された基板Pに最も近い位置に設けられており、投影光学系PLの下面T1と基板Pとの間において、投影領域ARを囲むように設けられている。また、底板部70Dは、第1光学素子LS1の下面T1及び基板P(基板ステージPST)とは接触しないように設けられている。そして、第1光学素子LS1の下面T1と底板部70Dの上面との間には、所定のギャップG2を有する空間が設けられている。以下の説明においては、第1光学素子LS1の下面T1と底板部70Dの上面との間の空間を含む第1ノズル部材70の内側の空間を適宜、「内部空間G2」と称する。
第1ノズル部材70は、液体LQを供給する供給口12、及び液体LQを回収する回収口22を備えている。また、第1ノズル部材70は、供給口12に接続する供給流路14、及び回収口22に接続する回収流路24を備えている。また、図2〜図5においてはその図示を省略若しくは簡略しているが、供給流路14は第1供給管13の他端部と接続され、回収流路24は回収管23の他端部と接続される。
供給流路14は、第1ノズル部材70の傾斜部70Bの内部を傾斜方向に沿って貫通するスリット状の貫通孔によって形成されている。供給流路14は、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜しており、本実施形態においては、傾斜部70Bの内側面70Tとほぼ平行に設けられている。また、本実施形態においては、供給流路14は、光路空間K1(投影領域AR)に対してY軸方向両側のそれぞれに設けられている。そして、供給流路(貫通孔)14の上端部と第1供給管13の他端部とが接続され、これにより、供給流路14が第1供給管13を介して液体供給装置11に接続される。一方、供給流路14の下端部は、第1光学素子LS1と底板部70Dとの間の内部空間G2に接続されており、この供給流路14の下端部が供給口12となっている。供給口12は、露光光ELの光路空間K1の外側において、光路空間K1を挟んだY軸方向両側のそれぞれの所定位置に設けられている。供給口12は、内部空間G2に液体LQを供給可能である。
また、第1ノズル部材70は、内部空間G2の気体を外部空間(大気空間)K3に排出(排気)する排出口16と、排出口16に接続する排出流路15とを備えている。排出流路15は、第1ノズル部材70の傾斜部70Bの内部を傾斜方向に沿って貫通するスリット状の貫通孔によって形成されている。排出流路15は、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜しており、本実施形態においては、傾斜部70Bの内側面70Tとほぼ平行に設けられている。また、本実施形態においては、排出流路15は、光路空間K1(投影領域AR)に対してX軸方向両側のそれぞれに設けられている。そして、排出流路(貫通孔)15の上端部は外部空間(大気空間)K3に接続されており、大気開放された状態となっている。一方、排出流路15の下端部は、第1光学素子LS1と底板部70Dとの間の内部空間G2に接続されており、この排出流路15の下端部が排出口16となっている。排出口16は、露光光ELの光路空間K1の外側において、光路空間K1を挟んだX軸方向両側のそれぞれの所定位置に設けられている。排出口16は、内部空間G2の気体、すなわち投影光学系PLの像面周囲の気体と接続されている。したがって、内部空間G2の気体は、排出口16を介して、排出流路15の上端部より、外部空間(大気空間)K3に排出(排気)可能となっている。
なお、内部空間G2に接続された排気流路15の上端を吸引装置と接続して、内部空間G2の気体を強制的に排出するようにしてもよい。
底板部70Dは、供給口12から供給された液体LQの流れをガイドするガイド部材としての機能を有している。底板部70Dは、供給口12から供給された液体LQが、排出口16が設けられている位置又はその近傍に向かって流れるようにガイドする。図2及び図3に示すように、底板部70Dは、供給口12が設けられた位置から、露光光ELの光路空間K1(投影領域AR)に向かう流れを形成する第1ガイド部17Aと、露光光ELの光路空間K1から、排出口16が設けられた位置に向かう流れを形成する第2ガイド部17Bとを有している。すなわち、第1ガイド部17Aによって、供給口12から露光光ELの光路空間K1に向かって液体LQを流す流路18Aが形成され、第2ガイド部17Bによって、露光光ELの光路空間K1から排出口16に向かって液体LQを流す流路18Bが形成されている。
第1ガイド部17Aによって形成される流路18Aと、第2ガイド部17Bによって形成される流路18Bとは交差している。第1ガイド部17Aによって形成された流路18Aは、液体LQをほぼY軸方向に沿って流し、第2ガイド部17Bによって形成された流路18Bは、液体LQをほぼX軸方向に沿って流す。そして、第1ガイド部17Aと第2ガイド部17Bとによって、平面視略十字状の開口部74が形成されている。露光光ELは、略十字状に形成された開口部74のほぼ中央部を通過するように設けられている。すなわち、露光光ELの光路空間K1(投影領域AR)は、第1ガイド部17Aによって形成された流路18Aと、第2ガイド部17Bによって形成された流路18Bとの交差部に設定されている。本実施形態においては、第1ガイド部17Aによって形成された流路18Aと、第2ガイド部17Bによって形成された流路18Bとはほぼ直交している。
なお、底板部70Bの開口部74は必ずしも十字形状である必要はなく、例えば露光光ELの断面形状に合わせた矩形であってもよい。
第1ノズル部材70は、その内部に、傾斜部70Bの下面において下向きに開口する空間部24を有している。回収口22は、空間部24の開口部に相当する。また、空間部24は回収流路として機能する。空間部24は、光路空間K1に対して供給流路14及び排出流路15の外側に設けられている。そして、回収流路(空間部)24の一部と回収管23の他端部とが第1ノズル部材70の張出部70Aにおいて接続されている。
回収口22は、基板ステージPSTに保持された基板Pの上方において、その基板Pの表面と対向する位置に設けられている。基板ステージPSTに保持された基板Pの表面と第1ノズル部材70に設けられた回収口22とは所定距離だけ離れている。回収口22は、投影光学系PLの像面側の光路空間K1に対して供給口12の外側に設けられており、光路空間K1(投影領域AR)、ランド面75、及び供給口12を囲むように環状に形成されている。すなわち、光路空間K1に対して回収口22の内側に液体LQを供給する供給口12が設けられた構成となっている。本実施形態においては、回収口22は平面視円環状に形成されている。
第1ノズル部材70は、回収口22を覆うように配置され、複数の孔を有する多孔部材25を備えている。本実施形態においては、多孔部材25は複数の孔を有したメッシュ部材により構成されている。多孔部材25としては、例えば略六角形状の複数の孔からなるハニカムパターンを形成されたメッシュ部材によって構成可能である。多孔部材25は、ステンレス鋼(例えばSUS316)などからなる多孔部材の基材となる板部材に孔あけ加工を施すことで形成可能である。また、回収口22に、複数の薄板状の多孔部材25を重ねて配置することも可能である。
また、本実施形態においては、多孔部材25は液体LQに対して親液性(親水性)を有している。多孔部材25を親液性にするための親液化処理(表面処理)としては、多孔部材25に酸化クロムを付着する処理が挙げられる。具体的には、上述したような「GOLDEP」処理あるいは「GOLDEP WHITE」処理が挙げられる。また、このような表面処理を施すことにより、多孔部材25から液体LQへの不純物の溶出が抑えられる。本実施形態の多孔部材25は薄板状に形成されており、例えば100μm程度の厚みを有するものである。なお、多孔部材25は、例えばセラミックス製の多孔体によって構成することも可能である。
多孔部材25は、基板ステージPSTに保持された基板Pと対向する下面25Bを有している。多孔部材25の基板Pと対向する下面25Bはほぼ平坦である。多孔部材25は、その下面25Bが基板ステージPSTに保持された基板Pの表面(すなわちXY平面)とほぼ平行になるように回収口22に設けられている。液体LQは、回収口22に配置された多孔部材25を介して回収される。また、回収口22は、光路空間K1を囲むように環状に形成されているため、その回収口22に配置された多孔部材25は、光路空間K1を囲むように環状に形成されている。
多孔部材25は、その下面25Bとランド面75とがZ軸方向においてほぼ同じ位置(高さ)になるように、且つ下面25Bとランド面75とが連続するように、回収口22に設けられている。すなわち、ランド面75は、多孔部材25の下面25Bと連続的に形成されている。
次に、気体供給機構3について説明する。気体供給機構3の第2ノズル部材30は、第1ノズル部材70とは別の部材であって、第1ノズル部材70の近傍に設けられ、光路空間K1に対して第1ノズル部材70よりも外側に設けられている。第2ノズル部材30は環状部材であって、基板P(基板ステージPST)の上方において、光路空間K1及び第1ノズル部材70を囲むように配置されている。第2ノズル部材30は、その中央部に第1ノズル部材70を配置可能な穴部30Hを有している。第2ノズル部材30は、複数の部材を組み合わせて構成されており、全体として平面視略円形状に形成されている。なお、第2ノズル部材30は一つの部材によって構成されていてもよい。第2ノズル部材30は、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ジュラルミン、及びこれらを含む合金によって形成可能である。
第2ノズル部材30の穴部30Hの内側面30Tは、第1ノズル部材70の傾斜部70Bの側面70Sと対向しており、傾斜部70Bの側面70Sに沿うようにすり鉢状に形成されている。具体的には、第1ノズル部材70の側面70S及び第2ノズル部材30の内側面30Tのそれぞれは、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜している。本実施形態においては、第1ノズル部材70の側面70S及び第2ノズル部材30の内側面30Tのそれぞれは、第1ノズル部材70Tの傾斜部70Bの内側面70Tとほぼ平行に設けられている。すなわち、第1ノズル部材70の側面70S及び第2ノズル部材30の内側面30Tのそれぞれは、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面(XY平面)に対してほぼ45°傾斜している。そして、第1ノズル部材70の側面70Sと第2ノズル部材30の内側面30Tとの間には所定のギャップG3を有する空間が設けられている。
また、本実施形態においては、第1ノズル部材70の張出部70Aは第2ノズル部材30の上方に配置されており、張出部70Aの下面は、第2ノズル部材30の上面の一部と対向している。本実施形態においては、張出部70Aの下面及び第2ノズル部材30の上面はXY平面とほぼ平行に設けられており、張出部70Aの下面と第2ノズル部材30の上面との間には所定のギャップG4が設けられている。
