JP2020023724A - オレフィン系樹脂、該樹脂の製造方法、ペレット、熱可塑性エラストマーおよび架橋ゴム - Google Patents

オレフィン系樹脂、該樹脂の製造方法、ペレット、熱可塑性エラストマーおよび架橋ゴム Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム弾性および機械物性に優れる熱可塑性エラストマー、および該熱可塑性エラストマーを製造することが可能なオレフィン系樹脂を提供すること。【解決手段】下記要件(I)〜(IV)を満たすオレフィン系樹脂(β)。(I)エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体からなる主鎖、および、エチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む(II)グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖重合体分子鎖中の炭素原子1000個あたり、側鎖が平均0.5〜20個存在する(III)示差走査熱量分析(DSC)による測定において、60〜130℃の範囲に融解温度(Tm)を示し、融解熱量ΔHが5〜150J/gの範囲にある(IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定したガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲にある【選択図】なし

Description

本発明は、オレフィン系樹脂、該樹脂の製造方法、該樹脂を含むペレット、熱可塑性エラストマーおよび架橋ゴムに関する。
エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体、代表的にはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMまたはEPT)は、エチレンとα−オレフィン(プロピレン)との共重合体であるエチレン・α−オレフィンゴムに、少量のエチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、または、ジシクロペンタジエン(DCP)などのポリエン類を第3成分として導入し、二重結合をもたせたものである。
代表的共重合体であるEPDMは、加工性、耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、電気特性に優れるとともに、その機能性、経済性から自動車部品(ホース類、ウェザーストリップ、各種シール材、ベローズなど)、土木建築資材、電線ケーブル、工業薬品、ベルト、タイヤ、チューブ、ホース類、ガスケット、電線、防水材、樹脂ブレンドなどに使用される。
EPDMと、結晶性ポリオレフィン樹脂(主としてポリプロピレン)とを動的架橋して得られる熱可塑性エラストマー(ThermoplasticVulcanizates;TPV)は、成形工程が簡略化でき、エネルギー消費が少ない上に、リサイクルが可能な素材であり、スクラップ・不良品も再利用可能なことから、加硫ゴム分野において、高性能素材として広く用いられるようになった。TPVは、マトリックス(海相)である熱可塑性樹脂中に、架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を特徴とする多相系高分子材料である。常温においてはドメインがTPVに加硫ゴムの機能を与え、高温ではマトリックスが流動し塑性変形が可能となるため、熱可塑性プラスチックと同様の成形加工機により容易に成型品が得られる。
EPDMに結晶構造を持たせるTPV構成は未開拓の領域であるが、一般的に広く証明されている結晶性セグメントと非晶性セグメントが化学的に結合したブロックコポリマーの優れたゴム的性質を鑑みるにあたり、TPVのゴム弾性や機械物性等の諸物性を向上させる可能性を有すると考えられる。
このようなEPDMを報告する例は数少ないが、たとえば、結晶性のポリエチレンと非晶性エラストマーの直鎖ブロック構造を有するEPDMが、特許文献1や特許文献2に開示されている。これらの文献では、ジエンが導入された結晶−非晶ブロックコポリマーを合成するために、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物の反応混合物からなるバナジウム触媒を用いて、各セグメントを逐次的に合成する製造法が用いられている。生成ポリマー中のブロックコポリマーの生成割合は定かではないが、触媒の性能上、リビング重合性を保つために10℃程度の低温重合を強いられ、多量の触媒を必要するため生産性が低い。また、これらの文献にはポリプロピレン樹脂系でのTPVとしての物性向上効果も示されていない。
特表平09−511776号公報 特表平10−504581号公報
本発明が解決しようとする課題は、ゴム弾性および機械物性に優れる熱可塑性エラストマー、および該熱可塑性エラストマーを製造することが可能なオレフィン系樹脂を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、エチレン重合体を側鎖として有するグラフト型オレフィン系重合体を含む特定のオレフィン系樹脂によれば、前記課題を解決できることを見出した。
本発明の構成例は、以下の[1]〜[8]である。
[1] 下記要件(I)〜(IV)を満たすオレフィン系樹脂(β)。
(I)エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体からなる主鎖、および、エチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む
(II)グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖重合体分子鎖中の炭素原子1000個あたり、側鎖が平均0.5〜20個存在する
(III)示差走査熱量分析(DSC)による測定において、60〜130℃の範囲に融解温度(Tm)を示し、融解熱量ΔHが5〜150J/gの範囲にある
(IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定したガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲にある
[2] グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量が500〜10000の範囲にある、[1]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
[3] 下記(a)または(b)を含む、[1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
(a)下記化合物(B)および(C)を含む触媒の存在下、エチレンを重合する工程[a−1]と、
下記化合物(A)および(C)を含む触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンと、工程[a−1]の反応生成物とを共重合する工程[a−2]と
を含む方法
(b)下記(A)〜(C)の各化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンとを含む成分を共重合する工程を含む方法
(A)下記式(I)で表される架橋メタロセン化合物
(B)下記式[B]で表される遷移金属化合物
(C)(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(C−3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物
Figure 2020023724
(式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
1は炭素原子またはケイ素原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
Figure 2020023724
(式[B]中、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。mは1〜4の整数を示す。R1は、炭素原子数1〜4の非環式炭化水素基(Cn'2n'+1;n’=1〜4)を示す。R2〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。R6〜R8は独立に、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基またはハロゲン化芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の場合にはR2〜R8のうち2個の基が連結されていてもよい。nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
[4] 前記共重合を、80〜300℃の温度範囲における溶液重合法で行う、[3]に記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
[5] [1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂(β)を含むペレット。
[6] [1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂(β)と結晶性ポリオレフィン樹脂(α)と架橋剤(γ)とを含む組成物の架橋物である、熱可塑性エラストマー。
[7] [5]に記載のペレットを用いた架橋物である、熱可塑性エラストマー。
[8] [1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂(β)と架橋剤(γ)とを含む組成物の架橋物である、架橋ゴム。
本発明に係るオレフィン系樹脂によれば、室温から低温領域のゴム弾性と機械物性、例えば、硬度、モジュラス、破断強度および破断伸びとにバランスよく優れ、成形加工性や流動性に優れる熱可塑性エラストマーを容易に得ることができる。
≪オレフィン系樹脂(β)≫
オレフィン系樹脂(β)は、オレフィン系重合体一種のみで構成されていてもよいし、二種以上のオレフィン系重合体から構成されていてもよいが、下記要件(I)〜(IV)を全て満たすことを特徴としている。
(I)エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体からなる主鎖、および、エチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む
(II)グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖重合体分子鎖中の炭素原子1000個あたり、側鎖が平均0.5〜20個存在する
(III)示差走査熱量分析(DSC)による測定において、60〜130℃の範囲に融解温度(Tm)を示し、融解熱量ΔHが5〜150J/gの範囲にある
(IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定したガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲にある
以下、これらの要件(I)〜(IV)について具体的に説明する。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂(β)とは、前記重合体[R1]の合成の際に得られる成分を意味する。つまり、オレフィン系樹脂(β)は、前記重合体[R1]の合成の際に得られる成分として、グラフト共重合体ではないエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体、下記マクロモノマーや酸化防止剤などの添加剤を含み得る。
ただし、オレフィン系樹脂(β)は、重合体[R1]を主成分として含み、具体的には、例えば、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上の量で含む。
〔要件(I)〕
オレフィン系樹脂(β)は、オレフィン系重合体[R1]を必須の構成成分とする。該重合体[R1]は、主鎖および側鎖を有するグラフト共重合体であり、例えば、後述する重合方法によって合成することができる。
なお、本発明における「グラフト共重合体」とは、主鎖に対し側鎖が1本以上結合したT型ポリマーまたは櫛形ポリマーのことをいう。重合体[R1]は、エチレン重合体からなる側鎖を有すれば特に制限されず、側鎖には本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、エチレン由来以外の繰り返し単位を含むことができる。
重合体[R1]は主鎖構造が非晶性(あるいは低結晶性)のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体であるにも関わらず、結晶性の側鎖構造を有していることから、本発明のオレフィン系樹脂(β)は、一般的なエチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体(例えば、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体)に比べ、べたつきが小さく、該樹脂(β)を含むペレットを作成した時に該ペレットの耐ブロッキング性が良好となる。
前記重合体[R1]における、主鎖および側鎖は、下記(i)〜(v)の要件を満たすことが好ましい。
(i)主鎖が、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンと、ポリエンとの共重合体からなり、前記エチレンから導かれる繰り返し単位を主鎖を構成する全繰り返し単位に対し60〜97mol%含む。
(ii)主鎖が、前記ポリエンから導かれる繰り返し単位を0.1〜10.0mol%含む。
(iii)主鎖の重量平均分子量が20000〜400000である。
(iv)側鎖が、エチレンから導かれる繰り返し単位からなる。
(v)側鎖の重量平均分子量が500〜10000の範囲にある。
以下、これらの要件(i)〜(v)について具体的に説明する。
〔要件(i)〕
重合体[R1]の主鎖は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンと、ポリエンとの共重合体からなり、ゴム物性としての柔軟性と良好な低温特性とを与える部位となる。
ここで、エチレンと共重合する炭素原子数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンが挙げられる。
より好ましくは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、特に好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状オレフィンや、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができ、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
