図1〜図3を参照して、第1実施形態の作業機械1の速度制御装置について説明する。
作業機械1は、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械であり、例えばショベルである。作業機械1は、走行装置11と、作業装置13と、走行制御装置20と、運転席41と、操作部51と、コントローラ70と、を備える。
走行装置11は、走行可能である。走行装置11は、下部走行体であり、左右のクローラ11cを備える。
作業装置13は、作業を行うことが可能である。作業装置13は、上部旋回体13aと、アタッチメント13eと、を備える。上部旋回体13aは、走行装置11に対して旋回可能である。上部旋回体13aには、エンジン、および油圧機器(例えば走行制御装置20)などが搭載される。上部旋回体13aは、運転室13cを備える。アタッチメント13eは、上部旋回体13aに取り付けられる。アタッチメント13eは、例えば、ブーム、アーム、およびバケットなどである。作業装置13の作動には、上部旋回体13aの旋回、およびアタッチメント13eの作動が含まれる。作業装置13が行う作業は、例えば、土砂の掘削、すくい、ならしなどである。
走行制御装置20は、走行装置11の作動を制御する装置である。走行制御装置20は、油圧回路である。走行制御装置20は、コントローラ70により制御され、コントローラ70の指令に基づいて作動する。走行制御装置20は、ポンプ21と、走行モータ23と、走行制御弁25と、アンロード弁27と、比例弁30と、を備える。
ポンプ21は、油(作動油、圧油)を吐出する油圧ポンプである。ポンプ21の容量は可変であり(ポンプ21は可変容量ポンプであり)、ポンプ21が吐出する油の流量は可変である。
走行モータ23は、走行装置11を駆動させるモータである。走行モータ23は、油が供給されることで作動する油圧モータである。走行モータ23は、正回転および逆回転することで、クローラ11cを前進および後進させる。走行モータ23には、右側のクローラ11cを駆動させる右走行モータ23aと、左側のクローラ11cを駆動させる左走行モータ23bと、がある。
走行制御弁25は、走行モータ23の作動を制御する弁である。走行制御弁25は、ポンプ21と走行モータ23との間(油路における間)に設けられる。走行制御弁25は、ポンプ21から走行モータ23に流れる油の方向および流量を制御する。走行制御弁25には、右走行モータ23aを制御する右走行制御弁25aと、左走行モータ23bを制御する左走行制御弁25bと、がある。
アンロード弁27は、ポンプ21から吐出された油を、走行制御弁25を通さずに、タンクTに戻すための弁である。アンロード弁27の開口(開度)は、走行モータ23に供給しようとする油の流量に応じて変えられる。
比例弁30は、コントローラ70から入力される電気信号に基づいて、パイロット圧(油圧)を出力する弁である。比例弁30は、電気信号をパイロット圧に変換する弁である。比例弁30には、ポンプ比例弁31と、アンロード比例弁33と、走行制御比例弁35と、がある。ポンプ比例弁31は、ポンプ21の容量の指示値である電気信号を、ポンプ21に入力されるパイロット圧に変換する。アンロード比例弁33は、アンロード弁27の開度の指示値である電気信号を、アンロード弁27に入力されるパイロット圧に変換する。
走行制御比例弁35は、走行制御装置20のスプールの位置(開度および方向)の指令値である電気信号を、走行制御弁25に入力されるパイロット圧に変換する。走行制御比例弁35には、右走行前進比例弁35a1と、右走行後進比例弁35a2と、左走行前進比例弁35b1と、左走行後進比例弁35b2と、がある。右走行前進比例弁35a1は、右走行モータ23aの正回転(前進)用である。さらに詳しくは、右走行前進比例弁35a1は、右走行モータ23aを正回転させることで右側のクローラ11cを前進させるように、右走行制御弁25aにパイロット圧を出力するための弁である。同様に、右走行後進比例弁35a2は、右走行モータ23aの逆回転(後進)用である。左走行前進比例弁35b1は、左走行モータ23bの正回転(前進)用である。左走行後進比例弁35b2は、左走行モータ23bの逆回転(後進)用である。
運転席41は、操作者が座るための座席であり、運転室13c内に設けられる。
操作部51は、操作者に操作される。操作部51は、運転室13c内に設けられる。操作部51は、走行操作部53と、作業操作部55(操作レバー)と、制限値増減部61と、制御切替部63と、を備える。
走行操作部53は、走行装置11の走行を操作するための部分である。走行操作部53は、操作者が足で操作可能な操作ペダルを備える。走行操作部53により、走行モータ23の回転方向(正回転、逆回転)および回転速度が操作され、その結果、クローラ11cの進行方向(前進、後進)および走行速度が操作される。走行操作部53は、操作に応じた信号を出力する。走行操作部53は、操作に応じた電気信号を出力してもよく、操作に応じた圧力信号(パイロット圧)を出力してもよい(第2実施形態を参照)。走行操作部53には、右走行モータ23aを操作するための右走行操作部53aと、左走行モータ23bを操作するための左走行操作部53bと、がある。
作業操作部55(操作レバー)は、作業装置13の作動を操作するための部分である。作業操作部55は、操作者が手で操作可能な操作レバーを備える。この操作レバーには、右手用と左手用とがある(合計2本設けられる)。作業操作部55により、上部旋回体13aの旋回方向および旋回速度が操作される。作業操作部55により、アタッチメント13eの各部(例えばブーム、アーム、およびバケット)の回転方向および回転速度が操作される。作業操作部55は、操作に応じた信号を出力する。作業操作部55は、本実施形態では操作に応じた電気信号を出力し、操作に応じた圧力信号(パイロット圧)を出力してもよい(第2実施形態を参照)。
