JP2020033448A - ディスペンサ用インク組成物とこれを用いた加飾方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】凹凸を備える特殊な意匠をオンデマンドで手軽に付与することができるディスペンサ用インク組成物と、このディスペンサ用インク組成物を用いた加飾方法とを提供する。【解決手段】ディスペンサ用インク組成物は、ディスペンサによって描画するために用いるインク組成物である。このディスペンサ用インク組成物を、内径が0.4mmのニードルを備えたエア加圧式ディスペンサを用い、エア圧が0.1MPa以上0.7MPa以下であって、移動速度が10mm/s以上210mm/s以下のいずれかの条件で、樹脂基材上に直線状に供給したとき、インク組成物は少なくとも100mmの連続線を形成し、供給直後のインク組成物の線幅をW1とし、供給直後の前記樹脂基材を90°に1分間傾けた後のインク組成物の線幅をW2としたとき、W2/W1が0.9以上1.2以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、ディスペンサ用インク組成物とこれを用いた加飾方法に関する。
従来より、化粧品ケース、携帯電話ケース等の日用品や、電子機器の外装材等に、凹凸を付与することで高級感や特殊な意匠(装飾)を実現するという需要がある。このような凹凸を備える意匠は、一般には、例えばケースや外装材等の本体を作製する際に、目的の意匠に対応する凹凸を備える成形型を用意し、本体と凹凸部分とを一体的に成形するようにしている。しかしながら、この手法は本体作製時に成形型を用意しなければならず、大量生産向きではあるが、利用者の多様な嗜好を満足させる意匠を、少量であっても要求(Demand)に応じた必要数だけ手軽に形成するためには負荷が大きい。
その一方で、近年、インクジェット法により、無版で凹凸を持たせた印刷を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2には、ディスペンサを走査してプラスチックICカードに高分子材料によって文字を記入する方法が提案されている。
しかしながら、インクジェット法では、インクを微小な液滴状に精密に制御して吐出することから、一回の吐出で形成できる凹凸厚みは極めて薄い。したがって、嵩高い凹凸を形成するためには何十層にも重ねて印刷する必要があり、長大な時間を要するものとなっていた。また、インクジェット法で使用できるインクは滲んだりタレが発生しやすい。そのため、各層ごとに、インクを吐出したのちに速やかにインクを硬化させる工程が不可欠であった。他方の、従来のディスペンサを用いた手法では、高分子材料をディスペンサから吐出して、ICカード等に見られる比較的小さな文字を記載することはできるものの、例えば細く長い線を連続して描画することは困難であった。
本発明は上記の従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、凹凸を備える特殊な意匠をオンデマンドで手軽に付与することができるディスペンサ用インク組成物を提供することである。また、他の目的は、このディスペンサ用インク組成物を用いた加飾方法を提供することである。
上記課題を解決するために、ここに開示される技術は、ディスペンサによって描画するために用いるインク組成物を提供する。このインク組成物は、内径が0.4mmのニードルを備えたエア加圧式ディスペンサを用い、エア圧が0.1MPa以上0.7MPa以下であって、移動速度が10mm/s以上210mm/s以下のいずれかの条件で、樹脂基材上に直線状に供給したとき、上記インク組成物は少なくとも100mmの連続線を形成し、供給直後の上記インク組成物の線幅をW1とし、供給直後の上記樹脂基材を90°に1分間傾けた後の上記インク組成物の線幅をW2としたとき、W2/W1が0.9以上1.2以下である。
また、ここに開示される加飾方法は、上記のディスペンサ用インク組成物を、ディスペンサを用いてメディアに供給する工程、および、上記メディアに吐出された上記ディスペンサ用インク組成物を硬化させてインク硬化物を形成する工程、を含む。
ここに開示される構成のインク組成物によると、ディスペンサを用いて、凹凸を備える特殊な意匠をオンデマンドで簡便に形成することができる。例えば従来は形成困難であった連続線を、例えば細線として、安定して基材に形成することができるために好ましい。延いては、ディスペンサによって、自由な形状の線(直線、折れ線、曲線等を含む。)を途切れることなく連続的に、かつ、任意の絵柄として描画することができる。また、上記構成のインク組成物によると、上記ニードルを備えるディスペンサに限らず、様々な吐出部を備えるティスペンサを用いる場合であっても、ディスペンサのエア圧や移動速度の軽微な調整によって連続線を好適に描画することができるために好ましい。なお、言うまでもなく、ディスペンサからのインク組成物の供給を止めることで、短い線や点等も安定して描画できる。
なお、本明細書において、「ディスペンサ」とは、液体定量吐出装置を意味する。液体を一定量供給するための方式は特に制限されず、流量制御方式や容積計量方式等であってよい。ディスペンサは、典型的には、例えば、液体を精度良く定量供給・搬送するための供給装置およびそのコントローラ、吐出部となる供給器具、ならびに供給装置と供給器具とを連結する供給チューブ等の周辺機器を含む総称である。
本発明によれば、凹凸を備える特殊な意匠をオンデマンドで手軽に基材に付与することができるディスペンサ用インク組成物と、このディスペンサ用インク組成物を用いた加飾方法と、が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、ディスペンサ用インク組成物の性状)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、ディスペンサの構成やその使用方法等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A〜B」との表記は、A以上B以下を意味する。
ここに開示されるディスペンサ用インク組成物(以下、単に、「インク組成物」などという。)は、ディスペンサによって基材に供給することで、当該基材に凹凸による意匠を形成するために用いるものである。このインク組成物は、そのままの状態では液体(粘性体を含む)である。そしてこのインク組成物が基材の所望の位置に所望の形態で供給され、その後に硬化して固体となることによって、所望の意匠を備える凸部を形成する。
そしてここに開示されるインク組成物は、細線連続描画性に優れたものとして構成されている。かかる細線連続描画性とは、比較的細い線幅の線をタレや滲み等を抑制して連続して描画するのに適した性状をいう。細線の線幅は厳密には制限されないが、例えば、5mm以下とすることができる。連続性の基準についても厳密には制限されないが、例えば、100mm以上とすることができる。そして細線連続描画性に適しているかどうかの判断は、以下の(1)および(2)の基準を何れも満たすかどうかによって評価することができる。
すなわち、ここに開示されるインク組成物は、内径が0.4mmのニードルを備えたエア加圧式ディスペンサを用い、エア圧が0.1MPa以上0.7MPa以下であって、移動速度が10mm/s以上210mm/s以下のいずれかの条件で、樹脂基材上に直線状に供給したときに、以下の条件を何れも満たす。
(1)少なくとも100mmの連続線を形成する。
(2)供給直後のインク組成物の線幅をW1とし、供給直後の樹脂基材を90°に1分間傾けた後のインク組成物の線幅をW2としたとき、W2/W1が0.9以上1.2以下である。
(1)少なくとも100mmの連続線を形成する。
(2)供給直後のインク組成物の線幅をW1とし、供給直後の樹脂基材を90°に1分間傾けた後のインク組成物の線幅をW2としたとき、W2/W1が0.9以上1.2以下である。