ギャップG3及びギャップG4が設けられていることにより、第1ノズル部材70及び第2ノズル部材30の一方で発生した振動が、他方に直接的に伝達することが防止されているとともに、第2ノズル部材30は、駆動装置95によって、第1ノズル部材70に衝突することなく、移動することができる。
第2ノズル部材30は、気体を吹き出す吹出口32を備えている。第2ノズル部材30は、基板ステージPSTに保持された基板Pの上方において、その基板Pの表面と対向する下面35を有しており、吹出口32は下面35に設けられている。したがって、吹出口32は、基板ステージPSTに保持された基板Pの上方において、その基板Pの表面に対向する位置に設けられた構成となっている。基板ステージPSTに保持された基板Pの表面と第2ノズル部材30の下面35に設けられた吹出口32とは所定距離だけ離れている。
吹出口32は、投影光学系PLの像面側の光路空間K1に対して第1ノズル部材70に設けられた回収口22の外側に設けられており、光路空間K1(投影領域AR)、及び第1ノズル部材70の回収口22を囲むように環状に形成されている。本実施形態においては、吹出口32は平面視円環状に形成され、所定のスリット幅D1を有するスリット状に形成されている。
第2ノズル部材30の下面35のうち、光路空間K1に対して吹出口32より内側の第1領域35Aは、XY平面とほぼ平行、すなわち基板ステージPSTに保持された基板Pの表面とほぼ平行に設けられた平坦面となっている。そして、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aと基板ステージPSTに保持された基板Pとの間には所定のギャップG5が設けられている。
また、本実施形態においては、第2ノズル部材30の下面35のうち、光路空間K1に対して吹出口32より外側の第2領域35Bも、XY平面とほぼ平行、すなわち基板ステージPSTに保持された基板Pの表面とほぼ平行に設けられた平坦面となっている。そして、第2ノズル部材30の下面35の第2領域35Bと基板ステージPSTに保持された基板Pとの間には所定のギャップG6が設けられている。本実施形態においては、ギャップG6はギャップG5より小さく、第1領域35Aと第2領域35Bとの間には段差が設けられている。
このように、第2ノズル部材30の下面35と基板ステージPSTに保持される基板Pの表面とは離れている。そして、本実施形態においては、第2ノズル部材30の下面35(第1領域35A)は、第1ノズル部材70のランド面75及び回収口22に設けられた多孔部材25の下面25Bとほぼ同じ高さか、わずかに高い位置に設けられている。
また、第1ノズル部材70の側面70Sと第2ノズル部材30の内側面30Tとの距離(すなわちギャップG3)は、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aと基板Pとの距離(すなわちギャップG5)よりも大きく設けられている。
また、光路空間K1に対して第2ノズル部材30の外側の部分は、Z軸方向に関してわずかに薄肉化されており、第2ノズル部材30の下面35のうち、第2領域35Bと、第2領域35Bよりも光路空間K1に対して外側の領域との間には段差36が設けられている。
第2ノズル部材30の下面35は液体LQに対して撥液性(撥水性)を有している。第2ノズル部材30の下面35を撥液性にするための撥液化処理としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))等のフッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料、シリコン系樹脂材料等の撥液性材料を被覆する等の処理が挙げられる。本実施形態においては、第2ノズル部材30の下面35全体に撥液性材料が被覆されており、下面35全体が撥液性を有している。なお、下面35のうち第1領域35Aのみなど、下面35の一部のみに撥液性材料が被覆されていて、下面35の一部のみが撥液性を有していてもよい。
また、第2ノズル部材30の内側面30T及び第1ノズル部材70の側面70Sの少なくとも一方に撥液性材料を被覆して撥液性を付与してもよい。また、第2ノズル部材30の表面全体に撥液性材料を被覆してもよい。
第2ノズル部材30は、吹出口32に気体を供給する供給流路34を有している。供給流路34は第2ノズル部材30の内部に設けられており、その下端部は吹出口32に接続されている。また、供給流路34の一部には第2供給管33の他端部が接続されている。
供給流路34は、吹出口32に接続する第1流路部34Aと、第1流路部34Aよりも大きいバッファ空間37を含む第2流路部34Bとを有している。第2流路部34Bは、光路空間K1に対して第1流路部34Aの外側に設けられており、第2供給管33と接続されている。第1流路部34Aは、傾斜領域と、光路空間K1に対して傾斜領域よりも外側に設けられた水平領域とを有している。第1流路部34Aの傾斜領域は、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて、すなわち光路空間K1に近づくにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜している。そして、第1流路部34Aの傾斜領域の下端部が吹出口32となっている。本実施形態においては、第1流路部34Aの傾斜領域は、第2ノズル部材30の内側面30Tとほぼ平行に設けられている。すなわち、第1流路部34Aの傾斜領域は、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面(XY平面)に対してほぼ45°傾斜している。第1流路部34Aの水平領域は、XY平面とほぼ平行に設けられており、第1流路部34Aの傾斜領域の上端部と第2流路部34Bのバッファ空間37とを接続している。
第1流路部34Aの傾斜領域は、環状のスリット状に形成された吹出口32に対応するように、XY平面に沿った断面視において環状に形成されており、吹出口32のスリット幅D1とほぼ同じ幅D1を一様に有したスリット状の流路である。第1流路部34Aの水平領域は傾斜領域の上端部に連続するように設けられ、吹出口32のスリット幅D1とほぼ同じ幅D1を一様に有したスリット状の流路である。バッファ空間37は、光路空間K1に対して第1流路部34Aの水平領域の外側に設けられ、第1流路部34Aの水平領域を囲むように環状に形成された空間であり、第1流路部34Aの幅D1よりも十分に大きい幅D2を一様に有している。
すなわち、供給流路34は、Z軸方向において幅D2を有するバッファ空間37を含む第2流路部34Bと、第2流路部34Bよりも流路下流側に設けられ、幅D2よりも小さい幅D1を有する第1流路部34Aとを有した構成となっている。第1流路部34Aは、流路上流側に設けられたバッファ空間37よりも狭められた構成となっている。
バッファ空間37を含む第2流路部34Bには第2供給管33の他端部が接続される。本実施形態においては、供給流路34の第2流路部34Bと第2供給管33との接続位置は、第2ノズル部材30の側面30Sにおいて周方向(θZ方向)にほぼ等間隔で複数設定されており、それら複数の接続位置のそれぞれに第2供給管33の他端部が接続されている。なお図では、供給流路34の第2供給管33との接続位置は4箇所のように示されているが、例えば8箇所など任意の複数の位置に設定されてよい。吹出口32と気体供給装置31とは、供給流路34及び第2供給管33を介して接続されている。
気体供給装置31から送出された気体は、第2供給管33を介して供給流路34のうちバッファ空間37を含む第2流路部34Bに流入した後、第2流路部34B及び第1流路部34Aを介して吹出口32に供給される。第2流路部34B及び第1流路部34Aを含む供給流路34より吹出口32に供給された気体は、吹出口32より第2ノズル部材30の外部に吹き出される。上述のように、第1流路部34Aの傾斜領域は、光路空間K1に近づくにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるようにほぼ45°傾斜しており、第1流路部34Aの傾斜領域の下端部に設けられた吹出口32は、光路空間K1に向けて傾斜方向に基板Pに対して気体を吹き出す。
バッファ空間37は、気体供給装置31から第2供給管33を介して供給された気体のエネルギー(圧力、流速など)を分散して均一化し、バッファ空間37から第1流路部34Aに流入する気体の単位時間当たりの量(流速)を、スリット状の流路である第1流路部34Aの各位置において均一化する。バッファ空間37を設けたことにより、気体供給機構3は、バッファ空間37を含む第2流路部34B及び第1流路部34Aを介して吹出口32に供給された気体を、スリット状の吹出口32からほぼ均一に吹き出すことができる。つまり、バッファ空間37が設けられていない場合、第1流路部34Aを流れる単位時間当たりの気体の量は、第2供給管33の他端部が接続された位置近傍のほうがその他の位置より多くなるため、所定長さに形成されたスリット状の吹出口32の各位置において吹き出される気体の単位時間当たりの吹き出し量(流速)が不均一となる場合がある。しかしながら、バッファ空間37を設けて第2供給管33から供給された気体のエネルギーを分散して均一化することによって、第1流路部34Aを介してスリット状の吹出口32の各位置に供給される気体の流量(流速)を均一化することができ、気体は、円環状のスリット状の吹出口32の各位置においてほぼ均一な吹き出し量で吹き出される。
なお、本実施形態においては、基板ステージPSTに保持されている基板Pの表面の面位置情報を検出するフォーカス・レベリング検出系は、光路空間K1に対して吹出口32よりも外側で基板Pの面位置情報を検出するようになっている。具体的には、フォーカス・レベリング検出系は、光路空間K1の液体LQを介さずに、光路空間K1に対して吹出口32よりも外側の基板Pの表面に基板Pの面位置情報を検出するための検出光を照射するようになっている。図4には、フォーカス・レベリング検出系による検出光Laの照射位置が示されており、走査方向(X軸方向)に関して光路空間K1の両側のそれぞれの基板Pの表面に検出光Laが照射されるようになっている。
もちろん、特開2000−323404号公報に開示されているように、投影光学系PLから十分に離れた位置にフォーカス・レベリング検出系を設けて、基板Pの面位置情報を液体LQを介さずに検出してもよい。
次に、上述した構成を有する露光装置EXを用いてマスクMのパターン像を基板Pに露光する方法について説明する。
露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たすために、制御装置CONTは、液体供給装置11及び液体回収装置21のそれぞれを駆動する。制御装置CONTの制御のもとで液体供給装置11から送出された液体LQは、第1供給管13を流れた後、第1ノズル部材70の供給流路14を介して、供給口12より投影光学系PLの第1光学素子LS1と底板部70Dとの間の内部空間G2に供給される。内部空間G2に液体LQが供給されることにより、内部空間G2に存在していた気体部分は排出口16や開口部74を介して外部に排出される。したがって、内部空間G2に対する液体LQの供給開始時に、内部空間G2に気体が留まってしまうといった不都合を防止することができ、光路空間K1の液体LQ中に気体部分(気泡)が生成される不都合を防止することができる。