制限値増減部61は、後述する制限値V5(図2のS47、図3参照)の増減を操作するための部分である。制限値増減部61は、操作者が操作レバー(作業操作部55)から手を離さなくても操作可能に構成されることが好ましい(制御切替部63も同様)。制限値増減部61は、作業操作部55を構成する操作レバーに設けられる(制御切替部63も同様)。制限値増減部61は、操作者が指で操作可能なものである(制御切替部63も同様)。制限値増減部61は、例えば押されるもの(スイッチ、ボタンなど)でもよく、例えば回転可能なもの(ホイール、ダイヤルなど)でもよい。制限値増減部61は、制限値V5を増やすボタン(ノッチ)と、制限値V5を減らすボタン(ノッチ)と、を備えてもよい。制限値増減部61は、一方向に回転すると制限値V5を増やし、一方向とは逆の方向に回転すると制限値V5を減らすものでもよい。制限値増減部61は、制限値V5を段階的に(一段階ずつ)増減させるものでもよく、制限値V5を連続的に増減させるものでもよい。なお、制限値増減部61は、音声操作により操作されるものでもよい(第5実施形態を参照)(制御切替部63も同様)。
制御切替部63(制御ON−OFF切り替え手段)は、速度制限制御(後述)の有効と無効とを操作する(切り替える)ための部分である。制御切替部63は、スイッチ(例えば押しボタン)などである。
コントローラ70は、信号の入出力、演算(判定など)、情報の記憶などを行う。コントローラ70に、操作部51の操作に応じた信号が入力される。コントローラ70は、走行操作部53および作業操作部55のそれぞれの操作を検出する。なお、センサP(後述、図4参照)によって、走行操作部53および作業操作部55の操作が検出されてもよい。コントローラ70は、作業機械1の作動を制御する。コントローラ70は、走行装置11の作動を制御する。さらに詳しくは、コントローラ70は、走行制御装置20を制御することで、走行装置11の作動を制御する。コントローラ70は、ポンプ21の吐出量(容量)、アンロード弁27の開口、および走行制御弁25のスプールの位置、のそれぞれを制御する。コントローラ70は、作業装置13の作動を制御する(作業装置13の作動の制御の詳細は省略する)。
(作動)
作業機械1は、以下のように作動するように構成される。
(操作)
作業機械1では、走行操作部53と作業操作部55とが同時に操作される「複合操作」が行われる場合がある。また、作業機械1では、走行操作部53および作業操作部55のいずれか一方のみが操作される「単独操作」が行われる場合がある。走行操作部53が操作されるとともに(同時に)、作業操作部55が中立である(操作されていない)状態を、「走行単独操作」とする。
走行操作部53が操作された場合、作業機械1は、次のように作動する。走行操作部53は、操作に応じた信号を、コントローラ70に出力する。コントローラ70は、走行装置11を制御するための指示値を算出する。そして、コントローラ70は、算出した指示値の信号を、走行制御装置20に出力し、具体的には比例弁30に出力する。そして、ポンプ21の吐出油は、走行制御弁25を通り、走行モータ23に供給される。すると、走行モータ23が回転し、走行装置11が(クローラ11cが)走行する。
走行操作部53が中立状態のとき、走行モータ23が停止する。走行操作部53の操作ペダルの、操作者の足の指先側部分が踏まれると、走行モータ23が正回転し、クローラ11cが前進する。走行操作部53の操作ペダルの、操作者の足のかかと側部分が踏まれると、走行モータ23が逆回転し、クローラ11cが後進する。
作業操作部55が操作された場合、走行操作部53が操作された場合とほぼ同様に、コントローラ70、および作業装置13を制御する装置(例えば走行制御装置20と同様の油圧回路)が作動する。その結果、作業装置13が作動する。具体的には、アタッチメント13eの作動、および、上部旋回体13aの旋回の、少なくともいずれかが行われる。
作業装置13が作動すると、作業機械1が揺れる(衝撃、ショックが生じる、振動する)。作業機械1の揺れによって、運転室13c内の操作者は、走行操作部53を誤操作する(意図せず操作する、操作が乱れる)場合がある。例えば、操作者は、走行操作部53の操作量を、意図せずに(操作者の意図よりも)大きく、または小さくしてしまう場合がある。例えば、操作者は、走行操作部53を中立にしようとしているのに、走行操作部53を操作してしまう場合がある。
操作者は、走行操作部53を、操作量最大(ベタ踏み)と操作量ゼロ(中立)との間の中間操作量で操作する場合がある。具体的には例えば、作業装置13で地面をならす作業をする場合などには、操作者は、走行操作部53を中間操作量で操作しながら、作業操作部55を操作する(複合操作する)場合がある。操作者が走行操作部53を中間操作量で操作するとき、操作者は、走行操作部53をベタ踏みすることも、走行操作部53から足を離すこともできない。そのため、操作者の足が不安定な状態である。そのため、操作者は、走行操作部53の操作量が最大またはゼロのときよりも、中間操作量で操作するときに、走行操作部53を誤操作しやすい。
複合操作は、単独操作よりも、複雑な操作である。そのため、複合操作時に、操作者が意図せず走行操作部53を操作してしまう場合もある。
走行操作部53が誤操作されると、走行装置11の走行速度(以下、走行装置11の走行速度を、単に「走行速度」ともいう)が増速または減速する。走行速度が増速するときには、走行速度が減速するときよりも、作業機械1の揺れが大きくなりやすい。走行速度が変化すると、作業装置13が揺れる。すると、さらに走行操作部53の誤操作が生じやすくなる。
そこで、本実施形態では、コントローラ70が、複合操作中の走行速度の変化による作業機械1の揺れを抑制できるように、走行速度を制御する。以下では、上記の作業機械1の各構成要素については図1を参照し、図2に示すフローチャートの各ステップについては図2を参照して説明する。また、コントローラ70に処理される各値(制限値V5など)の概要を図3に示す。
(制御の概要)
