以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
なお,本願明細書において「A〜B」というときは,「A以上B以下」であることを意味する。
本発明は,口元に装着されるマスクに関するものであり,主に有害な微小粒子(ウイルス等の飛沫物)が呼吸器内に侵入することを防止したり,あるいは咳やくしゃみによって微小粒子が空気中に飛散することを防止することを目的として使用される。図1は,本発明に係るマスク10の外観を示し,図2は,マスク10の本体部11を構成する複数のシートを示し,図3は,マスク10を肌対向面側から見た状態を示している。
図1から図3に示されるように,マスク10は,本体部11と,耳掛け部12とを備える。本体部11は,着用者の口元を覆うための部材であり,微小粒子をフィルタリングするためのシートが複数層に亘って積層された構造となっている。本願図に示した実施形態において,本体部11は平面視において略矩形状をなしているが,本体部11の形状は図したものに限られず,円形状や楕円形状,あるいは多角形状とすることも可能である。また,耳掛け部12は,本体部11の左右両側縁部に取り付けられた伸縮性を持つ紐状の部材である。耳掛け部12は,ループ状をなすようにその両端が本体部11に側縁に固定(例えば融着)されている。着用者は,このループ状の耳掛け部12を耳に掛けることで,本体部11で自身の口元を覆うことが出来る。耳掛け部12を構成する伸縮性材料としては,例えばゴム糸と綿の交織帯や,樹脂フィラメントの交編ネット,あるいは伸縮性の不織布等を用いることができる。
図2に示されるように,本体部11は,複数のシートを厚み方向に積層した構造を持つ。図2に示した例において,本体部11は5層のシートからなるものであるが,少なくとも2層のシートを備えていればよい。本体部11を構成する各シートとしては,一般的なマスクの材料として用いられている周知のシート材料を用いることができる。例えば,シートの例としては,不織布や,ガーゼ,紙,透湿性樹脂シートなどが挙げられる。また,不織布としては,例えば,ポリエステル系繊維,ポリプロピレン系繊維,レーヨン系線維,ナイロン系線維,アセテート系線維,羊毛系線維,コットン系線維,ウレタン系線維,ポリエチレン系線維の1種又は2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
図2に示した構造例において,本体部11を構成する各シートを機能別に分けると,着用者の肌から近い順に,口当てシート21,予備口当てシート22,形状維持シート23,フィルターシート24,及び外装シート25が積層されている。
口当てシート21は,着用者の口元に直接接するシートである。口当てシート21は,不織布で形成されていることが好ましい。口当てシート21を構成する不織布としては,例えば,スパンボンド不織布,ポイントボンド不織布,スパンレース不織布,エアスルー不織布などを挙げることができる。口当てシート21の目付量は,例えば10〜50g/m2であることが好ましく,15〜40g/m2であることが特に好ましい。また,口当てシート21の厚さは,100〜350μmであることが好ましく,120〜250μmであることが特に好ましい。このようにすれば,口当てシート21の汚れが予備口当てシート22に裏移りすることを抑制できる。さらに,口当てシート21に形成されたミシン目線の保持力を維持しながら,必要に応じてミシン目線を破断させ易くなる。
また,口当てシート21の肌対向面には,口紅やファンデーションの付着を防止するための防汚コーティング処理が施されていてもよい。例えば,口当てシート21の肌対向面に,フッ素系樹脂や,シリコン系樹脂,パラフィン,ワックス(蝋)などのコーティング剤を適宜塗布しておくことも可能である。
さらに,図2に示されるように,本体部11の最内層(最も肌対向面側の層)に位置する口当てシート21には,囲い線30によって上下左右の4辺が画定されためくり部40が形成されている。本実施形態において,囲い線30は,すべて不切れ部31と切込み部32とが交互に形成されたミシン目線で構成されている。つまり,口当てシート21には,上下方向に延びる左右一対のミシン目線33,34と,これら左右のミシン目線33,34の上端と下端を繋ぐように左右方向に延びる上下一対のミシン目線35,36が形成されており,これらのミシン目線33〜36によってめくり部40の周囲が画定されている。各ミシン目線33〜36の不切れ部31を破断させることにより,めくり部40が口当てシート21から切り離されて,その部分に開口が形成される。これにより,口当てシート21の裏側に位置する予備口当てシート22が表面に露出し,この予備口当てシート22に着用者の口元が直接接するようになる。例えば,口当てシート21に口紅等が付着して汚れた場合に,めくり部40をめくり取ることで,清潔な予備口当てシート22が露出するため,マスク全体の交換が不要になる。このように,口当てシート21の一部を切り離し可能にすることで,着用者は同じマスクを長時間使用することができ,経済的なメリットを享受できる。なお,めくり部40の周囲を囲う囲い線30は,ミシン目線に限られず,その一部分をスリット線(切り込み)に置き換えることもできる。