内部空間G2に供給された液体LQは、開口部74を介してランド面75と基板P(基板ステージPST)との間の空間に流入し、光路空間K1を満たす。このとき、制御装置CONTの制御のもとで駆動されている液体回収装置21は、単位時間当たり所定量の液体LQを回収している。ランド面75と基板Pとの間の空間の液体LQは、第1ノズル部材70の回収口22を介して回収流路24に流入し、回収管23を流れた後、液体回収装置21に回収される。
ここで、供給口12から内部空間G2に対して供給された液体LQは、第1ガイド部17Aにガイドされつつ露光光ELの光路空間K1(投影領域AR)に向かって流れた後、第2ガイド部17Bにガイドされつつ露光光ELの光路空間K1の外側に向かって流れるので、仮に液体LQ中に気体部分(気泡)が生成されても、液体LQの流れによって、その気泡を露光光ELの光路空間K1の外側に排出することができる。そして、本実施形態においては、底板部70Dは、液体LQを排出口16に向けて流すので、液体LQ中に存在している気体部分(気泡)は、排出口16を介して外部空間K3に円滑に排出される。
また、液浸機構1は、液体LQを底板部70Dの第1、第2ガイド部17A、17Bでガイドしつつ流すことにより、露光光ELの光路空間K1内において、渦流が生成されることを抑制している。これにより、露光光ELの光路空間K1中に気体部分(気泡)があっても、液体LQの流れによって、気体部分(気泡)を露光光ELの光路空間K1の外側に排出し、露光光ELの光路空間K1に気体部分(気泡)が留まることを防止することができる。
以上のように、制御装置CONTは、液浸機構1を使って、光路空間K1に液体LQを所定量供給するとともに基板P上の液体LQを所定量回収することで、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1を液体LQで満たし、基板P上に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。制御装置CONTは、光路空間K1を液体LQで満たした状態で、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しながらマスクMのパターン像を投影光学系PL及び光路空間K1の液体LQを介して基板P上に投影露光する。
制御装置CONTは、供給口12から液体LQを供給するときに、気体供給機構3の気体供給装置31を駆動する。制御装置CONTは、基板Pの露光中に吹出口32の気体吹き出し動作を継続する。すなわち、制御装置CONTは、液浸機構1を使って光路空間K1に対する液体LQの供給動作及び回収動作を行っている最中、あるいは、供給動作及び回収動作が停止していても、液浸領域LRが形成されている最中には、気体供給機構3の気体供給装置31の駆動を継続する。本実施形態では、制御装置CONTは、調整装置38を使って、第2ノズル部材30に設けられた吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整している。なお、気体の吹き出し量はほぼ一定であってもよいし、適宜変化させてもよい。
上述のように、本実施形態の露光装置EXは、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しつつ露光を行う走査型露光装置である。具体的には、露光装置EXは、マスクMと基板Pとを投影光学系PLに対してX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光する。このような走査型露光装置において、例えば走査速度(スキャン速度)の高速化に伴って、回収口22を介して液体LQを十分に回収することができず、液体LQが光路空間K1に対して回収口22よりも外側へ漏出する可能性がある。例えば、図6(A)の模式図に示す初期状態から、液浸領域LRに対して基板Pを+X方向に所定速度で所定距離だけスキャン移動し、図6(B)に示すように、液浸領域LRの液体LQとその外側の空間との界面LGが距離Lだけ移動したとする。スキャン速度を高速化した場合、液浸領域LRの液体LQとその外側の空間との界面LGの移動速度が大きくなったり、あるいは界面LGの形状が大きく変化して、液体LQが回収口22の外側に漏出する可能性がある。
本実施形態においては、制御装置CONTは、吹出口32を介した気体の吹き出し動作を行うことで、回収口22の近傍(光路空間K1に満たされた液体LQの界面LG近傍)に所定の気体の流れを生成し、その生成された気体の流れによって液体LQの漏出や、液浸領域LRの巨大化を防止する。
図7は気体供給機構3の動作を説明するための要部を拡大した模式図である。図7に示すように、制御装置CONTは、気体供給装置31を駆動して、光路空間K1に対して回収口22の外側に設けられた吹出口32を介して気体を吹き出することにより、光路空間K1に向かう気体の流れを生成する。すなわち、光路空間K1を囲むように形成された排気口42の内側に液体LQ(液浸領域LR)を閉じこめるように、吹出口32から光路空間K1に向かう気流を生成する。
具体的には、制御装置CONTは、気体供給装置31を駆動して、単位時間当たり所定量の気体の送出する。気体供給装置31から送出された気体は、第2供給管33を介して、第2ノズル部材30の供給流路34の第2流路部34Bに流入する。第2流路部34Bに流入した気体は、第2流路部34Bのバッファ空間37を介して第1流路部34Aに流入し、第1流路部34Aの下端部に設けられた吹出口32に供給される。上述のように、供給流路34の途中にバッファ空間37が設けられていることにより、バッファ空間37を含む供給流路34を介してスリット状の吹出口32に供給された気体は、吹出口32の各位置からほぼ均一に吹き出される。
吹出口32は、光路空間K1に向けて傾斜方向に基板Pに対して気体を吹き出すようになっており、吹出口32より吹き出された気体は、基板Pに吹き付けられた後、回収口22周縁近傍において光路空間K1に向かう気体の流れを生成する。光路空間K1に向かう気体の流れが生成されることにより、光路空間K1に満たされた液体LQの界面LGに外側から気体が供給される。これにより、光路空間K1に満たされた液体LQ(液体LQの界面LG)が、光路空間K1の外側に移動しようとしても、その気体の力によって、光路空間K1を含む所定空間K2の外側への液体LQの漏出を防止することができる。ここで、所定空間K2とは、投影光学系PLの像面側の空間であって、光路空間K1に対して排気口42よりも内側の空間を含む。
第2ノズル部材30は、光路空間K1に対して吹出口32より内側に、基板ステージPSTに保持された基板Pと対向する下面35の第1領域35Aを有している。基板Pに対向する位置に設けられた吹出口32より吹き出された気体は、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aと基板Pの表面との間に形成されたギャップG5の空間を、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aと基板Pの表面とにガイドされつつ光路空間K1に向かって流れる。このように、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aは、吹出口32より吹き出された気体を基板Pとの間でガイドするガイド面として機能する。
また、吹出口32より吹き出された気体の少なくとも一部は、排気口42から第1ノズル部材70の側面70Sと第2ノズル部材30の内側面30Tとの間のギャップG3の空間に流入するようになっている。そして、ギャップG3の空間に流入した気体は、第1ノズル部材70の張出部70Aの下面と第2ノズル部材30の上面との間のギャップG4の空間を介して、所定空間K2の外部空間(大気空間)K3に排気されるようになっている。すなわち、ギャップG3の空間及びギャップG4の空間は排気流路として機能し、回収口22と吹出口32との間の排気口42から流入した気体を効率的に排気するようになっている。
以下の説明においては、第1ノズル部材70と第2ノズル部材30との間のギャップG3の空間及びギャップG4の空間を合わせて適宜、「排気空間44」と称する。排気空間44のうち、ギャップG3の空間は光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるようにほぼ45°に傾斜している。そして、排気空間44の下端部が、吹出口32から吹き出された気体の少なくとも一部を排気する排気口42となっている。排気口42は、第1ノズル部材70の下端部と第2ノズル部材30の下端部との間、すなわち回収口22と吹出口32との間に設けられた構成となっている。
そして、ギャップG3の空間及びギャップG4の空間を含む排気空間44は外部空間(大気空間)K3と接続されている。したがって、光路空間K1を含む所定空間K2は、排気口42及び排気空間44を介して大気開放された構成となっている。
吹出口32から吹き出された気体の一部が排気口42より排気されることにより、回収口22近傍において、光路空間K1に向かって乱れの少ない気体の流れを良好に生成することができる。また、排気口42からの気体の排気圧を調整することにより、液体LQにかかる気体の圧力が過剰にならないように、液体LQにかかる気体の圧力を適宜調整することもできる。
また、第1ノズル部材70の側面70Sと第2ノズル部材30の内側面30Tとの間の距離(ギャップ)G3は、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aと基板Pとの間の距離(ギャップ)G5よりも大きく設けられているため、吹出口32より吹き出された気体を円滑に排気空間44に流すことができる。つまり、ギャップG3がギャップG5よりも小さい場合、吹出口32から吹き出された気体の一部を排気口42及び排気空間44を介して外部空間K3に十分に逃がすことができず、回収口22近傍において気流の乱れが発生する可能性がある。しかしながら、ギャップG3はギャップG5よりも大きいので、吹出口32から吹き出された気体が回収口22近傍などにおいてよどむことをより確実に防止することができる。
以上説明したように、光路空間K1に対して回収口22の外側に設けられた吹出口32から気体を吹き出すとともに、吹出口32から吹き出された気体の少なくとも一部を排気口42より排気することで、回収口22近傍に、液体LQが光路空間K1を含む所定空間K2の外側へ漏出することを防止するような気体の流れを生成することができる。したがって、光路空間K1を液体LQで満たした状態で投影光学系PLと基板Pとを相対移動させた場合においても、液体LQの漏出を防止することができる。また、光路空間K1に向かう気体の流れを生成することで、液浸領域LRの大きさ、形状の少なくとも一方を所望状態に維持することができ、露光装置EX全体のコンパクト化を図ることもできる。
また、上述のように、フォーカス・レベリング検出系が光路空間K1に対して吹出口32よりも外側で、光路空間K1の液体LQを介さずに基板Pの面位置情報を検出する構成の場合、吹出口32より吹き出された気体によって吹出口32よりも外側への液体LQの漏出を防止することで、フォーカス・レベリング検出系の検出精度を維持することができる。