図2に示すように、コントローラ70は、複合操作を検出した場合、走行装置11の走行速度の目標値V9を、コントローラ70に設定された制限値V5以下に自動的に制限する、速度制限制御を行う。コントローラ70は、走行単独操作から複合操作に変化したことを検出した場合(S41でYESの場合)、直前の走行速度である直前値V3と、コントローラ70に予め設定された規定値V1と、のうち低い方の値を制限値V5とする(S45)。コントローラ70は、走行単独操作から複合操作に変化したことを検出せずに複合操作を検出した場合(S41でNOの場合)、規定値V1を制限値V5とする(S43)。制限値V5は、上限値V5maxを上限として、制限値増減部61により増減可能である(S47)。コントローラ70は、制限値V5と、走行操作部53による指令値(走行操作指令値V7)と、のうち低い方の値を目標値V9とする(S51)。そして、コントローラ70は、目標値V9に基づいて、走行制御装置20に出力する指示値を決定する(S53)。この制御の具体例は次の通りである。
(制御の詳細)
ステップS11では、速度制限制御が有効か無効か、が判定される。この判定は、コントローラ70により行われる(以下の各判定も同様)。制御切替部63により「有効」が選択されている場合(S11でYESの場合)、コントローラ70は、速度制限制御を行う場合がある。この場合、フローはステップS13に進む。制御切替部63により「無効」が選択されている場合(S11でNOの場合)、コントローラ70は、速度制限制御を行わない。この場合、速度制限フラグ(後述)がOFFとされ、フローはステップS21に進む。
速度制限制御の有効と無効とを切替可能とすることによる作用は、例えば次の通りである。速度制限制御は、走行速度の目標値V9を、制限値V5以下に制限する制御であるところ、このような制御が不要な場合がある。例えば、作業の内容によっては、複合操作時に走行装置11の走行速度を確保したい場合がある。また、例えば、操作者が熟練者であり、作業機械1が揺れても走行操作部53を誤操作しにくい場合などがある。そこで、速度制限制御の有効と無効とを切替可能とすることで、操作者の利便性を向上させることができる。
ステップS13およびステップS15では、複合操作が行われているか否かが判定される。ステップS13では、走行操作部53が操作されているか(走行操作があるか)否かが判定される。走行操作部53が操作されている場合(S13でYESの場合)、フローはステップS15に進む。「走行操作部53が操作されている」とは、走行装置11を作動させる信号が走行操作部53(さらに詳しくは、右走行操作部53aおよび左走行操作部53bの少なくともいずれか)から出力されている状態である。走行操作部53が操作されていない場合(S13でNOの場合)、速度制限フラグ(後述)がOFFとされ、フローはステップS21に進む。
ステップS15では、作業操作部55が操作されているか(作業操作があるか)否かが判定される。作業操作部55が操作されている場合(S15でYESの場合)、フローはステップS31に進む。「作業操作部55が操作されている」とは、作業装置13を作動させる信号が作業操作部55から出力されている状態である。「作業操作部55が操作されている」は、例えば、アタッチメント13eの作動、および上部旋回体13aの旋回、の少なくともいずれかを行うための操作されている状態である。作業操作部55が操作されていない場合(S15でNOの場合)、速度制限フラグ(後述)がOFFとされ、フローはステップS21に進む。作業操作部55が操作されている場合(S15でYESの場合)、フローはステップS31に進む。
ステップS21では、速度制限制御が解除された直後であるか否かが判定される。具体的には、ステップS21では、直前のステップS11、S13、またはS15で、速度制限フラグ(後述)がONからOFFに解除されたか否かが判定される。速度制限フラグがONからOFFに解除された直後である場合(S21でYESの場合)、コントローラ70は、指示値の過渡特性を所定時間保持した後(S23)、通常制御(S25)を行う(過渡特性については後述)。速度制限フラグがONからOFFに解除された状態ではない場合(S21でNOの場合)、コントローラ70は、通常制御を行う(S25)。
ステップS25では、コントローラ70は、通常制御を行う。具体的には、コントローラ70は、走行速度の目標値V9を制限値V5以下に制限することなく、走行操作部53の操作量に基づいて、走行速度の目標値V9を決定する。
ステップS31では、コントローラ70は、速度制限フラグをONにする。速度制限フラグは、コントローラ70が速度制限制御を実行している場合にON、実行していない場合にOFF、となる変数である。次に、フローはステップS41に進む。
ステップS41、S43、およびS45では、複合操作が開始される直前に、走行単独操作が行われていたか否かによって、制限値V5の設定方法が変えられる。
ステップS41では、複合操作が開始される直前に、走行単独操作が行われていたか否かが判定される。ステップS41では、走行単独操作から複合操作に変化したことをコントローラ70が検出したか否かが判定される。具体的には、ステップS41では、直前のステップS31の直前(速度制限フラグがONとなる直前)に、走行単独操作が行われていたか否かが判定される。走行単独操作から複合操作に変化したことをコントローラ70が検出した場合(S41でYESの場合)、フローはステップS45に進む。走行単独操作から複合操作に変化したことをコントローラ70が検出しない場合(S41でNOの場合)、フローはS43に進む。例えば、ステップS41でNOとなるのは、複合操作が開始される直前に、走行操作も作業操作も行われていなかった場合、および、作業操作が行われるとともに走行操作は行われていなかった場合である。
ステップS43では、コントローラ70は、コントローラ70に予め設定された規定値V1(デフォルト値)を、制限値V5とする(制限値V5に規定値V1を代入する)。次に、フローは、ステップS47に進む。