これら(1)および(2)の条件を満たすことで、ディスペンサを用いて当該インク組成物による細線を基材上にタレや滲みを抑制して好適に供給できると評価することができる。その結果、ディスペンサを用い、例えば、一度の供給操作によって、インク組成物を細く嵩高く基材に連続的に供給して、所望の図柄等をインク組成物によって描画することができる。そして当該図柄の形態に供給されたインク組成物を硬化させることにより、基材に所望の形態の凸部を形成することができる。延いては、所望の凹凸意匠を形成することができる。なおこのとき、インク組成物はタレ難いため、ディスペンサによって嵩高く供給しても、その形状を比較的長時間にわたって維持することができる。したがって、嵩高く供給されたインク組成物を硬化させるのに時間を要しても、その形状が崩れることが抑制される。その結果、例えば、凹凸の陰影が明瞭でシャープな輪郭の意匠性に優れた凹凸意匠を形成することができる。
上記のインク組成物の評価に用いるディスペンサとしては、広く一般に使用されているエア加圧式ディスペンサを採用している。エア加圧式ディスペンサは、典型的には、インク組成物を収容するためのシリンジと、このシリンジからインク組成物を吐出するための吐出部と、シリンジ内にエアを供給してシリンジ内の圧力を制御しながら加圧するエア加圧制御装置と、を備えている。そして、エア加圧式ディスペンサは、このような制御されたエア加圧によって、シリンジ内に収容したインク組成物を吐出部から定量吐出することができるように構成されている。また、このエア加圧式ディスペンサの吐出部には、内径が0.4mmのニードルタイプのノズルが装着されている。このような口径の小さいニードルタイプのノズルを備えたディスペンサを用いることで、吐出時にインク組成物により高いせん断応力を付与することができ、インク組成物に求められる細線連続描画性等の性状をより効果的に評価することができる。なお、このニードルは、少なくとも内表面がフッ素樹脂により構成されていることが好ましい。これにより、インク組成物とニードルとの間の摩擦等に起因する過剰なせん断応力の発生を抑制することができる。
シリンジに加えるエア圧は、0.1MPa以上0.7MPa以下の範囲としている。エア圧の下限を0.1MPaとすることで、一般的なエア加圧条件での細線連続描画性等を評価することができる。また、汎用されているレオメータにより流体に加えることができるせん断速度の上限は、1000/sであることが多い。ここでエア圧の下限を0.1MPaとすることで、上記ニードルを通過するインク組成物に加えられるせん断応力が凡そ1000/sを下回る。このことにより、レオメータによる粘度測定で検証可能な領域においても細線連続描画性等を評価できるようにしている。その一方で、インク組成物の構成によっては、チキソ性が強く大きな圧力を加えることで良好な流動性を示すものも存在する。このようなインク組成物についても適切な細線連続描画性の評価を行えるように、エア圧の上限は0.7MPaとしている。
ディスペンサの移動速度は、10mm/s以上210mm/s以下の範囲のいずれかに設定することができる。というのは、ニードルを通過中のインク組成物に対しては大きなせん断応力が加えられるものの、インク組成物がニードルから吐出されるとせん断応力は解消される。したがって、インク組成物のレオロジー特性によっては、ニードルから吐出されるとすぐに粘性が回復して、基材上に狭い面積で嵩高く堆積するインク組成物や、粘性の回復が相対的に遅くて基材上に相対的に広い面積で低く堆積するインク組成物などがある。このようなインク組成物のレオロジー特性の違いによって、連続的な線を描くための最適なディスペンサ移動速度は異なり得る。そこで、現実的な生産性を考慮して、ディスペンサ移動速度の下限は10mm/sに設定している。また、実際のディスペンサによる加飾で求められると予想される無理のないディスペンサ移動速度(例えば200m/s)を考慮して、かかる評価におけるディスペンサ移動速度の上限は210mm/sに設定している。
ディスペンサの移動速度は、相対的に高粘度のインク組成物ほど上記移動速度範囲のうちで低速度で細線が描画できればよいといえる。また、相対的に低粘度のインク組成物ほど上記移動速度範囲のうちで高速度で細線が描画できればよいといえる。したがって、例えば、1000/sにおける粘度が1000mPa・s以上、特に2000mPa・s以上のインク組成物については、10mm/s以上50mm/s以下程度、特に10mm/s以上30mm/s以下程度のディスペンサ移動速度を採用するとよい。また、例えば、1000/sにおける粘度が100mPa・s以下のインク組成物については、50mm/s以上210mm/s以下程度、例えば、70mm/s以上210mm/s以下、一例として100mm/s以上210mm/s以下程度のディスペンサ移動速度を採用するとよい。
インク組成物の評価において、インク組成物を供給する樹脂基材としては、例えば入手のしやすさと、ある一定の印刷適正(例えばインク定着性)を備えるとよいことから、いわゆるインクジェットメディアとして一般に提供されているものを好ましく使用することができる。樹脂基材の素材は特に制限されず、各種の樹脂であってよい。インクジェットメディアとして一般に提供される範囲において、表面の平滑性が比較的高いものが多いことから、ポリエチレンテレフタレート(PET)やアクリル樹脂からなる樹脂シートを好ましく用いることができる。樹脂基材は、線幅の確認に好適な透明性を備えることから、無色透明であるとより好ましい。樹脂基材の厚みや寸法は特に制限されないが、インク組成物を供給したのちに90°に傾斜させる際に、撓まない程度の平坦性を維持できる厚み、強度であることが好ましい。なお、薄く撓みやすい樹脂基材を用いる場合(例えば、厚みが約100μmよりも薄い場合)は、当該樹脂基材を平坦な基板等に固定するとよい。
樹脂基材に供給されたインク組成物(以下、単に「インク線」という場合がある。)の線幅W1およびW2は、後述の実施例に示すように、ディスペンサからのインク組成物の供給直後および90°で1分間の傾斜後のインク線について取得した画像を基に、画像解析法によって測定すると簡便である。インク線の画像の取得には、公知の各種の撮像装置を利用することができる。一例として、CCDカメラや、撮像機能を備えたデジタルマイクロスコープおよび光学顕微鏡等の利用が好適例として示される。そして、供給直後の線幅W1と傾斜後の線幅W2とを比較したとき、その差が凡そ10%以内に収まれば、インク線についてタレがないと評価することができる。ここに開示される技術では、両者の比W2/W1が0.9以上1.2以下の場合に、インク線についてタレがないと評価している。比W2/W1は、0.95以上が好ましく、0.98以上がより好ましく、0.99以上が特に好ましい。また、比W2/W1は、1.15以下が好ましく、1.1以下がより好ましく、1.05以下がさらに好ましく、1.02以下が特に好ましく、1.01以下であるとさらによい。
以上のようなインク組成物の硬化機構および具体的な組成は特に制限されない。例えば、インク組成物の硬化機構は、溶剤が揮発することによって硬化する溶剤揮散型、雰囲気中の水分と反応して硬化する湿気硬化型、加熱することでインク組成物中の硬化剤が活性化して硬化する加熱硬化型、紫外線等のエネルギー線を照射することにより短時間で硬化するエネルギー線硬化型、加熱溶融状態で供給されて冷却すると硬化する熱溶融型等のいずれであってもよい。基材の組成や大きさ等を選ばず、所望の凹凸意匠をより短時間で形成できるとの観点から、インク組成物は、エネルギー線硬化型の樹脂組成物であることが好ましい。エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、例えば、ラジカル重合するアクリル系樹脂とシリコーン系樹脂、カチオン重合するエポキシ系樹脂等が好適例として挙げられる。また、これらの樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線としては、紫外線(UV)、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が挙げられる。
