以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て略矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引出方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能の他、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する略矩形の金属版である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図3は、図2の蓄電モジュールの一部を示す拡大断面図である。図2及び図3に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12と、電極積層体11の一端に積層されている金属板50とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、当該積層体の積層方向Dの一端側に配置された負極終端電極18と、当該積層体の積層方向Dの他端側に配置された正極終端電極19とを含む。金属板50は、電極積層体11の負極終端電極18の外側に積層されている。換言すれば、負極終端電極18は、バイポーラ電極14と金属板50との間に配置されている。金属板50の一部は、負極終端電極18に接触している。
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む電極板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の電極板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の電極板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向における他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる略矩形の金属箔である。電極板15の周縁部15cは、略矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
セパレータ13は、例えばシート上に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として略矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の周縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。すなわち、封止体12は、電極積層体11の側面11aを囲むように設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の周縁部15cに接合された複数の電極支持部21と、側面11aに沿って複数の電極支持部21を外側から包囲し、複数の電極支持部21のそれぞれに接合された筐体部22とを含んでいる。電極支持部21及び筐体部22は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。電極支持部21及び筐体部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
各電極支持部21は、電極板15の一方面15aにおいて周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て略矩形枠状をなしている。電極支持部21は、例えば超音波又は熱によって電極板15に溶着され、気密に接合されている。電極支持部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。各電極支持部21の内側は、積層方向Dから見て、電極板15の周縁部15cと重なっている。各電極支持部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、筐体部22に支持されている。
筐体部22は、電極積層体11及び電極支持部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁を構成している。筐体部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。筐体部22は、積層方向Dを軸方向として延在する略矩形の筒状(枠状)を呈している。筐体部22は、例えば射出成形時の熱によって電極支持部21の外表面に溶着されている。
電極支持部21及び筐体部22(封止体12)は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。本実施形態では、筐体部22は、電極支持部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間に、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
金属板50は、負極終端電極18に対向する一方面50a及び当該一方面50aの反対側の他方面50bを含む。金属板50は、周縁部50cと当該周縁部50cに囲まれた中央部50dとを有している。金属板50は、積層方向Dから見て略矩形状である。周縁部50cは、略矩形枠状である。周縁部50cと中央部50dは、互いに連続している。金属板50は、任意の金属により構成することができるが、一例として電極板15と同一のものとすることができる。たとえば、金属板50は、活性物質層が形成されていない金属箔(未塗工箔)である。
金属板50の一方面50aは、中央部50dで負極終端電極18の電極板15の一方面15aに接触している。換言すれば、中央部50dは、負極終端電極18の電極板15と接触している部分である。中央部50dの縁は、積層方向Dから見て、負極終端電極18の負極17の外縁17eよりも外側に位置している。すなわち、中央部50dが負極終端電極18の電極板15と接触している領域は、負極終端電極18の負極17が負極終端電極18の電極板15と接触している領域に対して一回り大きくなっている。