ステップS45では、コントローラ70は、規定値V1と直前値V3とを低位選択する。直前値V3は、走行装置11の走行速度であって、コントローラ70が複合操作を検出する直前の走行速度である。直前値V3は、速度制限フラグがONになる直前の走行速度である。コントローラ70は、規定値V1と直前値V3とのうち低い方の値を、制限値V5とする(制限値V5に代入する)。なお、走行装置11が停止すると、コントローラ70は、直前値V3をリセットする(0にする)。
このように規定値V1と直前値V3との低位選択が行われる理由は、例えば次の通りである。[理由の例1]走行単独操作が行われている最中に、作業操作が追加されて複合操作が行われる場合がある。この場合、操作者が、複合操作の開始前に走行速度を適切な速度に調整した後、複合操作を開始する場合がある。また、この場合に、操作者が、調整した走行速度を保持しながら、複合操作を行おうとする場合がある。そこで、コントローラ70は、複合操作時の走行速度を、複合操作の開始直前の走行速度(直前値V3)で制限する。すると、操作者は、容易な操作で、この走行速度(直前値V3)を保持できる。具体的には、操作者は、複合操作を開始した後に、走行操作部53を最大操作量にすれば(ベタ踏みすれば)、走行速度を直前値V3に保持できる。
[理由の例2]また、規定値V1と直前値V3との低位選択が行われず、規定値V1が制限値V5とされる場合について検討する。[理由の例2a]規定値V1よりも低い走行速度で走行単独操作がされている最中に、作業操作が追加され(複合操作が開始され)たときに、規定値V1が制限値V5になるとする。すると、走行単独操作時の走行速度(直前値V3)に対して、複合操作時の走行速度が、規定値V1まで増速し得る。そのため、走行操作部53の誤操作により作業機械1が揺れる場合がある。[理由の例2b]規定値V1よりも大きい走行速度で走行単独操作がされている最中に、作業操作が追加され(複合操作が開始され)たときに、直前値V3が制限値V5になるとする。すると、複合操作の開始直前の走行速度(直前値V3)が大きいほど、制限値V5が大きくなる。そのため、走行速度の目標値V9を、制限値V5(=直前値V3)で制限することによる効果が限定される。
そこで、規定値V1と直前値V3との低位選択が行われることが好ましい。なお、規定値V1と直前値V3との低位選択が行われない場合でも、走行速度の目標値V9が、規定値V1または直前値V3で制限されない場合に比べると、走行操作部53の誤操作による作業機械1の揺れを抑制できる。次に、フローはステップS47に進む。
ステップS47では、制限値V5が増減(調整)される。具体的には、コントローラ70は、制限値増減部61から入力された信号に基づいて制限値V5を増減させる。制限値V5が規定値V1の場合も、制限値V5が直前値V3の場合も、制限値V5を増減可能である。制限値V5の増減は、操作者の必要に応じて行われる。制限値増減部61が制限値V5を増減させる指令を出力しない場合、コントローラ70は制限値V5を増減させなくてよい。
制限値V5が増減させられる場合の例は次の通りである。操作者は、作業機械1の作業の内容に応じて、制限値V5を変えたい場合がある。例えば、制限値V5が低すぎる(走行速度が遅すぎる)場合に、制限値V5が増やされることで、作業機械1の作業性を向上させることができる。例えば、制限値V5が高すぎる場合に、制限値V5が減らされることで、低速度での操作を容易に行える。例えば、操作者が走行操作部53を最大操作量(ベタ踏み)で操作しているときに、走行速度を増減したい場合、制限値V5を増減させることで、走行速度を増減させることができる。
制限値増減部61で調整される制限値V5が大きくなりすぎると、走行速度の目標値V9を制限値V5に制限することによる効果が限定される。そこで、制限値V5には、上限値V5maxが設けられることが好ましい。さらに詳しくは、コントローラ70は、制限値増減部61の操作により増減される制限値V5を、上限値V5max以下に制限する。これにより、走行速度の目標値V9を制限値V5に制限することによる効果を確保しやすい。例えば、上限値V5maxの大きさは、通常制御(S25)において走行操作部53が最大操作量のときの走行速度の、1/2でもよく、1/3でもよく、1/4でもよい。次に、フローはステップS51に進む。
ステップS51では、コントローラ70は、目標値V9を決定する。コントローラ70は、走行操作部53の指令(走行操作指令値V7)と、制限値V5と、のうち低い方の値を(低位選択した値を)、目標値V9とする。さらに詳しくは、コントローラ70は、走行操作指令値V7が制限値V5未満の場合、通常制御(S25)と同様に、走行操作指令値V7をそのまま目標値V9とする。コントローラ70は、走行操作指令値V7が制限値V5以上の場合、制限値V5を、目標値V9とする。例えば、走行操作部53が最大操作量(ベタ踏み)で操作されている場合は、目標値V9は、制限値V5となる。例えば、走行操作部53の操作量が減らされると、走行操作指令値V7が減少し、目標値V9が減少し、その結果、走行装置11が減速する。例えば、走行操作部53の操作量がゼロ(中立)にされると、走行操作指令値V7がゼロになり、目標値V9がゼロになり、その結果、走行装置11が停止する。次に、フローはステップS53に進む。
ステップS53では、コントローラ70は、目標値V9に基づいて、走行制御装置20を制御するための指示値を算出する。具体的には、コントローラ70は、ポンプ21の容量の指示値と、アンロード弁27の開度の指示値と、走行制御弁25のスプール位置の指示値と、を算出する。さらに具体的には、コントローラ70は、ポンプ比例弁31、アンロード比例弁33、および走行制御比例弁35のそれぞれの開口の指示値を算出する。
例えば、複合操作の開始直前に走行単独操作が行われ(S41でYES)、ステップS45で直前値V3が制限値V5とされ、この制限値V5(=直前値V3)がステップS51で目標値V9とされた場合は、次のように指示値が設定される。複合操作の開始直前のポンプ21の容量、アンロード弁27の開口、および走行制御弁25のスプールの位置のそれぞれの状態に対して、走行モータ23の流量が増える側(走行速度が増加する側)には、コントローラ70は各指示値を設定しない。走行モータ23の流量が減る側(走行速度が低下する側)に、コントローラ70が各指示値を設定することは可能である。次に、フローはステップS55に進む。