インク組成物から形成される凸部は、例えば、高い意匠性を実現するために色材や加飾材料を含んでいたり、基材に付与した下地模様が視認できることが好ましい。また、インク組成物から形成される凸部は、用途によっては、屋外での使用に際して変色し難いことや、割れ・欠けなどに対する強度および耐久性を備えていることが好ましい。かかる観点において、インク組成物は、ベースとなる材料が透明で、耐候性に優れ、高強度であることが好ましい。硬化物に対するこのような性状を満足するインク組成物としては、例えば、アクリル系樹脂を主成分として含む重合性化合部が好ましい。以下、インク組成物がアクリル系樹脂を主成分として含む場合について説明する。なお、ここでいう主成分とは、このインク組成物の硬化物であるポリマーを構成するモノマー単位のうち、最も多く含まれているモノマー単位をいう。インク組成物は、モノマー単位として、アクリル系モノマー単位を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、例えば70質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましい。
ここに開示されるインク組成物は、典型的には、エネルギー線の作用によって液体(粘性体を含む。)から固体に変化するアクリル樹脂系の有機材料(重合性化合物)と、重合開始剤とを含む。ここでエネルギー線は例えば紫外線であり、この重合性化合物は、例えば、紫外線硬化性化合物であり得る。この重合性化合物は、典型的には、モノマー(単量体)、オリゴマー、および、プレポリマーのいずれか1種以上を含む。モノマーは、重合を行う際の基質であり、ポリマーを構成する最小単位でもある。オリゴマーは、分子量が1万以下の低重合体であってよく、好ましくはダイマーまたはトリマーである。プレポリマーは、モノマーの重合または縮合反応を適当な所で止めた中間生成物であり、例えば、重量平均分子量が1万を越えて重合度が1000以下程度のもの(ポリマーに至らないもの)をいう。ここに開示されるインク組成物において、重合性化合物は、少なくともオリゴマー成分を含むことが好ましく、モノマーとオリゴマーとを含むことがより好ましい。オリゴマーは、モノマー成分等に比べて一般に高粘度であるため、上記のとおり細線連続描画性を実現する非ニュートン流動性のインク組成物を調製するために特に適した成分であり得る。
重合性化合物は、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むモノマー、オリゴマーを含むことが好ましい。これにより、硬化したときに透明性に優れ、形成される凸部の意匠性を高める効果を発現する。また、適度な硬度を備えて耐久性および耐候性にも優れるために好ましい。このようなモノマー単位としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
またこれらのモノマー単位は、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーを含んでいてもよい。このような他のモノマー(共重合性モノマー)としては、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等の極性基、ケイ素含有基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アミド基、ウレタン基、ポリエステル基等を含むモノマーが挙げられる。
重合開始剤は、エネルギー線を吸収して活性化(励起)し、重合性化合物の重合反応を開始する物質(例えば、ラジカル分子や水素イオン)を生成して、重合性化合物の三次元的な重合や架橋を引き起こす役割を担う。重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤等の、この種の公知の各種の化合物を用いることができる。一例として、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、p−アニシル系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、重合性化合物におけるモノマー成分100重量部に対して0.01重量部〜5重量部程度とすることができる。
インク組成物が式材を含む場合、かかる色材としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。色材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。インク組成物が色材を含む場合、これに限定されるものではないが、照射されたエネルギー線を遮断しないように染料を含むことが好ましい。このような染料としては、例えば、紫外線硬化型のインク組成物に使用可能であることが知られている各種染料を使用することができ、その例としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料等が挙げられる。
さらに詳しくは、シアン染料としては、例えば、C.I.Acid Blue 1,7,9,15,22,23,25,27,29,40,41,43,45,54,59,60,62,72,74,78,80,82,83,90,92,93,100,102,103,104,112,113,117,120,126,127,129,130,131,138,140,142,143,151,154,158,161,166,167,168,170,171,182,183,184,187,192,199,203,204,205,229,234,236,249,C.I.Direct Blue 1,2,6,15,22,25,41,71,76,77,78,80,86,87,90,98,106,108,120,123,158,160,163,165,168,192,193,194,195,196,199,200,201,202,203,207,225,226,236,237,246,248,249,C.I.Reactive Blue 1,2,3,4,5,7,8,9,13,14,15,17,18,19,20,21,25,26,27,28,29,31,32,33,34,37,38,39,40,41,43,44,46,C.I.Food Blue 1,2,C.I.Basic Blue 9,25,28,29,44等が挙げられる。
マゼンタ染料としては、例えば、C.I.Acid Red 1,6,8,9,13,14,18,26,27,32,35,37,42,51,52,57,75,77,80,82,85,87,88,89,92,94,97,106,111,114,115,117,118,119,129,130,131,133,134,138,143,145,154,155,158,168,180,183,184,186,194,198,209,211,215,219,249,252,254,262,265,274,282,289,303,317,320,321,322,C.I.Direct Red 1,2,4,9,11,13,17,20,23,24,28,31,33,37,39,44,46,62,63,75,79,80,81,83,84,89,95,99,113,197,201,218,220,224,225,226,227,228,229,230,231,C.I.Reactive Red 1,2,3,4,5,6,7,8,11,12,13,15,16,17,19,20,21,22,23,24,28,29,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,45,46,49,50,58,59,63,64,C.I.Food Red 7,9,14等が挙げられる。