重合体[R1]の主鎖中のエチレンから導かれる繰り返し単位の割合は、主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し、60〜97mol%、好ましくは60〜95mol%、より好ましくは65〜90mol%の範囲である。
主鎖中のエチレンから導かれる繰り返し単位のモル比が前記範囲にあると、オレフィン系樹脂(β)は柔軟性に富み低温特性に優れた性質となるため、オレフィン系樹脂(β)を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーも柔軟性と低温特性に優れる。一方、エチレンから導かれる繰り返し単位量が前記範囲を上回ると、柔軟性や低温特性に劣る樹脂となる傾向にあるため、該樹脂を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーも柔軟性や低温特性に劣る傾向がある。
前記、重合体[R1]の主鎖中のエチレンから導かれる繰り返し単位のモル比は、主鎖を製造する工程で重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンおよびポリエンの濃度との割合を制御することにより調整できる。
〔要件(ii)〕
重合体[R1]の主鎖が、前記ポリエンから導かれる繰り返し単位を0.1〜10.0mol%、好ましくは0.2〜7.5mol%、より好ましくは0.3〜5mol%含む。
前記ポリエンとしては、共役ポリエン、非共役ポリエンを用いることができる。これらのポリエンは単独または2種以上を用いることができる。
前記の共役ポリエンとしては、具体的には、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−2,4−ペンタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−ペンチル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3− ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル− 1,3−ブタジエンが挙げられる。これらの中では、1,3−ブタジエン、イソプレンが共重合性に優れる点で特に好ましい。
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエンおよび4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンが好ましい。
なお、重合体[R1]の主鎖のみのエチレン/α−オレフィン/ポリエンの組成割合を直接測定することは困難であるが、例えば以下の方法により算出することができる。
測定対象となるオレフィン系樹脂(β)の製造条件に照らし、合理的な条件で重合体[R1]の主鎖部位のみとなるエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体を別途合成し、得られた共重合体の組成割合を分析することにより、間接的に重合体[R1]の主鎖の組成割合を求めることができる。合理的な条件とは、重合系中のエチレン、α−オレフィンおよびポリエンの濃度、エチレンと水素の分子存在比など、原理的に重合体[R1]の主鎖部位と同等の重合体が生成する条件である。具体的には、オレフィン系樹脂(β)を製造する方法として、予め重合体[R1]の側鎖に相当するエチレン重合体(マクロモノマー)を合成し、該マクロモノマーとエチレンとα−オレフィンとポリエンとを共重合する方法を採用する場合は、マクロモノマーを用いないこと以外は同一の条件とした重合が挙げられる。
また、樹脂(β)の全体の組成割合から、マクロモノマーや側鎖に相当する組成割合を割り引くことでも評価できる。
〔要件(iii)〕
重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量は20000〜400000であり、好ましくは30000〜300000、より好ましくは50000〜200000である。
重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量が前記範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)と結晶性ポリオレフィン樹脂(α)とを用いて動的架橋した場合、流動性、破断強度、破断伸び、ゴム弾性などの基本的な物性に優れる熱可塑性エラストマーを容易に得ることができる。一方、重量平均分子量が前記範囲を下回ると、得られる熱可塑性エラストマーはゴム弾性が低下する傾向にあり、前記範囲を上回ると、オレフィン系樹脂(β)の分散不良により、所望の物性をバランスよく有する熱可塑性エラストマーを得ることが困難になる傾向がある。
重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量は、後述する製造工程において、重合系中のエチレン濃度を制御することで調整できる。エチレン濃度の制御方法としては、エチレン分圧調整や重合温度の調整が挙げられる。また、重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量の調整は、重合系中に水素を供給することでも可能である。
なお、重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量は、前記重合体[R1]の主鎖中のエチレン/α−オレフィン/ポリエンの組成割合を算出する方法に従ってエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体を合成し、当該重合体の重量平均分子量を常法、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定することで求めてもよいし、樹脂(β)の分子量から、マクロモノマーや側鎖の影響を割り引くことでも評価できる。
〔要件(iv)〕
重合体[R1]の側鎖は、実質的に、エチレンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン重合体であり、結晶性のエチレン重合体鎖からなることが好ましい。
実質的にエチレンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン重合体とは、エチレンから導かれる繰り返し単位のモル比が、該エチレン重合体に含まれる全繰り返し単位に対し、好ましくは95.0〜100mol%、より好ましくは98.0〜100mol%、さらに好ましくは99.5〜100mol%からなる重合体である。すなわち、その役割と特徴を損なわない範囲でエチレン以外のα−オレフィンを含んでいてもよい。
オレフィン系樹脂(β)を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーが優れたゴム弾性を発現させる理由は、重合体[R1]の側鎖が、ゴム相の擬似架橋点として作用し、表面硬度向上や高剛性化の役割を担うとともに、重合体[R1]の融点付近の高温から低温にかけて優れたゴム弾性を発現させる効果があるためであると推測される。
重合体[R1]の側鎖が、結晶性のエチレン重合体からなることは、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)の示差走査熱量分析(DSC)において、60〜130℃の範囲に融解ピークが観測されること、すなわち60〜130℃の範囲に融解温度(Tm)を有することで確認できる。
〔要件(v)〕
重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量は、500〜10000の範囲であり、好ましくは500〜5000の範囲であり、さらに好ましくは500〜3000の範囲である。
重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量が前記範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーは、高硬度・高剛性でありながら重合体[R1]の融点付近の高温から低温にかけてのゴム弾性に優れる。
重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量が前記範囲を下回ると、オレフィン系樹脂(β)を用いて得られる熱可塑性エラストマーは、表面硬度および剛性が低下し、ゴム弾性も低下する傾向がある。これは、側鎖成分の擬似架橋点としての役割が低下しているのではないかと推測される。一方、重量平均分子量が前記範囲を上回ると、主鎖に対する側鎖本数の低下により、得られる熱可塑性エラストマーの剛性や表面硬度、ゴム弾性などの機械物性が低下するか、または、重合体[R1]における主鎖部位の相対量が低下するため、ゴム弾性が著しく低下するおそれがある。
重合体[R1]は、エチレン重合体であるマクロモノマーとエチレン、α−オレフィンおよびポリエンとを共重合することにより得ることができる。この場合、マクロモノマーの重量平均分子量が、重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量に相当する。従って、重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量は、オレフィン系樹脂(β)のGPC測定により低分量側の溶出成分として分離されるマクロモノマーの分子量を解析する、または、予め合成されたマクロモノマーのGPC測定を行うことで求めることができる。
重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量を調整する方法としては、後述するマクロモノマーを合成する際の触媒として遷移金属化合物を用いる場合には、該遷移金属化合物の種類を変更する方法や、重合条件を調整する方法が挙げられる。
オレフィン系樹脂(β)に含まれる重合体[R1]が、前述した(i)〜(v)の要件を満たすことにより、オレフィン系樹脂(β)を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーは、流動性、硬度、モジュラス、破断強度、破断伸びおよびゴム弾性の全ての性質を高度な水準で満たすという特徴を有する。重合体[R1]は、より好ましくはさらに下記(vi)の要件を満たす。
〔要件(vi)〕
重合体[R1]の側鎖のメチル分岐数は側鎖に含まれる炭素1000個あたり0.1未満である。
側鎖のメチル分岐数が前記範囲にあることにより、側鎖のエチレン重合体の結晶性がより高まり、オレフィン系樹脂(β)を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーは、硬度やモジュラスが高くなり、ゴム弾性にも優れる。
なお、メチル分岐数は、前述した「要件(v)」において記載した方法と同様の方法で得られるマクロモノマーを用い、同位体炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を用いた公知の方法、例えば特開2006−233207号公報に公開されている方法によって測定することができる。
重合体[R1]の側鎖のメチル分岐数を調整する方法としては、後述するマクロモノマーを合成する際の触媒として遷移金属化合物を用いる場合には、該遷移金属化合物の種類を変更する方法が挙げられる。
〔要件(II)〕
オレフィン系樹脂(β)は、前述の通り重合体[R1]を含み、さらに重合体[R1]の側鎖は、主鎖重合体分子鎖中の炭素原子1000個あたり、平均0.5〜20個(本)、好ましくは平均0.5〜15個、より好ましくは平均0.5〜10個存在する。
側鎖が前記範囲で主鎖に導入されていることで、オレフィン系樹脂(β)を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーは、高硬度・高モジュラスであり、重合体[R1]の融点付近の高温から低温にかけてのゴム弾性に優れる。
一方で、側鎖数が前記範囲を下回る場合、側鎖による物理化架橋点の効果が少なくなるため、オレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、剛性、硬度またはゴム弾性が低下する場合がある。また、側鎖数が前記範囲を上回る場合、オレフィン系樹脂(β)中のエチレン重合体からなる結晶成分の相対量が多くなるため、該樹脂を用いた動的架橋によって得られる熱可塑性エラストマーは、ゴム弾性が著しく低下する場合がある。
前記側鎖数を算出する方法は、例えば[a]同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を用いる方法、または、[b]GPCによる方法を用いることができる。
以下、[a]および[b]について説明する。
[a]同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)による測定において、37.8〜38.1ppmの範囲に、重合体[R1]の主鎖を構成するエチレン、α−オレフィンおよびポエリンに由来するメチン炭素とは別に、側鎖と主鎖の接合部分のメチン炭素に帰属できるシグナルが観測される場合がある。
該シグナルが観測される場合、次式にて前記側鎖数を求めることができる。
[側鎖数]=1000×[IPE-methine]/{[Iall-C]×(100−[M])/10
0};
[IPE-methine]:側鎖と主鎖の接合部分のメチン炭素の積分値
[Iall-C]:全炭素積分値
[M]:重合体[R1]製造時に添加あるいは生成するマクロモノマーのオレフィン系樹脂(β)に対する重量比(wt%)
[b]前述の通り、オレフィン系樹脂(β)をGPCにより分析した場合に得られる低分子量側のピークは、共重合反応時に共重合せずに残存したマクロモノマーに由来する。従って、該低分子量側のピークと他のピークとの面積比からオレフィン系樹脂(β)中に含まれる残存したマクロモノマーの重量比を求めることができる。重合体[R1]の製造時に添加あるいは生成するマクロモノマーの重量組成が明らかな場合、その重量組成と残存したマクロモノマーの重量比の差分から前記側鎖数を求めることができる。具体的には次式で求めることができる。
[側鎖数]=([M]−[M’])/(100−[M’])×(1/[Mn-M])×14/{1−([M]−[M’])/(100−[M’])}×(1/1000);
[M]:重合体[R1]製造時に添加あるいは生成するマクロモノマーの、重合体[R1]製造時に得られる樹脂全量[R’]に対する重量比(wt%)
[M’]:GPCから求められる残存したマクロモノマーの、重合体[R1]製造時に得られる樹脂全量[R’]に対する重量比(wt%)
[Mn-M]:マクロモノマーの数平均分子量
なお、前記方法[a]、[b]により求められる平均頻度は、オレフィン系樹脂(β)の製造の際に副生するエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体が存在する場合、該重合体の側鎖本数を0本としたときの値である。
側鎖数は、例えば、重合系中のマクロモノマーのモル濃度を制御することで調整可能である。
例えば、一定の重合条件下で、側鎖分子量を一定とした場合、マクロモノマーの仕込み質量(あるいは生成質量)を多くすると、マクロモノマーのモル濃度が高くなり、生成するグラフトポリマー中の側鎖数が多くなる。また、マクロモノマーの仕込み質量(あるいは生成質量)を一定とした場合、側鎖分子量を小さくするなどにより、マクロモノマーのモル濃度が高くなり、生成するグラフトポリマー中の側鎖数を多くすることができる。