ステップS55では、コントローラ70は、所定の過渡特性で、指示値を走行制御装置20に出力する。さらに詳しくは、目標値V9が変動したときの指示値の、時間当たりの変動の大きさを「指示値変動量」とする。コントローラ70は、指示値変動量を制限する(応答性を低くする)ことにより、走行装置11の速度の急変を抑制する。具体的には、コントローラ70は、複合操作が行われている場合の指示値変動量を、走行単独操作が行われている場合の(通常制御(S25)の)指示値変動量よりも、小さくする。
この処理による作用の例は次の通りである。[作用の例1]この場合、走行単独操作時には、走行操作部53の操作に対する、走行装置11の走行速度の(加減速の)応答性を確保できる。一方、複合操作時には、走行操作部53の操作(誤操作を含む操作)に対する走行装置11の走行速度の応答性を低くできる。よって、走行装置11の速度の急変を抑制でき、作業機械1の揺れを抑制できる。よって、作業機械1の揺れによる走行操作部53の誤操作を抑制できる。[作用の例2]また、複合操作の開始直前が走行単独操作であり(S41でYES)、直前値V3が規定値V1よりも大きい場合に、複合操作が開始されるとする。すると、目標値V9が、直前値V3から規定値V1に急に減少する。そのため、走行装置11が急減速する場合がある。そこで、コントローラ70は、走行装置11の急減速を抑制できるように、指示値変動量(指示値の減少量)を制限しながら指示値を出力する(指示値を徐々に減らす)。よって、作業機械1の揺れを抑制でき、作業機械1の揺れによる走行操作部53の誤操作を抑制できる。
なお、コントローラ70は、指示値変動量の制限を、指示値を増加および減少させるときに行ってもよく、指示値を増加させるときにのみ行ってもよく、指示値を減少させるときにのみ行ってもよい。
ステップS55での指示値変動量の制限と同様の制限が、速度制限制御が解除された後にも行われる(ステップS23)。さらに詳しくは、コントローラ70は、速度制限制御が実行されている状態から解除された状態に変わった時から、所定時間が経過するまでの指示値変動量を、所定時間が経過した後(通常制御(S25)時)の指示値変動量よりも、小さくする。上記「所定時間」は、コントローラ70に設定される。この「所定時間」は、コントローラ70に予め設定された一定値でもよく、何らかの条件(例えば目標値V9の大きさなど)に応じてコントローラ70が変えてもよい。上記「所定時間が経過した後」は、通常制御(S25)を意味する。なお、速度制限制御が解除され、所定時間が経過する前に、速度制限制御が再び開始された場合は、ステップS55での指示値変動量の制限が行われる。
ステップS23での指示値変動量の制限による作用の例は次の通りである。例えば、速度制限制御が行われている状態、かつ、走行操作部53が最大操作量(ベタ踏み)の状態で、作業操作部55が中立にされると(S15でNOになると)、速度制限制御が解除される。すると、目標値V9が、制限値V5から、走行操作指令値V7に急に増加する。そのため、走行装置11が急増速(急加速)する場合がある。そこで、コントローラ70は、走行装置11の急増速を抑制できるように、指示値変動量(指示値の増加量)を制限しながら指示値を出力する(指示値を徐々に増やす)。よって、作業機械1の揺れを抑制でき、作業機械1の揺れによる走行操作部53の誤操作を抑制できる。
(効果)
図1に示す作業機械1の速度制御装置による効果は次の通りである。
(第1の発明の効果)
作業機械1は、走行可能な走行装置11と、走行装置11の走行を操作する走行操作部53と、作業を行うことが可能な作業装置13と、作業装置13の作動を操作する作業操作部55と、コントローラ70と、を備える。コントローラ70は、走行操作部53および作業操作部55のそれぞれの操作を検出し、走行装置11の作動を制御する。
[構成1]コントローラ70は、走行操作部53および作業操作部55が同時に操作される複合操作を検出した場合、走行装置11の走行速度の目標値V9を、コントローラ70に設定された制限値V5以下に、自動的に制限する速度制限制御を行う。
上記[構成1]では、複合操作時に、走行装置11の走行速度の目標値V9が、制限値V5以下に制限される(図2のS51参照)。よって、複合操作時に、走行装置11の走行速度が制限値V5を超えることを抑制できる。よって、複合操作時の走行装置11の急増速を抑制できる。その結果、走行装置11の急増速による作業機械1の揺れを抑制できる。例えば、走行操作部53が誤操作されたとしても、走行装置11の急増速を抑制でき、走行装置11の急増速による作業機械1の揺れを抑制できる。
また、上記[構成1]では、複合操作時に、目標値V9は、制限値V5以下に制限される(図2のS51参照)。よって、目標値V9は、制限値V5に保持される必要はなく、制限値V5以下の値をとることが可能である。よって、目標値V9が制限値V5に保持される場合に比べ、操作者は、走行装置11を容易に減速させることができる。その結果、操作者は、走行装置11を容易に停止させることもできる。
また、上記[構成1]では、複合操作時に、目標値V9が制限値V5以下に、自動的に制限される。よって、速度制限制御を開始させるための、専用の操作(走行操作部53および作業操作部55の複合操作以外の操作)は不要である。その結果、走行装置11の急増速による作業機械1の揺れを、容易に抑制できる。なお、速度制限制御の有効と無効とを切り替える操作は、上記の「速度制限制御を開始させるための、専用の操作」には含まれない。
(第2の発明の効果)
走行操作部53が操作されるとともに作業操作部55が中立である状態を、「走行単独操作」とする。
[構成2]コントローラ70は、走行単独操作から複合操作に変化したことを検出した場合(図2のS41でYESの場合)、次の処理を行う。この場合、コントローラ70は、走行装置11の走行速度であって複合操作を検出する直前の走行速度である直前値V3と、コントローラ70に予め設定された規定値V1と、のうち低い方の値を制限値V5とする(図2のS45)。