イエロー染料としては、例えば、C.I.Acid Yellow 1,3,11,17,19,23,25,29,36,38,40,42,44,49,59,61,70,72,75,76,78,79,98,99,110,111,127,131,135,142,162,164,165,C.I.Direct Yellow 1,8,11,12,24,26,27,33,39,44,50,58,85,86,87,88,89,98,110,132,142,144,Reactive Yellow 1,2,3,4,6,7,11,12,13,14,15,16,17,18,22,23,24,25,26,27,37,42,C.I.Food Yellow 3,4等が挙げられる。
ブラック染料としては、例えば、C.I.Direct Black 1,7,19,32,51,71,108,146,154,166等が挙げられる。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外の染料としては、例えば、C.I.Acid Green 7,12,25,27,35,36,40,43,44,65,79,C.I.Direct Green 1,6,8,26,28,30,31,37,59,63,64,C.I.Reactive Green 6,7,C.I.Direct Violet 2,48,63,90,C.I.Reactive Violet 1,5,9,10等が挙げられる。
顔料としては、無機顔料と有機顔料の何れも使用することができる。有機顔料の例としては、アゾ顔料(例、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料など)、多環式顔料(例、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が挙げられる。無機顔料の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等が挙げられる。
より具体的には、ブラック系顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類;銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)等の金属類;酸化チタン等の金属酸化物類;アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
シアン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15:1,15:3,15:4,15:6,16,21,22,60,64等が挙げられる。
マゼンタ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5,7,9,12,31,48,49,52,53,57,97,112,120,122,146,147,149,150,168,170,177,178,179,184,188,202,206,207,209,238,242,254,255,264,269,282;C.I.ピグメントバイオレット19,23,29,30,32,36,37,38,40,50等が挙げられる。
イエロー系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,129,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185,213等が挙げられる。
その他の色の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7,10,36;C.I.ピグメントブラウン3,5,25,26;C.I.ピグメントオレンジ2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,62,63,64,71等が挙げられる。
また、インク組成物が加飾材料を含む場合、そのような加飾材料としては、例えば、平均粒子径が1μm以上の材料を挙げることができる。特に限定されるものではないが、加飾材料は、後述のニードル等の吐出口の寸法の1/10以下、例えば1/20以下の平均粒子径を有するものを、インク組成物の供給性を損ねることなく好適に含むことができる。加飾材料の好適な平均粒子径は、例えば1μm以上100μm以下であり得る。加飾材料がこのような大きな寸法を有することで、当該加飾材料が有する機能や性状を発揮して基材を効果的に加飾することができる。なお、インクジェットプリンタに用いられるインクに含まれる一般的な顔料の平均粒子径は200nm以下であり、大きくても1μmに満たないのが通常である。また、特殊なインクジェットプリンタ用のインクであって、平均粒子径が1μm以上の顔料等を含むものについては、当該顔料を多量に含むことはできない。ここに開示される技術では、このような大きな加飾材料を含むインク組成物とすることによって、基材を好適に装飾することができる。なお、本明細書における平均粒子径は、レーザ回折法によって測定される体積基準の粒度分布における累積50%粒径(D50)である。
加飾材料は、必ずしもこれに限定されないが、例えば、その寸法が大きいときにより一層加飾効果が発揮される材料であることが好ましい。そのような加飾材料としては、例えば、金属光沢を発現するメタリック顔料や、メタリック顔料よりも柔らかなパール調の光沢を発するパール顔料、立体的なホログラムパターンが備えられたホログラムグリッター、様々な光学的特性を発現し得る金属酸化物粒子等が好適例として挙げられる。より具体的には、メタリック顔料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ブロンズ、ステンレス、ニッケル等の金属粉を薄く延展した鱗片状の金属顔料が挙げられる。パール顔料としては、光の多重層反射を実現する構成であれば特に制限されず、例えば、天然または人工の層状粒子であるマイカ(雲母)をコアとし、その表面を二酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化セリウム、フッ素化合物等の高屈折材料で被覆した被覆雲母や、薄片アルミニウムをコアとしてその表面を上記と同様の高屈折材料で被覆した干渉色アルミ顔料、タルクをコアとしてその表面を上記と同様の高屈折材料で被覆したタルク質パール顔料等が挙げられる。ホログラムグリッターとしては、アルミニウム蒸着したポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等の樹脂フィルムに、超微細なホログラムエンボス加工を施すことによって、プリズム効果を発現させたホログラムフィルムの粉末である、ホログラムラメパウダーが挙げられる。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄等の紫外線散乱剤、タルク、カオリン、マイカ、金属石鹸等の体質顔料等が挙げられる。インク組成物は、このような加飾材料のいずれか1種を単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。このような加飾材を含むインク組成物を用いることで、基材に、メタリック調、パール調、ホログラムラメ調、光沢質の加飾を施すことができる。
インク組成物に加飾材料を含ませる場合、その割合は、例えば、1〜20質量%程度とすることができる。加飾材料の割合が1質量%よりも少なすぎると、十分な加飾効果が得られにくく、同じ箇所に加飾インクを複数回重ねて印刷する必要が生じ得るために好ましくない。加飾材料の割合は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、例えば10質量%以上であってよい。しかしながら、加飾材料の割合が20質量%よりも多すぎると、ディスペンサ32のニードル35等の吐出部が詰まりやすくなるために好ましくない。加飾材料の割合は、例えば、18質量%以下が好ましく、15質量%以下としてもよい。