予備口当てシート22は,口当てシート21の非肌対向面側に位置し,口当てシート21のめくり部40を切り離した後に,着用者の口元に直接接するシートである。予備口当てシート22は,口当てシート21と同じシート材料で形成されており,等しい目付量を有することが好ましい。なお,等しい目付量とは,予備口当てシート22の目付量が,口当てシート21の目付量に対して±10%の範囲内であることを意味する。ただし,口当てシート21と予備口当てシート22とで肌に接する感触やその機能を変化させるために,口当てシート21と予備口当てシート22とで異なるシート材料を利用したり,塗布するコーティング剤を異ならせることも可能である。
また,予備口当てシート22には,口当てシート21からめくり部40が切り離された否かを判別するために用いられる標識50が付与されている。すなわち,図3(a)及び図3(b)に示されるように,口当てシート21からめくり部40を切り離すと,予備口当てシート22に付与された標識50がマスク10の肌対向面側に露出するようになっている。「標識」には,文字,図形,記号,凹凸,孔,又は色彩などの人の視覚や触覚で認識できるものが含まれる。また,標識の付与方法としては,印刷や,エンボス加工,穿孔,着色,シールの貼付などの様々な方法をとることができる。標識50は,一部分又は全部分が口当てシート21からめくり部40に重なっていることが好ましい。このように,予備口当てシート22に標識を付与することで,口当てシート21からめくり部40とめくり取った後,予備口当てシート22の標識50が露出することになるため,めくり部40をめくった後であるか否かを判別しやすくなる。特に,標識50は,口当てシート21からめくり部40を切り離す前の状態において本体部11の肌対向面側から視認不能であり,口当てシート21からめくり部40を切り離した後に本体部11の肌対向面側から視認可能となることが好ましい。例えば,口当てシート21の材質や色,目付量を調整したり,予備口当てシート22に付与する標識50の色などを調整して,めくり部40を切り離す前の状態において,標識50が口当てシート21を透過して視認されないようにすればよい。
また,予備口当てシート22に標識50を印刷する場合,インクが着用者の肌に直接触れないように,予備口当てシート22の非肌対向面に印刷を行うことが好ましい。ただし,印刷された標識50は,めくり部40をめくった後の状態で着用者が視認可能なものである必要があるため,標識50は予備口当てシート22の肌対向面側から視認可能な態様で印刷されていることが好ましい。例えば,予備口当てシート22を透過して視認できる程度に濃色のインクを用いて標識50を印刷すればよい。また,予備口当てシート22の目付量を小さくして,標識50を視認しやすくしてもよい。ただし,予備口当てシート22の肌対向面に標識50を印刷することも当然に可能である。
また,インクを用いて予備口当てシート22に標識50を付与する場合は,可食性インクを用いることが好ましい。可食性インクは、食品衛生法及び食品添加物の使用基準に準じた原材料で構成したものであり。可食性インクとしては,例えば,クチナシ,メラニン(イカ墨),アントシアニン,モナスカス,紅こうじ,クルクミン,コチニール,クロロフィル,ポリフェノールなどの天然成分を1種又は2種以上混合したものを用いることがき,またインクの溶媒には,プロピレングリコール,グリセリン,エチルアルコール,水などを使用できる。