上記[構成2]では、規定値V1が直前値V3以下の場合、規定値V1の値を制限値V5とする。よって、直前値V3が規定値V1よりも大きくても、制限値V5が大きくなりすぎることを抑制できる。よって、走行装置11の急増速をより抑制できる。
上記[構成2]では、直前値V3が規定値V1よりも小さい場合、直前値V3の値を制限値V5とする。よって、複合操作の開始時に、走行装置11の走行速度が、直前値V3に対して急増速することを抑制できる。また、走行装置11の走行速度が直前値V3で制限されるので、操作者は、走行装置11の走行速度を直前値V3で保持する操作を容易に行える。具体的には例えば、操作者は、走行操作部53を最大操作量で操作すれば、走行速度を直前値V3で保持できる。
(第3の発明の効果)
[構成3]作業機械1は、制限値V5の増減を操作する制限値増減部61を備える(図2のS47)。
上記[構成3]により、操作者は、必要に応じて制限値V5を増減できる。その結果、操作者は、作業を行いやすい。具体的には例えば、操作者は、走行操作部53を最大操作量で操作しながら、制限値V5を増減させることで、走行装置11の走行速度を容易に変えることができる。
(第4の発明の効果)
[構成4]制限値増減部61は、作業操作部55を構成する操作レバーに設けられる。
上記[構成4]により、操作者は、作業操作部55(操作レバー)から手を離さなくても、制限値V5を増減させる操作を行える。
(第6の発明の効果)
[構成6]コントローラ70には、制限値V5の上限値V5maxが設定される。コントローラ70は、制限値増減部61の操作により増減される制限値V5を、上限値V5max以下に制限する(図2のS47)。
上記[構成6]により、制限値V5が大きくなりすぎることを抑制できるので、走行装置11の急増速をより抑制できる。
(第7の発明の効果)
[構成7−1]コントローラ70は、走行装置11の走行速度の目標値V9に基づいて、走行装置11を制御する指示値を出力する。目標値V9が変動したときの指示値の、時間当たりの変動の大きさを「指示値変動量」とする。
[構成7−2]コントローラ70は、複合操作が行われている場合の指示値変動量を、走行操作部53が操作されるとともに作業操作部55が中立である場合の指示値変動量よりも、小さくする(図2のS55)。
上記[構成7−2]により、次の効果が得られる。複合操作時には、走行操作部53が操作されるとともに作業操作部55が中立である場合(走行単独操作時)よりも指示値が変動しにくくなるので、走行装置11の走行速度の急変(急増速および急減速の少なくともいずれか)を抑制できる。また、走行単独操作時には、複合操作時よりも指示値が変動しやすくなるので、走行操作部53の操作に対する走行装置11の走行速度の応答性を確保できる。
(第8の発明の効果)
[構成8]作業機械1は、速度制限制御の有効と無効とを操作する制御切替部63を備える。
上記[構成8]により、速度制限制御を無効にできるので、速度制限制御が常に有効である場合に比べ、操作者の利便性を向上させることができる。
(第9の発明の効果)
[構成9]制御切替部63は、作業操作部55を構成する操作レバーに設けられる。
上記[構成9]により、操作者は、作業操作部55(操作レバー)から手を離さなくても、速度制限制御の有効と無効とを切り替える操作を行える。
(第11の発明の効果)
[構成11]作業機械1は、上記[構成7−1]を備える。コントローラ70は、速度制限制御が実行されている状態から解除された状態に変わった時から、所定時間が経過するまでの指示値変動量を、所定時間が経過した後の指示値変動量よりも、小さくする(図2のS23)。
上記[構成11]により、次の効果が得られる。速度制限制御が解除されると、目標値V9を制限値V5で制限する制御(図2のS51)が解除される結果、走行装置11の走行速度が急増速する場合がある。そこで、上記[構成11]により、速度制限制御が解除されたときの指示値の急増を抑制できる。よって、走行装置11の走行速度の急増速を抑制できる。
(第2実施形態)
図4を参照して、第2実施形態の作業機械201の速度制御装置について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態の作業機械201のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付すなどして、説明を省略した。共通点の説明を省略する点については、後述する他の実施形態の説明も同様である。また、図2に示した各ステップについては図2を参照し、コントローラ70に処理される各値(制限値V5など)については図2および図3を参照して説明する(後述する他の実施形態の説明も同様)。
図1に示す走行操作部53および作業操作部55は、操作に応じた電気信号を出力した(電気式レバー、電気式ペダルであった)。一方、図4に示す走行操作部253および作業操作部255のそれぞれは、操作に応じたパイロット圧(油圧)を出力する。走行操作部253および作業操作部255のそれぞれは、操作に応じたパイロット圧を出力するリモコン弁を備える。走行操作部253および作業操作部255が出力したパイロット圧は、センサPにより検出される。センサPに検出されたパイロット圧は、コントローラ70に入力される。その結果、コントローラ70は、走行操作部253および作業操作部255の操作を検出する。
図1に示す走行制御比例弁35は、コントローラ70から入力される信号に応じて、走行制御弁25に入力されるパイロット圧を変えた。一方、図4に示す走行制御比例弁35は、次のように作動する。コントローラ70が通常制御(図2のS25を参照)を行っているとき、走行制御比例弁35の開口は、全開とされる。このとき、走行制御弁25は、走行操作部253の操作に応じて作動し、走行操作部253が出力したパイロット圧に応じて作動する。コントローラ70が速度制限制御を行っているとき、走行制御比例弁35の開口は、コントローラ70から入力される信号に応じて絞られる場合がある。走行制御比例弁35の開口が絞られることで、走行操作部253から出力されたパイロット圧が減圧される(走行制御比例弁35は減圧弁として機能する)。そして、走行制御弁25のスプールの位置は、走行制御比例弁35によって減圧されたパイロット圧に基づいて制御される。