インク組成物は、ここに開示される技術の本質を損ねない範囲において、重合性化合物および重合開始剤のほかに、必要に応じて添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、レオロジー調整剤、レベリング剤、可塑剤、分散剤、増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤、消泡剤、pH調整剤、光安定剤、防カビ剤等のうちの1種または2種以上が挙げられる。これらの添加剤は、合計の添加量がインク組成物の総量の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
なお、レオロジー調整剤としては、インク組成物に対し、ディスペンサによる供給時に粘度を低下させて流動性を向上させ、ディスペンサによる供給後に粘度を回復させてタレを防止するチキソトロピック性を付与する各種の化合物を用いることができる。レオロジー調整剤が、固体(例えば粉体)であっても液体であってもよく、混合が簡便であるとの観点からは液体であるとよい。このような化合物としては、例えば、層状無機添加剤等の無機材料を主体とする化合物であってもよいし、各種の官能基或いは結晶構造を備えることでインク組成物の分散媒中に三次元ネットワークを形成する有機高分子を主体とする化合物であってもよい。なお、レオロジー調整剤の一例としては、具体的には、例えば、変性ベントナイトや合成ヘクトライト等のフェロケイ酸塩を主体とする鉱物系増粘剤(有機変性層状無機添加剤);キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリオキシエチレンウレタン樹脂、変性ウレア(変性カルバミド)樹脂、アクリル系樹脂、これらのアルカリ膨潤性エマルション(ASE)およびこれらを疎水性修飾した疎水性会合型シックナー等が例示される。疎水性会合型シックナーとしては、例えば、疎水性ポリオキシエチレンウレタン樹脂または非イオン型疎水性ポリオキシエチレンブロック共重合体(HEUR)、疎水性修飾アルカリ可溶性エマルション(HASE)、疎水性ヒドロキシエチルセルローズ(HMHEC)等が代表例として挙げられる。加飾材料を含むインク組成物において、レオロジー調整材は、当該加飾材料の沈降を防止する作用を示し得る点においても好ましい。
インク組成物の粘度はこれに限定されるものではないが、レオメータを用い、25℃で、せん断速度を1000/sとして測定したときの粘度が、200mPa・s以下であることが好ましい。これにより、相対的に低いエア圧(例えば0.1MPa)であってもディスペンサから好適に吐出できるインク組成物となり得る。1000/sにおける粘度は、180mPa・s以下が好ましく、160mPa・s以下がより好ましく、140mPa・s以下や、120mPa・s以下や、100mPa・s以下などであってよい。しかしながら、1000/sにおける粘度が低すぎると、ノズルから吐出されるインク組成物の粘度が低すぎてタレを生じてしまうために好ましくない。1000/sにおける粘度の下限はこれに限定されるものではないが、一例として、40mPa・s以上とすることが例示される。
なお、このようなインク組成物は、非ニュートン流体のインクである。このインク組成物は、非ニュートン流動性を示すようにその配合が調整されている。このことにより、上記のとおり、ディスペンサによって供給する場合であっても、タレることなく断面形状を維持することができる。また、より安定した非ニュートン流動性を実現するために、このインク組成物は、溶剤を含まない態様であり得る。
ここで、非ニュートン流体とは、ニュートン流体に当てはまらない流体の総称であり、流れの剪断応力(接線応力)と流れの速度勾配(ずり速度、せん断速度)との関係が線形ではない粘性を有する流体を意味する。なおインク組成物は、より好ましくは、擬塑性流体である。インク組成物が擬塑性流体であることで、力を加えることにより粘度が低下し、力を加えるまでは高い粘度を示す。このことにより、ディスペンサからのインク組成物の供給に際して、例えば供給圧を加えることで、インク組成物の供給性(流動性)が向上するために好ましい。また、ディスペンサから吐出されてせん断速度から開放されたインク組成物は、基材上で流動性が低減されて滲んだりタレ難くなり、形状精度の高い加飾を行うことができて好ましい。
以上の、ここに開示されるインク組成物は、上記の各成分を公知の手法に従い混合することにより調製することができる。例えば、重合性化合物、重合開始剤、色材を含むエマルジョンおよびその他の成分等を、公知の混合装置または撹拌装置を用いて均一に混合することにより作製することができる。
そしてこのように調製されたインク組成物は、他の側面において、以下の加飾方法により基材を加飾するために好適に用いることができる。すなわち、ここに開示される加飾方法は、上記のディスペンサ用インク組成物を、ディスペンサを用いてメディア(基材)に供給する工程、および、上記メディアに吐出された上記ディスペンサ用インク組成物を硬化させてインク硬化物を形成する工程、を含む。
このような基材を構成する素材は特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂材料、金、銀、銅、プラチナ、真鍮、アルミ、鉄、チタン、ステンレス等の金属材料はもちろんのこと、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革、木材板、カーボン、紙類、布帛などであってもよい。また基材の形状も特に制限されず、シート状や、携帯電話ケースや化粧品ケース、電子タバコの外装材、アクセサリやフォトフレーム等の立体構造体等であってよい。なお、本技術では、エネルギー線硬化性の重合性化合物を含むインクを用いることから、基材は、インクとの相溶性の高い樹脂材料によって構成されていることが好ましい。
図4は、ここに開示される加飾方法を好適に実現することができる加飾装置10の概念図である。図面中の符号U、D、F、Rr、L、Rは、それぞれ垂直方向の上、下、水平方向における前、後、左、右を示している。ただし、左、右とは、加飾装置10の正面にいる作業者から見た左、右をそれぞれ意味し、また、前、後とは、加飾装置10から作業者に向かう方向を前、遠ざかる方向を後とする。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態において、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向であり、本実施形態では水平面において主走査方向Yと直角に交わる方向である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。図面中の符号Zは高さ方向を表す。高さ方向は主走査方向Yおよび副走査方向Xと交差する方向であり、本実施形態で高さ方向Zは上下方向である。すなわち、本実施形態では方向X,Y,Zは互いに直交する空間座標系となり得る。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
この加飾装置10は、被加飾物5である基材を載置するためのテーブル20と、ディスペンサ30と、テーブル20およびディスペンサ30の位置を相対的に移動させる移動装置40、50、60とを備えている。移動装置は、ディスペンサ30を主走査方向Yに移動させるディスペンサ移動装置40と、テーブル20を高さ方向で移動させる上下移動装置50と、テーブル20を副走査方向Xに移動させる前後移動装置60と、を含む。これらの移動装置40、50、60は、図示しない制御装置に接続されており、その駆動が制御される。制御装置がこれらの移動装置40、50、60を制御することによって、テーブル20に載置された被加飾物5とディスペンサ30との三次元における相対的な位置関係と、ディスペンサ30の相対的な移動速度とは、任意に制御される。被加飾物5に対するディスペンサ30の相対的な位置と移動速度とは、たとえば、制御装置が読み取った二値画像データに基づいて制御される。