複数の電極支持部21は、第1樹脂部41(第3封止部)、第2樹脂部42(第1封止部)、第3樹脂部43、複数の第4樹脂部44(第2封止部)、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46を含んでいる。第1樹脂部41(第3封止部)は、金属板50の他方面50b(外面側)の周縁部50cに接合されている。第1樹脂部41は、金属板50の他方面50bの周縁部50cの全周にわたって、気密に接合されている。本実施形態では、第1樹脂部41は、金属板50の他方面50bの周縁部50cと接合している面の反対側の面では筐体部22と接している。
第2樹脂部42は、負極終端電極18の電極板15の周縁部15cと、金属板50の周縁部50cとの間に位置している。第2樹脂部42は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aの周縁部15cと金属板50の一方面50aの周縁部50cとに接合されている。第2樹脂部42は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aの周縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。第2樹脂部42は、金属板50の一方面50aの周縁部50cの全周にわたって、気密に接合されている。第2樹脂部42と第1樹脂部41とは、外縁で互いに溶着されている。
第3樹脂部43は、負極終端電極18の電極板15の周縁部15cと、負極終端電極18に面しているバイポーラ電極14の電極板15の周縁部15cとの間に位置している。第3樹脂部43は、負極終端電極18に面しているバイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの周縁部15cに接合されている。第3樹脂部43は、負極終端電極18に面しているバイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの周縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。
複数の第4樹脂部44は、それぞれ、バイポーラ電極14の電極板15の周縁部15cと、当該バイポーラ電極14とセパレータ13を挟んで隣り合う別のバイポーラ電極14の電極板15の周縁部15cとの間に位置している。各第4樹脂部44は、互いに隣り合うバイポーラ電極の少なくとも一方に接合されている。本実施形態では、各第4樹脂部44は、バイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの周縁部15cに接合されている。各第4樹脂部44は、バイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの周縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。
第5樹脂部45は、正極終端電極19の電極板15の周縁部15cと、正極終端電極19に面しているバイポーラ電極14の電極板15の周縁部15cとの間に位置してる。第5樹脂部45は、正極終端電極19の電極板15の一方面15aの周縁部15cに接合されている。第5樹脂部45は、正極終端電極19の電極板15の一方面15aの周縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。
第6樹脂部46は、正極終端電極19の電極板15の他方面15b(外面側)の周縁部15cに接合されている。第6樹脂部46は、正極終端電極19の電極板15の周縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。本実施形態では、第6樹脂部46は、正極終端電極19の電極板15と接合している面の反対側の面で筐体部22と接合している。本実施形態では、第2樹脂部42、第3樹脂部43、複数の第4樹脂部44、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46は、いずれも同じ厚さである。
電極板15の周縁部15cと電極支持部21とが接合する接合領域K1において、電極板15の表面は、粗面化されている。本実施形態では、第2樹脂部42(第1封止部)、第3樹脂部43、第4樹脂部44、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46の全てと電極板15との接合領域K1において、電極板15が粗面化されている。本実施形態では、電極板15の一方面15aの全体が粗面化されている。接合領域K1のみが粗面化されていてもよい。
金属板50の周縁部50cと電極支持部21とが接合する接合領域K2において、金属板50の一方面50a及び他方面50bは、粗面化されている。本実施形態では、第1樹脂部41(第3封止部)及び第2樹脂部42(第1封止部)と金属板50の周縁部50cとの接合領域K2において、金属板50が粗面化されている。本実施形態では、金属板50の一方面50a及び他方面50bの全体が粗面化されている。接合領域K2のみが粗面化されていてもよい。第2樹脂部42と負極終端電極18の電極板15との接合領域K1のみにおいて電極板15が粗面化されていてもよいし、第1樹脂部41及び第2樹脂部42の少なくとも一方と金属板50との接合領域K2のみにおいて金属板50が粗面化されていてもよい。
粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現され得る。電極板15又は金属板50の表面に複数の突起が形成されることで、電極板15又は金属板50と電極支持部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込む。その結果、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15又は金属板50と電極支持部21との間の接合強度が向上しうる。粗面化の際に形成される突起は、例えば表面に形成された凸部を基端として基端から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
蓄電モジュール4では、負極終端電極18の電極板15と金属板50と第2樹脂部42とによって、余剰空間VAが形成されている。余剰空間VAには、電解液が収容されない。具体的には、余剰空間VAは、負極終端電極18の電極板15の一方面15aと金属板50の一方面50aと第2樹脂部42の内縁42aとによって囲まれた部分である。