また、後述する架橋メタロセン化合物(A)の種類を選択することによっても、側鎖数を調整することができ、例えば、高温で高共重合性を示し、高分量の重合体を生成可能な架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒を選択することで、側鎖数を多くすることができる。
〔要件(III)〕
オレフィン系樹脂(β)は、DSCの昇温測定時に吸熱ピークすなわち融解ピークを示し、その融解温度(Tm)が、60〜130℃、好ましくは80〜125℃、より好ましくは90〜120℃の範囲に存在する。
また前記融解ピーク面積から算出される融解熱量(ΔH)は5〜150J/g、好ましくは5〜120J/g、より好ましくは5〜100J/g、さらに好ましくは8〜60J/gの範囲にある。
TmおよびΔHは、DSCにより一度昇温工程を経て試料が融解した後、30℃までの冷却工程により結晶化させ、2度目の昇温工程(昇温速度10℃/分)で現れる吸熱ピークを解析したものである。
前記範囲に観測されるTmおよびΔHは主にオレフィン系樹脂(β)を構成する重合体[R1]の側鎖エチレン重合体に由来しており、TmおよびΔHが前記範囲にあることで、本発明のオレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、高硬度・高剛性であり、特に重合体[R1]の融点付近の高温から低温にかけてのゴム弾性に優れる。一方、TmあるいはΔHが当該範囲を下回る場合、剛性、硬度またはゴム弾性が低下する場合がある。
Tmを前記範囲に調整する方法としては、後述するマクロモノマーの合成の際に使用する遷移金属化合物の種類を適切に選択する方法が挙げられる。
また、ΔHを前記範囲に調整する方法としては、例えば、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造工程においてマクロモノマーの存在比を制御する方法が挙げられる。具体的には、マクロモノマーのフィード量を制御する、あるいは後述する架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)のフィード比を制御する方法が挙げられる。
〔要件(IV)〕
オレフィン系樹脂(β)は、DSCにより測定したガラス転移温度(Tg)が、−80〜−30℃、好ましくは−80〜−40℃、より好ましくは−80〜−50℃にある。
このTgは、重合体[R1]の主鎖のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体に基づく。Tgが、−80〜−30℃の範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、ゴムとしての柔軟性とゴム弾性とを備える。
前記範囲のTgを有するオレフィン系樹脂(β)は、重合体[R1]の合成に際し、コモノマーであるα−オレフィンの種類や組成を制御することで得ることができる。
オレフィン系樹脂(β)は、前記要件(I)〜(IV)に加え、下記(V)あるいは(VI)、またはその両方の要件を満たしていることが好ましい。
〔要件(V)〕
オレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜12dl/gの範囲にあり、好ましくは0.2〜10dl/g、さらに好ましくは0.5〜5dl/gである。この範囲にあると、オレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、良好な機械物性を示し、さらに良好な成形加工性をも有する。
〔要件(VI)〕
オレフィン系樹脂(β)は、クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定した20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合(E値)が45wt%以下であり、好ましくは35wt%以下であり、より好ましくは30wt%以下である。
通常、市販のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体樹脂は(例えば、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体)は、エチレンの組成が90〜50mol%程度となるよう調整されたポリマーであり、非晶性(あるいは低結晶性)を示し、室温以下の温度でも特定の有機溶剤に対して良好に溶解する。例えば、市販のエチレン/プロピレン/ジエン共重合体樹脂は、20℃以下のオルトジクロロベンゼンに対して大半が可溶であり、E値は通常93wt%以上の値である。
一方、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)を構成する重合体[R1]は、主鎖が前述のようなエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体でありながら、側鎖が結晶性エチレン重合体であるため、室温以下のオルトジクロロベンゼンに対して難溶となる。そのため、オレフィン系樹脂(β)はE値が小さい特徴を有する。
オレフィン系樹脂(β)が低いE値を有することは、重合体[R1]の主鎖構造と側鎖構造が化学的に結合している間接的な証拠であり、さらにオレフィン系樹脂(β)に重合体[R1]が相当量含まれていることを示している。
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、一般の動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー用原料として使用される市販のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体樹脂と同様、ポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン樹脂との複合化によりドメイン相を形成し、得られる熱可塑性エラストマーにおいて、柔軟性とゴム弾性を発現する役割を担う。ここで市販のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体樹脂を用いた場合、得られる熱可塑性エラストマーにおいて、ゴムとしての柔軟性やゴム弾性が発現する反面、表面硬度やモジュラス、破断強度、破断伸びが低下する。一方、本発明のオレフィン樹脂(β)を用いた場合、得られる熱可塑性エラストマーは、硬度、モジュラス、破断強度、破断伸びおよびゴム弾性にバランスよく優れる。これは、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体が形成するドメイン相の中で、重合体[R1]の側鎖であるポリエチレン重合体が擬似架橋点を形成し、該ドメイン自身に高い剛性、高い硬度、優れたゴム弾性が生まれるためであると推測される。
従って、オレフィン系樹脂(β)に重合体[R1]が含まれていることは、良好な物性をバランスよく示す熱可塑性エラストマーを得るうえで重要な要素となる。
また、本発明に係る熱可塑性エラストマーの機械物性バランスを良好に保つには、オレフィン系樹脂(β)のΔHとE値が以下のa)、b)、c)いずれかの関係を満たすことが好ましい。
a)ΔHが5J/g以上、15J/g未満の場合、Eが45wt%以下であり、好ましくは40wt%以下、さらに好ましくは10〜35wt%の範囲である。
b)ΔHが15J/g以上、30J/g未満の場合、Eが40wt%以下であり、好ましくは35wt%以下、さらに好ましくは5〜30wt%の範囲である。
c)ΔHが30J/g以上の場合、Eが30wt%以下であり、好ましくは25wt%以下である。
オレフィン系樹脂(β)が前記a)、b)またはc)の関係を満たすということは、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)に含まれる重合体[R1]の量が、機械物性に優れる熱可塑性エラストマーを得るうえで、十分に多いことを示している。
オレフィン系樹脂(β)が前記a)、b)またはc)の関係を満たさない場合、即ちE値が大きくなると、グラフト型ポリマーの含有量が十分でなく、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体とエチレン重合体のポリマーブレンドのような性質となり、以上で説明した良好な物性を発現しにくくなる場合がある。
例えば、ΔHが5J/g以上、15J/g未満のように、側鎖量が少ない場合で、E値が45wt%を上回ると、既存のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体樹脂を用いた場合の性能に近くなり、硬度や剛性およびゴム弾性にバランスよく優れる熱可塑性エラストマーを得にくい傾向にある。また、ΔHが30J/g以上のような側鎖量が比較的多い場合で、E値が30wt%を上回ると、主鎖に組込まれなかったエチレン重合体単独の成分が多くなり、ゴムとしての柔軟性が損なわれるだけでなく、ゴム弾性や剛性の著しい低下も招くおそれがある。
既に説明したように、オレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体に結晶性のエチレン重合体が化学的に結合している成分(重合体[R1])を相当量、例えば、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上の量で含んでいる。このため前述のΔHとE値との好ましい関係を満たすことができる。エチレンとα−オレフィン、ポリエン、ポリエチレンマクロモノマーを共重合させてオレフィン系樹脂(β)を合成する場合には、該共重合工程で用いる触媒の選択が重要であると考えられ、後述する架橋メタロセン化合物(A)を用いることで、前述のΔHとE値との好ましい関係を満たす樹脂を得ることができる。
〔オレフィン系樹脂(β)のその他物性〕
・弾性率
オレフィン系樹脂(β)は、弾性率が2〜120MPaの範囲にあることが好ましく、より好ましくは3〜100MPa、さらに好ましくは5〜90MPaである。弾性率が前記範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、ゴムとしての柔軟性やゴム弾性に優れる。
なお、前記弾性率はASTM D638に準拠した引張弾性率であることが望ましい。
・相分離構造
オレフィン系樹脂(β)は、透過型電子顕微鏡で観測される結晶性成分を示す相がマイクロメートルオーダーの非連続相であることが好ましい。なお、前述の相構造を有しているかどうかの観察は、たとえば以下のようにして実施する。
まず、オレフィン系樹脂(β)を、170℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間加熱後、10MPaで1分加圧することで成形したのち、20℃、10MPa下で3分間冷却することにより所定の厚みのシートを作製することにより試験片を得る。
得られた試験片を0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO4)によって染色する。さらに、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで、得られた小片を約100nmの膜厚の超薄切片とする。この超薄切片にカーボンを蒸着させて透過型電子顕微鏡(加速電圧100kV)で観察する。
この観察方法によると、重合体[R1]の側鎖エチレン重合体は、該側鎖が形成するラメラ構造の結晶間非晶部位が選択的にルテニウム酸で染色されるため、より高いコントラストとして観察される。
オレフィン系樹脂(β)は、このようにして観察される重合体[R1]のエチレン重合体からなる側鎖部分に相当する相がマイクロメートルオーダーの非連続相であることが好ましい。
前述の通りオレフィン系樹脂(β)は、非晶性(もしくは低結晶性)の主鎖と結晶性側鎖が共有結合で繋がった重合体[R1]を主成分とするため、非晶成分と結晶成分の相溶効果が高く、前記のようなミクロ相分離構造が形成されると考えられる。
オレフィン系樹脂(β)において観測される前記の非連続相は、側鎖エチレン重合体からなる物理架橋点であり、オレフィン系樹脂(β)を用いて得られる熱可塑性エラストマーの中に形成されるエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体からなるドメイン相においても該物理架橋点が形成されているものと考えられる。このため、本発明に係る熱可塑性エラストマーは剛性と硬度とゴム弾性の機械物性バランスに優れていると考えられる。
一方、熱可塑性エラストマーの製造の際に、オレフィン系樹脂(β)を用いずに、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体とエチレン重合体のポリマーブレンドを用いた場合、前記のようなミクロ相分離構造は形成されず、粗大な結晶相が形成される。このため、該ポリマーブレンドを用いた場合には、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体ドメインにおいて物理架橋点は形成されず、良好な物性を示す動的架橋型熱可塑性エラストマーを得ることはできない。
<オレフィン系樹脂(β)の製造方法>
本発明のオレフィン系樹脂(β)の製造方法としては、例えば、下記(a)または(b)を含む方法で製造することができる。
(a)下記化合物(B)および(C)を含む触媒の存在下、エチレンを重合する工程[a−1]と、
下記化合物(A)および(C)を含む触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンと、工程[a−1]の反応生成物とを共重合する工程[a−2]と
を含む方法
(b)下記(A)〜(C)の各化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンとを含む成分を共重合する工程を含む方法
(A)下記式(I)で表される架橋メタロセン化合物
(B)下記式[B]で表される遷移金属化合物
(C)(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(C−3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物
[架橋メタロセン化合物(A)]
前記架橋メタロセン化合物(A)は、下記式(I)で表され、後述する化合物(C)の存在下でオレフィン重合用触媒として機能する。
Figure 2020023724
(式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
1は炭素原子またはケイ素原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンと、さらに、マクロモノマーとを共重合し、重合体[R1]を生成する役割を果たす。
すなわち、架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンとα−オレフィンとポリエンとマクロモノマーとの共重合に寄与し、特にマクロモノマーに対し高い共重合性を示す特徴を有する。更に架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレン重合体鎖であるマクロモノマーが溶解するような比較的高温条件下においても十分に高いオレフィン重合活性を示し、実用上十分に高い分子量の重合体を合成できる特徴を有する。