例えば、走行装置11(図1参照)の走行速度が制限値V5よりも大きくなるように、走行操作部253が操作された場合、コントローラ70は、走行制御比例弁35の開口を絞る。これにより、コントローラ70は、走行速度の目標値V9が制限値V5以下になるように、走行速度を制限できる。なお、コントローラ70は、走行速度の目標値V9が制限値V5以下になるように走行速度を制限できれば、上記以外の制御を行ってもよい。
油圧パイロット式の走行操作部253および作業操作部255を備える作業機械であって、速度制限制御(図2参照)が行われない作業機械(従来の作業機械)では、通常、走行制御比例弁35が設けられない。よって、この様な従来の作業機械に、走行制御比例弁35および電気配線を追加し、コントローラ70のソフトウェアを書き換えることで、本発明を適用できる。
(第3実施形態)
図5を参照して、第3実施形態の作業機械301の速度制御装置について、主に第2実施形態(図4参照)との相違点を説明する。
図4に示す作業機械201のコントローラ70は、第1実施形態と同様に、目標値V9から、ポンプ21の容量、アンロード弁27の開口、および、走行制御弁25のスプールの位置を制御することで、走行装置11(図1参照)の走行速度を制限する。一方、図5に示す作業機械301のコントローラ70は、ポンプ21の容量、およびアンロード弁27の開口を制御することで、走行装置11(図1参照)の走行速度を制限する。作業機械301のコントローラ70は、走行制御弁25の開口を制御しない。そのため、作業機械301では、走行制御比例弁35(図4参照)を設ける必要がない。
例えば、走行装置11(図1参照)の走行速度が制限値V5よりも大きくなるように、走行操作部253が操作された場合、コントローラ70は、ポンプ21の容量を小さくする。また、このとき、コントローラ70は、アンロード弁27の開口を維持してもよく、開いてもよい。これにより、コントローラ70は、走行装置11(図1参照)の走行速度が制限値V5以下になるように、走行速度を制限できる。なお、コントローラ70は、走行速度の目標値V9が制限値V5以下になるように走行速度を制限できれば、上記以外の制御を行ってもよい。
なお、この構成では、走行操作部53の操作量が変わると、走行制御弁25の開口が変化する。そのため、第1実施形態および第2実施形態に比べ、走行速度を一定の制限値V5とする制御が難しい場合がある。走行操作部53の操作量を最大操作量にすれば、走行装置11の走行速度を一定の制限値V5としやすい。
作業機械301に走行制御比例弁35が設けられない場合は、走行制御比例弁35を設ける場合に比べ、部品数を減らせる。油圧パイロット式の走行操作部253および作業操作部255を備える作業機械であって、速度制限制御(図2参照)が行われない作業機械(従来の作業機械)では、通常、作業機械301と同様のハードウェアの構成を備えている。よって、この様な従来の作業機械に対し、コントローラ70のソフトウェアを書き換えるだけで、本発明を適用できる。
(第4実施形態)
図6を参照して、第4実施形態の作業機械401の速度制御装置について、主に第1実施形態との相違点を説明する。図1に示す例では、ポンプ21の容量、アンロード弁27の開口、および走行制御弁25のスプールの位置は、パイロット圧により制御された。一方、図6に示すように、第4実施形態の作業機械401では、これらは電動アクチュエータ430により制御される。
電動アクチュエータ430は、例えば電動シリンダである。例えば、電動アクチュエータ430は、電動モータと、電動モータの回転運動を直線運動に変換する機構(具体的にはボールねじ、ラックアンドピニオンなど)と、を備える。電動アクチュエータ430には、ポンプ用電動アクチュエータ431と、アンロード弁用電動アクチュエータ433と、走行制御弁用電動アクチュエータ435と、を備える。ポンプ用電動アクチュエータ431は、コントローラ70から入力される電気信号に応じて、ポンプ21の容量を制御する。アンロード弁用電動アクチュエータ433は、コントローラ70から入力される電気信号に応じて、アンロード弁27の開口を制御する。走行制御弁用電動アクチュエータ435は、コントローラ70から入力される信号に応じて、走行制御弁25のスプールの位置を制御する。なお、ポンプ用電動アクチュエータ431、アンロード弁用電動アクチュエータ433、および走行制御弁用電動アクチュエータ435の少なくともいずれかのみが設けられてもよい。
ポンプ21の容量、アンロード弁27の開口、および走行制御弁25のスプールの位置の少なくともいずれかを電動アクチュエータ430により制御することによる効果は次の通りである。この場合、パイロット圧を伝えるためのパイロット配管の代わりに、電線(電気ハーネス)を使うことができる。また、比例弁30(図1参照)が出力するパイロット圧による制御に比べ、電動アクチュエータ430による制御は、応答遅れやヒステリシスの影響を小さくでき、高精度な制御が可能である。
(第5実施形態)
図7を参照して、第5実施形態の作業機械501の速度制御装置について、主に第1実施形態との相違点を説明する。図1に示す例では、制限値増減部61および制御切替部63は、作業操作部55の操作レバーに設けられ、例えば操作者の指で操作された。一方、図7に示す第5実施形態の作業機械501では、制限値増減部61および制御切替部63は、音声操作により操作される。作業機械501は、マイク560a(制限値増減用音声検出部、制御切替用音声検出部)と、音声認識部560b(制限値増減用音声認識部、制御切替用音声認識部)と、を備える。
マイク560aは、音声を検出する。例えば、マイク560aは、運転室13c(図1参照)内に配置され、運転席41の近傍に配置され、操作者の音声を検出する。