また,めくり部40が切り離された後であるか否かを判別しやすくするために,予備口当てシート22を口当てシート21とは異なる色にすることとしてもよい。「異なる色」とは,明るさ,色相,又は彩度のうち,少なくともいずれか一つが異なることを意味する。また,単に色相が異なる色ばかりでなく,同じ色相であっても,彩度又は明度が,意図的に異なるものとされた色は「異なる色」とする。例えば,口当てシート21が白色である場合,予備口当てシート22のうち,少なくともめくり部40と重なる部分を赤色,青色,緑色,ピンク色,又は灰色等の異色とすればよい。反対に,予備口当てシート22を白色とし,口当てシート21を異色とすることとしてもよい。口当てシート21と予備口当てシート22を異なる色に着色することによっても,めくり部40が切り離された後であるか否かを判別しやすくなる。また,例えば,口紅と同系色の赤色やピンク色で口当てシート21又は予備口当てシート22を着色しておくことで,それらのシートに口紅が付着した場合でも,その色を目立たなくさせることができる。
形状維持シート23は,本体部11の立体形状を保持するためのシートである。形状維持シート23は,樹脂からなるメッシュ状のシートであることが好ましい。本体部11が形状維持シート23を備えることにより,後述するプリーツを展開した後に形成される立体形状を長時間維持しやすくなる。
フィルターシート24は,塵埃や,細菌,ウィルス,花粉等を捕集する機能を有するシートである。フィルターシート24は,捕集機能を有する物質を吸着させた樹脂等のシートであってもよいし,捕集機能を有する不織布シートであってもよい。
外装シート25は,本体部11の最外層(最も非肌対向面側の層)に位置するシートである。外装シート25としては,表面に光沢のある不織布を用いることが好ましい。不織布の例は,スパンボンド不織布,ポイントボンド不織布,スパンレース不織布,エアスルー不織布などである。
上記した複数のシート21〜25は,図3に示されるように,それぞれ厚み方向に積層された状態で,四隅に形成された隅融着部13及び四辺に沿って形成された融着線14によって熱融着されて一体化される。具体的に説明すると,本実施形態では,各シートが矩形状に成型されており,各シートを積層した状態でその四隅に熱プレスを行うことで隅融着部13が形成されている。また,各シートの積層体の上下左右の四辺に沿って熱プレスを行うことで,各辺に一又は複数本の融着線14が形成される。なお,融着線14は,複数の融着点が所定間隔を空けて直線上に形成されたものである。図3の例では,本体部11の左辺,右辺,及び上辺にはそれぞれ融着線14が2本ずつ形成されており,下辺には融着線14が1本形成されている。また,本体部11の上辺に形成された2本の融着線14の間の隙間には,本体部11の左右方向と平行にノーズクリップ15が埋め込まれている。ノーズクリップ15は,本体部11を構成するシートの間に配置しておけばよい。ノーズクリップ15は,着用者の鼻部の形状に適合するように変形可能な部材で構成される。ノーズクリップ15としては,例えば樹脂製の板状又は棒状の部材を用いることが好ましい。また,ノーズクリップ15としては金属テープ等を用いてもよい。
また,図3に示されるように,口当てシート21に形成されためくり部40(囲い線30)は,上下左右の融着線14によって囲われた領域内に形成されている。つまり,めくり部40を形成するための囲い線30は,上下左右の融着線14と重ならないように配置される。融着線14と囲い線30が重なると,囲い線30を構成するミシン目線を破断させにくくなるため,融着線14と囲い線30は重複しないようにすることが好ましい。
また,図1及び図3に示されるように,本体部11には一又は複数箇所にプリーツが形成されている。プリーツとは,本体部11の左右方向に延びる山折線16と谷折線17が,上下方向に交互に形成されたことで,本体部11の一部が折り返された構造を意味する。プリーツのための折り目(山折線16及び谷折線17)は,本体部11を構成する複数のシートの全てに形成されたものである。このような折り目は,本体部11の両側端部で接合されることによって形状を保持されている。すなわち,マスクの未着用状態では,両側端部の接合部で折り目の展開が阻止されているが,マスクの着用時に,両側端部の接合部の間に位置する中間領域において折り目が展開されることで,プリーツが上下に広がって本体部11が立体的な形状に展開される。