蓄電モジュール4では、第2樹脂部42、第3樹脂部43、複数の第4樹脂部44、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46は、いずれも断面が略矩形状である。第2樹脂部42(第1封止部)の内縁42aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、第4樹脂部44(第2封止部)の内縁44aよりも内側に位置している。すなわち、第2樹脂部42の内縁42aは、積層方向Dから見て、第4樹脂部44の内縁44aから負極終端電極18の負極17側に幅Wだけ張り出ている。幅Wは、第4樹脂部44の内縁44aと負極17の外縁17eとの最短距離よりも小さい。余剰空間VAは、内部空間Vよりも小さい。
本実施形態では、第2樹脂部42の内縁42aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、第1樹脂部41の内縁41a、第3樹脂部43の内縁43a、複数の第4樹脂部44の内縁44a、第5樹脂部45の内縁45a、及び第6樹脂部46の内縁46aのいずれよりも内側に位置している。本実施形態では、第1樹脂部41の内縁41a、第3樹脂部43の内縁43a、複数の第4樹脂部44の内縁44a、第5樹脂部45の内縁45a、及び第6樹脂部46の内縁46aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、積層方向Dに平行な同一面に位置している。
第2樹脂部42の内縁42aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、負極終端電極18の負極17の外縁17eよりも外側に位置している。第2樹脂部42の内縁42aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、各バイポーラ電極14の負極17の外縁17eよりも外側に位置している。
本実施形態では、第2樹脂部42の内縁42aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、全周にわたって、第4樹脂部44の内縁44aよりも内側かつ負極終端電極18の負極17の外縁17eの外側に位置している。第1樹脂部41、第2樹脂部42、第3樹脂部43、複数の第4樹脂部44、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46のそれぞれの内縁の位置は、第1樹脂部41、第2樹脂部42、第3樹脂部43、複数の第4樹脂部44、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46のそれぞれが電極板15に接している面の最も内側の位置によって規定される。
次に、蓄電装置1の製造方法の一例について説明する。この方法では、まず、上記の蓄電モジュール4を製造する。蓄電モジュール4の製造方法は、一次成形工程と、積層工程と、二次成形工程と、注入工程と、を備える。一次成形工程では、所定数のバイポーラ電極14と負極終端電極18及び正極終端電極19を用意し、それぞれの電極板15の周縁部15cの一方面15aに電極支持部21を溶着する。また、金属板50を用意し、当該金属板50に第1樹脂部41及び第2樹脂部42を溶着する。
積層工程では、電極支持部21が電極板15の周縁部15c同士の間に配置されるようにセパレータ13を介してバイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19を積層することにより、電極積層体11を形成する。また、第2樹脂部42上に第1樹脂部41が配置されるように、金属板50を電極積層体11の一端に配置する。二次成形工程では、射出成形の金型(不図示)内に電極積層体11及び金属板50を配置した後、金型内に溶融樹脂を射出することにより、電極支持部21を包囲するように筐体部22を形成する。これにより、電極積層体11の側面11aに封止体12が形成される。注入工程では、二次成形工程の後、バイポーラ電極14,14間の内部空間Vに電解液を注入する。これにより、蓄電モジュール4が得られる。
次に、図4及び図5を参照して蓄電モジュール4の作用効果について説明する。図4及び図5は、比較例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図である。図4に示されるように、比較例に係る蓄電モジュール100は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aのみに電極支持部21(封止体12)が接合され、他方面15bに電極支持部21が接合されていない。
蓄電モジュール100では、いわゆるアルカリクリープ現象により、内部空間Vに存在する電解液が負極終端電極18の電極板15の表面を伝わり、接合領域K1における電極板15と電極支持部21との間の隙間を通って電極板15の一方面15a側に滲み出ることがある。図4には、アルカリクリープ現象における電解液Lの移動経路を矢印Aで示す。このアルカリクリープ現象は、電気化学的な要因及び流体現象などにより、蓄電装置の充電時及び放電時並びに無負荷時において生じ得る。アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液Lの通り道がそれぞれ存在することにより生じ、時間の経過とともに進行する。
これに対し、本実施形態に係る蓄電モジュール4では、第2樹脂部42(第1封止部)が負極終端電極18の電極板15と金属板50との双方に接合されることで、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に余剰空間の封止構造が2段階に形成される。また、第2樹脂部42(第1封止部)に金属板が接合されることで、第2樹脂部42の剛性が高められる。これにより、アルカリクリープ現象によって第2樹脂部42が負極終端電極18の電極板15から剥離することが抑制され、アルカリクリープ現象の進行を抑制することができる。