架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、前記特徴を有しているため、重合体[R1]を多く含有するオレフィン系樹脂(β)を製造することができ、前述の要件(I)〜(IV)を満たすオレフィン系樹脂(β)を製造することができる。そして、このようにして得られるオレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、高硬度かつ高剛性であり、更に機械物性およびゴム弾性の優れたものになる。
以下、本発明で用いられる架橋メタロセン化合物(A)の化学構造上の特徴について説明する。
架橋メタロセン化合物(A)は、構造上、次の特徴[m1]〜[m3]を備える。
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう。)である。
[m2]二つの配位子が、アリール(aryl)基を有する、炭素原子またはケイ素原子からなるアリール基含有共有結合架橋部(以下「架橋部」ともいう。)によって結合されている。
[m3]メタロセン化合物を構成する遷移金属(M)が周期表第4族の原子、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
以下、架橋メタロセン化合物(A)が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他特徴について、順次説明する。
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式(I)中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましく、隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
例えば、R1、R2、R3およびR4は全て水素原子であるか、または、R1、R2、R3およびR4のいずれか一つ以上が炭化水素基(以下「炭化水素基(f1)」ともいう。)、好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基またはケイ素含有基(以下「ケイ素含有基(f2)」ともいう。)、好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基である。その他、R1、R2、R3およびR4としては、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)を挙げることもできる。
炭化水素基(f1)としては、好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、例えば、直鎖状または分岐状の炭化水素基(例:アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、環状飽和炭化水素基(例:シクロアルキル基)、環状不飽和炭化水素基(例:アリール基)が挙げられる。炭化水素基(f1)としては、前記例示の基のうち互いに隣接する炭素原子に結合した任意の二つの水素原子が同時に置換されて脂環または芳香環を形成している基も含む。
炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基等が挙げられる。
ケイ素含有基(f2)としては、好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基であり、例えば、式(I)中のシクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられ、具体的には、アルキルシリル基(例:トリメチルシリル基)、アリールシリル基(例:トリフェニルシリル基)が挙げられる。
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
1、R2、R3およびR4のうちの二つ以上が水素原子以外の置換基である場合は、該置換基は互いに同一でも異なっていてもよく、R1、R2、R3およびR4のうちの隣接する二つの基同士は互いに結合して脂環または芳香環を形成していてもよい。
(置換フルオレニル基)
式(I)中、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。R6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、"R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であること"はない。
重合活性の観点からは、R6およびR11がいずれも水素原子でないことが好ましく;R6、R7、R10およびR11がいずれも水素原子ではないことが更に好ましく;R6およびR11が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であり、且つR7とR10が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であることが特に好ましい。また、R6およびR7が互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。
5〜R12における炭化水素基の例示および好ましい基としては、前記炭化水素基(f1)として例示した基と同様の基が挙げられる。R5〜R12におけるケイ素含有基の例示および好ましい基としては、前記ケイ素含有基(f2)として例示した基と同様の基が挙げられる。R5〜R12におけるヘテロ原子含有基としては、前記ヘテロ原子含有基として例示した基と同様の基が挙げられる。
6およびR7(R10およびR11)が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
(架橋部)
式(I)中、R13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示し、Y1は炭素原子またはケイ素原子を示す。オレフィン系樹脂(β)の製造方法において重要な点は、架橋部の架橋原子Y1に、互いに同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基[R13およびR14]が結合していることである。製造上の容易性から、R13およびR14は互いに同一であることが好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびこれらが有する芳香族水素(sp2型水素)の一つ以上が置換基で置換された基が挙げられる。置換基としては、前記炭化水素基(f1)およびケイ素含有基(f2)や、ハロゲン原子およびハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などの炭素原子数6〜14、好ましくは6〜10の非置換アリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基などのアルキル基置換アリール基;シクロヘキシルフェニル基などのシクロアルキル基置換アリール基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジクロロフェニル基、ジブロモフェニル基などのハロゲン化アリール基;(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのハロゲン化アルキル基置換アリール基が挙げられる。
これらの基における置換基の位置は、メタ位および/またはパラ位が好ましい。これらの中でも、置換基がメタ位および/またはパラ位に位置する置換フェニル基が更に好ましい。
(架橋メタロセン化合物(A)のその他の特徴)
式(I)中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が挙げられる。
Qにおけるハロゲン化炭化水素基としては、Qの例示として挙げた前記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
炭素原子数4〜10の中性の共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シスまたはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シスまたはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シスまたはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シスまたはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シスまたはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シスまたはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基などが挙げられる。
孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、または、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
式(I)中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、ジルコニウム原子あるいはハフニウム原子がマクロモノマーを高効率で共重合し、また高分子量のオレフィン系樹脂(β)を製造できる点でも好ましい。
特に、高い生産性を確保するため、高温高圧の条件下で重合が実施される工業プロセスにおいては、前記のような特性からMがハフニウム原子であることが好ましい。これは、高圧条件下においてはエチレンおよびα−オレフィンの存在比がマクロモノマーに対し高くなり、高温条件下では一般に分子量の低下が起こるため、前記のようにマクロモノマーを効率よく共重合し、高分子量のオレフィン系樹脂(β)を製造できる性能を備えた触媒を用いることが好ましいためである。
このような、Mがハフニウム原子であることによる特性は、(1)ジルコニウム原子やチタニウム原子と比べて、ハフニウム原子のルイス酸性度が小さく、反応性が低いこと、および、(2)ジルコニウム原子やチタニウム原子と比べて、ハフニウム原子−炭素原子間の結合エネルギーが大きいことが、分子量決定因子の一つである生成ポリマー鎖と結合している重合活性種のβ−水素脱離反応を含めた連鎖移動反応を抑制していることに起因していると考えられる。
(好ましい架橋メタロセン化合物(A)の例示)
以下に、架橋メタロセン化合物(A)の好適な具体例を示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[II]で示される構造の化合物に由来する基を指し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[III]で示される構造の化合物に由来する基を指し、ジベンゾフルオレニルとは式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[V]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
Figure 2020023724
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、
ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、前記例示化合物の「ジルコニウム」を「ハフニウム」または「チタニウム」に変えた化合物、「ジクロリド」を「ジフルオライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」、「メチルエチル」または「ジベンジル」などに変えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに変えた化合物を挙げることもできる。
以上のメタロセン化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、国際公開第01/27124号、国際公開第04/029062号に記載の方法が挙げられる。
以上のような架橋メタロセン化合物(A)は、1種単独または2種以上を用いることができる。
[遷移金属化合物(B)]
前記遷移金属化合物(B)は下記式[B]で表される構造を有する特定の化合物であり、後述する化合物(C)の存在下でオレフィン重合用触媒として機能する。
Figure 2020023724
(式[B]中、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。
mは1〜4の整数を示す。
1は、式Cn'2n'+1(n’は1〜4の整数である)で表される炭素原子数1〜4の非環式炭化水素基を示す。
2〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
6〜R8は独立に炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基またはハロゲン化芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の場合には、式[B]の構造単位相互間においてR2〜R8で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合には、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレン重合体であるマクロモノマーの合成に使用され、また、重合体[R1]の側鎖の形成に寄与する。
すなわち、遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、主にエチレンの重合に寄与し、該化合物(B)を用いることで、高選択率で片末端ビニル基を有するエチレン重合体を合成することができる。さらに遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒を用いることで、比較的低分子量のエチレン重合体(重量平均分子量で500〜10000の範囲)を合成することができる。遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒が、前記特徴を有していることにより、側鎖が効率よく導入された重合体[R1]を容易に得ることができ、本発明のオレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、高硬度かつ高剛性であり、更に機械物性およびゴム弾性の優れたものになる。