また、吹出口32は基板Pに対向する位置に設けられているので、吹出口32より吹き出された気体を基板Pに吹き付けて光路空間K1に向かう所望の気体の流れを円滑に生成することができる。そして、吹出口32は光路空間K1に向けて傾斜方向に基板Pに対して気体を吹き出すので、光路空間K1に向かう所望の気体の流れを効率良く生成することができる。また、第2ノズル部材30は、吹出口32より吹き出された気体を基板Pとの間でガイドするガイド面として機能する下面35の第1領域35Aを有しているので、光路空間K1に向かう気体の流れを効率良く生成することができる。
また、吹出口32は光路空間K1を囲むように環状に形成されているので、光路空間K1を囲む外側の全ての方向から光路空間K1に向かう気体の流れを生成することができ、液体LQの漏出をより確実に防止することができる。また、吹出口32に気体を供給する供給流路34はバッファ空間37を有しているので、スリット状の吹出口32から均一に気体を吹き出すことができる。
また、第2ノズル部材30は、第1ノズル部材70の外側において、第1ノズル部材70を囲むように設けられているため、光路空間K1の液体LQが回収口22(第1ノズル部材70)よりも外側に漏出(あるいは飛散)しようとしても、第2ノズル部材30の吹出口32から気体を吹き出すことでその漏出(飛散)を抑制することができる。また、第2ノズル部材30の下面35は液体LQに対して撥液性であるため、光路空間K1の液体LQがギャップG5の空間を介して外側に漏出することを防止又は抑制することができる。
なお本実施形態においては、第2ノズル部材30の下面35において、ギャップG6がギャップG5より小さくなるように、第1領域35Aと第2領域35Bとの間には段差が設けられているが、ギャップG5とギャップG6とをほぼ同じにして、第1領域35Aと第2領域35Bとの間に段差が無い形態としてもよい。
なお本実施形態においては、吹出口32は光路空間K1に向けて傾斜方向に基板Pに対して気体を吹き出しているが、気体供給機構3は吹出口32の真下に気体を吹き出すようにしてもよい。こうすることによっても、基板Pに吹き付けられた気体は、下面35の第1領域35Aと基板Pの表面とにガイドされつつ、光路空間K1に向かって流れるので、液体LQの漏出を防止することができる。なおフォーカス・レベリング検出系を備えている場合、基板Pの面位置情報を検出するためにフォーカス・レベリング検出系が検出光Laを基板Pの表面に照射する位置は、基板Pの表面において吹出口32が気体を吹き付ける位置よりも、光路空間K1に対して外側であることが好ましい。
吹出口32より吹き出された気体の流れを基板Pとの間でガイドするガイド面として機能する第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aは平坦面であるが、第1領域35Aに、気体の流れをガイドするガイド部材としてフィン状の部材、突起状の部材の少なくとも一方を設けることも可能である。また、第1領域35Aに、気体の流れをガイドするガイド部として、溝(スリット)を形成してもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図8を参照しながら説明する。図8において、第2ノズル部材30の内側面30Tと下面35との接続部39は、断面視略円弧状に形成されている。このように、第2ノズル部材30の内側面30Tと下面35との接続部39を断面視略円弧状に形成することにより、吹出口32から吹き出され、下面35の第1領域35Aに沿って流れた気体の一部を、排気口42を介して排気空間44に円滑に流すことができる。したがって、回収口22近傍において光路空間K1に向かう所望の気体の流れを円滑に生成することができる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴的な部分は、調整装置38は、基板Pの液体接触面を形成する膜部材と液体LQとの親和性に応じて、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整する点にある。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図9(A)は基板Pの断面図の一例である。図9(A)において、基板Pは、基材100と、その基材100の上面100Aに設けられた膜部材101とを有している。基材100は半導体ウエハを含むものである。膜部材101は感光材(フォトレジスト)によって形成されており、基材100の上面100Aの中央部の殆どを占める領域に所定の厚みで被覆されている。なお、図9(A)において、基材100の上面100Aの周縁部の感光材(膜部材)101は除去されている。図9(A)においては、膜部材(感光材)101が基板Pの最上層に設けられており、この膜部材101が液浸露光時において液体LQと接触する液体接触面となる。
図9(B)は基板Pの別の例を示す図である。図9(B)において、基板Pは、膜部材101の表面を覆う第2膜部材102を有している。第2膜部材102はトップコート膜と呼ばれる保護膜である。図9(B)においては、第2膜部材(保護膜)102が基板Pの最上層に設けられており、この第2膜部材102が液浸露光時において液体LQを接触する液体接触面となる。
本実施形態の露光装置EXは、液体接触面を形成する膜部材の種類(物性)が互いに異なる複数種類の基板Pを順次露光する。記憶装置MRYには、複数種類の基板Pの液浸露光を行うための露光条件に関する情報が記憶されている。具体的には、記憶装置MRYは、液浸露光時において基板Pの液体接触面を形成する膜部材と液体LQとの親和性(基板Pと液体LQとの親和性)と、その親和性に対応する露光条件との関係がマップデータとして複数記憶されている。ここで、膜部材と液体LQとの親和性に関する情報は、膜部材と液体LQとの接触角(基板Pとの接触角)(動的接触角を含む)に関する情報を含む。
液浸露光処理を行うに際し、露光処理されるべき基板Pの膜部材に関する情報が入力装置INPを介して制御装置CONTに入力される。入力される膜部材に関する情報には、膜部材と液体LQとの接触角に関する情報が含まれている。制御装置CONTは、入力された膜部材に関する情報(接触角に関する情報)に応じて、記憶装置MRYに予め記憶されている、膜部材と液体LQとの親和性(接触角)と、その親和性(接触角)に対応する露光条件との関係(マップデータ)を参照し、露光処理されるべき基板Pに対する最適な露光条件を選択し、決定する。
ここで露光条件は、気体供給機構3による気体供給条件を含む。更に具体的には、露光条件は、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量に関する条件を含む。
制御装置CONTは、膜部材と液体LQとの接触角(親和性)に応じて、調整装置38を使って、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整する。具体的には、膜部材と液体LQの接触角が小さい場合、膜部材は液体LQに対して親液性(親水性)を有していることになるので、液浸機構1を使って基板P(膜部材)上に液体LQを供給した際、この液体LQは濡れ拡がりやすいため、光路空間K1(回収口22)の外側へ漏出する可能性が高くなる。したがって、この膜部材上で液浸領域LRを形成する場合、調整装置38は、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を多くする。こうすることにより、光路空間K1に満たされた液体LQの界面LGに供給される気体の量を多くしたり、あるいは気体の流速を高めることができるため、その供給された気体の力によって、液体LQの漏出を防止することができる。
一方、膜部材と液体LQとの接触角が大きい場合、膜部材は液体LQに対して撥液性(撥水性)を有していることになるので、液浸機構1を使って基板P(膜部材)上に液体LQを供給した際、この液体LQは過剰に濡れ拡がらない。したがって、この膜部材に対して液体LQを供給する場合、調整装置38は、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を少なくする。こうすることにより、吹き付けられる気体の力に起因して基板Pが変形・変位したり、振動が発生する等の不都合を防止することができる。また、光路空間K1に満たされた液体LQに供給される気体の量も少なくなるため、液体LQ中に気泡などの気体部分が生成される不都合を抑えることもできる。
以上説明したように、本実施形態においては、基板Pの液体接触面を形成する膜部材と液体LQとの接触角(親和性)に対応する最適な気体供給条件(気体吹き出し量)が予め求められており、この最適な気体供給条件に関する情報が記憶装置MRYに記憶されている。制御装置CONTは、入力装置INPを介して入力された露光処理されるべき基板Pの膜部材に関する情報(膜部材と液体LQとの接触角に関する情報)に基づいて、複数記憶されている気体供給条件の中から最適な気体供給条件を選択して決定し、この決定された気体供給条件に基づいて、基板Pの液浸露光を行うことにより、液体LQの漏出を防止しつつ、基板Pを良好に露光することができる。
なおここでは、基板Pの膜部材の種類が変更される場合について説明したが、液体LQの種類(物性)が変更される場合もある。その場合においても、制御装置CONTは、調整装置38を使って、基板Pの膜部材と液体LQとの親和性に応じて、吹出口32から吹き出す吹き出し量を調整することができる。
なお、液浸領域LRは、基板ステージPSTの上面など基板Pとは異なる物体上に形成される場合もあるので、基板Pだけでなく、液浸領域LRが形成される物体表面の条件(接触角など)に応じて、調整装置38を使って吹出口32からの吹き出し量を調整するようにしてもよい。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態の特徴的な部分は、調整装置38が、基板Pの移動条件(移動速度、加減速度の少なくとも一方を含む)に応じて吹出口32から吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整する点にある。例えば、調整装置38は、基板PをX軸方向に移動しながら基板Pに露光光ELを照射して基板Pを液浸露光するときの基板Pのスキャン速度(移動速度)に応じて、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整する。
本実施形態においては、制御装置CONTは、基板PのX軸方向(走査方向)に関する速度、加速度の少なくとも一方に応じて、気体供給機構3の気体供給条件を決定する。例えば、基板Pのスキャン速度(あるいは加速度)が大きい場合、光路空間K1に満たされた液体LQと基板Pとの相対速度(あるいは相対加速度)が大きくなって、液体LQが漏出する可能性が高くなる。したがって、基板Pのスキャン速度が大きい場合、調整装置38は、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を多くする。こうすることにより、光路空間K1に満たされた液体LQの界面LGに供給される気体の量を多くしたり、あるいは気体の流速を高めることができるため、その供給された気体の力によって、液体LQの漏出を防止することができる。