図4には,口当てシート21を例に挙げて,本体部11にプリーツを形成する位置を示している。図4に示されるように,本願明細書において「山折線16」とは,外側(非肌対向面側)に向かって凸になるように本体部11を折り曲げるための折り目であり,「谷折線17」とは,外側(肌対向面側)に向かって凸になるように本体部11を折り曲げるための折り目である。山折線16と谷折線17は,本体部11の左右方向に向かって平行に延びている。本体部11の上下方向に所定間隔を空けて山折線16と谷折線17を形成することで,本体部11にプリーツが形成される。図4に示した例では,山折線16と谷折線17がそれぞれ4本ずつ形成されており,その結果本体部11の4箇所にプリーツが形成されることとなる。また,図4に示した例では,最上段に上向きのプリーツが1箇所形成され,その下に下向きのプリーツが3箇所形成されている。「上向きのプリーツ」とは,外側(非肌対向面)からみて山折線16が上向きになるプリーツであり,図4に示した展開した状態では上から谷折線17,山折線16の順に形成されたものである。「下向きのプリーツ」とは,外側(非肌対向面)からみて山折線16が下向きになるプリーツであり,図4に示した展開した状態では上から山折線16,谷折線17の順に形成されたものである。このように,本体部11の上方に上向きのプリーツを少なくとも1つ形成し,その下方に下向きのプリーツを上向きプリーツよりも多い数で形成することが好ましい。上向きのプリーツの数は1〜2箇所,好ましくは1箇所であり,下向きのプリーツの数は2〜6箇所,好ましくは3〜5箇所である。
図4に示されるように,プリーツを展開させた状態において,めくり部40の上下方向の長さは,口当てシート21の上下方向の長さに対して,60〜95%,70〜93%,又は80〜90%であることが好ましい。また,めくり部40の左右方向の長さは,口当てシート21の左右方向の長さに対して,60〜95%,70〜93%,又は80〜90%であることが好ましい。このように,めくり部40は,口当てシート21の中心を含む大部分の領域に形成すると良い。
また,図4には,口当てシート21に形成されたミシン目線とプリーツ用の折り目の関係性を示している。図4に示されるように,口当てシート21は,各プリーツにおける山折線16と谷折線17との間の領域が「折込面21a」となり,それ以外の領域が「非折込面21b」となる。図4(b)に示されるように,折込面21aは,その全体が非折込面21bの間に挟み込まれることとなる。図4(a)に示されるように,左右のミシン目線33,34は,口当てシート21の上下方向に延在するのに対して,折込面21a(山折線16及び谷折線17)は,口当てシート21の左右方向に延在しているため,両者は交差することとなる。また,図4(a)では,口当てシート21の右方に形成された右ミシン目線34における不切れ部31を,便宜的に丸印で囲って表している。
図4(a)に示されるように,本発明において,口当てシート21の折込面21aには,左右のミシン目線33,34の不切れ部31が形成されていない。つまり,折込面21aには,左右のミシン目線33,34の切込み部32のみが形成されており,左右のミシン目線33,34の不切れ部31は,非折込面21bにのみ形成されている。左右のミシン目線33,34の切込み部32は,折込面21aを横断するように形成されており,左右のミシン目線33,34の不切れ部31は,この折込面21aに隣接する非折込面21bのみに形成されることとなる。このように,口当てシート21の折込面21aに左右のミシン目線33,34の不切れ部31が位置しないように,切込み部32の長さやピッチを調整することで,口当てシート21が山折線16と谷折線17で折り畳まれた状態であっても,めくり部40を切り離す際に,左右のミシン目線33,34の不切れ部31を破断させやすくなる。
なお,口当てシート21に折込面21aが複数形成されている場合に,本発明では,左右のミシン目線33,34の不切れ部31が形成されていない折込面21aが一つでも存在してればよい。ただし,本発明において,口当てシート21に折込面21aが複数形成されている場合には,すべての折込面21aに不切れ部31が形成されていないことが好ましい。
図5を参照して,口当てシート21のミシン目線についてより詳しく説明する。図5は,口当てシート21に形成されたミシン目線の例を拡大して示したものである。図5に示されるように,左右のミシン目線33,34には,対称に構成されたものであり,不切れ部31と切込み部32が同じ長さ同じピッチで形成されている。図5では,左右のミシン目線33,34に含まれる不切れ部を符号31aで示している。また,左右のミシン目線33,34には,比較的長尺の切込み部32aと,比較的短尺の切込み部32bが含まれる。長尺の切込み部32aは,折込面21aを横断するように形成されたものであり,短尺の切込み部32bは,折込面21aの間に位置する非折込面21bに形成されたものである。