音声認識部560bは、マイク560aにより検出された音声を認識する。音声認識部560bは、認識した音声に基づいて、制限値V5を増減する。音声認識部560bは、制限値V5を増減する信号をコントローラ70に出力し、制限値V5をコントローラ70に増減させる。音声認識部560bは、認識した音声に基づいて、速度制限制御の有効と無効とを切り替える。音声認識部560bは、速度制限制御の有効と無効とを切り替える信号をコントローラ70に出力する。音声認識部560bは、コントローラ70と一体でも別体でもよい。音声認識部560bは、予め(速度制限制御を実行する前に)、音声操作用の言葉を記憶する。音声認識部560bに記憶される、制限値V5を増減するための音声操作用の言葉は、例えば、「走行速度アップ」「走行速度ダウン」などである。音声認識部560bに記憶される、速度制限制御の有効と無効とを切り替えるための音声操作用の言葉は、例えば、「走行制限オン」「走行制限オフ」などである。なお、音声認識部560bは、制限値V5の増減用、および、速度制限制御の有効と無効との切替用の、一方の機能のみを有してもよい。
(第5の発明の効果)
図7に示す作業機械501による効果は次の通りである。
[構成5]制限値増減部61は、音声を検出するマイク560a(制限値増減用音声検出部)と、音声認識部560b(制限値増減用音声認識部)と、を備える。音声認識部560bは、マイク560aにより検出された音声を認識し、認識した音声に基づいて、制限値V5を増減する。
上記[構成5]により、操作者は、作業機械501の操作中に容易に(例えば作業操作部55から手を離さなくても)、制限値V5を増減する操作を行える。
(第10の発明の効果)
[構成10]制御切替部63は、音声を検出するマイク560a(制御切替用音声検出部)と、音声認識部560b(制御切替用音声認識部)と、を備える。音声認識部560bは、マイク560aにより検出された音声を認識し、認識した音声に基づいて、速度制限制御の有効と無効とを切り替える。
上記[構成10]により、操作者は、作業機械501の操作中に容易に(例えば作業操作部55から手を離さなくても)、速度制限制御の有効と無効とを切り替える操作を行える。
(第6実施形態)
図8を参照して、第6実施形態の作業機械601の速度制御装置について、主に第1実施形態との相違点を説明する。図1に示す例では、制限値増減部61および制御切替部63は、作業操作部55の操作レバーに設けられた。一方、図8に示す第6実施形態の作業機械601では、制限値増減部61および制御切替部63は、操作装置660に設けられる。
操作装置660は、運転室13c(図1参照)内に設けられる装置である。操作装置660は、速度制限制御に関する操作とは異なる操作にも用いられる(速度制限制御以外の機能と兼用される)。操作装置660は、例えば、画面と、画面とは別に設けられた操作ボタンとを備える装置でもよく、例えばタッチパネル(図示なし)を備える装置などでもよい。なお、操作装置660は、制限値増減部61および制御切替部63のうちいずれか一方のみの機能を有してもよい。例えば、制限値増減部61は、作業操作部55の操作レバーに設けられ、制御切替部63は、操作装置660に設けられてもよい。
(第7実施形態)
図9を参照して、第7実施形態の作業機械701の速度制御装置について、主に第6実施形態との相違点を説明する。図8に示す例では、制限値増減部61および制御切替部63は、速度制限制御に関する操作とは異なる操作にも用いられる操作装置660に設けられた。一方、図9に示す第7実施形態の作業機械701では、制限値増減部61および制御切替部63は、操作装置660(図8参照)とは異なる操作装置760に設けられる。
操作装置760は、運転室13c(図1参照)内に設けられる装置である。操作装置760は、速度制限制御の操作専用の装置である。操作装置760は、図9に示す例では、作業操作部55の操作レバーの近傍(例えば操作者から見て手前側など)に配置される。制限値増減部61および制御切替部63が、速度制限制御の操作専用の装置である操作装置760に設けられるので、次の効果が得られる。制限値増減部61および制御切替部63が操作レバーに設けられる場合に比べ、操作される部分(ボタンなど)を大きくできる。また、制限値増減部61および制御切替部63が、速度制限制御以外の機能と兼用の操作装置660(図8参照)に設けられる場合に比べ、速度制限制御に関する操作を容易に行える。なお、操作装置760は、制限値増減部61および制御切替部63のうちいずれか一方のみの機能を有してもよい。
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、図1などに示す回路の接続は変更されてもよい。例えば、図2などに示すフローチャートのステップの順序は変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、互いに異なる複数の構成要素として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
例えば、制限値増減部61と制御切替部63とは、同じ位置に設けられる必要はなく、同じ操作方法(スイッチ、ホイール、音声など)である必要はない。例えば、制限値増減部61と制御切替部63とは、図1に示す例では作業操作部55の1本の操作レバーに設けられたが、左右の一方の操作レバーに制限値増減部61が設けられ、もう一方の操作レバーに制御切替部63が設けられてもよい。例えば、制限値増減部61と制御切替部63とは、一方がスイッチ操作によるものであり、他方が音声操作によるもの(図7参照)でもよい。例えば、制限値増減部61が2つ以上設けられてもよい(制御切替部63も同様)。
例えば、コントローラ70の制御や判断などの一部が省略されてもよい。例えば、図2に示す直前値V3にかかわらず、規定値V1を制限値V5としてもよい。例えば、上限値V5max(S47参照)は設定されなくてもよい。例えば、コントローラ70が出力する指示値変動量は制限されなくてもよい。