一方、基板Pのスキャン速度(あるいは加速度)が小さい場合、液体LQが漏出する可能性は低くなる。したがって、基板Pのスキャン速度が小さい場合、調整装置38は、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を少なくする。こうすることにより、吹き付けられる気体の力に起因して基板Pが変形・変位したり振動が発生する等の不都合を防止することができる。また、光路空間K1に満たされた液体LQに供給される気体の量も少なくなるため、液体LQ中に気泡などの気体部分が生成される不都合を抑えることもできる。
以上説明したように、基板Pの移動条件に応じて、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整することによって、液体LQの漏出を防止しつつ、基板Pを良好に露光することができる。
なおここでは、制御装置CONTは、基板Pを走査方向(X軸方向)に移動するときに調整装置38を使って吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整しているが、基板Pをステップ移動方向(Y軸方向)に移動する場合等においても、基板Pのステップ移動速度(及び/又は加速度)に応じて、吹出口32より吹き出す単位時間当たりの気体吹き出し量を調整することができる。
なお、液浸領域LRは、基板ステージPSTの上面など基板Pとは異なる物体上に形成される場合もあるので、基板Pだけでなく、液浸領域LRが形成される物体の移動条件に応じて、調整装置38を使って吹出口32からの吹き出し量を調整するようにしてもよい。
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について図10を参照しながら説明する。本実施形態の特徴的な部分は、駆動装置95が、基板Pの液体接触面を形成する膜部材と液体LQとの親和性に応じて、第2ノズル部材30(吹出口32)の位置を調整する点にある。
本実施形態の露光装置EXは、液体接触面を形成する膜部材の種類(物性)が互いに異なる複数種類の基板Pを順次露光する。記憶装置MRYには、基板Pの液浸露光を行うための露光条件に関する情報が記憶されている。具体的には、記憶装置MRYは、液浸露光時において基板Pの液体接触面を形成する膜部材と液体LQとの親和性と、その親和性に対応する露光条件との関係がマップデータとして複数記憶されている。ここで、膜部材と液体LQとの親和性に関する情報は、膜部材と液体LQとの接触角(動的接触角を含む)に関する情報を含む。
液浸露光処理を行うに際し、露光処理されるべき基板Pの膜部材に関する情報が入力装置INPを介して制御装置CONTに入力される。入力される膜部材に関する情報には、膜部材と液体LQとの接触角に関する情報が含まれている。制御装置CONTは、入力された膜部材に関する情報(接触角に関する情報)に応じて、記憶装置MRYに予め記憶されている、膜部材と液体LQとの親和性(接触角)と、その親和性(接触角)に対応する露光条件との関係(マップデータ)を参照し、露光処理されるべき基板Pに対する最適な露光条件を選択し、決定する。
ここで露光条件は、気体供給機構3による気体供給条件を含む。更に具体的には、露光条件は、気体供給機構3の第2ノズル部材30の位置に関する条件を含む。
制御装置CONTは、膜部材と液体LQとの接触角(親和性)に応じて、駆動装置95を使って、第2ノズル部材30の位置を調整する。具体的には、膜部材と液体LQの接触角が小さい場合、膜部材は液体LQに対して親液性(親水性)を有していることになるので、液浸機構1を使って基板P(膜部材)上に液体LQを供給した際、この液体LQは濡れ拡がりやすいため、光路空間K1の外側へ漏出する可能性が高くなる。したがって、この膜部材に対して液体LQを供給する場合、駆動装置95は、第2ノズル部材30の下面35と基板Pの表面とのZ軸方向に関する距離を小さくし、基板Pに対して吹出口32を近づける。こうすることにより、基板Pの表面と第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aとの間のギャップG5を小さくして、吹出口32から吹き出された気体の流速を高めることができる。そして、その流速が高められた気体を光路空間K1に満たされた液体LQの界面LGに供給することで、その供給された気体の力によって、光路空間K1に対して回収口22の外側への液体LQの漏出を防止することができる。
一方、膜部材と液体LQとの接触角が大きい場合、膜部材は液体LQに対して撥液性(撥水性)を有していることになるので、液浸機構1を使って基板P(膜部材)上に液体LQを供給した際、この液体LQは過剰に濡れ拡がらない。したがって、この膜部材に対して液体LQを供給する場合、駆動装置95は、第2ノズル部材30の下面30と基板Pの表面とのZ軸方向に関する距離を大きくし、基板Pに対して吹出口32を遠ざける。膜部材は撥液性であり、液体LQは過剰に濡れ拡がらないので、第2ノズル部材30の下面35と基板Pの表面との距離を大きくした状態で吹出口32より気体を吹き出しても、液体LQの漏出を防止することができる。そして、第2ノズル部材30の下面35と基板Pの表面との距離を大きくすることにより、基板Pと第2ノズル部材30との衝突などといった不都合を防止できる。
図10に示すように、露光装置EXは、メインコラム9と第2ノズル部材30との位置関係を検出するノズル位置検出装置96を備えている。本実施形態においては、ノズル位置検出装置96はレーザ干渉計によって構成されている。ノズル位置検出装置96は、メインコラム9と第2ノズル部材30とのX軸方向の距離(相対位置)を検出するX干渉計96Xと、メインコラム9と第2ノズル部材30とのY軸方向の距離(相対位置)を検出するY干渉計96Yと、メインコラム9と第2ノズル部材30とのZ軸方向の距離(相対位置)を検出するZ干渉計96Zとを備えている。なお、Y干渉計96Yは図10には示されていない。これら各干渉計96X、96Y、96Zは、メインコラム9の所定位置に固定されている。また、各干渉計96X、96Y、96Zと制御装置CONTとは接続されており、各干渉計96X、96Y、96Zの検出結果は、制御装置CONTに出力される。
本実施形態においては、X干渉計96XはY軸方向に複数(例えば2つ)並んで設けられており、第2ノズル部材30のX側の側面には、これらX干渉計96Xに対応する反射面が設けられている。制御装置CONTは、X干渉計96Xの検出結果に基づいて、メインコラム9に対する第2ノズル部材30のX軸方向に関する位置を求めることができるとともに、複数のX干渉計96Xのそれぞれの検出結果に基づいて、メインコラム9に対する第2ノズル部材30のθZ方向に関する位置を求めることができる。また、本実施形態においては、Y干渉計96Yは1つ設けられており、第2ノズル部材30のY側の側面には、Y干渉計96Yに対応する反射面が設けられている。制御装置CONTは、Y干渉計96Yの検出結果に基づいて、メインコラム9に対する第2ノズル部材30のY軸方向に関する位置を求めることができる。また、本実施形態においては、Z干渉計96Zは複数(例えば3つ)設けられており、第2ノズル部材30の上面には、これらZ干渉計96Zに対応する反射面が設けられている。複数のZ干渉計96Xのうち少なくとも2つのZ干渉計96Zは、第2ノズル部材30の上方においてX軸方向に並んで設けられており、他の少なくとも2つのZ干渉計96Zは、第2ノズル部材30の上方においてY軸方向に並んで設けられている。制御装置CONTは、Z干渉計96Zの検出結果に基づいて、メインコラム9に対する第2ノズル部材30のZ軸方向に関する位置を求めることができるとともに、複数のZ干渉計96Zのそれぞれの検出結果に基づいて、メインコラム9に対する第2ノズル部材30のθX、θY方向に関する位置を求めることができる。
このように、制御装置CONTは、複数の干渉計を有するノズル位置検出装置96の検出結果に基づいて、6自由度の方向(X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向)に関するメインコラム9に対する第2ノズル部材30の位置を求めることができる。なお、X干渉計96X、Y干渉計96Y、及びZ干渉計96Zの数及び配置は任意に設定可能である。要は、複数の干渉計96X、96Y、96Zを用いて第2ノズル部材30の6自由度の方向に関する位置を検出可能なように構成されていればよい。また、ノズル位置検出装置96としては、干渉計に限られず、例えば静電容量センサ、エンコーダ等、他の構成を有する位置検出装置を用いることも可能である。
制御装置CONTは、ノズル位置検出装置96の検出結果に基づいて、メインコラム9に対する第2ノズル部材30の位置をモニタすることができ、そのノズル位置検出装置96の検出結果に基づいて駆動装置95を駆動することにより、第2ノズル部材30をメインコラム9に対して所望位置に位置決めすることができる。また、基板Pの表面の面位置情報をフォーカス・レベリング検出系によって検出している場合には、制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、メインコラム9に対する基板Pの表面の位置情報を求めることができる。したがって、制御装置CONTは、メインコラム9を基準として、第2ノズル部材30と基板Pの表面との位置関係、ひいては吹出口32(下面35)と基板Pの表面との位置関係を制御することができる。なお、第2ノズル部材30と基板Pとの位置関係を求める際の基準としては、メインコラム9に限られず、任意の部材(基準)を用いることができる。
以上説明したように、本実施形態においては、基板Pの液体接触面を形成する膜部材と液体LQとの接触角(親和性)に対応する最適な気体供給条件(第2ノズル部材30の位置)が予め求められており、この最適な気体供給条件に関する情報が記憶装置MRYに記憶されている。制御装置CONTは、入力装置INPを介して入力された露光処理されるべき基板Pの膜部材に関する情報(膜部材と液体LQとの接触角に関する情報)に基づいて、複数記憶されている気体供給条件の中から最適な気体供給条件を選択して決定し、この決定された気体供給条件に基づいて、基板Pの液浸露光を行うことにより、液体LQの漏出を防止しつつ、基板Pを良好に露光することができる。
また、駆動装置95は、第2ノズル部材30の位置を調整することによって、基板Pの表面と第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aとの間のギャップG5を調整することができ、ギャップG5を調整することで、吹出口32から吹き出され光路空間K1に向かう気体の流速を調整することができ、所望の流速の気体を光路空間K1に供給することができる。
また、第2ノズル部材30は、第1ノズル部材70とは別の部材であるため、制御装置CONTは、駆動装置95を使って、第2ノズル部材30の位置調整を第1ノズル部材70とは個別に行うことができる。したがって、制御装置CONTは、駆動装置95を駆動することにより、吹出口32と回収口22との位置関係、吹出口32と光路空間K1(光路空間K1に満たされる液体LQ)との位置関係、あるいは吹出口32と基板Pとの位置関係を任意に調整することができる。