なお、制御装置の構成は特に制限されず、例えばマイクロコンピュータであってよい。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されず、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データ等の各種情報を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備え得る。また、制御装置は、例えばFPGA(field-programmable gate array)等の書き換え可能なプログラマブルロジックデバイスによって構成されていてもよい。FPGAは、例えば、集積回路によって構成されるCPUコアや、乗算器、RAM、および関連する周辺回路等を含むことができる。
ディスペンサ30は、非接触の流体供給装置であり、インク組成物をテーブル20に載置される被加飾物5に供給する装置である。ディスペンサ30は、ディスペンサ移動装置40に着脱可能に固定されており、主走査方向Yにおける位置とその移動速度とが制御されている。ディスペンサ30は、テーブル20より上方に配置されている。ディスペンサ30は、シリンジ32、ニードル34、図示しないシリンジバルブ、エア圧送部36、ディスペンサ制御装置38、および、図示しない2つの紫外線ランプを備えている。シリンジ32にはインク組成物が収容される。シリンジ32の下端には、シリンジバルブが接続され、このシリンジバルブを介してニードル34が着脱自在に装着されている。シリンジバルブは、ディスペンサ制御装置38に電気的に接続されて、シリンジ32とニードル34とを連通したり遮断したりする。シリンジ32の上端には、エア圧送部36が接続されている。エア圧送部36はディスペンサ制御装置38に電気的に接続されて、シリンジに送るエアの量と圧力とを制御する。シリンジ32には、紫外線ランプが左右に一つずつ配置されている。紫外線ランプはディスペンサ制御装置に電気的に接続されて、シリンジから吐出されたインク組成物に対して紫外線を照射するようその動作が制御されている。ディスペンサ30は、ニードル34の下端がテーブル20に載置される被加工物5に接触しないように、その上下方向の位置を調整可能に構成されていてもよい。
吐出工程において、加飾装置10は、移動装置40、50、60を制御することによって、被加飾物5とディスペンサ30との相対的な位置と移動速度とを制御する。また、加飾装置10は、ディスペンサ制御装置を制御することで、所定のエア圧でシリンジ内にエアを供給してインク組成物を加圧する。そして、加飾装置10は、二値画像データに基づいてディスペンサ制御装置を制御し、ニードルバルブを開閉することで、被加飾物5の所定の位置に、ニードルの先端からインク組成物を吐出させる。このことにより、インク組成物をディスペンサ30を用いて被加飾物5に供給することができる。インク組成物は、例えば、任意の直線、曲線、点線、あるいは、独立した点の形状で、被加工物5に供給される。
硬化工程において、加飾装置10は、インク組成物を硬化させるための紫外線を発生させる。加飾装置10は、例えば、インク組成物をディスペンサ30から被加飾物5に供給したのちに、ディスペンサ制御装置を制御して、紫外線ランプによって紫外線を発生させる。このことにより、被加飾物5に供給されたインク組成物に紫外線を照射する。その結果、インク組成物が硬化されて、被加飾物5の表面にインク硬化物が形成される。インク硬化物は、上記インク組成物の供給形状に対応した凸部形状を有する。このことにより、被加飾物5の表面に所望の凹凸意匠を付与することができる。なお、この凹凸意匠は、例えば、成形型を必要とせず、二値画像データを基に、基材の表面に直接、オンデマンドで必要数だけ手軽に形成することができる。これにより、成形型を作製するコストおよび手間を省いて、基材に対して手軽に凹凸加飾(エンボス加飾)を施すことができる。
また、このようなインク組成物の一度の供給により形成される凸部の形状は、インク組成物の具体的な性状の他、使用するディスペンサの構成や吐出条件を調整することで、任意に設定することができる。例えば一例として、上述の細線連続描画性の評価条件として示された条件で細線を描画する場合、ディスペンサからの一度のインク組成物の供給で、線幅が凡そ0.5〜5mm程度、高さが凡そ0.5〜2.5mm程度の凸部形状を形成できることが確認されている。ここに開示される技術では、例えば、0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上、例えば0.8mm、典型的には1mm以上の嵩高さの連続細線による加飾を施すことができる。なお、一例として、上述の細線連続描画性の評価において、供給直後のインク組成物の嵩高さをH1、供給直後の樹脂基材を90°に1分間傾けた後のインク組成物の嵩高さをH2としたとき、H2/H1は、例えば、0.5以上とすることができ、0.6以上であってよく、0.7以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。一度のインク組成物の供給で、より凹凸の大きな加飾を施すとの観点からは、H2/H1は、0.9以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.1以上が特に好ましい。H2/H1の上限は特に制限されないが、例えば、1.5程度であってよい。
なお、インク組成物が色材を含まない構成においては、被加飾物5の表面に形成されたインク硬化物は透明であり得る。そのため、基材の表面が視認されて外観に現れ得る。したがって、ここに開示される加飾方法においては、被加飾物5である基材の表面に、予め所望の色彩で図柄を印刷するなどしておいてもよい。このことにより、下地である基材の表面意匠と、インク硬化物による凹凸意匠とが組み合わされて、色彩を伴う立体的な意匠を実現することができる。この下地を印刷するためのイメージデータは、ディスペンサによるインク組成物の供給工程で用いた二値画像データと相関させておくことが好ましい。例えば、二値画像データは、下地を印刷するためのイメージデータを二値化することにより作製したものであってよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態において、インク組成物はエネルギー線硬化性のインク組成物であった。しかしながら、インク組成物の構成はこれに限定されない。例えば、インク組成物は、溶剤揮散型のアクリルエマルションタイプのインク組成物であってもよい。この場合、インク組成物は、例えば、アクリル系樹脂のモノマーおよびオリゴマーと、これらを溶解または分散させる水溶性有機溶剤と、を含む構成が例示される。かかる水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、n−プロパノールなどの炭素数が1〜6程度の低級アルコール類、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、n−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒等が挙げられる。アクリルエマルションタイプのインク組成物を用いることで、例えば臭気を発することなく加飾を行うことができる。
また上記実施形態において、ディスペンサは吐出部がニードル形状であった。しかしながら、ディスペンサの吐出部の形状はこれに限定されず、公知の各種の吐出部等を用いることができる。そのような吐出部の一例として、円錐(テーパー)形状の吐出部が挙げられる。このような円錐形状の吐出部を採用することで、シリンジ内での圧力損失が抑えられ、例えば、高粘度ナインくそ生物を用いる場合によりスムーズな吐出を実現することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