長尺の切込み部32aは,折込面21aを十分に横断できる長さを有していることが好ましい。具体的には,長尺の切込み部32aの長さは,それが形成された折込面21aの上下方向における長さに対して,105〜320%であることが好ましく,110〜220%であることが特に好ましい。また,長尺の切込み部32aは,折込面21aの上縁及び下縁の両方から延出する位置に形成される。このよう十分な長さを持つ長尺の切込み部32aを折込面21aに形成しておくことで,折込面21aにおいても左右のミシン目線33,34に沿って口当てシート21を切り離し易くなる。
また,左右のミシン目線33,34のそれぞれにおいて,最も長い切込み部(CLmax)に対する最も短い切込み部(CLmin)の長さの比a(CLmin/CLmax)は,0.05<a≦0.5であることが好ましい。また,上記比aは,0.06〜0.3又は0.07〜0.2であることが特に好ましい。なお,図5に示された例において,最も長い切込み部は,折込面21aを横断する位置に形成され,最も短い切込み部は,非折込面21bに形成されている。例えば,最も長い切込み部の長さは,10〜40mmであることが好ましく,15〜30mmであることが特に好ましい。また,最も短い切込み部の長さは,1〜10mmであることが好ましく,1.5〜5mmであることが特に好ましい。
また,左右のミシン目線33,34のそれぞれにおいて,最も長い切込み部(CLmax)に対する最も短い不切れ部(ULmin)の長さの比b(ULmin/CLmax)は,0.01≦b≦0.5であることが好ましい。また,上記比bは,0.15〜0.3又は0.02〜0.1であることが特に好ましい。なお,図5に示された例において,最も短い不切れ部は,2つの折込面21aの間に位置する非折込面21bに形成されている。例えば,最も短い不切れ部の長さは,0.5〜2mmであることが好ましく,0.6〜1.2mmであることが特に好ましい。また,不切れ部の最大長さは,ミシン目線の破断し易さを考慮して,すべて2mm以下であることが好ましく,1.2mm以下であることが特に好ましい。また,不切れ部の最小長さは,ミシン目の保持力を考慮して,すべて0.5mm以上であることが好ましく,1mm以上であることが特に好ましい。
また,左右のミシン目線33,34のそれぞれにおいて,切込み部の長さの総和(CLtot)に対する不切れ部の長さの総和(ULtot)の比c(ULtot/CLtot)は,0.02≦c≦0.25であることが好ましい。また,上記比cは,0.03〜0.2又は0.05〜0.18であることが特に好ましい。なお,図5に示した例では,後述するように囲い線30の隅に円弧状の切込み部が形成されているが,この円弧状の切込み部は,左右のミシン目線33,34における切込み部には含まれない。このため上記総和(CLtot)は円弧状の切込み部の長さを含めずに計算する。
また,図5に示されるように,2つの折込面21aの間に位置する非折込面21bには,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aが少なくとも2箇所以上形成されていることが好ましい。つまり,折込面21aの間の非折込面21bには,左ミシン目線33の不切れ部31aが2箇所以上形成され,右ミシン目線34の不切れ部31aが2箇所以上形成されていると良い。折込面21aの間の非折込面21bにおいて,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aの数が1つであるとミシン目線の保持力が低くなり,不用意にミシン目線が破断してしまう可能性がある。また,折込面21aの間の非折込面21bにおいて,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aの数は,5箇所以下であることが好ましい。不切れ部31aの数が多いと,折込面21aの間の非折込面21bにおいてミシン目線を破断させにくくなる恐れがある。このため,折込面21aの間の非折込面21bにおいて,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aは2箇所以上5箇所以下とすることが適切である。
図4及び図5に示された実施形態では,左右のミシン目線33,34の上端及び下端の両方を繋ぐように,左右方向に延びる上下のミシン目線35,36が形成されている。図5において,上下のミシン目線35,36それぞれの不切れ部を符号31cで示し,切込み部を符号32cで示している。上下のミシン目線35,36の不切れ部31cと切込み部32cは,左右方向に向かって交互に形成される。