なおここでは、基板Pの膜部材の種類が変更される場合について説明したが、液体LQの種類(物性)が変更される場合もある。その場合においても、制御装置CONTは、駆動装置95を使って、基板Pの膜部材と液体LQとの親和性に応じて、第2ノズル部材30の位置を調整することができる。
なおここでは、制御装置CONTは、駆動装置95を使って、第2ノズル部材30を基板Pに接近又は離間する方向(すなわちZ軸方向)に関して駆動しているが、基板Pの膜部材条件に応じて、X軸、Y軸、θX、θY、θZ方向に駆動することももちろん可能である。また、吹出口32から吹き出される気体の吹き出し角度(下面35に対する気体の吹き出し方向)を可変に設け、基板Pの膜部材に関する条件に応じて吹き出し角度を調整するようにしてもよい。
なお、液浸領域LRは、基板ステージPSTの上面など基板Pとは異なる物体上に形成される場合もあるので、基板Pだけでなく、液浸領域LRが形成される物体表面の条件(接触角など)に応じて、駆動装置95を使って第2ノズル部材30の位置を調整するようにしてもよい。
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態の特徴的な部分は、駆動装置95が、基板Pの移動条件(移動速度、加減速度)に応じて第2ノズル部材30の位置を調整する点にある。例えば、基板PをX軸方向に移動しながら基板Pに露光光ELを照射して基板Pを液浸露光するときの基板Pのスキャン速度(移動速度)に応じて、第2ノズル部材30の位置を調整する点にある。
本実施形態においては、制御装置CONTは、基板PのX軸方向(走査方向)に関する速度、加速度の少なくとも一方に応じて、気体供給機構3の気体供給条件を決定する。例えば、基板Pのスキャン速度(及び/又は加速度)が大きい場合、光路空間K1に満たされた液体LQと基板Pとの相対速度(あるいは相対加速度)が大きくなって、液体LQが漏出する可能性が高くなる。したがって、基板Pのスキャン速度が大きい場合、駆動装置95は、第2ノズル部材30の下面35と基板Pの表面とのZ軸方向に関する距離を小さくし、基板Pに対して吹出口32を近づける。こうすることにより、基板Pの表面と第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aとの間のギャップG5を小さくして、吹出口32から吹き出され光路空間K1に向かう気体の流速を高めることができる。したがって、その流速が高められた気体を光路空間K1に満たされた液体LQの界面LGに供給することができるため、その供給された気体の力によって、液体LQの漏出を防止することができる。また、ギャップG5を狭まることで、表面張力により液体LQはギャップG5を介して漏出し難くなる。
一方、基板Pのスキャン速度(あるいは加速度)が小さい場合、液体LQが漏出する可能性は低くなる。したがって、基板Pのスキャン速度が小さい場合、駆動装置95は、第2ノズル部材30の下面35と基板Pの表面とのZ軸方向に関する距離を大きくし、基板Pに対して吹出口32を遠ざける。基板Pのスキャン速度が小さい場合、液体LQは過剰に濡れ拡がらないので、第2ノズル部材30の下面35と基板Pの表面との距離を大きくした状態で吹出口32より気体を吹き出しても、液体LQの漏出を防止することができる。そして、第2ノズル部材30の下面35と基板Pの表面との距離を大きくすることにより、基板Pと第2ノズル部材30との衝突などといった不都合を防止できる。
本実施形態においても、制御装置CONTは、ノズル位置検出装置96の検出結果に基づいて駆動装置95を駆動することにより、第2ノズル部材30を所望位置に位置決めすることができる。
以上説明したように、基板Pの移動条件に応じて、第2ノズル部材30の位置を調整することによって、液体LQの漏出を防止しつつ、基板Pを良好に露光することができる。そして、制御装置CONTは、駆動装置95を使って第2ノズル部材30の位置を調整することによって、基板Pの表面と第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aとの間のギャップG5を調整することができ、吹出口32から吹き出された気体の流速を調整することができ、所望の流速の気体を光路空間K1に供給することができる。
なおここでは、制御装置CONTは、基板Pを走査方向(X軸方向)に移動するときに駆動装置95を使って吹出口32を有する第2ノズル部材30の位置を調整しているが、基板Pをステップ移動方向(Y軸方向)に移動する場合等においても、基板Pのステップ移動速度(及び/又は加速度)に応じて、第2ノズル部材30の位置を調整することができる。
なおここでは、制御装置CONTは、駆動装置95を使って、第2ノズル部材30を基板Pに接近又は離間する方向(すなわちZ軸方向)に関して駆動しているが、基板Pの移動条件(移動速度、移動方向を含む)に応じて、X軸、Y軸、θX、θY、θZ方向に駆動することももちろん可能である。また、吹出口32から吹き出される気体の吹き出し角度(下面35に対する気体の吹き出し方向)を可変に設け、基板Pの移動条件に応じて吹き出し角度を調整するようにしてもよい。
なお、液浸領域LRは、基板ステージPSTの上面など基板Pとは異なる物体上に形成される場合もあるので、基板Pだけでなく、液浸領域LRが形成される物体の移動条件に応じて、駆動装置95を使って第2ノズル部材30の位置を調整するようにしてもよい。
なお上述の第3〜第6実施形態において、制御装置CONTは、基板Pの膜部材と液体LQとの親和性に応じて、吹出口32より吹き出す気体吹き出し量と第2ノズル部材30の位置との双方を調整してもよい。同様に、制御装置CONTは、基板Pの移動速度に応じて、吹出口32より吹き出す気体吹き出し量と第2ノズル部材30の位置との双方を調整してもよい。更に、制御装置CONTは、基板Pの膜部材と液体LQとの親和性及び基板Pの移動速度のそれぞれを考慮して、吹出口32より吹き出す気体吹き出し量及び第2ノズル部材30の位置の少なくとも一方を調整するようにしてもよい。
また、上述の第3〜第6実施形態において、制御装置CONTは、基板Pの膜部材と液体LQとの親和性及び基板Pの移動速度の少なくとも一方に応じて、液浸機構1による液体供給条件及び液体回収条件を調整するようにしてもよい。例えば、基板P上において液体LQが濡れ拡がり易い場合には、制御装置CONTは、液浸機構1による単位時間当たりの液体供給量を少なくしたり、液体回収量を多くすることができる。一方、基板P上において液体LQが濡れ拡がり難い場合には、制御装置CONTは、液浸機構1による単位時間当たりの液体供給量を多くしたり、液体回収量を少なくすることができる。
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について図11を参照しながら説明する。第1〜第6実施形態と異なる本実施形態の特徴的な部分は、排気口42に接続された排気空間44を吸引する吸引装置60を備えた点にある。
図11において、露光装置EXは、排気空間44を吸引する吸引装置60を備えている。吸引装置60には吸引管61の一端部が接続され、吸引管61の他端部は排気空間44に接続されている。吸引装置60は真空系を含んで構成されており、吸引管61を介して排気空間44の気体を吸引可能である。制御装置CONTは、吹出口32からの気体吹き出し動作と並行して、吸引装置60による吸引動作を実効する。制御装置CONTは、吸引装置60を使って排気空間44の気体を吸引することにより、回収口22近傍を含む所定空間K2の気体を排気口42を介して能動的に排気することができる。このように、吸引装置60を使って気体を能動的に排気することによっても、回収口22近傍において光路空間K1に向かう所望流速の気体の流れを円滑に生成することができる。
なお、上述の第2〜第7実施形態においても、第1実施形態で述べたように、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35Aと第2領域35Bとがほぼ面一であってもよい。
<第8実施形態>
次に、第8実施形態について図12を参照しながら説明する。本実施形態の特徴的な部分は、第2ノズル部材30は突起部65を有し、吹出口32は突起部65のほぼ先端部に設けられている点にある。
図12において、第2ノズル部材30の下面35のうち、光路空間K1に最も近い部分には、光路空間K1に向けて傾斜方向に突出する突起部65が設けられている。突起部65は、第2ノズル部材30のうち第1ノズル部材70の側面70Sと対向する内側面30Tとほぼ連続するように形成されている。そして、その突起部65のほぼ先端部に吹出口32が設けられている。また、供給流路34の第1流路部34Aは、第1〜第7実施形態と同様に、XY平面に対して傾斜している。
吹出口32から吹き出された気体の一部は、基板Pの表面に沿って光路空間K1に向かい、残りの一部は排気口42を介して排気空間44に流入する。排気口42を介して排気空間44に流入した気体の一部は、排気空間44を介して外部空間K3に排気されるが、残りの一部は、排気空間44において渦流を形成し、内側面30Tに沿って下方に流れる(図12中、矢印yr参照)。内測面30Tに沿って下方に向かって流れた気体は、吹出口32より吹き出された気体と合流し、光路空間K1に向かって流れる。
このように、突起部65のほぼ先端部に設けられた吹出口32から吹き出された気体によって排気空間44において渦流を生成し、内測面30Tに沿って下方に向かって流れた気体成分と、吹出口32より吹き出された気体成分とを合流させることによって、光路空間K1に向かう気体の流速を高めることができ、液体LQの漏出をより確実に防止することができる。
また、第1〜第7実施形態と異なり、第2ノズル部材30の下面35の第1領域35A(ガイド面)が形成されていないので、第1ノズル部材70の回収口22の近くに吹出口32を配置することができ、回収口22の近傍により流速の大きい気流を生成することができる。
なお、第8実施形態においても、第2〜第7実施形態で説明したように、気体の吹き出し量、第2ノズル部材30の位置調整の少なくとも一方を実行可能であることは言うまでもない。
なお、上述の第1〜第8実施形態においては、吹出口32は、平面視円環状に形成されているが、所定方向に所定長さを有するスリット状の吹出口32を複数設けた構成であってもよい。例えば平面視円弧状で所定長さを有するスリット状に形成された複数の吹出口32を、光路空間K1を囲むように所定間隔で配置してもよい。この場合においても、各吹出口32に接続する供給流路34の途中にバッファ空間37を設けることにより、所定の長さを有するスリット状の各吹出口32のそれぞれからほぼ均一に気体を吹き出すことができる。また、平面視円形状の複数の吹出口を、光路空間K1を囲むように所定間隔で配置してもよい。
また、上述の第1〜第8実施形態においては、XY平面に対する吹出口32から吹き出される気体の吹き出し角度(第1流路部34Aの傾斜部の角度)はほぼ45°に設定されているが、他の角度(例えばほぼ30°)に設定されてもよい。また、上述したように気体の吹き出し角度を調整可能に構成してもよい。