〔ディスペンサ用インク組成物の調製〕
以下のようにして、例1〜6のインク組成物を調製した。
まず、基本のインク組成物として、ホームセンタ等で入手できる無臭の内外部用塗料(ニッペホームプロダクツ(株)製、水性アクリルエマルションペイント、品名:水性フレッシュワイド 透明クリヤー)を用意して例1のインク組成物とした。また、
例2のインク組成物は、例1の水性塗料100gに対し、レオロジー調整剤として、96%濃グリセリン水溶液50gに、BASF(株)製のアクリルコポリマー系増粘剤(AS1130NS)2.5gと、信越化学工業(株)製のアセチレングリコール系界面活性剤(オルフィンE1010)0.3gとを均一に混合したものを添加し、ジメチルアミノエタノールでpHを9に調整することで用意した。例3のインク組成物は、例2の96%濃グリセリン水溶液50gに代えて、精製水50gを用い、その他の条件は同様にして用意した。例4のインク組成物は、レオロジー調整剤として、精製水50gとビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−7420との混合溶液を用い、その他は同様にして用意した。
以下のようにして、例1〜6のインク組成物を調製した。
まず、基本のインク組成物として、ホームセンタ等で入手できる無臭の内外部用塗料(ニッペホームプロダクツ(株)製、水性アクリルエマルションペイント、品名:水性フレッシュワイド 透明クリヤー)を用意して例1のインク組成物とした。また、
例2のインク組成物は、例1の水性塗料100gに対し、レオロジー調整剤として、96%濃グリセリン水溶液50gに、BASF(株)製のアクリルコポリマー系増粘剤(AS1130NS)2.5gと、信越化学工業(株)製のアセチレングリコール系界面活性剤(オルフィンE1010)0.3gとを均一に混合したものを添加し、ジメチルアミノエタノールでpHを9に調整することで用意した。例3のインク組成物は、例2の96%濃グリセリン水溶液50gに代えて、精製水50gを用い、その他の条件は同様にして用意した。例4のインク組成物は、レオロジー調整剤として、精製水50gとビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−7420との混合溶液を用い、その他は同様にして用意した。
次いで、光造形用として一般に提供されているアクリル系UV硬化樹脂を用意し、例5のインク組成物とした。また、例5のUV硬化樹脂に対し、レオロジー調整剤として、例6:(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−410)を添加し、均一に混合することで、例6のインク組成物とした。
〔せん断特性〕
用意した例1〜6のインク組成物について、レオメータ(アントンパール社製、MCR−302)を用い、25℃の測定環境下で、せん断速度(ずり速度)を0.5〜1000s−1で変化させたときの粘度を測定し、その結果を図1に示した。図1には、義塑性流体として知られているマヨネーズについての結果も併せて示した。せん断粘度は、直径50mm、角度2°のコーンプレート(チタン製)を用いて測定した。なお、例5,6のインク組成物のせん断粘度の測定は、紫外線を遮断したイエロールーム内で実施した。
用意した例1〜6のインク組成物について、レオメータ(アントンパール社製、MCR−302)を用い、25℃の測定環境下で、せん断速度(ずり速度)を0.5〜1000s−1で変化させたときの粘度を測定し、その結果を図1に示した。図1には、義塑性流体として知られているマヨネーズについての結果も併せて示した。せん断粘度は、直径50mm、角度2°のコーンプレート(チタン製)を用いて測定した。なお、例5,6のインク組成物のせん断粘度の測定は、紫外線を遮断したイエロールーム内で実施した。
〔細線連続描画性〕
用意した例1〜6のインク組成物をシリンジに収容し、シリンジを移動させながらディスペンサで加圧することで、樹脂メディアにインク組成物による細線が連続的に描画できるかどうかを確認した。シリンジには、ポリプロピレン製のUVブロックシリンジ(武蔵エンジニアリング(株)製、PSY−30FU−OR、外径φ26.2mm、容量30mL)を使用した。シリンジの先端には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の内径が0.4mmのニードル(岩下エンジニアリング(株)製、TN−UV−0.4−25)を用い、突出部を装着可能に加工して用いた。ディスペンサとしては、エアー加圧式ディスペンサ(Dispenser Tech社(台湾)製、E6000)を用いた。シリンジの移動には、XYZ移動装置(Dispenser Tech社(台湾)製、DT−300F)を用いた。樹脂メディアとしては、PET製インクジェットメディア((株)二樹エレクトロニクス製、レジン透明PET、ノリ無し、PET#100)を使用した。インク吐出条件は、以下の表1に示す通りとした。なお、この細線連続描画性の評価は、紫外線を遮断したイエロールーム内で実施した。
用意した例1〜6のインク組成物をシリンジに収容し、シリンジを移動させながらディスペンサで加圧することで、樹脂メディアにインク組成物による細線が連続的に描画できるかどうかを確認した。シリンジには、ポリプロピレン製のUVブロックシリンジ(武蔵エンジニアリング(株)製、PSY−30FU−OR、外径φ26.2mm、容量30mL)を使用した。シリンジの先端には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の内径が0.4mmのニードル(岩下エンジニアリング(株)製、TN−UV−0.4−25)を用い、突出部を装着可能に加工して用いた。ディスペンサとしては、エアー加圧式ディスペンサ(Dispenser Tech社(台湾)製、E6000)を用いた。シリンジの移動には、XYZ移動装置(Dispenser Tech社(台湾)製、DT−300F)を用いた。樹脂メディアとしては、PET製インクジェットメディア((株)二樹エレクトロニクス製、レジン透明PET、ノリ無し、PET#100)を使用した。インク吐出条件は、以下の表1に示す通りとした。なお、この細線連続描画性の評価は、紫外線を遮断したイエロールーム内で実施した。
そして、吐出した例1〜6のインク線について、吐出直後の線幅W1および嵩高さH1と、吐出直後の樹脂基材を90°に1分間傾けた後のインク線の線幅W2および嵩高さH2とを測定した。線幅および嵩高さの測定には、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VHX−5000)を用いた。インク線の線幅は、まず、基材に垂直な方向から、総倍率約100倍で、かつ、同軸落射照明により高コントラストで撮像し、得られた像を基にマイクロスコープに付属の画像解析ソフトを用いてインク線の長手方向に直交する幅方向の寸法を測定した。また、インク線の嵩高さは、基材とインク線との界面を含むインク線の断面を、基材の表面に平行で、かつ、インク線の長手方向に沿って、総倍率1000倍で、かつ、明視野照明により撮像し、得られた像を基にマイクロスコープに付属の画像解析ソフトを用いてインク線の最も嵩高いところの寸法(基材表面に垂直な方向における最大寸法)を測定した。そして、測定された線幅W1、W2および嵩高さH1、H2から、比W2/W1および比H2/H1を算出し、その結果を下記の表2に示した。また、算出結果から、比W2/W1が1〜1.2の範囲内の場合に、樹脂基材を傾けたときにインク線にタレ「なし」と評価し、比W2/W1が1.2を超過した場合にタレ「あり」と評価した。これらの結果を、下記の表2に示した。なお、連続線が描画できなかった場合は「吐出不可」と評価し、表2に「−」で示した。また、参考のために、例1および例5のインク組成物について、デジタルマイクロスコープによる撮像を図2、3にそれぞれ示した。線幅W1、W2の測定は、同軸落射照明により撮像しているため、インク線は全体が概ね暗く、正反射光が多い中心部が白く見える。