また,上下のミシン目線35,36のそれぞれにおいて,最も長い切込み部(CLmax)に対する最も短い切込み部(CLmin)の長さの比d(CLmin/CLmax)は,0.5<d≦1.0であることが好ましい。つまり,上下のミシン目線では,切込み部32cの長さに大きな差が生じていないことが好ましい。例えば,上下のミシン目線35,36において,切込み部32cの長さは,3〜20mm又は5〜15mmの範囲内であって,上記比dの条件を満たすようにすると良い。
また,上下のミシン目線35,36のそれぞれにおいて,最も長い切込み部(CLmax)に対する最も短い不切れ部(ULmin)の長さの比e(ULmin/CLmax)は,0.03≦e≦0.5であることが好ましい。特に,上記比eは,0.05〜0.3又は0.06〜0.2であることが好ましい。例えば,上下のミシン目線35,36において,最も短い不切れ部の長さは,0.5〜2mmであることが好ましく,0.6〜1.2mmであることが特に好ましい。また,不切れ部の最大長さは,ミシン目線の破断し易さを考慮して,すべて2mm以下であることが好ましく,1.2mm以下であることが特に好ましい。また,不切れ部の最小長さは,ミシン目の保持力を考慮して,すべて0.5mm以上であることが好ましく,1mm以上であることが特に好ましい。
図4及び図5に示されるように,めくり部40(囲い線30)の上方の二隅には円弧部37が形成されている。本実施形態において,円弧部37は,円弧状の切込み部によって形成されたものである。また,円弧部37は,めくり部40の四隅の少なくとも1つの形成されていればよく,上方の二隅に加えて,下方の二隅に形成されていてもよい。また,円弧部37は,切込み部のみによって形成されたものであってもよいし,切込み部と不切れ部が組み合わさって円弧状をなしているものであってもよい(つまり,円弧の途中に不切れ部が設けられていてもよい)。このように,めくり部40の隅に円弧部37を設けることで,その円弧部37をきっかけとして,めくり部40の周囲を囲うミシン目線33〜36を破断させやすくなる。なお,本願明細書において,めくり部40の隅に円弧部37が形成されている場合に,この円弧部37は,上下のミシン目線35,36に含まれるものとして扱う。
図4及び図5に示されるように,めくり部40(囲い線30)の下方の二隅には,左右のミシン目線33,34に延出部32dが形成されている。より詳しく説明すると,囲い線20の下方の二隅では,左右のミシン目線33,34の切込み部32と下ミシン目線36の切込み部32とが交わっている。そして,左右のミシン目線33,34の切込み部32は,下ミシン目線36の切込み部32を超えて,下方に向かって延出している。このミシン目線33,34の切込み部32の延出部分が,符号32dで示した「延出部」となる。このように延出部32dを形成しておくことで,上下左右のミシン目線33〜36に沿ってめくり部40を切り離したときに,その下方の二隅をきれいに切り離しやすくなる。特に,めくり部40は上側から下側に向かって切り離されることが多いため,その下方の二隅に切込み部32の延出部32dを形成しておくことが有効である。延出部32dの長さは,例えば0.1mm以上又は0.5mm以上であればく,例えば0.1〜5mm,0.5〜3mmであることが好ましく,0.8〜1.2mmであることが特に好ましい。
マスク10の本体部11には,プリーツが形成されている関係上,上下のミシン目線35,36に比べて,左右のミシン目線33,34を破断させにくくなっている。その対策の一つとして,本発明では,前述したとおり,各プリーツの折込面21a内に左右のミシン目線33,34の不切れ部31が位置しないようにしている。また,別の対策として,口当てシート21を構成する不織布の繊維配向を,左右のミシン目線33,34の延在方向と一致させることとしてもよい。すなわち,口当てシート21として,上下方向に沿った繊維配向を持つ不織布を採用するとよい。不織布は繊維配向に平行な方向に沿って裂きやすい性質を持つため,左右のミシン目線33,34の延在方向が不織布の繊維配向方向と一致していることで,左右のミシン目線33,34を破断させやすくなる。
また,別の対策として,口当てシート21を構成する不織布のうち,左右のミシン目線33,34の周辺に位置する領域の目付量又は厚みを,他の領域の目付量又は厚みよりも小さくすることとしてもよい。左右のミシン目線33,34の周辺に位置する領域とは,例えば当該ミシン目線から0.5〜3mm以内の領域である。この領域の目付量又は厚みを小さくすることで,左右のミシン目線33,34を破断させやすくなる。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。