また、上述の第1〜第8実施形態においては、吹出口32は、回収口22の多孔部材25の下面25Bに対して高い位置(+Z方向に離れた位置)に設置されているが、これに限られず、多孔部材25の下面25Bよりも低い位置(−Z方向に離れた位置)に設定されていてもよい。もちろん、上述したように、気体の吹き出し位置(Z方向の位置)を調整可能に設けてもよい。
また、光路空間K1を囲むように複数の吹出口32を設けた場合、例えば基板Pの移動方向に応じて、各吹出口32のそれぞれから吹き出される気体の単位時間当たりの気体吹き出し量が調整されてもよい。例えば、光路空間K1に対して基板Pを+X側にスキャン移動しつつ液浸露光する場合、光路空間K1の+X側に設けられた吹出口32からの気体吹き出し量を、他の吹出口32からの気体吹き出し量よりも多くするようにしてもよい。すなわち、吹出口から吹き出される気体の流れに対する液体の移動方向に応じて各吹出口の気体吹き出し量を独立して制御してもよい。
また、上述の第1〜第8実施形態において、第1ノズル部材70の側面70S及び第2ノズル部材30の内側面30Tの少なくとも一方にフィン状の部材などを設け、吹出口32から吹き出され、排気流路を流れる気体の流れをガイドするようにしてもよい。また、フィン状の部材以外にも、気体の流れをガイドできるガイド部材であれば、例えば突起状の部材など、任意の部材を用いることができる。また、気体の流れをガイドするガイド部として、第1ノズル部材70の側面70S及び第2ノズル部材30の内側面30Tの少なくとも一方に、溝(スリット)を形成してもよい。
また上述の各実施形態においては、回収口22に設けられた多孔部材25の下面25Bは、基板Pの表面(XY平面)とほぼ平行であるが、回収口22に設けられた多孔部材25の下面25Bが、光路空間K1から離れるにつれて、基板Pの表面との間隔が大きくなるように、基板ステージPSTに支持された基板Pの表面に対して傾斜していてもよい。
なお、上述の各実施形態においては、第1ノズル部材70と第2ノズル部材30とは互いに独立した部材であるが、1つのノズル部材に、回収口22と吹出口32と排気口42とを設けてもよい。
また、上述の第1〜第8実施形態においては、第2ノズル部材30の下面35は撥液性に処理されており、液体LQの付着などが防止されているが、撥液性でなくてもよい。
また、上述の第1〜第8実施形態においては、第2ノズル部材30の位置を調整するための駆動装置95を搭載しているが、駆動装置95を省いて、第2ノズル部材30をメインコラム9に対して固定支持するようにしてもよい。
また、上述の第1〜第8実施形態において、第1ノズル部材70に、第1ノズル部材70と基板Pとの間の液体LQが自由に出入り可能なバッファ空間を形成してもよい。このバッファ空間の下端には、回収口22の内側近傍に露光光ELの光路を取り囲むように環状に形成された開口部が形成され、その上端は外部空間(大気空間)に接続されている。このように、回収口22の内側近傍にバッファ空間を設けることによって、光路空間K1の外側へ向かって流れる液体LQの一部がバッファ空間に流れ込み、回収口22へ到達する液体LQの量を少なくすることができる。したがって、第2ノズル部材30(吹出口32)からの気体の吹き出し動作と相まって、より確実に液体LQの漏れだしを抑えることができる。なお、バッファ空間の下端の開口部を回収口22の外側近傍に配置してもよい。この場合、光路空間K1の外側へ向かって流れる液体LQのうち回収口22で回収されなかった液体LQがバッファ空間に流れ込むため、第2ノズル部材30(吹出口32)からの気体の吹き出し動作と相まって、液体LQの漏れだしを抑えることができる。もちろん、回収口22の内側近傍及び外側近傍の両方に環状の開口部を形成し、それぞれの開口部に液体LQが自由に出入りすることができるバッファ空間を形成してもよい。
また、上述の第1〜第8実施形態においては、ランド面75と多孔部材25の下面25Aとがほぼ面一に形成されているが、段差があってもよく、例えば多孔部材25の下面25Bをランド面75よりも僅かに高い位置(+Z方向の位置)に設けてもよい。
以上のように、第1〜第8実施形態においては、第2ノズル部材30が吸引口32(排気口42)よりも内側に液体LQを封じ込めるシール機構として機能し、回収口22の外側への液体LQの漏出を防止又は抑制することができる。したがって、基板P上に液滴などが残留するなどの不都合を防止することができる。
また、上述の第1〜第8実施形態において、吹出口32に供給する気体を洗浄する洗浄装置を設けることができる。図13は気体を洗浄する洗浄装置の一例を示す概念図である。図13において、洗浄装置300は、吹出口32に供給する気体を洗浄するものであって、気体を洗浄するための洗浄用液体LQ’を収容する容器301と、気体を泡状にして液体LQ’中に供給する供給機構310と、液体LQ’中を通過した気体を集める捕集機構320とを備えている。洗浄装置300は、洗浄対象である気体を洗浄用液体LQ’中を通過させることによって、その気体を洗浄する。洗浄装置300は、気体供給機構3の一部を構成しており、例えば気体供給装置31と吹出口32との間の気体の流路の途中(例えば第2供給管33の所定位置)に設けられる。
供給機構310は、容器301に収容されている液体LQ’中に配置された多孔部材302と、多孔部材302の内部に洗浄対象である気体を供給する供給管303とを備えている。捕集機構320は、多孔部材303から放出され、液体LQ’中を通過した気体(気泡)を集めるものであって、捕集管304と、捕集管304の途中に設けられた吸引装置(ポンプ)305とを備えている。
また、洗浄装置300は、容器301に洗浄用液体LQ’を供給する液体供給系306と、容器301の液体LQ’を回収する液体回収系307とを備えている。液体供給系306は、容器301の所定位置に設けられた供給口306Aを有しており、その供給口306Aを介して、容器301の内部に洗浄用液体LQ’を供給可能である。本実施形態においては、洗浄用液体LQ’として純水を用いる。また、液体回収系307は、容器301の所定位置に設けられた回収口307Aを有しており、その回収口307Aを介して、容器301の内部の液体LQ’を回収(排出)可能である。制御装置CONTは、少なくとも供給機構310により洗浄用液体LQ’に気体を供給している間、液体供給系306による液体LQ’の供給動作と液体回収系307による液体LQ’の回収動作とを並行して行う。すなわち、制御装置CONTは、少なくとも供給機構310により洗浄用液体LQ’に気体を供給している間、容器301に常に清浄な液体LQ’を流し続け、容器301の内部の液体LQ’の清浄度を維持する。
また、制御装置CONTは、液体供給系306による単位時間当たりの液体供給量及び液体回収系307による単位時間当たりの液体回収量の少なくとも一方を調整することにより、図13に示すように、容器301の内部に、液体空間SLと気体空間SGとのそれぞれを形成する。
洗浄装置300の多孔部材302は、例えばPTFE(ポリテトラフロエラエチレン)等のフッ素系樹脂材料によって形成されており、容器301の液体LQ’中(液体空間SL)に配置されている。また、洗浄装置300の供給管303の一端部は気体供給装置31に接続され、他端部は液体LQ’中に配置された多孔部材302の内部に接続されている。捕集管304の一端部は容器301の気体空間SGに接続され、他端部は例えば第2供給管33を介して供給口32に接続されている。
また、容器301の所定位置には供給管303を収容可能な穴303Kが設けられ、その供給管303を収容した穴303Kはシール部材303Sでシールされている。同様に、容器301の所定位置には捕集管304を収容可能な穴304Kが設けられ、その捕集管304を収容した穴304Kはシール部材304Sでシールされている。そして、容器301の内部は略密閉されている。
次に、洗浄装置300を用いて気体を洗浄する方法について説明する。制御装置CONTは、洗浄対象である気体を気体供給装置31より送出する。気体供給装置31より送出された気体は、供給管303を通過した後、多孔部材302の内部に供給される。多孔部材302は洗浄用液体LQ’中に配置されており、多孔部材302の内部に供給された気体は、多孔部材302より泡状の気体(気泡)となって液体LQ’中に放出される。多孔部材302より放出された気体(気泡)は、液体LQ’との比重の差により、上方に向かって液体LQ’中を移動する。
気体(気泡)に異物が含まれている場合、その気泡に含まれる異物は、液体LQ’中を移動することにより、液体LQ’によって取り除かれる。その原理を説明する。気泡中の異物は、気泡内の気体分子と衝突することによりブラウン運動をしている。そのブラウン運動により、異物は気泡の界面付近に移動する。その際、水の比誘電率は80程度と非常に大きいため、異物との間に非常に大きなファンデルワールス力(引力)が作用する。その引力により、異物は界面の水にトラップされる。異物は、一度トラップされると、水の非常に大きな表面張力により、再び引き剥がされることはなく、水の中に再びブラウン運動で拡散していく。異物の比誘電率が1の場合、ファンデルワールス力は非常に弱くなってしまう。しかしその場合でも、ブラウン運動により異物が界面に到達すれば、水の表面張力で異物は水に捕獲される。異物は帯電している場合もあり、その場合、その異物の電荷により界面付近の水が分極し、クーロン力によって、ファンデルワールス力より強い力で異物が界面に引き寄せられ、より効率的に水に捕獲される。
ここで、洗浄装置300の供給機構310が気泡を液体LQ’に供給しているとき、液体供給系306による液体LQ’の供給動作と液体回収系307による液体LQ’の回収動作とが行われているので、容器301内の液体LQ’の清浄度は維持されている。したがって、液体LQ’から気泡に異物が移動することは抑制されている。
このように、洗浄装置300は、洗浄用液体LQ’を通過させることによって、気泡からその気泡中の異物を取り除き、気体を洗浄することができる。
多孔部材302から放出され、液体LQ’中を移動した気泡(気体)は、気体空間SGに移動する。気体空間SGは、液体LQ’により洗浄された気体で満たされる。制御装置CONTは、捕集機構320の吸引装置305を駆動することにより、気体空間SGに満たされている洗浄後の気体を捕集管304の一端部より吸引し、吹出口32に供給することができる。
以上説明したように、洗浄装置300により洗浄された清浄な気体を吹出口32に供給することができる。これにより、光路空間K1の近傍や基板Pの近傍には清浄な気体が供給される。したがって、吹出口32から吹き出した気体に起因して、光路空間K1を満たす液体LQが汚染されたり、あるいは基板Pの表面が汚染されるといった不都合を防止することができる。したがって、基板Pを良好に露光することができる。
また、吹出口32から吹き出される気体は液体LQ’を通過した液体であるため、比較的高い湿度(湿気)を有している。したがって、その湿気(水分)を含んだ気体を吹出口32から吹き出すことで、例えば基板Pや基板ステージPSTなど、気体が吹き付けられた物体上の液体LQ(純水)の気化による温度変化を抑制することができる。なお、必要に応じて、例えば洗浄装置300と吹出口32との間の第2供給管33の所定位置に、洗浄装置300から吹出口32に供給される気体を乾燥可能な乾燥器を設け、その乾燥器を用いて、気体を乾燥した後、その乾燥された気体を吹出口32に供給するようにしてもよい。