さらに遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンとα−オレフィンとポリエンやマクロモノマー共存下においてもエチレンを高選択的に重合できる特徴を有しているため、エチレン重合体としての機械的特性、熱的特性が良好に保持された側鎖を有する重合体[R1]を容易に得ることができる。従って、遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒を用いることで得られるオレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは、高硬度かつ高剛性であり、更に機械物性およびゴム弾性の優れたものになる。また前記特徴は後述するオレフィン系樹脂(β)の製造方法のうち重合方法[b]を採用するうえでも好ましい特徴である。
なお、遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、重合体鎖内部にオレフィン構造(いわゆる内部オレフィン)を実質的に生成しない性能を有することが、得られるオレフィン系樹脂(β)およびオレフィン系樹脂(β)を用いて動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーの耐光性や耐着色性などの観点から好ましい。
以下、本発明で用いられる遷移金属化合物(B)の化学構造上の特徴について説明する。
式[B]中、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
式[B]において、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどであり、好ましくは周期表第4族の金属原子であり、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムである。
mは1〜4の整数を示し、好ましくは1〜2であり、特に好ましくは2である。
1は、式Cn'2n'+1(n’は1〜4の整数である)で表される炭素原子数1〜4の非環式炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基である。好ましくは、直鎖炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。これらの中では、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましい。より好ましくは、メチル基、エチル基である。R1がこれらの炭化水素基であることで、比較的低分子量(例えば重量平均分子量で500〜10000の範囲)のエチレン重合体を合成することができ、前述の通り、物性バランスに優れる本発明の熱可塑性エラストマーを得るうえで好ましい。
2〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
mが2以上の場合には、式[B]の構造単位相互間においてR2〜R8で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
また、前記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素基としては、前記炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換された基が挙げられ、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
前記炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基としては、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
酸素含有基としては、アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などを含む基が挙げられ、具体的には、前記炭化水素基がこれらの基で置換された基等が挙げられる。これらのうち、前記アリール基に、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
窒素含有基としては、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アンモニウム塩基などを含む基が挙げられ、具体的には、前記炭化水素基がこれらの基で置換された基等が挙げられる。
ホウ素含有基としては、ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などを含む基が挙げられ、具体的には、前記炭化水素基がこれらの基で置換された基等が挙げられる。
イオウ含有基としては、メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などを含む基が挙げられ、具体的には、前記炭化水素基がこれらの基で置換された基等が挙げられる。
リン含有基としては、ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などを含む基が挙げられ、具体的には、前記炭化水素基がこれらの基で置換された基等が挙げられる。
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換した基が挙げられる。
次に前記で説明したR2〜R6の例について、より具体的に説明する。アルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。
アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2
,4,6−トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
アリールチオ基としては、具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基などが挙げられる。
アシル基としては、具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基などが挙げられる。
エステル基としては、具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
チオエステル基としては、具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。
アミド基としては、具体的には、アセトアミド基、N−メチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などが挙げられる。
イミド基としては、具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。
アミノ基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
イミノ基としては、具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。
スルホンエステル基としては、具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。
スルホンアミド基としては、具体的には、フェニルスルホンアミド基、N−メチルスルホンアミド基、N−メチル−p−トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
2〜R5は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂環、芳香環または、窒素原子などのヘテロ原子を含む環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、前記R2〜R5で例示した基と同様の基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、イコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、炭素原子数が1〜20の基が好ましい。
ヘテロ環式化合物残基としては、前記R2〜R5で例示した基と同様の基が挙げられる。
酸素含有基としては、前記R2〜R5で例示した基と同様の基が挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イオウ含有基としては、前記R2〜R5で例示した基と同様の基が挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p−トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p−クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p−トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
窒素含有基としては、具体的には、前記R2〜R5で例示した基と同様の基が挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ホウ素含有基としては、具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
リン含有基としては、具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ケイ素含有基としては、具体的には、前記R2〜R5で例示した基と同様の基が挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基等が挙げられる。
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、それぞれ、具体的には、前記R2〜R5で例示した基と同様の基が挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換した基が挙げられる。
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基、前記炭素原子数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
6〜R8は独立に炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基である。
前記炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基等が挙げられる。
また、前記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素基としては、前記炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換された基が挙げられ、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。前記芳香族炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよい。
前記ハロゲン化芳香族炭化水素基としては、前記芳香族炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換された基が挙げられる。
6〜R8の炭化水素基のうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であることによって、遷移金属化合物(B)を含む重合用触媒は、高温の重合条件下でも良好な活性を有するため、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)の製造に適しており、製造されるオレフィン系樹脂(β)を用いて得られる熱可塑性エラストマーは良好な性能を発揮する。
mが2以上の場合には、式[B]の構造単位相互間においてR2〜R8で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。さらに、mが2以上の場合にはR1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、nが2以上の整数の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
また、以上のような、遷移金属化合物(B)は、1種単独または2種以上を用いることができる。
[化合物(C)]
前記化合物(C)は、化合物(A)および化合物(B)以外の化合物であり、化合物(A)および化合物(B)と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、
(C−1)有機金属化合物、
(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、
(C−3)化合物(A)または化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
以下、(C−1)〜(C−3)の化合物について順次説明する。
((C−1)有機金属化合物)
前記(C−1)有機金属化合物としては、具体的には、下記式(C−1a)で表される有機アルミニウム化合物、式(C−1b)で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、および、式(C−1c)で表される周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物が挙げられる。なお、(C−1)有機金属化合物には、後述する(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物は含まないものとする。
a pAl(ORbqrs (C−1a)
(式(C−1a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+r+s=3である。)
3AlRc 4 (C−1b)
(式(C−1b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
de4 (C−1c)
(式(C−1c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。)
前記式(C−1a)で表される有機アルミニウム化合物としては、次のような式(C−1a−1)〜(C−1a−4)で表される化合物を例示できる。
a pAl(ORb3-p (C−1a−1)
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)
a pAlY3-p (C−1a−2)
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)
a pAlH3-p (C−1a−3)
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)
a pAl(ORbqs (C−1a−4)
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)
式(C−1a)で表される有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルブチルアルミニウム、トリ2−メチルペンチルアルミニウム、トリ3−メチルペンチルアルミニウム、トリ4−メチルペンチルアルミニウム、トリ2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