例1のインク組成物は、建材として市販されているクリア塗料であるが、例1のインク組成物によって描画されたインク線は、図2に示すように、線幅W1が約5.15mmであり、線幅W2が約5.12mmであり、W2/W1が約1.0と、0.9以上1.2以下という条件を満たす。換言すると、ディスペンサを用いた上記条件からなる評価方法によって、タレなく、100mmの細線を描画できることが確認された。このことから、例えば、異なる用途で用いるために調整された塗料であっても、W2/W1が所定の条件を満たすことで、ディスペンサによる細線連続描画性に優れていると判断できることがわかった。そしてこのクリア塗料は、ここに開示される加飾方法におけるディスペンサ加飾用材料として好適に使用できることがわかった。また、例1のインク組成物は、インクのタレを誘発する状況においてもその断面形状を維持し得る。例えば、H2/H1も約1.0と、0.7以上の高い値を維持し得る。このことから、上記評価条件を満たすことで、例えば、ディスペンサによるインク供給後に、直ちにインク線を硬化させる必要が軽減されることがわかる。なお、具体的には示さないが、例1のインク組成物は、移動速度を10mm/sのほか、210mm/sに設定した場合でも、W2/W1の値が約1.0となることが確認されている。
一方で、レオロジー調整剤により流動性を変化させた例2〜4のインク組成物は、図1に示すように、例1のインク組成物とはレオロジー特性が変化されて、細線連続描画性も異なる結果となった。例えば、例2のインク組成物は、せん断速度が高くなるほど例1のインク組成物よりもせん断粘度が高い。本発明者の検討によると、上記評価で使用したシリンジから吐出されるときにインク組成物に作用するせん断は1000s−1以上となり、例1のインク組成物よりも大幅に粘度が高い。しかしながら、例2のインク組成物は、細線に途切れやダレが発生することなく、連続して細線を描くことができた。このことから、この粘度領域で例2のインク組成物はW2/W1が上記条件を満たし、細線連続描画性に優れることが確認できた。したがって、例2のインク組成物も、ここに開示される加飾方法におけるディスペンサ加飾用材料として好適に使用できることがわかった。
例3のインク組成物は、せん断速度が0.5〜1000s−1の全領域において例1のインク組成物よりもせん断粘度が低い。したがって、ディスペンサ移動速度を例えば210mm/sへと速めた場合でも、細線が途切れることなく連続的に綺麗に描画できることが確認できた。この場合も、表2に示すように、W2/W1が約1.1と、0.9以上1.2以下の条件を満たす。このことから、レオロジー特性が変化されたインク組成物であっても、上記条件を満たすものであれば、ここに開示される加飾方法における加飾用材料として好適に使用できることがわかった。
これに対し、例4のインク組成物は、例3のインク組成物よりも更にせん断粘度が低い。その差は、例えば1/sで約5.7Pa・s、1000/sで約50mPa・sと僅かであるが、10〜210mm/sの全てのディスペンサ移動速度で90°に傾けた際にインクのタレが発生することがわかった。このことから、ディスペンサによる細線連続描画性は、インク組成物を構成するベースの材料(例えば主成分)によるものではなく、そのレオロジー特性に依存することが確認できた。そして、インク組成物が上記評価条件を満たすことで、ここに開示される加飾方法におけるディスペンサ加飾用材料として好適に使用できることがわかった。
また、例5、6のインク組成物は、図1に示したように、せん断速度が0.5〜1000s−1の領域における粘度変化が比較的小さいものの、シリンジからの吐出時のせん断速度に近い1000s−1から100s−1程度の領域では、例1と例2のインク組成物の間の粘度を有する。したがって、例5、6のインク組成物はいずれも細線連続描画性が良好であるように予想される。しかしながら、上記表2に示したように、例5のインク組成物についてのW2/W1は約1.35と0.9〜1.2の範囲をはずれ、インクにダレが生じることがわかった。しかしながら、W2/W1が約1.0と0.9〜1.2の範囲に収まる例6のインク組成物については、ダレが生じることなく、細線連続描画性が良好であることが確認できた。すなわち、上記条件を満たす例6のUV硬化性インク組成物については、インクの供給から紫外線を照射するまでの時間が長くなってもダレの発生が抑制され、加飾により一層好適な性状を備えることがわかった。
なお、特許文献2には、ずり速度が20(1/s)での粘度が5000cps以上100万cps以下であって、ずり速度20(1/s)での粘度とずり速度2.5(1/s)での粘度の比で表されるチクソ比が2.0以上の範囲の紫外線硬化性樹脂を用いれば、ICカードの表面にディスペンサで所望の立体形状の文字を印字できる旨の記載がある。ここで、このような高い粘度を満たすインク組成物は、上記例1〜4のインク組成物のうち、例2のインク組成物のみと、極めて限られた条件であることがわかる。このことから、特許文献2に開示された技術は、特定の寸法の小さな文字を高く印字するには都合がよいが、ディスペンサで長尺の細線を描画するには決して十分な条件ではないことが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。例えば、上記例では、ディスペンサ用インク組成物としてアクリルエマルションペイントを用いたが、インク組成物の種類はこれに限定されない。ここに開示されるディスペンサ用インク組成物は、例えば、エネルギー線を照射することで硬化するエネルギー硬化型の樹脂組成物であってもよい。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 加飾装置
20 テーブル
30 ディスペンサ
40、50、60 移動装置
20 テーブル
30 ディスペンサ
40、50、60 移動装置
Claims (7)
- ディスペンサによって描画するために用いるインク組成物であって、
当該インク組成物を、内径が0.4mmのニードルを備えたエア加圧式ディスペンサを用い、エア圧が0.1MPa以上0.7MPa以下であって、移動速度が10mm/s以上210mm/s以下のいずれかの条件で、樹脂基材上に直線状に供給したとき、
前記インク組成物は少なくとも100mmの連続線を形成し、
供給直後の前記インク組成物の線幅をW1とし、供給直後の前記樹脂基材を90°に1分間傾けた後の前記インク組成物の線幅をW2としたとき、W2/W1が0.9以上1.2以下である、ディスペンサ用インク組成物。 - レオメータを用い、25℃で、せん断速度を103s−1として測定したときの粘度が、200mPa・s以下である、請求項1に記載のディスペンサ用インク組成物。
- エネルギー線硬化型のモノマーおよびオリゴマーのそれぞれを少なくとも一種含む、請求項1または2に記載のディスペンサ用インク組成物。
- さらに、レオロジー調整剤を含む、請求項3に記載のディスペンサ用インク組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスペンサ用インク組成物を、ディスペンサを用いてメディアに供給する工程、および
前記メディアに吐出された前記ディスペンサ用インク組成物を硬化させてインク硬化物を形成する工程、を含む加飾方法。 - 前記供給工程では、請求項3または4に記載のディスペンサ用インク組成物を用い、
前記硬化工程では、メディアに吐出された前記ディスペンサ用インク組成物にエネルギー線を照射する、請求項5に記載の加飾方法。 - 前記ディスペンサによる前記ディスペンサ用インク組成物の供給は、二値画像データに基づいて実施する、請求項5または6に記載の加飾方法。
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