洗浄用液体LQ’中に供給する気泡の大きさは可能な限り小さい方が望ましい。したがって、多孔部材302に形成されている孔径も可能な限り小さい方が望ましい。多孔部材302の孔径を小さくすることによって、気体中に含まれている大きな異物を多孔部材302で捕獲することができる。気泡の大きさを小さくすることにより、気泡中に異物が入り込むことを抑制することができる。また、気泡の大きさを小さくすることにより、気泡中に異物が存在する場合でも、その気泡中の異物と液体LQ’とが接触する確率を高めることができ、液体LQ’で気泡中の異物を良好に捕獲することができる。すなわち、多孔部材302から放出される気泡の大きさが大きい場合、気泡の内側に入り込んだ異物が、ブラウン運動で水の界面に移動する距離が長いため、液体LQ’と接触することなく、気体空間SGまで移動してしまう可能性がある。この場合、気泡中の異物は、液体LQ’で捕獲されることなく、気体空間SGに移動してしまう可能性がある。気体空間SGに異物が移動した場合、その異物を含んだ気体が吹出口32に供給されてしまう不都合が生じる。洗浄用液体LQ’中に供給する気泡の大きさを小さくすることにより、気体空間SGを満たす気体、ひいては吹出口32に供給される気体に異物が入り込むことを抑制することができる。そのため、液体LQ’中に配置する多孔部材302の孔は小さいほうが望ましい。
なお本実施形態では、洗浄用液体LQ’として、光路空間K1を満たすための露光用液体LQと同じ純水を用いている。そのため、液体供給装置11から洗浄装置300の容器301に液体LQ(LQ’)を供給するようにしてもよい。ここで、光路空間K1を満たすための液体LQは、光路空間K1上での気泡の発生を抑制するために、脱気処理されていることが好ましい。一方、容器301に供給される洗浄用液体LQ’が脱気処理されている場合、多孔部材302から放出された気泡を消滅させてしまう可能性がある。そのため、洗浄用液体LQ’は脱気処理されていないことが望ましい。
なお、気体の洗浄方法は、図13で示した洗浄装置で行われている方法に限らず、他の方法であってもよい。例えば、タービンやスプレーノズルを用いて清浄な純水の微粒子(ミスト)を形成し、純水の微粒子で満たされた空間に気体を通して、気体の洗浄を行ってもよい。
また、上述したように、気体の洗浄装置を用いた場合、吹出口32から湿度の高い気体が供給される場合があるが、気体の洗浄装置とともに、あるいは気体の洗浄装置に代わって、気体の湿度制御装置を気体の供給系に設けてもよい。例えば、吹出口32から供給するための気体の温度を上昇させて、水を気化させることによって気体の湿度を下げ、その気体の冷却を制御することによって、所望の温度で、所望の湿度を有する気体を吹出口32から供給することができる。
なお、上述した各実施形態において、液浸機構1は、回収口22を介して液体LQのみを回収するように設けられている。以下、図14を参照しながら、液浸機構1による液体回収動作の原理について説明する。図14は多孔部材25の一部を拡大した断面図であって、多孔部材25を介して行われる液体回収動作を説明するための模式図である。
図14において、回収口22には多孔部材25が設けられている。また、多孔部材25の下側には基板Pが設けられている。そして、多孔部材25と基板Pとの間には、気体空間及び液体空間が形成されている。より具体的には、多孔部材25の第1孔25Haと基板Pとの間には気体空間が形成され、多孔部材25の第2孔25Hbと基板Pとの間には液体空間が形成されている。また、多孔部材25の上側には、回収流路(流路空間)24が形成されている。
多孔部材25の第1孔25Haと基板Pとの間の空間K3の圧力(多孔部材25Hの下面での圧力)をPa、多孔部材25の上側の流路空間24の圧力(多孔部材25の上面での圧力)をPc、孔25Ha、25Hbの孔径(直径)をd、多孔部材25(孔25Hの内側面)の液体LQとの接触角をθ、液体LQの表面張力をγとした場合、本実施形態の液浸機構1は、
(4×γ×cosθ)/d ≧ (Pa−Pc) …(1)
の条件を満足するように設定されている。なお、上記(1)式においては、説明を簡単にするために多孔部材25の上側の液体LQの静水圧は考慮してない。
この場合において、多孔部材25(孔25Hの内側面)の液体LQとの接触角θは、
θ ≦ 90° …(2)
の条件を満足する。
上記条件が成立する場合、多孔部材25の第1孔25Haの下側(基板P側)に気体空間が形成された場合でも、多孔部材25の下側の空間K3の気体が孔25Haを介して多孔部材25の上側の流路空間24に移動(侵入)することが防止される。すなわち、上記条件を満足するように、多孔部材25の孔径d、多孔部材25の液体LQとの接触角(親和性)θ、液体LQの表面張力γ、及び圧力Pa、Pcを最適化することにより、液体LQと気体との界面を多孔部材25の第1孔25Haの内側に維持することができ、第1孔25Haを介して空間K3から流路空間24へ気体が侵入することを抑えることができる。一方、多孔部材25の第2孔25Hbの下側(基板P側)には液体空間が形成されているので、第2孔25Hbを介して液体LQのみを回収することができる。
本実施形態においては、多孔部材25の下側の空間K3の圧力Pa、孔径d、多孔部材25(孔25Hの内側面)の液体LQとの接触角θ、液体(純水)LQの表面張力γはほぼ一定であり、液浸機構1は、液体回収装置21の吸引力を制御して、上記条件を満足するように、多孔部材25の上側の流路空間24の圧力Pcを調整する。
なお、上記(1)式において、(Pa−Pc)が大きいほど、すなわち、((4×γ×cosθ)/d)が大きいほど、上記条件を満足するような圧力Pcの制御が容易になるので、孔径dは可能な限り小さく、多孔部材25の液体LQとの接触角θは可能な限り小さいことが望ましい。本実施形態においては、多孔部材25は液体LQに対して親液性を有しており、十分に小さい接触角θを有している。
このように、本実施形態では、多孔部材25が濡れた状態で、多孔部材25の上側の空間24と下側の空間K3との圧力差(多孔部材25の上面と下面との圧力差)を、上記条件を満足するように制御することで、多孔部材25の孔25Hから液体LQのみを回収する。これにより、液体LQと気体とを一緒に吸引することに起因する振動の発生を抑制することができる。
上記実施形態では、気体供給機構3により、光路空間K1の中心に向かう気体の流れを発生させていたが、気体の流れは気体の吹出口の方向や取り付け位置を変更することで、任意の方向に発生させることができる。例えば、光路空間K1を周回するまたは周回しながら光路空間の中心(投影光学系の光軸)に向かうような気流(サイクロン)を発生させることができる。また、投影光学系の光軸方向に流れる気流で光路空間K1を取り囲んでもよい(エアカーテンタイプ)。投影光学系の光軸方向に流れる気流は光路空間K1に存在する液体LQを拘束した後、光路空間K1の外側に流れ出してもよい。
また、ノズル部材70などの液浸機構1の構造は、上述の構造に限られず、例えば、欧州特許公開第1420298号公報、国際公開第2004/055803号公報、国際公開第2004/057589号公報、国際公開第2004/057590号公報、国際公開第2005/029559号公報に記載されているものも用いることができる。
上述したように、本実施形態における液体LQは純水である。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に第1光学素子LS1が取り付けられており、この光学素子により投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の第1光学素子LS1と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体LQで満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
また、上述の実施形態の投影光学系は、先端の光学素子の像面側の光路空間を液体で満たしているが、国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、先端の光学素子のマスク側の光路空間も液体で満たす投影光学系を採用することもできる。
なお、本実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
また、液体LQとしては、屈折率が1.6〜1.8程度のものを使用してもよい。更に、石英や蛍石よりも屈折率が高い(例えば1.6以上)材料で光学素子LS1を形成してもよい。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
また、露光装置EXとしては、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第1パターンの縮小像を投影光学系(例えば1/8縮小倍率で反射素子を含まない屈折型投影光学系)を用いて基板P上に一括露光する方式の露光装置にも適用できる。この場合、更にその後に、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第2パターンの縮小像をその投影光学系を用いて、第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光するスティッチ方式の一括露光装置にも適用できる。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
更に、特開平11−135400号公報や特開2000−164504号公報に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクにかえて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスクを用いてもよい。
また、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図15に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光工程を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
1…液浸機構、3…気体供給機構、12…供給口、22…回収口、30…第2ノズル部材、30T…内側面、32…吹出口、34…供給流路、34A…第1流路部、34B…第2流路部、35…下面、35A…第1領域、35B…第2領域、37…バッファ空間、38…調整装置、42…排気口、44…排気空間、60…吸引装置、65…突起部、70…第1ノズル部材、70S…側面、95…駆動装置、100…基材、101…膜部材、102…第2膜部材、300…洗浄装置、301…容器、302…多孔部材、303…供給管、310…供給機構、320…捕集機構、EL…露光光、EX…露光装置、K1…光路空間、K2…所定空間、K3…外部空間、LQ…液体、P…基板、PL…投影光学系