図5に示されている比較例に係る蓄電モジュール101では、第2樹脂部42(第1封止部)の内縁42a及び第4樹脂部44(第2封止部)の内縁44aは、積層方向Dに平行な同一面に位置している。一方、蓄電モジュール4では、第2樹脂部42(第1封止部)の内縁42aは、第4樹脂部44(第2封止部)の内縁44aよりも内側に位置している。中央部50dの縁は積層方向Dから見て負極終端電極18の負極17の外縁17eよりも外側に位置しているため、余剰空間VAの容積を十分に抑えることができる。このため、余剰空間VAに存在する水分量を抑えることが可能となる。余剰空間VAに存在する水分量を抑えることで、アルカリクリープ現象の進行をより確実に抑えることができる。以上により、この蓄電モジュール4では、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることを抑制できる。
第2樹脂部42(第1封止部)の内縁42aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、負極終端電極18の負極17の外縁17eよりも外側に位置している。この構成によれば、余剰空間VAの容積を小さくしつつ、金属板50と負極終端電極18との間で導電性を確保することができる。
封止体12は、金属板50の周縁部50cの他方面50bに接合されている第1樹脂部41(第3封止部)を有している。この構成によれば、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に3段階の封止構造が形成されることとなる。
負極終端電極18の電極板15及び金属板50と第1樹脂部41(第3封止部)及び第2樹脂部42(第1封止部)との接合領域K1,K2において、負極終端電極18の電極板15及び金属板50は粗面化されている。この構成によれば、アンカー効果によって、第1樹脂部41及び第2樹脂部42と負極終端電極18の電極板15及び金属板50との接合強度の向上を図ることができる。したがって、第1樹脂部41及び第2樹脂部42の剥離を一層抑制でき、アルカリクリープ現象の進行をさらに抑制することが可能となる。
次に、図6を参照して、変形例に係る蓄電モジュール70について説明する。図6は、蓄電モジュール70の一部を示す拡大断面図である。図6は、図3に示されている蓄電モジュール4の一部に対応する部分を示している。
蓄電モジュール70は、蓄電モジュール4と同様に、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。封止体12は、電極板15の周縁部15cに接合された複数の電極支持部21と、側面11aに沿って複数の電極支持部21を外側から包囲し、複数の電極支持部21のそれぞれに接合された筐体部22とを含んでいる。複数の電極支持部21は、第1樹脂部41、第2樹脂部42と、第3樹脂部43と、複数の第4樹脂部44と、第5樹脂部45と、第6樹脂部46とを含んでいる。負極終端電極18の電極板15と金属板50と第2樹脂部42とによって、余剰空間VAが形成されている。第2樹脂部42の内縁42aは、電極積層体11の積層方向Dから見て、第4樹脂部44の内縁44aよりも内側に位置している。蓄電モジュール70は、第2樹脂部42の厚さが第4樹脂部44の厚さよりも小さくなっている点で、蓄電モジュール4と相違している。
余剰空間VAの容積は、第2樹脂部42の厚さT1(積層方向Dに沿った長さ)にも依存している。蓄電モジュール70においても、第2樹脂部42、第3樹脂部43、複数の第4樹脂部44、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46は、いずれも断面が略矩形状である。蓄電モジュール70では、第2樹脂部42(第1封止部)の厚さT1は、第4樹脂部44(第2封止部)の厚さT2よりも小さくなっている。蓄電モジュール70では、第3樹脂部43、複数の第4樹脂部44、第5樹脂部45、及び第6樹脂部46は、いずれも同じ厚さである。本実施形態では、第4樹脂部44の厚さT2は、複数の第4樹脂部44のそれぞれの厚さのうちの最小値である。すなわち、第2樹脂部42(第1封止部)の厚さT1は、複数の第4樹脂部44のそれぞれの厚さのうちの最小値よりも小さくなっている。
第2樹脂部42及び第4樹脂部44の厚さの値に幅方向でばらつきがある場合、第2樹脂部42及び第4樹脂部44の内縁の高さで比較する。すなわち、第2樹脂部42の内縁の高さは、第4樹脂部44の内縁の高さよりも小さくなっている。第2樹脂部42及び第4樹脂部44は枠状である。このため、第2樹脂部42及び第4樹脂部44の周方向でばらつきがある場合には、全周における平均で比較する。
第2樹脂部42(第1封止部)の厚さT1は、負極終端電極18の電極板15及び金属板50の少なくとも一方に粗面化によって形成された複数の突起(たとえば、電界メッキの突起)の高さの最大値よりも大きくなっている。本実施形態では、第2樹脂部42の厚さT1は、負極終端電極18の電極板15に粗面化によって形成された複数の突起の高さの最大値と、金属板50に粗面化によって形成された複数の突起の高さの最大値との合計よりも大きくなっている。
第2樹脂部42の厚さにばらつきがある場合には、第2樹脂部42の厚さの全周における平均と上述した突起の高さとを比較する。すなわち、第2樹脂部42の厚さの全周における平均は、負極終端電極18の電極板15及び金属板50の少なくとも一方に粗面化によって形成された複数の突起の高さの最大値よりも大きくなっている。なお、突起の高さは、プローブなどによって面に接触して計測してもよいし、レーザ光などによって非接触で計測してもよい。
図3に示されている蓄電モジュール4では、第2樹脂部42(第1封止部)の厚さは、第4樹脂部(第2封止部)の厚さと同じである。一方、蓄電モジュール70では、第2樹脂部42(第1封止部)の厚さT1は、第4樹脂部(第2封止部)の厚さT2よりも小さくなっている。これにより、余剰空間VAの容積をさらに小さくすることが可能となり、外部からの水分の進入よる余剰空間VAの湿度の上昇をさらに抑制することが可能となる。
第2樹脂部42(第1封止部)の厚さT1は、負極終端電極18の電極板15及び金属板50の少なくとも一方に粗面化によって形成された複数の突起の高さの最大値よりも大きくなっている。この構成によれば、粗面が第2樹脂部42を貫通することを防止できる。