a 2.5Al(ORb0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化された炭化
水素アルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリド等、部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム等を挙げることができる。
また、本発明では、(C−1a)に類似する化合物も使用することができ、このような化合物として例えば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物、具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
前記式(C−1b)で表される化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを挙げることができる。
前記式(C−1c)で表される化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
また、(C−1)有機金属化合物としては、前記化合物以外にも、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
さらに、重合系内で前記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを、前記(C−1)有機金属化合物として使用することもできる。
前記(C−1)有機金属化合物は、1種類単独でまたは2種以上を用いることができる。
((C−2)有機アルミニウムオキシ化合物)
前記(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、例えば、特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
従来公知のアルミノキサンは、例えば以下のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
なお、前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有していてもよい。
また、得られる前記アルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、前記式(C−1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示した化合物と同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
前記有機アルミニウム化合物は、1種単独または2種以上を用いることができる。
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分、または、前記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物、特に、塩素化物、臭素化物などのハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
また、前記ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である化合物であることが好ましい。
前記(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
Figure 2020023724
(式(III)中、R17は炭素原子数が1〜10の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示し、4つのR18は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
前記式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、例えば、下記式(IV)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
19−B(OH)2 (IV)
(式(IV)中、R19は前記式(III)におけるR17と同じ基を示す。)
前記式(IV)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸が挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独または2種以上を用いることができる。
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記式(C−1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示した化合物と同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独または2種以上を用いることができる。
前記(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を用いることができる。
((C−3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物)
前記架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物(C−3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、米国特許第5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
具体的には、前記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
前記イオン性化合物としては、例えば、下記式(V)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2020023724
(式(V)中、R20はH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R21〜R24は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)。
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
20としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
また、イオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスホニウム塩などを挙げることもできる。
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられる。
前記N,N−ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、例えばN,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、例えばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
さらに、イオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VI)または(VII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
Figure 2020023724
(式(VI)中、Etはエチル基を示す。)
Figure 2020023724
(式(VII)中、Etはエチル基を示す。)
前記ボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩が挙げられる。
前記カルボラン化合物として具体的には、例えば、4−カルバノナボラン、1,3−ジカルバノナボラン、6,9−ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン、2,7−ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩が挙げられる。
前記ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
前記イソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の例えば周期表第1族または第2族の金属、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
前イオン化イオン性化合物(C−3)は、1種単独または2種以上を用いることができる。
架橋メタロセン化合物(A)に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
[オレフィンの重合方法]
以下、前述の(a)または(b)を含む方法について説明する。
オレフィンの重合は溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合などの液相重合法、気相重合法のいずれにおいても実施できるが、後述する重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]は液相重合法であることが好ましい。
液相重合法では、不活性炭化水素媒体を用いることができ、該媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
オレフィン系樹脂(β)の製造に当たり、前述したオレフィン重合用触媒を用いる場合、架橋メタロセン化合物(A)は、反応容積1リットル当たり、通常10-8〜1モル、好ましくは10-7〜0.5モルになるような量で用いられ、遷移金属化合物(B)は、反応容積1リットル当たり、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルになるような量で用いられる。
また、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)は、遷移金属化合物(B)と架橋メタロセン化合物(A)とのモル比(B/A)が、通常0.00001〜100、好ましくは0.00005〜10、より好ましくは0.0001〜5となる量で用いられる。
有機金属化合物(C−1)は、有機金属化合物(C−1)と、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C−1/M)が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(C−2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(C−2)中のアルミニウム原子と、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C−2/M)が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
イオン化イオン性化合物(C−3)は、イオン化イオン性化合物(C−3)と、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C−3/M)が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+300℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜9.8MPa(100kg/cm2)、好ましくは常圧〜4.9MPa(50kg/cm2)であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
得られるオレフィン系樹脂(β)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができ、さらに、使用する化合物(A)、(B)および(C)のいずれかの化合物の選択、あるいは組み合わせの選択により調節することもできる。
重合に用いられるオレフィンとしては、エチレンおよび前述した炭素原子数3〜20のα−オレフィンとポリエンが挙げられる。これらのオレフィンは、エチレンを必須のモノマーとして、そのほかのモノマーを1種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、オレフィン系樹脂(β)は、次の重合方法[a]あるいは重合方法[b]いずれかの方法によって製造することができる。
・重合方法[a]
遷移金属化合物(B)と化合物(C)の存在下でエチレンを重合してマクロモノマーを得る前工程[a−1]と、次いで、架橋メタロセン化合物(A)と化合物(C)を用い、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンと、前工程[a−1]の反応生成物とを共重合する後工程[a−2]を含む方法。
前工程[a−1]
前工程[a−1]は、遷移金属化合物(B)および化合物(C)を用いて、主にエチレンを重合し、実質的にエチレン重合体であるマクロモノマーを得る工程であり、重合方法は特に制限されず、例えば、前述の方法が挙げられる。この前工程[a−1]では、ビニル末端マクロモノマーを得ることができる。液相重合の場合、得られる反応液をそのまま後工程に導入してもよいし、マクロモノマーを取り出した後、該マクロモノマーを塊のままあるいは紛体で後工程に導入してもよいし、取り出したマクロモノマーを用いてスラリーや溶液を調製し、得られたスラリーや溶液を後工程に導入してもよい。
後工程[a−2]
後工程[a−2]は、架橋メタロセン化合物(A)および化合物(C)存在下で、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンと、前工程[a−1]で得たマクロモノマーとを共重合する工程である。重合方法は特に制限されず、例えば、前述の方法が挙げられるが、非晶もしくは低結晶性のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体部位を生成させることから、液相重合法が好ましく、特に各モノマー濃度を制御し、所望の構造のオレフィン系樹脂(β)を得るうえでは、溶液重合が好ましい。
重合反応は、前工程[a−1]を回分式で行い後工程[a−2]も回分式で行ってもよいし、前工程[a−1]を回分式で行い、取り出したマクロモノマーを用いて後工程[a−2]を連続式で行ってもよい。さらに前工程[a−1]を連続式で行い、生成物をそのまま後工程[a−2]に用いることで、後工程[a−2]も連続式で行うこともできる。また、前工程[a−1]を連続式で行い、後工程[a−2]を回分式で行うこともできる。
・重合方法[b]
架橋メタロセン化合物(A)、遷移金属化合物(B)、化合物(C)の存在下でエチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンとを単段で重合する方法であり、一つの重合器で行うことができる。遷移金属化合物(B)および化合物(C)を用いることで、重合系中にエチレン以外のオレフィンが存在していても、エチレンを高選択的に重合できる傾向にある。さらに、遷移金属化合物(B)および化合物(C)を用いることで、比較的分子量の小さな、ビニル末端を有するエチレン重合体(マクロモノマー)を製造できる傾向にある。そして、架橋メタロセン化合物(A)および化合物(C)を用いることで、分子量の大きな重合体[R1]を製造することができる。このようにして、一つの重合反応条件下で、オレフィン系樹脂(β)を合成することができる。
オレフィン系樹脂(β)の製造方法において、重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]は、80〜300℃の温度範囲における溶液重合法により実施されることが好ましい。
前記「溶液重合」とは、後述する不活性炭化水素溶媒中に重合体が溶解した状態で重合を行う方法の総称である。溶液重合の重合温度は、好ましくは80〜300℃、より好ましくは90〜250℃である。溶液重合においては重合温度が80℃に満たない場合、マクロモノマーが十分に溶解せず、重合体[R1]を効率よく製造できない恐れがある。さらに、重合温度が80℃に満たない場合、その重合活性は極端に低下するので生産性の点でも実用的でない傾向にある。また、80℃以上の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となり、得られる重合体[R1]の高分子量化が達成できる。しかし、重合温度が300℃を超えると、得られる重合体の劣化が起こる場合があるので好ましくない。
重合圧力は、通常、常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜8MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られる重合体[R1]の重量平均分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができ、さらに、使用する化合物(C)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成する重合体[R1]1kgあたり0.001〜5,000NL程度が適当である。
溶液重合において用いられる溶媒は通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50〜200℃の飽和炭化水素である。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられる。なお、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も不活性炭化水素溶媒の範疇に入り、その使用が制限されるものではない。
なお、オレフィン系樹脂(β)の製造の際には、本発明の目的を損なわない範囲で、ゴム、無機充填剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤などの添加剤を用いることがある。このような添加剤を用いた場合、得られる成分には、これらの添加剤が含まれることがあるが、本発明では、このような添加剤を含む場合もオレフィン系樹脂(β)という。
前記オレフィン系樹脂(β)は、下記ペレットや熱可塑性エラストマーなどに用いることができるが、この際には、前記のような種々の添加剤や重合体[R1]以外の他の樹脂とを含む組成物としてこれらに用いることができる。
前記添加剤や他の樹脂の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、例えば、オレフィン系樹脂(β)と添加剤や他の樹脂との合計100重量%に対し、重合体[R1]が5〜100重量%、好ましくは25〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%となるように含まれている態様を例示することができる。
≪ペレット≫
本発明のペレットは本発明のオレフィン系樹脂(β)を含んでいればよく、さらには、前記のような種々の添加剤や重合体[R1]以外の他の樹脂を含んでいてもよい。
なお本発明のペレットの表面には、粉体などが付着することを防ぐための添加剤が存在していてもよい。
本発明のペレットは、そのまま用いることもできるが、熱可塑性エラストマーの原料として、必要に応じて他の樹脂と混合して架橋して用いることが好ましい。
本発明のペレットは、ペレタイザーを備えた押出機を用いて、混練、造粒することによって得ることができる。
本発明のペレットは、特に制限されないが、形状としては、球状、円柱状、角柱状、スポンジ状などが挙げられ、アスペクト比は好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1〜1.5である。また、大きさについても特に制限されないが、通常0.1〜50mm程度の大きさであり、好ましくは0.5〜30mm、さらに好ましくは1〜10mm、特に好ましくは3〜8mmである。
ペレットの大きさは、任意に選んだ10個のペレット(ペレット1〜10)のそれぞれの最大長さLmax1〜10と最小長さLmin1〜10とをノギスを用いて測定し、その平均値をペレットの大きさとして表す。
ペレットの大きさ=(Lmax1+Lmax2+Lmax3+Lmax4+Lmax5+Lmax6+Lmax7+Lmax8+Lmax9+Lmax10+Lmin1+Lmin2+Lmin3+Lmin4+Lmin5+Lmin6+Lmin7+Lmin8+Lmin9+Lmin10)/20
≪熱可塑性エラストマー≫
本発明の熱可塑性エラストマーは前記オレフィン系樹脂(β)と結晶性ポリオレフィン樹脂(α)と架橋剤(γ)とを含む組成物(以下「重合体組成物」ともいう。)を用いて作成され、好ましくは、該重合体組成物の架橋物であり、または、前記ペレットを用いて作成され、好ましくは、該ペレットを用いた架橋物であり、より好ましくは、重合体組成物を動的に熱処理して得られる動的熱処理物である。
[結晶性ポリオレフィン樹脂(α)]
結晶性ポリオレフィン樹脂(α)は、1種または2種以上のモノオレフィンを重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物であることが好ましい。このようなポリオレフィンとしては、例えばアイソタクチックまたはシンジオタクチックのモノオレフィン重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は商業的に入手できる。
結晶性ポリオレフィン樹脂(α)は、熱可塑性エラストマーの流動性および耐熱性を向上させる役割を持っている。
結晶性ポリオレフィン樹脂(α)は単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
前記結晶性ポリオレフィン樹脂(α)の原料オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどの、炭素数2〜20、好ましくは2〜12のα−オレフィンが挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独または2種以上を用いることができる。
重合様式はランダム型でもブロック型でも、樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差支えない。
結晶性ポリオレフィン樹脂(α)としてはプロピレン系重合体が好ましく、具体的にはプロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンブロックコポリマー、プロピレン・エチレンランダムコポリマー、およびプロピレン・エチレン・ブテンランダムコポリマーなどが好ましい。
結晶性ポリオレフィン樹脂(α)は、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
結晶性ポリオレフィン樹脂(α)および本発明のオレフィン系樹脂(β)の使用割合は、結晶性ポリオレフィン樹脂(α)およびオレフィン系樹脂(β)の合計に対して、結晶性ポリオレフィン樹脂(α)が好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜60重量%、オレフィン系樹脂(β)が好ましくは20〜90重量%、より好ましくは40〜85重量%であることが加工性の点で望ましい。
[架橋剤(γ)]
前記架橋剤(γ)としては、例えば、有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂等のフェノール系加硫剤が挙げられるが、中でも有機過酸化物が好ましく用いられる。
架橋剤(γ)は単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
中でも、臭気性、スコーチ安定性等の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびn−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましい。
架橋剤(γ)は、オレフィン系樹脂(β)の量100重量部に対して0.01〜15重量部、好ましくは0.03〜12重量部の割合で用いられる。架橋剤を前記割合で用いると、オレフィン系樹脂(β)が架橋した熱可塑性エラストマーが得られ、耐熱性、引張特性およびゴム弾性が十分な成形体が得られる。また、この熱可塑性エラストマーは成形性に優れている。
[架橋助剤]
本発明では、前記架橋剤(γ)による架橋処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド、エレチングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーを配合することができる。このような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、ジビニルベンゼンは、取扱い易く、オレフィン系樹脂(β)への相溶性が良好であり、かつ架橋剤(γ)として有機過酸化物を使用する場合、有機ペルオキシド可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性にバランスのとれた熱可塑性エラストマーが得られるため最も好ましい。
架橋助剤は単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
[熱可塑性エラストマーの製造法]
本発明の熱可塑性エラストマーは、好ましくは、前記重合体組成物を動的架橋して得られ、より好ましくは、前記オレフィン系樹脂(β)と、結晶性ポリオレフィン樹脂(α)と、架橋剤(γ)、好ましくは有機過酸化物と、必要に応じて配合されるその他の成分との混合物を、動的に熱処理して架橋することによって得られる。
なお、本発明の熱可塑性エラストマーは、前記重合体組成物が部分的に架橋されたものであってもよく、完全に架橋されたものであってもよい。
本発明において、「動的に熱処理する」とは、前記重合体組成物を溶融状態で混練することをいう。
前記動的な熱処理は、非開放型の装置中で行うことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理の温度は、通常、オレフィン系樹脂(β)の融点〜300℃の範囲であり、好ましくは150〜280℃、より好ましくは170〜270℃である。混練時間は、通常、1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、最高剪断速度で通常10〜100,000sec-1、好ましくは100〜50,000sec-1、より好ましくは1,000〜10,000sec-1、更に好ましくは2,000〜7,000sec-1の範囲である。
前記混練の際の混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例:バンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
[熱可塑性エラストマーの用途]
本発明の熱可塑性エラストマーは、用途に応じて適宜成形され使用される。該成形法としては、一般に使用される成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法等が挙げられる。用途としては自動車部品(ウェザーストリップ、天井材、内装シート、バンパーモール、サイドモール、エアスポイラー、エアダクトホース、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション、フードシール、グラスランチャンネル、セカンダリーシール、各種パッキン類など)、土木・建材部品(止水材、目地材、建築用窓枠など)、スポーツ用品(ゴルフクラブ、テニスラケットのグリップ類など)、工業用部品(ホースチューブ、ガスケット等)、家電部品(ホース、パッキン類など)、医療用機器部品、電線、雑貨などの広汎な分野が挙げられる。
≪架橋ゴム≫
本発明の架橋ゴムは前記オレフィン系樹脂(β)および/またはペレットと、架橋剤(γ)とを含む組成物を用いて作成され、好ましくは、該組成物の架橋物である。
該組成物におけるオレフィン系樹脂(β)に対する架橋剤(γ)の使用量は、前記と同様である。
前記架橋ゴムは、従来公知の方法で得ることができ、例えば、前記混錬装置を用いて、前記オレフィン系樹脂(β)および/またはペレットと、架橋剤(γ)と、必要に応じて配合されるその他の成分との組成物を調製し、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機などを用いる種々の成形法より、意図する形状に成形され、成形と同時にまたは成形物を加硫槽内に導入し、架橋することで得ることができる。
前記架橋ゴムは、自動車用ウェザーストリップ;自動車用ホース、送水用ホース、ガス用ホース等のホース;自動車用防振ゴム、鉄道用防振ゴム、産業機械用防振ゴム、建築用免震ゴム等の防振ゴム;伝動ベルト、搬送用ベルト等のベルト;自動車用カップ・シール材、産業機械用シール材等のシール材;自動車用ウェザーストリップスポンジ、建築用シールスポンジ、その他ホース保護用スポンジ、クッション用スポンジ、断熱スポンジ、インシュレーションパイプ等の発泡体;被覆電線、電線ジョイント、電気絶縁部品、半導電ゴム部品;OA機器用ロール、工業用ロール;雨具、輪ゴム、靴、ゴム手袋、ラテックス製品、ゴルフボール等の家庭用品;プラスチック改質用、熱可塑性エラストマー用、エンジニアリングプラスチック改質用などの用途に広く用いられる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
(1)融解温度(Tm)および融解熱量ΔHの測定
オレフィン系樹脂の融解温度(Tm)および融解熱量ΔHの測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
示差走査熱量計〔SII社製、RDC220〕を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/minで200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/minで30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、そのピークトップ温度を融解温度(Tm)として求めた。また、融解熱量ΔHは前記融解ピークの面積を算出し求めた。なお融解ピークが多峰性の場合は、全体の融解ピークの面積を算出し求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
示差走査熱量計〔SII社製、RDC220〕を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/minで200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/minで−100℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、この屈曲より低温部分のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点における接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(3)13C−NMR測定
オレフィン系樹脂中のエチレン、α−オレフィンおよびジエンの組成分析、グラフト構造、グラフト本数(1000C当たり)ならびに下記マクロモノマー(P−1)の構造の確認を目的に次の条件で13C−NMR測定を実施した。
装置:ブルカーバイオスピン社製AVANCEIII500CryoProbe Prodigy型核磁気共鳴装置、測定核:13C(125MHz)、測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:45°(5.00μ秒)、ポイント数:64k、測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:512回、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d6(4/1 v/v)、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)、ケミカルシフト基準:ベンゼン−d6(128.0ppm)
(4)GPC分析
オレフィン系樹脂の分子量分析、下記マクロモノマー(P−1)の分子量分析および残存マクロモノマー量の算出のために、次の条件でGPC分析を実施した。
装置:Waters社製Alliance GPC 2000型、カラム:TSKgel GMH6−HT ×2およびTSKgel GMH6−HTL ×2(いずれも東ソー社製、内径7.5mm×長さ30cm)、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)、検出器:示差屈折計、流量:1.0mL/min、試料濃度:0.15%(w/v)、注入量:0.5mL、サンプリング時間間隔:1秒、カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
(5)極限粘度([η]:〔dl/g〕)
オレフィン系樹脂の極限粘度は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。
(6)20℃以下溶出成分(〔wt%〕)
オレフィン系樹脂の20℃以下溶出成分は、20℃以下の温度におけるオルトジクロロベンゼン可溶成分を、クロス分別クロマトグラフ(CFC)を用いて測定した。具体的には、下記条件で行った。
装置:クロス分別クロマトグラフCFC2(Polymer ChAR社製)、検出器(内蔵):赤外分光光度計 IR4(Polymer ChAR社製)、検出波長:3.42μm(2,920cm-1)固定、試料濃度:120mg/30mL、注入量:0.5mL、降温速度:1.0℃/min、溶出区分:4.0℃間隔(−20℃〜140℃)、GPCカラム:Shodex HT−806M×3本(昭和電工社製)、GPCカラム温度:140℃、GPCカラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)、分子量較正法:汎用較正法(ポリスチレン換算)、移動相:o−ジクロロベンゼン(ジブチルヒドロキシトルエン添加)、流量:1.0mL/min
以下、オレフィン系樹脂の製造例について説明する。なお、評価に必要なサンプル量を確保するため、下記方法による製造を複数回実施していることがある。
[実施例1] オレフィン系樹脂(β−1)の製造
<マクロモノマー(P−1)の合成(前工程[a−1])>
触媒として使用した下記式で示される化合物(1)は、国際公開第2006/057229号の[合成例3]に従って合成し、マクロモノマー(P−1)は同公報の[実施例1]に従って合成した。生成物はポリエチレン換算でMwが1600、Mw/Mnが2.32、1H−NMRで測定した片末端不飽和率が99.0mol%であった。
Figure 2020023724
(式中、Phはベンゼン環を示す。)
<グラフト共重合(後工程[a−2])>
下記式で示される化合物(2)を公知の方法によって合成した。
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、マクロモノマー(P−1)5.0gとキシレン500mlを装入した後、95℃に昇温し、マクロモノマーを溶解させた。そこにエチレン180リットル/hrおよびプロピレン50リットル/hrを連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよびプロピレンを連続的に供給した状態で、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENBとも記す)1.5mL(11.1mmol)、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(1.0mol/L)を2.0mL(2.0mmol)、化合物(2)のトルエン溶液(0.010mol/L)を3.0mL(0.030mmol)加え、次いで、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を15mL(0.060mmol)加え、常圧下、95℃で30分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、酸化防止剤Irganox1010(BASF社製)を含むメタノール溶液を加え、80℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂(β−1)22.4gを得た。得られたオレフィン系樹脂(β−1)の分析結果を表1に示す。
Figure 2020023724
[比較例1] オレフィン系樹脂(β'−1)の製造
実施例1の後工程[a−2]において、マクロモノマー(P−1)を加えないこと以外、実施例1と同様に重合を実施し、オレフィン系樹脂(β'−1)18.8gを得た。得られたオレフィン系樹脂(β'−1)の分析結果を表1に示す。
[比較例2] オレフィン系樹脂(β"−1)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、オレフィン系樹脂(β'−1)17.4gとマクロモノマー(P−1)5.0gとキシレン500mlとを装入したのち、95℃に昇温し、オレフィン系樹脂(β'−1)とマクロモノマー(P−1)とを溶解させた。得られた溶液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、酸化防止剤Irganox1010(BASF社製)を含むメタノール溶液を加え、80℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂(β"−1)22.4gを得た。得られたオレフィン系樹脂(β"−1)の分析結果を表1−1に示す。
Figure 2020023724
[実施例2]
表2の各成分を表2の通り計量し、東洋精機(株)製ラボプラストミル(容量100cc)を用いて、回転数100rpmで1分25秒間混練した。その後、回転数を60rpmに下げて5秒間混練し、ラボプラストミルを停止した。そこに、下記架橋剤成分を投入し、ラボプラストミルによる混練(回転数:60rpm)を再開し(混練時間:15秒)、その後、再び回転数を100rpmに上げて2分15秒間混練した。以上の工程(動的架橋)により、熱可塑性エラストマーを得た。得られた熱可塑性エラストマーをラボプラストミルから取り出した。なお、ラボプラストミルにおける混練温度は200℃とした。
<架橋剤成分>
有機過酸化物(PHSA):0.28g
ジビニルベンゼン(DVB810):0.19g
パラフィンオイル(PW−100):0.47g
[比較例例3および4]
表2の成分を表2の量で用いた以外は実施例2と同様の方法によって、熱可塑性エラストマーを得た。
Figure 2020023724
(1)MFR
得られた熱可塑性エラストマーのMFRを、ASTM D 1238に準拠して230℃、10kg荷重で測定した。結果を表3に示す。
(2)硬度
得られた熱可塑性エラストマーを、50tプレス成形機(KMF100−1E、コータキ(株)製)を用いて、温度190℃、10分間の条件でプレスした後、室温、5分間の条件で冷却プレスを行い、20cm角、2mm厚のシートを得た。得られたシートを重ねて厚さ12mmとし、JIS K6253に従い硬度(JIS−A)を測定した。結果を表3に示す。
(3)引張試験
前記(2)と同様の方法で得られたシートを用いて、JIS K6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。結果を表3に示す。
(4)圧縮永久歪(CS)
前記(2)と同様の方法で得られたシートを用いて、JIS K6250の6.5およびJIS K6262 (2013)に従って、表3の各温度にて、22時間処理後の圧縮永久歪を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2020023724
表3の結果から、実施例2の熱可塑性エラストマーは、比較例3および比較例4の熱可塑性エラストマーと比較して、硬度、モジュラスおよび破断強度において高い値となり、−30℃〜23℃の圧縮永久歪(CS)は小さい値となっている。これはグラフト型オレフィン系重合体を含む樹脂(β−1)を用いて得た熱可塑性エラストマーが、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体とエチレン重合体のブレンド樹脂(β"−1)を用いて得た熱可塑性エラストマーおよび既存のエチレン・プロピレン・ジエン共重合体を用いて得た熱可塑性エラストマーと比較して、硬度・剛性・強度といった機械物性が大幅に改善されていることを示すだけでなく、同時に耐圧縮永久歪性すなわちゴム弾性も大幅に改善されていることを示している。これは、樹脂(β−1)に含まれるグラフト型オレフィン系重合の側鎖であるエチレン重合体が、エラストマーに高い剛性や強度を付与すると同時に、エラストマー成分中に物理架橋点を形成することで、良好なゴム弾性も付与しているものと考えられる。

Claims (5)

  1. 下記要件(I)〜(IV)を満たすオレフィン系樹脂(β)。
    (I)エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体からなる主鎖、および、エチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む
    (II)グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖重合体分子鎖中の炭素原子1000個あたり、側鎖が平均0.5〜20個存在する
    (III)示差走査熱量分析(DSC)による測定において、60〜130℃の範囲に融解温度(Tm)を示し、融解熱量ΔHが5〜150J/gの範囲にある
    (IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定したガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲にある
  2. グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量が500〜10000の範囲にある、請求項1に記載のオレフィン系樹脂(β)。
  3. 下記(a)または(b)を含む、請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
    (a)下記化合物(B)および(C)を含む触媒の存在下、エチレンを重合する工程[a−1]と、
    下記化合物(A)および(C)を含む触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンと、工程[a−1]の反応生成物とを共重合する工程[a−2]と
    を含む方法
    (b)下記(A)〜(C)の各化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、ポリエンとを含む成分を共重合する工程を含む方法
    (A)下記式(I)で表される架橋メタロセン化合物
    (B)下記式[B]で表される遷移金属化合物
    (C)(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(C−3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物
    Figure 2020023724
    (式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
    6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
    13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
    Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
    1は炭素原子またはケイ素原子を示す。
    Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
    Figure 2020023724
    (式[B]中、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。mは1〜4の整数を示す。R1は、炭素原子数1〜4の非環式炭化水素基(Cn'2n'+1;n’=1〜4)を示す。R2〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。R6〜R8は独立に、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基またはハロゲン化芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の場合にはR2〜R8のうち2個の基が連結されていてもよい。nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
  4. 前記共重合を、80〜300℃の温度範囲における溶液重合法で行う、請求項3に記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂(β)を含むペレット。
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